図1は本発明の実施の一形態である装着型支援ロボット装置(パワーアシストスーツともいう)901を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、図2は装着型支援ロボット装置901の装着状態を示す側面図であり、図3は装着型支援ロボット装置901の装着状態を示す背面図であり、図4は装着型支援ロボット装置901の背後から見た斜視図である。図1~図4は、装着者10が、体幹11とともに左右の大腿12を含む両下肢を揃えて直立した姿勢を示す。左右とは、前述のとおり、装着者10における方向を言い、したがって、図1における右、左である。装着型支援ロボット装置901は、それを装着した装着者10の正中矢状面13に関して左右にほぼ面対称に構成され、本件明細書、図面中、左右の構成要素の参照符は、左右を個別的に示すために数字に添え字L、Rをそれぞれ付し、総括的に、または連結した構成を示すために、および左または右を記載して数字だけで示す。
これらの図面を参照して、装着型支援ロボット装置901は、左右一対の剛性のL形の支持具909(後述の図5などを参照)と、装着者10の腰5で荷重を受ける外囲保持体930と、左右の肩ベルト921を有する上体保持具920と、装着者10の左右の各大腿12に装着されて保持される大腿保持具40と、体幹下部から大腿12にわたって左右両側方で、上下に延びてそれぞれ配置される一対の下アーム80と、装着者10の体幹下部の左右両側方に配置される一対の駆動源60によって各下アーム80の上端部を駆動して左右の各大腿12に支援力モーメントをそれぞれ与えるアシスト駆動機構903とを含む。
図5は支持具909を斜め前方から見た斜視図であり、図6は装着型支援ロボット装置901の斜め前方から見た分解斜視図であり、図7は装着型支援ロボット装置901の斜め後方から見た分解斜視図である。左右の各支持具909は、横に延びる横部材918と、装着者10の背側で横部材918の後端部から上方に延びる縦部材919とを有する。外囲保持体930には、支持具909が取付けられて腰5を外囲する。上体保持具920を構成する左右の肩ベルト921の端部は、各縦部材919に実質的にそれぞれ取付けられ、支持具909と外囲保持体930とは、相対的な変位が阻止されて相互に固定されて構成される。この実施の形態では、上体保持具920の肩ベルト921の一端部が、外囲保持体930に固定され、他端部が縦部材919に固定される。外囲保持体930は、装着者10の背後で、可撓性のある扁平なシート状の連結部材957が左右一対の支持具909を連続するようにつなぎ、腰の上部を環状に外囲する。連結部材957は、外囲保持体930の一部分を構成する。外囲保持体930は肩ベルト921間を連結する胸ベルト922を備え、連結具26によって解除でき、装着者に着脱可能であり、その長さを調整可能に構成される。外囲保持体930はまた、前腰ベルト933を備え、この前腰ベルト933は装着者10の腰5を外囲した状態を連結具35によって解除でき、装着者に着脱可能であり、その長さを調整可能に構成される。
大腿保持具40は、装着者10の左右の各大腿12に装着されて保持される。一対の下アーム80は、体幹11の下部から大腿12にわたって左右両側方で、上下に延びてそれぞれ配置される。各下アーム80の下端部は、大腿保持具40にそれぞれ連結される。
アシスト駆動機構903は、装着者10の体幹11の下部の左右両側方の各支持具909の横部材918の外側部(図6、図7の斜め左右外方)にそれぞれ取付けられる。アシスト駆動機構903の左右一対の一対の駆動源60は、左右方向の軸線61まわりに駆動トルクを発生して各下アーム80の上端部を駆動する。各駆動源60の駆動トルクによって、横部材918と左右の各大腿12との間に支援力モーメントをそれぞれ与える。
ヒップベルト946は、装着者10の殿部6の下部を弧状に弯曲して覆い、両端部が、外囲保持体930の左右の各側部に取付けられ、実施の他の形態では、支持具909の左右の各横部材918に、取付けられる。これによって、ヒップベルト946は、外囲保持体930が体幹11の上方に変位することを防ぐ。ヒップベルト946は、殿部6の背側の膨らみの下部、すなわち大殿筋の下部に位置する。ヒップベルト946の両端部は、外囲保持体930の左右の各側部に取付けられ、実施の他の形態では、支持具909の左右の各横部材918に取付けられる。ヒップベルト946は、たとえば、可撓性の材料から成ってもよく、そうすれば、ねじれることができるので、外囲保持体930または支持具909の横部材918にリジッドな固定結合でもよいが、または実施の他の形態では、角変位可能なピン結合でもよい。
図8は、装着型支援ロボット装置901による装着者10のアシスト状態を示す図である。ヒップベルト946は、装着者10が荷物86を図8(1)のように持ち上げるとき、パワーアシストスーツ、特に、骨盤よりも上方にある腰ベルトということもできる外囲保持体930がずり上がるのを防ぐ。図8(1)の持ち上げだけでなく、図8(2)のように持ち下げ、および中腰のなどの作業において、装着者10が腰5を曲げて装着者10の背がたとえばほぼ水平な横になった脊柱に沿って、すなわち、身体のほぼ水平な横になった体幹の長手方向に沿って、上方に凸の弧状になり、したがって、装着者10の肩7、すなわち肩峰または鎖骨の上方の部分に、上体保持具920の肩ベルト921の下面が当接することになったとしても、たとえ、外囲保持体930が上方に、すなわち、装着者10の頭寄りに、引っ張られる力が作用しても、ヒップベルト946は、外囲保持体930が腰5、すなわち骨盤の寛骨の上部から離間して頭寄りに上方に変位することを防ぎ、または変位を抑える。こうして、たとえば、装着者10が荷物86を持ち上げるとき、ヒップベルト946は、持ち上げ時の大腿12の屈曲に応じて腰ベルトのような外囲保持体930を骨盤上に押し付けて、荷重を骨盤で受けさせる。ヒップベルト946は、腰ベルトとして働く外囲保持体930とともに備えられ、尻を引き起こすようにスムーズに駆動源60の支援力モーメントによるアシスト力を上体11の腰5、したがって下肢である大腿12に伝えるので、なめらかにアシストできる。
肩ベルト921の長さは、装着者10が装着型支援ロボット装置901を装着して直立した姿勢では、装着者10の肩7の上部から肩ベルト921の下面までの間に、片手の指1~3本、たとえば、2本を上下に重ねた高さを有する隙間が存在するように定められる。肩ベルト921の長さを調整可能な長さ調整具が備えられる構成では、前記隙間が得られるように、設定される。したがって、肩7に装着型支援ロボット装置の支持具909、外囲保持体930などを含む、いわゆるパワーアシストスーツ本体の重さが作用せず、これらの荷重は腰5で支えられる。そのため、装着者10に荷重の負担による疲労感を軽減
して長時間にわたる作業、歩行などの継続を可能にすることが確実になる。
外囲保持体930は、各支持具909の横部材918および縦部材919を覆うとともに、各支持具909の縦部材919間を連結する連結部材957を有し、扁平な可撓性シート状体から成り、このシート状体は、支持具909よりも装着者10側に配置される弾発性を有するクッション材、ならびに支持具909およびクッション材を覆うメッシュ状カバーを含み、前述の内骨格型の構成を実現する。
外囲保持体930の縦部材919間を連結する連結部材957には、透孔948が形成される。装着者10の背の連結部材957に設けられる軸流ファン949は、透孔948に臨み、装着者10側の内方に外気を取り入れる。2次電池954は、軸流ファン949を電力駆動する。軸流ファン949は、風量を、強・中・弱に切り替られるようにできる。たとえば、ファン949の駆動電力は、パワーアシストスーツ901のアシスト駆動機構903における電動モータ64、その制御装置953などを駆動する2次電池954であるバッテリと兼用でき、最大風量が約2~3[m3/min]で、最大静圧は170~250[Pa]で外形は縦横約92mm×92mm×厚25mmで約170gと軽量コンパクトで風量風圧が大きい。装着者が汗をかいても、ファンを防水タイプとすることによって耐久性を確保できる。
アシスト駆動機構903は、装着者10による持ち上げ作業での図8(1)の持ち上げ力のアシスト、図8(2)の持ち下げ作業時の持ち下げブレーキアシスト、中腰姿勢を保持するために上体の質量を支えるアシストのうちの少なくとも1つを行なう。さらに、アシスト駆動機構903は、歩行のアシストも行なう。
駆動源60は、電動モータ64の出力の減速比が1/100~1/50程度の減速機66を備え、大腿12に支援力モーメントを与える。これによって、バックドライアブルな電動モータ駆動方式を実現できる。そのため、装着者10側から駆動源60を動かすことができ、駆動電源954がなくなっても装着者10はアシストスーツ901を自分の力で動かすことができる安全である。
装着型支援ロボット装置901を動かすための制御装置953は、バッテリ954によって電力駆動される電動モータ64を含む駆動源60と、電動モータ64に内臓された角度センサ67と、装着者10の腰部5などに取付けた加速度センサ103、115と、手袋190の内側または外側に取り付けたタッチスイッチセンサ191~194(図19、図20)とを用いて、図8に関連して前述した持ち上げ力のアシスト、持ち下げ力のブレーキアシスト、中腰作業での中腰姿勢の保持のアシスト、および歩行のアシストのための制御演算を行なう。
本発明は、前述の図1~図8の実施の形態を、次に述べる図9~図78の実施の各形態の一部分を改変して適用して、または図9~図78の実施の各形態にそのまま適用して、実施できる。図1~図78の実施の各形態における一部分を採り出して組み合わせて装着型支援ロボット装置を実現できる。
図9は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置1を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、図10は装着型支援ロボット装置1の装着状態を示す側面図であり、図11は装着型支援ロボット装置1の装着状態を示す背面図であり、図12は装着型支援ロボット装置1の一部の斜視図である。これらの図面を参照して、装着型支援ロボット装置1は、装着者10に装着されて保持される保持装置2と、保持装置に設けられ装着者10の体幹11と左右の各大腿12との間に支援力モーメントをそれぞれ与えるアシスト駆動機構3とを有する。図9~図11は、装着者10が、体幹11とともに左右の大腿12を含む両下肢を揃えて直立した姿勢を示す。左右とは、前述のとおり、装着者10における方向を言い、したがって、図9における右、左である。
保持装置2は、装着者10の胸郭、鎖骨、肩甲骨付近の体幹上部14に装着されて保持される体幹上部保持具20と、腹、腰の骨盤、股関節付近の体幹下部15に装着されて保持される腰カフと呼ぶことができる体幹下部保持具30と、大腿12に装着されて保持される大腿保持具40とを含む。
アシスト駆動機構3は、体幹下部15の左右両側方にそれぞれ配置されて左右方向の軸線61まわりに駆動トルクを発生する一対の駆動源60と、体幹上部14の左右両側方で上下に延びてそれぞれ配置される一対の上アーム70と、上アーム70の上端部と体幹上部保持具20とを左右方向の軸線まわりに角変位自在にそれぞれ連結する第1受動回転軸91と、体幹下部15から大腿12にわたって左右両側方で上下に延びてそれぞれ配置される一対の下アーム80と、各下アーム80の下端部と大腿保持具40とを左右方向の軸線まわりに角変位自在にそれぞれ連結する第2受動回転軸92と、体幹下部保持具30に上アーム70の長手方向途中位置を取り付ける取り付け手段94とを有する。
体幹上部保持具20は、装着者10の鎖骨、肩甲骨付近に逆U字状に配置される左右一対の肩ベルト21と、胸郭を囲んで腋窩から斜め下方に背に延びる胸カフと呼ぶことができる胸ベルト22と、左右一対のほぼ上下に延びる背ベルト23とを有する。肩ベルト21の胸における一端部は、胸ベルト22に、左右の間隔をあけて固定される。肩ベルト21は、背において装着者10に接触するために交差保持部材24によってX字状に交差されて保持され、その各他端部は、固定位置25で胸ベルト22の背における各端部と、背ベルト23の各上端部とに固定される。肩ベルト21は、装着者10が着脱し易いように、背において交差せずに平行に設けられてもよい。
胸ベルト22は、胸郭の上部を囲み、胸骨体、みずおち付近で、連結具26によって左右に参照符22L、22Rで示されるように分離、連結して着脱自在である。胸ベルト22は、力学的には平板状の当て板でもよい。装着者10に違和感を抱かせないため、および親和性を高めるため、装着者10に或る程度の弾発力で接触して、柔らかく支援力モーメントを伝えるが、ばね定数が小さ過ぎると変形しすぎて支援力モーメントを伝えられないか、伝わるのに時間がかかり過ぎる。前記親和性を高めるとは、胸ベルト22の装着時、装着者10に違和感を与えないようにすることであり、胸ベルト22の剛性が高すぎて、堅く感じることがないようにすることである。
また胸ベルト22と装着者10との接触面積を増やすと、装着者10への支援力モーメントによる単位面積あたりの圧力が小さくなるが、装着者10の前表面を覆う面積が増えるので、汗をかいたりし易くなる。胸ベルト22は、これらの機能と快適性とを両立するように構成される。
体幹上部保持具20は、装着し易いように、胸ベルト22L、22Rが連結具26によって左右対称に分割される。一方の胸ベルト22Lは、胸郭の上部の周囲を約1/4~3/8を覆う範囲で、胸郭の側部の第1受動回転軸91の取り付け位置から前部の1/4~1/2程度までと、側部の第1受動回転軸91の取り付け位置から後部の1/4とを覆い、円筒の一部を成し、他方の胸ベルト22Rも同様に構成される。各胸ベルト22L、22Rが胸郭の前部の約1/4~3/8を覆うことによって、特に大きな支援力モーメントを要する重い荷物の持ち上げアシスト時の単位面積当たりの面圧力を下げることができ、押圧感が強くなりすぎるのを防ぎつつ、覆う面積が多すぎることによる体幹上部保持具20の装着しにくくなるのを防ぐ。アシストを支援ともいうことがある。胸ベルト22は、たとえば、上下の幅30~60mmであり、厚さ5mmの合成樹脂製である。胸ベルト22には、メッシュ状のカバーで覆われた弾発性のある緩衝のためのクッション材が胸に臨んで設けられる。このメッシュ状のカバーは、発汗時の通気性を確保する。
胸ベルト22は、支援力モーメントを柔らかく伝達するために、或る程度の剛性と柔軟性がある合成樹脂製とし、この樹脂材にメッシュ付のクッション材を付加した材料によって、装着性と支援力モーメントの伝達性を高めて低価格化にすることができる。胸部は、大腿12より柔らかいので、胸部のカフである胸ベルト22は、大腿12のカフである保持片43(図10、図15)の硬さでは、硬すぎ、したがって、前記或る程度の剛性と柔軟性とは、たとえば、幅30~60mm程度で、厚さ0.5~2mm程度のアルミニウム板と同程度の剛性と柔軟性である。胸ベルト22は、この剛性と柔軟性があり、アルミニウム板単独より軽量で同程度の強度を有する複合樹脂材として、アルミニウムと合成樹脂との複合材料、または炭素繊維と合成樹脂との複合材料であってもよい。
鞣された革は、伸縮性が小さく、堅牢であるが、支援力モーメントの伝達性からは、まだ柔軟性がありすぎるので、変形しやすい。その結果、装着しにくくなり、また支援力モーメントの伝達性に遅れが生じる。この問題を解決するために、本発明の胸ベルト22では、在来の皮革ソフトネス計測される値よりはもう少し剛性を高めた前述の合成樹脂材を用いる。
左右の肩ベルト21は、装着者10の肩に本件支援ロボット装置1の質量が作用しないようにするために、指が一本程度入る隙間がある程度がよく、したがって肩ベルト21は、腰ベルト33、腹ベルト34が、骨盤の上から下方へずれたとき、落下することを防ぐ働きを果たす。肩ベルト21は、省略されてもよい。
図13は体幹下部保持具30の水平断面図であり、図14は体幹下部保持具30の分解斜視図である。体幹下部保持具30は、体幹下部15を背の後部31から左右の側腹部付近の側部32までたとえば約1/2周にわたって囲む腰ベルト33と、腰ベルト33の両端部に連なって固定される腹ベルト34とを有し、全体が環状に形成される。腹ベルト34は、臍部(さいぶ)付近で、連結具35によって左右に参照符34L、34Rで示されるように分離、連結して着脱自在である。
体幹下部保持具30には、腰ベルト33の体幹下部15に臨んで保護具36が着脱自在に取り付けられる。保護具36は、弾発性のある緩衝のためのクッション材37をメッシュ状のカバー38で覆って構成され、腰ベルト33に沿って体幹下部15の周方向に延び、その腰ベルト33よりも上下に拡がった寸法形状を有する。クッション材37は、芯材を覆って補強されてもよい。保護具36は、腰ベルト33と腹ベルト34とが体幹下部15に相互のずれが生じないように締め付けられて保持された状態で、腰における快適な装着感を達成する。腰ベルト33と装着者10の腰との間に保護具36が存在することによって、腰ベルト33と腰とが直接接触することがなくなり、装着したときの違和感を軽減することができる。腰ベルト33、腹ベルト34はいずれも、支援力モーメント自体を伝達しないので、大きな剛性は必要ないが、腰ベルト33には、後述の制御ボックス53、電池ボックス54が取り付けられるので、これらを支える程度の剛性を有する。
保護具36は、装着者10の腰と広い範囲で密着し、腰ベルト33を腰部に確実に固定することができる。カバー38は開口率の大きいメッシュ状であるので、通気性を向上し、暑さ対策が施され、発汗時も快適である。体幹下部保持具30は、骨盤付近に配置され、したがって、その骨盤の腸骨翼における左右方向の横に出っ張った腸骨稜の上部付近に乗るように配置されるので、骨盤付近に確実に引っかかり、体幹下部15から下方にずれることはなく、体幹下部15に確実に装着される。そのため、肩ベルト21が、装着者10の鎖骨、肩甲骨付近を圧迫せず、装着時の作業が快適となる。
図15は、大腿保持具40を示す分解斜視図である。左右の各大腿保持具40は、大腿12を全周にわたって囲む大腿カフと呼ぶことができるベルト本体41と、ベルト本体41の外周部に大腿12の外側である腓側から前へ、周方向の一部にわたって延びて固定片42によってベルト本体41に固定される保持片43とを有する。
ベルト本体41には、大腿12に臨んで、メッシュ状のカバーで覆われた弾発性のある緩衝のためのクッション材44が大腿12に臨んで設けられる。このメッシュ状のカバーは、発汗時の通気性を確保する。ベルト本体41は、前大腿の内側である脛側で、連結具45によって左右に分離、連結して着脱自在である。大腿12の第2受動回転軸92は、大腿12の前後方向中央付近の外側に設置され、大腿保持具40は、大腿12のできるだけ低い位置で、曲げた膝に接触しない位置に選ばれる。
ベルト本体41および保持片43は、胸ベルト22より柔軟性は少なくて剛性が高くて支援力モーメントを瞬時に伝えられる剛性と、或る程度の柔軟性がある合成樹脂材によって、あるいはまた、この樹脂材にメッシュ付のクッション材を付加した材料によって、さらにまた前記アルミニウム板にメッシュ付のクッション材を付加した材料を、大腿12の約1/4~1/2程度の前方部分に用いることによって、装着性と親和性とを高め低価格化することができる。ベルト本体41および保持片43の前記剛性と柔軟性とは、幅30~60mm程度で、厚さ2~5mm程度のアルミニウム板と同程度の剛性と柔軟性である。これによってベルト本体41および保持片43の剛性を強くして、重い荷物を持ち上げるとき大腿12の前部に、強い支援力モーメントをしっかりと伝えることができる。大腿12の後部には、歩行時の遊脚を振り上げる支援力モーメントが与えられるが、この歩行時の支援力モーメントは前記重い荷物を持ち上げるときに比べて小さいので、それほどの剛性は必要ない。
ベルト本体41は、環状でなくてもよく、大腿12の前後2枚の板でもよいが、装着者10との接触面積を或る程度大きくとるために、大腿12の外形状に近似した弯曲した板に形成してもよい。
保持片43は、大腿12の周囲を約1/4~1/2周にわたる範囲を覆い、たとえば、上下の幅30~60mmであり、厚さ5mmの合成樹脂製である。1/4~1/2周にすることによって、下アーム80から大腿12へ支援力モーメントを伝わりやすくする。
この実施の形態において、保持片43は、大腿12の外側部の第2受動回転軸92が取り付けられる位置付近から大腿12の前部の半分~前部の全てを覆い、円筒の一部分を成す。保持片43は、大腿12の前部を広い範囲にわたって覆うので、特に大きな支援力モーメントを要する重い荷物の持ち上げアシスト時の単位面積当たりの面圧力を下げることができ、押圧感が強くなりすぎるのを防ぎつつ、覆う面積が多すぎることによる大腿保持具40の装着しにくくなるのを防ぐ。保持片43の材料硬さ程度について、支援力モーメントを伝えるのには、力を伝えるための腰上方や腰下方や大腿の上下のアーム70、80と同程度に、充分硬い樹脂材とする。装着者10と接触する大腿12の個所であるカフの保持片43では、その内側には大腿12に臨んで親和性や汗対策に、メッシュ状のカバーを備えるクッション材44が取り付けられる。
連結具26,35、45は、接続、離脱のための操作が容易な構成を有し、たとえばプラスチックバックル、ワンタッチコネクタなどとして商業的に入手可能である。
図16は、アシスト駆動機構3の一部を示す断面図である。駆動源60は、軸線61まわりに回転する駆動軸62と、駆動軸62にその軸線61まわりにトルクを発生する駆動源本体63とを有する。駆動源本体63は、たとえば交流サーボモータなどによって実現される電動モータ64と、電動モータ64の出力軸65から駆動軸62へ回転速度を減速する減速機66とを有する。電動モータ64は、そのハウジングであるモータ本体68を有し、モータ本体68には、出力軸65に電磁力によってトルクを与える回転子などと、出力軸65、したがって駆動軸62の軸線61まわりの角度を検出する角度センサ67とが収納される。
減速機66では、出力軸65、駆動軸62の各回転速度をN65、N62とするとき、減速比N62/N65を1~1/100程度に、好ましくは1/50~1/100に選ぶ。これによって、摩擦が少なく伝達効率が良いので、装着者10側からの大きな力を必要とせずに、駆動源60を軽く回転させることができる。こうして、電動モータ64が回転して減速機66を介して駆動軸62からトルクが出力されるのとは逆に、駆動軸62側から、減速機66および電動モータ64を回転させることができる、いわゆるバックドライバブルな駆動系を実現できる。装着者10側から駆動源60を動かすことができ、駆動電源がなくなっても装着者10は装着型支援ロボット装置1を自分の力で動かすことができる安全な装置が実現される。減速機66は、たとえば波動歯車減速機、遊星減速機またはサイクロ減速機(登録商標)等であってもよい。
従来技術では、出力端にクラッチを用いたり、制御を行なうことによって、摩擦が大きい減速機でもバックドライバブルになるが、駆動電源がなくなるとバックドライバビリティを維持できないという問題がある。他の従来技術では、出力端に柔らかい回転ばねを付加することによって、バックドライバブルになるが、常時柔らかいままであり、瞬時に支援力モーメント、したがってアシスト力が必要なとき、支援力モーメントによる力をすぐに伝えられないという問題がある。本発明は、これらの従来技術の問題を解決する。
上アーム70は、上下の第1および第2の上アーム片71、72が、前後方向の軸線まわりに角変位自在である第3受動回転軸73を介して、連結されて構成される。第1上アーム片71の上端部は、第1受動回転軸91を介して体幹上部保持具20に連結される。第2上アーム片72の下端部は、駆動軸62に固定される。
上アーム70の長手方向途中位置である第2上アーム片72は、取り付け手段94によって、体幹下部保持具30における腰ベルト33の側部32に、少なくとも前後方向に相対的に変位しないように、連結、固定して取り付けられる。取り付け手段94は、上下方向に細長い取り付け孔93が形成されたベルト取り付け金具95と、第2上アーム片72とベルト取付け金具95との間に介在される上下方向の軸線を有する受動回転軸96と、取り付け孔93に挿通される水平面内でU字状ベルトから成る取り付け片97とを有する。取り付け片97の両遊端部は、ベルト取付け金具95の近傍で腰ベルト33の側部32に、接着、縫合などされて固定される。したがって、上下に延びる第2上アーム片72と腰ベルト33の前後方向に延びる側部32との各長手方向は、駆動軸62の軸線61に平行である仮想軸線61aまわりに90度ずれた配置で、第2上アーム片72と腰ベルト33の側部32とが取り付けられる。
上アーム70は、駆動源60の回転による駆動トルクを、体幹上部保持具20に効率よく伝える働きをする。下アーム80は、駆動源60の回転による駆動トルクを、大腿保持具40に効率よく伝える働きをする。腰ベルト33、腹ベルト34は、駆動源60の回転による駆動トルクを、体幹上部保持具20と大腿保持具40とに効率よく伝えるために副次的な働きをし、駆動源60が変位するのを防ぎ、駆動軸62の軸線61が左右方向に傾いたり、前後方向に傾いたりするのを防ぐ。腰ベルト33、腹ベルト34はまた、駆動軸62の軸線61を、装着者10の股関節中心を通る前記一直線にできるだけ一致させて、ずれないようにする働きをする。こうすることによって、体幹上部保持具20と大腿保持具40との各位置が上下に変位することを防ぐことができる。装着者は、腰を椎間関節によって曲げずに、体幹11を直立した姿勢で、歩行、持ち上げ、持ち下げ、中腰の各動作を行なう。腰ベルト33を腰骨の上に載せて固定し、すなわち、腰ベルト33が骨盤の腸骨翼における左右方向の横に出っ張る腸骨稜の上部付近に確実に引っかかる状態で、駆動軸62の軸線61が、装着者10の股関節中心を通る前記一直線に一致するように、下アーム80の長さが選ばれる。したがって、体幹下部保持具30は、体幹下部から下方にずれることはなく、体幹下部に確実に装着される。
体幹11が直立した姿勢における体幹上部保持具20と体幹11との相対的な位置は、装着者10が腰を曲げた姿勢になると、ずれることになり、また体幹11の椎間関節による曲げ中心位置と股関節中心の前記一直線の位置とがずれる。このずれは、駆動源60が回転すると、駆動軸62の軸線61の位置が体幹11に対して上下に動くので、腰ベルト33を含む体幹下部保持具30が、駆動源60の体幹11との相対的な位置を元に戻す。したがって、支援力モーメントが体幹11に効率よく与えられる装着状態に、自動的に戻る。
上アーム70の長さは、装着者10の寸法で決まり、力学的にはできるだけ長く選ばれる。第1受動回転軸91は、腋窩の下方付近で、腋窩接触しない、できるだけ高い位置に選ばれる。胸ベルト22は、胸骨体またはそれよりは上方で鎖骨より下方の範囲で胸郭を圧迫せずに、支援力モーメントを伝えやすい、あまり脂肪や筋肉がついていない部位に位置するように、肩ベルト21、背ベルト23などの寸法形状が選ばれる。
図17は、第3受動回転軸73を装着者10の外側方から見た断面図である。第1上アーム片71の下端部と第2上アーム片72の上端部は、フォーク状の突片75、76が相互に嵌め込まれ、無給油ブッシュ76を介してヒンジピン77のまわりに角変位自在に支承される。ヒンジピン77は、装着者10の前後方向の軸線を有し、その軸線方向に抜け止め用頭部87と止め輪88とによって、さらにヒンジピン77の側部に係止する止めねじ89によって、抜け止めされる。したがって、上アーム70は、第3受動回転軸73によって、前後方向の軸線まわりに角変位自在となり、体幹11を、腰椎を含む椎骨などによる椎間関節の働きによって、左右方向に傾けて曲げることができ、装着者10の姿勢に応じて円滑に支援力モーメントを作用することができる。第4受動回転軸83は、第3受動回転軸73と類似の構成を有する。
下アーム80は、上下の第1および第2の下アーム片81、82が、前後方向の軸線まわりに角変位自在である第4受動回転軸83を介して、連結されて構成される。第1下アーム片81の下端部は、第2受動回転軸92を介して大腿保持具40に連結される。第1下アーム片81の上端部は、駆動源本体63のモータ本体68に固定される。第4受動回転軸83は、図9の第3受動回転軸73と類似の構成を有する。したがって、下アーム80は、第4受動回転軸83によって、前後方向の軸線まわりに角変位自在であるので、股関節の働きによって、下肢を外転して開脚を円滑に行なうことができ、装着者の開脚の姿勢に応じて円滑に支援力モーメントを作用することができる。
再び図15を参照して、第2受動回転軸92は、第2下アーム片82の下端部に形成された軸受孔98に、保持片43に外方に立設された左右方向の軸線を有するピン99が挿通して構成される。ピン99は、第2下アーム片82のための抜け止め用頭部を有する。第1受動回転軸91も、第2受動回転軸92と類似の構成を有する。
第1~第4受動回転軸91,92;73、83によって、体幹11を前後、左右に傾けたとき、左右に開脚したときなどにおいて、大腿保持具40の位置が元の位置からずれず、装着者10の動きを束縛しなくて身体から離れもしないので、駆動源60と大腿保持具40間の長さ調整機構が不要となり、軽量化と低コスト化できる。すなわち、体幹11を前後に傾けたとき体幹上部保持具20は、胸ベルト22の取り付け位置に配置した第1受動回転軸91によって、また体幹11を左右に傾けたときは、駆動源60の上方に配置した第3受動回転軸73によって、体幹11の動作を妨げられない。左右に開脚したときは、駆動源60の下方に配置した第4受動回転軸83によって、また大腿12を前後に振り上げたときは、大腿保持具40の取り付け位置に配置した第2受動回転軸92によって、体幹11の動作を妨げられない。
再び図14を参照して、腰ベルト33の後部31には、縦断面がほぼL字状の取り付け部材50が設けられる。取り付け部材50は、後部31に固定される縦取り付け片51と、取り付け片51に連なって後方になるにつれて下方に傾斜したもう1つの斜め取り付け片52とを有する。縦取り付け片51には、駆動源60のための駆動制御手段100を収納する制御ボックス53が固定される。斜め取り付け片52には、駆動源60と駆動制御手段100などとに電力を供給する電池ボックス54が固定される。斜め取り付け片52は、前述のように傾斜しており、下方に大きく突出しないので、装着者10が椅子などに着座するときの支障にならない。
図18は、装着者10の後方から見た制御ボックス53の簡略化した縦断面図である。制御ボックス53には、駆動制御手段100のいわゆるマイコンボードである配線基板101が固定され、この配線基板101には、マイクロコンピュータによって実現される駆動制御のための処理回路113と、処理回路113に接続される加速度・角速度センサ103などとが搭載されて固定される。加速度・角速度センサ103は、装着者10の体幹11の腰の3次元の加速度、すなわち上下方向の加速度α1および前後方向の加速度α2、さらに左右方向の加速度α3をそれぞれ検出する。加速度・角速度センサ103は、加速度を検出するために、ばねで支持された可動体の移動距離を静電容量、ピエゾ効果などの電気信号の変化によって検出する構成を有してもよく、ジャイロも含む。加速度・角速度センサ103はまた、装着者10の体幹11における大腿腰の上下方向の軸線まわりの角速度ω1、前後方向の軸線まわりの角速度ω2、左右方向の軸線まわりの角速度ω3を検出する。
加速度・角速度センサ103としては、センサ素子の一方の電極である可動部と他方の電極である固定部との間の静電容量の変化を検出するセンサであってもよく、センサ素子の質量を有する可動部と固定部とをつなぐばね部に取り付けたピエゾ抵抗素子によって、ばね部の歪みの変化を検出するセンサなどであってもよい。
図19は、装着者10の左手16Lに装着される手袋装置190Lの一部の断面図である。手袋装置190の手袋の外面には、物体センサ191、192が設けられる。物体センサ191、192は、たとえば持ち上げ、持ち下げなどする対象である物体に接触したことを検出し、タッチスイッチと呼ばれる構成であってもよく、たとえば物体が接触することによる静電容量の変化を検出し、押された圧力による磁力片のばね力に抗する変位を検出し、または或る程度の荷重とストロークで接点がON/OFFして検出動作する構成などであってもよい。本発明の実施の他の形態では、物体センサ191、192は、たとえば歪センサなどのように、装着者10が持ち上げ、持ち下げなどする物体の質量を表わす電気信号を出力する構成によって実現されてもよい。
図20は、物体センサ191、192が設けられる左手16Lの手背から見た骨格を示す平面図である。物体センサ191は、母指の末節骨195付近の内側である手掌に配置される。もう1つの物体センサ192は、母指のつけ根である中手指節関節196付近の手掌に配置される。本発明の実施の他の形態では、物体センサ193は、手袋装置190に、示指の末節骨197付近の手掌に配置される。本発明の実施のさらに他の形態では、物体センサ194は、手袋装置190に、示指の基節骨198付近の手掌に配置される。これらの物体センサ191~194は、物体の取扱いに応じて、片手の手袋装置190だけに設けられてもよいが、左右両手の各手袋に設けられてもよい。
これらの物体センサ191~194は、手袋装置190の内側に取り付けられてもよく、手袋装置190に設けられる代りに、粘着テープなどで装着者10の手に貼り付けられてもよく、または指サックなどの帽状体に設けられてもよい。
駆動源60の駆動軸62によって出力される駆動トルク、および角度センサ67(図16)が検出する角度θについては、図29に関連して後述する。図9および図10において、装着者10が直立している状態では、駆動軸62の軸線61と第1受動回転軸91とを通る上アーム70の長手方向、および駆動軸62の軸線61と第2受動回転軸92とを通る下アーム80の長手方向はいずれも、鉛直である。下アーム80の長手方向は、鉛直線と角度θを成す。前へ歩行するために、装着者10が遊脚の大腿12を振り上げて屈曲する方向を正とし、足が着地している支持脚の大腿12を伸長する方向を負とする。駆動軸62の軸線61を、装着者10の骨盤の左右の股関節における寛骨臼に嵌まり込んでいる大腿骨の骨頭の臼状関節としての中心を通る左右方向の一直線上にほぼ一致して配置することによって、その一直線まわりに出力される駆動源60の駆動トルク、すなわち装着者10のための支援力モーメントは、装着者10へ高い駆動伝達効率で与えられ、歩行支援、持ち上げ支援、持ち下げブレーキ支援、中腰支援などの各支援動作を、円滑に達成する。
左右一対の駆動源60は、股関節に関する前記一直線上に軸線を有する駆動軸62を有し、したがって、駆動軸62の軸線は、持ち上げ、持ち下げブレーキ、中腰などの作業での腰関節、すなわち椎間関節の位置から、ずれている。しかし、駆動軸62の軸線は、作用点(着力点)である装着者10の胸ベルト22と大腿保持具40とから充分な距離だけ離れているので、駆動軸62からの駆動トルクを体幹11に支援力モーメントとして、支障なく充分に伝えることができる。
図21は、装着者10の歩行支援動作を説明するためのスケルトン図である。駆動源60は、上アーム70と下アーム80との間に駆動トルクTを出力する。これによって、装着者10の股関節の中心の左右の外側に配置された駆動源60の軸線61のまわりに、歩行支援時には、遊脚側の駆動源60Lからの駆動トルクTが大腿12Lの大腿保持具40Lに伝わり、大腿12Lを振り上げる方向に振り上げ力モーメントT1が作用する。遊脚側の駆動源60Lは、体幹上部保持具20から体幹の姿勢を維持して振り上げた遊脚の大腿12Lを支えるための反力モーメントT3を伝えている。
図22は、装着者10が歩行支援されている状態を示す遊脚側から見た側面図である。駆動源60Lは、大腿12Lに振り上げ力モーメントT1を与える。
歩行支援のために、図21に示されるように、支持脚側の駆動源60Rからの駆動トルクTは、大腿12Rの大腿保持具40Rに伝わり、大腿12Rを支持する方向に支援力モーメントT2が作用する。支持脚側の駆動源60Rは、体幹上部保持具20から体幹の姿勢を維持して足が着地している支持脚の大腿12Rを支えるための反力モーメントT4を伝えている。
図23は、装着者10の持ち上げ支援動作を説明するためのスケルトン図である。装着者10が物体を手16で掴んで持ち上げようとするとき、駆動源60L、60Rからの駆動トルクT5、T6が大腿12L、12Rの大腿保持具40L、40Rに伝わり、大腿12L、12Rを支持する方向に持ち上げ力モーメントT7、T8が作用する。駆動源60L、60Rは、体幹上部保持具20から体幹の姿勢を維持して大腿12L、12Rを支えるための反力モーメントT9、T10を与えている。このような左右両脚に与えられるモーメントは、持ち上げ支援のための持ち上げ力モーメントT7、T8だけでなく、持ち下げブレーキ支援のための持ち下げブレーキ力モーメントなども同じである。
図24は、装着者10の中腰支援動作を説明するための側面図である。中腰状態では、体幹11が直立し、大腿12が鉛直から前方に角変位している。処理回路113は、左右の角度センサ67によってそれぞれ検出される、体幹11と左右の各大腿12との相対的な角度θが減少している状態が続くことで、予め定める時間、たとえば3秒以上、予め定める角度、たとえば10°以上曲げていることで、中腰状態を検出する。
中腰支援のための中腰支援力モーメントおよび立ち上がり支援のための立ち上がり支援力モーメントも、図23の持ち上げ力モーメントT7、T8と同じである。
図25は、体幹11を左右に傾けた状態を示す簡略化した正面図である。上アーム70の長手方向の途中位置に介在される第3受動回転軸73は、前後方向の軸線まわりに角変位自在であるので、体幹11を椎間関節の働きによって左右方向78、79に傾けて曲げることができる。したがって、装着者の姿勢に応じて円滑に支援力モーメントを作用することができる。
図26は、下肢を外転して開脚した状態を示す簡略化した正面図である。下アーム80の長手方向の途中位置に介在される第4受動回転軸83は、前後方向の軸線まわりに角変位自在であるので、股関節の働きによって、下肢を外転して方向84に開脚を円滑に行なうことができ、またその逆の内転方向に運動できる。したがって、装着者10の開脚の姿勢に応じて円滑に支援力モーメントを作用することができる。
図27は、体幹11を回旋した状態を示す簡略化したスケルトン図である。体幹11を、その直立した長軸まわりに回旋方向85に捩る運動をしたとき、体幹11とともに、駆動源60が設けられた体幹下部保持具30が、回旋方向85a、85bに角変位し、このとき下肢の大腿12も回旋方向85cに角変位する。駆動源60は体幹11の左右に配置され、駆動源60には、体幹11の長軸まわりに角変位しない剛性の上下のアーム70、80が設けられ、上下のアーム70、80は、体幹上部保持具20および大腿保持具40に連結されるので、装着者10が回旋しても、体幹11は、体幹上部保持具20と、体幹下部保持具30と、大腿保持具40などと相対的に変位せず、位置ずれが生じない。したがって、支援ロボット装置1は、装着者10の動きを束縛せず、身体から離れもしないので、体幹11と駆動源60との相対的な位置の変化を防ぐための追加的な構成は不要であり、構成の簡略化を図ることができる。体幹上部保持具20において、回旋する体幹11との位置ずれを防ぐ役目は、特にその胸ベルト22であり、副次的に肩ベルト21、背ベルト23である。
図28は、支援ロボット装置1(図9、図10)の電気的構成を示す電気回路図である。支援ロボット装置1に含まれる制御機器は、制御ボックス53と、左右の類似の構成を有するモータドライバユニット120L、120Rと、ハンディ端末装置150と、電池ボックス54と、左右の類似の構成を有する手袋装置190L,190Rとを含んで構成される。
ハンディ端末装置150は、携帯型であり、装着者10の左右両手によって保持されて操作される。ハンディ端末装置150は、たとえばスマートフォンによって実現される送受信可能な通信装置である。ハンディ端末装置150は、装着者の左手または右手の一方のみに設けられてもよい。
制御ボックス53は、第1無線通信部111と、第2無線通信部112と、処理回路113と、電源制御部114とを含んで構成される。第1無線通信部111は、無線による通信によって、手袋装置190と通信可能に構成され、これらのハンディ端末装置150、手袋装置190と処理回路113との情報の中継を行なっている。第2無線通信部112は、無線による通信によって、ハンディ端末装置150と通信可能に構成され、ハンディ端末装置150と処理回路113との情報の送受信中継を行なう。処理回路113は、有線による通信によって、各モータドライバユニット120と通信するように構成される。電源制御部114は、電池ボックス54を制御する。電源制御部114は、マイクロコンピュータによって実現される。
左右の各モータドライバユニット120は、装着者10の左側および右側にそれぞれ装着されるパワーアシスト用電動モータ64を制御する右モータドライバ122を含んで構成される。各モータドライバ121は、有線による通信によって、処理回路113と通信し、処理回路113からアシストに必要な出力トルク指令などの指令を受けるとともに、モータ64の角度センサ67からの駆動軸62の回転角度を表す位置情報などの情報を処理回路113へ送っている。加速度・角速度センサ103の出力は、処理回路113に与えられる。処理回路113には、送受信に関連する情報をストアするメモリ117と、計数のためのカウンタ118と、計時のためのタイマ119などとが接続される。
手袋装置190は、無線通信部186、電池187および物体センサ191、192を含んで構成される。電池187は、充電可能な蓄電池であり、無線通信部186および物体センサ191、192に電力を供給する。無線通信部186は、物体センサ191、192の状態、すなわち、物体センサ191、192によって検出された検出結果を、第1無線通信部111を介して処理回路113に送る。本発明の実施の他の形態では、手袋装置190は、物体センサ191、192に代えて、物体センサ193または194が設けられる。物体センサ191~194は、装着者10が装着する手袋の指の掌側の部分に作用する荷重の有無、さらにはその荷重の値を検出する。
ハンディ端末装置150は、本件支援ロボット装置1の動作に必要なパラメータを設定するために使用される。電池ボックス54は、電池46を含んで構成される。電池ボックス54は、電池46からの電力を制御ボックス53および各モータドライバユニット120に供給する。
処理回路113は、第1無線通信部111から与えられる各物体センサ191~194、加速度・角速度センサ103などの情報と、各モータドライバ121の角度センサ67から与えられる電動モータ64の位置情報とに基づいて、アシストに必要な駆動トルクを計算し、各モータドライバ121へ出力トルク指令を送る。
本実施の形態では、図28に示すように、制御ボックス53に、手袋装置190と通信を行なう第1無線通信部111と、ハンディ端末装置150と通信を行なう第2無線通信部112とを備えることによって、通信速度が向上され、並列処理を行なうことができる。
図29は、駆動源60の駆動軸62によって出力される駆動トルクを説明するための図である。角度センサ67は、角度θを検出する。角度センサ67は、体幹11と左右の各大腿12との相対的な角度を検出する。角度センサ67は、駆動源60の内部に設けられ、駆動源60の電動モータ64の出力軸65に対応する駆動軸62の角度を検出する。角度センサ67は、相対角度の計測用である。装着者10が支援ロボット装置1を装着して直立し、体幹11と下肢である大腿12を鉛直にした直立状態で、電源を入れることによって、角度センサ67の原点位置、すなわち角度θが零に決められる。この直立した位置で角度θを零に設定し、それから大腿12を鉛直にしたままで、体幹11が前方に傾いた前かがみの姿勢になると、駆動軸62の軸線61まわりの鉛直の直上方向から前かがみの角度θを検出する。また体幹11を鉛直にしたままで、歩行時に遊脚の大腿12を振り上げると、駆動軸62の軸線61まわりの鉛直の直下方向に対する角度θを検出する。
本発明の実施の一形態では、駆動源60の駆動トルクT、したがって支援力モーメントは、各支援動作に共通な予め定める値であってもよく、各支援動作毎に予め定める値であってもよい。これらの予め定める値であるパラメータは、ハンディ端末装置150を使用して設定することができる。
本発明の実施の他の形態では、下肢の質量をm[kg]、駆動軸62の軸線61から第2受動回転軸92までの下アーム80の長さをL[m]、重力加速度をgとすると、質量mの下肢を動作させるのに必要な駆動トルクT[N・m]は、次の計算式(数1)、
T = L・m・g・sin θ …(1)
によって計算することができる。
Lおよびmは、比例定数であり、装着者10によって決まる固定値である。処理回路113は、これらの値をパラメータとして予め設定しておくことによって、駆動トルクT、したがって支援力モーメントを算出する。パラメータは、ハンディ端末装置150を使用して設定することができ、メモリ118にストアされる。
このように、装着型支援ロボット装置1は、装着者10を様々な作業姿勢で動かすために必要な駆動トルクTを、角度センサ67によって検出される角度θから力学的に解析することによって、算出するので、筋肉を動かそうとしたときに筋肉に流れる微弱な表面筋電位信号を用いることなく、表面筋電位センサを装着する煩わしさをなくすことができる。
また、支援ロボット装置1は、予め設定された動作パターンの再生方式ではなく、駆動トルクTを力学的に算出するので、装着者10の動作の切り替わり時に、不連続になることがない。
ここで、ハンディ端末装置150を使用して設定されるパラメータを下記の表1に示す。パラメータNo「01」~「07」は、遊脚側の歩行制御パラメータであり、パラメータNo「11」~「13」は、支持脚側の歩行制御パラメータである。遊脚は、地に着いていない方の脚であり、支持脚は、地に着いている方の脚である。歩行制御パラメータは、歩行動作をアシストするためのパラメータである。
パラメータNo「21」~「25」は、上体制御パラメータである。上体制御パラメータは、上体の動作をアシストするためのパラメータである。パラメータNo「31」~「35」は、中腰制御パラメータである。中腰制御パラメータは、中腰の動作をアシストするためのパラメータである。パラメータNo「41」~「45」は、ティーチングパラメータである。ハンディ端末装置150は、これらのパラメータを記憶する記憶領域を有している。s、secは、秒を示す。表1の初期値とは、初期の設定値であり、その後ユーザが、ハンデイ端末装置150によって、変更し設定しなおすことができる。値の範囲(単位%)とは、モータ64が出せる最大の支援力モーメント、すなわちアシスト力を100%とした割合である。
ハンディ端末装置150を使用して設定されるパラメータに関して、本発明の実施の他の形態では、そのハンディ端末装置150を使用して設定されるパラメータを下記の表2に示す。パラメータNo「01」は、遊脚側の歩行制御パラメータであり、パラメータNo「02」は、支持脚側の歩行制御パラメータである。遊脚は、地に着いていない方の脚であり、支持脚は、地に着いている方の脚である。歩行制御パラメータは、歩行動作をアシストするためのパラメータである。
パラメータNo「03」、「04」は、上体制御パラメータである。上体制御パラメータは、上体の動作をアシストするための持ち上げアシスト制御と持ち下げアシスト制御のパラメータである。パラメータNo「05」は、中腰制御パラメータである。中腰制御パラメータは、中腰の動作をアシストするためのパラメータである。ハンディ端末装置150は、これらのパラメータを記憶する記憶領域を有している。初期の設定値がプログラムで設定されており、その後、ユーザが、ハンディ端末装置150によって、変更し設定しなおすことができる。
図30は、支援ロボット装置1の処理回路113によって実行されるアシストスーツ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。アシストスーツ制御処理は、電源起動シーケンス処理、パラメータ書換えシーケンス処理、姿勢情報入力シーケンス処理および股関節制御シーケンス処理の4つの処理で構成されている。処理回路113は、処理回路113の電源が投入されてパワーアシスト用電動モータ64以外の構成要素への電力の供給が開始され、動作可能状態になると、ステップA11に移る。
ステップA11では、処理回路113は、電源起動シーケンス処理を実行する。処理回路113は、ハンディ端末装置150から送信されるアシストに必要なパラメータの受信完了を待っている。処理回路113は、アシストに必要なパラメータの受信完了後、装着者10が直立している直立状態での左右の各角度センサ67による各大腿12の回転角度θの初期化を行い、パワーアシスト用電動モータ64用の電源をオンする。
アシストに必要なパラメータが既に受信されている実施の形態では、ハンディ端末装置150からの送信を待たずに、予め定める一定時間(たとえば3秒)経過後、受信済みのパラメータを使って装着者が直立している直立状態での各大腿12の回転角度の初期化を行い、パワーアシスト用電動モータ64用の電源をオンする。このことにより、ハンディ端末装置150が無くても電源起動を可能としている。
ステップA12では、処理回路113は、パラメータ書換えシーケンス処理を実行する。アシストに必要なパラメータは、装着者の持っているハンディ端末装置150から適宜送られてくる。アシストスーツ制御処理は、このパラメータの更新を常時実行できるようにするために、パラメータ書換えシーケンス処理をメインループ内で行なっている。メインループは、ステップA12~A14によって形成される処理手順のループである。
ステップA13では、処理回路113は、姿勢情報入力シーケンス処理を実行する。姿勢情報入力シーケンス処理は、装着者10の姿勢に関するデータを取得する処理である。
ステップA14では、処理回路113は、股関節制御シーケンスなどのアシスト制御処理を実行して、ステップA12に戻る。アシスト制御処理は、ステップA13で取得されたデータに基づいて、歩行動作、上体動作および中腰動作の各動作に対するパワーアシスト用電動モータ64による駆動に必要なアシストトルクを計算して出力する処理である。
処理回路113は、メインループを20m秒間隔で実行しており、支援ロボット装置1は、装着者へのスムーズなアシストを実現している。処理回路113は、アシストを開始する前、数秒間で装着者の動作を判断し、判断後アシストトルクを出力する。支援ロボット装置1は、健常者のアシストを目的としており、動作の開始時に数秒間アシストがなくても、実用上支障はない。
図31は、処理回路113による姿勢情報入力シーケンス処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、図30に示したステップA13が実行されると、ステップC11に移る。
ステップC11では、処理回路113は、加速度・角速度センサ103からの出力を受信して、読込む。
ステップC12では、処理回路113は、モータエンコーダである各角度センサ67の検出角度θ、および加速度・角速度センサ103の出力を読込む。処理回路113は、パワーアシスト用電動モータ64に含まれる角度センサ67から、パワーアシスト用電動モータ64の出力軸65に対応する駆動軸62の回転角度、つまり股関節角度を、各モータドライバ121を介して読込む。ステップC13では、処理回路113は、股関節角速度、つまりパワーアシスト用電動モータ64による駆動軸62の回転角度の角速度ωを計算して、姿勢情報入力シーケンス処理を終了する。
図32は、処理回路113によるアシスト制御処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、図30に示したアシスト制御のステップA14が実行されると、ステップD11、D13、D15に移る。図32のとおり、処理回路113は、歩行・持ち上げ・持ち下げ・中腰の各動作を判断して、歩行・持ち上げ・持ち下げ・中腰の各アシスト制御のいずれかを実行する。ステップD11、D12は、歩行動作に対する処理である。ステップD13、D14は、上体動作の持ち上げ、持ち下げに対する処理である。ステップD15、D16は、中腰動作に対する処理である。歩行動作に対する処理、上体動作に対する処理および中腰動作に対する処理は、並列に処理される。
ステップD11では、処理回路113は、歩行判断を行なう。処理回路113は、角度センサ67による検出角度θおよび加速度・角速度センサ103の出力に応答して、歩行動作を行なっているか否かを判断する。ステップD12では、処理回路113は、歩行アシスト制御を行なう。処理回路113は、歩行動作を行なっているとき、時々刻々変化する角度θおよび加速度・角速度センサ103に基づいて、歩行動作をアシストするための遊脚のアシストトルクおよび支持脚のアシストトルクを計算する。
ステップD13では、処理回路113は、上体判断を行なう。処理回路113は、角度センサ67の検出角度θおよび加速度・角速度センサ103の出力に応答して、上体動作を行なっているか否かを判断する。上体動作は、持ち上げ、持ち下げのために、上体を曲げ、次に上体を起こす動作である。ステップD14では、処理回路113は、上体制御を行なう。処理回路113は、上体動作を行なっているとき、上体動作をアシストする持ち上げアシスト制御、持ち下げアシスト制御のためのアシストトルクを計算する。処理回路113は、たとえば、両脚に必要な角度θに比例したアシストトルクを算出する。
ステップD15では、処理回路113は、中腰判断を行なう。処理回路113は、角度センサ67の検出角度θおよび加速度・角速度センサ103の出力に応答して、中腰アシスト動作を行なっているか否かを判断する。中腰アシスト動作は、中腰姿勢での動作である。ステップD16では、処理回路113は、中腰アシスト制御を行なう。処理回路113は、中腰アシスト動作を行なっているとき、中腰動作をアシストするためのアシストトルクを計算する。処理回路113は、両脚に必要な、たとえば、両脚に必要な角度θに比例したアシストトルクを算出する。ステップD11~D16は、算出演算動作をするステップである。
ステップD17では、処理回路113は、歩行アシスト制御、上体アシスト制御および中腰アシスト制御に関して、ステップD11、D13、D15の各判断に従って重複することなく各アシスト制御出力を調整し、予め設定された優先順位に従って判定を行い、駆動ステップD18で、処理回路113は、前記優先順位に従って、算出したアシストトルクを出力するように、各モータドライバ121を制御して、パワーアシスト用電動モータ64を駆動させて、アシスト制御シーケンス処理を終了する。
本実施形態の処理回路113では、上体アシスト制御である持ち上げアシスト制御、持ち下げアシスト制御の優先度が最も高く、中腰アシスト制御の優先度がそれに続き、歩行アシスト制御の優先度が最も低くなるように予め設定されている。この優先順位は、特に農作業をアシストするために定められたものであり、歩行アシスト制御、上体アシスト制御および中腰アシスト制御の優先順位は、必要に応じて、適宜設定変更することができる。
このように、本実施形態では、歩行アシスト制御、上体アシスト制御および中腰アシスト制御に関して優先順位を予め設定しておくことによって、処理回路113において装着者10の動作を推定して、歩行アシスト制御、上体アシスト制御および中腰アシスト制御が混ざらないように明確に切り分ける。
処理回路113による図32のステップD11における歩行判断処理の処理手順は、図33~44に関連して後述する。
図33は、処理回路113による歩行アシスト制御処理の処理手順を示すフローチャートである。歩行制御処理では、装着者の姿勢情報の内、時々刻々変化する角度センサ67による検出角度θおよび加速度・角速度センサ103の出力に基づいて、歩行時に必要とされる遊脚側トルクと支持脚側トルクを計算する。処理回路113は、図32に示したステップD12が実行されると、ステップF11に移る。
ステップF11では、処理回路113は、歩行アシスト開始を検出する。処理回路113は、遊脚側の脚が歩行判断ポイントに位置付いたことを検出する。ステップF12では、処理回路113は、遊脚側のアシストトルクを計算する。ステップF13では、処理回路113は、支持脚側のアシストトルクを計算する。ステップF14では、処理回路113は、歩行が繰り返されているかの度合いである歩行割合による補正を行なうことで、歩行アシストトルクを算出する。後述の図37(2)のグラフは、図37(1)のグラフに示される歩行開始時の左右の角度θと、予め定める歩行度合(すなわち歩行割合)を掛けて算出された支援力モーメントの出力結果を示す。
図34は、処理回路113による遊脚側のアシストトルクの計算処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、図33に示したステップF12が実行されると、ステップF21に移る。
ステップF21では、処理回路113は、遊脚であるか否かを判断し、遊脚であると判断された場合には、ステップF22に進み、股関節角度θを読み込む。遊脚でないと判断された場合には、当該計算処理を終了する。遊脚であると判断された場合には、遊脚アシスト制御が順次実行される。
本発明の実施の他の形態では、遊脚であると判断された場合には、歩行シーケンスが、「振上開始」→「振上中」→「振下開始」→「振下中」と順次実行され、振り下げ完了で終了する。
ステップF22では、角度センサ67から検出した股関節角度θを読み込む。ステップF23では、加速時間経過まで予め定められたトルクを維持する。ステップF24では、加速時間経過では、遊脚の角度θが予め定める角度(たとえば20°)になるまでの間、予め定める一定速度で遊脚のアシストトルクを減少する。
図35は、処理回路113による支持脚側のアシストトルクの計算処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、図33に示したステップF13が実行されると、ステップF31に移る。
ステップF31では、処理回路113は、支持脚であるか否かを判断し、支持脚であると判断された場合には、ステップF32に進み、支持脚でないと判断された場合には、当該計算処理を終了する。支持脚であると判断された場合には、直立姿勢を保つためのトルクを出力する。
ステップF32で、処理回路113は、角度センサ67による股関節角度θを読み込み、ステップF33で、処理回路113は、加速時間経過まで予め定めるトルクを維持する。ステップF34で、加速時間経過後は、支持脚の角度θが予め定める角度(たとえば零)になるまで、または他脚である遊脚が着地するまでの間、支持脚の角度に比例して、支持脚のアシストトルクを零まで減少させる。
図36は、支援ロボット装置1による歩行支援が継続されているときにおける動作を説明するためのタイムチャートである。図36(1)は装着者10が歩行する動作を示し、図36(2)は左右の角度センサ67L、67Rによる検出角度θL、θRの各波形のライン126、127を示し、図36(3)は加速度・角速度センサ103によって検出される装着者10の上下方向の加速度α1の波形を示し、図36(4)は左右の駆動源60L、60Rによって大腿12L、12Rにそれぞれ与えられる左右の支援力モーメント128、129である振り下げ支援力モーメントに添え字aを付して、および振り上げ力モーメントに添え字bを付して、それらの波形を示す。図36に示される第1歩~第3歩の各歩行期間W1~W3において、対となる期間W1、W2の全体に期間を100%とすると、各期間W1、W2は50%ずつである。期間W3以降、期間W1、W2と同様な動作が繰り返される。
先ず、期間W1の時刻t10で、右足が着地して支持脚となる。歩行時に着地するときの下肢、したがって大腿の角度θは、0°付近ではなく、20~30°付近である。左右のいずれか一方の足が着地したとき、加速度・角速度センサ103の上下方向の加速度α1の出力は、図36(3)のとおり、最大値となり、このことは処理回路113によって検出される。右足の角度センサ67Rの検出角度θRは、図36(2)のライン127に示され、着地時刻t10では、最大値に近似する大きい値、たとえば25°であり、これに対して、左足の角度センサ67Lの検出角度θLは、図36(2)のライン126に示され、着地時刻t10では、最小値に近似する小さい値、たとえば0°である。したがって、処理回路113は、着地時刻t10で、これらの角度θR、θLの大小を比較して、大きいほうの角度θR(θL<θR)が得られた足が着地した支持脚であり、または小さいほうの角度θLが得られた足が遊脚であると判断する。
着地時刻t10から時刻t13までの支持期間Waだけ、支持脚に振り下げて支持する方向124の振り下げ支援力モーメント129a(図36(4))が、駆動源60Rによって与えられる。支援力モーメント129aは、予め定める時間Wcだけ予め定める一定値(たとえば60~10Nm)を維持し、その後、支援力モーメントを弱めていくのに応じて時間経過に伴って減少するように、または角度センサ67Rで検出した角度θRに比例して減少するように、駆動源60Rによって与えられる。右足の角度センサ67Rの検出角度θRは、図36(2)のライン127に示され、時刻t10で、であり、時刻t10から時間経過に伴なって減少してゆき、予め定める振り下げ支援終了設定角度θ0(たとえば0°)になった時刻t13で、振り下げ支援を終了する。すなわち支持脚のアシストは、予め定める時間Wcは、予め定める振り下げアシスト力、すなわち振り下げ力モーメント(前述のように、たとえば60Nm)を出力する。この時間を過ぎたら、角度センサ67Rで検出した支持脚の角度θRが予め定める角度、たとえば0°までで、遅くても他の足が着地するまでは、角度センサ67Rで検出した角度θRに比例して、支持アシスト力、すなわち支援力モーメント129aを出力する。こうして。右足が着地したとき、右の股関節角度は、25°程度で着地して、その後、減少する。そのとき、既に着地している左の股関節角度が、真下の付近の最小値となっている。その後すぐに、遊脚である左足を振り上げるので、左の股関節角度が上昇してゆく。
この期間W1において、遊脚である左足には、着地時刻t10から時刻t11までの振り上げ期間Wbにおいて、振り上げ力モーメントの加速度を、振り上げる力を出して振り上げを加速している時間である予め定める時間Wd(Wd<Wb)だけ、振り上げる方向125の振り上げ力モーメント128b(図36(4))が、予め定める一定値(たとえば80~20Nmの範囲内の値)で、駆動源60Lによって与えられる。期間W1における遊脚である左足の角度センサ67Lの検出角度θLは、図36(2)のライン126に示され、時刻t10で最小値、たとえば0°であり、時刻t10から時間経過に伴なって増加してゆき、この時間Wd経過後の時刻t11では、予め定める振り上げ支援終了設定角度θ20(たとえば20°)となり、振り上げ支援を終了する。その後、遊脚の角度θLは、時刻t12で最大値になる。すなわち遊脚のアシストは、予め定める時間Wd、予め定める振り上げアシスト力128bを出力する。この時間Wdを過ぎたら、角度センサ67Lで検出した遊脚の角度θLが予め定める角度、前述のように、たとえば20°までは、予め定める速度で減算して、振り上げアシスト力128bを出力する。こうして、右足が着地すると、左足は振り上げて、遊脚となり、股関節角度が増加して屈曲し、大きくなる。右足は支持脚となり、後方へ蹴り、股関節角度は減少し小さくなって伸展する。屈曲と伸展は、図29における直下方向の0°を境目に表示し、時計まわりのプラス側を屈曲といい、反時計まわりのマイナス側が伸展という。
次に、期間W2では、時刻t20以降、処理回路113による駆動源60の左右の制御動作が、期間W1とは逆に行なわれる。左足が着地して支持脚となり、この着地時刻t20から時刻t23までの支持期間Waだけ、支持脚に振り下げて支持する方向124の支援力モーメント128aが、駆動源60Lによって与えられる。左足の角度センサ67Lの検出角度θLは、図36(2)のライン126のとおり、時刻t20で、たとえば25°であり、時刻t20から時間経過に伴なって減少してゆき、予め定める振り下げ支援終了設定角度θ0になった時刻t23で、振り下げ支援を終了する。
この期間W2において、遊脚である右足には、着地時刻t20から時刻t21までの振り上げ期間Wbだけ、振り上げる方向125の振り上げ力モーメント129bが、駆動源60Rによって与えられる。期間W2における遊脚である右足の角度センサ67Rの検出角度θRは、図36(2)のライン127のとおり、時刻t20で最小値であり、時刻t20から時間経過に伴なって増加してゆき、時刻t21では、予め定める振り上げ支援終了設定角度θ20となり、振り上げ支援を終了する。遊脚の角度θRは、時刻t22で最大値になる。
歩行支援は、右足が着地する時刻t30から始まる期間W3以降、期間W1、W2と同様な動作が繰り返されて継続される。
本発明の実施の他の形態では、期間W1において、振り下げ支援力モーメント129aを出力する支持期間Waは、予め定める時間であってもよく、この時間Waを過ぎたら、角度センサ67で検出した支持脚の角度θが予め定める角度、たとえば0°までで、遅くても他の足、すなわち遊脚が着地する時刻t20までは、角度センサ67で検出した角度θに比例して、支援力モーメント129aを出力する。
本発明の実施の他の形態では、処理回路113は、支持脚と遊脚との判断を、着地時刻t10における角度θR、θLを予め定めるレベルでレベル弁別することによって、実現してもよい。振り下げ支援の終了は、期間W1の遊脚が着地する時刻t20に定めてもよい。
処理回路113は、電動モータ64に取り付けた左右の各角度センサ67の振り角度θR、θLが真下方向付近の最小値、たとえば零となったとき、その角度θRまたはθLに対応する足が着地したと判断してもよい。角度センサ67で検出した着地した支持脚には、支持する方向にアシストする。
左右いずれかの着地した支持脚は、角度センサ67によって上述のように検出してもよいが、実施の他の形態では、処理回路113は、加速度・角速度センサ103で検出した3次元の加速度α1、α2、α3によって支持脚を検出してもよい。
図37は、支援ロボット装置1による歩行支援が開始されるときの処理回路113の動作を説明するためのタイムチャートである。図37(1)は左右の角度センサ67L、67Rによる検出角度θL、θRの各波形126、127を示し、図37(2)は左右の駆動源60L、60Rによって大腿12L、12Rにそれぞれ与えられる左右の支援力モーメント128、129である振り下げ支援力モーメントに添え字aを付して、および振り上げ力モーメントに添え字bを付して、それらの波形を示す。期間W11~W31は図36の期間W1~W3にそれぞれ対応し、時刻t101~t301は図36の時刻t10~t30にそれぞれ対応し、添え字aは支援力モーメントを示し、添え字bは振り上げ力モーメントを示す。
処理回路113は、各期間W11~W31の時刻t101~t301で加速度・角速度センサ103の上下方向の加速度α1の出力が最大値となることによって、足が着地したことを検出する。さらに左右の各角度センサ67で検出した角度θL、θRが、図37(1)のライン126、127のとおり、左右逆方向に、予め定める第1の回数(たとえば2回)だけ、振れていることを検出することによって、歩行開始が開始されたことを検出する。その後、予め定める第2の回数(たとえば3回)だけ、歩行が繰り返されているかの度合(すなわち、繰り返された回数)に従って、上昇させ、この度合に応じて左右の支援力モーメント128、129を図37(2)のとおり、増加させることによって、毎回の歩行開始のタイミングに遅れることなく、左右股関節付近に配置した駆動源60によって、歩行支援する。すなわち、処理回路113は、カウンタを有し、このカウンタによって、歩行アシストについて、左右の角度センサ67で検出した角度θが、左右逆方向に2~3回振れていることを計数、検出して、歩行開始を検出し、その後の2~3回の間で歩行アシスト力を増加させる。こうして、処理回路113は、歩行アシストについては、先ず、左右の角度センサ67で検出した角度θL、θRが、左右逆方向に2~3回振れていることで歩行開始を検出し、その後、2~3回の間で歩行アシスト力を増加させる。
図38は、支援ロボット装置1による歩行支援が終了されるときにおける動作を説明するためのタイムチャートである。図38(1)は装着者10が歩行する動作を示し、図38(2)は左右の角度センサ67L、67Rによる検出角度θL、θRの各波形126、127を示し、図38(3)は加速度・角速度センサ103によって検出される装着者10の上下方向の加速度α1の波形を示す。図38(1)~(3)は、図36(1)~(3)にそれぞれ対応する。図38に示される歩行支援が終了される第1歩~第3歩の各歩行期間W41~W61において、対となる期間W41、W51の全体に期間を100%とすると、各期間W41、W51は50%ずつである。期間W41では、右足の着地の時刻t401の後、左足の着地まで左右の角度θL、θRがライン126,127のとおり、得られている。次の期間W51では、左足の着地の時刻t501の後、右足が着地することによって、両足が着地が時刻t601までの間に、時刻t502以降、左右の角度θL、θRの角度差Δθ1が予め定める値Δθ10未満である時間W502が、予め定める時間W70以上(W41<W70≦W502)であることが、処理回路113によって検出されると、歩行が繰り返されていないと判断する。
図39は、支援ロボット装置1による歩行支援が終了されるときの処理回路113の動作を説明するためのタイムチャートである。図39(1)は左右の角度センサ67L、67Rによる検出角度θL、θRの各波形126、127を示し、図39(2)は左右の駆動源60L、60Rによって大腿12L、12Rにそれぞれ与えられる左右の支援力モーメント128、129である振り下げ支援力モーメントに添え字aを付して、および振り上げ力モーメントに添え字bを付して、それらの波形を示す。時刻t701で左右の角度センサ67L、67Rによる検出角度θL、θRが減少してゆき、それに応じて、処理回路113は、たとえば振り下げ支援力モーメント129a1のように減少する。時刻t801以降では、検出角度θL、θRが最小値のままになり、支援力モーメントを零とする。こうして、処理回路113は、左右の角度センサ67L、67Rで検出した振れ角度θL、θRが小さくて歩行が終了したことを検出すると、歩行アシストを直ちに終了する。持ち上げアシスト用手袋装置190の物体センサ191~194が押されたままで物体を検出しており、持ち上げ終了角度に達していない状態で、持ち上げアシストが継続されている場合は、歩行を検出しても、物体センサ191~194がOFFになるまで、物体を持ち上げて運搬歩行している状態で、持ち上げアシストを選択している判断して、歩行支援の動作には入らない。
図40は、処理回路113の歩行支援の判断動作を説明するためのフローチャートである。歩行判断については、ステップs0からステップs1に移り、持ち上げアシストが継続されているとき、ステップs2で歩行の角度θL、θRを検出し、ステップs4で予め定める最小値θL01、θR01以上であって(θL01≦θL、θR01≦θR)、ステップs5で角度θL、θRが交互に逆方向であって、すなわち、左右が逆位相になって繰り返されるとき、ステップs3、s6、s7でステップs4、ステップs5を予め定める回数(たとえばrは複数の3回)繰り返して、歩行が繰り返されていると判断しても、ステップs8で、手袋スイッチがOFFになるまで、すなわち手袋装置190の物体センサ191~194が物体を検出しているならば、運搬歩行で持ち上げアシストを選択していると判断して、歩行支援の動作には入らず、そうでなければステップs9で歩行支援の動作を行なう。さらにまた、歩行時の角度センサ67の波形が、前述のように、左右の大腿12で逆位相になって繰り返され、たとえば、足を振り上げた角度θが最大になったことを、前回値と比較して増加から減少に転じたことで歩行を判定する。このようにして最大になったことの回数をカウンタで積算し、予め定める回数である2~3回繰り返されたことをカウンタの積算値で判断して、歩行が繰り返されていると判断する。その後、後述の図42に示されるように、カウンタの積算値の増加に従って、歩行のアシスト力を増加させることができる。
ステップs10で左右の角度センサ67で検出した振れ角度θL、θRが小さいなら(θL<θL01、θR<θR01)、ステップs13で左右角度が小さいことを表わすフラグをONとし、ステップs14で左右角度が小さい時間を計時するタイマをカウントアップし、その時間が予め定める時間W11aより長いと、ステップs16で歩行終了であり、歩行アシストを終了する。すなわち、左右の角度センサ67で検出した振れ角度θの差Δθ1(図38(2))が小さくて歩行が終了したことを検出すると、歩行支援を直ちに終了する。ステップs10で左右の角度センサ67で検出した振れ角度θL、θRが大きいなら(θL01≦θL、θR01≦θR)、ステップs11でステップs14で左右角度が小さいことを表わすフラグをOFFとし、ステップs12で左右角度が小さい時間を計時するタイマを零にリセットして、ステップs9へ戻る。
図41~図44は、処理回路113による歩行支援の動作を説明するためのフローチャートである。図41のステップs20からステップs21に移り、加速度・角速度センサ103によって検出される上下方向の加速度α1が最大になったことが判断されると、ステップs22へ進む。足が着地すると、上下方向の加速度α1は、その着地の衝撃で最大となる。これから着地しようとする遊脚の角度は、最大に振られてから振り戻されて、たとえば20°程度になっている。既に着地している支持脚は、振り下げられていて角度θが真下方向付近の0付近であり、最小値になっている。たとえば左足の角度θLがほぼ零であれば、ステップs23で左足が着地すれば、その左足が支持脚となり、右足が振り上げられて遊脚になる。ステップs24で右足が着地すれば、右足の角度θRがほぼ零であれば、ステップs25で右足が着地によって支持脚となる。
ステップs22、s24で、角度θL、θRがいずれも大きい値であれば、ステップs26では、装着者10は歩行していなくて、両足が浮いており、走っていると判断し、安全のために歩行支援動作を停止する。
図41のステップs23、s25の着地検出後、図42のステップs27以降に移り、ステップs2、s29で角度θL、θRの最大値が交互に検出されれば、ステップs27で零にリセットされていたカウンタの計数値qについて、ステップs30で1歩ずつ計数し、ステップs31で左右の支援力モーメントTLq、TRqを増加分ΔTずつ漸増してゆく。このような動作をステップs32で予め定める回数(たとえばqは複数の3回)だけ繰り返す。
図42のステップs32から、図43のステップs33以降に移り、支持脚に支援力モーメントを与える。ステップs33で、着地を図36の時刻t10またはt20で検出後、支持脚の経過時間W71と遊脚の経過時間W81との計時を開始する。ステップs34で支持脚に、予め定める一定値の支援力モーメント(図36(4)のライン129a,128a)を与える。ステップs35では、支持脚の経過時間W71が支援力モーメントを出して支持している時間である予め定める時間Wc経過したかが判断され、そうであれば、予め定める時間Wc経過後、次のステップs36で支援力モーメントを支持脚の角度θに比例した値で、ステップs37で支持脚の角度θが0°になるまで、またはステップs38で遊脚が着地するまで、出力する。
図43のステップs37またはステップs38から、図44のステップs39に移り、遊脚に、予め定める一定値の振り上げ力モーメント(図36(4)のライン128b、129b)を与える。ステップs40では、遊脚の経過時間W81が予め定める時間Wd経過したかが判断され、そうであれば、予め定める時間Wd経過後、次のステップs41で振り上げ力モーメントを予め定める一定速度で減少させる。ステップs42で遊脚の角度θが予め定める角度(たとえば20°)になるまで、振り上げ力モーメントを出力する。
図45は、処理回路113による持ち上げ動作のための上体判断処理の処理手順を示すフローチャートである。上体判断処理では、装着者10の姿勢情報を使って、股関節を曲げ、次に上体を起こそうとしているかどうかを判断している。処理回路113は、図32に示したステップD13が実行されると、ステップG11に移る。
ステップG11で、処理回路113は、股関節の検出角度θを演算して、股関節角速度ωを読込む。ステップG12で、処理回路113は、持ち上げアシスト動作開始ポイントを検出する。ステップG11で計算した股関節角速度ωがパラメータNo「41」の「屈曲側」を越えた位置を検出し、その位置を上体曲げ動作開始ポイントとする。ステップG13で、処理回路113は、持ち上げ動作開始のための開始スイッチとして働く物体センサ191~194の出力による検出を待ち、その開始スイッチのONが検出されると、上体制御出力を開始し、予め定める持ち上げ終了角度に減少して到達した段階で、持ち上げアシストの上体制御を終了する(ステップG14~G16)。
持ち上げのタイミングは、加速度、および角速度の検出信号によって、作成する。持ち上げのタイミングは、後述の図47に示される加速度、および角加速度の検出信号によって、作成する。
図46は、処理回路113による上体制御処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、図32に示したステップD14が実行されると、ステップH11に移る。ステップH11では、処理回路113は、両脚に必要な、角度センサ67による股関節角度θに比例したアシストトルクを算出する。ステップH12では、その算出したアシストトルクを維持する。角度θが0になるとき、すなわち真上に起き上がったとき、大きな持ち上げアシストが作用すると、装着者10はバランスを崩しやすく、この状態を避けなければならない。そこで、前述のとおり、本発明に従えば、股関節角度θに比例したアシストトルクを算出するが、実施の他の形態では、1次関数でもよく、2次関数でもよい。
図47は、処理回路113による持ち上げ支援動作を説明するためのフローチャートである。装着者10が持ち上げようとする物体を掴むことによって、ステップu3において持ち上げアシスト用手袋装置190の物体センサ191~194が押されたままで、持ち上げ終了角度に達していない状態で、持ち上げアシストが継続されている場合は、ステップu1において歩行を検出しても、物体センサ191~194がOFFになるまで、物体を持ち上げて運搬歩行している状態で、持ち上げアシストを選択しているとして、ステップu4の歩行のアシストには入らない。持ち上げ判断については、左右の角度センサ67でそれぞれ検出した角度θL、θRが、左右ほぼ同じであっても(θL=θR)、そうでなくて開脚して持ち上げるときであっても、ステップu2のように、腰が曲げられる方向に振れていて(前かがみの姿勢、θL02≦θL、θR02≦θR、ここで、θL02、θR02は、予め定める値である)、歩行アシストされてなくて、ステップu3で手袋スイッチSWがONである物体センサ191~194が押されたことによって、ステップu4において、持ち上げアシストを開始する。ステップu5、ステップu6において、角度θL、θRが予め定める持ち上げ終了角度θL02、θR02未満になるか(θL<θL02、θR<θR02)、物体センサ191~194がOFFで、ステップu8で持ち上げアシストを終了する。ステップu7において、検出角度θL、θRが、予め定める持ち上げ終了角度θL02、θR02以上であれば(θL02≦θL、θR02≦θR)、物体センサ191~194がONの持ち上げ開始のトリガを保持してラッチする。
すなわち、持ち上げアシストについては、左右の角度センサ67で検出した角度θL、θRが、腰が曲げられる方向に振れていて、歩行アシストしていない場合で、手袋装置190の物体センサ191~194が押されたことによって、持ち上げアシストを開始する。なお持ち上げアシストでは、予め定める持ち上げ力モーメントを出力する。予め定める持ち上げ終了角度になるか、物体センサ191~194がOFFになると、持ち上げアシストを終了する。検出角度θL、θRが、たとえば零では、まっすぐ直立した角度であり、持ち上げるときには勢いがつくので、角度θL、θRが、0°では手前で切れる感じになる。したがって、持ち上げ終了角度θL02、θR02は、0°よりは少しのけぞった予め定める値、たとえば―20°を設定値とする。角度θは図29の右回りに正とし、―20°とは、180°を超える値となったときであり、真上を超えてのけぞる角度である。
前述の本発明の実施の形態では、図47のステップu3における手袋スイッチがON、すなわち手袋装置190の物体センサ191~194が物体を検出しているON信号で、持ち上げ開始を検出し、ステップu7における物体を検出しないOFF信号で持ち上げ終了を検出する。
これに対して、実施の他の形態では、手袋装置190の物体センサ191~194を用いないで、持ち上げアシスト制御を実現し、できるだけシンプルなシステムにして、手袋装置190を使うのが煩わしいとか、物体センサ191~194が故障するなどの問題を解決する。手袋装置190を使用しない実施の第1の形態では、処理回路113は、図47のステップu3に代えて、図57のフローチャートを実行する。ステップu75から次のステップu76において、歩行の着地を検出した同じ加速度・角速度センサ103の出力に応答し、上下方向の加速度α1が予め定める第1の閾値(たとえば1.15G)を超えたら、また、予め定める第2の閾値(たとえば0.85G)以下になったら、持ち上げ時の上下方向の動き開始とする。ステップu77では、歩行時の着地においても、加速度・角速度センサ103からは、上下方向の加速度α1が得られるので、歩行していない状態を検出した後、持ち上げアシストのための検出と判断する。また、物にぶつかったりしたときにも上下方向の加速度α1が得られるので、前後方向の加速度α2や左右方向の加速度α3が検出されていない第3の閾値(たとえば0.15G)以下の条件下の範囲(たとえば-0.15G~0.15G)内で、持ち上げアシストのための検出とする。
手袋装置190を使用しない実施の形態では、ステップu76、u77に、さらにAND条件で、ステップu78において、加速度・角速度センサ103(図18)によって検出した左右方向の軸線まわりの角速度ω3が、予め定める第1の角速度閾値(たとえば300°/s)を超えたら、また第2の角速度閾値(たとえば-300°/s)以下になったら、すなわち負の絶対値が大きくなったら、持ち上げ時の腰の回転の動きが生じたものと検出する。このように、持ち上げる場合の図23における時計回り以外に、反時計回りの逆モーションになることもあるので、反時計回りである負の絶対値が大きいときも検出して、負である第2の角速度閾値による構成をも実現する。
ステップu79では、歩行時にも角速度ωが得られるので、歩行していない状態での検出とする。また、物にぶつかったりしたときにも角速度ωが得られるので、上下軸線まわりの角速度ω2や前後軸線まわりの角速度ω3が、予め定める第3の角速度閾値(たとえば300°/s)を超えないで、また予め定める第4の角速度閾値(たとえば-300°/s)以下にならない条件下での検出とする。
ステップu76~u79に、さらにAND条件で、ステップu80では、さらにAND条件で、左右の角度センサ67で検出した角度が予め定める閾値である体幹11が前かがみになっている角度(たとえば10度~90度)の範囲内であれば、ステップu82で、手袋装置190の物体センサ191~194(図19、図20)が物体を検出しているON信号と等価である持ち上げ開始のトリガ信号を出力し、図47のステップu4へ移る。前述のステップu76~u80の判断が否定であれば、ステップu81で、前記ON信号のトリガ信号をOFFとし、ステップu76へ戻る。
図47のステップu7aでは、手袋装置190の物体センサ191~194からOFF信号が出力され、手袋装置190がない実施の形態では、このOFF信号と等価である持ち上げ終了のトリガ信号は、左右の電動モータ64の角度θが、予め定める持ち上げ終了角度(たとえば、-20°)を超えたとき、得られ、持ち上げ終了とする。
本発明の実施のさらに他の形態では、持ち上げのタイミングを、加速度の検出信号に代えて、電動モータ64の電流(トルク)を電流検出器で検出し、その検出信号によって、作成する構成であってもよい。特に電動モータ64の定格容量が小さく、出力トルクが小さい構成では、負荷電流の変動が大きく、検出が確実となり、有利である。
図48は、処理回路113による持ち下げブレーキ動作のための上体判断処理の処理手順を示すフローチャートである。上体判断処理では、装着者10の姿勢情報を使って、股関節を曲げ、次に上体を前へ倒そうとしているかどうかを判断している。処理回路113は、図32に示したステップD13が実行されると、ステップG11aに移る。
ステップG11aで、処理回路113は、股関節の検出角度θを演算して、股関節角速度ωを読込む。ステップG12aで、処理回路113は、持ち下げアシスト動作開始ポイントを検出する。ステップG13aで、処理回路113は、予め定める値以上に、持ち下げ速度が出ていることを検出する。ステップG14aで、持ち下げ時間終了か、持ち上げアシスト開始か、歩行アシスト開始かを判断する。ステップG14aで持ち下げ時間終了であれば、ステップG15aで、ブレーキ力を零として、持ち下げアシストの上体制御を終了する。ステップG14aで持ち下げ時間終了でなければ、ステップG16aで、持ち下げアシストのために、予め定めるブレーキ力を出す。
図49は、処理回路113による持ち下げブレーキ支援制御処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、図32に示したステップD14が実行されると、ステップu20に移る。持ち下げブレーキアシストについては、ステップu22において左右の角度センサ67で検出した角度が、腰が曲げられる方向に振れていて、ステップu21において歩行アシストしていなくて、ステップu23において手袋装置190の物体センサ191~194が押されていなくて、ステップu24、ステップu25において左右の角度センサ67で検出した角度より算出した角速度ωL、ωRが持ち下げ方向に予め定める角速度ωL01、ωR01より出ていることよって(ωL01≦ωL、ωR01≦ωR)、持ち下げブレーキアシストを開始する。
当初は予め定めるブレーキ力を出して、計時した時間W1が予め定める持ち下げ時間W01後には(W01≦W1)、ブレーキ力を0として終了する。ステップu28、u29における持ち上げアシストや歩行アシストが開始されると、持ち下げブレーキアシストは、すぐに終了する。
実施の他の形態では、手袋装置190を使用せず、加速度・角速度センサ103の出力によって、装着者の体幹の加速度、角速度を検出し、処理回路113は、加速度・角速度センサ103からの出力に応答し、検出された加速度または角速度が、物体の持ち下げブレーキ支援の開始に対応する値であるとき、左右の駆動源60によって、体幹11と各大腿12との相対的な角度が減少して持ち下げる方向に作用しているモーメントを制限するように、持ち下げブレーキ力モーメントを与える。したがって、手袋装置190、物体センサ191~194を使用せず、装着者の体幹11の加速度、角速度を検出して、装着者10の体幹11のたとえば上下方向の加速度α1を検出し、または体幹11のたとえば左右方向の軸線まわりの角速度ω3を検出し、または体幹11のたとえば左右方向の軸線まわりの速度を検出する。加速度α1、角速度ω3または角度の値の範囲によって、持ち下げ時のたとえば上下方向の動きの開始を判断することができ、またさらに、それらの終了を判断することができる。体幹11の角度を角度センサで検出して、持ち下げブレーキ力モーメントを与えるように構成することもできる。このように、持ち下げブレーキ支援でも、手袋装置190を用いなくても、持ち下げ速度が予め設定された速度が出ていることで持ち下げブレーキ支援ができる。
手袋装置190を使用せずに持ち下げブレーキ力モーメントを与える、この実施の形態では、処理回路113は、図49のステップu23において、前述の図57のフローチャートの動作を、前述と同様に実行する。図49のステップu29aでは、図47のステップu7aと同様な前述の動作が実行される。
図50は、処理回路113による中腰判断処理の処理手順を示すフローチャートである。中腰判断処理では、装着者10の姿勢情報を使って中腰姿勢を判断する。処理回路113は、図32に示したステップD15が実行されると、ステップK11に移る。
ステップK11で、処理回路113は、股関節の検出角度θを演算して、股関節角速度ωを読込む。ステップK12で、処理回路113は、予め定める中腰角度になり、予め定める経過時間を過ぎたことを検出する。ステップK13で、中腰角度が終了か、歩行アシストが開始か、持ち上げアシストが開始か、持ち下げブレーキアシストが開始かを判断する。ステップK13で、中腰角度が終了、歩行アシストが開始、持ち上げアシストが開始、持ち下げブレーキアシストが開始のいずれでもなければ、中腰アシスト制御を維持する。ステップK13で、中腰角度が終了、歩行アシストが開始、持ち上げアシストが開始、持ち下げブレーキアシストが開始のいずれかであれば、中腰アシスト制御を終了する。
図51は、処理回路113による中腰制御処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、図32に示したステップD16が実行されると、ステップL11に移る。ステップL11では、中腰保持角度を、それまでの角度センサ67で検出した角度の平均値を算出する。
処理回路113によるステップL11では、中腰開始後、中腰保持トルクは、中腰保持角度より深くなった角度に比例した予め定めるばね力で、出力される。このばね力のばね定数は、予め定める経過時間内で、中腰角度の変化幅が予め定める角度変化幅より大きい場合は、ばね定数は予め定める値から比例して小さくして零とし、中腰アシストを効かないようにできる。
図52は、処理回路113の中腰支援動作を示すフローチャートである。処理回路113は、ステップu40からステップu41~u43において、持ち上げ支援、持ち下げブレーキ支援、歩行支援がなされていない場合、ステップu44において、下肢、したがって大腿12を直立した状態で、左右の各角度センサ67で検出した角度θ40iがいずれも、腰が曲げられる方向に振れていて(θ40i≦0)、かつ予め定める中腰角度θ40以上になり(θ40≦θ40i)、ステップu45において、予め定める経過時間W40(たとえば3秒間)を過ぎて継続されると、ステップu46において、予め定める中腰支援を開始する。こうして、中腰アシスト動作については、左右の角度センサ67で検出した角度が、腰が曲げられる方向に振れていて、持ち上げアシストや持ち下げブレーキアシストや歩行アシストがなされていない場合で、予め定める中腰角度になり、予め定める経過時間を過ぎると、予め定める中腰アシストを開始する。
図53は図52のステップu46において実行される処理回路113の中腰支援動作を示すフローチャートであり、図54は予め定める経過時間W42(たとえば3秒間)内における装着者10の各検出角度に対応する姿勢を示すスケルトン図であり、その期間W42においてθmaxは最大値を、θminは最小値をそれぞれ示し、図55は平均値θaveを示す一部のスケルトン図である。中腰支援動作中、ステップu61において、中腰保持角度を、経過時間W42内で、それまでの角度センサ67で計測された角度θ42jの平均値θaveとする。iは、時間W42内のサンプリング角度検出回数であり、1~pの自然数である。
たとえば、この中腰保持角度は、予め定める時間W42である3秒以上で予め定める角度θ42jである10°以上曲げていたとすると、その時間W42の平均の中腰角度θaveとする。中腰支援動作は、ステップu62において、角度変化幅Δ42jを演算する。
Δθ42j = θ42j ― θave …(4)
ステップu63において、検出角度θ42jがその平均角度θave以下の角度(θave≦θ40j)になったとき、ステップu64では、予め定めるばね定数k43を設定して、ステップu65において、中腰支援力モーメントT42jが、次のとおり、演算される。
T42j = k43・Δθ42j …(5)
ステップu63において、検出角度θ42jがその平均角度θaveより深い角度(θave≦θ42j)になったとき、ステップu66に移り、角度変化幅Δ42jが予め定める角度変化幅Δ43以上(Δ43≦Δ42j)であることが判断される。ステップu67で、角度変化幅Δ42jが予め定める角度変化幅Δ43以上である状態が予め定める経過時間W43だけ継続すると、ステップu68では、中腰支援力モーメントのためのばね定数k44jが演算される。
図56は、処理回路113による中腰支援動作におけるばね定数k44jの特性を示すグラフである。このばね力のばね定数k44jは、予め定める経過時間W43内で、中腰角度θ42jの変化幅Δ42jが予め定める角度変化幅Δ43以上であるとき(Δθ42j ≦ Δ43)、その差Δ423(=Δ42j―Δ43)に依存して、図56のように、予め定める値k43から1次関数116(図56)で小さくして零とし、中腰支援動作を効かないようにする。
k44j = k43(1-Δθ42j/Δ43) …(6)
中腰支援力モーメントT42jは、次のとおり、演算される。
T42j = k44j・Δθ42j …(7)
こうして、中腰支援力モーメントT42jは、式(7)のとおり、変化幅Δθ42jに比例して起き上がる力を発生する。この比例する力の定数をばね定数k44jとし、たとえば、変化幅Δθ42jが90°のときにフルにアシストするとして、中腰支援力モーメントT42jによって、10kgの物体を持ち上げる力を発生するように構成する。
このばね定数k44jは、予め定める3秒間での中腰角度の変化幅Δθ42j、すなわち、図54における(θmax-θmin)とするとき、この値Δθ42jが小さくて姿勢変化が小さいと、ばね定数k44jが大きくなり、硬く感じる支援にする。またこの値k44jが大きくて姿勢変化が大きいと、柔らかい支援にする。
前述のステップu64、u65のとおり、検出角度θ42jがその平均角度θave以下の角度では、ばね定数k44jは、図56のように、ライン116aで示される一定値である。
図52を参照して、ステップu47において、左右の各角度センサ67で検出した角度θ40iがいずれも、予め定める中腰角度θ40未満になり、予め定める中腰終了角度になるか、ステップu48~ステップu50において、歩行アシストが開始されるか、持ち上げアシストが開始されるか、持ち下げブレーキアシストが開始されると、中腰アシストを終了する。予め定める各値は、ハンディ端末装置150のキー入力によって設定される。
図58は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置851を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、図59は装着型支援ロボット装置851の装着状態を示す側面図である。この実施の形態は、前述などの実施の形態に類似する。注目すべきは、加速度・角速度センサ103aは、前述の図18のように装着者10の体幹11の腰部に設けられてもよいが、図58、図59の実施の形態では、加速度・角速度センサ103aは、装着者10の正面位置で胸ベルト22Lまたは22Rに設けられる。加速度・角速度センサ103aは、胸部の3次元の加速度、すなわち上下方向の加速度α1および前後方向の加速度α2、さらに左右方向の加速度α3をそれぞれ検出する。物体の持ち上げ時には、装着者10における加速度・角速度センサ103aが設けられる胸部の動作は、図18の実施の形態における腰部の動作に比べて、大きいので、検出し易くなり、加速度・角速度を高精度で検出できる。加速度・角速度センサ103aからの検出信号は、胸ベルト22、上アーム70、腰ベルト33に沿って設けられた可撓性ライン853を介して、制御ボックス53内の処理回路113に与えられる。
図60は本発明の実施の他の形態である装着型姿勢保持装置1を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、図61は装着型姿勢保持装置1の装着状態を示す側面図であり、図62は装着型姿勢保持装置1の図61における一部を拡大して示す側面図である。図60~図78に示される実施の各形態における構成要素の参照符は、これらの図60~図78において統一して使用され、図1~図8、および図9~図59に示される実施の各形態の構成要素の参照符とは異なるときがある。図74~78などには、本発明の実施の他の形態の一部の構成も併せて示すことがある。これらの図面を参照して、装着型姿勢保持装置1は、装着者10に装着されて保持される保持装置2と、保持装置2に設けられ装着者10の体幹11と左右の各大腿12との間に中腰姿勢保持をアシストするクラッチ60とを有する。図60~62は、装着者10が、体幹11とともに左右の大腿12を含む両下肢を揃えて直立した姿勢を示す。左右とは、前述のとおり、装着者10における方向を言い、したがって、図60における右、左である。装着型姿勢保持装置1は、それを装着した装着者10の正中矢状面13に関して左右にほぼ面対称に構成され、本件明細書、図面中、左右の構成要素の参照符は、左右を個別的に示すために数字に添え字L、Rをそれぞれ付し、総括的に、または連結した構成を示すために、および左または右を記載して数字だけで示す。
保持装置2は、装着者10の胸郭、鎖骨、肩甲骨付近の体幹上部14に装着されて保持される体幹上部保持具20と、腹、腰の骨盤、股関節付近の体幹下部15に装着されて保持される腰カフと呼ぶことができる体幹下部保持具30と、大腿12に装着されて保持される大腿保持具40とを含む。
図63は面状フレーム31の正面図であり、図64は面状フレーム31の左側面図であり、図65は面状フレーム31の一部の平面図である。図63、図5は、左右対称に構成される面状フレーム31のほぼ左半分を示す。体幹下部保持具30は、クラッチ60の位置で、体幹下部15の下腹ベルト36を有する。下腹ベルト36は、臍部下方で、連結具37によって左右に分離、連結して着脱自在である。
装着者の体幹下部に装着されて保持される体幹下部保持具30は、基本的に、全体が剛性の面状フレーム31とベルト36とを有する。面状フレーム31は、体幹下部の左右両側方から背後にわたって(体幹下部の背後では、臀部および仙骨部よりも上方の腰部および脊柱部下部を含む)体幹下部の後半周を覆う外囲部35と、体幹下部の背後で外囲部35から立ち上がる背板34とを有する。ベルト36は、面状フレーム31に連結され、体幹下部の左右両側方から腹部にわたって体幹下部の前半周を覆う。
体幹下部保持具30の面状フレーム31は、前述のとおり、剛性であり、腰側部・背部フレームとも呼ぶことができ、腰側部に配置される脇部フレーム32と、脇部フレーム32に連なって腰背部に配置される背部フレーム33とが、背後で背板34によって連結されて構成される。
面状フレーム31の高さを、その上部が脇下直ぐの位置でなく、腰部から脇下直ぐの間の位置まで短くして低くし、背板34の高さも、腰部から脇下直ぐの間の位置まで短くして、装着し易くする。背板34の上部は、肩ベルト21に連結される。したがって、体幹下部保持具30が、外囲部35と背板34とを有する面状フレーム31とベルト36とによって構成されるので、体幹11と大腿保持具40との中腰姿勢保持と、上向きモーメントのアシストとを、確実に迅速に行なうことができるようになる。
脇部フレーム32の下部は、後述の図67に示されるように、クラッチ60のクラッチ本体61に固定され、大腿フレーム80の上フレーム片81は、クラッチ60の回転体62の回転軸66に固定される。脇部フレーム32の下部はまた、下腹ベルト36の両端部に取り付けられる。
面状フレーム31と下腹ベルト36とは、クラッチ60の接続状態で、回転軸66の軸線75まわりの体幹下部保持具30を介する体幹上部保持具20と大腿保持具40との角度を確実に保つために副次的な働きをし、クラッチ60が変位するのを防ぎ、回転軸66の軸線75が左右方向に傾いたり、前後方向に傾いたりするのを防ぐ。面状フレーム31と下腹ベルト36とはまた、回転軸66の軸線75を、装着者10の左右の股関節中心を通る一直線にできるだけ一致させて、ずれないようにする働きをする。こうすることによって、体幹上部保持具20と体幹下部保持具30と大腿保持具40との各位置が上下に変位することを防ぐことができる。装着者は、腰を椎間関節によって曲げずに、体幹11を直立した姿勢で、歩行、持ち上げ、持ち下げ、中腰の各動作を行なう。
大腿フレーム80は、上フレーム片81と下フレーム片82とが、前後方向の軸線まわりに角変位自在な第1受動回転軸83によって、連結され、上下に延びて構成される。上下のフレーム片81、82は、剛性である。
左右の各大腿保持具40は、大腿12を全周にわたって囲む大腿カフと呼ぶことができるベルト本体41と、ベルト本体41の外周部に大腿12の外側である腓側から前へ、周方向の一部にわたって延びて固定片42によってベルト本体41に固定される保持片43とを有する。下アーム片82の下端部と、保持片43の外側部とは、左右方向の軸線まわりに角変位自在な第2受動回転軸45によって、連結される。
体幹上部保持具20は、装着者10の鎖骨、肩甲骨付近に逆U字状に配置される左右一対の肩ベルト21と、胸郭を囲んで腋窩から斜め下方に背に延びる胸カフと呼ぶことができる胸ベルト22とを有する。肩ベルト21と胸ベルト22とは、背板34の上部に連結される。
体幹上部保持具20は、図61では肩ベルト21と胸ベルト22で構成されているが、実施の他の形態では、装着し易いようにするため、ベストや所謂チョッキの形状をしていてもよい。
前述の保持装置2は、腰関節保持以外の動作を束縛しないための機構を有していることが重要である。対象とする腰関節の抗重力方向に保持するように下向きの力モーメントを支える姿勢保持装置であるクラッチ60を配置して、対象とする腰関節の角度保持方向以外の回転方向については、装着者10の動作を妨げないようにするために、第1受動回転軸83は、駆動機器を取り付けていない回転軸であり、空回りする回転軸である。この第1受動回転軸83を、対象とする関節の外側周囲に配置している構成によって、次の特有の利点a~cがある。
a 面状フレーム31の左右側面剛体フレームである脇部フレーム31と、腰後部剛体フレームである背部フレーム33のみによって、体幹11の下部の側部から背後に装着としたので、軽量化でき、装着者のねじりにも対応でき、装着者のねじりの動作を拘束しない。
b 左右の股関節中心の左右両サイドに取り付けたクラッチ60の下端部に固定される上フレーム片81を、前後方向軸まわりに回転する受動回転軸83を介して、大腿剛体フレームである下フレーム片82に取り付ける構成が実現されるので、装着者11の上半身の左右への傾きに対応できる。したがって、装着者11のこの上半身の左右への傾き動作を拘束しない。
c 前記bと同じ構成が実現されるので、装着者の左右方向への開脚動作に対応できる。したがって、装着者11のこの左右方向への開脚動作を拘束しない。
図66は、装着者10が中腰作業動作のために、前かがみの姿勢ある状態で持ち上げ動作を説明するための中腰姿勢を保持する状態を示すスケルトン図である。装着者10が物体を手で掴んで持ち上げようとするとき、中腰状態では、体幹11が直立し、大腿12が鉛直から前方に角変位している。装着者10の力によるトルクが大腿12L、12Rの大腿保持具40L、40Rに伝わる。持ち下げ作業などでも同じである。
装着者11との接触部である胸部と大腿カフである大腿保持具40へのクラッチ60の連結は重要な構成であるので、一部重複する部分も含めて述べる。股関節中心の左右両サイドにクラッチ60を1台ずつ合計2台配置している。このため、クラッチ60の回転軸線75と股関節が一致するので、起き上がり時や立ち上がり時や足を前後方向に振り上げたとき、クラッチ60の一端部から下方へ伸びた剛体の大腿フレームである上下のフレーム片81,82が大腿12と同角度で回転する。またクラッチ60の下部に前後方向軸周りに回転する受動回転軸83を介して剛体の大腿フレームである上下のフレーム片81,82の一端部を取り付けてあり、大腿フレームである上下のフレーム片81,82の他端部には左右方向軸まわりに回転する受動回転軸83を介して大腿カフである大腿保持具40が取り付けられ、この大腿カフである大腿保持具40で装着者10の下体に姿勢保持力を伝えている。
このため、上体である体幹11を左右に傾けたときや左右に開脚したときに、大腿カフである大腿保持具40の位置が元の位置からずれず、装着者10の動きを束縛しなくて身体から離れもしないので、クラッチ60と大腿カフである大腿保持具40との間の長さ調整機構が不要となり、軽量化と低コスト化できる。
またクラッチ60のもう一つの端部から上方へ伸びた剛体の腰下方フレームである面状フレーム31が腰部まであり、図62に拡大して示されるように、胸部カフである体幹上部保持具20の胸ベルト22と肩ベルト21とは、背板34の上部に連結され、この胸部カフである胸ベルト22は装着者10の上体に姿勢保持力を伝えている。このため、上体を左右に傾けたときや上体をねじったりしたときに、胸部カフである胸ベルト22の位置が元の位置からずれず装着者の動きを束縛しなくて身体から離れもしないので、従来の腰後部剛体フレームや後方側面剛体フレームや背中の腰中央部に取り付けていた2つの受動回転軸が不要となり、軽量化と低コスト化ができる。
また股関節中心の左右両サイドにクラッチ60を配置しているので、中腰作業などでの腰関節の保持については、クラッチ60の回転中心は腰関節中心からずれるが、作用点(着力点)である装着者10の胸部と大腿12から充分に離れているので、クラッチ60の接続状態における力を充分に伝えることができる。
図67は、クラッチ60とその付近を示す断面図である。クラッチ60は、ステータとしてのクラッチ本体61と、アーマチュアとしての回転体62とを有する。クラッチ本体61は、電磁コイル63が配置されるフイールド64と、一方のクラッチ部材である摩擦板65とを有し、フイールド64は、脇部フレーム32に固定される。回転体62は、回転軸66と、回転軸66に周方向および軸線方向の相対的な変位が阻止されて固定される支持部材67と、摩擦板65に近接方向(図67の右方)に変位して摩擦接触によってクラッチの接続状態となり離反方向(図67の左方)に変位してクラッチ60の遮断状態となる他方のクラッチ部材である摩擦板68と、摩擦板68を摩擦板65から離反方向にばね力を与える板ばね69とを有する。支持部材67は、回転軸66が挿通し軸受71を介してフイールド64を支持する筒部72と、筒部72に連なるフランジ部73とを有する。フランジ部73には、摩擦板68が、板ばね69を介して周方向の相対的な変位が阻止されて取り付けられる。電磁コイル63が励磁されて生じる電磁力によって、摩擦板68は板ばね69のばね力に抗して摩擦板65に近接変位して摩擦接触しクラッチ60の接続状態となる。電磁コイル63が励磁されずに消磁されると、摩擦板68は板ばね69のばね力によって摩擦板65に離反変位して空隙Δd1(たとえば、0.3mm)をあけてクラッチの遮断状態となる。
クラッチ本体61のフイールド64は、脇部フレーム32に固定される。回転体62の回転軸66は、大腿フレーム80の上フレーム片81に固定される。筒部72と上フレーム片81とは、回転軸66とともに、平行キー74によって相互の回転が阻止され、したがって、摩擦板68と上フレーム片81、したがって、大腿フレーム80とは、回転軸66の軸線まわりにずれを生じることはない。
電磁コイル63が励磁されることによって、摩擦板65と摩擦板68とが摩擦接触して本件装着型姿勢保持装置1が作動している状態におけるクラッチ60の最大許容トルクは、その姿勢保持状態が装着者の意図と違ったとき、装着者がクラッチ60を自分の力で動かすことができる予め定める値未満の値に設定される。したがって、摩擦板65、68の摩擦接触状態で、装着者によって前記予め定める値以上のトルクが作用したとき、摩擦板65、68が回転軸66の軸線まわりのずれを生じることが可能である。これによって、基本的に安全な装着型姿勢保持装置1が実現される。
装着者が中腰姿勢を保持するのに必要な力は、装着者の上半身の体重を保持するのに必要な力である。したがって、摩擦板方式のクラッチ60の必要な最大許容トルクに対応する摩擦力は、少なくとも装着者の上半身の体重W1を保持するのに必要な力と同等であればよい。一般の装着者は、上半身の体重W1に加えるに、20kg~30kg以上の物体を持ち上げる背筋力W2を有している。したがって、前記予め定める値は、一般の装着者が摩擦板65、68に作用している摩擦力W3以上の力を出せるように、すなわち、たとえば、(W1≦W3<W1+W2)となるように、選んで設定することによって、装着者の意図と違った場合には、摩擦接触している摩擦板65、68が角変位してずれて、装着型姿勢保持装置を動かすことができ、安全が確保される。
図68は、クラッチ60の電磁コイル63に関連する電気回路図である。装着者10の左右の股関節の付近に設置されたクラッチ60には、可撓性ケーブル102を介して押しボタンスイッチ101が繋がれる。押しボタンスイッチ101は、押し易く持ち易い細長い卵形状で手のひらの中にすっぽり入るサイズ(たとえば、外形が縦2~3cm、横2~3cm、全長4~7cmなど)であり、クラッチ60の付近に、装着者の手元付近にあり、腰から、たとえば、0.1~0.5mの長さを有する可撓性ケーブル102によってぶら下げた状態になるように設けられる。可撓性ケーブル102の一端部は、押しボタンスイッチ101に接続され、他端部は、たとえば、クラッチ60のクラッチ本体61に、または体幹下部保持具30に固定されてもよい。押しボタンスイッチ101は、左右いずれか一方に設けられてもよいが、左右に設けられてもよい。こうして、押しボタンスイッチ101をいずれか少なくとも一方の手で握ったまま、たとえ、両手で荷物を持った状態でも、押しボタンスイッチ101の押しボタンを簡単に押すことができる。
クラッチ60の電磁コイル63には、押しボタンスイッチ101、可撓性ケーブル102、ヒューズ103を介して、電池104から励磁電力が供給され、バリスタ105によって逆起電力が抑制される。ヒューズ103、電池104などは、背板34に固定された制御ボックス39(図61、62)に収納され、可撓性ケーブル102に電線によって接続される。
押しボタンスイッチ101は、押しボタンの各回の押圧操作のたびに、on/offのスイッチグ態様が交互に変化する自己保持機能を有する。自己保持機能は、押しボタンスイッチ101の機械的構成によって、または電気的構成によって、実現されてもよい。
図69は、図60~68の実施の形態の動作を説明するためのフローチャートである。ステップa1からa2に移り、装着者によって手元付近に腰からぶら下げた押しボタンスイッチ101が操作されてスイッチング態様がonになると、そのonのスイッチング態様が自己保持され、ステップa3で中腰姿勢保持のアシスト動作が行なわれる。中腰姿勢保持のアシスト動作では、ステップa31で、電磁コイル63に電流が流れて電磁力が発生する。これによって、ステップa32で、クラッチ60は、その摩擦板65、68が近接して摩擦接触し結合し、接続状態になる。後述の実施の他の形態では、噛み合い歯付きロータと噛み合い歯付きアーマチュアとの噛み合い歯が噛み合って結合し、接続状態になる。こうして、ステップa33では、装着者10の上半身の脇部フレーム32と下半身の大腿フレーム80とが結合されて、角変位が阻止され、腰の曲げ伸ばし運動が制動され、中腰姿勢が保持されて中腰姿勢保持のアシストができる。
装着者によって押しボタンスイッチ101が操作されてスイッチング態様がoffになると、onの自己保持がリセットされ、そのoffのスイッチング態様が自己保持され、ステップa4で中腰姿勢保持のアシスト動作が解除される。中腰姿勢保持のアシスト動作では、ステップa41で、電磁コイル63に電流が流れず電磁力が発生しない。ばね69によって、ステップa42で、クラッチ60は、その摩擦板65、68が離反して切り離されて遮断状態になる。こうして、ステップa43では、装着者10の上半身の脇部フレーム32と下半身の大腿フレーム80とが切り離されて、角変位が可能になり、腰の曲げ伸ばし運動が自由になり、中腰姿勢保持のアシストが切れる。すなわち、手元スイッチ101を押すと、電池104からの電流が止まり電磁力はなくなり、クラッチ60のばね69の力で上半身の体幹11に取り付けられたフレーム20、30と下半身の大腿12に取り付けられたフレーム40とが切り離されて、クラッチ60の軸線75まわりの腰の曲げ伸ばし運動が自由になり、中腰姿勢保持のアシストが切れる。電磁コイル63に印加する電圧は、電池104の電圧であり、たとえば、DC20~50Vで一定である。電磁コイル63に電圧を印加すると、電流が流れて中腰姿勢保持に必要な電磁力が発生される。
本発明の実施の他の形態では、装着者の操作によって、電池104からの電圧、したがって、励磁電力の値を変化調整して電磁コイル63に与える励磁電力調整回路が、電池104と電磁コイル63との間に設けられてもよい。これによって、発生させる電磁力の強さを変えて、クラッチ60の最大許容トルク、したがって、装着者によって作用されるトルクが摩擦板65、68の摩擦接触状態で摩擦板65、68が回転軸66の軸線まわりのずれを生じさせる前記予め定める値を選んで設定することができる。たとえば、男性の装着者が使用する場合は電圧を高くして電磁力を強くし、女性の装着者が使用する場合は電圧を低くして電磁力を弱くして、電池104の消費電力を最小必要限度に抑えるようにすることができる。摩擦板方式のクラッチ60では、作用している摩擦力以上の力を出せることによって、また図74、図75に示される歯のかみ合わせ方式のクラッチ120では、歯飛びする力以上を出せることによって、装着型姿勢保持装置を動かすことができる装置であるので、基本的に安全である。
図70は、本発明の実施のさらに他の形態における電気回路図である。この実施の形態は、前述の実施の形態に類似し、対応する部分には同じ参照符を付す。注目すべきは、前述の押しボタンスイッチ101に代えて、制御接点111が用いられ、装着者10の中腰姿勢になった後、起き上がるまでの中腰姿勢になっている期間だけ、制御接点111がonにされて、電池104から電磁コイル63に励磁電力を与える。図60、図66に示される角度検出器112は、左右の各クラッチ60に備えられ、その回転軸66の角度θをそれぞれ検出する。この検出される角度θは、脇部フレーム32と上フレーム片81との間の角度に対応し、たとえば、補角である。角度検出器112の出力は、マイクロコンピュータによって実現される処理回路113に与えられる。処理回路113は、左右の各角度検出器112のいずれもが中腰姿勢になっている継続時間を計時するタイマ114を備える。また各角度検出器112による検出角度θを演算して起き上がり上向き角速度ω1を求める。加速度・角速度検出器115は、制御ボックス39に固定され、装着者の10の体幹11の上向きの加速度αを検出し、また体幹11の回転角速度ω2も検出する。その出力は処理回路113に与えられる。
図71は、装着者10が中腰作業動作のために、前かがみの姿勢から中腰姿勢に入る状態を説明するためのスケルトン図である。左右の各角度検出器112は、角度θをそれぞれ検出する。角度θについて、中腰作業動作のための中腰姿勢に入ることを判別する閾値θ1は、たとえば、30~40度の範囲で予め定められる。
体幹の回転角速度は、体幹11の重心の水平軸周りの回転角の速度であり、体幹11(上半身)の図71における角度θの時間微分値である速度ωである。たとえば、前述の角度検出器112および後述の図78に関連して説明する左右の電動モータ87に内蔵された同様な角度器計測する角速度は、体幹11と左の大腿12Lの角度θ1の速度ω1と、体幹11と右の大腿12Rの角度θ2の速度ω2とになる。左右の大腿12L、12Rを動かさない場合は、ωとω1、ω2は同じであるが、それ以外は異なる。
図72は、装着者10が中腰作業動作を行なっている中腰姿勢から、起き上がる状態を説明するためのスケルトン図である。加速度・角速度の検出器115(図70)は、体幹11の上向きの加速度αを検出し、起き上がる状態を判別する閾値α1は、たとえば、0.85~1.15Gの範囲で予め定められる。処理回路113は、各角度検出器112による検出角度θをそれぞれ演算して起き上がり上向き角速度ω1をそれぞれ求める。または加速度・角速度の検出器115にて、体幹11の回転角速度ω2も検出する。角速度ωについて、ω1とω2のいずれか大きい方をωとして、起き上がる状態を判別する閾値ω3は、たとえば、300度/秒の値に予め定められる。
図73は、図70の処理回路113の動作を説明するためのフローチャートである。ステップb1からステップb2に移り、左右の各角度検出器112によってそれぞれ計測、検出された股関節の角度が与えられる。ステップb3では、左右の各角度検出器112による検出角度のいずれもが、閾値θ1以上であるかを判別し、そうであれば、ステップb4で閾値θ1以上である継続時間Tを、タイマ114によって計測する。継続時間Tの閾値T1は、たとえば、3~5秒の範囲で予め定められる。継続時間Tが、閾値T1以上過ぎると(T1≦T)、装着者が中腰姿勢に入ったと判断し、中腰姿勢が検出され、その後、ステップb6で中腰姿勢保持をアシストする動作を行なう。
ステップb6では、ステップb61で制御接点111をonに導通し、これによって、電磁コイル63に電流が流れて電磁力が発生される。この電磁力によって、摩擦板65、68が板ばね69のばね力に抗して近接変位し、クラッチの接続状態になる。そのため、上半身の体幹11の体幹上部保持具20、体幹下部保持具30と、下半身の大腿12の大腿保持具40との角変位が阻止されて結合される。こうして、中腰姿勢保持をアシストする動作が行なわれる。
ステップb7では、加速度・角速度検出器115によって、体幹11の上向きの加速度αを計測、検出する。ステップb8では、体幹11の加速度αが、閾値α1以上(α1≦α)であるかを判別し、そうであれば、ステップb9で、体幹11の左右の大腿との角度θに基づいて角速度ω1をそれぞれ演算して計測する。また体幹11の回転角速度ω2も計測する。ステップb10では、左右の角速度ω1かω2のいずれか大きいωが、閾値ω3以上(ω3≦ω)であるかを判別し、そうであれば、装着者11の中腰姿勢が終了して、起き上がったことが検出、判断される。
こうして、中腰姿勢検出のステップb2~b5と、起き上がり検出のステップb7~b10との動作によって、中腰姿勢になった後、起き上がるまでの中腰姿勢になっている期間だけ、ステップb6では、電池104から電磁コイル63に励磁電力が与えられる。
次のステップb11では、中腰姿勢保持をアシストする動作が解除される。ステップb111では、制御接点111をoffに遮断し、これによって、電磁コイル63に電流を流さず、電磁力を発生しない。この電磁力がなくなることによって、ステップb112では、摩擦板65、68が板ばね69のばね力によって離反変位し、クラッチ60の遮断状態になる。そのため、上半身の体幹11の体幹上部保持具20、体幹下部保持具30と、下半身の大腿12の大腿保持具40との角変位が切り離される。こうして、中腰姿勢保持をアシストする動作が解除される。
図74は、本発明の実施の他の形態におけるクラッチ120とその付近を示す断面図である。このクラッチ120は、前述の実施の形態のクラッチ60における電磁力による摩擦板の摩擦接触に代えて、電磁力による噛み合い歯の噛み合いを行なう。クラッチ120は、フイールドとしてのクラッチ本体121と、アーマチュアとしての回転体122とを有する。クラッチ本体121は、電磁コイル123が配置されるフイールド124と、一方のクラッチ部材である噛み合い歯付きロータ125とを有し、フイールド124は、脇部フレーム32に固定される。回転体122は、回転軸126と、回転軸126に周方向および軸線方向の相対的な変位が阻止されて固定される支持部材127と、他方のクラッチ部材である噛み合い歯付きアーマチュア128と、噛み合い歯付きアーマチュア128を噛み合い歯付きロータ125から離反方向(図74の左方)にばね力を与えるコイルばね129とを有する。噛み合い歯付きアーマチュア128は、回転軸126の軸線75まわりに支持部材127、したがって、回転軸126とは、相互の角変位が阻止される。噛み合い歯付きアーマチュア128は、噛み合い歯付きロータ125に近接方向(図74の右方)に変位して噛み合い歯付きロータ125の噛み合い歯によってクラッチ120の接続状態となり、離反方向(図74の左方)に変位してクラッチ120の遮断状態となる。
噛み合い歯付きロータ125は、回転軸126が挿通し、軸受131を介してフイールド124を支持する筒部132と、筒部132に連なるフランジ部133とを有する。フランジ部133には、その外周部に噛み合い歯が図74の軸線方向左方に臨んで形成されて、噛み合い歯付きロータ125が形成される。
図75は、噛み合い歯付きロータ125と噛み合い歯付きアーマチュア128との噛み合い歯が離間してクラッチ120が遮断した状態を示す一部の周方向展開図である。電磁コイル123が励磁されて生じる電磁力によって、噛み合い歯付きアーマチュア128はばね129のばね力に抗して噛み合い歯付きロータ125に近接変位して噛み合い歯が相互に噛み合い、クラッチ120の接続状態となる。電磁コイル123が励磁されずに消磁されると、噛み合い歯付きアーマチュア128はばね129のばね力によって噛み合い歯付きロータ125から離反変位して空隙Δd2(たとえば、0.4mm)をあけてクラッチの遮断状態となる。
クラッチ本体121のフイールド124は、脇部フレーム32に固定される。回転体122の回転軸126は、大腿フレーム80の上フレーム片81に固定される。筒部132と上フレーム片81とは、回転軸126とともに、平行キー134によって相互の回転が阻止され、したがって、噛み合い歯付きアーマチュア128と上フレーム片81、したがって、大腿フレーム80とは、回転軸126の軸線75まわりにずれを生じることはない。
図75の周方向展開図において、噛み合い歯付きロータ125と噛み合い歯付きアーマチュア128との各噛み合い歯は、回転軸126の軸線75を含む仮想一平面に関して対称に構成される。したがって、装着者10による過大なトルクが作用したとき、いずれの回転方向においても、軸線75の方向に離反変位する分力が発生して、ロータ125とアーマチュア128とは、それらのいわば歯飛びが生じて、ずれることができる。
電磁コイル123が励磁されることによって、噛み合い歯付きロータ125と噛み合い歯付きアーマチュア128との噛み合い歯が噛み合って、本件装着型姿勢保持装置1が作動している状態におけるクラッチ120の最大許容トルクは、その姿勢保持状態が装着者10の意図と違ったとき、装着者10が接続状態にあるクラッチ120によって連結している脇部フレーム32と上フレーム片81との角度を自分の力でずらして動かすことができる予め定める値未満の値に設定される。この予め定める値は、ロータ125とアーマチュア128との噛み合い歯の形状およびばね129のばね定数などに依存して、定められる。したがって、噛み合い歯付きロータ125と噛み合い歯付きアーマチュア128との噛み合い状態で、装着者によって前記予め定める値以上のトルクが作用したとき、噛み合い歯付きアーマチュア128がばね129のばね力に抗して図74の左方の離反方向へ変位して噛み合い歯付きロータ125と噛み合い歯付きアーマチュアとの噛み合い歯のいわば歯飛びが生じて、前述のクラッチ60と同じく、回転軸126の軸線75まわりのずれを生じることが可能である。これによって、基本的に安全な装着型姿勢保持装置1が実現される。したがって、一般の典型的な装着者10は、噛み合い歯の噛み合わせが、歯飛びする力以上を出せることによって、装着者10の意図と違った場合には、装着型姿勢保持装置を動かすことができる装置であるので、基本的に安全である。
図74および図75の実施の形態におけるその他の構成は、前述の図60~73の実施の形態と同じである。
図76は、本発明の実施の他の形態におけるクラッチ140とその付近を示す断面図である。このクラッチ140は、前述の実施の形態のクラッチ60、120に代えて、用いることができ、複数の摩擦板145、148の摩擦接触を、電磁力の代りに、装着者10のハンドル操作で行なう。クラッチ140は、一方のクラッチ部材である複数の摩擦板145付きのクラッチ本体141と、回転軸146を備え他方のクラッチ部材である複数の摩擦板148付きの回転体142とを有する。クラッチ本体141は、摩擦板145が固定され軸線75の方向に変位可能な環状のロータ144と、ロータ144を挿通して脇部フレーム32に固定されるインナスリーブ152と、インナスリーブ152が挿通され軸線75の方向に変位可能なアウタスリーブ153とを有する。インナスリーブ152には、回転軸146の軸線75に垂直なピン155によって揺動可能なレバー156と、レバー156にその一端部156aがロータ144とアウタスリーブ153を離間させる方向のばね力を与える板ばね149とが設けられる。摩擦板145には、コイルばね159によって、摩擦板148との離反方向にばね力が与えられる。インナスリーブ152は、面状フレーム31、したがって体幹11に連なる脇部フレーム32に固定される。
ハンドル157は、回転軸146の軸線75に垂直なピン158によって揺動操作され、このピン158は、インナスリーブ152に設けられる。ハンドル157の揺動によって、図76の実線のとおりクラッチ140の遮断のための位置と、仮想線のとおりの接続のための位置とに切り換えることができ、これによって、アウタスリーブ153が軸線75の方向に変位する。
回転体142は、回転軸146に周方向および軸線方向の相対的な変位が阻止されて固定されるアーマチュアである支持部材147と、支持部材147に固定され摩擦板145と摩擦接触することができる摩擦板148と、インナスリーブ152との間に介在される軸受151とを有する。支持部材147と上フレーム片81とは、平行キー154によって、回転軸146との相互の回転が阻止され、したがって、回転軸146と、大腿12に連なる上フレーム片81とが固定される。
多板の摩擦板145、148とコイルばね159の構造をさらに述べる。支持部材147に取付けられた3枚の外側の摩擦板148と、ロータ144に取付けられた3枚の内側摩擦板145とが接触したり外れたりする構造になっている。コイルばね159が摩擦板145、148よりも半径方向内側に取り付けられており、上記のアーマチュアである支持部材147とロータ144との各摩擦板148、145を引き離す方向に力が作用する。
ハンドル157が図76の実線のとおり右のクラッチ遮断位置にあるとき、レバー156の一端部156aは、ばね149のばね力によって、ロータ144とアウタスリーブ153との間にあり、摩擦板145、148には摩擦接触のための力が作用せず、クラッチ遮断している。このように、ハンドル157を図76の右方向に動かすと、コイルばね159によってアーマチュアである支持部材147が切り離され、摩擦板145,148が外れ、また板ばね149によってレバー156が戻る。
ハンドル157が図76の仮想線のとおり左のクラッチ接続位置に切り換えられると、アウタスリーブ153は、レバー156の一端部156aをばね149のばね力に抗して押し下げて角変位し、摩擦板145、148は、アウタスリーブ153によるロータ144と、レバー156の他端部156bとの間で押圧され、摩擦接触され、クラッチ接続される。このように、ハンドルを図76の左方向に動かすと、アウタスリーブ153を左方向にシフトし、レバー156が押し込まれて、ロータ144が左方向にシフトして摩擦板145,148が接触する構造である。その他の構成と作用とは、前述の実施の形態に類似する。
図77は、本発明の実施の他の形態におけるクラッチ160とその付近を示す断面図である。このクラッチ160は、前述の実施の形態のクラッチ60、120、140に代えて、用いることができ、噛み合い歯の噛み合いを、電磁力の代りに、装着者10のハンドル操作で行なう。クラッチ160は、一方のクラッチ部材である噛み合い歯付きロータ165を備えるクラッチ本体161と、他方のクラッチ部材である噛み合い歯付きアーマチュア168を備える回転体162とを有する。
クラッチ本体161は、軸線75の方向に変位可能な噛み合い歯付きロータ165と、脇部フレーム32に固定されるインナスリーブ172と、インナスリーブ172が挿通され軸線方向に変位可能なアウタスリーブ163とを有する。インナスリーブ172には、回転軸166の軸線75に垂直なピン178によって揺動可能なハンドル177が設けられ、ハンドル177の揺動によってアウタスリーブ163が軸線75の方向に変位可能である。コイルばね179は、一方の噛み合い歯付きロータ165を他方の噛み合い歯付きロータ162から離反させて噛み合いが解除される方向にばね力を与える。
ハンドル177の揺動によって、図77のとおりクラッチ160の遮断のための右位置と、接続のための左位置とに切り換えることができ、これによって、アウタスリーブ163が軸線75の方向に変位する。
回転体162は、回転軸166に周方向および軸線方向の相対的な変位が阻止されて固定される支持部材167と、支持部材167に固定され噛み合い歯付きロータ165に噛み合うことができる噛み合い歯付きアーマチュア168と、インナスリーブ172との間に介在される軸受171とを有する。支持部材167と上フレーム片81とは、平行キー174によって、回転軸166との相互の回転が阻止される。
ハンドル177を図77のとおり、右方向に動かすと、コイルばね179によってロータ165がアーマチュア168から切り離され、噛み合い歯が外れ、クラッチ遮断位置になる。
ハンドル177を図77の左方向に動かすと、アウタスリーブ163を左方向にシフトし、ローラ169が押し込まれて、噛み合い歯付きロータ165が左方向にシフトして噛み合い歯付きロータ168との噛み合い歯が噛み合い、クラッチ接続位置になる。
噛み合い歯に軸線75まわりの力がかかると、軸線75の右方向である噛み合わせが外れる方向に力がかかるが、この力はインナスリーブ172が受け止める。こうして、ロータ165とアーマチュア168とは、軸線75まわりにずれて、安全が確保される。ローラ169はインナスリーブ172のテーパ部分に嵌め込まれているので、ローラ169にかかる力の分力は外周方向に働く。この力はアウタスリーブ163の内周で受け止めるので、ハンドル177には伝わらず、クラッチ160が外れることはない。その他の構成と作用とは、前述の実施の形態に類似する。
図78は、本発明の実施の他の形態におけるクラッチ60および減速機88付き電動モータ87を組み合わせた駆動源89とその付近を示す断面図である。この実施の形態は、前述の実施の形態に類似し、対応する部分には、同じ参照符を付す。注目すべきは、体幹下部保持具30と大腿保持具40とのいずれか一方と、クラッチ60との間に、駆動源89が設けられ、クラッチ60の接続状態でそのクラッチ60の回転軸線と共通な直線まわりにトルクを発生する。この実施の形態によれば、中腰作業での中腰姿勢保持および持ち上げを、駆動源による上向きの力モーメントを作用してアシストすることにより、腰痛を防ぐべく腰椎(腰関節)と背筋をアシストすることができる。
モータ87のハウジングである本体部90は、クラッチ本体61を介してブラケット91によってフイールド64に固定され、体幹下部保持具30の脇部フレーム32に固定される。モータ87の出力軸は、回転体62および大腿フレーム80に固定され、電磁コイル63が励磁ないとき、摩擦板65に摩擦板68が吸着されず、モータ87の回転トルクが体幹下部保持具30の脇部フレーム32と大腿保持具40の上下のフレーム片81、82との間の相対的な角変位力として作用する。
クラッチ60のon/off動作について、クラッチ60をoffしてから、すぐにモータ87は回転動作を開始する。またモータ87が停止してから、すぐにクラッチ60をonする。
本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1) 装着者に装着されて保持される保持装置と、
保持装置に設けられるアシスト駆動機構であって、装着者の体幹下部の左右両側方にそれぞれ配置されて左右方向の軸線まわりに駆動トルクを発生する一対の駆動源を有し、各駆動源の駆動トルクによって、体幹と左右の各大腿との間に支持力モーメントをそれぞれ与えるアシスト駆動機構と、
装着者の前記左右方向の軸線まわりの体幹と左右の各大腿との相対的な角度をそれぞれ検出する一対の角度センサと、
保持装置に設けられ、体幹の加速度を検出する加速度センサと、
加速度センサおよび角度センサからの出力に応答し、足の着地状態を判断する着地判断手段と、
着地判断手段からの出力に応答し、着地状態にある支持脚に、その支持脚側の駆動源によって、支持する方向に支持力モーメントを与え、着地していない遊脚に、その遊脚側の駆動源によって、振り上げる方向に振り上げ力モーメントを与える駆動制御手段とを含み、
前記着地判断手段は、前記加速度センサが検出する体幹の上下方向における加速度の極大値によって足が着地していると判断し、前記加速度センサが前記加速度の極大値を検出する時刻において、前記各角度センサが検出する体幹と左右の各大腿との相対的な角度を比較して、大きい方の角度が得られた足が着地した支持脚であり、小さい方の角度が得られた足が遊脚であると判断することを特徴とする装着型支援ロボット装置。
(2) (e)体幹保持具は、
(e1)装着者の体幹上部に装着されて保持される体幹上部保持具20と、
(e2)装着者の体幹下部に装着されて保持される体幹下部保持具30であって、
(e2-1)体幹下部の左右両側方から背後にわたって(体幹下部の背後では、臀部および仙骨部よりも上方の腰部および脊柱部下部を含む)体幹下部の後半周を覆う外囲部と、体幹下部の背後で外囲部から立ち上がる背板とを有する、全体が剛性の面状フレーム31と、
(e2-2)面状フレームに連結され、体幹下部の左右両側方から腹部にわたって体幹下部の前半周を覆うベルト36とを有する体幹下部保持具30とを含み、
(f)クラッチ60は、その遮断状態で前記回転軸線まわりに相互に角変位自在の一対のクラッチ部材のうち、一方のクラッチ部材が面状フレーム31に取り付けられ、
(g)大腿保持具40と他方のクラッチ部材とに取り付けられる大腿フレーム80であって、
(g1)股関節付近から大腿に沿って左右両側方で、下方に延びてそれぞれ配置される一対の上フレーム片であって、各上フレーム片の上端部と、他方のクラッチ部材とが、左右方向の軸線まわりの相対的な回転を阻止されて取付けられる上フレーム片81と、
(g2)大腿保持具40から大腿に沿って左右両側方で、上方に延びてそれぞれ配置される一対の下フレーム片82とを有する大腿フレーム80と、
(h)各上フレーム片81の下端部と、各下フレーム片82とを、前後方向の軸線まわりに角変位自在にそれぞれ連結する第1受動回転軸83と、
(i)各下フレーム片82の下端部と、大腿保持具40とを、左右方向の軸線まわりに角変位自在にそれぞれ連結する第2受動回転軸45とを含むことを特徴とする。
体幹下部保持具30を、外囲部と背板とを有する全体が剛性の面状フレーム31と、ベルト36とによって、構成し、体幹11と大腿保持具40との中腰姿勢保持と、上向きモーメントのアシストとを、確実に迅速に行なうことができるようになる。
第1受動回転軸83によれば、(a)面状フレーム31の左右側面剛体フレームである脇部フレーム31と、腰後部剛体フレームである背部フレーム33のみによって、体幹11の下部の側部から背後に装着としたので、軽量化でき、装着者のねじりにも対応でき、装着者のねじりの動作を拘束せず、(b)左右の股関節中心の左右両サイドに取り付けたクラッチ60の下端部に固定される上フレーム片81を、前後方向軸まわりに回転する受動回転軸83を介して、大腿剛体フレームである下フレーム片82に取り付ける構成が実現されるので、装着者11の上半身の左右への傾きに対応でき、装着者11のこの上半身の左右への傾き動作を拘束せず、(c)装着者の左右方向への開脚動作に対応でき、したがって、装着者11のこの左右方向への開脚動作を拘束しない。
第2受動回転軸45は、大腿保持具40と大腿フレーム80との角変位を円滑に行なうことを確実にする。
(3) 面状フレーム31の外囲部は、
前記一方のクラッチ部材が固定され、上方に立ち上がる左右一対の脇部フレーム32と、
脇部フレーム32から体幹下部の後方に弯曲して延び、体幹下部の後方で左右の端部が背板34にそれぞれ固定される左右一対の背部フレーム33とを含むことを特徴とする。
面状フレーム31を高い剛性で実現することが容易である。脇部フレーム32は、体幹11の左右で立ち上がるので、装着者10の体幹11が左右に傾くことを抑制し、これによって、中腰姿勢のアシストが確実になる。