JP7423395B2 - オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法に関する。
近年、エネルギー需要のひっ迫から発電ボイラ、石油精製や石油化学工業用プラントの新設が進んでおり、そのプラント設備に使用されるオーステナイト系ステンレス鋼の厚板および鋼管には、優れた耐食性はもちろん、欠陥のない溶接部を形成可能であることが求められている。
このような技術的背景のもとに、例えば、特許文献1には、溶接後のHAZにおける液化割れを抑制するとともに高温での長時間使用の際のHAZにおける脆化割れを抑制可能なオーステナイト系ステンレス鋼として、質量%で、C:0.04%未満、Si:1.5%以下、Mn:2%以下、Cr:15~25%、Ni:6~30%、N:0.02~0.35%、sol.Al:0.03%以下を含むとともに、Nb:0.5%以下、Ti:0.4%以下、V:0.4%以下、Ta:0.2%以下、Hf:0.2%以下およびZr:0.2%以下のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のP、S、Sn、As、Zn、PbおよびSbがそれぞれ、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Sn:0.1%以下、As:0.01%以下、Zn:0.01%以下、Pb:0.01%以下およびSb:0.01%以下で、かつ下記の(1)式および(2)式で表されるF1およびF2の値がそれぞれ、F1≦0.075および0.05≦F2≦1.7-9×F1を満足するオーステナイト系ステンレス鋼が記載されている。
F1=S+{(P+Sn)/2}+{(As+Zn+Pb+Sb)/5}・・・(1)、F2=Nb+Ta+Zr+Hf+2Ti+(V/10)・・・(2)。
オーステナイト系ステンレス鋼からなる厚板の溶接継手を製造する場合は、手順として、鋼板の端部にX形開先を形成してから、サブマージアーク溶接の多層溶接を行うことが考えられる。しかし、実際に溶接を行うと、多層溶接のうちの1層目のビード形成時に、溶け込み不足による融合不良が生じてしまう問題がある。具体的には、X形開先の開先角度、ルート面、ルート間隔等の寸法を調整しても、融合不良を解消することができない。溶接時の入熱量を増加させれば融合不良は解消するが、その一方で溶接後の溶接金属において凝固割れが発生してしまう問題があった。
特許第4258679号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、融合不良や凝固割れの発生を防止可能なオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 質量%で、
C:0.10%以下、
Si:1.5%以下、
Mn:2.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.03%以下、
Cu:0.50%以下、
Ni:6~13%、
Cr:15~25%、
Mo:0.1~1.0%、
V:0.4%以下、
Nb:0.20~1.00%、
B:0.0010~0.0020%、
N:0.1%以下、
Al:0.04%以下、
O:0.02%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼板を母材とし、前記母材同士に対してサブマージアーク溶接の多層溶接を行うことで溶接継手を形成する際に、
前記母材の開先形状として、X形開先のルート面をなす端面同士を相互に突出させて突出部を設けた開先形状とし、
前記突出部の突出方向の長さL(mm)と、ルート面H(mm)と、表面側及び裏面側の初層ビード形成時の入熱量Q(kJ/mm)との関係が下記(1)式を満足し、かつ、前記Lが0mm超である、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
0.40≦(L+0.5)/H×Q≦2.5 ・・・(1)
[2] 前記オーステナイト系ステンレス鋼板が、更に質量%で、
Co:1.0%以下、
Ta:0.4%以下、
Ti:0.4%以下、
W:0.4%以下、
Ca:0.02%以下、
Mg:0.02%以下
からなる群から選択される1種または2種以上の元素を含有する[1]に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
[3] 一方の前記母材における前記突出部の突出長さLと、他方の前記母材における前記突出部の突出長さLとが異なる長さとされており、かつ、突出長さL及びL(mm)と、ルート面H(mm)と、表面側及び裏面側の初層ビード形成時の入熱量Q(kJ/mm)との関係が下記式(2)及び下記式(3)の両方を満足する、[1]または[2]に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
0.40≦(L+0.5)/H×Q≦2.5 ・・・(2)
0.40≦(L+0.5)/H×Q≦2.5 ・・・(3)
[4] 前記突出部の厚みが、突出方向に沿って一定である、[1]乃至[3]の何れか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
[5] 前記突出部の厚みが、突出方向に沿って減少する、[1]乃至[3]の何れか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
本発明によれば、融合不良や凝固割れの発生を防止可能なオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法を提供できる。
図1は、従来のX形開先を示す模式図。 図2は、本発明の実施形態であるオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法における開先形状を示す模式図。 図3は、本発明の実施形態であるオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法を説明する工程図。 図4は、本発明の実施形態であるオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法を説明する工程図。 図5は、本発明の実施形態であるオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法における開先形状の他の例を示す模式図。
オーステナイト系ステンレス鋼からなる厚板の溶接継手を製造する場合、図1に示すように、鋼板の端部にX形開先101を形成してから、サブマージアーク溶接の多層溶接を行うことが考えられる。しかし、実際に溶接を行うと、多層溶接のうちの1層目のビード形成時に、溶け込み不足による融合不良が生じる。X形開先101の開先角度θ(°)、ルート面H(mm)、ルート間隔D(mm)等を調整しても、融合不良を解消することができない。
そこで、本発明者らが、開先形状及び入熱量について鋭意検討したところ、X形開先に突出部を設けるとともに、突出部と初層ビード形成時の入熱量との関係を最適化することにより、融合不良を生じさせず、かつ、溶接後の溶接金属における凝固割れを防止できることを見出した。
以下、本発明の実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法を説明する。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法は、質量%で、C:0.10%以下、Si:1.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Cu:0.50%以下、Ni:6~13%、Cr:15~25%、Mo:0.1~1.0%、V:0.4%以下、Nb:0.20~1.00%、B:0.0010~0.0020%、N:0.1%以下、Al:0.04%以下、O:0.02%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼板を母材とし、母材同士に対してサブマージアーク溶接の多層溶接を行うことで溶接継手を形成する際に、母材の開先形状として、X形開先のルート面をなす端面同士を相互に突出させて突出部を設けた開先形状とし、突出部の突出方向の長さL(mm)と、ルート面H(mm)と、表面側及び裏面側の初層ビード形成時の入熱量Q(kJ/mm)との関係が下記(1)式を満足し、かつ、Lが0mm超である、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法である。
0.40≦(L+0.5)/H×Q≦2.5 ・・・(1)
まず、母材であるオーステナイト系ステンレス鋼板について説明する。
以下、オーステナイト系ステンレス鋼板における成分元素の限定理由について詳しく説明する。なお、以下の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
C:0.10%以下
Cは、耐食性を抑制するために、その含有量は極力低減することが望ましい。Cの含有量が過剰になり、特に0.10%超になると、耐食性が低下する。したがって、Cの含有量を0.10%以下とする。一方、Cは、オーステナイト相を安定化する効果を有する。このため、Cは0.001%以上含有させてもよい。Cの含有量は0.09%以下であってもよく、0.08%以下であってもよい。
Si:1.5%以下
Siは、オーステナイト系ステンレス鋼の溶製時に脱酸作用を有する。しかしながら、その含有量が過剰になり、特に、1.5%を超えると、Siがフェライト相を安定化させる元素であるためにオーステナイト相の安定性を低下させる。したがって、Siの含有量は1.5%以下とする。なお、Siの含有量は1.0%以下であってもよい。一方、Siの効果を確実に得るためには、Si含有量は0.02%以上とすることが望ましく、0.1%以上とすれば一層望ましい。
Mn:2.0%以下
Mnは、オーステナイト相を安定化させる元素であるとともに、溶製時の脱酸に有効な元素である。しかしながら、その含有量が2.0%を超えると耐食性が劣化する。したがって、Mnの含有量は2.0%以下とする。なお、Mnの含有量は1.5%以下とすることが望ましい。また、Mn含有量は0.02%以上とすることが好ましく、0.1%以上とすれば一層好ましい。
P:0.04%以下
Pは、熱間加工性および靭性を劣化させるため、その含有量を0.04%以下に制限する。P量は、好ましくは0.03%以下であり、より好ましくは0.02%以下である。一方、過度にP量を低減させると精錬コストが高くなるため、好ましくは0.005%以上が望ましい。
S:0.03%以下
Sは、Pと同様に、熱間加工性および靭性を劣化させるため、その含有量を0.03%以下に制限する。S含有量は、好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.005%以下である。一方、過度にS量を低減させると原料コストと精錬コストが高くなるため、好ましくは0.0001%以上が望ましい。
Cu:0.50%以下
Cuは、オーステナイト相を安定にする作用がある。しかしながら、Cuの含有量が多くなると鋳造時に割れが発生し易くなる。したがって、Cuの含有量は、0.50%以下とする。なお、Cuの含有量は0.10%以下とすることが好ましい。一方、Cuの効果を確実に得るためには、Cu含有量は0.01%以上とすることが望ましく、0.03%以上とすれば一層望ましい。
Ni:6~13%
Niは、安定なオーステナイト組織を確保するために必須の元素である。しかしながら、その効果を十分に得るためには、Cr量とのバランスが重要であり、Cr量の下限値に対しては6%以上の含有量が必要である。一方、高価な元素であるNiの13%を超える多量の含有はコストの増加を招く。したがって、Niの含有量は6~13%とする。Ni含有量は12%以下が好ましく、11%以下でもよい。また、Ni含有量は7%以上とすることが好ましく、9%以上とすれば一層好ましい。
Cr:15~25%
Crは、耐食性の確保のために必須の元素であり、その効果を得るためには、15%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が過剰になり、特に、25%を超えると、σ相の析出が多くなり、耐食性、熱間製造性が劣化する。したがって、Crの含有量を15~25%とする。Cr含有量は望ましくは17%以上であり、また、望ましくは20%以下である。
Mo:0.1~1.0%
Moは、耐食性の向上に寄与する元素である。しかしながら、Moの含有量が多くなるとσ相の析出が多くなり、特に熱間加工時にσ相が析出し易くなる。したがって、Moの含有量は1.0%以下とする。なお、Moの含有量は0.5%以下とすることが好ましい。一方、Moの効果を確実に得るためには、Mo含有量は0.1%以上とすることが望ましい。
V:0.4%以下
Nb:0.20~1.00%
C固定化元素であるV、Nbは、これらの元素とCが結合した炭化物が粒内に析出することによって、粒界でのCr炭化物の析出が抑止されて鋭敏化が抑制され、高い耐食性を確保できる。しかし、過剰に含有させても効果は飽和する。したがって、高い耐食性の確保するために、V、Nbについてその含有量を、V:0.4%以下、Nb:0.20~1.00%とする。Nb含有量は、好ましくは0.20%以上であり、好ましくは0.50%以下である。また、V含有量は、好ましくは0.04%以上であり、好ましくは0.3%以下である。また、V含有量は0%でもよい。
B:0.0010~0.0020%以下
Bは、熱間加工性を改善する元素である。しかし、過剰に含有させても効果は飽和する。したがって、Bの含有量は、0.0020%以下とする。なお、Bの含有量は0.0018%以下とすることが好ましく、0.0015%以下であればなお一層好ましい。一方、Bの効果を確実に得るためには、B含有量は0.0010%以上とすることが望ましい。
N:0.1%以下
Nは、オーステナイト相を安定化させる元素であり、マトリックスに固溶するとともに粒内に微細な炭窒化物として析出し、クリープ強度を向上させるのに有効な元素であるので、含有させてもよい。しかしながら、0.1%を超える過剰なNを含有した場合、鋳造時に気泡が発生し易くなる。したがって、Nの含有量は0.1%以下とする。下限は特に設けないが、N含有量は0%でもよく、上記効果を得るためには0.01%以上とすることが好ましい。
Al:0.04%以下
Alは、脱酸作用を有するが、多量の含有は清浄度を著しく害し、加工性や延性を劣化させ、特に0.04%を超えると、加工性や延性の低下が著しくなる。したがって、Alの含有量を0.04%以下とする。下限は特に設けないが、0.0005%以上が好ましい。
O:0.02%以下
Oは、鋼中で酸化物を形成することで、オーステナイト相の熱間加工性および靭性を低下させる。このため、O(酸素)含有量の上限を0.02%以下に制限する必要がある。O含有量は、好ましくは、0.010%以下である。一方、Oは、溶接時の鋼の溶け込み深さを増大させる元素である。このため、0.0010%以上含有させてもよい。好ましくは0.0015%以上である。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼板は、更に、Co、Ta、Ti、W、Ca、Mgの1種または2種以上を含有してもよい。Co、Ta及びTiは耐食性を改善する元素であり、Wは強度に寄与する元素であり、また、Ca、Mgは熱間加工性を改善する元素である。これらの目的のため、Co:1.0%以下、Ta:0.4%以下、Ti:0.4%以下、W:0.4%以下、Ca:0.02%以下、Mg:0.02%以下の範囲で含有してもよい。これらの元素の含有量は0%であってもよい。耐食性の改善効果を得るためには、Co、Ta、Tiはそれぞれ、0.005%以上であることが好ましい。また、高強度化効果を得るためには、Wは0.005%以上であることが好ましい。また、熱間加工性の改善効果を得るためには、Ca含有量は0.0001%以上とすることが望ましく、0.0005%以上とすれば一層望ましい。また、Mg含有量は、0.0001%以上とすることが望ましい。
上記以外の残部は、Feおよび不純物である。不純物とは、鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
母材の板厚は、例えば10mm~40mmの範囲が好ましい。
母材の製造方法は、通常のプロセス、すなわち、製鋼-熱間粗圧延-熱間仕上圧延-溶体化熱処理の工程を経るプロセスを例示できる。
次に、母材の端面に開先加工を行う。図2には、本実施形態に好適な開先形状1を示す。図2に示すように、母材の開先形状1は、X形開先のルート面なす端面2同士を相互に突出させて突出部3を設けた形状とする。従来のX形開先は、図1に示すように、ルート面をなす端面102と、鋼板の表面103及び裏面104と端面102とをつなぐ傾斜面105から構成されていた。一方、本実施形態では、従来のX形開先の端面を突出させた突出部3を設ける。突出部3の先端がルート面をなす端面2となる。鋼板の表面4及び裏面5と突出部3との間には、傾斜面6が設けられる。傾斜面6と突出部3との境界部6aは、曲面加工を行なってもよく、行わなくてもよい。また、開先角度θは特に制限はなく、例えば20~40°の範囲とすることができる。
突出部3は、突出方向の長さをL(mm)とした場合にLを0mm超とする。Lが0mmでは、従来のX開先形状と同じになり、融合不良を防止することが困難になる。突出部3の先端に設けられた端面2の板厚方向の寸法がルート面H(mm)となる。一対の母材の各開先形状におけるルート面H(mm)は、相互に同じ寸法とすることが好ましい。
また、図2に示すように、母材の板厚方向に沿う突出部3の厚みは、突出方向に沿って一定となっている。すなわち、突出部3の厚みが、ルート面H(mm)と同じ厚みになっている。
次に、開先加工を施した母材同士を対向させて、サブマージアーク溶接を行う。この場合のルート間隔は設けずに端面2を突き合わせて溶接を行う。
サブマージアーク溶接は、フラックスを開先に充填した上で、溶接ワイヤをフラックス中に挿入しつつ溶接を行う。フラックス及び溶接ワイヤは特に制限はない。好ましい溶接ワイヤとしては、例えば、質量%で、C:0.10%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.5~2.5%、Ni:7.5~9.5%、Cr:14.5~16.5%、Mo:1.0~2.0%からなるソリッドワイヤを用いることができる。
初層ビードを形成する際の溶接条件は、上記式(1)を満足する条件とする。すなわち、上記式(1)を満足するように、突出部の突出方向の長さL(mm)とルート面H(mm)に対して、初層ビード形成時の入熱量Q(kJ/mm)を調整する。(L+0.5)/H×Qが0.40未満になる条件で溶接すると、入熱量が不足し、表面側及び裏面側の初層ビードに融合不良が発生するおそれがある。また、(L+0.5)/H×Qが2.5を超える条件で溶接すると、入熱量が過剰になり、溶接後の溶接金属において凝固割れが発生するおそれがある。
図3に示すように、初層ビード10は、表面側及び裏面側の両方にそれぞれ形成することが好ましい。表面側及び裏面側の両方に初層ビード10を形成する際はそれぞれ、上記(1)式を満たす条件で溶接することが好ましい。
初層ビード10の形成後に、図4に示すように、表面側及び裏面側に対して、サブマージアーク溶接による多層溶接を行う。2層目以降の溶接ビード11の形成条件は、上記(1)式を満たさない条件であってもよい。具体的には、(L+0.5)/H×Qが2.5を超える条件で溶接してもよい。
以上、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法の実施形態を説明したが、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の説明では、一対の母材の開先形状が同一形状である前提で説明したが、本発明では図5に示す変形例であてもよい。
図5は、一方の母材における突出部3の突出長さLと、他方の母材における突出部3の突出長さLとが異なる長さとされている。このように、突出部3の突出長さは、異なる長さであってもよい。そして、表面側及び裏面側の初層ビード形成時において、突出長さL及びL(mm)と、ルート面H(mm)と、表面側及び裏面側の初層ビード形成時の入熱量Q(kJ/mm)との関係が、下記式(2)及び下記式(3)の両方を満足するように初層ビードを形成すればよい。
0.40≦(L+0.5)/H×Q≦2.5 ・・・(2)
0.40≦(L+0.5)/H×Q≦2.5 ・・・(3)
なお、L及びLは、L<Lとした場合に、0.3≦L/L≦0.7を満足することが好ましい。
また、母材の板厚方向に沿う突出部3の厚みは、突出方向に沿って減少してもよい。すなわち、突出部3が先細りの形状であってもよい。
以上説明したように、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法によれば、母材の開先形状として、X形開先に突出部3を設けた開先形状とし、突出部3の突出方向の長さL(mm)と、ルート面H(mm)と、表面側及び裏面側の初層ビード形成時の入熱量Q(kJ/mm)との関係が上記(1)式を満足し、かつ、Lを0mm超とすることで、溶融不良及び溶接後の凝固割れの発生のおそれのない、溶接継手を製造することができる。
また、本実施形態の製造方法によれば、一方の母材における突出部3の突出長さLと、他方の母材における突出部3の突出長さLとが異なる長さとされ、かつ、突出長さL及びL(mm)と、ルート面H(mm)と、表面側及び裏面側の初層ビード形成時の入熱量Q(kJ/mm)との関係が上記式(2)及び上記式(3)の両方を満足するように溶接することで、溶融不良及び溶接後の凝固割れの発生のおそれのない、溶接継手を製造することができる。
また、本実施形態の製造方法によれば、突出部3の厚みが、突出方向に沿って一定の形状なので、初層ビードを安定して形成することができる。
更に、本実施形態の製造方法によれば、突出部3の厚みが、突出方向に沿って減少する形状とされた場合は、突出部の体積が先端側に向うほど減少する形状となり、この先端側から突出部を確実に溶融して初層ビードを安定して形成することができ、融合不良の発生を確実に防止できる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。
表1に示す化学成分を有するオーステナイト系ステンレス鋼からなる母材に対し、図2に示すような開先形状を形成し、表2に示す化学成分を有する溶接ワイヤ(ソリッドワイヤ)を用いてサブマージアーク溶接を実施した。図2において、傾斜面6と突出部3との境界部6aには曲面加工を行わなかった。溶接は、多層溶接をする場合における、初層ビードを形成するための溶接とした。すなわち、表面側および裏面側にそれぞれ、1層ずつ溶接を行って初層ビードを形成した。
初層ビードの形成後、3断面において溶接欠陥の有無を評価した。3断面中、2個以上溶接欠陥が観察された場合は×とし、3断面中、1個の溶接欠陥が観察された場合は△とし、3断面すべて溶接欠陥が観察されない場合は○とした。これらの結果を表3Aに示す。また、溶接後の凝固割れの有無を観察した。
また、突出部の突出長さが異なる開先形状を用いた場合についても評価した。結果を表3Bに示す。
Figure 0007423395000001
Figure 0007423395000002
Figure 0007423395000003
Figure 0007423395000004
表1~表3Bに示すように、本発明範囲の条件で形成した溶接継手は、溶融不良及び溶接後の凝固割れの発生が見られなかった。
1…開先形状、2…端面、3…突出部、H…ルート面(mm)、L…突出部の突出方向の長さ(mm)。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.10%以下、
    Si:1.5%以下、
    Mn:2.0%以下、
    P:0.04%以下、
    S:0.03%以下、
    Cu:0.50%以下、
    Ni:6~13%、
    Cr:15~25%、
    Mo:0.1~1.0%、
    V:0.4%以下、
    Nb:0.20~1.00%、
    B:0.0010~0.0020%、
    N:0.1%以下、
    Al:0.04%以下、
    O:0.02%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼板を母材とし、前記母材同士に対してサブマージアーク溶接の多層溶接を行うことで溶接継手を形成する際に、
    前記母材の開先形状として、X形開先のルート面をなす端面同士を相互に突出させて突出部を設けた開先形状とし、
    前記突出部の突出方向の長さL(mm)と、ルート面H(mm)と、表面側及び裏面側の初層ビード形成時の入熱量Q(kJ/mm)との関係が下記(1)式を満足し、かつ、前記Lが0mm超である、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
    0.40≦(L+0.5)/H×Q≦2.5 ・・・(1)
  2. 前記オーステナイト系ステンレス鋼板が、更に質量%で、
    Co:1.0%以下、
    Ta:0.4%以下、
    Ti:0.4%以下、
    W:0.4%以下、
    Ca:0.02%以下、
    Mg:0.02%以下
    からなる群から選択される1種または2種以上の元素を含有する請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
  3. 一方の前記母材における前記突出部の突出長さLと、他方の前記母材における前記突出部の突出長さLとが異なる長さとされており、かつ、突出長さL及びL(mm)と、ルート面H(mm)と、表面側及び裏面側の初層ビード形成時の入熱量Q(kJ/mm)との関係が下記式(2)及び下記式(3)の両方を満足する、請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
    0.40≦(L+0.5)/H×Q≦2.5 ・・・(2)
    0.40≦(L+0.5)/H×Q≦2.5 ・・・(3)
  4. 前記突出部の厚みが、突出方向に沿って一定である、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
  5. 前記突出部の厚みが、突出方向に沿って減少する、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
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