JP7367534B2 - インクジェット用インク - Google Patents
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Description
本実施形態のインクジェット用インク(以下、単に「インク」と記載することがある)は、記録媒体への記録に好適に用いられる。例えば、本実施形態に係るインクは、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズルから記録媒体の印字面へ向かって吐出されて、記録媒体に印刷される。記録媒体としては、例えば、印刷用紙(より具体的には、普通紙、コピー紙、再生紙、薄紙、厚紙、光沢紙等)が挙げられる。
水性媒体とは、水を主成分とする媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水、又は水と極性溶媒との混合液が挙げられる。水性媒体に含有される極性溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、及びメチルエチルケトンが挙げられる。水性媒体における水の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。水性媒体は、水であることが好ましく、イオン交換水であることがより好ましい。
顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193)が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(34、36、43、61、63、及び71)が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(122及び202)が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(15、より具体的には15:3)が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、23、及び33)が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック(7)が挙げられる。
インク中における顔料分散体の分散安定性を高めるためには、被覆樹脂は、スチレン-アクリル酸系樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、及びビニルナフタレン-マレイン酸共重合体のうちの少なくとも1つであることが好ましく、スチレン-アクリル酸系樹脂であることがより好ましく、アニオン性を有するスチレン-アクリル酸系樹脂であることが更に好ましい。
次に、顔料分散体の調製方法の一例について説明する。まず、被覆樹脂を合成する。詳しくは、所定の溶媒に、重合により被覆樹脂を合成可能なモノマー又はプレポリマーと、重合開始剤とを加え、所定の温度で加熱還流を行う。このようにして、被覆樹脂が合成される。
特定アルコールエーテルの含有率は、2.00質量%以上7.00質量%以下である。特定アルコールエーテルの含有率が2.00質量%未満であると、耐擦過性に優れる画像の印刷が困難になる。一方、特定アルコールエーテルの含有率が7.00質量%を超えると、インクの保存安定性及び吐出安定性の確保が困難になる。耐擦過性により優れる画像を印刷するためには、特定アルコールエーテルとしては、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
特定ジオール化合物の含有率は、30.00質量%以上35.00質量%以下である。特定ジオール化合物の含有率が30.00質量%未満であると、耐擦過性に優れる画像の印刷が困難になる。一方、特定ジオール化合物の含有率が35.00質量%を超えると、インクの保存安定性及び吐出安定性の確保が困難になる。耐擦過性により優れる画像を印刷するためには、特定ジオール化合物としては、プロピレングリコールが好ましい。
2-ピロリドンの含有率は、6.00質量%以上7.00質量%以下である。2-ピロリドンの含有率が6.00質量%未満であると、インクの保存安定性の確保が困難になる。一方、2-ピロリドンの含有率が7.00質量%を超えると、耐擦過性に優れる画像の印刷が困難になる。
ワックス粒子の含有率は、0.14質量%以上2.86質量%以下である。ワックス粒子の含有率が0.14質量%未満であると、耐擦過性に優れる画像の印刷が困難になる。一方、ワックス粒子の含有率が2.86質量%を超えると、インクの吐出安定性の確保が困難になる。なお、ワックス粒子には、ワックス以外の成分が含まれていてもよいが、耐擦過性により優れる画像を印刷するためには、ワックス粒子おけるワックスの含有率が80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、ワックス粒子がワックスから構成されている(つまり、ワックスだけで構成されている)ことがより好ましい。
本実施形態のインクは、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、記録媒体に対するインクの濡れ性を向上させる。界面活性剤としては、例えば、ノニオン界面活性剤、及びアニオン界面活性剤が挙げられる。記録媒体に対するインクの濡れ性をより向上させるためには、界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましく、アセチレン基を有するグリコール化合物がより好ましい。
本実施形態のインクは、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、防カビ剤等)を更に含有してもよい。また、本実施形態のインクは、必要に応じて、特定アルコールエーテル以外の多価アルコールモノアルキルエーテル、及び特定ジオール化合物以外のジオール化合物からなる群より選択される少なくとも1つを更に含有してもよい。
本実施形態において、インクの保存安定性及び吐出安定性を確保しつつ、耐擦過性に更に優れる画像を印刷するためには、下記条件1を満たすことが好ましく、下記条件1及び2を満たすことがより好ましく、下記条件1、2及び3を満たすことが更に好ましい。
条件1:インクが、特定アルコールエーテルとしてトリエチレングリコールモノブチルエーテルを含有し、特定ジオール化合物としてプロピレングリコールを含有する。
条件2:インクが、ノニオン界面活性剤を含有する。
条件3:ノニオン界面活性剤の含有率が、0.40質量%以上0.60質量%以下である。
次に、上述した実施形態に係るインクの好適な製造方法について説明する。以下、上述した実施形態に係るインクと重複する構成要素については説明を省略する。
各成分の体積中位径(詳しくは、顔料分散体の体積中位径、及びワックス粒子の体積中位径)は、いずれも、温度25℃の雰囲気下で、動的光散乱式粒径分布測定装置(シスメックス株式会社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定した。顔料分散体の体積中位径の測定では、後述する調製方法で得られた顔料分散液をイオン交換水で希釈した液(希釈倍率:体積比で300倍)を、測定用試料として用いた。また、ワックス粒子の体積中位径の測定では、後述するワックス粒子分散液(詳しくは、AQUACER(登録商標)515、AQUACER(登録商標)531、ハイテックE-5403P及びMYE-35Gのいずれか)を、ワックス粒子の濃度(固形分濃度)が0.1質量%になるまでイオン交換水で希釈した後、得られた希釈液を測定用試料として用いた。
被覆樹脂Pの質量平均分子量(Mw)は、ゲルろ過クロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC-8020GPC」)を用いて、下記条件で、測定した。
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」(4.6mmI.D.×15cmのセミミクロカラム)
カラム本数:3本
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
サンプル注入量:10μL
測定温度:40℃
検出器:IR検出器
被覆樹脂Pの酸価は、「JIS(日本産業規格)K0070-1992」で規定された中和滴定法に従い測定した。
四つ口フラスコ(容量:1000mL)に、スターラーと、窒素導入管と、コンデンサーと、滴下ロートとをセットした。次いで、フラスコに、100gのイソプロピルアルコールと300gのメチルエチルケトンとを入れた。次いで、フラスコ内容物に対して、窒素をバブリングしながら温度70℃で加熱還流させた状態でモノマー溶液を2時間かけて滴下した。滴下したモノマー溶液は、40.0gのスチレンと、10.0gのメタクリル酸と、10.0gのアクリル酸n-ブチルと、40.0gのメタクリル酸メチルと、0.4gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤)との混合物であった。
メディア型湿式分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製「DYNO(登録商標)-MILL」)のベッセル(容量:0.6L)に、顔料としてのピグメントブルー15:3(トーヨーカラー株式会社製「リオノール(登録商標)ブルーFG-7330」、成分:銅フタロシアニン)15質量部と、6質量部の被覆樹脂Pと、1,2-オクタンジオール0.5質量部と、イオン交換水78.5質量部とを入れた。
上述の手順で得られた顔料分散液Lを用いて、後述の調製方法により、インクA1~A8及びB1~B13を調製した。インクA1~A8及びB1~B13の各々の組成を、表1~表4に示す。
顔料分散液Lと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、エチレングリコールと、2-ピロリドンと、ワックス粒子分散液(ビックケミー・ジャパン株式会社製「AQUACER(登録商標)515」、固形分濃度:35質量%)と、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)420」、成分:アセチレン基を有するグリコール化合物)と、イオン交換水とを、各成分の含有率が表1の「A1」の欄に示す含有率となるようにビーカーに入れた。次いで、攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター BL-600」)を用いて、ビーカー内容物を回転速度400rpmで60分間攪拌して、ビーカー内容物を均一に混合した。次いで、フィルター(孔径5μm)を用いてビーカー内容物をろ過することにより、ビーカー内容物に含有される異物及び粗大粒子を除去し、インクA1を得た。
表1~表4に示す各成分を表1~表4に示す含有率となるように使用したこと以外は、インクA1の調製と同じ方法で、インクA2~A8及びB1~B13の各々を得た。
インクA1~A8及びB1~B13について、以下に示す方法により、保存安定性、吐出安定性、並びに印刷された画像の画像濃度及び耐擦過性を評価した。なお、吐出安定性、画像濃度及び耐擦過性の各々の評価においては、評価機として、ピエゾ方式のライン型記録ヘッドを備えるインクジェットプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試作機)を用いた。上記インクジェットプリンターは、記録ヘッド(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「KJ4B-QA」、解像度:600dpi)を3基備えていた。
インク(詳しくは、インクA1~A8及びB1~B13のいずれか)をガラス製の容器に入れた後、容器を密閉した。続いて、上記インクが入った密閉容器を、温度60℃の環境下で4週間にわたって静置した後、静置後のインクを目視で観察し、下記の判定基準でインクの保存安定性を判定した。判定がAの場合、「保存安定性を確保できている」と評価した。また、判定がBの場合、「保存安定性を確保できていない」と評価した。
A:インク成分の析出が観察されなかった。
B:インク成分の析出が観察された。
評価機の記録ヘッドにインク(詳しくは、インクA1~A8及びB1~B13のいずれか)を充填した。そして、インク一滴あたりのインクの吐出量が9pLになるように、インクの吐出条件を設定した。次いで、温度25℃かつ湿度50%RHの環境下、評価機を用いて、大きさ10cm×10cmのソリッド画像を、普通紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量:90g/m2)に100枚連続で印刷した。そして、印刷されたソリッド画像を目視で観察し、下記の判定基準でインクの吐出安定性を判定した。判定がAの場合、「吐出安定性を確保できている」と評価した。また、判定がBの場合、「吐出安定性を確保できていない」と評価した。
A:印刷した100個のソリッド画像の全てにおいて、ノズルの詰まりに起因する画像不良が観察されなかった。
B:印刷した100個のソリッド画像の少なくとも1個において、ノズルの詰まりに起因する画像不良が観察された。
評価機の記録ヘッドにインク(詳しくは、インクA1~A8及びB1~B13のいずれか)を充填した。そして、インク一滴あたりのインクの吐出量が9pLになるように、インクの吐出条件を設定した。次いで、温度25℃かつ湿度50%RHの環境下、評価機を用いて、大きさ10cm×10cmのソリッド画像を、1枚の普通紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量:90g/m2)に印刷した。そして、印刷されたソリッド画像の画像濃度を、反射濃度計(X-Rite社製「RD-19」)を用いて測定した。詳しくは、印刷されたソリッド画像において画像濃度の測定箇所を無作為に10箇所選択し、選択した測定箇所の各々で、画像濃度を測定した。そして、測定された10箇所の画像濃度の算術平均値を、評価対象(インク)の画像濃度の評価値とした。そして、画像濃度(評価値)が0.90以上の場合、「良い」と評価した。一方、画像濃度(評価値)が0.90未満の場合、「良くない」と評価した。
評価機の記録ヘッドにインク(詳しくは、インクA1~A8及びB1~B13のいずれか)を充填した。そして、インク一滴あたりのインクの吐出量が9pLになるように、インクの吐出条件を設定した。次いで、温度25℃かつ湿度50%RHの環境下、評価機を用いて、大きさ10cm×10cmのソリッド画像を、1枚の普通紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量:90g/m2)に印刷した。そして、ソリッド画像の印刷から10秒が経過した後、ソリッド画像が印刷された普通紙の表面(ソリッド画像側の面)上に、未印刷の普通紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量:90g/m2)を重ねた。次いで、重りを用いて未印刷の普通紙に1kgの荷重を加えながら、未印刷の普通紙の一方の面でソリッド画像上を5往復擦った(擦過試験)。そして、擦過試験終了から5分が経過した後、未印刷の普通紙における上述の面の画像濃度を、反射濃度計(X-Rite社製「RD-19」)を用いて測定した。詳しくは、上述の面のうちソリッド画像に接触していた領域において画像濃度の測定箇所を無作為に3箇所選択し、選択した測定箇所の各々で、画像濃度を測定した。そして、測定された3箇所の画像濃度の算術平均値を、評価対象(インク)の耐擦過性の評価値とした。そして、画像濃度(評価値)が0.020未満の場合、「耐擦過性に優れる画像を印刷できている」と評価した。一方、画像濃度(評価値)が0.020以上の場合、「耐擦過性に優れる画像を印刷できていない」と評価した。
インクA1~A8及びB1~B13のそれぞれについて、保存安定性及び吐出安定性の判定結果、並びに印刷された画像の画像濃度及び耐擦過性の評価値を、表6に示す。
Claims (5)
- 水性媒体と、
顔料と、
2.00質量%以上7.00質量%以下の多価アルコールモノアルキルエーテルと、
30.00質量%以上35.00質量%以下のジオール化合物と、
6.00質量%以上7.00質量%以下の2-ピロリドンと、
0.14質量%以上2.86質量%以下のワックス粒子と
を含有し、
前記多価アルコールモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記ジオール化合物は、エチレングリコール、及びプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記ワックス粒子の体積中位径は、30nm以上50nm以下である、インクジェット用インク。 - 界面活性剤を更に含有する、請求項1に記載のインクジェット用インク。
- 前記界面活性剤の含有率は、0.10質量%以上0.80質量%以下である、請求項2に記載のインクジェット用インク。
- 前記ワックス粒子に含まれるワックスは、ポリエチレンワックス及び酸化ポリエチレンワックスからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
- 前記多価アルコールモノアルキルエーテルとして前記トリエチレングリコールモノブチルエーテルを含有し、
前記ジオール化合物として前記プロピレングリコールを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
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