本開示の複合ゴム成形品は、エラストマーを含む成形品、及び、該成形品の少なくとも一部を被覆するポリテトラフルオロエチレン多孔膜(PTFE多孔膜)を含む複合ゴム成形品であって、PTFE多孔膜の縦方向と横方向のマトリクス引張強度の積が30000MPa2以上であることを特徴とする。なお、PTFE多孔膜によりエラストマーを含む成形品を被覆する割合は、本開示の複合ゴム成形品の用途に応じて自由に設計できる。
PTFE多孔膜の縦方向と横方向のマトリクス引張強度の積は30000MPa2以上であるが、35000MPa2以上が好ましく、40000MPa2以上がより好ましい。上限は、70000MPa2であってよい。30000MPa2未満では、膜厚が厚い多孔質膜を使用しなければならず、耐摩耗性が低下することになる。
ここで、縦方向とは、PTFE多孔膜が一軸延伸膜又は二軸延伸膜である場合、長手方向(ペースト押出方向)の引張強度を意味し、横方向とは、幅方向(ペースト押出方向とは直角方向)の引張強度を意味する。マトリクス引張強度は、後述する方法により測定できる。
縦方向と横方向のマトリクス引張強度の積が30000MPa2以上のPTFE多孔膜は、少なくともPTFE多孔膜の膜厚及びフィブリル/ノードの面積比(フィブリルの面積/ノードの面積)を下記所定の範囲内に調整することにより得られる。
PTFE多孔膜の膜厚は、2~30μmが好ましく、4~25μmがより好ましい。膜厚が2μm未満では、高強度膜でもゴムの変形を押さえるのが難しく摩擦係数が上昇し、30μmを超えると、摩擦係数は低下するものの耐摩耗性が低下する傾向がある。膜厚みは、後述する方法によって測定できる。
PTFE多孔膜は、ノード(結節)及びフィブリルを含む微細構造を有することが好ましい。PTFEを延伸して得られるPTFE多孔膜は、通常、フィブリルと呼ばれる微細な小繊維と、これらフィブリルを結び付けているノードと呼ばれる粒状のノードから構成されており、フィブリルとノードとの間に極めて微細な空孔が相互に連続した状態で存在する連続多孔質構造を有している。
ノードは、通常、PTFEの折り畳み結晶からなる粒状部又は島状部(一次粒子が集合した部分)であり、フィブリルは、ノードから繊維状に引き出されたPTFEであって、各ノード間をすだれ状又は蜘蛛の巣状に繋ぐものである。ノードは、通常、延伸後に伸び残った部分であり、フィブリルの末端に位置しており、フィブリルがつながっている塊がフィブリル径より太い部分である。また、ノードは、通常、一次粒子又は一次粒子が集まったものであり、ノードからフィブリルが放射状に伸びている。なお、本明細書において、フィブリルが枝分かれしていても、フィブリルと分岐部分の径が同じである場合、その分岐はノードとは見なさない。
PTFE多孔膜のフィブリル/ノードの面積比は97/3~75/25が好ましく、95/5~75/25がより好ましく、95/5~85/15が更に好ましい。PTFE多孔膜は、面積比が上記範囲内にあると、膜のマトリクス強度は強くなり、また成形品からより一層剥離しにくく、より一層長期間に渡って非粘着性を維持できる。
フィブリル/ノードの面積比は次に示す方法で測定することができる。まず、PTFE多孔膜の写真を走査型電子顕微鏡(SU8020、HITACHI社製 蒸着は日立E1030型)で撮影する(SEM写真。倍率1000倍~5000倍)。この写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス社製TVイメージプロセッサTVIP-4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング社製TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込み、ノードとフィブリルに分離し、ノードのみからなる像とフィブリルのみからなる像を得る。フィブリル/ノードの面積比は、フィブリル像の面積の総和とノード像の面積の総和の比から求める。
ノードは、次のいずれかを満足するものをいう。
(1)複数のフィブリルがつながっているかたまり(図1:点で埋められた部分)
(2)つながっているかたまりがフィブリル径より太いもの(図2及び図3:斜線部)
(3)一次粒子がかたまっていて、そこからフィブリルが放射線状に伸びているもの(図4、図5及び図6:斜線部)
なお、図7は、ノードとは見なさない例である。すなわち、フィブリルが枝分かれしているが、フィブリルと分岐部分の径が同じである場合、分岐はノードとは見なさない。
上記範囲内のフィブリル/ノードの面積比を有するPTFE多孔膜は、PTFEを半焼成したり、一軸延伸又は二軸延伸の延伸倍率を調整することにより得ることができる。具体的には、所定の条件下でPTFEを半焼成することにより、PTFE多孔膜のフィブリル/ノードの面積比のフィブリルの割合を高くすることができる。また、PTFEを半焼成しない場合であっても、一軸延伸又は二軸延伸に延伸倍率を所定の範囲内とすることにより、PTFE多孔膜のフィブリル/ノードの面積比を調整することができる。また、PTFEを半焼成し、かつ、延伸倍率を調整して、PTFE多孔膜のフィブリル/ノードの面積比を調整してもよい。半焼成の条件及び延伸倍率の範囲については、後述する。
また、PTFE多孔膜の膜厚及びフィブリル/ノードの面積比以外にも、PTFE多孔膜を構成するフィブリル同士の融着などによっても、PTFE多孔膜の引張強度の積を向上できることがある。
PTFE多孔膜の融着点は、高強度の膜が得られる事から、走査型電子顕微鏡を用いて10000倍の倍率で撮影した電子顕微鏡写真において観察される5μm×5μmの範囲内において、1点以上有することが好ましい。より好ましくは、5点以上であり、更に好ましくは10点以上である。融着点を有するPTFE多孔膜は、後述する変性PTFEを用いることにより得られる。融着点は、2つのノードを連結するフィブリルと、別の2つのノードを連結するフィブリルとがお互いに融着している。PTFE多孔膜が融着点を有するものであると、PTFE多孔膜が成形品からより一層剥離しにくく、より一層長期間に渡って非粘着性を維持できる。
図8に上記PTFE多孔膜が融着点を有している場合の走査型電子顕微鏡写真を示す。PTFE多孔膜は、フィブリル同士が融着した融着点100を有している。一方、図9に示すPTFE多孔膜は、ノード200及びフィブリル300を含む微細構造を有しているが、フィブリル同士は立体的に交差しているだけである。
融着点において、2つのノードを連結するフィブリルと、別の2つのノードを連結するフィブリルとがお互いに融着している。融着点は、少なくとも2本のフィブリルが立体的に交差した交差部分において、お互いに融着することで形成されている。上記融着点は、2本のフィブリルが融着することで形成されており、融着点を形成する2本のフィブリルは、いずれも2つのノード間を連結しており、一方のフィブリルが連結する1組のノードは、もう一方のフィブリルが連結する1組のノードとは異なる。1本のフィブリルが他の2本のフィブリルと融着することにより、融着点を2点以上形成することもできる。融着点は、延伸時にフィブリル同士が融着して形成される。
融着点は、同一多孔体内で少なくとも2本のフィブリルが立体的に交差した交差部位において、お互いに融着することで形成されている。融着点を構成するフィブリルは、後述する変性PTFEを用いたPTFE未焼成体、PTFE半焼成体又はペースト押出物を延伸することによって発生する。フィブリルの直径は延伸条件等によって調整することができる。一般的に、一軸延伸膜の場合、フィブリルの直径は最大5μm程度であり、二軸延伸膜の場合は最大1μm程度である。フィブリルの直径は、0.7μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
融着点は、1組のノードを連結する1本のフィブリル上に形成されるものであることから、融着点の前後において、フィブリルの直径の変化が観察されたり、方向の変化が観察されたりすることがない。これらの構造上の特徴は、多方向に伸びるフィブリルを有するノードの構造とは大きく異なる。ノードからは多方向に複数のフィブリルが伸びるので、ノードを中心にフィブリルを観察すると、各フィブリルの直径にはばらつきが観察され、偶然に同じ直径を有する2本のフィブリルが観察されたとしても、これらのフィブリルが直線上に位置することはめったにない。すなわち、融着点では、直径差が10%以内であって、かつ、融着点の前後において直線からのずれが±10度以内である1本のフィブリルが観察できる点で、ノードとは容易に区別が可能である。
PTFE多孔膜の膜密度は特に限定されないが、1.40g/cm3以下が好ましく、1.00g/cm3以下がより好ましく、0.80g/cm3以下がさらに好ましい。膜密度は後述する方法にて求めた値である。
PTFE多孔膜の平均孔径は、高い膜強度を達成するために、0.60μm以下が好ましく、0.40μm以下がより好ましい。平均孔径の下限は、0.05μm以上が好ましく、より好ましくは0.10μm以上であり、更に好ましくは0.20μm以上である。平均孔径は、後述する方法によって測定できる。
PTFE多孔膜は、PTFEを一軸延伸して得られる一軸延伸膜又はPTFEを二軸延伸して得られる二軸延伸膜であってもよいが、成形品からより一層剥離しにくく、より一層長期間に渡って非粘着性を維持できることから、PTFEを二軸延伸して得られる二軸延伸多孔質体であることがより好ましい。
PTFE多孔膜は、延伸倍率が2~50倍、好ましくは5~30倍である一軸延伸により得られるものであってもよく、また、縦横それぞれの方向への延伸倍率が2~100倍、好ましくは5~39倍である二軸延伸により得られるものであってもよい。
PTFE多孔膜は、PTFEを含む。PTFEは、通常、延伸性、フィブリル化特性および非溶融二次加工性を有する。非溶融二次加工性とは、ASTM D-1238及びD-2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質、すなわち溶融温度領域でも容易に流動しない性質を意味する。
PTFEは、ホモ重合されたPTFEの他にTFEと微量共単量体とを重合することにより得られたPTFEも含む。
微量共単量体としては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;(パーフルオロアルキル)エチレン、エチレン等が挙げられる。また、用いる微量共単量体は1種であってもよいし、複数種であってもよい。
パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(A):
CF2=CF-ORf (A)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(A)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(A)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
(パーフルオロアルキル)エチレン(PFAE)としては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン等が挙げられる。
微量共単量体としては、高強度なPTFE多孔膜が得られることから、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフロオロエチレン、フッ化ビニリデン、フルオロ(アルキルビニルエーテル)、(パーフルオロアルキル)エチレン、及び、エチレンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロヘキシル)エチレン、及び、(パーフルオロオクチル)エチレンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)が更に好ましい。
微量共単量体は、少なくともパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)を含むことが好ましく、PMVEのみであることがより好ましい。
変性PTFEは、より高強度なPTFE多孔膜が得られることから、全単量体単位に対して0.011モル%以上のPMVEに由来する重合単位を含むことが好ましい。PMVEに由来する重合単位の含有量は、0.015モル%以上であることがより好ましく、0.025モル%以上であることが更に好ましい。PTFE多孔膜の均質性の観点からは、PMVEに由来する重合単位の含有量は、0.250モル%以下が好ましく、0.150モル%以下がより好ましく、0.100モル%以下が更に好ましい。0.050モル%以下が最も好ましい。
PTFEは、TFEと、PMVEと、PMVE以外の微量共単量体と、を重合することにより得られたものであってもよい。PMVE以外の微量共単量体としては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等の含フッ素オレフィン;炭素原子1~5個、特に炭素原子1~3個を有するアルキル基を持つフルオロ(アルキルビニルエーテル);フルオロジオキソール等の環式のフッ素化された単量体;パーフルオロアルキルエチレン;ω―ヒドロパーフルオロオレフィン等が挙げられる。PMVE以外の微量共単量体に由来する重合体の含有量は、0.0001~0.300モル%であることが好ましく、0.010~0.100モル%であることがより好ましい。
PTFEは、一次融点以上の温度で加熱された履歴のないPTFEであることが好ましい。PTFEは、未焼成のPTFEであってもよいし、半焼成されたPTFEであってもよい。未焼成のPTFEとしては、例えば、重合上がりのPTFEが挙げられる。未焼成のPTFEとは、二次融点以上の温度に加熱した履歴のないPTFEであり、半焼成のPTFEとは、一次融点以上の温度で加熱された履歴のないPTFEであって、一次融点以下、かつ二次融点以上の温度で加熱されたPTFEである。一次融点は、未焼成のPTFEを示差走査熱量計で測定した場合に、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を意味する。二次融点は、一次融点以上の温度(例えば、360℃)に加熱したPTFEを示差走査熱量計で測定した場合に、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を意味する。本明細書において、吸熱カーブとは、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で昇温させて得られたものである。
PTFEは、より高強度なPTFE多孔膜が得られることから、平均一次粒子径が150nm以上であることが好ましい。より好ましくは180nm以上であり、更に好ましくは210nm以上であり、特に好ましくは220nm以上である。PTFEの平均一次粒子径が大きいほど、その粉末を用いてペースト押出成形をする際に、ペースト押出圧力の上昇を抑えられ、成形性にも優れる。上限は特に限定されないが500nmであってよい。重合工程における生産性の観点からは、350nmが好ましい。平均一次粒子径は、重合により得られたPTFEの水性分散液を用い、ポリマー濃度を0.22質量%に調整した水性分散液の単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して決定された平均一次粒子径との検量線を作成し、測定対象である水性分散液について、透過率を測定し、検量線をもとに決定できる。
PTFEは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するPTFEとしては、例えば、粒子中に高分子量のPTFEのコアと、より低分子量のPTFEまたは変性のPTFEのシェルとを含む変性PTFEが挙げられる。このような変性PTFEとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるPTFEが挙げられる。
PTFEは、より高強度なPTFE多孔膜が得られることから、標準比重〔SSG〕が2.160以下であることが好ましい。SSGが2.160以下のPTFEは、押出成形物の延伸倍率が3倍を超え、延伸成形に適する。より優れた延伸性が得られることから、SSGは2.155以下であることがより好ましく、2.150以下であることが更に好ましく、2.145以下であることが特に好ましい。ペースト押出成形をする際に、ペースト押出圧力の上昇を抑えられ、成形性にも優れる観点からは、標準比重は、2.130以上であることが好ましい。SSGは、溶融成形加工性を有しないPTFEの分子量の指標としてASTM D4895-89に規定されるSSGである。
PTFEは、より高強度なPTFE多孔膜が得られることから、押出圧力は22.0MPa以下が好ましく、20.0MPa以下がより好ましく、19.0MPa以下が更に好ましく、18.0MPa以下が特に好ましい。押出圧力が高すぎると、押出成形物が硬くなり、後述する圧延時につぶれにくくなって、PTFE多孔膜の均質性が低下する傾向がある。また、押出圧力が低いPTFEを用いると、PTFE多孔膜の強度が低下する傾向にあるが、PTFE多孔膜は、驚くべきことに、上記範囲の押出圧力であっても優れた強度を有する。押出圧力の下限は特に限定されないが、例えば、12.0MPaである。押出圧力は、後述する方法で求めた値である。
PTFEは、より高強度なPTFE多孔膜が得られることから、破断強度が20N以上であることが好ましい。より好ましくは、28N以上である。特に、高い延伸倍率で延伸される場合には、上記範囲の破断強度であることが好ましい。破断強度の上限は特に限定されないが、例えば、70Nである。破断強度は、特開2002-201217号公報の記載に従い、下記方法で求めた値である。
まず、上記押出圧力測定のペースト押出しにより得られたビードを230℃で30分加熱することにより、潤滑剤をビードから除去し、次に、ビード(押出成形体)を適当な長さに切断し、クランプ間隔を5.1cmのいずれかの間隔となるよう、各末端をクランプに固定し、空気循環炉中で300℃に加熱し、次いでクランプを総延伸(総ストレッチ)2400%に相当する分離距離となるまで延伸速度(ストレッチ速度)100%/秒で離して、延伸ビード(ビードをストレッチすることによって作製されたもの)を作製する。
このストレッチ方法は、押出スピード(84cm/分でなく51cm/分)が異なることを除いて、本質的に米国特許第4,576,869号明細書に開示された方法に従う。『ストレッチ』とは、延伸による長さの増加であり、通常元の長さと関連して表される。
破断強度は、上記延伸ビードから得られる3つのサンプル〔延伸ビードの各末端から1つ(クランプの範囲においてネックダウンがあればそれを除く)、および、延伸ビードの中心から1つ、を採取したもの〕の最小引張り破断負荷力として測定されるものであり、
上記最小引張破断負荷力は、5.0cmのゲージ長(チャック間の距離)である可動ジョーにおいてサンプルを挟んで固定し、可動ジョーを300mm/分のスピードで駆動させ、引張り試験機を用いて25℃で300mm/分の速度で引っ張り試験を行い破断した時点の強度を3つのサンプルそれぞれについて測定し、その中で最も小さい値である。
押出圧力は、より高強度なPTFE多孔膜が得られることから、20.0MPa以下、かつ破断強度は28N以上が特に好ましく、押出圧力は19.0MPa以下、かつ破断強度は29N以上が最も好ましい。
PTFE多孔膜は、PTFEからなるPTFEファインパウダーから形成することができる。PTFEファインパウダーの平均粒子径は、通常、100~1000μmである。より均質性に優れるPTFE多孔膜が得られることから、平均粒子径は300~800μmが好ましく、400~700μmがより好ましい。PTFEファインパウダーの平均粒子径は、JIS K6891に準拠して測定した値である。
PTFEファインパウダーの見掛密度は、通常、0.35~0.60g/mlである。より均質性に優れるPTFE多孔膜が得られることから、0.40~0.55g/mlが好ましい。見掛密度は、JIS K6892に準拠して測定した値である。
なお、上述した本開示で使用するPTFE多孔膜は、均質性にも優れる。
本開示の複合ゴム成形品で使用する成形品は、エラストマーを含む。
エラストマーとしては、フッ素ゴム又は非フッ素ゴムのいずれであってもよい。エラストマーとしては、フッ素ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)又はその水素化物(HNBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のジエン系ゴム、エチレン-プロピレン-ターモノマー共重合体ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、塩素化ポリエチレン(CPE)、アクリロニトリル-ブタジエンゴムと塩化ビニルのポリブレンド(PVC-NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられ、なかでも、フッ素ゴム及びシリコーンゴムからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。フッ素ゴム及びシリコーンゴムでは、更に表面摩擦係数の小さい複合ゴム成形品を製造することができる。
フッ素ゴムは、部分フッ素化ゴムであってもよいし、パーフルオロゴムであってもよい。
部分フッ素化ゴムとしては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム等が挙げられる。なかでも、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム及びテトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムは、ビニリデンフルオライド25~85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー75~15モル%とからなる共重合体であることが好ましい。より好ましくは、ビニリデンフルオライド45~80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー55~20モル%とからなる共重合体である。
ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、へキサフルオロプロピレン(HFP)、フルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、一般式(1):CH2=CFRf11(式中、Rf11は炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、一般式(2):CH2=CH-(CF2)n-X2(式中、X2はH又はFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロモノマー、架橋部位を与えるモノマー等のモノマー;エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化モノマーが挙げられる。これらをそれぞれ単独で、又は、任意に組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、TFE、HFP、フルオロアルキルビニルエーテル、CTFE及び2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。フルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式(3):CF2=CF-ORf31(式中、Rf31は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマーが好ましい。
フッ素ゴムは架橋部位を与えるモノマーを含む共重合体であってよい。
架橋部位を与えるモノマーとしては、式(4):
CY1
2=CY2Rf
2X3 (4)
(式中、Y1、Y2はフッ素原子、水素原子または-CH3;Rf
2は1個以上のエーテル結合性酸素原子を有していてもよく、芳香環を有していてもよい、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基;X3はヨウ素原子または臭素原子)
で示される化合物が挙げられる。具体的には、たとえば、式(5):
CY1
2=CY2Rf
3CHR1-X3 (5)
(式中、Y1、Y2、X3は前記同様であり、Rf
3は1個以上のエーテル結合性酸素原子を有していてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基、すなわち水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素オキシアルキレン基、または水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素ポリオキシアルキレン基;R1は水素原子またはメチル基)
で示されるヨウ素含有モノマー、臭素含有モノマー、一般式(6)~(23):
CY4
2=CY4(CF2)n-X3 (6)
(式中、Y4は、同一又は異なり、水素原子またはフッ素原子、nは1~8の整数)
CF2=CFCF2Rf
4-X3 (7)
(式中、
であり、nは0~5の整数)
CF2=CFCF2(OCF(CF3)CF2)m
(OCH2CF2CF2)nOCH2CF2-X3 (8)
(式中、mは0~5の整数、nは0~5の整数)
CF2=CFCF2(OCH2CF2CF2)m
(OCF(CF3)CF2)nOCF(CF3)-X3 (9)
(式中、mは0~5の整数、nは0~5の整数)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))mO(CF2)n-X3 (10)
(式中、mは0~5の整数、nは1~8の整数)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))m-X3 (11)
(式中、mは1~5の整数)
CF2=CFOCF2(CF(CF3)OCF2)nCF(-X3)CF3 (12)
(式中、nは1~4の整数)
CF2=CFO(CF2)nOCF(CF3)-X3 (13)
(式中、nは2~5の整数)
CF2=CFO(CF2)n-(C6H4)-X3 (14)
(式中、nは1~6の整数)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))nOCF2CF(CF3)-X3 (15)
(式中、nは1~2の整数)
CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)-X3 (16)
(式中、nは0~5の整数)、
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2)n-X3 (17)
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数)
CH2=CFCF2OCF(CF3)OCF(CF3)-X3 (18)
CH2=CFCF2OCH2CF2-X3 (19)
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)mCF2CF(CF3)-X3 (20)
(式中、mは0以上の整数)
CF2=CFOCF(CF3)CF2O(CF2)n-X3 (21)
(式中、nは1以上の整数)
CF2=CFOCF2OCF2CF(CF3)OCF2-X3 (22)
CH2=CH-(CF2)nX3 (23)
(式中、nは2~8の整数)
(一般式(6)~(23)中、X3は前記と同様)
で表されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。式(5)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしては、一般式(24):
(式中、mは1~5の整数であり、nは0~3の整数)
で表されるヨウ素含有フッ素化ビニルエーテルが好ましく挙げられ、より具体的には、
などが挙げられるが、これらの中でも、ICH2CF2CF2OCF=CF2が好ましい。式(6)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、ICF2CF2CF=CH2、I(CF2CF2)2CF=CH2が好ましく挙げられる。式(10)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、I(CF2CF2)2OCF=CF2が好ましく挙げられる。式(23)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、CH2=CHCF2CF2I、I(CF2CF2)2CH=CH2が好ましく挙げられる。
また、式:R2R3C=CR4-Z-CR5=CR6R7
(式中、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は同じかまたは異なり、いずれもH、または炭素数1~5のアルキル基;Zは、線状(直鎖状)もしくは分岐状の、酸素原子を含んでいてもよい、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された炭素数1~18のアルキレンもしくはシクロアルキレン基、または(パー)フルオロポリオキシアルキレン基)で示されるビスオレフィン化合物も架橋部位を与えるモノマーとして好ましい。Zは好ましくは炭素数4~12の(パー)フルオロアルキレン基であり、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は好ましくは水素原子である。Zが(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である場合、
-(Q)p-CF2O-(CF2CF2O)m-(CF2O)n-CF2-(Q)p-
(式中、Qは炭素数1~10のアルキレン基または炭素数2~10のオキシアルキレン基であり、pは0または1であり、m及びnはm/n比が0.2~5となり且つ該(パー)フルオロポリオキシアルキレン基の分子量が500~10000、好ましくは1000~4000の範囲となるような整数である。)で表される(パー)フルオロポリオキシアルキレン基であることが好ましい。この式において、Qは好ましくは、-CH2OCH2-及び-CH2O(CH2CH2O)sCH2-(s=1~3)の中から選ばれる。
好ましいビスオレフィン化合物は、
CH2=CH-(CF2)4-CH=CH2、
CH2=CH-(CF2)6-CH=CH2、
式:CH2=CH-Z1-CH=CH2
(式中、Z1は-CH2OCH2-CF2O-(CF2CF2O)m-(CF2O)n-CF2-CH2OCH2-(m/nは0.5))
などが挙げられる。なかでも、CH2=CH-(CF2)6-CH=CH2で示される3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-ドデカフルオロ-1,9-デカジエンが好ましい。
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムの具体例としては、VdF/HFP系ゴム、VdF/HFP/TFE系ゴム、VdF/CTFE系ゴム、VdF/CTFE/TFE系ゴム、VdF/一般式(1)で表されるフルオロモノマー系ゴム、VdF/一般式(1)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴム、VdF/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)系ゴム、VdF/PMVE/TFE系ゴム、VdF/PMVE/TFE/HFP系ゴム等が挙げられる。VdF/一般式(1)で表されるフルオロモノマー系ゴムとしては、VdF/CH2=CFCF3系ゴムが好ましく、VdF/一般式(1)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴムとしては、VdF/TFE/CH2=CFCF3系ゴムが好ましい。
VdF/CH2=CFCF3系ゴムは、VdF40~99.5モル%、及び、CH2=CFCF30.5~60モル%からなる共重合体であることが好ましく、VdF50~85モル%、及び、CH2=CFCF320~50モル%からなる共重合体であることがより好ましい。
テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムは、テトラフルオロエチレン45~70モル%、プロピレン55~30モル%、及び、架橋部位を与えるフルオロモノマー0~5モル%からなる共重合体であることが好ましい。
フッ素ゴムは、パーフルオロゴムであってもよい。パーフルオロゴムとしては、TFEを含むパーフルオロゴム、例えばTFE/一般式(25):CF2=CF-ORf31(式中、Rf31は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(26):CF2=CFOCF2ORf41(式中、Rf41は炭素数1~6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(27):CF2=CFO(CF2CF(Y)O)m(CF2)nF(式中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー共重合体及びTFE/一般式(25)、(26)又は(27)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。その組成は、TFE/PMVE共重合体の場合、好ましくは、45~90/10~55(モル%)であり、より好ましくは、55~80/20~45であり、更に好ましくは、55~70/30~45である。TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、45~89.9/10~54.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは、55~77.9/20~49.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは、55~69.8/30~44.8/0.2~3である。TFE/炭素数が4~12の一般式(25)、(26)又は(27)で表されるフルオロモノマー共重合体の場合、好ましくは、50~90/10~50(モル%)であり、より好ましくは、60~88/12~40であり、更に好ましくは、65~85/15~35である。TFE/炭素数が4~12の一般式(25)、(26)又は(27)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、50~89.9/10~49.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは、60~87.9/12~39.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは、65~84.8/15~34.8/0.2~3である。これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
部分フッ素化ゴムとしては、なかでも、ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、VdF/HFP/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、TFE/プロピレン系フッ素ゴム、TFE/プロピレン/VdF系フッ素ゴム、エチレン/HFP系フッ素ゴム、エチレン/HFP/VdF系フッ素ゴム、エチレン/HFP/TFE系フッ素ゴム、VdF/TFE/パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)系フッ素ゴム、VdF/CTFE系フッ素ゴム等を挙げることができ、なかでも、ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、VdF/HFP/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、VdF/TFE/パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素ゴムであることが好ましい。
パーフルオロゴムとしては、TFE/一般式(27)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(27)で表されるパーフルオロビニルエーテル共重合体、TFE/一般式(25)で表されるフルオロモノマー共重合体、及び、TFE/一般式(25)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
パーフルオロゴムとしては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-81608号公報、特公平5-13961号公報等に記載されているパーフルオロゴムも挙げることができる。
フッ素ゴムのモノマー組成は、19F-NMRにて測定することができる。
フッ素ゴムとしては、高温における圧縮永久ひずみに優れる点から、ガラス転移温度は-70℃以上が好ましく、-60℃以上がより好ましく、-50℃以上が更に好ましい。また、耐寒性が良好であるという点から、5℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましく、-3℃以下が更に好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
フッ素ゴムは、重合時に連鎖移動剤を使用して得られたものであってもよい。連鎖移動剤として、臭素化合物又はヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物又はヨウ素化合物の存在下に、加圧しながら水媒体中で乳化重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
R8IxBry
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R8は炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素または臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
ヨウ素化合物としては、たとえば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロプロパンが好ましい。
フッ素ゴムとしては、例えば、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴム、ポリオール架橋可能なフッ素ゴム、ポリアミン架橋可能なフッ素ゴム等を挙げることができる。パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムとしては特に限定されず、パーオキサイド架橋可能な部位を有するフッ素ゴムであればよい。パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、ヨウ素原子、臭素原子等を挙げることができる。ポリオール架橋可能なフッ素ゴムとしては特に限定されず、ポリオール架橋可能な部位を有するフッ素ゴムであればよい。ポリオール架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。架橋部位を導入する方法としては、フッ素ゴムの重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
フッ素ゴムとしては、シール性が必要とされる場合は、ポリオール架橋可能な部分フッ素化ゴムであることが好ましい。また、上記フッ素ゴムとしては、耐腐食性を重視する場合は、パーフルオロゴムであることが好ましい。
フッ素ゴムのフッ素含有量は、64質量%以上が好ましく、68質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。上限は85質量%であってよい。フッ素ゴムのヨウ素含有量は0.001~10質量%が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、5質量%以下がより好ましい。
シリコーンゴムとしては、一分子中に複数個の重合性不飽和結合を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。ポリオルガノシロキサンは、シリコーンゴムの主骨格を構成する。
シリコーンゴムとしては、また、架橋反応によって硬化するために、一分子中に複数個の重合性不飽和結合を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。ポリオルガノシロキサンは、上記重合性不飽和結合を有する基が、ポリオルガノシロキサン中のケイ素原子に結合していることが好ましい。ケイ素原子に結合している、重合性不飽和結合を有する基以外の基は、有機基及び水素原子のいずれでもよい。このようなポリオルガノシロキサンとしては、公知のものが適宜使用できる。ポリオルガノシロキサン中の上記重合性不飽和結合の数は2以上であればよく、2でもよいし、3以上でもよい。
ポリオルガノシロキサンは、重合性不飽和結合として、炭素原子間の不飽和結合を有するものが好ましく、二重結合を有するものが好ましく、アルケニル基を有するものが好ましい。アルケニル基としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、1-プロペニル基等が例示できる。ポリオルガノシロキサン中の複数個のアルケニル基は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみが異なっていてもよい。アルケニル基は、上記ポリオルガノシロキサンの主骨格を構成するケイ素原子に結合していることが好ましい。
ポリオルガノシロキサンを構成するアルケニル基以外の有機基としては、置換基を有していてもよいアルキル基及びアリール基が例示できる。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、炭素数が1~10であることが好ましい。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基等の、炭素数が1~10のものが、好ましいアルキル基として挙げられる。
環状のアルキル基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、好ましいものとしては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基の、炭素数が3~10のものが例示できる。
アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、好ましいものとしては、フェニル基、o-トリル基(2-メチルフェニル基)、m-トリル基(3-メチルフェニル基)、p-トリル基(4-メチルフェニル基)、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の、炭素数が6~15のものが例示できる。
アルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。ここで、「アルキル基(アリール基)が置換基を有する」とは、アルキル基(アリール基)を構成する一つ以上の水素原子が、水素原子以外の基で置換されているか、あるいはアルキル基(アリール基)を構成する一つ以上の炭素原子が、炭素原子以外の基で置換されていることを指す。そして、水素原子及び炭素原子が共に置換基で置換されていてもよい。置換基を有する上記アルキル基及びアリール基は、置換基も含めて炭素数が上記範囲内であることが好ましい。
アルキル基及びアリール基の水素原子を置換する置換基としては、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アルキルアリールオキシ基、水酸基(-OH)、シアノ基(-CN)及びハロゲン原子が例示できる。
水素原子を置換するアルキル基としては、有機基におけるアルキル基と同様のものが例示できる。水素原子を置換するアルキルオキシカルボニル基としては、上記有機基におけるアルキル基がオキシカルボニル基に結合した一価の基が例示できる。水素原子を置換するアルキルカルボニルオキシ基としては、上記有機基におけるアルキル基がカルボニルオキシ基に結合した一価の基が例示できる。水素原子を置換するアルコキシ基としては、有機基におけるアルキル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。水素原子を置換するアルキルカルボニル基としては、有機基におけるアルキル基がカルボニル基に結合した一価の基が例示できる。
水素原子を置換するアルケニル基としては、有機基におけるアルキル基で、炭素原子間の一つの単結合(C-C)が、二重結合(C=C)に置換されたもので、且つ重合性不飽和結合を有するアルケニル基に該当しないものが例示できる。水素原子を置換するアルケニル基における炭素原子間の二重結合の位置は、特に限定されない。水素原子を置換するアルケニルオキシ基としては、置換基としてのアルケニル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
水素原子を置換するアリール基としては、有機基におけるアリール基と同様のものが例示できる。水素原子を置換するアルキルアリール基としては、有機基におけるアリール基の芳香族環を構成する炭素原子に結合している一つの水素原子が、有機基におけるアルキル基で置換された基が例示できる。水素原子を置換するアリールアルキル基としては、有機基におけるアルキル基の一つの水素原子が上記有機基におけるアリール基で置換された基が例示できる。水素原子を置換するアリールオキシ基としては、有機基におけるアリール基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。水素原子を置換するアリールアルキルオキシ基としては、有機基におけるアルキル基から一つの水素原子を除いたアルキレン基に、有機基におけるアリール基と酸素原子が結合した一価の基が例示できる。水素原子を置換するアルキルアリールオキシ基としては、有機基におけるアリール基から、芳香族環を構成する炭素原子に結合している一つの水素原子を除いたアリーレン基に、有機基におけるアルキル基と酸素原子が結合した一価の基が例示できる。
水素原子を置換するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
水素原子を置換する置換基の数は特に限定されず、一つでもよいし、複数でもよく、すべての水素原子が置換基で置換されていてもよい。また、置換基で置換される水素原子の位置は特に限定されない。
アルキル基及びアリール基の炭素原子は、下記の置換基で置換されていてもよい。当該置換基としては、カルボニル基(-C(=O)-)、エステル結合(-C(=O)-O-)、アミド結合(-NH-C(=O)-)、ヘテロ原子が例示できる。炭素原子を置換するヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ホウ素原子が例示できる。炭素原子を置換する置換基の数は特に限定されず、一つでもよいし、複数でもよい。また、置換基で置換される炭素原子の位置は特に限定されない。
ポリオルガノシロキサンは、市販品を使用してもよいし、公知の方法にしたがって合成したものを使用してもよい。ポリオルガノシロキサンは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
ポリオルガノシロキサンの市販品(商品名)及び上記ポリオルガノシロキサンを含む市販品(商品名)を例示すれば次のとおりである。
旭化成ワッカーシリコーン社製
ELASTOSIL EL 1000シリーズ、ELASTOSIL EL 4000シリーズ、ELASTOSIL EL 3000シリーズ、ELASTOSIL EL 7000シリーズ、ELASTOSIL R401シリーズ等
東レ・ダウコーニング社製
SH800シリーズ、SH50シリーズ、SH70シリーズ、SH700シリーズ、SE4000シリーズ、SE1000シリーズ、SH500シリーズ、SE6000シリーズ、SH80シリーズ、SRX400シリーズ、DY32-400シリーズ、DY32-500シリーズ、DY32-1000シリーズ、DY32-7000シリーズ、DY32-4000シリーズ等
信越化学工業社製 信越シリコーン社製 ゴムコンパウンド
KE-600シリーズ、KE-900シリーズ、KE-9000シリーズ、KE-700シリーズ、KE-800シリーズ、KE-5590-U、KE-500シリーズ等
KE-655-U、KE-675-U、KE-931-U、KE-941-U、KE-951-U、KE-961-U、KE-971-U、KE-981-U、KE-961T-U、KE-971T-U、KE-871C-U、KE-9410-U、KE-9510-U、KE-9610-U、KE-9710-U、KE-742-U、KE-752-U、KE-762-U、KE-772-U、KE-782-U、KE-850-U、KE-870-U、KE-880-U、KE-890-U、KE-9590-U、KE-5590-U、KE-552-U、KE-552DU、KE-582-U、KE-552B-U、KE-555-U、KE-575-U、KE-541-U、KE-551-U、KE-561-U、KE-571-U、KE-581-U、KE-520-U、KE-530B-2-U、KE-540B-2-U、KE-1551-U、KE-1571-U、KE-153-U、KE-174-U、KE-3601SB-U、KE-3711-U、KE-3801M-U、KE-5612G-U、KE-5620BLU、KE-5620W-U、KE-5634-U、KE-7511-U、KE-7611-U、KE-7711-U、KE-765-U、KE-785-U、KE-7008-U、KE-7005-U、KE-503-U、KE-5042-U、KE-505-U、KE-6801-U、KE-136Y-U、X-30-4084-U、X-30-3888-U、X-30-4079-U等
本開示の複合ゴム成形品は、例えば、PTFE未焼成体又はPTFE半焼成体を作製する工程、PTFE未焼成体又はPTFE半焼成体を延伸することによりPTFE多孔膜を得る工程、及び、PTFE多孔膜と上記成形品とを密着させる工程を含む製造方法、により好適に製造できる。
縦方向と横方向のマトリクス引張強度の積が30000MPa2以上であるPTFE多孔膜を、エラストマーを含む成形品と重ね合わせることから、成形品と、PTFE多孔膜が強固に密着しており、接着剤を使用しなくても、PTFE多孔膜が剥離しにくい複合ゴム成形品を製造できる。PTFE多孔膜や成形品の表面を化学的又は物理的に処理したり、PTFE多孔膜や成形品の表面に接着剤を塗布したりすることもできる。
PTFE未焼成体は、例えば、
界面活性剤、水性媒体、TFEを重合槽に投入する工程、
重合槽に重合開始剤を投入してTFEの乳化共重合を開始する工程、
乳化共重合により得られたPTFE水性分散液中のPTFEを凝集させる工程、
凝集させて得られたPTFEを回収する工程、
回収したPTFEを乾燥することによって、PTFEファインパウダーを得る乾燥工程、
上記PTFEファインパウダーをペースト押出してペースト押出物を得るペースト押出工程、
ペースト押出物を圧延してPTFE未焼成体を得る圧延工程、及び、
PTFE未焼成体を乾燥して押出助剤を除去する乾燥工程を含む製造方法、により好適に作製できる。
PTFE半焼成体は、例えば、乾燥後のPTFE未焼成体を半焼成することにより、作製できる。すなわち、上記製造方法は、必要に応じて乾燥後のPTFE未焼成体を半焼成してPTFE半焼成体を得る工程を含むことができる。
上記製造方法において、TFEとともに、上記微量共単量体を重合層に投入し、重合槽に重合開始剤を投入して、TFEと上記微量共単量体との乳化共重合を開始させてもよい。
微量共単量体の供給は、重合開始前に一括して添加してもよいし、連続的又は間欠的に添加してもよい。
乳化共重合をより具体的な例を挙げて説明する。例えば、攪拌機を備えた耐圧の反応容器に水性媒体及び上記界面活性剤を仕込み、脱酸素後、TFEを仕込み、所定の温度にし、重合開始剤を添加して乳化共重合を開始し、反応の進行とともに圧力が低下するので、初期圧力を維持するように、追加のTFE、必要に応じて微量共単量体を連続的又は間欠的に追加供給する。所定量のTFE及び微量共単量体を供給した時点で供給を停止し、反応容器内のTFEをパージし、温度を室温に戻して反応を終了する。
界面活性剤としては、より高強度、少孔径かつ均質性に優れるPTFE多孔膜が得られることから、含フッ素界面活性剤が好ましく、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤がより好ましい。LogPOWが大きい化合物は環境への負荷が懸念されており、これを考慮すると、LogPOWが3.4以下の化合物を使用することが好ましい。これまで乳化重合による含フッ素ポリマーの製造には、界面活性剤として主にパーフルオロオクタン酸アンモニウム〔PFOA〕が使用されており、PFOAはLogPOWが3.5であるので、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤に切り替えることが好ましい。一方で、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤は乳化能に劣る問題がある。高い破断強度のPTFEを得るためには、重合時の水性分散液の安定性が重要であると信じられており、実際に乳化能に劣る含フッ素界面活性剤を使用すると充分な破断強度が得られない。そこで、国際公開第2009/001894号には、LogPOWが小さい含フッ素界面活性剤を水性分散液の安定性を向上させるために多量に使用する方法が記載されている。しかし、この方法により得られたPTFEでも破断強度は充分ではない。LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤存在下にテトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)を乳化共重合したPTFEを使用することによって、上記の微細構造を有し、高強度、少孔径かつ均質性に優れるPTFE多孔膜を形成することができる。すなわち、PTFEは、LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤存在下に、テトラフルオロエチレンと少なくともパーフルオロメチルビニルエーテルとを乳化共重合して得られるものであることが好ましい。
界面活性剤は、LogPOWが2.5以上の含フッ素界面活性剤であってもよいし、3.0以上の含フッ素界面活性剤であってもよい。
LogPOWは、1-オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。LogPOWで表されるオクタノール/水分配係数は、カラム;TOSOH ODS-120Tカラム(φ4.6mm×250mm)、溶離液;アセトニトリル/0.6質量%HClO4水=1/1(vol/vol%)、流速;1.0ml/分、サンプル量;300μL、カラム温度;40℃、検出光;UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸及びデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
含フッ素界面活性剤としては、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/0142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003-119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、国際公開第2007/119526号、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号に記載されたもの等を使用できる。
含フッ素界面活性剤としては、一般式:
CF3-(CF2)4-COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属を表す。)、一般式:
CF3CF2CF2OCF(CF3)COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)、一般式:
CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)、及び、一般式:
CF3CF2OCF2CF2OCF2COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)
からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤であることが好ましい。
含フッ素界面活性剤としては、一般式:
CF3OCF2CF2OCF2CF2COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)、一般式:
CF3OCF2CF2CF2OCHFCF2COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)
等も挙げることができる。
含フッ素界面活性剤が塩である場合、該塩を形成する対イオンとしては、アルカリ金属イオン又はNH4+等が挙げられ、アルカリ金属イオンとしては、例えば、Na+、K+等が挙げられる。
含フッ素界面活性剤としては、CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4、CF3CF2OCF2CF2OCF2COOH、CF3CF2OCF2CF2OCF2COONH4、CF3OCF2CF2CF2OCHFCF2COOH、CF3OCF2CF2CF2OCHFCF2COONH4、CF3-(CF2)4-COOH、CF3-(CF2)4-COONH4、CF3CF2CF2OCF(CF3)COONH4、CF3CF2CF2OCF(CF3)COOH等が挙げられる。
界面活性剤は、合計添加量で、水性媒体に対して0.0001~10質量%の量を添加することが好ましい。より好ましい下限は0.1質量%であり、より好ましい上限は2質量%、更に好ましい上限は1質量%である。少なすぎると、乳化粒子の安定性が良くなく、収率を上げることができないおそれがあり、反応中及び反応後の凝集物や反応容器への付着物が多くなる等の系が不安定になる現象が起こるおそれがある。多すぎると、添加量に見合った安定性の効果が得られず、却って系が不安定になる現象が起こるおそれがあり、重合速度の低下や反応停止が起こるおそれがある。界面活性剤は、重合反応を開始する前に一括で槽内に添加してもよいし、重合反応を開始した後、連続的又は断続的に添加してもよい。界面活性剤の添加量は、乳化粒子の安定性や目的とするPTFEの一次粒子径等によって適宜決定される。
乳化共重合における重合開始剤としては、TFEの重合において従来から使用されているものが使用できる。乳化共重合における重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、レドックス重合開始剤等が使用できる。重合開始剤の量は、少ないほど、SSGが低いPTFEを得ることができる点で好ましいが、あまりに少ないと重合速度が小さくなり過ぎる傾向があり、あまりに多いと、SSGが高いPTFEが生成する傾向がある。ラジカル重合開始剤としては、例えば、水溶性過酸化物が挙げられ、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ジコハク酸パーオキサイド等の水溶性有機過酸化物等が好ましく、過硫酸アンモニウム又はジコハク酸パーオキサイドがより好ましい。これらは、1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用量は、重合温度と目標とするSSGに応じて適宜選択することができるが、一般的に使用される水性媒体の質量の1~100ppmに相当する量が好ましく、1~20ppmに相当する量がより好ましく、1~6ppmに相当する量が更に好ましい。重合開始剤としてラジカル重合開始剤を使用する場合、重合中に亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加することによって、系内のラジカル濃度を調整することもできる。
重合開始剤としてラジカル重合開始剤を使用する場合、重合中にラジカル捕捉剤を添加することにより、SSGが低いPTFEを容易に得ることができる。ラジカル捕捉剤としては、例えば、非置換フェノール、多価フェノール、芳香族ヒドロキシ化合物、芳香族アミン類、キノン化合物等が挙げられるが、なかでもハイドロキノンが好ましい。ラジカル捕捉剤は、SSGが低いPTFEを得る点で、重合反応に消費される全TFEの50質量%が重合される前に添加することが好ましい。より好ましくは、TFEの40質量%、更に好ましくは30質量%が重合される前に添加する。ラジカル捕捉剤は、使用される水性媒体の質量の0.1~20ppmに相当する量が好ましく、3~10ppmに相当する量がより好ましい。
レドックス重合開始剤としては、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩、過硫酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、過酸化水素等の酸化剤と、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、シュウ酸又はコハク酸等の有機酸、チオ硫酸塩、塩化第一鉄、ジイミン等の還元剤との組合せが挙げられる。上記酸化剤、還元剤いずれも1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、過マンガン酸カリウムとシュウ酸との組み合わせが好ましい。レドックス重合開始剤の使用量は、使用するレドックス重合開始剤の種類、重合温度、目標とするSSGに応じて適宜選択することができるが、使用される水性媒体の質量の1~100ppmに相当する量が好ましい。レドックス重合開始剤は、上記酸化剤又は還元剤を同時に添加することで重合反応を開始しても良いし、予め上記酸化剤又は還元剤の何れか一方を槽内に添加しておき、残る一方を添加することで重合反応を開始しても良い。レドックス重合開始剤は、予め上記酸化剤又は還元剤の何れか一方を槽内に添加しておき、残る一方を添加して重合を開始する場合、残る一方を連続的又は断続的に添加することが好ましい。レドックス重合開始剤は、残る一方を連続的又は断続的に添加する場合、SSGが低いPTFEを得る点で、徐々に添加する速度を減速させることが好ましく、さらに重合途中で中止することが好ましく、該添加中止時期としては、重合反応に消費される全TFEの80質量%が重合される前が好ましい。TFEの65質量%が重合される前がより好ましく、TFEの50質量%が重合される前がさらに好ましく、30質量%が重合される前が特に好ましい。レドックス重合開始剤を用いる場合は、水性媒体中のpHをレドックス反応性を損なわない範囲に調整するため、pH緩衝剤を用いることが望ましい。pH緩衝剤としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩類を用いることができ、リン酸水素二ナトリウム2水和物、リン酸水素二ナトリウム12水和物が好ましい。また、レドックス重合開始剤を用いる場合の、レドックス反応する金属イオンとしては複数のイオン価をもつ各種の金属を用いることができる。具体例としては、鉄、銅、マンガン、クロムなどの遷移金属が好ましく、特に鉄が好ましい。
水性媒体は、重合を行わせる媒体であって、水を含む液体を意味する。水性媒体は、水のみであるか、又は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
重合は、0.05~5.0MPaの圧力下で行うことができる。好ましい圧力の範囲は0.5~3.0MPaである。また、重合は、10~100℃の温度で行うことができる。好ましい温度の範囲は50~90℃である。
重合において、更に、目的に応じて、公知の安定剤、連鎖移動剤等を添加してもよい。
安定剤としては、実質的に反応に不活性であって、上記反応条件で液状となる炭素数が12以上の飽和炭化水素が挙げられ、なかでも、パラフィンワックスが好ましい。パラフィンワックスとしては、室温で液体でも、半固体でも、固体であってもよいが、炭素数12以上の飽和炭化水素が好ましい。パラフィンワックスの融点は、通常40~65℃が好ましく、50~65℃がより好ましい。また、飽和炭化水素以外の分散安定剤として、フッ素系オイル、フッ素系溶剤、シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記安定剤は、水性媒体100質量部に対して1~10質量部で使用することができる。
連鎖移動剤としては、公知のものが使用でき、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の飽和炭化水素、クロロメタン、ジクロロメタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、水素等が挙げられる。上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるTFE全量に対して、1~1000ppmであり、好ましくは1~500ppmである。
また、水性媒体中のpHを、レドックス反応性を損なわない範囲に調整するため、pH緩衝剤を用いることが望ましい。pH緩衝剤としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩類を用いることができ、リン酸水素二ナトリウム2水和物、リン酸水素二ナトリウム12水和物が好ましい。また、レドックス重合開始剤を用いる場合の、レドックス反応する金属イオンとしては複数のイオン価をもつ各種の金属を用いることができる。具体例としては、鉄、銅、マンガン、クロムなどの遷移金属が好ましく、特に鉄が好ましい。
重合は、重合中に生じる凝固物の量を減少させるために水性媒体に対して5~500ppmのジカルボン酸の存在下に行ってもよく、その場合、10~200ppmのジカルボン酸の存在下に行うことが好ましい。ジカルボン酸が水性媒体に対して少な過ぎると、充分な効果が得られないおそれがあり、多過ぎると、連鎖移動反応が起こり、得られるポリマーが低分子量のものとなるおそれがある。ジカルボン酸は、150ppm以下であることが好ましい。ジカルボン酸は、重合反応の開始前に添加してもよいし、重合途中に添加してもよい。
ジカルボン酸としては、例えば、一般式:HOOCRCOOH(式中、Rは炭素数1~5のアルキレン基を表す。)で表されるものが好ましく、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸がより好ましく、コハク酸が更に好ましい。
PTFEの重合が終了した時点で、固形分濃度が10~50質量%の水性分散液を得ることができる。水性分散液は、含フッ素界面活性剤、及び、PTFEを含有する。PTFEの平均一次粒子径は150~500nmである。
上記製造方法は、得られたPTFE水性分散液中のPTFEを凝集させる工程、凝集させて得られたPTFEを回収する工程、及び、回収したPTFEを乾燥する乾燥工程を含むことが好ましい。水性分散液に含まれるPTFEを凝集させることによりPTFEファインパウダーが得られる。PTFEの水性分散液は、凝集、洗浄、乾燥を経てファインパウダーとして回収し、PTFE多孔膜の製造に使用することができる。PTFEの水性分散液に対して凝集を行う場合、通常、ポリマーラテックス等の重合により得た水性分散液を、水を用いて10~20質量%のポリマー濃度になるように希釈し、5~50℃に調整し、場合によっては、pHを中性又はアルカリ性に調整した後、撹拌機付きの容器中で反応中の撹拌よりも激しく撹拌して行う。凝集させる温度は使用する撹拌翼の形状やサイズ、ポリマー濃度、目的とするファインパウダーの平均粒子径に応じて、適宜選択することができる。上記凝集は、メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。凝集は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
PTFEを凝集して得られた湿潤粉末の乾燥は、通常、湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行う。粉末同士の、特に高温での摩擦は、一般にPTFEファインパウダーに好ましくない影響を与える。これは、この種のPTFEからなる粒子が小さな剪断力によっても簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失う性質を持っているからである。上記乾燥は、10~250℃、好ましくは120~230℃の乾燥温度で行うことができる。
上記製造方法は、ペースト押出工程の前に、PTFEファインパウダーに、ソルベントナフサ、ホワイトオイルなどの液状潤滑剤を添加して液状潤滑剤と混合されたPTFEファインパウダーを得る工程を含むことが好ましい。液状潤滑剤の添加量は、後述するペースト押出条件等にもよるが、PTFEファインパウダー100質量部に対して、17~34質量部であることが好ましい。
ペースト押出工程は、特定の径を有するダイスや、シート形状の押出物が得られるダイスを備えた押出機を用いて、棒状又はシート状のペースト押出物を得るものであることが好ましい。ペースト押出工程において、押出圧力は、使用する押出機や、押出速度等に応じて適宜設定すればよい。
ペースト押出工程は、高強度に優れる多孔質が得られることから、押出温度が5~100℃であることが好ましい。より好ましくは、30~80℃である。
ペースト押出工程は、PTFEファインパウダーを予備成形して予備成形体を得て、この予備成形体を押出機に入れて押出して棒状のペースト押出物を得るものであることが好ましい。
圧延工程は、圧延温度が5~100℃であることが好ましく、30~80℃であることがより好ましい。圧延後の未焼成PTFEの厚みは、通常、20~500μmであり、好ましくは50~400μmである。
乾燥工程は、常温でおこなってもよいし、加熱して行ってもよい。上記のように液状潤滑剤を使用した場合、乾燥することにより液状潤滑剤を除去することができる。乾燥温度は、液状潤滑剤の種類等によるが、70~280℃であることが好ましく、100~250℃であることがより好ましい。
圧延は、圧延ロール等を用いる方法、ベルトプレス等により行うことができる。
上記製造方法は、必要に応じてPTFE未焼成体を半焼成してPTFE半焼成体を得る工程を含む。半焼成は、PTFEの一次融点以下、かつ二次融点以上の温度で加熱するものである。一次融点は、未焼成のPTFEを示差走査熱量計で測定した場合に、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を意味する。二次融点は、一次融点以上の温度(例えば、360℃)に加熱したPTFEを示差走査熱量計で測定した場合に、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を意味する。本明細書において、上記吸熱カーブは、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で昇温させて得られたものである。半焼成の具体的な温度及び半焼成時間は、特開昭59-152825号公報記載の条件を参照して決定することができる。
上記延伸は、PTFE未焼成体又はPTFE半焼成体を縦方向(MD)に延伸して一軸延伸膜を得る一軸延伸工程、及び、一軸延伸膜を横方向(TD)に延伸する二軸延伸工程、を含むことが、上述した膜厚み及び上述した引張強度を有する上記PTFE多孔膜が容易に得られることから好ましい。
上記方法により、上記PTFEは容易にフィブリル化し、結節と繊維からなる二軸延伸膜が得られる。なお、通常、上記縦方向(MD)は、ペースト押出工程でペースト押出した方向と同じ方向である。横方向(TD)は、縦方向に対して垂直な方向である。通常は、圧延工程(半焼成する場合は半焼成体を得る工程)の後、縦方向に延伸して一軸延伸膜を得て、その後、横方向に延伸して二軸延伸膜を得るが、圧延工程(半焼成する場合は半焼成体を得る工程)の後、横方向に延伸して一軸延伸膜を得て、その後、縦方向に延伸して二軸延伸膜を得てもよい。なお、延伸設備の設計上、延伸倍率に制限がある場合等には、縦方向の延伸(一軸延伸工程)、横方向の延伸(二軸延伸工程)のいずれも、複数回行ってもよい(いわゆる多段延伸)。
一軸延伸工程は、高強度なPTFE多孔膜が得られることから、延伸倍率が2~50倍であることが好ましく、5~30倍であることがより好ましい。
一軸延伸工程は、高強度なPTFE多孔膜が得られることから、延伸温度が常温~一次融点未満であることが好ましく、200~330℃であることがより好ましく、250~300℃であることが更に好ましい。
一軸延伸工程は、高強度なPTFE多孔膜が得られることから、延伸速度が5~2000%/秒であることが好ましく、7~1000%/秒であることがより好ましく、10~700%/秒であることが更に好ましい。
一軸延伸を行う方法としては、特に限定されない。工業的にはロール延伸、熱板延伸等が挙げられる。
二軸延伸工程は、高強度なPTFE多孔膜が得られることから、延伸倍率が2~100倍であることが好ましく、10~50倍であることがより好ましい。
二軸延伸工程は、高強度なPTFE多孔膜が得られることから、延伸温度が常温~400℃であることが好ましく、150~390℃であることがより好ましく、200~380℃であることが更に好ましい。
二軸延伸工程は、高強度なPTFE多孔膜が得られることから、延伸速度が5~2000%/秒であることが好ましく、7~2000%/秒であることがより好ましく、10~2000%/秒であることが更に好ましい。
製造方法は、高強度なPTFE多孔膜が得られることから、二軸延伸工程の後に、熱固定する工程を含むことが好ましい。熱固定の温度は、300~420℃であることが好ましく、350~400℃であることがより好ましい。
二軸延伸を行う方法としては特に限定されないが、テンター等を用いて行う方法が挙げられる。
製造方法は、更に、上記PTFE多孔膜と上記成形品とを密着させる工程を含む。
上記密着は、上記PTFE多孔膜と、未架橋の上記エラストマーを含む組成物からなる上記成形品とを重ね合わせ、上記エラストマーの架橋温度以上に加熱することにより、実施できる。
より具体的には、密着は、PTFE多孔膜を金型内に設置し、未架橋のエラストマーを含む組成物を金型内に充填してプレス加工する方法、未架橋のエラストマーから予備成形体を得た後、予備成形体とPTFE多孔膜とを熱プレスする方法、等により実施できる。
上記組成物は、上述したエラストマーに加えて、架橋剤、架橋助剤等を含むものであってもよい。架橋剤としては、ポリオール架橋剤、パーオキサイド架橋剤等が挙げられる。
上記組成物は、未架橋の上記エラストマー等を、通常のエラストマー用加工機械、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混合することにより調製することができる。この他、密閉式混合機を用いる方法によっても調製することができる。
予備成形体は、未架橋の上記エラストマーを含む組成物を金型にて加熱圧縮する方法、未架橋のエラストマーを含む組成物を加熱された金型に圧入する方法、未架橋のエラストマーを含む組成物を押出機で押出す方法など公知の方法で製造できる。
得られた複合ゴム成形品において、PTFE多孔膜による被覆面のゴム硬度は、該多孔膜を被覆しないゴムのゴム硬度よりも1%以上高いことが好ましく、1.5%以上高いことがより好ましい。ここで、硬度はタイプEデュロメータ-(JIS-K-6253スプリング加重値550-8379mN 測定子半径2.5mm高さ2.5mm半球型)によって測定することができる。
本開示の複合ゴム成形品は、以下に示す分野で好適に用いることができる。
半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル、フィールドエミッションディスプレイパネル、太陽電池基板等の半導体関連分野では、O(角)リング、パッキン、シール材、ガスケット、ダイアフラム等があげられ、これらはCVD装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、排気装置に用いることができる。具体的には、ゲートバルブのOリング、シール材として、クォーツウィンドウのOリング、シール材として、チャンバーのOリング、シール材として、ゲートのOリング、シール材として、ベルジャーのOリング、シール材として、カップリングのOリング、シール材として、ポンプのOリング、シール材、ダイアフラムとして、半導体用ガス制御装置のOリング、シール材として、レジスト現像液、剥離液用のOリング、シール材として用いることができる。
自動車分野では、ガスケット、シャフトシール、バルブステムシール、シール材はエンジンならびに周辺装置に用いることができ、シール材はAT装置に用いることができ、O(角)リング、パッキン、シール材およびダイアフラムは燃料系統ならびに周辺装置に用いることができる。具体的には、エンジンヘッドガスケット、メタルガスケット、オイルパンガスケット、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、バルブステムシール、マニホールドパッキン、酸素センサー用シール、インジェクターOリング、インジェクターパッキン、燃料ポンプOリング、ダイアフラム、クランクシャフトシール、ギアボックスシール、パワーピストンパッキン、シリンダーライナーのシール、バルブステムのシール、自動変速機のフロントポンプシール、リアーアクスルピニオンシール、ユニバーサルジョイントのガスケット、スピードメーターのピニオンシール、フートブレーキのピストンカップ、トルク伝達のO-リング、オイルシール、排ガス再燃焼装置のシール、ベアリングシール、キャブレターのセンサー用ダイアフラム等として用いることができる。
航空機分野、ロケット分野および船舶分野では、ダイアフラム、O(角)リング、バルブ、パッキン、シール材等があげられ、これらは燃料系統に用いることができる。具体的には、航空機分野では、ジェットエンジンバルブステルシール、ガスケットおよびO-リング、ローテーティングシャフトシール、油圧機器のガスケット、防火壁シール等に用いられ、船舶分野では、スクリューのプロペラシャフト船尾シール、ディーゼルエンジンの吸排気用バルブステムシール、バタフライバルブのバルブシール、バタフライ弁の軸シール等に用いられる。
プラント等の化学品分野では、バルブ、パッキン、ダイアフラム、O(角)リング、シール材等があげられ、これらは医薬、農薬、塗料、樹脂等化学品製造工程に用いることができる。具体的には、化学薬品用ポンプ、流動計、配管のシール、熱交換器のシール、硫酸製造装置のガラス冷却器パッキング、農薬散布機、農薬移送ポンプのシール、ガス配管のシール、メッキ液用シール、高温真空乾燥機のパッキン、製紙用ベルトのコロシール、燃料電池のシール、風洞のジョイントシール、ガスクロマトグラフィー、pHメーターのチューブ結合部のパッキン、分析機器、理化学機器のシール、ダイアフラム、弁部品等として用いることができる。
現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野および塗装設備等の塗装分野では、乾式複写機のシール、弁部品等として用いることができる。
食品プラント機器分野では、バルブ、パッキン、ダイアフラム、O(角)リング、シール材等があげられ、食品製造工程に用いることができる。具体的には、プレート式熱交換器のシール、自動販売機の電磁弁シール等として用いることができる。
原子力プラント機器分野では、パッキン、Oリング、シール材、ダイアフラム、バルブ等があげられる。
一般工業分野では、パッキング、Oリング、シール材、ダイアフラム、バルブ等があげられる。具体的には、油圧、潤滑機械のシール、ベアリングシール、ドライクリーニング機器の窓、その他のシール、六フッ化ウランの濃縮装置のシール、サイクロトロンのシール(真空)バルブ、自動包装機のシール、空気中の亜硫酸ガス、塩素ガス分析用ポンプのダイアフラム(公害測定器)等に用いられる。
電気分野では、具体的には、新幹線の絶縁油キャップ、液封型トランスのベンチングシール等として用いられる。
燃料電池分野では、具体的には、電極、セパレーター間のシール材や水素・酸素・生成水配管のシール等として用いられる。
電子部品分野では、具体的には、放熱材原料、電磁波シールド材原料、コンピューターのハードディスクドライブのガスケット等に用いられる。また,非粘着性を利用しPCB(プリント基板)等のプレス機用クッション成形品兼離形成形品としても好適に用いられる。
現場施工型の成形に用いることが可能なものとしては特に限定されず、例えばエンジンのオイルパンのガスケット、磁気記録装置用のガスケット、クリーンルーム用フィルターユニットのシーリング剤等があげられる。
また、磁気記録装置(ハードディスクドライブ)用のガスケット、半導体製造装置やウェハー等のデバイス保管庫等のシーリング材等のクリーン設備用シール材に特に好適に用いられる。
さらに、耐薬品性、ガス低透過性、難燃性等の特性を活かし、燃料電池セル電極間やその周辺配管等に用いられるパッキン等の燃料電池用のシール材等にも特に好適に用いられる。医療分野にも適用可能で薬液搬送容器などの内蓋(セプタム含む),医療用器具のガスケットなどにも特に好適に用いられる。
つぎに本開示を実施例に基づき説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
作製例1
国際公開第2015/080290号の作製例1に記載の方法により、変性PTFEのファインパウダーA(PTFE-A)を得た。以下に示す評価方法にしたがって、PMVE変性量、SSG、押出圧力、破断強度について測定および評価を行った。結果を表1に示す。
作製例2
乾燥温度を160℃に変更する以外は、国際公開第2005/061567号の比較例3に記載の方法により、ホモPTFEのファインパウダーB(PTFE-B)を得た。得られたPTFE-Bについて、PTFE-Aと同様に評価を行った。結果を表1に示す。
<平均一次粒子径>
ポリテトラフルオロエチレン水性分散液を水で固形分濃度が0.15質量%になるまで希釈し、得られた希釈ラテックスの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して決定した数基準長さ平均粒子径とを測定して、検量線を作成する。この検量線を用いて、各試料の550nmの投射光の実測透過率から数平均粒子径を決定する。
<微量共単量体(PMVE)の含量>
非溶融加工性PTFEファインパウダーを高温下で溶融させて、F19-NMR測定を行い、得られる微量共単量体中の官能基に由来するシグナルから算出した。例えば、本願実施例にて使用したPMVEの含有量は、360℃にてF19-NMR測定を行い、以下の式に基づき算出する。
微量共単量体含有量(mol%)=(4B/3)/(A+(B/3))×100
(A=-118ppm付近に現れるCF2シグナルとCFシグナルとの合計、B=-52ppm付近に現れるPMVE由来のCF3シグナルの積分値)
<標準比重〔SSG〕>
ASTM D-4895-89に準拠して試料を作製し、得られた試料の比重を水置換法によって測定する。
<押出圧力>
特開2002-201277号公報の記載に従い、まず、室温で2時間以上放置されたPTFEファインパウダー100gに潤滑剤(商品名「アイソパーH(登録商標)」、エクソン社製)21.7gを添加し、3分間混合してPTFEファインパウダー混合物を得る。その後、得られたPTFEファインパウダー混合物を、25℃恒温槽に2時間放置した後に、リダクションレシオ(ダイスの入り口の断面積と出口の断面積の比)100、押出速度51cm/分の条件で、25℃にて、オリフィス(直径2.5mm、ランド長1.1cmm、導入角30°)を通してペースト押出しを行い、ビードを得る。押出圧力は、ペースト押出しにおいて押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除した値である。
<破断強度>
特開2002-201277号公報の記載に従い、まず、下記方法で押出ビードの延伸試験を行い、破断強度測定用のサンプルを作製する。ペースト押出により得られたビードを230℃で30分間乾燥し、潤滑剤を除去する。乾燥後のビードを適当な長さに切断し、クランプ間が5.1cmとなるよう、各末端を固定し、空気循環炉中で300℃に加熱する。次いで、クランプを総ストレッチが2400%に相当する分離距離となるまで、延伸速度100%/秒で離し、延伸試験を実施する。『総ストレッチ』とは、延伸試験前のビード長さ(100%)に対する延伸による長さの増加である。延伸条件にて作成された延伸ビードを適当な長さに切断し、5.0cmのゲージ長である可動ジョーにおいて挟んで固定し、可動ジョーを300mm/分のスピードで駆動させ、引張り試験機(島津製作所社製)を用いて室温にて破断強度を測定し、延伸ビードから得られる3つのサンプル、延伸ビードの各末端から1つ(クランプの範囲においてネックダウンがあればそれを除く)、およびその中心から1つ、の最小引張り破断負荷(力)を破断強度とする。
製造例1~8
作製例1または2で得られたPTFEのファインパウダー100質量部あたり、押出助剤として炭化水素油(出光興産株式会社製「IPソルベント2028」)を表2に示した量を加えて混合し、12時間静置した。次に100φmmの予備成形機にファインパウダーと押出助剤の混合物を投入し、圧力3MPaで圧縮し、プレフォームを得た。続いて、予め内径16mmφのダイスを内径100mmの押出機に、上記プレフォームを入れてペースト押出を行い、PTFE成形体を得た。更に得られたPTFE成形体を、カレンダーロールによりフィルム状に成形(圧延)し未焼成PTFEフィルムを得た。熱風乾燥炉に通して炭化水素油を蒸発除去し、平均厚み約300μmの帯状の未焼成PTFEフィルムを得た。製造例4および5では、表2に記載した条件でさらに半焼成した。
複数のロールを備えた延伸装置を用い、得られた未焼成PTFEフィルム及び半焼成PTFEフィルムを表2に示す温度と延伸倍率で延伸した。得られた多孔膜(二軸延伸膜)の物性評価(目付、膜密度、膜厚み、縦方向および横方向のマトリクス引張強度、平均孔径)を以下に示す方法により測定した。表2にその結果を示す。
<目付(目付量)>
4.0cm×12.0cmの長方形にカットした試料を精密天秤にて測定した質量(g)を面積(0.0048m2)で除した値とする。
<膜密度>
4.0cm×12.0cmの長方形にカットした試料の質量を精密天秤にて測定し、測定した質量、および上記膜厚みから、膜密度を以下の式により計算する。
ρ=M/(4.0×12.0×t)
式中:ρ=密度(g/cm3)
M=質量(g)
t=膜厚み(cm)
3か所について上記測定および計算を行い、それらの平均値を膜密度とする。
<膜厚み>
膜厚みは、膜厚計を使用し、二軸延伸多孔質膜を5枚重ねて全体の膜厚みを測定し、その値を5で割った数値を1枚の膜厚みとする。
<マトリクス引張強度(縦及び横)>
下記方法で求めた縦のマトリクス引張強度と横のマトリクス引張強度の積から、「縦と横のマトリクス引張強度の積」を求める。
(縦のマトリクス引張強度)
まず、二軸延伸多孔質膜から5つの試料を切り出した。各試料は、縦方向(長手方向、つまりペースト押出方向)に15.0cm、横方向(幅方向、つまりペースト押出方向とは直角方向)に2.0cmの寸法を有する。5つの試料について、縦方向の引張強度測定を行い、5つの試料それぞれが示す最大荷重を求める。
次に、5つの試料が示した最大荷重の値のうち、最も大きな値と最も小さな値とを除き、残りの3つの値の平均値を算出し、縦の平均最大荷重とする。
縦のマトリクス引張強度は、縦の平均最大荷重、試料幅(2.0cm)、膜厚み(単位:cm)及び空孔率から、下記式を用いて求める。
縦のマトリクス引張強度={縦の平均最大荷重/(2.0×膜厚み)}/(1-空孔率)
(横のマトリクス引張強度)
二軸延伸多孔質膜から5つの試料を切り出した。各試料は、縦方向(長手方向、つまりペースト押出方向)に2.0cm、横方向(幅方向、つまりペースト押出方向とは直角方向)に15.0cmの寸法を有する。5つの試料について、横方向の引張強度測定を行い、5つの試料それぞれが示す最大荷重を求めた。
次に、縦方向と同様に横の平均最大荷重を求め、下記式を用いて横のマトリクス引張強度を求める。
横のマトリクス引張強度={横の平均最大荷重/(2.0×膜厚み)}/(1-空孔率)
なお、上記引張強度測定は、50Nロードセルを備える引張試験機を用い、チャック長さを5.0cm、クロスヘッド速度を300mm/分として行う。
なお、空孔率は、上記膜密度およびPTFE真密度(2.2g/cm3)から、以下の式により求める。
空孔率=1-(膜密度/PTFE真密度)
上記PTFE真密度は、2.2g/cm3である。
<平均孔径>
ASTM F-316-86に準拠し、ミーンフローポアサイズ(MFP)を測定し、平均孔径とする。
<フィブリル/ノードの面積比>
まず、PTFE多孔膜の写真を走査型電子顕微鏡(SU8020、HITACHI社製 蒸着は日立E1030型)で撮影する(SEM写真。倍率1000倍~5000倍)。この写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス社製TVイメージプロセッサTVIP-4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング社製TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込み、ノードとフィブリルに分離し、ノードのみからなる像とフィブリルのみからなる像を得る。フィブリル/ノードの面積比は、フィブリル像の面積の総和とノード像の面積の総和の比から求める。
実施例1~10および比較例1~11
製造例1~8で得られたPTFE多孔質膜、表3又は表4に示すエラストマーを使用して複合ゴム成形品を作製した。エラストマーとしてフッ素ゴムを使用した場合には、PTFE多孔質膜とフッ素ゴムを重ね合わせ、170℃で10分間一次加硫し、さらに230℃で24時間の二次加硫を行い25mm×50mm×2mm厚の加硫ゴム成形品複合ゴム成形品を作製した。エラストマーとしてシリコーンゴムを使用した場合には、PTFE多孔質膜とシリコーンゴムを重ね合わせ、160℃で10分間一次加硫し、さらに180℃で4時間の二次加硫を行い25mm×50mm×2mm厚の加硫ゴム成形品複合ゴム成形品を作製した。
<含浸状態>
膜ラミネート面を目視観察し,延伸膜の膜折れ等膜自体に明らかな瑕疵がある部分以外に白色に見える未含浸部が見られる物は×判定とした。
<硬度および硬度変化>
タイプEデュロメーター((株)テクロック製、JIS-K-6253、スプリング加重値550-8379mN、半径2.5mm、高さ2.5mmの半球型測定子)で硬度を測定し止針式で読み取れる最大値を硬度とした。また、膜ラミネート面と非ラミネート面の両方の硬度を測定し,その測定値から硬度変化を算出した。
<摩擦特性>
実施例及び比較例で得られたフィルムに対して、リングオンディスク型の摩擦磨耗試験機により、荷重500N/cm2、回転速度0.5m/秒、60分の条件で、S45C(外形20.5mm、内径16.5mm)のリングを用いて摩擦摩耗試験を行い、平均摩擦係数、摩擦係数振幅、耐摩耗性を評価した。耐摩耗性は摩耗試験部の実体顕微鏡による目視観察を行い以下の基準により評価した。
×:PTFE繊維の毛羽立ちが見られ膜破壊が発生しているもの
△:PTFE繊維に変化は見られるが毛羽立ち等破壊には至っていないもの
〇:変化が認められないもの
(当該摩擦試験は膜に強い摩擦力を与えて耐久性を調べる試験であるため、耐久性が不足している場合はPTFE繊維が毛羽立つなどの変化を起こす。)
実施例の複合成形品では、耐摩耗性試験後も変化が認められず、長期間に渡って非粘着性を維持できる複合ゴム成形品が得られたことを示している。