JP7422174B2 - ベーカリー用油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は4糖生成アミラーゼを含有することを特徴とするベーカリー用油脂組成物に関する。
一般的に焼成後のベーカリー製品は、貯蔵・保管中に、老化現象と呼ばれる経時的な劣化に伴って、その食感が変化し、パサパサとした食感となったり、口溶けが悪化したりすることが知られており、この現象を抑制するための手法との一として、ベーカリー生地中に各種酵素を含有させ、分散させることが従来より検討されている。
例えば、耐酸性を有するα-アミラーゼと耐熱性を有するα-アミラーゼを併せて含有させたベーカリー生地を調製する方法(特許文献1)やマルトテトラオース生成酵素を含有させたベーカリー生地を調製する方法(特許文献2)、乳化剤とアミラーゼ類、特定のトリグリセリド組成を有する可塑性油脂組成物を含有するベーカリー生地(特許文献3)等の、ベーカリー生地中に酵素を直接含有させる方法が開示されている。
しかし、特許文献1や特許文献2、特許文献3のような、ベーカリー生地に酵素を直接含有させる方法では、通常ベーカリー生地に対する酵素の使用量は僅少量であるために、ベーカリー生地中で酵素が偏在しやすい上、使用した酵素の影響でベーカリー生地の調製時に生地が扱いにくくなることが知られており、特にパン生地の場合は生地がべとつき、作業性が低下しやすいという問題があった。また、得られるベーカリー製品の食感が過度にソフトなものとなり、くちゃつきやすくなるために歯切れが悪化したり、良好な口溶けが得られない場合があった。
この為、近年では、ベーカリー生地に対する、酵素の働きや作用するタイミングを遅らせると共に、ベーカリー生地中に均一に分散させる方法が検討されており、至適温度が異なる2種のアミラーゼを併用したベーカリー用油脂組成物(特許文献4)や、異なる2種のアミラーゼとアルギン酸エステルを含有する油脂組成物(特許文献5)等の、酵素を含有した油脂組成物を、ベーカリー生地調製時に用いる方法が開示されている。
しかし、特許文献4や特許文献5の手法をとった場合、ベーカリー生地がべとつかず、作業上扱いやすい生地を得ることは出来るが、得られるベーカリー製品はやはりソフトな食感が強く、歯切れが悪化したり、良好な口溶けが得られない場合があった。
そこで本出願人は、酵素を使用することによる老化現象の抑制と、良好な食感の維持とを両立する検討を行い、既にマルトース生成型アミラーゼを含有する湯種用油脂組成物(特許文献6)を出願し、該発明品を用いることで従来の酵素を含有させたベーカリー製品とは異なるもっちりとした食感を有するベーカリー製品が得られることを見出している。
しかし、特許文献6記載の発明は湯種法を用いることが求められており、中種法や直捏法のような、汎用される生地の調製方法でベーカリー生地の調製を行う場合、従来技術と同様にくちゃつきやすくなり、歯切れが悪化したり、良好な口溶けが得られない場合があった。
したがって、酵素を用いたベーカリー製品の老化現象の抑制の手法について、更なる改良が求められてきた。
特公平07-110193号公報 特開平11-266773号公報 特開2016-189724号公報 特開2017-029005号公報 特開2016-054680号公報 特開2015-198610号公報
本発明の目的・課題は、次の2点である。1点目は経時的な老化現象が抑制されたベーカリー製品を得ることである。2点目はソフトな食感と、歯切れ・口溶けとが両立されたベーカリー製品を得ることである。
本発明者等による鋭意検討の結果、4糖生成アミラーゼを含有するベーカリー用油脂組成物をベーカリー生地の調製時に用いることで、経時的な老化現象が抑制されたベーカリー製品が得られることを見出した。また、ソフトな食感と、歯切れ・口溶けとが両立されたベーカリー製品を得られることを見出した。
本発明は上記知見に基づくものである。すなわち、本発明は、4糖生成アミラーゼを含有するベーカリー用油脂組成物である。
本発明によれば、経時的な老化現象が抑制されたベーカリー製品を得ることが出来る。また、ソフトな食感と、歯切れ・口溶けとが両立されたベーカリー製品を得ることが出来る。
以下、本発明のベーカリー用油脂組成物について詳述する。
なお、以下、経時的な老化現象が抑制されたベーカリー製品、又は経時的な老化現象が抑制されたベーカリー生地を、老化耐性を有するベーカリー製品、又は老化耐性を有するベーカリー生地と記載する場合がある。
<4糖生成アミラーゼ>
本発明のベーカリー用油脂組成物は4糖生成アミラーゼを含有する。
アミラーゼは、澱粉を含めた多糖類や糖類が、構造中に有するグリコシド結合を加水分解する酵素の総称であり、分解様式の違いにより分類された、エンド型アミラーゼやエキソ型アミラーゼ、又、加水分解により生じる産生物により分類された、グルコアミラーゼやマルトース生成アミラーゼ、4糖生成アミラーゼ等が挙げられる。
本発明のベーカリー用油脂組成物においては、上記アミラーゼの中でも、4糖生成アミラーゼを含有することが必要である。4糖生成アミラーゼが油脂組成物中に含有された状態にあることで、4糖生成アミラーゼがベーカリー生地に作用するタイミングを遅らせることができる為、ベーカリー生地製造時の作業性を低下させない他、本発明のベーカリー用油脂組成物中に含有されている4糖生成アミラーゼの代謝により、ベーカリー生地中で生成されたマルトテトラオースによって、ベーカリー生地の水分の、経時的な逸失が減少し、伴って経時的な老化現象が抑制される。またソフトな食感と、歯切れ・口溶けとが両立されたベーカリー製品が得られる。
この4糖生成アミラーゼがベーカリー用油脂組成物中に含有されることなく、ベーカリー生地製造時に直接添加された場合、ベーカリー生地の調製時に生地が扱いにくくなり、特にパン生地の場合は生地がべとつき、作業性が低下する他、得られるベーカリー製品の食感が、くちゃつきやすくなってしまう。
本発明で用いられる、4糖生成アミラーゼとしては、澱粉を含めた多糖類や糖類中のα-1,4グルコシド結合をマルトテトラオース単位で切断する酵素であれば、特に限定されるものではなく、該酵素が含有される酵素製剤を使用することも出来る。市販の4糖生成アミラーゼ酵素製剤としては、例えばPOWERFresh 3050、POWERFresh 3150、POWERFresh 4150 (Danisco社)、デナベイクExtra(ナガセケムテックス社)などが挙げられる。
尚、本発明で用いられる4糖生成アミラーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることが出来る。
また、本発明で用いられる4糖生成アミラーゼの至適温度は、加熱処理に伴って生地中の澱粉がα化していく過程で作用することが好ましいため、30~90℃であることが好ましく、40~80℃であることがより好ましく、最も好ましくは45~75℃である。
本発明のベーカリー用油脂組成物100g中、4糖生成アミラーゼは160~3900単位含有されていることが好ましく、320~2600単位含有されていることがより好ましく、800~2000単位含有されていることが最も好ましい。
4糖生成アミラーゼの含量を160単位以上とすることで、老化現象の抑制効果を十分に得ることが容易となり、又、3900単位以下とすることで、最終的に得られるベーカリー製品、とりわけパン類において、過度にもっちりとしたり、べとついた食感となることを防止できる。
尚、4糖生成アミラーゼの酵素活性は、例えば次のように測定することが出来る。本発明では、4糖生成アミラーゼの酵素活性は、下記条件で測定するとき、1分間に1μmolのブドウ糖に相当する還元力を生成する酵素量を1単位とする。
(4糖生成アミラーゼの酵素活性の測定方法)
40±0.5 ℃に加温した基質溶液(*1)5 mLに試料溶液0.2 mLを正確に加えて混和し、40±0.5 ℃で正確に20分間作用させる。
次に反応液1 mLを量り、あらかじめ用意したソモギー銅試液2 mLに直ちに加えて反応を停止させた後、試験管にガラス玉をのせ、沸騰水浴中で10分間加熱する。
この液を冷却した後、ネルソン試液2 mLを加えて、よく混和し、30分間放置した後、水5 mLを正確に加え、波長520 nmにおける吸光度ATを測定する。
別途、40±0.5 ℃に加温した基質溶液 5 mLに試料溶液0.2 mLを正確に加えて混和し、直ちに1 mLを量り、あらかじめ用意したソモギー銅試液2 mLに加えて反応を停止して、吸光度AT測定時と同様に操作し、吸光度A0を測定する。
また、ブドウ糖標準溶液及び水それぞれについて、1 mLを正確に量り、あらかじめ用意したソモギー銅試液2 mLに加え、以下同様に操作し吸光度AS及びABを測定し、次式により酵素活性を求める。
(酵素活性)={(AT-A0)× 300× 5.2 × n}/{(AS-AB)× 180.16 × 0.2 × 20}
ただし、各代数、及び数値は以下を意味する。
AT :反応液の吸光度
A0 :反応停止液の吸光度
AS :ブドウ糖標準溶液の吸光度
AB :水の吸光度
300 :ブドウ糖標準溶液の濃度(μg/mL)
180.16 :ブドウ糖の分子量
5.2 :反応液の総液量(mL)
0.2 :試料溶液の量(mL)
20 :反応時間(分)
n :試料溶液の希釈倍数
*1:あらかじめ乾燥させた可溶性デンプン(酵素試験用)を5.000g正確に量り、300mLの水に懸濁し、デンプンが沈殿しないように時々振り混ぜながら加熱する。5分間沸騰させた後十分冷却する。これにpH 7.0の200 mmol/Lリン酸緩衝液50 mL及び水を加えて正確に500 mLとしたものを、4糖生成アミラーゼの酵素活性を測定する際の基質溶液とする。
<マルトース生成アミラーゼ>
本発明では上記4糖生成アミラーゼに加えて、更にマルトース生成アミラーゼを含有させることが、ベーカリー製品の経時的な老化現象を一層抑制出来る上、ソフトさと、歯切れ・口溶けとを両立した良好な食感をより維持することが可能となるため好ましい。
まず、本発明で使用することの出来るマルトース生成型アミラーゼについて述べる。
本発明で用いることの出来るマルトース生成型アミラーゼとしては、α-1,4グルコシド結合を切断してマルトースを生成する酵素であれば特に限定されるものではなく、市販のマルトース生成型α-アミラーゼやβ-アミラーゼ等から選ばれた1種又は2種以上を選択することができるが、好ましくはマルトース生成型α-アミラーゼを使用する。
マルトース生成型α-アミラーゼ製剤としては、例えばコクラーゼ(登録商標)(三菱化学フーズ社製)、Novamyl(登録商標)10000BG、Novamyl(登録商標)L、Novamyl(登録商標)3D、マルトゲナーゼ(登録商標)(以上、ノボザイムズジャパン社製)、グリンドアミル(登録商標)MAX-LIFE100(ダニスコジャパン社製)等が挙げられる。
β-アミラーゼ製剤としては、例えばオプチマルトBBA(ジェネンコア協和社製)、β-アミラーゼ#1500、β-アミラーゼL、β-アミラーゼ#1500S(以上、ナガセケムテックス社製)、ハイマルトシン(登録商標)G、ハイマルトシン(登録商標)GL(以上、エイチビィアイ社製)、ユニアーゼ(登録商標)L(ヤクルト薬品工業社製)、GODO-GBA(合同清酒社製)等が挙げられる。
本発明においては、上記マルトース生成型アミラーゼの中でも、酵素の至適温度が60℃以上である高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼが好ましい。高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼの至適温度は、好ましくは40~95℃、より好ましくは50~95℃、最も好ましくは60~90℃である。
上記マルトース生成型アミラーゼの酵素活性は、例えば至適条件(至適温度、至適pH)下において、マルトトリオースを基質に酵素を作用させ、1分間に1マイクロモルのマルトースを生成する酵素量を指標とすることができる。本発明においてマルトース生成型アミラーゼの酵素活性は、該酵素量を1単位とする。マルトースの測定は、「還元糖の定量法第2版」(福井作蔵著、学会出版センター)を参照して行うことができる。
本発明のベーカリー用油脂組成物中のマルトース生成型アミラーゼの含有量は、油脂組成物100g中、好ましくは50~700単位、より好ましくは100~650単位、更に好ましくは200~550単位となる量である。
上記マルトース生成型アミラーゼの含有量が油脂組成物100gあたり50単位以上であると、生成されるマルトース量が一定量以上であることによって、得られるベーカリー製品が、しっとりとソフトな食感になりやすく、また700単位以下であると、特にパン類の生地においてべとつきにくく、又、得られるベーカリー製品の食感が、くちゃついた食感となってしまうことを防止できる。なお、本明細書中、しっとりとした食感をしとり感ともいう。
本発明において、4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼを併用する場合は、ベーカリー用油脂組成物中、4糖生成アミラーゼ1単位に対して、マルトース生成アミラーゼが0.005~4.5単位の範囲で含有されることが好ましく、0.02~2.2単位の範囲で含有されることがより好ましく、0.05~0.7単位の範囲で含有されることが最も好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物では、4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼとを上記比率内で含有させることによって相乗効果が得られ、4糖生成アミラーゼを油脂組成物中に単独で加えた場合よりもベーカリー生地が扱いやすく作業性が向上する他、ベーカリー製品の経時的な老化現象や食感の変化を抑制することができる。
<その他酵素>
尚、本発明のベーカリー用油脂組成物は、上記の4糖生成アミラーゼや、マルトース生成アミラーゼの他にも、製菓製パン改良効果を有する酵素を含有させることが可能であり、例えば4糖生成アミラーゼやマルトース生成アミラーゼ以外のアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ等が挙げられるが、本発明のベーカリー用油脂組成物の改良効果を損ねずに、一層強化することが出来る点から、ヘミセルラーゼ、及び/又はリパーゼを選択して、含有させる
ことが好ましい。
以下、ヘミセルラーゼについて述べる。
<ヘミセルラーゼ>
ヘミセルラーゼとはヘミセルロースを基質として加水分解する酵素の総称である。
本発明のベーカリー用油脂組成物では、更にヘミセルラーゼを含有させることで、特に得られるベーカリー製品の歯切れやボリューム感が向上する上、ベーカリー生地を、生地物性を悪化させることなく安定して得ることができるため、含有させることが好ましい。
へミセルロースとは、陸上植物細胞の細胞壁を構成する多糖類のうち、セルロースとペクチン以外のものであり、水溶性のものと不溶性のものがあるが、具体的には例えばキシラン、アラビノキシラン、アラビナン、マンナン、ガラクタン、キシログルカン、グルコマンナン等が挙げられる。
そのため、ヘミセルラーゼは具体的には、キシランを分解するキシラナーゼ、アラビノキシランを分解するアラビノキシラナーゼ等に分類することができるが、実態としてはこれらの活性を混合して有するものであることが多く、実際に市販されている酵素製品もこれらの活性を混合して有するものである場合が多い。
本発明では、上記ヘミセルラーゼの中でも、よりべたつきが少ないパン生地が得られる点で、アラビノキシランを主基質とし、且つ、不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)が10以上であるヘミセルラーゼを使用することが好ましい。
「アラビノキシランを主基質とする」とは、アラビノキシランを分解する活性が、好ましくは1000単位/g以上、より好ましくは2000単位/g以上、更に好ましくは3000単位/g以上であることを指すこととする。なおここでいうアラビノキシランは不溶性又は水溶性に限定されず、いずれのアラビノキシランを基質としたときに上記の下限以上の活性に該当した場合も「アラビノキシランを主基質とする」ことに該当するものとする。
尚、1単位とは、1分間につき1μmolのキシロース量の還元糖を生じる酵素の量として定義されるものである。
また、不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)は10以上であることが好ましいが、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上である。
尚、その上限は好ましくは40以下、より好ましくは35以下、更に好ましくは30以下である。
上記分解活性比が10以上であることで、例えば、食パン生地や菓子パン生地等の水分含量の高いパン生地の場合に、生地のべたつきが強くなってしまうことを防止できる。
不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比を算出する方法は、例えば下記(1)~(3)による方法が挙げられる。
(1)不溶性アラビノキシランに対する酵素活性の測定
不溶性アラビノキシラン製剤(XylazymeAX:メガザイム社製)の懸濁液(40mgの試料を8mlの脱イオン水に懸濁)300μlをマイクロプレートに分注し凍結乾燥したものを測定に用いる。このマイクロプレートの各ウェルに酵素液(ウシ血清アルブミン(0.5mg/ml)を含むpH4.6、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液に、酵素を0~40単位懸濁したもの)25μlと該緩衝液25μlを分注して酵素反応を開始し、37℃で1時間酵素反応させた後、1%(w/v)トリス緩衝液200μlを添加して酵素反応を停止する。10分間室温でおいた後、遠心分離(3000g、15分)して得た上清について、分光光度計を用いて吸光度を600nmで読み取る。尚、酵素液の代わりに緩衝液を添加したものをブランクとして使用する。
(2)水溶性アラビノキシランに対する酵素活性の測定
水溶性アラビノキシラン溶液(AZOWAX:メガザイム社製)33μlと酵素液(ウシ血清アルブミン(0.5mg/ml)を含むpH4.6、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液に、酵素を0~40単位懸濁したもの)33μlをマイクロプレートの各ウェルに分注して酵素反応を開始する。37℃で1時間酵素反応させた後、エタノール140μlを添加して酵素反応を停止する。10分間室温でおいた後、遠心分離(3000g、15分)して得た上清について、分光光度計を用いて吸光度を600nmで読み取る。尚、酵素液の代わりに緩衝液を添加したものをブランクとして使用する。
(3)不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比の算出
1つの酵素につき上記(1)と(2)の両方の酵素活性の測定を行い、それらの結果から以下のようにして、「不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比」を算出する。
それぞれの吸光度と酵素含量について非線形回帰曲線Y=Ymax×(1-e-K*X)(Yは吸光度、Xは酵素量)をプロットし、その直線性のある部分、好ましくはYの最大値の1/10以下の範囲で、その傾き(S)を下記の式により算出する。
傾き(S)=(Ymax×K)/1.0536
ここで、この傾きの比、すなわちS(不溶性アラビノキシラン)/S(水溶性アラビノキシラン)の値を「不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比」とする。
尚、本発明で用いられるヘミセルラーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることが出来る。また、本発明で用いられるヘミセルラーゼの至適温度は、ミキシング中に、主として不溶性アラビノキシランに作用させ、好ましいグルテン形成を図る目的から、20~90℃であることが好ましく、25~50℃であることがより好ましく、最も好ましくは25~40℃である。
本発明のベーカリー用油脂組成物中のヘミセルラーゼの含有量は、アラビノキシランを基質とした場合の活性が、好ましくは油脂組成物100g中、75~700単位、より好ましくは100~650単位、更に好ましくは125~625単位となる量である。上記ヘミセルラーゼの含有量が油脂組成物100gあたり75単位以上であると、ヘミセルラーゼの添加効果が得やすい。一方、700単位以下であると、パン生地がべたつきにくく、更にはくちゃついた食感のパンとなってしまうことを防止しやすい。
<リパーゼ>
次にリパーゼについて述べる。
リパーゼは、油脂中のトリグリセリドに作用して、トリグリセリドを、モノグリセリドやジグリセリド、グリセリンや脂肪酸に加水分解する酵素であり、反応途中においてはモノ・ジグリセライドが生成される。そのため、本発明品が有する、ソフト性やしっとりとした食感をベーカリー製品に付与する効果のみならず、ボリュームの向上に寄与する他、老化耐性を高めることが出来、又、ベーカリー生地の機械耐性を向上させることが出来るため、本発明のベーカリー用油脂組成物中に含有させることが好ましい。
本発明に用いることの出来るリパーゼとしては、市販のいずれのリパーゼやリパーゼ製剤も使用することが可能であるが、例えばリパーゼA「アマノ」6、リパーゼAH「アマノ」SD、リパーゼAY「アマノ」30、リパーゼPS「アマノ」SD、リパーゼDF「アマノ」15、リパーゼM「アマノ」、リパーゼG「アマノ」50、リパーゼR「アマノ」(以上、天野エンザイム社製)、リリパーゼA-10D(以上、ナガセケムテックス社製)、グリンドアミルEXEL639(ダニスコ(Danisco)・ジャパン社製)、ダイエットレンツリパーゼCR、バリダーゼリパーゼMJ、ベイクザイムL80.000B、ピカンターゼA、ピカンターゼAN、ピカンターゼR800、ピカンターゼC3X、ピカンターゼK、ピカンターゼKL、パナモアゴールデン、パナモアスプリング(以上、ディー・エス・エム(DSM)ジャパン社製)、リポパン50BG、リポパンFBG(以上、ノボザイムス(Novozymes)ジャパン社製)エンチロンAKG(洛東化成工業社製)等が挙げられる。
尚、本発明で用いられるリパーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることが出来る。また、本発明で用いられるリパーゼの至適温度はミキシング中に作用させることにより好ましい作業性のベーカリー生地と、好ましい食感のベーカリー製品が得られる点から、20~90℃であることが好ましく、25~50℃であることがより好ましく、最も好ましくは25~40℃である。
本発明品中のリパーゼの含有量は、油脂組成物中、質量基準で0.03~50ppmであることが好ましく、より好ましくは0.09~40ppm、最も好ましくは0.15~30ppmである。
本発明品中のリパーゼの含有量が0.03ppm以上となってから、リパーゼの効果によるベーカリー生地の物性変化を確認できるようになり、リパーゼの含有量が50ppm以下の添加により、プロテアーゼ活性等の各種副活性の影響を防止しやすく、又、得られるベーカリー生地が過度に軟らかくなり、浮きが悪化することを防止できる。
<油脂>
本発明のベーカリー用油脂組成物で用いられる油脂としては特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明では更に、重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維を、ベーカリー用油脂組成物中に含有させることにより、ソフトな食感と、歯切れ・口溶けを、時間を経ても、尚、一層好ましく有するベーカリー製品を得ることができる。ここで、重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維について述べる。
本発明に好ましく用いられる水溶性食物繊維としては、デキストランやデキストリン(これらのうち高分岐のものや、環状のものも含む)等のグルコースを構成糖とするものを挙げることができ、このうち重量平均分子量が20万以下のものが好ましく選択される。
選択される水溶性食物繊維の重量平均分子量は、好ましくは20万以下、より好ましくは10万以下、さらに好ましくは5万以下、最も好ましくは1万以下である。水溶性食物繊維の重量平均分子量の下限は生地物性を悪化させることなく、ソフトでしっとりとした食感と歯切れとが両立されたベーカリー製品を得る観点から2500であることが好ましい。
ここで選択される水溶性食物繊維の重量平均分子量が20万超であると、得られるパンがソフトであるがもっちりした食感になってしまい、良好な歯切れとなりにくい。また、パン生地の物性に影響が出てしまう場合がある。
重量平均分子量が20万以下を満たすものであれば、任意の水溶性食物繊維を用いることができるが、酵素分解、特にアミラーゼによる分解を受けにくくする観点から、該水溶性食物繊維を構成する構成糖残基のうち、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の比率が30%以下のものを選択することが好ましく、25%以下のものを選択することがより好ましい。ここで、「構成糖残基のうち、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基」は、他の構成糖と結合する水酸基を1位と4位において2つ有するものであり、1位と4位以外の別の位置に他の構成糖と結合する水酸基を更に有するものは含まない。
また、同様に酵素分解を受けにくくする観点から、該水溶性食物繊維を構成する構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の比率が30%以上のものを選択することが好ましく、40%以上のものを選択することがより好ましい。ここで、「構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基」は、他の構成糖と結合する水酸基を1位と6位において2つ有するものであり、1位と6位以外の別の位置に他の構成糖と結合する水酸基を更に有するものは含まない。
これらに加えて、一層ソフト性な食感を得るために、より多分岐の構造を有する水溶性食物繊維を選択することが好ましく、とりわけ、該水溶性食物繊維を構成する構成糖残基のうち、3つのα結合を有するグルコース残基の比率の和が8%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
「3つのα結合を有するグルコース残基」とは、例えば、グルコース残基の1位と3位と6位の水酸基にα結合を有するものや、グルコース残基の1位と4位と6位の水酸基にα結合を有するものなど、グルコース残基中の3か所で他の構成糖とのα結合を形成しているものを指す。従って、グルコース残基中の4か所以上で他の構成糖とのα結合を形成しているものは「3つのα結合を有するグルコース残基」に含まない。
この各結合様式を有するグルコース残基の比率は、例えば、糖鎖構造の解析を行う手法として一般的に知られている、メチル化分析により測定することができる。
これらの条件を満たす、好ましい水溶性食物繊維としては、市販のいずれの水溶性食物繊維や製剤を使用することが可能であり、例えば、重量平均分子量が20万以下であり、構成糖残基組成において、1位と4位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が30%以下、1位と6位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が30%以上である水溶性食物繊維としてはデキストラン10(名糖産業株式会社)等を挙げることができ、さらに前記条件を満たし、且つ構成糖残基組成において、3つのα結合を有するグルコース残基の比率の和が8%以上である水溶性食物繊維としては、ファイバリクサ(株式会社林原)、などを挙げることができる。
本発明においては、これらの水溶性食物繊維を1種または2種以上を組合せて使用してもよく、用いる場合は油相に分散させても水相に分散させてもよい。
尚、上記の重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維の含有量は、該水溶性食物繊維の重量平均分子量にも依るが、生地作業性と食感の両立を図る観点から、本発明のベーカリー用油脂組成物中、0.5質量%以上とすることが好ましく、0.5~8質量%とすることがより好ましい。
<その他原料>
本発明のベーカリー用油脂組成物は、上記4糖生成アミラーゼ、及び油脂のみからなるものであってもよいが、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、上記4糖生成アミラーゼ、及び食用油脂以外にその他の原材料を含有させることが出来る。
本発明のベーカリー用油脂組成物に含有させることが出来るその他の原材料としては、例えば、水、糖類、乳化剤、澱粉類、デキストリン、食物繊維、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・脱脂濃縮乳、蛋白質濃縮ホエイ等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
なお、上記その他原料は、本発明の目的を損なわない範囲で任意に含有させ、使用することが出来るが、本発明のベーカリー用油脂組成物中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下となる範囲で含有させ、使用することが好ましい。
乳化剤としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム等が挙げることができる。これらの乳化剤は単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
乳化剤を含有する場合、その含有量は本発明のベーカリー用油脂組成物中、風味を損ねない観点から15質量%以下、より好ましくは10質量%以下となるように含有させる。
またベーカリー用油脂組成物が水を含有する場合、ベーカリー用油脂組成物中の水の含有量は、1~40質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。
上記ベーカリー用油脂組成物の形態としては、油脂を含有する食品、例えばマーガリン・ファットスプレッド・ショートニング・バター等の可塑性油脂組成物や、流動ショートニング、流動状マーガリン、液状油組成物、粉末油脂、純生クリーム、ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)、植物性ホイップ用クリーム、クリームチーズ、チョコペースト等を挙げることができる。本発明では本発明品の効果が得られ易いことから、可塑性油脂組成物であることが好ましい。
また、本発明品が可塑性油脂組成物である場合、ベーカリー製品製造時の使用形態として、好ましくは練り込み油脂や折り込み油脂の形態が挙げられるが、練り込み油脂として、即ち製菓製パン用練り込み油脂組成物としてベーカリー製品製造時に用いることが、ベーカリー生地中に均一に分散するため、特に好ましい。
尚、本発明のベーカリー用油脂組成物が乳化物である場合、その乳化形態は特に問われず、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれでも構わないが、油中水型乳化物の形態であることが好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物中の油脂の含有量は、好ましくは10~99質量%、より好ましくは50~95質量%、更に好ましくは60~90質量%である。
本発明のベーカリー用油脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、最終的に4糖生成アミラーゼが油脂組成物中に含有されるものであれば公知の方法で製造することができる。
本発明の製造方法においては、上記の各酵素を順次別個に添加することができ、粉末状の酵素を事前に混合してから添加することもできる。また、上記の酵素が含有された水溶液を添加、混合することも出来る。
例えば、本発明のベーカリー用油脂組成物が可塑性油脂組成物の形態をとる場合は、可塑性油脂組成物の製造の過程で、油脂中に上述の酵素を別個に、或いは前もって複数の酵素を混合したものを直接分散してから、急冷可塑化により可塑性油脂組成物を製造することができ、水相を含有する場合は水相に上述の酵素を別個に、或いは前もって複数の酵素を混合したものを分散させてから、油相と共に急冷可塑化することにより、可塑性油脂組成物を製造することができる。
また、可塑性油脂組成物の製造の過程で、急冷可塑化後に上述の酵素、若しくは上記の酵素が含有された水溶液を添加、混合する方法によることもできる。
本発明では、高い酵素活性を有し、且つ、保存時の酵素活性の低下が防止される点で、急冷可塑化後に、酵素、若しくは上記の酵素が含有された水溶液を添加、混合する方法であることが好ましい。
また、本発明のベーカリー用油脂組成物が可塑性油脂組成物である場合、その製造工程において、窒素、空気等のガスを含気させても、含気させなくても構わない。
次に、本発明のベーカリー生地、及びベーカリー製品について述べる。
まず、本発明のベーカリー生地について述べる。
本発明のベーカリー生地は、本発明のベーカリー用油脂組成物を含有するベーカリー生地である。本発明のベーカリー用油脂組成物を含有することの出来るベーカリー生地としては、特に限定されず、任意のパン類の生地、菓子類の生地が挙げられ、例えば食パン生地、菓子パン生地、バラエティーブレッド生地、バターロール生地、ソフトロール生地、ハードロール生地、スイートロール生地、デニッシュ生地、ペストリー生地、フランスパン生地、パイ生地、シュー生地、ドーナツ生地、バターケーキ生地、スポンジケーキ生地、ハードビスケット生地、ワッフル生地、スコーン生地等が挙げられる。
本発明のベーカリー生地中におけるベーカリー用油脂組成物の含有量は、従前知られた酵素を含有するベーカリー用油脂組成物と同様であり、ベーカリー生地の種類やベーカリー用油脂組成物中の上記酵素の含有単位数によっても異なるが、例えばパン類の場合、ベーカリー生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、最も好ましくは15質量部以下である。尚、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、最も好ましくは1.5質量部以上である。
上記穀粉類としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、これらの中でも、小麦粉を、穀粉類中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%使用する。
上記ベーカリー生地のうち、パン類の生地を調製する場合に、小麦粉以外の穀粉類を使用する際、グルテンを別途添加することが好ましい。その添加量は、穀粉類とグルテンをあわせた合計量に対し、タンパク質含量が好ましくは5~20質量%、より好ましくは10~18質量%となる量である。
本発明のベーカリー生地においては、必要に応じ、一般の製菓製パン材料として使用することのできる、その他の原料を配合することができる。該その他の原料としては、例えば、水、油脂、イースト、糖類や甘味料、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳や乳製品、でんぷん類、チーズ類、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、蛋白質、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、各種食品素材や食品添加物等を挙げることができる。
上記その他の原料は、本発明の効果を損なわない限り、任意に使用することができるが、水については、例えばパン類の場合、上記穀粉類100質量部に対して、好ましくは30~100質量部、より好ましくは30~70質量部となる範囲で使用する。また、水以外のその他の原料については、上記穀粉類100質量部に対して、合計で好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で使用する。
尚、その他の原料として、水分を含有する原料を使用した場合は、上記の水には、その他の原料に含まれる水分も含めるものとする。
上記ベーカリー生地の製造方法としては、パン類の製造方法としては中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法等をとることができ、菓子類の製造方法としてはシュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法、共立て法、別立て法等をとることができ、通常製菓製パン法として使用されている、あらゆる製菓製パン法を採ることができる。
本発明のベーカリー製品のうち、とりわけパンを中種法で製造する場合は、本発明のベーカリー用油脂組成物を中種生地及び/又は本捏生地に練り込み、含有させることにより製造することができるが、本捏生地に練り込み、含有させることが好ましい。
次に、本発明のベーカリー製品、及びその製造方法について説明する。
本発明のベーカリー製品は、本発明のベーカリー用油脂組成物を含有するベーカリー生地を加熱処理することにより得られる。
上記加熱処理としては、上記ベーカリー生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることが挙げられる。また、得られた本発明のベーカリー製品を、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
尚、得られたベーカリー生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
以下、本発明を実施例により更に詳述するが、本発明はこれらの実施例により、何ら制限されない。
尚、以下では、ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部と、パーム油5質量部を、それぞれ60℃に加熱し、溶解・混合したものを、単に「油脂配合物」と記載する場合がある。尚、以下、実施例1以外の各実施例及び各比較例では油中水型乳化物であるベーカリー用油脂組成物を調製した。
≪試験1:4糖生成アミラーゼ≫
以下の実施例1、2、比較例1で製造された、4糖生成アミラーゼを含有するベーカリー用油脂組成物の効果について検証を行った。
<比較例1>
油脂配合物83.80質量部に大豆レシチン0.20質量部を溶解させ、これを油相とし、この中に水を水相として16.00質量部混合して、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化を行い、4糖生成アミラーゼが含有されていない、ベーカリー用油脂組成物Aを調製した。
<実施例1>
油脂配合物99.5質量部を常法に従って加熱殺菌、及び冷却可塑化した。続いて、4糖生成アミラーゼ(ナガセケムテックス社製、「デナベイクEXTRA」、以下で使用する4糖生成アミラーゼも同様)をベーカリー用油脂組成物100g中、3250単位となる量だけ添加・混合し、本発明のベーカリー用油脂組成物Bを調製した。尚、上記4糖生成アミラーゼの至適温度は45~75℃の範囲内であった。
<実施例2>
油脂配合物83.30質量部に大豆レシチン0.20質量部を溶解させ、これを油相とし、この中に水を水相として16.00質量部混合し、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化を行った。更に4糖生成アミラーゼを、ベーカリー用油脂組成物100g中、3250単位となる量だけ添加・混合して、本発明のベーカリー用油脂組成物Cを調製した。
<実施例3>
4糖生成アミラーゼを、ベーカリー用油脂組成物100g中、2275単位となる量だけ添加した以外は、実施例2と同様の配合・製法により、本発明のベーカリー用油脂組成物Dを調製した。
<実施例4>
4糖生成アミラーゼを、ベーカリー用油脂組成物100g中、1300単位となる量だけ添加した以外は、実施例2と同様の配合・製法により、本発明のベーカリー用油脂組成物Eを調製した。
上記のようにして作成されたベーカリー用油脂組成物A~Eを用いて、下記の製法でプルマン型食パンA-1、A-2、B、C、D、Eを得た。なお、プルマン型食パンA-1はベーカリー用油脂組成物Aを生地に加えて調製された食パンであり、プルマン型食パンA-2は、ベーカリー用油脂組成物Aを生地に加えた後に、4糖生成アミラーゼを、3250単位となる量だけ生地へ直接投入し、調製された食パンであった。
尚、ベーカリー用油脂組成物Bを用いたプルマン型食パンを、プルマン型食パンBとして記載する。以下、その他のベーカリー用油脂組成物についても同様である。
下記基準により、モルダー成形の時点での食パン生地の「生地作業性」を評価し、得られた食パンは、焼成から2日後の状態で、「食感(ソフト性)」「食感(しとり感)」「食感(口溶け)」の観点から評価を行った。評価の結果を表1に示す。
〔プルマン型食パンの配合・製法〕
強力粉(商品名「カメリア」:日清製粉製、タンパク質含量11.8質量%及び灰分0.37質量%)70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。
この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、更に、強力粉30質量部、上白糖5質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.5質量部及び水25質量部を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングした。
ここで、ベーカリー用油脂組成物5質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。
ここで、フロアタイムを20分とった後、230gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
[評価基準]
下記評価基準に則って、5名の専門パネラーによって採点した。尚、集計した結果が25~23点である場合は◎+++、22~20点である場合は◎++、19~17点である場合は◎+、16~14点である場合は◎、13~11点である場合は○、10~8点である場合は△、7点以下の場合は×として評価表中に表した。評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
●生地作業性
5点:べとつきもなく伸展性もよく、極めて良好な作業性であった。
4点:良好な作業性であった。
3点:わずかにべとつきが感じられるか又はわずかに伸展性が悪く感じられるが、良好な作業性であった。
2点:ややべとつきが感じられるか又はやや伸展性が悪く、作業性が若干劣るものであった。
1点:べとつきがあるか又は伸展性が悪く、作業性が劣るものであった。
●食感(ソフト性)
5点:極めて良好
4点:良好
3点:やや良好
2点:やや悪い
1点:悪い
●食感(しとり感)
5点:極めて良好
4点:良好
3点:やや良好
2点:ややぱさついた感じである
1点:乾いた食感である
●食感(口溶け・歯切れ)
5点:歯切れが極めて良好
4点:歯切れが良好
3点:やや重たい食感であるが、歯切れが良好
2点:くちゃつく、又は、ひきが感じられる。
1点:くちゃつきが激しい、又は、ひきが強い。
まず、プルマン型食パンA-1とプルマン型食パンA-2を比較すると、4糖生成アミラーゼが生地中に含有されることで、食感においてはソフト性がやや改善されていた。しかし、プルマン型食パンA-2では生地作業性がプルマン型食パンA-1と比較して低下し、生地がべとついていた。
次に、プルマン型食パンA-2とプルマン型食パンCとを比較すると、プルマン型食パンCでは、プルマン型食パンA-2よりも生地作業性や食感が優れており、ソフト性やしとり感等の好ましい食感が老化によって失われていなかった。
このことから4糖生成アミラーゼを生地に直接含有させるのではなく、ベーカリー用油脂組成物中に含有させてから、生地に投入することの優位性が確認された。
次に、プルマン型食パンB、C、D、Eを比較すると、生地中における4糖生成アミラーゼの含有量には、その効果をより大きく得る為の好ましい範囲があることが示唆された。とりわけ、ベーカリー用油脂組成物Eを用いたプルマン型食パンEでは、プルマン型食パンB、C、Dと比較して、生地作業性やソフト性、しとり感に優れており、経時的な食感の変化が抑制されていた。
このベーカリー用油脂組成物Eをベースとして以下の検討を行った。
≪試験2:マルトース生成アミラーゼ≫
試験2-1では、上記ベーカリー用油脂組成物Eをベースとして、以下の実施例5~9で製造された、4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼを含有するベーカリー用油脂組成物F~Kの効果について検証を行った。尚、検証方法については試験1と同様に、上記製法・配合を用いて、プルマン型食パンF~Kを作成し、上に示した評価方法でそれぞれ評価を行った。その結果を表2-aに示す。
また、試験2-2では、異なる種類の4糖生成アミラーゼ(ダニスコ社製、POWERFresh3050)についても、実施例5~9と同様に、以下の実施例5-2~9-2のとおりベーカリー用油脂組成物L~Pを製造し、その効果について検証を行った。その結果を表2-bに示す。
〔試験2-1〕
<比較例2>
油脂配合物83.80質量部に大豆レシチン0.20質量部を溶解させ、これを油相とし、この中に水を水相として16.00質量部混合し、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化を行った。
更に、マルトース生成アミラーゼ(ノボザイムズ社製「ノバミル10000BG」使用、以下で使用したマルトース生成アミラーゼも同一)を、ベーカリー用油脂組成物100g中400単位となる量だけを添加・混合して、ベーカリー用油脂組成物Fを調製した。
尚、上記マルトース生成アミラーゼの至適温度は65~85℃の範囲内であった。
<実施例5>
油脂配合物83.56質量部に大豆レシチン0.20質量部を溶解させ、これを油相とし、この中に水を水相として16.00質量部混合し、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化を行った。
更に4糖生成アミラーゼを、ベーカリー用油脂組成物100g中、1300単位となる量、マルトース生成アミラーゼを150単位となる量だけ添加し、混合して、本発明のベーカリー用油脂組成物Gを調製した。
尚、4糖生成アミラーゼ1単位に対しマルトース生成アミラーゼは0.115単位となる量が含有されていた。
<実施例6>
マルトース生成アミラーゼを、ベーカリー用油脂組成物100g中、マルトース生成アミラーゼが300単位となる量だけ添加した他は、実施例5と同様の配合・製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物Hを調製した。
尚、4糖生成アミラーゼ1単位に対しマルトース生成アミラーゼは0.231単位となる量が含有されていた。
<実施例7>
マルトース生成アミラーゼを、ベーカリー用油脂組成物100g中、マルトース生成アミラーゼが400単位となる量だけ添加した他は、実施例5と同様の配合・製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物Iを調製した。
尚、4糖生成アミラーゼ1単位に対しマルトース生成アミラーゼは0.308単位となる量が含有されていた。
<実施例8>
マルトース生成アミラーゼを、ベーカリー用油脂組成物100g中、マルトース生成アミラーゼが600単位となる量だけ添加した他は、実施例5と同様の配合・製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物Jを調製した。
尚、4糖生成アミラーゼ1単位に対しマルトース生成アミラーゼは0.462単位となる量が含有されていた。
<実施例9>
マルトース生成アミラーゼを、ベーカリー用油脂組成物100g中、マルトース生成アミラーゼが650単位となる量だけ添加した他は、実施例5と同様の配合・製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物Kを調製した。
尚、4糖生成アミラーゼ1単位に対しマルトース生成アミラーゼは0.500単位となる量が含有されていた。
〔試験2-2〕
<実施例5-2 ~9-2>
実施例5~9のベーカリー油脂組成物G~Kで用いられていた4糖生成アミラーゼ(ナガセケムテックス社製、「デナベイクEXTRA」)の代わりに、由来の異なる4糖生成アミラーゼ(ダニスコ社製、POWERFresh3050)を、同じ単位数となるように添加し、実施例5~9と同様の配合と製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物L~Pを得た。
また、変更後の4糖生成アミラーゼの至適温度は65~85℃の範囲内であった。
試験2-1では、実施例1~4や比較例2との対比により、4糖生成アミラーゼに加えて、マルトース生成アミラーゼを油脂組成物中に含有させることによって、生地作業性が改良され、且つ食感が改良される傾向が確認された。
一方で、含有量によって、生地作業性や、食パンの経時的な食感の改良効果に差異が生じており、マルトース生成アミラーゼの含有量が多くなるほどに経時的なしとり感や口溶けが低下しやすくなることが分かった。
試験2-1の中で、特にプルマン型食パンH、I、Jでは、生地作業性と食感が良好なものとなっており、とりわけプルマン型食パンIでは、焼成から2日後の状態であってもしとり感が好ましく維持されていた。
試験2-2では、異なる由来の4糖生成アミラーゼを用いた場合の影響について試験したが、由来の違いが生地作業性や、食感について与える影響は殆ど無いことを確認した。
≪試験3:ヘミセルラーゼ、リパーゼ≫
以下、ベーカリー用油脂組成物Iをベースとして、試験3-1では4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼに加えて、ヘミセルラーゼを併用した場合の効果を実施例10~14で製造したベーカリー用油脂組成物Q~Uを用いて検証した。また試験3-1-2では、上記試験2-2と同様に、異なる種類の4糖生成アミラーゼ(ダニスコ社製、POWERFresh3000)についても、実施例10~14と同様に、以下の実施例10-2~14-2のとおりベーカリー用油脂組成物V~Zを製造し、その効果について検証を行った。試験3-2では4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼに加えてリパーゼを併用した場合の効果を実施例15~17で製造したベーカリー用油脂組成物AA~ACを用いて検証した。
尚、検証方法については試験1と同様に、上記製法・配合を用いて、プルマン型食パンQ~ACを作成し、上に示した評価方法でそれぞれ評価を行った。その結果を表3-a、表3-b、表4に示す。
〔試験3-1〕
ベーカリー用油脂組成物Iをベースとして、以下の実施例10~14で製造された、4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼに加えて、ヘミセルラーゼを含有するベーカリー用油脂組成物Q~Uの効果について検証を行った。尚、検証方法については試験1と同様に、上記製法・配合を用いて、プルマン型食パンQ~Uを作成し、上に示した評価方法でそれぞれ評価を行った。その結果を表3-aに示す。
<実施例10>
油脂配合物83.50質量部に大豆レシチン0.20質量部を溶解させ、これを油相とし、この中に水を水相として16.00質量部混合し、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化を行った。
更に、ベーカリー用油脂組成物100g中、4糖生成アミラーゼ(ナガセケムテックス社製、「デナベイクEXTRA」)が1300単位となる量、マルトース生成アミラーゼは400単位となる量、ヘミセルラーゼ(ベイクザイムBXP5001BG、DSM社製、以下のヘミセルラーゼも同様)はアラビノキシランを基質とした場合の活性が50単位となる量だけ添加し・混合し、本発明のベーカリー用油脂組成物Qを調製した。
尚、4糖生成アミラーゼ1単位に対しマルトース生成アミラーゼは0.62単位の範囲で含有されており、使用したヘミセルラーゼの至適温度は25~40℃の範囲内であった。
<実施例11>
ヘミセルラーゼをベーカリー用油脂組成物100g中、アラビノキシランを基質とした場合の活性が110単位となるように添加した他は実施例10と同様の配合・製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物Rを調製した。
<実施例12>
ヘミセルラーゼをベーカリー用油脂組成物100g中、アラビノキシランを基質とした場合の活性が350単位となるように添加した他は実施例10と同様の配合・製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物Sを調製した。
<実施例13>
ヘミセルラーゼをベーカリー用油脂組成物100g中、アラビノキシランを基質とした場合の活性が500単位となるように添加した他は実施例10と同様の配合・製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物Tを調製した。
<実施例14>
ヘミセルラーゼをベーカリー用油脂組成物100g中、アラビノキシランを基質とした場合の活性が675単位となるように添加した他は実施例10と同様の配合・製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物Uを調製した。
〔試験3-1-2〕
<実施例10-2 ~14-2>
実施例10~14のベーカリー油脂組成物Q~Uで用いられていた4糖生成アミラーゼ(ナガセケムテックス社製、「デナベイクEXTRA」)の代わりに、由来の異なる4糖生成アミラーゼ(ダニスコ社製、POWERFresh3050)を、同じ単位数となるように添加し、実施例10~14と同様の配合と製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物V~Zを得て、その効果について検証を行った。尚、検証方法については試験1と同様に、上記製法・配合を用いて、プルマン型食パンV~Zを作成し、上に示した評価方法でそれぞれ評価を行った。その結果を表3-bに示す。
試験3-1では、ヘミセルラーゼを併用することで、生地作業性、ソフト性やしとり感といった食感が、一層改良されることが分かった。
ヘミセルラーゼの添加量が増すにつれ、生地のべたつきが強くなり、扱いにくくなっていった。また食感も添加量が増すにつれ、ややヒキが感じられる食感へと変化していった。とりわけ、ヘミセルラーゼを併用することによる相乗効果が特にみられたのは、ベーカリー用油脂組成物Sとベーカリー用油脂組成物Tであり、ソフト性やしとり感が経日的に失われず、好ましい食感であった。
試験3-1-2では、ヘミセルラーゼを併用した場合において、異なる由来の4糖生成アミラーゼを用いた場合の影響について試験したが、由来の違いが生地作業性や、食感について与える影響は殆ど無いことを確認した。
〔試験3-2:リパーゼ〕
ベーカリー用油脂組成物Iをベースとして、4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼに加えて、リパーゼを含有するベーカリー用油脂組成物AA~ACの効果について検証を行った。尚、検証方法については試験1と同様に、上記製法・配合を用いて、プルマン型食パンAA~ACを作成し、上に示した評価方法でそれぞれ評価を行った。その結果を表4に示す。
<実施例15>
油脂配合物83.52質量部に大豆レシチン0.20質量部を溶解させ、これを油相とし、この中に水を水相として16.00質量部混合し、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化を行った。
更に、ベーカリー用油脂組成物100g中、4糖生成アミラーゼ(ナガセケムテックス社製、「デナベイクEXTRA」)が1300単位となる量、マルトース生成アミラーゼは400単位となる量、リパーゼ(リポパン50BG、ノボザイムズ社製、以下のリパーゼも同様)は0.001質量%だけ添加し・混合し、本発明のベーカリー用油脂組成物AAを調製した。
また、使用したリパーゼの至適温度は25~40℃の範囲内であった。
<実施例16>
リパーゼをベーカリー用油脂組成物中、0.0025質量%とした他は実施例15と同様の配合・製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物ABを調製した。
<実施例17>
リパーゼをベーカリー用油脂組成物中、0.005質量%とした他は実施例15と同様の配合・製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物ACを調製した。
4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼに加えてリパーゼを併用することで、特にしとり感が改良される傾向を確認した。一方、油脂組成物へのリパーゼの添加量が増加すると生地作業性はやや低下し、又、ソフト性やしとり感も経日的に低下しやすい傾向にあった。
とりわけ、リパーゼを併用することによる相乗効果がみられたのは、ベーカリー用油脂組成物ABであり、ソフト性やしとり感が経日的に失われておらず、好ましい食感であった。
<<試験4:併用による相乗効果の確認>>
本試験では4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼに加えて、ヘミセルラーゼとリパーゼを併用した場合について、ベーカリー用油脂組成物Sをベースに試験を行った。
その結果を表5に示す。
<実施例18>
油脂配合物83.38質量部に大豆レシチン0.20質量部を溶解させ、これを油相とし、この中に水を水相として16.00質量部混合し、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化を行った。
更に、ベーカリー用油脂組成物100g中、4糖生成アミラーゼ(ナガセケムテックス社製、「デナベイクEXTRA」)が1300単位となる量、マルトース生成アミラーゼは400単位となる量、ヘミセルラーゼ(ベイクザイムBXP5001BG、DSM社製、以下のヘミセルラーゼも同様)はアラビノキシランを基質とした場合の活性が350単位となる量、リパーゼを0.001質量%だけ添加し・混合し、本発明のベーカリー用油脂組成物ADを調製した。
<実施例19>
リパーゼを0.0025質量%とした他は実施例18と同様の配合・製法によって、本発明のベーカリー用油脂組成物AEを調製した。
<実施例20>
リパーゼを0.005質量%とした他は実施例18と同様の配合・製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物AFを調製した。
4糖生成アミラーゼに加えて、マルトース生成アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼを併用し、ベーカリー用油脂組成物中に含有させることで、リパーゼの含有量によっては得られるプルマン型食パンの浮きが充分に得られにくく、ソフト性やしとり感、口溶けに影響を与える場合があるものの、総じてベーカリー生地に対して良好な生地作業性と高い老化耐性を付与できることが分かった。とりわけ、ベーカリー用油脂組成物AEでは、最も好ましい生地作業性、食感が得られることが分かった。また、実施例20においては、その他の実施例品には無かったムレ臭とえぐ味が僅かに感じられ、リパーゼの添加量によっては得られるベーカリー製品の風味に差異が生じることが分かった。
<試験5:水溶性食物繊維>
以下、ベーカリー用油脂組成物S(実施例12品)をベースとして、4糖生成アミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、ヘミセルラーゼに加えて、重量平均分子量が20万以下である水溶性食物繊維を含有するベーカリー用油脂組成物AG~AMの効果について検証を行った。尚、検証方法については試験1と同様に、上記製法・配合を用いて、プルマン型食パンAG~AMを作成し、上に示した評価方法でそれぞれ評価を行った。その結果を表6に示す。
<実施例21>
重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維として、製品名「デキストラン10」(名糖産業株式会社製、1位と4位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が10%未満、1位と6位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が90%超、重量平均分子量が100000)を2質量部含有し、残部が水14質量部で構成された水相を16.00質量部混合した他は、実施例12と同様の配合で製造を行い、本発明のベーカリー用油脂組成物AGを得た。
<実施例22>
重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維として、製品名「ファイバリクサ」(株式会社林原、1位と4位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が19%、1位と6位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が49%、3つのα結合を有するグルコース残基の比率の和が12%、重量平均分子量が5000)を0.2質量部含有し、残部が水15.8質量部で構成された水相を16.00質量部混合した他は、実施例12と同様の配合で製造を行い、本発明のベーカリー用油脂組成物AHを得た。
<実施例23>
重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維として、製品名「ファイバリクサ」を1質量部含有し、残部が水15質量部で構成された水相を16.00質量部混合した他は、実施例12と同様の配合で製造を行い、本発明のベーカリー用油脂組成物AIを得た。
<実施例24>
重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維として、製品名「ファイバリクサ」を2質量部含有し、残部が水14質量部で構成された水相を16.00質量部混合した他は、実施例12と同様の配合で製造を行い、本発明のベーカリー用油脂組成物AJを得た。
<実施例25>
重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維として、製品名「ファイバリクサ」を5質量部含有し、残部が水11質量部で構成された水相を16.00質量部混合した他は、実施例12と同様の配合で製造を行い、本発明のベーカリー用油脂組成物AKを得た。
<実施例26>
重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維として、製品名「ファイバリクサ」を10質量部含有し、残部が水6質量部で構成された水相を16.00質量部混合した他は、実施例12と同様の配合で製造を行い、本発明のベーカリー用油脂組成物ALを得た。
<実施例27>
重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維として、製品名「ファイバーソル2」(松谷化学工業株式会社製、1位と4位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が50%以上、1位と6位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が30%未満、3つのα結合を有するグルコース残基の比率の和が1%未満、重量平均分子量が2000)を5質量部含有し、残部が水11質量部で構成された水相を16.00質量部混合した他は、実施例12と同様の配合で製造を行い、本発明のベーカリー用油脂組成物AMを得た。
4糖生成アミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、ヘミセルラーゼを含有するベーカリー用油脂組成物中に、重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維を含有させることで、とりわけソフト性と口溶けの食感が一層良好なものになっていることが確認された。また、添加する水溶性食物繊維の種類や、含有させる量によっても効果が異なることも確認された。特に、ベーカリー用油脂組成物AHを用いた場合では、実施例12と比較して十分な効果がみられず、ベーカリー用油脂組成物AI、AJ、AKを用いた場合では、食パンのソフト性の改良効果がとりわけ高く得られていた。
またベーカリー用油脂組成物ALを用いた評価結果から分かる通り、一定量以上含有させると、食感の低下を引き起こしやすいことも確認された。
ベーカリー用油脂組成物AMを用いた食パン生地においては、実施例12品と比較して、生地作業性がやや劣る結果となったが、これは添加したデキストリンがα-1,4結合をしているグルコース残基を多く含有するために、酵素分解を受けることにより低分子の多糖が多く産生したためと考えられる。

Claims (5)

  1. 4糖生成アミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、及び重量平均分子量が2000以上20万以下の水溶性食物繊維を含有するベーカリー用油脂組成物であって、
    ベーカリー油脂組成物100g中の4糖生成アミラーゼの量が160~3900単位であり、ベーカリー油脂組成物中、前記水溶性食物繊維の含有量が0.2~10質量%である、ベーカリー用油脂組成物。
  2. 4糖生成アミラーゼ1単位に対して、マルトース生成アミラーゼを0.01~5.5単位の範囲で含有する、請求項1記載のベーカリー用油脂組成物。
  3. アラビノキシランを基質とした場合の活性が、ベーカリー油脂組成物100g中75~700単位となる量のヘミセルラーゼを含有する、請求項1又は2記載のベーカリー用油脂組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか一項記載のベーカリー用油脂組成物を含有するベーカリー生地。
  5. 請求項4記載のベーカリー生地の加熱処理品であるベーカリー製品。
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