JP7325972B2 - 3dプリンター用粉体材料、三次元造形物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
[1]平均粒径が5μm以上100μm以下であり、結晶化度が10%以上60%以下であり、かつ示差走査熱量計で測定される融点Tm2が250℃以上400℃以下である液晶性樹脂微粒子を含む、粉末焼結法3Dプリンター用粉体材料。
[2]液晶性樹脂微粒子の、示差走査熱量計で測定される融点Tm2と融点Tm1のオンセット温度との差ΔTm(Tm2-Tm1オンセット温度)が30℃以上90℃以下である、[1]に記載の粉体材料。
[3]液晶性樹脂微粒子の、示差走査熱量計で測定される融点Tm2よりも10~30℃高いシリンダー温度及びせん断速度100sec-1で測定した溶融粘度が、10Pa・s以上1000Pa・s以下である、[1]又は[2]に記載の粉体材料。
[4]液晶性樹脂微粒子の最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)が、5以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の粉体材料。
[5]液晶性樹脂微粒子が、全芳香族ポリエステル及び全芳香族ポリエステルアミドから選択される少なくとも一種の樹脂を含む、[1]から[4]のいずれかに記載の粉体材料。
[6][1]から[5]のいずれかに記載の粉体材料を粉末焼結法3Dプリンターに供給する、三次元造形物の製造方法。
[7][1]から[5]のいずれかに記載の粉体材料を用いて形成された、三次元造形物。
本発明者は、研究の過程で、平均粒径、結晶化度及び示差走査熱量計(DSC)で測定される融点Tm2が所定の範囲である樹脂微粒子を用いて粉末焼結法3Dプリンターで造形された三次元造形物が、実装用部材として求められる優れた強度及び耐熱性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本明細書において、「微粒子」との用語は、0.1μm~1000μm程度の平均粒径を有する粒子のことをいい、「平均粒径」とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法による体積基準の算術平均粒子径を意味する。平均粒径は、例えば、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920を用いて測定することができる。
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステル;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(5)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド等、を挙げることができる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
なお、融点Tm2は、JIS K-7121(1999)に基づいた方法により、室温から20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度(融点Tm1)の測定後、(融点Tm1+40)℃で2分間保持し、次いで20℃/分の降温速度で室温まで冷却し、再度室温から20℃/分の昇温速度で加熱(2stRUN)した際に観測される2ndRUNの吸熱ピークにおけるピークトップの温度とする。後述する融点Tm1のオンセット温度(ピークの立ち上がり開始温度)は、上記1stRUNの吸熱ピークにおけるオンセットの温度とする。
粉粒状充填剤としては、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイト等の硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ等の金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
板状充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、タルク、各種の金属箔等が挙げられる。
これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することができる。
充填剤の含有量は、液晶性樹脂100質量部に対して、0~100質量部とすることができる。
また、液晶性樹脂には、その他の成分として、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、結晶核剤等の添加剤が配合されていてもよい。
粉体材料は、粉末焼結法3Dプリンター用粉体材料であり、上記した液晶性樹脂微粒子のみからなる材料であってもよいし、上記液晶性樹脂粉体を、他の無機充填剤等の添加剤と混合した混合材料であってもよい。
無機充填剤としては、平均粒径が500nm以下、又は400nm以下の粉粒状充填剤、板状充填剤や、平均繊維長が100μm以下の繊維状充填剤等を挙げることができる。無機充填剤の材質は、特に限定されず、例えば、上記した液晶性樹脂に配合することができる無機充填剤と同様のものを用いることができる。上記平均粒径を有する粉粒状充填剤、板状充填剤を用いることで、上記液晶性樹脂微粒子の粉体流動性や分散性を高めることができる。上記平均繊維長を有する繊維状充填剤を用いることで、得られる三次元造形物の強度をより高めることができる。なお、平均粒径は、上記した樹脂微粒子と同じ方法で測定することができる。平均繊維長は、例えば、株式会社ニコレ製画像測定器LUZEXFSを用いて測定することができる。
本実施形態に係る三次元造形物は、上記した液晶性樹脂微粒子を含む粉体材料を用いて形成される。三次元造形物は、上記した液晶性樹脂微粒子を含む粉体材料を用いて形成されているので、実装用部材として求められる強度及び耐熱性を十分満足することができる。三次元造形物は、ASTM D790に準拠して測定した曲げ強度が、40MPa以上であることが好ましく、200MPa以下であることがより好ましい。また、三次元造形物の荷重たわみ温度は、ASTM D648に準拠し、測定した温度として、150℃以上であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましい。上記範囲の曲げ強度及び荷重たわみ温度を有する三次元造形物は、優れた強度及び耐熱性を有するので、高温下で使用される自動車部品、半田リフロー工程にて実装される電気・電子部品等として用いることができる。
本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、上記した樹脂微粒子を含む粉体材料を粉末焼結法3Dプリンターに供給する工程を有する。その後、供給された粉体材料を用いて三次元造形物を造形する(造形工程)。
粉末焼結法3Dプリンターによる造形工程では、供給された粉体材料で薄層を形成し、該薄層に造形対象物の断面形状に対応する形状にレーザー光を照射して、粉体材料を焼結させる。この工程を順次繰り返すことによって、焼結された薄層が積層されて三次元造形物が製造される。粉末焼結法3Dプリンターは、従来公知のものを用いることができ、例えば、株式会社アスペクト社製「ラファエロII 150-HT」等を挙げることができる。こうして得られた三次元造形物は、上記した樹脂微粒子を用いて形成されているので、実装用部材として用いる場合に求められる強度及び耐熱性を十分に満足することができる。
[製造例1]LCP1:全芳香族ポリエステル
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に325℃まで3.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて5Torr(即ち667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてLCP1ペレットを得た。
(原料)
4-ヒドロキシ安息香酸;1660g(73モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;837g(27モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);165mg
アシル化剤(無水酢酸);1714g
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてLCP2ペレットを得た。
(原料)
4-ヒドロキシ安息香酸;1380g(60モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;157g(5モル%)
テレフタル酸;484g(17.5モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル;388g(12.5モル%)
4-アセトキシアミノフェノール;160g(5モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);110mg
アシル化剤(無水酢酸);1659g
LCP2ペレットを、窒素雰囲気下で室温から290℃まで20分かけて昇温し、3時間保持した後、放冷し、LCP3ペレットを得た。
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから30分かけて5Torr(即ち667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレットを得た。得られたペレットを、窒素雰囲気下で室温から290℃まで20分かけて昇温し、3時間保持した後、放冷し、LCP4ペレットを得た。
(原料)
4-ヒドロキシ安息香酸;37g(2モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;1218g(48モル%)
テレフタル酸;560g(25モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル;628g(25モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);165mg
アシル化剤(無水酢酸);1432g
LCP1をマスコロイダー(増幸産業株式会社製、MKZA10-15JP)を用いて、水温35℃の環境下で湿式粉砕処理した後、スプレードライして液晶性微粒子を得た。この液晶性樹脂微粒子の、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、結晶化度、並びに融点(Tm2,Tm1オンセット温度)を、後述の方法で測定した。結果を表1に示した。
得られた液晶性樹脂微粒子を使用して、粉末焼結法3Dプリンター(株式会社アスペクト社製「ラファエロII 150-HT」)によって寸法が120mm×14mm×2mmである三次元造形物を作製した。粉末積層時の粉面荒れ、レーザー光照射時の反りは発生せず良好な三次元造形物が得られた。
液晶性樹脂を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして三次元造形物を得た。実施例1と同様にして、液晶性樹脂微粒子の、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、結晶化度、並びに融点(Tm2,Tm1オンセット温度)を測定した。結果を表1に示した。
LCP2をメッシュミル型粉砕機(株式会社ホーライ製、HA-2542)を用いて、凍結粉砕処理して液晶性微粒子を得た以外は、実施例1と同様にして三次元造形物を得た。実施例1と同様にして、液晶性樹脂微粒子の、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、結晶化度、並びに融点(Tm2,Tm1オンセット温度)を測定した。結果を表1に示した。
液晶性樹脂を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして三次元造形物を得た。実施例1と同様にして、液晶性樹脂微粒子の、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、結晶化度、並びに融点(Tm2,Tm1オンセット温度)を測定した。結果を表1に示した。
キャピラリー式レオメーター(株式会社東洋精機製作所製キャピログラフ1D:ピストン径10mm)を用いて、以下の条件で、ISO 11443に準拠し、見かけの溶融粘度を測定した。測定には、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いた。
シリンダー温度:
300℃(LCP1)
350℃(LCP2、LCP3)
370℃(LCP4)
せん断速度:100sec-1
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA-920)を用い、分散溶媒としてメタノールを用いて、平均粒径及び最大粒径を測定した。なお、平均粒径は、体積基準の算術平均粒子径である。
X線回折装置(ブルカー社製、D2 PHASER)を用いて、得られる回折情報(広角X線回折図形または広角X線回折プロファイル)から、非晶に由来する散乱領域と結晶に由来する散乱領域とを分け、W.Ruland,Acta Cryst.,14,1180(1961)に記載の方法に準拠し、以下の式(I)により、結晶化度を測定した。
結晶化度(%)=[結晶由来散乱強度/(結晶由来散乱強度+非結晶由来散乱強度)]×100・・・(I)
示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7000X)を用いて、室温から20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度(融点Tm1)の測定後、(融点Tm1+40)℃の温度で2分間保持し、次いで20℃/分の降温速度で室温まで冷却し、再度室温から20℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される2ndRUNの吸熱ピークにおけるピークトップの温度を融点Tm2として測定した。また、1stRUNの吸熱ピークにおけるオンセットの温度(ピークが立ち上がり始める温度)を融点Tm1オンセット温度として測定した。
実施例及び比較例で得られた三次元造形物について、以下の方法で曲げ強度及び荷重たわみ温度を測定し、強度及び耐熱性を評価した。結果を表1に示した。
実施例及び比較例と同じ方法で、粉末焼結法3Dプリンターを使用して80mm×10mm×1.6mmの試験片を作製した。この試験片を用いて、ASTM D790に準拠し、曲げ強度を測定した。
実施例及び比較例と同じ方法で、粉末焼結法3Dプリンターを使用して80mm×10mm×3.2mmの試験片を作製した。この試験片を用いて、ASTM D648に準拠し、荷重たわみ温度を測定した。なお、曲げ応力としては、1.8MPaを用いた。
Claims (7)
- 平均粒径が5μm以上100μm以下であり、結晶化度が10%以上60%以下であり、かつ示差走査熱量計で測定される融点Tm2が250℃以上400℃以下である液晶性樹脂微粒子を含み(但し、融点Tm2は、JIS K-7121(1999)に基づいた方法により、室温から20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度(融点Tm1)の測定後、(融点Tm1+40)℃で2分間保持し、次いで20℃/分の降温速度で室温まで冷却し、再度室温から20℃/分の昇温速度で加熱(2stRUN)した際に観測される2ndRUNの吸熱ピークにおけるピークトップの温度とする)、
前記液晶性樹脂微粒子を構成する液晶性樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである、粉末焼結法3Dプリンター用粉体材料。 - 液晶性樹脂微粒子の、示差走査熱量計で測定される前記融点Tm2と前記融点Tm1のオンセット温度との差ΔTm(Tm2-Tm1オンセット温度)が30℃以上90℃以下である、請求項1に記載の粉体材料。
- 液晶性樹脂微粒子の、示差走査熱量計で測定される前記融点Tm2よりも10~30℃高いシリンダー温度及びせん断速度100sec-1で測定した溶融粘度が、10Pa・s以上1000Pa・s以下である、請求項1又は2に記載の粉体材料。
- 液晶性樹脂微粒子の最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)が、5以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の粉体材料。
- 液晶性樹脂微粒子が、全芳香族ポリエステル及び全芳香族ポリエステルアミドから選択される少なくとも一種の樹脂を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の粉体材料。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の粉体材料を粉末焼結法3Dプリンターに供給する、三次元造形物の製造方法。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の粉体材料を用いて三次元造形物を形成する、三次元造形物の製造方法。
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