JP7363630B2 - プリプレグ積層体、繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法 - Google Patents

プリプレグ積層体、繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7363630B2
JP7363630B2 JP2020055301A JP2020055301A JP7363630B2 JP 7363630 B2 JP7363630 B2 JP 7363630B2 JP 2020055301 A JP2020055301 A JP 2020055301A JP 2020055301 A JP2020055301 A JP 2020055301A JP 7363630 B2 JP7363630 B2 JP 7363630B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
prepreg
resin
reinforced composite
composite material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020055301A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021155513A (ja
Inventor
和洋 畑中
隆行 金子
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP2020055301A priority Critical patent/JP7363630B2/ja
Publication of JP2021155513A publication Critical patent/JP2021155513A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7363630B2 publication Critical patent/JP7363630B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、優れた意匠面を備えた繊維強化複合材料と繊維強化複合材料の製造方法、およびそれに好適に用いられるプリプレグ積層体に関するものである。
繊維強化複合材料は、強度、剛性および導電性等に優れていることから有用であり、航空機構造部材、風車の羽根、自動車の外装材、自動車の内装材およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開され、その需要は年々増加しつつある。
繊維強化複合材料は、強化繊維と樹脂を必須の構成要素とするプリプレグを成形してなる材料であり、その場合、成形前や成形中にプリプレグの樹脂部分に空気や揮発成分が残存していると得られる繊維強化複合材料は表面にピンホールや内部にボイドが発生することが知られている。そのため、プリプレグから得られる繊維強化複合材料の表面のピンホールや内部のボイドを低減させることを目的に、種々の技術が提案されている。また、プリプレグの賦形性や成形ロバスト性を向上させることを目的にも、種々の技術が提案されている。
その中の一つに、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグと、樹脂が未含浸の基材を積層したプリプレグ積層体から繊維強化複合材料を成形することが提案されている(特許文献1参照)。この技術では、繊維強化複合材料に優れた意匠面を提供することが提案されている。また別に、樹脂組成物が含浸した強化繊維を含む層を有するプリプレグで、プリプレグ中における樹脂組成物の含有率が所定の範囲内であり、複数の切込によって少なくとも一部が所定の繊維長さの強化繊維で構成され、三次元形状への賦形性に優れ、部材強度低下を引き起こすような成形欠陥を抑制する成形ロバスト性に優れたことを特徴としたプリプレグを与える技術が提案されている(特許文献2参照)。さらに、三軸織物と不織布を積層することで、繊維強化複合材料と同様の強度、弾性率及び高い比強度を有し、かつ金属材料に匹敵する導電性、絶縁性、熱伝導性、断熱性の少なくともいずれかを有する複合材料、成形物及びプリプレグを与える技術が提案されている(特許文献3参照)。
ところが、これらの技術では、繊維強化複合材料の優れた意匠面を備えること、プリプレグの賦形性、成形ロバスト性を向上させること、繊維強化複合材料の導電性、絶縁性、熱伝導性、断熱性の少なくともいずれかを向上させることはできるが、プリプレグの賦形性と繊維強化複合材料に優れた意匠面を備えることを両立する点については困難であった。
国際公開2018/079475号パンフレット 国際公開2016/043156号パンフレット 国際公開2002/018127号パンフレット
本発明の目的は、優れた意匠面を備えた炭素繊維強化複合材料と繊維強化複合材料の製造方法、およびそれに好適に用いられる賦形性に優れたプリプレグ積層体を提供することである。
本発明は、上記目的を達成するために次のいずれかの構成を有するものである。
本発明は、樹脂が含浸されていない繊維基材[b]の一方の表面に、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグであって、複数の切込によって少なくとも一部の前記強化繊維が繊維長さ(L)10~300mmの強化繊維で構成され、かつ、強化繊維の体積含有率Vfが45~65%の範囲内である切込プリプレグ[a]を1層または複数層積層させるとともに、前記繊維基材[b]の他方の表面に樹脂を連続繊維の強化繊維に含浸させたプリプレグ[c]を1層あるいは複数層積層させたサンドイッチ構造を有する、プリプレグ積層体である。
本発明のプリプレグ積層体の好ましい態様によれば、前記プリプレグ積層体の少なくとも一方の表面が意匠面であり、前記繊維基材[b]が前記意匠面側から2層目または3層目に積層された、プリプレグ積層体である。
本発明のプリプレグ積層体の好ましい態様によれば、前記切込プリプレグ[a]の厚さが30~300μmである、プリプレグ積層体である。
本発明のプリプレグ積層体の好ましい態様によれば、前記切込プリプレグ[a]を構成する前記強化繊維が炭素繊維であり、前記樹脂が熱硬化性樹脂である、プリプレグ積層体である。
本発明のプリプレグ積層体の好ましい態様によれば、前記繊維基材[b]が、炭素繊維またはガラス繊維を含み、前記炭素繊維またはガラス繊維が不連続であり、目付量が5~100g/mである、プリプレグ積層体である。
また、本発明の繊維強化複合材料は、前記プリプレグ積層体を用いて、前記切込プリプレグ[a]に由来する繊維強化複合材料層[A]と、前記切込プリプレグ[a]または前記プリプレグ[c]に含浸されていた樹脂を含有する前記繊維基材[b]に由来する繊維強化複合材料層[B]とを少なくとも含む、繊維強化複合材料である。
本発明の炭素繊維強化複合材料の好ましい態様によれば、前記繊維強化複合材料層[A]の繊維体積含有率VfA(%)と、前記繊維強化複合材料層[B]の繊維体積含有率VfB(%)とがVfA>VfBの関係を有する、繊維強化複合材料である。
また、本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、前記プリプレグ積層体を加熱しつつ前記プリプレグ積層体外部を加圧する成形工程を有する、繊維強化複合材料の製造方法である。
本発明の炭素繊維強化複合材料の製造方法の好ましい態様によれば、前記成形工程において、さらに前記プリプレグ積層体内部を-80kPa以下(ゲージ圧)の圧力で行う工程を含む、繊維強化複合材料の製造方法である。
本発明の炭素繊維強化複合材料の製造方法の好ましい態様によれば、前記成形工程において、前記切込プリプレグ[a]または前記プリプレグ[c]に含まれる樹脂を繊維基材[b]に含浸させる、繊維強化複合材料の製造方法である。
本発明によれば、切込プリプレグをプリプレグ積層体に積層することでプリプレグの賦形性に優れ、また成形して得られる繊維強化複合材料に優れた意匠面を備えることを両立することができる。
本発明の一実態形態にかかるプリプレグ積層体の模式図である。 本発明の別の一実態形態にかかるプリプレグ積層体の模式図である。 本発明の他の一実態形態にかかるプリプレグ積層体の模式図である。 本発明の切込プリプレグのカットパターンの一例を示す概念図である。
以下、実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は図や実施例に何ら限定されるものではない。
本発明に係るプリプレグ積層体は、図1に示すように、少なくとも強化繊維に樹脂を含浸させた切込プリプレグ[a]2、樹脂が含浸されていない繊維基材[b]3を積層させたプリプレグ積層体10であることが重要である。また、図2に示すように、樹脂が含浸されていない繊維基材[b]3の両側に、強化繊維に樹脂を含浸させた切込プリプレグ[a]2を積層させたサンドイッチ構造のプリプレグ積層体も好ましく用いられる。さらに、図3に示すように、樹脂が含浸されていない繊維基材[b]3の一方の表面に、強化繊維に樹脂を含浸させた切込プリプレグ[a]2を積層させるとともに、樹脂を連続繊維の強化繊維に含浸させたプリプレグ[c]4を積層させたサンドイッチ構造のプリプレグ積層体10も好ましく用いられる。
プリプレグ積層体10をプレス等により圧縮成形する際、プリプレグ[a]2あるいはプリプレグ[c]4に含浸されている樹脂が、繊維基材[b]3に移動し繊維間に含浸する。プリプレグ[a]2あるいはプリプレグ[c]4を積層することで、繊維基材[b]3へ十分な樹脂が含浸されることで、意匠面となるプリプレグ[a]2あるいはプリプレグ[c]4に含まれる樹脂とともに空気や揮発成分を繊維基材[b]3に移すことにより、優れた意匠面1を有する繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明に用いられる切込プリプレグ[a]2は、少なくとも強化繊維に樹脂を含浸させたものである。
切込プリプレグ[a]2に用いられる強化繊維としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維や、PAN系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維の炭素繊維や、黒鉛繊維や、ガラス繊維などの絶縁性繊維や、アラミド繊維、PBO繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維や、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維などの無機繊維が挙げられる。また、これらの繊維に表面処理が施されているものであってもよい。表面処理としては、導電体として金属の被着処理のほかに、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、結束剤による処理、添加剤の付着処理などがある。また、これらの強化繊維は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
中でも、軽量化効果の観点から、比強度、比剛性に優れるPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などの炭素繊維が好ましく用いられる。また、得られる積層体の経済性を高める観点からは、ガラス繊維が好ましく用いられ、とりわけ力学特性と経済性のバランスから炭素繊維とガラス繊維を併用することが好ましい。さらに、得られる積層体の衝撃吸収性や賦形性を高める観点からは、アラミド繊維が好ましく用いられ、とりわけ力学特性と衝撃吸収性のバランスから炭素繊維とアラミド繊維を併用することが好ましい。また、得られる積層体の導電性を高める観点からは、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。これらの中で、強度と弾性率などの力学的特性に優れるPAN系炭素繊維をより好ましく用いることができる。
切込プリプレグ[a]2に用いられる強化繊維は、強化繊維を一方向に引き揃えた一方向基材や、二方向織物、多軸織物、不織布材料、マット、編物、組紐等の形態を採用することができるが、いずれも強化繊維が連続した布帛状基材の形態として用いることが好ましい。強化繊維の形態は、用途や使用領域によってこれらを自由に選択することができる。中でも繊維が一方向に配列した一方向基材は、繊維のパッキングがよく効率的にVfを向上することができるため、力学特性を最も高く発現させることができることから好ましい。切込プリプレグ[a]2は、この連続繊維で構成された基材に繊維長さ(L)となるように切込を入れたものである。繊維長さ(L)については、少なくとも一部の繊維が10~300mmの強化繊維で構成されていることが重要である。強化繊維の繊維長さ(L)がこの範囲内にあることにより、成形時における面外方向への気体の脱気パス数を確保することと、ブリッジング抑制を効果的に実現することができる。Lを10mm以上にすると、切込同士の距離が離れるため、そのような切込プリプレグを用いて成形された繊維強化プラスチックに荷重が負荷された場合には、クラックが連結しにくく強度が高いものとなる。成形時における形状追従性、ボイド等の成形不具合の抑制効果と成形された繊維強化プラスチックの力学特性との関係を鑑みると、切込によって分断された強化繊維の繊維長さLのより好ましい範囲は10~100mmである。
また、切込プリプレグ[a]2の強化繊維の体積含有率Vfが45~65%の範囲内にあることが重要である。強化繊維の体積含有率Vfは65%以下とすることで切込部の強化繊維のずれがおき、ブリッジングを効果的に抑制し、形状追従性とボイド等の成形不具合の抑制効果を得ることができる。かかる観点からVfが60%以下であることがより好ましい。また、Vfは低いほどブリッジングは抑制できるが、Vfが45%より小さくなると、構造材に必要な高力学特性が得られにくくなる。かかる観点からVfが55%以上であることがより好ましい。なお、強化繊維の体積含有率Vfの測定は、実施例に記載の方法にてプリプレグを硬化した後、光学顕微鏡やレーザー顕微鏡による画像を処理することにより行うことができる。
また、切込プリプレグ[a]2に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂ともに好適に用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリイミド樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂などを好ましく用いることができる。これらは、2種以上をブレンドした樹脂などを適用しても良い。この中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂が積層体の力学特性、耐熱性の観点から好ましい。特に、エポキシ樹脂は、積層体の力学特性や、耐熱性に加え取扱性の観点からより好ましい。エポキシ樹脂は、その優れた力学特性を発現するために、使用する樹脂の主成分として含まれるのが好ましく、具体的には樹脂組成物当たり60重量%以上含まれることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、アミン類、フェノール類、炭素-炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物であればこれを用いることができる。硬化剤としては、アミノ基、酸無水物基およびアジド基を有する化合物が適している。硬化剤としては、より具体的には、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタンやジアミノジフェニルスルホンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で使用しても併用してもよい。
上記熱硬化性樹脂に、熱可塑性樹脂を溶解して用いることも好適である。このような熱可塑性樹脂としては、一般に、主鎖に、炭素-炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましいが、部分的に架橋構造を有していても差し支えない。また、結晶性を有していても非晶性であってもよい。特に、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂およびポリベンズイミダゾール樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂が、熱硬化性樹脂に溶解していることが好適である。
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、液晶ポリエステル等のポリエステル樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などのポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などのフッ素系樹脂、液晶ポリマー樹脂などの結晶性樹脂、ポリスチレン樹脂の他、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂などの非晶性樹脂、その他、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、更にポリスチレン樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリブタジエン樹脂系、ポリイソプレン樹脂系、フッ素系樹脂、およびポリアクリロニトリル樹脂系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体および変性体等から選ばれる熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、得られる積層体の軽量性の観点からはポリオレフィン樹脂が好ましく、強度の観点からはポリアミド樹脂が好ましく、表面外観の観点からポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
前記群に例示された熱可塑性樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、エラストマーあるいはゴム成分などの耐衝撃性向上剤、他の充填材や添加剤を含有しても良い。これらの例としては、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの樹脂にフィラーを添加して用いることもできる。フィラーとしては、連続した強化繊維、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、ガラスフレーク、カテキン、ゼオライト、シリカバルーン、ガラスバルーン、シラスバルーン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛、金属粉、金属箔、フェライト材料、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラスビーズ、アルミナ、酸化アンチモン、ハイドロタルサイト、赤燐、炭酸亜鉛、酸化カルシウムなどが挙げられる。中でも連続した強化繊維を含む中間基材が成形性の観点から好ましい。
切込プリプレグ[a]の厚さは、30~300μmの範囲内であることが好ましい。これにより、プリプレグ積層体10の成形性の向上と繊維強化複合材料の意匠性の両立を図ることができる。厚さが30μm未満の場合は、得られる繊維強化複合材料の意匠面にピンホールが多く出ることがあり、厚さが300μmを超える場合は、プリプレグに切込を入れる際に問題が出ることがある。
本発明に用いられる繊維基材[b]3は、樹脂を含浸されやすくするため、繊維から構成される基材である。
繊維基材[b]3に用いられる繊維としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維や、PAN系他炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維の炭素繊維や、黒鉛繊維や、ガラス繊維などの絶縁性繊維や、アラミド繊維、PBO繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維や、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維などの無機繊維が挙げられる。また、これらの繊維に表面処理が施されているものであってもよい。表面処理としては、導電体として金属の被着処理のほかに、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、結束剤による処理、添加剤の付着処理などがある。また、これらの強化繊維は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
中でも、軽量化効果の観点から、比強度、比剛性に優れるPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などの炭素繊維が好ましく用いられる。また、得られるプリプレグ積層体の経済性を高める観点からは、ガラス繊維が好ましく用いられ、とりわけ力学特性と経済性のバランスから炭素繊維とガラス繊維を併用することが好ましい。さらに、得られる積層体の衝撃吸収性や賦形性を高める観点からは、アラミド繊維が好ましく用いられ、とりわけ力学特性と衝撃吸収性のバランスから炭素繊維とアラミド繊維を併用することが好ましい。また、得られる積層体の導電性を高める観点からは、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。これらの中で、強度と弾性率などの力学的特性に優れるPAN系炭素繊維、得られる積層体の経済性を高める観点からはガラス繊維をより好ましく用いることができる。
繊維基材[b]の目付量は、5~100g/mの範囲内であることが好ましい。これにより、プリプレグ積層体10の成形性の向上と繊維強化複合材料の意匠性の両立を図ることができる。好ましくは、5~80g/m、さらに好ましくは、5~50g/mである。
目付量が5g/m未満の場合は、得られる繊維強化複合材料の意匠面1にピンホールが多くなることがあり、100g/mを超えると、得られる繊維強化複合材料の含浸性に問題が出ることがある。
繊維基材[b]3は、樹脂が含浸されていないものであればよく、形態としては、例えば、不織布、織物、編物、マットが挙げられ、樹脂の含浸性の点で不連続繊維であることが好ましい。
また、繊維基材[b]3の厚さは、0.1~1.5mmの範囲内であることが好ましい。これにより、繊維基材[b]3への含浸性と繊維強化複合材料の意匠性の両立を図ることができる。好ましくは0.1~1mm、より好ましくは0.1~0.5mmである。厚さが0.1mm未満の場合は、得られる繊維強化複合材料の意匠面にピンホールが多くなる場合があり、1.5mmを超えると得られる繊維強化複合材料の含浸性に問題が出る場合がある。
本発明に用いられる樹脂を連続繊維の強化繊維に含浸させたプリプレグ[c]は、少なくとも強化繊維と樹脂を含んでいるものであることが好ましい。
プリプレグ[c]に用いられる強化繊維としては、特に制限はなく、切込プリプレグ[a]に記載と同様の強化繊維が用いられる。
強化繊維の形態については、連続した形態であり、強化繊維が、一方向に引き揃えた長繊維、織物、トウおよびロービング等連続繊維の形態であることが好ましい。
また、プリプレグ[c]に用いられる樹脂としては特に制限はなく、切込プリプレグ[a]に記載と同様の樹脂を用いることができる。
プリプレグ積層体10は、プリプレグ積層体10の少なくとも一方の表面が意匠面1であり、繊維基材[b]3が意匠面1側の最外層から2層目または3層目に積層された構成とすることが好ましい。
意匠面1側の最外層から2層目に繊維基材[b]3を積層させた構成としては、図1に示すように、意匠面1から切込プリプレグ[a]2、次いで繊維基材[b]3を配置したプリプレグ積層体10とすることにより、意匠面1となる切込プリプレグ[a]2の空気や揮発成分を樹脂とともに繊維基材[b]3へ含浸するため、繊維強化複合材料の優れた意匠面を得られる点で好ましい。
また、プリプレグ積層体10の好ましい積層態様として、図2に示すように、意匠面1から切込プリプレグ[a]2b、次いで繊維基材[b]3、切込プリプレグ[a]2aを配置したプリプレグ積層体10とすることができる。このような積層構成とすることにより、積層工程が複雑でなく、また、意匠面1となる切込プリプレグ[a]2の空気や揮発成分を樹脂とともに繊維基材[b]3へ含浸するため、繊維強化複合材料の優れた意匠面1を得られる点で好ましい。切込プリプレグ[a]2aおよび切込プリプレグ[a]2bは複数枚を積層することも好ましい態様である。
さらに、プリプレグ積層体10の別の好ましい積層態様として、図3に示すように、プリプレグ積層体10にさらに切込プリプレグ[a]2、次いで繊維基材[b]3、プリプレグ[c]4を配置したプリプレグ積層体10も好ましく使用できる。切込プリプレグ[a]2およびプリプレグ[c]4は複数枚を積層することも好ましく使用できる。
本発明の繊維強化複合材料は、少なくとも樹脂を強化繊維に含浸させた切込プリプレグ[a]に由来する繊維強化複合材料層[A]と、前記切込プリプレグ[a]または前記プリプレグ[c]に含浸されていた樹脂を含有する繊維基材[b]に由来する繊維強化複合材料層[B]とを少なくとも含む繊維強化複合材料であることが好ましい。樹脂を連続繊維の強化繊維に含浸させたプリプレグ[c]を積層する場合、樹脂を連続繊維の強化繊維に含浸させたプリプレグ[c]からなる繊維強化複合材料層[C]を含ませることができる。
プリプレグ積層体10を構成する切込プリプレグ[a]2、繊維基材[b]3またはプリプレグ[c]4について複数層積層する場合、繊維種類、樹脂種類、繊維体積含有率、プリプレグの目付、強化繊維の目付、プリプレグの厚さ等の異なる切込プリプレグ[a]2、繊維基材[b]3またはプリプレグ[c]4を組み合わせて使用しても良い。その場合、繊維強化複合材料の力学特性や繊維強化複合材料の厚さ等に合わせてプリプレグ積層体10を設計することができる。
本発明に係る繊維強化複合材料のうち、切込プリプレグ[a]2に由来する繊維強化複合材料層[A]は、切込プリプレグ[a]2の樹脂を硬化あるいは固化させた繊維強化複合材料である。また、繊維基材[b]3に由来する繊維強化複合材料層[B]は、切込プリプレグ[a]2あるいはプリプレグ[c]4に含浸されていた樹脂を含有する繊維基材[b]3であり、含有させた樹脂を硬化あるいは固化させた繊維強化複合材料である。さらに、プリプレグ[c]4からなる繊維強化複合材料層[C]は、プリプレグ[c]4の樹脂を硬化あるいは固化させた繊維強化複合材料である。
本発明に係る繊維強化複合材料は、繊維強化複合材料層[A]の繊維体積含有率VfA(%)と、繊維強化複合材料層[B]の繊維体積含有率VfB(%)とがVfA>VfBの関係を有することが好ましい。具体的には、VfAが50%以上、VfBが50%以下であることが繊維強化複合材料の意匠性の点から好ましい。
さらに、繊維強化複合材料層[A]の繊維体積含有率VfAとしては、それぞれ55%以上90%以下であることが繊維強化複合材料の力学特性と意匠性の観点から好ましい。好ましくは60~90%、さらに好ましくは60から70%である。55%未満であると、繊維強化複合材料層[A]の樹脂層が多くなり、空気や揮発成分が繊維強化複合材料層[B]へ移りにくくなり繊維強化複合材料の意匠面の意匠性を満足できない場合がある。
本発明に係る繊維強化複合材料において、繊維強化複合材料層[B]の繊維体積含有率VfBとしては、1~60%であることがプリプレグの含浸性の観点から好ましく、好ましくは5~50%、さらに好ましくは5~20%である。
また、繊維強化複合材料層[C]の繊維体積含有率としては、それぞれ55%以上90%以下であることが繊維強化複合材料の力学特性と意匠性の観点から好ましい。好ましくは60~90%、さらに好ましくは60から70%である。55%未満であると、繊維強化複合材料層[C]の樹脂層が多くなり、空気や揮発成分が繊維強化複合材料層[B]へ移りにくくなり繊維強化複合材料の意匠面が満足しない場合がある。
次に、本発明に係る繊維強化複合材料の製造方法について説明する。本発明に係る繊維強化複合材料の製造方法は、プリプレグ積層体を加熱しつつ、プリプレグ積層体外部を加圧する成形工程を有することを特徴とするものである。
本発明に係る繊維強化複合材料の製造方法において、プリプレグ積層体を加熱しつつ、プリプレグ積層体外部を加圧する成形工程において、プリプレグ積層体内部を-80kPa以下(ゲージ圧)の圧力で行う工程を含むことが、得られる繊維強化複合材料のボイドを減少させる観点から好ましい。プリプレグ積層体内部の圧力(ゲージ圧)としては、好ましくは-90kPa以下、さらに好ましくは-95kPa以下である。
また、本発明に係る繊維強化複合材料の製造方法において、プリプレグ積層体を加熱しつつ、プリプレグ積層体外部を加圧する成形工程において、切込プリプレグ[a]またはプリプレグ[c]に含まれる樹脂を繊維基材[b]に含浸させることが、得られる繊維強化複合材料の意匠面を向上させる観点から好ましい。
本発明の繊維強化複合材料の製造方法としては、例えば、成形型を用いたプレス成形、真空バッグ成形、オートクレーブ成形等の適用が挙げられる。
かかる本発明の繊維強化複合材料の用途としては、例えば、「パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの筐体、トレイ、シャシー、内装部材、またはそのケース」などの電気、電子機器部品、「支柱、パネル、補強材」などの土木、建材用部品、「各種メンバ、各種フレーム、各種ヒンジ、各種アーム、各種車軸、各種車輪用軸受、各種ビーム、プロペラシャフト、ホイール、ギアボックスなどの、サスペンション、アクセル、またはステアリング部品」、「フード、ルーフ、ドア、フェンダ、トランクリッド、サイドパネル、リアエンドパネル、アッパーバックパネル、フロントボディー、アンダーボディー、各種ピラー、各種メンバ、各種フレーム、各種ビーム、各種サポート、各種レール、各種ヒンジなどの、外板、またはボディー部品」、「バンパー、バンパービーム、モール、アンダーカバー、エンジンカバー、整流板、スポイラー、カウルルーバー、エアロパーツなど外装部品」、「インストルメントパネル、シートフレーム、ドアトリム、ピラートリム、ハンドル、メーターバイザー、各種モジュールなどの内装部品」、または「モーター部品、CNGタンク、ガソリンタンク、燃料ポンプ、エアーインテーク、インテークマニホールド、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、各種配管、各種バルブなどの燃料系、排気系、または吸気系部品」などの自動車、二輪車用構造部品、「その他、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、エンジン冷却水ジョイント、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、プロテクター、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、スペアタイヤカバー、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、スカッフプレート、フェイシャー」、などの自動車用部品、二輪車用部品、「ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブ」などの航空機用部品が挙げられる。力学特性の観点からは、自動車の内外装、電気・電子機器筐体、自転車、スポーツ用品用構造材、航空機内装材、輸送用箱体に好ましく用いられる。
以下、実施例によって、本発明について、より具体的に説明する。
樹脂を強化繊維に含浸させた切込プリプレグ[a]、樹脂が未含浸の繊維基材[b]、樹脂を連続繊維の強化繊維に含浸させたプリプレグ[c]、プリプレグ積層体の賦形性、繊維強化複合材料の繊維体積含有率の測定方法、繊維強化複合材料の表面品位の測定方法を以下に示す。実施例におけるプリプレグ積層体及び繊維強化複合材料の作製環境および評価は、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、相対湿度50%の雰囲気で行ったものである。また、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
<樹脂を強化繊維に含浸させた切込プリプレグ[a]>
・下記の製造方法で得られた切込プリプレグA
[エポキシ樹脂組成物]
混練装置で、35質量部の“jER”(登録商標)4007P(ジャパンエポキシレジン(株)製)と35質量部のリグリシジル-p-アミノフェノール(“アラルダイド”(登録商標)MY0510(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製))と30質量部のビスフェノールF型エポキシ樹脂(“エピクロン”(登録商標)830(DIC(株)製))に、3質量部の“ビニレック”(登録商標)PVF-K(ポリビニルホルマール)(チッソ(株)製))を配合して、熱可塑性樹脂(PVF-K)をエポキシ樹脂中に溶解した。その後、硬化剤であるジシアンジアミド(硬化剤、DICY-7、三菱化学(株)製)を5質量部、さらに硬化補助剤であるDCMU99(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア、硬化促進剤(保土ヶ谷化学工業(株)製))を3質量部混練して、エポキシ樹脂組成物を作製した。
[炭素繊維]
・“トレカ(登録商標)”T700S-12K(東レ(株)製)
[切込プリプレグ[a]]
調製したエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して52g/mの樹脂フィルムを、2枚作製した。次に、前記のように得られた樹脂フィルムを、一方向に配列させたシート状の炭素繊維の両面に積層し、加熱加圧により樹脂を含浸させた後、炭素繊維の目付が190g/mでマトリックス樹脂の質量分率が35.4%、プリプレグの目付が294g/m、プリプレグの厚さが189μmの一方向プリプレグを作製した。
次に、シリンダーに刃を配置したローラーカッターに得られた前記一方向プリプレグシートを繊維方向に挿入し、断続的な直線状の切込を図4のカットパターンで切込を挿入した。繊維長さLは24mm、θは±14°で切込を切込プリプレグの面内における強化繊維の垂直方向に投影した投影長さWsは0.25mmであった。+14°の切込と-14°の切込は前記一方向プリプレグシートのプリプレグ中に同数挿入された。全ての切込は切込角度の正負が逆の切込が最近接で、同符号の切込角度の近接の切込より近い距離に4つの切込角度の正負が逆の切込が存在した。また、切込のあらゆる点から切込長さYの半径内に近接の切込はなかった。切込の列は切込長さY1mmの切込が1mmピッチで配置されたものであり、切込の列1つおきに対応する切込によって繊維を分断し、切込プリプレグシートを作製した。同一直線上の近接する切込間距離はYのおよそ10倍であった。切込挿入後の離型紙の断面を光学顕微鏡で観察したところ、離型紙の厚み方向に40%まで切込が侵入していた。
得られた切込プリプレグを0°方向に25cm角の大きさにカットし、繊維方向をそろえて8層積層し、オートクレーブにて、130℃の温度で2時間、0.5MPaの圧力下、昇温速度1.6℃/分で成形して、繊維強化プラスチックの平板を作製した。成形した平板の略中央から略繊維直角方向断面を含むように10mm×10mmの小片を切り出し、エポキシ樹脂により包埋し、略繊維直角方向断面を研磨した。研磨された断面を光学顕微鏡により200倍以上に拡大し、300μm×300μmの領域を900ピクセル×900ピクセルのデジタル画像として取得した。得られたデジタル画像において繊維部に該当するピクセルを1、樹脂に該当するピクセルを0となるよう二値化し、繊維部に該当するピクセル数のデジタル画像の総ピクセル数における割合から略繊維直角方向断面における炭素繊維の面積率を取得した。炭素繊維は長手方向に一方向に配置されているため、該面積率を炭素繊維の体積含有率Vfとみなした。2つの小片から無作為に計10箇所のデジタル画像を、領域が重ならないように取得し、炭素繊維の体積含有率Vfの平均値を計算したところ、56%であった。
<樹脂が未含浸の繊維基材[b]>
・繊維基材A:“トレカ(登録商標)”CO6151B(東レ(株)製)(目付量:92g/m、厚さ:0.11mm)
・繊維基材B:サーフェイスマット、FC-30S(セントラルグラスファイバー(株)製))(目付量:30g/m、厚さ:0.23mm)
<樹脂を連続繊維の強化繊維に含浸させたプリプレグ[c]>
・下記の製造方法で得られたプリプレグC
[エポキシ樹脂組成物]
混練装置で、35質量部の“jER”(登録商標)4007P(ジャパンエポキシレジン(株)製)と35質量部のリグリシジル-p-アミノフェノール(“アラルダイド”(登録商標)MY0510(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製))と30質量部のビスフェノールF型エポキシ樹脂(“エピクロン”(登録商標)830(DIC(株)製))に、3質量部の“ビニレック”(登録商標)PVF-K(ポリビニルホルマール)(チッソ(株)製))を配合して、熱可塑性樹脂(PVF-K)をエポキシ樹脂中に溶解した。その後、硬化剤であるジシアンジアミド(硬化剤、DICY-7、三菱化学(株)製)を5質量部、さらに硬化補助剤であるDCMU99(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア、硬化促進剤(保土ヶ谷化学工業(株)製))を3質量部混練して、エポキシ樹脂組成物を作製した。
[炭素繊維]
・“トレカ(登録商標)”T700S-12K(東レ(株)製)
[プリプレグ[c]]
調製したエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して52g/mの樹脂フィルムを、2枚作製した。次に、前記のように得られた樹脂フィルムを、一方向に配列させたシート状の炭素繊維の両面に積層し、加熱加圧により樹脂を含浸させた後、炭素繊維の目付が190g/mでマトリックス樹脂の質量分率が35.4%、プリプレグの目付が294g/m、プリプレグの厚さが189μmの一方向プリプレグを作製した。
(1)プリプレグ積層体の賦形性
プリプレグ積層体から、縦240mm×横340mmのサンプルを切り出し、60℃のオーブンに20分入れた後に取り出し、縦40mm×横80mm×高さ35mmの鉄製の直方体形状の5面(縦40mm×横80mmの1面以外の5面)への賦形性を評価した。
プリプレグ積層体の賦形性の判定基準として、直方体形状で切込プリプレグあるいはプリプレグに、皺あるいは裂けがなく賦形できた場合は◎、切込プリプレグあるいはプリプレグに、皺あるいは裂けが合計1か所で発生した場合は○、切込プリプレグあるいはプリプレグに、皺あるいは裂けが合計2か所以上で発生した場合は△とした。
(2)繊維強化複合材料の繊維体積含有率の測定方法
プリプレグ積層体を、オートクレーブにて、130℃の温度で2時間、0.5MPaの圧力下、昇温速度1.6℃/分で成形して6個の繊維強化複合材料を作製した。これらの各繊維強化複合材料から、積層方向とは垂直な面内方向において、縦20mm×横20mmのサンプルを切り出し、その断面を研磨後、レーザー顕微鏡(KEYENCE VK-9510)で200倍以上に拡大し繊維の層と繊維の層が2層以上視野内に納まるようにして写真撮影した。同様の操作から各層について10箇所を任意に選択した。各層の厚さ、繊維の目付と繊維比重から、各繊維体積含有率を求めて、10箇所の平均を繊維体積含有率とした。
(3)繊維強化複合材料の表面品位の測定方法
(2)で作製した繊維強化複合材料を目視で、意匠面のピンホールを検査した。判定基準として、ピンホール数が10個以下の場合は◎、11個以上30個以下の場合は、○、31個以上の場合は△とした。
(実施例1)
意匠面から切込プリプレグA、繊維基材Aの順番で2層を積層しプリプレグ積層体を作製した。
得られたプリプレグ積層体を用い、上記の(1)プリプレグ積層体の賦形性、(2)繊維強化複合材料の繊維体積含有率の測定方法と(3)繊維強化複合材料の表面品位の測定方法を記載のとおりに実施して繊維強化複合材料を得て、プリプレグ積層体の賦形性、繊維強化複合材料の繊維体積含有率、繊維強化複合材料の表面品位を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2~6、比較例1~4)
プリプレグ積層体の樹脂を強化繊維に含浸させた切込プリプレグ[a]、樹脂が未含浸の繊維基材[b]、樹脂を連続繊維の強化繊維に含浸させたプリプレグ[c]、積層構成を表1と表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてプリプレグ積層体を作製した。作製したプリプレグ積層体を用いて、プリプレグ積層体の賦形性を測定した。また、作製したプリプレグ積層体を用いて、繊維強化複合材料を得て、繊維体積含有率、表面品位を測定した。得られた結果を表1と表2にまとめて示す。
Figure 0007363630000001
Figure 0007363630000002
実施例1~6と比較例1~4との対比により、本発明のプリプレグ積層体は、樹脂を強化繊維に含浸させた切込プリプレグ、樹脂が未含浸の繊維基材を含む構成を含んでおり、成形中に意匠面に配置されたプリプレグから樹脂が、樹脂が未含浸の繊維基材へと含浸される際に意匠面のピンホールの原因となる空気や揮発成分も樹脂が未含浸の基材へ移るため、得られる繊維強化複合材料は優れた意匠面を実現していることが分かる。またプリプレグ積層体は切込プリプレグを積層しているため、プリプレグ積層体の賦形性に優れていることが分かる。
本発明によれば、優れたプリプレグ積層体の賦形性と優れた意匠面を備えた繊維強化複合材料が得られるため、テニスラケットやゴルフシャフトなどのスポーツ用品、バンパーやドアなどの自動車の外装材、シャシーやフロントサイドメンバなど自動車の構造材、又はステアリングやメーターバイザー、航空機構造部材、風車の羽根、自動車の外装材、自動車の内装材、又はICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開でき、有用である。
1 意匠面
2、2a、2b 切込プリプレグ[a]
3 繊維基材[b]
4 プリプレグ[c]
5 断続的な斜め切込(繊維方向に対して正の角度)
6 断続的な斜め切込(繊維方向に対して負の角度)
7 繊維方向
8 繊維直交方向
10 プリプレグ積層体

Claims (10)

  1. 樹脂が含浸されていない繊維基材[b]の一方の表面に、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグであって、複数の切込によって少なくとも一部の前記強化繊維が繊維長さ(L)10~300mmの強化繊維で構成され、かつ、強化繊維の体積含有率Vfが45~65%の範囲内である切込プリプレグ[a]を1層または複数層積層させるとともに、前記繊維基材[b]の他方の表面に樹脂を連続繊維の強化繊維に含浸させたプリプレグ[c]を1層あるいは複数層積層させたサンドイッチ構造を有する、プリプレグ積層体。
  2. 前記プリプレグ積層体の少なくとも一方の表面が意匠面であり、前記繊維基材[b]が前記意匠面側から2層目または3層目に積層された、請求項に記載のプリプレグ積層体。
  3. 前記切込プリプレグ[a]の厚さが30~300μmである、請求項1または2に記載のプリプレグ積層体。
  4. 前記切込プリプレグ[a]を構成する前記強化繊維が炭素繊維であり、前記樹脂が熱硬化性樹脂である、請求項1~のいずれかに記載のプリプレグ積層体。
  5. 前記繊維基材[b]が、炭素繊維またはガラス繊維を含み、前記炭素繊維またはガラス繊維が不連続であり、目付量が5~100g/mである、請求項1~のいずれかに記載のプリプレグ積層体。
  6. 請求項1~のいずれかに記載のプリプレグ積層体を用いて、前記切込プリプレグ[a]に由来する繊維強化複合材料層[A]と、前記切込プリプレグ[a]または前記プリプレグ[c]に含浸されていた樹脂を含有する前記繊維基材[b]に由来する繊維強化複合材料層[B]とを少なくとも含む繊維強化複合材料。
  7. 前記繊維強化複合材料層[A]の繊維体積含有率VfA(%)と、前記繊維強化複合材料層[B]の繊維体積含有率VfB(%)とがVfA>VfBの関係を有する請求項に記載の繊維強化複合材料。
  8. 請求項1~のいずれかのプリプレグ積層体を加熱しつつ前記プリプレグ積層体外部を加圧する成形工程を有する、繊維強化複合材料の製造方法。
  9. 前記成形工程において、さらに前記プリプレグ積層体内部を-80kPa以下(ゲージ圧)の圧力で行う工程を含む、請求項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  10. 前記成形工程において、前記切込プリプレグ[a]または前記プリプレグ[c]に含まれる樹脂を繊維基材[b]に含浸させる、請求項またはに記載の繊維強化複合材料
    の製造方法。
JP2020055301A 2020-03-26 2020-03-26 プリプレグ積層体、繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法 Active JP7363630B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020055301A JP7363630B2 (ja) 2020-03-26 2020-03-26 プリプレグ積層体、繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020055301A JP7363630B2 (ja) 2020-03-26 2020-03-26 プリプレグ積層体、繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021155513A JP2021155513A (ja) 2021-10-07
JP7363630B2 true JP7363630B2 (ja) 2023-10-18

Family

ID=77917203

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020055301A Active JP7363630B2 (ja) 2020-03-26 2020-03-26 プリプレグ積層体、繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7363630B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009286817A (ja) 2008-05-27 2009-12-10 Toray Ind Inc 積層基材、繊維強化プラスチック、およびそれらの製造方法
WO2016043156A1 (ja) 2014-09-19 2016-03-24 東レ株式会社 切込プリプレグおよび切込プリプレグシート
JP2017052246A (ja) 2015-09-11 2017-03-16 三菱レイヨン株式会社 熱成形品の製造方法および熱成形用材料
WO2018079475A1 (ja) 2016-10-26 2018-05-03 東レ株式会社 プリプレグ積層体、繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法
WO2019031111A1 (ja) 2017-08-10 2019-02-14 東レ株式会社 プリプレグ積層体、プリプレグ積層体を用いた繊維強化プラスチックの製造方法及び繊維強化プラスチック

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009286817A (ja) 2008-05-27 2009-12-10 Toray Ind Inc 積層基材、繊維強化プラスチック、およびそれらの製造方法
WO2016043156A1 (ja) 2014-09-19 2016-03-24 東レ株式会社 切込プリプレグおよび切込プリプレグシート
JP2017052246A (ja) 2015-09-11 2017-03-16 三菱レイヨン株式会社 熱成形品の製造方法および熱成形用材料
WO2018079475A1 (ja) 2016-10-26 2018-05-03 東レ株式会社 プリプレグ積層体、繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法
WO2019031111A1 (ja) 2017-08-10 2019-02-14 東レ株式会社 プリプレグ積層体、プリプレグ積層体を用いた繊維強化プラスチックの製造方法及び繊維強化プラスチック

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021155513A (ja) 2021-10-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI754688B (zh) 纖維強化複合材料及纖維強化複合材料之製造方法
EP1803551B1 (en) Integrated formed article using a sandwich structure
US9962904B2 (en) Sandwich structure and integrally formed article using the same, and methods for production thereof
DE112017000354T5 (de) Prepreg, Verfahren zu seiner Herstellung und Faser-verstärktes Formprodukt
CN108431099B (zh) 结构体
JP6816382B2 (ja) プレス成形材料
WO2018147324A1 (ja) プリフォーム要素、ならびにこれを利用したプリフォームおよびその製造方法
JP2010235779A (ja) プリプレグ、プリフォームおよび成形品
KR102065367B1 (ko) 시아네이트 에스테르 수지 조성물 및 프리프레그
DE112017000363T5 (de) Prepreg, Verfahren zu seiner Herstellung und ein Faser-verstärktes Formprodukt
JP2014095034A (ja) 成形品及び成形品の製造方法
JP2011189747A (ja) プレス成形品の製造方法
JP5994737B2 (ja) プレス成形用中間基材、プリフォーム、および成形品の製造方法
JP7363630B2 (ja) プリプレグ積層体、繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法
JP2022052937A (ja) プリプレグ積層体、繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法
JP2021187129A (ja) 繊維強化樹脂複合体
JP7230499B2 (ja) 積層体
JP2016049716A (ja) 積層体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220719

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230420

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230425

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230601

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230905

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230918

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7363630

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151