[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1~図9を参照して以下に説明する。図1及び図2を参照して、本実施形態の動作支援装置1は、利用者Pの左脚及び右脚に各々装着される一対の脚装具2L,2Rと、利用者Pの上体に装着される上体装具3とを備える。なお、本明細書では、利用者Pの左脚に装着される脚装具2Lに備えられる要素の参照符号に「L」を付加し、利用者Pの右脚に装着される脚装具2Rに備えられる要素の参照符号に「R」を付加する。ただし、左右を区別する必要が無いとき、あるいは、左右の区別が明らかであるときは、「L」又は「R」の付記を省略する場合がある。また、以降の説明では、脚装具2L,2Rのそれぞれを、左脚装具2L、右脚装具2Rと称する場合がある。
脚装具2L,2Rは、左右対称の同一構成の装具である。以下、脚装具2L,2Rのうちの一方、例えば左脚装具2Lの概略構成を代表的に説明する。左脚装具2Lは、利用者Pの左脚の大腿部に装着される大腿フレーム10Lと、下腿部に装着される下腿フレーム11Lと、これらの大腿フレーム10L及び下腿フレーム11Lを連結する関節機構12Lとを備える。
大腿フレーム10Lは、利用者Pの左脚の大腿部の外側面(左側面)に沿って該大腿部の長手方向に延在するように、該大腿部の側方(左側方)に配設される。そして、大腿フレーム10Lは、左脚の大腿部に対する位置及び姿勢がほぼ一定に保たれるように、図示しないベルト等の取り付け部材を介して該大腿部に取り付けられる。
下腿フレーム11Lは、利用者Pの左脚の下腿部の外側面(左側面)に沿って該下腿部の長手方向に延在するように、該下腿部の側方(左側方)に配設される。そして、下腿フレーム11Lは、左脚の下腿部に対する位置及び姿勢がほぼ一定に保たれるように、図示しないベルト等の取り付け部材を介して該下腿部に取り付けられる。
下腿フレーム11Lの下端部には、利用者Pの左脚の足部に装着されるシューズ17Lが連結部材18Lを介して連結されている。本実施形態では、左脚装具2Lの大腿フレーム1OLと下腿フレーム11Lとを利用者Pの左脚の大腿部と下腿部とに各々取り付けると共に、シューズ17Lを利用者Pの左脚の足部に装着することで、利用者Pの左脚に左脚装具2Lが装着される。この場合、利用者Pがその左脚の足部を下腿部に対して揺動させることに伴い、下腿フレーム11Lに対してシューズ17Lが揺動し得るように連結部材18Lが構成されている。該連結部材18Lは、例えば可撓性部材や関節機構、あるいは、これらの組み合わせにより構成され得る。
関節機構12Lは、大腿フレーム10Lの下端部に連結された大腿側関節要素13Lと、下腿フレーム11Rの上端部に連結された下腿側関節要素14Lとを備える。下腿側関節要素14Lは、大腿側関節要素13Lに対して関節軸15Lの軸心周りに相対回転し得るように、大腿側関節要素13Lに関節軸15Lを介して軸支されている。これにより、下腿フレーム11Lが、大腿フレーム10Lに対して関節軸15Lの軸心周りに相対回転し得るように関節機構12Lを介して大腿フレーム10Lに連結されている。
ここで、利用者Pの左脚に左脚装具2Lを装着した状態では、関節機構12Lは、その関節軸15Lの軸心が、利用者Pの左脚の大腿部に対する下腿部の揺動軸心とほぼ同軸心になるように、左脚の膝関節の側方(左側方)に配置される。このため、下腿フレーム11Lは、利用者Pの左脚の屈伸(膝関節での屈伸)に伴い、大腿フレーム10Lに対して関節軸15Lの軸心周りでピッチ方向(利用者Pの左右方向の軸心周りの方向)に揺動し、ひいては、脚装具2Lが利用者Pの左脚と一体的に屈伸する。
左脚装具2Lの上記の構成は、右脚装具2Rについても同様である。この場合、左脚装具2Lに関する上記の説明における「左」、「L」をそれぞれ、「右」、「R」に読み替えることで、右脚装具2Rに関する説明が得られる。なお、図1においては、右脚装具2Rが左脚装具2Lの背後に隠れているため、右脚装具2Rに係る参照符号を括弧付きの参照符号で記載している。
各脚装具2には、該脚装具2を装着した利用者Pの脚に補助力として付与される弾性力を弾性変形により発生可能な弾性構造体20と、この弾性構造体20が発生する補助力を該脚装具2の関節機構12の回転力(大腿側関節要素13に対する下腿側関節要素14の回転力)として該関節機構12に伝達させ得る動力伝達機構30とが、図3に示す如く搭載されている。この場合、動力伝達機構30は、弾性構造体20から関節機構12への動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、該動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に動作可能である。
なお、弾性構造体20及び動力伝達機構30の構成は、左脚装具2L及び右脚装具2Rのいずれにおいても同じである。そして、図3及び後述の図4~図6では、右脚装具2Rの弾性構造体20R及び動力伝達機構30Rを代表的に図示している。この場合、図3~図6における括弧付きの参照符号は、左脚装具2Lに関する参照符号であり、これについては後述する。
また、利用者Pの右脚に装着された右脚装具2Rの動力伝達機構30Rの動作状態を、左脚装具2Lを装着した利用者Pの左脚の屈曲度合い(左脚の膝関節での屈曲度合い)に応じて切り替えるための動力伝達切換機構40Lが、図7A及び図7Bに示す如く左脚装具2Lに搭載されている。同様に、利用者Pの左脚に装着された左脚装具2Lの動力伝達機構30Lの動作状態を、右脚装具2Rを装着した利用者Pの右脚の屈曲度合い(右脚の膝関節での屈曲度合い)に応じて切り替えるための動力伝達切換機構40Rが右脚装具2Rに搭載されている。
なお、動力伝達切換機構40L,40Rの構成は、左脚装具2L及び右脚装具2Rのいずれにおいても同じである。そして、図7A及び図7Bでは、左脚装具2Lの動力伝達切換機構40Lを代表的に図示している。この場合、図7A及び図7Bにおける括弧付きの参照符号は、右脚装具2Rに関する参照符号であり、これについては後述する。
補足すると、本実施形態では、各脚装具2の上記弾性構造体20(20L,20R)と、動力伝達機構30(30L,30R)と、動力伝達切換機構40(40L,40R)の全体によって、本発明における補助力発生装置が実現される。この場合、各脚装具2の弾性構造体20(20L,20R)が本発明におけるバネ部材に相当し、各脚装具2の動力伝達切換機構40(40L、40R)が本発明におけるクラッチ部材駆動機構に相当する。
以下に、図3~図6を参照して、右脚装具2Rに搭載された弾性構造体20R及び動力伝達機構30Rを代表的に説明する。なお、この説明では、弾性構造体20R及び動力伝達機構30Rのそれぞれの構成要素に関する参照符号に「R」を付記することを省略する。
図3を参照して、右脚装具2Rの弾性構造体20Rは、本実施形態では、複数の円環状の仕切り板21と、複数の円筒状の弾性体22とを交互に同軸心に積層した構造のものである。この場合、弾性構造体20Rの軸心方向の両端部はそれぞれ仕切り板21により構成される。また、各弾性体22の軸心方向の両端面は、それぞれの端面に接触する仕切り板21に接着剤等により固着されている。
ここで、図3では、利用者Pに右脚に装着した右脚装具2Rを左側(左脚装具2L側)から見た場合の関節機構12Rの内部構成を、該関節機構12Rの大腿側関節要素13Rの左側面を形成するケーシング部材を取り外した状態で示している。また、図3では、弾性構造体20Rの一部を破断した状態で該弾性構造体20Rを示すと共に、大腿フレーム10Rの内部構成を、該大腿フレーム10Rの外周を形成する部材を破断した状態で示している。これらのことは、後述の図4~図6でも同様である。なお、図3では、右脚装具2Rを装着した利用者Pの右脚を直線状に伸展させた状態での関節機構12Rの内部構成や大腿フレーム10Rの内部構成等が示されている。
弾性構造体20Rは、下腿フレーム11Rの前側で、関節機構12Rの下腿側関節要素14から該下腿フレーム11Rと平行に延設された筒体23を該弾性構造体20Rの軸心部に貫通させるようにして、該筒体23に外挿されている。この場合、弾性構造体20Rの各仕切り板21は、筒体23に対してその軸心方向に移動し得るように筒体23に外挿されている。また、弾性構造体20Rの各弾性体22は、筒体23に対してその軸心方向に移動し得ると共に、該軸心方向に伸縮し得るように筒体23に外挿されている。これにより、弾性構造体20Rの全体が筒体23の軸心方向に伸縮し得るようになっている。
そして、弾性構造体20Rの上端側の仕切り板21が関節機構12Rの下腿側関節要素14に当接され、下端側の仕切り板21には、筒体23の下部(弾性構造体20Rの軸心部から下方に突出した部分)に摺動自在に外挿された筒状の押圧部材31が当接されている。従って、押圧部材31を、筒体23の軸心方向で下腿側関節要素14Rに近づける向きに移動させることで、弾性構造体20Rが下腿側関節要素14と押圧部材31との間で圧縮される。これにより、弾性構造体20Rがその伸長方向に弾性力を発生する状態になる。
動力伝達機構30Rは、その構成要素として上記押圧部材31を備えると共に、大腿フレーム10Rの長手方向にガイドレール32に沿って移動可能に該大腿フレーム10Rの内部に設けられたラックバー33と、該ラックバー33を押圧部材31に連結する可撓性長尺部材としてのチェーン34と、該チェーン34に係合し得るように関節機構12Rの下腿側関節要素14に搭載された2つのスプロケット35a,35bと、チェーン34にプリテンションを付与するようにラックバー33を付勢するバネ36と、ラックバー33に形成されたラック33aに係脱し得るように大腿フレーム10Rの内部に設けられたクラッチレバー37とを備える。なお、本実施形態では、上記ラックバー33及びクラッチレバー37がそれぞれ本発明におけるラック部材、クラッチ部材に相当する。
ガイドレール32は、大腿フレーム10Rの長手方向に延在するように該大腿フレーム10Rの内周に固設されている。そして、ラックバー33は、ガイドレール32の長手方向に延在する部材であり、該ガイドレール32に沿って移動し得るように該ガイドレール32に係合されている。このラックバー33の表面には、ラックバー33の長手方向(大腿フレーム10Rの長手方向)に歯が並ぶようにしてラック33aが形成されている。また、ガイドレール32の下端には、関節機構12Rの大腿側関節要素13に固設されたストッパ38が配置されている。そして、ラックバー33は、該ストッパ38に当接する位置まで、大腿フレーム10Rの下端側にガイドレール32に沿って移動することが可能である。
ラックバー33は、大腿フレーム10Rの内部に備えられたバネ36によってガイドレール32の上端に向かう方向に付勢されている。このバネ36は、ラックバー33に連結されるチェーン34にプリテンションを付与するためのバネであり、例えばコイルバネにより構成される。該バネ36は、ラックバー33の長手方向で伸縮し得るようにラックバー33の側方に配置されている。そして、バネ36の上端が、大腿フレーム10Rの内周に固定された部材10aに係止され、下端がラックバー33に係止されている。これにより、バネ36がその伸縮に応じて発生する弾性力が、ラックバー33に付与されるようになっている。
チェーン34は、ラックバー33の下端部から延設され、関節機構12Rの下腿側関節要素14のプレート部14aに回転自在に軸支された2つのスプロケット35a,35bの外周を経由した後、前記筒体23の上端部から該筒体23の内部に挿入されている。なお、下腿側関節要素14のプレート部14aは、関節機構12Rの関節軸15に直交する板状部である。そして、スプロケット35a,35bは、下腿側関節要素14のプレート部14aの左側(図4ではプレート部14aの手前側)に配置されている。
筒体23の内部には、ピストン状の可動部材39が、該筒体23の軸心方向に摺動可能に挿入されており、この可動部材39にチェーン34の先端部が連結されている。また、可動部材39から下方に向かって延設されたロッド39aが、筒体23の下部に該筒体23の軸心方向に延在するように形成された切り溝23aを介して前記押圧部材31に結合されている。
ここで、前記バネ36によって、ラックバー33が上方に向かって付勢されているので、ラックバー33がガイドレール32に沿って移動し得る状態(ラックバー33が後述するクラッチレバー37の動作によって係止されていない状態)では、前記バネ36からラックバー33に付与される付勢力によって、チェーン34がラックバー33側に引っ張られるように該チェーン34にプリテンションが付与される。これにより、押圧部材31が弾性構造体20Rの下端に当接される。
この場合、バネ36からラックバー33に付与される付勢力は、弾性構造体20Rの圧縮に応じて該弾性構造体20Rが発生する弾性力よりも十分に小さい弾性力である。このため、ラックバー33がガイドレール32に沿って移動し得る状態では、押圧部材31は、弾性構造体20Rを実質的に圧縮することなく、該弾性構造体20Rの下端部に比較的弱い力で当接される。
クラッチレバー37は、大腿フレーム10Rの内部で、ラックバー33のラック33aの正面側に配置され、該ラックバー33の幅方向(図3では紙面に垂直な方向)の軸心周りに揺動し得るように支軸37aを介して大腿フレーム10Rに軸支されている。
このクラッチレバー37は、図3又は図4に示すように、該クラッチレバー37の先端部がラックバー33のラック33aとの間に該ラック33a正面方向に間隔を有する状態になる第1揺動位置と、該先端部が図6に示すようにラックバー33のラック33aに接近して、該ラック33aに係合し得る状態になる第2揺動位置との間で揺動可能であると共に、図示しないバネにより第1揺動位置側に付勢されている。該バネは、クラッチレバー37に連結される後述のワイヤー43LRにプリテンションを付与するものであり、比較的小さい弾性力でクラッチレバー37を第1揺動位置側に付勢する。
クラッチレバー37の第1揺動位置では、ラックバー33は、クラッチレバー37と係合する(噛み合う)ことなく、ガイドレール32に沿って移動可能である。一方、クラッチレバー37の第2揺動位置では、ラックバー33は、そのラック33aにクラッチレバー37の先端部が係合し得る状態であり、その係合状態(ラック33aとクラッチレバー37との噛み合い状態)では、ラックバー33は、ガイドレール32に沿って移動することができないように係止された状態になる。以降、クラッチレバー37の上記第1揺動位置と第2揺動位置とをそれぞれラック解放揺動位置、ラック係止揺動位置という。
なお、右脚装具2Rを装着した利用者Pの右脚を直線状に伸展させた状態では、図3に示すように、クラッチレバー37は、ラックバー33のラック33aよりも下方(大腿フレーム10Rの下端寄り)に位置し、該ラック33aに対向していない。このため、利用者Pの右脚の伸展状態からの屈曲(膝関節での屈曲)に応じて、ラックバー33が関節機構12R側に移動して、該ラックバー33のラック33aがクラッチレバー37の先端部に対向する(ラック33aの正面にクラッチレバー37の先端部が位置する)状態になるまでは、クラッチレバー37がラック係止揺動位置に揺動していても、ラックバー33は、クラッチレバー37がラック解放位置に揺動している場合と同様に、クラッチレバー37と係合することなく、ガイドレール32に沿って移動可能である。
また、クラッチレバー37は、ラック係止揺動位置に限らず、該ラック係止揺動位置よりも若干、ラック解放揺動位置に近い所定の揺動位置と、ラック係止揺動位置との間の範囲内の揺動位置でも、ラックバー33のラック33aに係合する(ひいては、ラックバ-33を移動不能に係止する)ことが可能である。
本実施形態では、右脚装具2Rの弾性構造体20Rと動力伝達機構30Rとは、上記のように構成されている。このため、クラッチレバー37の揺動位置がラック解放揺動位置である場合と、ラック係止揺動位置である場合とで、弾性構造体20Rと動力伝達機構30Rとが以下に説明する如く動作する。
まず、クラッチレバー37の揺動位置がラック解放揺動位置になっている場合において、右脚装具2Rを装着した利用者Pの右脚が、直線状に伸展させた状態から膝関節での屈曲度合いが増加していくように屈曲された場合の動作について説明する。
なお、以降の説明では、利用者Pの右脚の膝関節での屈曲角度を該右脚の膝曲げ角θRと称する。該膝曲げ角θRは、利用者Pの右脚の膝関節での屈曲度合いを表す指標値であり、詳しくは、利用者Pの右脚を直線状に伸展させた状態からの該右脚の下腿部の回転角(大腿部に対する相対的な回転角)である。該屈曲角度θRは、右脚装具2Rを利用者Pの右脚に装着した状態では、図4に示すように、利用者Pの右脚を直線状に伸展させた状態での下腿フレーム11Rの回転位置(大腿フレーム10Rに対する回転位置)からの、該下腿フレーム11Rの回転角(大腿フレーム10Rに対する相対的な回転角)である。
クラッチレバー37の揺動位置がラック解放揺動位置になっている場合において、右脚装具2Rを装着した利用者Pの右脚が、直線状に伸展させた状態から膝関節での屈曲度合いが増加していく(膝曲げ角θRがゼロから増加していく)ように屈曲された場合には、大腿フレーム10Rの下端から弾性構造体20Rの上端までのチェーン34の経路長が増加していくため、図4に示す如く、チェーン34がラックバー33を引っ張る方向に走行しつつ、ラックバー33がバネ36による付勢力に抗して、大腿フレーム10Rの下端に近づく方向にガイドレール32に沿って移動する。
この場合、バネ36からラックバー33に付与される付勢力(バネ36の伸長により発生する弾性力)は、弾性構造体20Rの圧縮によって発生する弾性力よりも十分に小さいので、弾性構造体20Rが実質的に非圧縮状態(自然長状態)に維持されたままで、ラックバー33が移動する。このため、関節機構12Rには、弾性構造体20Rが発生する弾性力に応じた回転力(下腿フレーム11Rを大腿フレーム10Rに対して相対回転させようとする回転力)は作用しない。ひいては、利用者Pの右脚には、弾性構造体20Rが発生する弾性力に応じた補助力は作用しない。
利用者Pの右脚の膝曲げ角θRがさらに増加して、所定角度θ2を超えると、ラックバー33は、図5に示すようにガイドレール32の下端のストッパ38に当接することによって、さらなる移動ができない状態になる。
ここで、図8を参照して、本実施形態では、上記所定角度θ2は、利用者Pの通常的な歩行時の遊脚(両脚のうち、足部を空中移動させる脚)の最大の膝曲げ角よりも大きい角度に設定されている。そして、右脚装具2Rを装着した利用者Pの右脚の膝曲げ角θRが上記所定角度θ2を超えると、ラックバー33がストッパ38に当接するように、ラックバー33とストッパ38との位置関係等が設定されている。なお、図8に示す黒点は、利用者Pの歩行時の左右の脚のそれぞれの膝曲げ角の計測値の組を例示している。
利用者Pの右脚の膝曲げ角θRが所定角度θ2を超える状態では、チェーン34のラックバー33側の端部が大腿フレーム10Rに対して拘束(係止)される。このため、利用者Pの右脚の膝曲げ角θRがさらに増加すると、大腿フレーム10Rの下端から弾性構造体20Rの上端までのチェーン34の経路長のさらなる増加に伴い、弾性構造体20Rの下端の押圧部材31が弾性構造体20Rを圧縮する方向にチェーン34により引っ張られる。これにより、弾性構造体20Rが、図5に示すように下腿側関節要素14Rと押圧部材31との間で圧縮され、ひいては、その圧縮に応じた弾性力を発生する。
そして、このように弾性構造体20Rが発生する弾性力は、利用者Pの右脚を伸展させる方向の回転力(右脚の膝曲げ角θRを減少させる方向の回転力)として、関節機構12Rに作用する。これにより、利用者Pの右脚に伸展方向の補助力が作用する。
次に、クラッチレバー37の揺動位置がラック係止揺動位置になっている場合(より一般的には、ラックバー33のラック33aに係合可能な揺動位置になっている場合)において、右脚装具2Rを装着した利用者Pの右脚が、直線状に伸展させた状態から膝関節での屈曲度合い(膝曲げ角θR)が増加していくように屈曲された場合の動作について説明する。
この場合、利用者Pの右脚の膝曲げ角θRが所定角度θ1(<前記所定角度θ2)よりも小さい状態では、クラッチレバー37の先端部が、ラックバー33のラック33aよりも下方に位置するため、クラッチレバー37の揺動位置がラック解放揺動位置になっている場合と同様に、膝曲げ角θRの増加に伴い、弾性構造体20Rが非圧縮状態(自然長状態)に維持されたままで、ラックバー33が移動する。このため、関節機構12Rには、弾性構造体20Rが発生する弾性力に応じた回転力は作用しない。ひいては、利用者Pの右脚には、弾性構造体20Rが発生する弾性力に応じた補助力は作用しない。
ここで、図8を参照して、本実施形態では、上記所定角度θ1は、利用者Pの歩行時の支持脚(利用者Pの両脚のうち、接地させた状態の脚)の最大の膝曲げ角よりも大きい角度に設定されている。そして、右脚装具2Rを装着した利用者Pの右脚の膝曲げ角θRが上記所定角度θ1よりも小さい状態では、クラッチレバー37がラック係止揺動位置に揺動していても、該クラッチレバー37の先端部がラックバー33のラック33aに係合しないようにラックバー33とクラッチレバー37との位置関係等が設定されている。なお、上記所定角度θ1は、本発明における第1屈曲度合いを表す指標値である。
利用者Pの右脚の膝曲げ角θRが所定角度θ1を超えると、ラックバー33は、図6に示すように、そのラック33aがクラッチレバー37の先端部と係合する(噛み合う)ことによって、さらなる移動ができない状態になる。この状態では、ラックバー33がストッパ38に当接した場合と同様に、利用者Pの右脚の膝曲げ角θRの増加に伴い、弾性構造体20Rの下端の押圧部材31が弾性構造体20Rを圧縮する方向にチェーン34により引っ張られる。これにより、弾性構造体20Rが、図6に示すように下腿側関節要素14Rと押圧部材31との間で圧縮され、ひいては、その圧縮に応じた弾性力を発生する。
そして、このように弾性構造体20Rが発生する弾性力は、利用者Pの右脚を伸展させる方向の回転力として、関節機構12Rに作用する。これにより、利用者Pの右脚に伸展方向の補助力が作用する。
以上説明した右脚装具2Rの弾性構造体20R及び動力伝達機構30Rのそれぞれの構成及び作動は、左脚装具2Lの弾性構造体20L及び動力伝達機構30Lについても同じである。この場合、右脚装具2Rの弾性構造体20R及び動力伝達機構30Rに関する上記の説明における「R」、「右」をそれぞれ「L」、「左」に読み替えることで、左脚装具2Lの弾性構造体20L及び動力伝達機構30Lに関する説明が得られる。また、右脚装具2Rの弾性構造体20R及び動力伝達機構30Rのそれぞれの構成要素は、図3~図6における参照符号(括弧無しの参照符号)の「R」、「L」を、それぞれ、括弧付きの参照符号で示すように「L」、「R」に書き換えることで、実質的に図示される。
次に、右脚装具2Rの動力伝達機構30Rの動作状態を切り替えるために左脚装具2Lに搭載される動力伝達切換機構40Lを図7A及び図7Bを参照して説明する。なお、この説明では、動力伝達切換機構40Lのそれぞれの構成要素(後述するワイヤー43LRを除く)に関する参照符号に「L」を付記することを省略する。また、以降の説明では、利用者Pの各脚の膝曲げ角に関する前記所定角度θ1を第1所定角度θ1、前記所角度θ2(>θ1)を第2所定角度θ2と称する。
図7Aを参照して、動力伝達切換機構40Lは、関節機構12Lの大腿側関節要素13と下腿側関節要素14との間で動き得るように関節機構12Lに搭載されたシグナルレバー41と、シグナルレバー41の一端部(関節機構12Lの前部側の端部)にバネ42を介して連結された可撓性長尺部材としてのワイヤー43LRと、シグナルレバー41の他端部(関節機構12Lの後部側の端部)に軸支されたカムフォロア44と、シグナルレバー41を関節機構12Lの大腿側関節要素13に支持させるリンク45と、カムフォロア44に係合(接触)する係合部が形成されたカム46とを備える。以降の説明では、シグナルレバー41の上記一端部をワイヤー側端部、上記他端部をカム側端部と称する。なお、本実施形態では、シグナルレバー41は、本発明における可動部材に相当するものである。
ここで、図7Aでは、利用者Pの左脚に装着した左脚装具2Lを左側(右脚装具2Rと反対側)から見た場合の関節機構12Lの内部構成を、該関節機構12Lの大腿側関節要素13を取り外した状態で示し、大腿側関節要素13の外形を二点鎖線で示している。このことは、図7Bについても同様である。また、ワイヤー43LRの参照符号については、該ワイヤー43LRが、左脚装具2L側から右脚装具2R側に動力伝達を行うものであることから、その参照符号に「LR」という符号を付加している。なお、図7Aでは、左脚装具2Lを装着した利用者Pの左脚を直線状に伸展させた状態での関節機構12Lの内部構成等が示され、図7Bでは、左脚装具2Lを装着した利用者Pの左脚を膝関節で屈曲させた状態での関節機構12Lの内部構成等が示されている。
シグナルレバー41は、板状部材により形成され、関節機構12Lの下腿側関節要素14の前記プレート部14aの左側(動力伝達機構30Lのスプロケット35a,35bと反対側)に、該プレート部14aと間隔を存して該プレート部14aに対面するように配置されている。この場合、シグナルレバー41の中央部には関節機構12Lの関節軸15との干渉を避けるための穴41aが開設されており、この穴41aの内側に関節軸15が位置する状態でシグナルレバー41が配置されている。なお、シグナルレバー41は、例えば、関節軸15を避けるように湾曲又は屈曲された部材であってもよい。この場合には、上記穴41aは不要である。
このシグナルレバー41のワイヤー側端部にバネ42を介して連結されたワイヤー43LRは、図2に示すように、関節機構12Lの大腿側関節要素13に固定されたガイド管51Lの内部とを通って、左脚装具2Lの上方に導出され、さらに、利用者Pの上体の腰部背面に図示しないベルト等により装着される筐体状の上体装具3の内部を通って、右脚装具2Rの上方に導かれている。
さらに、該ワイヤー43LRは、右脚装具2Rの大腿フレーム10Rに固定されたガイド管52Rの内部を通って大腿フレーム10Rの内部に導入されている。そして、ワイヤー43LRは、該大腿フレーム10Rの内部において、図3に示したように、動力伝達機構30Rのクラッチレバー37の後端部(動力伝達機構30Rのラックバー33のラック33aに係合される先端部と反対側の端部)に連結されている。
このため、動力伝達切換機構40Lのシグナルレバー41の動き(詳細は後述する)によって、ワイヤー43LRを走行させることで、右脚装具2Rのクラッチレバー37を揺動させることが可能となっている。この場合、シグナルレバー41とワイヤー43LRとの間に介装されたバネ42は、右脚装具2Rのクラッチレバー37を揺動させる駆動力が過大になるのを防止するためのものである。該バネ42は、例えばコイルバネにより構成され、その一端がシグナルレバー41のワイヤー側端部に連結され、他端部がワイヤー43LRに連結されている。
図7Aに戻って、カムフォロア44は、関節機構12Lの関節軸15と同方向の回転軸心周りに回転し得るようにシグナルレバー41のカム側端部に支軸44aを介して軸支されている。この場合、カムフォロア44は、シグナルレバー41と、関節機構12Lの下腿側関節要素14の前記プレート部14aとの間に配置されている。また、支軸44aは、関節機構12Lの大腿側関節要素13のうち、下腿側関節要素14のプレート部14aと反対側でシグナルレバー41に対面する面部に形成された長孔状のガイド孔13a(図7Aに二点鎖線で示す)に挿入されている。該ガイド孔13aは、シグナルレバー41の動きを案内するためのものである。
リンク45は、関節機構12Lの大腿側関節要素13のうち、下腿側関節要素14のプレート部14aと反対側(図7Aではシグナルレバー41の手前側)でシグナルレバー41に対面する面部と、シグナルレバー41との間に配置されている。そして、リンク45の一端部(図7Aでは下端部)が関節軸15と同方向の軸心周りにシグナルレバー41に対して回転し得るようにシグナルレバー41に軸支されていると共に、リンク45の他端部(図7Aでは上端部)が関節軸15と同方向の軸心周りに大腿側関節要素13に対して回転し得るように大腿側関節要素13に軸支されている。この場合、シグナルレバー41に対するリンク45の軸支部分の位置は、シグナルレバー41のワイヤー側端部とカム側端部との間で、カム側端部寄りの位置である。
カム46は、板状部材により形成され、カムフォロア44の周辺で、関節機構12Lの下腿側関節要素14の前記プレート部14aのシグナルレバー41側の面に固定されている。このカム46は、カムフォロア44に係合させる(カムフォロア44の外周面に接触させる)係合部として、関節軸15の軸心からの半径が互いに異なる2つの円弧部46a,46bを有する。
半径が大きい方の円弧部46aは、左脚装具2Lを装着した利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが、前記第1所定角度θ1よりも小さい角度域(詳しくは、θ1よりも若干小さい角度値θ1a以下の角度域)の角度である場合に、カムフォロア44の外周面に接触するように形成されている。また、半径が小さい方の円弧部46bは、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが前記第1所定角度θ1よりも大きい角度域(詳しくは、θ1よりも若干大きい角度値θ1b以上の角度域)の角度である場合に、カムフォロア44の外周面に接触するように形成されている。
また、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが、上記角度値θ1aから上記角度値θ1bまでの範囲内の角度である場合に、膝曲げ角θLの増加に伴い、カムフォロア44のカム46に対する接触位置を、大径側の円弧部46aから小径側の円弧部46bに滑らかに移行させるために、円弧部46aの終端と円弧部46bの始端とが関節軸15Lの径方向に対して傾斜した直線部46cを介して連接されている。
なお、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLは、前記した右脚の膝曲げ角θRと同様に、左脚の膝関節での屈曲度合いを表す指標値であり、詳しくは、利用者Pの左脚を直線状に伸展させた状態からの該左脚の下腿部の回転角(大腿部に対する相対的な回転角)である。該膝曲げ角θLは、左脚装具2Lを利用者Pの左脚に装着した状態では、利用者Pの左脚を直線状に伸展させた状態での下腿フレーム11Lの回転位置(大腿フレーム10Lに対する回転位置)からの、該下腿フレーム11Lの回転角(大腿フレーム10Lに対する相対的な回転角)である。
本実施形態では、左脚装具2Lの動力伝達切換機構40Lは、上記のように構成されている。この構成により、左脚装具2Lを装着した利用者Pの左脚の屈曲(膝関節での屈曲)に応じて、動力伝達切換機構40Lが以下に説明する如く動作する。
すなわち、左脚装具2Lを装着した利用者Pの左脚が、直線状に伸展させた状態から膝関節での屈曲度合い(膝曲げ角θL)が増加していくように屈曲された場合に、左脚の膝曲げ角θLが前記第1所定角度θ1よりも若干小さい角度値θ1aに達するまでは、カムフォロア44の外周がカム46の大径側の円弧部46aに接触した状態で、小径側の円弧部46bに近づいていく。
この状況では、関節機構12Lの大腿側関節要素13に対するシグナルレバー41の位置及び姿勢は、利用者Pの左脚を伸展させた状態と同じ位置及び姿勢に維持される。そして、この状況では、ワイヤー43LRの右脚装具2R側の端部に連結されたクラッチレバー37Rの揺動位置は、図示しないバネの付勢力によって前記ラック解放揺動位置に維持される。
利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが上記角度値θ1aを越えると、第1所定角度θ1よりも若干大きい角度値θ1bに達するまで、カムフォロア44が関節機構12Lの関節軸15の径方向で関節軸15に近づく方向にカム46の直線部46cに沿って移動しつつ、カムフォロア44の支軸44aが大腿側関節要素13に対して、該大腿側関節要素13のガイド孔13aに沿って移動する。
これにより、シグナルレバー41が、カムフォロア44共に関節軸15Lの径方向に変位しつつ、リンク45に対する軸支部を支点として、図7Aにおける反時計回り方向に回転する。このため、シグナルレバー41のワイヤー側端部が、図7Bに示すように、θL≦θ1aであるときの状態(図7Aに示す状態)よりも、大腿フレーム10Lの下端部から遠ざかる方向に変位するように、シグナルレバー41の位置及び姿勢が変化する。
この場合、シグナルレバー41のワイヤー側端部は、図9のグラフで示す如く利用者Pの左脚の膝曲げ角θLの増加(θ1aからθ1bまでの範囲内での増加)に伴い、大腿フレーム10Lの下端部から遠ざかる方向に変位する(大腿フレーム10Lの下端部から遠ざかる方向でのワイヤー側端部の変位量が増加する)。なお、図9のグラフにおける「dx」は、右脚装具2Rのクラッチレバー37の先端部がラックバー33Rのラック33aに係合し得るようになるときのシグナルレバー41のワイヤー側端部の変位量である。
上記のようにシグナルレバー41のワイヤー側端部が変位するため、ワイヤー43LRには、それを右脚装具2R側から左脚装具2L側に走行させるようにシグナルレバー41のワイヤー側端部から引っ張り力が作用する。これにより、右脚装具2Rのクラッチレバー37Rがラック解放揺動位置からラック係止揺動位置に向かって揺動する。この場合、クラッチレバー37Rの揺動途中で、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが第1所定角度θ1に達したときに、クラッチレバー37Rの先端部がラックバー33Rのラック33aに係合し得る状態になり、その後、クラッチレバー37Rが前記ラック係止揺動位置まで揺動する。
利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが第1所定角度θ1よりも若干大きい角度値θ1bに達した後は、カムフォロア44の外周がカム46の小径側の円弧部46bに接触した状態に維持される。このため、シグナルレバー41の位置及び姿勢は、膝曲げ角θLが上記角度値θ1bに達したときの状態に維持される。このため、右脚装具2Rのクラッチレバー37Rの揺動位置は、ラック係止揺動位置に維持される。
左脚装具2Lの動力伝達切換機構40Lは、上記の如く動作するので、左脚装具2Lを装着した利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが前記角度値θ1a以下の角度であるときは、右脚装具2Rのクラッチレバー37Rをラック解放揺動位置に維持するように動作する。また、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが前記角度値θ1b以上の角度であるときは、動力伝達切換機構40Lは、右脚装具2Rのクラッチレバー37Rをラック係止揺動位置に維持するように動作する。
また、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが角度値θ1aと角度値θ1bとの間の範囲内の角度であるときは、動力伝達切換機構40Lは、膝曲げ角θLの増加に伴い、右脚装具2Rのクラッチレバー37Rをラック解放揺動位置からラック係止揺動位置まで揺動させるように動作する。この場合、膝曲げ角θLが角度値θ1a,θ1bの間の所定角度θ1に達したとき、右脚装具2Rのクラッチレバー37Rの揺動位置は、ラックバー33Rのラック33aに係合し得る揺動位置、すなわち、ラックバー33Rの移動を係止し得る揺動位置になる。
以上説明した左脚装具2Lの動力伝達切換機構40Lの構成及び作動は、右脚装具2Rの動力伝達切換機構40Rについても同じである。この場合、左脚装具2Lの動力伝達切換機構40Lに関する上記の説明における「L」、「左」、「R」、「右」をそれぞれ「R」、「右」、「L」、「左」に読み替えることで、右脚装具2Rの動力伝達切換機構40Rに関する説明が得られる。また、右脚装具2Rの動力伝達切換機構40Rの構成要素は、図3、図7A及び図7Bにおける参照符号(括弧無しの参照符号)の「R」、「L」をそれぞれ、括弧付きの参照符号で示すように、「L」、「R」に書き換えることで、実質的に図示される。
本実施形態では、各脚装具2の弾性構造体20、動力伝達機構30及び動力伝達切換機構40が以上説明した如く動作するので、左脚装具2L及び右脚装具2Rをそれぞれ装着した利用者Pの左脚及び右脚のそれぞれの膝曲げ角θL,θRと、左右の各脚装具2L,2Rのそれぞれの弾性構造体20L,20Rの弾性力によって利用者Pの左右の各脚に付与される補助力(左脚の伸展方向の補助力)発生の有無との関係は、次の表1に示すようになる。なお、表1では、各脚の補助力が発生する状態を「ON」、該補助力が発生しない状態を「OFF」と表記している。
表1に示す如く、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが、第1所定角度θ1よりも小さい場合には、利用者Pの右脚の膝曲げ角θRによらずに、左脚装具2Lの弾性構造体20Lは弾性力を発生せず、ひいては、利用者Pの左脚には、その伸展方向の補助力が付与されない。さらに、この場合(θL<θ1である場合)には、利用者Pの右脚の膝曲げ角θRが第2所定角度θ2を越えない限り、右脚装具2Rの弾性構造体20Rも弾性力を発生せず、ひいては、利用者Pの右脚にも、その伸展方向の補助力が付与されない。
同様に、利用者Pの右脚の膝曲げ角θRが、第1所定角度θ1よりも小さい場合には、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLによらずに、右脚装具2Rの弾性構造体20Rは弾性力を発生せず、ひいては、利用者Pの右脚には、その伸展方向の補助力が付与されない。さらに、この場合(θR<θ1である場合)には、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが第2所定角度θ2を越えない限り、左脚装具2Lの弾性構造体20Lも弾性力を発生せず、ひいては、利用者Pの左脚にも、その伸展方向の補助力が付与されない。
このため、利用者Pの歩行時には、利用者Pの各脚に補助力が付与されない状態を定常的に維持することができる。このため、利用者Pは、脚装具2L,2Rを装着していない状態と同様の態様で歩行を行うことができる。
また、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLと、右脚の膝曲げ角θRとが両方とも、第1所定角度θ1を超えた場合には、左脚装具2Lの弾性構造体20Lと右脚装具2Rの弾性構造体20Rとの両方が弾性力を発生し、ひいては、利用者Pの左脚及び右脚の両方に、伸展方向の補助力が付与される。また、この場合、第1所定角度θ1は、利用者Pの歩行時の支持脚の膝曲げ角よりも若干大きい程度の角度でよいので、利用者Pの左脚及び右脚のそれぞれに補助力が作用し始める各脚の膝曲げ角は、比較的小さな角度である。
このため、例えば、利用者Pが椅子等に腰掛けようする場合、あるいは、しゃがみ込もうとする場合に、利用者Pの各脚に比較的早期に伸展方向の補助力が作用するようになる。従って、各脚の筋力が弱い利用者Pであっても、腰掛け動作やしゃがみ込み動作を楽に行うことができる。また、腰掛け状態、あるいは、しゃがみ込み状態から利用者Pが立ちあがる場合には、その立ち上げり動作の開始時から、各脚に伸展方向の補助力が作用するため、利用者Pは、その立ち上がり動作を楽に行うことができる。
また、本実施形態では、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが、第2所定角度θ2よりも大きい場合には、利用者Pの右脚の膝曲げ角θRによらずに、左脚装具2Lの弾性構造体20Lが弾性力を発生し、ひいては、利用者Pの左脚に、その伸展方向の補助力が付与される。同様に、利用者Pの右脚の膝曲げ角θRが、第2所定角度θ2よりも大きい場合には、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLによらずに、右脚装具2Rの弾性構造体20Rが弾性力を発生し、ひいては、利用者Pの右脚に、その伸展方向の補助力が付与される。
このため、例えば利用者Pがリハビリやトレーニング等のために、片脚だけを大きな屈曲度合いで屈曲させる動作を行った場合に、該片脚にその伸展方向の補助力を付与することができる。これにより、利用者Pのリハビリやトレーニング等を補助することが可能となる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図10A及び図10Bを参照して説明する。なお、本実施形態の動作支援装置は、第1実施形態と一部の構成だけが相違するものである。このため、第1実施形態と同一の事項については、説明を省略する。
前記第1実施形態では、各脚装具2(2L又は2R)の動力伝達切換機構40は、該脚装具2を装着した利用者Pの脚の膝曲げ角θLが第1所定角度θ1を超えた場合に、ワイヤー43(43LR又は43RL)を該脚装具2側に引っ張ることで、反対側の脚装具2(2R又は2L)の動力伝達機構30のクラッチレバー37をラック解放揺動位置からラック係止揺動位置に揺動させるように構成されている。
また、前記第1実施形態では、各脚装具2(2L又は2R)の動力伝達切換機構40は、該脚装具2を装着した利用者Pの脚の膝曲げ角θLが第1所定角度θ1よりも小さい場合には、ワイヤー43(43LR又は43RL)の引っ張りを解除することで、反対側の脚装具2(2R又は2L)の動力伝達機構30のクラッチレバー37をラック係止揺動位置からラック解放揺動位置に戻すように構成されている。
これに対して、本実施形態では、各脚装具2(2L又は2R)の動力伝達切換機構40は、以下に説明する如く、該脚装具2を装着した利用者Pの脚の膝曲げ角θLが第1所定角度θ1よりも小さい場合に、ワイヤー43(43LR又は43RL)を該脚装具2側に引っ張ることで、反対側の脚装具2(2R又は2L)の動力伝達機構30のクラッチレバー37をラック係止揺動位置からラック解放揺動位置に揺動させるように構成されている。
また、本実施形態では、各脚装具2(2L又は2R)の動力伝達切換機構40は、以下に説明する如く、該脚装具2を装着した利用者Pの脚の膝曲げ角θLが第1所定角度θ1を超えた場合に、ワイヤー43(43LR又は43RL)の引っ張りを解除することで、反対側の脚装具2(2R又は2L)の動力伝達機構30のクラッチレバー37をラック解放揺動位置からラック係止揺動位置に戻すように構成されている。
以下、右脚装具2Rの動力伝達機構30Rのクラッチレバー37と、左脚装具2Lの動力伝達切換機構40Lとに関して、図10A及び図10Bを参照して具体的に説明する。本実施形態では、右脚装具2Rの動力伝達機構30Rのクラッチレバー37Rは、第1実施形態と同様に、ラック解放揺動位置(図10Aに示す揺動位置)とラック係止揺動位置(図10Bに示す揺動位置)との間で揺動し得るように、支軸37aを介して大腿フレーム10Rに軸支されている。
ただし、本実施形態では、クラッチレバー37Rは、バネ37bによりラック係止揺動位置側に付勢されている。該バネ37bは、例えばコイルバネにより構成され、その一端部が大腿フレーム10Rの内周に固定された部材10bに連結され、他端部がクラッチレバー37Rに連結されている。
ここで、図10A及び図10Bのそれぞれでは、右脚装具2Rの大腿フレーム10Rの内部構成と、左脚装具2Lの関節機構12Lの内部構成(図2の矢印Y2の方向で見た関節機構12Lの内部構成)とを示している。この場合、左脚装具2Lの関節機構12Lの内部構成については、前記した図7A及び図7Bと同様に、該関節機構12Lの大腿側関節要素13Lを取り外した状態で示し、大腿側関節要素13Lの外形を二点鎖線で示している。
なお、図10Aでは、左脚装具2Lを装着した利用者Pの左脚を直線状に伸展させた状態での関節機構12Lの内部構成等が示され、図10Bでは、左脚装具2Lを装着した利用者Pの左脚を膝関節で屈曲させた状態での関節機構12Lの内部構成等が示されている。また、図10A及び図10Bでは、大腿フレーム10Rの内部構成は、右脚装具2Rを装着した利用者Pの右脚の膝曲げ角θRが第1所定角度θ1にほぼ一致する角度であるときの状態で示されている。
右脚装具2Rのクラッチレバー37Rを揺動させる本実施形態の動力伝達切換機構40Lは、左脚装具2Lの関節機構12Lの関節軸15と平行な軸心周りに大腿側関節要素13に対して回転し得るように大腿側関節要素13に支軸52aを介して軸支された細長板状のカムレバー52と、関節軸15と平行な軸心周りに下腿側関節要素14に対して回転し得るように該下腿側関節要素14のプレート部14aに軸支されたカムフォロア53と、カムレバー52の一端部(支軸52aよりも前側の端部)の下面部に摺動自在に係合された可動部材54に、バネ42を介して連結されたワイヤー43LRとを備える。なお、本実施形態では、カムレバー52が本発明におけるカムに相当する。
カムレバー52を軸支する支軸52aは、関節機構12Lの関節軸15よりも前側に配置されている。そして、カムフォロア53は、支軸52aの後方側でカムレバー52の下面部に沿って該カムレバー52に対して転動し得るように、支軸52aの後方で該カムレバー52の下面部に接触されている。この場合、カムレバー52は、その下面部がカムフォロア53の外周に係合(接触)する係合部として形成されている。
ワイヤー43LRは、第1実施形態と同様に、左脚装具2L側から上体装具3(図10A及び図10Bでは図示省略)の内部を経由して、右脚装具2Rの大腿フレーム10Rの内部に導入され、さらに大腿フレーム10R内部において、クラッチレバー37に連結されている。ただし、本実施形態では、ワイヤー43LRは、それを左脚装具2L側に引っ張ることにより、クラッチレバー37をラック係止揺動位置側から、バネ37bの付勢力に抗してラック解放揺動位置側に揺動させ得るようにクラッチレバー37に連結されている。
本実施形態における右脚装具2Rのクラッチレバー37と左脚装具2Lの動力伝達切換機構40Lとに関する上記の構成は、左脚装具2Lのクラッチレバー37と右脚装具2Rの動力伝達切換機構40Rとについても同様である。この場合、右脚装具2Rのクラッチレバー37と左脚装具2Lの動力伝達切換機構40Lとに係る上記の説明における「左」、「右」、「L」、「R」をそれぞれ、「右」、「左」、「R」、「L」に読み替えることで、左脚装具2Lのクラッチレバー37と右脚装具2Rの動力伝達切換機構40Rとに関する説明が得られる。また、左脚装具2Lのクラッチレバー37と右脚装具2Rの動力伝達切換機構40Rの構成要素は、図10A及び図10Bにおける参照符号(括弧無しの参照符号)の「R」、「L」をそれぞれ、括弧付きの参照符号で示すように、「L」、「R」に書き換えることで、実質的に図示される。そして、本実施形態の動作支援装置は、以上説明した事項以外の構成は、前記第1実施形態と同じである。
本実施形態の動作支援装置では、各脚装具2のクラッチレバー37と動力伝達切換機構40Lとが上記の如く構成されているので、例えば、右脚装具2Rのクラッチレバー37と左脚装具2Lの動力伝達切換機構40Lとが以下に説明する如く動作する。
すなわち、左脚装具2Lを装着した利用者Pに左脚の膝曲げ角θLが第1所定角度θ1よりも小さい状態では、図10Aに示す如く、動力伝達切換機構40Lのカムフォロア53が可動部材54よりも上方側(大腿フレーム10L寄り)に位置するため、ワイヤー43LRには、それを右脚装具2R側から左脚装具2L側に走行させるように可動部材54から引っ張り力が作用する。これにより、右脚装具2Rのクラッチレバー37が、図10Aに示すように、バネ37bの付勢力に抗してラック解放揺動位置側に揺動した状態になる。
従って、右脚装具2Rのラックバー33は、第1実施形態で説明したストッパ38に当接するまでは(右脚装具2Rを装着した利用者Pの右脚の膝曲げ角θRが第2所定角度θ2に達するまでは)、ガイドレール32に沿って移動し得る状態に維持される。ひいては、右脚装具2Rの弾性構造体20が弾性力を実質的に発生しない状態(利用者Pの右脚に伸展方向の補助力が作用しない状態)に維持される。
左脚装具2Lを装着した利用者Pに左脚の膝曲げ角θLが第1所定角度θ1よりも小さい角度から第1所定角度θ1を超えて増加すると、図10Bに示すように、動力伝達切換機構40Lの可動部材54がカムフォロア53に対して相対的に上方側(大腿フレーム10L寄り)に変位するため、可動部材54からのワイヤー43LRの引っ張り力が低減する。これにより、右脚装具2Rのクラッチレバー37は、バネ37bの付勢力によって、ラック解放揺動位置側からラック係止揺動位置に向かって揺動する。
この場合、右脚装具2Rのクラッチレバー37の揺動途中で、利用者Pの左脚の膝曲げ角θLが第1所定角度θ1に達したときに、クラッチレバー37の先端部がラックバー33のラック33aに係合し得る状態になり、その後、クラッチレバー37がラック係止揺動位置まで揺動する。
そして、クラッチレバー37Rが、ラックバー33Rのラック33aに係合し得る状態(ラック係止揺動位置を含む)になると、第1実施形態と同様に、右脚装具2Rを装着した利用者Pの膝曲げ角θRが第1所定角度θ1を超える角度に増加した場合に、該クラッチレバー37によって、ラックバー33の移動が係止される(図10Bに示す状態になる)。この状態では、第1実施形態と同様に、右脚装具2Rに弾性構造体20Rが圧縮されるため、該弾性構造体20Rが発生する弾性力によって、右脚装具2Rを装着した利用者Pの右脚に伸展方向の補助力が作用する。
右脚装具2Rのクラッチレバー37と左脚装具2Lの動力伝達切換機構40Lとの上記の動作は、左脚装具2Lのクラッチレバー37と右脚装具2Rの動力伝達切換機構40Rとの動作についても同様である。この場合、右脚装具2Rのクラッチレバー37と左脚装具2Lの動力伝達切換機構40Lとの動作に関する上記の説明における「左」、「右」、「L」、「R」をそれぞれ、「右」、「左」、「R」、「L」に読み替えることで、左脚装具2Lのクラッチレバー37と右脚装具2Rの動力伝達切換機構40Rとの動作に関する説明が得られる。
以上説明した本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
[他の実施形態]
本発明は、以上説明した第1実施形態又は第2実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。以下に、他の実施形態をいくつか例示する。前記各実施形態では、本発明におけるバネ部材として、前記した構成の弾性構造体20の代わりに、例えば、コイルバネ、もしくは単体構成の弾性体等のバネ部材を採用してもよい。
また、前記各実施形態では、本発明におけるクラッチ部材としてのクラッチレバー37は、揺動動作を行うものであるが、該クラッチ部材は、例えば、ラックバー33のラック33aに対して直動動作によって進退し得る部材であってもよい。
また、前記各実施形態では、ラックバー33を弾性構造体20の下端の押圧部材31に連結する可撓性長尺部材として、チェーン34の代わりに、例えばワイヤー等を使用してもよい。また、前記各実施形態では、クラッチレバー37に連結する可撓性長尺部材として、ワイヤー43LR,43RLの代わりに、例えばチェーン等を使用してもよい。
また、前記各実施形態では、動力伝達切換機構40(クラッチ部材駆動機構)は、カムフォロア等を用いて構成されているものの、本発明におけるクラッチ部材駆動機構は、例えば電動モータ等のアクチュエータによりクラッチレバー37(クラッチ部材)を駆動するようにしてもよい。この場合、各脚装具2(2L又は2R)のクラッチレバー37(クラッチ部材)を、反対側の脚装具2((2R又は2L)に取り付けたアクチュエータによりワイヤ等の可撓性部材を介して駆動する態様、あるいは、各脚装具2(2L又は2R)のクラッチレバー37(クラッチ部材)を、該脚装具2(2L又は2R)に取り付けたアクチュエータにより減速機等を介して駆動する態様等を採用し得る。
なお、この場合、アクチュエータの作動制御に関しては、例えば利用者Pの各脚の膝曲げ角θ(θL,θR)を各脚装具2に取り付けた適宜の角度検出器により検出し、その検出値に応じて前記各実施形態と同様の態様でクラッチレバー37(クラッチ部材)を駆動するようにアクチュエータの作動制御を行えばよい。
また、前記各実施形態では、補助力の発生源として、弾性構造体20(バネ部材)を使用した。ただし、例えば、弾性構造体20(バネ部材)を省略し、各脚装具2に取り付けたアクチュエータから適宜、各関節機構12に回転力を付与することで、利用者Pの各脚に補助力を付与することも可能である。この場合、アクチュエータの作動制御に関しては、例えば利用者Pの各脚の膝曲げ角θ(θL,θR)を各脚装具2に取り付けた適宜の角度検出器により検出し、その検出値に応じて前記各実施形態と同様の態様で各関節機構12に回転力を付与するように、アクチュエータの作動制御を行えばよい。
また、前記各実施系形態では、利用者Pの各脚の膝曲げ角θ(θL,θR)が、第2所定角度θ2を越えた場合に、該脚に補助力が付与されるように各動力伝達機構30を構成した。ただし、利用者Pのいずれか一方の脚の膝曲げ角θ(θL又はθR)が、第2所定角度θ2を越えた場合であっても、他方の脚の膝曲げ角θ(θR又はθL)が第1所定角度θ1よりも小さい場合には、該一方の脚に補助力が付与されないように、各動力伝達機構30を構成してよい。