以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
図1は、実施形態における技能比較装置の構成を示すブロック図である。図2は、参照者および対象者に対する、前記技能比較装置で用いられる光学式モーションキャプチャにおける複数のマーカの取り付け位置、および、前記技能比較装置で用いられるフォースプレートの配置位置を説明するための図である。図3は、身体における各部位の各重心位置を説明するための図である。図3では、各部位の各重心位置は、●で示されている。
本実施形態における技能比較装置は、身体の動作によって実施され、所定の物を扱う所定の作業に関わる技能を、参照者および対象者で比較する装置である。前記参照者は、作業の作業結果が前記対象者の作業結果より優れている者である。前記参照者は、前記対象者が自己の技能を向上させるために、その技能が前記対象者によって参照される者である。そして、複数の作業者から、前記参照者を選定するために、本実施形態における技能比較装置は、複数の作業者を作業の作業結果に応じてクラス分けするための所定の情報を取得するように構成されている。さらに、本実施形態では、様々な複数の項目の中から、前記所定の項目を選定する選定機能も、前記技能比較装置は、備えている。このような技能比較装置Dは、例えば、図1に示すように、主に技能を比較するために、複数の撮像部11-1~11-k(kは2以上の整数)、外力測定部12、制御処理部3における後述の位置処理部32、動作情報処理部33および対象値処理部35、出力部5、ならびに、記憶部7における参照情報記憶部71を備える。主に前記クラス分けするための所定の情報を取得するために、この技能比較装置Dは、形状測定部21、計時部22、および、制御処理部3における後述の作業結果処理部34および参照者決定処理部36を備える。主に前記選定機能のために、この技能比較装置Dは、制御処理部3における後述の主成分分析処理部37を備える。そして、本実施形態では、この技能比較装置Dは、制御処理部3における後述の制御部31、入力部4およびインターフェース部(IF部)6を備える。
複数の撮像部11-1~11-kは、それぞれ、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、複数のマーカを付された作業者(例えば前記参照者、前記対象者および被験者等)に対し、互いに異なる複数の方向から、前記複数のマーカを撮像して画像(画像データ)を生成する装置である。例えば、作業者が入る直方体の空間(例えば4m×4m×2m等)における上方の4個のコーナーに4個の撮像部11-1~11-4が前記空間の中央領域を向くように光軸を斜め下方に向けて配置され、前記空間における下方の4個のコーナーに4個の撮像部11-5~11-8が前記空間の中央領域を向くように光軸を斜め上方に向けて配置される。これによって8個の撮像部11-1~11-8は、それぞれ、作業者に対し、互いに異なる8方向から、作業者に付されたマーカを撮像して画像を生成する。複数の撮像部11-1~11-kは、それぞれ、前記撮像して生成した画像を制御処理部3へ出力し、制御処理部3は、これら複数の撮像部11-1~11-kからの複数の画像を互いに関連付けて記憶部7に記憶する。より具体的には、このような撮像部11-1~11-kは、それぞれ、例えば、撮像対象における赤外の光学像を所定の結像面上に結像する結像光学系、前記結像面に受光面を一致させて配置され、前記撮像対象における赤外の光学像を電気的な信号に変換するエリアイメージセンサ、および、エリアイメージセンサの出力を画像処理することで前記撮像対象における赤外の画像を表すデータである画像データを生成する画像処理部等を備えるデジタル赤外線カメラである。
前記複数のマーカは、それぞれ、赤外光(赤外線)を反射する部材であり、所定の物を扱う作業者(参照者、対象者、被験者)の身体および前記物それぞれにおける複数の箇所に付される。複数のマーカMKは、例えば、図2に示すように、19個の各身体部位の各重心位置を測定するために、作業者の身体LBにおける41個の各箇所それぞれに取り付けられ、さらに、前記物の重心位置を測定するために、前記物における3個の各箇所それぞれに取り付けられる。19個の身体部位は、本実施形態では、例えば、頭部、首部、胸部、右肩部、左肩部、右上腕部、左上腕部、右前腕部、左前腕部、右手部、左手部、腰部、尻部、右腸骨部、左腸骨部、右膝部、左膝部、右足部および左足部である。身体の動きを好適に解析するために、複数の撮像部11-1~11-kにおけるサンプリング周波数は、例えば100[Hz]である。前記作業者における身体の動作は、身体動作情報として、本実施形態では、例えば図3に示すように、19個の各身体部位それぞれの各重心位置(各重心位置の時間変位)で表され、前記作業者における身体の動きにより生じる前記物の動きは、物動き情報として、前記物の重心位置(重心位置の時間変位)で表される。
作業者における身体の動作は、物を扱う動作であれば、任意の動作であって良い。好ましくは、一例では、前記身体の動作は、任意の所定の作業の実施に伴う動作であり、前記作業は、例えば、物品の製造作業や物品の運搬作業等だけでなく、芸能やスポーツ等を含んで良い。前記物は、前記作業で用いられる任意の所定の物であり、好ましくは、一例では、前記物は、前記作業で用いられるツールである。より具体的には、本実施形態では、前記作業は、車両に用いられる部材を成型するための車両部材成型用金型に対する研削または研磨の作業である。この場合では、前記ツールは、一例では、ハンドグラインダー(Hand Grinder)である。もちろん、これに限定されるものではなく、例えば、前記作業は、溶接の作業であり、前記ツールは、例えばトーチ等の溶接機であり、また例えば、前記作業は、塗装の作業であり、前記ツールは、例えばスプレーガン等の塗装用具である。好適には、前記作業は、車両の製造に関わる作業であり、前記ツールは、前記作業に関わるツールである。
なお、上述では、前記マーカは、赤外光を反射する部材であり、これに応じて撮像部11は、デジタル赤外線カメラであるが、前記マーカは、所定の色、例えば対象者の着衣の色と異なる色の部材であって良く、この場合、撮像部11は、可視光のカメラであって良い。
図1に戻って、外力測定部12は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、作業者の身体に作用する外力を測定する装置である、外力測定部12は、その測定結果(身体に作用する外力)を制御処理部3へ出力する。制御処理部3は、後述のように位置処理部32で求められた身体動作情報および物動き情報と関連付けて、この測定結果を記憶部7に記憶する。外力測定部12は、例えば、XYZの各成分で、変位、速度および加速度それぞれを測定するAMTI社製のフォースプレートを備える。本実施形態では、3個の第1ないし第3フォースプレート12-1~12-3が用いられ、図2に示すように、第1フォースプレート12-1は、前記作業者の右足部に作用する外力を測定するように、床上に配置され、第2フォースプレート12-2は、前記作業者の左足部に作用する外力を測定するように、第1フォースプレート12-1と左右方向に沿って並置して前記床上に配置され、第3フォースプレート12-3は、前記ツールを把持する手部に作用する外力(前記ツールからの反力)を測定するように、作業対象(後述の検証実験の例ではテストピースTP)が載置され、前記作業者が作業する作業台上に配置される。これら第1ないし第3フォースプレート12-1~12-3におけるサンプリング周波数は、撮像部11のサンプリングに同期するように、100[Hz]である。
形状測定部21は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、測定対象(後述の例では作業後のテストピースTP)の形状を測定する装置である。形状測定部21は、その測定結果(測定対象の形状)を制御処理部3へ出力する。制御処理部3は、位置処理部32で求められた身体動作情報および物動き情報と関連付けて、この測定結果を記憶部7に記憶する。形状測定部21は、例えば、3次元座標値で測定対象の形状を測定する、KEYENCE社製の3D形状測定機を備える。
計時部22は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、前記作業に要した時間(作業時間)を測定する装置であり、例えば、ストップウォッチ等である。計時部22は、その測定結果(作業時間)を制御処理部3へ出力する。
入力部4は、制御処理部3に接続され、例えば、比較開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば作業者名等の、技能を比較する上で必要な各種データを技能比較装置Dに入力する機器であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチやキーボードやマウス等である。出力部5は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、入力部4から入力されたコマンドやデータ、撮像部11の画像、各部12、21、22の各測定結果(解析情報)、技能比較装置Dによって取得された身体動作情報および物動き情報、前記参照者における所定の項目に関する参照値、ならびに、前記対象者における前記項目に関する対象値等を出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
なお、入力部4および出力部5からいわゆるタッチパネルが構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部4は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置であり、出力部5は、表示装置である。このタッチパネルでは、前記表示装置の表示面上に前記位置入力装置が設けられ、前記表示装置に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置を触れると、前記位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として技能比較装置Dに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い技能比較装置Dが提供される。
IF部6は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、IrDA(Infrared Data Asscoiation)規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部6は、外部機器との間で通信を行う回路であり、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等であっても良い。
記憶部7は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、技能比較装置Dの各部11、12、21、22、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、複数の撮像部11-1~11-kで撮像した各画像に基づいて複数のマーカの位置を求める位置処理プログラムや、前記位置処理プログラムで求めた複数のマーカの各位置に基づいて、前記作業者の身体を複数に分けた複数の身体部位における各重心位置および前記物の重心位置を、前記作業者における身体の動作を表す身体動作情報および前記物の動きを表す物動き情報として求める動作情報処理プログラムや、形状測定部21で測定した形状に基づいて寸法精度(加工精度)を求める作業結果処理プログラムや、前記動作情報処理プログラムで求めた身体動作情報および物動き情報に基づいて、前記対象者における所定の項目に関する対象値を求める対象値処理プログラムや、前記参照者を決定する参照者決定処理プログラムや、後述のように主成分分析を実行して前記所定の項目を選定する主成分分析処理プログラム等の制御処理プログラムが含まれる。前記各種の所定のデータには、撮像部11の画像、各部12、21、22の各測定結果、画像や各測定結果を所定の処理手法に従って情報処理した処理結果(例えば上述の重心位置や主成分分析の各主成分等)および作業者名等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部7は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部7は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部3のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。
そして、記憶部7は、前記参照者における所定の項目に関する参照値を記憶する参照情報記憶部71を機能的に備える。前記所定の項目は、所定の物を扱う所定の作業に関わる技能を特徴付ける項目であり、本実施形態では、前記身体を複数に分けた複数の身体部位のうち、前記所定の物を扱う身体部位の変位、前記複数の身体部位のうちの体幹部の旋回速度、および、前記複数の身体部位のうちの腰部の加速度である。前記項目には、参照者および対象者における各技能をより多角的に比較するために、左足部にかかる左足荷重、左足部から右足部へ体重移動する踏込み動作、および、右足部にかかる右足荷重のうちの1または複数が含まれて良い。このような項目は、重要度順に選定し、より少数化するために、後述のように、主成分分析によって決定される。
制御処理部3は、技能比較装置Dの各部11、12、21、22、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、身体の動作によって実施され、所定の物を扱う所定の作業に関わる技能を、参照者および対象者で比較するための回路である。制御処理部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部3には、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部31、位置処理部32、動作情報処理部33、作業結果処理部34、対象値処理部35、参照者決定処理部36および主成分分析処理部37が機能的に構成される。
制御部31は、技能比較装置Dの各部11、12、21、22、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、技能比較装置D全体の制御を司るものである。制御部31は、複数の撮像部11-1~11-kで撮像した各画像を、所定の識別子(例えばシリアル番号や前記各画像に写し込まれている作業者の作業者名等)と関連付けて記憶部7に記憶する。制御部31は、計時部22で測定された作業時間を作業結果の1つとして、前記識別子と関連付けて記憶部7に記憶し、必要に応じて出力部5やIF部6に出力する。
位置処理部32は、複数の撮像部11-1~11-kで撮像した各画像に基づいて前記複数のマーカの各位置を求めるものである。位置処理部32は、この求めた前記複数のマーカの各位置を、前記各画像と関連付けて(例えば前記各画像に関連付けられている前記識別子と関連付けて)記憶部7に記憶し、必要に応じて出力部5やIF部6に出力する。
より具体的には、赤外光を反射するマーカを撮像部11(11-1~11-k)で撮像することによって生成された画像では、前記マーカを写し込んだ画像領域は、その画素値がその周囲の画素値と異なるので(例えば、前記マーカを写し込んだ画像領域の画素は、その周囲の画素より明るく、その画素値が高い)、位置処理部32は、まず、前記各画像それぞれについて、当該画像を2値化処理等の画像処理することで、当該画像から、マーカを写し込んだ画像領域を抽出し、当該画像での、前記抽出した画像領域の2次元座標値を求める。そして、位置処理部32は、同一のマーカについて、異なる複数の撮像部11で撮像された各画像から抽出された各画像領域の各2次元座標値から、カメラパラメータ(前記異なる複数の撮像部11における各配置位置および各姿勢(各光軸方向))を用いた、いわゆるエピポーラマッチングにより、前記マーカの位置として前記マーカの3次元座標値を求める。
本実施形態では、複数の撮像部11-1~11-kおよび位置処理部32は、前記複数のマーカの各位置を測定する位置測定部の一例を構成し、例えば、OptiTrack Japan社製の光学式モーションキャプチャを備えて構成される。
動作情報処理部33は、位置処理部32で求めた複数のマーカの各位置に基づいて、前記作業者の身体を複数に分けた複数の身体部位における各重心位置および前記物の重心位置を、前記作業者における身体の動作を表す身体動作情報および前記物の動きを表す物動き情報として求めるものである。動作情報処理部33は、この求めた身体動作情報および物動き情報を、前記各位置と関連付けて(例えば前記各画像を介して前記各位置に関連付けられている前記識別子と関連付けて)記憶部7に記憶し、必要に応じて出力部5やIF部6に出力する。
より具体的には、動作情報処理部33は、各サンプリングタイミング(上述の例ではサンプリング周波数100[Hz]での各サンプリングタイミング)それぞれにおいて、位置処理部32で求めた複数のマーカの各位置に基づいて19個の各身体部位それぞれの各重心位置を求める。例えば、19個の各身体部位それぞれにおいて、当該身体部位に関わる複数のマーカの位置から当該身体部位の重心位置を求める第1演算式が予め求められて記憶部7に記憶され、動作情報処理部33は、19個の各身体部位それぞれについて、位置処理部32で求めた当該身体部位に関わる複数のマーカの各位置から前記第1演算式に基づいて当該身体部位の重心位置を求める。同様に、物(本実施形態ではツール)に関わる複数のマーカの位置から前記物の重心位置を求める第2演算式が予め求められて記憶部7に記憶され、動作情報処理部33は、位置処理部32で求めた前記物に関わる複数のマーカの各位置から前記第2演算式に基づいて前記物の重心位置を求める。
作業結果処理部34は、形状測定部21で測定した形状に基づいて寸法精度(加工精度)を求めるものである。形状測定部21で測定した前記作業の成果物における形状が作業結果の他の1つとされて良いが、本実施形態では、作業結果処理部34は、前記作業の成果物における精度(寸法精度、加工精度)を作業結果の他の1つとして求める。作業結果処理部34は、この求めた寸法精度を、前記識別子と関連付けて記憶部7に記憶し、必要に応じて出力部5やIF部6に出力する。
対象値処理部35は、動作情報処理部33で求めた対象者における身体動作情報および物動き情報に基づいて、前記対象者における所定の項目に関する対象値を求めるものである。より詳しくは、本実施形態では、前記項目に、左足荷重、踏込み動作および右足荷重のうちの1または複数が含まれる場合、対象値処理部35は、動作情報処理部33で求めた対象者における身体動作情報および物動き情報、ならびに、外力測定部12で測定した測定結果に基づいて、前記対象値を求める。対象値処理部35は、この求めた対象値を、前記身体動作情報および物動き情報と関連付けて(例えば前記身体動作情報および物動き情報に関連付けられている前記識別子と関連付けて)記憶部7に記憶し、必要に応じて出力部5やIF部6に出力する。そして、本実施形態では、対象値処理部35は、動作情報処理部33で求めた参照者における身体動作情報および物動き情報に基づいて、前記参照者における所定の項目に関する参照値を求め、この求めた参照値を参照情報記憶部71に記憶する。より詳しくは、本実施形態では、前記項目に、左足荷重、踏込み動作および右足荷重のうちの1または複数が含まれる場合、対象値処理部35は、動作情報処理部33で求めた参照者における身体動作情報および物動き情報、ならびに、外力測定部12で測定した測定結果に基づいて、前記参照値を求める。
参照者決定処理部36は、後述のように、参照者を決定するものである。なお、オペレータ(ユーザ)によって入力部4から参照者として作業者名(被験者名)が入力され、参照者決定処理部36は、この入力部から入力された作業者名(被験者名)を持つ作業者(被験者)を参照者として決定しても良い。
主成分分析処理部37は、後述のように、主成分分析を実行して前記所定の項目を選定するものである。
そして、制御部31は、参照情報記憶部71に記憶された参照者の参照値、および、対象値処理部35で求めた対象者の対象値を出力部5に出力し、必要に応じてIF部6に出力する。
ここで、これら複数の撮像部11-1~11-k、外力測定部12、位置処理部32および動作情報処理部33は、作業者(参照者、対象者)における身体の動作を測定する動作測定部1を構成し、前記対象者における身体の動作を測定する動作測定部の一例に相当する。本実施形態では、後述するように、主成分分析の説明変数には、右足部に作用する外力のXYZ成分、左足部に作用する外力のXYZ成分、および、物を把持した手部に作用する外力のXYZ成分が含まれるので、外力測定部12(第1ないし第3フォースプレート12-1~12-3)が動作測定部1に含まれている。第1フォースプレート12-1は、前記右足荷重を取得する右足荷重取得部の一例に相当する。第2フォースプレート12-2は、前記左足荷重を取得する左足荷重取得部の一例に相当する。第1および第2フォースプレート12-1、12-2は、前記踏込み動作を取得する踏込み動作取得部の一例に相当する。これら形状測定部21、計時部22および作業結果処理部34は、前記所定の作業における作業結果を取得する作業結果取得部2を構成する。
次に、新たな知見および技能比較装置の動作について説明する。図4は、作業の内容および前記作業に用いられるテストピースを説明するための図である。図4Aは、模式的に作業前のテストピースを示す斜視図であり、図4Bは、模式的に作業後のテストピースを示す斜視図である。図5は、前記技能比較装置の動作を示すフローチャートである。図6は、前記技能比較装置に表示される技能比較表示画面を説明するための図である。
身体の動作によって実施され、所定の物を扱う所定の作業に関わる技能を、重要度の高い項目であってより少数の項目によって、参照者および対象者で比較するために、次のように、実施形態における技能比較装置Dが用いられ、複数の作業者に前記作業を実施させることによって前記複数の作業者の中から、参照者が選定され、前記作業で得られたデータを用いた主成分分析によって重要度の高い項目であってより少数の項目が選定され、新たな知見が得られた。
より具体的には、前記作業は、前記物としてツールのグラインダーを用いた、上述の金型の研削または研磨の作業(グラインダー作業)である。このグラインダー作業は、金型を粗く削る荒工程と、粗く削った表面を滑らかな表面になるように研磨する仕上工程の2工程を備えるが、グラインダー作業による切削精度(作業対象の寸法精度、加工精度)を向上させるためには、通常、荒工程の作業を高精度かつ高効率に実施することが重要である。このため、ここでは、金型に見立てたテストピースTPに対しグラインダー作業における荒工程の作業を作業者(被験者、参照者、対象者)に実施させ、技能比較装置Dによる各測定が実施された。
このテストピースTPは、例えば、図4Aに示すように、中央部に機械加工により深さ0.1mmで一方向に帯状に延びる凹条TPbを形成した100×100×35mmのSS材(一般構造用圧延鋼材)である。このテストピースTPに対し、前記荒工程の作業は、凹条TPbを形成することによって凹条TPbの両側それぞれに形成された高さ0.1mmの凸部TPa、TPcの一方、例えば、凸部TPcをハンディ型のグラインダーで均一に0.1mmだけ研削する作業である。このような荒工程の作業後、テストピースTPには、図4Bに示すように、凹条TPbの底面と略面一な研削平面部TPdが形成される。作業者は、初級者から熟練者までを含む46名である。
これら46名の各作業者は、順次に、前記テストピースTPに対し前記荒工程の作業を実施する。その実施中、上述の技能比較装置Dが用いられ、図5において、まず、複数の撮像部11それぞれによって当該作業者およびそのツールに付された複数のマーカの各画像が生成され、当該作業者の作業者名(作業者ID)と互いに関連付けられて記憶部7に記憶され(S1-1)、外力測定部12(12-1~12-3)によって当該作業者における身体に作用する外力が測定され、当該作業者の作業者名と互いに関連付けられて記憶部7に記憶され(S1-2)、位置処理部32によって、処理S1-1で複数の撮像部11-1~11-kによって生成された各画像に基づいて前記複数のマーカの各位置が求められ、当該作業者の作業者名と互いに関連付けられて記憶部7に記憶され(S2)、動作情報処理部33によって、処理S2で位置処理部32によって求めた前記複数のマーカの各位置に基づいて、当該作業者における身体動作情報(各身体部位の各重心位置)および物動き情報(ツールの重心位置)が求められ、当該作業者の作業者名と互いに関連付けられて記憶部7に記憶される(S3)。なお、前記作業者名は、例えば、前記作業の開始前に入力部4から入力され、制御部31によって記憶部7に記憶される。
前記実施中、計時部22によって当該作業者の作業時間が作業結果の1つとして測定され、当該作業者の作業者名と互いに関連付けられて記憶部7に記憶される(S1-3)。
そして、作業の終了後に、形状測定部21によって作業後のテストピースTPの形状が測定され、当該作業者の作業者名と互いに関連付けられて記憶部7に記憶され(S1-4)、作業結果処理部34によって、前記測定された形状に基づいて寸法精度が求められ、当該作業者の作業者名と互いに関連付けられて記憶部7に記憶される(S4)。なお、当該作業者における身体の動作および外力の各測定(動作分析の時間)は、荒工程の研削開始からの2分間とされた。
続いて、参照者決定処理部36によって、参照者が決定される(S11)。前記参照者は、上述したように、作業結果が優れた者であるので、作業結果に応じて作業者が複数のクラスにクラス分けされ、前記作業結果に基づいて参照者が決定された。本実施形態では、5個のAクラスないしEクラスが設定された。Aクラスは、作業結果が劣る、すなわち、熟練度が最低である初級者のクラスである。Bクラスは、作業結果が普通である、すなわち、熟練度が普通(中級)である中級者のクラスである。Cクラスは、作業結果が準優秀である、すなわち、熟練度が準上級である準上級者のクラスである。Dクラスは、作業結果が優秀である、すなわち、熟練度が上級である上級者のクラスである。Eクラスは、作業結果が最優秀である、すなわち、熟練度が最高である最上級者のクラスである。上述のグラインダー作業における荒工程では、その技能の熟練度が上がるほど、寸法精度(加工精度)が高く、作業効率が高い、すなわち、作業時間が短い、と考えられ、さらに、バラツキが少ないと考えられる。そこで、本実施形態では、寸法精度および作業時間それぞれの各標準偏差σが求められ、寸法精度が高く作業時間が短い方から、略3σ以内の範囲がEクラスに設定され、略3σを超え、略2.5σ以内である範囲がDクラスに設定され、略2.5σを超え、略2σ以内である範囲がCクラスに設定され、略2σを超え、略1σ以内である範囲がDクラスに設定され、略1σを超える範囲がAクラスに設定されるように、各クラスを分ける寸法および作業時間の各閾値(寸法閾値、作業時間閾値)が設定された。具体的には、各クラスを分ける各寸法閾値[mm]および各作業時間閾値[min]は、表1の通りである。
ここで、テストピースTPに対する寸法精度は、例えば、凹条TPbの底面を含む平面を基準平面とし、研削平面部TPdに仮想的に設定された正方格子の各格子点を各測定点とし、各測定点それぞれにおいて、前記基準平面に対する高さ方向の差(前記基準平面からの高さまたは深さ)を求め、各測定点の各差の各絶対値における平均値として求められる。寸法精度の平均値Avesは、0.032[mm]であり、その標準偏差σsは、0.022[mm]であり、作業時間の平均値Avetは、14.4[min]であり、その標準偏差σtは、8.0[min]であった。
このようなクラス分けでは、46名の作業者は、3名がAクラスに属し、11名がBクラスに属し、13名がCクラスに属し、14名がDクラスに属し、5名がEクラスに属するように、分けられた。Eクラスに属する5名は、官能評価であるが、他の作業者等から、作業結果が最優秀で熟練度が最上級であると見られており、Aクラスに属する3名は、新人であることから、表1によるクラス分けは、妥当である。なお、上述では、AクラスとEクラスとの間に、Bクラス、CクラスおよびDクラスの3個のクラスが設けられたが、AクラスとEクラスとの間のクラス数は、任意で良く、1個でも、2個でも4個以上であっても良い。
本実施形態では、Eクラスに弁別する前記寸法閾値0.03[mm]および前記作業時間閾値10[min]がオペレータ(ユーザ)によって予め設定されることでEクラスの作業者が参照者として予め設定されており、参照者決定処理部36は、複数の被験者の中から、寸法精度が寸法閾値0.03[mm]以下であって、作業時間が作業時間閾値10[min]以下である作業者を参照者として決定(選定、抽出)する。
続いて、主成分分析処理部37によって、主成分分析が実施され、前記所定の項目が決定(選定)される(S12)。より具体的には、主成分分析処理部37は、前記複数の身体部位における各重心の各変位、各速度および各加速度、前記物における重心の変位、速度および加速度、前記右足部に作用する外力のXYZ成分、前記左足部に作用する外力のXYZ成分、ならびに、前記物を把持した手部に作用する外力のXYZ成分を説明変数として前記身体の動作を表す場合における主成分分析の第1ないし第3主成分に基づいて、前記所定の物を扱う身体部位の変位、前記体幹部の旋回速度、および、前記腰部の加速度を、前記所定の項目として求め、前記主成分分析の第4ないし第6主成分に基づいて、前記左足荷重、前記踏込み動作および前記右足荷重を、前記所定の項目として求める。各サンプリングタイミングそれぞれについて、当該サンプリングタイミングでの重心の変位、速度および加速度は、当該サンプリングタイミングでの重心の位置および当該サンプリングタイミングに時間的に隣接するサンプリングタイミングでの重心の位置ならびにサンプリング周波数から求められる。
より詳しくは、主成分分析処理部37は、まず、前記複数の身体部位における各重心の各変位、各速度および各加速度、前記物における重心の変位、速度および加速度、前記右足部に作用する外力のXYZ成分、前記左足部に作用する外力のXYZ成分、ならびに、前記物を把持した手部に作用する外力のXYZ成分を説明変数として前記身体の動作を表す場合において、主成分分析を実施する。すなわち、本実施形態では、19個の身体部位における各重心の各変位、各速度および各加速度から成る57個の説明変数、前記物における重心の変位、速度および加速度から成る3個の説明変数、前記右足部に作用する外力のXYZ成分(第1フォースプレート12-1の測定結果)から成る3個の説明変数、前記左足部に作用する外力のXYZ成分(第2フォースプレート12-2の測定結果)から成る3個の説明変数、ならびに、前記物を把持した手部に作用する外力のXYZ成分(第3フォースプレート12-3の測定結果)から成る3個の説明変数の、合計69個の説明変数から成る69次元の空間において、前記作業者46名から得られた、19個の身体部位における各重心の各変位、各速度および各加速度、前記物における重心の変位、速度および加速度、前記右足部に作用する外力のXYZ成分、前記左足部に作用する外力のXYZ成分、ならびに、前記物を把持した手部に作用する外力のXYZ成分の各データを用いて相関行列の主成分分析が実行される。その固有ベクトルの一部が表2に示されている。この表2には、Eクラスに属する3人のαさん、βさんおよびγさんにおける6個の第1ないし第6主成分PC1~PC6が示されている。第1ないし第3主成分の累積寄与率は、五十数%であり、3個の第1ないし第3主成分で、69次元空間の前記各データにおける50%以上のデータがカバーできる(説明できる)。第1ないし第6主成分の累積寄与率は、七十数%であり、6個の第1ないし第6主成分で、69次元空間の前記各データにおける70%以上のデータがカバーできる(説明できる)。
そして、個々の参照者ではなく、Eクラスに属する5人の参照者(αさん、βさん、γさん、δさん、εさん)で、前記所定の物を扱う所定の作業に関わる技能を特徴付けるために、第1ないし第6主成分ごとに、Eクラスに属する5人の参照者における各固有ベクトルが合成された。より具体的には、主成分分析処理部37は、第1主成分PC1において、αさんの第1主成分PC1、βさんの第1主成分PC1、γさんの第1主成分PC1、δさんの第1主成分PC1、および、εさんの第1主成分PC1の中から、大きい順に、5人に応じて5個の説明変数を選択する。主成分分析処理部37は、第2主成分PC2において、αさんの第2主成分PC2、βさんの第2主成分PC2、γさんの第2主成分PC2、δさんの第2主成分PC2、および、εさんの第2主成分PC2の中から、大きい順に、5人に応じて5個の説明変数を選択する。主成分分析処理部37は、第3ないし第6主成分PC3~PC6それぞれにおいて、同様に、5個の説明変数をそれぞれ選択する。このように選択された選択結果が、表3に示されている。この表3において、各欄は、紙面の左から右へ順に、第1ないし第6主成分PC1~PC6それぞれから選択された選択結果(説明変数)である。例えば、第1主成分PC1では、「変位_首_XYZ、変位_首_XYZ、変位_右上腕_XYZ、変位_右上腕_XYZ、変位_右手_XYZ」が選択結果である。ここで、「変位_首_XYZ」(変位_Neck_XYZ)は、XYZ直交座標系での首部の変位を意味し、「変位_右上腕_XYZ」(変位_RUAm_XYZ)は、XYZ直交座標系での右上腕部の変位を意味し、「変位_右手_XYZ」(変位_RHand_XYZ)は、XYZ直交座標系での右手部の変位を意味する。「加速度_グラインダー_XYZは、XYZ直交座標系でのツールの加速度を意味し、「床面反力_右足_x」は、XYZ直交座標系での右足部に作用する外力のx成分を意味する。他も同様に意味する。このように6個の第1ないし第6項目それぞれを構成する構成要素が、主成分分析処理部37によって選定される。
ここで、本実施形態では、第1主成分PC1から選択された「変位_首_XYZ、変位_首_XYZ、変位_右上腕_XYZ、変位_右上腕_XYZ、変位_右手_XYZ」は、「所定の物を扱う身体部位の変位」と意味付けられ、項目名とされた。第2主成分PC2から選択された「速度_右肩_XYZ、速度_首_XYZ、速度_右上腕_XYZ、速度_左肩_XYZ、加速度_グラインダー_XYZ」は、「体幹部の旋回速度」と意味付けられ、項目名とされた。第3ないし第6主成分PC3~PC6それぞれについて、同様に、各選択結果は、それぞれ、「腰部の加速度」、「左足荷重」、「踏込み動作」、および、「右足荷重」と意味付けられ、項目名とされた。
続いて、対象値処理部35によって、参照値が求められ、参照情報記憶部71に記憶される(S13)。より具体的には、対象値処理部35は、第1ないし第6主成分(第1ないし第6項目)それぞれについて、前記選択結果(項目の構成要素)の固有ベクトルごとに、当該構成要素の固有ベクトルに、当該構成要素に対応する、Eクラスに属する5人の参照者における各実測値の平均値(以下、この段落において「Eクラスの実測平均値」と略記する)を乗算することによって、主成分スコアを参照値として求める。例えば、第1主成分スコア、すなわち、本実施形態では、所定の物を扱う身体部位の変位の参照値(第1項目の第1参照値)は、(変位_首_XYZの固有ベクトル)×(前記変位_首_XYZでの、Eクラスの実測平均値)、(変位_首_XYZの固有ベクトル)×(前記変位_首_XYZでの、Eクラスの実測平均値)、(変位_右上腕_XYZの固有ベクトル)×(前記変位_右上腕_XYZでの、Eクラスの実測平均値)、(変位_右上腕_XYZの固有ベクトル)×(前記変位_右上腕_XYZでの、Eクラスの実測平均値)、および、(変位_右手_XYZの固有ベクトル)×(前記変位_右手_XYZでの、Eクラスの実測平均値)の和である。また例えば、第2主成分スコア、すなわち、本実施形態では、体幹部の旋回速度の参照値(第2項目の第2参照値)は、(速度_右肩_XYZの固有ベクトル)×(前記速度_右肩_XYZでの、Eクラスの実測平均値)、(速度_首_XYZの固有ベクトル)×(前記速度_首_XYZでの、Eクラスの実測平均値)、(速度_右上腕_XYZの固有ベクトル)×(前記速度_右上腕_XYZでの、Eクラスの実測平均値)、(速度_左肩_XYZの固有ベクトル)×(前記速度_左肩_XYZでの、Eクラスの実測平均値)、および、(加速度_グラインダー_XYZの固有ベクトル)×(前記加速度_グラインダー_XYZでの、Eクラスの実測平均値)の和である。第3ないし第6主成分スコアの第3ないし第6参照値も同様に求められる。
続いて、対象値処理部35によって、対象値が求められ、記憶部71に記憶される(S5)。より具体的には、対象値処理部35は、第1ないし第6主成分(第1ないし第6項目)それぞれについて、前記選択結果(項目の構成要素)の固有ベクトルごとに、当該構成要素の固有ベクトルに、当該構成要素に対応する対象者の実測値を乗算することによって、主成分スコアを参照値として求める。例えば、第1主成分スコア、すなわち、本実施形態では、所定の物を扱う身体部位の変位の対象値(第1項目の第1対象値)は、(変位_首_XYZの固有ベクトル)×(前記変位_首_XYZでの、対象者の実測値)、(変位_首_XYZの固有ベクトル)×(前記変位_首_XYZでの、対象者の実測値)、(変位_右上腕_XYZの固有ベクトル)×(前記変位_右上腕_XYZでの、対象者の実測値)、(変位_右上腕_XYZの固有ベクトル)×(前記変位_右上腕_XYZでの、対象者の実測値)、および、(変位_右手_XYZの固有ベクトル)×(前記変位_右手_XYZでの、対象者の実測値)の和である。また例えば、第2主成分スコア、すなわち、本実施形態では、体幹部の旋回速度の対象値(第2項目の第2対象値)は、(速度_右肩_XYZの固有ベクトル)×(前記速度_右肩_XYZでの、対象者の実測値)、(速度_首_XYZの固有ベクトル)×(前記速度_首_XYZでの、対象者の実測値)、(速度_右上腕_XYZの固有ベクトル)×(前記速度_右上腕_XYZでの、対象者の実測値)、(速度_左肩_XYZの固有ベクトル)×(前記速度_左肩_XYZでの、対象者の実測値)、および、(加速度_グラインダー_XYZの固有ベクトル)×(前記加速度_グラインダー_XYZでの、対象者の実測値)の和である。第3ないし第6主成分スコアの第3ないし第6対象値も同様に求められる。
そして、制御部31によって、参照情報記憶部71に記憶された参照者の参照値、および、対象値処理部35で求めた対象者の対象値が出力部5に出力され、必要に応じてIF部6に出力され(S6)、本処理が終了する。出力部5が表示装置である場合において、この処理S6の実行によって、作業に関わる技能を、参照者および対象者で比較するための技能比較表示画面が出力部5に表示される。
この技能比較表示画面は、例えば、図6に示すように、スケール(目盛り)SCと、項目ごとに、互いに並置された参照値および対象値それぞれの各棒グラフa-1~f-1;a-2~f-2とを備えて構成される。より具体的には、スケールSCの下方に、互いに並置された、所定の物を扱う身体部位の変位における第1参照値の棒グラフa-1および第1対象値の棒グラフa-2と、互いに並置された、体幹部の旋回速度における第2参照値の棒グラフb-1および第2対象値の棒グラフb-2と、互いに並置された、腰部の加速度における第3参照値の棒グラフc-1および第3対象値の棒グラフc-2と、互いに並置された、左足荷重における第4参照値の棒グラフd-1および第4対象値の棒グラフd-2と、互いに並置された、踏込み動作における第5参照値の棒グラフe-1および第5対象値の棒グラフe-2と、互いに並置された、右足荷重における第6参照値の棒グラフf-1および第6対象値の棒グラフf-2とが、さらに並置されている。この図6に示す例では、対象者は、この技能比較表示画面を参照することで、作業の技能において、第1対象値が第1参照値に近いが、他の第2ないし第6対象値それぞれが第2ないし第6参照値と大差があると、認識でき、第2ないし第6項目を、改善すべき改善項目として認識できる。
以上説明したように、本実施形態における技能比較装置Dおよびこれに実装された技能比較方法は、所定の物を扱う身体部位の変位、体幹部の旋回速度および腰部の加速度それぞれに関する各参照値および各対象値を出力するので、上述の新たな知見に基づく重要度の高い項目であってより少数の項目で参照者および対象者における各技能を比較できる。
上記技能比較装置Dおよび技能比較方法は、左足荷重、踏込み動作および右足荷重それぞれに関する各参照値および各対象値をさらに出力するので、上述の新たな知見に基づく重要度の高い項目であってより少数の項目で参照者および対象者における各技能をより多角的に比較できる。
上記技能比較装置Dおよび技能比較方法では、参照者は、作業結果が対象者の作業結果より優れているので、前記対象者は、自己の技能の向上のために、自己よりも優れた参照者の参照値と自己の対象値とを比較でき、その差を認識できる。前記比較は、各項目ごとに実施できるので、前記対象者は、改善すべき項目を認識できる。
上記技能比較装置Dおよび技能比較方法は、光学式モーションキャプチャを用いるので、身体の動作を妨げることなく非接触で対象者における身体の動作を測定できる。
上記技能比較装置Dおよび技能比較方法は、前記作業が研削または研磨の作業であるので、研削または研磨の作業に関わる技能を、参照者および対象者で比較できる。
上記技能比較装置Dおよび技能比較方法は、所定の物を扱う身体部位の変位、体幹部の旋回速度、腰部の加速度、左足荷重、踏込み動作および右足荷重が主成分分析の第1ないし第6主成分に基づいて求められるので、重要な順に適切に項目を選定できる。
本実施形態によれば、前記作業の成果物における精度および前記作業に要した時間を前記作業結果とした技能比較装置Dおよび技能比較方法それぞれが提供できる。
なお、上述の実施形態では、対象者の対象値の演算に合わせて、参照者の決定(選定)、主成分分析による項目の決定および参照者の参照値の演算が実施されたが、対象者の対象値の演算とは別に、参照者の決定、主成分分析による項目の決定および参照者の参照値の演算が、本装置D、別の装置Dまたは手動演算によって予め実施され、参照値が参照情報記憶部71に予め記憶され、対象値の演算アルゴリズム(例えば上述の処理S5で説明した演算方法等)が予め記憶部7に記憶されても良い。この場合では、図5に示す処理S1-3、処理S-4、処理S4、処理S11、処理S12および処理S13が省略され、処理S1-1、処理S2、処理S3および処理S1-2の各処理の実行に続いて、処理S5および処理S6の各処理が実行される。これに応じて作業結果取得部2、作業結果処理部34、参照者決定処理部36および主成分分析処理部37も省略できる。すなわち、技能比較装置Dは、動作測定部1、制御部31、位置処理部32、動作情報処理部33および対象値処理部35を備える制御処理部3、出力部5および記憶部7を備えて構成されて良い。
また、上述の実施形態では、参照者は、Eクラスに属する作業者であったが、これに限定されるものではなく、その作業結果が対象者の作業結果より優れている者であれば、良い。例えば、参照者は、対象者の属するクラスよりも上位のクラスに属する者であって良い。より具体的には、例えば対象者がAクラスに属する場合、参照者は、Bクラス、Cクラス、DクラスおよびEクラスのうちのいずれかに属する者であって良く、また例えば、対象者がCクラスに属する場合、参照者は、DクラスまたはEクラスに属する者であって良い。参照者が対象者の属するクラスより1つだけ上位のクラスに属する者である場合、対象値と参照値との差が小さくなるため、参照値に達し易くなり、技能向上の意欲が対象者に付与できる。
また、上述の実施形態では、技能比較装置Dは、処理S6において、第1ないし第6参照値と第1ないし第6対象値とを出力部5に出力したが、これに加えて、参照者および対象者それぞれについて、身体動作情報、物動き情報、寸法精度および作業時間等の各データを出力部5に出力しても良い。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。