第1の構成に係る製造方法は、クランク軸の製造方法である。クランク軸は、ジャーナルと、ピンと、アームと、カウンターウエイトと、を含む。ピンは、ジャーナルに対して偏心して配置される。アームは、ジャーナルとピンとを接続する。カウンターウエイトは、アームと一体的に形成される。製造方法は、ビレットから第1荒地を得る第1予備成形工程と、第1荒地から第2荒地を得る第2予備成形工程と、第2荒地から第3荒地を得る第3予備成形工程と、を備える。
第1予備成形工程では、一対の第1金型を用い、ビレットの軸方向と垂直な方向から、ビレットのうちジャーナルに相当する部位及びピンに相当する部位を圧下することにより、ジャーナルに相当する部位及びピンに相当する部位の各断面積を減少させて当該部位をそれぞれ扁平状に成形する。また、第1予備成形工程では、ビレットのうち、アーム及びカウンターウエイトで構成されるクランクウェブに相当する部位を、第1金型の圧下方向においてアームに相当する部位の長さがカウンターウエイトに相当する部位の長さよりも短くなるように、一対の第1金型で圧下する。
第2予備成形工程では、一対の第2金型を用い、第1金型の圧下方向及び第1荒地の軸方向と垂直な方向を圧下方向として、第1荒地のうちジャーナルに相当する部位を圧下する。また、第2予備成形工程では、偏心型を用い、第2金型による圧下方向と平行な方向を偏心方向として、第1荒地のうちピンに相当する部位をジャーナルに相当する部位に対して偏心させる。さらに、第2予備成形工程では、第1荒地のうちクランクウェブに相当する部位を、第1金型の圧下方向におけるアームに相当する部位の長さがカウンターウエイトに相当する部位の長さよりも短い状態に維持されるように、一対の第2金型によって支持する。
第3予備成形工程では、第3金型を用い、第2荒地のうちクランクウェブに相当する部位を第2荒地の軸方向から圧下することにより、当該部位の厚みを減少させる。
型鍛造工程で得られる鍛造材のうち、アームとカウンターウエイトとで構成されるクランクウェブでは、通常、その長手方向に体積が配分されている。すなわち、鍛造材のクランクウェブでは、カウンターウエイト側の体積が大きく、アーム側の体積が小さい。そこで、第1の構成に係るクランク軸の製造方法では、型鍛造工程の前工程である予備成形工程において、予めこの体積配分を反映した荒地を形成する。具体的には、ビレットから第1荒地を得る第1予備成形工程において、ビレットのうちクランクウェブに相当する部位を一対の第1金型で圧下する。第1予備成形工程において、ビレットのうちクランクウェブに相当する部位は、鍛造材のクランクウェブの体積配分にしたがって、第1金型の圧下方向においてアームに相当する部位の長さがカウンターウエイトに相当する部位の長さよりも短くなるように圧下される。また、第1予備成形工程では、ビレットのうち、ジャーナルに相当する部位及びピンに相当する部位が一対の第1金型によって圧下され、扁平状に成形される。これにより、ジャーナルに相当する部位及びピンに相当する部位からクランクウェブに相当する部位へと余剰材料が流入し、軸方向の体積配分も行われる。
第1荒地から第2荒地を得る第2予備成形工程では、一対の第2金型により、第1予備成形工程で得られた第1荒地のうち、ジャーナルに相当する部位が圧下されるとともに、偏心型により、第1荒地のうちピンに相当する部位が偏心させられる。このとき、第1荒地のうちクランクウェブに相当する部位では、第1予備成形工程で行った体積配分が実質的に維持される。すなわち、第2予備成形工程において、第2荒地のうちクランクウェブに相当する部位は、第1金型の圧下方向におけるアームに相当する部位の長さがカウンターウエイトに相当する部位の長さよりも短い状態に維持されるように、一対の第2金型で支持される。また、第2予備成形工程において、クランクウェブに相当する部位には、ジャーナルに相当する部位の圧下及びピンに相当する部位の偏心に伴い、ジャーナルに相当する部位及びピンに相当する部位から余剰材料が流入する。そのため、さらなる軸方向の体積配分が行われる。
このように、第1の構成に係る製造方法によれば、第1及び第2予備成形工程の段階で、ジャーナルに相当する部位、ピンに相当する部位、及びクランクウェブに相当する部位に対して軸方向の体積配分が行われるだけでなく、クランクウェブに相当する部位において、カウンターウエイトに相当する部位の体積が大きく、アームに相当する部位の体積が小さくなるような体積配分が行われる。よって、予備成形工程において、より精密に材料の体積配分を行うことができる。
第1及び第2予備成形工程を経て得られた第2荒地のうち、クランクウェブに相当する部位では、カウンターウエイトに相当する部位の体積が大きく、アームに相当する部位の体積が小さくなるような体積配分がなされている。そのため、第1及び第2予備成形工程に続く第3予備成形工程において、第3金型の型割面への材料の噛み出しが生じにくい。よって、第3予備成形工程において、クランクウェブに相当する部位に対し、比較的自由な形状を与えることが可能となる。
第3予備成形工程では、第3金型によって第2荒地のうちクランクウェブに相当する部位の外周を拘束し、当該部位をクランクウェブの仕上げ形状に相当する形状に形成することが好ましい(第2の構成)。
第3予備成形工程後の型鍛造工程では、クランク軸の仕上げ形状と概略合致した鍛造材が成形される。そこで、第2の構成では、第3予備成形工程において、第2予備成形工程で得られた第2荒地のうち、クランクウェブに相当する部位の外周を第3金型で拘束しながら、当該部位をクランクウェブの仕上げ形状に相当する形状に形成する。これにより、第3予備成形工程で得られる第3荒地の形状を鍛造材の形状、すなわち型鍛造工程で使用される金型の形状に近づけることができる。よって、型鍛造工程において、第3荒地を金型上に安定して配置することができ、鍛造材における疵の発生を抑制することができる。また、鍛造材の成形精度を向上させることもできる。
鍛造材及び最終的なクランク軸のクランクウェブでは、アームの幅よりもカウンターウエイトの幅の方が大きい。また、クランクウェブは、アームとカウンターウエイトとの間に括れ部を有することがある。さらに、クランクウェブには、肉抜き部が設けられていることもある。第2の構成では、第3荒地のうちクランクウェブに相当する部位を、このようなクランクウェブの仕上げ形状に相当する形状に成形する。これにより、第3予備成形工程後の型鍛造工程において、第3荒地のクランクウェブに相当する部位を型鍛造する際、金型から流出する余剰材料を減少させることができる。そのため、型鍛造工程においてバリの量を低減することができ、材料歩留りを向上させることができる。材料歩留りとは、ビレットの体積に対するクランク軸(最終製品)の体積の割合(百分率)である。
第2予備成形工程において、ピンに相当する部位の偏心量は、好ましくは、ピンの仕上げ寸法の偏心量の40%以下である(第3の構成)。
第3の構成では、第2予備成形工程において、ピンに相当する部位の偏心量をピンの仕上げ寸法の偏心量の40%以下に制限している。これにより、第2予備成形工程において、ピンに相当する部位からクランクウェブに相当する部位へと材料が流入しやすくなる。そのため、クランクウェブに相当する部位において、軸方向に垂直な方向の体積配分を促進することができる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
[クランク軸の構成]
図1は、本実施形態に係る製造方法によって製造されるクランク軸10を模式的に示す側面図である。図1に示すクランク軸10は、4気筒エンジンに搭載されるクランク軸である。クランク軸10は、複数のジャーナルJ1~J5と、複数のピンP1~P4と、複数のアームA1~A8と、複数のカウンターウエイトWとを含む。
第1ジャーナルJ1~第5ジャーナルJ5は、それぞれ、X1を中心軸とする概略円柱状をなす。第1ジャーナルJ1~第5ジャーナルJ5は、中心軸X1が延びる方向(軸方向)に沿ってこの順で配列され、クランク軸10の主軸部を構成する。第1ジャーナルJ1は、フロントFrに連結される。第5ジャーナルJ5は、フランジFlに連結されている。以下、4つのジャーナルJ1~J4を特に区別する必要がないときは、これらをジャーナルJと総称する。
第1ピンP1~第4ピンP4は、それぞれ概略円柱状をなし、軸方向においてジャーナルJと交互に配置される。ただし、第1ピンP1~第4ピンP4の各々は、ジャーナルJに対して偏心している。第1ピンP1~第4ピンP4は、中心軸X1の周りに所定の位相差で配置される。本実施形態では、第1ピンP1及び第4ピンP4と、第2ピンP2及び第3ピンP3とが180°の位相差で中心軸X1の周りに配置されている。以下、4つのピンP1~P4を特に区別する必要がないときは、これらをピンPと総称する。
第1アームA1~第8アームA8の各々は、軸方向においてジャーナルJとピンPとの間に配置される。第1アームA1~第8アームA8は、それぞれ、ジャーナルJとピンPとを接続する。
第1アームA1は、第1ジャーナルJ1と第1ピンP1との間に配置され、第1ジャーナルJ1と第1ピンP1とを接続する。第2アームA2は、第1ピンP1と第2ジャーナルJ2との間に配置され、第1ピンP1と第2ジャーナルJ2とを接続する。第3アームA3は、第2ジャーナルJ2と第2ピンP2との間に配置され、第2ジャーナルJ2と第2ピンP2とを接続する。第4アームA4は、第2ピンP2と第3ジャーナルJ3との間に配置され、第2ピンP2と第3ジャーナルJ3とを接続する。第5アームA5は、第3ジャーナルJ3と第3ピンP3との間に配置され、第3ジャーナルJ3と第3ピンP3とを接続する。第6アームA6は、第3ピンP3と第4ジャーナルJ4との間に配置され、第3ピンP3と第4ジャーナルJ4とを接続する。第7アームA7は、第4ジャーナルJ4と第4ピンP4との間に配置され、第4ジャーナルJ4と第4ピンP4とを接続する。第8アームA8は、第4ピンP4と第5ジャーナルJ5との間に配置され、第4ピンP4と第5ジャーナルJ5とを接続する。
第1アームA1~第8アームA8には、それぞれ、カウンターウエイトWが設けられている。カウンターウエイトWの各々は、アームA1~A8のいずれかと一体的に形成されている。カウンターウエイトW付きの第1アームA1~第8アームA8をそれぞれ第1クランクウェブCw1~第8クランクウェブCw8ともいい、クランクウェブCw1~Cw8を特に区別する必要がないときは、これらをクランクウェブCwと総称する。また、8つのアームA1~A8を特に区別する必要がないときは、これらをアームAと総称する。
図2は、図1のII-II断面図であり、ピンP側から見たクランクウェブCwを模式的に示す。図2を参照して、カウンターウエイトWの幅Bwは、アームAの幅Baよりも大きい。カウンターウエイトWは、アームAと比較し、クランクウェブCwの中心面から幅方向の外側に張り出している。クランクウェブCwの中心面とは、ジャーナルJの中心軸X1とピンPの中心軸X2とを含む平面である。クランクウェブCwの幅方向とは、この中心面に対して垂直な方向をいう。また、クランクウェブCwの中心面に平行な方向をクランクウェブCwの長手方向という。
[クランク軸の製造方法]
次に、上述のように構成されたクランク軸10を製造する方法について説明する。クランク軸10の製造方法は、第1予備成形工程と、第2予備成形工程と、第3予備成形工程とを備えている。
図3A~図3Dは、各予備成形工程における素材又は成形品を模式的に示す図である。クランク軸10を製造する際、通常、出発素材として、図3Aに示すビレット11が用いられる。ビレット11の軸方向に垂直な断面(横断面)は、円形状又は角形状を有する。ビレット11の横断面の面積は、その全長にわたって実質的に一定である。第1予備成形工程では、ビレット11から、第1の中間素材として図3Bに示す荒地12を得る。第2予備成形工程では、第1予備成形工程で得られた荒地12から、第2の中間素材として図3Cに示す荒地13を得る。第3予備成形工程では、第2予備成形工程で得られた荒地13から、第3の中間素材として図3Dに示す荒地14を得る。以下、各工程について具体的に説明する。
(第1予備成形工程)
図4A及び図4Bは、第1予備成形工程を説明するための模式図である。図4A及び図4Bでは、ビレット11及び荒地12の中心軸にジャーナルJの中心軸と同じ符号X1を付している。第1予備成形工程では、一対の金型21,22を用いてビレット11を圧下する。金型21,22は、一般的なプレス装置に取り付けることができる。本実施形態の例では、金型21が上型であり、金型22が金型21とともに用いられる下型である。
図4Aに示すように、第1予備成形工程を開始する際には、金型21を上昇させて金型22から離間させた状態で、ビレット11を金型21と金型22との間に配置する。ビレット11は、下型である金型22上に載置される。金型21を下降させると、金型21,22により、ビレット11がその軸方向と垂直な方向から圧下される。図4Bに示すように、金型21を下死点に到達させることにより、ビレット11が荒地12に成形される。その後、金型21を上昇させ、成形された荒地12を金型21,22から取り出す。
図5A及び図5Bは、それぞれ、図4AのVA-VA断面図及び図4BのVB-VB断面図である。図5A及び図5Bでは、ビレット11又は荒地12のうち、ジャーナルJに相当する部位の横断面を示す。ジャーナルJに相当する部位とは、各素材が最終的にクランク軸10に成形されたとき、ジャーナルJとなる部位である。以下、各素材においてジャーナルJに相当する各部位をジャーナル相当部JAという。なお、素材における各部位の位置関係を理解しやすくするため、図5A及び図5B、並びに後述する図6A、図6B、図7A、及び図7Bには、ジャーナルJの中心軸X1を併記している。
図5Aを参照して、ビレット11のジャーナル相当部JAは、第1予備成形工程の開始に際し、金型21に設けられたジャーナル加工部21a、及び金型22に設けられたジャーナル加工部22aに対応する位置に配置される。金型21のジャーナル加工部21aは、ビレット11のジャーナル相当部JAを収容可能な凹状を有する。金型22のジャーナル加工部22aは、金型21のジャーナル加工部21aに対向し、ジャーナル加工部21aよりも浅い凹状を有する。ジャーナル加工部22aは、金型22に設けられた突出部の先端面に形成されている。ただし、本実施形態とは逆に、金型22のジャーナル加工部22aが横断面視でビレット11を収容可能な凹状を有し、金型21に、浅凹状のジャーナル加工部21aを有する突出部が形成されていてもよい。
図5Aに示すように、第1予備成形工程の開始時において、ジャーナル相当部JAは、金型22のジャーナル加工部22a上に載置されている。金型21を金型22に向かって下降させることにより、ジャーナル相当部JAが金型21のジャーナル加工部21a内に収容される。図5Bに示すように、金型21をさらに下降させることにより、ジャーナル加工部21a,22aでジャーナル相当部JAが圧下される。金型21を下降させる過程で、金型21のジャーナル加工部21a内に金型22のジャーナル加工部22aが進入し、金型21のジャーナル加工部21aの開口が金型22のジャーナル加工部22aで塞がれて閉断面が形成される。これにより、第1予備成形工程において、ジャーナル相当部JAを圧下した際にバリが発生するのを抑制することができ、材料歩留りを向上させることができる。
第1予備成形工程では、金型21,22を用い、ジャーナル相当部JAをビレット11の軸方向と垂直な方向から圧下することにより、ジャーナル相当部JAの断面積を減少させて、ジャーナル相当部JAを扁平状に成形する。第1予備成形工程では、ビレット11に含まれる全てのジャーナル相当部JAが同様に加工される。第1予備成形工程後の荒地12において、ジャーナル相当部JAは、金型21,22による圧下方向の寸法が小さく、当該圧下方向と垂直な方向の寸法が大きい横断面を有する。荒地12において、ジャーナル相当部JAの横断面の形状は、例えば、楕円状又は長円状である。
図6A及び図6Bは、それぞれ、図4AのVIA-VIA断面図及び図4BのVIB-VIB断面図である。図6A及び図6Bでは、ビレット11又は荒地12のうち、ピンPに相当する部位の横断面を示す。ピンPに相当する部位とは、各素材が最終的にクランク軸10に成形されたとき、ピンPとなる部位である。以下、各素材においてピンPに相当する各部位をピン相当部PAという。
図6Aを参照して、ビレット11のピン相当部PAは、第1予備成形工程に際し、金型21に設けられたピン加工部21b、及び金型22に設けられたピン加工部22bに対応する位置に配置される。金型21のピン加工部21bは、ビレット11のピン相当部PAを収容可能な凹状を有する。金型22のピン加工部22bは、金型21のピン加工部21bに対向し、ピン加工部21bよりも浅い凹状を有する。ピン加工部22bは、金型22に設けられた突出部の先端面に形成されている。ただし、本実施形態とは逆に、金型22のピン加工部22bが横断面視でビレット11を収容可能な凹状を有し、金型21に、浅凹状のピン加工部21bを有する突出部が形成されていてもよい。
図6Aに示すように、金型21を金型22に向かって下降させることにより、ピン相当部PAが金型21のピン加工部21b内に収容される。図6Bに示すように、金型21をさらに下降させることにより、金型21,22のピン加工部21b,22bでピン相当部PAが圧下される。金型21を下降させる過程で、金型21のピン加工部21b内に金型22のピン加工部22bが進入し、金型21のピン加工部21bの開口が金型22のピン加工部22bで塞がれて閉断面が形成される。これにより、第1予備成形工程において、ピン相当部PAを圧下した際にバリが発生するのを抑制することができ、材料歩留りを向上させることができる。
第1予備成形工程では、金型21,22を用い、ピン相当部PAをビレット11の軸方向と垂直な方向から圧下することにより、ピン相当部PAの断面積を減少させて、ピン相当部PAを扁平状に成形する。第1予備成形工程では、ビレット11に含まれる全てのピン相当部PAが同様に加工される。第1予備成形工程後の荒地12において、ピン相当部PAは、金型21,22による圧下方向の寸法が小さく、当該圧下方向と垂直な方向の寸法が大きい横断面を有する。荒地12において、ピン相当部PAの横断面の形状は、例えば、楕円状又は長円状である。ピン相当部PAの横断面は、ジャーナル相当部JAの横断面と同一の形状又は寸法を有していてもよいし、異なる形状又は寸法を有していてもよい。
図7A及び図7Bは、それぞれ、図4AのVIIA-VIIA断面図及び図4BのVIIB-VIIB断面図である。図7A及び図7Bでは、ビレット11又は荒地12のうち、クランクウェブCwに相当する部位の横断面を示す。クランクウェブCwに相当する部位とは、各素材が最終的にクランク軸10に成形されたとき、クランクウェブCwとなる部位である。以下、各素材においてクランクウェブCwに相当する各部位をウェブ相当部CAという。
図7Aを参照して、ビレット11のウェブ相当部CAは、第1予備成形工程に際し、金型21に設けられたウェブ加工部21c、及び金型22に設けられたウェブ加工部22cに対応する位置に配置される。
一方の金型21におけるウェブ加工部21cは、アーム加工部211cと、ウエイト加工部212cとを含む。アーム加工部211cは、ビレット11のうち、クランクウェブCwの一部であるアームAに相当する部位(アーム相当部)AAを加工する部分である。ウエイト加工部212cは、ビレット11のうち、アームAに一体的に設けられるカウンターウエイトWに相当する部位(ウエイト相当部)WAを加工する部分である。アーム加工部211c及びウエイト加工部212cは、それぞれ凹状を有する。アーム加工部211c及びウエイト加工部212cの各々は、例えば、金型21の下面に形成された凹曲面である。ただし、ウエイト加工部212cは、アーム加工部211cよりも深い。
他方の金型22におけるウェブ加工部22cは、アーム加工部221cと、ウエイト加工部222cとを含む。アーム加工部221cは、金型21のアーム加工部211cとともに、ビレット11のアーム相当部AAを加工する部分である。ウエイト加工部222cは、金型21のウエイト加工部212cとともに、ビレット11のウエイト相当部WAを加工する部分である。アーム加工部221c及びウエイト加工部222cは、それぞれ凹状を有する。アーム加工部221c及びウエイト加工部222cの各々は、例えば、金型22の下面に形成された凹曲面である。ただし、ウエイト加工部222cは、アーム加工部221cよりも深い。本実施形態の例において、金型22のウェブ加工部22cは、ジャーナル相当部JAの中心軸X1を含む水平面に関し、金型21のウェブ加工部21cと実質的に対称の形状を有している。
図7Aに示すように、第1予備成形工程の開始時において、ウェブ相当部CAは、金型22のウェブ加工部22cに載置されている。図7Bに示すように、金型21を金型22に向かって下降させることにより、金型21のウェブ加工部21cと金型22のウェブ加工部22cとの間でウェブ相当部CAが圧下される。ウェブ加工部21c,22cによる圧下方向は、クランクウェブCwの幅方向と概略一致している。
第1予備成形工程では、金型21,22での圧下により、金型21,22の圧下方向におけるアーム相当部AAの長さ(幅)Laがウエイト相当部WAの長さ(幅)Lwよりも短くなる。より具体的には、アーム相当部AAは、浅凹状のアーム加工部211c,221cで圧下されてその断面積が減少する。アーム相当部AAは、アーム加工部211c,221cに沿って成形される。アーム相当部AAの断面積の減少に伴い、アーム相当部AA側から深凹状のウエイト加工部212c,222cへと材料が流動する。また、ウェブ相当部CAに隣接するジャーナル相当部JA及びピン相当部PAの断面積が減少することに伴い、ジャーナル相当部JA及びピン相当部PAからウエイト加工部212c,222cへと材料が流入する。これにより、アーム相当部AAの体積と比較し、ウエイト相当部WAの体積が大きくなる。ウエイト相当部WAは、ウエイト加工部212c,222cに沿って成形される。
第1予備成形工程において、ビレット11に含まれる全てのウェブ相当部CAは、同様に加工される。ただし、クランクウェブCw1,CW2,Cw7,Cw8に相当する部位と、クランクウェブCw3~Cw6に相当する部位とでは、180°反転した加工が行われる。
(第2予備成形工程)
図8A~図8Cは、第2予備成形工程を説明するための模式図である。図8Aを参照して、第2予備成形工程では、一対の金型31,32を用い、第1予備成形工程で得られた荒地12の各ジャーナル相当部JAを圧下する。また、第2予備成形工程では、複数の偏心型41,42を用い、荒地12の各ピン相当部PAの偏心を実施する。
金型31,32は、プレス装置に取り付けることができる。本実施形態の例では、金型31が上型であり、金型32が金型31とともに用いられる下型である。複数の偏心型41は、荒地12のうち、第1ピンP1に相当する部位(第1ピン相当部)PA1、及び第4ピンP4に相当する部位(第4ピン相当部)PA4を偏心させるための部材である。偏心型41の各々は、金型31から独立して昇降できるように構成されている。複数の偏心型42は、荒地12のうち、第2ピンP2に相当する部位(第2ピン相当部)PA2、及び第3ピンP3に相当する部位(第3ピン相当部)PA3を偏心させるための部材である。偏心型42の各々は、金型32から独立して昇降できるように構成されている。
本実施形態の例において、各偏心型41,42は、緩衝機能を有するダイクッション51により、金型31,32と独立して昇降するように制御される。金型31,32は、それぞれ、ダイクッション51を介してボルスタベース52に支持される。偏心型41,42は、それぞれ、ピンベース53を介してボルスタベース52に支持されている。
図8Aに示すように、第2予備成形工程を開始する際には、金型31を上昇させて金型32から離間させた状態で、荒地12を金型31と金型32との間に配置する。荒地12は、下型である金型32上に載置される。初期状態では、各偏心型41の下端は、金型31の圧下面以上の高さに配置されており、当該圧下面から下方に突出していない。また、各偏心型42は、金型32の圧下面以下の高さに配置されており、当該圧下面から上方に突出していない。そのため、荒地12を金型32上に載置したとき、荒地12の姿勢が実質的に水平に保たれる。
荒地12は、第1予備成形工程の終了時における状態から軸回りに90°回転した姿勢で金型31と金型32との間に配置される。これにより、金型31,32による圧下方向は、第1予備成形工程における圧下方向、及び荒地12の軸方向の双方と実質的に垂直な方向になる。
図8Bを参照して、金型31を下降させることにより、金型31,32で荒地12を圧下する。金型31,32による圧下が開始された後、偏心型41,42による偏心が行われる。例えば、ダイクッション51の設定により、金型31,32が荒地12に当接した後で、偏心型41,42を荒地12に当接させることができる。すなわち、金型31,32が荒地12の圧下を開始すると、各ダイクッション51の緩衝機能により、各偏心型41が金型31から突出し始め、また、各偏心型42が金型32から突出し始める。
このように、金型31,32による圧下を開始した後に偏心型41,42による偏心を開始することにより、荒地12を金型31,32で拘束した状態で偏心を実施することができる。そのため、偏心の実施中における荒地12の移動を抑制することができ、各偏心型41,42が荒地12の不適切な部位、すなわちピン相当部PA~PA4以外の部位を圧下するのを防止することができる。その結果、第2予備成形工程において欠肉等が発生するのを抑制することができる。また、金型31,32による圧下が開始される前に、偏心型42を支点、偏心型41を力点とする曲げモーメントが荒地12に発生することがなく、当該曲げモーメントに起因する荒地12の湾曲が生じない。よって、金型31,32により、荒地12のうちピン相当部PA~PA4以外の部位を実質的に均等に圧下することができる。偏心型41,42による偏心は、金型31,32による圧下を開始した後、金型31が下死点に到達するまでの間に開始されてもよいし、金型31が下死点に到達した後で開始されてもよい。
図8Cを参照して、各偏心型41が金型31から所定量突出することにより、荒地12のうち、第1ピン相当部PA1及び第4ピン相当部PA4の偏心が完了する。また、各偏心型42が金型32から所定量突出することにより、荒地12のうち、第2ピン相当部PA2及び第3ピン相当部PA3の偏心が完了する。第2予備成形工程では、ピン相当部PA1,PA4とピン相当部PA2,PA3とを、互いに反対方向に偏心させる。各偏心型41,42による偏心方向は、金型31,32による圧下方向と実質的に平行である。
例えば、第2予備成形工程におけるピン相当部PA1~PA4の偏心量は、それぞれピンP1~P4の仕上げ寸法の偏心量の60%以下である。また、例えば、第2予備成形工程におけるピン相当部PA1~PA4の偏心量は、それぞれピンP1~P4の仕上げ寸法の偏心量の20%以上である。第2予備成形工程におけるピン相当部PA1~PA4の偏心量は、それぞれピンP1~P4の仕上げ寸法の40%以下であることが好ましい。最も好ましくは、第2予備成形工程におけるピン相当部PA1~PA4の偏心量は、それぞれピンP1~P4の仕上げ寸法の実質40%である。
金型31,32による圧下及び偏心型41,42による偏心により、荒地12から荒地13が成形される。荒地13は、金型31,32から取り出され、続く第3予備成形工程に供される。
図9A及び図9Bは、それぞれ、図8AのIXA-IXA断面図及び図8CのIXB-IXB断面図である。図9A及び図9Bでは、荒地12又は荒地13のジャーナル相当部JAの横断面を示す。
図9Aを参照して、荒地12のジャーナル相当部JAは、第2予備成形工程の開始に際し、金型31に設けられたジャーナル加工部31a、及び金型32に設けられたジャーナル加工部32aに対応する位置に配置される。金型31のジャーナル加工部31aは、荒地12のジャーナル相当部JAを収容可能な凹状を有する。金型32のジャーナル加工部32aは、金型31のジャーナル加工部31aに対向し、ジャーナル加工部31aよりも浅い凹状を有する。ジャーナル加工部32aは、金型32に設けられた突出部の先端面に形成されている。ただし、本実施形態とは逆に、金型32のジャーナル加工部32aが横断面視で荒地12を収容可能な凹状を有し、金型31に、浅凹状のジャーナル加工部31aを有する突出部が形成されていてもよい。
図9Aに示すように、第2予備成形工程の開始時において、ジャーナル相当部JAは、横断面視でその長軸方向(楕円状の場合は長径方向)が金型31,32の圧下方向となるように、ジャーナル加工部31a,32aの間に配置されている。図9Bに示すように、第2予備成形工程では、金型31を金型32に向かって下降させることにより、ジャーナル加工部31a,32aでジャーナル相当部JAを圧下し、扁平状のジャーナル相当部JAの断面積を減少させる。
金型31が下降する過程で、金型31のジャーナル加工部31a内に金型32のジャーナル加工部32aが進入し、金型31のジャーナル加工部31aの開口が金型32のジャーナル加工部32aで塞がれて閉断面が形成される。これにより、第2予備成形工程において、ジャーナル相当部JAを圧下した際にバリが発生するのを抑制することができ、材料歩留りを向上させることができる。第2予備成形工程では、荒地12に含まれる全てのジャーナル相当部JAが同様に加工される。
図10A及び図10Bは、それぞれ、図8AのXA-XA断面図及び図8CのXB-XB断面図である。図10A及び図10Bでは、荒地12又は荒地13のうち、第4ピン相当部PA4の横断面を示す。
図10Aを参照して、荒地12の第4ピン相当部PA4は、第2予備成形工程に際し、偏心型41に設けられたピン加工部41b、及び金型32に設けられたピン加工部32bに対応する位置に配置される。偏心型41のピン加工部41b及び金型32のピン加工部32bは、それぞれ凹状を有し、互いに対向する。第2予備成形工程において、扁平状の第4ピン相当部PA4は、横断面視でその長軸方向(楕円状の場合は長径方向)が偏心型41による偏心方向となるように、偏心型41のピン加工部41bと金型32のピン加工部32bとの間に配置される。
図10A及び図10Bに示すように、金型31,32による圧下が開始された後、偏心型41による偏心が開始される。偏心型41は、第4ピン相当部PA4に向かって下降する。偏心型41の下降に伴い、第4ピン相当部PA4がピン加工部41bによって圧下され、下方に偏心する。第2予備成形工程において、荒地12の第1ピン相当部PA1は、対応する偏心型41により、第4ピン相当部PA4と同様に加工される。
第2予備成形工程において、荒地12の第2ピン相当部PA2及び第3ピン相当部PA3は、それぞれ対応する偏心型42により、第1ピン相当部PA1及び第4ピン相当部PA4と反対方向に偏心させられる。各偏心型42は、金型31,32による圧下が開始された後、第2ピン相当部PA2又は第3ピン相当部PA3に向かって上昇し、当該部位を上方に偏心させる。図示を省略するが、各偏心型42、及び金型31のうち当該偏心型42に対応する部分は、偏心型41及び金型32のピン加工部32b(図10A及び図10B)と上下反転した構成を有する。
図11A及び図11Bは、それぞれ、図8AのXIA-XIA断面図及び図8CのXIB-XIB断面図である。図11A及び図11Bでは、荒地12又は荒地13のウェブ相当部CAの横断面を示す。金型31,32によるウェブ相当部CAの圧下方向は、クランクウェブCwの長手方向と概略一致している。
図11A及び図11Bでは、荒地12又は荒地13に含まれる複数のウェブ相当部CAのうち、第7クランクウェブCw7に相当する部位(第7ウェブ相当部)CA7を例示する。図11Aを参照して、荒地12の第7ウェブ相当部CA7は、第2予備成形工程に際し、金型31,32の一方に設けられたウェブ加工部内に配置される。図11A及び図11Bに示す例では、下型である金型32にウェブ加工部32cが設けられている。
図11Aに示すように、ウェブ加工部32cは凹状を有する。ウェブ加工部32cは、カウンターウエイトW付きの第7アームA7に対応する形状に形成されている。ウェブ加工部32cは、第7アームA7に対応するアーム加工部321cと、カウンターウエイトWに対応するウエイト加工部322cとを有する。ウエイト加工部322cは、アーム加工部321cの上方に配置されている。金型32の横断面視で、ウエイト加工部322cの幅は、アーム加工部321cの幅よりも大きい。ウエイト加工部322cの幅は、ウェブ加工部32cの底面から遠ざかるにつれて大きくなる。例えば、ウエイト加工部322cの両側面は、上方に向かうにしたがって互いに離間する傾斜面である。アーム加工部321cの両側面は、金型31,32による圧下方向と実質的に平行である。ただし、アーム加工部321c及びウエイト加工部322cの形状は、本実施形態における例に限定されるものではない。ウェブ加工部32cの底面は、金型32の横断面視で、例えば円弧状を有する。ウェブ加工部32cの底面の高さは、例えば、偏心後の第4ピン相当部PA4(図10B)の下端の高さと実質的に等しい。
図11Aに示すように、第2予備成形工程では、ウェブ加工部32c内に荒地12の第7ウェブ相当部CA7を配置し、金型31を金型32に向かって下降させる。図11Bに示すように、金型31が下死点に到達したとき、金型31でウェブ加工部32cが閉じられて空間Sが形成される。この空間S内には、第7ウェブ相当部CA7に隣接するジャーナル相当部JA及び第4ピン相当部PA4の断面積が減少することに伴い、ジャーナル相当部JA及び第4ピン相当部PA4から材料が流入する。ただし、第2予備成形工程の間、第7ウェブ相当部CA7は、第1予備成形工程での金型21,22の圧下方向における第7アームに相当する部位の長さ(幅)Baaが、カウンターウエイトWに相当する部位の長さ(幅)Bwaよりも短い状態に維持されるように、金型31,32に支持される。
具体的には、空間S内では、主として幅広のウエイト加工部322c側に材料が流動する。一方、幅狭のアーム加工部321c側にも若干の材料が流動し、アーム加工部321c内に材料が充填される。これにより、第7ウェブ相当部CA7では、カウンターウエイトWに相当する部位の体積が大きく、第7アームA7に相当する部位の体積が小さくなるような材料の体積配分が進行する。図11Bに示すように、第2予備成形工程後も、第7アームA7に相当する部位の幅Baaは、カウンターウエイトWに相当する部位の幅Bwaよりも短いままである。
荒地12のうち、クランクウェブCw1,CW2,Cw8に相当する部位は、第7ウェブ相当部CA7と同様に加工される。荒地12のうち、クランクウェブCw3~Cw6に相当する部位には、第7ウェブ相当部CA7と上下反転した加工が施される。
(第3予備成形工程)
図12A~図12Cは、第3予備成形工程を説明するための模式図である。図13A及び図13Bは、それぞれ、図12A及び図12Bを水平面で切断したときの断面を模式的に示す図である。図12A~図12Cに示すように、第3予備成形工程では、金型60を用い、第2予備成形工程で得られた荒地13のうち、各ウェブ相当部CAを荒地13の軸方向から圧下することにより、当該部位の厚みを減少させる。また、第3予備成形工程では、金型60を用い、荒地13の各ピン相当部PAを、水平方向であって荒地13の軸方向と実質的に垂直な方向に偏心させる。
金型60は、プレス装置に取り付けることができる。図14及び図15は、金型60が取り付けられるプレス装置80の例を示す模式図である。図14は、荒地13の中心軸を含む鉛直平面でプレス装置80を切断したときの断面図(縦断面図)であり、図15は、荒地13の中心軸に垂直な平面でプレス装置80を切断したときの断面図(横断面図)である。まず、図14及び図15を参照して、第3予備成形工程で用いられるプレス装置80の構成を説明する。
図14に示すように、プレス装置80は、プレート81と、ボルスタベース82と、ダイクッションシリンダ83と、ダイクッションベース84と、油圧シリンダ85と、楔86とを備える。プレート81は、上側プレート811と、下側プレート812とを含む。ボルスタベース82は、上側ボルスタベース821と、下側ボルスタベース822とを含む。
上側プレート811は、上側ボルスタベース821を支持している。ダイクッションベース84は、ダイクッションシリンダ83を介し、上側ボルスタベース821に支持されている。上側プレート811は、ラム(図示略)の作動に伴って上下動する。上側プレート811の上下動に伴い、上側ボルスタベース821及びダイクッションベース84が上下動する。下側ボルスタベース822は、下側プレート812上に配置されている。
金型60は、上型61と、下型62とを含む。上型61は、ダイクッションベース84によって支持されている。上型61は、ダイクッションベース84の上下動に伴い、上下方向に移動する。下型62は、下側ボルスタベース822上に配置されている。
上型61は、保持型611と、複数の偏心型612とを含む。下型62は、保持型621と、複数の偏心型622とを含む。
保持型611,621は、主として、荒地13のうちジャーナルJに相当する部位を保持するために用いられる。保持型611は、固定保持型611aと、2つの可動保持型611bと、フロント側保持型611cと、フランジ側保持型611dとを含む。荒地13の軸方向において、固定保持型611aと一方の可動保持型611bとの間、及び固定保持型611aと他方の可動保持型611bとの間には、それぞれ偏心型612が配置されている。また、一方の可動保持型611bとフロント側保持型611cとの間、及び他方の可動保持型611bとフランジ側保持型611dとの間にも、それぞれ偏心型612が配置されている。固定保持型611aは、荒地13の軸方向に移動不能となっている。可動保持型611b、フロント側保持型611c、フランジ側保持型611d、及び偏心型612は、荒地13の軸方向に移動可能である。
保持型621は、固定保持型621aと、2つの可動保持型621bと、フロント側保持型621cと、フランジ側保持型621dとを含む。固定保持型621a、可動保持型621b、フロント側保持型621c、及びフランジ側保持型621dは、それぞれ、上型61側の固定保持型611a、可動保持型611b、フロント側保持型611c、及びフランジ側保持型611dに対向して設けられている。また、上型61側の偏心型612のそれぞれに対向して、偏心型622が設けられている。固定保持型621aは、荒地13の軸方向に移動不能となっている。可動保持型621b、フロント側保持型621c、フランジ側保持型621d、及び偏心型622は、荒地13の軸方向に移動可能である。
荒地13の軸方向において金型60の両側には、油圧シリンダ85が設けられている。各油圧シリンダ85は、荒地13の軸方向に伸縮可能となっている。この油圧シリンダ85が伸長することにより、可動保持型611b,621b、フロント側保持型611c,621c、フランジ側保持型611d,621d、及び偏心型612,622がそれぞれ移動し、固定保持型611a,621aに接近する。
楔86は、水平方向であって荒地13の軸方向と垂直な方向に偏心型612,622を移動させるために用いられる。楔86は、水平方向であって荒地13の軸方向と垂直な方向において、荒地13の両側に設けられる。図15に示すように、楔86の各々は、プレス装置80において、上側ボルスタベース821に支持されている。ただし、楔86は、ダイクッションベース84を貫通するように設けられている。そのため、楔86は、ダイクッションベース84とは独立して移動する。すなわち、ダイクッションベース84を支持するダイクッションシリンダ83の伸縮により、ダイクッションベース84に対して相対的に楔86を上下動させることができる。各楔86は、傾斜面861を有する。
偏心型612,622の一端部は、それぞれ、楔受け部材871,872に接触している。楔受け部材871,872は、楔86の傾斜面861に対応して、それぞれ傾斜面871a,872aを有する。傾斜面871a,872aは、楔受け部材871,872において偏心型612,622と反対側の表面に設けられている。楔86の傾斜面861が楔受け部材871,872の傾斜面871a,872a上を摺動することにより、楔受け部材871,872及び各偏心型612,622が偏心方向に沿って移動する。
図12A~図12Cに戻り、このように構成された金型60及びプレス装置80を用いて行われる第3予備成形工程について説明する。図12A~図12Cでは、プレス装置80の構成部品又は関連部品を鉛直平面に沿って切断した断面で示す。図12A~図12Cでは、プレス装置80の構成部品の一部を省略している。
図12Aを参照して、第3予備成形工程を開始する際には、ダイクッションベース84とともに上型61を上昇させ、下型62から離間させた状態で、第2予備成形工程で得られた荒地13を上型61と下型62との間に配置する。荒地13は、下型62上に載置される。この段階では、固定保持型611a,621a、可動保持型611b,621b、フロント側保持型611c,621c、フランジ側保持型611d,621d、及び偏心型612,622は、荒地13の軸方向に互いに間隔を空けて配置されている。
次に、ダイクッションベース84とともに上型61を下降させ、保持型611,621により、荒地13のうちジャーナルJに相当する各部位を鉛直方向から挟んで保持する。図12Bに示すように、荒地13のうち、第3ジャーナルJ3に相当する部位(第3ジャーナル相当部)JA3は、固定保持型611a,621aによって保持される。荒地13のうち、第2ジャーナルJ2に相当する部位(第2ジャーナル相当部)JA2は、一方の可動保持型611b,621bによって保持される。荒地13のうち、第4ジャーナルJ4に相当する部位(第4ジャーナル相当部)JA4は、他方の可動保持型611b,621bによって保持される。荒地13のうち、第1ジャーナルJ1に相当する部位(第1ジャーナル相当部)JA1は、フロント側保持型611c,621cによって保持される。荒地13のうち、第5ジャーナルJ5に相当する部位(第5ジャーナル相当部)JA5は、フランジ側保持型611d,621dによって保持される。
この状態で、図12Cに示すように、荒地13の各ウェブ相当部CAを軸方向から圧下する。すなわち、各油圧シリンダ85(図14)を駆動して伸長させることにより、フロント側保持型611c,621cと、フランジ側保持型611d,621dとが互いに接近するように、これらを荒地13の軸方向に移動させる。フロント側保持型611c,621c及びフランジ側保持型611d,621dの移動に伴い、可動保持型611b,621b及び偏心型612,622も荒地13の軸方向に移動する。フロント側保持型611c,621c、フランジ側保持型611d,621d、可動保持型611b,621b、及び偏心型612,622は、隣接する型同士が互いに当接するまで移動する。これにより、荒地13のうち、各ウェブ相当部CAの厚みが減少する。各ウェブ相当部CAの厚みは、例えば、クランクウェブCwの仕上げ寸法の厚みまで小さくなる。
また、図13A及び図13Bに示すように、保持型611,621によって荒地13のジャーナル相当部JA1~JA4が保持された状態で、ピン相当部PA1~PA4の偏心が行われる。図13A及び図13Bでは、プレス装置80の構成部品又は関連部品を金型60の型割面に沿って切断した断面で示す。図13A及び図13Bでは、プレス装置80の構成部品の一部を省略している。
荒地13のジャーナル相当部JA1~JA4を保持型611,621が保持した状態で、上側プレート811を下降させることにより、ダイクッションシリンダ83が縮み、ダイクッションベース84に対して楔86が下降する(図15)。これに伴い、図13A及び図13Bに示すように、下型62側の楔受け部材872が対応するピン相当部PA1~PA4の偏心方向に移動する。上型61側の楔受け部材871も、対応するピン相当部PA1~PA4の偏心方向に移動する。このときの偏心方向は、保持型611,621による荒地13の保持方向、及び荒地13の軸方向の双方と実質的に垂直な方向である。
楔受け部材871,872の移動に伴い、偏心型612,622が偏心方向に移動する。偏心型612,622の各々は、荒地13のうち、対応するピン相当部PA1~PA4のを水平方向に偏心させる。第3予備成形工程において、荒地13のうち、第1ピン相当部PA1及び第4ピン相当部PA4は、第2ピン相当部PA2及び第3ピン相当部PA3と反対方向に偏心する。
偏心型612,622による偏心の完了時点で、各ピン相当部PA1~PA4の偏心量は、少なくともピンPの仕上げ寸法の偏心量の60%であることが好ましい。最も好ましくは、偏心の完了時点で、各ピン相当部PA1~PA4の偏心量がピンPの仕上げ寸法の偏心量の100%である。偏心型612,622による偏心は、保持型611,621及び偏心型612,622による軸方向の圧下が完了するよりも前に完了してもよいし、軸方向の圧下が完了した後に完了してもよい。
第3予備成形工程では、荒地13のうち、ウェブ相当部CAの圧下も行われる。図16A及び図16Bは、ウェブ相当部CAの横断面図であり、それぞれ第3予備成形工程での成形前後の断面形状を示す。
図16Aに示すように、金型60のうちウェブ相当部CAに対向する部分には、クランクウェブCwの仕上げ形状に相当する形状が型彫りされている。例えば、上型61のうちウェブ相当部CAに対向する部分は、アーム加工部613と、ウエイト加工部614とを有している。下型62のうちウェブ相当部CAに対向する部分は、アーム加工部623と、ウエイト加工部624とを有している。
アーム加工部613,623は、ウェブ相当部CAのうち、アームAに相当する部位を加工する部分である。ウエイト加工部614,624は、ウェブ相当部CAのうち、カウンターウエイトWに相当する部位を加工する部分である。アーム加工部613,623及びウエイト加工部614,624は、それぞれ凹状を有している。ただし、アーム加工部613,623よりもウエイト加工部614,624の方が若干深い。アーム加工部613,623とウエイト加工部614,624との境界には、クランクウェブCwの括れ部に対応して、荒地13側に突出する部分が形成されている。
図16A及び図16Bに示すように、第3予備成形工程において、ウェブ相当部CAは、アーム加工部613,623及びウエイト加工部614,624によって成形される。ウェブ相当部CAは、アーム加工部613,623及びウエイト加工部614,624でその外周を拘束されながら、例えば、クランクウェブCwの仕上げ形状に相当する形状に成形される。クランクウェブCwの仕上げ形状に相当する形状とは、クランクウェブCwの仕上げ形状と同一又は類似の形状である。
金型60による加工により、荒地13から荒地14が成形される。第3予備成形工程の完了後、荒地14が金型60から取り出される。荒地14は、型鍛造工程に供される。すなわち、荒地14に対して荒打ち及び仕上げ打ちを行ってバリ付きの鍛造材を得る。続いて、この鍛造材に対してバリ抜き工程を実施する。その後、必要に応じて整形工程を実施することで、最終製品としてのクランク軸10(図1)が製造される。
[効果]
図17は、4気筒エンジンや8気筒エンジン等に搭載されるクランク軸の粗鍛造材又は仕上げ鍛造材20を模式的に示す図である。図17に示すように、型鍛造工程で得られる鍛造材20において、クランクウェブCwの長手方向の体積配分は、アームA側の体積が少なく、カウンターウエイトW側の体積が多いものとなっている。すなわち、鍛造材20のクランクウェブCwでは、アームAの幅が大きく、カウンターウエイトWの幅が小さい。鍛造材20のクランクウェブCwは、最終的なクランク軸10におけるクランクウェブCwの仕上げ形状と概略合致した形状を有する。
本実施形態に係る製造方法では、このような鍛造材20におけるクランクウェブCwの長手方向の体積配分を考慮し、型鍛造工程の前工程である予備成形工程を実施する。すなわち、出発素材としてのビレット11から荒地12を得る第1予備成形工程において、ビレット11のうちクランクウェブCwに相当する各部位を圧下する。ビレット11のうちクランクウェブCwに相当する各部位(ウェブ相当部)CAは、金型21,22の圧下方向における長さがアームAに相当する部位(アーム相当部)AAで小さく、カウンターウエイトWに相当する部位(ウエイト相当部)WAで大きくなるように圧下される。すなわち、第1予備成形工程の段階で、ビレット11の各ウェブ相当部CAにおいて、鍛造材20のクランクウェブCwに合わせた体積配分が行われる。
さらに、第1予備成形工程では、ビレット11のうち、ジャーナルJに相当する部位(ジャーナル相当部)JA及びピンPに相当する部位(ピン相当部)PAが金型21,22によって圧下され、当該部位が扁平状に成形される。これにより、ジャーナル相当部JA及びピン相当部PAからウェブ相当部CAへと余剰材料が流入する。よって、ジャーナル相当部JA、ピン相当部PA、及びウェブ相当部CAの間で軸方向の体積配分も行われる。
第1予備成形工程に続く第2予備成形工程では、一対の金型31,32により、第1予備成形工程で得られた荒地12のうち、各ジャーナル相当部JAが圧下される。また、偏心型41,42により、荒地12の各ピン相当部PAが偏心させられる。第2予備成形工程では、各ウェブ相当部CAについて、第1予備成形工程で行った体積配分が維持される。すなわち、第2予備成形工程の完了後も、荒地13のうちウェブ相当部CAにおいて、アーム相当部AAの幅Baaがウエイト相当部WAの幅Bwaよりも短い状態に維持される。
第2予備成形工程では、各ジャーナル相当部JAの圧下、及び各ピン相当部PAの偏心に伴い、ジャーナル相当部JA及びピン相当部PAから各ウェブ相当部CAへと余剰材料が流入する。そのため、ジャーナル相当部JA、ピン相当部PA、及びウェブ相当部CAの間における軸方向の体積配分を進行させることができる。
このように、本実施形態に係る製造方法によれば、予備成形工程の段階で、素材の軸方向の体積配分だけでなく、クランクウェブCwの長手方向の体積配分も実施される。よって、予備成形工程においてより精密な体積配分を実現することができる。
第2予備成形工程で使用される金型31,32のうち、下型である金型32は、荒地12のウェブ相当部CAを収容するウェブ加工部32cを有している。ウェブ加工部32cは、アーム加工部321cと、アーム加工部321cと比較して幅広のウエイト加工部322cとを含んでいる。ウェブ加工部32cではウエイト加工部322c側に比較的広い空間が存在するため、ジャーナル相当部JA及びピン相当部PAからウェブ加工部32cに流入した材料は、主としてウエイト加工部322c側に流動する。これにより、第2予備成形工程で成形される荒地13のうち、ウェブ相当部CAにおいて、ウエイト相当部WAの体積をさらに増加させることができる。よって、ウェブ相当部CAにおいて、ウエイト相当部WAをアーム相当部AAよりも外側に張り出させることができる。その結果、型鍛造工程においてカウンターウエイトWの欠肉が生じるのを抑制することができる。また、各ウェブ相当部CAの形状を鍛造材20のクランクウェブCwの形状に近づけることができる。
第2予備成形工程では、金型31,32による圧下方向と実質的に平行な方向において、ピン相当部PAが隣接するウェブ相当部CAよりも外側に突出しないよう、各ピン相当部PAの偏心量が制限されることが好ましい。例えば、各ピン相当部PAの偏心量は、最終的なクランク軸10におけるピンPの仕上げ寸法の偏心量の40%以下に制限される。これにより、第2予備成形工程において、ピン相当部PAから、ウェブ相当部CAが配置されるウェブ加工部32c内に材料が流入しやすくなる。よって、第2予備成形工程において、ウェブ相当部CAに材料をより配分することができ、ウェブ相当部CAの形状を整えやすくなる。例えば、ピン相当部PAからウェブ加工部32c内に流入する材料が増加すると、幅広のウエイト加工部322cに向かって流動する材料の量も多くなるため、ウエイト相当部WAの張り出しをより促進することができる。よって、各ウェブ相当部CAの形状を鍛造材20のクランクウェブCwの形状により近づけることができる。
本実施形態に係る製造方法では、第1予備成形工程及び第2予備成形工程において材料の体積配分が精密に実施されている。そのため、第3予備成形工程において、保持型611,621の型割面の間への材料の噛み出しを抑制しつつ、ウェブ相当部CAの外周を拘束して成形を行うことができる。
第3予備成形工程では、金型60によってウェブ相当部CAの外周を拘束し、このウェブ相当部CAをクランクウェブCwの仕上げ形状に相当する形状に形成することができる。例えば、第3予備成形工程において、カウンターウエイトWの仕上げ形状を反映させた上型61及び下型62により、ウェブ相当部CAを成形することができる。また、例えば、図17に示す鍛造材20は、アームAと、このアームAと一体のカウンターウエイトWとの境界に括れ部を有する。第3予備成形工程では、この括れ部の形状を上型61及び下型62に反映させて、ウェブ相当部CAを成形することができる。あるいは、鍛造材20においてクランクウェブCwのピンP側の表面に肉抜き部が存在する場合、第3予備成形工程では、この肉抜き部の形状を上型61及び下型62に反映させて、ウェブ相当部CAを成形することもできる。よって、各ウェブ相当部CAの形状を鍛造材20のクランクウェブCwの形状にさらに近づけることができる。
各ウェブ相当部CAの形状を鍛造材20のクランクウェブCwの形状に近づけることにより、型鍛造工程において型鍛造用の金型に荒地14を配置したとき、荒地14の姿勢が安定する。これにより、荒地14を安定して型鍛造することができ、鍛造材20における疵の発生を抑制することができる。
また、各ウェブ相当部CAの形状をクランクウェブCwの形状に予め近づけておくことで、型鍛造工程において発生するバリの量を低減することができ、材料歩留りを向上させることができる。さらに、各ウェブ相当部CAの形状をクランクウェブCwの形状に近づけることにより、型鍛造工程における成形精度も向上する。
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態では、第2予備成形工程において、偏心型41,42を金型31,32と独立して昇降させるため、ダイクッション51で制御する例について説明した。しかしながら、ダイクッション51以外の制御機構を利用することもできる。例えば、偏心型41,42は、油圧シリンダによって金型31,32と独立して昇降させられてもよい。
上記実施形態では、第3予備成形工程において、各ピン相当部PAの偏心を行う例について説明した。ただし、第3予備成形工程では、必ずしも各ピン相当部PAの偏心を行う必要はない。例えば、第3予備成形工程を開始する前の時点で各ピン相当部PAの偏心量がピンPの仕上げ寸法の偏心量の60%に到達している場合、第3予備成形工程におけるピン相当部PAの偏心を省略することができる。また、複数のピン相当部PAのうち、一部のピン相当部PAの偏心のみを第3予備成形工程で実施することもできる。
上記実施形態では、4気筒エンジンに搭載されるクランク軸10を製造する方法について説明した。上記実施形態において製造されるクランク軸10は、4気筒-8枚カウンターウエイトのクランク軸である。すなわち、上記実施形態では、クランク軸10に含まれるアームAのうち、全てのアームAにカウンターウエイトWが一体で設けられている。しかしながら、クランク軸10に含まれるアームAのうち、一部のアームAにのみカウンターウエイトWを一体で設けることもできる。
例えば、第1~第3予備成形工程で使用する各金型の形状をすることにより、図18に示す4気筒-4枚カウンターウエイトのクランク軸10Aを製造することができる。クランク軸10Aでは、第1アームA1、第4アームA4、第5アームA5、及び第8アームA8にカウンターウエイトWが一体で設けられている一方、第2アームA2、第3アームA3、第6アームA6、及び第7アームA7にはカウンターウエイトWが設けられていない。このクランク軸10Aを製造する場合に使用される各金型の例を図19~図21に示す。
図19は、クランク軸10Aの製造に際し、第1予備成形工程で用いる金型21A,22Aを例示する図である。金型21A,22Aは、上記実施形態における金型21,22と同様、ビレット11のうち、カウンターウエイトW付きの第1アームA1、第4アームA4、第5アームA5、及び第8アームA8に相当する部位を、アームA側の幅LaがカウンターウエイトW側の幅Lwよりも短くなるように圧下する(図7A及び図7B)。一方、ビレット11のうち、カウンターウエイトWのない第2アームA2、第3アームA3、第6アームA6、及び第7アームA7に相当する部位について、金型21A,22Aは、ジャーナル相当部JAと同様の加工を行う(図5A及び図5B)。
図20は、クランク軸10Aの製造に際し、第2予備成形工程で用いる金型31A,32Aを例示する図である。金型21A,22Aは、上記実施形態における金型31,32と同様、第1予備成形工程で得られた荒地12のうち、カウンターウエイトW付きの第1アームA1、第4アームA4、第5アームA5、及び第8アームA8に相当する部位を、アームA側の幅がカウンターウエイトW側の幅よりも短い状態を維持するように支持する。すなわち、カウンターウエイトW付きの第1アームA1、第4アームA4、第5アームA5、及び第8アームA8では、第2予備成形工程後も、アームA側の幅BaaがカウンターウエイトW側の幅Bwaよりも短い状態が保たれる(図11A及び図11B)。一方、荒地12のうち、カウンターウエイトWのない第2アームA2、第3アームA3、第6アームA6、及び第7アームA7に相当する部位については、金型31A,32Aにより、ジャーナル相当部JAと同様の加工が行われる(図9A及び図9B)。あるいは、第2アームA2、第3アームA3、第6アームA6、及び第7アームA7に相当する部位は、金型31A,32Aで圧下されなくてもよい。
図21は、クランク軸10Aの製造に際し、第3予備成形工程で用いる金型60Aを例示する図である。金型60Aは、上型61Aと、下型62Aとを含んでいる。上型61A及び下型62Aは、上記実施形態における上型61及び下型62と同様、第2予備成形工程で得られた荒地13のうち、カウンターウエイトW付きの第1アームA1、第4アームA4、第5アームA5、及び第8アームA8に相当する部位の外周を拘束しながら、クランクウェブCwの仕上げ形状に相当する形状に成形することができる。すなわち、上型61A及び下型62Aは、それぞれ、上型61及び下型62と同様のアーム加工部613,623及びウエイト加工部614,624を有することができる(図16A及び図16B)。
一方、上型61A及び下型62Aは、荒地13のうち、カウンターウエイトWのない第2アームA2、第3アームA3、第6アームA6、及び第7アームA7に相当する部位を実質的に圧下しない。言い換えると、荒地13のうち、第2アームA2、第3アームA3、第6アームA6、及び第7アームA7に相当する各部位の外周は、第3予備成形工程の間、上型61A及び下型62Aによって拘束されない。
このように、本開示に係る製造方法は、カウンターウエイトWを有するアームAの数にかかわらず、様々なクランク軸に適用することができる。例えば、8気筒エンジンに搭載されるクランク軸等にも、本開示に係る製造方法を適用することができる。