JP7441034B2 - ポンプ用メカニカルシールおよびこれを備えるマグネットポンプ - Google Patents
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Description
特許文献1記載の技術では、回転軸の外周を囲繞するハウジング内の空間に、静止環が固定されるとともに、静止環に対して軸方向に対向するように回転環が取り付けられ、静止環と回転環とは、互いの対向面同士が摺接している。
回転軸の外周にはコイルスプリングが取り付けられ、コイルスプリングが回転環を静止環の方向に押圧付勢している。かかる構成のポンプの軸封装置では、静止環と回転環との間の摺接面によって、ポンプの被送流体がケーシング外に漏れ出すことを防止している。
そして、静止環を回転環の方向に押圧付勢する手段が、円環状のゴムスプリングなので、ポンプの被送流体がスラリである場合であっても、コイルスプリングのようにスラリ中の成分が固着することが防止または抑制されるので、作動不良や損傷が発生することを防止または抑制できる。
そのため、マグネットポンプをコンパクトに構成しつつ、マグネットポンプの被送流体がスラリであっても作動不良や損傷が発生することを防止または抑制できる。特に、このメカニカルシールのレイアウトにより、重スラリにも対応可能なノンリークマグネットポンプがコンパクトに構成可能になる。
なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
ケーシング30は、フロントケーシング31と、リアケーシング32と、後部カバー33と、を有して構成される。フロントケーシング31の正面中心部には、吸込口35が設けられ、フロントケーシング31およびリアケーシング32との合わせ面を中心(CL2)とする側面(この例では駆動軸8の軸線CL1よりも上部)には吐出口36が設けられている。
特に、本実施形態の後部ライナ41bは、端面前側のライナ先端41sが、インペラ34のボス部34jに対向して張り出しており、ライナ先端41sが、後述する液室メカニカルシール80のゴムスプリング83に当接されている。
このケーシング30に対し、送液室40とは反対の後部側から、不図示の締めねじによって、水中軸受部20を有するオイル室ケーシング50と、マグネットカップリング部10を有する駆動部ハウジング60と、がこの順に連結されている。オイル室ケーシング50には、上下の対向する位置に、給排油口51,52が設けられており、オイル室ケーシング50内が、二次流体としてのオイルが満たされるオイル室になっている。
駆動側マグネット部5の内周面には、周方向に沿って複数のアウタマグネット5aが配置される一方、従動側マグネット7の外周面には、周方向に沿って複数のインナマグネット7aがアウタマグネット5aに対向配置されている。
また、水中軸受部20には、駆動軸8のインペラ34側の段部8dの端面に、スラスト軸受25が装着されており、上記送液室40のインペラ34から受けるスラスト荷重をスラスト軸受25で支持している。本実施形態のマグネットポンプ1では、上述したマグネットカップリング部10および水中軸受部20により、駆動部(シャフトアッセンブリ)が構成されている。
本実施形態の送液室メカニカルシール80は、後部カバー33の前面と、インペラ34のボス部34bとの間に装備される。また、後部カバー33の背面とスラスト軸受25の前面との間に、オイル室メカニカルシール90が二次シール機構として設けられている。
詳しくは、液室メカニカルシール80は、図2に拡大図示するように、インペラ34の背面側のボス部34jに配置される円環状の回転環81と、液室40内に配置されて回転環81の摺接面81sに対して軸方向に対向する摺接面82sを有する円環状の静止環82と、液室40内に配置されて静止環82を回転環81の方向に押圧付勢する略円環状のゴムスプリング83と、を備える。
本実施形態の送液室メカニカルシール80は、後部カバー33のボディ部33aの軸方向前側の内周部の位置に、駆動軸8と同軸に形成されたインペラ34のボス部34bが配置され、このボス部34bの外周面に沿って円筒状の静止環82が、インペラ34の駆動軸8と同軸に円環状凹部33dに固定される。静止環82は、基部後側が、支持ピン84を介して円環状凹部33dに連結される。
後部カバー33のボディ部33aには、ボディ部33aの内面の軸方向略中央に、ゴムスプリング83を装着するための円環状の装着段部33nが形成されている。ゴムスプリング83は、装着段部33nにインペラ34の駆動軸8と同軸に嵌め込まれる固定部である基部83aと、基部83aから斜め前方に張り出す円錐面部である腕部83bと、腕部83bの先端から後方に向けて軸線に沿って円環状に延びる耐圧用直胴シール部である保持リップ部83cと、を有する。
インペラ34のボス部34bには、回転環81よりも軸方向前側の位置に、サポートシール85が設けられている。サポートシール85は、円筒状段部85dの内周面が、基部34kの外側面に嵌め合わされるとともに、サポートシール85の後端面85rが、回転環81の前面81mに当接する状態で装着される。回転環81は、回転環81の前側に装着されたサポートシール85により弾性的に支持される。サポートシール85は、インペラ34と一体で回転するとともに回転環82を保持する。
そして、回転環81と静止環82とは、対向配置された相互の径方向に沿った摺動面81s,82s同士が、互いに摺動されるシール摺動部を形成する。シール摺動部は、マグネットポンプ1の送液室40内(液室メカニカルシール80の軸方向前方の接液部側)から外部(液室メカニカルシール80の軸方向後方のオイル室51側)または外部から内部へのスラリの漏れを防止するように構成される。
これにより、回転環81と静止環82との摺動面81s,82s同士が、互いに所定の押圧力で摺接されるメカニカルシール機構のシール摺動部を形成し、マグネットポンプ1の送液室40内からオイル室への流体の漏れを防止可能になっている。
さらに、本実施形態の空気室70は、第二の粒子排除機構として、後部カバー33の内周面に、それぞれ円環状をなす3列の油溝72,73,74が、軸方向に所定の離隔距離を隔てて形成されている。この例では、各円環溝72,73,74は、横断面形状が、径方向外側に向かうにつれて狭幅する台形形状になっている。
なお、本実施形態の例では、オイル室ケーシング50に満たす二次流体としてオイルを例に示したが、これに限定されず、必要に応じて、水、オイル、グリスなどの種々の二次流体を供給して充填することができる。本実施形態のマグネットポンプ1では、送液として高濃度スラリを扱う場合であって、水中軸受部20およびマグネットカップリング部10を満たす二次流体として、送液でなくオイルを満たしている。
そして、本実施形態のマグネットポンプ1では、二次流体としてのオイルが送液中に漏れないように、多段の油溝72,73,74の後方に、二次シール機構として、油室メカニカルシール90を送液室メカニカルシール80とは別途に配置している。
後部カバー33は、ボディ部33aのオイル室51側に、ボディ部33aの後端に凸設されたボス状のシール装着部33eを有し、このシール装着部33eに、オイル室メカニカルシール90の静止環92が装着されている。静止環92は、静止環92とシール装着部33eの内面33fとの間に介装された保持器85によって保持される。
駆動軸8の外周には、コイルバネ支持部材94で水平姿勢が支持された円筒コイルバネ93が駆動軸8の外周を囲繞するように取り付けられ、この円筒コイルバネ93が回転環91を静止環92の方向に押圧付勢している。これにより、油室メカニカルシール90は、静止環92と回転環91との間の摺接面によって、後部カバー33側からのスラリがオイル室ハウジング50内に漏れ出すことを防止している。
本実施形態のマグネットポンプ1では、マグネットポンプ1の運転時には、モータ3が駆動されると出力軸4とともに駆動側マグネット部5が一体で回転し、駆動側マグネット部5のアウタマグネット5aから従動側マグネット7のインナマグネット7aに伝達された回転力によって従動側マグネット部7が回転駆動される。
また、従来から、水中軸受部とマグネットカップリング部とを用いたマグネットポンプが用いられているところ、通常、この種のマグネットポンプは、送液可能なスラリ粒子径が、およそ1~2mm(濃度30wt%)である。これは、使用する水中軸受の耐摩耗性等の規制条件により、送液可能なスラリ粒子径が制限されるからである。
つまり、本実施形態のマグネットポンプ1において、高濃度スラリによるダメージを最初に受けるのは、一次シール機構としてインペラ34の背面に位置するように送液室40に配された送液室メカニカルシール80であり、送液室メカニカルシール80から高濃度スラリのリークが始まっても、空気室70から二次シール機構としてのオイル室メカニカルシール90を順に介してオイル室51内に高濃度スラリが浸入することになる。そのため、シャフトアッセンブリのダメージが早期に進行することが防止または抑制される。
さらに、本実施形態の送液室メカニカルシール80によれば、空気室70に、第二の粒子排除機構として、多段の油溝72,73,74を設けているので、各油溝72,73,74内で生じた渦流によって、スラリ中の固形粒子を捕捉(トラップ)できる。そのため、オイル室メカニカルシール90のシール摺動部に到達する固形粒子の量を抑制する上で好適であり、オイル室メカニカルシール90の長寿命化を図る上で優れている。
なお、本発明に係るポンプ用メカニカルシールおよびこれを備えるマグネットポンプは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
2 モータブラケット
3 モータ
4 出力軸
5 駆動側マグネット部
6 キャン(隔壁部材)
7 従動側マグネット部
8 駆動軸
10 マグネットカップリング部
20 水中軸受部
30 ケーシング
31 フロントケーシング
32 リアケーシング
33 後部カバー
34 インペラ
34j ボス部
34r 裏羽根
35 吸込口
36 吐出口
40 送液室
41 ライナ
41a 主ライナ
41b 後部ライナ
50 オイル室ケーシング
51 オイル室(二次流体室)
60 駆動部ハウジング
70 空気室
71 ラビリンスシール
72 油溝
73 油溝
74 油溝
80 送液室メカニカルシール(メカニカルシール)
81 回転環
82 静止環
83 ゴムスプリング
84 支持ピン
85 サポートシール(ゴムパッキン)
90 オイル室メカニカルシール
91 回転環
92 静止環
93 円筒コイルバネ
94 コイルバネ支持部材
95 保持器
Claims (4)
- 液室内にインペラを備えるポンプに用いられるメカニカルシールであって、
前記インペラは、自身背面に設けられた複数の裏羽根と、駆動軸に嵌合されて自身背面の中心部分から軸方向後方に伸びるボス部と、該ボス部の外周面と前記裏羽根の内径側端面との間に形成されて自身背面側を凹とする円環状の基部と、を有するものであり、
前記インペラの前記基部に嵌合される円環状のゴムパッキンと、
前記インペラの駆動軸と同軸に配置されて前記ゴムパッキンによって前記ボス部の外周面と前記裏羽根の内径側端面との間の位置に支持される円環状の回転環と、
前記液室内面に前記インペラの駆動軸と同軸に且つ前記ボス部の外周面と前記裏羽根の内径側端面との間の位置に配置されて前記回転環の摺接面に対して軸方向に対向する摺接面を有する円環状の静止環と、
前記液室内面に前記インペラの駆動軸と同軸に配置されて前記静止環を前記回転環の方向に押圧付勢する円環状のゴムスプリングと、
を備えることを特徴とするポンプ用メカニカルシール。 - 前記ゴムスプリングは、前記液室内面に形成された円環状凹部に嵌め込まれる円環状の固定部と、該固定部を基端側として前記静止環を押圧付勢する部分に向けて斜めに張り出す円錐面部と、該円錐面部の先端の位置から前記液室内面側に向けて軸方向に沿って延びる円筒状の耐圧用直胴シール部と、を有する請求項1に記載のポンプ用メカニカルシール。
- 前記静止環は、自身軸方向断面視形状が、径方向環状部と、軸方向環状部と、を有するL字形状をなし、前記径方向環状部のうちの前記回転環側の一部が前記回転環との摺接面とされるとともに、前記軸方向環状部のうちの前記液室内面側の一部に回り止め溝が形成され、該回り止め溝が前記液室内面に嵌め込まれた回り止めピンに対して軸方向にはスライド移動可能に且つ周方向には回転が拘束されるように嵌合されており、
前記ゴムスプリングは、前記円錐面部の先端が、前記径方向環状部の背面側の面を前記回転環の方向に押圧付勢するように装着さるとともに、前記耐圧用直胴シール部の内周面が、前記軸方向環状部の外周面に摺接するように嵌め込まれている請求項2に記載のポンプ用メカニカルシール。 - 液室内にインペラを備えるマグネットポンプであって、
請求項1から3のいずれか一項に記載のポンプ用メカニカルシールを備えることを特徴とするマグネットポンプ。
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