JP7319789B2 - 位相制御装置、音響装置及び位相制御方法 - Google Patents

位相制御装置、音響装置及び位相制御方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7319789B2
JP7319789B2 JP2019031475A JP2019031475A JP7319789B2 JP 7319789 B2 JP7319789 B2 JP 7319789B2 JP 2019031475 A JP2019031475 A JP 2019031475A JP 2019031475 A JP2019031475 A JP 2019031475A JP 7319789 B2 JP7319789 B2 JP 7319789B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
frequency spectrum
phase
speaker
sound
phase adjustment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019031475A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020137041A (ja
Inventor
武志 橋本
哲生 渡邉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Faurecia Clarion Electronics Co Ltd
Original Assignee
Clarion Co Ltd
Faurecia Clarion Electronics Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Clarion Co Ltd, Faurecia Clarion Electronics Co Ltd filed Critical Clarion Co Ltd
Priority to JP2019031475A priority Critical patent/JP7319789B2/ja
Priority to PCT/JP2020/005724 priority patent/WO2020175175A2/en
Publication of JP2020137041A publication Critical patent/JP2020137041A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7319789B2 publication Critical patent/JP7319789B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04RLOUDSPEAKERS, MICROPHONES, GRAMOPHONE PICK-UPS OR LIKE ACOUSTIC ELECTROMECHANICAL TRANSDUCERS; DEAF-AID SETS; PUBLIC ADDRESS SYSTEMS
    • H04R5/00Stereophonic arrangements
    • H04R5/04Circuit arrangements, e.g. for selective connection of amplifier inputs/outputs to loudspeakers, for loudspeaker detection, or for adaptation of settings to personal preferences or hearing impairments
    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04SSTEREOPHONIC SYSTEMS 
    • H04S7/00Indicating arrangements; Control arrangements, e.g. balance control
    • H04S7/30Control circuits for electronic adaptation of the sound field
    • H04S7/301Automatic calibration of stereophonic sound system, e.g. with test microphone
    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04SSTEREOPHONIC SYSTEMS 
    • H04S2420/00Techniques used stereophonic systems covered by H04S but not provided for in its groups
    • H04S2420/05Application of the precedence or Haas effect, i.e. the effect of first wavefront, in order to improve sound-source localisation

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Acoustics & Sound (AREA)
  • Signal Processing (AREA)
  • Stereophonic System (AREA)
  • Circuit For Audible Band Transducer (AREA)
  • Details Of Audible-Bandwidth Transducers (AREA)

Description

本発明は、位相制御装置、音響装置及び位相制御方法に関する。
一般に、車室内には複数の位置にスピーカが設置されている。例えば、右ドア部(運転席側ドア部)の右フロントスピーカと左ドア部(助手席側ドア部)の左フロントスピーカは、車室空間の中心線を挟んで対称となる位置に設置されている。しかし、これらのスピーカは、リスナの聴取位置(運転席や助手席、後部座席など)を基準に考えると、対称となる位置にはない。
例えばリスナが運転席に座る場合、右フロントスピーカとリスナとの距離と、左フロントスピーカとリスナとの距離は等しい距離にはならない。右ハンドル車の場合、前者の距離が後者の距離よりも短い。そのため、両ドア部のスピーカから音が同時に出力されると、運転席に座るリスナの耳には、右フロントスピーカから出力された音が届き、その後、左フロントスピーカから出力された音が届くことが一般的である。リスナの聴取位置と複数のスピーカのそれぞれとの間の距離の差(各スピーカから放出された再生音が到達する時間の差)により、ハース効果による音像定位の偏りが発生する。
音像定位の偏りを改善する技術の一例として、各スピーカから出力される音をリスナ(聴取位置)に同時に到達させるようにスピーカチャンネル毎に遅延時間を設定するタイムアライメントが知られている。タイムアライメントを行う装置の具体的構成は、例えば特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載の装置は、スピーカチャンネル毎に遅延時間を設定するため、各スピーカから順次出力される音を所定の聴取位置で順次収音し、収音された各音からスピーカ毎のインパルス応答を測定する。特許文献1では、インパルス応答にローパスフィルタを適用して高周波ノイズを除去することによってインパルス応答の立ち上がり部分を高精度に検出することにより、各スピーカチャンネルに設定すべき遅延時間の計算精度を向上させている。
特開2005-341534号公報
車室内のような特殊なリスニング環境では、各スピーカから出力される音同士の干渉が発生しやすい。そのため、タイムアライメント等の音像を定位させる従来の技術だけでは、このような干渉によって周波数領域でのディップが発生し、ディップの発生による音質の劣化や音圧の低下を避けることが難しい。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、音像定位の偏りの改善とともに、各スピーカから出力される音同士の干渉による音質劣化や音圧低下を抑えることが可能な位相制御装置、音響装置及び位相制御方法を提供することである。
本発明の一実施形態に係る位相制御装置は、複数のスピーカの各々から出力されて所定の聴取位置で時間的に非干渉なタイミングで収音された各音の信号のインパルス応答を測定する測定部と、測定された各スピーカからの音の信号のインパルス応答をフーリエ変換することによってインパルス応答の周波数スペクトル信号をスピーカ毎に得るフーリエ変換部と、フーリエ変換部によって得られた各周波数スペクトル信号に対し、所定の位相制御を行い、所定の位相制御が行われない他の周波数スペクトル信号と合成することによって第一の振幅特性を得るとともに、位相制御を行わずに他の周波数スペクトル信号と合成することによって第二の振幅特性を得る振幅特性算出部と、各スピーカについて得られた第一の振幅特性と第二の振幅特性に基づいて複数のスピーカの中から所定の条件を満たすスピーカを検出する検出部と、検出されたスピーカに出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節するための第一の位相調節用データに基づいて、所定の聴取位置を含む複数の聴取位置において、複数のスピーカ間の音の干渉による弱めあいが各周波数スペクトルで低減するように、複数のスピーカの各々に出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節するための第二の位相調節用データを生成する生成部とを備える。
このように構成された位相制御装置によれば、音像定位の偏りの改善とともに、各スピーカから出力される音同士の干渉による音質劣化や音圧低下を抑えることが可能となる。
検出部は、スピーカ毎に第一の振幅特性と第二の振幅特性とのレベル差を算出し、各スピーカについて算出されたレベル差に応じた値を比較し、比較の結果に基づいて所定の条件を満たすスピーカを検出する構成としてもよい。より詳細には、検出部は、レベル差を周波数スペクトル毎に算出し、算出された周波数スペクトル毎のレベル差を累積し、各スピーカについて得られたレベル差の累積値を比較し、累積値が最も大きいスピーカを所定の条件を満たすスピーカとして検出する構成としてもよい。
このようにして検出されたスピーカに出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節するための第一の位相調節用データに基づいて第二の位相調節用データを生成することにより、より一層、音像定位の偏りの改善とともに、各スピーカから出力される音同士の干渉による音質劣化や音圧低下を抑えることが可能となる。
振幅特性算出部は、フーリエ変換部によって得られた周波数スペクトル信号毎に次の処理(1)~(5)を行う構成としてもよい。
(1)処理対象の周波数スペクトル信号の位相を変え、位相を変える毎に、処理対象の周波数スペクトル信号と他の周波数スペクトル信号とを合成し、
(2)合成の結果に基づいて、処理対象のスピーカからの音の信号の位相調節量を周波数スペクトル毎に求め、
(3)求めた周波数スペクトル毎の位相調節量と処理対象の周波数スペクトル信号とを複素乗算し、
(4)複素乗算された周波数スペクトル信号と他の周波数スペクトル信号とを合成することによって第一の振幅特性を得て、
(5)位相を変えることなく処理対象の周波数スペクトル信号と他の周波数スペクトル信号とを合成することによって第二の振幅特性を得る。
このようにして得られた第一の振幅特性と第二の振幅特性を用いることにより、効果(聴取位置におけるスピーカ間の音の弱めあいの干渉が低減することによってレベルが増加する効果)を得るのにより一層好適なスピーカを検出することができる。
第一の位相調節用データは、例えば、検出部によって検出されたスピーカから出力される音の位相と他のスピーカから出力される音の位相とが聴取位置において各周波数スペクトルで同相又は逆相となるように、検出されたスピーカに出力される音の位相を周波数スペクトル毎に調節するためのデータである。
このような、第一の位相調節用データを用いることにより、音像定位の偏りの改善とともに、各スピーカから出力される音同士の干渉による音質劣化や音圧低下を抑えるのにより一層好適な第二の位相調節用データを生成することが可能となる。
生成部は、第一の位相調節用データをもとに、複数のスピーカの各々に出力される音の信号に与える位相調節量を周波数スペクトル毎に算出し、算出された周波数スペクトル毎の位相調節量を第二の位相調節用データとして得る構成としてもよい。この場合、生成部は、複数のスピーカの各々に出力される音の信号に与える位相調節量の差が各周波数スペクトルで180度以内に収まるように、位相調節量を算出してもよい。
これにより、所定のリスニング環境下で(例えば、一対のスピーカの位置に対して非対称となる聴取位置、同じく一対のスピーカの位置に対して非対称となる別の聴取位置、の双方において)、より一層、逆相によるスピーカ間の音の干渉を低減することができ、定位を改善するとともに、ディップの発生による音質の劣化や音圧の低下が抑えられるようになる。
本発明の一実施形態に係る音響装置は、上記の位相制御装置を有し、音源から入力される音の信号を複数のスピーカに出力する装置であり、第二の位相調節用データを用いて、音源から入力されて複数のスピーカの各々に出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節する調節部を備える構成としてもよい。
このように構成された音響装置によれば、聴取位置における音像定位の偏りの改善とともに、聴取位置において音同士の干渉による音質劣化や音圧低下が抑えられる音の信号を各スピーカに出力することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る、コンピュータによって実行される位相制御方法は、複数のスピーカの各々から出力されて所定の聴取位置で時間的に非干渉なタイミングで収音された各音の信号のインパルス応答を測定する測定ステップと、測定された各スピーカからの音の信号のインパルス応答をフーリエ変換することによってインパルス応答の周波数スペクトル信号をスピーカ毎に得るフーリエ変換ステップと、フーリエ変換ステップにて得られた各周波数スペクトル信号に対し、所定の位相制御を行い、所定の位相制御が行われない他の周波数スペクトル信号と合成することによって第一の振幅特性を得るとともに、位相制御を行わずに他の周波数スペクトル信号と合成することによって第二の振幅特性を得る振幅特性算出ステップと、各スピーカについて得られた第一の振幅特性と第二の振幅特性に基づいて複数のスピーカの中から所定の条件を満たすスピーカを検出する検出ステップと、検出されたスピーカに出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節するための第一の位相調節用データに基づいて、所定の聴取位置を含む複数の聴取位置において、複数のスピーカ間の音の干渉による弱めあいが各周波数スペクトルで低減するように、複数のスピーカの各々に出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節するための第二の位相調節用データを生成する生成ステップとを含む。
このような位相制御方法によれば、音像定位の偏りの改善とともに、各スピーカから出力される音同士の干渉による音質劣化や音圧低下を抑えることが可能となる。
本発明の一実施形態によれば、音像定位の偏りの改善とともに、各スピーカから出力される音同士の干渉による音質劣化や音圧低下を抑えることが可能な位相制御装置、音響装置及び位相制御方法が提供される。
本発明の一実施形態に係る音響システムが設置された車両を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る音響システムの構成を示すブロック図である。 本発明の一実施形態に係る音響システムで実行される位相調節用データ設定処理のフローチャートを示す図である。 本発明の一実施形態に係る音響システムに備えられる音響装置が有する計算部の構成を示すブロック図である。 図5(a)は、左フロントスピーカと聴取位置(運転席)間のインパルス応答を示す図であり、図5(b)は、右フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答を示す図である。 図6(a)は、左フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル毎の振幅特性を示す図であり、図6(b)は、右フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル毎の振幅特性を示す図である。 図7(a)は、左フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル毎の位相特性を示す図であり、図7(b)は、右フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル毎の位相特性を示す図である。 図8(a)は、左フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル信号を処理対象としたときの合成結果を示す図であり、図8(b)は、右フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル信号を処理対象としたときの合成結果を示す図である。 図9(a)は、右フロントスピーカからの音の位相と左フロントスピーカからの音の位相とが聴取位置で同相となるときの、左フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル信号の位相調節量を示す図であり、図9(b)は、右フロントスピーカからの音の位相と左フロントスピーカからの音の位相とが聴取位置で同相となるときの、右フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル信号の位相調節量を示す図である。 図10(a)は、左フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル信号について得た、第一の振幅特性と第二の振幅特性を示す図であり、図10(b)は、右フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル信号について得た、第一の振幅特性と第二の振幅特性を示す図である。 図11(a)は、図10(a)に示される第一の振幅特性と第二の振幅特性とのレベル差を周波数スペクトル毎に示す図であり、図11(b)は、図10(b)に示される第一の振幅特性と第二の振幅特性とのレベル差を周波数スペクトル毎に示す図である。 右フロントスピーカからの音の位相と左フロントスピーカからの音の位相とが聴取位置で逆相となるときの、右フロントスピーカと聴取位置間のインパルス応答をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル信号の周波数スペクトル毎の位相調節量(第一の位相調節用データ)を示す図である。 図3のステップS23で決定された周波数スペクトル毎の位相調節量を示す図である。 本発明の一実施形態に係る計算部が有するスムージング処理部によるスムージング処理後の位相調節量(基準スピーカ用の第一の位相調節用データ)を示す図である。 本発明の一実施形態に係る音響装置が有する位相反転部によって得られる位相調節量(他のスピーカ用の第二の位相調節用データ)を示す図である。 本発明の一実施形態に係る音響装置が有する位相調節部の構成を示すブロック図である。 図17(a)は、制御なし例において、運転席に設置されたマイクロフォンで収音されるオーディオ信号の時間特性を示す図であり、図17(b)は、位相調節例において、運転席に設置されたマイクロフォンで収音されるオーディオ信号の時間特性を示す図である。 図18(a)は、制御なし例において、助手席に設置されたマイクロフォンで収音されるオーディオ信号の時間特性を示す図であり、図18(b)は、位相調節例において、助手席に設置されたマイクロフォンで収音されるオーディオ信号の時間特性を示す図である。 運転席に設置されたマイクロフォンで収音される、制御なし例のオーディオ信号の周波数特性と位相調節例のオーディオ信号の周波数特性を示す図である。 助手席に設置されたマイクロフォンで収音される、制御なし例のオーディオ信号の周波数特性と位相調節例のオーディオ信号の周波数特性を示す図である。 別の一実施形態において、運転席に設置されたマイクロフォンで収音される、制御なし例のオーディオ信号の周波数特性と位相調節例のオーディオ信号の周波数特性を示す図である。 別の一実施形態において、助手席に設置されたマイクロフォンで収音される、制御なし例のオーディオ信号の周波数特性と位相調節例のオーディオ信号の周波数特性を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本発明の一実施形態として音響システムを例に取り説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る音響システム1が設置された車両Aを模式的に示す図である。図2は、この音響システム1の構成を示すブロック図である。
図1及び図2に示されるように、音響システム1は、音響装置10、スピーカSPFR、SPFL及びマイクロフォンMICを備える。
音響装置10は、車室内というリスニング環境において発生しやすい音像定位の偏りを改善するとともに、車両Aに設置された各スピーカから出力される音同士の干渉による音質劣化や音圧低下を抑えるための位相調節用データを生成する、位相調節用データ生成機能(別の言い方をすると、位相制御装置)を搭載する。
なお、音響装置10における各種処理は、音響装置10に備えられるソフトウェアとハードウェアとが協働することにより実行される。音響装置10に備えられるソフトウェアのうち少なくともOS(Operating System)部分は、組み込み系システムとして提供されるが、それ以外の部分、例えば、位相調節用データの生成処理を実行するためのソフトウェアモジュールについては、ネットワーク上で配布可能な又はメモリカード等の記録媒体にて保持可能なアプリケーションとして提供されてもよい。すなわち、本実施形態に係る位相調節用データ生成機能は、音響装置10に予め組み込まれた機能であっても、ネットワーク経由や記録媒体経由で音響装置10に追加可能な機能であってもよい。
図1に示されるように、スピーカSPFRは、右ドア部(運転席側ドア部)に埋設された右フロントスピーカであり、スピーカSPFLは、左ドア部(助手席側ドア部)に埋設された左フロントスピーカである。車両Aには、更に別のスピーカ(例えばリアスピーカ)が設置(すなわち3基以上のスピーカが設置)されていてもよい。
音響装置10は、制御部100、表示部102、操作部104、測定用信号発生部106、記録媒体再生部108、位相調節部110、増幅部112、信号収録部114及び計算部116を有する。
図3は、音響システム1において実行される位相調節用データ設定処理のフローチャートを示す図である。本フローチャートに示される位相調節用データ設定処理をはじめとする、音響システム1内での各種処理は、制御部100の制御下で実行される。制御部100は、表示部102に対する所定のタッチ操作又は操作部104に対する所定の操作を受けると、本フローチャートに示される位相調節用データ設定処理の実行を開始する。
図3に示される位相調節用データ設定処理の実行が開始されると、測定用信号発生部106が所定の測定用信号を発生させる(ステップS11)。発生された測定用信号は、例えばM系列符号(Maximal length sequence)である。この測定用信号の長さは、符号長の2倍以上とする。なお、測定用信号は、例えばTSP信号(Time Stretched Pulse)等の他の種類の信号であってもよい。
測定用信号は、制御部100及び位相調節部110をスルー出力し、増幅部112を介して各スピーカSPFR、SPFLに順次出力される(ステップS12)。これにより、所定の測定用音が所定の時間間隔を空けて各スピーカSPFR、SPFLから順次出力される。
本実施形態では、運転席をインパルス応答の測定位置(聴取位置)とする。そのため、マイクロフォンMICは運転席に設置される。マイクロフォンMICの設置位置は、聴取位置に応じて変わる。マイクロフォンMICは助手席や後部座席に設置されてもよい。
マイクロフォンMICは、各スピーカSPFR、SPFLから順次出力された測定用音を時間的に非干渉なタイミングで収音する。マイクロフォンMICによって収音された測定用音の信号(すなわち測定信号)は、信号収録部114を介して計算部116に入力される(ステップS13)。
図4は、計算部116の構成を示すブロック図である。図4に示されるように、計算部116は、測定部116A及び116Bを有する。
測定部116A及び116Bはインパルス応答を測定する(ステップS14)。
具体的には、測定部116Aは、スピーカSPFLからの測定用音の測定信号(以下「測定信号L」と記す。)とリファレンスの測定信号との相互相関関数が演算により求められて、測定信号Lのインパルス応答(言い換えると、スピーカSPFLと聴取位置間のインパルス応答であり、以下「インパルス応答L’」と記す。)が計算される。
測定部116Bは、スピーカSPFRからの測定用音の測定信号(以下「測定信号R」と記す。)とリファレンスの測定信号との相互相関関数が演算により求められて、測定信号Rのインパルス応答(言い換えると、スピーカSPFRと聴取位置間のインパルス応答であり、以下「インパルス応答R’」と記す。)が計算される。
なお、リファレンスの測定信号は、測定用信号発生部106にて発生される測定用信号と同一であり且つ時間同期が取られたものである。
このように、測定部116A及び116Bは、複数のスピーカの各々から出力されて所定の聴取位置で時間的に非干渉なタイミングで収音された各音の信号のインパルス応答を測定する測定部として動作する。
図5(a)にインパルス応答L’を例示し、図5(b)にインパルス応答R’を例示する。図5(a)、図5(b)の各図中、縦軸は振幅を示し、横軸は時間(単位:sec)を示す。図5(a)及び図5(b)の例では、サンプリング周波数は44.1kHzであり、M系列符号の符号長は32,767であり、周波数帯域は3kHzである。
図5(a)及び図5(b)を見ると、車室内という特殊なリスニング環境(車室内の構造物によって遅延時間差の短い反射が多い、車室内の構造物により音が遮蔽される、各スピーカからの音が干渉する、などの環境)のため、抑圧された音が聴取位置に最初に到達し(言い換えると、インパルス応答の立ち上がり部分のレベルが低く)、この抑圧された音に遅れて、レベルの高い音が聴取位置に到達する。
図4に示されるように、計算部116は、フーリエ変換部116C及び116Dを有する。
フーリエ変換部116Cは、測定部116Aより入力されるインパルス応答L’をフーリエ変換し、周波数スペクトル毎の振幅特性と位相特性を求める(ステップS15)。フーリエ変換部116Dは、測定部116Bより入力されるインパルス応答R’をフーリエ変換し、周波数スペクトル毎の振幅特性と位相特性を求める(ステップS15)。
図6(a)は、インパルス応答L’をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル毎の振幅特性を示す図であり、図6(b)は、インパルス応答R’をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル毎の振幅特性を示す図である。図6(a)、図6(b)の各図中、縦軸はパワー(単位:dB)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。
図7(a)は、インパルス応答L’をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル毎の位相特性を示す図であり、図7(b)は、インパルス応答R’をフーリエ変換することによって求まった周波数スペクトル毎の位相特性を示す図である。図7(a)、図7(b)の各図中、縦軸は角度(単位:degree)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。
図6(a)、図6(b)、図7(a)及び図7(b)の例では、フーリエ変換長は8,192サンプルである。また、周波数スペクトルは、0Hzからナイキスト周波数の22.05kHzまでの周波数領域を5.38Hz刻みで分割した4,097ポイントに設定されている。なお、3kHzまでの周波数スペクトルは557ポイントとなる。車室内で音が反射・遮蔽・干渉等することから、図6(a)及び図6(b)の例では、周波数毎に振幅が大きく変動し、図7(a)及び図7(b)の例では、周波数毎に位相が大きく変動している。
以下、便宜上、フーリエ変換部116Cにより求められたインパルス応答L’の周波数スペクトル毎の振幅特性と位相特性を「周波数スペクトル信号L”」と記し、フーリエ変換部116Dにより求められたインパルス応答R’の周波数スペクトル毎の振幅特性と位相特性を「周波数スペクトル信号R”」と記す。フーリエ変換部116C及び116Dは、各スピーカからの音の信号のインパルス応答をフーリエ変換することによってインパルス応答の周波数スペクトル信号をスピーカ毎に得るフーリエ変換部として動作する。
図4に示されるように、計算部116は、位相制御部116Eを有する。
位相制御部116Eは、周波数スペクトル信号L”、R”毎に、第一の振幅特性及び第二の振幅特性(何れも詳しくは後述)を得るため、次の処理(1)~(5)を行う。
《処理(1)》
位相制御部116Eは、処理対象の周波数スペクトル信号(周波数スペクトル信号L”と周波数スペクトル信号R”の一方)の位相を-180度から+180度の範囲で所定の角度刻みで変え、位相を変える毎に、処理対象の周波数スペクトル信号と、他の周波数スペクトル信号(周波数スペクトル信号L”と周波数スペクトル信号R”の他方)とを合成する(ステップS16)。この合成処理は、処理負荷軽減のため、全ての周波数スペクトルではなく、例えば3kHzまでの計557ポイントの周波数スペクトル毎に行われる。
図8(a)は、周波数スペクトル信号L”を処理対象としたときの合成結果を示す図であり、図8(b)は、周波数スペクトル信号R”を処理対象としたときの合成結果を示す図である。図8(a)及び図8(b)では、代表として、557ポイントの周波数スペクトルのうち100Hz(太実線)と400Hz(細実線)の周波数スペクトルの合成結果を示す。図8(a)、図8(b)の各図中、縦軸は合成後の信号のパワー(単位:dB)を示し、横軸は位相(単位:degree)を示す。なお、位相0度(言い換えると位相調節量がゼロ)でのパワーは、処理対象の周波数スペクトル信号の位相を変えずに他の周波数スペクトル信号と合成したときのパワーを示す。
《処理(2)》
図8(a)、図8(b)の各図中、パワーが最大となる角度で、スピーカSPFRからの音の位相とスピーカSPFLからの音の位相とが聴取位置で同相(聴取位置においてこれらのスピーカ間の音が最も強めあう干渉を起こす。)となり、パワーが最小となる角度で、スピーカSPFRからの音の位相とスピーカSPFLからの音の位相とが聴取位置で逆相(聴取位置においてこれらのスピーカ間の音が最も弱めあう干渉を起こす。)となる。
図8(a)の例においては、100Hzの周波数スペクトルでは、-110度で(位相調節されていない周波数スペクトル信号R”と位相調節量が-110度の周波数スペクトル信号L”とを合成したときに)同相となり、+70度で(位相調節されていない周波数スペクトル信号R”と位相調節量が+70度の周波数スペクトル信号L”とを合成したときに)逆相となる。400Hzの周波数スペクトルでは、+170度で(位相調節されていない周波数スペクトル信号R”と位相調節量が+170度の周波数スペクトル信号L”とを合成したときに)同相となり、-10度で(位相調節されていない周波数スペクトル信号R”と位相調節量が-10度の周波数スペクトル信号L”とを合成したときに)逆相となる。
図8(b)の例においては、100Hzの周波数スペクトルでは、+110度で(位相調節されていない周波数スペクトル信号L”と位相調節量が+110度の周波数スペクトル信号R”とを合成したときに)同相となり、-70度で(位相調節されていない周波数スペクトル信号L”と位相調節量が-70度の周波数スペクトル信号R”とを合成したときに)逆相となる。400Hzの周波数スペクトルでは、-170度で(位相調節されていない周波数スペクトル信号L”と位相調節量が-170度の周波数スペクトル信号R”とを合成したときに)同相となり、+10度で(位相調節されていない周波数スペクトル信号L”と位相調節量が+10度の周波数スペクトル信号R”とを合成したときに)逆相となる。
位相制御部116Eは、周波数スペクトル毎の合成結果から、スピーカSPFRからの音の位相とスピーカSPFLからの音の位相とが聴取位置で同相となるときの、処理対象の周波数スペクトル信号の周波数スペクトル毎の位相調節量を求める(ステップS17)。
図9(a)は、60Hz~3kHzまでの各周波数スペクトルにおいて、スピーカSPFRからの音の位相とスピーカSPFLからの音の位相とが聴取位置で同相となるときの、周波数スペクトル信号L”の周波数スペクトル毎の位相調節量を示す図である。図9(b)は、60Hz~3kHzまでの各周波数スペクトルにおいて、スピーカSPFRからの音の位相とスピーカSPFLからの音の位相とが聴取位置で同相となるときの、周波数スペクトル信号R”の周波数スペクトル毎の位相調節量を示す図である。図9(a)、図9(b)の各図中、縦軸は位相調節量(単位:degree)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。
なお、位相調節を行う周波数範囲は、ナイキスト周波数の範囲内で任意に設定することができる。本実施形態では、スピーカSPFR及びSPFLで再生可能な下限周波数(60Hz)から、定位において聴感上で位相が支配的となる周波数(言い換えると、位相のずれによる音像定位への影響が大きい周波数)の2倍の周波数(3kHz)を、位相調節を行う周波数範囲として設定している。
本実施形態では、車室内における周波数毎の伝搬遅延時間の差異により、位相調節量が周波数毎で大きく変動している(図9(a)及び図9(b)参照)。
《処理(3)》
位相制御部116Eは、処理対象の周波数スペクトル信号(周波数スペクトル信号L”そのもの又は周波数スペクトル信号R”そのもの)を複素数に変換するとともに、ステップS17にて求めた処理対象の周波数スペクトル毎の位相調節量(図9(a)又は図9(b)参照)を複素数に変換し、これらを複素乗算する(ステップS18)。
《処理(4)》
位相制御部116Eは、ステップS18にて複素乗算された(言い換えると、位相制御された)処理対象の周波数スペクトル信号と他の周波数スペクトル信号(周波数スペクトル信号L”そのもの又は周波数スペクトル信号R”そのもの)とを合成することにより、第一の振幅特性を得る(ステップS19)。
《処理(5)》
位相制御部116Eは、処理対象の周波数スペクトル信号を、位相を変えることなく(すなわち、周波数スペクトル信号L”そのもの又は周波数スペクトル信号R”そのものを)他の周波数スペクトル信号(周波数スペクトル信号L”そのもの又は周波数スペクトル信号R”そのもの)と合成することにより、第二の振幅特性を得る(ステップS20)。
以上の処理(1)~(5)により、周波数スペクトル信号L”、R”毎に、第一の振幅特性及び第二の振幅特性が得られる。このように、位相制御部116Eは、フーリエ変換部によって得られた各周波数スペクトル信号に対し、所定の位相制御を行い、所定の位相制御が行われない他の周波数スペクトル信号と合成することによって第一の振幅特性を得るとともに、位相制御を行わずに他の周波数スペクトル信号と合成することによって第二の振幅特性を得る振幅特性算出部として動作する。
図10(a)は、周波数スペクトル信号L”について得た第一の振幅特性(実線)と第二の振幅特性(破線)を示す図であり、図10(b)は、周波数スペクトル信号R”について得た第一の振幅特性(実線)と第二の振幅特性(破線)を示す図である。図10(a)、図10(b)の各図中、縦軸はレベル(単位:dB)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。
位相制御部116Eは、周波数スペクトル信号L”について得た第一の振幅特性と第二の振幅特性とのレベル差を周波数スペクトル毎に算出し、算出された周波数スペクトル毎のレベル差を累積する。また、位相制御部116Eは、周波数スペクトル信号R”について得た第一の振幅特性と第二の振幅特性とのレベル差を周波数スペクトル毎に算出し、算出された周波数スペクトル毎のレベル差を累積する。位相制御部116Eは、これらの累積値を比較し、累積値が大きい方に対応するスピーカを所定の条件を満たすスピーカとして検出する(ステップS21)。このように、位相制御部116Eは、各スピーカについて得られた第一の振幅特性と第二の振幅特性に基づいて複数のスピーカの中から所定の条件を満たすスピーカを検出する検出部として動作する。
図11(a)は、周波数スペクトル信号L”について得た第一の振幅特性と第二の振幅特性との周波数スペクトル毎のレベル差を示す図であり、図11(b)は、周波数スペクトル信号R”について得た第一の振幅特性と第二の振幅特性と周波数スペクトル毎のレベル差を示す図である。図11(a)、図11(b)の各図中、縦軸はレベル(単位:dB)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。
ここで、第一の振幅特性は、処理対象の周波数スペクトル信号を位相制御して他の周波数スペクトル信号と合成することによって得られたものであり、第二の振幅特性は、処理対象の周波数スペクトル信号を位相制御することなく他の周波数スペクトル信号と合成することによって得られたものである。そのため、このレベル差の累積値は、処理対象の周波数スペクトル信号を位相制御したときの効果(聴取位置におけるスピーカ間の音の弱めあいの干渉が低減することによってレベルが増加する効果)を示す値といえる。累積値が高いほど、この効果が高いことを示す。
図11(a)に示されるレベル差の累積値は782であり、図11(b)に示されるレベル差の累積値は2,404である。周波数スペクトル信号R”について得た累積値が高いことから、周波数スペクトル信号R”に対応するスピーカSPFRを基準に位相調節処理を行うことにより、より高い効果(聴取位置におけるスピーカ間の音の弱めあいの干渉が低減することによってレベルが増加する効果)が得られて、音像定位の偏りの改善とともに、各スピーカから出力される音同士の干渉による音質劣化や音圧低下を抑えることが可能となる。
スピーカの配置や車室内の環境によっては、音の反射・遮蔽・干渉等の影響でスピーカSPFRから聴取位置に向かう音がより長く抑圧される場合もある。一例として、図5(b)のインパルス応答R’が5.0msecまでの期間、抑圧されたレベルである場合を考える。この場合においても、スピーカSPFRが聴取位置(運転席)との距離が最も短いことから、スピーカSPFLからの音と比べて、スピーカSPFRからの音がより短い時間で聴取位置に到達する(インパルス応答R’がインパルス応答L’よりも立ち上がりが早い)。そのため、従来のタイムアライメントでは、音像定位の偏りを改善するため、スピーカSPFRからの音を遅延させることになる。
しかし、インパルス応答R’の立ち上がり部分は5.0msecまでの期間、抑圧されたレベルである。この抑圧されたレベルの音は、微弱なレベルの音であるため、音像の定位に実質的に寄与する実用的なレベルの音であるといえない。音像の定位に実質的に寄与する、スピーカSPFRからの実用的なレベルの音は、5.0msecを超えた時点で聴取位置に到達する。一方、図5(a)を見ると、音像の定位に実質的に寄与する、スピーカSPFLからの実用的なレベルの音は、4.1msec時点で聴取位置に到達している。
従来のタイムアライメントでは、音像の定位に実質的に寄与する実用的なレベルの音が聴取位置に到達するまでの時間が長いスピーカ(ここでの例では、単純にインパルス応答の立ち上がりが早いスピーカ)が、遅延を付与するスピーカとして設定される。そのため、従来のタイムアライメントでは、音像定位の偏りを十分に改善することが難しい。
これに対し、本実施形態では、位相調節処理を実行する際の基準となるスピーカを、上記のように、より高い効果(聴取位置におけるスピーカ間の音の弱めあいの干渉が低減することによってレベルが増加する効果)が得られるかどうかで検出することにより、車室内という特殊なリスニング環境下においても、音像定位の偏りを十分に改善するとともに、各スピーカから出力される音同士の干渉による音質劣化や音圧低下を抑えることが可能となる。
位相制御部116Eは、ステップS21にて検出されたスピーカ(以下「基準スピーカ」と記す。)について得た周波数スペクトル毎の合成結果(本実施形態では、スピーカSPFRについて得た周波数スペクトル毎の合成結果であり、図8(b)参照)から、スピーカSPFRからの音の位相とスピーカSPFLからの音の位相とが聴取位置で逆相となるときの、周波数スペクトル信号の周波数スペクトル毎の位相調節量(第一の位相調節用データ)を求める(ステップS22)。
図12は、スピーカSPFRからの音の位相とスピーカSPFLからの音の位相とが聴取位置で逆相となるときの、周波数スペクトル信号R”の周波数スペクトル毎の位相調節量(第一の位相調節用データ)を示す図である。図12中、縦軸は位相調節量(単位:degree)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。
図4に示されるように、計算部116は、位相シフト部116Fを有する。
位相シフト部116Fは、第一の位相調節用データ(図12参照)に応じて、基準スピーカに出力される音の信号の位相を調節する位相調節量を周波数スペクトル毎に決定する(ステップS23)。具体的には、次式に従い、周波数スペクトル毎の位相調節量を決定する。
|Phc|≦90°のとき
Phs=+90°
|Phc|>90°のとき
Phs=0°
Phc:ステップS22にて求められた位相調節量
Phs:ステップS23で決定される位相調節量
図13は、ステップS23で決定された周波数スペクトル毎の位相調節量を示す図である。図13中、縦軸は位相調節量(単位:degree)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。
図4に示されるように、計算部116は、スムージング処理部116Gを有する。
スムージング処理部116Gは、位相シフト部116Fより入力される周波数スペクトル毎の位相調節量を周波数軸上でスムージング処理する(ステップS24)。これにより、基準スピーカに出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節するための位相調節用データ(基準スピーカ用の第二の位相調節用データ)が得られる。
図14は、スムージング処理部116Gによるスムージング処理後の位相調節量(基準スピーカ用の第二の位相調節用データ)を示す図である。図14中、縦軸は位相調節量(単位:degree)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。スムージング処理部116Gは、8タップのFIR(Finite Impulse Response)フィルタにより、位相シフト部116Fより入力される周波数スペクトル毎の位相調節量に対してスムージング処理を施す。
スムージング処理部116Gによるスムージング処理により、周波数領域における位相の急激な変化が抑えられる。そのため、位相調節用データを用いて位相調節された音を出力した際、位相の急激な変化による高調波の発生が抑えられ、このような高調波による聴感上の異音が抑えられる。
図4に示されるように、計算部116は、位相反転部116Hを有する。
位相反転部116Hは、ステップS24にて得られたスムージング処理後の位相調節量(基準スピーカ用の第二の位相調節用データ)の位相を反転させることにより、他のスピーカ(本実施形態では、スピーカSPFL)に出力される音の信号の位相を調節する周波数スペクトル毎の位相調節量(他のスピーカ用の第二の位相調節用データ)を得る(ステップS25)。
図15は、位相反転部116Hによって得られる他のスピーカ用の第二の位相調節用データを示す図である。図15中、縦軸は位相調節量(単位:degree)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。
図14及び図15に示されるように、基準スピーカ用の第二の位相調節用データは、逆相となる位相調節量(第一の位相調節用データ)に応じて、周波数スペクトル毎の位相調節量が0度~90度の範囲に設定され、他のスピーカ用の第二の位相調節用データは、逆相となる位相調節量(第一の位相調節用データ)に応じて、位相調節量が0度~-90度の範囲に設定されている。
本実施形態では、逆相となる位相調節量(第一の位相調節用データ)をもとに各スピーカ用の第二の位相調節用データが算出され、かつ互いの位相調節量の差が180度以内に収まるように各スピーカ用の第二の位相調節用データが算出されていることから(言い換えると、各スピーカに出力される音の信号に与える位相調節量の差が各周波数スペクトルで180度以内に収まるように、各スピーカ用の第二の位相調節用データが算出されていることから)、一対のスピーカSPFR、SPFLの位置に対して非対称となる運転席の位置、同じく一対のスピーカSPFR、SPFLの位置に対して非対称となる助手席の位置、の双方において、逆相によるスピーカ間の音の干渉を低減することができ、定位を改善するとともに、ディップの発生による音質の劣化や音圧の低下が抑えられる。
このように、位相制御部116E、位相シフト部116F、スムージング処理部116G及び位相反転部116Hは、複数の聴取位置において、複数のスピーカ間の音の干渉による弱めあいが各周波数スペクトルで低減するように、各スピーカに出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節するための第二の位相調節用データを生成する生成部として動作する。
制御部100は、各スピーカ用の第二の位相調節用データを位相調節部110に設定する(ステップS26)。位相調節部110は、この第二の位相調節用データを用いて、音源から入力されて各スピーカに出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節する調節部として動作する。
次に、位相調節部110に設定された第二の位相調節用データを用いて、音源より入力される音の信号を再生する動作について説明する。
記録媒体再生部108は、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等の音源より入力される音の信号S、S(以下「オーディオ信号S、S」と記す。)を再生する。制御部100は、記録媒体再生部108により再生されたオーディオ信号S、Sを位相調節部110に出力する。
位相調節部110は、各スピーカに出力されるオーディオ信号に対して周波数スペクトル毎に位相を調節して出力する。位相調節部110より出力されたオーディオ信号S、Sは、増幅部112を介して、それぞれ、スピーカSPFR、SPFLから車室内に出力される。
図16は、位相調節部110の構成を示すブロック図である。図16に示されるように、位相調節部110は、FFT(Fast Fourier Transform)部110A、複素乗算部110B及びIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部110Cを有する。
FFT部110Aは、制御部100より入力されるオーディオ信号S、Sに対してオーバラップ処理及び窓関数による重み付けを行った後、STFT(Short-Term Fourier Transform)により時間領域から周波数領域への変換を行い、振幅と位相からなる周波数スペクトル信号を複素乗算部110Bに出力する。なお、オーバラップ処理及び窓関数は、ユーザ操作によって定位位置を変更した際(例えば運転席から助手席に変更した際)に位相調節量を徐々に変化させて異音を低減させるためのものである。
本実施形態では、FFT部110Aは、サンプリング周波数が44.1kHzである。また、FFT部110Aは、フーリエ変換長が8,192サンプルであり、オーバラップ長が6,144サンプルであり、窓関数がハニング窓である。FFT部110Aは、2,048サンプルずつ時間シフトしながらSTFTを行うことにより、0Hzからナイキスト周波数の22.05kHzまでの周波数領域を5.38Hz刻みで分割した、計4,097ポイントの周波数スペクトル信号を取得する。
複素乗算部110Bには、制御部100より入力された第二の位相調節用データが設定される。複素乗算部110Bは、第二の位相調節用データをもとに、各スピーカチャンネルについて、FFT部110Aより入力される周波数スペクトル信号に対して複素乗算を行い、各チャンネルのスピーカに出力されるオーディオ信号の位相を周波数スペクトル毎に調節する。
IFFT部110Cは、複素乗算部110B2より入力される位相調節後の周波数スペクトル信号をISTFTにより周波数領域から時間領域の信号に変換し、変換された信号について窓関数による重み付け及びオーバラップ加算を行って、増幅部112に出力する。
図17~図20を用いて、各スピーカチャンネルについて位相調節した場合の具体例を示す。この例では、オーディオ信号がモノラルのインパルス信号であり、周波数領域が1kHzであるものとする。750Hz以下の低域では両耳間位相差が定位に影響を及ぼし、750Hz~1.5kHzの低中域では両耳間位相差と両耳間レベル差が定位に影響を及ぼし、1.5kHz以上の中高域では両耳間レベル差が定位に影響を及ぼすことが知られている(例えば特開2004-325284号公報参照)。そのため、ここでは、位相調節を行う対象の周波数領域を1kHzとしている。なお、1kHz以下の波長は比較的長いため、両耳間位相差が比較的小さくなる。そのため、ここでは、リスナの左右の耳に到達する音を同じとみなしており、座席毎の測定ポイント(マイクロフォンMICが設置される聴取位置)を1ポイントとしている。
図17(a)及び図17(b)は、運転席に設置されたマイクロフォンMICで収音されるオーディオ信号の時間特性を示す図である。具体的には、図17(a)は、本実施形態に係る位相調節処理が施されていないオーディオ信号を各スピーカSPFR、SPFLから同時に出力したときに(以下「制御なし例」と記す。)、運転席に設置されたマイクロフォンMICで収音されるオーディオ信号の時間特性を示す図である。図17(b)は、本実施形態に係る位相調節処理が施されたオーディオ信号を各スピーカSPFR、SPFLから同時に出力したときに(以下「位相調節例」と記す。)、運転席に設置されたマイクロフォンMICで収音されるオーディオ信号の時間特性を示す図である。図17(a)、図17(b)の各図中、縦軸は振幅を示し、横軸は時間(単位:sec)を示す。
図18(a)及び図18(b)は、助手席に設置されたマイクロフォンMICで収音されるオーディオ信号の時間特性を示す図である。具体的には、図18(a)は、制御なし例において、助手席に設置されたマイクロフォンMICで収音されるオーディオ信号の時間特性を示す図である。図18(b)は、位相調節例において、助手席に設置されたマイクロフォンMICで収音されるオーディオ信号の時間特性を示す図である。図18(a)、図18(b)の各図中、縦軸は振幅を示し、横軸は時間(単位:sec)を示す。
図17(a)と図17(b)とを比べると、本実施形態に係る位相調節処理をオーディオ信号に施すことにより、本実施形態に係る位相調節処理をオーディオ信号に施さない場合よりも振幅が大きくなっていることが判る。また、図18(a)と図18(b)とを比べると、本実施形態に係る位相調節処理をオーディオ信号に施すことにより、助手席においても、本実施形態に係る位相調節処理をオーディオ信号に施さない場合より振幅が大きくなっていることが判る。これは、本実施形態に係る位相調節処理をオーディオ信号に施すことにより、各聴取位置(運転席、助手席)において、スピーカSPFRとスピーカSPFL間の音の干渉による弱めあいが低減したためである。
図19は、運転席に設置されたマイクロフォンMICで収音される、制御なし例のオーディオ信号の周波数特性(細実線)と位相調節例のオーディオ信号の周波数特性(太実線)を示す図である。図20は、助手席に設置されたマイクロフォンMICで収音される、制御なし例のオーディオ信号の周波数特性(細実線)と位相調節例のオーディオ信号の周波数特性(太実線)を示す図である。図19及び図20中、縦軸はレベル(単位:dB)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。
図19及び図20に示されるように、本実施形態に係る位相調節例では、制御なし例と比べてほぼ全域に亘りレベルが大きくなっており、運転席、助手席の何れの聴取位置においても、スピーカSPFRとスピーカSPFL間の音の干渉による弱めあいが制御なし例と比べて低減されることが判る。また、周波数領域においてディップの発生がほぼ抑えられている。そのため、本実施形態に係る位相調節例では、制御なし例と比べて、運転席、助手席の何れの聴取位置においても、音像定位の偏りが改善されるとともに、スピーカSPFRとスピーカSPFL間の音の干渉による音質劣化や音圧低下が抑えられることが判る。
なお、音声や音楽の周波数成分は低中域に集中する。そのため、音声や音楽のオーディオ信号(ここで例示した1Hz以下の低中域のモノラル信号)を対象とする場合、低中域を位相調節するだけでも音像の定位を十分に改善し、かつディップの発生による音質の劣化や音圧の低下を抑えることが可能となる。
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
ステップS23において位相シフト部116Fが決定する周波数スペクトル毎の位相調節量は上記の実施形態のものに限らない。位相シフト部116Fは、例えば、次式に従い、周波数スペクトル毎の位相調節量を決定してもよい。
|Phc|≦90°のとき
Phs=Phc+90°
|Phc|>90°のとき
Phs=Phc-90°
位相シフト部116Fが上記式に従って周波数スペクトル毎の位相調節量を決定した場合に、運転席に設置されたマイクロフォンMICで収音される、制御なし例のオーディオ信号の周波数特性(細実線)と位相調節例のオーディオ信号の周波数特性(太実線)を図21に示す。また、この場合に、助手席に設置されたマイクロフォンMICで収音される、制御なし例のオーディオ信号の周波数特性(細実線)と位相調節例のオーディオ信号の周波数特性(太実線)を図22に示す。図21及び図22中、縦軸はレベル(単位:dB)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。
図21及び図22に示されるように、この場合も、位相調節例では、制御なし例と比べてほぼ全域に亘りレベルが大きくなっており、運転席、助手席の何れの聴取位置においても、スピーカSPFRとスピーカSPFL間の音の干渉による弱めあいが制御なし例と比べて低減されることが判る。また、周波数領域においてディップの発生がほぼ抑えられている。そのため、この場合も、位相調節例では、制御なし例と比べて、運転席、助手席の何れの聴取位置においても、音像定位の偏りが改善されるとともに、スピーカSPFRとスピーカSPFL間の音の干渉による音質劣化や音圧低下が抑えられることが判る。
上記の実施形態において、位相制御部116Eは、ステップS22において、スピーカSPFRからの音の位相とスピーカSPFLからの音の位相とが聴取位置で逆相となるときの、周波数スペクトル信号の周波数スペクトル毎の位相調節量を第一の位相調節用データとして求めているが、別の一実施形態では、スピーカSPFRからの音の位相とスピーカSPFLからの音の位相とが聴取位置で同相となるときの、周波数スペクトル信号の周波数スペクトル毎の位相調節量を第一の位相調節用データとして求めてもよい。
上記の実施形態では、音響装置10は位相調節用データ生成機能(位相制御装置)を搭載しているが、位相調節用データ生成機能を搭載しない音響装置も本発明の範疇である。この音響装置は、例えば製造工場等で生成された各スピーカ用の第二の位相調節用データを予め保持しており、第二の位相調節用データを用いて、音源から入力されて各スピーカに出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節することにより、複数の聴取位置における、複数のスピーカ間の音の干渉による弱めあいを、各周波数スペクトルで低減させる構成となっている。
別の一実施形態では、位相調節部110は、周波数スペクトル毎の位相調節量をフーリエ変換してFIRフィルタ係数を生成し、FIRフィルタを用いた時間領域での処理によって、位相制御の対象となるスピーカに出力されるオーディオ信号に対して周波数スペクトル毎の位相調節を行ってもよい。また、位相調節部110は、周波数スペクトル毎の位相調節量をもとに周波数帯毎の分割処理を行い、二次のIIR(Infinite Impulse Response)フィルタ等を用いたオールパスフィルタにより、位相制御の対象となるスピーカに出力されるオーディオ信号に対して位相調節を行ってもよい。
上記の実施形態では、運転席でのインパルス応答を測定した場合の処理を説明したが、これと同様の処理が座席毎に行われてもよい。この場合、制御部100は、各座席でインパルス応答を測定した場合に生成される各スピーカの第二の位相調節用データをプリセットデータとして保持してもよい。リスナは、操作部104を操作してプリセットデータを選択することにより、音像定位の偏りの改善等をなすための第二の位相調節用データを任意に切り変えることができる。
上記の実施形態では、フロントスピーカを対象とした場合の処理を説明したが、車両に別のスピーカ(例えばリアスピーカ)が設置されている場合、これと同様の処理がリアスピーカ側で行われてもよい。
1 音響システム
10 音響装置
100 制御部
102 表示部
104 操作部
106 測定用信号発生部
108 記録媒体再生部
110 位相調節部
110A FFT部
110B 複素乗算部
110C IFFT部
112 増幅部
114 信号収録部
116 計算部
116A、116B 測定部
116C、116D フーリエ変換部
116E 位相制御部
116F 位相シフト部
116G スムージング処理部
116H 位相反転部

Claims (16)

  1. 複数のスピーカの各々から出力されて所定の聴取位置で時間的に非干渉なタイミングで収音された各音の信号のインパルス応答を測定する測定部と、
    前記測定された各前記スピーカからの前記音の信号のインパルス応答をフーリエ変換することによって前記インパルス応答の周波数スペクトル信号を前記スピーカ毎に得るフーリエ変換部と、
    前記フーリエ変換部によって得られた各前記周波数スペクトル信号に対し、所定の位相制御を行い、前記所定の位相制御が行われない他の前記周波数スペクトル信号と合成することによって第一の振幅特性を得るとともに、前記位相制御を行わずに前記他の周波数スペクトル信号と合成することによって第二の振幅特性を得る振幅特性算出部と、
    前記各スピーカについて得られた前記第一の振幅特性と前記第二の振幅特性に基づいて前記複数のスピーカの中から所定の条件を満たすスピーカを検出する検出部と、
    前記検出されたスピーカに出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節するための第一の位相調節用データに基づいて、前記所定の聴取位置を含む複数の聴取位置において、前記複数のスピーカ間の前記音の干渉による弱めあいが各周波数スペクトルで低減するように、前記複数のスピーカの各々に出力される音の信号の位相を前記周波数スペクトル毎に調節するための第二の位相調節用データを生成する生成部と、
    を備える、
    位相制御装置。
  2. 前記検出部は、
    前記スピーカ毎に前記第一の振幅特性と前記第二の振幅特性とのレベル差を算出し、
    前記各スピーカについて算出されたレベル差に応じた値を比較し、
    前記比較の結果に基づいて前記所定の条件を満たすスピーカを検出する、
    請求項1に記載の位相制御装置。
  3. 前記検出部は、
    前記レベル差を前記周波数スペクトル毎に算出し、
    算出された周波数スペクトル毎のレベル差を累積し、
    前記各スピーカについて得られた前記レベル差の累積値を比較し、
    前記累積値が最も大きいスピーカを前記所定の条件を満たすスピーカとして検出する、
    請求項2に記載の位相制御装置。
  4. 前記振幅特性算出部は、
    前記フーリエ変換部によって得られた前記周波数スペクトル信号毎に次の処理(1)~(5)を行う、
    (1)処理対象の周波数スペクトル信号の位相を変え、前記位相を変える毎に、前記処理対象の周波数スペクトル信号と前記他の周波数スペクトル信号とを合成し、
    (2)前記合成の結果に基づいて、前記スピーカからの前記音の信号の位相調節量を前記周波数スペクトル毎に求め、
    (3)前記求めた周波数スペクトル毎の位相調節量と前記処理対象の周波数スペクトル信号とを複素乗算し、
    (4)前記複素乗算された周波数スペクトル信号と前記他の周波数スペクトル信号とを合成することによって第一の振幅特性を得て、
    (5)前記位相を変えることなく前記処理対象の周波数スペクトル信号と前記他の周波数スペクトル信号とを合成することによって第二の振幅特性を得る、
    請求項1から請求項3の何れか一項に記載の位相制御装置。
  5. 前記第一の位相調節用データは、
    前記検出されたスピーカから出力される音の位相と他の前記スピーカから出力される音の位相とが前記聴取位置において前記各周波数スペクトルで同相又は逆相となるように、前記検出されたスピーカに出力される音の位相を前記周波数スペクトル毎に調節するためのデータである、
    請求項1から請求項4の何れか一項に記載の位相制御装置。
  6. 前記生成部は、
    前記第一の位相調節用データをもとに、前記複数のスピーカの各々に出力される音の信号に与える位相調節量を前記周波数スペクトル毎に算出し、
    算出された周波数スペクトル毎の位相調節量を前記第二の位相調節用データとして得る、
    請求項5に記載の位相制御装置。
  7. 前記生成部は、
    前記複数のスピーカの各々に出力される音の信号に与える位相調節量の差が各前記周波数スペクトルで180度以内に収まるように、前記位相調節量を算出する、
    請求項6に記載の位相制御装置。
  8. 請求項1から請求項7の何れか一項に記載の位相制御装置を有し、音源から入力される音の信号を前記複数のスピーカに出力する音響装置であって、
    前記第二の位相調節用データを用いて、前記音源から入力されて前記複数のスピーカの各々に出力される音の信号の位相を前記周波数スペクトル毎に調節する調節部
    を備える、
    音響装置。
  9. コンピュータによって実行される位相制御方法であって、
    複数のスピーカの各々から出力されて所定の聴取位置で時間的に非干渉なタイミングで収音された各音の信号のインパルス応答を測定する測定ステップと、
    前記測定された各前記スピーカからの前記音の信号のインパルス応答をフーリエ変換することによって前記インパルス応答の周波数スペクトル信号を前記スピーカ毎に得るフーリエ変換ステップと、
    前記フーリエ変換ステップにて得られた各前記周波数スペクトル信号に対し、所定の位相制御を行い、前記所定の位相制御が行われない他の前記周波数スペクトル信号と合成することによって第一の振幅特性を得るとともに、前記位相制御を行わずに前記他の周波数スペクトル信号と合成することによって第二の振幅特性を得る振幅特性算出ステップと、
    前記各スピーカについて得られた前記第一の振幅特性と前記第二の振幅特性に基づいて前記複数のスピーカの中から所定の条件を満たすスピーカを検出する検出ステップと、
    前記検出されたスピーカに出力される音の信号の位相を周波数スペクトル毎に調節するための第一の位相調節用データに基づいて、前記所定の聴取位置を含む複数の聴取位置において、前記複数のスピーカ間の前記音の干渉による弱めあいが各周波数スペクトルで低減するように、前記複数のスピーカの各々に出力される音の信号の位相を前記周波数スペクトル毎に調節するための第二の位相調節用データを生成する生成ステップと、
    を含む、
    位相制御方法。
  10. 前記検出ステップにて、
    前記スピーカ毎に前記第一の振幅特性と前記第二の振幅特性とのレベル差を算出し、
    前記各スピーカについて算出されたレベル差に応じた値を比較し、
    前記比較の結果に基づいて前記所定の条件を満たすスピーカを検出する、
    請求項9に記載の位相制御方法。
  11. 前記検出ステップにて、
    前記レベル差を前記周波数スペクトル毎に算出し、
    算出された周波数スペクトル毎のレベル差を累積し、
    前記各スピーカについて得られた前記レベル差の累積値を比較し、
    前記累積値が最も大きいスピーカを前記所定の条件を満たすスピーカとして検出する、
    請求項10に記載の位相制御方法。
  12. 前記振幅特性算出ステップにて、
    前記フーリエ変換ステップにて得られた前記周波数スペクトル信号毎に次の処理(1)~(5)を行う、
    (1)処理対象の周波数スペクトル信号の位相を変え、前記位相を変える毎に、前記処理対象の周波数スペクトル信号と前記他の周波数スペクトル信号とを合成し、
    (2)前記合成の結果に基づいて、前記スピーカからの前記音の信号の位相調節量を前記周波数スペクトル毎に求め、
    (3)前記求めた周波数スペクトル毎の位相調節量と前記処理対象の周波数スペクトル信号とを複素乗算し、
    (4)前記複素乗算された周波数スペクトル信号と前記他の周波数スペクトル信号とを合成することによって第一の振幅特性を得て、
    (5)前記位相を変えることなく前記処理対象の周波数スペクトル信号と前記他の周波数スペクトル信号とを合成することによって第二の振幅特性を得る、
    請求項9から請求項11の何れか一項に記載の位相制御方法。
  13. 前記第一の位相調節用データは、
    前記検出されたスピーカから出力される音の位相と他の前記スピーカから出力される音の位相とが前記聴取位置において前記各周波数スペクトルで同相又は逆相となるように、前記検出されたスピーカに出力される音の位相を前記周波数スペクトル毎に調節するためのデータである、
    請求項9から請求項12の何れか一項に記載の位相制御方法。
  14. 前記生成ステップにて、
    前記第一の位相調節用データをもとに、前記複数のスピーカの各々に出力される音の信号に与える位相調節量を前記周波数スペクトル毎に算出し、
    算出された周波数スペクトル毎の位相調節量を前記第二の位相調節用データとして得る、
    請求項13に記載の位相制御方法。
  15. 前記生成ステップにて、
    前記複数のスピーカの各々に出力される音の信号に与える位相調節量の差が各前記周波数スペクトルで180度以内に収まるように、前記位相調節量を算出する、
    請求項14に記載の位相制御方法。
  16. 音源から入力される音の信号を前記複数のスピーカに出力する際に、前記第二の位相調節用データを用いて、前記音源から入力されて前記複数のスピーカの各々に出力される音の信号の位相を前記周波数スペクトル毎に調節する調節ステップ
    を更に含む、
    請求項9から請求項15の何れか一項に記載の位相制御方法。
JP2019031475A 2019-02-25 2019-02-25 位相制御装置、音響装置及び位相制御方法 Active JP7319789B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019031475A JP7319789B2 (ja) 2019-02-25 2019-02-25 位相制御装置、音響装置及び位相制御方法
PCT/JP2020/005724 WO2020175175A2 (en) 2019-02-25 2020-02-14 Phase control device, acoustic device and phase control method

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019031475A JP7319789B2 (ja) 2019-02-25 2019-02-25 位相制御装置、音響装置及び位相制御方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020137041A JP2020137041A (ja) 2020-08-31
JP7319789B2 true JP7319789B2 (ja) 2023-08-02

Family

ID=69740477

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019031475A Active JP7319789B2 (ja) 2019-02-25 2019-02-25 位相制御装置、音響装置及び位相制御方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP7319789B2 (ja)
WO (1) WO2020175175A2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7488703B2 (ja) 2020-06-18 2024-05-22 フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社 信号処理装置及び信号処理プログラム
CN112466274B (zh) * 2020-10-29 2024-02-27 中科上声(苏州)电子有限公司 一种电动汽车的车内主动发声方法及***
CN112769410B (zh) * 2020-12-25 2024-06-11 西安讯飞超脑信息科技有限公司 滤波器构建方法、音频处理方法及电子设备、存储装置
CN113747326A (zh) * 2021-09-29 2021-12-03 歌尔光学科技有限公司 发声装置及其控制方法、以及控制装置

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015012366A (ja) 2013-06-27 2015-01-19 クラリオン株式会社 伝搬遅延補正装置及び伝搬遅延補正方法
JP2015015550A (ja) 2013-07-03 2015-01-22 クラリオン株式会社 音場補正装置、音場補正フィルタ生成装置および音場補正フィルタ生成方法
US20150092965A1 (en) 2013-09-27 2015-04-02 Sony Computer Entertainment Inc. Method of improving externalization of virtual surround sound
WO2016133061A1 (ja) 2015-02-19 2016-08-25 クラリオン株式会社 位相制御信号生成装置、位相制御信号生成方法及び位相制御信号生成プログラム

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4521549B2 (ja) 2003-04-25 2010-08-11 財団法人くまもとテクノ産業財団 上下、左右方向の複数の音源の分離方法、そのためのシステム
JP4407541B2 (ja) 2004-04-28 2010-02-03 ソニー株式会社 測定装置、測定方法、プログラム

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015012366A (ja) 2013-06-27 2015-01-19 クラリオン株式会社 伝搬遅延補正装置及び伝搬遅延補正方法
JP2015015550A (ja) 2013-07-03 2015-01-22 クラリオン株式会社 音場補正装置、音場補正フィルタ生成装置および音場補正フィルタ生成方法
US20150092965A1 (en) 2013-09-27 2015-04-02 Sony Computer Entertainment Inc. Method of improving externalization of virtual surround sound
WO2016133061A1 (ja) 2015-02-19 2016-08-25 クラリオン株式会社 位相制御信号生成装置、位相制御信号生成方法及び位相制御信号生成プログラム

Also Published As

Publication number Publication date
WO2020175175A2 (en) 2020-09-03
JP2020137041A (ja) 2020-08-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7319789B2 (ja) 位相制御装置、音響装置及び位相制御方法
US8559648B2 (en) Active noise control using bass management
EP2827330B1 (en) Audio signal processing device and audio signal processing method
JP4286637B2 (ja) マイクロホン装置および再生装置
JP5617133B2 (ja) 指向性出力信号の生成システムおよび方法
JP6870078B2 (ja) 動的サウンド調整のための雑音推定
JP6216553B2 (ja) 伝搬遅延補正装置及び伝搬遅延補正方法
JP3505085B2 (ja) オーディオ装置
JP4448464B2 (ja) 雑音低減方法、装置、プログラム及び記録媒体
JP6083872B2 (ja) マイクロフォン装置から受信した信号において不要な音を減少させるシステムおよび方法
CN109076302B (zh) 信号处理装置
JP2016054421A (ja) 残響抑制装置
CN114830693A (zh) 频谱正交音频分量处理
JP3755739B2 (ja) ステレオ音響信号処理方法及び装置並びにプログラム及び記録媒体
JP5587706B2 (ja) 音響処理装置
JP2020137040A (ja) 位相制御装置、音響装置及び位相制御方法
JP7488703B2 (ja) 信号処理装置及び信号処理プログラム
JP5883580B2 (ja) フィルタ係数決定装置
JP2004343590A (ja) ステレオ音響信号処理方法、装置、プログラムおよび記憶媒体
JP6434333B2 (ja) 位相制御信号生成装置、位相制御信号生成方法及び位相制御信号生成プログラム
KR20090098552A (ko) 위상정보를 이용한 자동 이득 조절 장치 및 방법
JP7286532B2 (ja) 信号処理装置、音響装置、信号処理方法及び信号処理プログラム
JP5998357B2 (ja) 車載用音響再生装置
JP2012100117A (ja) 音響処理装置及び方法
JP2012187995A (ja) 車載用音響再生装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220107

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230306

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230501

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230710

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230721

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7319789

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150