JP2011025469A - 顔料インクと反応液とのセット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録方法 - Google Patents

顔料インクと反応液とのセット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録方法 Download PDF

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賢一 椎葉
Yoshihisa Yamashita
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Abstract

【課題】 高い画像濃度とインクの保存安定性を損なうことなく、画像に高度な耐擦過性及び耐マーカー性を付与できる、顔料インクと反応液とのセットを提供すること。
【解決手段】 顔料と樹脂を少なくとも含有する顔料インクと、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性物質を含有する反応液とのセットであって、前記顔料インクが、下記一般式(I)で表されるノニオン性ユニット、ポリシロキサン構造を有するユニット及びカルボキシル基を有するユニットを含むグラフトポリマーを含有することを特徴とするインクと反応液とのセット。
【数1】
Figure 2011025469

(一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rはエステル結合又はエーテル結合であり、xは1又は2の整数である。ただし、Rがメチル基の場合、Rがエーテル結合となることはない。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、顔料インクと反応液とのセット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法に用いられるインクの色材として顔料を含有するインク(顔料インク)の検討が進められている。しかし、普通紙などの記録媒体にインクジェット記録方法で記録を行う場合、液体であるインクが記録媒体に浸透することにより、十分な画像濃度が得られない場合がある。
上述の課題に対して、カチオン性化合物を含有する液体を記録媒体に付与した後、アニオン性基が化学的に修飾された顔料や分散樹脂が吸着されてアニオン性を帯びた状態で分散された顔料を含有するインクを用いて記録する方法がある(特許文献1参照)。この方法では、反応液中のカチオン性化合物とインク中のアニオン性を示す顔料が記録媒体において互いに接触することにより、顔料の分散状態が不安定化し、顔料の凝集が促進され、画像濃度の向上が達成される。
また、顔料インクに樹脂を添加し、記録媒体にインクが定着する際に前記樹脂をバインダーとして作用させて顔料を保護することにより、画像に高度な耐擦過性及び耐マーカー性を付与するインクに関する提案がある(特許文献2参照)。
特開平11−203037号公報 特開平9−188732号公報
本発明者らは、従来の顔料インクと反応液のセットについて種々の検討を行った。その結果、顔料インクに耐擦過性及び耐マーカー性を向上するための樹脂を含有させ、その含有量を増加させると、徐々に反応液との反応性が低下し、十分な画像濃度が得られないという課題が生じることがわかった。本発明者らがこのような課題が生じる原因を追求したところ、上記のような性能を付与するために樹脂を顔料インクに添加すると、樹脂が顔料の分散状態を安定に保とうとする作用が生じ、顔料インクと反応液との反応性が低下するためであることがわかった。その結果、生成する凝集物が小さくなるため、記録媒体への浸透が抑制されず、画像濃度が十分に得られないものと考えられる。そこで、速やかに凝集し得る樹脂を顔料インクに添加することで、上記の課題が軽減できるという効果を確認することはできたが、樹脂の凝集性に起因して顔料インクの保存安定性が低下する傾向があった。つまり、これまでに述べてきたような方法では、高い画像濃度とインクの保存安定性を損なうことなく、画像に高度な耐擦過性及び耐マーカー性をもたせることはできていなかったのである。
したがって、本発明の目的は、高い画像濃度とインクの保存安定性を損なうことなく、画像に高度な耐擦過性及び耐マーカー性を付与できる、顔料インクと反応液とのセットを提供することにある。また、本発明の別の目的は、かかるセットを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
上記目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、顔料と樹脂を少なくとも含有する顔料インクと、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性物質を含有する反応液とのセットであって、前記顔料インクが、下記一般式(I)で表されるノニオン性ユニット、ポリシロキサン構造を有するユニット及びカルボキシル基を有するユニットを含むグラフトポリマーを含有することを特徴とするインクと反応液とのセットである。
Figure 2011025469
(一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rはエステル結合又はエーテル結合であり、xは1又は2の整数である。ただし、Rがメチル基の場合、Rがエーテル結合となることはない。)
本発明によれば、高い画像濃度とインクの保存安定性を損なうことなく、画像に高度な耐擦過性及び耐マーカー性を付与できる、顔料インクと反応液とのセットを提供することができる。また、本発明の別の実施態様によれば、かかるセットを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することができる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の特徴は、顔料インクと反応液とのセットを構成する顔料インク(以下、単に「セット」や「インク」と呼ぶことがある。)に、特定の構造を有するグラフトポリマーを含有する構成としたことにある。上記のグラフトポリマーは、下記一般式(I)で表されるノニオン性ユニット、ポリシロキサン構造を有するユニット及びカルボキシル基を有するユニットを含むグラフトポリマー(以下、単に「グラフトポリマー」と呼ぶことがある)である。そして、このような構成を有するセットによれば、各構成ユニットが明確に機能分離されたグラフトポリマーの作用により、高い画像濃度とインクの保存安定性を損なうことなく、画像に高度な耐擦過性及び耐マーカー性を付与することができる。
Figure 2011025469
(一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rはエステル結合又はエーテル結合であり、xは1又は2の整数である。ただし、Rがメチル基の場合、Rがエーテル結合となることはない。)
本発明で使用するグラフトポリマーを構成する各ユニットの機能はそれぞれ以下の通りである。先ず、ポリシロキサン構造を有するユニットは、画像表面に素早く配向し、かつ、画像に高度な耐擦過性と耐マーカー性を付与する。また、カルボキシル基を有するユニットは、インクを構成する水性媒体へのグラフトポリマーの溶解性を向上する。さらに、上記一般式(I)で表されるノニオン性ユニットは、反応性物質との相互作用(凝集反応)によるグラフトポリマーの不溶化を抑制する。上述の通り、これらのユニットがそれぞれ別々に樹脂として存在しても、本発明の全ての効果を同時に満足することはできず、これらのユニットをともに有するグラフトポリマーの形態とすることが特に重要である。
<顔料インクと反応液とのセット>
以下、本発明のインクと反応液とのセットについて詳細に説明する。
[顔料インク]
以下、本発明のインクと反応液とのセットを構成する顔料インク(以下、インクと省略して呼ぶことがある)について、該インクを構成する各成分などについて詳細に説明する。
(グラフトポリマー)
本発明で使用するインクに用いるグラフトポリマーは、少なくとも、上記一般式(I)で表されるノニオン性ユニット、ポリシロキサン構造を有するユニット及びカルボキシル基を有するユニットを有するものである。なお、本発明において、「ユニット」と記載した場合には、ユニットを構成する繰り返し単位が1つ又は複数の場合のどちらも含むものとする。
また、本発明におけるグラフトポリマーとは、「一本の幹ポリマー(主鎖)に枝ポリマー(側鎖)が結合した構造を有するポリマー」のことである。そして、あるポリマーの構造がグラフトポリマーとなっているか否かを判別する方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーと多角度光散乱検出器とを組み合わせて、絶対分子量と分子サイズを測定することにより、あるポリマーの構造がグラフトポリマーとなっていることを判別することができる。具体的には、これらの方法により測定される絶対分子量と分子サイズの測定値が乖離すればするほど、そのポリマーは、分岐度が高いことを示しており、グラフトポリマーの形態をとっていると判断することができる。
本発明で用いるグラフトポリマーは、各ユニットの機能がそれぞれ効率よく発揮されるようにするため、その分子中において、明確に機能分離した構造のものであることが好ましい。具体的には、これらのユニットの機能分離をより明確にするために、上記グラフトポリマーは、主鎖にカルボキシル基を有するユニットが含まれ、側鎖に上記ノニオン性ユニット及びポリシロキサン構造を有するユニットが含まれた構造であることが好ましい。また、上記ノニオン性ユニットとして、高分子量のユニットではなく低分子量のユニットを用いることが好ましい。具体的には、上記ノニオン性ユニットの分子量が、重量平均分子量で、70〜190の範囲であることが好ましい。この場合、主鎖に上記ノニオン性ユニットをまんべんなく配置させること、つまりは、主鎖から分岐する上記ノニオン性ユニットを非局在化させることが可能となり、本発明の効果を得るのに特に有効である。
本発明において、インク中における上記グラフトポリマーの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下、さらには0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
さらに、本発明者らの検討によると、適切な量のインクが記録媒体に付与され、上記グラフトポリマーが画像表面に多く配向することが、画像の耐擦過性及び耐マーカー性を向上させるうえで重要であることがわかった。そして、適切な量のインクが記録媒体に付与されるようにするために、本発明においては、上記グラフトポリマーの重量平均分子量を5,000以上50,000以下の範囲とすることが好ましい。重量平均分子量が50,000より大きいと、インクの粘度が高くなるため、十分な吐出安定性が得られず、適切な量のインクを記録媒体に付与することができずに、画像の耐擦過性及び耐マーカー性が十分に得られない場合がある。また、重量平均分子量が50,000より大きいと、インクの流動性が低くなり、画像表面へのグラフトポリマーの配向が起こりにくくなり、画像の耐擦過性及び耐マーカー性が十分に得られない場合がある。一方、重量平均分子量が5,000未満であると、インクを構成する水性媒体と共に上記グラフトポリマーも記録媒体の内部に浸透するようになり、バインダーとしての作用が生じず、画像の耐擦過性及び耐マーカー性が十分に得られない場合がある。
また、本発明において、グラフトポリマーの酸価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることが好ましい。本発明者らの検討によると、酸価が150mgKOH/gより大きいと、以下のような課題が生じる場合がある。すなわち、インクの粘度が高くなるため、吐出安定性が十分に得られず、適切な量のインクを記録媒体に付与することができずに、画像の耐擦過性及び耐マーカー性が十分に得られない場合がある。一方、酸価が80mgKOH/g未満であると、上記グラフトポリマーの水溶性が低くなるため、インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。さらに、酸価が80mgKOH/g未満である上記グラフトポリマーを含有するインクを熱エネルギーを利用したインクジェット記録方法により吐出させる際に、吐出安定性を維持することが難しい場合がある。
さらに、本発明においては、インク中における、顔料の含有量(質量%)が、上記グラフトポリマーの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.2倍以上2.0倍以下であることが好ましい。すなわち、(顔料の含有量/上記グラフトポリマーの含有量)=0.2倍以上2.0倍以下であることが好ましい。なお、本発明において、顔料及び上記グラフトポリマーの含有量とは、それぞれ、インク全質量中における各成分の含有量のことである。上記の質量比率が0.2倍未満であると、画像の耐擦過性及び耐マーカー性が十分に得られない場合がある。この理由は、下記のように考えられる。上記の質量比率が0.2倍未満であると、顔料に対して、上記グラフトポリマーの量が多くなることから、画像表面だけでなく、画像を構成する顔料層の内部にまで上記グラフトポリマーが存在するようになるおそれがある。この場合には、画像を形成している顔料の粒子間にも上記グラフトポリマーが存在するようになり、顔料の凝集物同士が滑りやすくなる結果、画像の耐擦過性及び耐マーカー性が十分に得られないことがある。一方、前記質量比率が2.0倍を超えると、画像表面に配向する上記グラフトポリマーの量が減少するため、画像の耐擦過性及び耐マーカー性が十分に得られない場合がある。
以下、本発明に用いる上記グラフトポリマーを構成する各ユニットについてより詳細に説明する。
〔ノニオン性ユニット〕
本発明において、インクに使用する上記グラフトポリマーを構成するノニオン性ユニットは、下記一般式(I)で表される構造を有するものである。この構造のノニオン性ユニットは、エチレンオキサイド基の繰り返し単位の数が1又は2であり、片方の末端に重合性を持つ官能基を有する、下記一般式(I’)のモノマーが共重合されたものである。さらには、本発明に用いるグラフトポリマーは、下記一般式(I’)で表されるモノマーのビニル基又はビニリデン基がグラフトポリマーの主鎖の一部となり、エステル結合からRまでの部分が分岐して側鎖となる構造であることが好ましい。
Figure 2011025469
(一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rはエステル結合又はエーテル結合であり、xは1又は2の整数である。ただし、Rがメチル基の場合、Rがエーテル結合となることはない。)
Figure 2011025469
(一般式(I’)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rはエステル結合又はエーテル結合であり、xは1又は2の整数である。ただし、Rがメチル基の場合、Rがエーテル結合となることはない。)
本発明においては、上記一般式(I)で表されるノニオン性ユニットにおける、エチレンオキサイド基の繰り返し単位の数は1又は2である、すなわち、上記一般式(I)におけるxが1又は2であるものを用いることが必要である。上記一般式(I)におけるxが3以上であると、上記ノニオン性ユニットを主鎖に含む場合において、ノニオン性を有する部位が局在化して存在する傾向が大きくなり、上記グラフトポリマーの全体としての親水性が高くなるため、画像の耐マーカー性が得られない。また、上記のように、上記グラフトポリマーの全体としての親水性が高くなると、インク中で前記グラフトポリマーが界面活性剤のような作用を有するようになる。この場合、上記グラフトポリマーの記録媒体へのインクの浸透性が高くなって、画像濃度が得られず、また、画像の最表面に配向する上記グラフトポリマーの量が減少することとなり、十分な画像の耐擦過性を得ることはできない。
なお、グラフトポリマーに、一般式(I)で表されるノニオン性ユニットとは異なる構造の、エチレンオキサイド基を有するユニットをさらに含ませる場合には、該ユニットにおけるエチレンオキサイド基の繰り返し単位の数を1又は2とすることが好ましい。この理由は上記で説明した一般式(I)で表されるノニオン性ユニットの場合と同様に、画像の耐擦過性及び耐マーカー性、画像濃度が不十分となる場合があるからである。
また、本発明者らの検討によると、上記ノニオン性ユニットを有さずに、アニオン性ユニットとポリシロキサン構造を有するユニットを有するグラフトポリマーをインク中に含有させると、画像濃度が低下することがわかった。本発明者らは、この理由を以下のように推測している。上記ノニオン性ユニットを有さずに、アニオン性ユニットとポリシロキサン構造を有するユニットを有するグラフトポリマーを含有するインクを記録媒体に付与すると、以下のような現象が起こる。すなわち、記録媒体に付与された反応液中の反応性物質との相互作用(凝集反応)により、グラフトポリマーが急激に不溶化する。これにより、ポリシロキサン構造を有するユニットによる画像表面への配向作用が損なわれ、その結果、グラフトポリマーが複数の顔料間に取り込まれ、顔料の凝集を阻害し、記録媒体に顔料が浸透するため、画像濃度が得られなくなるものと考えられる。
上記一般式(I)で表されるノニオン性ユニットとしては、具体的には、(メタ)アクリレート系モノマーが共重合されたものが挙げられる。また、本発明に用いる上記グラフトポリマーにおいて、上記ノニオン性ユニットは、1種又は2種以上を組み合わせて構成させてもよい。
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、メトキシジエチレングリコール−モノメタクリレート、メトキシジエチレングリコール−モノアクリレートなどが挙げられる。本発明においては、これらのモノマーの中でも特に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコール−モノメタクリレートを用いることが好ましい。このような(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、ブレンマー:PE−90、AE−90、PME−100(以上、日油製)、BHEA、HEMA(以上、日本触媒製)などの市販品を用いることができる。
ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。このようなビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、HEVE、DEGV(以上、丸善石油化学製)などの市販品を用いることができる。
本発明において、これらのモノマーの中では、特に、エチレンオキサイドの繰り返し数が2の構造を有するもの、つまり、ジエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシジエチレングリコール−モノメタクリレートが好ましい。
本発明においては、上記グラフトポリマーの全質量を基準とした、上記一般式(I)で表されるノニオン性ユニットの占める割合が、5.0質量%以上45.0質量%以下であることが好ましい。この割合が5.0質量%未満であると、インクと反応液が接触した後にグラフトポリマーが急激に不溶化し、上記と同様の理由により画像濃度が十分に得られない場合がある。一方、この割合が45.0質量%より大きいと、画像の耐擦過性及び耐マーカー性、画像濃度が十分に得られない場合がある。これは、上記の割合が45.0質量%より大きいと、上記グラフトポリマーの親水性が高くなり、インク中において、上記グラフトポリマーが安定して存在するようになる。その結果、上記グラフトポリマーが記録媒体中に浸透しやすくなり、画像表面に配向する上記グラフトポリマーの量が減少する場合があるためである。
〔ポリシロキサン構造を有するユニット〕
本発明において、インクに使用する上記グラフトポリマーを構成するポリシロキサン構造を有するユニットとしては、ポリシロキサン構造を有するユニットであればいずれのものであってもよい。本発明においては、ポリシロキサン構造を有するユニットの中でも、下記一般式(V)で表されるユニットを用いることが特に好ましい。この一般式(V)で表されるユニットは、下記一般式(V’)で表されるモノマーが共重合されたものである。また、本発明に用いる上記グラフトポリマーにおいて、ポリシロキサン構造を有するユニットは、1種又は2種以上を組み合わせて構成させてもよい。
Figure 2011025469
(一般式(V)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1乃至6のアルキレン基であり、R10はそれぞれ独立にメチル基又はフェニル基であり、R11は炭素数1乃至6のアルキル基、又はフェニル基であり、mは1乃至150の整数である。)
Figure 2011025469
(一般式(V’)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1乃至6のアルキレン基であり、R10はそれぞれ独立にメチル基又はフェニル基であり、R11は炭素数1乃至6のアルキル基、又はフェニル基であり、mは1乃至150の整数である。)
また、本発明において、上記一般式(V’)で表されるモノマーとしては、例えば、サイラプレーンFM−0711、FM−0721、FM−0725(以上、チッソ製)などの市販品を用いることができる。
本発明においては、上記グラフトポリマーの全質量を基準とした、上記ポリシロキサン構造を有するユニットが占める割合が、10.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましい。この割合が10.0質量%未満であると、インク中の上記グラフトポリマーの含有量に関わらず、画像表面に配向する上記グラフトポリマーの量が減少してしまい、画像の耐擦過性及び耐マーカー性が十分に得られない場合がある。上記の割合が40.0質量%より大きいと、画像の耐擦過性及び耐マーカー性が十分に得られない場合がある。これは、上記とは逆に、インク中における、上記グラフトポリマーの量が多くなるため、画像表面だけでなく、画像を構成する顔料層の内部にまで上記グラフトポリマーが存在するようになる場合があるためである。すなわち、顔料の粒子間にも上記グラフトポリマーが存在するようになり、顔料の凝集物同士が滑りやすくなる場合があるためである。
〔カルボキシル基を有するユニット〕
本発明において、インクに使用する上記グラフトポリマーを構成するカルボキシル基を有するユニットとしては、カルボキシル基を有するユニットであればいずれのものであってもよい。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸などのカルボキシル基を有するモノマーが共重合されたものが挙げられる。本発明においては、カルボキシル基を有するユニットの中でも、アクリル酸及びメタクリル酸が共重合されたユニットを用いることが特に好ましい。また、本発明に用いる上記グラフトポリマーにおいて、カルボキシル基を有するユニットは、1種又は2種以上を組み合わせて構成させてもよい。なお、上記で説明したグラフトポリマーの酸価は、グラフトポリマーに含まれるカルボキシル基を有するユニットの占める割合を適宜に設定することにより調節することができる。具体的には、グラフトポリマーの酸価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下となるように、カルボキシル基を有するユニットが占める割合を設定すればよい。
〔その他のユニット〕
本発明において、インクに使用する上記グラフトポリマーは、上述した、下記一般式(I)で表されるノニオン性ユニット、ポリシロキサン構造を有するユニット及びカルボキシル基を有するユニットを少なくとも有することが必要である。また、インクに用いる上記グラフトポリマーはこれらのユニットの他に、その他のユニットをさらに有してもよい。本発明においては、上記グラフトポリマーの主鎖にその他のユニットが含まれる構造、すなわち、その他のユニットが側鎖に含まれないようにすることが特に好ましい。
その他のユニットとしては、カルボキシル基を有するモノマーのエステル化合物、スルホン酸やリン酸などの不飽和酸モノマー及びこれらの誘導体(無水物、塩、エステル化合物)などのモノマーが共重合されたユニットが挙げられる。具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル、スチレンスルホン酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホ酸などの不飽和酸モノマー及びこれらの誘導体(無水物、塩、エステル化合物)、より具体的には、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル、ビニルホスフェート、ビス(メタアクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルが好ましい。なお、インクジェット用のインクの色材として多用される顔料はアニオン性のポリマー分散剤で分散されたものであることが多い。このような顔料を含有するインクの安定性を考慮すると、グラフトポリマーを構成するユニットとしては、前記ポリマーと反応を生じ得るカチオン性モノマーに由来するユニットが含まれないことが好ましい。
(その他のポリマー)
本発明のインクには、上記グラフトポリマーとは異なるポリマーを1種又は2種以上含有させることができる。このようなポリマーは、顔料をインク中に分散させるための分散剤として、または、その他の目的のために必要に応じてインクに含有させるものであり、水溶性を有するポリマーであればどのようなものでも用いることができる。
具体的には、以下に挙げるようなモノマーやそれらの誘導体などから選ばれる少なくとも2つのモノマー(このうち少なくとも1つは親水性モノマー)から合成された、ブロック、ランダム、グラフトなどの形態の共重合体やその塩などが挙げられる。モノマーとしては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステルなど。アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミドなど。また、ロジン、シェラック、デンプンなどの天然樹脂を好ましく使用することができる。また、顔料をインク中に分散させるための樹脂は、アルカリ可溶型の樹脂であることが好ましい。
上記樹脂(分散剤)は、その重量平均分子量が、1,000以上30,000以下、さらには3,000以上15,000以下のものであることが好ましい。また、インク中の上記樹脂(分散剤)の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
(水溶性有機化合物)
本発明で使用するインクには、上記で説明したグラフトポリマーに加えて、さらに、下記一般式(II)、下記一般式(III)、及び、下記一般式(IV)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性有機化合物を含有させることが好ましい。なお、以下の記載においては、下記一般式(II)、下記一般式(III)、及び、下記一般式(IV)で表される化合物からなる群の水溶性有機化合物を、「特定の水溶性有機化合物」と省略して呼ぶことがある。
Figure 2011025469
(一般式(II)中、Rは置換基を有してもよい炭素数2乃至5のアルキレン基であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1乃至4のアルキル基である。また、一般式(III)中、Rは置換基を有してもよい炭素数2乃至5のアルキレン基であり、Rは水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1乃至4のアルキル基である。また、一般式(IV)中、nは1乃至3の数である。)
ここで、インク中に、本発明で必須とする前述した上記グラフトポリマーに加えて、さらに、上記特定の水溶性有機化合物を含有させることが好ましい理由について説明する。先ず、本発明の効果を得るためには、先に述べたように、適切な量のインクが記録媒体に付与され、上記グラフトポリマーが画像表面に多く配向することが重要である。また、インクに用いる上記グラフトポリマーを構成する上記ノニオン性ユニット及びカルボキシル基を有するユニットは親水性が高く、また、ポリシロキサン構造を有するユニットは親油性が高い。このため、インク中においては、複数の上記グラフトポリマー分子が会合体を形成している状態であると考えられる。そして、このような状態の上記グラフトポリマーを含有するインクが記録媒体に付与された際に、本発明の効果を特に特に顕著に向上させるためには、画像表面に配向する上記グラフトポリマーの量をより増やすことが好ましい。
そこで、本発明者らが検討を行った結果、上記グラフトポリマーと上記特定の水溶性有機化合物とを含有する構成のインクとすることにより、本発明の効果を特に顕著に向上させることができることがわかった。かかる構成のインク中においては、上記グラフトポリマー分子の会合体がほどかれた状態となる。ここで、含窒素複素環化合物である上記一般式(II)や上記一般式(III)で表される化合物は、親水性ユニットと親油性ユニットを有するグラフトポリマーに対する親和性が高いため、インク中で上記グラフトポリマー分子の会合体をほどく作用を有している。また、1,2−アルカンジオールである一般式(IV)で表される化合物は、親水性の部分と親油性の部分とが明確に分かれた分子構造であるため、界面活性剤のような働きをし、インク中で上記グラフトポリマー分子の会合体をほどく作用を有している。つまり、このようなメカニズムにより、この構成のインクを記録媒体に付与した際には、会合体を形成していない上記グラフトポリマー分子が画像表面に効率的に均一に配向されるようになるため、本発明の効果を特に顕著に向上させると考えられる。
なお、インク中において、上記グラフトポリマー分子の会合体がほどかれた状態にあることは、インクの動的表面張力を測定することにより確認することができる。例えば、上記グラフトポリマーと共に、上記特定の水溶性有機化合物を含有させたインクと、上記特定の水溶性有機化合物を含有させていないインクとについて、ある寿命時間における動的表面張力をそれぞれ測定する。このとき、上記特定の水溶性有機化合物を含有させたために、上記グラフトポリマー分子の会合体を形成していないインクは、上記特定の水溶性有機化合物を含有させていないインクと比較して、ある寿命時間における動的表面張力の値が低くなる。これは、上記グラフトポリマー分子の会合体がほどかれた状態のインクでは、該グラフトポリマー分子が界面に相対的に多く配向するようになるため、インクの動的表面張力が下がるからである。つまり、これらのインクの動的表面張力の値を比較して、上記特定の水溶性有機化合物を含有させたインクの動的表面張力の値が低ければ、インク中で上記グラフトポリマー分子の会合体がほどかれた状態にあるといえる。なお、動的表面張力を測定する装置としては、例えば、Bubble Pressure Tensiometer BP2(KRUSS製)などを用いることができる。
一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物は含窒素複素環化合物であり、具体的には、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、エチレン尿素などが挙げられる。また、一般式(IV)で表される化合物は1,2−アルカンジオールであり、具体的には、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールが挙げられる。これらの化合物の中でも、特に、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレン尿素、及び1,2−ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
本発明においては、インク中における、上記一般式(II)、上記一般式(III)、及び上記一般式(IV)で表される化合物の合計含有量(質量%)が、上記グラフトポリマーの含有量(質量%)に対する質量比率で、2.0倍以上であることが好ましい。すなわち、(上記特定の水溶性有機化合物の合計含有量/上記グラフトポリマーの含有量)=2.0倍以上であることが好ましい。なお、上記特定の水溶性有機化合物及び上記グラフトポリマーの含有量とは、それぞれ、インク全質量中における各成分の含有量のことである。一方、この質量比率が2.0倍未満であると、インク中において、上記特定の水溶性有機化合物の含有量が少なくなり、上記グラフトポリマー分子の会合体を十分にほどくことができず、本発明の効果を特に顕著に向上できない場合がある。また、上記の質量比率の上限は、8.0倍以下であることが好ましい。上記質量比率の上限が8.0倍より大きいと、インクの粘度が高くなるため吐出安定性が十分に得られず、したがって適切な量のインクを記録媒体に付与することができない場合があり、本発明の効果を特に顕著に向上させることができない場合がある。
また、本発明においては、インク中の上記一般式(II)、上記一般式(III)、及び上記一般式(IV)で表される化合物の合計含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、2.0質量%以上であることが好ましい。この含有量が2.0質量%未満であると、インク中における上記特定の水溶性有機化合物の含有量が少なくなり、上記グラフトポリマー分子の会合体を十分にほどくことができず、本発明の効果を特に顕著に向上させることができない場合がある。また、上記特定の水溶性有機化合物の含有量の上限は、20.0質量%以下であることが好ましい。前記含有量の上限が20.0質量%より大きいと、インクの粘度が高くなるため吐出安定性が十分に得られず、したがって適切な量のインクを記録媒体に付与することができない場合があり、本発明の効果を特に顕著に向上させることができない場合がある。
(顔料)
本発明で使用するインクには、分散剤を用いて顔料を分散する樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)を用いることができる。また、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基を化学的に結合させた顔料(樹脂結合型自己分散顔料)、顔料の分散性を高めて分散剤などを用いることなく分散可能としたマイクロカプセル型顔料なども用いることができる。勿論、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて用いてもよい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクにおいて使用することができる顔料は特に限定されず、従来公知の無機顔料や有機顔料をいずれも用いることができるが、本発明においては有機顔料を用いることが特に好ましい。
(水性媒体)
本発明で使用するインクには、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。なお、この水溶性有機溶剤の含有量は、上記で説明した特定の水溶性有機化合物を含む含有量である。水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、インクジェット用のインクに一般的に用いられる公知のものをいずれも使用することができる。また、1種又は2種以上の水溶性有機溶剤を用いることができる。水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明で使用するインクには、上記成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの保湿性固形分を含有させてもよい。インク中の保湿性固形分の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下、さらには3.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
さらに、本発明のインクには、必要に応じて所望の物性値を有するインクとするために、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
[反応液]
以下、本発明のインクと反応液とのセットを構成する反応液について、該反応液を構成する各成分などについて詳細に説明する。
(反応性物質)
反応液は、インク中の顔料の分散状態を不安定化させ、顔料を凝集させる作用を有するものであり、具体的には反応性物質、好適には多価金属塩やカチオン性ポリマーなどのカチオン性化合物を含有させる。本発明において、反応液中における反応性物質の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、5.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。含有量が5.0質量%未満であると、反応性が不足し、十分な画像濃度が得られない場合があり、20.0質量%を超えると、反応液の保存安定性や吐出安定性が十分煮えられない場合がある。なお、反応液中においては、反応性成分の種類によっては、その少なくとも一部はイオンに解離して存在する場合があるが、本発明においては便宜上、塩を含有すると表現する。
多価金属塩は2価以上の多価金属イオンと、これに結合する陰イオンとで構成され、水に可溶なモノであることが好ましい。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+、Fe2+、Zr2+などの2価金属イオン、Al3+、Fe3+、Cr3+、Zr3+、Zr4+などの3価以上の金属イオンが挙げられる。また、陰イオンとしては、Cl、NO 、I、Br、ClO 、CHCOO、F、SO 2−、SO 2−などが挙げられる。また、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリアリルアミン、ポリアミンスルホン酸塩、ポリアリルアミン塩酸塩等が挙げられる。また、本発明に用いる反応液において、反応性成分は1種又は2種以上を組み合わせて含有させてもよい。
(反応液のその他の成分)
本発明で使用する反応液を構成する、上記で説明した反応性物質以外の成分は、顔料インクに含有させることができるものとして記載した水性媒体(水や水溶性有機溶剤)や添加剤と同様のものを用いることができる。反応液中における水の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、反応液中における水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
<インクジェット記録方法、インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のセットを構成するインク及び反応液をインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法である。本発明においては、反応液を記録媒体に付与した後に、顔料インクを記録媒体に付与して記録を行うことが好ましい。特には、顔料インクが付与される記録媒体の領域を少なくとも含むように、反応液を記録媒体に付与することが好ましい。また、本発明のインクジェット記録装置は、で説明した本発明のセットを構成するインク及び反応液をそれぞれ収容する複数の液体収容部と、顔料インク及び反応液を吐出するインクジェット方式の記録ヘッドとを備えてなるインクジェット記録装置である。本発明の記録方法及び記録装置は、上記で説明した本発明のセットを適用すること以外は、従来公知の構成をいずれも適用できるが、特には熱エネルギーの作用により液体を吐出する記録方式に適用することが好ましい。
以下、実施例、及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
<グラフトポリマーの合成>
以下の手順にしたがって、グラフトポリマー1〜23をそれぞれ合成した。なお、合成方法としては公知の重合方法を用いることができる。本実施例においては、グラフトポリマー1〜13は、以下の重合方法を用いてそれぞれ合成した。先ず、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたフラスコに、下記表1及び2の上段に示す組成(単位:部)の各モノマー、アゾビスイソブチロニトリル4.0部、及び溶媒として1−メトキシ−2−プロパノール500部を仕込んだ。そして、窒素ガス還流下、温度110℃で4時間重合反応を行った。このようにして得られた共重合体を含む溶液を減圧乾燥させて、共重合体を得た。得られた共重合体に、溶媒としてメチルエチルケトン25部を加えて溶解させた後、30%の水酸化カリウム水溶液2部を加えて共重合体の塩生成基の一部を中和し、さらにイオン交換水300部を加えて撹拌した。その後、減圧下、温度60℃で溶媒を除去し、さらに水の一部を除去することにより濃縮して、固形分濃度が20.0%の、グラフトポリマーの水溶液を得た。このようにしてそれぞれ得られたグラフトポリマー1〜23について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所製)と多角度光散乱検出器(昭工通商製)とを組み合わせて絶対分子量と分子サイズを測定した。その結果、絶対分子量と分子サイズの測定値は大きく乖離しており、グラフトポリマーの構造を有するものであることが確認できた。
なお、下記表1及び2中、(*1)〜(*5)はそれぞれ以下のモノマーを示す。
(*1):サイラプレーンFM−0711(チッソ製;前記一般式(V’)に示されるポリシロキサン構造を有するモノマー、数平均分子量約1,000)
(*2):BHEA(製品名:日本触媒製;前記一般式(I’)におけるR及びRが水素原子、Rがエステル結合、xが1であるノニオン性モノマー)
(*3):HEMA(製品名:日本触媒製;前記一般式(I’)におけるRが水素原子、Rがメチル基、Rがエステル結合、xが1であるノニオン性モノマー)
(*4):ブレンマーPME−100(製品名:日油製;前記一般式(I’)におけるR及びRがメチル基、Rがエステル結合、xが2であるノニオン性モノマー)
(*5):ブレンマーPME−200(製品名:日油製;前記一般式(I’)におけるR及びRがメチル基、Rがエステル結合、xが約4であるノニオン性モノマー)
Figure 2011025469
Figure 2011025469
<顔料分散液の調製>
カーボンブラック10部、グリセリン6部、樹脂(分散剤)10部、及び水74部を、0.6mm径のジルコニアビーズの充填率を70%としたサンドミル(金田理化工業製)に仕込み、1,500rpmで5時間分散した。前記カーボンブラックとしては、比表面積が220m/g、DBP吸油量が130ml/100gのものを用いた。また、前記樹脂としては、スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸の共重合比(質量比)が58:25:17、重量平均分子量が4,000、酸価が130mgKOH/gのランダム共重合体を用いた。なお、前記樹脂は、予め、上記の酸価と当量の水酸化カリウムと水を加えて温度80℃で撹拌し、水溶液としたものを用いた。その後、5,000rpmにて10分間遠心分離を行って凝集成分を除去し、さらに、顔料の含有量が2.5%、樹脂の含有量が2.5%となるように水を用いて濃度を調整し、顔料分散液を得た。
<インクの調製>
下記表3及び4に示す組成で、各成分を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズが1.2μmのポリプロピレンフィルター(ポール製)にて加圧ろ過を行い、実施例及び比較例のインクをそれぞれ調製した。なお、下記表3及び4中、グラフトポリマーは固形分としての含有量の値で示した。また、下記表3及び4中、(*1)は界面活性剤(川研ファインケミカル製)を示し、(*2)は平均分子量600のポリエチレングリコールを示す。また、「特定の水溶性有機化合物」とは、前記一般式(II)、前記一般式(III)、及び、前記一般式(IV)で表される化合物からなる群の水溶性有機化合物のことを示す。また、下記表3及び4中、「特定のグラフトポリマー」とは、本発明に用いるグラフトポリマーのことを示し、本実施例においては、グラフトポリマー1〜10のことを示す。
Figure 2011025469
Figure 2011025469
<反応液の調製>
下記に示す組成で、各成分を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズが1.2μmのポリプロピレンフィルター(ポール製)にて加圧ろ過を行い、反応液1を調製した。
・硝酸カルシウム・4水和物:4.0部
・グリセリン:15.0部
・ポリエチレングリコール(平均分子量600):5.0部
・アセチレノールE100(界面活性剤;川研ファインケミカル製):0.5部
・純水:75.5部
<評価>
(インクの保存安定性の評価)
180ccのテフロン(登録商標)製の容器に各インクを100g入れ、密閉状態で60℃オーブンにて1ヶ月放置した前後のインク中の粒子の平均粒径d50及びインク粘度)を測定した。平均粒径は動的光散乱方式粒度分布測定装置(UPA−150EX;日機装製)を用いて、Set zero:60s、測定時間:120s、測定回数:3回、顔料の屈折率:1.8の条件で測定した。また、粘度はE型粘度計(RE80L;東洋精機製)を用いて、回転数:20rpm、測定温度:25℃、測定回数:3回の条件で測定した。そして、保存前後の平均粒径及び粘度の変化率を求め、保存安定性の評価を行った。インクの保存安定性の評価基準は以下の通りである。結果を表5に示す。
AA:両項目で変化率が10%未満である。
A:両項目で変化率が15%未満である。
B:d50及び粘度のいずれかが変化率15%以上である。
C:両項目で変化率15%以上である。
(画像評価に用いる記録物の作成)
上記で得られた各インク及び反応液をそれぞれインクカートリッジに充填し、インクジェット記録装置BJF900(キヤノン製)にセットした。そして、記録媒体(PPC用紙オフィスプランナー;キヤノン製)に、反応液が先、インクが後に付与されるように、1パス片方向記録でベタ画像を形成して記録物を作成した。この際、反応液の付与量は5.0g/m、インクの付与量は9.5g/mとした。
(画像濃度の評価)
上記で得られた画像を1日間室温で放置した後、ベタ画像の画像濃度を反射式色濃度計(RD915:マクベス製)を用いて測定し、画像濃度の評価を行った。画像濃度の評価基準は以下の通りである。結果を表5に示す。
AA:画像濃度が1.45以上である。
A:画像濃度が1.35以上1.45未満である。
B:画像濃度が1.25以上1.35未満である。
C:画像濃度が1.25未満である。
(画像の耐擦過性の評価)
上記で得られた画像を10分間室温で放置した後、ベタ画像を指で擦り、非記録部分へのインクの転写の程度を目視で確認して、画像の耐擦過性の評価を行った。耐擦過性の評価基準は以下の通りである。結果を表5に示す。
AA:インクの転写がまったくない。
A:インクの転写がほとんどない。
B:インクの転写が多少ある。
C:インクの転写がひどい。
(画像の耐マーカー性の評価)
上記で得られた画像を10分間室温で放置した後、ベタ画像上にマーカーペン(製品名:OPTEX;ゼブラ製)でラインを引き、非記録部分へのインクの転写の程度を目視で確認して、画像の耐マーカー性の評価を行った。耐マーカー性の評価基準は上記の耐擦過性の評価基準と同じである。結果を表5に示す。
Figure 2011025469

Claims (10)

  1. 顔料と樹脂を少なくとも含有する顔料インクと、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性物質を含有する反応液とのセットであって、
    前記顔料インクが、下記一般式(I)で表されるノニオン性ユニット、ポリシロキサン構造を有するユニット及びカルボキシル基を有するユニットを含むグラフトポリマーを含有することを特徴とするインクと反応液とのセット。
    Figure 2011025469

    (一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rはエステル結合又はエーテル結合であり、xは1又は2の整数である。ただし、Rがメチル基の場合、Rがエーテル結合となることはない。)
  2. 前記グラフトポリマーの重量平均分子量が、5,000以上50,000以下である請求項1に記載のセット。
  3. 前記グラフトポリマーの全質量を基準とした、前記ポリシロキサン構造を有するユニットの占める割合が、10.0質量%以上40.0質量%以下である請求項1又は2に記載のセット。
  4. 前記グラフトポリマーの全質量を基準とした、前記一般式(I)で表されるノニオン性ユニットの占める割合が、5.0質量%以上45.0質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセット。
  5. 前記グラフトポリマーの酸価が、80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセット。
  6. 前記顔料インクがさらに、下記一般式(II)、下記一般式(III)、及び下記一般式(IV)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性有機化合物を含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のセット。
    Figure 2011025469

    (一般式(II)中、Rは置換基を有してもよい炭素数2乃至5のアルキレン基であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1乃至4のアルキル基である。また、一般式(III)中、Rは置換基を有してもよい炭素数2乃至5のアルキレン基であり、Rは水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1乃至4のアルキル基である。また、一般式(IV)中、nは1乃至3の数である。)
  7. 前記反応性物質が、カチオン性化合物である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセット
  8. 顔料インク及び反応液をインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、
    前記顔料インク及び反応液として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のセットを構成する顔料インク及び反応液を用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
  9. 前記反応液を記録媒体に付与した後に、前記顔料インクを記録媒体に付与して記録を行う請求項8に記載のインクジェット記録方法。
  10. 顔料インク及び反応液をそれぞれ収容する複数の液体収容部と、顔料インク及び反応液を吐出するインクジェット方式の記録ヘッドとを備えてなるインクジェット記録装置であって、
    前記複数の液体収容部にそれぞれ収容されている前記顔料インク及び前記反応液が、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のセットを構成する顔料インク及び反応液であることを特徴とするインクジェット記録装置。
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JP2015227460A (ja) * 2015-07-09 2015-12-17 ブラザー工業株式会社 インクジェット記録用水性インクセット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置

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