JP4613791B2 - Bを含有するステンレス鋼材およびその製造方法 - Google Patents

Bを含有するステンレス鋼材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、核燃料輸送用容器、使用済み核燃料貯蔵ラックなどの原子力関連機器の中性子遮蔽材として、さらにオーステナイト系ステンレス鋼にBを0.3%以上含有させることにより優れた機能を発揮する用途、例えば燃料電池用セパレータ材として用いられるB含有ステンレス鋼片およびB含有ステンレス鋼材の製造方法に関する。
ボロン(B)の優れた熱中性子吸収作用を利用して、Bを添加したオーステナイト系ステンレス鋼が、熱中性子の制御材および遮断材として、核燃料輸送容器、使用済核燃料保管ラック等に用いられている。一般に、原子力発電所で使用された使用済核燃料は、再処理工場にて処理されるまで、発電所内のプール内に保管される。限られた敷地内で、できるだけ多くの使用済核燃料を保管したいとのニーズから、B含有オーステナイト系ステンレス鋼に添加されるB含有量を増加させ、鋼材の板厚は薄くする傾向にある。
オーステナイト系ステンレス鋼は、その表面に不働態体皮膜が形成されているため耐食性に優れており、Bを含有させることで電気抵抗特性が改善されることにより、耐食性が要求される通電電気部品として使用することが可能になる。優れた耐食性とともに電気抵抗特性が要求される通電電気部品の用途例として、水素および酸素を利用して直流電力を発電する燃料電池用のセパレータがある。
B含有ステンレス鋼の熱間加工は、加熱炉によるスラブの加熱と、鍛造や圧延などの加工とを繰り返して被加工材の温度低下を防止することにより、熱間加工性を確保しながら行われている。B含有量が増加すると熱間加工性が劣るため、被加工材の温度低下を防止しながら加工することが必要となり、その結果、加熱と加工の繰り返し回数を増加せざるを得ない。したがって、B含有量の増加や鋼の薄肉加工は、製造コストの上昇を招くことになる。
上述の問題に対処するために、従来から、種々検討がなされてきた。例えば、特許文献1には、0.3〜2.0wt%のBを含有するオーステナイト系ステンレス鋼材の側部に、ステンレス鋼材よりも変形抵抗が小さい鋼材を溶接により被覆した素材を、(53B+700)℃(ここで、B:B含有量(wt%))以上の温度で仕上げ圧延することにより、耳割れの発生を防止する鋼材の熱間圧延方法が開示されている。
特許文献1で開示する方法では、精度の高い開先形状を有するフレーム材を用意し、しかも熱間加工時にそれが剥離しないように溶接する必要がある。したがって、通常、80mm以上の厚さを有するインゴット(鋳造鋼塊)や分塊鍛造スラブの熱間加工にこの方法を適用するためには多大な溶接工数を必要とする。
また、特許文献1の方法では、幅1000mmを超える広幅材の圧延においては、上記温度以上の仕上げ温度を確保することが困難となる場合が多く、現実には耳割れの発生を防止することが困難である。
特許文献2には、Bを0.3〜2.5質量%含有するオーステナイト系ステンレス鋼片を熱間圧延するに際し、その側面に、Ni:4%以下、B:0.1〜0.4%を含有するステンレス鋼からなる厚さ3mm以上の肉盛り溶接被覆層を設けて、熱間加工する方法が開示されている。
特許文献2の肉盛り溶接方法においては、割れを防止するに十分な溶接厚みを確保するためには溶接パス数が多くなり、溶接工数が増加する。また、溶接割れが発生すると、それが起点となって耳割れの発生につながる場合があり、耳割れの発生を完全に防止することが難しい。
本発明者らは、これらの課題を解決する手段として、B含有量の高いステンレス鋼片を少ない溶接工数で、所定の板厚まで耳割れを発生させることなく圧延できる技術を開発し、特許文献3に、プロテクト材を電子ビーム溶接により側面に溶接したB含有ステンレス鋼片、B含有ステンレス鋼材、および熱間圧延中の被圧延材の耳割れの発生を防止することができるB含有ステンレス鋼材の製造方法を提案した。
このプロテクト材の溶接方法では、通常の溶接条件(例えば、溶接電流が300mA以上、溶接速度が200mm/分以下)であれば、溶接部に凝固割れを発生することなく、所定の効果を発揮することができる。しかし、提案のプロテクト材の溶接方法によっても、高能率の溶接条件、すなわち、溶接電流が大きく、かつ溶接速度も大きい条件下になると、溶接部に凝固割れの発生が懸念される。
特開平4−253506号公報 特開2001−239364号公報 特開2004−156132号公報
本発明の課題は、高能率の溶接条件で少ない溶接工数であっても、施工時の溶接割れを生ずることなく、さらに、B含有量の高いステンレス鋼片を所定の板厚まで耳割れを発生させることなく圧延できる熱間圧延方法および冷間圧延方法、並びにB含有量の高い鋼材を提供することにある。より具体的には、プロテクト材を、例えば、溶接電流が500mA以上、かつ溶接速度が200mm/分以上というような高能率の電子ビーム溶接により側面に溶接したB含有ステンレス鋼片に溶接割れを生ずることなく、さらに、B含有ステンレス鋼材、および熱間圧延中の被圧延材であっても耳割れの発生を防止することができるB含有ステンレス鋼材の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、高能率な溶接を行っても安定した熱間圧延方法および冷間圧延方法を行うことができ、高品質のB含有量が高い鋼材が得られるように、溶接施工時の割れ(溶接凝固割れ)が回避できる技術について種々の検討を行った。
溶接凝固割れは、Bによる低融点相の形成と、電子ビーム溶接などにともなう溶接部における特有の熱応力との重畳効果によるものである。先に提案した特許文献3で開示するように、(Creq−Nieq)の値を4 以上とすることにより、凝固後期までフェライト相を残存させ、低融点相を分散させることができることから、電子ビーム溶接などの高い熱応力の条件においても凝固割れの回避が可能となる。
ところが、溶接条件が過酷となり、溶接速度や入熱量がさらに増加すると、溶接凝固割れを完全に回避することが困難となり、B含有ステンレス鋼片に高能率の電子ビーム溶接を適用することに一定の制限が生ずることになる。
これらの解決策として、溶接凝固割れの冶金的な要因であるBによる低融点相を、凝固過程の早い段階で消失させることが有効であることを見出した。具体的には、溶接金属の化学組成を調整するとともに、適切な溶接条件によるビード断面形状の制御を組み合わせることにより、フェライト相を生成させずにホウ化物生成と残存融液の組成を制御でき、Bによる低融点相を早期に消失させ得ることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)、(2)のB含有ステンレス鋼片、(3)、(4)のB含有ステンレス鋼材の製造方法、および(5)の中性子遮蔽容器、並びに燃料電池用セパレータにある。
(1)Bを0.3〜2.5質量%含有するステンレス鋼片の加工面を除く少なくとも対向する2面に、Bを0.3質量%以下含有するステンレス鋼からなるプロテクト材がステンレス鋼溶接金属により接合され一体化されており、前記ステンレス鋼溶接金属の化学組成が下記の(1)〜(6)式で表される関係を満足し、かつ前記ステンレス鋼片と前記プロテクト材の間の溶接ビード断面における深さ方向の中央部でのビード幅Wcmおよび深さ方向の入口部でのビード幅Wnとした場合に、これらの比で示される溶接ビード断面における形状係数Q(Wcm/Wn)が0.8〜1.4であることを特徴とするB含有ステンレス鋼片。
15≦Creq≦30 ・・・ (1)
4≦Creq−Nieq≦17 ・・・ (2)
Px≧0 ・・・ (3)
ただし、
Creq=Cr+1.5×Si+Mo−5×B ・・・ (4)
Nieq=Ni+30×(C+N)+0.5×Mn ・・・ (5)
Px=Cr+0.47×Ni+0.22×Mo+25×B−33 ・・・ (6)
ここで、式中の元素記号は、溶接金属中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す
(2)前記(1)に記載のB含有ステンレス鋼片は、ステンレス鋼片とプロテクト材の間に、Bを0.4〜2.5質量%含有するインサート材を介入させるのが望ましい。さらに、プロテクト材の厚さを10mm以上にするのが望ましい。
(3)Bを0.3〜2.5質量%含有するステンレス鋼片の加工面を除く少なくとも対向する2面に、Bを0.3質量%以下含有するステンレス鋼からなるプロテクト材を接合して一体化したB含有ステンレス鋼材の製造方法であって、電子ビーム溶接を用いて前記プロテクト材を接合するに際し、上記の(1)〜(6)式で表される関係を満足する化学組成を有するステンレス鋼溶接金属を溶融し、前記ステンレス鋼片と前記プロテクト材の間の溶接ビード断面における深さ方向の中央部でのビード幅Wcmおよび深さ方向の入口部でのビード幅Wnとした場合に、これらの比で示される溶接ビード断面における形状係数Q(Wcm/Wn)を0.8〜1.4として接合し、加熱後、加工することを特徴とするB含有ステンレス鋼材の製造方法。
(4)前記(3)に記載のB含有ステンレス鋼材の製造方法において、ステンレス鋼片とプロテクト材の間に、Bを0.4〜2.5質量%含有するインサート材を介入させて接合することが望ましい。また、プロテクト材の厚さを10mm以上とすることが望ましい。
(5)前記(3)および(4)に記載の方法により製造されたB含有ステンレス鋼材を中性子遮蔽容器、または燃料電池用セパレータとして使用するのが望ましい。
図1は、本発明のB含有ステンレス鋼片を模式的に示す図である。図2は、ステンレス鋼片とプロテクト材の間に形成される溶接ビード断面を模式的に示す図である。
本発明において、「ステンレス鋼片」とは、連続鋳造スラブ、分塊鍛造スラブ、分塊圧延スラブおよび鋳造されたインゴット(鋼塊)をいい、図1に示す母材1がこれに相当する。これらの鋼片は、一般に直方体であり、その長手方向(白抜き矢印6で示す)に延伸させるべく熱間圧延や鍛造などの熱間加工が施される。
「加工面を除く少なくとも対向する2面」とは、圧延や鍛造などの加工を受ける加工面3以外の面のうち、少なくとも対向する2面をいう。例えば、圧延の場合は、圧延ロールと接触しない長手方向の2側面、またはこれらを含めて頭部や尾部の端面が含まれていてもよい。鍛造の場合は、ラムと接触しない対向する2側面、またはこれらを含めて3〜4側面が含まれていてもよい。なお、鋼片のコーナー部を面取り加工する場合には、面取り加工された面を含めてもよい。
「プロテクト材の厚さ」とは、図1に示すとおり、プロテクト材を母材に接合する前の、加工面と平行な面内における、鋼片の側面からのプロテクト材の厚さ5をいう。接合後の鋼片においては、プロテクト材単身の厚さおよびプロテクト材中の溶接金属厚さの合計厚さをいう。
「溶接金属」とは、接合部の一部であって、接合前の母材およびプロテクト材が接合により溶融凝固した溶接金属部7をいう。図2に示すように、溶接金属部7の断面形状は、深さ方向の入口部でのビード幅Wnと深さ方向の中央部でのビード幅Wcmとで模式的に示すことができる。したがって、本発明で規定する「溶接ビード断面における形状係数Q」は、中央部でのビード幅Wcmおよび入口部でのビード幅Wnの比(Q=Wcm/Wn)で示される。
「インサート材」とは、ステンレス鋼片(母材)とプロテクト材の間に挿入され、または挟み込まされる材料であって、具体的には板、箔、粉末等の材料が例示される。
本発明法によれば、コスト低減を目的とする高能率の溶接条件(例えば、溶接電流が500mA以上で、かつ溶接速度が200mm/分以上)の電子ビーム溶接により、B含有量の高いステンレス鋼片の側面にプロテクト材を接合し圧延する場合でも、施工時の溶接割れおよび圧延後の耳割れの発生を防止し、高い生産性と優れた品質を備えるB含有ステンレス鋼材を提供できる。さらに、溶接接合時にインサート材を使用すれば、溶接金属の割れ感受性を一層低減することができる。
本発明者らは、低コストで、かつ高品質なB含有量の高いステンレス鋼を製造するため、高能率の溶接条件の電子ビーム溶接法を用いて、鋼片の側面に一定厚みを有するプロテクト材を接合し、これを圧延などの加工により鋼材とする方法を検討した。表1に、試験に用いた母材鋼片およびプロテクト材の化学組成をまとめて示す。
Figure 0004613791
1.母材ステンレス鋼片の鋼成分組成
B:0.3〜2.5%
被熱間加工材であるB含有ステンレス鋼片中のB含有量が0.3%未満では、熱中性子吸収能が十分ではなく、また燃料電池用セパレータ材の電気抵抗特性の改善も十分でないので、B含有量は0.3%以上とする。B含有量の増加とともに熱中性子吸収能や電気抵抗特性が改善するが、B含有量が2.5%を超えると、常温における延性および靭性の劣化が顕著となるので、含有量は2.5%以下とする。
また、母材は、オーステナイト系ステンレス鋼であってもフェライト系ステンレス鋼であってもよいが、燃料電池用セパレータ材として機能を発揮させる場合には、オーステナイト系ステンレス鋼に限定される。
本発明が対象とするB含有ステンレス鋼は、上記のB含有量を規定するが、その他の鋼成分組成の望ましい範囲は以下のとおりである。
C:0.08%以下
Cは強度を確保する作用を有する元素である。しかし、0.08%を超えて含有されると耐食性劣化や熱間加工性劣化の原因となる。したがって、含有量を0.08%以下とすることが望ましい。0.01%以上であれば、さらに望ましい。
Si:1%以下
Siは脱酸剤として添加されるが、耐酸化性を向上させる作用も有する元素である。しかし、1%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなる。よって、含有量を1%以下とすることが望ましい。
P:0.04%以下
Pは鋼中の不純物元素であり、その含有量が0.04%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなるので、0.04%以下とすることが望ましい。
S:0.01%以下
Sは鋼中の不純物元素であり、その含有量が0.01%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなるので、0.01%以下とすることが望ましい。
Cr:5%以上
Crは耐食性を向上させる作用を有する元素であり、その含有量が5%以上で、望ましい効果が得られる。したがって、含有量を5%以上とすることが望ましい。一方、含有量が30%を超えると熱間加工が困難となることがあるので、その含有量は30%以下とすることがより望ましい。
N:0.05%以下
NはBと結合して、靱性を悪化させる。十分な靱性を確保するためには0.05%以下とすることが望ましい。
Mo:5%以下、Cu:0.5%以下およびAl:0.3%以下
これらの元素は、上記の含有量の範囲内で必要に応じて含有させれば、より一層、耐食性を向上させる効果を発揮する。したがって、これらの効果を要求される場合には、上記の含有量の範囲内で、単独または組み合わせて含有させることが望ましい。
2.溶接金属の成分組成
プロテクト材と母材との接合部を構成する溶接金属の成分組成について説明する。プロテクト材を、電子ビーム溶接などにより高能率に母材に接合する際には、溶接施工時に生じる割れの回避、およびプロテクト材自身の熱間圧延時の割れを防止することが必須となる。溶接施工時に生じる割れには、凝固割れと延性不足割れがある。これら全ての割れを防止するには、プロテクト材と母材との接合部を構成する溶接金属の化学組成が下記の(1)〜(6)式により表される関係を満足する必要がある。下記式中の元素記号は、溶接金属中に含まれる各元素の含有量を示している。
15≦Creq≦30 ・・・ (1)
4≦Creq−Nieq≦17 ・・・ (2)
Px≧0 ・・・ (3)
ただし、
Creq=Cr+1.5×Si+Mo−5×B ・・・ (4)
Nieq=Ni+30×(C+N)+0.5×Mn ・・・ (5)
Px=Cr+0.47×Ni+0.22×Mo+25×B−33 ・・・ (6)
Creq、NieqおよびPxを上記(4)〜(6)式で定義した場合に、上記(1)〜(3)式をそれぞれ満足しなければならない理由を、以下に詳述する。
15≦Creq≦30:
Creqの値が15未満では、B含有ステンレス鋼との希釈により、Bを含有する溶接金属が生成して延性が不足し、電子ビーム溶接による溶接などのように熱応力が大きくなる場合には、延性不足割れを生じる。延性不足は、ホウ化物の形成にともない、オーステナイト相が不安定となって、一部が延性の乏しいマルテンサイト化することにより生じる。
しかし、Creqの値を15以上とすることにより、ホウ化物が生成してもオーステナイト相が安定となり、マルテンサイトの生成を抑制して延性不足を回避できる。
一方、Creqの値が30を超えると、溶接金属の熱間加工性が劣化して熱間圧延時に割れが発生する。したがって、Creqの値は、上記の(1)式で表される関係を満足する必要がある。
4≦Creq−Nieq≦17:
溶接施工時に生じる溶接凝固割れの回避および熱間圧延時の耳割れの防止のためには、Creqの値が上記の(1)の関係を満足するのみでは不充分であり、(Creq−Nieq)の値も適正範囲に調整する必要がある。(Creq−Nieq)の値が4未満では、溶接凝固割れが発生する一方、(Creq−Nieq)の値が17を超えると、熱間圧延後の耳割れが発生する。
溶接凝固割れは、Bによる低融点相の形成と、電子ビーム溶接などに特有の熱応力との重畳効果によるものである。(Creq−Nieq)の値を4以上とすることにより、凝固後期までのフェライト相を残存させて、低融点相を分散させることができるので、電子ビーム溶接などの高い熱応力下においても凝固割れの回避が可能となる。したがって、(Creq−Nieq)の値は、上記の(2)式の関係を満足する必要がある。
Px≧0:
加えて、高能率で工業的価値の高い大入熱溶接の場合であっても、溶接凝固割れを防止するためには、冶金因子側の要因であるBによる低融点相を凝固の早い段階で消失させることが重要である。(3)式の関係を満足する場合には、残存融液におけるBの活量が高くなり、融液中からホウ化物が急激に晶出する。その結果、残留融液中のB濃度が急激に低下し、残留融液の融点は上昇する。残留融液の融点の急激な上昇は、凝固の急速な完了を意味し、これにより、例え大入熱溶接であっても溶接凝固割れが生じなくなる。
逆に(3)式の関係を満足しない場合には、残留融液中のBの活量が高くならないため、ホウ化物は生成し難くなり、凝固の後期過程まで低融点の融液が残存することになる。このため、熱応力の大きい大入熱溶接では、凝固による収縮ひずみに抗しきれず、凝固割れが生じる。
上述の理由により、溶接金属の成分組成を、(1)〜(6)式により表される適正範囲に調整することが、プロテクト材を高能率溶接する際に、溶接施工時に生じる溶接凝固割れを回避し、かつ溶接金属の熱間圧延後の耳割れを防止するための必須要件となる。
本発明の溶接金属の成分組成が具備すべき必須要件は、上述の通りであるが、その他の成分組成の望ましい範囲は以下のとおりである。
C:0.08%以下
Cは鋼片加熱時の変形を抑制するために有効な強度を確保する効果を有する元素である。しかし、0.08%を超えて含有されると熱間加工性が劣化する原因となる。したがって、含有量を0.08%以下とすることが望ましい。0.01%以上であれば、より望ましい。
Si:1%以下
Siは脱酸剤として添加されるが、耐酸化性を向上させる効果も有する元素である。しかし、1%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなる。よって、含有量を1%以下とすることが望ましい。
P:0.04%以下
Pは鋼中の不純物元素であり、その含有量が0.04%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなるので、0.04%以下とすることが望ましい。
S:0.01%以下
Sは鋼中の不純物元素であり、その含有量が0.01%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなるので、0.01%以下とすることが望ましい。
Cr:5%以上
Crは耐食性を向上させる作用を有する元素であり、その含有量が5%以上で、望ましい効果が得られる。したがって、含有量を5%以上とすることが望ましい。一方、含有量が30%を超えると熱間加工が困難となることがあるので、その含有量は30%以下とすることがより望ましい。
3.プロテクト材用ステンレス鋼の成分組成
B:0.3%以下
プロテクト材用鋼のB含有量が0.3%を超えて含有されると、圧延時の張力が大きい端部では、プロテクト材自身に割れが発生し、プロテクト材の効果をなさなくなる。したがって、含有量は0.3%以下とする。
Cr、Niなどの他の元素の含有量は、母材と溶融し混合して生成する溶接金属が、前記(1)〜(6)式を満足する必要があることから、実質的には溶接金属の成分組成により制約を受ける。
インサート材を用いない場合には、電子ビーム溶接により接合される場合に生成する溶接金属の成分組成は、母材とプロテクト材のそれぞれの成分組成の相加平均値に近い値となる。したがって、使用される母材の成分組成が決定すると、プロテクト材におけるB以外のNi、Crなどの成分組成の範囲は、前記(1)〜(6)式を用いて求めることができる。
インサート材を用いる場合には、上記の母材とプロテクト材の相加平均値とインサート材の加重平均が概ね溶接金属の成分組成となる。このとき、加重平均でのインサート材の重みは、溶接金属におけるインサート材の体積率を用いる。
本発明が対象とするプロテクト材は、上記のB含有量を規定するが、その他の成分組成について、上述の条件から求められる成分組成の範囲に加えて、プロテクト材の望ましい成分組成の範囲は、以下のとおりである。
C:0.08%以下
Cは鋼片加熱時の変形を抑制するために有効な強度を確保する効果を有する元素である。しかし、0.08%を超えて含有されると熱間加工性劣化の原因となる。したがって、含有量を0.08%以下とすることが望ましい。0.01%以上であれば、より望ましい。
Si:1%以下
Siは脱酸剤として添加されるが、耐酸化性を向上させる効果も有する元素である。しかし、1%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなる。よって、含有量を1%以下とすることが望ましい。
P:0.04%以下
Pは鋼中の不純物元素であり、その含有量が0.04%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなるので、0.04%以下とすることが望ましい。
S:0.01%以下
Sは鋼中の不純物元素であり、その含有量が0.01%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなるので、0.01%以下とすることが望ましい。
Cr:5%以上
Crは耐食性を向上させる作用を有する元素であり、その含有量が5%以上で、望ましい効果が得られる。したがって、含有量を5%以上とすることが望ましい。一方、含有量が30%を超えると熱間加工が困難となることがあるので、その含有量は30%以下とすることがより望ましい。
4.溶接ビード断面における形状係数Q
本発明において、ビード断面形状の制御が必要になることについて説明する。上述したように、溶接凝固割れの防止するためには、Bによる低融点相を凝固過程の早い段階で消失させることが重要になる。しかし、実際の溶接においては、上記(3)式のよる「Px≧0」の制御のみでは不十分であり、低融点相を早い段階で消失させるには幾何学的な固液相の配置も重要な役割を果たしている。
具体的には、低融点相の消失をより早期にするためには、前記図2に示すように、ステンレス鋼片とプロテクト材の間の溶接ビード断面における深さ方向の中央部でのビード幅Wcmおよび深さ方向の入口部でのビード幅Wnとした場合に、これらの比で示される溶接ビード断面における形状係数Q(Wcm/Wn)を0.8〜1.4とする必要がある。
上記の形状係数Qが1.4以上、すなわちビード深さ方向の中央部でのビード幅Wcmが相対的に大きい場合には、外側から凝固が進行する過程で、ビード中心部に融液が残存して、中央部で溶接凝固割れが生じ易くなる。一方、形状係数Qが0.8以下の場合には、ビード深さ方向の入り口部で、上述した中央部と同様に融液の残存現象が生じ、入り口部で割れを生じ易くなる。実操業においては、溶接ビード断面の形状制御は溶接条件の設定により可能になる。
5.インサート材の必要性およびその成分組成
前述の通り、ステンレス鋼片が例えば0.3〜0.8%の低B含有材であり、プロテクト材がB含有しない組み合わせで溶接を行うと、溶接金属の割れ感受性が高まり、溶接割れが発生するおそれがある。
これは、ステンレス鋼片のB含有量が低く、プロテクト材で希釈された溶接金属では、液相からのホウ化物の生成が生じにくくなり、Bによる低融点相の消失が遅れ易くなることによる。その結果、溶接金属の凝固割れ感受性が高くなり、より高能率の条件で溶接を行う場合に溶接割れを生じることがある。
これに対し、プロテクト材のB含有量を高めれば、溶接金属のB量は多くなるが、これにともなって熱間加工性が劣化することになり、プロテクト材が具備する本来の機能が発揮できなくなる。このため、Bを含有するインサート材をステンレス鋼片とプロテクト材との接合の際に、両者の間に挿入、または挟み込むようにして使用するのが望ましい。このときのB含有量や他の成分組成は、下記によるのが望ましい。
B:0.4〜2.5%
インサート材のB含有量が0.4%未満では、溶接時の希釈も考慮して、熱中性子吸収能が十分ではなく、また燃料電池用セパレータ材の電気抵抗特性の改善も十分でないので、B含有量は0.4%以上とする。一方、B含有量が2.5%を超えると、常温における延性および靭性の劣化が顕著となるので、含有量は2.5%以下とする。
本発明でインサート材を使用する場合に、インサート材のB含有量は上記の通りとするが、その他の成分組成の望ましい範囲は以下のとおりである。
C:0.08%以下
Cは強度を確保する作用を有する元素である。しかし、0.08%を超えて含有されると耐食性劣化や熱間加工性劣化の原因となる。したがって、含有量を0.08%以下とすることが望ましい。0.01%以上であれば、さらに望ましい。
Si:1%以下
Siは脱酸剤として添加されるが、耐酸化性を向上させる作用も有する元素である。しかし、1%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなる。よって、含有量を1%以下とするのが望ましい。
P:0.04%以下
Pは鋼中の不純物元素であり、その含有量が0.04%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなるので、0.04%以下とするのが望ましい。
S:0.01%以下
Sは鋼中の不純物元素であり、その含有量が0.01%を超えて含有されると溶接割れ感受性が高くなるので、0.01%以下とするのが望ましい。
Cr:5%以上
Crは耐食性を向上させる作用を有する元素であり、その含有量が5%以上で、望ましい効果が得られる。したがって、含有量を5%以上とすることが望ましい。一方、含有量が30%を超えると熱間加工が困難となることがあるので、その含有量は30%以下とすることがより望ましい。
6.プロテクト材の厚さ
鋼材の耳割れを防止するためには、プロテクト材の厚さは10mm以上が望ましい。厚さの増加にともなって耳割れを防止する効果は増大するが、厚さを過度に増加させると、プロテクト材料の歩留りが悪化するので好ましくない。上記の理由によりプロテクト材の厚さは50mm以下とすることが望ましい。
7.電子ビーム溶接の望ましい条件
従来、B含有量の高いステンレス鋼片を少ない溶接工数で、施工時に溶接割れを生ずることなく、同時に所定の板厚まで耳割れを発生させることなく圧延するため、プロテクト材を電子ビーム溶接する条件として、溶接電流が300mA以上、溶接速度が200mm/分以下が提案されていた(例えば、特許文献3)。
ところが、溶接金属の化学組成を調整するとともに、適切な溶接条件によるビード断面形状の制御を組み合わせることにより、Bによる低融点相を、凝固過程の早い段階で消失させることが可能になり、さらに過酷な溶接条件であっても、B含有量の高いステンレス鋼片を、少ない溶接工数で溶接割れを生じることなく、また所定の板厚まで耳割れを発生させることなく圧延できることが明らかになる。
これにともない、低コストで、かつ高品質なB含有量の高いステンレス鋼を製造することが要請されるようになる。このような要請に対応するため、具体的には、溶接電流が500mA以上、かつ溶接速度が200mm/分以上というような高能率の電子ビーム溶接を適用するのが望ましい。
8.熱間加工および冷間加工
熱間加工は、分塊鍛造、厚板圧延、および熱延鋼帯圧延などをいう。鋼片の加熱温度は、溶融脆性を生じない範囲において高温とするのが望ましい。B含有ステンレス鋼の場合は、1100〜1200℃の範囲とするのが望ましい。
熱間鍛造、または熱間圧延における仕上げ温度は、高い方が耳割れ防止の観点からは望ましい。しかし、プロテクト材の熱間変形能が許す限り、600〜700℃の低温仕上げとすることも可能である。
また、燃料電池用セパレータ材としてB含有ステンレス鋼を用いる場合には、熱間加工の後、冷間加工として冷延鋼帯圧延を施して冷延鋼板に仕上げ加工を行い、得られた薄板をプレス成形して所定の断面形状にする。上述のようにして得られた高い信頼性と生産性に裏付けされたB含有ステンレス鋼材は、中性子遮蔽容器用、さらには燃料電池用セパレータ材等の機能を発揮する用途の鋼材として好適である。
化学組成が本発明で規定する範囲を満たす母材およびプロテクト材を用いて、溶接施工時の溶接割れおよび圧延後の耳割れ発生状況を評価する実験室的試験を実施した。
(試験材の製作および圧延条件)
被圧延材として、表1中の鋼番号M1〜M5のB含有オーステナイト系ステンレス鋼からなる幅200mm、厚さ50mm、長さ100mmのスラブを用い、このスラブの幅方向端部に、同表中の鋼番号P1〜P7のステンレス鋼からなるプロテクト材を、電子ビーム溶接により接合することにより試験材を製作した。
電子ビーム溶接の条件は溶接電流:560mA、溶接速度:210mm/分、ビーム振幅:±2mmとし、溶接作業は施工能率の大きい条件にて行った。このとき、表2に示す焦点位置および対物距離(条件A〜D)を変化させて、異なる形状係数Qの溶接ビード断面の溶接金属部を得た。
Figure 0004613791
上記の条件にて電子ビーム溶接を行うと、B含有オーステナイト系ステンレス鋼の母材とステンレス鋼プロテクト材は、それぞれ5mm程度にわたって溶融し、合計10mm程度の厚さを有する溶接金属部が形成された。この溶接金属部の化学組成を、表3に示す。なお、試験材T4についてのみ成分調整のためインサート材として金属板(厚さ3mm、成分組成:質量%でCrを35%、Niを4%含み残部がFeおよび不可避不純物)を挿入した。
Figure 0004613791
電子ビーム溶接後にプロテクト材を研磨し、加工面に平行な面内における母材スラブ側面端面からのプロテクト材単体の厚さ(溶接金属を除くプロテクト材の厚さ)を10mmに調整した。
得られたスラブを加熱炉中で1180℃にて1時間以上加熱し、仕上げ温度を600〜700℃として圧延した。仕上げ板厚が1mmで、総圧下比(初期板厚/仕上げ板厚)が50.0となるように、ワークロール直径が350mmの2段圧延機を用いて多数回パスの熱間圧延を行った。
本実施例で総圧下比を50.0としたのは、実操業で想定される総圧下比の値と同程度、もしくはそれ以上の値とした。すなわち、総圧下比が小さい場合には、耳割れが発生し難くなり、実操業をシミュレートした正確な耳割れ評価のできる実験室的試験とはならないからである。
(評価結果)
上記の実験室的試験の結果に基づいて、溶接ビード断面の形状係数Qの測定、溶接割れの有無および圧延後の耳割れの評価を行った。
溶接ビード断面の形状係数Qの測定は、溶接ビード幅が安定した、いわゆる定常ビード部から溶接線に直交する断面での切断面を、粗さ#600まで研磨し、次いでエッチングを行い、溶け込み形状を現出させて、溶接ビード断面における深さ方向の入口部でのビード幅Wnおよび中央部でのビード幅Wcm(図2参照)を実測した。実測値に基づき、溶接ビード断面の形状係数Q(Wcm/Wn)を求めた。
次に、施工時の溶接割れ有無の確認は超音波検査によって行い、割れ無し(○印)と割れ有り(×印)で示した。圧延後の耳割れ発生状況の評価は、圧延後、試験材の幅端部全長に対して割れ発生状況を目視観察を行い、割れの長さが0.1mm未満の場合を割れ無し(○印)、割れの長さが0.1mm以上の場合を割れ有り(×印)とした。
さらに、前記表3に示す溶接金属部の化学組成から、試験材毎に前記(1)〜(3)式に表されるCreqの値、(Creq−Nieq)の値、およびPx値を求めた。これらの結果を溶接ビード断面の形状係数Qの測定、溶接割れの有無および圧延後の耳割れの評価結果とともに、表4に示した。
Figure 0004613791
表4から明らかなように、本発明で規定する(1)、(2)および(3)式で表される関係を満たし、溶接ビード断面の形状係数Qも満足する本発明例(試験材T1〜T4)では、溶接電流:560mA、溶接速度:210mm/分というような施工能率の大きい条件を適用しても、施工時の溶接割れがなく、かつ圧延後の耳割れの発生もなく、良好な品質のB含有ステンレス鋼材が得られた。
これに対し、本発明で規定する(1)式を満たさない試験材T5およびT6、同(2)式を満たさない試験材T7およびT8は、溶接割れまたは耳割れを生じ、良好な結果が得られなかった。
一方、本発明で規定する(1)、(2)および(3)式を満たしても、溶接ビード断面の形状係数Qを満足しない試験材T9〜T11では、いずれも溶接割れを発生した。また、本発明で規定する(3)式を満たさない試験材T12〜T15でも、全て溶接割れを発生した。
インサート材に関し、試験材T4とT15は母材、プロテクト材および溶接条件は全て同じであったが、インサート材として金属箔を挿入した試験材T4は溶接割れがなく、かつ圧延割れも生じなかったのに対し、インサート材を挿入しなかった試験材T15では本発明で規定する(3)式を満たすことができず、溶接割れが発生した。
本発明法によれば、コスト低減を目的とする高能率の溶接条件(例えば、溶接電流が500mA以上で、かつ溶接速度が200mm/分以上)の電子ビーム溶接により、B含有量の高いステンレス鋼片の側面にプロテクト材を接合し圧延する場合でも、施工時の溶接割れおよび圧延後の耳割れの発生を防止し、高い生産性と優れた品質のもとにB含有ステンレス鋼材を提供できる。さらに、溶接接合時にインサート材を使用すれば、溶接金属の割れ感受性を一層低減することができる。
これにより、本発明のB含有ステンレス鋼材は、例えば、中性子遮蔽容器用、さらには燃料電池用セパレータ材等の機能を発揮するB含有ステンレス鋼材として広く適用することができる。
本発明のB含有ステンレス鋼片を模式的に示す図である。 ステンレス鋼片とプロテクト材の間に形成される溶接ビード断面を模式的に示す図である。
符号の説明
1.母材、 2.プロテクト材
3.加工面、 4.板厚
5.プロテクト材の厚さ、 6.圧延方向
7.溶接金属部
Wn:溶接ビード断面における深さ方向の入口部でのビード幅
Wcm:溶接ビード断面における深さ方向の中央部でのビード幅

Claims (8)

  1. Bを0.3〜2.5質量%含有するステンレス鋼片の加工面を除く少なくとも対向する2面に、Bを0.3質量%以下含有するステンレス鋼からなるプロテクト材がステンレス鋼溶接金属により接合され一体化されており、
    前記ステンレス鋼溶接金属の化学組成が下記の(1)〜(6)式で表される関係を満足し、かつ前記ステンレス鋼片と前記プロテクト材の間の溶接ビード断面における深さ方向の中央部でのビード幅Wcmおよび深さ方向の入口部でのビード幅Wnとした場合に、これらの比で示される溶接ビード断面における形状係数Q(Wcm/Wn)が0.8〜1.4であることを特徴とするB含有ステンレス鋼片。
    15≦Creq≦30 ・・・ (1)
    4≦Creq−Nieq≦17 ・・・ (2)
    Px≧0 ・・・ (3)
    ただし、
    Creq=Cr+1.5×Si+Mo−5×B ・・・ (4)
    Nieq=Ni+30×(C+N)+0.5×Mn ・・・ (5)
    Px=Cr+0.47×Ni+0.22×Mo+25×B−33 ・・・ (6)
    ここで、式中の元素記号は、溶接金属中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す
  2. 前記ステンレス鋼片と前記プロテクト材の間に、Bを0.4〜2.5質量%含有するインサート材を介入させたことを特徴とする請求項1に記載のB含有ステンレス鋼片。
  3. 前記プロテクト材の厚さが10mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のB含有ステンレス鋼片。
  4. Bを0.3〜2.5質量%含有するステンレス鋼片の加工面を除く少なくとも対向する2面に、Bを0.3質量%以下含有するステンレス鋼からなるプロテクト材を接合して一体化したB含有ステンレス鋼材の製造方法であって、
    電子ビーム溶接を用いて前記プロテクト材を接合するに際し、下記の(1)〜(6)式で表される関係を満足する化学組成を有するステンレス鋼溶接金属を溶融し、前記ステンレス鋼片と前記プロテクト材の間の溶接ビード断面における深さ方向の中央部でのビード幅Wcmおよび深さ方向の入口部でのビード幅Wnとした場合に、これらの比で示される溶接ビード断面における形状係数Q(Wcm/Wn)を0.8〜1.4として接合し、加熱後、加工することを特徴とするB含有ステンレス鋼材の製造方法。
    15≦Creq≦30 ・・・ (1)
    4≦Creq−Nieq≦17 ・・・ (2)
    Px≧0 ・・・ (3)
    ただし、
    Creq=Cr+1.5×Si+Mo−5×B ・・・ (4)
    Nieq=Ni+30×(C+N)+0.5×Mn ・・・ (5)
    Px=Cr+0.47×Ni+0.22×Mo+25×B−33 ・・・ (6)
    ここで、式中の元素記号は、溶接金属中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す
  5. 前記ステンレス鋼片と前記プロテクト材の間に、Bを0.4〜2.5質量%含有するインサート材を介入させて接合することを特徴とする請求項4に記載のB含有ステンレス鋼材の製造方法。
  6. 前記プロテクト材の厚さを10mm以上とすることを特徴とする請求項4または5に記載のB含有ステンレス鋼材の製造方法。
  7. 請求項4〜6のいずれかに記載の方法により製造されたB含有ステンレス鋼材を使用したことを特徴とする中性子遮蔽容器。
  8. 請求項4〜6のいずれかに記載の方法により製造されたB含有ステンレス鋼材を使用したことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
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