JP7386033B2 - 搬送装置 - Google Patents

Description

本発明は、シートを搬送する搬送装置に関する。

シートを搬送する搬送装置として、エア吸引方式の搬送装置が知られている。例えば、用紙を搬送しつつ、インクジェットヘッドから用紙へインクを吐出して印刷するライン型のインクジェット印刷装置において、用紙を搬送するために、エア吸引方式の搬送装置が用いられている。

この種の搬送装置として、特許文献１には、図８に示すような、複数のベルト穴１０１ａを有する搬送ベルト１０１と、表面から掘り下げられた凹部１０３および凹部１０３に形成された吸引穴（図示せず）を有するプラテン１０２と、プラテン１０２の下方に設けられたファン（図示せず）とを備える搬送装置が開示されている。この搬送装置は、ファンの駆動により凹部１０３に負圧を発生させ、この負圧によりベルト穴１０１ａに発生する吸着力で用紙Ｐを搬送ベルト１０１上に吸着保持しつつ、搬送ベルト１０１を移動させて用紙Ｐを搬送する。

特許文献１の搬送装置では、図８に示すように、１つの凹部１０３に対して１つのベルト穴１０１ａが重なるように凹部１０３の長さおよびベルト穴１０１ａの間隔を設定し、１つの凹部１０３に２つ以上のベルト穴１０１ａが重ならないようにしている。このため、用紙Ｐに覆われたベルト穴１０１ａが重なる凹部１０３が搬送ベルト１０１および用紙Ｐによって閉塞されるので、凹部１０３内の負圧の損失が抑えられる。この結果、搬送ベルト１０１への用紙Ｐの吸着力の低下が抑えられる。

特開２００９－２８０３２１号公報

しかしながら、特許文献１の搬送装置では、用紙Ｐに覆われたベルト穴１０１ａのうち用紙Ｐの最も先端側（用紙Ｐの搬送方向における最も下流側）のベルト穴１０１ａが重なっている凹部１０３の下流側に隣接する凹部１０３にもベルト穴１０１ａが重なっている状態となる。この凹部１０３はベルト穴１０１ａによって大気開放されているため、負圧は生成されていない（負圧が弱い状態を含む）。

このため、用紙Ｐに覆われたベルト穴１０１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴１０１ａが重なっている凹部１０３とその下流側に隣接する凹部１０３との間の領域においてプラテン１０２の上面と搬送ベルト１０１との間に隙間ができ、図９に示すように、用紙Ｐに覆われたベルト穴１０１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴１０１ａが重なっている凹部１０３にその下流側に隣接する凹部１０３から空気が流入することがある。これにより、用紙Ｐに覆われたベルト穴１０１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴１０１ａが重なっている凹部１０３内の負圧が小さくなることがある。この結果、用紙Ｐの先端部において搬送ベルト１０１への用紙Ｐの吸着力が低下することがある。

また、特許文献１の搬送装置では、用紙Ｐに覆われたベルト穴１０１ａのうち最も用紙Ｐの先端側のベルト穴１０１ａが凹部１０３に重なることで、凹部１０３が閉塞されて凹部１０３内の負圧生成が開始される。すなわち、図９に示すように、用紙Ｐに覆われたベルト穴１０１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴１０１ａが次に重なる凹部１０３はベルト穴１０１ａによって大気開放されている。このため、凹部１０３への用紙Ｐの先端部の到達に対して、用紙Ｐの先端部に対するベルト穴１０１ａによる吸着力の発生が遅れることがある。このことによっても、用紙Ｐの先端部において搬送ベルト１０１への用紙Ｐの吸着力が低下することがある。

用紙の搬送ベルトへの吸着力が低下すると、搬送ベルトからの用紙の浮きが生じることがある。用紙の浮きが生じると、用紙がインクジェットヘッドに接触してインクジェットヘッドの破損等が生じることがある。また、用紙の浮きが搬送ジャムとして検出され、用紙搬送が停止されることがある。

本発明は上記に鑑みてなされたもので、シートの浮きを軽減できる搬送装置を提供することを目的とする。

上記目的を達成するため、本発明の搬送装置は、シートの搬送方向に沿って配置された複数のベルト穴を有し、シートを前記搬送方向に搬送する搬送ベルトと、前記ベルト穴が通過する箇所において前記搬送ベルト側の面に前記搬送方向に沿って配置され空気が吸引される複数の凹部を有し、前記搬送ベルトを支持する支持板とを備え、前記搬送方向における前記ベルト穴の間隔が、前記搬送方向に互いに隣接する２つの前記凹部のうちの上流側の前記凹部の上流端と下流側の前記凹部の下流端との間の距離以上であることを特徴とする。

本発明の搬送装置によれば、シートの浮きを軽減できる。

実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。 図１に示すインクジェット印刷装置の搬送部の部分拡大断面図である。 図２のＡ－Ａ線に沿った搬送部の部分拡大断面図である。 用紙の先端付近における凹部内の負圧の生成状況を示す図である。 比較例における用紙の先端付近における凹部内の負圧の生成状況を示す図である。 用紙に覆われたベルト穴のうち用紙の最も先端側のベルト穴が重なっている凹部における圧力損失率を測定した実験例および比較例の実験結果を示す図である。 用紙浮き高さを測定した実験例および比較例の実験結果を示す図である。 従来の搬送装置の構成の一例を示す図である。 図８に示す搬送装置における用紙の先端付近における凹部内の負圧の生成状況を示す図である。

以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。

以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。

図１は、本発明の実施の形態に係る搬送装置が設けられたインクジェット印刷装置の概略構成図である。図２は、図１に示すインクジェット印刷装置の搬送部の部分拡大断面図である。図３は、図２のＡ－Ａ線に沿った搬送部の部分拡大断面図である。以下の説明において、図１の紙面に直交する方向を前後方向とする。また、図１における紙面の上下左右を上下左右方向とする。図１において、左から右へ向かう方向が用紙の搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、用紙の搬送方向における上流、下流を意味する。

図１に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置１は、印刷部２と、搬送部（搬送装置に相当）３とを備える。

印刷部２は、搬送部３により搬送される用紙Ｐに画像を印刷する。印刷部２は、複数のインクジェットヘッド１１を備える。

インクジェットヘッド１１は、用紙Ｐにインクを吐出して画像を印刷する。インクジェットヘッド１１は、複数のノズル（図示せず）を有し、ノズルからインクを吐出する。インクジェットヘッド１１は、搬送部３の上方に配置されている。

搬送部３は、給紙部（図示せず）から給紙された用紙（シートに相当）Ｐを、エア吸引により吸着保持しつつ搬送する。

搬送部３は、搬送ベルト２１と、駆動ローラ２２と、従動ローラ２３～２５と、プラテン（支持板に相当）２６と、プラテンプレート２７と、チャンバ２８と、ファン２９と、複数の紙押さえローラ３０とを備える。

搬送ベルト２１は、用紙Ｐを吸着保持して搬送する。搬送ベルト２１は、駆動ローラ２２および従動ローラ２３～２５に掛け渡された環状のベルトである。搬送ベルト２１には、多数のベルト穴２１ａが形成されている。搬送ベルト２１は、ファン２９の駆動によりベルト穴２１ａに発生する吸着力により、搬送面２１ｂ上に用紙Ｐを吸着保持する。搬送面２１ｂは、駆動ローラ２２と従動ローラ２３との間の搬送ベルト２１の水平部分の上面である。搬送ベルト２１は、図１における時計回り方向に回転（無端移動）することで、吸着保持した用紙Ｐを左から右へ向かう搬送方向に搬送する。

ベルト穴２１ａは、搬送方向（左右方向）に沿った各列において、所定のピッチ（間隔）Ｋで配置されている。また、搬送方向に直交する用紙幅方向（前後方向）に互いに隣接する２列のベルト穴２１ａが、左右方向に半ピッチ分だけずれるように配置されている。すなわち、ベルト穴２１ａは、千鳥状に配置されている。

駆動ローラ２２は、搬送ベルト２１を回転させる。駆動ローラ２２は、図示しないモータにより回転駆動される。従動ローラ２３～２５は、駆動ローラ２２とともに搬送ベルト２１を支持する。従動ローラ２３～２５は、搬送ベルト２１に従動回転する。従動ローラ２３は、駆動ローラ２２と同じ高さで、駆動ローラ２２の左方に配置されている。従動ローラ２４，２５は、駆動ローラ２２および従動ローラ２３の下方において、互いに左右方向に離間して、同じ高さに配置されている。

プラテン２６は、駆動ローラ２２と従動ローラ２３との間において搬送ベルト２１の下側に配置され、搬送ベルト２１を摺動可能に支持する板状の部材である。プラテン２６は、複数の凹部３１と、複数の吸引穴３２とを有する。

凹部３１は、プラテン２６の搬送ベルト２１側の面である表面（上面）において、裏面（下面）に向かって掘り下げて形成されている。凹部３１は、ファン２９の駆動により空気が吸引されて負圧が生成される部分である。凹部３１は、左右方向に平行な辺および左右方向に直交する辺（前後方向に平行な辺）を有する平面視矩形状に形成されている。凹部３１の左右方向における長さＬおよび前後方向における長さＷは、いずれもベルト穴２１ａの直径Ｄ以上である。すなわち、「Ｄ≦ＬかつＤ≦Ｗ」である。ここで、ベルト穴２１ａの直径Ｄは、ベルト穴２１ａの左右方向（搬送方向）における長さおよび前後方向（用紙幅方向）における長さに相当する。

凹部３１は、左右方向に沿って所定のピッチで配置されている。また、前後方向に互いに隣接する２列の凹部３１が、左右方向に半ピッチ分だけずれるように配置されている。すなわち、凹部３１は、プラテン２６の表面に千鳥状に配置されている。凹部３１の前後方向におけるピッチは、ベルト穴２１ａの前後方向におけるピッチと等しい。凹部３１は、搬送ベルト２１のベルト穴２１ａが通過する箇所に配置されている。

ここで、搬送ベルト２１のベルト穴２１ａおよびプラテン２６の凹部３１は、左右方向に互いに隣接する２つのベルト穴２１ａのうちの上流側のベルト穴２１ａが、当該上流側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１の下流端に到達する際には、左右方向に互いに隣接する２つのベルト穴のうちの下流側のベルト穴２１ａが、上流側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１の下流側に隣接する凹部３１より下流側に抜けているように形成されている。

具体的には、ベルト穴２１ａおよび凹部３１は、「Ｋ≧ＲかつＤ≦Ｌ」を満たすように形成されている。

ここで、Ｒは、図２に示すように、左右方向に互いに隣接する２つの凹部３１のうちの上流側の凹部３１の上流端と下流側の凹部３１の下流端との間の距離である。換言すれば、距離Ｒは、左右方向に互いに隣接する２つの凹部３１のうちの上流側の凹部３１の上流側の壁３３と、下流側の凹部３１の下流側の壁３３との間の距離である。壁３３は、左右方向において互いに隣接する凹部３１間を隔てるものである。

また、ベルト穴２１ａおよび凹部３１は、ベルト穴２１ａの平面視面積が凹部３１の平面視面積以下となるように形成されている。

吸引穴３２は、凹部３１から空気を吸引するための穴である。吸引穴３２は、凹部３１の底面の一部からプラテン２６の裏面に貫通するように形成されている。吸引穴３２は、各凹部３１に１つずつ開口するように形成されている。

プラテンプレート２７は、プラテン２６の下方に配置され、複数のスペーサ３６を介してプラテン２６を支持する板状の部材である。プラテンプレート２７には、ファン２９が吸引する空気を通過させるための複数の貫通穴２７ａが形成されている。

チャンバ２８は、搬送ベルト２１のベルト穴２１ａに吸着力を発生させるための負圧室を形成するものである。チャンバ２８は、駆動ローラ２２と従動ローラ２３との間において、プラテンプレート２７の裏面側に設けられている。

ファン２９は、チャンバ２８から排気する。これにより、ファン２９は、チャンバ２８内に負圧を発生させ、この負圧によりベルト穴２１ａに発生する吸着力により、用紙Ｐを搬送ベルト２１に吸着させる。

紙押さえローラ３０は、搬送ベルト２１により搬送される用紙Ｐを搬送面２１ｂに押さえるものである。紙押さえローラ３０は、回転する搬送ベルト２１に従動して回転する。

次に、インクジェット印刷装置１の動作について説明する。

インクジェット印刷装置１で印刷を行う際、まず、駆動ローラ２２およびファン２９が駆動を開始する。

駆動ローラ２２の駆動により、搬送ベルト２１は、図１における時計回り方向に回転し、駆動ローラ２２と従動ローラ２３との間において用紙Ｐの搬送方向に移動する。搬送ベルト２１が回転すると、ベルト穴２１ａがプラテン２６の凹部３１の上を左から右へ通過して行く。

一方、ファン２９の駆動により、チャンバ２８からの排気が行われると、チャンバ２８内に負圧が生成される。

凹部３１は、吸引穴３２およびプラテンプレート２７の貫通穴２７ａを介してチャンバ２８に連通されているため、チャンバ２８内に負圧が生成されると、ベルト穴２１ａが重なっておらず搬送ベルト２１により閉塞された凹部３１には負圧が生成される。ベルト穴２１ａが重なっている凹部３１は、ベルト穴２１ａにより大気開放され、負圧は生成されていない状態になる。

駆動ローラ２２およびファン２９の駆動開始後、給紙部（図示せず）から搬送部３に用紙Ｐが給紙されると、給紙された用紙Ｐにより、一部のベルト穴２１ａが覆われる。用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａが重なる凹部３１は搬送ベルト２１および用紙Ｐによって閉塞されるので、当該凹部３１は負圧状態となる。これにより、ベルト穴２１ａに吸着力が発生し、用紙Ｐがベルト穴２１ａに吸着される。

搬送ベルト２１は、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａに発生した吸着力により、用紙Ｐを搬送面２１ｂ上に吸着保持する。搬送ベルト２１は、図１における時計回り方向に回転することで、吸着保持した用紙Ｐを右方向に搬送する。

インクジェットヘッド１１は、搬送ベルト２１により搬送される用紙Ｐにインクを吐出して画像を印刷する。印刷された用紙Ｐは、排紙部（図示せず）により排紙される。

ここで、搬送される用紙Ｐの先端（下流端）付近における凹部３１内の負圧の生成状況を図４に示す。図４の例では、Ｋ＝Ｒである。この場合、１つのベルト穴２１ａの全体が１つの凹部３１に重なるタイミングでは、左右方向において１つおきの凹部３１にベルト穴２１ａが重なるようになっている。この場合、図４に示すように、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１に対して下流側に隣接する凹部３１に、負圧が生成されている状態とすることができる。

本実施の形態とは異なり、搬送方向におけるベルト穴２１ａの間隔と凹部３１の間隔とが等しい構成の場合において、搬送される用紙Ｐの先端付近における凹部３１内の負圧の生成状況の例を図５に示す。この場合、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１に対して下流側に隣接する凹部３１には、負圧が生成されていない。

このため、図５の構成では、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１の下流側の壁３３の上端面と搬送ベルト２１との間に隙間ができ、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１にその下流側に隣接する凹部３１から空気が流入することがある。これにより、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１内の負圧の損失が生じることがある。この結果、用紙Ｐの先端部において搬送ベルト２１への用紙Ｐの吸着力が低下することがある。

また、図５の構成では、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが凹部３１に重なることで、凹部３１が閉塞されて凹部３１内の負圧生成が開始される。このため、凹部３１への用紙Ｐの先端部の到達に対して、用紙Ｐの先端部に対するベルト穴２１ａによる吸着力の発生が遅れることがある。このことによっても、用紙Ｐの先端部において搬送ベルト２１への用紙Ｐの吸着力が低下することがある。

搬送ベルト２１への用紙Ｐの吸着力が低下すると、搬送ベルト２１からの用紙Ｐの浮きが生じることがある。用紙Ｐの浮きが生じると、用紙Ｐがインクジェットヘッド１１に接触してインクジェットヘッド１１の破損等が生じることがある。また、用紙Ｐの浮きが搬送ジャムとして検出され、用紙搬送が停止されることがある。

これに対し、本実施の形態のインクジェット印刷装置１では、上述のように、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａの全体が重なっている凹部３１に対して下流側に隣接する凹部３１にはベルト穴２１ａが重なっていない。このため、当該凹部は搬送ベルト２１により閉塞され、負圧が生成されている。

このため、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１の下流側の壁３３の上端面と搬送ベルト２１との間に隙間ができることは抑えられる。したがって、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１において、その下流側に隣接する凹部３１から空気が流入することによる圧力損失が抑えられる。

また、インクジェット印刷装置１では、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが次に重なる凹部３１はすでに負圧が生成されている状態になっている。このため、凹部３１への用紙Ｐの先端部の到達に対して、用紙Ｐの先端部に対するベルト穴２１ａによる吸着力の発生が遅れることが抑えられる。

したがって、インクジェット印刷装置１では、用紙Ｐの先端部における搬送ベルト２１への用紙Ｐの吸着力の低下が抑えられる。この結果、搬送ベルト２１からの用紙Ｐの浮きが抑えられる。

ここで、前述のように、「Ｄ≦Ｗ」であるので、凹部３１に当該凹部３１を通過するベルト穴２１ａの列に対して前後方向に隣接する列のベルト穴２１ａの一部が重なることで当該凹部３１が大気開放されて負圧が損失することは抑えられる。

インクジェット印刷装置１において、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１における圧力損失率を測定した実験例の実験結果を図６に示す。図６には、比較例として、図５の構成における同様の実験の結果も示す。

図６における圧力損失率は、チャンバ２８内に生成された負圧に対する凹部３１内における負圧の損失分の比率である。図６には、実験例および比較例のそれぞれにおいて、ファン２９の出力がＡ１～Ａ４[％]の場合の圧力損失率を測定した結果を示している。

図６に示すように、インクジェット印刷装置１における実験例では、比較例よりも、圧力損失率が小さく抑えられている。

また、インクジェット印刷装置１において、用紙Ｐの先端部の搬送面２１ｂからの高さである用紙浮き高さを測定した実験例の実験結果を図７に示す。図７には、比較例として、図５の構成における同様の実験の結果も示す。

図７における搬送位置は、搬送方向（左右方向）における搬送面２１ｂ上の位置である。なお、図７において、用紙浮き高さがほとんど０（ゼロ）となっている位置は、紙押さえローラ３０が配置された位置に対応している。

図７に示すように、インクジェット印刷装置１における実験例では、比較例よりも、搬送ベルト２１からの用紙Ｐの浮きが小さく抑えられている。

また、比較例では、図７中の破線で囲んだ箇所において、特に用紙浮き高さが増大している。これは、前述したように、図５の構成では、凹部３１への用紙Ｐの先端部の到達に対して、用紙Ｐの先端部に対するベルト穴２１ａによる吸着力の発生が遅れることによるものである。インクジェット印刷装置１における実験例では、このような一時的な用紙浮き高さの増大は生じていない。

以上説明したように、インクジェット印刷装置１では、ベルト穴２１ａおよび凹部３１は、「Ｋ≧ＲかつＤ≦Ｌ」を満たすように形成されている。これにより、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１の下流側に隣接する凹部３１を、負圧が生成されている状態とすることができる。

このため、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１において、その下流側に隣接する凹部３１から空気が流入することによる圧力損失が抑えられる。これにより、用紙Ｐの先端部における搬送ベルト２１への用紙Ｐの吸着力の低下が抑えられる。また、前述のように、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが次に重なる凹部３１はすでに負圧が生成されている状態になっているので、凹部３１への用紙Ｐの先端部の到達に対して、用紙Ｐの先端部に対するベルト穴２１ａによる吸着力の発生が遅れることが抑えられる。この結果、インクジェット印刷装置１では、搬送ベルト２１からの用紙Ｐの浮きを軽減できる。

なお、従来、ベルト穴２１ａは、吸引搬送性を担保できる大きさで形成されており、一般に、Ｄ≦Ｌとなっている。このような一般的な条件の下では、Ｋ≧Ｒを満たすようにベルト穴２１ａおよび凹部３１を形成することで、上述のような、搬送ベルト２１からの用紙Ｐの浮きを軽減できる効果が得られる。

また、インクジェット印刷装置１では、用紙Ｐに覆われたベルト穴２１ａのうち用紙Ｐの最も先端側のベルト穴２１ａが重なっている凹部３１における圧力損失率が小さく抑えられるので、ファン２９の出力を抑え、消費電力を抑制することが可能になる。

また、インクジェット印刷装置１では、ベルト穴２１ａおよび凹部３１は、Ｄ≦Ｗを満たすように形成されている。これにより、凹部３１に当該凹部３１を通過するベルト穴２１ａの列に対して前後方向に隣接する列のベルト穴２１ａの一部が重なることで当該凹部が大気開放されて負圧が損失することが抑えられる。なお、凹部３１に当該凹部３１を通過するベルト穴２１ａの列に対して前後方向に隣接する列のベルト穴２１ａの一部が重なるとしても、その重なる領域の大きさが、当該凹部３１の負圧に与える影響が十分に小さい程度であれば、Ｄ＞Ｗであってもよい。

また、インクジェット印刷装置１では、ベルト穴２１ａの平面視面積が凹部３１の平面視面積以下である。これにより、ベルト穴２１ａが凹部３１からはみ出す大きさとなることが抑えられるので、ベルト穴２１ａにおける吸着力を十分に確保でき、安定した用紙Ｐの吸引搬送を行うことが可能になる。

また、上述した実施の形態では、ベルト穴２１ａが平面視円形状で凹部３１が平面視矩形状である構成を示したが、ベルト穴２１ａおよび凹部３１の形状はこれに限らない。

また、上述した実施の形態では、用紙の搬送を行うインクジェット印刷装置について説明したが、これに限らず、シートを搬送する搬送装置であればよい。

本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。

［付記］
本出願は、以下の発明を開示する。

（付記１）
シートの搬送方向に沿って配置された複数のベルト穴を有し、シートを前記搬送方向に搬送する搬送ベルトと、
前記ベルト穴が通過する箇所において前記搬送ベルト側の面に前記搬送方向に沿って配置され空気が吸引される複数の凹部を有し、前記搬送ベルトを支持する支持板とを備え、
前記搬送方向における前記ベルト穴の間隔が、前記搬送方向に互いに隣接する２つの前記凹部のうちの上流側の前記凹部の上流端と下流側の前記凹部の下流端との間の距離以上であることを特徴とする搬送装置。

（付記２）
前記搬送方向における前記ベルト穴の長さが、前記搬送方向における前記凹部の長さ以下であることを特徴とする付記１に記載の搬送装置。

（付記３）
前記搬送方向における前記ベルト穴の長さが、前記搬送方向における前記凹部の長さ以下であり、
前記搬送方向に直交する方向における前記ベルト穴の長さが、前記搬送方向に直交する方向における前記凹部の長さ以下であることを特徴とする付記１に記載の搬送装置。

（付記４）
前記ベルト穴の平面視面積が、前記凹部の平面視面積以下であることを特徴とする付記１乃至３のいずれかに記載の搬送装置。

１ インクジェット印刷装置
２ 印刷部
３ 搬送部
１１ インクジェットヘッド
２１ 搬送ベルト
２１ａ ベルト穴
２１ｂ 搬送面
２６ プラテン
２７ プラテンプレート
２８ チャンバ
２９ ファン
３１ 凹部
３２ 吸引穴
３３ 壁

Claims (4)

1. シートの搬送方向に沿って配置された複数のベルト穴を有し、シートを前記搬送方向に搬送する搬送ベルトと、
   前記ベルト穴が通過する箇所において前記搬送ベルト側の面である表面から裏面に向かって掘り下げて形成され前記搬送方向に沿って配置された複数の凹部、および前記複数の凹部のそれぞれの底面の一部から前記裏面に貫通し前記凹部から空気を吸引する複数の吸引穴を有し、前記搬送ベルトを支持する支持板とを備え、
   前記搬送方向における前記ベルト穴の間隔が、前記搬送方向に互いに隣接する２つの前記凹部のうちの上流側の前記凹部の上流端と下流側の前記凹部の下流端との間の距離以上であることを特徴とする搬送装置。
2. シートの搬送方向に沿って配置された複数のベルト穴を有し、シートを前記搬送方向に搬送する搬送ベルトと、
   前記ベルト穴が通過する箇所において前記搬送ベルト側の面に前記搬送方向に沿って配置され空気が吸引される複数の凹部を有し、前記搬送ベルトを支持する支持板とを備え、
   前記搬送方向における前記ベルト穴の間隔が、前記搬送方向に互いに隣接する２つの前記凹部のうちの上流側の前記凹部の上流端と下流側の前記凹部の下流端との間の距離以上であり、
   前記搬送方向における前記ベルト穴の長さが、前記搬送方向における前記凹部の長さ以下であることを特徴とする搬送装置。
3. シートの搬送方向に沿って配置された複数のベルト穴を有し、シートを前記搬送方向に搬送する搬送ベルトと、
   前記ベルト穴が通過する箇所において前記搬送ベルト側の面に前記搬送方向に沿って配置され空気が吸引される複数の凹部を有し、前記搬送ベルトを支持する支持板とを備え、
   前記搬送方向における前記ベルト穴の間隔が、前記搬送方向に互いに隣接する２つの前記凹部のうちの上流側の前記凹部の上流端と下流側の前記凹部の下流端との間の距離以上であり、
   前記搬送方向における前記ベルト穴の長さが、前記搬送方向における前記凹部の長さ以下であり、
   前記搬送方向に直交する方向における前記ベルト穴の長さが、前記搬送方向に直交する方向における前記凹部の長さ以下であることを特徴とする搬送装置。
4. シートの搬送方向に沿って配置された複数のベルト穴を有し、シートを前記搬送方向に搬送する搬送ベルトと、
   前記ベルト穴が通過する箇所において前記搬送ベルト側の面に前記搬送方向に沿って配置され空気が吸引される複数の凹部を有し、前記搬送ベルトを支持する支持板とを備え、
   前記搬送方向における前記ベルト穴の間隔が、前記搬送方向に互いに隣接する２つの前記凹部のうちの上流側の前記凹部の上流端と下流側の前記凹部の下流端との間の距離以上であり、
   前記ベルト穴の平面視面積が、前記凹部の平面視面積以下であることを特徴とする搬送装置。