JP7375959B2 - 車両の前部構造 - Google Patents
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Description
車両2の前部には、図1に示すように、左右両側にフロントドア4により開閉されるドア開口部5が設けられている。この左右のドア開口部5の前端縁にはそれぞれピラー部材10(詳細後述)が立設されており、左右のピラー部材10にてルーフパネル(図示省略)の前部が支持されている。また左右のピラー部材10とルーフパネルとによって囲まれた位置にはフロントガラスFGが設けられている。そして各ピラー部材10は、フロントドア4のベルトラインBRよりも下側のピラー支柱部11がフェンダパネル6によって覆われている。この左右のフェンダパネル6の間には、車両2のエンジンルームERを開閉可能に構成されたエンジンフード7が設けられている。
ここで図3に示すカウル部材20は、傾斜前壁部23と略U字形の水路部24と傾斜後壁部25とから溝状に形成されており、傾斜前壁部23の下部にダッシュパネル8が接合されている。そしてダッシュパネル8の後側に位置するカウル部材20の水路部24、及び傾斜後壁部25は車室R側に配置されている。またカウル部材20には、傾斜前壁部23の上端前側に前側フランジ部23fが設けられており、その前側フランジ部23fによって、車幅方向に延びる車体外装部品であるカウルルーバ28が支持されている。またカウル部材20の傾斜後壁部25の上端後側には後側フランジ部25fが設けられており、その後側フランジ部25fにカウルアッパパネル27の下側フランジ部27fが接続されている。そしてカウル部材20の上部をなすカウルアッパパネル27は、その上面がフロントガラスFGの下部裏面に接着剤等により固着されることで、フロントガラスFGの下部を支持できるように構成されている。なおフロントガラスFGの下端部は、カウルルーバ28の後端縁のガラス接続壁28aに対して固定部材29によって固着されている。
また図2に示す車室R内には、パイプ状のインパネリインフォース30が車幅方向に延びるように設けられている。このインパネリインフォース30は、インストルメントパネル(図示省略)の内側に配置された状態で、上述したカウル部材20の車両後方位置に配置されている。そしてインパネリインフォース30の車幅方向端部(右端と左端)が、後述するブラケット31を介して、その車幅方向外側に位置する左右のピラー支柱部11側に取り付けられている。またインパネリインフォース30には、ステアリング(図示省略)を支持する部位とダッシュパネル8の上部とを連結する梁状のブレース32が設けられている(図2では、便宜上、ブレース32を二点破線で図示する)。
そして図2及び図3を参照して、車両2の前部構造は、上述したように、カウル部材20と、インパネリインフォース30と、ピラー部材10(詳細後述)とを備えている。また各ピラー部材10には、インパネリインフォース30の取付け箇所となるガセット部材40が設けられている。この種の車両2の前部構造では、ステアリング剛性等を考慮して、インパネリインフォース30の取付け箇所周辺の強度を確保することが望ましい。また車両前方からフロントガラスFGに加わる衝撃荷重をカウル部材20の変形で吸収することを考慮して、このカウル部材20の下方への変形量が確保されることが望ましい。そこで本実施例では、後述する構成によって、インパネリインフォース30の取付け箇所周辺の強度を確保しながらも、カウル部材20の下方への変形量を確保することとした。以下、ピラー部材10及びガセット部材40の詳細と、このガセット部材40とカウル部材20とインパネリインフォース30の配置関係について詳述する。
左右のピラー部材は概ね同一の構成を有しているため、車両右側に位置する右側のピラー部材10を一例にその詳細を説明する。図4に示す右側のピラー部材10は、上述したピラー支柱部11と、ピラー支柱部11に設けられたガセット部材40とを有している。ここでピラー支柱部11は、図5に示すようにピラーインナパネル12とピラーアウタパネル13とから筒状に形成されており、このピラーインナパネル12にて車幅方向内側の面(図5の左面)が構成されている。そしてピラー部材10のピラー支柱部11は、その車幅方向内側が後述するガセット部材40にて補強されている。すなわちピラーインナパネル12は、その車幅方向内側にガセット部材40が重なって嵩上げ(補強)された状態となり、車幅方向内側から加わる荷重に対する強度が確保されている。
また図4に示すガセット部材40は、前方を臨む前壁部41と、後方を臨む後壁部42と、左方を臨む左壁部43と、上方を臨む上壁部44と、下方を臨む下壁部45とから中空箱状に形成され、右側が解放されている。ここで前壁部41は、図5に示すように、前方に向かうに従って次第に右側に傾斜し、後壁部42及び左壁部43は、車両上下方向に起立する縦壁状に形成されている。また図6に示す上壁部44及び下壁部45は、車幅方向(左右方向)に延びる横壁状に形成されている。そして図4~図6に示す各壁部41~45には、そのピラー部材10側(各図の右側)の縁端が折り曲げ成形されることでフランジ部46が形成されており、このフランジ部46にてピラーインナパネル12に溶接又は締結固定されている。そしてガセット部材40は、図5に示すように、ピラーインナパネル12に固定された状態で、上述したカウル部材20の車両後方位置に配置されている。すなわちガセット部材40は、ピラーインナパネル12よりも車両前後方向の寸法が短くされており、ガセット部材40の前端(前壁部41に設けた前側のフランジ部46)が、カウル部材20の車両後方位置でピラーインナパネル12に固定されている。
ここでピラー支柱部11のピラーインナパネル12には、図4~図6を参照して、カウル部材20とガセット部材40とをつなぐ方向(各図の車両前後方向)に延びる上下のビード部14,15が形成されている。上下のビード部14,15は、ピラーインナパネル12を局部的に車幅方向(例えば車幅方向内側となる左側)へ盛り上がらせる方向に変形させて形成されている。そして上側のビード部14は、図5及び図6に示す取付け壁部50の上側締結孔51の高さ位置と概ね一致する高さ位置に形成されて、ピラーインナパネル12を概ね横断するように延設されている。すなわち上側のビード部14は、図5に示すように、ピラー部材10に対するカウル部材20の固定箇所Xあたりからガセット部材40の前端(前壁部41に設けた前側のフランジ部46)を跨いで車両後方に延びている。また図4及び図6に示す下側のビード部15は、取付け壁部50の下側締結孔52の高さ位置と概ね一致する高さ位置に形成されている。この下側のビード部15は、ピラー部材10に対するカウル部材20の固定箇所Xあたりからガセット部材40の前端を跨いでガセット部材40の前後方向半ば近くまで延設されている。さらに図6に示す上下のビード部14,15の車両上下方向の高さ位置を、上述したように取付け壁部50の対応する締結孔51,52に合わせることで、この取付け壁部50の剛性を一層確実に確保することが可能となる。
そして図2に示すようにインパネリインフォース30の車幅方向端部(図2の右端)は、ピラー部材10のピラーインナパネル12のガセット部材40に固定されている。このインパネリインフォース30の車幅方向端部には、図5に示すようにブラケット31が取り付けられており、このブラケット31が、その上下の位置でガセット部材40の取付け壁部50にあてがわれて締結具BTによって固定されている。こうしてインパネリインフォース30は、その車幅方向端部がガセット部材40に取付けられて支持されることで、カウル部材20の車両後方位置で車幅方向に延設している。そしてガセット部材40は、上述したようにカウル部材20の車両後方位置でピラーインナパネル12に固定されている。このためカウル部材20とピラー部材10とガセット部材40とで囲まれた位置には、車幅方向内側(各図の左側)が解放された空間部60が形成される。ここで空間部60の車両前後方向の寸法は、カウル部材20の下方への変形を許容できる限り特に限定しないが、変形の際にカウル部材20とその後方のガセット部材40とが干渉しないように設定されることが望ましい。なお図示は省略するが、車両の前部左側にも、上記空間部60と左右対称となるように別の空間部が形成されている。
上記構成の車両2の前部構造では、インパネリインフォース30の取付け箇所周辺の強度と、カウル部材20の変形量の確保とを両立することが望ましい。そこで車両2の前部構造では、図5に示すように、インパネリインフォース30の取付け箇所周辺の強度確保のために、ピラー部材10の車幅方向内側に重なるように設けられたガセット部材40に、インパネリインフォース30の車幅方向の端部が取り付けられて支持されている。そしてカウル部材20の変形量の確保のために、カウル部材20とピラー部材10とガセット部材40とで囲まれた位置には、車幅方向内側が解放された空間部60が形成される。
すなわち上記構成によると、図7に示すように、車両2の走行時に路面から伝わる振動等でインパネリインフォース30が車幅方向に振れる(図7の白矢印A1を参照)。このとき車両2の前部構造では、インパネリインフォース30から加わる荷重をピラー部材10とガセット部材40、即ち、ピラーインナパネル12を補強するように嵩上げされた部分で受けられる。このようにピラー部材10に対して加わる荷重を、ピラーインナパネル12の嵩上げ部分(剛性に優れる部分)で受けることで、インパネリインフォース30が車幅方向に動き難くなり、ステアリング剛性の確保に資する構成となる。特にガセット部材40は、上述したように、図6に示す取付け壁部50と上壁部44と下壁部45とが櫓状に形成されており、車幅方向内側から加わる荷重に対する強度が確保されている。
また図3を参照して、車両前方からフロントガラスFGに加わる衝撃荷重ILを、このフロントガラスFGを支持するカウル部材20が下方に変形することで吸収する。このような構成では、衝撃荷重ILの吸収のために、カウル部材20の下方への変形量(所定の衝撃吸収ストロークSK)を確保しておくことが望ましい。このため車両2の前部構造では、上述したように、図5に示すカウル部材20とピラー部材10とガセット部材40とで囲まれた位置に空間部60が形成され、この空間部60には、カウル部材20を補強するような部材が存在していない。このため図3に示すフロントガラスFGの衝撃荷重ILを受けたカウル部材20は、スムーズに下方に向けて変形することが可能となり、下方に変形するに従って次第に後方の空間部60に向けて潰れていく。こうして本実施例では、カウル部材20とピラー部材10とガセット部材40とで囲まれた位置に空間部60を設けることで、このカウル部材20の下方への変形量を確保することが可能となる。さらに上記構成では、カウル部材20の変形量を空間部60で確保するため、車両2の意匠に影響するカウル部材20の形状変更を要さず、車両2の意匠選択の自由度を確保することができる。
本実施形態の車両の前部構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、ピラー部材とガセット部材の構成を例示したが、ピラー部材とガセット部材の構成を限定する趣旨ではない。ガセット部材は、複数の壁部を備える箱形状や柱状や筒状(中空又は稠密)に形成することができ、そのいずれかの壁部を取付け壁部とすることができる。例えば図4に示すガセット部材では、その適宜の位置(壁部)に取付け壁部を設定でき、とりわけ後壁部と上壁部と下壁部のいずれかに取付け壁部を設定することが可能である。またガセット部材が櫓状(断面コ字形)に形成される場合、取付け壁部とこれを支える壁部を備えておればよく、その他の壁部を省略することもできる。なお取付け壁部に対するインパネリインフォースの固定手法は、締結のほか、溶接等の各種の手法を採用できる。またビード部は、カウル部材とガセット部材とをつなぐ方向に延びておればよく、概ね直線的である場合のほか、傾斜していたり曲がっていたりしてもよく、必要に応じて格子状に形成することも可能である。またビード部の形成数は、単数又は複数(3以上)でもよく、その形成位置も適宜設定可能であり、また省略することも可能である。なおビード部は、ピラーインナパネルを車幅方向外側と内側のいずれかに盛り上がらせることで形成でき、ピラーインナパネルに別体の部材を固定することでも形成できる。
Claims (2)
- フロントガラスの下部を支えるカウル部材と、前記カウル部材の車両後方位置で車幅方向に延びるインパネリインフォースと、前記カウル部材及び前記インパネリインフォースの車幅方向外側に位置するピラー部材とを備えた車両の前部構造において、
前記ピラー部材の車幅方向内側に重なるように設けられたガセット部材に、前記インパネリインフォースの車幅方向の端部が取り付けられて支持されており、
前記カウル部材と前記ピラー部材と前記ガセット部材とで囲まれた位置には、車幅方向内側が解放された空間部が形成されており、
前記ピラー部材には、前記カウル部材と前記ガセット部材とをつなぐ方向に向けて延びるビード部が形成されている車両の前部構造。 - 前記ガセット部材には、前記インパネリインフォースの車幅方向の端部を取り付けている取付け壁部と、前記取付け壁部の端縁に沿って前記ピラー部材に向けて延びる壁部と、前記ピラー部材に固定される前記壁部のフランジ部とが形成されている請求項1に記載の車両の前部構造。
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