JP7370587B2 - 有機化合物の製造方法およびコリネ型細菌 - Google Patents

有機化合物の製造方法およびコリネ型細菌 Download PDF

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Description

本発明は、有機化合物の製造方法およびコリネ型細菌に関する。
現在、地球温暖化の元凶と考えられている石油資源に代わり、再生可能資源である生物資源を原料として用いて化成品を生産することが強く望まれている。そのため、糖類などの生物由来原料から化成品を生産することを目的として、微生物およびその形質転換体を用いて、工業原料、燃料、飼料、食品添加物などに用いる化成品を生産するための研究が盛んに行われている。例えば、酵母や大腸菌の形質転換体を使用して、糖類からアルコールやアミノ酸などの有機化合物を製造することが報告されている(米国特許第9926577号、米国特許第8647847号を参照)。
本発明は、有機化合物を製造する新規方法およびこの製造方法に利用できるコリネ型細菌を提供することを目的とする。
微生物を用いた化成品の生産は、その生産対象として微生物代謝物に限定されることが一般的である。また、微生物代謝物であっても、微生物代謝系中のエネルギー不足や酸化還元バランスの不均衡によって、生産が困難な微生物代謝物も多く存在する。このような課題を解決するための一つの有効なアプローチとして、形質転換体を作成することが挙げられる。しかし、本発明者らは、この手法のみによって課題解決しようとすると、対象化合物を生産できる菌体の開発に多くの時間がかかる場合があると考えている。一方、今後、微生物代謝物以外の多様な化合物も生物由来原料から生産することが求められてくると考えている。そこで本発明者らは、有用な物質の生産については微生物の形質転換体作成のみに依存しない、新規なプロセス開発を検討した。
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の遺伝子を有する微生物をカルボニル化合物の存在下で培養することにより、アミノ酸などの有用物質合成の鍵となる中間体が得られる生産プロセスを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第1側面によると、
ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする遺伝子を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(上記一般式(2)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表されるα-ケト酸を生産する工程を含む、α-ケト酸の製造方法が提供される。
本発明の第2側面によると、
以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、
(b)α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素をコードする第2遺伝子、および
(c)アルデヒドの還元反応を触媒する酵素をコードする第3遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(3):
103C(O)R104
(ここでR103およびR104は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である。ただし、R103が水素であるとき、R104は水素ではない。)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(4):
103C(R104)(OH)CH2CH2OH
(上記一般式(4)におけるR103およびR104は、それぞれ上記一般式(3)におけるR103およびR104と同じ基である)
により表される1,3-ジオールを生産する工程を含む、1,3-ジオールの製造方法が提供される。
本発明の第3側面によると、
以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、
(b)α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素をコードする第2遺伝子、および
(c)アルデヒドの還元反応を触媒する酵素をコードする第3遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物の存在下で培養して、1,3-ブタンジオールを生産する工程を含む、1,3-ブタンジオールの製造方法が提供される。
本発明の第4側面によると、
以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、および
(d)α-ケト酸の還元反応を触媒する酵素をコードする第4遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(5):
101C(R102)(OH)CH2CH(OH)COOH
(上記一般式(5)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産する工程を含む、2,4-ジヒドロキシカルボン酸の製造方法が提供される。
本発明の第5側面によると、
下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるα-ケト酸と窒素源と還元剤とを、
グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの存在下で反応させて、
下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(6)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(2)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産する工程を含む、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の製造方法が提供される。
本発明の第6側面によると、
下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸と酸化剤とを、
グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの存在下で反応させて、
下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(上記一般式(2)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(6)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表されるα-ケト酸を生産する工程を含む、α-ケト酸の製造方法が提供される。
本発明の第7側面によると、
以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、および
(e)α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素をコードする第5遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(6)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産する工程を含む、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の製造方法が提供される。
本発明の第8側面によると、
以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、および
(e)α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素をコードする第5遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物とホルムアルデヒドとの存在下で培養して、ホモセリン、スレオニンおよび2-アミノ酪酸のうち少なくとも1つを生産する工程を含む、ホモセリン、スレオニンおよび2-アミノ酪酸のうち少なくとも1つの製造方法が提供される。
本発明の第9側面によると、
以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、
(e)α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素をコードする第5遺伝子、および
(f)2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する酵素をコードする第6遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、メチルメルカプタンと、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(7):
101C(R102)(SCH3)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(7)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産する工程を含む、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸の製造方法が提供される。
本発明の第10側面によると、
以下からなる群より選択される第1遺伝子:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
を含むコリネ型細菌が提供される。
本発明によると、有機化合物を製造する方法およびこの製造方法に利用できるコリネ型細菌が提供される。
微生物が4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸を生産するプロセスを示す模式図。 微生物が1,3-ブタンジオールを生産するプロセスを示す模式図。 微生物が2,4-ジヒドロキシ酪酸を生産するプロセスを示す模式図。 微生物がホモセリンを生産するプロセスを示す模式図。 微生物がメチオニンを生産するプロセスを示す模式図。 ガスクロマトグラフ質量分析の結果を示す図。 ガスクロマトグラフ質量分析の結果を示す図。 ガスクロマトグラフ質量分析の結果を示す図。 ガスクロマトグラフ質量分析の結果を示す図。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明を詳説することを目的とし、本発明を限定することを意図しない。
(1.)α-ケト酸の製造方法
α-ケト酸の製造方法は、
ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする遺伝子を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(上記一般式(2)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表されるα-ケト酸を生産する工程を含む。
以下の説明において、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする遺伝子(以下、第1遺伝子と呼ぶ)を含む上記微生物を、「α-ケト酸生産微生物」とも呼ぶ。α-ケト酸生産微生物は、第1遺伝子を生来的に有する微生物であってもよいし、宿主を第1遺伝子で形質転換することによって得られる微生物であってもよい。以下、α-ケト酸生産微生物が形質転換体である場合を例として説明する。
(1.1)形質転換体
(1.1.1)宿主
宿主としては、任意の微生物を使用することができる。宿主としては、例えば、酵母、細菌、より具体的には、好気性細菌、より具体的には、コリネ型細菌、大腸菌、またはビブリオ ナトリエゲンス(Vibrio natriegens)を使用することができる。好ましくは、宿主はコリネ型細菌である。
コリネ型細菌とは、バージーズ・マニュアル・デターミネイティブ・バクテリオロジー〔Bargeys Manual of Determinative Bacteriology、Vol. 8、599(1974)〕に定義されている一群の微生物であり、通常の好気的条件で増殖するものならば特に限定されるものではない。具体例を挙げれば、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウム属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリウム属菌、マイクロコッカス属菌等が挙げられる。コリネ型細菌の中ではコリネバクテリウム属菌が好ましい。
コリネバクテリウム属菌としては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム エフィシェンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム ハロトレランス(Corynebacterium halotolerance)、コリネバクテリウム アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)等が挙げられる。中でも、α-ケト酸の生産性が高い点で、コリネバクテリウム グルタミカムが好ましい。好適な菌株として、ATCC13032株、ATCC13869株、ATCC13058株、ATCC13059株、ATCC13060株、ATCC13232株、ATCC13286株、ATCC13287株、ATCC13655株、ATCC13745株、ATCC13746株、ATCC13761株、ATCC14020株、ATCC31831株、MJ-233(FERM BP-1497)、MJ-233AB-41(FERM BP-1498)等が挙げられる。中でも、ATCC13032株、ATCC13869株が好ましい。
なお、分子生物学的分類により、ブレビバクテリウム フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム ディバリカタム(Brevibacterium divaricatum)、コリネバクテリウム リリウム(Corynebacterium lilium)等のコリネ型細菌もコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に菌名が統一されている〔Liebl, W. et al., Transfer of Brevibacterium divaricatum DSM 20297T, "Brevibacterium flavum" DSM 20411, "Brevibacterium lactofermentum" DSM 20412 and DSM 1412, and Corynebacterium glutamicum and their distinction by rRNA gene restriction patterns. Int J Syst Bacteriol. 41:255-260. (1991)、駒形和男ら, コリネフォルム細菌の分類, 発酵と工業, 45:944-963 (1987)〕。
旧分類のブレビバクテリウム ラクトファーメンタムATCC13869株、ブレビバクテリウム フラバムのMJ-233株(FERM BP-1497)、MJ-233AB-41株(FERM BP-1498)なども好適なコリネバクテリウム グルタミカムである。
ブレビバクテリウム属菌としては、ブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)(例えばATCC6872株)等が挙げられる。
アースロバクター属菌としては、アースロバクター グロビフォルミス(Arthrobacterglobiformis)(例えばATCC8010株、ATCC4336株、ATCC21056株、ATCC31250株、ATCC31738株、ATCC35698株)等が挙げられる。
マイコバクテリウム属菌としては、マイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)(例えばATCC19210株、ATCC27289株)等が挙げられる。
マイクロコッカス属菌としては、マイクロコッカス フロイデンライヒ(Micrococcusfreudenreichii)(例えばNo. 239株(FERM P-13221))、マイクロコッカス ルテウス(Micrococcus leuteus)(例えばNo. 240株(FERM P-13222))、マイクロコッカス ウレアエ(Micrococcus ureae)(例えばIAM1010株)、マイクロコッカス ロゼウス(Micrococcus roseus)(例えばIFO3764株)等が挙げられる。
次に、宿主に導入される第1遺伝子について説明する。
(1.1.2)第1遺伝子
第1遺伝子は、「ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素」をコードする。「ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素」とは、後述の測定方法に従って、酵素反応液として、精製タンパク質、ピルビン酸(初期基質濃度 1mM)およびカルボニル化合物(初期基質濃度 1mM)を含む酵素反応液を使用して測定した場合に、10mU/mg protein以上の活性を有する酵素をいう。「ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素」におけるカルボニル化合物は、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒドまたはアセトンである。ブチルアルデヒドは、具体的には、ノルマルブチルアルデヒドまたはイソブチルアルデヒドである。バレルアルデヒドは、具体的には、ノルマルバレルアルデヒドである。「ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素」は、例えば、アルドラーゼである。
第1遺伝子は、以下に例示するアルドラーゼをコードする遺伝子であってもよい。
(a1)2-デヒドロ-3-デオキシ-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-phosphogluconate aldolase、EC番号:4.1.2.14)、
(a2)2-デヒドロ-3-デオキシ-6-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-6-phosphogluconate aldolase、EC番号4.1.2.55)、
(a3)4-ヒドロキシ-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoglutarate aldolase、EC番号:4.1.3.16)、
(a4)(4S)-4-ヒドロキシル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ((4S)-4-hydroxyl-2-oxoglutarate aldolase、EC番号4.1.3.42)、
(a5)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-ペントネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-pentonate aldolase、EC番号4.1.2.28)、
(a6)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-グルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-gluconate aldolase、EC番号4.1.2.51)、
(a7)3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソネートアルドラーゼ(3-deoxy-D-manno-octulosonate aldolase、EC番号4.1.2.23)、
(a8)4-ヒドロキシル-2-オキソバレレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-2-oxovalerate aldolase、EC番号4.1.3.39)、
(a9)4-(2-カルボキシフェニル)-2-オキソブ-3-エノエートアルドラーゼ(4-(2-carboxyphenyl)-2-oxobut-3-enoate aldolase、EC番号4.1.2.34)、
(a10)4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタンジオエートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoheptanedioate aldolase、EC番号4.1.2.52)、
(a11)2-デヒドロ-3-デオキシグルカレートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxyglucarate aldolase、EC番号4.1.2.20)、
(a12)2-ケト-3-デオキシ-L-ラムノネートアルドラーゼ(2-keto-3-deoxy-L-rhamnonate aldolase、EC番号4.1.2.53)、
(a13)4-ヒドロキシル-4-メチル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-4-methyl-2-oxoglutarate aldolase、EC番号4.1.3.17)、および
(a14)4-ヒドロキシ-2-オキソヘキサノネートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxohexanonate aldolase、EC番号4.1.3.43)。
(a1)、(a2)、(a3)および(a4)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、edaタンパク質が挙げられる。好ましくは、edaタンパク質は、大腸菌由来である。
(a2)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、dgoAタンパク質が挙げられる。好ましくは、dgoAタンパク質は、大腸菌由来である。
(a5)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、yjhHタンパク質が挙げられる。好ましくは、yjhHタンパク質は、大腸菌由来である。
(a6)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、yagEタンパク質が挙げられる。好ましくは、yagEタンパク質は、大腸菌由来である。
(a7)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、nanAタンパク質が挙げられる。好ましくは、nanAタンパク質は、大腸菌由来である。
(a8)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、mhpEタンパク質が挙げられる。好ましくは、mhpEタンパク質は、大腸菌由来である。なお、第1遺伝子がmhpE遺伝子である場合、mhpE遺伝子は、mhpF遺伝子と連結した状態で宿主に導入されてもよい。
(a8)および(a10)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、hpaIタンパク質が挙げられる。好ましくは、hpaIタンパク質は大腸菌由来である。
(a8)および(a14)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、bphIタンパク質が挙げられる。好ましくは、bphIタンパク質は、バークホルデリア ゼノボランス(Burkholderia xenovorans)由来である。なお、第1遺伝子がbphI遺伝子である場合、bphI遺伝子は、bphJ遺伝子と連結した状態で宿主に導入されてもよい。
(a9)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、phdJタンパク質が挙げられる。好ましくは、phdJタンパク質は、ノカルディオイデス属菌(Nocardioides sp.)由来である。
(a11)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、garLタンパク質が挙げられる。好ましくは、garLタンパク質は、大腸菌由来である。
(a12)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、rhmAタンパク質が挙げられる。好ましくは、rhmAタンパク質は、大腸菌由来である。
(a13)に含まれるアルドラーゼとしては、例えば、galCタンパク質が挙げられる。好ましくは、galCタンパク質は、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)由来である。
第1遺伝子は、クラスIのアルドラーゼをコードしてもよく、クラスIIのアルドラーゼをコードしてもよい。
クラスIのアルドラーゼとして、例えば、edaタンパク質、yjhHタンパク質、yagEタンパク質、dgoAタンパク質、nanAタンパク質、mphEタンパク質およびphdJタンパク質が挙げられる。
クラスIIのアルドラーゼとして、例えば、hpaIタンパク質、garLタンパク質、rhmAタンパク質、galCタンパク質およびbphIタンパク質が挙げられる。
好ましくは、第1遺伝子は以下からなる群より選択される:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、大腸菌由来のhpaIタンパク質)であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、大腸菌由来のrhmAタンパク質)であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、大腸菌由来のnanAタンパク質)であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-7)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、大腸菌由来のedaタンパク質)であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-8)配列番号8において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-9)配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、大腸菌由来のyjhHタンパク質)であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-10)配列番号10において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-11)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、大腸菌由来のdgoAタンパク質)であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-12)配列番号12において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-13)配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、大腸菌由来のmhpEタンパク質)であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-14)配列番号14において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-15)配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、大腸菌由来のgarLタンパク質)であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-16)配列番号16において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-17)配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、シュードモナス プチダ由来のgalCタンパク質)であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-18)配列番号18において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-19)配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、ノカルディオイデス属菌由来のphdJタンパク質)であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-20)配列番号20において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-21)配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、バークホルデリア ゼノボランス由来のbphIタンパク質)であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-22)配列番号22において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
本明細書において「1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加された」という表現における「1又は数個」は、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、より好ましくは1~30個、さらに好ましくは1~15個、さらに好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個を意味する。
上記の1又は数個のアミノ酸の欠失、置換、若しくは付加は、例えば、タンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、アミノ酸の欠失、置換、若しくは付加には、遺伝子が由来する細菌の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
「配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号8において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号10において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号10に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号12において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号12に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号14において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号14に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号16において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号16に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号18において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号18に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号20において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号20に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号22において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号22に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
大腸菌由来のhpaIタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばQ47098であり、大腸菌由来のrhmAタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばP76469であり、大腸菌由来のnanAタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばP0A6L4であり、大腸菌由来のedaタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばP0A955であり、大腸菌由来のyjhHタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばP39359であり、大腸菌由来のdgoAタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばQ6BF16であり、大腸菌由来のmhpEタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばP51020であり、大腸菌由来のgarLタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばP23522であり、シュードモナス プチダ由来のgalCタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばQ88JX9であり、ノカルディオイデス属菌由来のphdJタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばQ79EM8であり、バークホルデリア ゼノボランス由来のbphIタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばP51015である。
より好ましくは、第1遺伝子は、
配列番号1に記載の塩基配列からなる、大腸菌由来のhpaI遺伝子、
配列番号3に記載の塩基配列からなる、大腸菌由来のrhmA遺伝子、
配列番号5に記載の塩基配列からなる、大腸菌由来のnanA遺伝子、
配列番号7に記載の塩基配列からなる、大腸菌由来のeda遺伝子、
配列番号9に記載の塩基配列からなる、大腸菌由来のyjhH遺伝子、
配列番号11に記載の塩基配列からなる、大腸菌由来のdgoA遺伝子、
配列番号13に記載の塩基配列からなる、大腸菌由来のmhpE遺伝子、
配列番号15に記載の塩基配列からなる、大腸菌由来のgarL遺伝子、
配列番号17に記載の塩基配列からなる、シュードモナス プチダ由来由来のgalC遺伝子、
配列番号19に記載の塩基配列からなる、ノカルディオイデス属菌由来のphdJ遺伝子、または
配列番号21に記載の塩基配列からなる、バークホルデリア ゼノボランス由来のbphI遺伝子である。
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21に記載の塩基配列と配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22に記載のアミノ酸配列は、以下の通りである。
Figure 0007370587000001
Figure 0007370587000002
Figure 0007370587000003
Figure 0007370587000004
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Figure 0007370587000011
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Figure 0007370587000015
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Figure 0007370587000019
Figure 0007370587000020
Figure 0007370587000021
Figure 0007370587000022
アミノ酸配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol.,183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J. Mol. Biol., 215, 403(1990)]。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータは例えばscore=50、wordlength=3とする。gapped alignmentを得るために、Altschulら(1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)に記載されるようにGapped BLASTを利用することができる。あるいは、PSI-BlastまたはPHI-Blastを用いて、分子間の位置関係(Id.)および共通パターンを共有する分子間の関係を検出する繰返し検索を行うことができる。BLAST、Gapped BLAST、PSI-Blast、およびPHI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを用いることができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照されたい。
ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性は、例えば、当該酵素反応を2mMの塩化マグネシウムを含有する100mM HEPES-NaOHバッファー(pH8.0)中で25℃にて行い、原料のピルビン酸とカルボニル化合物から生成するアルドール化合物の初期生成速度を測定することで算出できる。アルドール化合物の生成速度は、例えば、アルドール化合物自体の濃度の時間変化から算出できる。アルドール化合物の濃度の測定は、例えば、酵素反応液と130mMのO-ベンジルヒドロキシアミン塩酸塩溶液(ピリジン:メタノール:水=33:15:2)の溶液を1:5で混和することで反応を止め、その際アルドール化合物から生成するO-ベンジルオキシム誘導体を高速液体クロマトグラフィーを用いて検出し、濃度が既知の標品と比較することで可能である。ここでは、25℃で1分間に1μmolのアルドール化合物が形成される活性を1ユニットとする。
「配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(以下、hpaI遺伝子変異体という)」は、例えば、配列番号2の塩基配列に基づく情報に従い設計したプライマーまたはプローブを用いたPCRまたはハイブリダイゼーションにより、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。このように選択した遺伝子は、高確率でピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードしている。
「配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(rhmA遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
「配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(nanA遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
「配列番号8において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(eda遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
「配列番号10において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(yjhH遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
「配列番号12において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(dgoA遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
「配列番号14において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(mhpE遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
「配列番号16において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(garL遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
「配列番号18において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(galC遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
「配列番号20において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(phdJ遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
「配列番号22において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(bphI遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
(1.1.3)形質転換のための組換えベクターの構築
第1遺伝子は、形質転換のために適切なプラスミドベクターに組み込むことができる。
プラスミドベクターとしては、宿主に応じて、公知のプラスミドベクターを使用することができる。プラスミドベクターとしては、宿主内で自律複製機能を司る遺伝子を含むものであってもよいし、宿主の染色体への組み込みに必要な塩基配列を含むものであってもよい。
得られた組換えベクターを用いて形質転換体を作製することができる。
(1.1.4)形質転換
形質転換方法は、公知の方法を制限無く使用できる。このような公知の方法として、例えば塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン介在トランスフェクション、電気パルス法などが挙げられる。
得られた形質転換体は、形質転換後速やかに、形質転換体の培養に通常使用される培地を用いて培養してもよい。
培養温度は、形質転換体の増殖に適した温度であれば、任意の温度であってもよい。培地のpHは、形質転換体の増殖に適したpHであれば、任意のpHであってもよい。培地のpHの調整は、公知の方法によって行うことができる。培養時間は、形質転換体が増殖するのに十分な時間であれば、任意の時間であってもよい。
なお、上述のとおりに組換えベクターを用いて形質転換体を作製した場合、第1遺伝子のは、宿主の染色体に組み込まれてもよいし、あるいは、組換えベクターの形態で宿主の細胞質内に存在していてもよい。
(1.1.5)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失
宿主は、野生株の他に、その変異株や人為的な遺伝子組換え体であってもよい。宿主がコリネ型細菌である場合、宿主は、野生株のコリネ型細菌が本来有する下記遺伝子の少なくとも一つを破壊または欠失させることにより得られた遺伝子破壊株または遺伝子欠失株であってもよい:ラクテート(乳酸)デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase、例えばldhA)遺伝子、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ(phosphoenolpyrvate carboxylase、例えばppc)遺伝子、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyruvate carboxylase、例えばpyc)遺伝子、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(pyruvate dehydrogenase、 例えばpoxB)遺伝子、グルタミン酸-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(glutamate-pyruvate aminotransferase、例えばalaA)遺伝子、アセトラクテートシンターゼ(acetolactate synthase、例えばilvB)遺伝子、N-スクシニルジアミノピメレート(N-succinyldiaminopimelate aminotransferase、例えばcg0931)遺伝子、S-(ヒドロキシメチル)ミコチオールデヒドロゲナーゼ(S-(hydroxymethyl)mycothiol dehydrogenase、例えばadhE)遺伝子、およびアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(acetaldehyde dehydrogenase、例えばald)遺伝子。このような遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を宿主として用いることにより、α-ケト酸の生産性を向上させたり、副生成物の生成を抑制したりすることができる。
遺伝子破壊株または遺伝子欠損株の構築は、公知の方法によって行うことができる。
(1.1.6)α-ケト酸生産微生物の具体例
具体的には、α-ケト酸生産微生物としては、
以下からなる群より選択される第1遺伝子:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
を含むコリネ型細菌を使用することができる。
(1.2)培養工程
α-ケト酸生産微生物(例えば、上述した形質転換体)を、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養して、α-ケト酸を生産することができる。「ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養すること」は、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で培養することにより行うことができる。好ましくは、「ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養すること」は、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を添加した培養液中で培養することにより行うことができる。
ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下での培養に先立ち、上述した形質転換体を好気的条件下で培養して増殖させることが好ましい。この好気的条件下での培養を、以下増殖培養と呼び、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下での培養を、以下生産培養と呼ぶ。具体的には、例えば、好気的条件下での培養とは、培養期間中に酸素が形質転換体の増殖に十分な量で培養液に供給されている条件下で培養することである。好気的条件下での培養は、公知の方法によって行うことができる。好気的条件下での培養は、例えば、通気、攪拌、振とう、またはこれらの組み合わせにより、培養液に酸素を供給することで実現できる。より具体的には、好気的条件下での培養は、振とう培養、深部通気撹拌培養によって実現できる。
生産培養に先立って増殖培養を行う場合、増殖培養とその後の生産培養は、例えば、以下のとおり行うことができる。増殖培養の後、先ず、増殖培養で使用した培養液(以下、増殖用培養液と呼ぶ)と増殖用培養液中に懸濁された形質転換体とを含む容器を遠心分離機にかけて、形質転換体を沈殿させることができる。その後、増殖用培養液を容器から除去し、分離された形質転換体を、生産培養で使用する培養液(以下、生産用培養液と呼ぶ)に懸濁し、生産培養を行うことができる。
あるいは、増殖培養とその後の生産培養は、増殖培養の後、形質転換体を含有する増殖用培養液にピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を添加し、好気的条件を嫌気的条件または微好気的条件に変更することにより、培養液の交換を行うことなく生産培養を行うことができる。このように、増殖培養と生産培養とを連続的に行うこともできる。
本明細書において、「培養」の用語は、形質転換体を、形質転換体の生育に適した特定の管理された条件の下で維持することを意味する。培養期間中に、形質転換体は増殖してもよいし、増殖しなくてもよい。したがって、「培養」の用語は、「インキュベーション」と言い換えることもできる。
(1.2.1)増殖用培養液
増殖用培養液は、形質転換体の培養に通常使用される培地、例えば、炭素源、窒素源および無機塩類等を含有する公知の培地を用いることができる。
増殖培養における培養温度は、形質転換体の増殖に適した温度であれば、任意の温度であってもよい。増殖用培養液のpHは、形質転換体の増殖に適したpHであれば、任意のpHであってもよい。増殖用培養液のpHの調整は、公知の方法によって行うことができる。増殖培養における培養時間は、形質転換体が増殖するのに十分な時間であれば、任意の時間であってもよい。
(1.2.2)生産用培養液
生産用培養液としては、ピルビン酸供給化合物、カルボニル化合物、及びその他必要な成分を含有する培養液を用いることができる。その他必要な成分として、例えば、無機塩類、糖類以外の炭素源、又は窒素源を用いることができる。本明細書に記載される、培養液中の各成分の濃度は、各成分が添加された時点における培養液中の最終濃度を指す。
ピルビン酸供給化合物としては、ピルビン酸および糖類から選ばれる化合物を使用することができる。ピルビン酸供給化合物は、ピルビン酸それ自体であってもよいし、微生物の生体内でピルビン酸に変換される糖類であってもよい。ピルビン酸供給化合物としては、ピルビン酸、糖類、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
糖類としては、形質転換体が、生体内に取り込むことができ、かつピルビン酸へと変換することができる糖類であれば任意の糖類を使用することができる。具体的には、糖類としては、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ガラクトースのような単糖;スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロビオース、トレハロースのような二糖;澱粉のような多糖;糖蜜等が挙げられる。中でも、単糖が好ましく、フルクトースおよびグルコースがより好ましい。また、構成単糖としてグルコースを含む糖類、具体的には、スクロース等の二糖、構成単糖としてグルコースを含むオリゴ糖、構成単糖としてグルコースを含む多糖も好ましい。糖類は、1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、糖類は、稲わら、バガス、コーンストーバー等の非可食農産廃棄物や、スイッチグラス、ネピアグラス、ミスキャンサス等のエネルギー作物を糖化酵素などで糖化することにより得られた糖化液(これは、グルコースや、キシロース等の複数の糖類を含む)の形で添加することもできる。
生産用培養液におけるピルビン酸供給化合物の濃度は、α-ケト酸の生産を阻害しない範囲で可能な限り高くすることができる。生産用培養液におけるピルビン酸供給化合物の濃度は、0.1~40(w/v)%の範囲内にあることが好ましく、1~20(w/v)%の範囲内にあることがより好ましい。また、α-ケト酸の生産に伴うピルビン酸供給化合物の減少に応じて、ピルビン酸供給化合物の追加添加を行うことができる。
カルボニル化合物としては、下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物を使用することができる。
一例によれば、カルボニル化合物としては、上記一般式(1)において、R101は水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ、R102は水素であるカルボニル化合物を使用することができる。
別の例によると、カルボニル化合物は、上記一般式(1)において、R101はメチル基であり、かつ、R102は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であるカルボニル化合物を使用することができる。
具体的には、カルボニル化合物としては、上記一般式(1)中、
101が水素であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物(すなわち、ホルムアルデヒド);
101がメチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物(すなわち、アセトアルデヒド);
101がエチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物(すなわち、プロピオンアルデヒド);
101がプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物(すなわち、ブチルアルデヒド)、具体的には、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物(すなわち、ノルマルブチルアルデヒド)、または、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物(すなわち、イソブチルアルデヒド);または
101がペンチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物(すなわち、バレルアルデヒド)、具体的には、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物(すなわち、ノルマルバレルアルデヒド);
を使用することができる。
また、カルボニル化合物としては、上記一般式(1)中、R101およびR102がいずれもメチル基であるカルボニル化合物(すなわち、アセトン)を使用することもできる。
カルボニル化合物は、1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
生産用培養液におけるカルボニル化合物の濃度は、0.001~10(w/v)%の範囲内にあることが好ましく、0.01~1(w/v)%の範囲内にあることがより好ましい。また、α-ケト酸の生産に伴うカルボニル化合物の減少に応じて、カルボニル化合物の追加添加を行うことができる。
なお、1種類のカルボニル化合物を生産用培養液中に使用した場合、後述する「(1.2.4)α-ケト酸の回収」の欄に記載した分離精製を容易に行うことが可能である。
さらに、必要に応じて、無機塩類を添加することもできる。無機塩類としては、リン酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、亜鉛等の金属塩を用いることができる。具体的には、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸鉄(II)、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、炭酸カルシウム等を用いることができる。無機塩は、1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。生産用培養液中の無機塩類の濃度は、使用する無機塩によっても異なるが、通常、約0.01~1(w/v)%とすることができる。
さらに、必要に応じて、糖類以外の炭素源を添加することもできる。糖類以外の炭素源としては、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、グリセロール、グリセリンのような糖アルコール;酢酸、クエン酵、乳酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸のような有機酸;ノルマルパラフィンのような炭化水素等を用いることができる。
さらに、必要に応じて、窒素源を添加することもできる。窒素源としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウムのような無機又は有機のアンモニウム塩;尿素;アンモニア水;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩等を使用できる。また、コーンスティープリカー;肉エキス;酵母エキス;大豆加水分解物;ペプトン、NZ-アミンまたはカゼイン分解物等の蛋白質加水分解物;アミノ酸等の含窒素有機化合物等も使用できる。窒素源は、1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。生産用培養液中の窒素源の濃度は、使用する窒素化合物によっても異なるが、通常、約0.1~10(w/v)%とすることができる。
さらに、必要に応じて、ビタミン類を添加することもできる。ビタミン類としては、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が挙げられる。
具体的な生産用培養液としては、グルコース、ホルムアルデヒド、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)および硫酸マンガン(II)を含み、6.0のpHを有する培地を用いることができる。
具体的な生産用培養液としては、ピルビン酸、ホルムアルデヒド、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)、硫酸マンガン(II)および4-モルホリノプロパンスルホン酸を含む培地も用いることができる。
また、生産用培養液としては、増殖培養で用いた増殖用培養液と同じ組成のベース培養液に、ピルビン酸供給化合物とカルボニル化合物とを添加して得られる培養液を用いることもできる。なお、上述のベース培養液中に十分な量でピルビン酸供給化合物が存在する場合、ピルビン酸供給化合物を添加しなくてもよい。
(1.2.3)生産培養の条件
生産培養における培養温度は、α-ケト酸の生産に適した温度であれば、任意の温度であってもよい。生産培養における培養温度は、約20~50℃が好ましく、約25~47℃がより好ましい。上記温度範囲であれば、効率良くα-ケト酸を製造できる。生産用培養液のpHは、α-ケト酸の生産に適したpHであれば、任意のpHであってもよい。生産用培養液のpHは、約6~8の範囲内に維持することが好ましい。生産用培養液のpHの調整は、無機あるいは有機の酸;水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液;尿素;炭酸カルシウム;アンモニア;4-モルホリノプロパンスルホン酸等を含むpH緩衝液等を用いて行うことができる。生産培養中も必要に応じて生産用培養液のpHは、適宜調整することができる。生産培養における培養時間は、形質転換体がα-ケト酸を生産するのに十分な時間であれば、任意の時間であってもよい。生産培養における培養時間は、約3時間~7日間が好ましく、約1~3日間がより好ましい。
生産培養は、好気的条件の下で行われてもよく、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われてもよい。これは、上述した形質転換体が、好気的条件の下でも嫌気的条件または微好気的条件の下でも働く、α-ケト酸を生産する経路を有しているためである。α-ケト酸を生産する経路は、後述の「(1.3)作用および効果」の欄で述べる。
<嫌気的条件または微好気的条件>
生産培養は、好ましくは、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われる。
形質転換体を嫌気的条件下または微好気的条件下で培養すると、形質転換体は実質的に増殖せず、一層効率的にα-ケト酸を生産することができる。
「嫌気的条件または微好気的条件」は、例えば、生産用培養液中の溶存酸素濃度が0~2ppmの範囲内にある条件を指す。「嫌気的条件または微好気的条件」は、好ましくは、生産用培養液中の溶存酸素濃度が0~1ppmの範囲内にある条件を指し、より好ましくは、生産用培養液中の溶存酸素濃度が0~0.5ppmの範囲内にある条件を指す。培養液中の溶存酸素濃度は、例えば、溶存酸素計を用いて測定することができる。
「嫌気的条件」は、厳密にいうと、溶存酸素、および、硝酸などの酸化物といった電子受容体が存在しない条件を指す技術用語である。一方、生産培養の好ましい条件としては、これら電子受容体が十分でない、もしくはその電子受容体の性質上、形質転換体が増殖せず、その分供給される炭素源がα-ケト酸の生産に利用され、その生産効率を高めることができれば、上記の厳密な条件を採用する必要はない。すなわち、生産培養の好ましい条件としては、形質転換体の増殖を抑制し、α-ケト酸の生産効率を高めることができれば、生産用培養液中に、溶存酸素、および、硝酸などの酸化物といった電子受容体が存在していてもよい。したがって、本明細書で使用される「嫌気的条件または微好気的条件」という表現は、このような状態も含む。
嫌気的条件および微好気的条件は、例えば、酸素を含む気体を通気しないことによって、気液の界面から供給される酸素が形質転換体の増殖には不十分となり、実現することができる。または、生産用培養液中に不活性ガス、具体的には窒素ガスを通気することにより実現することができる。または、生産培養に用いられる容器を密閉することにより実現することができる。
<高密度条件>
生産培養は、好ましくは、形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われる。このような状態で形質転換体を培養すると、一層効率的にα-ケト酸を生産することができる。
「形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態」は、例えば、形質転換体を生産用培養液中に、形質転換体の湿菌体重量%が1~50(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態を指す。「形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態」は、好ましくは、形質転換体を生産用培養液中に、形質転換体の湿菌体重量%が3~30(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態を指す。
生産培養は、嫌気的条件または微好気的条件の下で、形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われることがより好ましい。
(1.2.4)α-ケト酸の回収
上述のとおり、第1遺伝子を含む形質転換体を生産用培養液中で培養すると、生産用培養液中にα-ケト酸が生産される。
具体的には、生産用培養液中に下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物を使用した場合、下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(上記一般式(2)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表されるα-ケト酸を生産することができる。
より具体的には、上記一般式(1)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(2)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソ吉草酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソカプロン酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソエナント酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(1)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソノルマルヘプタン酸)を生産することができる。また、具体的には、上記一般式(1)中、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソイソエナント酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がペンチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がペンチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソカプリル酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(1)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソノルマルカプリル酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101およびR102がいずれもメチル基であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(2)中、R101およびR102がいずれもメチル基であるα-ケト酸(すなわち、4-メチル-4-ヒドロキシ-2-オキソ吉草酸)を生産することができる。
生産用培養液を回収することにより上記のα-ケト酸を回収できるが、さらに、公知の方法でα-ケト酸を生産用培養液から分離精製することもできる。そのような公知の方法として、晶析法、クロマトグラフィー法、イオン交換樹脂法、活性炭吸着溶離法、溶媒抽出法等が挙げられる。
また、複数種類のカルボニル化合物を使用した場合、培養液中に複数種類のα-ケト酸が生産される。複数種類のα-ケト酸は、晶析やクロマトグラフィーによって、互いに分離することができる。
(1.3)作用および効果
α-ケト酸生産微生物がα-ケト酸を生産するプロセスを模式的に図1に示す。図1に示すプロセスにおいては、ピルビン酸供給化合物がグルコースであり、カルボニル化合物がホルムアルデヒドであり、α-ケト酸が4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸である場合を例として説明する。
図1に示すように、先ず、α-ケト酸生産微生物1は、グルコース2及びホルムアルデヒド3を取り込む。次に、グルコース2は、解糖系を通じてピルビン酸4に変換される。次に、ピルビン酸4とホルムアルデヒド3とは、第1遺伝子がコードする「ピルビン酸とアルデヒドとのアルドール反応を触媒する酵素」によって4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸5に変換される。以上のようにして、4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸が生産される。
図1では、カルボニル化合物としてアルデヒドを使用した場合について説明したが、カルボニル化合物としてケトンを使用した場合であっても、「ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素」によってケトンとピルビン酸とをα-ケト酸に変換する反応は進行する。これは、アルデヒドとケトンとがいずれも同一種類の化合物(すなわち、カルボニル化合物)に属するため、酵素反応などの有機化学反応において、アルデヒドとケトンとはいずれも同一の反応の基質となりうるからである。
上記で説明した製法は、上述のとおり、特定の遺伝子を有する微生物をカルボニル化合物の存在下で培養することにより、アミノ酸などの有用物質合成の鍵となる中間体が得られる生産プロセスを見出し、完成させたものである。一般的に、カルボニル化合物は微生物の生育にとって有害であるので、これが存在する下で有用な化合物が得られたことは驚きであった。また、この際に、該カルボニル化合物が微生物代謝系に取り込まれるため、通常の微生物代謝系では生産されない中間体が得られたことは、多様な化合物を生物由来原料から作るという将来的なニーズを満たす手法として期待できる。実際、本明細書に後述する通り、この中間体を経て様々な有用物質の生産へと展開できたことは、本発明技術により多様な化合物を生産できることの可能性の一部を示している。
(2.)1,3-ジオールの製造方法
1,3-ジオールの製造方法は、
以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、
(b)α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素をコードする第2遺伝子、および
(c)アルデヒドの還元反応を触媒する酵素をコードする第3遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(3):
103C(O)R104
(ここでR103およびR104は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である。ただし、R103が水素であるとき、R104は水素ではない。)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(4):
103C(R104)(OH)CH2CH2OH
(上記一般式(4)におけるR103およびR104は、それぞれ上記一般式(3)におけるR103およびR104と同じ基である)
により表される1,3-ジオールを生産する工程を含む。
以下の説明において、第1、第2および第3遺伝子を含む上記微生物を、「1,3-ジオール生産微生物」とも呼ぶ。1,3-ジオール生産微生物は、第1、第2および第3遺伝子を生来的に有する微生物であってもよいし、宿主を第1、第2および第3遺伝子で形質転換することによって得られる微生物であってもよい。以下、1,3-ジオール生産微生物が形質転換体である場合を例として説明する。
(2.1)形質転換体
(2.1.1)宿主
宿主としては、「(1.1.1)宿主」の欄に記載した宿主と同様の宿主を使用することができる。
次に、宿主に導入される第1、第2および第3遺伝子について説明する。
(2.1.2)第1遺伝子
第1遺伝子としては、「(1.1.2)第1遺伝子」の欄に記載した第1遺伝子と同様の遺伝子を使用することができる。。
(2.1.3)第2遺伝子
第2遺伝子は、「α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素」をコードする。「α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素」とは、後述の測定方法に従って、酵素反応液として、精製タンパク質およびα-ケト酸(初期基質濃度 1mM)を含む酵素反応液を使用して測定した場合に、1mU/mg protein以上の活性を有する酵素をいう。第2遺伝子は、例えば、第1遺伝子がコードするタンパク質が触媒するアルドール反応により得られたα-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素をコードする。「α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素」におけるα-ケト酸は、例えば、「(1.)α-ケト酸の製造方法」の欄に記載した、一般式(2)により表されるα-ケト酸である。「α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素」は、例えば、脱炭酸酵素である。
第2遺伝子は、以下に例示する脱炭酸酵素をコードする遺伝子であってもよい。
(b1)ピルベートデカルボキシラーゼ(pyruvate decarboxylase、EC番号4.1.1.1)、
(b2)ベンゾイルフォルメートデカルボキシラーゼ(benzoylformate decarboxylase、EC番号4.1.1.7)、および
(b3)インドールピルベートデカルボキシラーゼ(indolepyruvate decarboxylase、EC番号4.1.1.74)。
(b1)に含まれる脱炭酸酵素としては、例えば、pdcタンパク質が挙げられる。好ましくは、pdcタンパク質は、ザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)由来である。
(b2)に含まれる脱炭酸酵素としては、例えば、mdlCタンパク質が挙げられる。好ましくは、mdlCタンパク質は、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)由来である。
(b3)に含まれる脱炭酸酵素としては、例えば、kivDタンパク質が挙げられる。好ましくは、kivDタンパク質は、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)由来である。
好ましくは、第2遺伝子は以下からなる群より選択される:
(2-1)配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、シュードモナス プチダ由来のmdlCタンパク質)であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(2-2)配列番号24において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
「配列番号24において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号24に記載のアミノ酸配列に対して、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
シュードモナス プチダ由来のmdlCタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばP20906である。
より好ましくは、第2遺伝子は、配列番号23に記載の塩基配列からなる、シュードモナス プチダ由来のmdlC遺伝子である。
配列番号23に記載の塩基配列と配列番号24に記載のアミノ酸配列は、以下の通りである。
Figure 0007370587000023
Figure 0007370587000024
α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する活性は、例えば、当該酵素反応を0.5mMチアミンピロリン酸、1mM 塩化マグネシウム、10mM NADH、過剰量のアルコールデヒドロゲナーゼを含有する100mMリン酸カリウムバッファー(pH6.0)中で30℃にて行い、原料のα-ケト酸から生成するアルデヒド化合物が逐次的に還元されて生じるアルコール化合物の初期生成速度を測定することで算出できる。アルコール化合物の生成速度は、例えば、アルコール化合物自体の濃度の時間変化から算出できる。アルコール化合物の濃度の測定は、例えば、当該アルコール化合物を高速液体クロマトグラフィーを用いて検出し、濃度が既知の標品とそれを比較することで可能である。ここでは、30℃で1分間に1μmolのα-ケト酸が脱炭酸される活性を1ユニットとする。
「配列番号24において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(mdlC遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
(2.1.4)第3遺伝子
第3遺伝子は、「アルデヒドの還元反応を触媒する酵素」をコードする。「アルデヒドの還元反応を触媒する酵素」とは、後述の測定方法に従って、酵素反応液として、精製タンパク質およびアルデヒド(初期基質濃度 1mM)を含む酵素反応液を使用して測定した場合に、10mU/mg protein以上の活性を有する酵素をいう。第3遺伝子は、例えば、第2遺伝子がコードするタンパク質が触媒する脱炭酸反応により得られたアルデヒドの還元反応を触媒する酵素をコードする。「アルデヒドの還元反応を触媒する酵素」におけるアルデヒドは、例えば、3-ヒドロキシブチルアルデヒド、3-ヒドロキシバレルアルデヒド、3-ヒドロキシヘキシルアルデヒド、3-ヒドロキシイソヘキシルアルデヒド、3-ヒドロキシヘプチルアルデヒドまたは3-メチル-3-ヒドロキシブチルアルデヒドである。「アルデヒドの還元反応を触媒する酵素」は、例えば、アルコールデヒドロゲナーゼである。
第3遺伝子は、例えば、1,3-プロパンジオールデヒドロゲナーゼ(1,3-propanediol dehydrogenase、EC番号1.1.1.202)をコードする遺伝子であってもよい。
1,3-プロパンジオールデヒドロゲナーゼとしては、例えば、dhaTタンパク質またはlpoタンパク質が挙げられる。好ましくは、dhaTタンパク質は、クレブシエラ ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)由来である。また、好ましくは、lpoタンパク質は、ラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)由来である。
好ましくは、第3遺伝子は以下からなる群より選択される:
(3-1)配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、クレブシエラ ニューモニエ由来のdhaTタンパク質)であって、アルデヒドの還元反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(3-2)配列番号26において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
「配列番号26において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号26に記載のアミノ酸配列に対して、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
クレブシエラ ニューモニエ由来のdhaTタンパク質のUniprotKB accession numberは、例えばQ59477である。
より好ましくは、第3遺伝子は、配列番号25に記載の塩基配列からなる、クレブシエラ ニューモニエ由来のdhaT遺伝子である。
配列番号25に記載の塩基配列と配列番号26に記載のアミノ酸配列は、以下の通りである。
Figure 0007370587000025
Figure 0007370587000026
アルデヒドの還元反応を触媒する活性は、例えば、当該酵素反応を0.2mM NADHを含有する50mM MES-NaOHバッファー(pH6.5)中で30℃にて行い、原料のアルデヒドがアルコール化合物へ還元される際に消費されるNADHの初期消費速度を測定することで算出できる。NADHの初期消費速度は、例えば、酵素反応液中のNADHに由来する340nmにおける吸光度の減少速度を測定することで算出できる。ここでは、30℃で1分間に1μmolのアルデヒドが還元される活性を1ユニットとする。
「配列番号26において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(dhaT遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
(2.1.5)形質転換のための組換えベクターの構築
第1、第2、および第3遺伝子は、形質転換のために適切なプラスミドベクターに組み込むことができる。
プラスミドベクターとしては、「(1.1.3)形質転換のための組換えベクターの構築」の欄に記載したプラスミドベクターと同様のプラスミドベクターを使用することができる。
第1、第2および第3遺伝子は、各々個別のプラスミドベクターに組み込んでもよいし、あるいは同一のプラスミドベクターに組み込んでもよい。得られた組換えベクターを用いて形質転換体を作製することができる。
(2.1.6)形質転換
形質転換方法は、公知の方法を制限無く使用できる。このような公知の方法としては、「(1.1.4)形質転換」の欄に記載した方法と同様の方法を使用することができる。
なお、上述のとおりに組換えベクターを用いて形質転換体を作製した場合、第1、第2、および第3遺伝子の各々は、宿主の染色体に組み込まれてもよいし、あるいは、組換えベクターの形態で宿主の細胞質内に存在していてもよい。
(2.1.7)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失
宿主は、野生株の他に、その変異株や人為的な遺伝子組換え体であってもよい。宿主がコリネ型細菌である場合、宿主は、「(1.1.5)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失」の欄に記載した遺伝子破壊株または遺伝子欠失株と同様の遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を使用することができる。また、遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を作製する方法としては、「(1.1.5)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失」の欄に記載した方法と同様の方法を使用することができる。このような遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を宿主として用いることにより、1,3-ジオールの生産性を向上させたり、副生成物の生成を抑制したりすることができる。
(2.1.8)1,3-ジオール生産微生物の具体例
具体的には、1,3-ジオール生産微生物としては、
以下からなる群より選択される第1遺伝子:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
以下からなる群より選択される第2遺伝子:
(2-1)配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(2-2)配列番号24において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;および
以下からなる群より選択される第3遺伝子:
(3-1)配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(3-2)配列番号26において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
を含むコリネ型細菌を使用することができる。
(2.2)培養工程
1,3-ジオール生産微生物(例えば、上述した形質転換体)を、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養して、1,3-ジオールを生産することができる。「ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養すること」は、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で培養することにより行うことができる。好ましくは、「ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養すること」は、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を添加した培養液中で培養することにより行うことができる。
ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下での培養に先立ち、「(1.2)培養工程」の欄に記載した増殖培養を行うことが好ましい。
生産培養に先立って増殖培養を行う場合、増殖培養とその後の生産培養は、例えば、「(1.2)培養工程」の欄に記載したとおり行うことができる。
(2.2.1)増殖用培養液
増殖用培養液としては、「(1.2.1)増殖用培養液」の欄に記載した増殖用培養液と同様の培養液を使用することができる。
(2.2.2)生産用培養液
生産用培養液としては、ピルビン酸供給化合物、カルボニル化合物、及びその他必要な成分を含有する培養液を用いることができる。その他必要な成分として、例えば、無機塩類、糖類以外の炭素源又は窒素源を用いることができる。
ピルビン酸供給化合物としては、「(1.2.2)生産用培養液」の欄に記載したピルビン酸供給化合物を使用することができる。
カルボニル化合物としては、下記一般式(3):
103C(O)R104
(ここでR103およびR104は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である。ただし、R103が水素であるとき、R104は水素ではない。)
により表されるカルボニル化合物を使用することができる。
一例によれば、カルボニル化合物としては、上記一般式(3)において、R103は水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ、R104は水素であるカルボニル化合物を使用することができる。
別の例によると、カルボニル化合物は、上記一般式(3)において、R103はメチル基であり、かつ、R104は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であるカルボニル化合物を使用することができる。
具体的には、カルボニル化合物としては、上記一般式(1)中、
103がメチル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物(すなわち、アセトアルデヒド);
103がエチル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物(すなわち、プロピオンアルデヒド);
103がプロピル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物(すなわち、ブチルアルデヒド)、具体的には、R103がノルマルプロピル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物(すなわち、ノルマルブチルアルデヒド)、または、R103がイソプロピル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物(すなわち、イソブチルアルデヒド);または
103がペンチル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物(すなわち、バレルアルデヒド)、具体的には、R103がノルマルペンチル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物(すなわち、ノルマルバレルアルデヒド);
を使用することができる。
また、カルボニル化合物としては、上記一般式(3)中、R103およびR104がいずれもメチル基であるケトン(すなわち、アセトン)を使用することができる。
カルボニル化合物は、1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
生産用培養液におけるカルボニル化合物の濃度は、0.001~10(w/v)%の範囲内にあることが好ましく、0.01~1(w/v)%の範囲内にあることがより好ましい。また、1,3-ジオールの生産に伴うカルボニル化合物の減少に応じて、カルボニル化合物の追加添加を行うことができる。
なお、1種類のカルボニル化合物を生産用培養液中に使用した場合、後述する「(2.2.4)1,3-ジオールの回収」で述べる分離精製を容易に行うことが可能である。
その他必要な成分としては、「(1.2.2)生産用培養液」の欄に記載したその他必要な成分と同様の成分を使用することができる。
具体的な生産用培養液としては、グルコース、アセトアルデヒド、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)および硫酸マンガン(II)を含み、6.0のpHを有する培地を用いることができる。
また、生産用培養液としては、増殖培養で用いた増殖用培養液と同じ組成のベース培養液に、ピルビン酸供給化合物とカルボニル化合物とを添加して得られる培養液を用いることもできる。なお、上述のベース培養液中に十分な量でピルビン酸供給化合物が存在する場合、ピルビン酸供給化合物を添加しなくてもよい。
(2.2.3)生産培養の条件
生産培養における培養温度は、1,3-ジオールの生産に適した温度であれば、任意の温度であってもよい。生産培養における培養温度は、約20~50℃が好ましく、約25~47℃がより好ましい。上記温度範囲であれば、効率良く1,3-ジオールを製造できる。生産用培養液のpHは、1,3-ジオールの生産に適したpHであれば、任意のpHであってもよい。生産用培養液のpHは、約6~8の範囲内に維持することが好ましい。生産用培養液のpHの調整は、無機あるいは有機の酸;水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液;尿素;炭酸カルシウム;アンモニア;4-モルホリノプロパンスルホン酸等を含むpH緩衝液等を用いて行うことができる。生産培養中も必要に応じて生産用培養液のpHは、適宜調整することができる。生産培養における培養時間は、形質転換体が1,3-ジオールを生産するのに十分な時間であれば、任意の時間であってもよい。生産培養における培養時間は、約3時間~7日間が好ましく、約1~3日間がより好ましい。
生産培養は、好気的条件の下で行われてもよく、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われてもよい。これは、上述した形質転換体が、好気的条件の下でも嫌気的条件または微好気的条件の下でも働く、1,3-ジオールを生産する経路を有しているためである。1,3-ジオールを生産する経路は、後述の「(2.3)作用および効果」の欄で述べる。
<嫌気的条件または微好気的条件>
生産培養は、好ましくは、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われる。
形質転換体を嫌気的条件下または微好気的条件下で培養すると、形質転換体は実質的に増殖せず、一層効率的に1,3-ジオールを生産することができる。
「嫌気的条件または微好気的条件」は、「(1.2.3)生産培養の条件」の欄に記載した「嫌気的条件または微好気的条件」と同様の条件とすることができる。
<高密度条件>
生産培養は、好ましくは、形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われる。このような状態で形質転換体を培養すると、一層効率的に1,3-ジオールを生産することができる。
「形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態」は、「(1.2.3)生産培養の条件」の欄に記載した「形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態」と同様の状態とすることができる。
生産培養は、嫌気的条件または微好気的条件の下で、形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われることがより好ましい。
(2.2.4)1,3-ジオールの回収
上述のとおり、第1、第2および第3遺伝子を含む形質転換体を生産用培養液中で培養すると、生産用培養液中に1,3-ジオールが生産される。
具体的には、生産用培養液中に下記一般式(3):
下記一般式(3):
103C(O)R104
(ここでR103およびR104は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である。ただし、R103およびR104は、何れも水素ではない。)
により表されるカルボニル化合物を使用した場合、下記一般式(4):
103C(R104)(OH) CH2CH2OH
(上記一般式(4)におけるR103およびR104は、それぞれ上記一般式(3)におけるR103およびR104と同じ基である)
により表される1,3-ジオールを生産することができる。
より具体的には、上記一般式(3)中、R103がメチル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(4)中、R103がメチル基であり、かつ、R104が水素である1,3-ジオール(すなわち、1,3-ブタンジオール)を生産することができる。
上記一般式(3)中、R103がエチル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(4)中、R103がエチル基であり、かつ、R104が水素である1,3-ジオール(すなわち、1,3-ペンタンジオール)を生産することができる。
上記一般式(3)中、R103がプロピル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(4)中、R103がプロピル基であり、かつ、R104が水素である1,3-ジオール(すなわち、1,3-ヘキサンジオール)を生産することができる。具体的には、上記一般式(3)中、R103がノルマルプロピル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(4)中、R103がノルマルプロピル基であり、かつ、R104が水素である1,3-ジオール(すなわち、1,3-ノルマルヘキサンジオール)を生産することができる。また、具体的には、上記一般式(3)中、R103がイソプロピル基であり、かつ、R103が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(4)中、R103がイソプロピル基であり、かつ、R104が水素である1,3-ジオール(すなわち、4-メチル-1,3-ペンタンジオール)を生産することができる。
上記一般式(3)中、R103がペンチル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(4)中、R103がペンチル基であり、かつ、R104が水素である1,3-ジオール(すなわち、1,3-ヘプタンジオール)を生産することができる。具体的には、上記一般式(3)中、R103がノルマルペンチル基であり、かつ、R104が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(4)中、R103がノルマルペンチル基であり、かつ、R104が水素である1,3-ジオール(すなわち、1,3-ノルマルヘプタンジオール)を生産することができる。
上記一般式(3)中、R103およびR104がいずれもメチル基であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(4)中、R103およびR104がいずれもメチル基である1,3-ジオール(すなわち、3-メチル-1,3-ブタンジオール)を生産することができる。
生産用培養液を回収することにより上記の1,3-ジオールを回収できるが、さらに、公知の方法で1,3-ジオールを生産用培養液から分離精製することもできる。そのような公知の方法として、蒸留法、濃縮法、イオン交換樹脂法、活性炭吸着溶離法、溶媒抽出法、晶析法等が挙げられる。
なお、生産用培養液からは、第1遺伝子がコードする酵素が触媒するアルドール反応によって生じたα-ケト酸等の物質を回収することもできる。
また、複数種類のカルボニル化合物を使用した場合、培養液中に複数種類の1,3-ジオールが生産される。複数種類の1,3-ジオールは、蒸留やクロマトグラフィーによって、互いに分離することができる。
(2.3)作用および効果
1,3-ジオール生産微生物が1,3-ジオールを生産するプロセスを模式的に図2に示す。図2に示すプロセスにおいては、ピルビン酸供給化合物がグルコースであり、カルボニル化合物がアセトアルデヒドであり、1,3-ジオールが1,3-ブタンジオールである場合を例として説明する。
図2に示すように、先ず、1,3-ジオール生産微生物6は、グルコース2及びアセトアルデヒド7を取り込む。次に、グルコース2は、解糖系を通じてピルビン酸4に変換される。次に、ピルビン酸4とアセトアルデヒド7とは、第1遺伝子がコードする「ピルビン酸とアルデヒドとのアルドール反応を触媒する酵素」によって4-ヒドロキシ-2-オキソ吉草酸8に変換される。次に、4-ヒドロキシ-2-オキソ吉草酸8は、第2遺伝子がコードする「α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素」によって3-ヒドロキシブチルアルデヒド9に変換される。次に、3-ヒドロキシブチルアルデヒド9は、第3遺伝子がコードする「アルデヒドの還元反応を触媒する酵素」によって1,3-ブタンジオール10に変換される。以上のようにして、1,3-ブタンジオールが生産される。
あるいは、別の実施形態として、「(2.)1,3-ジオールの製造方法」の欄で説明した1,3-ジオールの製造方法において、1,3-ブタンジオールを生産する場合に限り、生産用培養液はアセトアルデヒドを含んでいなくてもよい。
すなわち、この実施形態に係る1,3-ブタンジオールの製造方法は、1,3-ジオール生産微生物を、ピルビン酸供給化合物の存在下で培養して、1,3-ブタンジオールを生産する工程を含む。
この実施形態は、アセトアルデヒドを生産用培養液に添加しないことを除いて、上述の「1,3-ジオールの製造方法」と同様の手順に従って実施することができる。
生産用培養液がアセトアルデヒドを含んでいなくても、1,3-ブタンジオールを生産できる理由を、本発明者らは以下のように考えている。先ず、1,3-ジオール生産微生物が生産用培養液中のピルビン酸供給化合物を生体内に取り込む。次に、ピルビン酸供給化合物がピルビン酸である場合、第2遺伝子にコードされる酵素によって、ピルビン酸の一部はアセトアルデヒドに変換される。ピルビン酸供給化合物が糖類である場合、糖類はピルビン酸に変換され、その後、第2遺伝子にコードされる酵素によって、ピルビン酸の一部はアセトアルデヒドに変換される。その次に、アセトアルデヒドとピルビン酸とが、第1遺伝子にコードされる酵素によって4-ヒドロキシ-2-オキソ吉草酸に変換される。その次に、4-ヒドロキシ-2-オキソ吉草酸が、第2遺伝子にコードされる酵素によって3-ヒドロキシブチルアルデヒドに変換される。その次に、3-ヒドロキシブチルアルデヒドが1,3-ブタンジオールに変換される。このように、1,3-ジオール生産微生物は生体内でアセトアルデヒドを生産できる。したがって、生産用培養液がアセトアルデヒドを含んでいなくても、1,3-ブタンジオールは生産される。なお、1,3-ジオール生産微生物が生産したアセトアルデヒドは、1,3-ジオール生産微生物から培養液中に分泌されていてもよい。
(3.)2,4-ジヒドロキシカルボン酸の製造方法
2,4-ジヒドロキシカルボン酸の製造方法は、
以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、および
(d)α-ケト酸の還元反応を触媒する酵素をコードする第4遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(5):
101C(R102)(OH)CH2CH(OH)COOH
(上記一般式(5)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産する工程を含む。
以下の説明において、第1および第4遺伝子を含む上記微生物を、「2,4-ジヒドロキシカルボン酸生産微生物」とも呼ぶ。2,4-ジヒドロキシカルボン酸生産微生物は、第1および第4遺伝子を生来的に有する微生物であってもよいし、宿主を第1および第4遺伝子で形質転換することによって得られる微生物であってもよい。以下、2,4-ジヒドロキシカルボン酸生産微生物が形質転換体である場合を例として説明する。
(3.1)形質転換体
(3.1.1)宿主
宿主としては、「(1.1.1)宿主」の欄に記載した宿主と同様の宿主を使用することができる。
次に、宿主に導入される第1および第4遺伝子について説明する。
(3.1.2)第1遺伝子
第1遺伝子としては、「(1.1.2)第1遺伝子」の欄に記載した第1遺伝子と同様の遺伝子を使用することができる。
(3.1.3)第4遺伝子
第4遺伝子は、「α-ケト酸の還元反応を触媒する酵素」をコードする。「α-ケト酸の還元反応を触媒する酵素」とは、後述の測定方法に従って、酵素反応液として、精製タンパク質およびα-ケト酸(初期基質濃度 1mM)を含む酵素反応液を使用して測定した場合に、10mU/mg protein以上の活性を有する酵素をいう。第4遺伝子は、例えば、第1遺伝子がコードするタンパク質が触媒するアルドール反応により得られたα-ケト酸の還元反応を触媒する酵素をコードする。「α-ケト酸の還元反応を触媒する酵素」におけるα-ケト酸は、例えば、「(1.)α-ケト酸の製造方法」の欄に記載した、一般式(2)により表されるα-ケト酸である。「α-ケト酸の還元反応を触媒する酵素」は、例えば、デヒドロゲナーゼである。
第4遺伝子は、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase、EC番号1.1.1.27)をコードする遺伝子であってもよい。
乳酸デヒドロゲナーゼとしては、例えば、ldhAタンパク質が挙げられる。好ましくは、ldhAタンパク質は、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)由来のタンパク質である。なお、「ラクトコッカス ラクティス由来のタンパク質」とは、ラクトコッカス ラクティスから単離されたタンパク質であってもよいし、当該タンパク質の活性を維持していれば、単離されたタンパク質の変異体であってもよい。より好ましくは、ldhAタンパク質は、ラクトコッカス ラクティスNBRC100676株由来のタンパク質である。さらに好ましくは、ラクトコッカス ラクティスNBRC100676株由来のldhAタンパク質であって、N末端から85番目のグルタミン残基がシステイン残基に置換されているタンパク質である。
好ましくは、第4遺伝子は以下からなる群より選択される:
(4-1)配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、ラクトコッカス ラクティスNBRC100676株由来のldhAタンパク質であって、N末端から85番目のグルタミン残基がシステイン残基に置換されているタンパク質)であって、α-ケト酸の還元反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(4-2)配列番号28において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
「配列番号28において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号28に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号28において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、N末端から85番目の残基にシステイン残基を維持しているタンパク質をコードしていることが好ましい。
より好ましくは、第4遺伝子は、配列番号27に記載の塩基配列からなる、ラクトコッカス ラクティスNBRC100676株由来のldhA遺伝子である。なお、配列番号27に記載の塩基配列は、N末端から85番目の残基にシステイン残基を有しているタンパク質をコードしている。
配列番号27に記載の塩基配列と配列番号28に記載のアミノ酸配列は、以下の通りである。
Figure 0007370587000027
Figure 0007370587000028
α-ケト酸の還元反応を触媒する活性は、例えば、当該酵素反応を0.25mM NADH、50mM 塩化カリウム、5mM 塩化マグネシウム、 5mM 塩化マグネシウム、5mM D-フルクトース 1,6-ビスリン酸を含有する60mM HEPES-NaOHバッファー(pH7.0)中で30℃にて行い、原料のα-ケト酸が還元される際に消費されるNADHの初期消費速度を測定することで算出できる。NADHの初期消費速度は、例えば、酵素反応液中のNADHに由来する340nmにおける吸光度の減少速度を測定することで算出できる。ここでは、30℃で1分間に1μmolのα-ケト酸が還元される活性を1ユニットとする。
「配列番号28において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(ldhA遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
(3.1.4)形質転換のための組換えベクターの構築
第1および第4遺伝子は、形質転換のために適切なプラスミドベクターに組み込むことができる。
プラスミドベクターとしては、「(1.1.3)形質転換のための組換えベクターの構築」の欄に記載したプラスミドベクターと同様のプラスミドベクターを使用することができる。
第1および第4遺伝子は、各々個別のプラスミドベクターに組み込んでもよいし、あるいは同一のプラスミドベクターに組み込んでもよい。得られた組換えベクターを用いて形質転換体を作製することができる。
(3.1.5)形質転換
形質転換方法は、公知の方法を制限無く使用できる。このような公知の方法としては、「(1.1.4)形質転換」の欄に記載した方法と同様の方法を使用することができる。
なお、上述のとおりに組換えベクターを用いて形質転換体を作製した場合、第1および第4遺伝子の各々は、宿主の染色体に組み込まれてもよいし、あるいは、組換えベクターの形態で宿主の細胞質内に存在していてもよい。
(3.1.6)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失
宿主は、野生株の他に、その変異株や人為的な遺伝子組換え体であってもよい。宿主がコリネ型細菌である場合、宿主は、「(1.1.5)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失」の欄に記載した遺伝子破壊株または遺伝子欠失株と同様の遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を使用することができる。また、遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を作製する方法としては、「(1.1.5)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失」の欄に記載した方法と同様の方法を使用することができる。このような遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を宿主として用いることにより2,4-ジヒドロキシカルボン酸の生産性を向上させたり、副生成物の生成を抑制したりすることができる。
(3.1.7)2,4-ジヒドロキシカルボン酸生産微生物の具体例
具体的には、2,4-ジヒドロキシカルボン酸生産微生物としては、
以下からなる群より選択される第1遺伝子:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;および
以下からなる群より選択される第4遺伝子:
(4-1)配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(4-2)配列番号28において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
を含むコリネ型細菌を使用することができる。
(3.2)培養工程
2,4-ジヒドロキシカルボン酸生産微生物(例えば、上述した形質転換体)を、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養して、2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産することができる。「ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養すること」は、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で培養することにより行うことができる。好ましくは、「ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養すること」は、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を添加した培養液中で培養することにより行うことができる。
ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下での培養に先立ち、「(1.2)培養工程」の欄に記載した増殖培養を行うことが好ましい。
生産培養に先立って増殖培養を行う場合、増殖培養とその後の生産培養は、例えば、「(1.2)培養工程」の欄に記載したとおり行うことができる。
(3.2.1)増殖用培養液
増殖用培養液としては、「(1.2.1)増殖用培養液」の欄に記載した増殖用培養液と同様の培養液を使用することができる。
(3.2.2)生産用培養液
生産用培養液としては、「(1.2.2)生産用培養液」の欄に記載した生産用培養液と同様の培養液を使用することができる。
具体的な生産用培養液としては、グルコース、ホルムアルデヒド、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)および硫酸マンガン(II)を含み、7.0のpHを有する培地を用いることができる。
なお、1種類のカルボニル化合物を生産用培養液中に使用した場合、後述する「(3.2.4)2,4-ジヒドロキシカルボン酸の回収」の欄に記載した分離精製を容易に行うことが可能である。
(3.2.3)生産培養の条件
生産培養における培養温度は、2,4-ジヒドロキシカルボン酸の生産に適した温度であれば、任意の温度であってもよい。生産培養における培養温度は、約20~50℃が好ましく、約25~47℃がより好ましい。上記温度範囲であれば、効率良く2,4-ジヒドロキシカルボン酸を製造できる。生産用培養液のpHは、2,4-ジヒドロキシカルボン酸の生産に適したpHであれば、任意のpHであってもよい。生産用培養液のpHは、約6~8の範囲内に維持することが好ましい。生産用培養液のpHの調整は、無機あるいは有機の酸;水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液;尿素;炭酸カルシウム;アンモニア;4-モルホリノプロパンスルホン酸等を含むpH緩衝液等を用いて行うことができる。生産培養中も必要に応じて生産用培養液のpHは、適宜調整することができる。生産培養における培養時間は、形質転換体が2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産するのに十分な時間であれば、任意の時間であってもよい。生産培養における培養時間は、約3時間~7日間が好ましく、約1~3日間がより好ましい。
生産培養は、好気的条件の下で行われてもよく、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われてもよい。これは、上述した形質転換体が、好気的条件の下でも嫌気的条件または微好気的条件の下でも働く、2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産する経路を有しているためである。2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産する経路は、後述の「(3.3)作用および効果」の欄で述べる。
<嫌気的条件または微好気的条件>
生産培養は、好ましくは、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われる。
形質転換体を嫌気的条件下または微好気的条件下で培養すると、形質転換体は実質的に増殖せず、一層効率的に2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産することができる。
「嫌気的条件または微好気的条件」は、「(1.2.3)生産培養の条件」の欄に記載した「嫌気的条件または微好気的条件」と同様の条件とすることができる。
<高密度条件>
生産培養は、好ましくは、形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われる。このような状態で形質転換体を培養すると、一層効率的に2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産することができる。
「形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態」は、「(1.2.3)生産培養の条件」の欄に記載した「形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態」と同様の状態とすることができる。
生産培養は、嫌気的条件または微好気的条件の下で、形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われることがより好ましい。
(3.2.4)2,4-ジヒドロキシカルボン酸の回収
上述のとおり、第1および第4遺伝子を含む形質転換体を生産用培養液中で培養すると、生産用培養液中に2,4-ジヒドロキシカルボン酸が生産される。
具体的には、生産用培養液中に下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物を使用した場合、下記一般式(5):
101C(R102)(OH)CH2CH(OH)COOH
(上記一般式(5)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産することができる。
より具体的には、上記一般式(1)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(5)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素である2,4-ジヒドロキシカルボン酸(すなわち、2,4-ジヒドロキシ酪酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(5)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素である2,4-ジヒドロキシカルボン酸(すなわち、2,4-ジヒドロキシ吉草酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(5)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素である2,4-ジヒドロキシカルボン酸(すなわち、2,4-ジヒドロキシカプロン酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(5)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素である2,4-ジヒドロキシカルボン酸(すなわち、2,4-ジヒドロキシエナント酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(1)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(5)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素である2,4-ジヒドロキシカルボン酸(すなわち、2,4-ジヒドロキシノルマルヘプタン酸)を生産することができる。また、具体的には、上記一般式(1)中、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(5)中、R101がノイソプロピル基であり、かつ、R102が水素である2,4-ジヒドロキシカルボン酸(すなわち、2,4-ジヒドロキシイソエナント酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がペンチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(5)中、R101がペンチル基であり、かつ、R102が水素である2,4-ジヒドロキシカルボン酸(すなわち、2,4-ジヒドロキシカプリル酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(1)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(5)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素である2,4-ジヒドロキシカルボン酸(すなわち、2,4-ジヒドロキシノルマルカプリル酸)を生産することができる。
より具体的には、上記一般式(1)中、R101およびR102がいずれもメチル基であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(5)中、R101およびR102がいずれもメチル基である2,4-ジヒドロキシカルボン酸(すなわち、4-メチル-2,4-ジヒドロキシ吉草酸)を生産することができる。
生産用培養液を回収することにより上記の2,4-ジヒドロキシカルボン酸を回収できるが、さらに、公知の方法で2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産用培養液から分離精製することもできる。そのような公知の方法として、晶析法、クロマトグラフィー法、イオン交換樹脂法、活性炭吸着溶離法、溶媒抽出法等が挙げられる。
なお、生産用培養液からは、第1遺伝子がコードする酵素が触媒するアルドール反応によって生じたα-ケト酸等の物質を回収することもできる。
また、複数種類のカルボニル化合物を使用した場合、培養液中に複数種類の2,4-ジヒドロキシカルボン酸が生産される。複数種類の2,4-ジヒドロキシカルボン酸は、晶析やクロマトグラフィーによって、互いに分離することができる。
(3.3)作用および効果
2,4-ジヒドロキシカルボン酸生産微生物が2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産するプロセスを模式的に図3に示す。図3に示すプロセスにおいては、ピルビン酸供給化合物がグルコースであり、カルボニル化合物がホルムアルデヒドであり、2,4-ジヒドロキシカルボン酸が2,4-ジヒドロキシ酪酸である場合を例として説明する。
図3に示すように、先ず、2,4-ジヒドロキシカルボン酸生産微生物11は、グルコース2及びホルムアルデヒド3を取り込む。次に、グルコース2は、解糖系を通じてピルビン酸4に変換される。次に、ピルビン酸4とホルムアルデヒド3とは、第1遺伝子がコードする「ピルビン酸とアルデヒドとのアルドール反応を触媒する酵素」によって4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸5に変換される。次に、4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸5は、第4遺伝子がコードする「α-ケト酸の還元反応を触媒する酵素」によって2,4-ジヒドロキシ酪酸12に変換される。以上のようにして、2,4-ジヒドロキシ酪酸が生産される。
(4.)2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の製造方法(生物学的方法)
2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の製造方法は、
以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、および
(e)α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素をコードする第5遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(6)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産する工程を含む。
以下の説明において、第1および第5遺伝子を含む上記微生物を、「2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸生産微生物」とも呼ぶ。2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸生産微生物は、第1および第5遺伝子を生来的に有する微生物であってもよいし、宿主を第1および第5遺伝子で形質転換することによって得られる微生物であってもよい。以下、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸生産微生物が形質転換体である場合を例として説明する。
(4.1)形質転換体
(4.1.1)宿主
宿主としては、「(1.1.1)宿主」の欄に記載した宿主と同様の宿主を使用することができる。
次に、宿主に導入される第1および第5遺伝子について説明する。
(4.1.2)第1遺伝子
第1遺伝子としては、「(1.1.2)第1遺伝子」の欄に記載した第1遺伝子と同様の遺伝子を使用することができる。
(4.1.3)第5遺伝子
第5遺伝子は、「α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素」をコードする。「α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素」とは、後述の測定方法に従って、酵素反応液として、精製タンパク質およびα-ケト酸(初期基質濃度 1mM)を含む酵素反応液を使用して測定した場合に、10mU/mg protein以上の活性を有する酵素をいう。第5遺伝子は、例えば、第1遺伝子がコードするタンパク質が触媒するアルドール反応により得られたα-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素をコードする。「α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素」におけるα-ケト酸は、例えば、「(1.)α-ケト酸の製造方法」の欄に記載した、一般式(2)により表されるα-ケト酸である。「α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素」は、例えば、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼ[Glutamate/phenylalanine/leucine/valine dehydrogenase, (IPR006095)]である。「グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼ」は、当該技術分野において、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、ロイシンデヒドロゲナーゼおよびバリンデヒドロゲナーゼを包含するデヒドロゲナーゼファミリーを意味する用語として使用されている。一例によると、「グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼ」は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、ロイシンデヒドロゲナーゼおよびバリンデヒドロゲナーゼからなる群より選択される少なくとも一つのデヒドロゲナーゼである。
第5遺伝子は、以下に例示するグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子であってもよい。
(d1)ロイシンデヒドロゲナーゼ(leucine dehydrogenase、EC番号1.4.1.9)、
(d2)フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(phenylalanine dehydrogenase、EC番号1.4.1.20)、および
(d3)バリンデヒドロゲナーゼ(valine dehydrogenase、EC番号1.4.1.8および1.4.1.23)。
(d1)に含まれるデヒドロゲナーゼとしては、例えば、leuDHタンパク質が挙げられる。好ましくは、leuDHタンパク質は、リシニバシラス スフェリカス(Lysinibacillus sphaericus)、バシラス セレウス(Bacillus cereus)またはジオバシラス ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophillus)由来である。
(d2)に含まれるデヒドロゲナーゼとしては、例えば、phedhタンパク質が挙げられる。好ましくは、phedhタンパク質は、バシラス バディウス(Bacillus badius)由来である。
(d3)に含まれるデヒドロゲナーゼとしては、例えば、valdhタンパク質が挙げられる。好ましくは、valdhタンパク質は、ストレプトミセス フラジエ(streptomyces fradiae)由来である。
好ましくは、第5遺伝子は以下からなる群より選択される:
(5-1)配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、リシニバシラス スフェリカス由来のleuDHタンパク質)であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-2)配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-3)配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、バシラス バディウス由来のphedhタンパク質)であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-4)配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-5)配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、ストレプトミセス フラジエ由来のvaldhタンパク質)であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(5-6)配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
「配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号30に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号32に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
「配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号34に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
より好ましくは、第5遺伝子は、
配列番号30に記載の塩基配列からなる、リシニバシラス スフェリカス由来のleuDH遺伝子、
配列番号32に記載の塩基配列からなる、バシラス バディウス由来のphedh遺伝子、または
配列番号34に記載の塩基配列からなる、ストレプトミセス フラジエ由来のvaldh遺伝子である。
配列番号29に記載の塩基配列と配列番号30に記載のアミノ酸配列は、以下の通りである。
Figure 0007370587000029
Figure 0007370587000030
配列番号31に記載の塩基配列と配列番号32に記載のアミノ酸配列は、以下の通りである。
Figure 0007370587000031
Figure 0007370587000032
配列番号33に記載の塩基配列と配列番号34に記載のアミノ酸配列は、以下の通りである。
Figure 0007370587000033
Figure 0007370587000034
α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性は、例えば、当該酵素反応を0.2mM NADH、200mM 塩化アンモニウムを含有する100mM HEPES-KOHバッファー(pH7.5)中で25℃にて行い、原料のα-ケト酸がα-アミノ酸に還元される際に消費されるNADHの初期消費速度を測定することで算出できる。NADHの初期消費速度は、例えば、酵素反応液中のNADHに由来する340nmにおける吸光度の減少速度を測定することで算出できる。ここでは、25℃で1分間に1μmolのα-ケト酸がα-アミノ酸に還元される活性を1ユニットとする。
「配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(leuDH遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
「配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(phedh遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
「配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(valdh遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
(4.1.4)形質転換のための組換えベクターの構築
第1および第5遺伝子は、形質転換のために適切なプラスミドベクターに組み込むことができる。
プラスミドベクターとしては、「(1.1.3)形質転換のための組換えベクターの構築」の欄に記載したプラスミドベクターと同様のプラスミドベクターを使用することができる。
第1および第5遺伝子は、各々個別のプラスミドベクターに組み込んでもよいし、あるいは同一のプラスミドベクターに組み込んでもよい。得られた組換えベクターを用いて形質転換体を作製することができる。
(4.1.5)形質転換
形質転換方法は、公知の方法を制限無く使用できる。このような公知の方法としては、「(1.1.4)形質転換」の欄に記載した方法と同様の方法を使用することができる。
なお、上述のとおりに組換えベクターを用いて形質転換体を作製した場合、第1および第5遺伝子の各々は、宿主の染色体に組み込まれてもよいし、あるいは、組換えベクターの形態で宿主の細胞質内に存在していてもよい。
(4.1.6)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失
宿主は、野生株の他に、その変異株や人為的な遺伝子組換え体であってもよい。宿主がコリネ型細菌である場合、宿主は、「(1.1.5)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失」の欄に記載した遺伝子破壊株または遺伝子欠失株と同様の遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を使用することができる。また、遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を作製する方法としては、「(1.1.5)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失」の欄に記載した方法と同様の方法を使用することができる。このような遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を宿主として用いることにより2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の生産性を向上させたり、副生成物の生成を抑制したりすることができる。
(4.1.7)2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸生産微生物の具体例
具体的には、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸生産微生物としては、
以下からなる群より選択される第1遺伝子:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;および
以下からなる群より選択される第5遺伝子:
(5-1)配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-2)配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-3)配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-4)配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-5)配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(5-6)配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
を含むコリネ型細菌を使用することができる。
(4.2)培養工程
2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸生産微生物(例えば、上述した形質転換体)を、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養して、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産することができる。「ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養すること」は、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で培養することにより行うことができる。好ましくは、「ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下で培養すること」は、ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を添加した培養液中で培養することにより行うことができる。
ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物の存在下での培養に先立ち、「(1.2)培養工程」の欄に記載した増殖培養を行うことが好ましい。
生産培養に先立って増殖培養を行う場合、増殖培養とその後の生産培養は、例えば、「(1.2)培養工程」の欄に記載したとおり行うことができる。
(4.2.1)増殖用培養液
増殖用培養液としては、「(1.2.1)増殖用培養液」の欄に記載した増殖用培養液と同様の培養液を使用することができる。
(4.2.2)生産用培養液
生産用培養液としては、「(1.2.2)生産用培養液」の欄に記載した生産用培養液と同様の培養液を使用することができる。
具体的な生産用培養液としては、グルコース、ホルムアルデヒド、硫酸アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)および硫酸マンガン(II)を含み、7.0のpHを有する培地を用いることができる。
なお、1種類のカルボニル化合物を生産用培養液中に使用した場合、後述する「(4.2.4)2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の回収」の欄に記載した分離精製を容易に行うことが可能である。
(4.2.3)生産培養の条件
生産培養における培養温度は、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の生産に適した温度であれば、任意の温度であってもよい。生産培養における培養温度は、約20~50℃が好ましく、約25~47℃がより好ましい。上記温度範囲であれば、効率良く2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を製造できる。生産用培養液のpHは、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の生産に適したpHであれば、任意のpHであってもよい。生産用培養液のpHは、約6~8の範囲内に維持することが好ましい。生産用培養液のpHの調整は、無機あるいは有機の酸;水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液;尿素;炭酸カルシウム;アンモニア;4-モルホリノプロパンスルホン酸等を含むpH緩衝液等を用いて行うことができる。生産培養中も必要に応じて生産用培養液のpHは、適宜調整することができる。生産培養における培養時間は、形質転換体が2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産するのに十分な時間であれば、任意の時間であってもよい。生産培養における培養時間は、約3時間~7日間が好ましく、約1~3日間がより好ましい。
生産培養は、好気的条件の下で行われてもよく、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われてもよい。これは、上述した形質転換体が、好気的条件の下でも嫌気的条件または微好気的条件の下でも働く、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産する経路を有しているためである。2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産する経路は、後述の「(4.3)作用および効果」の欄で述べる。
<嫌気的条件または微好気的条件>
生産培養は、好ましくは、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われる。
形質転換体を嫌気的条件下または微好気的条件下で培養すると、形質転換体は実質的に増殖せず、一層効率的に2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産することができる。
「嫌気的条件または微好気的条件」は、「(1.2.3)生産培養の条件」の欄に記載した「嫌気的条件または微好気的条件」と同様の条件とすることができる。
<高密度条件>
生産培養は、好ましくは、形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われる。このような状態で形質転換体を培養すると、一層効率的に2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産することができる。
「形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態」は、「(1.2.3)生産培養の条件」の欄に記載した「形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態」と同様の状態とすることができる。
生産培養は、嫌気的条件または微好気的条件の下で、形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われることがより好ましい。
(4.2.4)2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の回収
上述のとおり、第1および第5遺伝子を含む形質転換体を生産用培養液中で培養すると、生産用培養液中に2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸が生産される。
具体的には、生産用培養液中に下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物を使用した場合、下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(6)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産することができる。
より具体的には、上記一般式(1)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(6)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシ吉草酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシカプロン酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソエナント酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(1)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシノルマルヘプタン酸)を生産することができる。また、具体的には、上記一般式(1)中、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシイソエナント酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がペンチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がペンチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシカプリル酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(1)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシノルマルカプリル酸)を生産することができる。
より具体的には、上記一般式(1)中、R101およびR102がいずれもメチル基であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(6)中、R101およびR102がいずれもメチル基である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、4-メチル-2-アミノ-4-ヒドロキシ吉草酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合に得られる2-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸は、ホモセリンとも呼ばれる。ホモセリンは、例えば、L-ホモセリンである。上記一般式(1)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、生産用培養液中に、ホモセリンに加えて、ホモセリン誘導体が生産される。ホモセリン誘導体としては、スレオニンおよび2-アミノ酪酸が挙げられる。
スレオニンは、例えば、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸生産微生物が保持する、ホモセリンをスレオニンに変換する酵素(例えば、ホモセリンキナーゼおよびスレオニンシンターゼ)によってホモセリンから生産される。スレオニンは、例えば、L-スレオニンである。
2-アミノ酪酸は、例えば、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸生産微生物が保持する、スレオニンを2-アミノ酪酸に変換する酵素(例えば、スレオニンデアミナーゼと、アミノ酸デヒドロゲナーゼまたはアミノ基転移酵素の何れかとの組合せ)によってスレオニンから生産される。アミノ酸デヒドロゲナーゼは、例えば、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼである。グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは、具体的には、ロイシンデヒドロゲナーゼである。
生産用培養液を回収することにより上記の2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸やホモセリン誘導体を回収できるが、さらに、公知の方法で2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産用培養液から分離精製することもできる。そのような公知の方法として、晶析法、クロマトグラフィー法、イオン交換樹脂法、活性炭吸着溶離法、溶媒抽出法等が挙げられる。
なお、生産用培養液からは、第1遺伝子がコードする酵素が触媒するアルドール反応によって生じたα-ケト酸等の物質を回収することもできる。
上述したとおり、上記一般式(1)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、培養液中にホモセリン、スレオニンおよび2-アミノ酪酸が生産される。ホモセリン、スレオニンおよび2-アミノ酪酸は、晶析やクロマトグラフィーによって、互いに分離することができる。
また、複数種類のカルボニル化合物を使用した場合、培養液中に複数種類の2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸が生産される。複数種類の2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸は、晶析やクロマトグラフィーによって、互いに分離することができる。
(4.3)作用および効果
2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸生産微生物が2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産するプロセスを模式的に図4に示す。図4に示すプロセスにおいては、ピルビン酸供給化合物がグルコースであり、カルボニル化合物がホルムアルデヒドであり、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸がホモセリンである場合を例として説明する。
図4に示すように、先ず、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸生産微生物13は、グルコース2及びホルムアルデヒド3を取り込む。次に、グルコース2は、解糖系を通じてピルビン酸4に変換される。次に、ピルビン酸4とホルムアルデヒド3とは、第1遺伝子がコードする「ピルビン酸とアルデヒドとのアルドール反応を触媒する酵素」によって4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸5に変換される。次に、4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸5は、第5遺伝子がコードする「α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素」によってホモセリン14に変換される。以上のようにして、ホモセリンが生産される。
(5.)2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の製造方法(化学的方法)
「(4.)2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の製造方法」の欄では、微生物を使用した生物学的方法により2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を製造する方法について説明したが、この方法は微生物を使用することなく、化学的方法により実施することもできる。
すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の製造方法は、
下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるα-ケト酸と窒素源と還元剤とを、
グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの存在下で反応させて、
下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(6)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(2)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産する工程を含む。
α-ケト酸と窒素源と還元剤とをグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの存在下で反応させることは、例えば、α-ケト酸と窒素源と還元剤とグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼとバッファーとを含む反応液中で行うことができる。以下、α-ケト酸と窒素源と還元剤とをグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの存在下で反応させることは、反応液中で行われる場合を例として説明する。
(5.1)反応液
反応液に含まれる各成分について以下で説明する。本明細書に記載される、反応液中の各成分の濃度は、各成分が添加された時点における反応液中の最終濃度を指す。
(5.1.1)α-ケト酸
α-ケト酸は、下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表される。
一例によれば、α-ケト酸は、上記一般式(2)において、R101は水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ、R102は水素であるα-ケト酸を使用することができる。
別の例によると、α-ケト酸は、上記一般式(2)において、R101はメチル基であり、かつ、R102は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であるα-ケト酸を使用することができる。
具体的には、上記一般式(2)により表されるα-ケト酸として、上記一般式(2)中、
101が水素であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸);
101がメチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソ吉草酸);
101がエチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソカプロン酸);
101がプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソエナント酸)、具体的には、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソノルマルヘプタン酸)、または、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソイソエナント酸);または
101がペンチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソカプリル酸)、具体的には、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソノルマルカプリル酸);
を使用することができる。
また、上記一般式(2)により表されるα-ケト酸としては、上記一般式(2)中、R101およびR102がいずれもメチル基であるα-ケト酸(すなわち、4-メチル-4-ヒドロキシ-2-オキソ吉草酸)を使用することもできる。
α-ケト酸は、1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
反応液におけるα-ケト酸の濃度は、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の生産を阻害しない範囲で可能な限り高くすることができる。反応液におけるα-ケト酸の濃度は、0.1mM~1Mの範囲内にあることが好ましく、1mM~300mMの範囲内にあることがより好ましい。また、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の生産に伴うα-ケト酸の減少に応じて、α-ケト酸の追加添加を行うことができる。
なお、1種類のα-ケト酸を反応液中に使用した場合、後述する「(5.3)2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の回収」の欄に記載した分離精製を容易に行うことが可能である。
(5.1.2)窒素源
窒素源としては、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼが触媒する還元的アミノ化反応においてアミノ基を供給する任意の化合物を使用することができる。窒素源としては、具体的には、反応液中で解離してアンモニウムイオンを生じるアンモニウム塩、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウムを使用することができる。
反応液における窒素源の濃度は、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の生産を阻害しない範囲で可能な限り高くすることができる。反応液における窒素源の濃度は、0.1mM~1Mの範囲内にあることが好ましく、1mM~300mMの範囲内にあることがより好ましい。また、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の生産に伴う窒素源の減少に応じて、窒素源の追加添加を行うことができる。
(5.1.3)還元剤
還元剤としては、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼが利用できる任意の電子供与体を使用することができる。例えば、NADH、NADPHを使用することができる。
反応液における還元剤の濃度は、0.01mM~100mMの範囲内にあることが好ましく、0.1mM~10mMの範囲内にあることがより好ましい。また、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の生産に伴い減少する還元剤は、適切な化合物と酵素を用いて再生することができる。適切な化合物と酵素は、例えば、エタノールとアルコールデヒドロゲナーゼである。
(5.1.4)グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼ
グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼとしては、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼに包含される任意の酵素を使用することができる。一例によると、「グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼ」は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、ロイシンデヒドロゲナーゼおよびバリンデヒドロゲナーゼからなる群より選択される少なくとも一つのデヒドロゲナーゼである。
グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼとしては、以下に例示するデヒドロゲナーゼを使用することができる。
(d1)ロイシンデヒドロゲナーゼ(leucine dehydrogenase、EC番号1.4.1.9)、
(d2)フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(phenylalanine dehydrogenase、EC番号1.4.1.20)、および
(d3)バリンデヒドロゲナーゼ(valine dehydrogenase、EC番号1.4.1.8および1.4.1.23)。
(d1)に含まれるデヒドロゲナーゼとしては、例えば、leuDHタンパク質が挙げられる。好ましくは、leuDHタンパク質は、リシニバシラス スフェリカス(Lysinibacillus sphaericus)、バシラス セレウス(Bacillus cereus)またはジオバシラス ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophillus)由来である。
(d2)に含まれるデヒドロゲナーゼとしては、例えば、phedhタンパク質が挙げられる。好ましくは、phedhタンパク質は、バシラス バディウス(Bacillus badius)由来である。
(d3)に含まれるデヒドロゲナーゼとしては、例えば、valdhタンパク質が挙げられる。好ましくは、valdhタンパク質は、ストレプトミセス フラジエ(streptomyces fradiae)由来である。
好ましくは、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは以下からなる群より選択される:
(5’-1) 配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質、
(5’-2) 配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質、
(5’-3) 配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質、
(5’-4) 配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質、
(5’-5) 配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質、および
(5’-6) 配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質。
「配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質」は、「配列番号30に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質」であってもよい。
「配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質」は、「配列番号32に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質」であってもよい。
「配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質」は、「配列番号34に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質」であってもよい。
α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性は、「(4.1.3)第5遺伝子」の欄に記載した、活性を測定する方法と同様の方法によって測定することができる。
グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは、例えば、市販される酵素を使用してもよいし、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を大腸菌やコリネ型細菌などの宿主で発現させることにより得られた酵素を使用してもよい。後者の場合、当該酵素を発現する微生物の細胞破砕液を酵素として使用することもできるし、当該細胞破砕液を精製して得られる酵素含有液を酵素として使用することもできる。
反応液におけるグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの濃度は、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の生産を阻害しない範囲で可能な限り高くすることができる。反応液におけるグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの濃度は、0.01ug/mL~1mg/mLの範囲内にあることが好ましく、0.1~100ug/mLの範囲内にあることがより好ましい。
(5.1.5)バッファー
バッファーは、例えば、緩衝剤およびその他必要な成分を含有する。
緩衝剤としては、任意の緩衝剤を使用することができる。緩衝剤としては、例えば、HEPESまたはグリシンを使用することができる。反応液における緩衝剤の濃度は、1mM~1Mの範囲内とすることができる。
さらに、必要に応じて、無機塩などを添加することもできる。
(5.2)反応条件
反応温度は、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の生産に適した温度であれば、任意の温度であってもよい。反応温度は、約4~80℃が好ましく、約20~60℃がより好ましい。上記温度範囲であれば、効率良く2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を製造できる。反応液のpHは、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の生産に適したpHであれば、任意のpHであってもよい。反応液のpHは、約5~11の範囲内に維持することが好ましい。反応液のpHの調整は、塩酸や水酸化カリウム水溶液等を用いて行うことができる。反応中も必要に応じて反応液のpHは、適宜調整することができる。反応時間は、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸が生産されるのに十分な時間であれば、任意の時間であってもよい。反応時間は、約1分~10日間時間が好ましく、約1時間~3日間がより好ましい。
(5.3)2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の回収
上述したとおり、α-ケト酸と窒素源と還元剤とをグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの存在下で反応させると、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸が生産される。
具体的には、下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるα-ケト酸を使用した場合、下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(6)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(2)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産することができる。
より具体的には、上記一般式(2)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸を使用した場合、上記一般式(6)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸)を生産することができる。
上記一般式(2)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシ吉草酸)を生産することができる。
上記一般式(2)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシカプロン酸)を生産することができる。
上記一般式(2)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシエナント酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(2)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシノルマルヘプタン酸)を生産することができる。また、具体的には、上記一般式(2)中、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシイソエナント酸)を生産することができる。
上記一般式(2)中、R101がペンチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がイソペンチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシカプリル酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(2)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸を使用した場合、上記一般式(6)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-ヒドロキシノルマルカプリル酸)を生産することができる。
上記一般式(2)中、R101およびR102がいずれもメチル基であるα-ケト酸を使用した場合、上記一般式(6)中、R101およびR102がいずれもメチル基である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸(すなわち、4-メチル-2-アミノ-4-ヒドロキシ吉草酸)を生産することができる。
反応液を回収することにより2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を回収できるが、さらに、公知の方法で2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を反応液から分離精製することもできる。そのような公知の方法として、晶析法、クロマトグラフィー法、イオン交換樹脂法、活性炭吸着溶離法、溶媒抽出法等が挙げられる。
また、複数種類のα-ケト酸を使用した場合、反応液中に複数種類の2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸が生産される。複数種類の2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸は、晶析やクロマトグラフィー方法によって、互いに分離することができる。
(5.4)グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの酸化的脱アミノ化反応を利用したα-ケト酸の製造方法
上述の2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の製造方法は、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの還元的アミノ化反応を利用する。
一般的に、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼ等のアミノ酸デヒドロゲナーゼは、還元的アミノ化反応およびその逆反応、すなわち、酸化的脱アミノ化反応のいずれの反応も触媒し、また、これらデヒドロゲナーゼの活性強度には相関がある(例えば、Biochim. Biophys. Acta 96, 248-262 (1965)、J. Biol. Chem. 253, 5719-5725 (1978)、Eur. J. Biochem. 100, 29-39 (1979))。したがって、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの酸化的脱アミノ化を利用して、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸からα-ケト酸を生産することができる。
よって、別の実施形態によれば、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの酸化的脱アミノ化反応を利用したα-ケト酸の製造方法が提供される。すなわち、この実施形態にかかるα-ケト酸の製造方法は、
下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸から選ばれる2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸と酸化剤とを、
グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの存在下で反応させて、
下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(上記一般式(2)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(6)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表されるα-ケト酸を生産する工程を含む。
2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸をグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの存在下で反応させることは、例えば、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸と酸化剤とグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼとバッファーとを含む反応液中で行うことができる。
上記一般式(6)により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸としては、「(5.3)2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の回収」の欄に記載した一般式(6)により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用することができる。
2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸は、1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
なお、1種類の2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を反応液中に使用した場合、後述する、α-ケト酸の分離精製を容易に行うことが可能である。
グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼとしては、「(5.1.4)グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼ」の欄に記載したグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼを使用することができる。
酸化剤としては、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼが利用できる任意の電子受容体を使用することができる。例えば、NAD、NADPを使用することができる。
反応液における酸化剤の濃度は、0.01mM~100mMの範囲内にあることが好ましく、0.1mM~10mMの範囲内にあることがより好ましい。また、α-ケト酸の生産に伴い減少する酸化剤は、適切な化合物と酵素を用いて再生することができる。適切な化合物と酵素は、例えば、ピルビン酸と乳酸デヒドロゲナーゼである。
バッファーとしては、「(5.1.5)バッファー」の欄に記載したバッファーを使用することができる。
反応温度は、α-ケト酸の生産に適した温度であれば、任意の温度であってもよい。反応温度は、約4~80℃が好ましく、約20~60℃がより好ましい。上記温度範囲であれば、効率良くα-ケト酸を製造できる。反応液のpHは、α-ケト酸の生産に適したpHであれば、任意のpHであってもよい。反応液のpHは、約5~11の範囲内に維持することが好ましい。反応液のpHの調整は、塩酸や水酸化カリウム水溶液等を用いて行うことができる。反応中も必要に応じて反応液のpHは、適宜調整することができる。反応時間は、α-ケト酸が生産されるのに十分な時間であれば、任意の時間であってもよい。反応時間は、約1分~10日間時間が好ましく、約1時間~3日間がより好ましい。
上述したとおり、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸と酸化剤とをグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの存在下で反応させると、α-ケト酸が生産される。
具体的には、下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用した場合、
下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(上記一般式(2)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(6)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表されるα-ケト酸を生産することができる。
より具体的には、上記一般式(6)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用した場合、上記一般式(2)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸)を生産することができる。
上記一般式(6)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソ吉草酸)を生産することができる。
上記一般式(6)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソカプロン酸)を生産することができる。
上記一般式(6)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソエナント酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(6)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソノルマルヘプタン酸)を生産することができる。また、具体的には、上記一般式(6)中、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソイソエナント酸)を生産することができる。
上記一般式(6)中、R101がペンチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がペンチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソカプリル酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(6)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用した場合、上記一般式(2)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素であるα-ケト酸(すなわち、4-ヒドロキシ-2-オキソノルマルカプリル酸)を生産することができる。
上記一般式(6)中、R101およびR102がいずれもメチル基である2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用した場合、上記一般式(2)中、R101およびR102がいずれもメチル基であるα-ケト酸(すなわち、4-メチル-4-ヒドロキシ-2-オキソ吉草酸)を生産することができる。
反応液を回収することにより上記のα-ケト酸を回収できるが、さらに、公知の方法でα-ケト酸を反応液から分離精製することもできる。そのような公知の方法として、晶析法、クロマトグラフィー法、イオン交換樹脂法、活性炭吸着溶離法、溶媒抽出法等が挙げられる。
また、複数種類の2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を使用した場合、反応液中に複数種類のα-ケト酸が生産される。複数種類のα-ケト酸は、晶析やクロマトグラフィーによって、互いに分離することができる。
(6.)2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸の製造方法
2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸の製造方法は、
以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、
(e)α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素をコードする第5遺伝子、および
(f)2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する酵素をコードする第6遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、メチルメルカプタンと、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(7):
101C(R102)(SCH3)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(7)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産する工程を含む。
以下の説明において、第1、第5および第6遺伝子を含む上記微生物を、「2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸生産微生物」とも呼ぶ。2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸生産微生物は、第1、第5および第6遺伝子を生来的に有する微生物であってもよいし、宿主を第1、第5および第6遺伝子で形質転換することによって得られる微生物であってもよい。以下、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸生産微生物が形質転換体である場合を例として説明する。
(6.1)形質転換体
(6.1.1)宿主
宿主としては、「(1.1.1)宿主」の欄に記載した宿主と同様の宿主を使用することができる。
次に、宿主に導入される第1、第5および第6遺伝子について説明する。
(6.1.2)第1遺伝子
第1遺伝子としては、「(1.1.2)第1遺伝子」の欄に記載した第1遺伝子と同様の遺伝子を使用することができる。
(6.1.3)第5遺伝子
第5遺伝子としては、「(4.1.3)第5遺伝子」の欄に記載した第1遺伝子と同様の遺伝子を使用することができる。
(6.1.4)第6遺伝子
第6遺伝子は、「2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する酵素」をコードする。「2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する酵素」とは、後述の測定方法に従って、酵素反応液として、精製タンパク質、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸(初期基質濃度 1mM)およびメチルメルカプタン(初期基質濃度 5mM)を含む酵素反応液を使用して測定した場合に、0.1mU/mg protein以上の活性を有する酵素をいう。第6遺伝子は、例えば、第5遺伝子がコードするタンパク質が触媒する還元的アミノ化反応を経由して得られる2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する酵素をコードする。「2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する酵素」は、例えば、トランススルフレーション酵素である。
なお、第5遺伝子がコードするタンパク質が触媒する反応と第6遺伝子がコードするタンパク質が触媒する反応との間には、更なる反応が存在する(図5参照)。具体的には、第5遺伝子がコードするタンパク質が触媒する反応により得られた2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸が、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸生産微生物が保持する2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸をリン酸化する酵素(例えば、ホモセリンキナーゼ)によって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸に変換される反応が存在する。2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸は、第6遺伝子がコードするタンパク質が触媒する反応の基質として使用される。
第6遺伝子は、例えば、シスタチオニンγ-シンターゼ(Cystathionine γ-synthase、EC番号2.5.1.48)をコードする遺伝子であってもよい。
シスタチオニンγ-シンターゼとしては、例えば、CGS1タンパク質が挙げられる。好ましくは、CGS1タンパク質は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来である。より好ましくは、CGS1タンパク質は、シロイヌナズナ由来のCGS1成熟タンパク質である。シロイヌナズナ由来のCGS1成熟タンパク質は、シロイヌナズナ由来の野生型CGS1タンパク質において、N末端から2~68番目のアミノ酸残基が欠失したタンパク質である。
好ましくは、第6遺伝子は以下からなる群より選択される:
(6-1)配列番号36に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(すなわち、シロイヌナズナ由来のCGS1成熟タンパク質)であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(6-2)配列番号36において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
「配列番号36において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」は、「配列番号36に記載のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」であってもよい。
シロイヌナズナ由来のCGS1タンパク質のUniprotKB accession numberは、P55217である。
より好ましくは、第6遺伝子は、配列番号35に記載の塩基配列からなる、シロイヌナズナ由来のCGS1遺伝子の内、成熟タンパク質となる箇所をコリネ型細菌での発現が最適になるように合成された遺伝子である。
配列番号35に記載の塩基配列と配列番号36に記載のアミノ酸配列は、以下の通りである。
Figure 0007370587000035
Figure 0007370587000036
2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する活性は、例えば、当該酵素反応を1mM ジチオスレイトールを含有する100mM HEPES-KOHバッファー(pH7.5)中で25℃にて行い、反応に伴い遊離する無機リン酸イオンの初期生成速度を測定することで算出できる。必要であれば、微量のピリドキサールリン酸を加えても良い。無機リン酸イオンの生成速度は、例えば、無機リン酸イオンの濃度の時間変化から算出できる。無機リン酸イオンの濃度の測定は、例えば、酵素反応液と20%(w/v)トリクロロ酢酸を1:2の比率で混合し反応を止めた後、マラカイトグリーン法により可能である。ここでは、25℃で1分間に1μmolのスルフィド化合物が形成される活性を1ユニットとする。
「配列番号36において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(CGS1遺伝子変異体)」は、hpaI遺伝子変異体を選択する上記方法と同様の方法により、他生物種のDNAライブラリーから選択することができる。
(6.1.5)形質転換のための組換えベクターの構築
第1、第5および第6遺伝子は、形質転換のために適切なプラスミドベクターに組み込むことができる。
プラスミドベクターとしては、「(1.1.3)形質転換のための組換えベクターの構築」の欄に記載したプラスミドベクターと同様のプラスミドベクターを使用することができる。
第1、第5および第6遺伝子は、各々個別のプラスミドベクターに組み込んでもよいし、あるいは同一のプラスミドベクターに組み込んでもよい。得られた組換えベクターを用いて形質転換体を作製することができる。
(6.1.6)形質転換
形質転換方法は、公知の方法を制限無く使用できる。このような公知の方法としては、「(1.1.4)形質転換」の欄に記載した方法と同様の方法を使用することができる。
なお、上述のとおりに組換えベクターを用いて形質転換体を作製した場合、第1、第5および第6遺伝子の各々は、宿主の染色体に組み込まれてもよいし、あるいは、組換えベクターの形態で宿主の細胞質内に存在していてもよい。
(6.1.7)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失
宿主は、野生株の他に、その変異株や人為的な遺伝子組換え体であってもよい。宿主がコリネ型細菌である場合、宿主は、「(1.1.5)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失」の欄に記載した遺伝子破壊株または遺伝子欠失株と同様の遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を使用することができる。また、遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を作製する方法としては、「(1.1.5)宿主染色体遺伝子の破壊または欠失」の欄に記載した方法と同様の方法を使用することができる。このような遺伝子破壊株または遺伝子欠失株を宿主として用いることにより2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸の生産性を向上させたり、副生成物の生成を抑制したりすることができる。
(6.1.8)2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸生産微生物の具体例
具体的には、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸生産微生物としては、
以下からなる群より選択される第1遺伝子:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
以下からなる群より選択される第5遺伝子:
(5-1)配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-2)配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-3)配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-4)配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-5)配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(5-6)配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;および
以下からなる群より選択される第6遺伝子:
(6-1)配列番号36に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(6-2)配列番号36において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
を含むコリネ型細菌を使用することができる。
(6.2)培養工程
2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸生産微生物(例えば、上述した形質転換体)を、ピルビン酸供給化合物とカルボニル化合物とメチルメルカプタンとの存在下で培養して、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産することができる。「ピルビン酸供給化合物とカルボニル化合物とメチルメルカプタンとの存在下で培養すること」は、ピルビン酸供給化合物とカルボニル化合物とメチルメルカプタンとを含む培養液中で培養することにより行うことができる。好ましくは、「ピルビン酸供給化合物とカルボニル化合物とメチルメルカプタンとの存在下で培養すること」は、ピルビン酸供給化合物とカルボニル化合物とメチルメルカプタンとを添加した培養液中で培養することにより行うことができる。
ピルビン酸供給化合物とカルボニル化合物とメチルメルカプタンとの存在下での培養に先立ち、「(1.2)培養工程」の欄に記載した増殖培養を行うことが好ましい。
生産培養に先立って増殖培養を行う場合、増殖培養とその後の生産培養は、例えば、以下のとおり行うことができる。増殖培養の後、先ず、増殖培養で使用した培養液(以下、増殖用培養液と呼ぶ)と増殖用培養液中に懸濁された形質転換体とを含む容器を遠心分離機にかけて、形質転換体を沈殿させることができる。その後、増殖用培養液を容器から除去し、分離された形質転換体を、生産培養で使用する培養液(以下、生産用培養液と呼ぶ)に懸濁し、生産培養を行うことができる。
あるいは、増殖培養とその後の生産培養は、増殖培養の後、形質転換体を含有する増殖用培養液にピルビン酸供給化合物、カルボニル化合物およびメチルメルカプタンを添加し、好気的条件を嫌気的条件または微好気的条件に変更することにより、培養液の交換を行うことなく生産培養を行うことができる。このように、増殖培養と生産培養とを連続的に行うこともできる。
(6.2.1)増殖用培養液
増殖用培養液としては、「(1.2.1)増殖用培養液」の欄に記載した増殖用培養液と同様の培養液を使用することができる。
(6.2.2)生産用培養液
生産用培養液としては、ピルビン酸供給化合物、カルボニル化合物、メチルメルカプタン及びその他必要な成分を含有する培養液を用いることができる。その他必要な成分として、例えば、無機塩類、糖類以外の炭素源又は窒素源を用いることができる。
ピルビン酸供給化合物としては、「(1.2.2)生産用培養液」の欄に記載したピルビン酸供給化合物を使用することができる。
カルボニル化合物としては、「(1.2.2)生産用培養液」の欄に記載したカルボニル化合物を使用することができる。
なお、1種類のカルボニル化合物を生産用培養液中に使用した場合、後述する「(6.2.4)2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸の回収」で述べる分離精製を容易に行うことが可能である。
生産用培養液におけるメチルメルカプタンの濃度は、1mM~1Mの範囲内にあることが好ましく、10mM~300mMの範囲内にあることがより好ましい。また、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸の生産に伴うメチルメルカプタンの減少に応じて、メチルメルカプタンの追加添加を行うことができる。
その他必要な成分としては、「(1.2.2)生産用培養液」の欄に記載したその他必要な成分と同様の成分を使用することができる。
具体的な生産用培養液としては、グルコース、ホルムアルデヒド、メチルメルカプタン、硫酸アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)および硫酸マンガン(II)を含み、7.0のpHを有する培地を用いることができる。
また、生産用培養液としては、増殖培養で用いた増殖用培養液と同じ組成のベース培養液に、ピルビン酸供給化合物とカルボニル化合物とメチルメルカプタンとを添加して得られる培養液を用いることもできる。なお、上述のベース培養液中に十分な量でピルビン酸供給化合物が存在する場合、ピルビン酸供給化合物を添加しなくてもよい。
(6.2.3)生産培養の条件
生産培養における培養温度は、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸の生産に適した温度であれば、任意の温度であってもよい。生産培養における培養温度は、約20~50℃が好ましく、約25~47℃がより好ましい。上記温度範囲であれば、効率良く2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を製造できる。生産用培養液のpHは、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸の生産に適したpHであれば、任意のpHであってもよい。生産用培養液のpHは、約6~8の範囲内に維持することが好ましい。生産用培養液のpHの調整は、無機あるいは有機の酸;水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液;尿素;炭酸カルシウム;アンモニア;4-モルホリノプロパンスルホン酸等を含むpH緩衝液等を用いて行うことができる。生産培養中も必要に応じて生産用培養液のpHは、適宜調整することができる。生産培養における培養時間は、形質転換体が2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産するのに十分な時間であれば、任意の時間であってもよい。生産培養における培養時間は、約3時間~7日間が好ましく、約1~3日間がより好ましい。
生産培養は、好気的条件の下で行われてもよく、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われてもよい。これは、上述した形質転換体が、好気的条件の下でも嫌気的条件または微好気的条件の下でも働く、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産する経路を有しているためである。2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産する経路は、後述の「(6.3)作用および効果」の欄で述べる。
<嫌気的条件または微好気的条件>
生産培養は、好ましくは、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われる。
形質転換体を嫌気的条件下または微好気的条件下で培養すると、形質転換体は実質的に増殖せず、一層効率的に2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産することができる。
「嫌気的条件または微好気的条件」は、の欄に記載した「(1.2.3)生産培養の条件」の欄に記載した「嫌気的条件または微好気的条件」と同様の条件とすることができる。
<高密度条件>
生産培養は、好ましくは、形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われる。このような状態で形質転換体を培養すると、一層効率的に2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産することができる。
「形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態」は、「(1.2.3)生産培養の条件」の欄に記載した「形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態」と同様の状態とすることができる。
生産培養は、嫌気的条件または微好気的条件の下で、形質転換体を生産用培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われることがより好ましい。
(6.2.4)2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸の回収
上述のとおり、第1、第5および第6遺伝子を含む形質転換体を生産用培養液中で培養すると、生産用培養液中に2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸が生産される。
具体的には、生産用培養液中に下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物を使用した場合、下記一般式(7):
101C(R102)(SCH3)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(7)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産することができる。
より具体的には、上記一般式(1)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(7)中、R101が水素であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-メチルチオ酪酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(7)中、R101がメチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-メチルチオ吉草酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(7)中、R101がエチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-メチルチオカプロン酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(7)中、R101がプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-メチルチオエナント酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(1)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(7)中、R101がノルマルプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-メチルチオノルマルヘプタン酸)を生産することができる。また、具体的には、上記一般式(1)中、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(7)中、R101がイソプロピル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-メチルチオイソエナント酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101がペンチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(7)中、R101がペンチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-メチルチオカプリル酸)を生産することができる。具体的には、上記一般式(1)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(7)中、R101がノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素である2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸(すなわち、2-アミノ-4-メチルチオノルマルカプリル酸)を生産することができる。
上記一般式(1)中、R101およびR102がいずれもメチル基であるカルボニル化合物を使用した場合、上記一般式(7)中、R101およびR102がいずれもメチル基である2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸(すなわち、4-メチル-2-アミノ-4-メチルチオ吉草酸)を生産することができる。
なお、2-アミノ-4-メチルチオ酪酸はメチオニンとも呼ばれる。メチオニンは、例えば、L-メチオニンである。
生産用培養液を回収することにより上記の2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を回収できるが、さらに、公知の方法で2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産用培養液から分離精製することもできる。そのような公知の方法として、晶析法、クロマトグラフィー法、イオン交換樹脂法、活性炭吸着溶離法、溶媒抽出法等が挙げられる。
なお、生産用培養液からは、第1遺伝子がコードする酵素が触媒するアルドール反応によって生じたα-ケト酸等の物質を回収することもできる。
また、複数種類のカルボニル化合物を使用した場合、培養液中に複数種類の2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸が生産される。複数種類の2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸は、晶析やクロマトグラフィーによって、互いに分離することができる。
(6.3)作用および効果
2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸生産微生物が2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産するプロセスを模式的に図5に示す。図5に示すプロセスにおいては、ピルビン酸供給化合物がグルコースであり、カルボニル化合物がホルムアルデヒドであり、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸がメチオニンである場合を例として説明する。
図5に示すように、先ず、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸生産微生物15は、グルコース2、ホルムアルデヒド3及びメチルメルカプタン16を取り込む。次に、グルコース2は、解糖系を通じてピルビン酸4に変換される。次に、ピルビン酸4とホルムアルデヒド3とは、第1遺伝子がコードする「ピルビン酸とアルデヒドとのアルドール反応を触媒する酵素」によって4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸5に変換される。次に、4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸5は、第5遺伝子がコードする「α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素」によってホモセリン14に変換される。次に、ホモセリン14は、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸生産微生物が生来的に有するホモセリンキナーゼによってО-ホスホホモセリン17に変換される。メチルメルカプタン16とО-ホスホホモセリン17とは、第6遺伝子がコードする「О-ホスホホモセリンをメチオニンに変換する酵素」によってメチオニン18に変換される。以上のようにして、メチオニンが生産される。
(7.)好ましい実施形態
以下に、本発明の好ましい実施形態をまとめて示す。
[A1] ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする遺伝子を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(上記一般式(2)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表されるα-ケト酸を生産する工程を含む、α-ケト酸の製造方法。
[A2] 前記一般式(1)及び(2)中、R102が水素である[A1]に記載の方法。
[A3] 前記一般式(1)及び(2)中、R101が、水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはペンチル基であり、かつ、R102が水素である[A1]または[A2]に記載の方法。
[A4] 前記一般式(1)及び(2)中、R101が、水素、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基またはノルマルペンチル基であり、かつ、R102が水素である[A1]~[A3]の何れか1に記載の方法。
[A5] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[A1]~[A4]の何れか1に記載の方法。
[A6] 前記培養液は、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を添加した培養液である[A5]に記載の方法。
[A7] 前記ピルビン酸供給化合物は、前記培養液中で0.1~40(w/v)%、好ましくは、1~20(w/v)%の濃度になるように添加される[A6]に記載の方法。
[A8] カルボニル化合物は、前記培養液中で0.001~10(w/v)%、好ましくは、0.01~1(w/v)%の濃度になるように添加される[A6]または[A7]に記載の方法。
[A9] 前記ピルビン酸供給化合物は、糖類である[A1]~[A8]の何れか1に記載の方法。
[A10] 前記糖類は、単糖、例えばフルクトースもしくはグルコース;二糖、例えばスクロース;多糖、例えば構成単糖としてグルコースを含む多糖;または植物(例えば非可食農産廃棄物またはエネルギー作物)を糖化酵素で処理することにより得られた糖化液である[A1]~[A9]の何れか1に記載の方法。
[A11] 前記糖類は、グルコースである[A1]~[A10]の何れか1に記載の方法。
[A12] 前記ピルビン酸供給化合物は、ピルビン酸である[A1]~[A8]の何れか1に記載の方法。
[A13] 前記培養が、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われる[A1]~[A12]の何れか1に記載の方法。
[A14] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[A13]に記載の方法。
[A15] 前記嫌気的条件または前記微好気的条件は、前記培養液中の溶存酸素濃度が0~2ppmの範囲内にあり、好ましくは0~1ppmの範囲内にあり、より好ましくは0~0.5ppmの範囲内にある条件である[A14]に記載の方法。
[A16] 前記培養が、前記微生物を培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われる[A1]~[A15]の何れか1に記載の方法。
[A17] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[A16]に記載の方法。
[A18] 前記微生物を前記培養液中に高密度に懸濁させた前記状態は、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が1~50(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態、好ましくは、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が3~30(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態である[A17]に記載の方法。
[A19] 前記遺伝子は、アルドラーゼをコードする[A1]~[A18]の何れか1に記載の方法。
[A20] 前記遺伝子は、タイプIのアルドラーゼをコードする[A1]~[A19]の何れか1に記載の方法。
[A21] 前記遺伝子は、タイプIIのアルドラーゼをコードする[A1]~[A19]の何れか1に記載の方法。
[A22] 前記遺伝子は、以下からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする:
(a1)2-デヒドロ-3-デオキシ-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-phosphogluconate aldolase)、
(a2)2-デヒドロ-3-デオキシ-6-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-6-phosphogluconate aldolase)、
(a3)4-ヒドロキシ-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoglutarate aldolase)、
(a4)(4S)-4-ヒドロキシル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ((4S)-4-hydroxyl-2-oxoglutarate aldolase)、
(a5)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-ペントネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-pentonate aldolase)、
(a6)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-グルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-gluconate aldolase)、
(a7)3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソネートアルドラーゼ(3-deoxy-D-manno-octulosonate aldolase)、
(a8)4-ヒドロキシル-2-オキソバレレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-2-oxovalerate aldolase)、
(a9)4-(2-カルボキシフェニル)-2-オキソブ-3-エノエートアルドラーゼ(4-(2-carboxyphenyl)-2-oxobut-3-enoate aldolase)、
(a10)4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタンジオエートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoheptanedioate aldolase)、
(a11)2-デヒドロ-3-デオキシグルカレートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxyglucarate aldolase)、
(a12)2-ケト-3-デオキシ-L-ラムノネートアルドラーゼ(2-keto-3-deoxy-L-rhamnonate aldolase)、
(a13)4-ヒドロキシル-4-メチル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-4-methyl-2-oxoglutarate aldolase)、および
(a14)4-ヒドロキシ-2-オキソヘキサノネートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxohexanonate aldolase);
[A1]~[A21]の何れか1に記載の方法。
[A23] 前記遺伝子は、edaタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のedaタンパク質;dgoAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のdgoAタンパク質;yjhHタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のyjhHタンパク質;yagEタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のyagEタンパク質;nanAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のnanAタンパク質;mhpEタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のmhpEタンパク質;hpaIタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のhpaIタンパク質;bphIタンパク質、好ましくは、バークホルデリア ゼノボランス由来のbphIタンパク質;phdJタンパク質、好ましくは、ノカルディオイデス属菌由来のphdJタンパク質;garLタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のgarLタンパク質;rhmAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のrhmAタンパク質;およびgalCタンパク質、好ましくは、シュードモナス プチダ由来のgalCタンパク質;からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする[A1]~[A22]の何れか1に記載の方法。
[A24] 前記遺伝子は以下からなる群より選択される:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-7)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-8)配列番号8において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-9)配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-10)配列番号10において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-11)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-12)配列番号12において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-13)配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-14)配列番号14において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-15)配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-16)配列番号16において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-17)配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-18)配列番号18において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-19)配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-20)配列番号20において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-21)配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-22)配列番号22において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
[A1]~[A23]の何れか1に記載の方法。
[A25] 前記遺伝子は以下からなる群より選択される:
配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号5に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号9に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号11に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号13に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号15に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号17に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号19に記載の塩基配列からなる遺伝子、および
配列番号21に記載の塩基配列からなる遺伝子;
[A1]~[A24]の何れか1に記載の方法。
[A26] 前記微生物は、好気性細菌、好ましくは、コリネ型細菌、より好ましくは、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌、より好ましくは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である[A1]~[A25]の何れか1に記載の方法。
[A27] 前記微生物は、前記遺伝子によって形質転換された微生物である[A1]~[A26]の何れか1に記載の方法。
[A28] 前記微生物は、ラクテート(乳酸)デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase)遺伝子、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ(phosphoenolpyrvate carboxylase)遺伝子、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyruvate carboxylase)遺伝子、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(pyruvate dehydrogenase)遺伝子、グルタミン酸-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(glutamate-pyruvate aminotransferase)遺伝子、アセトラクテートシンターゼ(acetolactate synthase)遺伝子、N-スクシニルジアミノピメレート(N-succinyldiaminopimelate aminotransferase)遺伝子、S-(ヒドロキシメチル)ミコチオールデヒドロゲナーゼ(S-(hydroxymethyl)mycothiol dehydrogenase)遺伝子、およびアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(acetaldehyde dehydrogenase)遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の欠損株である[A1]~[A27]の何れか1に記載の方法。
[A29] 前記培養の前に、前記微生物を好気的条件下で培養することを更に含む[A1]~[A28]の何れか1に記載の方法。
[A30] 生産されたα-ケト酸を回収することを更に含む[A1]~[A29]の何れか1に記載の方法。
[B1] 以下の遺伝子:
以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、
(b)α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素をコードする第2遺伝子、および
(c)アルデヒドの還元反応を触媒する酵素をコードする第3遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(3):
103C(O)R104
(ここでR103およびR104は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である。ただし、R103が水素であるとき、R104は水素ではない。)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(4):
103C(R104)(OH)CH2CH2OH
(上記一般式(4)におけるR103およびR104は、それぞれ上記一般式(3)におけるR103およびR104と同じ基である)
により表される1,3-ジオールを生産する工程を含む、1,3-ジオールの製造方法。
[B2] 前記一般式(3)及び(4)中、R104が水素である[B1]に記載の方法。
[B3] 前記一般式(3)及び(4)中、R103が、水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはペンチル基であり、かつ、R104が水素である[B1]または[B2]に記載の方法。
[B4] 前記一般式(3)及び(4)中、R103が、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基またはノルマルペンチル基であり、かつ、R104が水素である[B1]~[B3]の何れか1に記載の方法。
[B5] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[B1]~[B4]の何れか1に記載の方法。
[B6] 前記培養液は、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を添加した培養液である[B5]に記載の方法。
[B7] 前記ピルビン酸供給化合物は、前記培養液中で0.1~40(w/v)%、好ましくは、1~20(w/v)%の濃度になるように添加される[B6]に記載の方法。
[B8] カルボニル化合物は、前記培養液中で0.001~10(w/v)%、好ましくは、0.01~1(w/v)%の濃度になるように添加される[B6]または[B7]に記載の方法。
[B9] 前記ピルビン酸供給化合物は、糖類である[B1]~[B8]の何れか1に記載の方法。
[B10] 前記糖類は、単糖、例えばフルクトースもしくはグルコース;二糖、例えばスクロース;多糖、例えば構成単糖としてグルコースを含む多糖;または植物(例えば非可食農産廃棄物またはエネルギー作物)を糖化酵素で処理することにより得られた糖化液である[B1]~[B9]の何れか1に記載の方法。
[B11] 前記糖類は、グルコースである[B1]~[B10]の何れか1に記載の方法。
[B12] 前記ピルビン酸供給化合物は、ピルビン酸である[B1]~[B8]の何れか1に記載の方法。
[B13] 前記培養が、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われる[B1]~[B12]の何れか1に記載の方法。
[B14] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[B13]に記載の方法。
[B15] 前記嫌気的条件または前記微好気的条件は、前記培養液中の溶存酸素濃度が0~2ppmの範囲内にあり、好ましくは0~1ppmの範囲内にあり、より好ましくは0~0.5ppmの範囲内にある条件である[B14]に記載の方法。
[B16] 前記培養が、前記微生物を培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われる[B1]~[B15]の何れか1に記載の方法。
[B17] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[B16]に記載の方法。
[B18] 前記微生物を前記培養液中に高密度に懸濁させた前記状態は、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が1~50(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態、好ましくは、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が3~30(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態である[B17]に記載の方法。
[B19] 生産された1,3-ジオールを回収することを更に含む[B1]~[B18]の何れか1に記載の方法。
[B20] 以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、
(b)α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素をコードする第2遺伝子、および
(c)アルデヒドの還元反応を触媒する酵素をコードする第3遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物の存在下で培養して、1,3-ブタンジオールを生産する工程を含む、1,3-ブタンジオールの製造方法。
[B21] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[B20]に記載の方法。
[B22] 前記培養液は、前記ピルビン酸供給化合物を添加した培養液である[B21]に記載の方法。
[B23] 前記ピルビン酸供給化合物は、前記培養液中で0.1~40(w/v)%、好ましくは、1~20(w/v)%の濃度になるように添加される[B22]に記載の方法。
[B24] 前記ピルビン酸供給化合物は、糖類である[B20]~[B23]の何れか1に記載の方法。
[B25] 前記糖類は、単糖、例えばフルクトースもしくはグルコース;二糖、例えばスクロース;多糖、例えば構成単糖としてグルコースを含む多糖;または植物(例えば非可食農産廃棄物またはエネルギー作物)を糖化酵素で処理することにより得られた糖化液である[B20]~[B24]の何れか1に記載の方法。
[B26] 前記糖類は、グルコースである[B20]~[B25]の何れか1に記載の方法。
[B27] 前記培養が、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われる[B20]~[B26]の何れか1に記載の方法。
[B28] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[B27]に記載の方法。
[B29] 前記嫌気的条件または前記微好気的条件は、前記培養液中の溶存酸素濃度が0~2ppmの範囲内にあり、好ましくは0~1ppmの範囲内にあり、より好ましくは0~0.5ppmの範囲内にある条件である[B28]に記載の方法。
[B30] 前記培養が、前記微生物を培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われる[B20]~[B29]の何れか1に記載の方法。
[B31] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[B30]に記載の方法。
[B32] 前記微生物を前記培養液中に高密度に懸濁させた前記状態は、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が1~50(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態、好ましくは、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が3~30(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態である[B31]に記載の方法。
[B33] 生産された1,3-ブタンジオールを回収することを更に含む[B20]~[B32]の何れか1に記載の方法。
[B34] 前記第1遺伝子は、アルドラーゼをコードする[B1]~[B33]の何れか1に記載の方法。
[B35] 前記第1遺伝子は、タイプIのアルドラーゼをコードする[B1]~[B34]の何れか1に記載の方法。
[B36] 前記第1遺伝子は、タイプIIのアルドラーゼをコードする[B1]~[B34]の何れか1に記載の方法。
[B37] 前記第1遺伝子は、以下からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする:
(a1)2-デヒドロ-3-デオキシ-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-phosphogluconate aldolase)、
(a2)2-デヒドロ-3-デオキシ-6-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-6-phosphogluconate aldolase)、
(a3)4-ヒドロキシ-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoglutarate aldolase)、
(a4)(4S)-4-ヒドロキシル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ((4S)-4-hydroxyl-2-oxoglutarate aldolase)、
(a5)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-ペントネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-pentonate aldolase)、
(a6)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-グルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-gluconate aldolase)、
(a7)3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソネートアルドラーゼ(3-deoxy-D-manno-octulosonate aldolase)、
(a8)4-ヒドロキシル-2-オキソバレレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-2-oxovalerate aldolase)、
(a9)4-(2-カルボキシフェニル)-2-オキソブ-3-エノエートアルドラーゼ(4-(2-carboxyphenyl)-2-oxobut-3-enoate aldolase)、
(a10)4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタンジオエートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoheptanedioate aldolase)、
(a11)2-デヒドロ-3-デオキシグルカレートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxyglucarate aldolase)、
(a12)2-ケト-3-デオキシ-L-ラムノネートアルドラーゼ(2-keto-3-deoxy-L-rhamnonate aldolase)、
(a13)4-ヒドロキシル-4-メチル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-4-methyl-2-oxoglutarate aldolase)、および
(a14)4-ヒドロキシ-2-オキソヘキサノネートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxohexanonate aldolase);
[B1]~[B36]の何れか1に記載の方法。
[B38] 前記第1遺伝子は、edaタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のedaタンパク質;dgoAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のdgoAタンパク質;yjhHタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のyjhHタンパク質;yagEタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のyagEタンパク質;nanAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のnanAタンパク質;mhpEタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のmhpEタンパク質;hpaIタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のhpaIタンパク質;bphIタンパク質、好ましくは、バークホルデリア ゼノボランス由来のbphIタンパク質;phdJタンパク質、好ましくは、ノカルディオイデス属菌由来のphdJタンパク質;garLタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のgarLタンパク質;rhmAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のrhmAタンパク質;およびgalCタンパク質、好ましくは、シュードモナス プチダ由来のgalCタンパク質;からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする[B1]~[B37]の何れか1に記載の方法。
[B39] 前記第1遺伝子は以下からなる群より選択される:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-7)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-8)配列番号8において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-9)配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-10)配列番号10において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-11)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-12)配列番号12において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-13)配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-14)配列番号14において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-15)配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-16)配列番号16において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-17)配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-18)配列番号18において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-19)配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-20)配列番号20において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-21)配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-22)配列番号22において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
[B1]~[B38]の何れか1に記載の方法。
[B40] 前記第1遺伝子は以下からなる群より選択される:
配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号5に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号9に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号11に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号13に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号15に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号17に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号19に記載の塩基配列からなる遺伝子、および
配列番号21に記載の塩基配列からなる遺伝子;
[B1]~[B39]の何れか1に記載の方法。
[B41] 前記第2遺伝子は、前記アルドール反応により得られたα-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する前記酵素をコードする[B1]~[B40]の何れか1に記載の方法。
[B42] 前記第2遺伝子は、脱炭酸酵素をコードする[B1]~[B41]の何れか1に記載の方法。
[B43] 前記第2遺伝子は、以下からなる群より選択される脱炭酸酵素をコードする:
(b1)ピルベートデカルボキシラーゼ(pyruvate decarboxylase)、
(b2)ベンゾイルフォルメートデカルボキシラーゼ(benzoylformate decarboxylase)、および
(b3)インドールピルベートデカルボキシラーゼ(indolepyruvate decarboxylase);
[B1]~[B42]の何れか1に記載の方法。
[B44] 前記第2遺伝子は、pdcタンパク質、好ましくは、ザイモモナス モビリス由来のpdcタンパク質;mdlCタンパク質、好ましくは、シュードモナス プチダ由来のmdlCタンパク質;kivDタンパク質、好ましくは、ラクトコッカス ラクティス由来のkivDタンパク質;からなる群より選択される脱炭酸酵素をコードする[B1]~[B43]の何れか1に記載の方法。
[B45] 前記第2遺伝子は、mdlCタンパク質、好ましくは、シュードモナス プチダ由来のmdlCタンパク質をコードする[B1]~[B44]の何れか1に記載の方法。
[B46] 前記第2遺伝子は以下からなる群より選択される:
(2-1)配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(2-2)配列番号24において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
[B1]~[B45]の何れか1に記載の方法。
[B47] 前記第2遺伝子は、配列番号23に記載の塩基配列からなる遺伝子である[B1]~[B46]の何れか1に記載の方法。
[B48] 前記第3遺伝子は、前記第1遺伝子がコードする前記酵素が触媒する前記アルドール反応の基質であるアルデヒドとは種類が異なるアルデヒドの還元反応を触媒する前記酵素をコードする[B1]~[B47]の何れか1に記載の方法。
[B49] 前記第3遺伝子は、前記脱炭酸反応により得られたアルデヒドの還元反応を触媒する前記酵素をコードする[B1]~[B48]の何れか1に記載の方法。
[B50] 前記第3遺伝子は、アルコールデヒドロゲナーゼをコードする[B1]~[B49]の何れか1に記載の方法。
[B51] 前記第3遺伝子は、1,3-プロパンジオールデヒドロゲナーゼ(1,3-propanediol dehydrogenase)をコードする[B1]~[B50]の何れか1に記載の方法。
[B52] 前記第3遺伝子は、dhaTタンパク質、好ましくは、クレブシエラ ニューモニエ由来のdhaTタンパク質;およびlpoタンパク質、好ましくは、ラクトバチルス ロイテリ由来のlpoタンパク質;からなる群より選択される1,3-プロパンジオールデヒドロゲナーゼをコードする[B1]~[B51]の何れか1に記載の方法。
[B53] 前記第3遺伝子は以下からなる群より選択される:
(3-1)配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(3-2)配列番号26において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
[B1]~[B52]の何れか1に記載の方法。
[B54] 前記第3遺伝子は、配列番号25に記載の塩基配列からなる遺伝子である[B1]~[B53]の何れか1に記載の方法。
[B55] 前記微生物は、好気性細菌、好ましくは、コリネ型細菌、より好ましくは、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌、より好ましくは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である[B1]~[B54]の何れか1に記載の方法。
[B56] 前記微生物は、前記第1、前記第2および前記第3遺伝子によって形質転換された微生物である[B1]~[B55]の何れか1に記載の方法。
[B57] 前記微生物は、ラクテート(乳酸)デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase)遺伝子、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ(phosphoenolpyrvate carboxylase)遺伝子、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyruvate carboxylase)遺伝子、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(pyruvate dehydrogenase)遺伝子、グルタミン酸-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(glutamate-pyruvate aminotransferase)遺伝子、アセトラクテートシンターゼ(acetolactate synthase)遺伝子、N-スクシニルジアミノピメレート(N-succinyldiaminopimelate aminotransferase)遺伝子、S-(ヒドロキシメチル)ミコチオールデヒドロゲナーゼ(S-(hydroxymethyl)mycothiol dehydrogenase)遺伝子、およびアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(acetaldehyde dehydrogenase)遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の欠損株である[B1]~[B56]の何れか1に記載の方法。
[B58] 前記培養の前に、前記微生物を好気的条件下で培養することを更に含む[B1]~[B57]の何れか1に記載の方法。
[C1] 以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、および
(d)α-ケト酸の還元反応を触媒する酵素をコードする第4遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(5):
101C(R102)(OH)CH2CH(OH)COOH
(上記一般式(5)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2,4-ジヒドロキシカルボン酸を生産する工程を含む、2,4-ジヒドロキシカルボン酸の製造方法。
[C2] 前記一般式(1)及び(5)中、R102が水素である[C1]に記載の方法。
[C3] 前記一般式(1)及び(5)中、R101が、水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはペンチル基であり、かつ、R102が水素である[C1]または[C2]の何れか1に記載の方法。
[C4] 前記一般式(1)及び(5)中、R101およびR102が、水素である[C1]~[C3]の何れか1に記載の方法。
[C5] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[C1]~[C4]の何れか1に記載の方法。
[C6] 前記培養液は、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を添加した培養液である[C5]に記載の方法。
[C7] 前記ピルビン酸供給化合物は、前記培養液中で0.1~40(w/v)%、好ましくは、1~20(w/v)%の濃度になるように添加される[C6]に記載の方法。
[C8] カルボニル化合物は、前記培養液中で0.001~10(w/v)%、好ましくは、0.01~1(w/v)%の濃度になるように添加される[C6]または[C7]に記載の方法。
[C9] 前記ピルビン酸供給化合物は、糖類である[C1]~[C8]の何れか1に記載の方法。
[C10] 前記糖類は、単糖、例えばフルクトースもしくはグルコース;二糖、例えばスクロース;多糖、例えば構成単糖としてグルコースを含む多糖;または植物(例えば非可食農産廃棄物またはエネルギー作物)を糖化酵素で処理することにより得られた糖化液である[C1]~[C9]の何れか1に記載の方法。
[C11] 前記糖類は、グルコースである[C1]~[C10]の何れか1に記載の方法。
[C12] 前記ピルビン酸供給化合物は、ピルビン酸である[C1]~[C11]の何れか1に記載の方法。
[C13] 前記培養が、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われる[C1]~[C12]の何れか1に記載の方法。
[C14] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[C13]に記載の方法。
[C15] 前記嫌気的条件または前記微好気的条件は、前記培養液中の溶存酸素濃度が0~2ppmの範囲内にあり、好ましくは0~1ppmの範囲内にあり、より好ましくは0~0.5ppmの範囲内にある条件である[C14]に記載の方法。
[C16] 前記培養が、前記微生物を培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われる[C1]~[C15]の何れか1に記載の方法。
[C17] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[C16]に記載の方法。
[C18] 前記微生物を前記培養液中に高密度に懸濁させた前記状態は、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が1~50(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態、好ましくは、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が3~30(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態である[C17]に記載の方法。
[C19] 前記第1遺伝子は、アルドラーゼをコードする[C1]~[C18]の何れか1に記載の方法。
[C20] 前記第1遺伝子は、タイプIのアルドラーゼをコードする[C1]~[C19]の何れか1に記載の方法。
[C21] 前記第1遺伝子は、タイプIIのアルドラーゼをコードする[C1]~[C29]の何れか1に記載の方法。
[C22] 前記第1遺伝子は、以下からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする:
(a1)2-デヒドロ-3-デオキシ-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-phosphogluconate aldolase)、
(a2)2-デヒドロ-3-デオキシ-6-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-6-phosphogluconate aldolase)、
(a3)4-ヒドロキシ-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoglutarate aldolase)、
(a4)(4S)-4-ヒドロキシル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ((4S)-4-hydroxyl-2-oxoglutarate aldolase)、
(a5)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-ペントネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-pentonate aldolase)、
(a6)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-グルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-gluconate aldolase)、
(a7)3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソネートアルドラーゼ(3-deoxy-D-manno-octulosonate aldolase)、
(a8)4-ヒドロキシル-2-オキソバレレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-2-oxovalerate aldolase)、
(a9)4-(2-カルボキシフェニル)-2-オキソブ-3-エノエートアルドラーゼ(4-(2-carboxyphenyl)-2-oxobut-3-enoate aldolase)、
(a10)4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタンジオエートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoheptanedioate aldolase)、
(a11)2-デヒドロ-3-デオキシグルカレートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxyglucarate aldolase)、
(a12)2-ケト-3-デオキシ-L-ラムノネートアルドラーゼ(2-keto-3-deoxy-L-rhamnonate aldolase)、
(a13)4-ヒドロキシル-4-メチル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-4-methyl-2-oxoglutarate aldolase)、および
(a14)4-ヒドロキシ-2-オキソヘキサノネートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxohexanonate aldolase);
[C1]~[C21]の何れか1に記載の方法。
[C23] 前記第1遺伝子は、edaタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のedaタンパク質;dgoAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のdgoAタンパク質;yjhHタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のyjhHタンパク質;yagEタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のyagEタンパク質;nanAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のnanAタンパク質;mhpEタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のmhpEタンパク質;hpaIタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のhpaIタンパク質;bphIタンパク質、好ましくは、バークホルデリア ゼノボランス由来のbphIタンパク質;phdJタンパク質、好ましくは、ノカルディオイデス属菌由来のphdJタンパク質;garLタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のgarLタンパク質;rhmAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のrhmAタンパク質;およびgalCタンパク質、好ましくは、シュードモナス プチダ由来のgalCタンパク質;からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする[C1]~[C22]の何れか1に記載の方法。
[C24] 前記第1遺伝子は以下からなる群より選択される:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-7)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-8)配列番号8において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-9)配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-10)配列番号10において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-11)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-12)配列番号12において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-13)配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-14)配列番号14において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-15)配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-16)配列番号16において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-17)配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-18)配列番号18において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-19)配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-20)配列番号20において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-21)配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-22)配列番号22において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
[C1]~[C23]の何れか1に記載の方法。
[C25] 前記第1遺伝子は以下からなる群より選択される:
配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号5に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号9に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号11に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号13に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号15に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号17に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号19に記載の塩基配列からなる遺伝子、および
配列番号21に記載の塩基配列からなる遺伝子;
[C1]~[C24]の何れか1に記載の方法。
[C26] 前記第4遺伝子は、前記アルドール反応により得られたα-ケト酸のα-ケト酸の還元反応を触媒する前記酵素をコードする[C1]~[C23]の何れか1に記載の方法。
[C27] 前記第4遺伝子は、デヒドロゲナーゼをコードする[C1]~[C26]の何れか1に記載の方法。
[C28] 前記第4遺伝子は、乳酸デヒドロゲナーゼをコードする[C1]~[C27]の何れか1に記載の方法。
[C29] 前記第4遺伝子は、ldhAタンパク質、好ましくは、ラクトコッカス ラクティス由来のldhAタンパク質、より好ましくは、ラクトコッカス ラクティスNBRC100676株由来のldhAタンパク質、さらに好ましくは、ラクトコッカス ラクティスNBRC100676株由来のldhAタンパク質であって、N末端から85番目のグルタミン残基がシステイン残基に置換されているタンパク質をコードする[C1]~[C28]の何れか1に記載の方法。
[C30] 前記第4遺伝子は以下からなる群より選択される:
(4-1)配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(4-2)配列番号28において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
[C1]~[C29]の何れか1に記載の方法。
[C31] 配列番号28において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒する活性を有する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、N末端から85番目の残基にシステイン残基を維持しているタンパク質をコードしている[C1]~[C30]の何れか1に記載の方法。
[C32] 前記第4遺伝子は、配列番号27に記載の塩基配列からなる遺伝子である[C1]~[C31]の何れか1に記載の方法。
[C33] 前記微生物は、好気性細菌、好ましくは、コリネ型細菌、より好ましくは、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌、より好ましくは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である[C1]~[C32]の何れか1に記載の方法。
[C34] 前記微生物は、前記第1および前記第4遺伝子によって形質転換された微生物である[C1]~[C33]の何れか1に記載の方法。
[C35] 前記微生物は、ラクテート(乳酸)デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase)遺伝子、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ(phosphoenolpyrvate carboxylase)遺伝子、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyruvate carboxylase)遺伝子、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(pyruvate dehydrogenase)遺伝子、グルタミン酸-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(glutamate-pyruvate aminotransferase)遺伝子、アセトラクテートシンターゼ(acetolactate synthase)遺伝子、N-スクシニルジアミノピメレート(N-succinyldiaminopimelate aminotransferase)遺伝子、S-(ヒドロキシメチル)ミコチオールデヒドロゲナーゼ(S-(hydroxymethyl)mycothiol dehydrogenase)遺伝子、およびアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(acetaldehyde dehydrogenase)遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の欠損株である[C1]~[C34]の何れか1に記載の方法。
[C36] 前記培養の前に、前記微生物を好気的条件下で培養することを更に含む[C1]~[C35]の何れか1に記載の方法。
[C37] 生産された2,4-ジヒドロキシカルボン酸を回収することを更に含む[C1]~[C36]の何れか1に記載の方法。
[D1] 以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、および
(e)α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素をコードする第5遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(6)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産する工程を含む、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の製造方法。
[D2] 前記一般式(1)及び(6)中、R102が水素である[D1]に記載の方法。
[D3] 前記一般式(1)及び(6)中、R101が、水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはペンチル基であり、かつ、R102が水素である[D1]または[D2]に記載の方法。
[D4] 前記一般式(1)及び(6)中、R101およびR102が、水素である[D1]~[D3]の何れか1に記載の方法。
[D5] 生産された2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を回収することを更に含む[D1]~[D4]の何れか1に記載の方法。
[D6] 以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、および
(e)α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素をコードする第5遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物とホルムアルデヒド(これは、カルボニル化合物である)との存在下で培養して、ホモセリン、スレオニンおよび2-アミノ酪酸のうち少なくとも1つを生産する工程を含む、ホモセリン、スレオニンおよび2-アミノ酪酸のうち少なくとも1つの製造方法。
[D7] 生産されたホモセリン、スレオニンおよび2-アミノ酪酸のうち少なくとも1つを回収することを更に含む[D6]に記載の方法。
[D8] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[D1]~[D7]の何れか1に記載の方法。
[D9] 前記培養液は、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を添加した培養液である[D8]に記載の方法。
[D10] 前記ピルビン酸供給化合物は、前記培養液中で0.1~40(w/v)%、好ましくは、1~20(w/v)%の濃度になるように添加される[D9]に記載の方法。
[D11] カルボニル化合物は、前記培養液中で0.001~10(w/v)%、好ましくは、0.01~1(w/v)%の濃度になるように添加される[D9]または[D10]に記載の方法。
[D12] 前記ピルビン酸供給化合物は、糖類である[D1]~[D11]の何れか1に記載の方法。
[D13] 前記糖類は、単糖、例えばフルクトースもしくはグルコース;二糖、例えばスクロース;多糖、例えば構成単糖としてグルコースを含む多糖;または植物(例えば非可食農産廃棄物またはエネルギー作物)を糖化酵素で処理することにより得られた糖化液である[D1]~[D12]の何れか1に記載の方法。
[D14] 前記糖類は、グルコースである[D1]~[D13]の何れか1に記載の方法。
[D15] 前記ピルビン酸供給化合物は、ピルビン酸である[D1]~[D14]の何れか1に記載の方法。
[D16] 前記培養が、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われる[D1]~[D15]の何れか1に記載の方法。
[D17] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[D16]に記載の方法。
[D18] 前記嫌気的条件または前記微好気的条件は、前記培養液中の溶存酸素濃度が0~2ppmの範囲内にあり、好ましくは0~1ppmの範囲内にあり、より好ましくは0~0.5ppmの範囲内にある条件である[D17]に記載の方法。
[D19] 前記培養が、前記微生物を培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われる[D1]~[D18]の何れか1に記載の方法。
[D20] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物およびカルボニル化合物を含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[D19]に記載の方法。
[D21] 前記微生物を前記培養液中に高密度に懸濁させた前記状態は、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が1~50(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態、好ましくは、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が3~30(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態である[D20]に記載の方法。
[D22] 前記第1遺伝子は、アルドラーゼをコードする[D1]~[D21]の何れか1に記載の方法。
[D23] 前記第1遺伝子は、タイプIのアルドラーゼをコードする[D1]~[D22]の何れか1に記載の方法。
[D24] 前記第1遺伝子は、タイプIIのアルドラーゼをコードする[D1]~[D22]の何れか1に記載の方法。
[D25] 前記第1遺伝子は、以下からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする:
(a1)2-デヒドロ-3-デオキシ-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-phosphogluconate aldolase)、
(a2)2-デヒドロ-3-デオキシ-6-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-6-phosphogluconate aldolase)、
(a3)4-ヒドロキシ-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoglutarate aldolase)、
(a4)(4S)-4-ヒドロキシル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ((4S)-4-hydroxyl-2-oxoglutarate aldolase)、
(a5)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-ペントネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-pentonate aldolase)、
(a6)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-グルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-gluconate aldolase)、
(a7)3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソネートアルドラーゼ(3-deoxy-D-manno-octulosonate aldolase)、
(a8)4-ヒドロキシル-2-オキソバレレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-2-oxovalerate aldolase)、
(a9)4-(2-カルボキシフェニル)-2-オキソブ-3-エノエートアルドラーゼ(4-(2-carboxyphenyl)-2-oxobut-3-enoate aldolase)、
(a10)4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタンジオエートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoheptanedioate aldolase)、
(a11)2-デヒドロ-3-デオキシグルカレートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxyglucarate aldolase)、
(a12)2-ケト-3-デオキシ-L-ラムノネートアルドラーゼ(2-keto-3-deoxy-L-rhamnonate aldolase)、
(a13)4-ヒドロキシル-4-メチル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-4-methyl-2-oxoglutarate aldolase)、および
(a14)4-ヒドロキシ-2-オキソヘキサノネートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxohexanonate aldolase);
[D1]~[D24]の何れか1に記載の方法。
[D26] 前記第1遺伝子は、edaタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のedaタンパク質;dgoAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のdgoAタンパク質;yjhHタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のyjhHタンパク質;yagEタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のyagEタンパク質;nanAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のnanAタンパク質;mhpEタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のmhpEタンパク質;hpaIタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のhpaIタンパク質;bphIタンパク質、好ましくは、バークホルデリア ゼノボランス由来のbphIタンパク質;phdJタンパク質、好ましくは、ノカルディオイデス属菌由来のphdJタンパク質;garLタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のgarLタンパク質;rhmAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のrhmAタンパク質;およびgalCタンパク質、好ましくは、シュードモナス プチダ由来のgalCタンパク質;からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする[D1]~[D25]の何れか1に記載の方法。
[D27] 前記第1遺伝子は以下からなる群より選択される:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-7)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-8)配列番号8において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-9)配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-10)配列番号10において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-11)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-12)配列番号12において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-13)配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-14)配列番号14において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-15)配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-16)配列番号16において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-17)配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-18)配列番号18において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-19)配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-20)配列番号20において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-21)配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-22)配列番号22において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
[D1]~[D26]の何れか1に記載の方法。
[D28] 前記第1遺伝子は以下からなる群より選択される:
配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号5に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号9に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号11に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号13に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号15に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号17に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号19に記載の塩基配列からなる遺伝子、および
配列番号21に記載の塩基配列からなる遺伝子;
[D1]~[D27]の何れか1に記載の方法。
[D29] 前記第5遺伝子は、前記アルドール反応により得られたα-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する前記酵素をコードする[D1]~[D28]の何れか1に記載の方法。
[D30] 前記第5遺伝子は、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼをコードする[D1]~[D29]の何れか1に記載の方法。
[D31] 前記第5遺伝子は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、ロイシンデヒドロゲナーゼおよびバリンデヒドロゲナーゼからなる群より選択される少なくとも一つのデヒドロゲナーゼをコードする[D1]~[D30]の何れか1に記載の方法。
[D32] 前記第5遺伝子は、以下からなる群より選択されるグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼをコードする:
(d1)ロイシンデヒドロゲナーゼ(leucine dehydrogenase、EC番号1.4.1.9)、
(d2)フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(phenylalanine dehydrogenase、EC番号1.4.1.20)、および
(d3)バリンデヒドロゲナーゼ(valine dehydrogenase、EC番号1.4.1.8および1.4.1.23);
[D1]~[D31]の何れか1に記載の方法。
[D33] 前記第5遺伝子は、leuDHタンパク質、好ましくは、リシニバシラス スフェリカス由来のleuDHタンパク質、バシラス セレウス由来のleuDHタンパク質、またはジオバシラス ステアロサーモフィラス由来のleuDHタンパク質;phedhタンパク質、好ましくは、バシラス バディウス由来のphedhタンパク質;およびvaldhタンパク質、好ましくは、ストレプトミセス フラジエ由来のvaldhタンパク質;からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする[D1]~[D32]の何れか1に記載の方法。
[D34] 前記第5遺伝子は以下からなる群より選択される:
(5-1)配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-2)配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-3)配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-4)配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-5)配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(5-6)配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
[D1]~[D33]の何れか1に記載の方法。
[D35] 前記第5遺伝子は以下からなる群より選択される:
配列番号29に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号31に記載の塩基配列からなる遺伝子、および
配列番号33に記載の塩基配列からなるvaldh遺伝子;
[D1]~[D34]の何れか1に記載の方法。
[D36] 前記微生物は、好気性細菌、好ましくは、コリネ型細菌、より好ましくは、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌、より好ましくは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である[D1]~[D35]の何れか1に記載の方法。
[D37] 前記微生物は、前記第1および前記第5遺伝子によって形質転換された微生物である[D1]~[D36]の何れか1に記載の方法。
[D38] 前記微生物は、ラクテート(乳酸)デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase)遺伝子、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ(phosphoenolpyrvate carboxylase)遺伝子、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyruvate carboxylase)遺伝子、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(pyruvate dehydrogenase)遺伝子、グルタミン酸-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(glutamate-pyruvate aminotransferase)遺伝子、アセトラクテートシンターゼ(acetolactate synthase)遺伝子、N-スクシニルジアミノピメレート(N-succinyldiaminopimelate aminotransferase)遺伝子、S-(ヒドロキシメチル)ミコチオールデヒドロゲナーゼ(S-(hydroxymethyl)mycothiol dehydrogenase)遺伝子、およびアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(acetaldehyde dehydrogenase)遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の欠損株である[D1]~[D37]の何れか1に記載の方法。
[D39] 前記培養の前に、前記微生物を好気的条件下で培養することを更に含む[D1]~[D38]の何れか1に記載の方法。
[E1] 以下の遺伝子:
(a)ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する酵素をコードする第1遺伝子、
(e)α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する酵素をコードする第5遺伝子、および
(f)2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する酵素をコードする第6遺伝子
を含む微生物を、ピルビン酸および糖類から選ばれるピルビン酸供給化合物と、メチルメルカプタンと、
下記一般式(1):
101C(O)R102
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるカルボニル化合物と
の存在下で培養して、
下記一般式(7):
101C(R102)(SCH3)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(7)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(1)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を生産する工程を含む、2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸の製造方法。
[E2] 前記一般式(1)及び(7)中、R102が水素である[E1]に記載の方法。
[E3] 前記一般式(1)及び(7)中、R101が、水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはペンチル基であり、かつ、R102が水素である[E1]または[E2]に記載の方法。
[E4] 前記一般式(1)及び(7)中、R101およびR102が、水素である[E1]~[E3]の何れか1に記載の方法。
[E5] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物と前記カルボニル化合物とメチルメルカプタンとを含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[E1]~[E4]の何れか1に記載の方法。
[E6] 前記培養液は、前記ピルビン酸供給化合物と前記カルボニル化合物とメチルメルカプタンとを添加した培養液である[E5]に記載の方法。
[E7] 前記ピルビン酸供給化合物は、前記培養液中で0.1~40(w/v)%、好ましくは、1~20(w/v)%の濃度になるように添加される[E6]に記載の方法。
[E8] カルボニル化合物は、前記培養液中で0.001~10(w/v)%、好ましくは、0.01~1(w/v)%の濃度になるように添加される[E6]または[E7]に記載の方法。
[E9] メチルメルカプタンは、前記培養液中で1mM~1M、好ましくは、10mM~300mMの濃度になるように添加される[E6]~[E8]の何れか1に記載の方法。
[E10] 前記ピルビン酸供給化合物は、糖類である[E1]~[E9]の何れか1に記載の方法。
[E11] 前記糖類は、単糖、例えばフルクトースもしくはグルコース;二糖、例えばスクロース;多糖、例えば構成単糖としてグルコースを含む多糖;または植物(例えば非可食農産廃棄物またはエネルギー作物)を糖化酵素で処理することにより得られた糖化液である[E1]~[E10]の何れか1に記載の方法。
[E12] 前記糖類は、グルコースである[E1]~[E11]の何れか1に記載の方法。
[E13] 前記ピルビン酸供給化合物は、ピルビン酸である[E1]~[E9]の何れか1に記載の方法。
[E14] 前記培養が、嫌気的条件または微好気的条件の下で行われる[E1]~[E13]の何れか1に記載の方法。
[E15] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物と前記カルボニル化合物とメチルメルカプタンとを含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[E17]に記載の方法。
[E16] 前記嫌気的条件または前記微好気的条件は、前記培養液中の溶存酸素濃度が0~2ppmの範囲内にあり、好ましくは0~1ppmの範囲内にあり、より好ましくは0~0.5ppmの範囲内にある条件である[E15]に記載の方法。
[E17] 前記培養が、前記微生物を培養液中に高密度に懸濁させた状態で行われる[E1]~[E16]の何れか1に記載の方法。
[E18] 前記培養が、前記ピルビン酸供給化合物と前記カルボニル化合物とメチルメルカプタンとを含む培養液中で前記微生物を培養することにより行われる[E17]に記載の方法。
[E19] 前記微生物を前記培養液中に高密度に懸濁させた前記状態は、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が1~50(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態、好ましくは、前記微生物を前記培養液中に、前記微生物の湿菌体重量%が3~30(w/v)%の範囲内になるように懸濁させた状態である[E18]に記載の方法。
[E20] 前記第1遺伝子は、アルドラーゼをコードする[E1]~[E19]の何れか1に記載の方法。
[E21] 前記第1遺伝子は、タイプIのアルドラーゼをコードする[E1]~[E20]の何れか1に記載の方法。
[E22] 前記第1遺伝子は、タイプIIのアルドラーゼをコードする[E1]~[E20]の何れか1に記載の方法。
[E23] 前記第1遺伝子は、以下からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする:
(a1)2-デヒドロ-3-デオキシ-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-phosphogluconate aldolase)、
(a2)2-デヒドロ-3-デオキシ-6-ホスホグルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-6-phosphogluconate aldolase)、
(a3)4-ヒドロキシ-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoglutarate aldolase)、
(a4)(4S)-4-ヒドロキシル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ((4S)-4-hydroxyl-2-oxoglutarate aldolase)、
(a5)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-ペントネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-pentonate aldolase)、
(a6)2-デヒドロ-3-デオキシ-D-グルコネートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxy-D-gluconate aldolase)、
(a7)3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソネートアルドラーゼ(3-deoxy-D-manno-octulosonate aldolase)、
(a8)4-ヒドロキシル-2-オキソバレレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-2-oxovalerate aldolase)、
(a9)4-(2-カルボキシフェニル)-2-オキソブ-3-エノエートアルドラーゼ(4-(2-carboxyphenyl)-2-oxobut-3-enoate aldolase)、
(a10)4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタンジオエートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxoheptanedioate aldolase)、
(a11)2-デヒドロ-3-デオキシグルカレートアルドラーゼ(2-dehydro-3-deoxyglucarate aldolase)、
(a12)2-ケト-3-デオキシ-L-ラムノネートアルドラーゼ(2-keto-3-deoxy-L-rhamnonate aldolase)、
(a13)4-ヒドロキシル-4-メチル-2-オキソグルタレートアルドラーゼ(4-hydroxyl-4-methyl-2-oxoglutarate aldolase)、および
(a14)4-ヒドロキシ-2-オキソヘキサノネートアルドラーゼ(4-hydroxy-2-oxohexanonate aldolase);
[E1]~[E22]の何れか1に記載の方法。
[E24] 前記第1遺伝子は、edaタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のedaタンパク質;dgoAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のdgoAタンパク質;yjhHタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のyjhHタンパク質;yagEタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のyagEタンパク質;nanAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のnanAタンパク質;mhpEタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のmhpEタンパク質;hpaIタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のhpaIタンパク質;bphIタンパク質、好ましくは、バークホルデリア ゼノボランス由来のbphIタンパク質;phdJタンパク質、好ましくは、ノカルディオイデス属菌由来のphdJタンパク質;garLタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のgarLタンパク質;rhmAタンパク質、好ましくは、大腸菌由来のrhmAタンパク質;およびgalCタンパク質、好ましくは、シュードモナス プチダ由来のgalCタンパク質;からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする[E1]~[E23]の何れか1に記載の方法。
[E25] 前記第1遺伝子は以下からなる群より選択される:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-7)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-8)配列番号8において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-9)配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-10)配列番号10において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-11)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-12)配列番号12において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-13)配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-14)配列番号14において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-15)配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-16)配列番号16において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-17)配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-18)配列番号18において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-19)配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-20)配列番号20において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-21)配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-22)配列番号22において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
[E1]~[E24]の何れか1に記載の方法。
[E26] 前記第1遺伝子は以下からなる群より選択される:
配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号5に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号9に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号11に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号13に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号15に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号17に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号19に記載の塩基配列からなる遺伝子、および
配列番号21に記載の塩基配列からなる遺伝子;
[E1]~[E25]の何れか1に記載の方法。
[E27] 前記第5遺伝子は、前記アルドール反応により得られたα-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する前記酵素をコードする[E1]~[E26]の何れか1に記載の方法。
[E28] 前記第5遺伝子は、グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼをコードする[E1]~[E27]の何れか1に記載の方法。
[E29] 前記第5遺伝子は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、ロイシンデヒドロゲナーゼおよびバリンデヒドロゲナーゼからなる群より選択される少なくとも一つのデヒドロゲナーゼをコードする[E1]~[E28]の何れか1に記載の方法。
[E30] 前記第5遺伝子は、以下からなる群より選択されるグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼをコードする:
(d1)ロイシンデヒドロゲナーゼ(leucine dehydrogenase、EC番号1.4.1.9)、
(d2)フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(phenylalanine dehydrogenase、EC番号1.4.1.20)、および
(d3)バリンデヒドロゲナーゼ(valine dehydrogenase、EC番号1.4.1.8および1.4.1.23);
[E1]~[E29]の何れか1に記載の方法。
[E31] 前記第5遺伝子は、leuDHタンパク質、好ましくは、リシニバシラス スフェリカス由来のleuDHタンパク質、バシラス セレウス由来のleuDHタンパク質、またはジオバシラス ステアロサーモフィラス由来のleuDHタンパク質;phedhタンパク質、好ましくは、バシラス バディウス由来のphedhタンパク質;およびvaldhタンパク質、好ましくは、ストレプトミセス フラジエ由来のvaldhタンパク質;からなる群より選択されるアルドラーゼをコードする[E1]~[E30]の何れか1に記載の方法。
[E32] 前記第5遺伝子は以下からなる群より選択される:
(5-1)配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-2)配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-3)配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-4)配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-5)配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(5-6)配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
[E1]~[E31]の何れか1に記載の方法。
[E33] 前記第5遺伝子は以下からなる群より選択される:
配列番号30に記載の塩基配列からなる遺伝子、
配列番号32に記載の塩基配列からなる遺伝子、および
配列番号34に記載の塩基配列からなる遺伝子;
[E1]~[E32]の何れか1に記載の方法。
[E34] 前記第6遺伝子は、トランススルフレーション酵素をコードする[B1]~[B33]の何れか1に記載の方法。
[E35] 前記第6遺伝子はシスタチオニンγ-シンターゼ(Cystathionine γ-synthase)をコードする[E1]~[E34]の何れか1に記載の方法。
[E36] 前記第6遺伝子は、CGS1タンパク質、好ましくは、シロイヌナズナ由来のCGS1タンパク質、より好ましくは、シロイヌナズナ由来のCGS1成熟タンパク質をコードする[E1]~[E35]の何れか1に記載の方法。
[E37] 前記第6遺伝子は以下からなる群より選択される:
(6-1)配列番号36に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(6-2)配列番号36において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
[E1]~[E36]の何れか1に記載の方法。
[E38] 第6遺伝子は、配列番号35に記載の塩基配列からなる遺伝子である[E1]~[E37]の何れか1に記載の方法。
[E39] 前記微生物は、好気性細菌、好ましくは、コリネ型細菌、より好ましくは、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌、より好ましくは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である[E1]~[E38]の何れか1に記載の方法。
[E40] 前記微生物は、前記第1、前記第5および前記第6遺伝子によって形質転換された微生物である[E1]~[E39]の何れか1に記載の方法。
[E41] 前記微生物は、ラクテート(乳酸)デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase)遺伝子、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ(phosphoenolpyrvate carboxylase)遺伝子、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyruvate carboxylase)遺伝子、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(pyruvate dehydrogenase)遺伝子、グルタミン酸-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(glutamate-pyruvate aminotransferase)遺伝子、アセトラクテートシンターゼ(acetolactate synthase)遺伝子、N-スクシニルジアミノピメレート(N-succinyldiaminopimelate aminotransferase)遺伝子、S-(ヒドロキシメチル)ミコチオールデヒドロゲナーゼ(S-(hydroxymethyl)mycothiol dehydrogenase)遺伝子、およびアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(acetaldehyde dehydrogenase)遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の欠損株である[E1]~[E43]の何れか1に記載の方法。
[E42] 前記培養の前に、前記微生物を好気的条件下で培養することを更に含む[E1]~[E41]の何れか1に記載の方法。
[E43] 生産された2-アミノ-4-メチルチオカルボン酸を回収することを更に含む[E1]~[E42]の何れか1に記載の方法。
[F1] 下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表されるα-ケト酸と窒素源と還元剤とを、
グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの存在下で反応させて、
下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(上記一般式(6)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(2)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸を生産する工程を含む、2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸の製造方法。
[F2] 前記一般式(2)及び(6)中、R102が水素である[F1]に記載の方法。
[F3] 前記一般式(2)及び(6)中、R101およびR102が水素である[F1]または[F2]に記載の方法。
[F4] 前記反応が、前記一般式(2)により表される前記α-ケト酸と前記窒素源と前記還元剤とグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼとを含む反応液中で行われる[F1]~[F3]の何れか1に記載の方法。
[F5] 前記反応液は、前記一般式(2)により表される前記α-ケト酸と前記窒素源と前記還元剤とグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼとを添加した反応液である[F4]に記載の方法。
[F6] 前記一般式(2)により表される前記α-ケト酸は、前記反応液中で0.1mM~1M、好ましくは、1mM~300mMの濃度になるように添加される[F5]に記載の方法。
[F7] 前記窒素源は、前記反応液中で0.1mM~1M、好ましくは、1mM~300mMの濃度になるように添加される[F5]または[F6]に記載の方法。
[F8] 前記還元剤は、前記反応液中で0.01mM~100mM、好ましくは、0.1mM~10mMの濃度になるように添加される[F5]~[F7]の何れか1に記載の方法。
[F9] グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは、前記反応液中で0.01ug/mL~1mg/mL、好ましくは、0.1~100ug/mLの濃度になるように添加される[F5]~[F8]の何れか1に記載の方法。
[F10] 前記窒素源は、アンモニウム塩である[F1]~[F19]の何れか1に記載の方法。
[F11] 前記窒素源は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1つのアンモニウム塩である[F1]~[F10]の何れか1に記載の方法。
[F12] 前記還元剤は、NADHおよびNADPHからなる群より選択される少なくとも1つである[F1]~[F11]の何れか1に記載の方法。
[F13] グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、ロイシンデヒドロゲナーゼおよびバリンデヒドロゲナーゼからなる群より選択される少なくとも一つのデヒドロゲナーゼである[F1]~[F12]の何れか1に記載の方法。
[F14] グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは以下からなる群より選択される:、
(d1)ロイシンデヒドロゲナーゼ(leucine dehydrogenase)、
(d2)フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(phenylalanine dehydrogenase)、および
(d3)バリンデヒドロゲナーゼ(valine dehydrogenase);
[F1]~[F13]の何れか1に記載の方法。
[F15] グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは、leuDHタンパク質、好ましくは、リシニバシラス スフェリカス由来のleuDHタンパク質、バシラス セレウス由来のleuDHタンパク質またはジオバシラス ステアロサーモフィラス由来のleuDHタンパク質;phedhタンパク質、好ましくは、バシラス バディウス由来のphedhタンパク質;およびvaldhタンパク質、好ましくは、ストレプトミセス フラジエ由来のvaldhタンパク質;からなる群より選択されるデヒドロゲナーゼである[F1]~[F14]の何れか1に記載の方法。
[F16] グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは以下からなる群より選択される:
(5’-1) 配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質、
(5’-2) 配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質、
(5’-3) 配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質、
(5’-4) 配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質、
(5’-5) 配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質、および
(5’-6) 配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質;
[F1]~[F15]の何れか1に記載の方法。
[G1] 下記一般式(6):
101C(R102)(OH)CH2CH(NH2)COOH
(ここでR101およびR102は、互いに独立に、水素、または1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
により表される2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸と酸化剤とを、
グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼの存在下で反応させて、
下記一般式(2):
101C(R102)(OH)CH2COCOOH
(上記一般式(2)におけるR101およびR102は、それぞれ上記一般式(6)におけるR101およびR102と同じ基である)
により表されるα-ケト酸を生産する工程を含む、α-ケト酸の製造方法。
[G2] 前記一般式(6)及び(2)中、R102が水素である[G1]に記載の方法。
[G3] 前記一般式(6)及び(2)中、R101およびR102が水素である[G1]または[G2]に記載の方法。
[G4] 前記反応が、前記一般式(6)により表される前記2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸と前記酸化剤とグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼとを含む反応液中で行われる[G1]~[G3]の何れか1に記載の方法。
[G5] 前記反応液は、前記一般式(6)により表される前記2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸と前記酸化剤とグルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼとを添加した反応液である[G4]に記載の方法。
[G6] 前記一般式(6)により表される前記2-アミノ-4-ヒドロキシカルボン酸は、前記反応液中で0.1mM~1M、好ましくは、1mM~300mMの濃度になるように添加される[G5]に記載の方法。
[G7] 前記酸化剤は、前記反応液中で0.01mM~100mM、好ましくは、0.1mM~10mMの濃度になるように添加される[G5]または[G6]に記載の方法。
[G8] グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは、前記反応液中で0.01ug/mL~1mg/mL、好ましくは、0.1~100ug/mLの濃度になるように添加される[G5]~[G7]の何れか1に記載の方法。
[G9] 前記酸化剤は、NADおよびNADPからなる群より選択される少なくとも1つである[G1]~[G8]の何れか1に記載の方法。
[G10] グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、ロイシンデヒドロゲナーゼおよびバリンデヒドロゲナーゼからなる群より選択される少なくとも一つのデヒドロゲナーゼである[G1]~[G9]の何れか1に記載の方法。
[G11] グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは以下からなる群より選択される:、
(d1)ロイシンデヒドロゲナーゼ(leucine dehydrogenase)、
(d2)フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(phenylalanine dehydrogenase)、および
(d3)バリンデヒドロゲナーゼ(valine dehydrogenase);
[G1]~[G10]の何れか1に記載の方法。
[G12] グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは、leuDHタンパク質、好ましくは、リシニバシラス スフェリカス由来のleuDHタンパク質、バシラス セレウス由来のleuDHタンパク質またはジオバシラス ステアロサーモフィラス由来のleuDHタンパク質;phedhタンパク質、好ましくは、バシラス バディウス由来のphedhタンパク質;およびvaldhタンパク質、好ましくは、ストレプトミセス フラジエ由来のvaldhタンパク質;からなる群より選択されるデヒドロゲナーゼである[G1]~[G11]の何れか1に記載の方法。
[G13] グルタミン酸/フェニルアラニン/ロイシン/バリンデヒドロゲナーゼは以下からなる群より選択される:
(5’-1) 配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質、
(5’-2) 配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質、
(5’-3) 配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質、
(5’-4) 配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質、
(5’-5) 配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質、および
(5’-6) 配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質;
[G1]~[G12]の何れか1に記載の方法。
[H1] 以下からなる群より選択される第1遺伝子:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
を含むコリネ型細菌。
[H2] 以下からなる群より選択される第1遺伝子:
(1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-2)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-4)配列番号4において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-6)配列番号6において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(1-7)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-8)配列番号8において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-9)配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-10)配列番号10において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-11)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-12)配列番号12において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-13)配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-14)配列番号14において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-15)配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-16)配列番号16において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-17)配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-18)配列番号18において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-19)配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-20)配列番号20において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(1-21)配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(1-22)配列番号22において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
を含むコリネ型細菌。
[H3] 配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H1]または[H2]に記載のコリネ型細菌。
[H4] 配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H1]~[H3]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H5] 配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号5に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H1]~[H4]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H6] 配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H1]~[H5]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H7] 配列番号10に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号9に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H1]~[H6]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H8] 配列番号12に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号11に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H1]~[H7]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H9] 配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号13に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H1]~[H8]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H10] 配列番号16に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号15に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H1]~[H9]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H11] 配列番号18に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号17に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H1]~[H10]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H12] 配列番号20に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号19に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H1]~[H11]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H13] 配列番号22に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号21に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H1]~[H12]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H14] 前記コリネ型細菌は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌、好ましくは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、より好ましくは、受託番号がNITE BP-02780、NITE BP-02781、NITE BP-02782、NITE BP-02783またはNITE BP-02784であるコリネ型細菌である[H1]~[H13]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H15] 前記コリネ型細菌は、前記第1遺伝子によって形質転換されたコリネ型細菌である[H1]~[H14]の何れか1に記載の方法。
[H16] 以下からなる群より選択される第2遺伝子:
(2-1)配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(2-2)配列番号24において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;および
以下からなる群より選択される第3遺伝子:
(3-1)配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(3-2)配列番号26において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
を更に含む[H1]~[H15]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H17] 配列番号24に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号23に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H16]に記載のコリネ型細菌。
[H18] 配列番号26に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号25に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H16]または[H17]に記載のコリネ型細菌。
[H19] 前記コリネ型細菌は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌、好ましくは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、より好ましくは、受託番号がNITE BP-02780またはNITE BP-02781であるコリネ型細菌である[H16]~[H18]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H20] 前記コリネ型細菌は、前記第1、前記第2および前記第3遺伝子によって形質転換されたコリネ型細菌である[H16]~[H19]の何れか1に記載の方法。
[H21] 以下からなる群より選択される第4遺伝子:
(4-1)配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(4-2)配列番号28において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
を更に含む[H1]~[H20]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H21] 配列番号28に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、α-ケト酸の還元反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号27に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H20]に記載のコリネ型細菌。
[H22] 前記コリネ型細菌は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌、好ましくは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、より好ましくは、受託番号がNITE BP-02782であるコリネ型細菌である[H20]または[H21]に記載のコリネ型細菌。
[H23] 前記コリネ型細菌は、前記第1および前記第4遺伝子によって形質転換されたコリネ型細菌である[H20]~[H22]の何れか1に記載の方法。
[H24] 以下からなる群より選択される第5遺伝子:
(5-1)配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-2)配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-3)配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-4)配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-5)配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(5-6)配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
を更に含む[H1]~[H23]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H25] 配列番号30に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号29に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H24]に記載のコリネ型細菌。
[H26] 配列番号32に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号31に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H24]または[H25]に記載のコリネ型細菌。
[H27] 配列番号34に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号33に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H24]~[H26]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H28] 前記コリネ型細菌は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌、好ましくは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、より好ましくは、受託番号がNITE BP-02783であるコリネ型細菌である[H24]~[H27]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H29] 前記コリネ型細菌は、前記第1および前記第5遺伝子によって形質転換されたコリネ型細菌である[H24]~[H28]の何れか1に記載の方法。
[H30] 以下からなる群より選択される第5遺伝子:
(5-1)配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-2)配列番号30において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-3)配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-4)配列番号32において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(5-5)配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(5-6)配列番号34において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;および
以下からなる群より選択される第6遺伝子:
(6-1)配列番号36に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
(6-2)配列番号36において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
を更に含む[H1]~[H29]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H31] 配列番号30に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号29に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H30]に記載のコリネ型細菌。
[H32] 配列番号32に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号31に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H30]または[H31]に記載のコリネ型細菌。
[H33] 配列番号34に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、α-ケト酸の還元的アミノ化反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号33に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H30]~[H32]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H34] 配列番号36に記載のアミノ酸配列からなる前記タンパク質であって、2-アミノ-4-ホスホノオキシカルボン酸が有するリン酸基をメチルメルカプタンが有するメチルメルカプト基で置換する反応を触媒する前記タンパク質をコードする前記遺伝子は、配列番号35に記載の塩基配列からなる遺伝子である[H30]~[H33]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H35] 前記コリネ型細菌は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌、好ましくは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、より好ましくは、受託番号がNITE BP-02784であるコリネ型細菌である[H30]~[H34]の何れか1に記載のコリネ型細菌。
[H36] 前記コリネ型細菌は、前記第1および前記第5遺伝子によって形質転換されたコリネ型細菌である[H30]~[H35]の何れか1に記載の方法。
1.材料および方法
(1-1)培地
試薬は特に指示がなければ富士フィルム和光純薬株式会社より購入した。
(A培地)
尿素2.0g、硫酸アンモニウム7.0g、リン酸二水素カリウム0.50g、リン酸水素二カリウム0.50g、硫酸マグネシウム七水和物0.50g、酵母エキス(ディフコ社製)2.0g、カサミノ酸 ビタミンアッセイ(ディフコ社製)7.0g、硫酸鉄(II)七水和物6.0mg、硫酸マンガン(II)一水和物4.2mg、D(+)-ビオチン0.20mg、塩酸チアミン0.20mgを0.92Lの水に溶解し、pHを5M水酸化カリウム水溶液を用いて7.0に調整した。これを121℃にて20分間オートクレーブ滅菌し、室温まで冷却した後に、オートクレーブ滅菌済みの50%(w/v)のグルコース水溶液80mLを加えることにより調製された液体培地。
(A寒天培地)
尿素2.0g、硫酸アンモニウム7.0g、リン酸二水素カリウム0.50g、リン酸水素二カリウム0.50g、硫酸マグネシウム七水和物0.50g、酵母エキス(ディフコ社製)2.0g、カサミノ酸 ビタミンアッセイ(ディフコ社製)7.0g、硫酸鉄(II)七水和物6.0mg、硫酸マンガン(II)一水和物4.2mg、D(+)-ビオチン0.20mg、塩酸チアミン0.20mg、寒天15gを0.92Lの水に溶解、懸濁し、pHを5M水酸化カリウム水溶液を用いて7.0に調整調製した。これを121℃にて20分間オートクレーブ滅菌し、50℃まで冷却した後に、オートクレーブ滅菌済みの50%(w/v)のグルコース水溶液80mLを加え、ペトリ皿に分注後、冷却固化することで調製された固体培地。
(BA培地)
尿素2.0g、硫酸アンモニウム7.0g、リン酸二水素カリウム0.50g、リン酸水素二カリウム0.50g、硫酸マグネシウム七水和物0.50g、酵母エキス(ディフコ社製)2.0g、カサミノ酸 ビタミンアッセイ(ディフコ社製)7.0g、硫酸鉄(II)七水和物6.0mg、硫酸マンガン(II)一水和物4.2mg、D(+)-ビオチン0.20mg、塩酸チアミン0.20mg、4-モルホリノプロパンスルホン酸21gを0.92Lの水に溶解し、pHを5M水酸化カリウム水溶液を用いて7.0に調整した。これを121℃にて20分間オートクレーブ滅菌し、室温まで冷却した後に、オートクレーブ滅菌済みの50%(w/v)のグルコース水溶液80mLを加えることにより調製された液体培地。
(LB培地)
バクトトリプトン(ディフコ社製)10g、酵母エキス(ディフコ社製)5.0g、塩化ナトリウム10gを1Lの水に溶解し、pHを5M水酸化ナトリウム水溶液を用いて7.0に調整した後、121℃にて20分間オートクレーブ滅菌することで調製された液体培地。
(LB寒天培地)
バクトトリプトン(ディフコ社製)10g、酵母エキス(ディフコ社製)5.0g、塩化ナトリウム10g、寒天15gを1Lの水に溶解、懸濁し、pHを5M水酸化ナトリウム水溶液を用いて7.0に調整した後、121℃にて20分間オートクレーブ滅菌し、50℃まで冷却した後に、ペトリ皿に分注し、冷却固化することで調製された固体培地。
(Suc寒天培地)
バクトトリプトン(ディフコ社製)10g、酵母エキス(ディフコ社製)5.0g、塩化ナトリウム10g、寒天15gを0.5Lの水に溶解、懸濁し、pHを5M水酸化ナトリウム水溶液を用いて7.0に調整した。これを121℃にて20分間オートクレーブ滅菌し、50℃まで冷却した後に、オートクレーブ滅菌済みの20%(w/v)のスクロース水溶液0.5Lを加え、ペトリ皿に分注後、冷却固化することで調製された固体培地。
(BHIS培地)
ブレインハートインフュージョン(ディフコ社製)36g、ソルビトール91gを1Lの水に溶解し、pHを5M水酸化ナトリウム水溶液を用いて7.0に調整した後、121℃にて20分間オートクレーブ滅菌することで調製された液体培地。
(BHIS-GIT培地)
ブレインハートインフュージョン(ディフコ社製)36g、グリシン8.0g、イソニアジド1.3g、Tween80 3mL、ソルビトール91gを1Lの水に溶解し、pHを5M水酸化ナトリウム水溶液を用いて7.0に調整した後、121℃にて20分間オートクレーブ滅菌することで調製された液体培地。
(1-2)バッファーおよび試薬
(TEバッファー)
トリスヒドロキシメチルアミノメタン1.2g、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸二ナトリウム塩二水和物0.37gを1Lの水に溶解し、pHを6M塩酸を用いて8.0に調整した後、121℃にて20分間オートクレーブ滅菌することで調製された緩衝液。
(TGバッファー)
トリスヒドロキシメチルアミノメタン0.12g、グリセロール10gを1Lの水に溶解し、pHを6M塩酸を用いて7.5に調整した後、121℃にて20分間オートクレーブ滅菌することで調製された緩衝液。
(10%グリセロール水溶液)
グリセロール100gを1Lの水に溶解した後、121℃にて20分間オートクレーブ滅菌することで調整された水溶液。
(BRバッファー)
リン酸二水素カリウム0.50g、リン酸水素二カリウム0.50g、硫酸マグネシウム七水和物0.50g、硫酸鉄(II)七水和物6.0mg、硫酸マンガン(II)一水和物4.2mgを1.0Lの水に溶解し、pHを5M水酸化カリウム水溶液を用いて7.0に調整することでえられた緩衝液。
(BSバッファー)
リン酸二水素カリウム0.50g、リン酸水素二カリウム0.50g、硫酸マグネシウム七水和物0.50g、硫酸鉄(II)七水和物6.0mg、硫酸マンガン(II)一水和物4.2mg、4-モルホリノプロパンスルホン酸21gを1.0Lの水に溶解し、pHを5M水酸化カリウム水溶液を用いて7.0に調整することでえられた緩衝液。
(BTバッファー)
硫酸アンモニウム7.0g、リン酸二水素カリウム0.50g、リン酸水素二カリウム0.50g、硫酸マグネシウム七水和物0.50g、硫酸鉄(II)七水和物6.0mg、硫酸マンガン(II)一水和物4.2mgを1.0Lの水に溶解し、pHを5M水酸化カリウム水溶液を用いて7.0に調整することでえられた緩衝液。
(1-3)分析条件の定義および実験方法
(アガロース・ゲル電気泳動後のDNA断片の抽出、精製)
NucleoSpin(登録商標) Gel and PCR Clean-up(マッハライ・ナーゲル社製)をその指示書通りに用いてDNA断片の抽出、精製を行った。
(プラスミド抽出)
NucleoSpin(登録商標) Plasmid EasyPure(マッハライ・ナーゲル社製)をその指示書通りに用いてプラスミドの抽出、精製を行った。
(PCR法)
以下のいずれかのDNAポリメラーゼおよびそれに付属する試薬を用いて、その指示書に従いPCRを行った:PrimeSTAR(登録商標) HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)、PrimeSTAR(登録商標) Max DNA Polymerase(タカラバイオ社製)、Tks GflexTM DNA Polymerase(タカラバイオ社製)。
(有機酸分析用液体クロマトグラフィー)
島津製作所製の以下の機器より構成される有機酸分析システムを用いた。システムコントローラ:CBM-20A、送液ユニット:LC-20AB、オンライン脱気ユニット:DGU-20A3R、オートインジェクタ:SIL-20AC、カラムオーブン:CTO-20AC、フォトダイオードアレイ検出器:SPD-M20A。
分析条件は以下の通りである。
ガードカラム:TSKgel OApak-P(東ソー社製)
分析カラム:TSKgel OApak-A(東ソー社製)
カラムオーブン温度:40℃
移動相:0.75mM硫酸
流速:1.0mL/min。
(糖分析用液体クロマトグラフィー)
島津製作所製の以下の機器より構成される糖分析システムを用いた。システムコントローラ:CBM-20A、送液ユニット:LC-20AB、オンライン脱気ユニット:DGU-20A3R、オートインジェクタ:SIL-20AC、カラムオーブン:CTO-20AC、屈折率検出器:RID-10A。
分析条件は以下の通りである。
前処理:脱塩カートリッジ(バイオラッド社製)
分析カラム:アミネックス HPX-87P(バイオラッド社製)
カラムオーブン温度:85℃
移動相:水
流速:0.6mL/min。
(アミノ酸分析用液体クロマトグラフィー)
島津製作所製の以下の機器より構成されるアミノ酸分析システムを用いた。システムコントローラ:CBM-20A、送液ユニット:LC-20AB1台、LC-20AD2台、流路切り替えバルブ:FCV-11AL、オンライン脱気ユニット:DGU-20A3R、オートインジェクタ:SIL-20AC、カラムオーブン:CTO-20AC、蛍光検出器:RF-20AXs。
分析条件は島津高速液体クロマトグラフProminenceアミノ酸分析システム取扱説明書に示されているNa型迅速条件に従い、アンモニアトラップカラムISC-30/S 0504 NA(島津製作所製)および分析カラムShim-pack AMINO-NA(島津製作所製)を用いて分析を行った。
(ガスクロマトグラフ質量分析(Gas Chromatography Mass Spectrometry, GCMS))
GCMSはガスクロマトグラム四重極型質量分析計(7890B GC/5977A MSD, アジレントテクノロジー社製)および多機能オートサンプラー(MPS2-xt, ゲステル社製)を用い、以下の条件で行った。
<加熱脱着サンプリング条件>
加熱条件:50 ℃(0.5min)→ 50 ℃ / min → 300 ℃(10 min)
トラップ温度:-100℃ → 12 ℃ / s → 300 ℃
<ガスクロマトグラフ条件>
分離カラム:DB-5ht[30 m × 0.25 mmID , 0.10μm, アジレントテクノロジー社製]
昇温条件度:40 ℃(5 min)→ 10 ℃ / min → 320 ℃(12 min)
<質量分析条件>
イオン化法:電子イオン化(EI) 測定質量範囲:m/z = 29-550
(ゲノムDNA抽出)
入手元の指示書通りに液体培養した微生物を遠心分離により回収し、-80℃で凍結した。菌体ペレットを室温で解凍し、10mg/mLリゾチーム水溶液537μLを加えて37℃で1時間振盪した。次に0.5M EDTA水溶液30μL、10%SDS水溶液30μL、20mg/mLプロテイナーゼK水溶液3μLを加えて、37℃で1時間振盪した。その後さらに5M塩化ナトリウム水溶液100μLと10%臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム水溶液(0.7M塩化ナトリウム中)80μLを加えて、65℃で10分間加熱した。室温まで冷却した後、クロロホルム-イソアミルアルコール(24:1)780μL加えて、穏やかに混和した。15000xg、4℃にて5分間遠心分離して、水層を600μL回収した。これにフェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール(25:24:1)600μLを加えて、穏やかに混和した。15000xg、4℃にて5分間遠心分離して、水層を500μL回収した。これにイソプロパノール300μLを加えて、15000xg、4℃にて5分間遠心分離した後、上清を取り除いた。沈殿物として得られたゲノムDNAを70%エタノール500μLを加えて洗浄し、15000xg、4℃にて5分間遠心分離した。この洗浄を2度繰り返し、室温にて乾燥させた後、得られたゲノムDNAをTEバッファー100μLに溶解した。
(コリネバクテリウム グルタミカムATCC13032由来株を形質転換するための電気穿孔法)
形質転換を行うコリネバクテリウム グルタミカムATCC13032由来株のグリセロールストックをA寒天培地に無菌条件下で接種し、33℃にて培養した。寒天培地上に生育した菌体を10mLのA培地に接種し、33℃にて振盪培養を行い種培養液とした。この種培養液を濁度が0.2となるように500mLフラスコ中に用意された100mLのBHIS培地に接種した。33℃にて振盪を行い濁度が0.5-0.7になるまで培養した。この培養液を4℃、5500xgにて20分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した。回収した菌体を10mLのTGバッファーで洗浄し、4℃、5500xgにて5分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した。この洗浄を2度行った後、10mLの10%グリセロール水溶液で洗浄し、4℃、5500xgにて5分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した。得られた菌体ペレットを1mLの10%グリセロール水溶液に懸濁させ、150μLずつ滅菌済みの1.5mLチューブに分注後、液体窒素を用いて凍結し、コンピテントセルとして-80℃で保存した。
ゲノムDNA上の遺伝子欠失および遺伝子置換の場合:150μLのコンピテントセルを氷上にて融解し、500ngのプラスミドを加えた。これを滅菌済み0.2cmギャップ エレクトロポレーションキュベット(バイオラッド社製)に移し、Gene Pulser XcellTM エレクトロポレーションシステム(バイオラッド社製)を用いて、25μF、200Ω、2500Vにて電気穿孔を行った。菌体懸濁液を1mLのBHIS培地で希釈し、46℃で6分間インキュベーションした後、33℃にて1時間インキュベーションを行った。この菌体懸濁液を適切な抗生物質を含むA寒天培地に接種し、目的の形質転換体を選択した。
遺伝子過剰発現用プラスミドを導入する場合:50μLのコンピテントセルを氷上にて融解し、200ngのプラスミドを加えた。これを滅菌済み0.2cmギャップ エレクトロポレーションキュベット(バイオラッド社製)に移し、Gene Pulser XcellTM エレクトロポレーションシステム(バイオラッド社製)を用いて、25μF、200Ω、2500Vにて電気穿孔を行った。菌体懸濁液を1mLのBHIS培地で希釈し、46℃で6分間インキュベーションした後、33℃にて1時間インキュベーションを行った。この菌体懸濁液を適切な抗生物質を含むA寒天培地に接種し、目的の形質転換体を選択した。
(コロニーPCR)
目的のDNA配列を増幅できるプライマーの組み合わせを用いてTaKaRa Ex Taq(登録商標)(タカラバイオ社製)の指示書通りに鋳型DNA以外の試薬を混合した。これに寒天培地に生じた菌株のコロニーを少量懸濁させ、これに内在するDNAを鋳型とし、指示書通りにPCRを行った。PCR産物をアガロース・ゲル電気泳動により分析し、目的のプラスミドを保持しいていること、または、ゲノム上の該当するDNA配列が欠失または置換していることを確認した。
(濁度測定)
大腸菌およびコリネバクテリウム グルタミカムの培養液の濁度は、Ultrospec 8000(GEヘルスケア社製)を用いて610nmの波長で測定を行った。
(1-4)プライマーDNA、菌体およびプラスミドの詳細
プライマーDNA、菌体およびプラスミドの詳細は、以下の表37~表67に記載した。
Figure 0007370587000037
Figure 0007370587000038
Figure 0007370587000039
Figure 0007370587000040
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2.プラスミド構築
(2-1)遺伝子欠失編
2-1-(1)遺伝子破壊用プラスミドの構築
pNIC28-Bsa4(Source BioScience社製)を鋳型とし、GEP007(配列番号37)とGEP008(配列番号38)で示される塩基配列のDNAを用いて、Bacillus subtilis由来sacB遺伝子を含むDNA断片〔Mol.Microbiol., 6, 1195(1992)〕をPCR法により増幅した。このPCR産物をBamHIおよびPstIで処理し、アガロース・ゲル電気泳動後に、DNA断片の抽出、精製を行った。また、カナマイシンに対する耐性を付与する遺伝子を有するプラスミドpHSG299(タカラバイオ社製)をBamHIおよびPstIで処理し、アガロース・ゲル電気泳動後に、DNA断片の抽出、精製を行った。これら2つのDNA断片をDNA Ligation Kit< Mighty Mix >(タカラバイオ社製)をその指示書通りに用いて連結し、プラスミドpGE015を得た。
pGE015がsacB上に有するKpnI認識部位を削除することを目的として、pGE015を鋳型としてGEP808(配列番号39)およびGEP809(配列番号40)で示される塩基配列のDNAを用いて、PrimeSTAR(登録商標) Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ社製)をその指示書通りに用いて、変異導入およびプラスミドの増幅を行い、pGE209を得た。
2-1-(2)ppc遺伝子破壊株作成用プラスミドの構築
コリネバクテリウム グルタミカムATCC13032株は独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターからNBRC12168株として入手し、添付の指示書通りに培養を行った後に、ゲノムDNA抽出を行った。
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP132(配列番号41)とGEP133(配列番号42)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP134(配列番号43)とGEP135(配列番号44)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法により2種類のPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE015をEcoRIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kitをその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうして得られたプラスミドをpGE020とした。
2-1-(3)ppc遺伝子欠失株の作成
pGE020を用い、電気穿孔法によりコリネバクテリウム グルタミカムATCC13032株を形質転換し、33℃にて25μg/mlのカナマイシンを含むA培地上でカナマイシン耐性株を選択した。次に、得られたカナマイシン耐性株をSuc寒天培地上に塗布し、33℃で培養した。生育したコロニーをさらにA培地で培養し、コロニーPCRによりppc遺伝子が欠失している株を選択した。これをGES007と命名した。
2-1-(4)ldhA遺伝子破壊株作成用プラスミドの構築
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP169(配列番号45)とGEP170(配列番号46)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP215(配列番号47)とGEP216(配列番号48)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法により2種類のPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE015をEcoRIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、pGE020作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE033とした。
2-1-(5)ldhA遺伝子欠失株の作成
pGE033を用い、電気穿孔法によりGES007を形質転換し、GES007作成時と同様な操作により選択した株をGES048と命名した。
2-1-(6)pyc遺伝子破壊株作成用プラスミドの構築
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP615(配列番号49)とGEP616(配列番号50)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP617(配列番号51)とGEP618(配列番号52)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法により2種類のPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE015をEcoRIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、pGE020作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE177とした。
2-1-(7)pyc遺伝子欠失株の作成
pGE177を用い、電気穿孔法によりGES048を形質転換し、GES007作成時と同様な操作により選択した株をGES385と命名した。
2-1-(8)poxB遺伝子破壊株作成用プラスミドの構築
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP406(配列番号53)とGEP407(配列番号54)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP698(配列番号55)とGEP409(配列番号56)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法により2種類のPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE015をEcoRIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、pGE020作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE191とした。
2-1-(9)poxB遺伝子欠失株の作成
pGE191を用い、電気穿孔法によりGES385を形質転換し、GES007作成時と同様な操作により選択した株をGES388と命名した。
2-1-(10)alaA遺伝子破壊株作成用プラスミドの構築
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP810(配列番号57)とGEP811(配列番号58)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP812(配列番号59)とGEP813(配列番号60)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法により2種類のPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE015をEcoRIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、pGE020作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE210とした。
2-1-(11)alaA遺伝子欠失株の作成
pGE210を用い、電気穿孔法によりGES388を形質転換し、GES007作成時と同様な操作により選択した株をGES393と命名した。
2-1-(12)ilvB遺伝子破壊株作成用プラスミドの構築
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP956(配列番号61)とGEP957(配列番号62)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP958(配列番号63)とGEP959(配列番号64)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法により2種類のPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE015をEcoRIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、pGE020作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE228とした。
2-1-(13)ilvB遺伝子欠失株の作成
pGE228を用い、電気穿孔法によりGES393を形質転換し、GES007作成時と同様な操作により選択した株をGES405と命名した。
2-1-(14)cg0931遺伝子破壊株作成用プラスミドの構築
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP1132(配列番号65)とGEP1133(配列番号66)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP1134(配列番号67)とGEP1135(配列番号68)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法により2種類のPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE015をEcoRIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、pGE020作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE253とした。
2-1-(15)cg0931遺伝子欠失株の作成
pGE253を用い、電気穿孔法によりGES405を形質転換し、GES007作成時と同様な操作により選択した株をGES435と命名した。
2-1-(16)adhE遺伝子破壊株作成用プラスミドの構築
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2606(配列番号69)とGEP2607(配列番号70)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP2608(配列番号71)とGEP2609(配列番号72)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法により2種類のPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE209をKpnIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、pGE020作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE1171とした。
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2688(配列番号73)とGEP2607(配列番号70)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP2608(配列番号71)とGEP2689(配列番号74)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法により2種類のPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE209をKpnIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、pGE020作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE1218とした。
2-1-(17)adhE遺伝子欠失株の作成
pGE1171を用い、電気穿孔法によりGES048を形質転換し、GES007作成時と同様な操作により選択した株をGES1041と命名した。
pGE1171を用い、電気穿孔法によりGES435を形質転換し、GES007作成時と同様な操作により選択した株をGES1042と命名した。
2-1-(18)ald遺伝子破壊株作成用プラスミドの構築
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2610(配列番号75)とGEP2611(配列番号76)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP2612(配列番号77)とGEP2613(配列番号78)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法により2種類のPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE209をKpnIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、pGE020作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE1172とした。
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2692(配列番号79)とGEP2611(配列番号76)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP2612(配列番号77)とGEP2693(配列番号80)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法により2種類のPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE209をKpnIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、pGE020作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE1221とした。
2-1-(19)ald遺伝子欠失株の作成
pGE1172を用い、電気穿孔法によりGES1041を形質転換し、GES007作成時と同様な操作により選択した株をGES1070と命名した。
pGE1172を用い、電気穿孔法によりGES1042を形質転換し、GES007作成時と同様な操作により選択した株をGES1211と命名した。
(2-2)遺伝子置換編
2-2-(1)pGE409の構築
pHSG298(タカラバイオ社製)を鋳型とし、GEP433(配列番号81)とGEP434(配列番号82)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP437(配列番号83)とGEP438(配列番号84)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらはそれぞれカナマイシン耐性遺伝子および大腸菌用複製起点pUCoriを含むDNA断片である。
コリネバクテリウム グルタミカムNBRC12169株を独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターから入手し、添付の指示書通りに培養を行い、遠心分離により菌体を回収した。菌体ペレットを1mLの10mM Cyclohexylenedinitrilotetraacetic acid、25mM Tris-HCl (pH 8.0)緩衝液で洗浄し、6,000xg、4℃にて5分間遠心分離して、再度回収した。菌体ペレットを15mg/mLリゾチームを含む300 μLのBuffer A1(マッハライ・ナーゲル社製のNucleoSpin(登録商標) Plasmid EasyPureに付属)に懸濁させ、37℃にて2時間振盪させた。その後、NucleoSpin(登録商標) Plasmid EasyPureの指示書に従って、pCG1プラスミドの抽出および精製を行った。これを鋳型とし、GEP445(配列番号85)とGEP446(配列番号86)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはコリネバクテリウム用複製起点pCG1oriを含むDNA断片である。
以上の3つのDNA断片を混和し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kitをその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうして得られたプラスミドをpGE403とした。
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP472(配列番号87)とGEP478(配列番号88)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。また、pFLAG-CTC(シグマ・アルドリッチ社製)を鋳型とし、GEP467(配列番号89)とGEP468(配列番号90)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらはそれぞれATCC13032株のgapAプロモーター(PgapA)および大腸菌リボソームRNA転写ターミネーター(TrrnB)を含むDNA断片である。さらに、pGE403をBamHIとEcoRVで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kitをその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうして得られたプラスミドをpGE409とした。
2-2-(2)pGE1185(ΔadhE::hpaI置換株作成用プラスミド)の構築
ECOSTM Competent E. coli BL21(DE3)(ニッポンジーン社製)を購入し、これをLB寒天培地に無菌条件下で接種し、37℃にて培養した。寒天培地上に生育した菌体を10mLのLB培地に接種して生育した菌体を回収し、ゲノムDNA抽出を行った。BL21(DE3)株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2268(配列番号91)とGEP2269(配列番号92)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これは大腸菌BL21(DE3)株hpaI遺伝子(Ec_hpaI)を含むDNA断片である。さらに、pET-15b(ノバジェン社製)をNdeIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kitをその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうしてEc_hpaIがpET-15bへとクローニングされたプラスミドpGE1031を得た。
pGE1031を鋳型とし、GEP2519(配列番号93)とGEP2518(配列番号94)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE409をNdeIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kitをその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうしてEc_hpaIがpGE409へとサブクローニングされたプラスミドpGE1143を得た。
pGE1143を鋳型とし、GEP2637(配列番号95)とGEP2638(配列番号96)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはPgapA-hpaI-TrrnBを含むDNA断片である。さらに、pGE1171をXhoIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kitをその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうして得られたプラスミドをpGE1185とした。
2-2-(3)pGE1186(Δald::hpaI置換株作成用プラスミド)の構築
pGE1143を鋳型とし、GEP2639(配列番号97)とGEP2640(配列番号98)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはPgapA-hpaI-TrrnBを含むDNA断片である。さらに、pGE1172をXhoIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1185作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE1186とした。
2-2-(4)ΔadhE::hpaI Δald::hpaI置換株の作成
pGE1186を用い、電気穿孔法によりGES1041を形質転換し、33℃にて25μg/mlのカナマイシンを含むA培地上でカナマイシン耐性株を選択した。次に、得られたカナマイシン耐性株をSuc寒天培地上に塗布し、33℃で培養した。生育したコロニーをさらにA培地で培養し、コロニーPCRによりald遺伝子がPgapA-hpaI-TrrnBに置換している株を選択した。これをGES1052と命名した。さらに、pGE1185を用い、電気穿孔法によりGES1052を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりadhE遺伝子の位置にPgapA-hpaI-TrrnBが挿入した株を選択した。これをGES1063と命名した。
pGE1186を用い、電気穿孔法によりGES1042を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりald遺伝子がPgapA-hpaI-TrrnBに置換している株を選択した。これをGES1053と命名した。pGE1185を用い、電気穿孔法によりGES1053を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりadhE遺伝子の位置にPgapA-hpaI-TrrnBが挿入した株を選択した。これをGES1064と命名した。
2-2-(5)pGE1304(ΔadhE::rhmA置換株作成用プラスミド)の構築
E. coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)を購入し、これをLB寒天培地に無菌条件下で接種し、37℃にて培養した。寒天培地上に生育した菌体を10mLのLB培地に接種して生育した菌体を回収し、ゲノムDNA抽出を行った。DH5α株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2765(配列番号99)とGEP2766(配列番号100)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これは大腸菌DH5α株rhmA遺伝子(Ec_rhmA)を含むDNA断片である。さらに、pGE409をNdeIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、GE1143作成時と同様な操作によりEc_rhmAがpGE409へとクローニングされたプラスミドpGE1258を得た。
pGE1258を鋳型とし、GEP2637(配列番号95)とGEP2638(配列番号96)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはPgapA-rhmA-TrrnBを含むDNA断片である。さらに、pGE1218をXhoIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1185作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE1304とした。
2-2-(6)pGE1302(Δald::rhmA置換株作成用プラスミド)の構築
pGE1258を鋳型とし、GEP2639(配列番号97)とGEP2640(配列番号98)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE1221をXhoIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはPgapA-rhmA-TrrnBを含むDNA断片である。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1185作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE1302とした。
2-2-(7)ΔadhE::rhmA Δald::rhmA置換株の作成
pGE1302を用い、電気穿孔法によりGES1041を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりald遺伝子がPgapA-rhmA-TrrnBに置換している株を選択した。これをGES1215と命名した。さらに、pGE1304を用い、電気穿孔法によりGES1215を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりadhE遺伝子の位置にPgapA-rhmA-TrrnBが挿入した株を選択した。これをGES1242と命名した。
2-2-(8)pGE1272(ΔadhE::nanA置換株作成用プラスミド)の構築
E. coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)を購入し、これをLB寒天培地に無菌条件下で接種し、37℃にて培養した。寒天培地上に生育した菌体を10mLのLB培地に接種して生育した菌体を回収し、ゲノムDNA抽出を行った。DH5α株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2722(配列番号101)とGEP2723(配列番号102)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これは大腸菌DH5α株nanA遺伝子(Ec_nanA)を含むDNA断片である。さらに、pGE409をNdeIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1143作成時と同様な操作によりEc_nanAがpGE409へとクローニングされたプラスミドpGE1226を得た。
pGE1226を鋳型とし、GEP2637(配列番号95)とGEP2638(配列番号96)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはPgapA-nanA-TrrnBを含むDNA断片である。さらに、pGE1218をXhoIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1185作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE1272とした。
2-2-(9)pGE1273(Δald::nanA置換株作成用プラスミド)の構築
pGE1226を鋳型とし、GEP2639(配列番号97)とGEP2640(配列番号98)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE1221をXhoIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはPgapA-nanA-TrrnBを含むDNA断片である。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1185作成時と同様な操作により得られたプラスミドをpGE1273とした。
2-2-(10)ΔadhE::nanA Δald::nanA置換株の作成
pGE1273を用い、電気穿孔法によりGES1041を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりald遺伝子がPgapA-nanA-TrrnBに置換している株を選択した。これをGES1188と命名した。さらに、pGE1272を用い、電気穿孔法によりGES1188を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりadhE遺伝子の位置にPgapA-nanA-TrrnBが挿入した株を選択した。これをGES1223と命名した。
pGE1273を用い、電気穿孔法によりGES1042を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりald遺伝子がPgapA-nanA-TrrnBに置換している株を選択した。これをGES1189と命名した。さらに、pGE1272を用い、電気穿孔法によりGES1189を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりadhE遺伝子の位置にPgapA-nanA-TrrnBが挿入した株を選択した。これをGES1233と命名した。
2-2-(11)ΔadhE Δald株の作成
pGE1273を用い、電気穿孔法によりGES1041を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりald遺伝子がPgapA-nanA-TrrnBに置換している株を選択した。これをGES1188と命名した。さらに、pGE1272を用い、電気穿孔法によりGES1188を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりadhE遺伝子の位置にPgapA-nanA-TrrnBが挿入した株を選択した。これをGES1223と命名した。
pGE1273を用い、電気穿孔法によりGES1042を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりald遺伝子がPgapA-nanA-TrrnBに置換している株を選択した。これをGES1189と命名した。さらに、pGE1272を用い、電気穿孔法によりGES1189を形質転換し、GES1052作成時と同様な操作によりadhE遺伝子の位置にPgapA-nanA-TrrnBが挿入した株を選択した。これをGES1233と命名した。
(2-3)過剰発現用プラスミド編
2-3-(1)pGE411の構築
pHSG298(タカラバイオ社製)を鋳型とし、GEP433(配列番号81)とGEP434(配列番号82)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、およびGEP437(配列番号83)とGEP438(配列番号84)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらはそれぞれカナマイシン耐性遺伝子および大腸菌用複製起点pUCoriを含むDNA断片である。
コリネバクテリウム カゼイJCM12072株を理化学研究所バイオリソース研究センターから入手し、添付の指示書通りに培養を行い、遠心分離により菌体を回収した。菌体ペレットを1mLの10mM Cyclohexylenedinitrilotetraacetic acid、25mM Tris-HCl (pH 8.0)緩衝液に懸濁させ、6,000xg、4℃にて5分間遠心分離して、再度回収した。菌体ペレットを15mg/mLリゾチームを含む300 μLのBuffer A1(マッハライ・ナーゲル社製のNucleoSpin(登録商標) Plasmid EasyPureに付属する)に懸濁させ、37℃にて2時間振盪させた。その後、NucleoSpin(登録商標) Plasmid EasyPureの指示書に従って、pCASE1プラスミドの抽出および精製を行った。これを鋳型とし、GEP443(配列番号103)とGEP444(配列番号104)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはコリネバクテリウム用複製起点pCASE1oriを含むDNA断片である。
以上の3つのDNA断片を混和し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kitをその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうして得られたプラスミドをpGE402とした。
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP474(配列番号105)とGEP477(配列番号106)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。また、pFLAG-CTC(シグマ・アルドリッチ社製)を鋳型とし、GEP467(配列番号89)とGEP468(配列番号90)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらはそれぞれATCC13032株のldhAプロモーター(PldhA)および大腸菌リボソームRNA転写ターミネーター(TrrnB)を含むDNA断片である。さらに、pGE402をBamHIとEcoRVで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kitをその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうして得られたプラスミドをpGE411とした。
2-3-(2)pGE945-2の構築
pCR8/GW/TOPO(インビトロジェン社製)を鋳型とし、GEP435(配列番号107)とGEP436(配列番号108)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。また、pHSG298(タカラバイオ社製)を鋳型とし、GEP437(配列番号83)とGEP438(配列番号84)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらはそれぞれスペクチノマイシン耐性遺伝子および大腸菌用複製起点pUCoriを含むDNA断片である。
以上の2つのDNA断片、および、pGE402の作成時に得たpCASE1oriを含むDNA断片を混和し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kitをその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、100μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を100μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうして得られたプラスミドをpGE619とした。
ATCC13032株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP474(配列番号105)とGEP477(配列番号106)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。また、pFLAG-CTC(シグマ・アルドリッチ社製)を鋳型とし、GEP467(配列番号89)とGEP2897(配列番号109)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらはそれぞれATCC13032株のldhAプロモーター(PldhA)および大腸菌リボソームRNA転写ターミネーター(TrrnB)を含むDNA断片である。さらに、pGE619をBamHIとEcoRVで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの3つのDNA断片を混和し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kitをその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、100μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を100μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうして得られたプラスミドをpGE945-2とした。
2-3-(3)Pp_mdlC過剰発現用プラスミドの構築
シュードモナス プチダNBRC14164株は独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターから入手し、添付の指示書通りに培養を行った後に、ゲノムDNA抽出を行った。NBRC14164株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2550(配列番号110)とGEP2551(配列番号111)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはシュードモナス プチダNBRC14164株mdlC遺伝子(Pp_mdlC)を含むDNA断片である。さらに、pET-15b(ノバジェン社製)をNdeIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1031作成時と同様な操作によりPp_mdlCがpET-15bへとクローニングされたプラスミドpGE1161を得た。
pGE1161を鋳型とし、GEP2653(配列番号112)とGEP2654(配列番号113)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE409をNdeIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1185作成時と同様な操作によりPp_mdlCがpGE409へとサブクローニングされたプラスミドpGE1197を得た。
2-3-(4)Kp_dhaT過剰発現用プラスミドの構築
クレブシエラ ニューモニエ由来の遺伝子(DDBJアクセッション番号:LC412902)を含むプラスミドpHA12-dhaBTを広島大学田島誉久博士より供与を頂いた。これを鋳型とし、GEP2529(配列番号114)とGEP2530(配列番号115)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはクレブシエラ ニューモニエdhaT遺伝子(Kp_dhaT)を含むDNA断片である。さらに、pET-15b(ノバジェン社製)をNdeIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1161作成時と同様な操作によりKp_dhaTがpET-15bへとクローニングされたプラスミドpGE1150を得た。
pGE1150をNdeIとBamHIで処理し、1.2kbのDNA断片をアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE945-2をNdeIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、Ligation high Ver.2(東洋紡社製)をその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、100μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を100μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうしてKp_dhaTがpGE945-2へとサブクローニングされたプラスミドpGE1190を得た。
2-3-(5)Ll_ldhA Q85C過剰発現用プラスミドの構築
ラクトコッカス ラクティスNBRC100676株は独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターから入手し、添付の指示書通りに培養を行った後に、ゲノムDNA抽出を行った。NBRC100676株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2799(配列番号116)とGEP2800(配列番号117)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはラクトコッカス ラクティスNBRC100676株ldhA遺伝子(Ll_ldhA)を含むDNA断片である。さらに、pET-15b(ノバジェン社製)をNdeIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1031作成時と同様な操作によりLl_ldhAがpET-15bへとクローニングされたプラスミドpGE1274を得た。
ラクトコッカス ラクティスNBRC100676株由来の乳酸デヒドロゲナーゼへの変異導入を目的とし、pGE1274を鋳型としてGEP2803(配列番号118)およびGEP2804(配列番号119)で示される塩基配列のDNAを用いて、PrimeSTAR(登録商標) Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ社製)をその指示書通りに用いて、変異導入およびプラスミドの増幅を行い、Ll_ldhAの変異遺伝子Ll_ldhA Q85Cの配列を有するプラスミドpGE1275を得た。
pGE1275を鋳型とし、GEP2801(配列番号120)とGEP2802(配列番号121)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE945-2をNdeIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kitをその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、100μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を100μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうしてLl_ldhA Q85CがpGE945-2へとサブクローニングされたプラスミドpGE1286を得た。
2-3-(6)Ls_leudh過剰発現用プラスミドの構築
リシニバシラス スフェリカスNBRC3525株は独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターから入手し、添付の指示書通りに培養を行った後に、ゲノムDNA抽出を行った。NBRC3525株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2525(配列番号122)とGEP2526(配列番号123)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはリシニバシラス スフェリカスNBRC3525株leudh遺伝子(Ls_leudh)を含むDNA断片である。さらに、pET-15b(ノバジェン社製)をNdeIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1031作成時と同様な操作によりLs_leudhがpET-15bへとクローニングされたプラスミドpGE1148を得た。
pGE1148を鋳型とし、GEP2655(配列番号124)とGEP2650(配列番号125)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE945-2をNdeIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1286作成時と同様な操作によりLs_leudhがpGE945-2へとサブクローニングされたプラスミドpGE1203を得た。
2-3-(7)Sf_valdh過剰発現用プラスミドの構築
ストレプトミセス フラジエATCC19609株はAmerican Type Culture Collectionから入手し、添付の指示書通りに培養を行った後に、ゲノムDNA抽出を行った。ATCC19609株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2600(配列番号126)とGEP2601(配列番号127)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはストレプトミセス フラジエATCC19609株valdh遺伝子(Sf_valdh)を含むDNA断片である。さらに、pET-15b(ノバジェン社製)をNdeIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1031作成時と同様な操作によりSf_valdhがpET-15bへとクローニングされたプラスミドpGE1175を得た。
2-3-(8)Bb_phedh過剰発現用プラスミドの構築
バシラス バディウスNBRC15713株は独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターから入手し、添付の指示書通りに培養を行った後に、ゲノムDNA抽出を行った。NBRC15713株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2678(配列番号128)とGEP2679(配列番号129)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはバシラス バディウスNBRC15713株phedh遺伝子(Bb_phedh)を含むDNA断片である。さらに、pET-15b(ノバジェン社製)をNdeIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1031作成時と同様な操作によりBb_phedhがpET-15bへとクローニングされたプラスミドpGE1237を得た。
2-3-(9)AtCGS1過剰発現用プラスミドの構築
pMK-AtCGSはサーモ・フィッシャー社より購入した。pMK-AtCGSはシロイヌナズナのCGS1遺伝子(Biochem.J.331,639-648(1998)、DDBJアクセッション番号:U43709)がコードするアミノ酸配列のうち、69番目のアミノ酸以降の配列についてコリネバクテリウム グルタミカムでの発現が最適化された合成DNAを含むプラスミドである。これを鋳型とし、GEP1053(配列番号130)とGEP1054(配列番号131)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはコリネバクテリウム グルタミカムでの発現が最適化されたシロイヌナズナCGS1遺伝子(AtCGS1)を含むDNA断片である。さらに、pGE411をNdeIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1185作成時と同様な操作によりAtCGS1がpGE411へとサブクローニングされたプラスミドpGE479を得た。
pGE479をNdeIとBamHIで処理し、1.5kbのDNA断片をアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。さらに、pGE409をNdeIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、Ligation high Ver.2(東洋紡社製)をその指示書通りに用いてDNA断片の結合反応を行った。反応産物を用い、E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ社製)をその指示書通りに形質転換した。目的の形質転換株は、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養することで選択した。この形質転換株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地で培養し、得られた培養懸濁液を用いてプラスミド抽出を行った。こうしてAtCGS1がpGE409へとサブクローニングされたプラスミドpGE513を得た。
2-3-(10)各種アルドラーゼ酵素過剰発現用プラスミドの構築
DH5α株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2712(配列番号132)とGEP2713(配列番号133)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、GEP2714(配列番号134)とGEP2715(配列番号135)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、GEP2720(配列番号136)とGEP2721(配列番号137)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、GEP2726(配列番号138)とGEP2727(配列番号139)で示される塩基配列のDNAの組み合わせ、GEP2767(配列番号140)とGEP2768(配列番号141)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはそれぞれ大腸菌DH5α株eda遺伝子(Ec_eda)、yjjJ遺伝子(Ec_yjhH)、dgoA遺伝子(Ec_dgoA)、mhpFE遺伝子(Ec_mhpFE)、garL遺伝子(Ec_garL)を含むDNA断片である。さらに、pGE409をNdeIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。各種遺伝子を有するDNA断片、およびpGE409由来のDNA断片を混和し、pGE1185作成時と同様な操作によりEc_eda、Ec_yjhH、Ec_dgoA、Ec_mhpFE、Ec_garLがpGE409へとクローニングされたプラスミドpGE1223、pGE1224、pGE1225、pGE1227、pGE1259を得た。
シュードモナス プチダNBRC14164株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2769(配列番号142)とGEP2770(配列番号143)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これらをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはシュードモナス プチダNBRC14164株galC遺伝子(Pp_galC)を含むDNA断片である。さらに、pGE409をNdeIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1185作成時と同様な操作によりPp_galCがpGE409へとクローニングされたプラスミドpGE1260を得た。
ノカルディオイデス属NBRC109351株は独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターから入手し、添付の指示書通りに培養を行った後に、ゲノムDNA抽出を行った。NBRC109351株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2716(配列番号144)とGEP2717(配列番号145)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはノカルディオイデス属NBRC109351株phdJ遺伝子(Ns_phdJ)を含むDNA断片である。さらに、pGE409をNdeIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1185作成時と同様な操作によりNs_phdJがpGE409へとクローニングされたプラスミドpGE1239を得た。
バークホルデリア ゼノボランスDSMZ17367株はDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHから入手し、添付の指示書通りに培養を行った後に、ゲノムDNA抽出を行った。DSMZ17367株のゲノムDNAを鋳型とし、GEP2771(配列番号146)とGEP2772(配列番号147)で示される塩基配列のDNAの組み合わせを用いて、PCR法によりPCR産物を得、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これはバークホルデリア ゼノボランスDSMZ17367株bphJI遺伝子(Bx_bphJI)を含むDNA断片である。さらに、pGE409をNdeIとBamHIで処理し、これをアガロース・ゲル電気泳動の後、抽出、精製を行った。これらの2つのDNA断片を混和し、pGE1185作成時と同様な操作によりBx_bphJIがpGE409へとクローニングされたプラスミドpGE1262を得た。
3.菌体構築
(3-1)Pp_mdlCおよびKp_dhaT過剰発現プラスミド導入株の作成
pGE1197とpGE1190を用い、電気穿孔法によりGES1070を形質転換し、33℃にて25μg/mlのカナマイシンと100μg/mlのスペクチノマイシを含むA寒天培地上でカナマイシン・スペクチノマイシ耐性株を選択した。これをGES1206と命名した。
pGE1197とpGE1190を用い、電気穿孔法によりGES1063を形質転換し、33℃にて25μg/mlのカナマイシンと100μg/mlのスペクチノマイシを含むA寒天培地上でカナマイシン・スペクチノマイシ耐性株を選択した。これをGES1077と命名した。
pGE1197とpGE1190を用い、電気穿孔法によりGES1064を形質転換し、33℃にて25μg/mlのカナマイシンと100μg/mlのスペクチノマイシを含むA寒天培地上でカナマイシン・スペクチノマイシ耐性株を選択した。これをGES1068と命名した。
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum) GES1068は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託した(寄託日:2018年9月13日、受託番号:NITE BP-02780)
pGE1197とpGE1190を用い、電気穿孔法によりGES1223を形質転換し、33℃にて25μg/mlのカナマイシンと100μg/mlのスペクチノマイシを含むA寒天培地上でカナマイシン・スペクチノマイシ耐性株を選択した。これをGES1253と命名した。
pGE1197とpGE1190を用い、電気穿孔法によりGES1233を形質転換し、33℃にて25μg/mlのカナマイシンと100μg/mlのスペクチノマイシを含むA寒天培地上でカナマイシン・スペクチノマイシ耐性株を選択した。これをGES1254と命名した。
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum) GES1254は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託した(寄託日:2018年9月13日、受託番号:NITE BP-02781)
pGE1197とpGE1190を用い、電気穿孔法によりGES1242を形質転換し、33℃にて25μg/mlのカナマイシンと100μg/mlのスペクチノマイシを含むA寒天培地上でカナマイシン・スペクチノマイシ耐性株を選択した。これをGES1282と命名した。
(3-2)Ll_ldhA Q85C過剰発現プラスミド導入株の作成
pGE1286を用い、電気穿孔法によりGES1064を形質転換し、33℃にて100μg/mlのスペクチノマイシを含むA寒天培地上でスペクチノマイシ耐性株を選択した。これをGES1232と命名した。
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum) GES1232は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託した(寄託日:2018年9月13日、受託番号:NITE BP-02782)
pGE1286を用い、電気穿孔法によりGES1211を形質転換し、33℃にて100μg/mlのスペクチノマイシを含むA寒天培地上でスペクチノマイシ耐性株を選択した。これをGES1294と命名した。
(3-3)Ls_leudh過剰発現プラスミド導入株の作成
pGE1203を用い、電気穿孔法によりGES1064を形質転換し、33℃にて100μg/mlのスペクチノマイシを含むA培地上でスペクチノマイシ耐性株を選択した。これをGES1073と命名した。
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum) GES1073は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託した(寄託日:2018年9月13日、受託番号:NITE BP-02783)
pGE1203を用い、電気穿孔法によりGES1211を形質転換し、33℃にて100μg/mlのスペクチノマイシを含むA培地上でスペクチノマイシ耐性株を選択した。これをGES1295と命名した。
(3-4)Ls_leudhおよびAtCGS1発現プラスミド導入株の作成
pGE1203とpGE513を用い、電気穿孔法によりGES1064を形質転換し、33℃にて25μg/mlのカナマイシンと100μg/mlのスペクチノマイシを含むA寒天培地上でカナマイシン・スペクチノマイシ耐性株を選択した。これをGES1097と命名した。
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum) GES1097は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託した(寄託日:2018年9月13日、受託番号:NITE BP-02784)
(3-5)各種アルドラーゼ発現プラスミド導入株の作成
pGE1143、pGE1223、pGE1224、pGE1225、pGE1226、pGE1227、pGE1239、pGE1258、pGE1259、pGE1260、pGE1262をそれぞれ用い、電気穿孔法によりGES435を形質転換し、33℃にて25μg/mlのカナマイシンを含むA寒天培地上でカナマイシン耐性株を選択した。これをそれぞれGES1009、GES1119、GES1120、GES1121、GES1122、GES1123、GES1127、GES1154、GES1155、GES1156、GES1157と命名した。
4.物質生産実験
(4-1)4-ヒドロキシ-2-オキソ酪酸(HOB)の生産
4-1-(1)GES1077の培養
GES1077のグリセロールストックをカナマイシン25μg/mLおよびスペクチノマイシン100μg/mLを含むA寒天培地に無菌条件下で接種し、33℃にて培養した。寒天培地上に生育した菌体をカナマイシン25μg/mLおよびスペクチノマイシン100μg/mLを含む10mLのBA培地に接種し、33℃にて振盪培養を行い種培養液とした。この種培養液を濁度が0.1となるように2Lフラスコ中に用意されたカナマイシン25μg/mLおよびスペクチノマイシン100μg/mLを含む500mLのBA培地に接種した。33℃にて振盪を行い終夜培養した。この本培養液を4℃、5500xgにて15分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した。このようにして得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-1-(2)GES1077を用いたHOBの生産
前記の通り調製された湿菌体を10%(w/v)となるようにBRバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に50%(w/v)のグルコース水溶液および1.2Mのホルムアルデヒド水溶液をそれぞれ50mM、40mMとなるように加え、1.0M水酸化カリウム水溶液を用いてpHを6.0に維持しながら33℃にて培養を行った。当該湿菌体濃度においては、攪拌を水酸化カリウム水溶液が効率的に混和する程度に抑えておき、かつ、通気を行わなければ、自ずと嫌気的条件下または微好気的条件が達成される。3時間後、反応液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、HOBが0.65mM生成していた。
4-1-(3)比較例1
前記の通り調製された湿菌体を10%(w/v)となるようにBRバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に50%(w/v)のグルコース水溶液を50mMとなるように加え、1.0M水酸化カリウム水溶液を用いてpHを6.0に維持しながら33℃にて反応を行った。3時間後、反応懸濁液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、HOBは検出されなかった。
4-1-(4)比較例2
GES1206について、前記4-1-(1)、4-1-(2)と同様の実験を行った。反応3時間後、反応懸濁液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、HOBは検出されなかった。
4-1-(2)、4-1-(3)、4-1-(4)の結果から、GES1077のようなクラス2アルドラーゼをコードする遺伝子を持つ菌体は、糖類およびアルデヒド存在下に培養することで、糖類からピルビン酸を生成し、これとアルデヒドの間のアルドール反応を当該酵素が触媒することで、HOBに代表されるようなアルドール化合物を生成することがわかった。
4-1-(5)GES1282の培養
GES1282のグリセロールストックから4-1-(1)と同様に培養し得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-1-(6)GES1282を用いたHOBの生産
前記の通り調製された湿菌体を4-1-(2)と同様に培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。3時間後、反応液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、HOBが0.36mM生成していた。
4-1-(7)比較例1
前記の通り調製された湿菌体を4-1-(3)と同様に培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。3時間後、反応懸濁液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、HOBは検出されなかった。
4-1-(6)、4-1-(7)、4-1-(4)の結果から、GES1282のようなGES1077とは異なるクラス2アルドラーゼをコードする遺伝子を持つ菌体も、糖類およびアルデヒド存在下に培養することで、糖類からピルビン酸を生成し、これとアルデヒドの間のアルドール反応を当該酵素が触媒することで、HOBに代表されるようなアルドール化合物を生成することがわかった。
4-1-(8)GES1253の培養
GES1253のグリセロールストックから4-1-(1)と同様に培養し得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-1-(9)GES1253を用いたHOBの生産
前記の通り調製された湿菌体を4-1-(2)と同様に培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。3時間後、反応液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、HOBが0.34mM生成していた。
4-1-(10)比較例1
前記の通り調製された湿菌体を4-1-(2)と同様に培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。3時間後、反応懸濁液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、HOBは検出されなかった。
4-1-(9)、4-1-(10)、4-1-(4)の結果から、GES1253のようなクラス1アルドラーゼをコードする遺伝子を持つ菌体は、糖類およびアルデヒド存在下に培養することで、糖類からピルビン酸を生成し、これとアルデヒドの間のアルドール反応を当該酵素が触媒することで、HOBに代表されるようなアルドール化合物を生成することがわかった。
4-1-(11)GES1068およびGES1254の培養
GES1068およびGES1254のグリセロールストックから4-1-(1)と同様に培養し得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-1-(12)GES1068およびGES1254を用いたHOBの生産
前記の通り調製された湿菌体を4-1-(2)と同様に培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。3時間後、反応液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、HOBがGES1068を用いた反応では1.2mM、GES1254を用いた反応では0.42mM生成していた。
4-1-(12)の結果から、GES1068およびGES1254のようなGES1077およびGES1253とは異なる遺伝子型の微生物であっても、クラス2アルドラーゼをコードする遺伝子を持つ菌体であれば、糖類およびアルデヒド存在下に培養することで、糖類からピルビン酸を生成し、これとアルデヒドの間のアルドール反応を当該酵素が触媒することで、HOBに代表されるようなアルドール化合物を生成することがわかった。
(4-2)1,3-プロパンジオール(PDO)の生産
4-2-(1)GES1077、GES1068の培養
GES1077、GES1068のグリセロールストックをカナマイシン25μg/mLおよびスペクチノマイシン100μg/mLを含むA寒天培地に無菌条件下で接種し、33℃にて培養した。寒天培地上に生育した菌体をカナマイシン25μg/mLおよびスペクチノマイシン100μg/mLを含む10mLのBA培地に接種し、33℃にて振盪培養を行い種培養液とした。この種培養液を濁度が0.1となるように2Lフラスコ中に用意されたカナマイシン25μg/mLおよびスペクチノマイシン100μg/mLを含む500mLのBA培地に接種した。33℃にて振盪を行い終夜培養した。この本培養液を4℃、5500xgにて15分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した。このようにして得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-2-(2)GES1077、GES1068を用いたPDOの生産
前記の通り調製された湿菌体を10%(w/v)となるようにBRバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に50%(w/v)のグルコース水溶液および1.2Mのホルムアルデヒド水溶液をそれぞれ50mM、40mMとなるように加え、1.0M水酸化カリウム水溶液を用いてpHを6.0に維持しながら33℃にて培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。3時間後、反応液の上清を糖分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、PDOがGES1077を用いた反応では7.4mM、GES1068を用いた反応では11.4mM生成していた。
以上の結果から、GES1077およびGES1068のようなクラス2アルドラーゼをコードする遺伝子を持ち、糖類およびホルムアルデヒド存在下に培養するとHOBを生産できる菌体が、さらにデカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を有する場合、HOBがさらにPDOへと変換され、PDOを製造できることがわかった。
4-2-(3)GES1282の培養
GES1282のグリセロールストックから4-2-(1)と同様に培養し得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-2-(4)GES1282を用いたPDOの生産
前記の通り調製された湿菌体を4-2-(2)と同様に培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。6時間後、反応液の上清を糖分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、PDOが11.4mM生成していた。
以上の結果から、GES1282のようなGES1077やGES1068とは異なるクラス2アルドラーゼをコードする遺伝子を持ち、糖類およびホルムアルデヒド存在下に培養するとHOBを生産できる菌体も、さらにデカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を有する場合、HOBがさらにPDOへと変換され、PDOを製造できることがわかった。
4-2-(5)GES1253、GES1254の培養
GES1254のグリセロールストックから4-2-(1)と同様に培養し得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-2-(6)GES1253、GES1254を用いたPDOの生産
前記の通り調製された湿菌体を4-2-(2)と同様に培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。6時間後、反応液の上清を糖分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、PDOがGES1253を用いた反応では4.1mM、GES1254を用いた反応では5.8mM生成していた。
以上の結果から、GES1253およびGES1254のようなクラス1アルドラーゼをコードする遺伝子を持ち、糖類およびホルムアルデヒド存在下に培養するとHOBを生産できる菌体が、さらにデカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を有する場合、HOBがさらにPDOへと変換され、PDOを製造できることがわかった。
(4-3)1,3-ブタンジオール(BDO)の生産
4-3-(1)GES1068の培養
GES1068のグリセロールストックから4-2-(1)と同様に培養し得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-3-(2)GES1068を用いたBDOの生産
前記の通り調製された湿菌体を10%(w/v)となるようにBRバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に50%(w/v)のグルコース水溶液および1.2Mのアセトアルデヒド水溶液をそれぞれ50mM、40mMとなるように加え、1.0M水酸化カリウム水溶液を用いてpHを6.0に維持しながら33℃にて培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。3時間後、反応液の上清を糖分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、BDOが8.2mM生成していた。
以上の結果から、GES1068のようなアルドラーゼ、デカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を有する菌体を、糖類およびアセトアルデヒド存在下に培養することで、BDOを製造できることがわかった。
なお、4-2-(2)において、反応時間が3時間を過ぎてホルムアルデヒド濃度が低下した後も反応を続けると、22時間後にはBDOがGES1077を用いた反応では3.5mM、GES1068を用いた反応では2.7mM生成していた。これは、ホルムアルデヒドがアルドラーゼの反応に関与できない濃度まで低下した際に、ピルビン酸に対するmdlC(脱炭酸酵素)の触媒作用によりアセトアルデヒドが発生し、これがもう一分子のピルビン酸とアルドール反応を行い、4-hydroxy-2-oxovalerate(HOV)を生じ、これがさらにmdlC, dhaTの触媒作用で脱炭酸、還元を受けることで、 BDOを生じていると考えられる。したがって、アルドラーゼをコードする遺伝子を持ち、さらにデカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を有する菌体については、糖類のみを炭素源として培養し、BDOを生産することができる。実際、GES1077について4-2-(2)の記載の条件からホルムアルデヒドを添加しない条件で、培養を行ったところ、22時間後にBDOが0.60mM生成していた。
(4-4)各種1,3-ジオールの生産
4-4-(1)GES1068の培養
GES1068のグリセロールストックから4-2-(1)と同様に培養し得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-4-(2)GES1068を用いた各種1,3-ジオールの生産
前記の通り調製された湿菌体を10%(w/v)となるようにBRバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に50%(w/v)のグルコース水溶液およびアルデヒド(プロピオンアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ノルマルバレルアルデヒド)をそれぞれ50mM、40mMとなるように加え、1.0M水酸化カリウム水溶液を用いてpHを6.0に維持しながら33℃にて培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。3時間後、反応液の上清をGCMSにより分析したところ、各反応でプロピオンアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ノルマルバレルアルデヒドに由来する1,3-ペンタンジオール、1,3-ヘキサンジオール、4-メチル-1,3-ペンタンジオール、1,3-ヘプタンジオールがそれぞれ確認された。図6は、プロピオンアルデヒドを使用した場合におけるガスクロマトグラフ質量分析の結果を示す。図7は、ノルマルブチルアルデヒドを使用した場合におけるガスクロマトグラフ質量分析の結果を示す。図8は、イソブチルアルデヒドを使用した場合におけるガスクロマトグラフ質量分析の結果を示す。図8は、ノルマルバレルアルデヒドを使用した場合におけるガスクロマトグラフ質量分析の結果を示す。
以上の結果から、GES1068のようなアルドラーゼ、デカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を有する菌体を、糖類およびプロピオンアルデヒド、またはノルマルブチルアルデヒド、またはイソブチルアルデヒド、またはノルマルバレルアルデヒド存在下に培養することで、1,3-ペンタンジオール、1,3-ヘキサンジオール、4-メチル-1,3-ペンタンジオール、1,3-ヘプタンジオールを製造できることがわかった。
また、一般的に、GES1068のようなアルドラーゼ、デカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を有する菌体を糖類およびアルデヒド類の存在下に培養することで、糖類からピルビン酸が生成し、これとアルデヒド類の反応からアルドール化合物である4-ヒドロキシ-2-オキソカルボン酸が生成し、これが3-ヒドロキシアルデヒド化合物、さらには1,3-ジオールへと変換され、最終的に1,3-ジオールが製造できることが期待される。
(4-5)2,4-ジヒドロキシ酪酸(DHB)の生産
4-5-(1)GES1232の培養
GES1232のグリセロールストックをスペクチノマイシン100μg/mLを含むA寒天培地に無菌条件下で接種し、33℃にて培養した。寒天培地上に生育した菌体をスペクチノマイシン100μg/mLを含む10mLのBA培地に接種し、33℃にて振盪培養を行い種培養液とした。この種培養液を濁度が0.1となるように2Lフラスコ中に用意されたスペクチノマイシン100μg/mLを含む500mLのBA培地に接種した。33℃にて振盪を行い終夜培養した。この本培養液を4℃、5500xgにて15分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した。このようにして得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-5-(2)GES1232を用いたDHBの生産
前記の通り調製された湿菌体を10%(w/v)となるようにBRバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に50%(w/v)のグルコース水溶液および1.2Mのホルムアルデヒド水溶液をそれぞれ100mM、40mMとなるように加え、1.0M水酸化カリウム水溶液を用いてpHを7.0に維持しながら33℃にて培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。3時間後、反応液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、DHBが11mM生成していた。
4-5-(3)比較例1
前記の通り調製された湿菌体を10%(w/v)となるようにBRバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に50%(w/v)のグルコース水溶液を100mMとなるように加え、1.0M水酸化カリウム水溶液を用いてpHを7.0に維持しながら33℃にて反応を行った。3時間後、反応液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、DHBは検出されなかった。
4-5-(4)比較例2
GES1294について、前記(1)(2)と同様の実験を行った。反応3時間後、反応懸濁液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、DHBは検出されなかった。
以上の結果から、GES1232のようなアルドラーゼをコードする遺伝子を持ち、糖類およびホルムアルデヒド存在下に培養するとHOBを生産できる菌体が、さらにHOB還元活性を有するデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を有する場合、これを糖類およびホルムアルデヒド存在下に培養することで、HOBがさらにDHBへと変換され、DHBを製造できることがわかった。
(4-6)L-ホモセリンN-デヒドロゲナーゼ活性の確認
4-6-(1)ロイシンデヒドロゲナーゼの発現と酸化的脱アミノ化反応活性の測定
pGE1148を用いてECOSTM Competent E. coli BL21(DE3)(ニッポンジーン社製)をその指示書通りに形質転換し、得られた菌株をGES1007とした。GES1007をアンピシリン100μg/mLを含むLB寒天培地に無菌条件下で接種し、37℃にて培養した。寒天培地上に生育した菌体をアンピシリン100μg/mLを含む10mLのLB培地に接種し、37℃にて振盪培養を行い種培養液とした。この種培養液を濁度が0.1となるように500mLフラスコ中に用意されたアンピシリン100μg/mLを含む100mLのLB培地に接種した。37℃にて振盪を行い濁度が0.7になるまで培養した。IPTGを終濃度0.2mMになるように加え、16℃にて終夜振盪培養を行った。この本培養液を4℃、6000xgにて5分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した。このようにして得られた湿菌体を-80℃にて一度凍結した後、室温で融解させた。4.5mLの50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH8.0)、500mM塩化ナトリウム、10%グリセロールに懸濁させ、これに2.0gのグラスビーズYGB01 Φ0.1mm(安井器械社製)を加え、マルチビーズショッカーMB1001C(S)(安井器械社製)を用いて2500rpm、4℃にて菌体の破砕を行った。18000xg、4℃にて3分間遠心分離を行い、上清を回収した。この破砕液のタンパク質濃度を測定したところ12mg/mLであった。
この菌体破砕液を用いて、L-ホモセリンに対する酸化的脱アミノ化反応活性を測定した。反応条件は、適宜希釈した菌体破砕液を100mMグリシン-KCl-KOH(pH10.0)、2.5mM NAD、50mM L-ホモセリンと混合し、340nmにおけるNADHによる吸光の連続的な増加をVarioskan LUX(サーモ・フィッシャー社製)を用いて測定した。その結果、この菌体破砕液のL-ホモセリンに対する比活性は0.21U/mg proteinであった。
4-6-(2)バリンデヒドロゲナーゼの発現と酸化的脱アミノ化反応活性の測定
pGE1175を用いてECOSTM Competent E. coli BL21(DE3)(ニッポンジーン社製)をその指示書通りに形質転換し、得られた菌株をGES1057とした。GES1057について、GES1007と同様な操作によって得られた破砕液のタンパク質濃度を測定したところ4.2mg/mLであった。
この菌体破砕液を用いて、L-ホモセリンに対する酸化的脱アミノ化反応活性を4-6-(1)と同様に測定した結果、この菌体破砕液のL-ホモセリンに対する比活性は0.21U/mg proteinであった。
4-6-(3)フェニルアラニンデヒドロゲナーゼの発現と酸化的脱アミノ化反応活性の測定
pGE1237を用いてECOSTM Competent E. coli BL21(DE3)(ニッポンジーン社製)をその指示書通りに形質転換し、得られた菌株をGES1136とした。GES1136について、GES1007と同様な操作によって得られた破砕液のタンパク質濃度を測定したところ11mg/mLであった。
この菌体破砕液を用いて、L-ホモセリンに対する酸化的脱アミノ化反応活性を4-6-(1)と同様に測定した結果、この菌体破砕液のL-ホモセリンに対する比活性は0.045U/mg proteinであった。
以上4-6-(1)、4-6-(2)、4-6-(3)の結果から、ロイシンデヒドロゲナーゼ、バリンデヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼいずれもL-ホモセリンをHOBへと酸化する活性を有していることが分かった。一般的に、アミノ酸デヒドロゲナーゼは、酸化的脱アミノ化反応および還元的アミノ化反応のいずれの反応も触媒し、また、これらの活性強度には相関がある。(例えば、Biochim. Biophys. Acta 96, 248-262 (1965)、J. Biol. Chem. 253, 5719-5725 (1978)、Eur. J. Biochem. 100, 29-39 (1979))。したがって、ロイシンデヒドロゲナーゼ、バリンデヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼいずれもHOBからL-ホモセリンへの還元的アミノ化反応を触媒することが期待される。確認のため、ロイシンデヒドロゲナーゼについて精製し、HOBの還元的アミノ化反応について酵素速度論的解析を行った。
4-6-(4)ロイシンデヒドロゲナーゼの精製と還元的アミノ化反応活性の測定
4-6-(1)で得られた菌体破砕液をシリンジフィルター ポアサイズ0.2μm(ザルトリウス社製)を用いて濾過処理を行った。これをHisTrapTM FF 1mLカラムを接続したAKTA purifierシステム(GEヘルスケア社製)を用い、50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH8.0)、500mM塩化ナトリウム、10%グリセロールを吸着バッファーとして、50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH8.0)、500mM塩化ナトリウム、10%グリセロール、500mMイミダゾールを溶出バッファーとして分画した。SDS-PAGEで確認したロイシンデヒドロゲナーゼを含有するフラクションを回収し、限外濾過を用いて濃縮し、その後PD-10カラム(GEヘルスケア社製)を用いて50mMリン酸カリウム(pH7.4)、100mM塩化ナトリウム、1mM EDTA、10%グリセロールへとバッファー置換を行い、限外濾過を用いて再度濃縮することで5.9mg/mLのロイシンデヒドロゲナーゼ水溶液を得た。
このように得られた精製ロイシンデヒドロゲナーゼを用いて、HOBを基質としたミカエリス・メンテン式に基づいた酵素反応速度論的解析を行った。反応条件は、100mM HEPES・KOH(pH7.5)、200mM塩化アンモニウム、0.2mM NADH、3.7μg/mLロイシンデヒドロゲナーゼとし、HOB濃度が3.13、6.25、12.5、25.0、50.0、100mMにおける反応速度を測定した。反応速度は340nmにおけるNADHによる吸光の連続的な減少をVarioskan LUX(サーモ・フィッシャー社製)を用いて測定し、算出した。各濃度における反応速度をプロットしミカエリス・メンテン式へのフィッティングを行うことで酵素反応速度論的定数を算出した結果、HOBに対するミカエリス定数Kは7.7mM、触媒回転数kcatは2.7sec-1であり、したがって、特異度定数kcat/Kは0.35mM-1 sec-1であった。
この結果から、ロイシンデヒドロゲナーゼは期待通りHOBの還元的アミノ化反応について触媒活性を示すことが分かった。また、この結果から、バリンデヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼについても還元的アミノ化反応について触媒活性を示すと考えられる。
(4-7)アミノ酸の生産
4-7-(1)GES1073の培養
GES1073のグリセロールストックから4-5-(1)と同様に培養し得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-7-(2)GES1073を用いたアミノ酸の生産
前記の通り調製された湿菌体を10%(w/v)となるようにBTバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に50%(w/v)のグルコース水溶液および2.0Mのホルムアルデヒド水溶液をそれぞれ2%(w/v)、100mMとなるように加え、5.0Mアンモニア水溶液を用いてpHを7.0に維持しながら33℃にて培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。6時間後、反応液の上清をアミノ酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、L-ホモセリンが15.7mM、L-スレオニンが1.3mM、2-アミノ酪酸が0.15mM生成していた。
4-7-(3)比較例1
前記の通り調製された湿菌体を10%(w/v)となるようにBTバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に50%(w/v)のグルコース水溶液を2%(w/v)となるように加え、5.0Mアンモニア水溶液を用いてpHを7.0に維持しながら33℃にて反応を行った。6時間後、反応液の上清をアミノ酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、L-ホモセリン、L-スレオニン、2-アミノ酪酸のいずれも定量限界以下であった。
4-7-(4)比較例2
GES1295について、前記4-7-(1)、4-7-(2)と同様の実験を行った。反応6時間後、反応懸濁液の上清をアミノ酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、L-ホモセリン、L-スレオニン、2-アミノ酪酸のいずれも定量限界以下であった。
以上の結果から、GES1073のようなアルドラーゼをコードする遺伝子を持ち、糖類およびホルムアルデヒド存在下に培養するとHOBを生産できる菌体が、さらにHOBを還元的アミノ化する活性を有するデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を有する場合、これを糖類およびホルムアルデヒド存在下に培養することで、HOBがさらにL-ホモセリンへと変換され、L-ホモセリンを製造できることがわかった。また、L-ホモセリンが内在性の代謝系によりその一部がO-ホスホ-L-ホモセリン(OPH)を経てL-スレオニンへと変換されるため、これを製造できることもわかった。さらには、L-スレオニンが内在性の代謝系により脱水し、2-オキソ酪酸となり、内在性のアミノ酸デヒドロゲナーゼもしくはGES1073が特異的に有するロイシンデヒドロゲナーゼにより2-アミノ酪酸へと変換されるため、これを製造できることがわかった。
(4-8)L-メチオニンの生産
4-8-(1)GES1097の培養
GES1097のグリセロールストックから4-2-(1)と同様に培養し得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
4-8-(2)GES1097を用いたアミノ酸の生産
前記の通り調製された湿菌体を20%(w/v)となるようにBTバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に50%(w/v)のグルコース水溶液および2.0Mのホルムアルデヒド水溶液および0.2Mのメチルメルカプタン水溶液(15%メチルメルカプタンナトリウム水溶液(東京化成工業社製)をBTバッファーを用いて希釈し、濃塩酸を用いてpH8.0になるように調整)を加え、さらにBTバッファーで希釈することで、それぞれ2%(w/v)、100mM、50mMとなるように調整した。また、この時、最終的な湿菌体濃度は10%(w/v)となるようにした。5.0Mアンモニア水溶液を用いてpHを7.0に維持しながら33℃にて培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。21時間後、反応液の上清をアミノ酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、L-メチオニンが2.1mM生成していた。また、L-ホモセリンが8.6mM、L-スレオニンが3.0mM、2-アミノ酪酸が0.86mM生成していた。
4-8-(3)比較例1
前記の通り調製された湿菌体を20%(w/v)となるようにBTバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に50%(w/v)のグルコース水溶液および2.0Mのホルムアルデヒド水溶液を加え、さらにBTバッファーで希釈することで、それぞれ2%(w/v)、100mMとなるように調整した。また、この時、最終的な湿菌体濃度は10%(w/v)となるようにした。5Nアンモニア水溶液を用いてpHを7.0に維持しながら33℃にて反応を行った。21時間後、反応液の上清をアミノ酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、L-メチオニンは定量限界以下であった。一方、L-ホモセリンが5.4mM、L-スレオニンが5.6mM、2-アミノ酪酸が0.98mM生成していた。
4-8-(4)比較例2
GES1073について、前記4-8-(1)、4-8-(2)と同様の実験を行った。反応21時間後、反応懸濁液の上清をアミノ酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、L-メチオニンの生成は定量限界以下であった。一方、L-ホモセリンが12.8mM、L-スレオニンが1.6mM、2-アミノ酪酸が0.40mM生成していた。
以上の結果から、GES1097のようなアルドラーゼをコードする遺伝子およびHOBを還元的アミノ化する活性を有するデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を持ち、糖類およびホルムアルデヒド存在下に培養するとL-ホモセリンを生産できる菌体が、さらにOPHとメチルメルカプタンを結合させる活性を有するシンターゼをコードする遺伝子を有する場合、糖類、ホルムアルデヒドおよびメチルメルカプタン存在下に培養することで、L-ホモセリンがOPHを経由してL-メチオニンへと変換され、L-メチオニンを製造できることがわかった。
5.ピルビン酸からHOBの生産
(5-1)GES1009、GES1119、GES1120、GES1121、GES1122、GES1123、GES1127、GES1154、GES1155、GES1156、GES1157の培養
GES1009、GES1119、GES1120、GES1121、GES1122、GES1123、GES1127、GES1154、GES1155、GES1156、GES1157のグリセロールストックをカナマイシン25μg/mLを含むA寒天培地に無菌条件下で接種し、33℃にて培養した。寒天培地上に生育した菌体をカナマイシン25μg/mLを含む10mLのBA培地に接種し、33℃にて振盪を行い終夜培養した。この培養液を4℃、5500xgにて15分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した。このようにして得られた湿菌体を以下の反応に用いた。
(5-2)GES1009、GES1119、GES1120、GES1121、GES1122、GES1123、GES1127、GES1154、GES1155、GES1156、GES1157を用いたピルビン酸からHOBの生産
前記の通り調製された湿菌体を10%(w/v)となるようにBSバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に1.0Mピルビン酸水溶液および1.2Mのホルムアルデヒド水溶液をともに40mMとなるように加え、33℃にて培養を行った。培養においては、水酸化カリウム水溶液を効率的に混和するように撹拌を行い、かつ、通気を行わなかった。なお、この操作によって、当該湿菌体濃度では、嫌気的条件または微好気的条件は達成されている。6時間後、反応液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、HOBがGES1009、GES1119、GES1120、GES1121、GES1122、GES1123、GES1127、GES1154、GES1155、GES1156、GES1157を用いた反応では、それぞれ3.6、4.1、2.1、3.4、30.5、1.9、18.3、19.5、6.5、4.5、2.0mM生成していた。
(5-3)比較例1
前記の通り調製された湿菌体を10%(w/v)となるようにBSバッファーに懸濁した。この菌体懸濁液に1.0Mピルビン酸水溶液を40mMとなるように加え、33℃にて反応を行った。6時間後、反応液の上清を有機酸分析用液体クロマトグラフィーにより分析したところ、いずれの場合もHOBは検出されなかった。
以上の結果から、GES1009、GES1119、GES1120、GES1121、GES1122、GES1123、GES1127、GES1154、GES1155、GES1156、GES1157のようなアルドラーゼをコードする遺伝子を持つ菌体は、いずれもピルビン酸とホルムアルデヒドとの間のアルドール反応を当該酵素が触媒することで、HOBに代表されるようなアルドール化合物を生成することが分かった。
参考資料

Claims (1)

  1. 以下からなる群より選択される第1遺伝子:
    (1-1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
    (1-2)配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
    (1-3)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、
    (1-4)配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
    (1-5)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
    (1-6)配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ピルビン酸とカルボニル化合物とのアルドール反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
    以下からなる群より選択される第2遺伝子:
    (2-1)配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
    (2-2)配列番号24に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;ならびに
    以下からなる群より選択される第3遺伝子:
    (3-1)配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子、および
    (3-2)配列番号26に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アルデヒドの還元反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
    を含むコリネ型細菌。
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