JP7340444B2 - 顔料水分散体 - Google Patents
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Description
特に、ヒーターの加熱によって水を沸騰させその発泡圧でインクを吐出するサーマル方式のインクジェット記録装置は、MEMS(micro electro mechanical system)技術を用いてインクジェットヘッドを生産でき、安価で、かつ高速印刷が可能であるため、幅広く普及が進んでいる。近年、印刷物に耐候性や耐水性を付与するために、着色剤として顔料を用いるインクが広く用いられている。
インクジェット記録用顔料インクの場合、分散剤を用いてビヒクル中に顔料を分散させているが、近年の目覚ましい印刷速度の向上に伴って、インクへの熱的、機械的ストレスが大きくなり、連続して安定に吐出する吐出安定性(連続吐出安定性)の向上が検討されている。特に、サーマル方式のインクジェット記録装置の場合、サーマルヘッドの吐出用ヒーターの温度は瞬間的に300℃以上の高熱になり、顔料等のインク成分が前記ヒーター上に焦げついて付着物が堆積する現象、いわゆるコゲーション(kogation)が発生し、発泡圧を減少させ吐出性が不良となる。そのため、前記ヒーター表面近傍におけるコロイドの凝集や堆積を抑制するため、コロイドの熱的安定性の改善も試みられている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、カーボンブラックの熱的安定性及び連続吐出安定性は改善されるものの、特色インクに用いられるような有機顔料に対しては十分でないことが判明した。
本発明は、インクに配合した際、インクの優れた保存安定性を維持しつつ、インクジェット記録方式において、特にサーマルヘッドのヒーター部分におけるコゲーションの発生を抑制し、連続吐出安定性を向上させることができる顔料水分散体、その製造方法、及び該顔料水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔3〕を提供する。
〔1〕有機顔料Aが架橋ポリマーで分散された顔料水分散体であって、
該有機顔料Aが、ジスアゾピラゾロン系顔料、ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、及び銅フタロシアニン系顔料から選ばれる1種以上であり、
該架橋ポリマーが、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルで架橋されたポリマーである、顔料水分散体。
〔2〕前記〔1〕に記載の顔料水分散体と、溶剤とを含有する、インクジェット記録用水系インク。
〔3〕有機顔料Aが架橋ポリマーで分散された顔料水分散体の製造方法であって、
該有機顔料Aが、ジスアゾピラゾロン系顔料、ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、及び銅フタロシアニン系顔料から選ばれる1種以上であり、
下記の工程1及び工程2を含む、顔料水分散体の製造方法。
工程1:水分散性ポリマー、有機顔料A、及び水を含有する顔料混合物を分散処理して、顔料水分散液を得る工程
工程2:工程1で得られた顔料水分散液と、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとを混合して、前記水分散性ポリマーと該架橋剤とを反応させて架橋ポリマーを形成し、顔料水分散体を得る工程
本発明の顔料水分散体は、有機顔料Aが架橋ポリマーで分散された顔料水分散体であって、該有機顔料Aが、ジスアゾピラゾロン系顔料、ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、及び銅フタロシアニン系顔料から選ばれる1種以上であり、該架橋ポリマーが、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルで架橋されたポリマーである。
ここで、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルは下記式(1)で表される。
該媒体中の水の含有量は、顔料水分散体の分散安定性及び環境安全性の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。
本発明の顔料水分散体は、有機顔料種が特定の種類、すなわちジスアゾピラゾロン系顔料、ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、及び銅フタロシアニン系顔料から選ばれる1種以上であり、さらに架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルを用いて架橋されたポリマーによって分散され、微粒化された有機顔料粒子を含有する。架橋されたポリマーは、前記架橋剤由来の架橋構造を有し、上記の特定の種類の有機顔料と特異的な強い親和性を有するために効率よく顔料近傍に存在することができると推測される。そのため、サーマル方式のインクジェットプリンタのヒーター部分で液体媒体が蒸発して顔料同士の距離が接近した状態になったとしても、分散安定性に優れ、顔料の凝集を抑制でき、さらに液体媒体中の顔料に吸着せずに浮遊している粗大粒子化した架橋ポリマーの量を低減することができるため、コゲーションの発生を抑制することができ、連続吐出安定性が向上すると考えられる。
また、顔料水分散体において、有機顔料を分散させる架橋ポリマー中に前記架橋剤由来の架橋構造を有することにより、架橋ポリマーで分散された有機顔料粒子と顔料水分散体の水を主成分とする液体媒体との親和性も高くなると考えられる。そのため、インクが長期間高温状態に維持された状態であっても、前記架橋剤由来の架橋構造を有する架橋ポリマーで分散された有機顔料は高い分散安定性を維持することができ、優れた保存安定性を維持できると推測される。
本発明において有機顔料Aは、架橋ポリマーで分散された有機顔料Aとして顔料水分散体中に含有され、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、有機顔料Aを含有する架橋ポリマー粒子(以下、単に「顔料A含有架橋ポリマー粒子」ともいう)として含有されることが好ましい。
ジスアゾピラゾロン系顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ34、同13等のジスアゾピラゾロンオレンジ系顔料;C.I.ピグメントレッド37、同38、同41、同111等のジスアゾピラゾロンレッド系顔料などが挙げられる。中でも、連続吐出安定性を向上させる観点から、ジスアゾピラゾロンオレンジ系顔料が好ましい。
ペリノン系顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノンオレンジ系顔料;C.I.ピグメントレッド194等のペリノンレッド系顔料などが挙げられる。中でも、連続吐出安定性を向上させる観点から、ペリノンオレンジ系顔料が好ましい。
ジオキサジン系顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット23等のジオキサジンバイオレット系顔料が挙げられる。
銅フタロシアニン系顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7(銅フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(銅フタロシアニングリーン)等の銅フタロシアニングリーン系顔料;C.I.ピグメントブルー15(銅フタロシアニンブルー)等の銅フタロシアニンブルー系顔料等が挙げられる。中でも、連続吐出安定性を向上させる観点から、銅フタロシアニングリーン系顔料が好ましい。
上記の顔料は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
有機顔料Aは、連続吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは、ジスアゾピラゾロンオレンジ系顔料、ペリノンオレンジ系顔料、ジオキサジンバイオレット系顔料、及び銅フタロシアニングリーン系顔料から選ばれる1種以上である。
本発明に係る架橋ポリマーは、前記架橋剤(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル)で架橋されたポリマーであり、該架橋剤由来の架橋構造を有するポリマーである。
前記架橋ポリマーは、顔料水分散体の分散安定性を向上させ、コゲーションの発生を抑制し、連続吐出安定性を向上させる観点から、前記架橋剤による水分散性ポリマーの架橋物を含むことが好ましく、前記架橋剤による水分散性ポリマーの架橋物であることがより好ましい。
本発明において、「水分散性ポリマー」は架橋前のポリマーを意味し、また、該水分散性ポリマーは、有機顔料を常温で水又は水を主成分とする媒体に分散させる能力を有するポリマーを意味する。
水分散性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられる。水分散性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水分散性ポリマーは、連続吐出安定性を向上させる観点から、ビニル単量体の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
水分散性ポリマーは、前記架橋剤と反応しうる反応性基(架橋性官能基)を有する。反応性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及び水酸基の親水性官能基等が挙げられるが、反応安定性の観点から、好ましくはカルボキシ基である。水分散性ポリマーに用いるカルボキシ基を有するビニル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸系ポリマーが挙げられる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上」を意味する。以下における「(メタ)アクリル酸」も同義である。
水分散性ポリマーは、顔料水分散体の分散安定性を向上させ、コゲーションの発生を抑制し、連続吐出安定性を向上させる観点、及び保存安定性を向上させる観点から、好ましくはイオン性モノマー由来の構成単位を含む。
前記イオン性モノマーは、酸性、中性及びアルカリ性のいずれかの条件でイオンとなりうる基を有するモノマーである。
前記イオン性モノマーは、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、前記架橋剤と反応しうる反応性基を有する。該反応性基としては、前述のものが挙げられ、イオン性モノマーとしては、該反応性基を有するアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられる。これらの中でも、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、前記反応性基を有するアニオン性モノマーが好ましい。
前記反応性基を有するアニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。中でも、カルボン酸モノマーがより好ましい。
カルボン酸モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸が更に好ましい。
水分散性ポリマーは、顔料表面へのポリマーの吸着性の観点から、好ましくは疎水性モノマー由来の構成単位を含む。モノマーの「疎水性」とは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であることをいう。前記疎水性モノマーの25℃におけるイオン交換水100gへの溶解量は、顔料表面へのポリマーの吸着性の観点から、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。
前記疎水性モノマーは、好ましくは芳香族基含有モノマー、及び脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である。
本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上」を意味する。
スチレン系モノマーは、好ましくはスチレン及び2-メチルスチレンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはスチレンである。また、芳香族基含有(メタ)アクリレートは、好ましくはベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、より好ましくはベンジル(メタ)アクリレートである。
これらの中でも、顔料表面へのポリマーの吸着性の観点から、スチレン系モノマーが好ましく、スチレンがより好ましい。
例えば、直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート、分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート、脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
マクロマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物であり、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、好ましくは数平均分子量1,000以上10,000以下の化合物である。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される値である。
片末端に存在する重合性官能基は、好ましくはアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基であり、より好ましくはメタクリロイルオキシ基である。
マクロモノマーは、顔料表面へのポリマーの吸着性の観点から、好ましくは芳香族基含有モノマー系マクロモノマー及びシリコーン系マクロモノマーから選ばれる1種以上であり、より好ましくは芳香族基含有モノマー系マクロモノマーである。
芳香族基含有モノマー系マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン系マクロマーの具体例としては、AS-6(S)、AN-6(S)、HS-6(S)(以上、東亞合成株式会社製の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロモノマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
前記ノニオン性モノマーは、前述のイオン性基を有さず、25℃におけるイオン交換水100gへの溶解量が10g以上のモノマーである。
前記ノニオン性モノマーとしては、水酸基及びポリアルキレンオキシ基の少なくとも一方を有するモノマーが挙げられる。
前記ノニオン性モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(n=2~30、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す。以下のnは当該オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(n=1~30)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(n=1~30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシ(エチレングリコール/プロピレングリコール共重合)(n=1~30、その中のエチレングリコール:n=1~29)(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
商業的に入手しうるノニオン性モノマーの具体例としては、NKエステルM-20G、同40G、同90G、NKエステルEH-4E(以上、新中村化学工業株式会社製の商品名)、ブレンマーPE-90、同200、同350;ブレンマーPME-100、同200、同400;ブレンマーPP-500、同800;ブレンマーAP-150、同400、同550;ブレンマー50PEP-300、同50POEP-800B、同43PAPE-600B(以上、日油株式会社製の商品名)等が挙げられる。
以上のとおり、本発明に係る水分散性ポリマーは、好ましくは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のイオン性モノマー由来の構成単位と、芳香族基含有モノマー及び脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の疎水性モノマー由来の構成単位とを含むビニル系ポリマーであり、より好ましくは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボン酸モノマー由来の構成単位と、芳香族基含有モノマー由来の構成単位とを含むビニル系ポリマーであり、更に好ましくは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボン酸モノマー由来の構成単位と、スチレン系モノマー由来の構成単位とを含むビニル系ポリマーであり、より更に好ましくアクリル酸/スチレン共重合体である。
前記イオン性モノマーの含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させ、コゲーションの発生を抑制し、インクの連続吐出安定性を向上させる観点を向上させる観点、及び保存安定性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
前記疎水性モノマーの含有量は、顔料表面への架橋ポリマーの吸着性の観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
前記ビニル系ポリマー中のイオン性基含有モノマー由来の構成単位及び疎水性モノマー由来の構成単位の合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。
なお、上記のビニル系ポリマー中の各モノマー由来の構成単位の含有量はNMR等の分析により測定することができる。また、ビニル系ポリマー製造時における本発明に係る原料モノマー中の各モノマーの含有量(未中和量としての含有量)の好ましい範囲は、上記のビニル系ポリマー中の各モノマー由来の構成単位の含有量の好ましい範囲と同じとみなすことができる。
水分散性ポリマーを合成により得る場合、本発明に係る原料モノマーを塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造することができる。また、重合モノマーの連鎖の様式に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれの重合様式でもよい。
水分散性ポリマーの市販品としては、ジョンクリル67、同611、同678、同680、同690、同819(BASFジャパン株式会社製)等のアクリル酸/スチレン共重合体等が挙げられる。
なお、重量平均分子量は、実施例に記載の方法により求めることができる。
なお、水分散性ポリマーの酸価は、該水分散性ポリマーを構成する各モノマーの質量比から算出することができる。
本発明において、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルを用いる。
前記架橋剤の市販品としては、「デナコールEX-214L」(ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる
前記架橋剤は、通常エピクロルヒドリンを用いて製造されるため、該架橋剤中に不純物として塩素(塩素イオン)が含まれる。しかしながら、インクジェット記録装置等の記録装置の腐食抑制及び、インクジェット記録方法におけるインクの吐出方式がサーマル方式である場合のサーマルヘッドのヒーター部分におけるコゲーションを抑制し、連続吐出安定性を向上させる観点から、塩素の含有量を低減した架橋剤を用いることが好ましい。当該観点から、前記架橋剤の不純物の塩素イオンの含有量(塩素含有量)は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.7質量%以下であり、そして、架橋剤の生産性の観点から、0質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上である。
前記架橋剤中の塩素は、不純物の塩素イオン(Cl-)として存在すると考えられる。前記架橋剤中の塩素イオンの含有量は、滴定法やイオンクロマトグラフ法により測定した塩素イオン濃度から求めることができる。
本発明の顔料水分散体は、下記の工程1及び工程2を含む製造方法により、効率的に製造することが好ましい。
工程1:水分散性ポリマー、有機顔料A、及び水を含有する顔料混合物を分散処理して、顔料水分散液を得る工程
工程2:工程1で得られた顔料水分散液と、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとを混合して、前記水分散性ポリマーと該架橋剤とを反応させて架橋ポリマーを形成し、顔料水分散体を得る工程
工程1は、水分散性ポリマー、有機顔料A、及び水を含有する顔料混合物を分散処理して、顔料水分散液を得る工程である。
工程1としては、水分散性ポリマー、有機顔料A、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を加えて混合して顔料混合物を得た後、該混合物を分散処理して顔料水分散液を得る工程が好ましい。添加順序に制限はないが、必要に応じて中和剤を用いて調製した水分散性ポリマーの水溶液に、顔料を加えて顔料混合物を得ることが好ましい。
用いられる中和剤としては、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミンが挙げられ、顔料水分散液の分散安定性を向上させ、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、アルカリ金属の水酸化物及びアンモニアから選ばれる1種以上が好ましく、アルカリ金属の水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウムが更に好ましい。
中和剤は、十分に中和を促進させる観点から、中和剤水溶液として用いることが好ましい。中和剤は、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
工程1で用いる水分散性ポリマーの質量に対する有機顔料Aの質量比〔有機顔料A/水分散性ポリマー〕は、顔料水分散液の分散安定性を向上させ、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、顔料混合物中、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上、より更に好ましくは2.5以上であり、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3.5以下である。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機;ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidics 社、商品名)等の高圧ホモジナイザーが挙げられる。
工程1により得られる顔料水分散液の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散液の分散安定性を向上させる観点、及び顔料水分散体の調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
工程2は、工程1で得られた顔料水分散液と前記架橋剤とを混合して、水分散性ポリマーと該架橋剤とを反応させて架橋ポリマーを形成し、顔料水分散体を得る工程である。
工程2において、水分散性ポリマーの架橋性官能基のモル数に対する前記架橋剤のエポキシ基のモル数の比率は、前述のとおりである。
架橋反応の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは80℃以下である。架橋反応の時間は、好ましくは1時間以上10時間以下である。
有機顔料Aの含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させ、コゲーションの発生を抑制し、連続吐出安定性を向上させる観点、及び保存安定性を向上させる観点から、顔料水分散体中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは13質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下である。
架橋ポリマーの含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させ、コゲーションの発生を抑制し、連続吐出安定性を向上させる観点、及び保存安定性を向上させる観点から、顔料水分散体中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
水の含有量は、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、顔料水分散体中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
顔料水分散体における架橋ポリマーに対する有機顔料Aの質量比〔有機顔料A/架橋ポリマー〕は、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点、並びに印字濃度を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上、より更に好ましくは2.5以上であり、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3.5以下である。
25℃における粘度は、後述する実施例に記載した方法にて測定することができる。
本発明のインクジェット記録用水系インクは、前記顔料水分散体と、溶剤とを含有することが好ましい。水系インクには、溶剤の他、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤等を添加し、更にフィルター等によるろ過処理を行うことができる。
本発明において「溶剤」とは水以外のものをいう。
溶剤としては、架橋ポリマーによる過度の粘度増加を抑制する観点、及びインクの乾燥を防ぎ、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、有機溶剤を含有することが好ましい。
前記有機溶剤としては、炭素数1以上4以下の1価のアルコール、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、ケトン、環状エーテル、含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等を含有することができる。前記有機溶剤は、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル及び含窒素複素環化合物から選ばれる1種以上が好ましい。
多価アルコールアルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ε-カプロラクタム等が挙げられる。
上記の有機溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリエチレングリコールの平均分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは400以上であり、そして、好ましくは1,000以下、より好ましくは800以下である。
本発明の水系インクは、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、さらに界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、(1)炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の高級アルコール、多価アルコール、又は芳香族アルコール、並びにこれらのアルコールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド(以下、総称して、「アルキレンオキシド」という)を付加したポリオキシアルキレンのアルキルエーテル、アルケニルエーテル、アルキニルエーテル又はアリールエーテル、(2)炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する高級アルコールと多価脂肪酸とのエステル、(3)炭素数8~20の直鎖又は分岐鎖の、アルキル基又はアルケニル基を有する、ポリオキシアルキレン脂肪族アミン、(4)炭素数8以上22以下の高級脂肪酸と、多価アルコールのエステル化合物又はそれにアルキレンオキシドを付加した化合物等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、日信化学工業株式会社製のサーフィノールシリーズ、川研ファインケミカル株式会社製のアセチレノールシリーズ、花王株式会社製のエマルゲン120(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)等が挙げられる。
本発明の水系インク中の有機顔料A及び架橋ポリマーの合計含有量は、印字濃度の観点、並びに連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、水系インク中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下である。
本発明の水系インク中の水の含有量は、連続吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは87質量%以下である。
20℃における静的表面張力は、後述する実施例に記載した方法にて測定することができる。
25℃における粘度は、後述する実施例に記載した方法にて測定することができる。
本発明の顔料水分散体を配合した水系インクは、インクの吐出方式がサーマル方式であっても安定した連続吐出安定性を達成することができ、サーマル方式によるインクジェット記録用として好適に用いることができる。この理由として、本発明の顔料水分散体は、前記架橋剤により架橋されたポリマーと特定の種類である有機顔料Aとが特異的な強い親和性を有し、サーマル方式のインクジェットプリンタのヒーター部分で液体媒体が蒸発して顔料同士の距離が接近した状態になったとしても、分散安定性に優れ、顔料の凝集を抑制でき、さらに液体媒体中の顔料に吸着せずに浮遊している粗大粒子化した架橋ポリマーの量を低減することができるため、コゲーションの発生を抑制することができ、連続吐出安定性が向上することが考えられる。
なお、各種物性の測定は、以下の方法により行った。
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔GPC装置(型式:HLC-8320GPC、東ソー株式会社製)、カラム(TSKgel SuperAWM-H、TSKgel SuperAW3000、TSKgel guardcolumn Super AW-H、以上、東ソー株式会社製の商品名)、流速:0.5mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンキット〔PStQuick B(F-550、F-80、F-10、F-1、A-1000)、PStQuick C(F-288、F-40、F-4、A-5000、A-500)、以上、東ソー株式会社製の商品名〕を用いて測定した。
測定サンプルは、ガラスバイアル中に水分散性ポリマー0.1gを前記溶離液10mLと混合し、25℃で10時間、マグネチックスターラーで撹拌し、シリンジフィルター(商品名:DISMIC-13HP、メンブレンフィルター材質:親水性PTFE、孔径0.2μm、アドバンテック株式会社製)で濾過したものを用いた。
30mlのポリプロピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
レーザー粒子解析システム「ELS-8000」(大塚電子株式会社)(キュムラント解析)を用いて測定されるキュムラント平均粒径を、顔料水分散体中又は水系インク中の顔料A含有架橋ポリマー粒子の平均粒径とした。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度は、5×10-3%で行った。
表面張力計「CBVP-Z」(協和界面科学株式会社製)を用いて、白金プレートを5gの水系インクの入った円柱ポリエチレン製容器(直径3.6cm×深さ1.2cm)に浸漬させ、20℃にて顔料水分散体又は水系インクの静的表面張力を測定した。
E型粘度計(東機産業株式会社製、型番:TV-25、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数:50rpm)にて25℃にて顔料水分散体又は水系インクの粘度を測定した。
実施例1-1
(工程1)
有機顔料AとしてC.I.ピグメントオレンジ34(ジスアゾピラゾロンオレンジ系顔料)を165部、水分散性ポリマーとしてアクリル酸/スチレン共重合体「ジョンクリル690」(重量平均分子量:16,500、酸価:240mgKOH/g)(BASF社製)の水溶液(濃度20%)を固形分として55部、及び水分散性ポリマーの中和剤として5N水酸化ナトリウム水溶液(富士フイルム和光純薬工業社製、試薬)を33部混合して顔料混合物を得た後、ジルコニアビーズを用いて該顔料混合物を分散処理することで、固形分濃度が22%である顔料水分散液を得た。
(工程2)
工程1で得られた顔料水分散液795部に対して、架橋剤としてデナコールEX-214L(ナガセケムテックス株式会社製、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、エポキシ当量:120、塩素含有量:0.4%)4.0部(水分散性ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する架橋剤のエポキシ基のモル数の比率:14モル%)、イオン交換水12.2部を加え、撹拌しながら70℃で6時間加熱した。
次いで、室温まで冷却した後、フィルター「ミニザルトシリンジフィルター」(ザルトリウス社製、孔径:5μm、材質:酢酸セルロース)で濾過して粗大粒子を除き、顔料A含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体(I-1)を得た。
顔料水分散体(I-1)の固形分濃度は22質量%(顔料の含有量:16.2%、架橋ポリマーの含有量:5.8%)であった。表1に顔料水分散体(I-1)の特性を示す。
実施例1-1の工程2において、架橋剤としてデナコールEX-214L 4.0部を2.0部(水分散性ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する架橋剤のエポキシ基のモル数の比率:7モル%)とし、イオン交換水12.2部を10.2部とした以外は実施例1と同様の方法で顔料A含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体(I-2)を得た。表1に顔料水分散体(I-2)の特性を示す。
実施例1-2の工程1において、有機顔料AとしてC.I.ピグメントオレンジ34を表1に示す顔料に代えた以外は実施例1-1と同様の方法で顔料A含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体(I-3)~(I-5)及び(I-C1),(I-C2),(I-C7)を得た。表1に各顔料水分散体の特性を示す。
実施例1-1の工程2において、架橋剤としてデナコールEX-214L 4.0部をデナコール810(ナガセケムテックス株式会社製、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量:113、塩素含有量:0.6%)3.8部(水分散性ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する架橋剤のエポキシ基のモル数の比率:14%)に代えた以外は実施例1-1と同様の方法で顔料A含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体(I-C3)を得た。表1に各顔料水分散体(I-C3)の特性を示す。
実施例1-1の工程2において、架橋剤としてデナコールEX-214L 4.0部をデナコールEX-850L(ナガセケムテックス株式会社製 ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量:145、塩素含有量:0.6%)4.8部(水分散性ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する架橋剤のエポキシ基のモル数の比率:14%)に代えた以外は実施例1-1と同様の方法で顔料A含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体(I-C4)を得た。表1に各顔料水分散体(I-C4)の特性を示す。
実施例1-1の工程2において、架橋剤としてデナコールEX-214L 4.0部をエポライト70P(共栄社化学株式会社製、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量:140~160)5.0部(水分散性ポリマーのカルボキシ基のモル数に対するエポキシ基のモル数の比率:14モル%)に代えた以外は実施例1-1と同様の方法で顔料A含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体(I-C5)を得た。表1に各顔料水分散体(I-C5)の特性を示す。
実施例1-1の工程2において、架橋剤としてデナコールEX-214L 4.0部をデナコールEX-321L(ナガセケムテックス株式会社製、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、エポキシ当量:130、塩素含有量:0.3%)4.3部(水分散性ポリマーのカルボキシ基のモル数に対するエポキシ基のモル数の比率:14モル%)に代えた以外は実施例1-1と同様の方法で顔料A含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体(I-C6)を得た。表1に各顔料水分散体(I-C6)の特性を示す。
実施例1-1の工程2において、架橋剤としてデナコールEX-214L 4.0部をデナコールEX-212L(ナガセケムテックス株式会社製、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エポキシ当量:135、塩素含有量:0.4%)4.6部(水分散性ポリマーのカルボキシ基のモル数に対するエポキシ基のモル数の比率:14モル%)に代えた以外は実施例1-1と同様の方法で顔料A含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体(I-C8)を得た。表1に各顔料水分散体(I-C8)の特性を示す。
(有機顔料)
PO34:C.I.ピグメント・オレンジ34(ジスアゾピラゾロンオレンジ系顔料、大日精化工業株式会社製)
PO43:C.I.ピグメント・オレンジ43(ペリノンオレンジ系顔料、大日精化工業株式会社製)
PV23:C.I.ピグメント・バイオレット23(ジオキサジンバイオレット系顔料、大日精化工業株式会社製)
PG7:C.I.ピグメント・グリーン7(銅フタロシアニングリーン、クラリアントジャパン株式会社製)
PV19:C.I.ピグメント・バイオレット19(キナクリドン顔料)(大日精化工業株式会社製)
PR122:C.I.ピグメント・レッド122(キナクリドン顔料)(大日精化工業株式会社製)
M717:カーボンブラック(キャボットスペシャルティケミカルズ社製、商品名「Monarch 717 カーボンブラック」)
(水分散性ポリマー)
J690:ジョンクリル690
(架橋剤)
デナコールEX-214L:1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル
デナコールEX-810:エチレングリコールルジグリシジルエーテル
デナコールEX-850L:ジエチレングリコールジグリシジルエーテル
デナコールEX-321L:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル
デナコールEX-212L:1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
エポライト70P:プロピレングリコールジグリシジルエーテル
実施例2-1
実施例1-1で得られた顔料水分散体(I-1)24.8部、ポリエチレングリコール400(富士フイルム和光純薬工業社製、試薬、数平均分子量360~440(カタログ値))10部、サーフィノール104PG-50(日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤のプロピレングリコール溶液、有効分:50%)1部、エマルゲン120(花王株式会社製、エーテル系非イオン性界面活性剤)0.5部及びインクの全量が100部になるようにさらにイオン交換水を加えて撹拌した後、0.3μmのフィルター「20L-MBP-003XS」(ROKI社製)で濾過し、実施例2-1の水系インク(II-1)(水系インク中の顔料及び架橋ポリマーの合計含有量:5.46%)を得た。
実施例2-1において、顔料水分散体を表1に示すとおり変更した以外は同様の手順で、水系インク(II-2)~(II-5)及び比較例(II-C1)~(II-C8)の水系インクを得た。
<連続吐出安定性の評価>
サーマルヘッドを有するインクジェット記録装置「LPP-6010N」(LGエレクトロニクス社製)の送液チューブを引き出し、チューブをインクタンクへ投入して印刷できるように改造した印刷機に実施例及び比較例で得られた水系インクを充填し、温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境下、ベストモードで縦1,600dpi×横1,600dpiの解像度でDuty100%の印刷条件にて、A4サイズの普通紙「All-in-One paper」(Office Max社製)に連続印刷を行い、1枚目の印字濃度より0.05低い値となるまでに印刷できた枚数を測定し、下記の評価基準で評価した。
なお、印字濃度は、得られた印刷物の印字濃度(黒の光学濃度として出力される値)を、分光測色計/濃度計「スペクトロアイ」(エックスライト株式会社製)を用いて、測定条件(観測視野角:2度、観測光源:D65、白色基準:Abs、偏光フィルター:なし、濃度基準:DIN)にて計5点測定し、その平均値を該印刷物の印字濃度として用いた。下記評価基準Aであれば水系インクとして好適である。下記評価基準B又はCでは実用上支障がある。
(評価基準)
A:A4用紙15,000枚以上
B:A4用紙10,000枚以上15,000枚未満
C:A4用紙10,000枚未満
実施例及び比較例で得られた水系インク40gを50ccスクリュー管(株式会社マルエム製、スクリュー管瓶 No.7)に密栓し、温度70℃(湿度設定なし)に設定した恒温恒湿機(エスペック株式会社製、型式:PR-3FT)に2週間保存し、保存前後の平均粒径変化を下記式より算出される粒径変化率として評価した。下記粒径変化率が100%に近いほど保存安定性に優れることを示す。
粒径変化率(%)=|〔(保存後の水系インク中の顔料A含有架橋ポリマー粒子の平均粒径/水系インク中の顔料A含有架橋ポリマー粒子の初期平均粒径)-1〕×100|
なお、「初期平均粒径」とは、保存前の水系インク中の顔料A含有架橋ポリマー粒子の平均粒径であり、表2に示す実施例及び比較例で得られた水系インク中の顔料A含有架橋ポリマー粒子の平均粒径である。下記評価基準Aであれば水系インクとして好適である。評価基準Bであれば実用上支障はないが、評価基準Cは実用上支障がある。
(評価基準)
A:粒径変化率が5%未満
B:粒径変化率が5%以上10%未満
C:粒径変化率が10%以上
比較例1-1,1-2及び比較例1-7の各顔料水分散体を含有する水系インクは、有機顔料として、キナクリドン顔料又はカーボンブラックを用いているため、連続吐出安定性が劣る。
比較例1-3~1-6,1-8の各顔料水分散体を含有する水系インクは、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル以外の架橋剤を用いているため、連続吐出安定性が劣る。
Claims (7)
- 有機顔料Aが架橋ポリマーで分散された顔料水分散体であって、
該有機顔料Aが、ジスアゾピラゾロン系顔料、ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、及び銅フタロシアニン系顔料から選ばれる1種以上であり、
該架橋ポリマーが、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルによる水分散性ポリマーの架橋物であり、
該水分散性ポリマーが、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボン酸モノマー由来の構成単位と、スチレン系モノマー由来の構成単位とを含むビニル系ポリマーであり、
該水分散性ポリマーの酸価が、200mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であり、
該水分散性ポリマーの架橋性官能基のモル数に対する該架橋剤のエポキシ基のモル数の比率が、3モル%以上20モル%以下である、顔料水分散体。 - 前記スチレン系モノマーが、スチレン及び2-メチルスチレンから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の顔料水分散体。
- 前記水分散性ポリマーの重量平均分子量が、5,000以上30,000以下である、請求項1又は2に記載の顔料水分散体。
- 前記有機顔料Aの含有量が、顔料水分散体中、5質量%以上20質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の顔料水分散体。
- 前記顔料水分散体における架橋ポリマーに対する有機顔料Aの質量比〔有機顔料A/架橋ポリマー〕が、1以上5以下である、請求項1~4のいずれかに記載の顔料水分散体。
- 請求項1~5のいずれかに記載の顔料水分散体と、溶剤とを含有する、インクジェット記録用水系インク。
- 有機顔料Aが架橋ポリマーで分散された顔料水分散体の製造方法であって、
該有機顔料Aが、ジスアゾピラゾロン系顔料、ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、及び銅フタロシアニン系顔料から選ばれる1種以上であり、
下記の工程1及び工程2を含み、
工程1:水分散性ポリマー、有機顔料A、及び水を含有する顔料混合物を分散処理して、顔料水分散液を得る工程
工程2:工程1で得られた顔料水分散液と、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとを混合して、該水分散性ポリマーと該架橋剤とを反応させて架橋ポリマーを形成し、顔料水分散体を得る工程
該水分散性ポリマーが、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボン酸モノマー由来の構成単位と、スチレン系モノマー由来の構成単位とを含むビニル系ポリマーであり、
該水分散性ポリマーの酸価が、200mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であり、
該水分散性ポリマーの架橋性官能基のモル数に対する該架橋剤のエポキシ基のモル数の比率が、3モル%以上20モル%以下である、顔料水分散体の製造方法。
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