[第1実施形態]
本発明のいくつかの実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態としての車線変更支援システム10の概略構成を示す概略構成図である。
図1に示すように、この車線変更支援システム10は、経路探索に必要なデータを記憶すると共に経路探索などの処理を行なうサーバ20と、このサーバ20とデータやり取りしつつ各種案内を運転者に対して提示して運転を支援する機能を備えた車両40とを備える。
サーバ20と車両40とは、ネットワークNWと接続されており、すくなとも車両40は無線によりネットワークNWと接続することができる。サーバ20とネットワークNWとの接続は、有線でも無線でも良い。
サーバ20は、CPUにより実現されるサーバ制御部21、ネットワークNWとの間でデータのやり取りを行なうための通信部22、各種データを記憶する記憶部30を備える。サーバ制御部21は、道路やレーンの探索を行なう経路探索手段24を備える。経路探索手段24は、走行経路決定部や車線決定部に相当し、サーバ制御部21が、所定のプログラムを実行することにより実現される。経路探索手段24が道路やレーンの経路探索を行なう場合に必要となる各種データは、記憶部30に記憶されている。この記憶部30は、道路ネットワーク情報記憶部、車線変更制限レベル記憶部、地物情報記憶部など、各情報の記憶部として機能し、少なくとも、道路ネットワーク(NW)データ31、レーンNWデータ32、レーンNW属性データ35、車線変更可否レベルデータ(図1では、「車線変更データ」と略記した)36、地物の情報である地物データ37、推奨レベルデータ39を記憶している。このうち、道路NWデータは、道路地図データに対応しており、経路探索に用いられる道路ネットワーク情報に相当する。道路NWデータ31は、実際の道路の形状や交差点などによる道路の結合等に基づくだけでなく、探索のための論理的な結合関係を反映しているので、以下「論理NWデータ31」と呼び、図示もこれに倣う。こうした各種データの内容については、図2,図3を用いて後で詳しく説明する。
このサーバ20とデータのやり取りを行なう車両40は、運転情報装置50を備える。運転情報装置50は、車両40の運転には直接関わらず、運転者に必要な情報の提示、例えばナビゲーションの音声通知などを行なう。この運転情報装置50は、CPUにより実現されるナビ制御部60の他、ナビ制御部60に接続された以下の装置、即ち、ネットワークNWとの間でデータをやり取りする通信部52、ユーザからの指示を受け付ける入力部53、経路案内を音声や画面表示などの各種形式で出力する出力部54、データなどを一時的に記憶する一時記憶部55、GNSSなどにより車両の位置を取得する位置取得部
56、車両周辺の画像を取得する車載カメラである画像取得部70、等を備える。
ナビ制御部60は、その内部に、位置取得部56からのGNSSデータや画像取得部70が取得した画像等から車両40の位置を特定する位置特定手段61、出力部54を用いて経路案内を行なう経路案内手段62、車線変更の推奨箇所を特定する車線変更推奨箇所抽出手段63を備える。これらの各手段61~63は、ナビ制御部60のCPUが所定のプログラムを実行することにより、実現される。プログラムは、図示しないROMやハードディスクなど記憶媒体に記憶されており、必要なタイミングでナビ制御部60により実行される。
出力部54は、提示部に相当し、カラー液晶表示装置とスピーカとを含む。カラー液晶表示装置の表示パネルには、タッチパネルが組み込まれており、このタッチパネルは入力部53の一部を構成する。ナビ制御部60は、出力部54の表示パネルに、ユーザからの指示を受け付けるためのボタンなどを表示し、このボタンの表示領域に対応したタッチパネルの部位が操作されることにより、ボタンが押されたものとして認識する。こうして必要なタイミングで、ユーザによる指示が入力される。なお、入力部としては、音声認識などを用いて指示を直接入力する構成などを採用することも可能である。また出力部54も、音声合成装置などにより構成することができる。カラー液晶表示装置などの表示パネルは、ナビの画像等をフロントガラスに反射させて、運転者(ユーザ)に視認させるといった構成とすることも差し支えない。ナビ制御部60に備えられた位置特定手段61,経路案内手段62,車線変更推奨箇所抽出手段63などの具体的な構成とその働きについては、後で詳しく説明する。
実際の道路に対応した論理NWデータ31の構造とレーンNWデータ32の構造とレーンNW属性データ35の構造および対応関係について説明する。図2は、論理ネットワーク(NW)データとレーン(車線)NWデータとの関係を説明する模式図、図3は、車線変更経路探索の一例を示す説明図、図4は、記憶部に記憶されるデータ構造の一例を示す説明図である。図2に示すように、実際の道路(実道路)に対しては、経路探索用に論理NWデータが予め用意されている。この論理NWデータは、経路探索の対象となる地域に存在する実際の道路の接続関係に対応付けられた論理的なデータである。このデータは、
出発地(多くは現在地)から目的地までの道路の経路探索に用いられる。経路探索する場合、実際の道路の接続関係を、道路に対応付けられたリンクと、リンク同士の結節点に相当するノードとを含んだ論理データとしておくことが、探索処理上は望ましい。ノードは、一般には交差点などに対応付けられているが、経路探索の条件が異なる場所、例えばトンネルの入り口・出口などにも設けられる。リンクは、こうしたノード間をつなぐデータである。本実施形態では、経路探索に用いられる論理NWデータは、このリンクについてのデータであるリンクデータの集合として用意されている。
論理NWデータを構成する各リンクのデータ(リンクデータ)は、ユニークなリンクIDを用いて管理されている。リンクデータの一例を、図4の左端に示した。後述するレーンNWデータ32などは、全てこのリンクIDにひも付けて管理されている。もとより論理NWデータの構造は図4に例示したものに限らず、経路探索と他のデータの検索とが可能であれば、どのような形式であっても差し支えない。例えばノードデータの集合として構築しても良い。
こうした論理NWデータ31と車線の情報であるレーンNWデータ32とは、識別子IDにより対応付けられている。実道路が、図2に示したように、両側合せて3車線あれば、レーンNWデータも、3つのレーンが並行に配置されたデータとして用意しても良い。レーンNWデータ32も、ノード間を接続するリンクデータとして管理されている。レーンNWデータにおけるリンクの端部(ノードの置かれた位置)は、図2に例示したように、横断歩道、停止線など、実際の車両の走行に直接影響を与える点に置かれていてもよい。交差点については、横断歩道から交差点を通過した位置の直近のノード、例えば通過位置にある横断歩道までを一つのリンクとしている。従って、全ての道路に横断歩道がある四叉路交差点であれば、左側車線からの左折、左側車線からの直進、右側車線からの直進、右側車線からの右折の4つのレーンのレーンNWデータが存在することになる。
経路探索手段24による経路探索は、まず論理NWデータ31を用いて、出発地から目的地までの経路を探索することにより行なわれる。その上で、探索された経路に沿って、レーン単位で行なわれる。但し、1つの道路に複数のレーンがある場合でも、目的地までの経路探索は、どのレーンを走行するかまで指定して行なわれるのではない。目的地までの経路探索は、論理NWデータに基づいて道路単位で行なわれる。その上で、経路案内時において例えば次の交差点を右折する場合などには、走行する車線を、右折が可能なレーンに車線変更しておくように案内するのである。
図3は、こうした車線変更のナビゲーションの手法を模式的に示す。図3では、高速道路RDからの出口EXが道路の右側に設けられている例を示す。車両40が走行車線DLを走行していると仮定して、分岐の手前において、追越車線OLを経た出口用車線ELへの変更をナビゲーションする場合を想定している。こうした分岐、あるいは交差点などの手前の一定の範囲において、レーンNWデータ32を用いた経路探索が行なわれる。レーンNWデータ32は、図3に示したように、分岐などの手前の一定範囲において、仮想的に、各車線をいくつかの部分に分けた状態で記憶されている。例えば走行車線DLであれば、レーン1000ないしレーン1004が、追越車線OLであれば、レーン2001ないし2004が、更に出口用車線ELであれば、レーン3001ないし3004が、それぞれ存在する。その上で、これらの各レーン間に、隣接する車線への変更経路が存在するとみなして、どの経路で車線を変更することが望ましいか、案内するのである。
図3に示した例では、走行車線DLの各レーン1000ないし1004と追越車線OLの各レーン2000ないし2004の間の経路には、50ないし100のコストが付与される。また追越車線OLの各レーン2001ないし2004と出口用車線ELの各レーン3001ないし3004の間の経路には、60ないし100のコストが付与される。この例では、コストが低いほど、望ましい車線変更の経路であることを示している。従って、車両40がこの区域に差し掛かると、レーンNWデータに基づいて、車線変更を案内するための仮想的な経路に沿って、出口EXより手前側で車線変更するように、経路案内手段62が、案内するのである。こうした車線変更の案内については、後で再度詳しく説明する。
出口が存在する場合と同様に、各車線において、幅員減少や、右折・左折専用とされている車線変更規制レーンなど、車線に関する属性の設定が変更される地点があれば、その設定の開始点までのデータと、開始点からのデータとが作られ、これらのデータからレーンNWデータが構成される。車線に対応するレーンNWデータ32は、ユニークなレーンNWIDにより管理されている。各レーンNWデータは、図4に示したように、レーンNWIDを用いて論理NWデータ31を構成するリンクデータにひも付けられている。
更に、このレーンNWIDで管理されているレーンNWデータ32には、レーンNW属性データ35が対応付けられている。図4に例示したように、レーンNW属性データ35は、ユニークなレーンNW属性IDを用いて管理されている。レーンNW属性データ35には、そのレーンの両隣のレーンを特定すると言った場合に用いられるレーンNW属性ID、あるいは車線変更の可否レベルの情報などが含まれる。
車線変更可否レベルを示す車線変更データ36は、車線変更の可否を示すデータである。車線変更可否レベルデータ36は、車線変更の制限の理由が異なる複数の制限レベルのうちの少なくとも一つが設定可能である。この実施形態では、車線変更の制限の理由として、物理的な障害の有無と、法的な規制の有無とを区別しており、以下に示すレベル1からレベル5までの5段階の制限レベルの中から一つが選択されて設定されている。
レベル1:物理的な障害、例えば壁やフェンス、ガードレール、デリニエータなどがあり、車線変更(乗り換え)が物理的に不可であることを示す。
レベル2:物理的な障害、例えばロードコーンやポールコーン、キャッツアイなどの物理的な障害があるものの、緊急時などに必要があれば車線変更(乗り換え)が可であることを示す。
レベル3:物理的な障害はないものの、法的な規制、例えば直進専用とされている車線変更規制レーンであるとか、黄色実線が引かれ、はみ出し走行が禁止されているなどの理由から、車線変更(乗り換え)が不可であることを示す。
レベル4:物理的な障害や法的な規制がなく、車線変更(乗り換え)が可であるが、その区間での車線変更を推奨しないことを示す。例えば、交通量が非常に多い区間やほぼ常時渋滞が発生している区間、合流の手前の所定区間における合流側の車線への車線変更などが、レベル4に設定される。
レベル5:物理的な障害や法的な規制がなく、車線変更(乗り換え)が可であり、その区間での車線変更を推奨することを示す。
こうした制限レベルは、車線変更の制限の理由が異なる複数の制限レベルを含んでいればよく、物理的理由、法的理由以外の理由、例えば過去の事故データの解析から得られた車線変更に伴う事故の発生確率の高低などの理由による制限レベルなどを含んでも良い。また、物理的な理由による制限レベルなども「有無」の2つのレベルに限らず、物理的に乗り換え不可、ポールコーンのように車両に損傷の発生確率が一定以上の乗り換え可、キャッツアイのように車両に損傷の発生確率の低い乗り換え可、など3以上のレベルに分けても良い。各理由を、更に細かく分けることも可能である。
以上説明した論理NWデータ31,レーンNWデータ32,レーンNW属性データ35,地物データ37,車線変更可否レベルデータ36などを、実道路に即して準備し、サーバ20の記憶部30に格納する。このサーバ20との間で情報をやり取りすることにより、車両40の運転情報装置50は、以下に説明する車線変更案内を実現する。なお、上記の各種データの持ち方は一例であり、全てのデータを車両40の側に持っても良いし、一部を車両40側に持っても良い。また1つのサーバに集約する必要はなく、複数のサーバに分散して記憶しても良い。後述する経路探索なども、車両40の側で、一部または全部を行なっても良い。経路探索なども含めて1つの車線変更支援装置として実現しても良い。
[車線変更案内処理]
次に、上記のシステム構成において行なわれる車線変更案内処理について説明する。図5は、車線変更支援システム10が行なう車線変更案内処理ルーチンを示すフローチャートである。この処理は、実際には、車両40の運転情報装置50とサーバ20とが、ネットワークNWを介して必要な情報をやり取りすることで実現される。運転情報装置50とサーバ20では、別々のプログラムが動作しているが、説明の便宜上、両者を合せた処理として示した。
車線変更案内処理ルーチンが開始されると、まず目的地の入力処理が行なわれる(ステップS110)。この処理は、実際には、運転情報装置50が入力部53を介して、運転者からの目的地の入力を受け付けることにより、実現される。目的地の入力は、電話番号からの検索、住所の入力、地図上に表示された施設や場所の直接的な指定など、公知の手法により行なうことができる。入力された目的地の情報は、現在の車両の位置データである現在地の情報と共に、通信部52からネットワークNWを介して、サーバ20に送信される。現在地の情報(緯度、経度)は、車両40に設けられた位置取得部56からの情報に基づいて、位置特定手段61がリアルタイムで特定している。
目的地と現在地との情報を受け取ったサーバ20は、経路探索手段24により論理NWレベルでの経路探索処理を行なう(ステップS200)。この経路探索処理(ステップS200)の一例を図6に示した。この論理NWレベルでの経路探索処理ルーチンが開始されると、まず車両40の現在地を論理NWレベルで特定する処理を行なう(ステップS210)。現在地の情報は、車両40から送信されているが、その緯度・経度の情報に基づいて、論理NWレベルでの現在位置を特定するのである。
続いて、経路探索の条件があれば、これを端末、すなわち車両40の運転情報装置50から入力する(ステップS220)。経路探索の条件とは、例えば高速道路利用の可否や経由地の指定などである。もとより、デフォルトの条件を使用する場合は、車両40側から特に指定を受け付ける必要はない。また、探索条件の指定は、目的地や現在地の情報と共に、車両40側からまとめて受け取るようにしても良い。
こうした目的地、現在地、経路探索の条件についての情報の特定が完了すると、サーバ20は経路探索手段24により、経路探索の処理を行なう(ステップS230)。論理NWデータ31を用いた経路探索の手法は周知のものなので、その説明は省略する。経路探索が完了すると、サーバ20はネットワークNWを介してその結果を車両40側に送信する。車両40側では、この経路探索結果を取得する(ステップS240)。取得した経路探索の結果は、経路案内手段62が車両40における経路案内に用いられる。経路案内は、例えば、車両40の出力部54に、地図に重ねた推奨経路の表示を、車両40の走行に合せて更新することにより行なわれる。
こうして論理NWレベルでの経路探索が完了すると、次にレーンNWレベルでの経路探索処理(ステップS300)を実行する。この処理も、引き続き、サーバ20の経路探索手段24により行なわれる。レーンNWレベルでの経路探索とは、車両40が走行すべき道路において、車両40が走行すべき車線を探索し、走行すべき車線を特定する処理である。具体的には、交差点での左折、右折、高速での分岐路や出口への進入、幅員減少などに備えて、車両40が予め取るべき車線を特定するのである。
このレーンNWレベルでの経路探索処理の一例を図7に示した。このレーンNWレベルでの経路探索処理ルーチンが開始されると、まずレーンNWレベルでの現在地の特定がなされる(ステップS310)。要するに、どの車線を走行しているかまで特定するのである。続いて、論理NWレベルで特定した経路にひも付いているレーンNWのデータを抽出する(ステップS320)。図3、図4に示したように、現在走行中の位置に対応したレーンNWデータ32を、記憶部30から取り出すのである。
続いて、抽出したレーンNWデータ32から、これに関連付けられた車線変更情報を抽出する処理を行なう(ステップS330)。車線変更の情報は、レーンNW属性データ35から抽出する。具体的には、現在、車両40が走行している車線とこの先に走行すべき車線とを特定するのである。図3を例に取って説明すると、現在車両40が走行車線DLを走行していて、この先に出口用車線ELに車線変更しようとしている場合には、レーンNW属性データ35を参照することで、走行車線DLから追越車線OLを経て、出口用車線ELに至る車線変更の情報を抽出する。現在車両40が追越車線OLを走行していれば、レーンNW属性データ35を参照することで、追越車線OLから出口用車線ELに至る車線変更の情報を抽出する。レーンNW属性データ35には、図4に示したように、各車線毎に、右側の車線や左側の車線を有無や、存在する車線を特定するためのレーンNWID、車線変更の可否レベルを示す情報などが記憶されているので、現在車両40が走行している車線を特定すれば、これに関連付けられた車線変更情報を容易に抽出することができる。
こうして得られた車線変更情報から、車線変更が可能な範囲が分かるので、次に、車線変更可能な区間のレーンNWデータを分割する処理を行ない(ステップS335)、分割されたレーンNWデータを用いて車線変更リンクを作成する処理を行なう(ステップS340)。この様子を図8に示した。図8は、車線変更可能区間でのレーンNWの分割の様子を示す模式図である。図8(A)に示すように、ステップS330の処理により、車線変更情報として、車線変更可能な範囲がレーンNWデータ32に含まれるレーンデータLS1,LS2として求められる。そこで、次にこのレーンデータLS1,LS2を、図8(B)に示したように、複数の区間に分割する。分割は、分割後の各区間が所定の長さを有するように行なう。例えば、レーンデータLS1,LS2が、200メートルであれば、これを50メートルの区間4つに分割する。図8(B)においては、分割された各区間の集合を符号DLS1,DLS2として示した。
こうして得られた分割後の各レーンデータを、図8(C)に示したように繋いで、車線変更リンクを作成するのである(ステップS340)。車線変更リンクとは、図8(C)に示したように、車線間において仮想的に作られる車線変更のための経路候補の集合である。道路に対応した論理NWデータでは、リンクは、現実に存在する交差点等のノードで結合されるが、車線変更においては、交差点のような現実の地物としての車線変更地点は存在しない。このため、車線変更を案内するために、仮想的な車線変更リンクを作成するのである。こうした車線変更リンクは、現実の交差点などに対応していないという意味では仮想的なものではあるが、図4に示したように、車線変更リンクを構成する車線毎の各リンク自体は、交差点の手前や高速道路の分岐や出口の手前など、車線変更を案内すべき箇所ごとに予め用意されている。車線変更リンクは、現在の車両40の位置(走行している車線や、その車線上の走行位置)に基づいて、必要となるリンクを読み出し、これを組み合わせて作成する。
こうした車線変更リンクを作成する際、本実施例では、図4に示した車線変更可否レベルデータ36を用いて、柔軟な対応を行なう。例えば、本実施形態では、車両40の運転情報装置50の入力部53から入力された運転者の指定に基づいて、車線変更リンクを、法規制はないが交通量などの観点から車線変更を推奨しないレベル4の区間を含んで作成するか、あるいは含まず作成するかを決定している。車線変更リンクは、入力部53からの入力に基づいて、いずれかの条件の下で作成される。
こうして作成された車線変更リンクに重み付け(1)を施して、車線変更最終可能箇所を探索し、レーンNWレベル経路を作成し(ステップS350)、更に車線変更リンクに重み付け(2)を施して、車線変更推奨箇所を探索し、レーンNWレベル経路を作成する(ステップS360)。この2つの処理について、図9を参照して説明する。図9は、分岐が存在する箇所の手前に車両40が差し掛かった場合を想定した説明図である。図9に示した例では、分岐にたいして直進する車線LL1と、左に分岐する車線LL2とが存在する。そして、ステップS340の処理により、この2つの車線に関して、車線変更リンクが作られる。図9において、矢印線はレーンNWデータにおけるリンクであり、「○」印は、それらのリンクが接続されている点を示している。
車線変更リンクは、レーンNW属性情報において、車線変更可能とされている範囲に作られる。その上で、この車線変更リンクに、重み付け(1)を適用する。重み付け(1)と(2)としては、図9の最下欄に示した値が予め設定されている。これらの値は分岐からの距離に応じて設定されている。重み付け(1)は、分岐からの距離が大きくなるにつれて、大きくなるように設定され、その値の範囲は0~100である。この重み付け(1)を、車線変更リンクに適用すると(ステップS350)、図9の最上欄のように、車線変更の各リンクには、値30から値90が付与される。車線変更リンクにおいて、最も小さい値が付与されたリンクの箇所が、車線変更最終可能箇所として探索される。こうした車線変更最終可能箇所が生じる場所としては、交差点の入口地点、分岐における分岐地点、幅員減少となる幅員減少地点、など種々の地点が想定される。
その上で、今度は、車線変更最終可能箇所を終端として、重み付け(2)が適用される。この結果を図9の中段に示した。この例では、車線変更最終可能箇所の車線変更のリンクに値100が付与され、分岐から離れるに従って小さくなる値が付与される。
このような形で、車線変更リンクに重み付け(1)と(2)とを適用するのは、実際の道路において、車線変更が可能となる条件、例えば法規制の変更や工事などによる一時的な車線変更の制限などに柔軟に対処するためである。レーンNW属性情報により車線変更可能な範囲に車線変更リンクを形成し、これに重み付け(1)を適用するという同じ手続により、車線変更最終可能箇所を容易に知る事ができる。更に、こうした求められた車線変更最終可能箇所から重み付け(2)を適用することにより、車線変更リンク内での車線変更を推奨するポイントを容易に決めることができる。こうした重み付け(1)(2)のデータは、推奨レベルデータ39として、記憶部30に記憶されている。
車線変更最終可能箇所と車線変更推奨箇所とについて、更に図9、図10を用いて説明する。図9は、重み付け(2)の一例を示すグラフである。この重み付け(2)は、車線変更最終可能箇所からの距離と重み付け(2)との関係を示している。車線変更に対する規制が何もなければ、車線変更リンクは、車線変更の案内は、車線変更が可能である最後の箇所から隔たるほど、車線変更に適した、つまり車線変更を推奨すべき場所であることを示している。その場合でも、車線変更最終可能箇所からあまりに隔たった地点では、車線変更を推奨することが望ましいとは言えない。このため、重み付け(2)は、車線変更最終可能箇所から隔たるにつれて小さくなり、値0となった以降、つまり車線変更最終可能箇所から距離SLだけ隔たった場所から更に遠ざかった範囲では、値100に設定されている。
ところが、仮に車線変更最終可能箇所から距離SLだけ隔たる前に、車線変更可能範囲が終了する場合があり得る。図10は、こうした場合を例示している。図10に示した例では、車線変更最終可能箇所から距離SLだけ隔たる前に、工事による物理的な規制が、所定範囲CLに亘ってなされ、この範囲で車線変更が一時的にできなくなっていることを示している。
従って、図7のステップS360の処理により、車線変更リンクに重み付け(2)が適用されると、図9のように、車線変更最終可能箇所から車線変更可能な範囲が十分に存在する場合には、車線変更リンクには、最大100から最小0までの値(経路探索上のコスト)が付与されることなる。他方、図10のように、車線変更最終可能箇所から車線変更可能な範囲が十分にない場合には、車線変更リンクに付与される値の最小値は0にならない。
そこで、図7に示したレーンNWレベル経路探索処理ルーチンでは、次に、車線変更推奨箇所のコストがいくつであるかの判別を行なう(ステップS370)。車線変更推奨箇所とは、車線変更リンクの中で、最小の値が適用された箇所なので、図9の例では値0となり、図10の例では値0より大きな値となる。つまり、車線変更推奨箇所のコストが値0でなければ、車線変更が可能な区間が、比較的短いことになる。そこで、車線変更推奨箇所のコストが値0より大きい場合には、車線変更区間が短いことを示す車線変更区間短フラグF(以下、単にフラグFという)を値1にセットし(ステップS380)、コストが値0の場合には、フラグFを値0にリセットする(ステップS390)。以上で、レーンNWレベル経路探索処理ルーチンを終了する。その後、図5に戻って、以下の処理を継続する。
レーンNWレベル経路探索処理(ステップS300)を終了すると、次に、車両40の現在位置を取得する(ステップS120)。車両40の現在位置は、車両40に搭載された位置取得部56によりリアルタイムで取得されるので、ネットワークNWを介して、現在の位置を車両40側から取得する。その後、取得した車両40の現在地が、論理NWレベルでの経路探索処理(ステップS200)により探索された経路上にあるか否かを判断する(ステップS130)。
車両40の現在位置が探索した経路上になければ、ステップS200に戻って、現在位置から目的地までの論理NWレベルでの経路探索処理から、上記処理を繰り返す。こうした処理を行なうことにより、車両40の現在位置が探索した経路上にあると判断されれば(ステップS130)、次に経路情報に基づいて、現在の車両40の位置から最も近い車線変更推奨箇所と車線変更最終可能箇所とを取得する(ステップS400)。ここで取得される車線変更推奨箇所と車線変更最終可能箇所は、レーンNWレベル経路探索処理(図7)のステップS350,S360の処理により探索した箇所である。すなわち、レーンNWレベルでの経路における進行方向直近の車線変更推奨箇所と車線変更最終可能箇所である。車両40は走行しているので、こうした車線変更推奨箇所は、図9を用いて説明したように、コスト0の場所として取得されることもあれば、図10を用いて説明したように、コストが0以外の場所として取得されることもある。
こうして車線変更推奨箇所と車線変更最終可能箇所とを取得した後、後述する音声案内出力処理(ステップS500)を実行する。その後、目的地に達したかを判断し(ステップS140)、目的地に達していなければ、上述したステップS120に戻って処理を繰り返す。目的地に達すれば(ステップS140)、車線変更案内処理はこれ以上必要ないことから、「END」に抜けて、車線変更案内処理ルーチンを終了する。
ステップS500での音声案内出力処理の内容を、図11を用いて説明する。この音声案内出力処理ルーチンの処理は、車両40側で実行される。この処理に先立って、ナビ制御部60の車線変更推奨箇所抽出手段63は、サーバ20からデータを受け取り、車線変更最終可能箇所と車線変更推奨箇所を抽出している。図11に示した音声案内処理ルーチンが開始されると、まず案内区間であるか否かの判断を行なう(ステップS510)。車線変更を行なうべき区間からまだ遠く隔たっていれば、車線変更の案内を行なう必要はないからである。この場合(ステップS510:「NO」)は、何も行なわず、「END」に抜けて、音声案内出力処理ルーチンを一旦終了する。
車両40が交差点や分岐などの車線変更を行なうべき区間に近づくと、案内区間に入ったと判断し(ステップS510:「YES」)、次にフラグFの値について判別する(ステップS520)。このフラグFは、既述したように、車線変更が可能な区間が短いか否かを示す。そこで、このフラグFの値について判別し、フラグFが値1であれば、車線変更可能な区間が短い可能性があるとして、現在の車両40の位置から車線変更最終可能箇所までの距離Gをまず計算する(ステップS530)。そして、この距離Gが、予め定めた所定値αより小さくなるまで、距離Gの計算(ステップS530)、および所定値αとの比較(ステップS540)を繰り返す。ここで所定値αは、GL+yメートルに設定されている。本実施形態では、GLは、図10に示したように、「車線変更最終可能箇所から車線変更推奨箇所までの距離」であり、yは予め定めた値、例えば50などである。なお、αは、距離GLによらず、固定値としても良い。
車両40の位置が、車線変更最終可能箇所からGL+yメートルより短くなると(ステップS540:G<α)、音声により、「あとyメートルで、車線変更可能となります。車線変更の準備をお願いします」との案内を出力する(ステップS550)。こうした音声による案内は、本実施形態では、車両40側で行なっているが、サーバ20から、車両40の運転情報装置50に対してネットワークNWを介して指示を送信することにより実現しても良い。音声案内用の音声は、車両40の出力部54で音声合成により出力しても良いし、音声データを、サーバ20側から車両40に送信し、この音声データを出力部54が再生するようにしても良い。
こうした音声案内は、フラグFが値1、すなわち車線変更可能な区間が短い可能性があるために、運転者に準備を促すために行なわれる。従って、ステップS520での判断が、フラグF=0の場合には、必要ないとして、上述したステップS530ないしS550の処理は、実行されない。
次に、車両40の現在位置に基づき、車両40が車線変更推奨位置を通過したか否かの判断を、車両が車線変更推奨箇所を通過するまで繰り返す(ステップS560)。車両40が車線変更推奨箇所を通過したと判断すれば、「z方向に車線変更して下さい」との音声案内を行なう(ステップS570)。z方向とは、レーンNWレベルの経路探索処理(図7)により作られた車線変更リンクに従う方向である。仮に、図10に示した例において、右側車線LL1を走行している車両が左側に分岐する場合は、zは「左」であり、逆の場合は、「右」である。この処理も、サーバ20から車両40の運転情報装置50に指示を出すことで実現しても良い。こうした音声案内を行なった後、「END」に抜けて、本処理ルーチンを終了する。
以上説明した車線変更案内処理が、車両40が目的地に到着するまで繰り返し行なわれる。このため、この車両40の運転者は、目的地に到着するまでの間、通常の経路案内を受けると共に、車線変更が必要な箇所に近づくと、予め設定した適切な位置(車線変更推奨箇所)で、必要な方向への車線変更の音声案内を受けることができる。このため、経路案内において、単に「この先に右折専用とされている車線変更規制レーンがあります」といった案内を受けたり、「この先、○○メートルで左側に分岐してください」という案内を受けたりする場合と比べて、自車を、適切な車線に予め車線変更しておくことが可能となり、運転の利便性や走行の安全性を増すことができる。
しかも、本実施形態では、図4に示したように、車線変更の可否を示す車線変更可否レベルデータを、物理的な障害の有無と、法的な規制の有無とで区別し、レベル1からレベル5までの5段階で設定可能としている。その上で、本実施形態では、レベル4の区間を車線変更リンクに含ませるか否かを、運転者により指定可能としている。具体的には、車線変更リンクを作成する際(図7、ステップS340)、こうした車線変更可否レベルデータのいずれのレベルまでを使うかを、設定することができる。このため、運転者の意図に応じて、適切な範囲で、車線変更の案内を行なうことができる。
更に、本実施形態では、車線変更リンクを作成した上で、これに2種類の重み付け(1)(2)を施すことで、車線変更推奨箇所と車線変更最終可能箇所とを特定している。従って、車線変更が必要となる箇所に対して一律に車線変更の案内をするのではなく、車線変更が必要となる箇所の状況に応じた柔軟な案内が可能となる。例えば、本実施形態では、車線変更推奨箇所から車線変更最終可能箇所までの距離が短い場合には、前もって車線変更の準備をするように促しており、運転者は車線変更を余裕を持って行なうことができる。このため、車両運転上の利便性と安全性とを更に高めることができる。こうした対応は、案内を必要とする程度の高い運転初心者にとって、特に有用である。なお、こうした事前の案内は、行なわなくても差し支えない。
また、本実施形態では、図4に示したように、レーンNWデータ32にレーンNW属性データ35をひも付け、更にこのレーンNW属性データ35に、車線変更可否レベルデータ36をひも付けている。このため、車線変更の可否を物理的な状況、法的な規制などに基づいて、細かく設定して、車線変更案内を行なうことができる。
[第1実施形態の変形例]
第1実施形態の車線変更支援システム10のいくつかの変形例について説明する。車線変更最終可能箇所からの距離と車線変更のコスト(重み付け)との関係は、様々な条件によって変更して良い。例えば、図12に示すように、一車線分の車線変更の場合は、実線Jaで示した関係を用い、二車線分の車線変更を行なう場合には、破線Baで示した関係を用いるようにしても良い。二車線分を車線変更するためには、一車線分の車線変更より距離が必要となるため、コストが値0となる車線変更最終可能箇所からの距離が、一車線分の車線変更の場合Jaと比べて、遠くなるように、関係Baは設定されている。なお、
車線変更最終可能箇所からの距離と重み付けとの関係は、直線的である必要はなく、折れ線や二次曲線など、任意に設定可能である。車線変更ができなくなる地点(車線変更最終可能箇所)に近づくにつれて、心理的な負担が高まることから、車線変更最終可能箇所から隔たった場所の重み付けを、より低いコストとするような関係にすることも望ましい。
図12に示した2つの関係Ja,Baは、車線変更の数以外の関係に対応付けることも可能である。例えば、走行している車両40の車速に応じて、例えば高速道路において時速90キロメートル以下では関係Jaを用い、時速90キロメートルを超えている場合には関係Baを用いるようにしても良い。車速が速ければ、車速が遅い場合よりも、手前から車線変更の案内をした方が望ましいからである。あるいは、入力部53により入力した運転者の好みにより切り替えるものとしても良い。早めに車線変更の案内をして欲しい人もいれば、あまり早く車線変更したくない人もあるからである。運転者が初心者か否かにより、変更しても良い。初心者の場合は、余裕を持って車線変更できるように、関係Baを用いるようにするのである。初心者かどうかと言った情報は、入力部53から入力しても良いし、運転のパターンから推定しても良い。更に、高速道路の場合は関係Baを、一般道路の場合には関係Jaを、それぞれ用いるようにしても良い。
上記の第1実施形態において、画像取得部70により取得した画像を利用するものとしての良い。画像取得部70により取得した画像の利用は、例えば次のようなものが考えられる。
(A)車両40の現在位置を正確に判定するのに用いる。予め道路周辺の地物のデータを記憶した地物データ37の1つとして地物の画像データを保存しておき、車両40の走行時に、画像取得部70により取得した画像と照らし合わせることで、車両40の位置を正確に把握できる。この場合、画像取得部70は、地物情報取得部として機能することになる。こうすれば、車両40の現在位置を、GNSSなどを用いた位置取得部56により取得している場合などで、仮に位置情報の精度が、GNSSの制限を受けた場合でも、正確な位置の把握が可能となる。こうすることで、位置データ修正部を実現することができる。位置情報の精度がGNSSの制限を受ける場合は、例えば高層ビル谷間の高速道路の下などでは、電波状態によって、一時的に車両位置の精度が不足する場合などが考えられる。
(B)車両40の周辺の状況を把握して、車線変更の案内に用いる。車両40の周辺を画像取得部70により撮像し、例えば車両40の斜め後方に対象物である他の車両がいる場合などには、その方向への車線変更の案内に反映させることができる。反映の仕方としては、「斜め後方の車両に注意して、z方向に車線変更してください」のように、車両の存在に注意を喚起する手法や、斜め後方の車両がいなくなるまで車線変更の案内を遅らせるなど、様々な対応が可能である。
(C)区画線などを撮像し、地物データ37と照らし合せる。各車線についての法的な規制は、予め調査され、車線変更可否レベルデータ36に反映されているが、各道路には、こうした規制に対応した区画線が描かれている。中央線でない区画線が黄色の場合は、車線からのはみ出しが禁止されているので、黄色の区画線側への車線変更はできない。そこで、画像取得部70により区画線を撮像し、その場で車線変更可否レベルデータに反映させ、車線変更の案内を行なうものとしても良い。こうした規制がなされていることは、車線変更可否レベルデータ36に原則として反映されているが、データの誤りや規制の変更とデータ更新のタイムラグなどにより、不一致を生じることがあり得る。こうした不一致が生じていても、画像取得部70により取得した画像により修正することができる。
上記実施形態では、音声による案内は、車線変更の準備の促し(図11,ステップS550)と車線変更の案内(ステップS570)の2つとしたが、いずれか一方だけでも良い。あるいは、車両が車線変更最終可能箇所を通過した時点で、まだ車線変更されていなければ、「ここからは、車線変更できません」とか「車線変更できなかったので、次の経路案内に従ってください」といった車線変更禁止の案内を、行なうものとしても良い。また、車線変更を案内する場合、変更を推奨する度合いを含めて案内しても良い。推奨の度合いとは、「この位置で車線変更するのが、最も望ましい」「できればここで車線変更してください」など、推奨する程度を反映したものである。これらの案内は、全て行なう必要はなく、いずれか1つまたはそれら2以上の案内の組み合わせとして実施しても良い。
上記の実施形態では、車線変更の案内は出力部54を用いて音声により行なったが、必ずしも音声による必要はなく、出力部54に設けられた表示パネルに表示するといった案内でも差し支えない。また、フロントガラスに反射させて、運転者に対して、フロントガラス越しの実像に重ねて、車線変更の方向などを推奨する案内を表示するようにしても良い。あるいはハンドルの右側や左側を選択的に振動させるといった方法で案内しても良い。
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。図13は、第2実施形態としての車両制御システム100の概略構成図である。この車両制御システム100は、第1実施形態の車線変更支援システム10と比べて、車両41の構成が異なっている。サーバ20の構成は、第1実施形態と同様である。
車両制御システム100を構成する車両41は、図13に示すように、運転情報装置50に代えて、運転制御装置51を備える。この運転制御装置51は、第1実施形態の運転情報装置50が備える通信部52ないし画像取得部70に加えて、更に車両制御部80を備える。この実施形態では、運転制御装置51は、車線変更が可能か否かを判断する判断部としての機能を備える。車両制御部80は、車両41に搭載されたモータ駆動部82や補機駆動部90に接続されている。モータ駆動部82は、バッテリ83に接続されている。モータ駆動部82は、車両制御部80の指示を受け、バッテリ83に蓄えた電気エネルギにより、車両走行用の走行モータ84と操舵用の操舵モータ87とを駆動する。走行モータ84は、後輪である駆動輪85に結合されている。走行モータ84の回転数とトルクを制御することにより、車両41は、発進、走行、停止などが可能な電気自動車として機能する。また、操舵モータ87は、前輪88の操舵軸(図示せず)に結合されている。操舵モータ87を駆動することにより、車両前後軸に対する前輪88の角度が可変され、車両は走行方向を自由に変えることができる。
補機駆動部90は、車両41に搭載された補機の駆動および補機からの情報の収集を行なう。図13では、補機としてヘッドライトやウィンカなどのライト群91と検出部の1つとして機能するミリ波レーダ92とを例示した。車両41は、運転制御装置51の車両制御部80により、暗くなれば、ヘッドライトを自動点灯し、右折や左折あるいは車線変更の際には、曲がろうとする側のウィンカを点滅させる。また、補機駆動部90を介して、ミリ波レーダ92からの信号を読み取り、車両41周辺の物体を検出する。図13に示したハードウェア構成の他、車両41には、車両として道路を走行する上で必要な装置、例えばブレーキシステムや各種インジケータなども搭載されているが、これらについては説明を省略する。
次に、車両制御システム100を用いて行なわれる車線変更運転処理ルーチンについて説明する。第1実施形態と同様、第2実施形態の車線変更運転処理ルーチンは、サーバ20と車両41の運転制御装置51とが協働して、図14に示す車線変更運転処理を実現する。この処理は、図5に示した車線変更案内処理ルーチンとは、ステップS500の音声案内出力処理に代えて、車線変更処理(ステップS600)を行なう点を除いて、他の処理は同一である。従って、目的地を入力する処理(ステップS110)の他、ステップS
200、S300、S120、S130、S400、S140の処理については、説明を省略する。
車線変更処理(ステップS600)について、図15を参照して説明する。図15に示した処理が実行される前提として、目的地の入力(図14、ステップS110)とこれに伴う経路探索に基づき、車両41は自動運転されている。自動運転は、位置取得部56により取得した車両41の現在位置や、画像取得部70やミリ波レーダ92によって取得した周辺の状況、更にはバッテリ83の残容量などの情報を用いて、車両制御部80が走行モータ84や操舵モータ87を駆動することにより実現される。車速などは、論理NWデータ35に属性として付されているその道路の制限速度情報を参照して決定される。前方の車両との間隔はミリ波レーダ92により、信号の色は画像取得部70により、それぞれ取得し、加速および減速を行なっている。図示しない油圧ブレーキシステムも備えているが、通常の制動は、走行モータ84による電力回生を利用した回生ブレーキにより実現される。回生した電気エネルギは、バッテリ83を充電するのに用いられる。
このように、車両41が自動運転されている中で、車線変更をどのように実現しているかについて、以下説明する。図15に示した車線変更処理ルーチンが開始されると、まず車両41の現在位置を取得する処理を行なう(ステップS610)。現在地は、車両41の位置取得部56により取得した位置情報から求めても良いし、更に画像取得部70により取得した周辺の画像を地物データと照合することにより、求めても良い。
現在位置を検出すると、次に車線変更推奨箇所を通り過ぎたか否かの判断を行なう(ステップS620)。車線変更推奨箇所は、第1実施形態で説明したように、車線変更リンクの中で、重み付け(コスト)の最も低い地点である。この地点を通過したと判断した場合には、車線変更処理(ステップS700)を行なう。この車線変更処理は、具体的には、第1実施形態で説明した車線変更リンクに沿って、車両41の走行を制御する処理である。車線変更推奨箇所を過ぎると、車線変更最終可能箇所までの間に、車両41の周辺の状況を確認しつつ、走行モータ84や操舵モータ87を制御して、車両41を、レーンNWレベルの経路探索処理により探索された経路に沿って走行させる。
もとより、車線変更リンクの中で、最もコストの低い経路に沿って直ちに車線変更ができない場合も存在する。画像取得部70やミリ波レーダ92からの信号により、車両41の近くに対象物である他の車両などが存在すれば、最も近い車線変更リンクでの車線変更処理は見送られる。そこで、車線変更処理を試みた後、続くステップS630において、車線変更が完了したかを判断し、車線変更が完了していれば(ステップS630:「YES」)、図14にステップS120に移行して、現在位置の取得から処理を再開する。従って、自動運転しつつ、次の車線変更に備えるのである。
他方、図15ステップS630での判断が「NO」、即ち車線変更が完了していないと判断すると、続いて、車両41が、車線変更最終可能箇所を通過したか否かの判断を行なう(ステップS640)。車両41が、車線変更最終可能箇所を通過していなければ、ステップS700に戻って車線変更処理から再開する。即ち、車線変更リンクに沿って、更に車線変更を試みるのである。こうした処理を繰り返しても、車両41が車線変更を完了できない場合には、車両41は、車線変更できないまま、車線変更最終可能箇所を通過してしまう場合があり得る。この場合には、ステップS640での判断は「YES」となり、図14のステップS200に戻って、即ち論理NWレベルでの経路探索から処理を再開する。これは、車線変更できなかったことから、当然車両41は、当初予定した経路に沿って進むことができず、他の経路を辿っていることになるからである。この場合には、目的地に至る他の経路を探索し、その結果に基づいて、車両の自動走行と、必要な車線変更の処理とを継続する。上記の処理は、車両41が目的地に到着するまで繰り返し、実行される(ステップS140)。
以上説明した車線変更運転処理が実行されることにより、第2実施形態の車両制御システム100は、車両41を自動運転しつつ、必要な車線変更を実現することができる。しかも、第1実施形態で説明したように、車線変更に関する車線変更可否レベルデータ36は、車線変更が制限されている物理的な条件について2段階の情報と、法的な規制とその有無についての3段階の情報とを記憶しており、これに拠り、車線変更の実施の範囲を変えることができる。例えば、レベル4の区間を車線変更リンクに含ませるか否かを、指定可能なので、自動運転によって車線を変更する場合に、例えばその時間帯の道路の混み具合などから、サーバ20側で、レベル4の区間を車線変更区間に含ませるか否かを指定するといったことが可能である。こうすれば、自動運転においても、車線変更リンクの作成範囲を広くしたり、狭くしたりすることができる。また、例えばレベル5の区間だけで車線変更を行なうものとしておき、その範囲だけでは車線変更が完了しなかった場合に、レベル4の区間を加えることで車線変更可能な範囲が延びる場合には、車線変更最終可能箇所を通過したと判断した際(図15,ステップS640)、レベル4の区間を加えて再度車線変更リンクを作り直して、車線変更を試みるといったことも可能である。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の車両制御システム100は、第2実施形態と同一のハードウェア構成を備え、第2実施形態で説明した自動運転と車線変更運転処理(図14、図15)を実行している。その上で、第3実施形態の車両制御システム100は、図16に示した緊急時運転制御処理ルーチンを実行している。図16に示した処理は、第2実施形態で説明した処理とは独立に、走行中は常に実行されている。こうした並列処理は、例えば別のプロセッサを設けて実現しても良いし、所定のインターバルで繰り返し実行される割込処理を用いて実現しても良い。
この処理では、まず車両41の現在地を取得し(ステップS810)、現在位置周辺の車線変更可否レベルを取得し、車両41側の一時記憶部55の記憶として、これを最新の情報に更新する(ステップS820)。車線変更可否レベルの取得は、図17に明示した「車線変更可否レベルのテーブルDT」を参照することにより行なう。このテーブルは、図4に示したように、レーンNW属性データ35にひも付けられており、車両41の現在の走行位置に基づいていつでも取得することができる。第1,第2実施形態と異なるのは、図17に示した例では、車線変更可否レベルは値1~4までの4段階のいずれかとして記憶されている点である。もとより、3段階や5段階以上の種類の中から少なくとも1つを記憶するものとしても良い。レーンNW属性データには、車線毎のこの車線変更可否レベルの内のいずれかのレベルに対応した番号が記憶されている。この車線変更可否レベルのデータを車両41の一時記憶部55に記憶させるのは、緊急時に車両41側で素早く対応するためである。
こうした車線変更可否レベルのデータの更新を行なった上で、緊急時か否かの判断を行なう(ステップS830)。この実施形態において緊急時であるとは、ミリ波レーダ92からの信号により、他の車両との接触が、車両41の加減速処理では回避できない(事故回避できない)と判断した場合が該当する。なお、緊急時か否かの判断は、図16に示した処理とは別の、更に短いインターバルで繰り返し行なわれる割込処理により単独で判断しても良い。また、画像取得部70が取得した画像などで判断しても良い。更には、図示しないブレーキの急激な操作などを基点として緊急時の処理を開始し、その後、ミリ波レーダ92などの信号から回避すべき内容を判断するようにしても良い。緊急時でなければ、ステップS810に戻って、車両41の現在位置の取得から処理を繰り返す。
他方、緊急時であると判断すると(ステップS830:「YES」)、一時記憶部55に記憶した周辺の車線への車線変更可否レベルから、緊急時の回避方法を判断する(ステップS840)。緊急時の判断は、車両41の加減速では他の車両との接触が回避できない状況であるとして行なっているので、可能と考えられる回避方法は、車両の進行方向の変更である。通常こうした進行方法の変更は、車線をはみ出すことになる。そこで、一時記憶部55に記憶した車線変更可否レベルのデータを参照し、現在車両が走行しているレーンから右側に回避するか左側に回避するかを決定する。左右いずれか一方の車線への車線変更可否レベルが値1であり、他方の車線への車線変更可否レベルが値2以上であれば、他方の側に回避することを選択する。他方の側へ車線変更可否レベルが値2であれば、物理的な障害物があることになり、通常の走行では、レベル2の車線への変更は行なわないが、緊急時には、乗り越え可能な障害物であると判断して、その方向への車線変更を禁止しない。
もとより、左右いずれの車線への車線変更可否レベルが値2以上であれば、いずれの側に進行方向を変更するかは、車線変更可否レベルの値の比較に拠らず、他の車両との接触を、回避しやすい側を選択するようにすれば良い。
こうして他の車両との接触を、車線変更を伴う進行方法の変更によって回避するとする場合には、運転制御装置51は、車両制御部80に信号を出力し、走行モータ84および操舵モータ87を駆動する(ステップS850)。この結果、場合によってはロードコーン(パイロン)などを乗り越えつつ、他の車線に向かって走行し、他の車両との接触を回避する。その後、車両の走行を終了するか判断し(ステップS860)、更に車両が走行を継続する場合は、ステップS810から処理を継続すれば良い。車両の走行を終了する場合は(ステップS860:「YES」)、「END」に抜けて処理を終了する。
以上説明した第3実施形態によれば、車両制御システム100は、車線変更を伴う進行方向の変更なしでは他の車両との接触が回避できない緊急時には、現在走行中の車線から他の車線への車線変更可否レベルに基づき、回避の方向を決定している。このとき、物理的な障害物があって車線変更できないとされるレベルに、更に2つの類別を設け、側壁や防音壁などのように車両が乗り越えられない障害(レベル1)か、パイロンやキャッツアイなどのように車両が乗り越えられる障害(レベル2)かの区別を設けている。この結果、車両の通常走行時には、いずれのレベルであっても車線変更可能な対象としては扱わないにもかかわらず、緊急時には、乗り越え可能な物理的障害が存在する方向への車線変更は可能として扱う。この結果、緊急時の回避動作の自由度を広げることができ、他の車両との接触を、回避しやすくすることができる。
第3実施例の車両制御システム100において、予め周辺の車線への車線変更可否レベルのデータだけで判断するのではなく、画像取得部70により取得した画像やミリ波レーダ92により取得した近接物の情報などから、現場に存在する壁や信号灯、橋脚などの情報を取り込み、これらの物体の存在も加味して、緊急時の回避方法を決定しても良い。画像やミリ波レーダからの情報を用いる以外に、地物が発するビーコンを用いて判断してもよい。車線上において障害となり得る地物に、予めビーコンを出力するデバイスを設けておけば良い。
以上本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、第1実施形態の車線変更支援システム10や第2、第3実施形態の車両制御システム100は、二輪車に搭載しても良い。車線変更可否レベルとしては、例えば車両走行に伴って取得されたビッグデータを解析し、事故の発生率や発生条件などから、レベル付けしても良い。