以下に、本発明に係る制御装置について、図面を用いて説明する。
なお、以下では、二輪のモータサイクルに用いられる制御装置について説明しているが、本発明に係る制御装置は、二輪のモータサイクル以外の鞍乗り型車両(例えば、三輪のモータサイクル、バギー車等)に用いられるものであってもよい。なお、鞍乗り型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味し、スクーター等を含む。
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る制御装置及び制御方法は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
<モータサイクルの構成>
図1~図3を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置60が搭載されるモータサイクル100の構成について説明する。
図1は、制御装置60が搭載されるモータサイクル100の概略構成を示す模式図である。図2は、ブレーキシステム10の概略構成を示す模式図である。図3は、制御装置60の機能構成の一例を示すブロック図である。
図1に示されるように、モータサイクル100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、ブレーキシステム10とを備える。本実施形態では、制御装置(ECU)60は、後述されるブレーキシステム10の液圧制御ユニット50に設けられている。また、モータサイクル100は、エンジン70と、変速機構80と、前輪車輪速センサ91と、後輪車輪速センサ92と、エンジン回転数センサ93と、ギアポジションセンサ94とを備える。
ブレーキシステム10は、図1及び図2に示されるように、第1ブレーキ操作部11と、少なくとも第1ブレーキ操作部11に連動して前輪3を制動する前輪制動機構12と、第2ブレーキ操作部13と、少なくとも第2ブレーキ操作部13に連動して後輪4を制動する後輪制動機構14とを備える。また、ブレーキシステム10は、液圧制御ユニット50を備え、前輪制動機構12の一部及び後輪制動機構14の一部は、当該液圧制御ユニット50に含まれる。液圧制御ユニット50は、前輪制動機構12によって前輪3に生じる制動力及び後輪制動機構14によって後輪4に生じる制動力を制御する機能を担うユニットである。
第1ブレーキ操作部11は、ハンドル2に設けられており、ドライバの手によって操作される。第1ブレーキ操作部11は、例えば、ブレーキレバーである。第2ブレーキ操作部13は、胴体1の下部に設けられており、ドライバの足によって操作される。第2ブレーキ操作部13は、例えば、ブレーキペダルである。
前輪制動機構12及び後輪制動機構14のそれぞれは、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23に設けられているホイールシリンダ24と、マスタシリンダ21のブレーキ液をホイールシリンダ24に流通させる主流路25と、ホイールシリンダ24のブレーキ液を逃がす副流路26とを備える。
主流路25には、込め弁(EV)31が設けられている。副流路26は、主流路25のうちの、込め弁31に対するホイールシリンダ24側とマスタシリンダ21側との間をバイパスする。副流路26には、上流側から順に、弛め弁(AV)32と、アキュムレータ33と、ポンプ34とが設けられている。
込め弁31は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁32は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
液圧制御ユニット50は、込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33及びポンプ34を含むブレーキ液圧を制御するためのコンポーネントと、それらのコンポーネントが設けられ、主流路25及び副流路26を構成するための流路が内部に形成されている基体51と、制御装置60とを含む。
なお、基体51は、1つの部材によって形成されていてもよく、複数の部材によって形成されていてもよい。また、基体51が複数の部材によって形成されている場合、各コンポーネントは、異なる部材に分かれて設けられていてもよい。
液圧制御ユニット50の上記のコンポーネントの動作は、制御装置60によって制御される。それにより、前輪制動機構12によって前輪3に生じる制動力及び後輪制動機構14によって後輪4に生じる制動力が制御される。
通常時(つまり、ドライバによるブレーキ操作に応じた制動力を車輪に生じさせる時)には、制御装置60によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖される。その状態で、第1ブレーキ操作部11が操作されると、前輪制動機構12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3に制動力が生じる。また、第2ブレーキ操作部13が操作されると、後輪制動機構14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4に制動力が生じる。
エンジン70は、モータサイクル100の駆動源であり、車輪を駆動するための動力を出力する。エンジン70には、例えば、内部に燃焼室が形成される1又は複数の気筒と、燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁と、点火プラグとが設けられている。燃料噴射弁から燃料が噴射されることにより燃焼室内に空気及び燃料を含む混合気が形成され、当該混合気が点火プラグにより点火されて燃焼する。それにより、気筒内に設けられたピストンが往復運動し、クランクシャフトが回転するようになっている。また、エンジン70の吸気管には、スロットル弁が設けられており、スロットル弁の開度であるスロットル開度に応じて燃焼室への吸気量が変化するようになっている。
エンジン70のクランクシャフトは変速機構80の入力軸と接続されており、変速機構80の出力軸は後輪4と接続されている。ゆえに、エンジン70から出力される動力は、変速機構80に伝達され、変速機構80により変速されて駆動輪である後輪4に伝達される。ライダーは、エンジン70のクランクシャフトと変速機構の入力軸との間に介在するクラッチをクラッチ操作によって開放させた状態で、チェンジペダルを操作することによって、シフトチェンジを行うことができる。
前輪車輪速センサ91は、前輪3の車輪速(例えば、前輪3の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。前輪車輪速センサ91が、前輪3の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。前輪車輪速センサ91は、前輪3に設けられている。
後輪車輪速センサ92は、後輪4の車輪速(例えば、後輪4の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。後輪車輪速センサ92が、後輪4の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。後輪車輪速センサ92は、後輪4に設けられている。
エンジン回転数センサ93は、エンジン回転数(つまり、エンジン70の回転数)を検出し、検出結果を出力する。エンジン回転数センサ93は、例えば、エンジン70に設けられている。
ギアポジションセンサ94は、変速機構80のギア段がいずれのギア段になっているかを検出し、検出結果を出力する。ギアポジションセンサ94は、例えば、変速機構80に設けられている。
制御装置60は、モータサイクル100の挙動を制御する。
例えば、制御装置60の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、例えば、制御装置60の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置60は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。
図3に示されるように、制御装置60は、例えば、記憶部61と、制御部62とを備える。
記憶部61は、制御部62が行う処理に用いられる各種情報を記憶する。例えば、後述されるアンチロックブレーキ制御におけるスリップ度上限値の設定値は、記憶部61により記憶されており、制御部62により書き換えられる。
制御部62は、モータサイクル100の挙動を制御するために、モータサイクル100に生じる制動力を制御する。特に、制御部62は、アンチロックブレーキ制御を実行する。
制御部62は、例えば、取得部62aと、制動制御部62bとを含む。
取得部62aは、モータサイクル100に搭載されている各装置から情報を取得する。例えば、取得部62aは、前輪車輪速センサ91、後輪車輪速センサ92、エンジン回転数センサ93及びギアポジションセンサ94から情報を取得する。
制動制御部62bは、ブレーキシステム10の液圧制御ユニット50の各コンポーネントの動作を制御することによって、モータサイクル100の車輪に生じる制動力を制御する。
上述したように、通常時には、制動制御部62bは、ドライバのブレーキ操作に応じた制動力が車輪に生じるように、液圧制御ユニット50の各コンポーネントの動作を制御する。
ここで、制動制御部62bは、車輪のスリップ度が上限値(以下、スリップ度上限値とも呼ぶ)を超えた場合に、アンチロックブレーキ制御を実行する。車輪のスリップ度が上限値を超えた場合には、当該車輪にロック又はロックの可能性が生じる。アンチロックブレーキ制御は、車輪の制動力を、ロックを回避し得るような制動力に調整する制御である。
制動制御部62bは、例えば、前輪3及び後輪4の車輪速に基づいてモータサイクル100の車速(つまり、車体の速度)を特定し、各車輪の車輪速と車速との比較結果に基づいて、車輪のスリップ度を算出する。スリップ度は、車輪が路面に対して滑っている度合いを示す指標であり、スリップ度としては、例えば、車速と車輪速との差を車速で除算して得られるスリップ率が用いられる。なお、スリップ度として、スリップ率以外のパラメータ(例えば、スリップ率に実質的に換算可能な他の物理量)が用いられてもよい。
アンチロックブレーキ制御の実行中には、制動制御部62bは、込め弁31が閉鎖され、弛め弁32が開放された状態にし、その状態で、ポンプ34を駆動することにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を減少させて車輪に生じる制動力を減少させる。そして、制動制御部62bは、込め弁31及び弛め弁32の双方を閉鎖することにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を保持し車輪に生じる制動力を保持する。その後、制動制御部62bは、込め弁31を開放し、弛め弁32を閉鎖することにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増大させて車輪に生じる制動力を増大させる。なお、制動制御部62bは、前輪制動機構12及び後輪制動機構14の各々の動作を個別に制御することによって、前輪3に生じる制動力と後輪4に生じる制動力とを個別に制御することができる。
上記のように、制御装置60では、制御部62は、車輪のスリップ度が上限値(つまり、スリップ度上限値)を超えた場合に、アンチロックブレーキ制御を実行する。ここで、制御部62は、スリップ度上限値を第1閾値と第2閾値(具体的には、第1閾値と比べてアンチロックブレーキ制御が実行されやすくなる閾値)との間で切り替える。それにより、シフトダウンが行われた場合にもライダーの意図通りに車両を制動することが実現される。このような制御装置60が行うアンチロックブレーキ制御におけるスリップ度上限値の切り替えに関する処理については、後述にて詳細に説明する。
<制御装置の動作>
図4~図7を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置60の動作について説明する。
上述したように、本実施形態では、アンチロックブレーキ制御におけるスリップ度上限値を第1閾値と第2閾値との間で切り替える処理によって、シフトダウンが行われた場合にもライダーの意図通りに車両を制動することが実現される。
第2閾値は、第1閾値と比べてアンチロックブレーキ制御が実行されやすくなる閾値である。つまり、第2閾値は、第1閾値よりも小さい。ここで、スリップ度上限値は、通常時には、第1閾値に設定されている。第1閾値は、シフトダウンに起因して車輪(具体的には、駆動輪である後輪4)のスリップが生じた場合に想定されるスリップ度よりも大きい。つまり、スリップ度上限値が第1閾値に設定されている場合には、シフトダウンが行われた場合にアンチロックブレーキ制御が不必要に実行されることが抑制される。一方、特定の場合に(具体的には、後述されるように、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の増加傾向を示す情報である場合に)、スリップ度上限値が第2閾値に切り替えられる。スリップ度上限値が第2閾値に設定されている場合には、路面状況に起因して後輪4のスリップが生じた場合にアンチロックブレーキ制御を適切に実行させることができる。
ここで、制御部62は、例えば、モータサイクル100のギア段に基づいて第1閾値を変化させることが好ましい。具体的には、制御部62は、ギアポジションセンサ94の検出結果に基づいてギア段を示す情報を取得することによって、ギア段に基づいて第1閾値を変化させることができる。
図4は、モータサイクル100の各ギア段における車速とエンジン回転数との関係性の一例を示す模式図である。図4では、横軸が車速を示し、縦軸がエンジン回転数を示している。図4に示される例では、モータサイクル100の変速機構80は、低速側から順に、第1ギア段G1、第2ギア段G2、第3ギア段G3、第4ギア段G4、第5ギア段G5、第6ギア段G6の6つのギア段を有している。
例えば、図4に示されるように、モータサイクル100のギア段が第3ギア段G3になっている状態で車速が速度V2である場合、エンジン回転数は回転数N1となる。この状況で、シフトダウンが行われ、ギア段が第3ギア段G3から第2ギア段G2に変化した場合、車速が速度V2に維持される一方で、後輪4の車輪速は、矢印A1で示されるように、まず、速度V2から速度V1に減少し、その後、エンジン回転数が回転数N1から回転数N2に増加することに伴って速度V2まで増加する。
上記のように、第3ギア段G3からのシフトダウンでは、後輪4のスリップ率は、(V2-V1)/V2程度の大きさになることが想定される。ゆえに、制御部62は、ギア段が第3ギア段G3になっている場合、(V2-V1)/V2程度のスリップ率が生じた場合であってもアンチロックブレーキ制御が実行されないような値に第1閾値を設定する。
なお、制御部62は、上記と異なる他のパラメータに基づいて第1閾値を変化させてもよい。
制御部62は、例えば、モータサイクル100の車速に基づいて第1閾値を変化させてもよい。具体的には、制御部62は、前輪車輪速センサ91及び後輪車輪速センサ92の検出結果に基づいてモータサイクル100の車速を示す情報を取得することによって、車速に基づいて第1閾値を変化させることができる。
例えば、図4に示される例において、車速が速度V2である場合、モータサイクル100のギア段は、第2ギア段G2、第3ギア段G3、第4ギア段G4、第5ギア段G5、第6ギア段G6の5つのギア段のうちのいずれかである。ここで、低速側のギア段では、高速側のギア段と比較して、シフトダウン時に生じる後輪4のスリップ率が大きくなる。ゆえに、制御部62は、例えば、第2ギア段G2からのシフトダウンで想定される程度のスリップ率が生じた場合であってもアンチロックブレーキ制御が実行されないような値に第1閾値を設定する。
また、制御部62は、例えば、モータサイクル100のエンジン回転数に基づいて第1閾値を変化させてもよい。具体的には、制御部62は、エンジン回転数センサ93の検出結果に基づいてモータサイクル100のエンジン回転数を示す情報を取得することによって、エンジン回転数に基づいて第1閾値を変化させることができる。
例えば、図4に示される例において、エンジン回転数がN1であり、車速が速度V2である場合、エンジン回転数を車速で除して得られるN1/V2をギア比(つまり、変速比)として特定する。そして、ギア比がN1/V2となる第3ギア段G3をギア段として特定する。この場合、制御部62は、第3ギア段G3からのシフトダウンで想定される程度のスリップ率(つまり、(V2-V1)/V2程度のスリップ率)が生じた場合であってもアンチロックブレーキ制御が実行されないような値に第1閾値を設定する。
図5は、制御装置60が行うアンチロックブレーキ制御におけるスリップ度上限値の切り替えに関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示される制御フローは、具体的には、制御装置60の制御部62によって繰り返し行われる。また、図5におけるステップS101及びステップS110は、図5に示される制御フローの開始及び終了にそれぞれ対応する。
図6は、モータサイクル100の走行時にシフトダウンが行われた場合の各種状態量の推移を示す模式図である。一方、図7は、モータサイクル100の走行時に路面状況に起因して車輪のスリップが生じた場合の各種状態量の推移を示す模式図である。図6及び図7では、横軸が時間を示し、縦軸が各種状態量を示している。図6及び図7では、各種状態量として、車体速である車速Vb、後輪4の車輪速Vw及び車輪速閾値Vthの推移が示されている。車輪速閾値Vthは、スリップ度上限値と対応する車輪速Vwの閾値であり、制御部62は、車輪速Vwが車輪速閾値Vthを下回った場合に、アンチロックブレーキ制御を実行する。図6及び図7では、スリップ度上限値の第1閾値と対応する車輪速Vwの閾値である第1車輪速閾値th1と、スリップ度上限値の第2閾値と対応する車輪速Vwの閾値である第2車輪速閾値th2とが示されている。
以下、図6及び図7を適宜参照しながら、図5に示される制御フローについて説明する。なお、図5に示される制御フローは、スリップ度上限値が第1閾値となっている状態(つまり、車輪速閾値Vthが第1車輪速閾値th1となっている状態)で開始される。
図5に示される制御フローが開始されると、ステップS102において、制御部62は、後輪4のスリップが発生したか否かを判定する。
制御部62は、例えば、後輪4の車輪速に基づいて、後輪4のスリップが発生したか否かを判定し、後輪4のスリップが発生したと判定した時点をスリップの発生時点として特定する。例えば、制御部62は、後輪4の車輪速と車速との差が基準差より大きくなった場合に、後輪4のスリップが発生したと判定し、このような判定が行われた時点を発生時点として特定する。上記の基準差は、後輪4のスリップが生じていると判断し得る程度の大きさの値に設定される。
後輪4のスリップが発生したと判定された場合(ステップS102/YES)、ステップS103に進み、制御部62は、後輪4のスリップ開始後の基準時点を決定する。一方、後輪4のスリップが発生していないと判定された場合(ステップS102/NO)、ステップS102の判定処理が繰り返される。
基準時点は、後述されるステップS105の処理が実行される時点(つまり、後輪4の状態情報として後輪4の車輪速Vwが取得される時点)である。制御部62は、スリップの発生時点に基づいて基準時点を決定する。例えば、制御部62は、スリップの発生時点から基準時間Δt経過後の時点を基準時点とする。このように、基準時点として、スリップの発生時点から基準時間Δt経過後の時点が採用されてもよい。
図6に示される例では、時点t11において、後輪4の車輪速Vwと車速Vbとの差が基準差より大きくなり、制御部62は、後輪4のスリップが発生したと判定し、時点t11をスリップの発生時点として特定する。そして、制御部62は、時点t11から基準時間Δt経過後の時点t12を基準時点とする。
図7に示される例では、時点t21において、後輪4の車輪速Vwと車速Vbとの差が基準差より大きくなり、制御部62は、後輪4のスリップが発生したと判定し、時点t21をスリップの発生時点として特定する。そして、制御部62は、時点t21から基準時間Δt経過後の時点t22を基準時点とする。
上述したように、基準時点において、後輪4の状態情報として後輪4の車輪速Vwが取得される(ステップS105)。そして、後述されるステップS106において、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の増加傾向を示す情報であるか否かが判定される。なお、本明細書中では、増加傾向は、対象となる物理量が所定時間に亘って基本的に増加するように推移することを意味し、減少傾向は、対象となる物理量が所定時間に亘って基本的に減少するように推移することを意味する。
ここで、路面状況に起因して後輪4のスリップが生じた場合、スリップ発生後において、アンチロックブレーキ制御が実行されないと、後輪4のスリップ度は増加し続ける(つまり、車輪速Vwが減少し続ける)。一方、シフトダウンに起因して後輪4のスリップが生じた場合、スリップ発生後において、アンチロックブレーキ制御が実行されなくても、後輪4のスリップ度は増加から減少に転じ(つまり、車輪速Vwが減少から増加に転じ)、スリップが解消される。
本実施形態では、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の増加傾向を示す情報であると判定された場合、路面状況に起因して後輪4のスリップが生じたと判断することができる点に着目して、スリップ度上限値が第1閾値から第2閾値に切り替えられる(具体的には、車輪速閾値Vthが第1車輪速閾値th1から第2車輪速閾値th2に切り替えられる)。一方、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の減少傾向を示す情報であると判定された場合、シフトダウンに起因して後輪4のスリップが生じたと判断することができる点に着目して、スリップ度上限値が第1閾値に維持される(具体的には、車輪速閾値Vthが第1車輪速閾値th1に維持される)。ゆえに、基準時点は、シフトダウンに起因して後輪4のスリップが生じた場合に後輪4のスリップ度が減少傾向となっていると想定される時点に決定される。
ここで、基準時点を適切に決定する観点では、制御部62は、モータサイクル100のギア段に基づいて基準時点を変化させることが好ましい。具体的には、制御部62は、ギアポジションセンサ94の検出結果に基づいてギア段を示す情報を取得することによって、ギア段に基づいて基準時点を変化させることができる。なお、基準時点の調整は、例えば、基準時間Δtを調整することによって実現され得る。
上述したように、ギア段に応じてシフトダウン時に生じるスリップ率は異なり得る。ゆえに、シフトダウンに伴うスリップの発生後において後輪4のスリップ度が増加から減少に転じるタイミングは、ギア段に応じて異なり得る。よって、例えば、図4に示される例において、ギア段が第3ギア段G3である場合、制御部62は、シフトダウンに伴うスリップの発生後において後輪4のスリップ度が増加から減少に転じるタイミングとして第3ギア段G3からのシフトダウンで想定されるタイミングよりも後の時点になるように基準時点を決定する。
なお、制御部62は、上記と異なる他のパラメータに基づいて基準時点を変化させてもよい。
制御部62は、例えば、モータサイクル100の車速に基づいて基準時点を変化させてもよい。具体的には、制御部62は、前輪車輪速センサ91及び後輪車輪速センサ92の検出結果に基づいてモータサイクル100の車速を示す情報を取得することによって、車速に基づいて基準時点を変化させることができる。
例えば、図4に示される例において、車速が速度V2である場合、モータサイクル100のギア段は、第2ギア段G2、第3ギア段G3、第4ギア段G4、第5ギア段G5、第6ギア段G6の5つのギア段のうちのいずれかである。ここで、低速側のギア段では、高速側のギア段と比較して、シフトダウン時に生じる後輪4のスリップ率が大きくなるので、スリップの発生後において後輪4のスリップ度が増加から減少に転じるタイミングが遅くなる。ゆえに、制御部62は、例えば、シフトダウンに伴うスリップの発生後においてスリップ度が増加から減少に転じるタイミングとして第2ギア段G2からのシフトダウンで想定されるタイミングよりも後の時点になるように基準時点を決定する。
また、制御部62は、例えば、モータサイクル100のエンジン回転数に基づいて基準時点を変化させてもよい。具体的には、制御部62は、エンジン回転数センサ93の検出結果に基づいてモータサイクル100のエンジン回転数を示す情報を取得することによって、エンジン回転数に基づいて基準時点を変化させることができる。
例えば、図4に示される例において、エンジン回転数がN1であり、車速が速度V2である場合、エンジン回転数を車速で除して得られるN1/V2をギア比として特定する。そして、ギア比がN1/V2となる第3ギア段G3をギア段として特定する。この場合、制御部62は、シフトダウンに伴うスリップの発生後において後輪4のスリップ度が増加から減少に転じるタイミングとして第3ギア段G3からのシフトダウンで想定されるタイミングよりも後の時点になるように基準時点を決定する。
なお、上記では、後輪4の車輪速Vwと車速Vbとの差が基準差より大きくなった場合に後輪4のスリップが発生したと判定される例を説明したが、制御部62は、例えば、後輪4の車輪速Vwが第2車輪速閾値th2を下回った場合に、後輪4のスリップが発生したと判定してもよい。
また、上記では、後輪4の車輪速Vw自体に基づいてスリップの発生時点が特定される例を説明したが、制御部62は、例えば、後輪4の車輪速Vwの変化度合い(例えば、単位時間あたりの変化量である時間変化率)に基づいてスリップの発生時点を特定してもよい。例えば、制御部62は、後輪4の車輪速Vwが減少しており、かつ、車輪速Vwの時間変化率の絶対値が基準値より大きくなった場合に、後輪4のスリップが発生したと判定してもよい。上記の基準値は、後輪4のスリップが生じていると判断し得る程度の大きさの値に設定される。
図5中のステップS103の次に、ステップS104において、制御部62は、基準時点に到達したか否かを判定する。基準時点に到達したと判定された場合(ステップS104/YES)、ステップS105に進み、制御部62は、後輪4の状態情報として後輪4の車輪速Vwを取得する。一方、基準時点に到達していないと判定された場合(ステップS104/NO)、ステップS104の判定処理が繰り返される。
状態情報は、ステップS106の判定処理(具体的には、後輪4のスリップ度が増加傾向であるか減少傾向であるかの判定処理)に用いられる情報である。ステップS105では、具体的には、車輪速Vwの増減傾向を判断し得る複数のデータ(例えば、基準時点に検出された車輪速Vwと当該基準時点の前に検出された車輪速Vwを含むデータ群)が状態情報として取得される。
ステップS105の次に、ステップS106において、制御部62は、状態情報(つまり、後輪4の車輪速Vw)が後輪4のスリップ度の増加傾向を示す情報であるか否かを判定する。
具体的には、制御部62は、後輪4の状態情報(つまり、後輪4の車輪速Vw)が後輪4のスリップ度の増加傾向を示す情報であるか否かを、後輪4の車輪速Vwの増減傾向に基づいて判定する。より具体的には、制御部62は、後輪4の車輪速Vwが減少傾向である場合、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の増加傾向を示す情報であると判定する。一方、制御部62は、後輪4の車輪速Vwが増加傾向である場合、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の減少傾向を示す情報であると判定する。
例えば、基準時点における車輪速Vwの時間変化率が0より大きい場合、車輪速Vwが増加傾向であるとし、基準時点における車輪速Vwの時間変化率が0より小さい場合、車輪速Vwが減少傾向であるとしてもよい。また、例えば、基準時点を含む所定時間内の各時点での車輪速Vwの時間変化率の平均値が0より大きい場合、車輪速Vwが増加傾向であるとし、基準時点を含む所定時間内の各時点での車輪速Vwの時間変化率の平均値が0より小さい場合、車輪速Vwが減少傾向であるとしてもよい。
状態情報が後輪4のスリップ度の増加傾向を示す情報でない(つまり、状態情報が後輪4のスリップ度の減少傾向を示す情報である)と判定された場合(ステップS106/NO)、図5に示される制御フローは終了する。つまり、この場合、制御部62は、スリップ度上限値を第1閾値に維持する(具体的には、車輪速閾値Vthを第1車輪速閾値th1に維持する)。
図6に示される例では、基準時点であるt12において車輪速Vwが増加傾向であるので、制御部62は、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の減少傾向を示す情報であると判定する(つまり、ステップS106でNOと判定される)。ゆえに、時点t12以降において、制御部62は、車輪速閾値Vthを第1車輪速閾値th1に維持する。図6に示される例では、上述したように、シフトダウンに起因して後輪4のスリップが生じている。この場合、図6に示されるように、時点t12以降において、アンチロックブレーキ制御が実行されないものの、車輪速Vwが増加し、スリップが解消される。上記のように、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の減少傾向を示す情報である場合に、車輪速閾値Vthを第1車輪速閾値th1に維持することによって、アンチロックブレーキ制御が不必要に実行されることを適切に抑制することができる。
状態情報が後輪4のスリップ度の増加傾向を示す情報であると判定された場合(ステップS106/YES)、ステップS107に進み、制御部62は、スリップ度上限値を第1閾値から第2閾値に切り替える(具体的には、車輪速閾値Vthを第1車輪速閾値th1から第2車輪速閾値th2に切り替える)。
図7に示される例では、基準時点である時点t22において車輪速Vwが減少傾向であるので、制御部62は、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の増加傾向を示す情報であると判定する(つまり、ステップS106でYESと判定される)。ゆえに、時点t22において、制御部62は、車輪速閾値Vthを第1車輪速閾値th1から第2車輪速閾値th2に切り替える。図7に示される例では、上述したように、路面状況に起因して後輪4のスリップが生じている。この場合、仮にアンチロックブレーキ制御が実行されないと、車輪速Vwが減少し続けるが、図7に示される例では、時点t22の後の時点t23において、車輪速Vwが第2車輪速閾値th2を下回り、アンチロックブレーキ制御が実行される。それにより、時点t23以降において、車輪速Vwが減少から増加に転じ、スリップが解消される。
図5中のステップS106でYESと判定された場合において、ステップS107の次に、ステップS108において、制御部62は、後輪4のスリップ度が0になった又は下限値を下回ったか否かを判定する。
制御部62は、例えば、後輪4の車輪速Vwと車速Vbとの差が基準差より小さくなった場合に、後輪4のスリップ度が0になった又は下限値を下回ったと判定する。上記の基準差は、後輪4のスリップが解消され、アンチロックブレーキ制御を実行する必要性がなくなったと判断し得る程度の大きさの値に設定される。
後輪4のスリップ度が0になった又は下限値を下回ったと判定された場合(ステップS108/YES)、ステップS109に進み、制御部62は、スリップ度上限値を第2閾値から第1閾値に切り替え(具体的には、車輪速閾値Vthを第2車輪速閾値th2から第1車輪速閾値th1に切り替え)、図5に示される制御フローは終了する。一方、後輪4のスリップ度が0になった又は下限値を下回ったと判定されなかった場合(ステップS108/NO)、ステップS108の判定処理が繰り返される。
図7に示される例では、上述したように、時点t22において、ステップS107が実行されて、車輪速閾値Vthが第1車輪速閾値th1から第2車輪速閾値th2に切り替えられる。その後、時刻t24において、後輪4のスリップ度が0になった又は下限値を下回ったと判定され、制御部62は、車輪速閾値Vthを第2車輪速閾値th2から第1車輪速閾値th1に切り替える。
なお、上記では、後輪4の状態情報として後輪4の車輪速Vwが用いられる例を説明したが、後輪4の状態情報として他の情報が用いられてもよい。例えば、制御部62は、後輪4の状態情報として後輪4のスリップ率を取得してもよい。この場合、制御部62は、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の増加傾向を示す情報であるか否かを、後輪4のスリップ率の増減傾向に基づいて判定する。具体的には、制御部62は、後輪4のスリップ率が増加傾向である場合、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の増加傾向を示す情報であると判定する。一方、制御部62は、後輪4のスリップ率が減少傾向である場合、後輪4の状態情報が後輪4のスリップ度の減少傾向を示す情報であると判定する。
例えば、基準時点における後輪4のスリップ率の時間変化率が0より大きい場合、当該スリップ率が増加傾向であるとし、基準時点における後輪4のスリップ率の時間変化率が0より小さい場合、当該スリップ率が減少傾向であるとしてもよい。また、例えば、基準時点を含む所定時間内の各時点での後輪4のスリップ率の時間変化率の平均値が0より大きい場合、当該スリップ率が増加傾向であるとし、基準時点を含む所定時間内の各時点での後輪4のスリップ率の時間変化率の平均値が0より小さい場合、当該スリップ率が減少傾向であるとしてもよい。
<制御装置の効果>
本発明の実施形態に係る制御装置60の効果について説明する。
制御装置60では、車輪(具体的には、駆動輪である後輪4)のスリップ開始後の基準時点における上記車輪の状態情報を取得し、上記車輪の状態情報が上記車輪のスリップ度の増加傾向を示す情報である場合、スリップ度上限値を第1閾値から第1閾値と比べてアンチロックブレーキ制御が実行されやすくなる第2閾値に切り替える。それにより、シフトダウンが行われた場合にアンチロックブレーキ制御が不必要に実行されることを抑制しつつ、路面状況に起因して上記車輪のスリップが生じた場合にアンチロックブレーキ制御を適切に実行させることができる。ゆえに、シフトダウンが行われた場合にもライダーの意図通りに車両を制動することができる。
ここで、シフトダウンが行われた場合にアンチロックブレーキ制御が不必要に実行されることを抑制する他の方法として、スリップ度上限値を基本的に第2閾値に設定し、ギアポジションセンサ94の出力に基づいてシフトダウンを検知したことをトリガとしてスリップ度上限値を第2閾値から第1閾値に切り替える方法が考えられる。しかしながら、ギアポジションセンサ94の仕様に起因して、シフトダウンが検知されるタイミングが、実際にシフトダウンが行われたタイミングに対して遅れる場合がある。ゆえに、シフトダウンを検知したことをトリガとしてスリップ度上限値を第2閾値から第1閾値に切り替える方法では、シフトダウンが行われた場合にアンチロックブレーキ制御が不必要に実行されることを抑制する方法として十分ではない。一方、本実施形態では、ギアポジションセンサ94の仕様によらず、シフトダウンが行われた場合にアンチロックブレーキ制御が不必要に実行されることを抑制することができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、上記車輪の状態情報が上記車輪のスリップ度の減少傾向を示す情報である場合、スリップ度上限値を第1閾値に維持する。ここで、上記車輪の状態情報が上記車輪のスリップ度の減少傾向を示す情報である場合、シフトダウンに起因して上記車輪のスリップが生じている。この場合、アンチロックブレーキ制御が実行されなくても、スリップが解消される。ゆえに、上記車輪の状態情報が上記車輪のスリップ度の減少傾向を示す情報である場合に、スリップ度上限値を第1閾値に維持することによって、アンチロックブレーキ制御が不必要に実行されることを適切に抑制することができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、スリップ度上限値を第1閾値から第2閾値に切り替えた後において、上記車輪のスリップ度が0になった又は下限値を下回った場合、スリップ度上限値を第2閾値から第1閾値に切り替える。それにより、上記車輪のスリップが解消され、アンチロックブレーキ制御を実行する必要性がなくなった場合に、スリップ度上限値を第2閾値から第1閾値に戻すことができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、モータサイクル100のギア段に基づいて第1閾値を変化させる。それにより、シフトダウンで想定される程度のスリップ度が生じた場合であってもアンチロックブレーキ制御が実行されないような値に第1閾値を適切に設定することができる。ゆえに、シフトダウンが行われた場合にアンチロックブレーキ制御が不必要に実行されることを適切に抑制することができる。また、ギアポジションセンサ94を利用して取得されるギア段を示す情報を用いて第1閾値を適切に変化させることができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、モータサイクル100の車速に基づいて第1閾値を変化させる。それにより、シフトダウンで想定される程度のスリップ度が生じた場合であってもアンチロックブレーキ制御が実行されないような値に第1閾値を適切に設定することができる。ゆえに、シフトダウンが行われた場合にアンチロックブレーキ制御が不必要に実行されることを適切に抑制することができる。また、前輪車輪速センサ91及び後輪車輪速センサ92を利用して取得される車速を示す情報を用いて第1閾値を適切に変化させることができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、モータサイクル100のエンジン回転数に基づいて第1閾値を変化させる。それにより、シフトダウンで想定される程度のスリップ度が生じた場合であってもアンチロックブレーキ制御が実行されないような値に第1閾値を適切に設定することができる。ゆえに、シフトダウンが行われた場合にアンチロックブレーキ制御が不必要に実行されることを適切に抑制することができる。また、エンジン回転数センサ93を利用して取得されるエンジン回転数を示す情報を用いて第1閾値を適切に変化させることができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、モータサイクル100のギア段に基づいて基準時点を変化させる。それにより、シフトダウンに伴うスリップの発生後において上記車輪のスリップ度が増加から減少に転じるタイミングとして想定されるタイミングよりも後の時点になるように基準時点を適正化することができる。ゆえに、路面状況に起因して上記車輪のスリップが生じたのか、シフトダウンに起因して上記車輪のスリップが生じたのかを、基準時点における上記車輪の状態情報を用いて適切に判断することができる。また、ギアポジションセンサ94を利用して取得されるギア段を示す情報を用いて基準時点を適切に決定することができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、モータサイクル100の車速に基づいて基準時点を変化させる。それにより、シフトダウンに伴うスリップの発生後において上記車輪のスリップ度が増加から減少に転じるタイミングとして想定されるタイミングよりも後の時点になるように基準時点を適正化することができる。ゆえに、路面状況に起因して上記車輪のスリップが生じたのか、シフトダウンに起因して上記車輪のスリップが生じたのかを、基準時点における上記車輪の状態情報を用いて適切に判断することができる。また、前輪車輪速センサ91及び後輪車輪速センサ92を利用して取得される車速を示す情報を用いて基準時点を適切に決定することができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、モータサイクル100のエンジン回転数に基づいて基準時点を変化させる。それにより、シフトダウンに伴うスリップの発生後において上記車輪のスリップ度が増加から減少に転じるタイミングとして想定されるタイミングよりも後の時点になるように基準時点を適正化することができる。ゆえに、路面状況に起因して上記車輪のスリップが生じたのか、シフトダウンに起因して上記車輪のスリップが生じたのかを、基準時点における上記車輪の状態情報を用いて適切に判断することができる。また、エンジン回転数センサ93を利用して取得されるエンジン回転数を示す情報を用いて基準時点を適切に決定することができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、上記車輪のスリップの発生時点を特定し、発生時点に基づいて基準時点を決定する。それにより、シフトダウンに起因して上記車輪のスリップが生じた場合に上記車輪のスリップ度が減少傾向となっていると想定される時点を基準時点として決定することを適切に実現することができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、上記車輪の車輪速に基づいて上記車輪のスリップの発生時点を特定する。それにより、上記車輪のスリップの発生時点を適切に特定することができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、上記車輪の状態情報として上記車輪の車輪速を取得し、上記車輪の状態情報が上記車輪のスリップ度の増加傾向を示す情報であるか否かを、上記車輪の車輪速の増減傾向に基づいて判定する。それにより、車輪速を用いてスリップ率を特定する処理を省略しつつ、上記車輪の状態情報が上記車輪のスリップ度の増加傾向を示す情報であるか否かを適切に判定することができる。ゆえに、スリップ度上限値の切り替えに関する処理を簡素化することができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、上記車輪の状態情報として上記車輪のスリップ率を取得し、上記車輪の状態情報が上記車輪のスリップ度の増加傾向を示す情報であるか否かを、上記車輪のスリップ率の増減傾向に基づいて判定する。それにより、上記車輪の状態情報が上記車輪のスリップ度の増加傾向を示す情報であるか否かを適切に判定することができる。
本発明は実施形態の説明に限定されない。例えば、実施形態の一部のみが実施されてもよい。