JP7410480B2 - がんにおける融合遺伝子 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 (1)平成30年9月28日に「第77回日本癌学会学術総会」のポスター発表にて公開 (2)令和1年9月5日に「第78回日本癌学会学術総会」のウェブサイトにて公開
本発明は、がんに伴う遺伝子融合が生じているか否かを検出する方法;がんに伴う遺伝子融合が生じているか否かを検出するためのキット;がんを治療するための製剤;融合タンパク質に対する抗体;融合タンパク質をコードするmRNAを標的とするポリヌクレオチド;融合タンパク質若しくはその断片、又は、それらをコードするcDNA;がんに関連する融合遺伝子のcDNAを合成する方法;等に関する。
融合遺伝子は、染色体転座により異なる2つの遺伝子が融合することにより生じる。融合遺伝子は、がん化の原因の1つであることから、融合遺伝子を同定し、同定した融合遺伝子に対する分子標的薬を用いたがんの個別化医療が行われている。
RET(rearrangedduring transfection)遺伝子は、10番染色体長腕のセントロメア付近に存在し、21個のエクソンからなる遺伝子である。RET遺伝子がコードするタンパク質は、受容体型チロシンキナーゼであり、中央部に細胞膜貫通領域を有し、そのカルボキシル末端側にチロシンキナーゼ領域、アミノ末端側に細胞外領域を有する。カルボキシル末端のスプライシングの違いにより1072アミノ酸(RET9)、1106アミノ酸(RET43)、1114アミノ酸(RET51)の3種類のタンパク質が存在することが知られている。RETはリガンド/GFR複合体を介して二量体を形成することで自己のチロシンをリン酸化し活性化する。
甲状腺乳頭がんにおいて、染色体内逆位又は染色体間転座により、RET遺伝子が他の遺伝子(H4、ELE1など)と融合した結果、がん化能を有する融合型チロシンキナーゼRET-PTCが発現していることが報告されている(非特許文献1)。RETの融合パートナー分子の多くは、複合体形成ドメインを有していることから、RETとの融合タンパク質自身も複合体を形成していると考えられており、この複合体形成がRETのチロシンキナーゼ活性の恒常的な自己リン酸化を引き起こし、細胞内シグナルが異常に活性化され、がん化や細胞増殖を惹き起こしていると考えられている(非特許文献1)。実際に、RET-PTC融合遺伝子をマウス正常細胞NIH3T3細胞に導入すると、がん細胞様に形質転換すること、さらにはRETキナーゼ抑制化合物がRET-PTC融合遺伝子を発現した甲状腺がん細胞株の細胞増殖を抑制できることから、RET-PTC融合タンパク質は、甲状腺がんの治療標的分子となることが示されている(非特許文献2~4)。さらに、非小細胞肺がん患者において、KIF5B-RET融合遺伝子が発現しているとの報告や(特許文献1)、細気管支肺細胞がん患者において、PIBF1-RET融合遺伝子が発現しているとの報告がある(特許文献2)。
一方、MGEA5(MeningiomaExpressed Antigen 5)は、タンパク質のセリン/スレオニン残基のO-結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾を除く酵素であり、脳と膵臓では特に発現が高いことが知られている。MGEA5は、主に細胞質に存し、ヒストンアセチル転移酵素も備わっている。しかしながら、MGEA5遺伝子が、RET遺伝子等の遺伝子と融合することや、がんと関連することについては、これまで報告されていなかった。
国際公開第2012/014795号パンフレット 特開2015-109806号公報
Eur J Endocrinol.2006 Nov;155(5):645-53. CancerRes. 2002 Dec 15;62(24):7284-90. J Clin Endocrinol Metab. 2006 Oct;91(10):4070-6. J BiolChem. 2007 Oct 5;282(40):29230-40.
本発明の課題は、がん治療ターゲットとなり得るバイオマーカーを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、がん組織4000症例から全RNAを調製し、cDNAを合成した後、後述する本実施例1に記載の方法を用いて融合遺伝子の検出を行った。その結果、大腸がん組織試料中に、MGEA5遺伝子と、RET遺伝子との融合遺伝子(すなわち、MGEA5-RET融合遺伝子)が存在することが確認された。また、MGEA5-RET融合遺伝子のcDNAを同定し、MGEA5-RET融合遺伝子におけるブレイクポイントも特定した。さらに、様々ながん組織試料を用いて同様の方法で解析を行った結果、MGEA5-RET融合遺伝子以外にも37種類の新規融合遺伝子を同定した。RETとの融合遺伝子や、当該融合遺伝子がコードするタンパク質は、前述のとおり、がんを誘発するとともに、がんの治療標的分子となることが知られている。このことから、本発明の融合遺伝子や本発明の融合遺伝子がコードするタンパク質(例えば、MGEA5-RET融合タンパク質やSLC12A2-RET融合タンパク質)は、がんの治療標的分子となることが十分期待される。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕以下の工程(a)を含むことを特徴とするがんにおける融合遺伝子の検出方法。
(a)被験者から採取された生体試料中の、以下の[融合タンパク質群]から選択される1又は2以上の融合タンパク質(以下、「本件融合タンパク質」ということがある)、又は該融合タンパク質をコードするゲノムDNA、mRNA、若しくはcDNAを検出する工程;
[融合タンパク質群]
MGEA5-RET融合タンパク質
TBC1D5-LPP融合タンパク質
ACER1-MLLT1融合タンパク質
NAB2-STAT6融合タンパク質
POU2F1-MAML2融合タンパク質
TMEM41B-FUS融合タンパク質
ZDHHC21-FOXO1融合タンパク質
LACAT1-SEPT9融合タンパク質
EIF3K-ACTN4融合タンパク質
SLC12A2-RET融合タンパク質
GSK3B-GPHN融合タンパク質
IL6ST-FOXO1融合タンパク質
PPP1CB-ALK融合タンパク質
RNF40-CUTA融合タンパク質
(SEPT5-GP1BB)-SEpt5融合タンパク質
PRIM2-ACTB融合タンパク質
AZIN1-MLLT3融合タンパク質
RAP1B-HMGA2融合タンパク質
EZR-MLLT4融合タンパク質
OGT-AFF1融合タンパク質
RPSAP52-HMGA2融合タンパク質
BCL11B-LOC105370659融合タンパク質
LOC101928865-GAB2融合タンパク質
AQP10-ATP8B2融合タンパク質
ARMC2-FOXO3融合タンパク質
CBL-MAML2融合タンパク質
PRKCQ-PICALM融合タンパク質
FGF1-PRKAR2A融合タンパク質
SLC44A1-BRAF融合タンパク質
SMURF1-FOXO1融合タンパク質
TCAF1-BRAF融合タンパク質
CCNC-MLLT10融合タンパク質
PPP1R21-ALK融合タンパク質
LOC107986457-ARHGAP26融合タンパク質
SPTBN1-ALK融合タンパク質
MKRN2-PPARG融合タンパク質
PHLDB2-JAK2融合タンパク質
SMARCA2-NFIB融合タンパク質
〔2〕融合タンパク質が、MGEA5-RET融合タンパク質である、上記〔1〕に記載の検出方法であって、
(i)前記MGEA5-RET融合タンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(ii)前記MGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNAが、配列番号38に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、
(iii)前記MGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNAが、配列番号2に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、
(iv)前記MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAが、配列番号3に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む
ことを特徴とする、前記検出方法。
〔3〕生体試料における、以下の[融合タンパク質群]から選択される1又は2以上の融合タンパク質に特異的に結合する抗体を含む、がんにおける融合遺伝子の検出用キット。
[融合タンパク質群]
MGEA5-RET融合タンパク質
TBC1D5-LPP融合タンパク質
ACER1-MLLT1融合タンパク質
NAB2-STAT6融合タンパク質
POU2F1-MAML2融合タンパク質
TMEM41B-FUS融合タンパク質
ZDHHC21-FOXO1融合タンパク質
LACAT1-SEPT9融合タンパク質
EIF3K-ACTN4融合タンパク質
SLC12A2-RET融合タンパク質
GSK3B-GPHN融合タンパク質
IL6ST-FOXO1融合タンパク質
PPP1CB-ALK融合タンパク質
RNF40-CUTA融合タンパク質
(SEPT5-GP1BB)-SEpt5融合タンパク質
PRIM2-ACTB融合タンパク質
AZIN1-MLLT3融合タンパク質
RAP1B-HMGA2融合タンパク質
EZR-MLLT4融合タンパク質
OGT-AFF1融合タンパク質
RPSAP52-HMGA2融合タンパク質
BCL11B-LOC105370659融合タンパク質
LOC101928865-GAB2融合タンパク質
AQP10-ATP8B2融合タンパク質
ARMC2-FOXO3融合タンパク質
CBL-MAML2融合タンパク質
PRKCQ-PICALM融合タンパク質
FGF1-PRKAR2A融合タンパク質
SLC44A1-BRAF融合タンパク質
SMURF1-FOXO1融合タンパク質
TCAF1-BRAF融合タンパク質
CCNC-MLLT10融合タンパク質
PPP1R21-ALK融合タンパク質
LOC107986457-ARHGAP26融合タンパク質
SPTBN1-ALK融合タンパク質
MKRN2-PPARG融合タンパク質
PHLDB2-JAK2融合タンパク質
SMARCA2-NFIB融合タンパク質
〔4〕生体試料における、以下の[融合タンパク質群]から選択される1又は2以上の融合タンパク質をコードするゲノムDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセット、又は前記ゲノムDNAにハイブリダイズするプローブを含む、がんにおける融合遺伝子の検出用キット。
[融合タンパク質群]
MGEA5-RET融合タンパク質
TBC1D5-LPP融合タンパク質
ACER1-MLLT1融合タンパク質
NAB2-STAT6融合タンパク質
POU2F1-MAML2融合タンパク質
TMEM41B-FUS融合タンパク質
ZDHHC21-FOXO1融合タンパク質
LACAT1-SEPT9融合タンパク質
EIF3K-ACTN4融合タンパク質
SLC12A2-RET融合タンパク質
GSK3B-GPHN融合タンパク質
IL6ST-FOXO1融合タンパク質
PPP1CB-ALK融合タンパク質
RNF40-CUTA融合タンパク質
(SEPT5-GP1BB)-SEpt5融合タンパク質
PRIM2-ACTB融合タンパク質
AZIN1-MLLT3融合タンパク質
RAP1B-HMGA2融合タンパク質
EZR-MLLT4融合タンパク質
OGT-AFF1融合タンパク質
RPSAP52-HMGA2融合タンパク質
BCL11B-LOC105370659融合タンパク質
LOC101928865-GAB2融合タンパク質
AQP10-ATP8B2融合タンパク質
ARMC2-FOXO3融合タンパク質
CBL-MAML2融合タンパク質
PRKCQ-PICALM融合タンパク質
FGF1-PRKAR2A融合タンパク質
SLC44A1-BRAF融合タンパク質
SMURF1-FOXO1融合タンパク質
TCAF1-BRAF融合タンパク質
CCNC-MLLT10融合タンパク質
PPP1R21-ALK融合タンパク質
LOC107986457-ARHGAP26融合タンパク質
SPTBN1-ALK融合タンパク質
MKRN2-PPARG融合タンパク質
PHLDB2-JAK2融合タンパク質
SMARCA2-NFIB融合タンパク質
〔5〕生体試料における、以下の[融合タンパク質群]から選択される1又は2以上の融合タンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズするリバースプライマー又はプローブを含む、がんにおける融合遺伝子の検出用キット。
[融合タンパク質群]
MGEA5-RET融合タンパク質
TBC1D5-LPP融合タンパク質
ACER1-MLLT1融合タンパク質
NAB2-STAT6融合タンパク質
POU2F1-MAML2融合タンパク質
TMEM41B-FUS融合タンパク質
ZDHHC21-FOXO1融合タンパク質
LACAT1-SEPT9融合タンパク質
EIF3K-ACTN4融合タンパク質
SLC12A2-RET融合タンパク質
GSK3B-GPHN融合タンパク質
IL6ST-FOXO1融合タンパク質
PPP1CB-ALK融合タンパク質
RNF40-CUTA融合タンパク質
(SEPT5-GP1BB)-SEpt5融合タンパク質
PRIM2-ACTB融合タンパク質
AZIN1-MLLT3融合タンパク質
RAP1B-HMGA2融合タンパク質
EZR-MLLT4融合タンパク質
OGT-AFF1融合タンパク質
RPSAP52-HMGA2融合タンパク質
BCL11B-LOC105370659融合タンパク質
LOC101928865-GAB2融合タンパク質
AQP10-ATP8B2融合タンパク質
ARMC2-FOXO3融合タンパク質
CBL-MAML2融合タンパク質
PRKCQ-PICALM融合タンパク質
FGF1-PRKAR2A融合タンパク質
SLC44A1-BRAF融合タンパク質
SMURF1-FOXO1融合タンパク質
TCAF1-BRAF融合タンパク質
CCNC-MLLT10融合タンパク質
PPP1R21-ALK融合タンパク質
LOC107986457-ARHGAP26融合タンパク質
SPTBN1-ALK融合タンパク質
MKRN2-PPARG融合タンパク質
PHLDB2-JAK2融合タンパク質
SMARCA2-NFIB融合タンパク質
〔6〕以下の[融合タンパク質群]から選択される1又は2以上の融合タンパク質をコードするcDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセット、又は前記cDNAにハイブリダイズするプローブを含む、がんにおける融合遺伝子の検出用キット。
[融合タンパク質群]
MGEA5-RET融合タンパク質
TBC1D5-LPP融合タンパク質
ACER1-MLLT1融合タンパク質
NAB2-STAT6融合タンパク質
POU2F1-MAML2融合タンパク質
TMEM41B-FUS融合タンパク質
ZDHHC21-FOXO1融合タンパク質
LACAT1-SEPT9融合タンパク質
EIF3K-ACTN4融合タンパク質
SLC12A2-RET融合タンパク質
GSK3B-GPHN融合タンパク質
IL6ST-FOXO1融合タンパク質
PPP1CB-ALK融合タンパク質
RNF40-CUTA融合タンパク質
(SEPT5-GP1BB)-SEpt5融合タンパク質
PRIM2-ACTB融合タンパク質
AZIN1-MLLT3融合タンパク質
RAP1B-HMGA2融合タンパク質
EZR-MLLT4融合タンパク質
OGT-AFF1融合タンパク質
RPSAP52-HMGA2融合タンパク質
BCL11B-LOC105370659融合タンパク質
LOC101928865-GAB2融合タンパク質
AQP10-ATP8B2融合タンパク質
ARMC2-FOXO3融合タンパク質
CBL-MAML2融合タンパク質
PRKCQ-PICALM融合タンパク質
FGF1-PRKAR2A融合タンパク質
SLC44A1-BRAF融合タンパク質
SMURF1-FOXO1融合タンパク質
TCAF1-BRAF融合タンパク質
CCNC-MLLT10融合タンパク質
PPP1R21-ALK融合タンパク質
LOC107986457-ARHGAP26融合タンパク質
SPTBN1-ALK融合タンパク質
MKRN2-PPARG融合タンパク質
PHLDB2-JAK2融合タンパク質
SMARCA2-NFIB融合タンパク質
〔7〕融合タンパク質が、MGEA5-RET融合タンパク質である、上記〔3〕~〔6〕のいずれかに記載の検出用キットであって、
(i)前記MGEA5-RET融合タンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(ii)前記MGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセットが、配列番号38に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む該ゲノムDNAにおいて、配列番号38の852~854番目に相当するヌクレオチド残基を増幅するプライマーセットであり、
(iii)前記MGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNAにハイブリダイズするプローブが、配列番号38に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む該ゲノムDNAにおいて、配列番号38の852~854番目に相当するヌクレオチド残基にハイブリダイズするプローブであり、
(iv)前記MGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズするリバースプライマーが、配列番号2に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む該mRNAにおいて、配列番号2の2618~2619番目に相当するヌクレオチド残基を逆転写するリバースプライマーであり、
(v)前記MGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズするプローブが、配列番号2に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む該mRNAにおいて、配列番号2の2618~2619番目に相当するヌクレオチド残基にハイブリダイズするプローブであり、
(vi)前記MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセットが、配列番号3に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む該cDNAにおいて、配列番号3の2175~2176番目に相当するヌクレオチド残基を増幅するプライマーセットであり、
(vii)前記MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAにハイブリダイズするプローブが、配列番号3に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む該cDNAにおいて、配列番号3の2175~2176番目に相当するヌクレオチド残基にハイブリダイズするプローブである
ことを特徴とする、前記検出用キット。
〔8〕以下の[融合タンパク質群]から選択される1又は2以上の融合タンパク質の発現又は生理活性を抑制する物質を含む、がんの治療剤であって、前記融合タンパク質の発現又は生理活性が検出される被験者に投与されることを特徴とする、前記治療剤。
[融合タンパク質群]
MGEA5-RET融合タンパク質
TBC1D5-LPP融合タンパク質
ACER1-MLLT1融合タンパク質
NAB2-STAT6融合タンパク質
POU2F1-MAML2融合タンパク質
TMEM41B-FUS融合タンパク質
ZDHHC21-FOXO1融合タンパク質
LACAT1-SEPT9融合タンパク質
EIF3K-ACTN4融合タンパク質
SLC12A2-RET融合タンパク質
GSK3B-GPHN融合タンパク質
IL6ST-FOXO1融合タンパク質
PPP1CB-ALK融合タンパク質
RNF40-CUTA融合タンパク質
(SEPT5-GP1BB)-SEpt5融合タンパク質
PRIM2-ACTB融合タンパク質
AZIN1-MLLT3融合タンパク質
RAP1B-HMGA2融合タンパク質
EZR-MLLT4融合タンパク質
OGT-AFF1融合タンパク質
RPSAP52-HMGA2融合タンパク質
BCL11B-LOC105370659融合タンパク質
LOC101928865-GAB2融合タンパク質
AQP10-ATP8B2融合タンパク質
ARMC2-FOXO3融合タンパク質
CBL-MAML2融合タンパク質
PRKCQ-PICALM融合タンパク質
FGF1-PRKAR2A融合タンパク質
SLC44A1-BRAF融合タンパク質
SMURF1-FOXO1融合タンパク質
TCAF1-BRAF融合タンパク質
CCNC-MLLT10融合タンパク質
PPP1R21-ALK融合タンパク質
LOC107986457-ARHGAP26融合タンパク質
SPTBN1-ALK融合タンパク質
MKRN2-PPARG融合タンパク質
PHLDB2-JAK2融合タンパク質
SMARCA2-NFIB融合タンパク質
〔9〕融合タンパク質が、MGEA5-RET融合タンパク質である、上記〔8〕に記載の治療剤であって、
前記MGEA5-RET融合タンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む
ことを特徴とする、前記治療剤。
〔10〕生体試料における、以下の[融合タンパク質群]から選択される1又は2以上の融合タンパク質に特異的に結合する抗体。
[融合タンパク質群]
MGEA5-RET融合タンパク質
TBC1D5-LPP融合タンパク質
ACER1-MLLT1融合タンパク質
NAB2-STAT6融合タンパク質
POU2F1-MAML2融合タンパク質
TMEM41B-FUS融合タンパク質
ZDHHC21-FOXO1融合タンパク質
LACAT1-SEPT9融合タンパク質
EIF3K-ACTN4融合タンパク質
SLC12A2-RET融合タンパク質
GSK3B-GPHN融合タンパク質
IL6ST-FOXO1融合タンパク質
PPP1CB-ALK融合タンパク質
RNF40-CUTA融合タンパク質
(SEPT5-GP1BB)-SEpt5融合タンパク質
PRIM2-ACTB融合タンパク質
AZIN1-MLLT3融合タンパク質
RAP1B-HMGA2融合タンパク質
EZR-MLLT4融合タンパク質
OGT-AFF1融合タンパク質
RPSAP52-HMGA2融合タンパク質
BCL11B-LOC105370659融合タンパク質
LOC101928865-GAB2融合タンパク質
AQP10-ATP8B2融合タンパク質
ARMC2-FOXO3融合タンパク質
CBL-MAML2融合タンパク質
PRKCQ-PICALM融合タンパク質
FGF1-PRKAR2A融合タンパク質
SLC44A1-BRAF融合タンパク質
SMURF1-FOXO1融合タンパク質
TCAF1-BRAF融合タンパク質
CCNC-MLLT10融合タンパク質
PPP1R21-ALK融合タンパク質
LOC107986457-ARHGAP26融合タンパク質
SPTBN1-ALK融合タンパク質
MKRN2-PPARG融合タンパク質
PHLDB2-JAK2融合タンパク質
SMARCA2-NFIB融合タンパク質
〔11〕融合タンパク質が、MGEA5-RET融合タンパク質である、上記〔10〕に記載の抗体であって、
前記MGEA5-RET融合タンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、前記抗体。
〔12〕RNA干渉(RNAi)能を有し、かつ、
以下の[融合タンパク質群]から選択される1又は2以上の融合タンパク質をコードするmRNAに特異的にハイブリダイズする
ポリヌクレオチド。
[融合タンパク質群]
MGEA5-RET融合タンパク質
TBC1D5-LPP融合タンパク質
ACER1-MLLT1融合タンパク質
NAB2-STAT6融合タンパク質
POU2F1-MAML2融合タンパク質
TMEM41B-FUS融合タンパク質
ZDHHC21-FOXO1融合タンパク質
LACAT1-SEPT9融合タンパク質
EIF3K-ACTN4融合タンパク質
SLC12A2-RET融合タンパク質
GSK3B-GPHN融合タンパク質
IL6ST-FOXO1融合タンパク質
PPP1CB-ALK融合タンパク質
RNF40-CUTA融合タンパク質
(SEPT5-GP1BB)-SEpt5融合タンパク質
PRIM2-ACTB融合タンパク質
AZIN1-MLLT3融合タンパク質
RAP1B-HMGA2融合タンパク質
EZR-MLLT4融合タンパク質
OGT-AFF1融合タンパク質
RPSAP52-HMGA2融合タンパク質
BCL11B-LOC105370659融合タンパク質
LOC101928865-GAB2融合タンパク質
AQP10-ATP8B2融合タンパク質
ARMC2-FOXO3融合タンパク質
CBL-MAML2融合タンパク質
PRKCQ-PICALM融合タンパク質
FGF1-PRKAR2A融合タンパク質
SLC44A1-BRAF融合タンパク質
SMURF1-FOXO1融合タンパク質
TCAF1-BRAF融合タンパク質
CCNC-MLLT10融合タンパク質
PPP1R21-ALK融合タンパク質
LOC107986457-ARHGAP26融合タンパク質
SPTBN1-ALK融合タンパク質
MKRN2-PPARG融合タンパク質
PHLDB2-JAK2融合タンパク質
SMARCA2-NFIB融合タンパク質
〔13〕融合タンパク質が、MGEA5-RET融合タンパク質である、上記〔12〕に記載のポリヌクレオチドであって、
前記MGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNAが、配列番号2に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、前記ポリヌクレオチド。
〔14〕以下の[融合タンパク質群]から選択される1又は2以上の融合タンパク質若しくはその断片、又は、それらをコードするcDNA。
[融合タンパク質群]
MGEA5-RET融合タンパク質
TBC1D5-LPP融合タンパク質
ACER1-MLLT1融合タンパク質
NAB2-STAT6融合タンパク質
POU2F1-MAML2融合タンパク質
TMEM41B-FUS融合タンパク質
ZDHHC21-FOXO1融合タンパク質
LACAT1-SEPT9融合タンパク質
EIF3K-ACTN4融合タンパク質
SLC12A2-RET融合タンパク質
GSK3B-GPHN融合タンパク質
IL6ST-FOXO1融合タンパク質
PPP1CB-ALK融合タンパク質
RNF40-CUTA融合タンパク質
(SEPT5-GP1BB)-SEpt5融合タンパク質
PRIM2-ACTB融合タンパク質
AZIN1-MLLT3融合タンパク質
RAP1B-HMGA2融合タンパク質
EZR-MLLT4融合タンパク質
OGT-AFF1融合タンパク質
RPSAP52-HMGA2融合タンパク質
BCL11B-LOC105370659融合タンパク質
LOC101928865-GAB2融合タンパク質
AQP10-ATP8B2融合タンパク質
ARMC2-FOXO3融合タンパク質
CBL-MAML2融合タンパク質
PRKCQ-PICALM融合タンパク質
FGF1-PRKAR2A融合タンパク質
SLC44A1-BRAF融合タンパク質
SMURF1-FOXO1融合タンパク質
TCAF1-BRAF融合タンパク質
CCNC-MLLT10融合タンパク質
PPP1R21-ALK融合タンパク質
LOC107986457-ARHGAP26融合タンパク質
SPTBN1-ALK融合タンパク質
MKRN2-PPARG融合タンパク質
PHLDB2-JAK2融合タンパク質
SMARCA2-NFIB融合タンパク質
〔15〕融合タンパク質が、MGEA5-RET融合タンパク質である、上記〔14〕に記載の融合タンパク質若しくはその断片、又は、それらをコードするcDNAであって、
(i)前記MGEA5-RET融合タンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、分離されたタンパク質か、あるいは組換えタンパク質であり、前記MGEA5-RET融合タンパク質の断片が、配列番号1の725~726番目に相当するアミノ酸残基を融合部位として含み、
(ii)前記MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAが、配列番号3のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むcDNAであり、前記MGEA5-RET融合タンパク質の断片をコードするcDNAが、配列番号3の2175~2176番目に相当するヌクレオチド残基を融合部位として含むことを特徴とする、
前記融合タンパク質若しくはその断片、又は、それらをコードするcDNA。
〔16〕以下の工程(A)~(C)を含むことを特徴とするがんに関連する融合遺伝子のcDNAを合成する方法。
(A)がんに関連する融合遺伝子のデータベースから、以下の(1)~(5)の条件を満たす融合遺伝子を選択する工程;
(1)融合遺伝子のDNA配列情報が明らかにされている;
(2)培養細胞中に存在することが知られている融合遺伝子ではない;
(3)異なる2つの遺伝子断片が融合した融合遺伝子である;
(4)融合部位が1つの融合遺伝子である;
(5)ゲノムDNA上の位置が特定されている融合遺伝子である;
(B)がん患者から採取された生体試料中のmRNAを基に、上流側末端及び/又は下流側末端にアダプターが付加されたcDNAを合成する工程;
(C)工程(B)で合成したcDNAの上流側末端に付加されたアダプターにアニーリングするフォワードプライマーと、工程(A)において選択した融合遺伝子のうち、下流側の遺伝子断片のcDNAにアニーリングするリバースプライマーとを用いて、PCR(Polymerase Chain Reaction)反応を行うか、あるいは
工程(A)において選択した融合遺伝子のうち、上流側の遺伝子断片のcDNAにアニーリングするフォワードプライマーと、工程(B)で合成したcDNAの下流側末端に付加されたアダプターにアニーリングするリバースプライマーとを用いて、PCRを行う工程;
〔17〕工程(A)において、少なくとも700種類の融合遺伝子を選択することを特徴とする上記〔16〕に記載の方法。
〔18〕工程(C)において、工程(B)で合成したcDNAの上流側末端に付加されたアダプターにアニーリングするフォワードプライマーと、工程(A)において選択した融合遺伝子のうち、下流側の遺伝子断片のcDNAにアニーリングするリバースプライマーとを用いて、PCRを行うことを特徴とする上記〔16〕又は〔17〕に記載の方法。
また本発明の実施の他の形態として、
以下の工程(a)及び(b)を含む、がんの判定方法(換言すると、がんを判定[診断]するためのデータを収集する方法)を挙げることができる。
(a)被験者から採取された生体試料中の本件融合タンパク質、又は本件融合タンパク質をコードするゲノムDNA、mRNA、若しくはcDNAを検出する工程;
(b)工程(a)において、本件融合タンパク質、又は本件融合タンパク質をコードするゲノムDNA、mRNA、若しくはcDNAが検出された場合、前記被験者は、本件融合タンパク質をコードする遺伝子(すなわち、本件融合遺伝子)が存在するがん患者である可能性が高いと評価する工程;
また本発明の実施の他の形態として、がんにおける融合遺伝子の検出方法において使用するための、生体試料における本件融合タンパク質をコードするゲノムDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセットや、前記ゲノムDNAにハイブリダイズするプローブを挙げることができる。
また本発明の実施の他の形態として、がんにおける融合遺伝子の検出方法において使用するための、生体試料における本件融合タンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズするリバースプライマーやプローブを挙げることができる。
また本発明の実施の他の形態として、がんにおける融合遺伝子の検出方法において使用するための本件融合タンパク質をコードするcDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセットや、前記cDNAにハイブリダイズするプローブを挙げることができる。
また本発明の実施の他の形態として、
がんの治療における使用のための本件融合タンパク質の発現又は生理活性を抑制する物質であって、本件融合タンパク質の発現又は生理活性が検出される被験者に投与される、前記物質;や、
がんの治療剤として使用するための本件物質;や、
がんの治療剤の製造における、本件物質の使用;や、
本件物質を、本件融合タンパク質の発現又は生理活性が検出される被験者に投与する工程(p)を含む、がんの治療方法;
を挙げることができる。
本発明によると、がんに罹患しているか否かを検出できるだけでなく、がん患者の中から本件融合遺伝子が存在するがん患者を識別することもできる。RETとの融合遺伝子や、当該融合遺伝子がコードするタンパク質は、前述のとおり、がんを誘発するとともに、がんの治療標的分子となることが知られている。このことから、本発明の融合遺伝子や本発明の融合遺伝子がコードするタンパク質(例えば、MGEA5-RET融合タンパク質やSLC12A2-RET融合タンパク質)は、がんの治療標的分子となることが十分期待される。このため、MGEA5-RET融合タンパク質やSLC12A2-RET融合タンパク質の発現又は生理活性を抑制する物質を用いて、MGEA5-RET融合遺伝子やSLC12A2-RET融合融合遺伝子が存在するがん患者を治療することも可能となる。
症例#1の大腸がん組織中に存在するMGEA5-RET融合遺伝子のmRNAを、PCRを用いて検出した結果を示す図である。レーンMは、DNAのサイズマーカーを示す。レーン1における「*」は、大腸がん組織から調製したcDNAを鋳型として、MGRET_F及びMGRET_Rのプライマーセットを用いたPCRにより得られたPCR産物(推定4367ヌクレオチド対[bp])を示す。レーン2における「#」、レーン1で得られたPCR産物を鋳型として、MGRET-NEST_F及びMGRET-NEST_Rのプライマーセットを用いたPCRにより得られたPCR産物(推定3390bp)を示す。 症例#1の大腸がん組織中に存在するMGEA5-RET融合遺伝子を、PCRを用いて検出した結果を示す図である。レーンMは、DNAのサイズマーカーを示す。レーン1は、MG-RET_1F及びMG-RET_1Rのプライマーセットを用いたPCRの結果を示し、レーン2は、MG-RET_CF及びMG-RET_2Rのプライマーセットを用いたPCRの結果を示し、レーン3は、MG-RET_CF及びMG-RET_3Rのプライマーセットを用いたPCRの結果を示し、レーン4は、MG-RET_CF及びMG-RET_4Rのプライマーセットを用いたPCRの結果を示し、レーン5は、MG-RET_CF及びMG-RET_5Rのプライマーセットを用いたPCRの結果を示し、レーン6は、MG-RET_CF及びMG-RET_6Rのプライマーセットを用いたPCRの結果を示す。
本発明のがんにおける融合遺伝子の検出方法としては、
被験者(「被検者」ともいう)から採取された生体試料中の、以下の[融合タンパク質群]から選択される1又は2以上の融合タンパク質(すなわち、本件融合タンパク質);本件融合タンパク質をコードするゲノムDNA(以下、「本件融合遺伝子」ということがある);本件融合タンパク質をコードするmRNA(messenger RNA)(以下、「本件融合遺伝子のmRNA」ということがある);及び/又は本件融合タンパク質をコードするcDNA(complementary DNA)(以下、「本件融合遺伝子のcDNA」ということがある);を検出し、必要に応じて定量する工程(a)を含む方法(以下、「本件検出方法」ということがある)であれば特に制限されず、本件検出方法は、被験者が、本件融合遺伝子が存在するがん患者であるか否かの医師による診断を補助する方法であって、医師による診断行為を含まない。
[融合タンパク質群]
MGEA5-RET融合タンパク質
TBC1D5-LPP融合タンパク質
ACER1-MLLT1融合タンパク質
NAB2-STAT6融合タンパク質
POU2F1-MAML2融合タンパク質
TMEM41B-FUS融合タンパク質
ZDHHC21-FOXO1融合タンパク質
LACAT1-SEPT9融合タンパク質
EIF3K-ACTN4融合タンパク質
SLC12A2-RET融合タンパク質
GSK3B-GPHN融合タンパク質
IL6ST-FOXO1融合タンパク質
PPP1CB-ALK融合タンパク質
RNF40-CUTA融合タンパク質
(SEPT5-GP1BB)-SEpt5融合タンパク質
PRIM2-ACTB融合タンパク質
AZIN1-MLLT3融合タンパク質
RAP1B-HMGA2融合タンパク質
EZR-MLLT4融合タンパク質
OGT-AFF1融合タンパク質
RPSAP52-HMGA2融合タンパク質
BCL11B-LOC105370659融合タンパク質
LOC101928865-GAB2融合タンパク質
AQP10-ATP8B2融合タンパク質
ARMC2-FOXO3融合タンパク質
CBL-MAML2融合タンパク質
PRKCQ-PICALM融合タンパク質
FGF1-PRKAR2A融合タンパク質
SLC44A1-BRAF融合タンパク質
SMURF1-FOXO1融合タンパク質
TCAF1-BRAF融合タンパク質
CCNC-MLLT10融合タンパク質
PPP1R21-ALK融合タンパク質
LOC107986457-ARHGAP26融合タンパク質
SPTBN1-ALK融合タンパク質
MKRN2-PPARG融合タンパク質
PHLDB2-JAK2融合タンパク質
SMARCA2-NFIB融合タンパク質
本発明のがんにおける融合遺伝子の検出用キットとしては、生体試料における本件融合タンパク質に特異的に結合する抗体(以下、「本件融合タンパク質標的抗体」ということがある)を含む、がんにおける融合遺伝子の検出に用いるためのキット;や、
生体試料における本件融合タンパク質をコードするゲノムDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセット(以下、「本件ゲノムDNA検出用プライマーセット」ということがある)及び/又は前記ゲノムDNAにハイブリダイズするプローブ(以下、「本件ゲノムDNA検出用プローブ」ということがある)を含む、がんにおける融合遺伝子の検出に用いるためのキット;や、
生体試料における本件融合タンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズするリバースプライマー(以下、「本件mRNA検出用リバースプライマー」ということがある)及び/又はプローブ(以下、「本件mRNA検出用プローブ」ということがある)を含む、がんにおける融合遺伝子の検出に用いるためのキット;や、
本件融合タンパク質をコードするcDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセット(以下、「本件cDNA検出用プライマーセット」ということがある);及び/又は前記cDNAにハイブリダイズするプローブ(以下、「本件cDNA検出用プローブ」ということがある)を含む、がんにおける融合遺伝子の検出に用いるためのキット;
であれば特に制限されない(これらのキットを総称して、以下、「本件キット」ということがある)。本件キットは、がんにおける融合遺伝子を検出するためのキットに関する用途発明であり、これらキットには、一般にこの種の検出キットに用いられる成分、例えば担体、pH緩衝剤、安定剤の他、取扱説明書、がんにおける融合遺伝子を検出するための説明書等の添付文書が通常含まれる。
本発明のがんの治療剤は、「がんを治療するため」という用途に特定された、本件融合タンパク質の発現又は生理活性を抑制する物質(以下、「本件物質」ということがある)を含有する製剤(以下、「本件治療剤」ということがある)であり、本件治療剤は、単独で医薬品(製剤)として使用してもよいし、さらに配合成分を混合し、組成物の形態(医薬組成物)として使用してもよい。
本発明の融合タンパク質を標的とする抗体は、生体試料における本件融合タンパク質に特異的に結合する抗体(すなわち、本件融合タンパク質標的抗体)であり、具体的には、本件融合タンパク質における融合部位を含むポリペプチドをエピトープとする抗体である。本件融合タンパク質標的抗体は、がん治療の他、がんの診断に有用である。
本発明の融合遺伝子のmRNAを標的とするポリヌクレオチドは、RNA干渉(RNAi)能を有し、かつ、本件融合タンパク質をコードするmRNA(すなわち、本件融合遺伝子のmRNA)に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「本件融合遺伝子のmRNA標的ポリヌクレオチド」ということがある)であり、ここでRNAi能を有するポリヌクレオチドとしては、siRNA(small interfering RNA)、shRNA(short hairpinRNA)、miRNA(micro RNA)、アンチセンス核酸等を挙げることができる。本件融合遺伝子のmRNA標的ポリヌクレオチドは、がん治療に有用である。
上記[融合タンパク質群]における「X-Y融合タンパク質」とは、アミノ(N)末端からカルボキシル(C)末端の順に、Xタンパク質断片とYタンパク質断片とが融合したタンパク質を意味し、例えば、本件融合タンパク質がMGEA5-RET融合タンパク質の場合、N末端からC末端の順に、MGEA5タンパク質断片とRETタンパク質断片とが融合したタンパク質を意味する。
本件融合遺伝子のmRNAとしては、具体的には、以下の表1に示す、本件融合遺伝子のmRNA(以下、「表1のmRNA」ということがある)と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むmRNAを挙げることができ、また、本件融合遺伝子のcDNAとしては、具体的には、表1のmRNAを基に合成されるcDNAと80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むcDNAを挙げることができ、また、本件融合タンパク質としては、具体的には、表1のmRNAがコードするアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む融合タンパク質を挙げることができ、また、本件融合遺伝子としては、具体的には、表1のmRNAをコードするヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むゲノムDNAを挙げることができる。
Figure 0007410480000001
Figure 0007410480000002
Figure 0007410480000003
表1のmRNAのヌクレオチド配列は、表1の「本件融合遺伝子のmRNA」の項目に記載された内容から理解することができ、例えば、MGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNAである「MGEA5{NM_012215.3}:r.1_2618-RET{NM_020975.4}:r.2327_5617」は、「MGEA5{NM_012215.3}:r.1_2618」(すなわち、NCBIにNM_012215.3という番号で登録されているMGEA5遺伝子のmRNA[具体的には、配列番号22のヌクレオチド配列からなるmRNA])の1~2618番目のヌクレオチド残基と、「RET{NM_020975.4}:r.2327_5617」(すなわち、NCBIにNM_020975.4という番号で登録されているRET遺伝子のmRNA[具体的には、配列番号25のヌクレオチド配列からなるmRNA]の2327~5617番目のヌクレオチド残基)との融合遺伝子のmRNA(具体的には、配列番号2のヌクレオチド配列からなる、MGEA5-RET遺伝子のmRNA)である。また、当該mRNAの444~446番目のヌクレオチド残基が翻訳開始コドンであり、3825~3827番目のヌクレオチド残基が終始コドンであることを考慮すると、当該mRNAを基に合成されるcDNA(すなわち、MGEA5-RET遺伝子のcDNA)は、配列番号3のヌクレオチド配列からなるcDNAであることが理解できる。また、当該cDNAのヌクレオチド配列を基に、当該cDNAがコードするタンパク質(すなわち、MGEA5-RET融合タンパク質)は、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質であることが理解できる。このように、MGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNA以外の本件融合タンパク質をコードするmRNAについても同様に、表1の記載内容から、mRNAのヌクレオチド配列、当該mRNAを基に合成されるcDNAのヌクレオチド配列、当該mRNAがコードするアミノ酸配列、融合部位等を理解することができる。
本件融合タンパク質としては、MGEA5-RET融合タンパク質を好適に例示することができ、その場合、MGEA5-RET融合タンパク質としては、具体的には、配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものを挙げることができ、また、MGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNAとしては、具体的には、配列番号38に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むものを挙げることができ、また、MGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNAとしては、具体的には、配列番号2に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むものを挙げることができ、また、MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAとしては、具体的には、配列番号3に示されるヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むものを挙げることができる。
本明細書において、「RNAi能を有し、かつ、本件融合遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、本件融合タンパク質がMGEA5-RET融合タンパク質の場合、具体的には、配列番号2のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、MGEA5-RET融合遺伝子のmRNAにおいて、配列番号2の2618~2619番目に相当するヌクレオチド残基に特異的にハイブリダイズし、好ましくは、配列番号22のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、MGEA5遺伝子のmRNA、及び/又は、配列番号25のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、RET遺伝子のmRNAには特異的にハイブリダイズしないポリヌクレオチド(好ましくは、1本鎖ポリヌクレオチド)を意味する。本件融合遺伝子のmRNA標的ポリヌクレオチドの長さとしては、例えば、10ヌクレオチド以上(好ましくは11、12、13、14、15、16、17、又は18ヌクレオチド以上)であり、50ヌクレオチド以下(好ましくは46、43、40、39、36、又は30ヌクレオチド以下)である。
本件融合タンパク質としては、分離されたタンパク質(以下、「本件分離融合タンパク質」ということがある)か、あるいは組換えタンパク質(以下、「本件組換え融合タンパク質」ということがある)であればよく、また、本件融合タンパク質の断片としては、融合部位(例えば、本件融合タンパク質がMGEA5-RET融合タンパク質の場合、配列番号1の725~726番目に相当するアミノ酸残基)を含む、本件分離融合タンパク質又は本件組換え融合タンパク質の断片であればよく、また、本発明の融合タンパク質をコードするcDNAとしては、本件融合タンパク質をコードするcDNA(すなわち、本件融合遺伝子のcDNA)であればよく、また、本発明の融合タンパク質の断片をコードするcDNAとしては、融合部位(例えば、本件融合タンパク質がMGEA5-RET融合タンパク質の場合、配列番号3の2175~2176番目に相当するヌクレオチド残基)を含む、本件分離融合タンパク質又は本件組換え融合タンパク質の断片をコードするcDNA(換言すると、本件融合遺伝子のcDNAの断片)であればよい。本件分離融合タンパク質又は本件組換え融合タンパク質の断片の長さとしては、特に制限されず、例えば、本件融合タンパク質がMGEA5-RET融合タンパク質の断片の場合、例えば、3~1126アミノ酸の範囲内(例えば、6~1100アミノ酸、10~1000アミノ酸、10~600アミノ酸、10~300アミノ酸、10~100アミノ酸)である。また、本件融合遺伝子のcDNAの断片の長さとしては、特に制限されず、例えば、本件融合タンパク質がMGEA5-RET融合タンパク質の場合、例えば、9~3381ヌクレオチドの範囲内(例えば、18~3303ヌクレオチド、30~3003ヌクレオチド、30~1803ヌクレオチド、30~903ヌクレオチド、30~303ヌクレオチド)である。
本発明のがんに関連する融合遺伝子のcDNAを合成する方法としては、がんに関連する融合遺伝子のデータベースから、(1)融合遺伝子のDNA配列情報が明らかにされている;(2)培養細胞中に存在することが知られている融合遺伝子ではない;(3)異なる2つの遺伝子断片が融合した融合遺伝子である;(4)融合部位が1つの融合遺伝子である;及び(5)ゲノムDNA上の位置が特定されている融合遺伝子である;の(1)~(5)の条件を満たす融合遺伝子を選択する工程(A);がん患者から採取された生体試料中のmRNAを基に、上流側末端及び/又は下流側末端にアダプターが付加されたcDNAを合成する工程(B);工程(B)で合成したcDNAの上流側末端に付加されたアダプターにアニーリングするフォワードプライマー(以下、「アダプター用フォワードプライマー」ということがある)と、工程(A)において選択した融合遺伝子のうち、下流側の遺伝子断片のcDNAにアニーリングするリバースプライマー(以下、「融合遺伝子用リバースプライマー」ということがある)とを用いて、PCR(Polymerase Chain Reaction)反応を行うか、あるいは、工程(A)において選択した融合遺伝子のうち、上流側の遺伝子断片のcDNAにアニーリングするフォワードプライマー(以下、「融合遺伝子用フォワードプライマー」ということがある)と、工程(B)で合成したcDNAの下流側末端に付加されたアダプターにアニーリングするリバースプライマー(以下、「アダプター用リバースプライマー」ということがある)とを用いて、PCRを行う工程(C);の工程(A)~(C)を含む方法(以下、「本件合成方法」ということがある)であれば特に制限されない。本件合成方法を用いると、本発明のMGEA5-RET融合遺伝子のcDNAを合成することができる。
本明細書において、「ゲノムDNA」は、特にことわりのない限り、通常、2本鎖のポリヌクレオチド、具体的には、アンチセンス鎖(すなわち、mRNAの鋳型)と、その相補配列であるセンス鎖とからなる2本鎖のポリヌクレオチドである。また、本明細書において、「mRNA」とは、特にことわりのない限り、通常、1本鎖のポリヌクレオチド、具体的には、ゲノムDNAのアンチセンス鎖を鋳型として合成された1本鎖のポリヌクレオチドである。また、本明細書において、「cDNA」とは、特にことわりのない限り、通常、2本鎖のポリヌクレオチド、具体的には、mRNAを鋳型として合成された2本鎖のポリヌクレオチドである。
本明細書において、cDNAの「上流側末端」及び「下流側末端」とは、cDNAを作動可能となるようにプロモーターに連結したときに、プロモーターから見て、それぞれcDNAの「近い側の末端」及び「遠い側の末端」を意味する。また、本明細書において、融合遺伝子のうち、「上流側の遺伝子断片」及び「下流側の遺伝子断片」とは、融合遺伝子を作動可能となるようにプロモーターに連結したときに、融合遺伝子のうち、プロモーターから見て、それぞれ「近い側の遺伝子断片」及び「遠い側の遺伝子断片」を意味する。
本発明において、がんとしては、例えば、大腸がん(結腸がん又は直腸がん);胃がん;肝臓がん;脳腫瘍;肺がん(具体的には、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、未分化がん、大細胞がん、小細胞がん);食道がん;十二指腸がん;小腸がん;皮膚がん;乳がん;前立腺がん;膀胱がん;膣がん;子宮頸部がん;子宮体がん;腎臓がん;膵臓がん;脾臓がん;気管がん;気管支がん;頭頸部がん;胆嚢がん;胆管がん;精巣がん;卵巣がん;白血病;縦隔腫瘍(例えば、胸腺腫、胸腺がん、胚細胞腫瘍、悪性リンパ腫、甲状腺腫)等を挙げることができ、これらの中でも、本実施例でその効果が実証されているため、大腸がん、肺がん、胃がん、縦隔腫瘍(例えば、胸腺がん)、膵臓がん、及び頭頸部がんを好適に例示することができる。
本発明において生体試料としては、例えば、涙、血液(例えば、血漿、血清)、尿、細胞(好ましくは、がんが存在する可能性のある細胞)、組織(好ましくは、がんが存在する可能性のある組織)、臓器(好ましくは、がんが存在する可能性のある臓器)を挙げることができ、組織が好ましい。
上記被験者としては、ヒトである限り特に制限されず、例えば、がんに罹患しているか否かが不明な被験者や、本件融合タンパク質、又は本件MGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNA、mRNA、若しくはcDNAが存在するか否かが不明ながん患者を挙げることができる。かかる被験者には、過去にがんに罹患したことがあり、その後がんは完治したものの、被験時に、がんに罹患しているか否かが不明な被験者や、本件融合タンパク質、又は本件MGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNA、mRNA、若しくはcDNAが存在するか否かが不明な被験者も含まれる。
配列番号1のアミノ酸配列は、後述する本実施例において具体的に示すとおり、ヒト大腸がん組織由来のサンプル中で検出されたMGEA5-RET融合遺伝子(すなわち、上流側のMGEA5遺伝子断片と、下流側のRET遺伝子断片とからなる融合遺伝子)によりコードされるアミノ酸配列である。配列番号1のアミノ酸配列は、より具体的には、MGEA5のアミノ(N)末端領域のアミノ酸配列(具体的には、配列番号24のアミノ酸配列を含むMGEA5タンパク質において、配列番号24の1~725番目のアミノ酸残基)と、RETのカルボキシル(C)末端領域のアミノ酸配列(具体的には、配列番号27のアミノ酸配列を含むRETタンパク質において、配列番号27の713~1114番目のアミノ酸残基)とが融合したアミノ酸配列であり、融合部位は、配列番号1のアミノ酸配列において725番目のグルタミン酸(E)と、726番目のグルタミン酸との間に位置する。ヒトにおいてMGEA5-RET融合遺伝子の一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism;SNP)が多数存在するため、ヒト集団中には、配列番号1のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むMGEA5-RET融合タンパク質が存在し得る。同様に、表1のmRNAがコードするアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む融合タンパク質が存在し得る。
本件検出方法の工程(a)において、本件融合タンパク質を検出する方法としては、例えば、本件融合タンパク質標的抗体を用いた免疫学的測定法を挙げることができる。かかる免疫学的測定法としては、免疫組織化学染色法、ELISA法、EIA法、RIA法、ウェスタンブロッティング法、ドットブロッティング法、フローサイトメトリー法等を好適に例示することができる。ここでフローサイトメトリー法は、蛍光物質(例えば、アロフィコシアニン[APC]、フィコエリトリン[PE]、FITC[fluorescein isothiocyanate]、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 647、AlexaFluor 700、PE-TexasRed、PE-Cy5、PE-Cy7)で標識した本件融合タンパク質標的抗体を用いた蛍光活性化セルソーター(FACS)により行うことができる。
配列番号38のヌクレオチド配列は、後述する本実施例において具体的に示すとおり、ヒト大腸がん組織由来のサンプル中で検出されたMGEA5-RET融合遺伝子である。配列番号38のヌクレオチド配列は、より具体的には、MGEA5遺伝子の5’領域(すなわち、MGEA5遺伝子の5’末端からイントロン12中に存在する切断点[ブレイクポイント]までのヌクレオチド配列)と、RET遺伝子の3’領域(すなわち、RET遺伝子のイントロン11中に存在するブレイクポイントから3’末端までのヌクレオチド配列)とが、チミジンを介して融合したヌクレオチド配列であり、ブレイクポイントは、配列番号38のヌクレオチド配列において852番目のアデノシン(A)と、854番目のチミジン(T)との間に位置する。ヒトにおいてMGEA5-RET融合遺伝子のSNPが多数存在するため、ヒト集団中には、配列番号38のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むMGEA5-RET融合遺伝子が存在し得る。
本件検出方法の工程(a)において、本件融合遺伝子を検出する方法としては、例えば、本件ゲノムDNA検出用プライマーセットを用いたLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法、PCR(polymerase chain reaction)法(例えば、リアルタイムPCR法[インターカレーター法、5’-ヌクレアーゼ法、サイクリングプローブ法等]、ドロップレットデジタルPCR[ddPCR]法);リガーゼ連鎖反応(ligase chain reaction;LCR)法;次世代シーケンサーを用いたシークエンシング法;本件ゲノムDNA検出用プローブを用いたサザンハイブリダイゼーション法、マイクロアレイ法、ISH(in situ hybridization)法;などを挙げることができる。
配列番号2のヌクレオチド配列は、後述する本実施例において具体的に示すとおり、ヒト大腸がん組織由来のサンプル中で検出されたMGEA5-RET融合遺伝子のmRNAである。配列番号2のヌクレオチド配列は、より具体的には、MGEA5遺伝子のmRNAの5’領域(具体的には、配列番号22のヌクレオチド配列を含む、MGEA5遺伝子のmRNAにおいて、配列番号22の1~2618番目のヌクレオチド残基)と、RET遺伝子のmRNAの3’領域(具体的には、配列番号25のヌクレオチド配列を含む、RET遺伝子のmRNAにおいて、配列番号25の2327~5617番目のヌクレオチド残基)とが融合したヌクレオチド配列であり、融合部位は、配列番号2のヌクレオチド配列において2618番目のグアノシン(G)と、2619番目のグアノシンとの間に位置する。ヒトにおいてMGEA5-RET融合遺伝子のSNPが多数存在するため、ヒト集団中には、配列番号2のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むMGEA5-RET融合遺伝子のmRNAが存在し得る。同様に、表1のmRNAと80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むmRNAが存在し得る。
本件検出方法の工程(a)において、本件融合遺伝子のmRNAを検出する方法としては、例えば、本件mRNA検出用リバースプライマーを用いたRT(Reverse Transcription)-PCR法;本件mRNA検出用プローブを用いたノーザンブロッティング法、マイクロアレイ法、ISH法などを挙げることができる。
配列番号3のヌクレオチド配列は、後述する本実施例において具体的に示すとおり、ヒト大腸がん組織由来のサンプル中で検出されたMGEA5-RET融合遺伝子のcDNAである。配列番号3のヌクレオチド配列は、より具体的には、MGEA5遺伝子のcDNAの5’領域(具体的には、配列番号23のヌクレオチド配列を含む、MGEA5遺伝子のcDNAにおいて、配列番号23の1~2175番目のヌクレオチド残基)と、RET遺伝子のcDNAの3’領域(具体的には、配列番号26のヌクレオチド配列を含む、RET遺伝子のcDNAにおいて、配列番号26の2137~3345番目のヌクレオチド残基)とが融合したヌクレオチド配列であり、融合部位は、配列番号3のヌクレオチド配列において2175番目のグアノシン(G)と、2176番目のグアノシンとの間に位置する。ヒトにおいてMGEA5-RET融合遺伝子のSNPが多数存在するため、ヒト集団中には、配列番号3のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むMGEA5-RET融合遺伝子のcDNAが存在し得る。同様に、表1のmRNAを基に合成されるcDNAと80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むcDNAが存在し得る。
本件検出方法の工程(a)において、本件融合遺伝子のcDNAを検出する方法としては、例えば、本件cDNA検出用プライマーセットを用いたLAMP法、PCR法(例えば、リアルタイムPCR法[インターカレーター法、5’-ヌクレアーゼ法、サイクリングプローブ法等]、ddPCR法);LCR法;次世代シーケンサーを用いたシークエンシング法;本件cDNA検出用プローブを用いたサザンハイブリダイゼーション法、マイクロアレイ法、ISH法;などを挙げることができる。なお、本件融合遺伝子のcDNAは、本件融合遺伝子のmRNAから逆転写酵素(reverse transcriptase)を用いたPCR法により合成することができる。
本明細書において、「次世代シーケンサー」とは、第2世代シーケンサーとも呼称され、数千万のDNA断片のヌクレオチド配列を同時並行的に決定できるヌクレオチド配列決定装置を意味する。次世代シーケンサーにおけるシーケンシング原理としては、例えばブリッジPCR法とSequencing-by-synthesis法により、フローセル上で検出対象のDNAを増幅させ、合成しながらシーケンシングを行うといった原理や、エマルションPCR法とDNA合成時に放出されるピロリン酸の量を測定することで配列決定を行なうパイロシークエンス法とによりシーケンシングを行うといった原理を挙げることができる。次世代シーケンサーとしては、より具体的には、イルミナ(Illumina)社製のMiniSeq、MiSeq、NextSeq、HiSeq及びHiSeqXシリーズ、ロシュ社製のRoche 454 GS FLXシーケンサー等を挙げることができる。
本件融合タンパク質標的抗体のうち、MGEA5-RET融合タンパク質に特異的に結合する抗体(以下、「本件MGEA5-RET標的抗体」という)は、配列番号1のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むMGEA5-RET融合タンパク質に特異的に結合し、好ましくは、配列番号24のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むMGEA5タンパク質、及び/又は、配列番号27のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むRETタンパク質には特異的に結合しない抗体である。本件MGEA5-RET標的抗体としては、具体的には、配列番号1のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むMGEA5-RET融合タンパク質における融合部位を含むポリペプチドをエピトープとする抗体を挙げることができる。本件融合タンパク質標的抗体のエピトープの長さとしては、例えば、3アミノ酸以上(好ましくは4又は5アミノ酸以上)であり、40アミノ酸以下(好ましくは30、20、10、又は8アミノ酸以下)である。
本件融合タンパク質標的抗体の由来、種類、クラス、形態等は特に制限されず、例えば本件融合タンパク質標的抗体には、ヒト由来の抗体;マウス、ラット等の非ヒト動物由来の抗体;ポリクローナル抗体、オリゴクローナル抗体(数種~数十種の抗体の混合物)、モノクローナル抗体;抗体の一部領域(例えば、定常領域)を異なる生物種由来の領域に置換したキメラ抗体又はヒト化抗体、モノクローナル抗体をペプシンで消化して得られるF(ab′)抗体フラグメント、F(ab′)抗体フラグメントを還元して得られるFab′抗体フラグメント、モノクローナル抗体をパパインで消化して得られるFab等の抗体フラグメント、抗体重(H)鎖可変領域と抗体軽(H)鎖可変領域とを、アミノ酸架橋によって連結させたscFv等の組換え抗体;などが含まれる。
本件融合タンパク質標的抗体は、分離されているものが好ましい。また、本件融合タンパク質標的抗体は、人為的操作によって作製した抗体(例えば、上記組換え抗体)が好ましい。かかる「人為的操作によって作製した細胞由来の抗体や当該細胞から産生される抗体」には、人為的操作の施されていない抗体、例えば、天然に存在するB細胞から産生される抗体は含まれない。
本明細書において、「分離された」や「分離されている」とは、人為的操作等により、あるもの(すなわち、抗体やタンパク質)が本来存在している状態とは異なった状態で存在していることを意味する。すなわち、「分離されている抗体やタンパク質」には、ある個体由来の抗体やタンパク質であって、かつ外的操作(人為的操作)が施されずに、当該個体の体内中又は体内由来の組織若しくは体液(血液、血漿、血清等)中に含まれる状態の抗体やタンパク質は含まれない。
本件融合タンパク質標的抗体は、公知の手法により得ることができる。例えば、本件組換え融合タンパク質又はその断片を抗原として非ヒト動物に免疫し、免疫した非ヒト動物から、細胞融合技術を用いて、抗体を産生するハイブリドーマを調製し、上記抗原を固相化したプレートを用いたELISA法によるスクリーニングにより、本件融合タンパク質標的抗体を含む培養上清を得ることもできる。本件融合タンパク質標的抗体は、かかる培養上清から公知の抗体精製技術を用いて分離し、精製することができる。
本件融合タンパク質標的抗体や、本件分離/組換え融合タンパク質又はその断片は、本件融合タンパク質標的抗体をコードするcDNA(以下、「本件融合タンパク質標的抗体cDNA」ということがある)や、本件融合遺伝子のcDNA又はその断片を、プロモーターを含むベクターのプロモーターの下流に作動可能に連結することにより発現ベクターを作製し、宿主細胞や宿主生物へ導入することにより、発現させることができる。発現ベクターにおけるプロモーターやベクターの種類は、導入する宿主細胞や宿主生物の種類に応じて適宜選択することができる。
宿主細胞として酵母(例えば、Saccharomyces Cerevisiae、Schizosaccharomyces Pombe等)を用いる場合、発現ベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)等のベクター又はかかるベクター由来のものを挙げることができ、プロモーターとしては、例えば、ヘキソースキナーゼ等の解糖系の遺伝子のプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーターなどを挙げることができる。
また、宿主細胞として哺乳動物細胞(例えば、ヒト由来のナマルバ[Namalwa]細胞、サル由来のCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣由来のCHO細胞、ヒト、マウス等由来のT細胞など)を用いる場合、発現ベクターとしては、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社製)、pAGE107(特開平3-22979号公報;Cytotechnology,3,133,(1990))、pAS3-3(特開平2-227075号公報)、pCDM8(Nature,329,840,(1987))、pcDNAI/Amp(Invitrogen社製)、pREP4(Invitrogen社製)、pAGE103(J.Biochemistry,101,1307(1987))、pAGE210、pMSGVベクター(Tamada k et al., Clin Cancer Res 18:6436-6445(2002))やpMSCVベクター(タカラバイオ社製)などのレトロウイルスベクター又はかかるベクター由来のものを挙げることができる。
上記ベクターにおけるプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター、NFATプロモーター、HIFプロモーター等を挙げることができる。
また、宿主細胞として昆虫細胞(例えば、Spodopterafrugiperdaの卵巣細胞であるSf9細胞、Sf21細胞、Trichoplusianiの卵巣細胞であるHigh5細胞等)を用いる場合、発現ベクターとしては、例えば、組換えバキュロウイルス作製法において用いられるトランスファーベクター、具体的には、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(ともにInvitorogen社製)等のベクター又はかかるベクター由来のものを挙げることができ、プロモーターとしては、例えば、ポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター等を挙げることができる。
また、宿主細胞として植物細胞(例えば、タバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギ、オオムギ等)を用いる場合、発現ベクターとしては、例えば、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等のベクター又はかかるベクター由来のものを挙げることができ、プロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等を挙げることができる。
上記発現ベクターとしては、遺伝子発現効率をさらに高めるために、エンハンサー領域やリボソーム結合領域(RBS;ribosome binding site)の塩基配列をさらに含むものや、宿主細胞のスクリーニングのために、宿主細胞の種類に応じた薬剤耐性遺伝子(例えば、スペクチノマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ジェネティシン耐性遺伝子等)をさらに含むものが好ましい。エンハンサー領域は、通常プロモーターの上流に配置され、RBSは、通常プロモーターと、本件融合タンパク質標的抗体cDNAや、本件融合遺伝子のcDNA又はその断片との間に配置される。発現ベクターに組み込む、本件融合タンパク質標的抗体cDNAや、本件融合遺伝子のcDNA又はその断片のヌクレオチド配列は、発現させる宿主細胞に合わせてコドン配列の最適化がされていてもよい。発現ベクターは、遺伝子組み換え技術を用いて公知の方法により作製することができる。
宿主細胞は、発現ベクターを、宿主細胞の種類に応じた方法により、宿主細胞へ導入(トランスフェクション)することにより得ることができる。
宿主細胞として上記酵母を用いる場合、発現ベクターの酵母への導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればよく、例えば、エレクトロポレーション法(Methods.Enzymol.,194,182(1990))、スフェロプラスト法(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,84,1929(1978))、酢酸リチウム法(J.Bacteriology,153,163(1983))等の方法を挙げることができる。
また、宿主細胞として上記哺乳動物細胞を用いる場合、発現ベクターの哺乳動物細胞への導入方法としては、哺乳動物細胞にDNAを導入する方法であればよく、例えば、上述のとおり、エレクトロポレーション法(Cytotechnology,3,133(1990))、リン酸カルシウム法(特開平2-227075号公報)、リポフェクション法(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,84,7413(1987))、ウイルス感染法等の方法を挙げることができる。かかるウイルス感染法としては、上述のとおり、CAR発現ベクター(国際公開2016/056228号パンフレット)と、パッケージングプラスミドとをGP2-293細胞(タカラバイオ社製)、Plat-GP細胞(コスモ・バイオ社製)、PG13細胞(ATCC CRL-10686)、PA317細胞(ATCC CRL-9078)などのパッケージング細胞にトランスフェクションして組換えウイルスを作製し、かかる組換えウイルスをT細胞に感染させる方法を挙げることができる。
また、宿主細胞として上記昆虫細胞を用いる場合、発現ベクターの昆虫細胞への導入方法としては、例えば「Current Protocols in Molecular Biology」、「Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992)」、「Bio/Technology,6,47(1988)」等に記載の方法にしたがって、発現ベクター(トランスファーベクター)と、バキュロウイルス由来のゲノムDNAとを上記昆虫細胞にコトランスフェクションし、組換えバキュロウイルスを作製する方法を挙げることができる。かかるコトランスフェクションの方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2-227075号公報)、リポフェクション法(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,84,7413(1987)等の方法を挙げることができる。
また、宿主細胞として上記植物細胞を用いる場合、発現ベクターの植物細胞への導入方法としては、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を用いる方法(特開昭59-140885号公報、特開昭60-70080号公報)、エレクトロポレーション法(特開昭60-251887号公報)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(日本特許第2606856号公報、日本特許第2517813号公報)等の方法を挙げることができる。
本件融合タンパク質標的抗体は、上述の方法で得られた宿主細胞を、宿主細胞に応じた培養液中で培養することにより得ることができる。
また、トランスジェニック動物作製技術を用いて、本件融合タンパク質標的抗体cDNAを含むベクターが組み込まれたマウス、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、ブタ等のトランスジェニック動物を作製し、かかるトランスジェニック動物の血液、ミルク中などから本件融合タンパク質標的抗体を大量に産生することもできる。
本件ゲノムDNA検出用プライマーセットのうち、MGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNAにアニーリングするプライマーセット(以下、「MGEA5-RETゲノムDNA検出用プライマーセット」ということがある)は、配列番号38のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含むMGEA5-RET融合遺伝子において、配列番号38の852~854番目に相当するヌクレオチド残基を特異的に増幅し、好ましくは、配列番号36のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含むMGEA5遺伝子、及び/又は、配列番号37のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含むRET遺伝子を特異的に増幅しないプライマーセット(すなわち、ポリヌクレオチドのペア、好ましくは、1本鎖ポリヌクレオチドのペア)である。MGEA5-RETゲノムDNA検出用プライマーセットのうちフォワードプライマーとしては、具体的には、ブレイクポイントから5’末端側のヌクレオチド配列(例えば、配列番号38の1~852番目に相当するヌクレオチド残基)の相補配列にアニーリングするプライマーである。また、MGEA5-RETゲノムDNA検出用プライマーセットのうちリバースプライマーとしては、具体的には、ブレイクポイントから3’末端側のヌクレオチド配列(例えば、配列番号38の854~2163番目に相当するヌクレオチド残基)にアニーリングするプライマーである。
本件ゲノムDNA検出用プローブのうち、MGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNAにハイブリダイズするプローブは、配列番号38のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含むMGEA5-RET融合遺伝子において、配列番号38の852~854番目に相当するヌクレオチド残基(すなわち、ブレイクポイント)に特異的にハイブリダイズし、好ましくは、配列番号36のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含むMGEA5遺伝子、及び/又は、配列番号37のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含むRET遺伝子には特異的にハイブリダイズしないプローブ(好ましくは、1本鎖ポリヌクレオチド)である。本件ゲノムDNA検出用プローブの長さとしては、例えば、10ヌクレオチド以上(好ましくは20、30、40、50、60、70、80、90、又は100ヌクレオチド以上)であり、1000ヌクレオチド以下(好ましくは900、800、700、600、500、400、300、又は200ヌクレオチド以下)である。
本件mRNA検出用リバースプライマーのうち、MGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズするリバースプライマー(以下、「MGEA5-RETmRNA検出用リバースプライマー」ということがある)は、配列番号2のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、MGEA5-RET融合遺伝子のmRNAにおいて、配列番号2の2618~2619番目に相当するヌクレオチド残基を特異的に逆転写し、好ましくは、配列番号22のヌクレオチド配列を含む、MGEA5遺伝子のmRNA、及び/又は、配列番号25のヌクレオチド配列を含む、RET遺伝子のmRNAを特異的に逆転写しないリバースプライマー(好ましくは、1本鎖ポリヌクレオチド)である。MGEA5-RETmRNA検出用リバースプライマーとしては、具体的には、融合部位から3’末端側のヌクレオチド配列(例えば、配列番号2の2619~5921番目に相当するヌクレオチド残基)にアニーリングするプライマーである。
本件mRNA検出用プローブのうち、MGEA5-RET融合タンパク質にハイブリダイズするプローブは、配列番号2のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、MGEA5-RET融合遺伝子のmRNAにおいて、配列番号2の2618~2619番目に相当するヌクレオチド残基(すなわち、融合部位)に特異的にハイブリダイズし、好ましくは、配列番号22のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、MGEA5遺伝子のmRNA、及び/又は、配列番号25のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、RET遺伝子のmRNAには特異的にハイブリダイズしないプローブ(好ましくは、1本鎖ポリヌクレオチド)である。本件mRNA検出用プローブの長さとしては、例えば、10ヌクレオチド以上(好ましくは20、30、40、50、60、70、80、90、又は100ヌクレオチド以上)であり、1000ヌクレオチド以下(好ましくは900、800、700、600、500、400、300、又は200ヌクレオチド以下)である。
本件cDNA検出用プライマーセットのうち、MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセット(以下、「MGEA5-RETcDNA検出用プライマーセット」ということがある)は、配列番号3のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む、MGEA5-RET融合遺伝子のcDNAにおいて、配列番号3の2175~2176番目に相当するヌクレオチド残基を特異的に増幅し、好ましくは、配列番号23のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む、MGEA5遺伝子のcDNA、及び/又は、配列番号26のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む、RET遺伝子のcDNAを特異的に増幅しないプライマーセット(すなわち、ポリヌクレオチドのペア、好ましくは、1本鎖ポリヌクレオチドのペア)である。MGEA5-RETcDNA検出用プライマーセットのうちフォワードプライマーとしては、具体的には、ブレイクポイントから5’末端側のヌクレオチド配列(例えば、配列番号3の1~2175番目に相当するヌクレオチド残基)の相補配列にアニーリングするプライマーである。また、MGEA5-RETcDNA検出用プライマーセットのうちリバースプライマーとしては、具体的には、ブレイクポイントから3’末端側のヌクレオチド配列(例えば、配列番号3の2176~3384番目に相当するヌクレオチド残基)にアニーリングするプライマーである。
本件cDNA検出用プローブのうち、MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAにハイブリダイズするプローブは、配列番号3のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む、MGEA5-RET融合遺伝子のcDNAにおいて、配列番号3の2175~2176番目に相当するヌクレオチド残基(すなわち、融合部位)に特異的にハイブリダイズし、好ましくは、配列番号23のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、MGEA5遺伝子のcDNA、及び/又は、配列番号26のヌクレオチド配列と80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、RET遺伝子のcDNAには特異的にハイブリダイズしないプローブ(好ましくは、1本鎖ポリヌクレオチド)である。本件cDNA検出用プローブの長さとしては、例えば、10ヌクレオチド以上(好ましくは20、30、40、50、60、70、80、90、又は100ヌクレオチド以上)であり、1000ヌクレオチド以下(好ましくは900、800、700、600、500、400、300、又は200ヌクレオチド以下)である。
本件ゲノムDNA検出用プライマーセットにおけるフォワードプライマーやリバースプライマーは、本件融合遺伝子の検出感度や特異度の観点から、増幅産物の長さが、5000ヌクレオチド対以下(例えば、4000、3000、2000、又は1000ヌクレオチド対以下)となるように設計することが好ましい。また、本件mRNA検出用リバースプライマーは、本件融合遺伝子のmRNAの検出感度や特異度の観点から、増幅産物の長さが、上述した5000ヌクレオチド対以下となるように設計することが好ましい。また、本件cDNA検出用プライマーセットにおけるフォワードプライマーやリバースプライマーは、本件融合遺伝子のcDNAの検出感度や特異度の観点から、増幅産物の長さが、上述した5000ヌクレオチド対以下となるように設計することが好ましい。これらプライマーの設計は、公知の手法により適宜行なうことができ、例えば、Primer Express(登録商標)ソフトウェア(Applied Biosystems社製)を利用することができる。これらプライマーの長さとしては、例えば、10ヌクレオチド以上(好ましくは13、16、20、23、26、又は30ヌクレオチド以上)であり、100ヌクレオチド以下(好ましくは90、80、70、60、50、又は40ヌクレオチド以下)である。
本発明において、プライマー、プローブ、及びアダプターは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。またその一部又は全部において、PNA(polyamide nucleic acid、ペプチド核酸)、LNA(登録商標、lockednucleic acid、Bridged Nucleic Acid、架橋化核酸)、ENA(登録商標、2'-O,4'-C-Ethylene-bridged nucleic acids)、GNA(Glycerol nucleic acid、グリセロール核酸)、TNA(Threosenucleic acid、トレオース核酸)等の人工核酸によって、ヌクレオチドが置換されているものであってもよい。
本発明において、抗体、プライマー、及びプローブは、検出対象の本件融合タンパク質、本件融合遺伝子、本件融合遺伝子のmRNA、又は本件融合遺伝子のcDNAを、可視化及び/又は定量化するために、それらの標識物を用いることができる。かかる標識物における標識物質としては、ペルオキシダーゼ(例えば、horseradishperoxidase)、アルカリフォスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコ-ス-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ペニシリナーゼ、カタラーゼ、アポグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、ルシフェラーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼ等の酵素;上述した蛍光物質;緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescence Protein;GFP)、シアン蛍光タンパク質(CyanFluorescence Protein;CFP)、青色蛍光タンパク質(Blue FluorescenceProtein;BFP)、黄色蛍光タンパク質(Yellow Fluorescence Protein;YFP)、赤色蛍光タンパク質(Red Fluorescence Protein;RFP)、ルシフェラーゼ(luciferase)等の蛍光タンパク質;H、14C、125I若しくは131I等の放射性同位体;ビオチン、アビジン、又は化学発光物質;レポーター蛍光物質とクエンチャー蛍光物質又は構造との組合せ(例えば、5-FAM[5-Carboxyfluorescein]と5-TAMRA[5-Carboxytetramethylrhodamine]との組合せ、VICとMGB[Minor Groove Binder]との組合せ)を挙げることができる。
本発明において、「80%以上の配列同一性」とは、配列同一性が少なくとも80%であることを意味し、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは92%以上、特に好ましくは94%以上、特により好ましくは96%以上、特にさらに好ましくは98%以上、さらに特に好ましくは99%以上、最も好ましくは100%の配列同一性を意味する。アミノ酸配列の同一性は、カーリン及びアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)に基づくBLASTX又はBLASTPと呼ばれるプログラム(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)を利用して決定することができる。BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えば、score=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は当業者にはよく知られている(例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。また、ヌクレオチド配列の同一性は、前記アルゴリズムBLASTに基づくBLASTNと呼ばれるプログラム(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)を利用して決定することができる。BLASTNを用いてヌクレオチド配列を解析する場合は、パラメーターは、例えば、score=100、wordlength=12とする。
本件物質としては本件MGEA5-RET融合タンパク質の発現及び/又は生理活性を直接的又は間接的に抑制する物質であれば特に制限されない。かかる物質としては、例えば、本件融合遺伝子のmRNA標的ポリヌクレオチド;本件融合遺伝子のmRNA標的ポリヌクレオチドを発現し得る発現ベクター;MGEA5-RET融合タンパク質の発現を抑制する作用を有する本件融合タンパク質標的抗体;低分子化合物;などを挙げることができる。
また、前記本件融合タンパク質の生理活性を抑制する物質としては、本件融合タンパク質が、MGEA5-RET融合タンパク質やSLC12A2-RET融合タンパク質の場合、例えば、RETにおけるキナーゼドメイン(具体的には、配列番号1の737~1029番目に相当するアミノ酸残基)によるチロシンキナーゼ活性を阻害する物質(例えば、ソラフェニブ[Sorafenib]、スニチニブ[Sunitinib]、カボザンチニブ[Cabozantinib、XL184]、バンデタニブ[Vandetanib]、ポナチニブ[Ponatinib]、カボザンチニブ[Cabozantinib]、アレクチニブ[Alectinib]、特許第5759568号に記載の化合物)を挙げることができる。
本件治療剤は、好ましくは本件物質を有効成分として含有するものであり、必要に応じて、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、等張剤、添加剤、被覆剤、可溶化剤、潤滑剤、溶解補助剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、溶剤、ゲル化剤、栄養剤等の配合成分がさらに添加されたものであってもよい。かかる配合成分としては、具体的には、水、生理食塩水、動物性脂肪及び油、植物油、乳糖、デンプン、ゼラチン、結晶性セルロース、ガム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリンを例示することができる。
本件治療剤の投与形態としては、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液などの剤型で投与する経口投与や、溶液、乳剤、懸濁液などの剤型を注射(例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射)、又はスプレー剤の型で鼻孔内投与する非経口投与を挙げることができ、経口投与が好ましい。
本件治療剤における本件物質の投与量は、年齢、体重、性別、症状、薬剤への感受性等に応じて適宜決定され、例えば、0.1μg~200mg/kg(体重)/日の投与量の範囲である。
上記「がんに関連する融合遺伝子のデータベース」としては、コンピュータによる情報処理により、蓄積・検索・更新等に便利なように、がんとの関連が報告されている融合遺伝子の情報が集められたものであればよく、例えば、COSMIC(Catalogue of Somatic Mutations in Cancer)、Mitelman DataBase、TCGA(The Cancer Genome Atlas)、FusionGDB等のデータベースを挙げることができる。また、「がんに関連する融合遺伝子のデータベース」としては、上記(1)~(5)の条件を満たすかどうかを判断するための情報を含むものが好ましい。なお、データベースは、バージョンアップされた場合、最新のものを使用することができる。
上記工程(A)において選択される融合遺伝子の数は、データベースに蓄積されている融合遺伝子の数に依存するため、一概に特定することはできないが、例えば、COSMICを用いる場合、少なくとも約700(699)種類の融合遺伝子を選択することができる。
上記工程(B)において、上流側末端及び/又は下流側末端にアダプターが付加されたcDNAを合成する方法としては、まず、がん患者から採取された生体試料からトータルRNAを単離・精製し、その後、例えば、mRNAを鋳型として、オリゴdT(デオキシチミジン)プライマーやランダムプライマー等のmRNAにアニーリングするリバースプライマーと、1本鎖のポリヌクレオチドからなるアダプター(SMART)を含み、かつ、合成された1本鎖のポリヌクレオチドからなるcDNAにアニーリングするフォワードプライマーと、MoloneyMurine Leukemia Virus由来の逆転写酵素とを用いたSMART(Switching MechanismAt 5’End of RNA Template)法;mRNAを鋳型として、オリゴdTプライマーやランダムプライマー等のmRNAにアニーリングするリバースプライマーと逆転写酵素とを用いたPCR法を行い、cDNAを合成した後、平滑化したcDNA末端にdA(デオキシアデニン)を付加させ、アダプターを用いたアダプターライゲーション法;等を挙げることができる。
上記アダプターのヌクレオチド配列としては、特に制限されず、ヒトに存在しないヌクレオチド配列が好ましい。ヒトに存在するヌクレオチド配列かどうかは、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のBLASTによる相同性検索を用いて確認することができる。また、アダプターは、IL-N7アダプターDNA(Qiagen社製)
上記工程(C)において、上流側末端及び/又は下流側末端にアダプターが付加されたcDNAを増幅・合成するために、アダプター用フォワードプライマーと、融合遺伝子用リバースプライマー群とを用いてPCRを行うか、あるいは、融合遺伝子用フォワードプライマー群と、アダプター用リバースプライマーとを用いてPCRを行うが、後述する本実施例において、その効果が実証されているため、アダプター用フォワードプライマーと、融合遺伝子用リバースプライマー群とを用いてPCRを行うことを好適に例示することができる。かかる融合遺伝子用リバースプライマー群は、Ensembl等の転写産物のデータベースを基に適宜設定することができ、具体的には、後述する実施例の表3に示すリバースプライマー群を挙げることができる。
アダプター用フォワードプライマーとしては、アダプターのアンチセンス鎖の一部又は全部とアニーリングする一本鎖のポリヌクレオチドであればよく、また、融合遺伝子用リバースプライマーとしては、工程(A)において選択した融合遺伝子のうち、下流側の遺伝子断片のcDNA(具体的には、後述する本実施例において、表1に示すもの)のセンス鎖の一部にアニーリングする一本鎖のポリヌクレオチドであればよく、また、融合遺伝子用フォワードプライマーとしては、工程(A)において選択した融合遺伝子のうち、上流側の遺伝子断片のcDNAのアンチセンス鎖の一部にアニーリングする一本鎖のポリヌクレオチドであればよく、また、アダプター用リバースプライマーとしては、アダプターのセンス鎖の一部又は全部とアニーリングする一本鎖のポリヌクレオチドであればよい。これらプライマーの長さとしては、例えば、10ヌクレオチド以上(好ましくは13、16、20、23、26、又は30ヌクレオチド以上)であり、100ヌクレオチド以下(好ましくは90、80、70、60、50、又は40ヌクレオチド以下)である。
上記アダプターの長さとしては、例えば、10~50ヌクレオチドの範囲内(例えば、10~50ヌクレオチド、20~50ヌクレオチド、30~50ヌクレオチド、40~50ヌクレオチド、10~40ヌクレオチド、10~30ヌクレオチド、10~20ヌクレオチド、20~40ヌクレオチド、20~30ヌクレオチド)である。なお、本明細書において、mRNAのヌクレオチド配列は、配列番号2、配列番号22、及び配列番号25のヌクレオチド配列中の「t(チミン残基)」を「u(ウラシル残基)」として適用する。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
1.がん患者におけるMGEA5-RET融合遺伝子の同定
県立静岡がんセンターで手術により摘出したがん組織4000症例から全RNAを調製し、cDNAを合成した後、次世代シーケンサー(IonProton[サーモフィッシャーサイエンティフィック社製])を用い、カスタムパネルであるHOPE fusion panel ver.1(文献「Biomedical Research(Tokyo) 37 (1) 51-62, 2016」参照)を使用し融合遺伝子の検出を行った。このパネルは、発明者らが独自に開発したものであり、具体的には、報告のある409種類の融合遺伝子のmRNAから得られたcDNAを標的として、5’パートナー遺伝子(すなわち、上流側の遺伝子)断片と3’パートナー遺伝子(すなわち、下流側の遺伝子)断片のブレイクポイントをはさむ約100~300塩基長の領域を増幅可能なプライマーセットや、上記409種類の融合遺伝子を構成する203種類の遺伝子について、発現していることを確認するためのプライマーセットを含むものである。さらに、上記パネルには、肺がんで報告のある融合遺伝子の3’パートナー遺伝子であるRET遺伝子に関して、3’/5’インバランスアッセイのためのプライマーセットが含まれている。融合遺伝子の3’パートナー遺伝子は、その5’領域部分(すなわち、上流側の遺伝子領域)が欠損しているため、5’領域よりも3’領域(すなわち、下流側の遺伝子領域)のリード数が増加する。上記3’/5’インバランスアッセイは、融合遺伝子を構成する一方の遺伝子について、5’領域と3’領域のリード数の違いを利用し、新規融合遺伝子を推定するアッセイである(文献「J Exp Clin Cancer Res. 2018 Mar 27; 37(1):68. doi: 10.1186/s13046-018-0735-1.」参照)。
がん組織4000症例について、RET遺伝子の3’/5’インバランススコア(=[3’領域のリード数]-[5’領域のリード数])÷総リード数)値を算出し、0.045の閾値を超えるものを指標にスクリーニングした結果、14種類の症例が同定された。これら14種類の症例のうち、5症例については、既存の融合遺伝子であるKIF5B-RET及びCCDC6-RETが検出された。一方、残りの9症例については、HOPE fusion panel ver.1のパネルでは融合遺伝子が検出されなかったため、HOPE fusion panel ver.3のパネルと、QIAseqTargeted RNAscan Panel Kit(Qiagen社製)とを用いて融合遺伝子のcDNAの増幅を行い、次世代シーケンサー(MiSeq[イルミナ社製])と解析ソフト(Biomedical Genomics Workbench;Qiagen社製)を用いて融合遺伝子の検出を行ったところ、大腸がん患者である症例#1について、新規融合遺伝子であるMGEA5-RETが同定された。上記HOPE fusion panel ver.3のパネルは、具体的には、以下の手順に従って作製した。まず、がんの体細胞変異を集めた公共データベースであるCOSMIC(Catalogue ofSomatic Mutations in Cancer)バージョン81のデータ中に存在する、818568種類の融合遺伝子の情報が登録されたデータファイルの中から、1)Fusion IDが付与されていない融合遺伝子(すなわち、具体的なDNAの配列が明らかとなっていない融合遺伝子)、2)培養細胞中に存在する融合遺伝子、及び3)複雑な融合遺伝子(具体的には、3以上の遺伝子が融合した融合遺伝子、融合部位が2以上ある融合遺伝子、染色体上の位置が不明確な融合遺伝子等)の1)~3)の融合遺伝子を除き、174種類の遺伝子に関する約700(699)種類の融合遺伝子群を選抜した。表2には、選抜した融合遺伝子群それぞれについて、3’パートナー遺伝子(すなわち、下流側の遺伝子)断片に関する情報を示す。例えば、表2の番号1の「ABL1{ENST00000318560}:r.461_5766」は、ABL1遺伝子のcDNAの461~5766番目のヌクレオチド残基が、融合遺伝子における下流側の遺伝子断片であり、461番目のヌクレオチド残基において、上流側の遺伝子断片と融合していることを意味する。表2に示す699種類の下流側の遺伝子断片(遺伝子のcDNA断片)にアニーリングし、かつ融合部位を増幅できるリバースプライマー群(Qiagen社製)(表3参照)と、融合遺伝子の上流側末端に付加されたIL-N7アダプターDNA(Qiagen社製)にアニーリングするフォワードプライマーを混合し、HOPEfusion panel ver.3のパネルとした。HOPE fusion panel ver.3のパネルを用いると、上流側の遺伝子が新規の融合遺伝子を検出することが可能となる。なお、上記2)の融合遺伝子を除いたのは、培養細胞のインビトロでの継代により融合遺伝子が生じた可能性(アーチファクトの可能性)が考えられたためである。
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2.MGEA5-RET融合遺伝子のcDNAの同定
MGEA5-RET融合遺伝子のcDNAを作製するために、まず、上記症例#1の全RNAを鋳型として、PrimeScrip II 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ社製)を用いて逆転写反応を行い、1本鎖cDNAを作製した。具体的には、上記症例#1の大腸がん組織から定法により得られた1μLの全RNA(0.01ng/μL)、1μLのオリゴ(dT)プライマー、1μLのdNTPMixture、及び7μLのRNaseフリー水を混合し、65℃で5分間加熱処理後、氷冷し、4μLの5×PrimeScriptBuffer、0.5μLのRNaseインヒビター、1.0μLのPrimeScriptIIRtase、及び4.5μLのRNaseフリー水を加え、42℃で60分間インキュベートした後、95℃で5分間加熱処理し、氷冷した。
次に、作製した1本鎖cDNAを鋳型として、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRを行い、MGEA5-RET遺伝子の2本鎖cDNAの作製・増幅を行った。具体的には、0.5μLの作製した1本鎖cDNA、10μLの5×PrimeSTAR GXL Buffer、4μLのdNTP Mixture、0.5μLのMGRET_Fプライマー(配列番号4のヌクレオチド配列からなる1本鎖DNA)、0.5μLのMGRET_Rプライマー(配列番号5のヌクレオチド配列からなる1本鎖DNA)、1μLのPrimeSTAR GXL DNA Polymerase、及び33.5μLのRNaseフリー水を混合した後、98℃で10秒間、60℃で15秒間、及び68℃で4分間を35サイクル;その後、68℃で10分間を1サイクル;の条件でPCRを行った後、PCR産物を1.0%アガロースゲル電気泳動により分離した。
その結果、4kbp~5kbpのサイズマーカーの位置に、DNAのバンドが検出された(図1のレーン1参照)。上記MGRET_Fプライマー及びMGRET_Rプライマーは、それぞれMGEA5遺伝子のmRNAの5’領域(具体的には、配列番号22の84番目~109番目のヌクレオチド残基の相補鎖)、及びRET遺伝子のmRNAの3’領域(具体的には、配列番号25の4131~4158番目のヌクレオチド残基)にアニーリングするプライマーであり、これらのプライマーセットでDNAが増幅されたことを示す上記結果は、MGEA5遺伝子の5’領域と、RET遺伝子の3’領域とが融合していることを示している。
次に、上記MGRET_Fプライマー及びMGRET_Rプライマーにより増幅されたPCR産物を鋳型として、2回目のPCRを行った。具体的には、0.5μLのPCR産物、10μLの5×PrimeSTAR GXL Buffer、4μLのdNTP Mixture、0.5μLのMGRET-NEST_Fプライマー(配列番号6のヌクレオチド配列からなる1本鎖DNA)、0.5μLのMGRET-NEST_Rプライマー(配列番号7のヌクレオチド配列からなる1本鎖DNA)、1μLのPrimeSTAR GXL DNA Polymerase、及び33.5μLのRNaseフリー水を混合した後、98℃で10秒間、60℃で15秒間、及び68℃で3分間を35サイクル;その後、68℃で10分間を1サイクル;の条件でPCRを行った後、PCR産物を1.0%%アガロースゲル電気泳動により分離した。3kbp~4kbpのサイズマーカーの位置に、目的のDNAのバンドを確認した後(図1の2レーン参照)、かかるバンドを切り出し、QIAEx II Gel Extraction kit(キアゲン社製)を用いてDNAを精製し、20μLの滅菌水溶液中に回収した。
回収したPCR産物を、Mighty TA-cloning Reagent Set for PrimeSTAR (タカラバイオ社)を用いて、大腸菌クローニングベクターに組み込んだ。具体的には、1μLの回収したPCR産物溶液、1μLの10×Buffer、0.5μLのdATP溶液、及び0.5μLのA-overhanging enzymeを混合し、65℃で10分間インキュベートし、PCR産物の3’末端にアデノシン(dA)を付加させた。次に、1μLのdAを付加したPCR産物、1μLのクローニングベクター(pMD20-T-vector)、3μLの滅菌水、及び5μLのligation Mighty Mixを混合し、16℃で30分間インキュベートし、ライゲーション反応を行った。その後、全量を100μLの大腸菌コンピテントセル(Competent Quick DH5a、東洋紡社製)に加え、氷上で1時間インキュベートし、42℃で40秒間、保温した後、氷上に移し、形質転換を行った。その後、選択薬剤であるアンピシリンを含むLB寒天プレートに塗布し、37℃で16時間インキュベートした。寒天プレート上に出現したコロニーをピックアップし、アンピシリンを含むLB液体培地で培養した後、アルカリ法によるミニプレップを行い、大腸菌からプラスミドDNAを回収した。制限酵素を用いて目的とするPCR産物(遺伝子)を含むプラスミドの存在を確認した大腸菌株について、アンピシリンを含む50mLのLB培地中で、37℃で一晩培養し、集菌後、HiSpeed Plasmid Midi Kit(キアゲン社製)を用いてプラスミドDNAを精製した。その後、表4に示す14種類のプライマーを用いて、サンガー法によるシーケンシングを行ったところ、MGEA5遺伝子のcDNAの5’領域(具体的には、配列番号23の1~2175番目のヌクレオチド残基)と、RET遺伝子のcDNAの3’領域(具体的には、配列番号26の2137~3345番目のヌクレオチド残基)とが融合したMGEA5-RET融合遺伝子のcDNA(具体的には、配列番号3のヌクレオチド配列からなるcDNA)を同定した。かかるMGEA5-RET遺伝子のcDNAは、配列番号2のヌクレオチド配列からなる、MGEA5-RET遺伝子のmRNAから生成され、MGEA5のN末端領域(具体的には、配列番号24の1~725番目のアミノ酸残基)と、RETのC末端領域(具体的には、配列番号27の713~1114番目のアミノ酸残基)とが融合したMGEA5-RET融合タンパク質(具体的には、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質)をコードすることが確認された。
Figure 0007410480000057
なお、M13 primer RV、及びM13 primer M4は、クローニングベクター(pMD20-T-vector)のクローニングサイトの両端にアニーリングするプライマーである。
3.MGEA5-RET融合遺伝子におけるブレイクポイントの特定
MGEA5-RET融合遺伝子のcDNAのヌクレオチド配列情報から、MGEA5遺伝子のエクソン12の3’末端と、RET遺伝子のエクソン12の5’末端とが融合していることが明らかとなった。このため、MGEA5遺伝子のイントロン12中のDNAと、RET遺伝子のイントロン11中のDNAとが切断され、両DNA断片が融合した結果、MGEA5-RET融合遺伝子が生じていることが推測された。このことを確認するために、症例#1のゲノムDNAを鋳型として、AmpliTaq 360 DNA Polymerase(Thermo Fisher Scientific社製)を用いたPCRを行った。具体的には、上記症例#1の大腸がん組織から定法により得られた1μLのゲノムDNA、25μLのAmpliTaq Gold 360 Master Mix、1μLの360 GC Enhancer、及び22μLの滅菌水を混合し、表5に示すプライマーセットを用いたPCRを、95℃で2分間を1サイクル;その後、95℃で1分間、58℃で1分間、及び72℃で3分間を35サイクル;その後、72℃で6分間を1サイクル;の条件で行った。PCR産物を0.8%アガロースゲル電気泳動により分離した。
Figure 0007410480000058
その結果、レーン1~3においては、明確な1つのバンドを含むPCR産物が確認されなかったのに対して、レーン4~6においては、明確な1つのバンドを含むPCR産物が確認された(図2参照)。レーン4~6のうち、PCR産物の塩基長が最も短いレーン4のPCR産物(すなわち、MG-RET_CFプライマー及びMG-RET_4Rプライマーにより得られたPCR産物)は、シーケンシングが比較的容易であると考え、このPCR産物を、表5に示すプライマーを用いて、サンガー法によるシーケンシングを行った。その結果、MGEA5遺伝子のイントロン12及びRET遺伝子のイントロン11のそれぞれにブレイクポイントが存在し(表6及び7参照)、その結果生じた5’領域のMGEA5遺伝子と、3’領域のRET遺伝子とが、チミジンを介して融合していることが明らかとなった(表8参照)。
Figure 0007410480000059
表中の四角で囲ったヌクレオチド配列は、MGEA5遺伝子のエクソン12を示し、それ以外のヌクレオチド配列は、MGEA5遺伝子のイントロン12を示す。また、2つの下線で示したヌクレオチド配列の相補配列には、5’末端から順に、それぞれMG-RET_1Fプライマー及びMG-RET_CFプライマーがアニーリングする。また、矢印(↓)はブレイクポイントを示す。
Figure 0007410480000060
表中の四角で囲ったヌクレオチド配列は、RET遺伝子のエクソン12を示し、それ以外のヌクレオチド配列は、RET遺伝子のイントロン11を示す。また、6つの下線で示したヌクレオチド配列には、5’末端から順に、それぞれMG-RET_1Rプライマー、MG-RET_2Rプライマー、MG-RET_3Rプライマー、MG-RET_4Rプライマー、MG-RET_5Rプライマー、及びMG-RET_6Rプライマーがアニーリングする。また、矢印(↓)はブレイクポイントを示す。
Figure 0007410480000061
表中の1重下線で示したヌクレオチド配列は、5’領域のMGEA5遺伝子のヌクレオチド配列(具体的には、配列番号36の1~852番目のヌクレオチド残基)を示す。また表中の2重下線で示したヌクレオチド配列は、3’領域のRET遺伝子のヌクレオチド配列(具体的には、配列番号37の685~1995番目のヌクレオチド残基)を示す。小文字のT(t)は、5’領域のMGEA5遺伝子と3’領域のRET遺伝子の間に挿入されたチミジンを示す。
4.がん患者における、MGEA5-RET融合遺伝子以外の融合遺伝子の同定
様々ながん(具体的には、大腸がん、肺がん、胃がん、縦隔腫瘍[例えば、胸腺がん]、膵臓がん、頭頸部がん)患者から得られたがん組織試料について、実施例1と同様に、HOPE fusion panelver.3のパネルを用いて解析を行った結果、MGEA5-RET融合遺伝子以外にも、37種類の新規融合タンパク質(TBC1D5-LPP融合タンパク質、ACER1-MLLT1融合タンパク質、NAB2-STAT6融合タンパク質、POU2F1-MAML2融合タンパク質、TMEM41B-FUS融合タンパク質、ZDHHC21-FOXO1融合タンパク質、LACAT1-SEPT9融合タンパク質、EIF3K-ACTN4融合タンパク質、SLC12A2-RET融合タンパク質、GSK3B-GPHN融合タンパク質、IL6ST-FOXO1融合タンパク質、PPP1CB-ALK融合タンパク質、RNF40-CUTA融合タンパク質、(SEPT5-GP1BB)-SEpt5融合タンパク質、PRIM2-ACTB融合タンパク質、AZIN1-MLLT3融合タンパク質、RAP1B-HMGA2融合タンパク質、EZR-MLLT4融合タンパク質、OGT-AFF1融合タンパク質、RPSAP52-HMGA2融合タンパク質、BCL11B-LOC105370659融合タンパク質、LOC101928865-GAB2融合タンパク質、AQP10-ATP8B2融合タンパク質、ARMC2-FOXO3融合タンパク質、CBL-MAML2融合タンパク質、PRKCQ-PICALM融合タンパク質、FGF1-PRKAR2A融合タンパク質、SLC44A1-BRAF融合タンパク質、SMURF1-FOXO1融合タンパク質、TCAF1-BRAF融合タンパク質、CCNC-MLLT10融合タンパク質、PPP1R21-ALK融合タンパク質、LOC107986457-ARHGAP26融合タンパク質、SPTBN1-ALK融合タンパク質、MKRN2-PPARG融合タンパク質、PHLDB2-JAK2融合タンパク質、及びSMARCA2-NFIB融合タンパク質)をコードする新規融合遺伝子が同定された(表9参照)。なお、NAB2-STAT6融合遺伝子には、3’領域のSTAT6遺伝子断片の長さが異なる2種類の融合遺伝子が同定され、AQP10-ATP8B2融合遺伝子には、5’領域のAQP10遺伝子断片の長さが異なる2種類の融合遺伝子が同定され、TCAF1-BRAF融合遺伝子には、5’領域のTCAF1遺伝子断片の長さと、3’領域のBRAF遺伝子断片の長さとの組合せが異なる3種類の融合遺伝子が同定された(表9参照)。
Figure 0007410480000062
Figure 0007410480000063
Figure 0007410480000064
本発明は、がんの個別化医療に資するものである。

Claims (8)

  1. 以下の工程(a)を含むことを特徴とするがんにおける融合遺伝子の検出方法。
    (a)被験者から採取された生体試料中のMGEA5-RET融合タンパク質、又は該融合タンパク質をコードするゲノムDNA、mRNA、若しくはcDNAを検出する工程
  2. i)MGEA5-RET融合タンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
    (ii)MGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNAが、配列番号38に示されるヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、
    (iii)MGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNAが、配列番号2に示されるヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、
    (iv)MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAが、配列番号3に示されるヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
  3. 生体試料におけるMGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセット、又は前記ゲノムDNAにハイブリダイズするプローブを含む、がんにおける融合遺伝子の検出用キット
  4. 生体試料におけるMGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズするリバースプライマー又はプローブを含む、がんにおける融合遺伝子の検出用キット
  5. MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセット、又は前記cDNAにハイブリダイズするプローブを含む、がんにおける融合遺伝子の検出用キット
  6. i)MGEA5-RET融合タンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
    (ii)MGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセットが、配列番号38に示されるヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む該ゲノムDNAにおいて、配列番号38の852~854番目に相当するヌクレオチド残基を増幅するプライマーセットであり、
    (iii)MGEA5-RET融合タンパク質をコードするゲノムDNAにハイブリダイズするプローブが、配列番号38に示されるヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む該ゲノムDNAにおいて、配列番号38の852~854番目に相当するヌクレオチド残基にハイブリダイズするプローブであり、
    (iv)MGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズするリバースプライマーが、配列番号2に示されるヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む該mRNAにおいて、配列番号2の2618~2619番目に相当するヌクレオチド残基を逆転写するリバースプライマーであり、
    (v)MGEA5-RET融合タンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズするプローブが、配列番号2に示されるヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む該mRNAにおいて、配列番号2の2618~2619番目に相当するヌクレオチド残基にハイブリダイズするプローブであり、
    (vi)MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAにアニーリングするフォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマーセットが、配列番号3に示されるヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む該cDNAにおいて、配列番号3の2175~2176番目に相当するヌクレオチド残基を増幅するプライマーセットであり、
    (vii)MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAにハイブリダイズするプローブが、配列番号3に示されるヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列を含む該cDNAにおいて、配列番号3の2175~2176番目に相当するヌクレオチド残基にハイブリダイズするプローブであることを特徴とする、請求項3~5のいずれかに記載の検出用キット。
  7. MGEA5-RET融合タンパク質若しくはその融合部位を含む断片、又は、それらをコードするcDNA
  8. i)MGEA5-RET融合タンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、分離されたタンパク質か、あるいは組換えタンパク質であり、MGEA5-RET融合タンパク質の融合部位を含む断片が、配列番号1の725~726番目に相当するアミノ酸残基を融合部位として含み、
    (ii)MGEA5-RET融合タンパク質をコードするcDNAが、配列番号3のヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むcDNAであり、MGEA5-RET融合タンパク質の融合部位を含む断片をコードするcDNAが、配列番号3の2175~2176番目に相当するヌクレオチド残基を融合部位として含むことを特徴とする、
    請求項7に記載の融合タンパク質若しくはその融合部位を含む断片、又は、それらをコードするcDNA。
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Biomedical Research,2016年,Vol.37, No.1,p.51-62
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