JP7434066B2 - 電気・電子機器用部品 - Google Patents

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Description

本発明は、電気・電子機器用部品に関する。
近年、電気・電子機器の高機能化、高性能化によって発熱量が増加する傾向がある。また、電気・電子機器の小型化が進むことで、発熱密度が増加するため、発生した熱を冷却することが重要になってきている。発生した熱を冷却するための部材としては、例えば、面状のヒートパイプであるベーパーチャンバが挙げられる。ベーパーチャンバの素材としては、高い熱伝導率を有する銅系材料(銅、銅合金)を用いることが望まれる。
ここで、ベーパーチャンバは、2枚の板を重ねた状態で外周部を接合して形成した内部空間に作動液を入れ、その後、減圧封入することによって接合された密閉構造を有する。かかる接合方法としては、例えば、レーザ溶接、抵抗溶接、拡散接合、TIG溶接が挙げられる。
これら溶接で接合される場合、溶接部は、高温に加熱されることにより一度融解させた後に再凝固させることによって形成されるため、板材を焼きなましをした場合と同様、軟質化して、板材自体の強度よりも軟質化して強度が低くなるという問題がある。強度が低くなると、変形しやすくなる。
このような問題に対して、特許文献1には、複数の部品を拡散接合やろう付けで接合してベーパーチャンバを製造する方法において、筐体の素材として析出硬化型銅合金を用い、時効処理して析出硬化させることで、筐体の強度等を向上させる技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1の技術では、析出硬化型銅合金を用いる必要があり、非析出型銅合金や、純銅には適用できないという問題がある。また、特許文献1の技術では、時効処理を行う必要があり、工程数増加に伴う生産性の低下が生じるという問題がある。
このため、析出硬化型銅合金を用い時効処理して析出硬化させる方法以外の方法によって、溶接部の強度を高くすることが望まれる。
上述した溶接部の強度が低くなるという問題は、ベーパーチャンバに限らず、バスバー等のその他の電気・電子機器においても同様に存在する。
なお、特許文献2には、レーザを特定の軌跡で照射することにより、接合強度を向上させる技術が開示されているが、特許文献2の技術は、アルミと銅との接合に関する技術であり、銅系材料同士の接合には適用し難い。詳述すると、銅系材料は、熱伝導率が高いため熱が逃げやすく、また、レーザ光が反射しやすいため、銅系材料は、レーザ溶接による接合をし難い材料である。このため、特許文献2のように、レーザ光を用いた単純な溶接では、接合強度が低く十分に接合できない。
国際公開第2018/199219号 特開2017-168340号公報
従来、様々な溶接がされてきたが、例えば、抵抗溶接は、溶接部と非溶接部の硬さの傾斜が大きく、拡散接合では、部材全体が軟化するため、硬さの傾斜がなくなってしまう。逆に、硬さの傾斜が大きい場合では、低強度な溶接部に応力集中が生じ変形し易くなる。その変形を手直しする際に、曲が戻し等の加工によってクラックが入りやすくなり、部品が破損する問題点があった。一方、全体が軟化している場合では、部材に硬さがなくなることで剛性がなくなることから、容易に変形が生じてしまう問題点があった。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ベーパーチャンバやバスバーなどの溶接部を有する電気・電子機器用部品において、溶接部と板材全体の硬さおよび板材全体の硬さの傾斜を制御することによって、剛性があり、かつ、溶接部の曲げ戻し加工性に強い電気・電子機器用部品を提供することを課題とする。
本発明者らは、溶接部から非溶接部に適切な硬さ、およびその硬さの傾斜を制御することによって、剛性があり、かつ、溶接部の曲げ戻しに強くなることを見出し、本発明の電気・電子機器用部品を完成するに至った。
(1)90質量%以上のCuを含有する複数の板材で構成され、前記複数の板材同士を、互いに突き合わせた状態、又は重ね合わせた状態で線状又は点状に接合して一体化する溶接部を有し、前記溶接部を横断する方向に、一体化した前記複数の板材を切断したときの断面で見て、前記溶接部と、前記溶接部に隣接して位置する非溶接部とにおいて、前記溶接部が、板材表面の溶接痕の幅を溶接幅として、その溶接幅の中央と、前記非溶接部が、前記溶接部の中心から溶接幅の幅方向に沿って溶接幅の1.5倍の距離とで、それぞれのビッカース硬さHV1およびHV2を測定したときの、前記非溶接部でのビッカース硬さHV2が75以上であり、かつ、前記非溶接部でのビッカース硬さHV2と、前記溶接部でのビッカース硬さHV1との差を、ビッカース硬さHV1およびHV2を測定した位置間の直線距離X(μm)で除したときの数値((HV2-HV1)/X)が、0.2/μm以下である、電気・電子機器用部品。
(2)前記板材が、Ag、Fe、Ni、Co、Si、Cr、Sn、Zn、MgおよびPからなる群より選択される1種以上の元素を含み、かつ、
前記非溶接部でのビッカース硬さHV2が75~240の範囲である、(1)に記載の電気・電子機器用部品。
(3)前記板材が、99.96質量%以上のCuおよび不可避不純物であり、かつ、
前記非溶接部でのビッカース硬さHV2が75~120の範囲である、(1)に記載の電気・電子機器用部品。
(4)前記電気・電子機器用部品がベーパーチャンバである、(1)~(3)に記載の電気・電子機器用部品。
(5)前記電気・電子機器用部品がバスバーである、(1)~(3)に記載の電気・電子機器用部品。
本発明の電気・電子機器用部品で、溶接部で適切な硬さを得て、かつ、溶接部から非溶接部への間で硬さの傾斜を制御することで、剛性があり、かつ、溶接部の曲げ戻しに強い電気・電子機器用部品を提供することができる。
(a)は、2枚のCu板材を突き合わせた状態で線状に接合したときの概略斜視図であり、(b)は、2枚のCu板材を重ね合わせた状態で線状に接合したときの概略斜視図である。 突き合わせたCu板材を接合したCu部材の表面状態を観察したときの光学顕微鏡写真である。 接合したCu板材の断面状態を観察したときの光学顕微鏡写真である。 レーザ溶接装置の概略構成を示す図である。 レーザ溶接装置のレーザ光の大きさを示す図である。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
(電気・電子機器用部品)
本発明の一実施形態である電気・電子機器用部品は、90質量%以上のCuを含有する複数の板材(以下、「Cu板材」と記している。)で構成され、複数の板材同士を、互いに突き合わせた状態、又は重ね合わせた状態で線状または点状に接合して一体化する溶接部を有し、溶接部を横断する方向に、一体化した複数の板材を切断したときの断面で見て、溶接部と、溶接部に隣接して位置する非溶接部とにおいて、溶接部が、板材表面の溶接痕の幅を溶接幅として、その溶接幅の中央と、非溶接部が、溶接部の中心から溶接幅の幅方向に沿って溶接幅の半分の長さ(溶接半幅)の1.5倍の距離とで、それぞれのビッカース硬さHV1及びHV2を測定したときの、熱影響部でのビッカース硬さHV2が75以上であり、かつ、熱影響部でのビッカース硬さHV2と、溶接部でのビッカース硬さHV1との差を、ビッカース硬さHV1およびHV2を測定した位置間の直線距離X(μm)で除したときの数値(以下、「硬さ傾斜率」という場合がある。)((HV2-HV1)/X)が、0.2/μm以下である。
(線状の溶接)
図1(a) (図1の説明のみ番号を付している。)に示すように、2枚のCu板材101、102を突き合せた状態にして配置するCu部材10である。その突き合せた状態の中心にレーザ光を照射して掃引することで、2枚のCu板材101、102を線状に溶接して、溶接部12の中心121で突き合わされて接合する。ここでは、レーザ光を掃引することで、線状の接合部を形成する。強いレーザ光が照射された部分は、溶融した液体状のCuが形成される。その後、レーザ光が通過した後は、Cuは高い熱伝導率のために、液体状のCuが急速に冷却して固体状のCuに変化する。これが、連続的に進行すると、波状のビードを有する溶接部12が形成される。一旦溶融し凝固していることから明らかにCu板材101、102の母材11とは異なる状態となっている。さらに、その溶接部12の周囲には、熱の影響を受けてCu板材101、102の母材11の表面と異なる状態の熱影響を受けた部分が形成される。この熱影響を受けた部分は、熱の影響を受けてCu板材101、102の母材11の特性も変質している。熱影響を受けた部分に対する熱は、レーザ光の照射による熱と、溶接部12から発している熱の両方がある。図1(b)に示すように、2枚のCu板材101、102を重ね合わせた状態にしてレーザ光を照射して掃引することで、Cu板材表面を線状に溶接したCu部材10である。十分な接合強度を得るために、重ね合ったCu板材が溶接で接合されたY軸方向の幅が表面の溶接幅の1/2以上になるように溶接する。
(点状の溶接)
2枚のCu板材を突き合せた状態の中心を、レーザ光を掃引することなく、照射して接合することで点状の接合部を形成することができる。レーザ光の形状は、円形状、楕円形状、樽型形状、矩形型形状のいずれであってもよい。また、点状とは、破線状であっても、互いに別個に溶接部が存在する状態であればよい。点状の溶接には、突き合せた場合の接合では、Cu板材を板厚方向に貫通させても、途中で金属Cuの溶融を止めるものであってもよい。また、2枚のCu板材を重ね合わせた状態で、レーザ光を照射して点状に接合するものであってもよい。この場合も、十分な接合強度を得るために、重ね合ったCu板材が溶接で接合されたY軸方向の幅が表面の溶接幅の1/2以上になるように溶接する。
(Cu部材の表面状態)
図2は、突き合わせたCu板材をレーザ溶接して接合したCu部材の表面状態を示す写真で、X軸方向がレーザ掃引方向であることを示している。また、レーザ光の照射を受けて、Cu板材の圧延の加工跡が消滅している部分があることが分かる。さらに、Cu板材が溶融して、再度凝固した部分があり溶接部であることが明らかに見て取れる。図中で示されるレーザ溶接の跡の溶接部の幅を本発明における溶接幅と規定し、また点線状の断面観察位置で切断し、断面組織の観察を行った。
(線状接合のビッカース硬さの測定の位置)
図3は、Cu板材をレーザ溶接して接合したCu部材の断面状態を示す光学顕微鏡写真である。図3に示すように、レーザ光を照射して溶融した後に凝固することによって接合した溶接部分を溶接幅と表している。図3からの断面図から見ても、レーザ光を照射した側のCu板材表面の溶接痕の幅を明らかに認めることができる。溶接部の中心から、溶接幅の半分の長さ(溶接半幅)の1.5倍の距離だけ溶接幅の方向に沿って進めた地点を非溶接部と称し、この2点における板厚方向で、図3中の矢印で示しているように、その溶接幅の中央で板厚方向の深さは板厚の1/2の位置におけるそれぞれ溶接部と非溶接部のビッカース硬さHV1、HV2を測定する。
また溶接幅が板厚よりも小さい場合には板厚方向の深さは溶接幅の1/2の位置で測定する。
(ビッカース硬さ)
ビッカース硬さとは、「JIS Z 2244」で規格化された測定方法である。ビッカース硬さHVは、ダイヤモンドでできた剛体(圧子)を被試験物に対して押し込み、そのときにできるくぼみ(圧痕)の面積の大小で硬いか軟らかいかを数値で表したものである。圧子は、ピラミッドをひっくり返したような四角錐形状を有しているので、圧痕は理想的には正方形である。試験力は可変で、JIS規格では10gf~100kgfまで規定されている。
ここでは、板材の裏表に溶接痕がある場合には、溶接痕の幅が広い方をレーザ照射表面側とする。また、重ね合わせ接合の場合には、レーザ照射表面側の材料を測定する。ここで板厚方向の深さは溶接幅が板厚よりも大きい場合は板厚の1/2、
溶接幅が板厚よりも小さい場合は溶接幅の1/2とする。
比較的レーザ照射表面に近い位置で観察するのは、レーザ照射表面側がレーザ照射の熱影響を受けているためである。
(硬さの傾斜率)
非溶接部の測定は、図1(a)で示す突き合せの場合は溶接部の中心から、レーザ光の進む方向に直角の両側の地点を測定し、その平均値を測定した非溶接部のビッカース硬さHV2とする。また、図1(b)で示す重ね合わせの場合は溶接部の中心から、レーザ光の進む方向に直角で、近い端部と反対側の地点を測定し非溶接部のビッカース硬さHV2とする。
このときのCu板材は、溶接部の中心と非溶接部の2点におけるビッカース硬さHV1、HV2を測定する。それを、非溶接部でのビッカース硬さHV2と、溶接部の中心でのビッカース硬さHV1との差を、ビッカース硬さHV1およびHV2を測定した位置間の直線距離Xμmで除したときの数値((HV2-HV1)/X)を硬さ傾斜率とする。
(点状接合のビッカース硬さの測定位置)
点状の溶接では、溶接幅は、点状の溶接部で最も幅の広い部分を溶接幅とし、その部分の断面を測定する面とする。したがって、非溶接部は、点状の溶接部に隣接していて、溶接部の中心から溶接幅の幅方向に沿って溶接幅の1.5倍の距離の部分をいう。
したがって、点状の最も幅の広い部分の中心点と、そこから一定の距離の離れた非溶接部の点で硬さを測定する。これによって、ビッカース硬さHV1、HV2を測定し、硬さ傾斜率を求めることができる。
(硬さの分布)
硬さは、Cu板材の特に表面に変形や傷を与えられようとする時の、物体の変形しにくさ、物体の傷つきにくさを表している。特に、2枚のCu板材を溶接して接合した接合体では、硬さに分布があるとクラックが入るなどして割れやすくなる。これは、硬さの高い硬質部分と硬さの低い軟質部分が混在する板材に応力がかかると、変形応力が集中するために、硬さの低い部分にクラックが生ずることがある。そのために、レーザ溶接処理の急熱・急冷によって、熱の影響を受けた部分と、溶融・凝固した溶接部で熱の影響に大きな差があるCu板材では、応力に対して脆くなり、クラックが容易に入る傾向がある。そのために、電気・電子機器用部品の製造時に曲げ加工を施したり、曲げを戻す加工を施したりすることで、硬さ傾斜率が大きいとクラックが入り破損することがある。
したがって、Cu板材の母材、非溶接部、溶接部における硬さの変化を表す硬さ傾斜率が小さいことが望ましい。硬さ傾斜率が大きいほど、Cu板材の母材、非溶接部、溶接部の間における硬さの差が大きくなることであり、応力が集中する部分を形成することで脆くなり、クラックが入り易くなる。したがって、溶接部でのビッカース硬さHV1と、溶接部に隣接して位置する非溶接部でのビッカース硬さHV2との差を、ビッカース硬さHV1およびHV2を測定した位置間の直線距離X(μm)で除したときの数値である硬さ傾斜率((HV2-HV1)/X)を、0.2/μm以下にし、より好ましくは0.1/μm以下にする。
さらに、電気・電子機器用部品として実用するためには容易に変形するようでは実用上問題があり、Cu板材の母材自身の硬さによる剛性が必要となり、そのために、本発明では、溶接部以外のCu板材部分、特に溶接部に隣接して位置する非溶接部でのビッカース硬さHV2を75以上とすることが必要である。
(Cu合金の板材)
Cuの含有量が90質量%以上である板材であればよく、純CuでもいずれのCu合金でもよく、特に限定はされない。
電気・電子機器用部品として用いるCu板材がCu合金の場合には、合金成分としてAg、Fe、Ni、Co、Si、Cr、Sn、Zn、Mg、Pから選ばれる1種から2種以上の元素を含み残部のCuが90質量%以上である成分組成を有することが好ましい。Cu合金は、析出硬化型Cu合金でも、非析出硬化型Cu合金でもよい。板材がCu合金の場合、非溶接部でのビッカース硬さHV2が75~240の範囲にある。
Cu板材としてはCu合金を用いることで、硬さ傾斜率を0.2/μm以下にしてクラックの発生を抑える。さらに、硬さ傾斜率だけではなく、Cu板材の母材、非溶接部、溶接部のいずれも硬いことが好ましく、特に、非溶接部でのビッカース硬さHV2が75~240の範囲であることが好ましい。Cu合金板材は、非溶接部でのビッカース硬さHV2が75未満では、加工時に変形しやすくなる。非溶接部でのビッカース硬さHV2が240を超えると、曲げ戻しの加工を加えたときに、非溶接部と母材、溶接部との境界でクラックが入りやすくなる。
(純Cuの板材)
また、電気・電子機器用部品として用いるCu板材が、99.96質量%以上のCuおよび不可避不純物を含む純Cuである場合には、非溶接部でのビッカース硬さHV2が75~120の範囲であることが好ましい。Cu板材の母材、溶接部、非溶接部の硬さの傾斜が小さいことが好ましく、純Cu板材を用いることで、硬さ傾斜率を0.1/μm以下にすることができ、曲げ戻し特性がよりよくすることができる。特に、純Cu板材で、非溶接部でのビッカース硬さHV2が75未満では、加工時に変形しやすくなる。非溶接部でのビッカース硬さHV2が120を超えると、曲げ戻しの加工を加えたときに、非溶接部と母材および溶接部と非溶接部の境界でクラックが入りやすくなる。なお、いわゆる純Cuは、電気銅、無酸素銅(OFC)、TPC 等を例に挙げることができる。
(Cu板材の形状)
また、Cu板材とは、所定の形状、例えば、板、条、箔、棒、線などに加工されたものであって、所定の厚みを有する形状のものであって、広義には条材を含む意味である。本発明において、板材の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.05~1.0mm、さらに好ましくは0.1~0.8mmである。
(Cu合金の成分組成)
Cu板材が機械的特性と電気的特性を両立するCu合金の場合の成分組成の限定理由を説明する。
(1)板材がCu合金である場合
Cu合金は、Ag、Fe、Ni、Co、Si、Cr、Sn、Zn、MgおよびPからなる群より選択される1種以上の元素を含むことが好ましい。
(Ag:0.05~5.00質量%)
Ag(銀)は、電気的特性を損ねることなく機械的特性を向上させる作用を有する成分であり、かかる作用を発揮させる場合には、Ag含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。また、Ag含有量の上限については特に設ける必要はないが、Agは高価であるため、材料コストの観点から、Ag含有量の上限を5.0質量%とすることが好ましい。
(Fe:0.05~0.50質量%)
Fe(鉄)は、機械的特性を向上する作用を有する成分である。かかる作用を発揮させる場合には、Fe含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、Feを0.50質量%より多く含有させても、それ以上の向上効果が期待できず、さらに耐食性の懸念が生じる。このため、Fe含有量は、0.05~0.50質量%とすることが好ましい。
(Ni:0.05~5.00質量%)
Ni(ニッケル)は、Cuの母相(マトリクス)中に、単体またはSiとの化合物からなる第二相粒子の析出物として、例えば50~500nm程度の大きさで微細析出し、この析出物が転位移動を抑制することにより析出硬化させ、さらに、粒成長が抑制されて結晶粒の微細化によって材料強度を上昇させる作用を有する成分である。かかる作用を発揮させる場合には、Ni含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。一方、Ni含有量が5.00質量%を超えると、導電率や熱伝導率の低下が顕著になることから、Ni含有量の上限は5.00質量%とすることが好ましい。
(Co:0.05~2.00質量%)
Co(コバルト)は、Cuの母相(マトリクス)中に、単体またはSiとの化合物からなる第二相粒子の析出物として、例えば50~500nm程度の大きさで微細析出し、この析出物が転位移動を抑制することにより析出硬化させ、さらに、粒成長が抑制されて結晶粒の微細化によって材料強度を上昇させる作用を有する成分である。かかる作用を発揮させる場合には、Co含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。一方、Co含有量が2.00量%を超えると、導電率や熱伝導率の低下が顕著になることから、Co含有量の上限は2.00質量%とすることが好ましい。
(Si:0.05~1.10質量%)
Si(珪素)は、Cuの母相(マトリクス)中に、NiやCoなどとともに化合物からなる第二相粒子の析出物として微細析出し、この析出物が転位移動を抑制することにより析出硬化させ、さらに、粒成長が抑制されて結晶粒の微細化によって材料強度を上昇させる作用を有する重要な成分である。かかる作用を発揮させる場合には、Si含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。一方、Si含有量が1.10質量%を超えると、導電率や熱伝導率の低下が顕著になることから、Si含有量の上限は1.10質量%にすることが好ましい。
(Cr:0.05~0.50質量%)
Cr(クロム)は、Cuの母相(マトリクス)中に、化合物や単体として、例えば10~500nm程度の大きさの析出物の形で微細析出し、この析出物が転位移動を抑制することにより析出硬化させ、さらに、粒成長が抑制されて結晶粒の微細化によって材料強度を上昇させる作用を有する成分である。この作用を発揮させる場合には、Cr含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。また、Cr含有量が0.50質量%を超えると、導電率および熱伝導率の低下が顕著になることから、Cr含有量は、0.05~0.50質量%とすることが好ましい。
(Sn:0.05~9.50質量%)
Sn(錫)は、Cuの母相(マトリクス)中に固溶し、Cu合金の強度向上に寄与する成分であり、Sn含有量は0.05質量%以上とすることが好ましい。一方、Sn含有量が9.50%を超えると脆化が生じやすくなる。このため、Sn含有量は0.05~9.50質量%とすることが好ましい。また、Snの含有は、導電率および熱伝導率を低下させる傾向があることから、導電率及び熱伝導率の低下を抑制する場合には、Sn含有量を0.05~0.50質量%とするのがより好ましい。
(Zn:0.05~0.50質量%)
Zn(亜鉛)は、Snめっきやはんだめっきの密着性やマイグレーション特性を改善する作用を有する成分である。かかる作用を発揮させる場合には、Zn含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。一方、Zn含有量が0.50質量%を超えると、溶接時に亜鉛の蒸気量が増え、溶接部に欠陥を生じる恐れがある。このため、Zn含有量は、0.05~0.50質量%とすることが好ましい。
(Mg:0.01~0.50質量%)
Mg(マグネシウム)は、耐応力緩和特性を向上させる作用を有する成分である。かかる作用を発揮させる場合には、Mg含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。一方、Mg含有量が0.50質量%を超えると、導電率や熱伝導率が低下する傾向がある。このため、Mg含有量は、0.01~0.50質量%とすることが好ましい。
(P:0.01~0.50質量%)
P(リン)はCu合金の脱酸材として寄与するだけでなく、化合物として20~500nm程度の大きさの析出物の形で微細析出し、この析出物が転位移動を抑制することにより析出硬化させ、さらに、粒成長が抑制されて結晶粒の微細化によって材料強度を上昇させることができる。かかる作用を発揮させるためにはP含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。一方、P含有量が0.50質量%を超えると、板材成形時の熱間加工で割れが生じやすくなる傾向がある。このため、P含有量は、0.01~0.50質量%とする。
(純Cuの成分組成)
(2)板材が導電性や放熱性に優れた純Cuである場合
純Cuは、99.96%以上のCuかつ、不可避不純物として、たとえばCd、Mg、Pb、Sn、Cr、Bi、Se、Teが合計5ppm以下かつ、Ag、Oがそれぞれ400ppm以下である成分組成を有することが好ましい。
(電気・電子機器用部品の製造方法)
本発明の一実施形態である電気・電子機器用部品の製造方法は、90質量%以上のCuを含有する複数の板材同士を、互いに突き合わせた状態又は重ね合わせた状態にセットした後に、前記複数の板材同士の被接合ライン上に沿って、400~500nmの波長を有する第1レーザ光を100~500μmのスポット径で照射した後に、800~1200nmの波長を有する第2レーザ光を10~300μmのスポット径で照射して、前記複数の板材同士を線状に接合して一体化する溶接工程を含み、溶接工程では、第1レーザ光の照射走査方向のスポット径の先端が、被接合ライン上の任意の位置である第1位置を通過してから、第2レーザ光の照射走査方向のスポット径の先端が第1位置を通過するまでの通過時間差は、50~1500μsecである。
このように、レーザ光が400nm以上500nm以下の波長をもつレーザ光1を100から500μmのスポット径で照射し、かつ、800nm以上かつ1200nm以下の波長をもつ第2レーザ光を10から300μmのスポット径で照射することで、従来困難であったCu板材の溶接を容易にさせた上、異なる波長、スポット径のレーザを用いて、かつ、第1レーザ光の進行方向のスポット先端と第2レーザ光の進行方向のスポット先端の通過時間差を50μsec以上1500μsec以下にすることで、Cu板材のCu板材の母材、非溶接部、溶接部における硬さの変化を抑え、さらに、Cu板材の非溶接部、溶接部の硬さの傾斜を低く抑える電気・電子機器用部品を製造することができる。
なお、本発明の実施例では十分な接合強度を得るために、重ね合わせの場合は重ね合った板が溶接で接合されたY軸方向の幅が表面の溶接幅の1/2以上になるように製造した。
(レーザ溶接法)
レーザ溶接法は、指向性や集中性の良い波長の光をレンズで集め、きわめて高いエネルギー密度のレーザ光を熱源とする溶接方法である。レーザ光の出力を調整することで、深さに対して幅の狭い溶込み溶接も可能である。また、レーザ光は、アーク溶接のアークに比べてきわめて小さく絞り込むことができる。集光レンズにより高密度化されたエネルギーで、レーザ溶接装置は局所の溶接や融点の異なる材料の接合が可能である。溶接による熱影響が少なく溶接の模様は細く、加工反力も発生しないため、微細な溶接にも向いている。
(レーザ溶接装置)
図4は、レーザ溶接装置の概略構成の一例を示す図である。レーザ溶接装置20は、制御部21、レーザ発振器221、222、レーザヘッド29、加工台24、ガス供給ノズル30を備えている。加工台14上に被加工材であるCu板材111、112を解き合わせた状態又は重ね合わせた状態にして配置する。制御部21は、レーザ光を発振するレーザ発振器221、222、図示しないスキャナ、レーザヘッド29、加工台等の制御を行う。制御部21は、例えば、図示しないX軸モータ及びY軸モータの回転を制御することによって、被加工材であるCu板材111、112の進路方向を制御する。また、制御部21は、レーザ光231、232を移動させ制御するものであってもよい。これは、被加工材の大きさによって適宜選択することができる。制御部21は、レーザ発振器221、222から発振される複数の第1及び第2レーザ光231、232を発振する。発振した第1及び第2レーザ光231、232は、グラスファイバー25を通して、レーザヘッド29内の第1及び第2集光レンズ261、262によって平行な光に集められる。この第1及び第2レーザ光231、232を第1及び第2ミラー271、272で加工台の方向に変更し、この第1及び第2レーザ光231、232を集束レンズ28でCu板材の接合部に集束して照射させることで、溶接を実施する。このときに、ガス供給ノズル30から、レーザ光による過熱によって生ずる酸化を防止するために、不活性ガスを供給する。不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム等から適宜選択することができる。
レーザは溶接用のレーザとして公知のものの中から適宜選択することができる。レーザの一例としてCOレーザ、Nd:YAGレーザ、半導体レーザ、ファイバレーザなどが挙げられる。出力やレーザ光の集光性などの点からファイバレーザを用いることが好ましい。レーザ加工総装置のその他の構成は、従来公知のあらゆる構成から選択することができる。
(レーザ溶接)
図5は、レーザ溶接装置のレーザ光のスポット径を示す図である。図5に示すように、レーザ光が400nm以上500nm以下の波長をもつ第1レーザ光231を100から500μmのスポット径で照射する。そして、800nm以上かつ1200nm以下の波長をもつ第2レーザ光232を10から300μmのスポット径で照射する。複数のレーザ光を同時に照射することで、従来困難であったCu板材を容易に溶接することが可能になった。その上、異なる波長、異なるスポット径の複数のレーザ光を用いて、かつ、第1レーザ光231の進行方向のスポット径先端と第2レーザ光232の進行方向のスポット径先端の通過時間差を50μsec以上1500μsec以下にする。これにより、曲げ加工、または、曲げ戻し加工を施して電気・電子機器用部品を製造するときのクラックの発生を防止することができる。
また、電気・電子機器用部品の製造方法における溶接工程では、図5に示すように、第1レーザ光231の照射走査方向のスポット径の先端が接合箇所を通過してから、第2レーザ光232の照射走査方向のスポット径の先端が第1レーザ光231が通過した接合箇所と同じ位置を通過するまでの通過時間差は、50~1500μsecである電気・電子機器用部品の製造方法である。通過時間差とは、図5(a)に示すように、第1レーザ光231の先端がCu部材のある地点P1を通過した後に、図5(b)に示すように、第2レーザ光232が同じ方向に進行し、先の地点P1を通過するまでの時間差を示している。したがって、この通過時間差とは、P1-P2間の距離ではなく、あくまで、第2レーザ光232が地点P1を通過するまでの時間差を表している。
本発明の電気・電子機器用部品は、複数の板材を、互いに突き合わせ又は重ね合わせた状態にセットした後に、複数の板材同士の接合箇所に、第1及び第2レーザ光231、232で照射して、複数の板材同士を線状又は点状に接合して一体化する。Cu板材表面のみ効率よく浸透する第1レーザ光231を第2レーザ光232より広い範囲でCu板材を予熱させ、予熱が冷める前にCu板材に深く浸透する第2レーザ光232を照射することで、ブローホールや内部欠陥などの不良がほぼ生じない溶接加工を施すことができる。
第1及び第2レーザ光231、232の波長及びスポット径の範囲外であると、表面品質が低下したり、溶接ができなかったりするため、不適当である。また、第1レーザ光231による予熱を制御すると、第2レーザ光232で板材を溶融、凝固させる際の冷却速度に影響を与えており、鋭意検討した結果、通過時間差が50μsec以上、1500μsec以下にすることで、Cu板材のCu板材の母材、非溶接部、溶接部における硬さの変化を抑え、さらに、Cu板材の非溶接部、溶接部の硬さの傾斜を低く抑えることができることがわかった。通過時間差が50μsec未満であると予熱が不十分であり、1500μsec以上であると予熱が抜けてしまうため、溶接部が凝固する際の冷却速度が上昇し、Cu板材の母材、非溶接部、溶接部の硬さが大きく変化するために所望の硬さ、硬さの傾斜率が得られなかった。なお、第1及び第2レーザ光231、232の波長およびスポット径が範囲外であると、表面にブローホール等の欠陥が生じるため不適当である。
(溶接の効果)
このように、所定の成分組成を有するCu板材の母材、非溶接部、溶接部を制御することによって、硬さがあって剛性があり、かつ、溶接部の曲げ戻し加工性に強い電気・電子機器用部品を得ることができる。
(電気・電子機器への適用)
本発明の電気・電子機器用部品は、半導体装置、LSI、あるいはこれらを利用した多くの電子機器で使用することが考えられる、さらに、例えば、特に小型化、高集積化の必要がある、家庭用ゲーム機、医療機器、ワークステーション、サーバー、パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション、携帯電話、ロボットのコネクタ、バッテリー端子、ジャック、リレー、スイッチ、オートフォーカスカメラモジュール、リードフレーム等の電気・電子機器への利用が可能である。
(ベーパーチャンバ)
特に、クラックの発生の少ない曲げ戻し加工性に優れた特性を有していることで、ヒートパイプ、ベーパーチャンバに適用することが好ましい。特に、ベーパーチャンバの製品の構造材としてクラックが発生しにくいことから、クラックに由来する使用時のリークや腐食が改善されるため、熱伝導性の低下を抑制し、ベーパーチャンバの製品の劣化の抑制、長寿命化に貢献することができる。
(バスバー)
また、バスバーは、曲げ戻し加工性に優れた特性を有していることで、電気的に接続する電気経路、また、放熱のための輸送経路としても適用することができる。特に、発熱部分からバスバーをつないで放熱部分又は外部まで経路を設けることで冷却装置としても適用できる。
(実施例1~10、比較例1~11:Cu合金で2枚の同じ板材の突き合せによる接合)
実施例1~10、比較例1~11では、Cu合金の板材2枚をt=0.15mm、幅20mm、長さ1000mmに切り出し、それぞれの長さ1000mmが接するように突き合せて配置し、幅20mmをレーザ光が400nm以上500nm以下の波長をもつレーザ光を100から500μmのスポット径で照射し、かつ、800nm以上かつ1200nm以下の波長をもつレーザ光を10から300μmのスポット径で100から400mm/秒で掃引し、溶接した。
溶接したCu板材を幅方向に切断した。板材を樹脂埋込後にクロスセクションポリッシャ加工(型番:SM-09010、メーカー:日本電子株式会社)して、表面が滑らかな材料断面を得た。この滑らかな表面の硬さを測定した。
(硬さ、距離、硬さ傾斜率)
硬さはビッカース硬度計(型番:HM-215、メーカー:株式会社ミツトヨ)で、JIS Z2244(2009)に規定の方法に準拠して測定した。このとき、溶接幅の中心に圧子を移動させ、正四角錐ダイヤモンドで作られた圧子を材料表面に押し込んでいる。その時の、荷重(試験力)は100gfであり、圧痕の対角線長さが0.03mmを超えない範囲で選択して試験した。なお、圧子の圧下時間(押し込み時間)は15secである。その後、圧子をCu板材の溶接幅の中心から、溶接幅の1.5倍の距離を移動させて、再度、硬さを測定した。このときに、移動距離と硬さを記録している。これによって、硬さと移動距離と硬さ傾斜率を求めた。
また、同じ組成の板材を用いている場合は、測定箇所の2点を測定し、その平均値を求めた。異なる組成の板材を用いている場合は2点を測定し、それぞれの硬さと硬さ傾斜率を求めた。また、曲が戻し試験は片側それぞれでクラックが入るか評価した。
また、重ね合わせ状態で接合した場合は、レーザ照射表面側の材料について、溶接部の中心から、近い端部と反対側の非溶接部を測定して、硬さの評価を行った。

(曲げ戻し試験)
曲げ戻し試験は、溶接部中央から0.1mm外したところを頂点とした90°曲げ試験を行った後、平坦に戻し、再度曲げ試験を行う作業を5回行った。幅中央10mmの位置の断面を観察し、5回目まで表面または溶接部にクラックが無いものを「◎」、3回目までは、表面または溶接部にクラックが無いものの、4回目又は5回目でクラックが発生したものを「〇」、3回目以下でクラックが発生したものを「×」として評価した。
なお、成分組成の異なるCu合金板材・純Cu板材を突き合せて溶接した実施例等では、片側だけにクラックが入った時点で曲げ戻し試験は終了し、その時の回数で評価した。
表1~7には、成分組成、板厚、レーザ溶接の条件と、溶接部および非溶接部に関する測定データとして溶接部の硬さ、非溶接部の硬さ、溶接幅、測定距離、硬さ傾斜率と、性能評価として曲げ戻し試験の結果を表している。
Figure 0007434066000001
実施例1~10は、80~1390μsecの間で照射することで、断面における非溶接部の硬さHV2が、75以上であり、かつ、硬さ傾斜率が0.2/μm以下である。曲げ戻し試験の結果はすべて「〇」以上になっている。これに対して比較例1~6は、断面における非溶接部の硬さが、75以上であるが、硬さ傾斜率が0.2/μmを越えている。曲げ戻し試験の結果はすべて「×」になっている。また、比較例7は断面における非溶接部の硬さが75未満である。比較例8、9は断面における非溶接部の硬さが75以上であるが、硬さ傾斜率が0.2/μmを越えている。比較例10は、溶接できずに未接合状態であった。比較例11は、非溶接部の硬さが75以上であるが、硬さ傾斜率が0.2/μmを越えている。曲げ戻し試験の結果はすべて「×」になっている。したがって、比較例1~11は電気・電子機器部品として適用することは困難であることがわかる。
(実施例11~20、比較例12~21:Cu合金で2枚の同じ板材の重ね合わせによる接合)
実施例11~20および比較例12~21では、Cu合金の板材を、2枚を重ね合わせて溶接したこと以外の条件は実施例1と同様である。
Figure 0007434066000002
表2の結果から、実施例11~20は、断面における非溶接部の硬さHV2がいずれも75以上であり、かつ、硬さ傾斜率が0.2/μm以下である。曲げ戻し試験の結果はすべて「〇」以上になっている。
これに対して比較例12~21は、断面における非溶接部の硬さHV2がいずれも75以上であるが、硬さ傾斜率がいずれも0.2/μmを越えている。曲げ戻し試験の結果はすべて「×」になっている。
(実施例21~23、比較例22~24:純Cuで2枚の同じ板材の突き合せによる接合)
実施例21~23、比較例22~24では、純Cu合金の板材を、2枚を突き合せて溶接したこと以外の条件は実施例1と同様である。
Figure 0007434066000003
実施例21~23は、断面における非溶接部の硬さが、75以上であり、かつ、硬さ傾斜率が0.1/μm以下であり、曲げ戻し試験の結果はすべて「◎」になっている。
これに対して比較例22は、断面における非溶接部の硬さが、75以上であるが、硬さ傾斜率が0.2/μmを越えている。曲げ戻し試験の結果は「×」となっている。また、比較例23、24は、溶接できずに未接合状態で、曲げ試験の評価はできなかった。
(実施例24、25、比較例25、26:純Cuで2枚の同じ板材の重ね合わせによる接合)
実施例24、25、比較例25、26では、純Cuの板材を、2枚を重ね合わせて溶接したこと以外の条件は実施例1と同様である。なお、上述したように、重ね合わせによるCu部材の測定は、溶接部の中心から、レーザ光の進む方向に直角で、端部と反対側の地点を測定したビッカース硬さHV2とする。
Figure 0007434066000004
実施例24、25は、断面における非溶接部の硬さが、75以上であり、かつ、硬さ傾斜率が0.1/μm以下であり、曲げ戻し試験の結果はいずれも「◎」になっている。
これに対して比較例25は、断面における非溶接部の硬さHV2が75以上であるが、硬さ傾斜率が0.2/μmを越えている。比較例26は、断面における非溶接部の硬さHV2が75未満である。曲げ戻し試験の結果はいずれも「×」である。
(実施例26~28、比較例27~29:Cu合金で2枚の異なる組成の板材の突き合せによる接合)
実施例26~28、比較例27~29では、Cu合金の板材であって、成分組成の異なる2枚のCu板材を突き合せた状態に配置し、実施例1と同等の条件で溶接した。
Figure 0007434066000005
実施例26~28は、断面における非溶接部の硬さHV2が75以上であり、かつ、硬さ傾斜率が0.2/μm以下である。曲げ戻し試験の結果はすべて「〇」になっている。
比較例27~29は、溶接部の中心の両側の非溶接部を測定している。比較例27は、硬さ傾斜率がそれぞれ「0.19」「0.25」であった。曲げ戻し試験では、クラックは両側で独立に発生することから、片側だけでもクラックは発生する。したがって、比較例27は、片側の硬さ傾斜率が0.2/μmを越えていることで、クラックが発生し、曲げ戻し試験の結果は「×」なっている。比較例28、29は、断面における非溶接部の硬さが、75以上であるが、両側の硬さ傾斜率が0.2/μmを越えている。曲げ戻し試験の結果はすべて「×」になっている。
(実施例29、30、比較例30、31:純Cuで2枚の異なる組成の同じ板材の突き合せによる接合)
実施例29、30、比較例30、31では、純Cuの板材であって、成分組成の異なる2枚のCu板材を突き合せた状態に配置し、実施例1と同等の条件で溶接した。
Figure 0007434066000006
実施例29、30は、断面における非溶接部の硬さHV2が75以上であり、かつ、硬さ傾斜率が0.1/μm以下であり、曲げ戻し試験の結果はいずれも「◎」になっている。
これに対して比較例30、31は、断面における非溶接部の硬さHV2が75以上である。しかし、溶接部の中心から両側のそれぞれのCu板材とも硬さ傾斜率が0.2/μmを越えている。曲げ戻し試験の結果は「×」となっている。
(実施例31、比較例32:Cu合金と純Cuの板材の突き合せによる接合)
実施例31、比較例32では、Cu合金と純Cuの板材の異なる2枚のCu板材を突き合せた状態に配置し、実施例1と同等の条件で溶接した。
Figure 0007434066000007
実施例31は、断面における非溶接部の硬さHV2が75以上であり、かつ、硬さ傾斜率がいずれの板材とも0.2/μm以下である。曲げ戻し試験の結果は「〇」になっている。
これに対して比較例32は、断面における非溶接部の硬さHV2が75以上であるが、特に、Cu合金側の硬さ傾斜率が0.2/μm超えである。曲げ戻し試験の結果は「×」となっている。
以上、これらの実施例・比較例により、非溶接部は、ビッカース硬さが75以上であり、かつ、硬さ傾斜率が0.2/μm以下であれば、曲げ戻し試験には実用上問題がないことがわかる。したがって、本発明により、ベーパーチャンバやバスバーなどの溶接部を有する電気・電子機器用部品において、溶接部・非溶接部の硬さを制御することによって、剛性があり、かつ、溶接部での曲げ戻しに強い電気・電子機器用部品を得られることがわかる。
10 Cu部材
101、102 Cu板材
111、112 Cu板材
11 母材
12 溶接部
121 溶接部の中心
13 熱影響を受けた部分
20 レーザ溶接装置
21 制御部
22 発振器
221 第1発振器
222 第2発振器
23 レーザ光
231 第1レーザ光
232 第2レーザ光
24 加工台
25 グラスファイバー
26 集光レンズ
261 第1集光レンズ
262 第2集光レンズ
27 ミラー
271 第1ミラー
272 第2ミラー
28 集束レンズ
29 レーザヘッド
30 ガス供給ノズル

Claims (5)

  1. 90質量%以上のCuを含有する複数の板材で構成され、
    前記複数の板材同士を、互いに突き合わせた状態又は重ね合わせた状態で線状または点状に接合して一体化する溶接部を有し、
    前記溶接部を横断する方向に、一体化した前記複数の板材を切断したときの断面で見て、前記溶接部と、前記溶接部に隣接して位置する非溶接部とにおいて、
    材表面の溶接痕の幅を溶接幅として、その溶接幅の中央と、
    記溶接部の中心から溶接幅の幅方向に沿って溶接幅の1.5倍の距離とで、
    前記溶接幅が板厚よりも大きい場合前記板材の板厚方向に対して板厚の1/2の位置、または、前記溶接幅が板厚よりも小さい場合前記板材の板厚方向に対して溶接幅の1/2の位置において測定されるビッカース硬さHVをそれぞれ前記溶接部のビッカース硬さHV1及び前記非溶接部のビッカース硬さHV2としたときに、前記非溶接部でのビッカース硬さHV2が75以上であり、かつ、前記非溶接部でのビッカース硬さHV2と、前記溶接部でのビッカース硬さHV1との差を、ビッカース硬さHV1およびHV2を測定した位置間の直線距離X(μm)で除したときの数値((HV2-HV1)/X)が、0.2/μm以下である、
    ことを特徴とする電気・電子機器用部品。
  2. 前記板材が、Ag、Fe、Ni、Co、Si、Cr、Sn、Zn、MgおよびPからなる群より選択される1種以上の元素を含み、かつ、
    前記非溶接部でのビッカース硬さHV2が75~240の範囲である、請求項1に記載の電気・電子機器用部品。
  3. 前記板材が、99.96質量%以上のCuおよび不可避不純物であり、かつ、
    前記非溶接部でのビッカース硬さHV2が75~120の範囲である、請求項1に記載の電気・電子機器用部品。
  4. 前記電気・電子機器用部品がベーパーチャンバである、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気・電子機器用部品。
  5. 前記電気・電子機器用部品がバスバーである、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気・電子機器用部品。
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