以下、図面を参照しながら、実施形態に係る超音波診断装置を説明する。なお、一つの実施形態又は変形例に記載した内容は、他の実施形態又は他の変形例にも同様に適用されてもよい。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力装置102と、ディスプレイ103とを有する。
超音波プローブ101は、例えば、圧電振動子等の複数の素子を有する。これら複数の素子は、装置本体100が有する送受信回路110の送信回路110aから供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、例えば、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ101が有する複数の素子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。そして、超音波プローブ101は、反射波信号を後述する送受信回路110の受信回路110bに出力する。
超音波プローブ101は、装置本体100と着脱可能に設けられる。被検体P内の2次元領域の走査(2次元走査)を行なう場合、操作者は、例えば、複数の圧電振動子が一列で配置された1Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100に接続する。1Dアレイプローブは、リニア型超音波プローブ、コンベックス型超音波プローブ、セクタ型超音波プローブ等である。また、被検体P内の3次元領域の走査(3次元走査)を行なう場合、操作者は、例えば、メカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100と接続する。メカニカル4Dプローブは、1Dアレイプローブのように一列で配列された複数の圧電振動子を用いて2次元走査が可能であるとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の圧電振動子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送信することで2次元走査が可能である。
入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等の入力手段により実現される。入力装置102は、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を装置本体100に転送する。
ディスプレイ103は、例えば、超音波診断装置1の操作者が入力装置102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データにより示される超音波画像等を表示したりする。ディスプレイ103は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ等によって実現される。
装置本体100は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する。なお、超音波画像データは、画像データの一例である。装置本体100は、超音波プローブ101が受信した被検体Pの2次元領域に対応する反射波データに基づいて2次元の超音波画像データを生成可能である。また、装置本体100は、超音波プローブ101が受信した被検体Pの3次元領域に対応する反射波データに基づいて3次元の超音波画像データを生成可能である。図1に示すように、装置本体100は、送受信回路110と、バッファメモリ120と、Bモード処理回路130と、ドプラ処理回路140と、画像生成回路150と、画像メモリ160と、記憶回路170と、制御回路180とを有する。
送受信回路110は、制御回路180による制御を受けて、超音波プローブ101から超音波を送信させるとともに、超音波プローブ101に超音波(超音波の反射波)を受信させる。すなわち、送受信回路110は、超音波プローブ101を介して超音波スキャン(超音波走査)を実行する。送受信回路110は、送受信部の一例である。送受信回路110は、送信回路110aと受信回路110bとを有する。
送信回路110aは、制御回路180による制御を受けて、超音波プローブ101から超音波を送信させる。送信回路110aは、レートパルサ発生回路と、送信遅延回路と、送信パルサとを有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。送信回路110aは、被検体P内の2次元領域を走査(スキャン)する場合、超音波プローブ101から2次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。また、送信回路110aは、被検体P内の3次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から3次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。
レートパルサ発生回路は、所定のレート周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で、送信超音波(送信ビーム)を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。レートパルスが送信遅延回路を経由することで、異なる送信遅延時間を有した状態で送信パルサに電圧が印加される。例えば、送信遅延回路は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を、レートパルサ発生回路により発生される各レートパルスに対して与える。送信パルサは、かかるレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。なお、送信遅延回路は、各レートパルスに与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの超音波の送信方向を任意に調整する。
駆動パルスは、送信パルサからケーブルを介して超音波プローブ101内の圧電振動子まで伝達した後に、圧電振動子において電気信号から機械的振動に変換される。この機械的振動によって発生した超音波は、生体内部に送信される。ここで、圧電振動子ごとに異なる送信遅延時間を持った超音波は、集束されて、所定方向に伝搬していく。
なお、送信回路110aは、制御回路180による制御を受けて、所定の走査シーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有する。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
超音波プローブ101により送信された超音波の反射波は、超音波プローブ101内部の圧電振動子まで到達した後、圧電振動子において、機械的振動から電気的信号(反射波信号)に変換され、受信回路110bに入力される。受信回路110bは、プリアンプと、A/D(Analog to Digital)変換器と、直交検波回路等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。そして、受信回路110bは、生成した反射波データをバッファメモリ120に格納する。
プリアンプは、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン調整(ゲイン補正)を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換することでゲイン補正された反射波信号をデジタル信号に変換する。直交検波回路は、A/D変換された反射波信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、直交検波回路は、I信号及びQ信号(IQ信号)を反射波データとしてバッファメモリ120に格納する。
受信回路110bは、超音波プローブ101が受信した2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、受信回路110bは、超音波プローブ101が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
ここで、本実施形態に係る超音波診断装置1は、血流情報を示す血流画像、微細な毛細血管等の組織灌流が描出された造影画像、及び、組織形状を示す組織画像を同時に表示する。なお、血流画像は、血流画像データであるカラードプラ画像データにより示される画像である。また、造影画像は、造影画像データであるBモード画像データにより示される画像である。また、組織画像は、組織画像データであるBモード画像データにより示される画像である。
そして、かかる表示を行うために、送受信回路110は、ドプラモードで血流画像データを収集するための超音波スキャン(第1超音波スキャン)を実行するとともに、Bモードで組織画像データ及び造影画像データを収集するための超音波スキャン(第2超音波スキャン)を実行する。第1超音波スキャンは、造影剤が注入された被検体P内の領域(第1領域)に対する超音波スキャンであり、第1領域内の血流情報を取得する超音波スキャンである。第2超音波スキャンは、被検体P内の領域(第2領域)内の組織形状の情報、及び、微細な毛細血管等の組織灌流に関する情報を取得する超音波スキャンである。
すなわち、送受信回路110は、組織画像データ及び造影画像データを収集する際に、組織画像を収集するための超音波スキャン、及び、造影画像を収集するための超音波スキャンを別々に行うのではなく、1つの第2超音波スキャンを実行する。すなわち、送受信回路110が第1超音波スキャン及び第2超音波スキャンの2種類の超音波スキャンを実行するだけで、超音波診断装置1は、血流画像、組織画像及び造影画像の3種類の画像を収集することができる。
第1領域と第2領域とは少なくとも一部で重なっていればよい。第1領域の範囲と第2領域の範囲は、同じ範囲であってもよく、第1領域の範囲が第2領域の範囲より小さくてもよく、第2領域の範囲が第1領域の範囲より小さくても良い。
バッファメモリ120は、送受信回路110により生成された反射波データを一時的に記憶するメモリである。例えば、バッファメモリ120は、数フレーム分の反射波データ、又は、数ボリューム分の反射波データを記憶する。例えば、バッファメモリ120は、受信回路110bの制御により、所定数のフレーム分の反射波データを記憶する。そして、バッファメモリ120は、所定数のフレーム分の反射波データを記憶している状態で、新たに1フレーム分の反射波データが受信回路110bにより生成された場合、受信回路110bによる制御を受けて、生成された時間が最も古い1フレーム分の反射波データを破棄し、新たに生成された1フレーム分の反射波データを記憶する。例えば、バッファメモリ120は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子によって実現される。なお、送受信回路110により生成される1フレーム分の反射波データとは、1収集フレーム分の反射波データである。
Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140は、バッファメモリ120から反射波データを読み出し、読み出した反射波データに対して、各種の信号処理を行う信号処理部である。
Bモード処理回路130は、バッファメモリ120から読み出した反射波データに対して、対数増幅及び包絡線検波処理等を行なって、サンプル点ごとの信号強度(振幅強度)が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。Bモード処理回路130は、生成したBモードデータを画像生成回路150に出力する。Bモード処理回路130は、例えば、プロセッサにより実現される。
なお、Bモード処理回路130は、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。このBモード処理回路130の機能を用いることにより、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、造影剤からの非線形信号を映像化するコントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)を実行可能である。例えば、Bモード処理回路130は、造影画像データの元となるBモードデータ(第2のBモードデータ)を生成することができる。第1の実施形態に係るBモード処理回路130が行なう具体的な処理については、後に詳述する。
ドプラ処理回路140は、バッファメモリ120から読み出した反射波データを周波数解析することで、ドプラ効果に基づく移動体(血流や組織、造影剤エコー成分等)の運動情報を抽出し、抽出した運動情報を示すデータ(ドプラデータ)を生成する。例えば、ドプラ処理回路140は、移動体の運動情報として、平均速度、平均分散値及び平均パワー値等を多点に渡り抽出し、抽出した移動体の運動情報を示すドプラデータを生成する。ドプラ処理回路140は、生成したドプラデータを画像生成回路150に出力する。
上記のドプラ処理回路140の機能を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、カラーフローマッピング(CFM:Color Flow Mapping)法とも呼ばれるカラードプラ法を実行可能である。カラーフローマッピング法では、超音波の送受信が複数の走査線上で複数回行なわれる。そして、カラーフローマッピング法では、同一位置のデータ列に対してMTI(Moving Target Indicator)フィルタを掛けることで、同一位置のデータ列から、静止している組織、或いは、動きの遅い組織に由来する信号(クラッタ信号)を抑制して、血流に由来する信号を抽出する。そして、カラーフローマッピング法では、この血流信号から血流の速度、血流の分散、血流のパワー等の血流情報を推定する。後述する画像生成回路150は、血流情報の推定結果の分布を、例えば、2次元でカラー表示した超音波画像データ(血流画像データ:カラードプラ画像データ)を生成する。そして、ディスプレイ103は、血流画像データが示す血流画像を表示する。
本実施形態に係るドプラ処理回路140は、MTIフィルタとして、入力信号に応じて係数を変化させる適応型のMTIフィルタを用いる。例えば、ドプラ処理回路140は、適応型のMTIフィルタとして、「Eigenvector Regression Filter」と呼ばれるフィルタを用いる。以下、固有ベクトルを用いた適応型MTIフィルタである「Eigenvector Regression Filter」を、「固有ベクトル型MTIフィルタ」と記載する。
固有ベクトル型MTIフィルタは、相関行列から固有ベクトルを計算し、計算した固有ベクトルから、クラッタ成分抑制処理に用いる係数を計算する。この方法は、主成分分析や、カルーネン・レーベル変換(Karhunen-Loeve transform)、固有空間法で使われている手法を応用したものである。
固有ベクトル型MTIフィルタを用いる第1の実施形態に係るドプラ処理回路140は、同一位置(同一サンプル点)の連続した反射波データのデータ列から、第1領域の相関行列を計算する。そして、ドプラ処理回路140は、相関行列の固有値及び当該固有値に対応する固有ベクトルを計算する。そして、ドプラ処理回路140は、各固有値の大きさに基づいて各固有ベクトルを並べた行列のランクを低減した行列を、クラッタ成分を抑制するフィルタ行列として計算する。
そして、ドプラ処理回路140は、フィルタ行列を用いて、同一位置(同一サンプル点)の連続した反射波データのデータ列から、クラッタ成分が抑制され、血流に由来する血流信号が抽出されたデータ列を特定する。そして、ドプラ処理回路140は、特定したデータ列を用いた自己相関演算等の演算を行なって、血流情報を推定する。そして、ドプラ処理回路140は、推定した血流情報を示すドプラデータを画像生成回路150に出力する。なお、第1の実施形態に係るドプラ処理回路140が行なう具体的な処理については、後に詳述する。ドプラ処理回路140は、例えば、プロセッサにより実現される。ドプラ処理回路140は、血流情報取得部の一例である。
Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。
画像生成回路150は、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140が出力したデータから超音波画像データを生成する。画像生成回路150は、Bモード処理回路130が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路150は、ドプラ処理回路140が生成した2次元のドプラデータから血流情報が映像化された2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。画像生成回路150は、血流情報としてのドプラデータから、ドプラ画像データとして、血流情報がカラーで表示される血流画像データを生成したり、1つの血流情報がグレースケールで表示される血流画像データを生成したりする。画像生成回路150は、プロセッサにより実現される。
ここで、画像生成回路150は、一般的には、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(走査コンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。例えば、画像生成回路150は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路150は、走査コンバート以外に種々の画像処理として、例えば、走査コンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成回路150は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
更に、画像生成回路150は、Bモード処理回路130により生成された3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路150は、ドプラ処理回路140により生成された3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元ドプラ画像データを生成する。すなわち、画像生成回路150は、「3次元のBモード画像データ及び3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(ボリュームデータ)」として生成する。そして、画像生成回路150は、ボリュームデータをディスプレイ103にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対して様々なレンダリング処理を行なう。
画像生成回路150が行なうレンダリング処理としては、例えば、断面再構成法(MPR:Multi Planar Reconstruction)を行なってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像生成回路150が行なうレンダリング処理としては、例えば、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。画像生成回路150は、画像生成部の一例である。
Bモードデータ及びドプラデータは、走査コンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路150が生成するデータは、走査コンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
画像メモリ160は、画像生成回路150により生成された各種の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ160は、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140により生成されたデータも記憶する。画像メモリ160が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成回路150を経由して表示用の超音波画像データとなる。例えば、画像メモリ160は、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク又は光ディスクによって実現される。
記憶回路170は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路170は、必要に応じて、画像メモリ160が記憶するデータの保管等にも使用される。例えば、記憶回路170は、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク又は光ディスクによって実現される。
制御回路180は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、制御回路180は、入力装置102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路170から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、Bモード処理回路130、ドプラ処理回路140及び画像生成回路150の処理を制御する。また、制御回路180は、画像メモリ160に記憶された表示用の超音波画像データにより示される超音波画像を表示するようにディスプレイ103を制御する。制御回路180は、表示制御部又は制御部の一例である。制御回路180は、例えば、プロセッサにより実現される。超音波画像は、画像の一例である。
また、制御回路180は、送受信回路110を介して超音波プローブ101を制御することで、超音波スキャンの制御を行なう。例えば、制御回路180は、上述した第1超音波スキャン及び第2超音波スキャンの制御を行う。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、若しくは、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路170に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路170にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成について説明した。
第1の実施形態では、送受信回路110が、超音波プローブ101を介して、第1超音波スキャン及び第2超音波スキャンを交互に実行する。また、第1超音波スキャンの走査形態は、複数の走査線で形成される第1領域での超音波送受信を各走査線で1回とする走査形態である。かかる走査形態により、フレームレートを向上させることができる。以下、上記の第1超音波スキャンを「高フレームレート用超音波スキャン」と記載し、「高フレームレート用超音波スキャン」により行なわれるCFM法を「高フレームレート法」と記載する。
ここで、通常のカラードプラ法では、超音波送受信を同一方向で複数回行ない、これにより受信した信号から、血流信号を抽出する。かかる超音波送受信により得られる同一位置からの反射波信号(反射波データ)のデータ列は、パケットと呼ばれる。パケットサイズは、1フレームの血流情報を得るために同一方向で行なわれる超音波送受信の回数となる。一般的なカラードプラ法でのパケットサイズは、5から16程度である。固有ベクトル型MTIフィルタの性能は、パケットサイズが大きい方が、向上するが、パケットサイズを大きくすると、フレームレートは、低下する。
一方、高フレームレート法では、各フレームの同じ位置のデータ列に対してフレーム方向(時間方向)で処理を行なうことができる。例えば、高フレームレート法では、MTIフィルタ処理を、パケットという有限長のデータ処理から無限長のデータに対する処理とすることができる。その結果、高フレームレート法により、MTIフィルタの性能を向上させることができる結果、低流速の血流に関する血流情報をも検出可能になり、また、高いフレームレートで血流情報を示す血流画像を表示することが可能になる。
第1の実施形態に係る制御回路180は、高フレームレート用超音波スキャンによる第1超音波スキャンとともに、第2超音波スキャンを、以下に説明する走査形態で実行させる。
制御回路180は、第2領域を複数の分割領域に分割し、複数の分割領域それぞれに対する第2超音波スキャンを、第1超音波スキャンの間に時分割で超音波プローブ101に実行させる。すなわち、送受信回路110は、第1超音波スキャン、及び、第2領域を分割した複数の分割領域それぞれに対する第2超音波スキャンを、超音波プローブ101を介して交互に実行する。したがって、第1の実施形態では、送受信回路110は、第1超音波スキャンの間に第2超音波スキャンを実行し、数フレーム分の第1超音波スキャンを行なう期間で、1フレーム分の第2超音波スキャンを完結させる。かかる走査形態により、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、第1超音波スキャンと第2超音波スキャンとで超音波送受信条件(画質条件)を独立に設定可能となる。
第1超音波スキャン及び第2超音波スキャンについて説明する。図2及び図3は、第1の実施形態に係る第1超音波スキャン及び第2超音波スキャンの一例を説明するための図である。図2に示すように、制御回路180は、操作者からの指示や、初期設定された情報等に基づいて、第2領域を4つの分割領域(第1分割領域~第4分割領域)に分割する。図2に示す「C」は、Bモードにおけるコントラストハーモニックイメージング用の送受信条件を用いて第2超音波スキャンが行なわれる分割領域を示している。分割領域は、少なくとも1つの走査線により形成される。
例えば、本実施形態では、第2超音波スキャンにおいて、位相変調法(PM:Phase Modulation)を用いてもよい。位相変調法は、例えば、走査範囲を構成する各走査線で位相の異なる2種類の超音波を送信し、2種類の超音波それぞれの反射波に基づく反射波データを加算する手法である。本実施形態では、位相変調法が用いられる場合には、送受信回路110が、分割領域を構成する各走査線で位相の異なる2種類の超音波を送信し、Bモード処理回路130が、2種類の超音波それぞれの反射波に基づく反射波データを加算する。位相変調法を用いる場合、第2超音波スキャンは、位相が異なる2種類の超音波それぞれの送受信を含む。
なお、第2超音波スキャンにおいて、振幅変調法(AM:Amplitude Modulation)を用いてもよい。振幅変調法は、例えば、走査範囲を構成する各走査線で、同一の位相で振幅の比率が「1:2:1」に変調された3つの超音波を送信し、3つの超音波それぞれの反射波に基づく反射波データを加減算処理する手法である。本実施形態では、振幅変調法が用いられる場合には、送受信回路110が、分割領域を構成する各走査線で、振幅が「0.5」である超音波、振幅が「1」である超音波、及び、振幅が「0.5」である超音波を、この順で送信する。すなわち、送受信回路110が、振幅が異なる2種類の超音波を送信する。そして、Bモード処理回路130が、3つの超音波(2種類の超音波)それぞれの反射波に基づく反射波データを加減算処理する。振幅変調法を用いる場合、第2超音波スキャンは、振幅が異なる2種類の超音波それぞれの送受信を含む。
第2超音波スキャンにおいて、位相変調法、及び、振幅変調法のいずれを用いるのかについては、操作者により選択される。例えば、位相変調法は、送信超音波の周波数が比較的高く、受信周波数が造影剤から2次高調波成分を抽出するために比較的高いため、空間分解能が比較的高い超音波画像が得られる一方、ペネトレーションが良好でないという特性がある。一方、振幅変調法は、送信超音波の周波数が比較的低く、受信周波数が送信周波数と略同じであるため、ペネトレーションが良好である一方、超音波画像の空間分解能が比較的低くなるという特性がある。操作者は、このような特性を考慮して、入力装置102を操作して、位相変調法、又は、振幅変調法のいずれかを選択する。
例えば、操作者により位相変調法が選択された場合には、制御回路180は、位相変調法を示す情報「0」を記憶回路170の全記憶領域のうち所定領域に格納する。また、操作者により振幅変調法が選択された場合には、振幅変調法を示す情報「1」を記憶回路170の所定領域に格納する。そして、制御回路180は、第2超音波スキャンを実行する際に、記憶回路170の所定領域を参照する。参照した結果得られた情報が「0」を示す場合には、制御回路180は、上述した位相変調法を用いた処理が実行されるように、送受信回路110やBモード処理回路130を制御する。一方、参照した結果得られた情報が「1」を示す場合には、制御回路180は、上述した振幅変調法を用いた処理が実行されるように、送受信回路110やBモード処理回路130を制御する。
また、図2に示す「D」は、カラードプラモード用の送受信条件を用いて第1超音波スキャンが行なわれる第1領域を示している。例えば、図2に示す「D」は、上記の高フレームレート法で行なわれる超音波スキャンが行なわれている範囲となる。すなわち、第1超音波スキャンは、一般的なカラードプラ法のように、超音波を同一方向に複数回送信して、複数回反射波を受信するのではなく、各走査線で超音波送受信を1回行なう。送受信回路110が、第1超音波スキャンとして、第1領域を形成する複数の走査線それぞれで1回ずつ超音波送受信を行なうことにより、複数フレーム(複数の収集フレーム)分の反射波を用いて血流情報を取得する方法(高フレームレート法)に基づく超音波スキャンを実行する。
図2に示すように、まず、送受信回路110は、第1分割領域に対する第2超音波スキャンを実行し(ステップS1)、第1領域(1フレーム分)に対する第1超音波スキャンを実行する(ステップS2)。そして、送受信回路110は、第2分割領域に対する第2超音波スキャンを実行し(ステップS3)、第1領域に対する第1超音波スキャンを実行する(ステップS4)。そして、送受信回路110は、第3分割領域に対する第2超音波スキャンを実行し(ステップS5)、第1領域に対する第1超音波スキャンを実行する(ステップS6)。そして、送受信回路110は、第4分割領域に対する第2超音波スキャンを実行し(ステップS7)、第1領域に対する第1超音波スキャンを実行し(ステップS8)、ステップS1に戻る。
ここで、図2に例示するように、送受信回路110による第1超音波スキャンを制御する制御回路180は、第1超音波スキャンが行なわれる間隔を等間隔とする。すなわち、第1領域の「ある走査線」上の「点X」は、図2のステップS2,S4,S6及びS8の第1超音波スキャンで1回ずつ走査されるが、その走査間隔は、一定の「T」となるように制御される。例えば、制御回路180は、第2超音波スキャンに要する時間を同一として、第1超音波スキャンが行なわれる間隔を等間隔とする。例えば、制御回路180は、図2のステップS1,S3,S5及びS7で行われる第2超音波スキャンに要する時間を、同じ時間となるように制御する。制御回路180は、第2領域を分割した各分割領域の大きさや、走査線数、走査線密度及び深度等を同一とする。例えば、走査線数が同じであるならば、第2超音波スキャンに要する時間は、同じとなる。ドプラ処理回路140は、第1領域のフレーム間の同じ位置のデータ列(図2に示す「Xn-3、Xn-2、Xn-1、Xn、・・・」)に対して、後述する処理を行なって、「点X」の血流情報を出力する。なお、上記の方法では、表示制御機能を有する制御回路180は、ディスプレイ103に表示された組織画像を「4T」間隔で更新するのではなく、「T」間隔で分割領域に対応する組織画像の一部分を更新する。
従来のカラードプラの処理では、パケット内で閉じたデータ列に対して、「MTIフィルタ処理」及び「速度・分散・パワー推定処理」を行なう。このため、従来のカラードプラの処理では、1つのパケットで1つの血流情報しか出力できない。これに対して、高フレームレート法の走査形態で行なわれるカラードプラの処理では、走査自体にパケットという概念がない。このため、上記の走査形態で行なわれるカラードプラの処理では、1つの血流情報を出力するための処理に使用するデータ列のデータ長は、任意に変更可能である。
更に、上記の走査形態で行なわれるカラードプラの処理では、前の時相の血流情報を出力するための処理に使用したデータ列と、次の時相の血流情報を出力するための処理に使用するデータ列とを重複させることが可能である。
この点について、図3を用いて説明する。図3では、第1領域と第2領域とが同じ走査範囲であり、この走査範囲が第1走査線から第8走査線の8本の走査線により形成される場合を例示している。また、図3では、8本の走査線それぞれを、方位方向(超音波プローブ101の振動子の配列方向)に沿って、「1,2,3,4,5,6,7,8」と示している。また、図3では、第2超音波スキャンを黒塗りの矩形で示し、第1超音波スキャンを白抜きの矩形で示している。図3は、図2に示す走査範囲を、第1の実施形態で行なわれる走査形態で走査する場合を例示した図である。具体的には、図3では、図2に示す第1領域が8本の走査線により形成され、第1領域と同一の領域である第2領域を4つに分割した分割領域が2本の走査線により形成される場合が示されている。
図3に例示する走査では、第1走査線から第2走査線の順で第2超音波スキャンが行われる。第2走査線の第2超音波スキャンが行なわれた後、第1走査線から第8走査線の順で第1超音波スキャン(1回目の第1超音波スキャン)が行なわれる。
そして、1回目の第1超音波スキャンが行なわれた後、第3走査線から第4走査線の順で第2超音波スキャンが行われる。第4走査線の第2超音波スキャンが行なわれた後、再び、第1走査線から第8走査線の順で第1超音波スキャン(2回目の第1超音波スキャン)が行なわれる。
そして、第5走査線から第6走査線の順で第2超音波スキャンが行われた後、再び、第1走査線から第8走査線の順で第1超音波スキャン(3回目の第1超音波スキャン)が行なわれる。
そして、第7走査線から第8走査線の順で第2超音波スキャンが行われた後、再び、第1走査線から第8走査線の順で第1超音波スキャン(4回目の第1超音波スキャン)が行なわれる。4回目の第1超音波スキャン以降についても、同様に、第2超音波スキャンと第1超音波スキャンとが交互に実行される。すなわち、第1の実施形態では、送受信回路110は、第1領域に対する第1超音波スキャン、及び、第2領域の一部(分割領域)に対する第2超音波スキャンを交互に実行する。
ここで、例えば、データ列のデータ長が「4」に設定され、表示されるフレーム間におけるデータ列の重複数が「3」に設定されている場合について説明する。かかる場合、ドプラ処理回路140は、1回目の第1超音波スキャンから4回目の第1超音波スキャンまでに収集された反射波データから、第1フレーム用のドプラデータを生成する。すなわち、ドプラ処理回路140は、データ列のデータ長「4」に対応する4回分の第1超音波スキャンにより収集された反射波データから、第1フレーム用のドプラデータを生成する。このドプラデータは、血流画像データの元となるデータである。そして、画像生成回路150は、第1フレーム用のドプラデータから、第1フレームの血流画像データを生成する。そして、制御回路180は、第1フレームの血流画像データが示す第1フレームの血流画像をディスプレイ103に表示させる。
次に、ドプラ処理回路140は、2回目の第1超音波スキャンから5回目の第1超音波スキャンまでに収集された反射波データから、第2フレーム用のドプラデータを生成する。ここで、2回目の第1超音波スキャンから5回目の第1超音波スキャンまでに収集された反射波データと、上述した1回目の第1超音波スキャンから4回目の第1超音波スキャンまでに収集された反射波データとは、2回目の第1超音波スキャンから4回目の第1超音波までに収集された反射波データが重複している。すなわち、反射波データは、重複数「3」に相当する数だけ重複している。
そして、第2フレーム用のドプラデータから、第2フレームの血流画像データが生成される。そして、第2フレームの血流画像データが示す第2フレームの血流画像がディスプレイ103に表示される。同様に、3回目の第1超音波スキャンから6回目の第1超音波スキャンまでに収集された反射波データから、第3フレーム用のドプラデータが生成される。すなわち、Nを正の整数とすると、N回目の第1超音波スキャンから(N+3)回目の第1超音波スキャンまでに収集された反射波データから、第Nフレーム用のドプラデータが生成される。
なお、1フレーム分の第2超音波スキャンは、図3に例示する場合、4フレーム分の第1超音波スキャンが完了すると完結する。図3に例示する場合では、血流画像の1フレームが表示される間に、第2領域を4つに分割した分割領域の画像(組織画像の一部及び造影画像の一部)が更新される表示形態となる。
次に、第2超音波スキャンにおいて位相変調法が用いられる場合の一例について説明する。図4は、第1の実施形態において位相変調法が用いられる場合の一例を説明するための図である。位相変調法が用いられる場合には、送受信回路110は、同一の走査線において、図4に示すように、互いに極性の異なる2種類の超音波11及び超音波12を超音波プローブ101に送信させる。
そして、送受信回路110は、超音波11の反射波に基づく反射波データ、及び、超音波12の反射波に基づく反射波データを生成する。そして、Bモード処理回路130は、超音波11の反射波に基づく反射波データに対して、包絡線検波処理等を施して、組織画像データの元となるBモードデータ(第1のBモードデータ)を生成する。また、Bモード処理回路130は、超音波11の反射波に基づく反射波データに、超音波12の反射波に基づく反射波データを加算したデータに対して、包絡線検波処理等を施して、造影画像データの元となるBモードデータ(第2のBモードデータ)を生成する。そして、画像生成回路150は、第1のBモードデータに基づいて、組織画像54の一部(分割領域)を示す組織画像データを生成する。また、画像生成回路150は、第2のBモードデータに基づいて、造影剤からの非線形信号が映像化された造影画像51の一部(分割領域)を示す造影画像データを生成する。
次に、第2超音波スキャンにおいて選択可能な振幅変調法が用いられる場合の一例について説明する。図5は、第1の実施形態において振幅変調法が用いられる場合の一例を説明するための図である。振幅変調法が用いられる場合には、送受信回路110は、同一の走査線において、例えば、図5に示すように、振幅が「0.5」である超音波13a、振幅が「1」である超音波13b、及び、振幅が「0.5」である超音波13cを、この順で送信する。すなわち、送受信回路110は、振幅が「0.5」である超音波13a,13c、及び、振幅が「1」である超音波13bの2種類の超音波を送信する。
そして、Bモード処理回路130が、3つの超音波(2種類の超音波)それぞれの反射波に基づく反射波データを加減算処理する。具体的には、超音波13aの反射波に基づく反射波データを「R1」とし、超音波13bの反射波に基づく反射波データを「R2」とし、超音波13cの反射波に基づく反射波データを「R3」とすると、Bモード処理回路130は、次の処理を行う。例えば、Bモード処理回路130は、「R1-R2+R3」の加減算処理を行ったデータに対して、包絡線検波処理等を施して、造影画像データの元となるBモードデータ(第2のBモードデータ)を生成する。また、Bモード処理回路130は、超音波13bの反射波に基づく反射波データ「R2」に対して、包絡線検波処理等を施して、組織画像データの元となるBモードデータ(第1のBモードデータ)を生成する。
そして、画像生成回路150は、第1のBモードデータに基づいて、組織画像54の一部(分割領域)を示す組織画像データを生成する。また、画像生成回路150は、第2のBモードデータに基づいて、造影剤からの非線形信号が映像化された造影画像51の一部(分割領域)を示す造影画像データを生成する。
このように、位相変調法及び振幅変調法のいずれが用いられる場合であっても、造影画像データを収集するための走査である第2超音波スキャンにより収集された反射波データの一部が用いられて、組織画像データが生成される。すなわち、画像生成回路150は、第2超音波スキャンで収集された反射波データの一部に基づいて、組織画像データを生成する。したがって、本実施形態によれば、1つの第2超音波スキャンを実行するだけで、造影画像及び組織画像を収集することができる。
次に、第1超音波スキャンの一例について説明する。図6は、第1の実施形態に係る第1超音波スキャンの一例について説明するための図である。
第1超音波スキャンでは、送受信回路110は、超音波プローブ101を介して、各走査線で超音波送受信を1回のみ行なう。具体的には、送受信回路110は、第1超音波スキャンとして、第1領域を形成する複数の走査線それぞれで1回ずつ超音波14を送信し、超音波14の反射波を受信する。そして、送受信回路110は、走査線ごとに、超音波14の反射波に基づく反射波データを生成する。そして、送受信回路110は、このようにして反射波データを生成する処理を複数フレーム分繰り返す。そして、ドプラ処理回路140は、複数フレーム分の超音波14の反射波に基づく反射波データに基づいて血流情報を推定する。そして、ドプラ処理回路140は、推定した血流情報を示すドプラデータを生成する。そして、画像生成回路150は、このドプラデータに基づいて、血流画像52を示す血流画像データを生成する。
次に、第1の実施形態に係るMTIフィルタ行列を生成する方法の一例について説明する。まず、ドプラ処理回路140は、複数の走査線で形成される第1領域での超音波送受信を各走査線で1回とする走査形態を繰り返すことで収集された同一位置の連続した反射波データのデータ列から、走査範囲の相関行列を計算する。
具体的には、ドプラ処理回路140は、以下に示す式(1)により相関行列「R
xx」を計算する。
ここで、式(1)に示す「xm」は、ある位置「m」におけるデータ列を列ベクトルとしたものである。列ベクトル「xm」の長さ「L」は、1フレームのドプラデータ(血流情報)の推定計算に使用するデータ長である。例えば、図3に例示する場合、「L」は、「4」である。また、式(1)に示す「xm
H」は、「xm」の各要素の複素共役を取った行列の転置行列を示す。
ここで、位置「m」は、高フレームレート用超音波スキャンを行なう全空間で設定されるサンプル点の位置である。位置「m」は、2次元走査の場合は、2次元座標系で示され、3次元走査の場合は、3次元座標系で示される。また、式(1)に示す「M」は、位置「m」の総数である。
すなわち、ドプラ処理回路140は、式(1)により、複数のサンプル点それぞれで、データ列の自己相関行列を計算し、複数のサンプル点それぞれの自己相関行列の平均を計算する。これにより、ドプラ処理回路140は、第1領域の相関行列を計算する。相関行列「Rxx」は、式(1)により、L行L列の行列となる。なお、上述したように、相関行列が計算されるデータ列のデータ長「L」は、任意に変更可能である。また、相関行列が計算されるデータ列は、表示フレーム間で重複して設定可能である。
そして、ドプラ処理回路140は、相関行列の固有値及び当該固有値に対応する固有ベクトルを計算する。すなわち、ドプラ処理回路140は、相関行列「R
xx」から、L組の固有値及び固有ベクトルを計算する。そして、ドプラ処理回路140は、各固有値の大きさに基づいてL個の固有ベクトルを並べた行列「V」を設定する。そして、ドプラ処理回路140は、行列「V」のランクを低減した行列を、クラッタ成分を抑制するMTIフィルタ行列として計算する。ドプラ処理回路140は、L個の固有ベクトルそれぞれをL個の列ベクトルとし、L個の列ベクトルを、固有値の大きい順に並べた行列を「V」として、以下の式(2)により、MTIフィルタ行列「W」を計算する。
ここで、式(2)に示す「VH」は、「V」の複素共役転置行列である。また、式(2)の右辺において、「V」と「VH」との間の行列は、L行L列の対角行列である。MTIフィルタ行列「W」は、式(2)により、L行L列の行列となる。ここで、低減されるランク数は、L行L列の対角行列の対角要素を何個「0」にするかにより、定まる。以下、低減されるランク数を「ランクカット数」と記載する。
固有値が大きい列ベクトル(固有ベクトル)は、ドプラ用の走査範囲内で、ドプラ効果による周波数偏移が小さい、すなわち、移動速度が低いクラッタ成分に対応する。式(2)は、行列「V」のランクを固有値の大きい方からランクカット数個分の成分をカットした行列を計算し、この行列に対して「VH」による逆変換を行なう。この式(2)により、組織の動き成分(クラッタ成分)を除去するハイパスフィルタとして機能するMTIフィルタ行列「W」を得ることができる。
ここで、ドプラ処理回路140は、例えば、予め設定された値、或いは、操作者が指定した値により、ランクカット数の値を決定する。以上のようにして、適応型MTIフィルタが生成される。すなわち、ドプラ処理回路140は、第1領域内の各位置について、複数回の第1超音波スキャンで収集されたデータ列を取得し、このデータ列に基づいて適応型MTIフィルタを生成する。そして、ドプラ処理回路140は、生成された適応型MTIフィルタに、データ列を入力することで血流情報を取得する。そして、画像生成回路150は、ドプラ処理回路140により取得された血流情報に基づいて、血流画像データを生成する。
次に、図7を参照して、第1の実施形態に係る画像の表示態様の一例について説明する。図7は、第1の実施形態に係る画像の表示態様の一例について説明するための図である。図7に示すように、第1の実施形態では、制御回路180は、造影画像51、造影画像51に血流画像52が重畳された重畳画像53、及び、組織画像54を横方向に並べて、ディスプレイ103に表示させる。また、制御回路180は、造影画像51、重畳画像53及び組織画像54を同時にディスプレイ103に表示させる。なお、図7には、第2領域の範囲のほうが、第1領域の範囲よりも大きい場合が示されている。
ここで、制御回路180は、リアルタイムで、造影画像51、重畳画像53及び組織画像を同時にディスプレイ103に表示させてもよいし、ポストプロセスとして、造影画像51、重畳画像53及び組織画像を同時にディスプレイ103に表示させてもよい。
リアルタイムで各種画像を表示する場合には、超音波診断装置1全体の処理として、以下のような処理が実行される。例えば、送受信回路110は、超音波プローブ101から反射波信号を受信する度に、受信した反射波信号に基づいて反射波データを生成する。そして、Bモード処理回路130は、送受信回路110で反射波データが生成される度に、反射波データに基づいてBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路140は、送受信回路110で反射波データが生成される度に、反射波データに基づいてドプラデータを生成する。
そして、画像生成回路150は、Bモード処理回路130でBモードデータが生成される度に、Bモードデータに基づいてBモード画像データ(造影画像データ、組織画像データ)を生成する。また、画像生成回路150は、ドプラ処理回路140でドプラデータが生成される度に、ドプラデータに基づいてドプラ画像データ(血流画像データ)を生成する。なお、画像生成回路150は、1回の第2超音波スキャンに基づく1つのBモードデータに基づいて造影画像51の一部の造影画像データ、又は、組織画像54の一部の組織画像データのみ生成する。また、画像生成回路150は、複数(第2領域を分割した分割領域の数)の第2超音波スキャンに基づく複数のBモードデータに基づいて、造影画像51全体の造影画像データ、又は、組織画像54全体の組織画像データを生成する。すなわち、画像生成回路150は、複数の第2超音波スキャンの結果に基づく造影画像51及び組織画像54を生成する。
そして、制御回路180は、画像生成回路150で造影画像データ及び組織画像データが生成される度に、造影画像データが示す造影画像51の一部、及び、組織画像データが示す組織画像54の一部をディスプレイ103に表示させて、造影画像51の一部及び組織画像54の一部を更新する。
また、画像生成回路150は、造影画像データ、及び、血流画像データが生成される度に、造影画像データを血流画像データに重畳させて重畳画像データを生成する。そして、制御回路180は、画像生成回路150で重畳画像データが生成される度に、重畳画像データが示す重畳画像53をディスプレイ103に表示させる。
また、ポストプロセスとして各種画像を表示する場合には、超音波診断装置1全体の処理として、以下のような処理が実行される。例えば、制御回路180は、画像メモリ160から血流画像データ、造影画像データ及び組織画像データを読み出す。そして、制御回路180は、造影画像データ及び血流画像データを画像生成回路150に出力する。画像生成回路150は、造影画像データ及び血流画像データを受信すると、造影画像データを血流画像データに重畳させて重畳画像データを生成する。
そして、制御回路180は、造影画像データが示す造影画像51、重畳画像データが示す重畳画像53、及び、組織画像データが示す組織画像54をディスプレイ103に表示させる。
次に、図8を用いて、血流画像データを生成する第1の生成処理の流れの一例について説明する。図8は、第1の実施形態に係るドプラ処理回路140及び画像生成回路150が行なう第1の生成処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。なお、第1の生成処理は、処理対象となるスキャンフレーム数分(データ長分)の反射波データがバッファメモリ120に格納された場合に実行される。また、第1の生成処理は、データ長分の反射波データがバッファメモリ120に格納された状態で、送受信回路110により新たな反射波データがバッファメモリ120に格納される度にも実行される。
図8に示すように、ドプラ処理回路140は、第1領域の相関行列を計算し(ステップS101)する。そして、ドプラ処理回路140は、相関行列からL組の固有値及び固有ベクトルを計算する(ステップS102)。
そして、ドプラ処理回路140は、L組の固有値及び固有ベクトルに基づいて、MTIフィルタ行列を計算する(ステップS103)。そして、ドプラ処理回路140は、同一位置のデータ長分の反射波データに対してMTIフィルタ処理を行なう(ステップS104)。そして、ドプラ処理回路140は、MTIフィルタ処理で出力された出力データを用いて、自己相関演算処理を行なう(ステップS105)。そして、ドプラ処理回路140は、自己相関演算処理の結果から血流情報を推定し、血流情報を示すドプラデータを生成する(ステップS106)。
そして、画像生成回路150は、血流情報を示すドプラデータから血流画像データを生成する(ステップS107)。すなわち、画像生成回路150は、第2超音波スキャンを挟んで第1領域内の同一位置に対して実行される複数回の第1超音波スキャンの結果に基づく血流画像を生成する。このように、ステップS107では、画像生成回路150は、複数回の第1超音波スキャンそれぞれで取得した受信データからなるデータ列に基づいて、ドプラ法を用いて1画像フレーム分の血流画像を生成する。ここで、1画像フレーム分の血流画像とは、単一時相の収集フレームの反射波データから生成された画像ではなく、複数の時相の複数の収集フレームの複数の反射波データから生成された画像である。そして、画像生成回路150は、血流画像データを画像メモリ160に格納し(ステップS108)、第1の生成処理を終了する。このようにして生成された血流画像データは、制御回路180により読み出され、ディスプレイ103に血流画像として表示される。
次に、図9を用いて、組織画像データ及び造影画像データを生成する第2の生成処理の流れの一例について説明する。図9は、第1の実施形態に係るBモード処理回路130及び画像生成回路150が行なう第2の生成処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。なお、第2の生成処理は、第1の生成処理と同様のタイミングで実行される。
図9に示すように、Bモード処理回路130は、組織画像データの元となる第1のBモードデータを生成する(ステップS201)。そして、Bモード処理回路130は、造影画像データの元となる第2のBモードデータを生成する(ステップS202)。
そして、画像生成回路150は、第1のBモードデータから組織画像データを生成する(ステップS203)。そして、画像生成回路150は、組織画像データを画像メモリ160に格納する(ステップS204)。
そして、画像生成回路150は、第2のBモードデータから造影画像データを生成する(ステップS205)。そして、画像生成回路150は、造影画像データを画像メモリ160に格納し(ステップS206)、第2の生成処理を終了する。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1について説明した。第1の実施形態では、上述したように、血流画像のフレームレートを向上させることができる。また、第1の実施形態では、造影画像を収集するための第2超音波スキャンにより、造影画像のみならず組織画像が収集される。このため、第1の実施形態によれば、組織画像のみを収集するための超音波スキャンが不要となるので、造影画像及び組織画像のフレームレートも向上させることができる。したがって、第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、血流画像、造影画像及び組織画像の少なくとも2つの画像を好適に収集することができる。
また、ステップS108,S204,S206に示すように、画像生成回路150は、血流画像データ、組織画像データ及び造影画像データそれぞれを互いに独立に画像メモリ160に記憶させる。例えば、血流画像、組織画像及び造影画像のうち2つ種類の画像をディスプレイ103に表示させている場合であっても、上述したように、3種類の画像データが閲覧用の画像データとして画像メモリ160に保存されている。このように、閲覧用の各種の画像データが画像メモリ160に保存されているため、第1の実施形態によれば、操作者が各種の画像を閲覧したい場合に、いつでもディスプレイ103に表示させることができる。
なお、特許文献2(特開2009-119134号公報)では、複数回数の超音波送受信で取得される受信エコー列を用いて、造影モード画像情報、Bモード画像情報及びCFM画像情報を形成することが記載されている。しかしながら、特許文献2では、一般的なCFM法を用いているため、第1の実施形態に係る超音波診断装置1のように、低流速の血流に関する血流情報を検出することが困難である。また、特許文献1(国際公開第2014/115782号)の技術に、第1の実施形態に係る超音波診断装置1のように振幅変調法を適用させようとすると、CFM画像情報に影響が出る可能性がある。
(第1の実施形態の第1の変形例)
第1の実施形態では、送受信回路110が、1回の第2超音波スキャンにおいて、第2領域の一部(分割領域)に対する走査を実行する場合について説明した。しかしながら、送受信回路110は、1回の第2超音波スキャンにおいて、第2の領域全体に対する走査を実行してもよい。そこで、このような変形例を第1の実施形態の第1の変形例として説明する。
例えば、第2領域の大きさが比較的小さく、第2領域を形成する走査線の数が比較的少ない場合には、送受信回路110は、1回の第2超音波スキャンにおいて、第2領域全体に対する走査を実行してもよい。また、超音波として平面波又は幅が広い収束波を送信することで、第2領域全体を走査可能である場合には、送受信回路110は、1回の第2超音波スキャンにおいて、平面波又は収束波を送信することで、第2領域全体に対する走査を実行してもよい。すなわち、送受信回路110は、第1領域に対する第1超音波スキャン、及び、第2領域の少なくとも一部に対する第2超音波スキャンを交互に実行すればよい。この場合、画像生成回路150は、少なくとも1回の第2超音波スキャンの結果に基づく造影画像51及び組織画像54を生成すればよい。
(第1の実施形態の第2の変形例)
また、第1の実施形態では、1回の第2超音波スキャンにおいて、分割領域に対する走査を実行する場合について説明した。しかしながら、1回の第2超音波スキャンにおいて走査される領域は分割領域に限られない。そこで、他の例を第1の実施形態の第2の変形例として説明する。
例えば、第2の変形例では、1回の第2超音波スキャンにおいて、第2領域を網羅する複数の領域のそれぞれに対する走査を実行してもよい。ここで、第2の変形例において、隣接する2つの領域の一部は、互いに重なっている。
(第1の実施形態の第3の変形例)
また、第1の実施形態では、第2超音波スキャンにおいて、位相変調法又は振幅変調法のいずれの方法を用いるのかについては、操作者により選択される場合について説明した。しかしながら、制御回路180が、位相変調法又は振幅変調法のいずれかの方法を選択してもよい。そこで、このような変形例を第1の実施形態の第3の変形例として説明する。
第3の変形例では、例えば、制御回路180が、流速レンジに応じて、位相変調法又は振幅変調法のいずれかの方法を選択する。ここで、流速レンジは、カラードプラ画像である血流画像として表現可能な血流の流速値の範囲である。すなわち、超音波診断装置1において、検出可能な血流の流速値の範囲である。流速レンジは、例えば、操作者が入力装置102を操作することにより、操作者により設定可能である。例えば、流速レンジの上限値が所定の閾値以上である場合には、制御回路180は、振幅変調法を選択する。一方、流速レンジの上限値が所定の閾値未満である場合には、制御回路180は、位相変調法を選択する。そして、送受信回路110は、第2超音波スキャンにおいて、選択された方法に基づいて超音波を送信する。この場合、制御回路180は、位相変調法を選択した場合と、振幅変調法を選択した場合とで、第2領域を分割する分割領域の数を異ならせてもよい。
なお、制御回路180が、流速レンジに応じて、先の図2に示す第1超音波スキャンが行なわれる間隔「T」を変更してもよい。例えば、操作者は、より低い流速(例えば、特定の流速0.5cm/s以下の流速)の血流を観察したい場合には、流速レンジの下限値を下げるように、流速レンジを変更する。この場合、より低い流速の血流を検出するために、間隔「T」が長くなる必要がある。そこで、制御回路180は、流速レンジの下限値が低くなるほど、間隔「T」が長くなるように、間隔「T」を変更する。そして、制御回路180は、変更後の間隔「T」で第1超音波スキャンを超音波プローブ101に行わせるように、送信回路110aを制御する。これにより、より低い流速の血流に関する血流情報を示す血流画像を操作者に観察させるために、流速レンジの下限値に対応して適切に第1超音波スキャンが行われる間隔「T」を変更することができる。
(第1の実施形態の第4の変形例)
次に、第1の実施形態の第4の変形例について説明する。第4の変形例では、第1の実施形態で図7を参照して説明した画像の表示態様とは異なる他の画像の表示態様の一例について説明する。なお、第4の変形例において説明される各種の画像は、第1の実施形態で説明したような方法と同様の方法で、リアルタイムに表示されたり、ポストプロセスとして表示されたりすることが可能である。
図10~図29は、第1の実施形態の第4の変形例に係る他の画像の表示態様の一例について説明するための図である。制御回路180は、図10に示すように、造影画像51、及び、組織画像54に血流画像52が重畳された重畳画像55を横方向に並べてディスプレイ103に表示させてもよい。また、制御回路180は、図11に示すように、造影画像51及び重畳画像53を横方向に並べてディスプレイ103に表示させてもよい。
また、制御回路180は、図12に示すように、最大輝度画像56、重畳画像53及び組織画像54を横方向に並べてディスプレイ103に表示させてもよい。ここで、最大輝度画像56は、画像生成回路150により生成される。例えば、画像生成回路150は、微小血流の構造を明瞭に映像化する手法であるMFI(Micro flow imaging)を用いて、最大輝度画像56を生成する。具体的には、画像生成回路150は、複数の造影画像51に対して最大輝度保持演算(最大値保持演算)処理を施して、複数の造影画像51の中から画素毎に最大輝度を選択し、選択された最大輝度で各画素が示される最大輝度画像56を生成する。ここで、MFIでは、送受信回路110は、高音圧の超音波の送信(フラッシュとも呼ばれる)を行うことにより、気泡(バブル)を一掃してから、画像生成回路150が、再灌流を映像化する。なお、このような高音圧の超音波の送信を行うか否かは操作者により選択される。
また、制御回路180は、図13に示すように、最大輝度画像56及び重畳画像55を横方向に並べてディスプレイ103に表示させてもよい。また、制御回路180は、図14に示すように、最大輝度画像56及び重畳画像53を横方向に並べてディスプレイ103に表示させてもよい。
また、制御回路180は、図15に示すように、積算画像57、重畳画像53及び組織画像54を横方向に並べてディスプレイ103に表示させてもよい。ここで、積算画像57は、画像生成回路150により生成される。例えば、画像生成回路150は、複数の造影画像51を時間方向で積算した積算画像57を生成する。
また、制御回路180は、図16に示すように、積算画像57及び重畳画像55を横方向に並べてディスプレイ103に表示させてもよい。また、制御回路180は、図17に示すように、積算画像57及び重畳画像53を横方向に並べてディスプレイ103に表示させてもよい。
また、制御回路180は、図18~図29に示すように、行列状に、各種画像を並べてディスプレイ103に表示させてもよい。例えば、制御回路180は、図18に示すように、ディスプレイ103上の表示領域において、左右方向に2つの画像、及び、上下方向に2つの画像を配置可能な4つの領域を設定する。以下、図面に対して左上の領域を左上領域とし、右上の領域を右上領域とし、左下の領域を左下領域とし、右下の領域を右下領域とする。
そして、制御回路180は、図18に示すように、左上領域に造影画像51が表示され、右上領域に重畳画像53が表示され、右下領域に組織画像54が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。
また、制御回路180は、図19に示すように、図18の表示状態から更に、左下領域に最大輝度画像56が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。
また、制御回路180は、図20に示すように、図19において左下領域に表示された最大輝度画像56に代えて積算画像57が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。
また、制御回路180は、図21に示すように、図19において左下領域に表示された最大輝度画像56に代えて支援画像58が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。ここで、支援画像58は、医師や臨床検査技師等の操作者の超音波診断装置1の操作及び超音波診断装置1を用いた検査等を支援するための画像であり、画像生成回路150により生成される。
例えば、画像生成回路150は、造影画像51、組織画像54及び血流画像52の少なくとも1つの画像に描出された被検体Pの部位に対して所定の計測を行い、計測結果を示す支援画像58を生成する。なお、かかる計測を行う際に、本変形例では、計測カーソルとして、造影画像51、組織画像54及び血流画像52の3つの画像上を同期を取りながら同時に移動する3つのカーソル(トリプルカーソル)が用いられてもよい。なお、計測対象の画像が4つである場合には、同様に、4つの画像上を同期を取りながら同時に移動する4つのカーソル(クアッドカーソル)が用いられてもよい。
なお、画像生成回路150は、支援画像58として、検査の手順を示す画像を生成してもよい。また、画像生成回路150は、支援画像58として、第1超音波スキャン及び第2超音波スキャンの少なくとも1つの画質条件を示す画像を生成してもよい。
また、制御回路180は、図22に示すように、図19において左下領域に表示された最大輝度画像56に代えて解析結果画像59が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。ここで、解析結果画像59は、造影画像51、組織画像54及び血流画像52の少なくとも1つの画像に対して解析した結果(解析結果)を示す画像であり、画像生成回路150により生成される。
例えば、画像生成回路150は、時間方向における複数の造影画像51又は血流画像52に対する解析としてTCA(Time Curve Analysis)を実行してもよい。TCAは、例えば、関心領域等の解析領域内の造影剤の濃度の時間変化を観察し、造影剤の濃度の時間変化を示すグラフを生成したり、造影剤の濃度の時間変化から腫瘍を確認したりする。画像生成回路150は、TCAを実行して、解析結果画像59として、造影剤の濃度の時間変化を示すグラフを示す画像を生成したり、腫瘍の確認結果を示す画像を生成したりする。
また、例えば、画像生成回路150は、パラメトリックイメージング(Parametric imaging)により解析結果画像59を生成してもよい。パラメトリックイメージングは、造影剤を注入して収集される血流情報を所定のパラメータ値によって表現する画像表現方法である。例えば、画像生成回路150は、パラメトリックイメージングにより、造影画像51の画素ごとに造影剤の時間濃度曲線(Time Density Curve:TDC)を算出し、算出したTDCを用いて各種パラメータ値を算出する。ここで、パラメトリックイメージングにおけるパラメータ値として、例えば、TDCにおいてピークに至るまでの時間(Time To Peak:TTP)や、ピークの高さ(Peak Height:PH)、TDCの面積(Area Under Curve:AUC)、造影剤の到達時間(Arrival Time:AT)、ピークから造影剤が流出しきるまでの時間(Wash Out)、平均通過時間(Mean Transit Time:MTT)等が算出される。そして、画像生成回路150は、パラメトリックイメージングにより、観察者が所望する血流情報に応じたパラメータ値を画素ごとに算出し、算出したパラメータ値に対応する色で画像上の各画素をカラー化した画像を解析結果画像59として生成する。
また、例えば、画像生成回路150は、特開2018-15155号公報に記載されている技術を用いて、造影剤として用いられる微小気泡(マイクロバブル)の一つ一つをトラッキング(追跡)することで、造影剤が流れる向き及び移動速度を定量的に示す画像を解析結果画像59として生成してもよい。
例えば、画像生成回路150は、ある時相に対応する造影画像51(第1造影画像)及び他の時相に対応する造影画像51(第2造影画像)それぞれにおける造影剤の位置を特定する。そして、画像生成回路150は、第1造影画像及び第2造影画像それぞれにおける造影剤の位置に基づいて、造影剤の移動を表すベクトルを算出する。そして、画像生成回路150は、組織画像54に、ベクトルを示す形状を有するインジケータを重畳させた重畳画像を、解析結果画像59として生成する。
また、制御回路180は、図23に示すように、図19において左下領域に表示された最大輝度画像56に代えて参照画像60が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。ここで、参照画像60は、超音波診断装置とは異なる他の医用画像診断装置(X線CT(Computed Tomography)装置、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging)装置等)で収集された被検体Pの医用画像であってもよい。例えば、制御回路180は、いわゆるフュージョン機能により、他の医用画像診断装置によりボリュームデータから生成されたMPR(MultiPlanar Reconstruction)画像であって、表示中の造影画像51、血流画像52又は組織画像54と同一断面のMPR画像を参照画像60としてディスプレイ103に表示させる。参照画像60は、超音波プローブ101の移動等による表示中の造影画像51、血流画像52又は組織画像54の変化に伴い、変化する。
また、参照画像60は、超音波診断装置1で収集された画像であってもよい。例えば、参照画像60は、表示中の血流画像52と同一時相の血流画像であって、過去の検査において超音波診断装置1で収集された血流画像であってもよい。同様に、参照画像60は、表示中の造影画像51と同一時相の造影画像であって、過去の検査において超音波診断装置1で収集された造影画像であってもよい。また、参照画像60は、表示中の組織画像54と同一時相の組織画像であって、過去の検査において超音波診断装置1で収集された組織画像であってもよい。
また、例えば、参照画像60は、表示中の血流画像52と同一の検査において収集された血流画像であって、表示中の血流画像52と時相が異なる血流画像であってもよい。同様に、参照画像60は、表示中の造影画像51と同一の検査において収集された造影画像であって、表示中の造影画像51と時相が異なる造影画像であってもよい。また、参照画像60は、表示中の組織画像54と同一の検査において収集された組織画像であって、表示中の組織画像54と時相が異なる組織画像であってもよい。例えば、後期相の造影画像51がディスプレイ103に表示されている場合には、制御回路180は、参照画像60として、動脈相の造影画像をディスプレイ103に表示させてもよい。
また、制御回路180は、図24に示すように、左上領域に造影画像51が表示され、右上領域に組織画像54が表示され、左下領域に重畳画像55が表示され、右下領域に合成画像61が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。ここで、合成画像61は、造影画像51と組織画像54とが合成された画像であり、画像生成回路150により生成される。例えば、画像生成回路150は、造影画像51と組織画像54とを合成して、合成画像61を生成する。
また、制御回路180は、図25に示すように、図24において左下領域に表示された重畳画像55に代えて重畳画像53が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。
また、制御回路180は、図26に示すように、図24において左下領域に表示された重畳画像55に代えて、組織画像54に最大輝度画像62が重畳された重畳画像63が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。
ここで、最大輝度画像62及び重畳画像63は、画像生成回路150により生成される。例えば、画像生成回路150は、上述したMFI(Micro flow imaging)を用いて、最大輝度画像62を生成する。具体的には、画像生成回路150は、複数の血流画像52に対して最大輝度保持演算処理を施して、複数の血流画像52の中から画素毎に最大輝度を選択し、選択された最大輝度で各画素が示される最大輝度画像62を生成する。そして、画像生成回路150は、組織画像54に最大輝度画像62を重畳させて重畳画像63を生成する。
また、制御回路180は、図27に示すように、図24において左下領域に表示された重畳画像55に代えて、組織画像54に積算画像64が重畳された重畳画像65が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。ここで、積算画像64及び重畳画像65は、画像生成回路150により生成される。例えば、画像生成回路150は、複数の血流画像52を時間方向で積算した積算画像64を生成する。そして、画像生成回路150は、組織画像54に積算画像64を重畳させて重畳画像65を生成する。
また、制御回路180は、図28に示すように、図24において左下領域に表示された重畳画像55に代えて、造影画像51に最大輝度画像62が重畳された重畳画像66が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。ここで、重畳画像66は、画像生成回路150により生成される。例えば、画像生成回路150は、造影画像51に最大輝度画像62を重畳させて重畳画像66を生成する。
また、制御回路180は、図29に示すように、図24において左下領域に表示された重畳画像55に代えて、造影画像51に積算画像64が重畳された重畳画像67が表示されるようにディスプレイ103を制御してもよい。ここで、重畳画像67は、画像生成回路150により生成される。例えば、画像生成回路150は、造影画像51に積算画像64を重畳させて重畳画像67を生成する。
(第1の実施形態の第5の変形例)
なお、第1の実施形態の第3の変形例では、制御回路180が、流速レンジに応じて、第1超音波スキャンが行なわれる間隔「T」を変更する場合について説明した。しかしながら、制御回路180が、他の条件に応じて、間隔「T」を変更してもよい。そこで、このような変形例を第1の実施形態の第5の変形例として説明する。
第5の変形例では、例えば、入力装置102は、操作者から、優先情報を受け付ける。ここで、優先情報とは、例えば、ディスプレイ103に表示される血流画像52の表示フレームレートを高くすることを優先させるのか、又は、より低い流速(例えば、特定の流速0.5cm/s以下の流速)の血流に関する血流情報を示す血流画像が表示されることを優先させるのかを示す情報である。なお、入力装置102が優先情報を受け付けるよりも前の段階では、第1超音波スキャンが行なわれる間隔「T」として所定の初期値が設定されているものとする。
そして、制御回路180は、入力装置102により受け付けられた優先情報に応じて、第1超音波スキャンが行なわれる間隔「T」を変更する。例えば、優先情報が、血流画像52の表示フレームレートを高くすることを優先させることを示す場合について説明する。この場合、制御回路180は、間隔「T」が初期値から短くなるように、間隔「T」を変更する。
次に、優先情報が、より低い血流に関する血流情報を示す血流画像が表示されることを優先させることを示す場合について説明する。この場合、制御回路180は、間隔「T」が初期値から長くなるように、間隔「T」を変更する。
そして、制御回路180は、変更後の間隔「T」で第1超音波スキャンを超音波プローブ101に行わせるように、送信回路110aを制御する。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、第1超音波スキャンと第2超音波スキャンとが交互に実行されるが、第1超音波スキャンにおいて最後に送信された超音波の残留エコーが、第2超音波スキャンにおいて最初に送信された超音波の反射波の受信期間に入ってしまう場合がある。これは、送受信回路110が、第1超音波スキャンにおいて最後に送信された超音波の深部からの反射波を受信する前に、第2超音波スキャンにおいて超音波を送信することが原因であると考えられる。
図30A及び図30Bは、残留エコーの一例を示す図である。まず、第2超音波スキャンにおいて、位相変調法が用いられる場合について説明する。この場合には、図30Aに示すように、送受信回路110は、第1超音波スキャンにおいて最後の超音波70を送信した後、第2超音波スキャンにおいて1番目の走査線で、位相が異なる2つの超音波71,72を送信する。そして、送受信回路110は、第2超音波スキャンにおいて2番目の走査線で、位相が異なる2つの超音波73,74を送信する。
このとき、図30Aに示すように、超音波70の残留エコー70aが、超音波71の反射波の受信期間に入ってしまう。同様に、超音波71~73のそれぞれの残留エコー71a~73aが、超音波72~74のそれぞれの反射波の受信期間に入ってしまう。このとき、第2超音波スキャンの2番目の走査線において、残留エコー72aと残留エコー73aとは位相が互いに180度異なり、かつ、振幅が同じであるので、残留エコー72aに残留エコー73aが加算されて残留エコーは「0」となる。しかしながら、第2超音波スキャンの1番目の走査線において、残留エコー70aと残留エコー71aとは位相が同一であり、振幅が「0」ではないため、残留エコー70aに残留エコー71aが加算されても、残留エコーは「0」とはならない。
次に、第2超音波スキャンにおいて、振幅変調法が用いられる場合について説明する。この場合には、図30Bに示すように、送受信回路110は、第1超音波スキャンにおいて最後の超音波70を送信した後、第2超音波スキャンにおいて1番目の走査線で、振幅が「0.5」である超音波81、振幅が「1」である超音波82、及び、振幅が「0.5」である超音波83を、この順で送信する。そして、送受信回路110は、第2超音波スキャンにおいて2番目の走査線で、振幅が「0.5」である超音波84、振幅が「1」である超音波85、及び、振幅が「0.5」である超音波86を、この順で送信する。
このとき、図30Bに示すように、超音波70の残留エコー70aが、超音波81の反射波の受信期間に入ってしまう。同様に、超音波81,82,84,85のそれぞれの残留エコー81a,82a,84a,85aが、超音波82,83,85,86のそれぞれの反射波の受信期間に入ってしまう。このとき、第2超音波スキャンの2番目の走査線において、残留エコー84a、残留エコー85a及び超音波86の残留エコー86aは位相が同一であり、かつ、振幅の比が(1:2:1)であるので、残留エコー85aから残留エコー84aが減算された残留エコーから、残留エコー86aが減算されると、残留エコーは「0」となる。一方、第2超音波スキャンの1番目の走査線では、残留エコー70aが存在するため、残留エコーは「0」とはならない。
そこで、残留エコー対策を行う第2の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。第2の実施形態に係る超音波診断装置は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1が有する各種の機能に加えて、更に、残留エコー対策を行う機能を有する。
図31Aは、第2超音波スキャンにおいて、位相変調法が用いられる場合の残留エコー対策について説明するための図である。図31Aに示すように、第2の実施形態に係る送受信回路110は、超音波72と同一の位相であり、かつ、同一の振幅の超音波74を、第1超音波スキャンにおける最後に送信される超音波として送信する。この結果、図31Aに示すように、超音波74の残留エコー74aが、超音波71の反射波の受信期間に入る。このとき、第2超音波スキャンの1番目の走査線において、残留エコー74aと残留エコー71aとは位相が互いに180度異なり、かつ、振幅が同じであるので、残留エコー74aに残留エコー71aが加算されて残留エコーは「0」となる。したがって、第2超音波スキャンの1番目の走査線において残留エコーを「0」とすることができる。
図31Bは、第2超音波スキャンにおいて、振幅変調法が用いられる場合の残留エコー対策について説明するための図である。図31Bに示すように、第2の実施形態に係る送受信回路110は、超音波70が送信されてから、所定の時間が経過したタイミングで、第2超音波スキャンにおいて最初の超音波81を送信する。
ここで、所定の時間とは、例えば、超音波プローブ101の圧電振動子から、第2超音波スキャンに基づく造影画像51における深さまでの距離Dを2倍した距離2Dを、第2超音波スキャンにおいて送信される超音波(超音波81~86)が進むのにかかる時間である。すなわち、所定の時間は、造影画像51における深さに対応する時間である。
この結果、図31Bに示すように、超音波70の残留エコー70aが、超音波81の反射波の受信期間に入らない。このとき、第2超音波スキャンの1番目の走査線において、残留エコー81a、残留エコー82a及び超音波83の残留エコー83aは位相が同一であり、かつ、振幅の比が(1:2:1)であるので、残留エコー82aから残留エコー83aが減算された残留エコーから、残留エコー81aが減算されると、残留エコーは「0」となる。したがって、第2超音波スキャンの1番目の走査線において残留エコーを「0」とすることができる。
図32は、図30A又は図30Bに示す第2超音波スキャンに基づく造影画像の一例である。図32に示すように、残留エコーがスジ状のアーティファクトとなって造影画像に現れている。図33は、図31A又は図31Bに示す第2超音波スキャンに基づく造影画像の一例である。図33に示す造影画像では、図31A又は図31Bにおいて残留エコーが「0」となっているため、残留エコーによるアーティファクトが発生していない。
以上、第2の実施形態に係る超音波診断装置について説明した。第2の実施形態に係る超音波診断装置によれば、上述したように、残留エコー対策を行うことができる。また、第2の実施形態に係る超音波診断装置によれば、第1の実施形態に係る超音波診断装置1と同様に、血流画像、造影画像及び組織画像の少なくとも2つの画像を好適に収集することができる。
なお、上述した各実施形態及び各変形例では、第2超音波スキャンにおいて、位相変調法又は振幅変調法が用いられる場合について説明した。しかしながら、第2超音波スキャンにおいて、振幅位相変調法(AMPM)が用いられてもよい。振幅位相変調法は、例えば、走査範囲を構成する各走査線で、位相及び振幅が異なる2種類の超音波を送信し、2種類の超音波それぞれの反射波に基づく反射波データを加算する手法である。例えば、2種類の超音波として、第1の種類の超音波及び第2の種類の超音波を例に挙げて説明する。
例えば、第1の種類の超音波の振幅「A1」と、第2の種類の超音波の振幅「A2」との比率(A1:A2)は、「1:2」である。また、第1の種類の超音波の位相と、第2の種類の超音波の位相は、異なる。例えば、第1の種類の超音波の位相と、第2の種類の超音波の位相は、180度異なる。
例えば、振幅位相変調法が用いられる場合には、送受信回路110が、分割領域を構成する各走査線で、第1の種類の超音波、第2の種類の超音波及び第1の種類の超音波の3つの超音波を、この順で送信する。そして、Bモード処理回路130が、3つの超音波それぞれの反射波に基づく反射波データを加算する。振幅位相変調法を用いる場合、第2超音波スキャンは、振幅及び位相が異なる2種類の超音波それぞれの送受信を含む。
また、上述した第3の変形例では、制御回路180が、1つの閾値を用いて、流速レンジに応じて、位相変調法又は振幅変調法のいずれかの方法を選択する場合について説明した。しかしながら、制御回路180が、同様の方法で、2つの閾値を用いて、流速レンジに応じて、位相変調法、振幅変調法又は振幅位相変調法のいずれかの方法を選択してもよい。この場合、制御回路180は、位相変調法を選択した場合と、振幅変調法を選択した場合と、振幅位相変調法を選択した場合とで、第2領域を分割する分割領域の数を異ならせてもよい。
以上述べた少なくとも1つの実施形態又は変形例によれば、血流画像、造影画像及び組織画像の少なくとも2つの画像を好適に収集することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。