JP7306618B2 - がんの転移形成能に関与する因子および前記因子を用いたがん患者の予後予測方法 - Google Patents

がんの転移形成能に関与する因子および前記因子を用いたがん患者の予後予測方法 Download PDF

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本発明は、がんの転移形成能に関与する因子(タンパク質および当該タンパク質をコードするポリヌクレオチド)ならびに前記因子を用いたがん患者の予後予測方法に関する。
近年、ゲノム薬理学の急速な進歩により、がん、糖尿病、高血圧といった各種疾患の分子レベルでの解明が可能となり、患者間の個体差(例えば、薬物の吸収、分布または代謝、ならびに病態および疾患に対する感受性の差異)に、遺伝子の変異が関与している場合があることが明らかとなってきている。
特にがん関連分野において、遺伝子の変異はタンパク質の発現、構造ならびに機能に異常をきたし、正常細胞のがん化を誘引する原因である。現在までに、がん関連遺伝子変異は数多く報告されている。例えばセリン/スレオニンキナーゼやチロシンキナーゼ遺伝子における変異は、細胞の増殖を直接制御する重要な酵素をコードしていることから、アミノ酸配列の置換や欠失などによる自己リン酸化の亢進として検出されるキナーゼ活性の自発活性化により細胞をがん化に導くことが知られている。
なかでも肺がんに関しては、EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor、上皮成長因子受容体)遺伝子(10%から40%)やKRAS遺伝子(10%から20%)の変異、ALK(Anaplastic Lymphoma Kinase、未分化リンパ腫リン酸化酵素)遺伝子とEML4(Echinoderm Microtubule-associated protein-Like 4)遺伝子との融合やALK遺伝子とKIF5B(Kinesin Family Member 5B)遺伝子との融合等(5%)が生じていることも明らかとなっている(非特許文献1から5)。
前述した遺伝子変異やそれに伴う異常タンパク質(アミノ酸置換が生じたタンパク質)等を標的に、分子標的治療薬が開発されている。しかしながら多くの治療薬は集団内の特定のがん細胞には効果を示す一方、不均一性を示す残りのがん細胞やがん幹細胞(悪性がん細胞)には薬効を示さないため、残存した悪性がん細胞の増殖に伴う再発や転移が課題となっている。したがって、治療法もしくは治療薬の選定またはがん細胞の悪性度を測定可能な標的因子(標的タンパク質および標的遺伝子)が求められている。
特にヒトのがんにおいて、がんの転移形成能に関与する因子(タンパク質および当該タンパク質をコードするポリヌクレオチド)を同定することは、前記因子を標的とした新規ながんの治療方法や検査方法、治療薬の開発に大きく寄与するため、強く望まれている。
Janku,F.et al.、Nat Rev Clin Oncol、7(2010)、401-414 Takeuchi,K.et al.、Clin Cancer Res、15(2009)、3143-3419 Lovly,C.M.et al.、Nat Rev Clin Oncol、8(2011)、68-70 Paez,J.G.et al.、Science、304(2004)、1497-1500 Soda,M.Et.et al.、Nature、448(2007)、561-566
本発明は、がんの転移形成能に関与する因子(タンパク質および当該タンパク質をコードするポリヌクレオチド)および前記因子を用いたがん患者の予後予測方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、がん細胞で発現するタンパク質のうち、特定の位置にアミノ酸置換が生じたSMAD4(SMAD family member 4)タンパク質、ATM(ATM serine/threonine kinase)タンパク質およびPIK3CA(Phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate 3-Kinase Catalytic subunit Alpha)タンパク質、ならびにこれらタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、がんの転移形成能に関与する因子であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の第一の態様は、
採取された試料において、タンパク質のアミノ酸置換を検出する工程を含む、がん患者における予後の予測方法であって、
前記アミノ酸置換が、以下の(1)から(4)のうち少なくともいずれか1つの置換である、前記予測方法である。
(1)配列番号1の256番目のグルタミンがロイシンに置換
(2)配列番号2の2684番目のグルタミンがロイシンに置換
(3)配列番号2の2686番目のフェニルアラニンがバリンに置換
(4)配列番号3の1066番目のアラニンがスレオニンに置換
また本発明の第二の態様は、第一態様に記載の予測方法において、前記採取された試料からがん細胞を回収する工程をさらに含み、前記検出工程が、がん細胞が発現するタンパク質のアミノ酸置換を検出する、予測方法に関する。
また、本発明の第三の態様は、採取された試料において、ポリヌクレオチドの塩基置換を検出する工程を含む、がん患者における予後の予測方法であって、
前記塩基置換が、以下の(I)から(IV)のうち少なくともいずれか1つの置換である、前記予測方法である。
(I)配列番号1の256番目のグルタミンに対応するコドンがロイシンに対応するコドンに置換
(II)配列番号2の2684番目のグルタミンに対応するコドンがロイシンに対応するコドンに置換
(III)配列番号2の2686番目のフェニルアラニンに対応するコドンがバリンに対応するコドンに置換
(IV)配列番号3の1066番目のアラニンに対応するコドンがスレオニンに対応するコドンに置換
また本発明の第四の態様は、採取された試料において、ポリヌクレオチドの塩基置換を検出する工程を含む、がん患者における予後の予測方法であって、
前記塩基置換が、以下の(i)から(iv)のうち少なくともいずれか1つの置換である、前記予測方法である。
(i)配列番号4の1305番目のアデニンがチミンに置換
(ii)配列番号5の8436番目のアデニンがチミンに置換
(iii)配列番号5の8441番目のチミンがグアニンに置換
(iv)配列番号6の3353番目のグアニンがアデニンに置換
また本発明の第五の態様は、第三態様及び第四態様の予測方法において、前記採取された試料からがん細胞を回収する工程をさらに含み、前記検出工程が、がん細胞においてポリヌクレオチドの塩基置換を検出する、予測方法に関する。
また本発明の第六の態様は、採取された試料からがん細胞を回収する工程を、試料中に含まれるがん細胞を保持可能な保持部を複数設けた細胞保持手段と誘電泳動力を発生させる手段とを備えた細胞回収装置を用いて行なう、前記第二又は第五の態様のいずれかに記載の予測方法である。
また本発明の第七の態様は、前記試料が血液試料であり、がん細胞が血中循環がん細胞である、前記第一から第六の態様のいずれか1つに記載の方法である。
さらに本発明の第八の態様は、以下の(1)から(4)のいずれかのポリペプチドからなる、がんの転移形成能に関与するタンパク質である。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、少なくとも配列番号1の256番目のグルタミンがロイシンに置換した前記ポリペプチド
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、少なくとも配列番号2の2684番目のグルタミンがロイシンに置換した前記ポリペプチド
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、少なくとも配列番号2の2686番目のフェニルアラニンがバリンに置換した前記ポリペプチド
(4)配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、少なくとも配列番号3の1066番目のアラニンがスレオニンに置換した前記ポリペプチド
また本発明の第九の態様は、前記第八の態様に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
また本発明の第十の態様は、前記第九の態様に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。
また本発明の第十一の態様は、前記第八の態様に記載のタンパク質をコードする遺伝子である。
また本発明の第十二の態様は、配列番号4~6のいずれか1つの塩基配列であって、以下の(i)から(iv)のうち少なくともいずれか1つの置換を有する、遺伝子に関する。
(i)配列番号4の1305番目のアデニンがチミンに置換
(ii)配列番号5の8436番目のアデニンがチミンに置換
(iii)配列番号5の8441番目のチミンがグアニンに置換
(iv)配列番号6の3353番目のグアニンがアデニンに置換
また本発明の第十三の態様は、第十一の態様又は第十二の態様に記載される遺伝子の存在を測定するためのプローブに関する。
また本発明の第十四の態様は、第八の態様に記載のタンパク質を特異的に認識する抗体に関する。
また本発明の第十五の態様は、第十四の態様に記載される抗体が、前記置換を有さない配列からなる遺伝子から発現されるタンパク質を認識しない抗体に関する。
また本発明の第十六の態様は、第八の態様に記載のタンパク質を特異的に認識する低分子化合物に関する。
また本発明の第十七の態様は、第十六の態様に記載される低分子化合物が、前記置換を有さない配列からなる遺伝子から発現されるタンパク質を認識しない低分子化合物に関する。
また本発明の第十八の態様は、第八の態様に記載のタンパク質を用いた、がんワクチンの製造方法に関する。
また本発明の第十九の態様は、第八の態様に記載のタンパク質、第九の態様に記載のポリヌクレオチドおよび第十二の態様に記載の遺伝子のいずれかを用いた、細胞障害性T細胞が有するT細胞受容体の同定方法に関する。
本発明の因子(タンパク質および当該タンパク質をコードするポリヌクレオチド)は、がんの転移形成能に関与する因子である。従って、前記因子を検出(具体的には、前記因子が有するアミノ酸置換または塩基置換を検出)することで、がん患者の予後予測、手術前後や遺伝子治療におけるがんの検査や、がんの再発検査などを高精度に実施できる。また前記因子を標的とする抗体医薬、核酸医薬、低分子化合物などの創薬を実施できる。
本発明の予測方法のうち、がん細胞を回収する工程で使用可能な、がん細胞を保持可能な細胞回収装置の一例を示した図(分解図)である。 図1に示す装置の正面図である。 図1に示す装置を用いた、がん細胞を回収する工程の一例を示した図である。 実施例4で取得した5種の遺伝子導入WiDR細胞と、ネガティブコントロールとして遺伝子導入未実施のWiDR細胞をそれぞれ接着細胞培養用24ウェルプレートに播種し、96時間培養後、正立顕微鏡を用いて観察された細胞形態の画像である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、がんの限定は特になく、例えば、白血病、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫などの造血細胞悪性腫瘍、脳腫瘍、乳がん、子宮体がん、子宮頚がん、卵巣がん、食道がん、胃がん、虫垂がん、大腸がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、膵臓がん、副腎がん、消化管間質腫瘍、中皮腫、口腔底がん、歯肉がん、舌がん、頬粘膜がんなどの喉頭がん、口腔がん、頭頚部がん、唾液腺がん、副鼻腔がん、甲状腺がん、腎臓がん、肺がん、骨肉腫、骨がん、前立腺がん、精巣腫瘍、腎臓がん、膀胱がん、皮膚がん、肛門がん、メラノーマが挙げられる。また原発性腫瘍であってもよいし転移性腫瘍であってもよい。
本発明の予後予測方法を適用するがん患者は、抗がん剤の投与をすでに受けた患者であってもよいし、当該抗がん剤の投与を現在受けている患者であってもよいし、当該抗がん剤の投与を受ける前の患者であってもよい。また、がんの疑いのある患者も本発明におけるがん患者に含まれる。
本発明の予後予測方法において、採取された試料に特に限定はなく、例えば、尿、全血、血漿、血清、唾液、***、糞便、痰、髄液、羊水、リンパ液、腹水、組織、器官(肝臓、肺、脾臓、腎臓、皮膚、リンパ節、動脈など)といった生体試料、ならびに前記生体試料中に含まれる細胞/組織の培養物や培養液(培養試料)が挙げられる。なお、がん患者から採取された試料は、その性状に応じて、予め希釈、混合、分散、懸濁などの処理を行なってもよい。前記生体試料のうち、血液試料(例えば、全血、血漿、血清などの血液検体や、当該血液検体を生理食塩水などで希釈した試料)は、がん患者からの試料採取や試料中に含まれるがん細胞の回収が容易に行なえる点で、本発明における試料として好ましい。
本発明の予後予測方法では、対象から試料を採取する工程をさらに含んでもよい。試料の採取は、試料の種類に応じて異なるが、注射、穿刺、スワブ、分取などの方法により行われる。こうして採取された試料からがん細胞を回収する工程をさらに含んでもよい。こうして得られた試料は、がん細胞を含んでいることが好ましい。試料が全血、血漿、血清といった血液試料である場合、試料に含まれるがん細胞は、血中循環がん細胞(CTC)であることが好ましい。血中循環がん細胞は、例えば、血液試料を密度勾配遠心法(特開2015-006169号公報)やフィルター法(特開2014-233267号公報)などに供して、CTCを含む(CTCが濃縮された)画分を取得し、当該画分からCTCを回収できる。試料が、穿刺などにより取得された組織である場合、組織から細胞を分離し、がん細胞マーカーなどで識別してフローサイトメトリーを行うことにより、がん細胞を分離することもできる。
密度勾配遠心法によりがん細胞を含む画分を取得する場合には、密度勾配溶液に試料を重層した後、遠心分離を行なう。当該遠心分離により試料中に含まれる夾雑細胞(血液試料の場合、赤血球、白血球など)は下層(密度勾配溶液側)に移動する一方、がん細胞は上層(試料側)に残るため、当該上層を回収することでがん細胞を含む(がん細胞が濃縮された)画分を取得することができる。なお、前述したがん細胞を含む画分の取得を、前記上層と前記下層とが分離可能な容器(特開2015-006169号公報)を用いて行なうと、がん細胞を含む画分の取得が容易となるため好ましい。さらに、試料が血液試料の場合には、当該試料を密度勾配溶液に重層する前に、当該試料を溶血させる工程(溶血操作)を行なうと、夾雑細胞である赤血球の細胞数を減少させることができ、前記上層への赤血球の混入数も減少するため好ましい。なお、前記溶血操作は密度勾配遠心分離後に実施してもよく、その場合は、再度遠心分離などによる夾雑細胞の除去操作を行なってもよい。
前述した方法で得られたがん細胞を含む画分は、凍結保存や化学固定による保存処理を行なってもよい。例えば、凍結保存する場合は、細胞保存溶液に溶液置換をした後、0℃以下の温度、好ましくは-20℃以下、さらに好ましくは-80℃以下の温度で保存すればよい。化学固定する場合は、細胞懸濁液に安定化剤を添加し、タンパク質を不溶化および/または不活性化する細胞固定処理を施すことで、前記細胞の劣化を長時間抑制すればよい。化学固定に用いる安定化剤としては、例えば、アルデヒド類、酸類、脱水剤・有機溶媒類、金属塩類などの細胞固定剤を含む溶液が挙げられる。
前述した方法で得られたがん細胞を含む画分には、がん細胞以外の夾雑細胞(血液試料の場合、特に白血球)がまだ多く含まれる。従って、前記画分中に存在するがん細胞を特異的に検出してから、がん細胞を回収すると好ましい。がん細胞を検出するには、例えば、がん細胞を含む画分をスライドに塗布するか、またはがん細胞を保持可能な装置にがん細胞を含む画分を導入してがん細胞を前記装置に保持させた後、顕微鏡や光学検出器などを利用して、前記がん細胞が有する特徴に基づき、がん細胞を検出すればよい。また、がん細胞を含む画分をフローサイトメーターに導入することでがん細胞を検出してもよい。
がん細胞を回収可能な細胞回収装置の一例を図1に示し、その正面図を図2に示す。
図1および図2に示す細胞回収装置100は、
貫通孔11aを有する平板状の遮光部材11と、
貫通孔12aを有する平板状の絶縁体12と、
導入口21、排出口22および貫通部23を有する平板状のスペーサー20と、
遮光部材11の下部およびスペーサー20の上部と密着するよう設けた電極基板31・32と、
電極基板31・32同士を接続する導線40と、
電極基板31・32に信号を印加する信号発生器50と、
を備えている。
遮光部材11が有する貫通孔11aと絶縁体12が有する貫通孔12aとは互いに同一の寸法および形状であり、かつそれぞれの貫通孔の位置が一致するよう遮光部材11および絶縁体12を設けている。貫通孔11a、貫通孔12aおよび遮光部材11の下部に密着して設けた電極基板31により、細胞回収手段10内に保持部60が構成され、導入口21から細胞を含む液体を導入すると、貫通部23を通じて保持部60へ細胞が導入される。電極基板32はスペーサー20上部に密着して設けており、導入口21から導入した、細胞を含む液体の飛散や蒸発を防止している。なお、保持部60に保持した細胞の回収を容易にするため、電極基板32はスペーサー20から取り外し可能な構造となっている。また電極基板31・32をITO(酸化インジウムスズ)などの透明電極にすると、保持部60に保持された細胞を、顕微鏡や光学検出器を用いて検出可能となるため好ましい。
図1および図2に示す細胞回収装置100にがん細胞を保持させる際は、がん細胞を含む画分をスペーサー20に設けた導入口21から導入後、信号発生器50から導線40を介して電極基板31・32へ交流電圧を印加することで誘電泳動力を発生させ、がん細胞を保持させるとよい。がん細胞を含む画分を細胞回収装置100に導入する際は、予め当該画分を遠心分離することでがん細胞を含むペレットを得た後、マンニトール、グルコ-ス、スクロ-スなどの糖を含む溶液に当該ペレットを懸濁させてから細胞回収装置100に導入すると、がん細胞へのダメ-ジが少なくなるため好ましい。なお、前記ペレットの懸濁液として前述した糖の他に、BSAやカゼイン等のタンパク質、親水性高分子を結合したタンパク質をさらに含んでもよい。前記ペレットの懸濁液中に含まれる糖の濃度はがん細胞と等張になる濃度とすればよく、糖としてマンニトールを用いる場合は終濃度で250mMから350mMの間とすればよい。電極基板31・32へ印加する交流電圧としては、ピ-ク電圧が1Vから20V程度で、周波数10kHzから10MHz程度である、正弦波、矩形波、三角波、台形波が例示できる。具体例として、生きたがん細胞を保持部に1つずつ保持させたい場合は、周波数100kHzから3MHzの矩形波を使用すると好ましい。
前述した通りがん細胞の検出は、当該がん細胞が有する特徴に基づき検出すればよい。例えば、血液試料中に含まれるがん細胞(CTC)を検出する場合は、細胞核を有し、かつ白血球マーカー(CD45など)を実質的に発現していない、および/またはがん細胞由来マーカーもしくは上皮系マーカー(サイトケラチン(CK)やEpCAM(Epithelial Cell Adhesion Molecule)など)を発現している細胞をCTCとして検出する態様が挙げられる(S.L.Werner.et al.,J.Circ.Biomark.,4:3,doi:10.5772/60725(2015)参照)。なお、CKにはCK1からCK20まで20種類のタンパク質が知られているが、そのいずれもが前記上皮系マーカーとして使用可能である。ここで「白血球マーカーを実質的に発現していない」とは、白血球マーカーの発現がほとんど確認できないことをいい、具体的には、対象細胞におけるマーカーの発現量が、白血球マーカーを発現する細胞(白血球など)の発現量の半分未満、好ましくは1/3未満、より好ましくは1/5未満、さらにより好ましくは1/10未満である場合に「白血球マーカーを実質的に発現しない」と評価し得る。また、対象細胞におけるマーカーの発現量が、白血球マーカーを発現しないことが知られている陰性対照細胞(例えば、血管内皮細胞、間葉系幹細胞)と同等の発現量である場合も「白血球マーカーを実質的に発現しない」と評価し得る。
がん細胞の検出を当該がん細胞が有する光学的特徴に基づき検出する場合、細胞核の検出は、4’,6-DiAmidino-2-PhenylIndole(DAPI)やHoechst 33342(商品名)などの細胞核染色試薬で染色して検出すればよい。また、マーカーの検出は、当該マーカーを直接呈色試薬や蛍光試薬で染色して検出してもよく、当該マーカーに対する標識化抗体又は当該マーカーに対する一次抗体と当該一次抗体に対する標識二次抗体を用いて検出してもよく、当該マーカーの遺伝子を特異的に増幅して検出してもよい。中でもマーカーの検出を当該マーカーに対する標識化抗体を用いて検出する方法は、当該マーカーを簡便、高感度、かつ特異的に検出できる方法であり好ましい。なお、抗体を標識する物質も特に限定はなく、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Alexa Fluor(商品名)などの蛍光物質が挙げられる。
がん細胞検出の別の態様として、細胞の大きさに基づき検出する態様が挙げられる。がん細胞の多くは赤血球(直径7μmから8μm、厚さが2μm程度の円盤形)や白血球(マクロファージを除けばおよそ直径6μmから15μmの球状)と比較して径が大きい(CTCの場合、直径10μmから30μm)ことが知られており(Rostagno P.et al.,Anticancer Res.,17(4A),2481-2485(1997))、赤血球や白血球と比較して径が大きな細胞を指標とすることにより、がん細胞を精度よく検出できる。
がん細胞検出のさらに別の態様として、細胞核の大きさに基づき検出する態様が挙げられる。がん細胞の多くは正常細胞と比較して細胞核が大きいことが知られており、正常細胞と比較して細胞核が大きな細胞を抽出することにより、正常細胞とほぼ同じ径のがん細胞であっても精度よく検出することが可能となる(特開2013-508729号および特開2013-024768号参照)。細胞核の大きさの測定は、具体的には、前述した細胞核染色試薬で染色して測定すればよい。
検出器によるがん細胞の検出は、例えば、カメラなどの撮像手段で撮像することで得られた画像(明視野像、蛍光画像、発光画像など)をパソコン等に取り込んだ後、ソフトウェアを用いてがん細胞か否かを判別すればよい。ソフトウェアを用いずに、目視によりがん細胞か否かを判別することもできる。
前述した方法で検出したがん細胞は、細胞を採取可能な採取手段を用いて回収すればよい。採取手段としては、例えば、ポンプや電気浸透流などを用いた吸引による採取手段が挙げられる。がん細胞がポリ-L-リジンなどの接着物質により比較的強く基板に接着されている場合、高流速で吸引する必要があるため、採取手段としてシリンジポンプを用いる場合は、流量を0.01から5.0μL/sの間とすると好ましい。細胞の吸引で用いる細管の材質としては、ガラス、金属、樹脂等が挙げられるが、耐衝撃性および光透過性が高いガラスが好ましい。また、細管の内径は、吸引後の細管内での詰まりを防ぐため、吸引する細胞の直径よりも大きくすることが好ましい。例えば、直径30μmの保持部(保持部間の距離は50μm)に導入された細胞を吸引する場合は、細管の内径を25μmから35μmの間とすることができる。
本発明の予後予測方法では、回収したがん細胞が発現するタンパク質のうち、がんの転移形成能に関与する特定タンパク質、または当該特定タンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下、単に特定ポリヌクレオチドとも表記する)を検出することでがん患者の予後予測を行なう。
前記特定タンパク質は具体的には、以下の(1)から(5)のうち少なくともいずれか1つである。
(1)配列番号1(GenBank No.NP_005350.1)に記載のアミノ酸配列を含むSMAD4(SMAD family member 4)タンパク質において、少なくとも配列番号1の256番目のグルタミンがロイシンに置換したポリペプチド又はタンパク質。かかるポリペプチド又はタンパク質の一例として、配列番号7のポリペプチド又はタンパク質が挙げられる。
(2)配列番号2(GenBank No.NP_000042.3)に記載のアミノ酸配列を含むATM(ATM serine/threonine kinase)タンパク質のうち、少なくとも配列番号2の2684番目のグルタミンがロイシンに置換したポリペプチド又はタンパク質。かかるポリペプチド又はタンパク質の一例として、配列番号8のポリペプチド又はタンパク質が挙げられる。
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むATMタンパク質において、少なくとも配列番号2の2686番目のフェニルアラニンがバリンに置換したポリペプチド又はタンパク質。かかるポリペプチド又はタンパク質の一例として、配列番号9のポリペプチド又はタンパク質が挙げられる。
(4)配列番号3(GenBank No.NP_006209.2)に記載のアミノ酸配列を含むPIK3CA(Phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate 3-Kinase Catalytic subunit Alpha)タンパク質において、少なくとも配列番号3の1066番目のアラニンがスレオニンに置換したポリペプチド又はタンパク質。かかるポリペプチド又はタンパク質の一例として、配列番号10のポリペプチド又はタンパク質が挙げられる。
(5)配列番号2(GenBank No.NP_000042.3)に記載のアミノ酸配列を含むATM(ATM serine/threonine kinase)タンパク質のうち、少なくとも配列番号2の2684番目のグルタミンがロイシンに置換し、かつ少なくとも配列番号2の2686番目のフェニルアラニンがバリンに置換したポリペプチド又はタンパク質。かかるポリペプチド又はタンパク質の一例として、配列番号15のポリペプチド又はタンパク質が挙げられる。
また前記特定ポリヌクレオチドは具体的には、以下の(I)から(V)のうち少なくともいずれか1つである。
(I)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むSMAD4タンパク質をコードするヌクレオチドにおいて、少なくとも配列番号1の256番目のグルタミンに対応するコドン(CAAまたはCAG)がロイシンに対応するコドン(TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTGのいずれか)に置換したポリヌクレオチド
(II)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むATMタンパク質をコードするポリヌクレオチドにおいて、少なくとも配列番号2の2684番目のグルタミンに対応するコドンがロイシンに対応するコドンに置換したポリヌクレオチド
(III)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むATMタンパク質をコードするポリヌクレオチドにおいて、少なくとも配列番号2の2686番目のフェニルアラニンに対応するコドン(TTTまたはTTC)がバリンに対応するコドン(GTT、GTC、GTA、GTGのいずれか)に置換したポリヌクレオチド
(IV)配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むPIK3CAタンパク質をコードするポリヌクレオチドにおいて、少なくとも配列番号3の1066番目のアラニンに対応するコドン(GCT、GCC、GCA、GCGのいずれか)がスレオニンに対応するコドン(ACT、ACC、ACA、ACGのいずれか)に置換したポリヌクレオチド
(V)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むATMタンパク質をコードするポリヌクレオチドにおいて、少なくとも配列番号2の2684番目のグルタミンに対応するコドンがロイシンに対応するコドンに置換し、かつ少なくとも配列番号2の2686番目のフェニルアラニンに対応するコドン(TTTまたはTTC)がバリンに対応するコドン(GTT、GTC、GTA、GTGのいずれか)に置換したポリヌクレオチド
前記(I)のポリヌクレオチドの一態様として、
(i)配列番号4(GenBank No.NM_005359.5)に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドにおいて、少なくとも1305番目のアデニンがチミンに置換したポリヌクレオチド、があげられる。かかるポリヌクレオチドの一例は、配列番号11で表される。
前記(II)のポリヌクレオチドの一態様として、
(ii)配列番号5(GenBank No.NM_000051.3)に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドにおいて、少なくとも8436番目のアデニンがチミンに置換したポリヌクレオチド、があげられる。かかるポリヌクレオチドの一例は、配列番号12で表される。
前記(III)のポリヌクレオチドの一態様として、
(iii)配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドにおいて、少なくとも8441番目のチミンがグアニンに置換したポリヌクレオチド、があげられる。かかるポリヌクレオチドの一例は、配列番号13で表される。
前記(IV)のポリヌクレオチドの一態様として、
(iv)配列番号6(GenBank No.NM_006218.2)に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドにおいて、少なくとも3353番目のグアニンがアデニンに置換したポリヌクレオチド、があげられる。かかるポリヌクレオチドの一例は、配列番号14で表される。
(V)配列番号5(GenBank No.NM_000051.3)に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドにおいて、少なくとも8436番目のアデニンがチミンに置換し、かつ少なくとも8441番目のチミンがグアニンに置換したポリヌクレオチド、があげられる。かかるポリヌクレオチドの一例は、配列番号16で表される。
本発明のさらなる態様では、がんの転移形成能に関与する限りにおいて、本発明の遺伝子の配列(配列番号11~14、及び16)に対し少なくとも90%、好ましくは95%、さらに好ましくは98%の配列同一性を有する配列の遺伝子に関していてもよい。但し、本発明の遺伝子が有する変異の位置、すなわち配列番号11の場合は1305位、配列番号12の場合は8436位、配列番号13の場合は8441位、配列番号14の場合は3353位、においては、置換、欠失、及び/又は付加はされない。
本発明のさらなる態様では、がんの転移形成能に関与する限りにおいて、本発明のタンパク質の配列(配列番号7~10、及び15)において、1又は複数の置換、欠失、及び/又は付加を含む改変タンパク質に関していてもよい。改変タンパク質において、置換、欠失、及び/又は付加は、1又は数個であることが好ましい。別の態様では、改変タンパク質は、本発明の改変タンパク質の配列に対し少なくとも90%、好ましくは95%、さらに好ましくは98%の配列同一性を有する配列のタンパク質に関していてもよい。但し、かかる改変タンパク質は、本発明のタンパク質が有する変異の位置、すなわち配列番号7の場合は256位、配列番号8の場合は2684位、配列番号9の場合は2686位、配列番号10の場合は1066位、配列番号15の場合は2684位及び2686位においては、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加はされない。
前記特定タンパク質を検出するには、例えば前記特定タンパク質が有するアミノ酸置換(具体的には、配列番号1の256番目のロイシン、配列番号2の2684番目のロイシン、配列番号2の2686番目のバリン、配列番号3の1066番目のスレオニンのうち少なくともいずれか1つ)を特異的に認識可能な抗体、もしくはそのフラグメントを用いた抗原抗体反応、または低分子化合物の結合により検出すればよい。特異的に認識可能な抗体、もしくはそのフラグメント、または低分子化合物とは、特定の配列を有するタンパク質に対してのみ結合できる抗体、もしくはそのフラグメント、または低分子化合物をいう。より具体的に、特定タンパク質が有するアミノ酸置換を特異的に認識可能な抗体、もしくはそのフラグメント、または低分子化合物とは、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むタンパク質に対しては結合できない一方で、配列番号1の256番目のロイシン、配列番号2の2684番目のロイシン、配列番号2の2686番目のバリン、配列番号3の1066番目のスレオニンのうち少なくともいずれか1つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むタンパク質に対しては結合できる抗体、もしくはそのフラグメント、または低分子化合物をいう。また、抗体、またはそのフラグメントには、抗体の軽鎖及び重鎖の相補性決定領域(CDRs)を有し、目的のタンパク質に特異的に結合できる物質であれば任意のもの、例えば抗体の軽鎖及び重鎖の相補性決定領域(CDRs)を有するスキャフォールドなどが含まれるものとする。
本発明の抗体、またはそのフラグメントは、前記特定タンパク質が有するアミノ酸置換(具体的には、配列番号1の256番目のロイシン、配列番号2の2684番目のロイシン、配列番号2の2686番目のバリン、配列番号3の1066番目のスレオニンのうち少なくともいずれか1つ)を特異的に認識することから、本発明の抗体、またはそのフラグメントは、前記アミノ酸置換を有するアミノ酸配列からなるペプチドをエピトープとする。このようなエピトープは、置換されたアミノ酸と、およびその上流(N末側)、および/または下流(C末側)のそれぞれ1~10個の連続するアミノ酸とから構成されうる。
採取された試料において、タンパク質のアミノ酸置換を検出する工程は、一例として免疫染色が行われてもよい。より具体的に、免疫染色では、前記アミノ酸置換を有するタンパク質と、抗体とを反応させることで検出をすることができる。このような抗体を金コロイドや蛍光物質で直接標識していてもよいし、標識を有する二次抗体を用いてかかる抗体を検出してもよい。免疫染色法としては、本技術分野に既知の手法を用いることができるが、ウエスタンブロット法や蛍光免疫染色法が用いられてもよい。
前記特定ポリヌクレオチドを検出する方法の一例として、前記特定ポリヌクレオチドが有する塩基置換を特異的に認識するプローブを用いて検出する方法や、前記ポリヌクレオチドが有する塩基置換を含むプライマーを用いた特異的増幅により検出する方法や、がん細胞を直接遺伝子変異解析して検出する方法があげられる。がん細胞を直接遺伝子変異解析することで前記特定ポリヌクレオチドを検出する場合、解析対象のがん細胞は、前述した方法で回収したがん細胞を用いてもよいが、培養試料など試料中に含まれるがん細胞が多い場合および/または夾雑細胞が少ないときは、前述した密度勾配遠心法やフィルター法などにより得られたがん細胞を含む画分(がん細胞が濃縮された画分)をそのまま遺伝子変異解析に供してもよい。遺伝子変異解析手法に関しては特に限定はなく、例えば、回収したがん細胞から、遺伝子を抽出した後、遺伝子解析をすればよい。その際に抽出した遺伝子の増幅反応を行なってもよい。遺伝子(ポリヌクレオチド)の増幅法としては、PCR(Polymerase Chain Reaction)法や、TRC(Transcription Reverse-transcription Concerted reaction)法、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法などを用いることができる。遺伝子変異解析においては、サンガー法、サイクルシークエンス法、次世代シークエンシングなどの手法により、抽出した遺伝子(またはその増幅産物)の塩基配列を決定すればよい。
前述した方法で得られた、前記特定タンパク質または前記特定ポリヌクレオチドの検出結果に基づき、対象患者(前記試料を採取した患者)における予後を予測することができる。本発明による予後の予測方法は、医師が行なわずに、医療補助者などが行なうことができるし、装置およびソフトウェア上で自動的に関連付けすることができる。したがって、本発明の方法は、医師による治療効果判断のための予備的方法、または医師によるがん患者の予後予測のための情報を得る方法ということもできる。
本発明では、がん患者から採取したがん細胞が発現するタンパク質のうち、がんの転移形成能に関与する特定タンパク質または特定ポリヌクレオチドを検出することで、当該がん患者における予後を予測するが、前記検出に基づく予後予測は定性的に、すなわち前記特定タンパク質または前記特定ポリヌクレオチドの有無に基づき行なってもよいし、定量的に、すなわち前記特定タンパク質または前記特定ポリヌクレオチドの量に基づき行なってもよい。また予後の判断基準も特に限定はなく、例えば、前記特定タンパク質または前記特定ポリヌクレオチドが少しでもあれば予後が悪化していると予測してもよく、前記特定タンパク質または前記特定ポリヌクレオチドが一定の閾値以上存在しているとき予後が悪化していると予測してもよく、前記特定タンパク質または前記特定ポリヌクレオチドの量と予後とを相関させてもよい。予後予測の一例として、アミノ酸置換またはヌクレオチド置換を検出したがん細胞の割合に基づいて、予後を決定することができ、割合が高くなるにともない予後が不良であると決定することができる。また、4種類の置換のうち、2つ以上の組み合わせを有するがん細胞の存在または割合に基づいて予後を決定することができる、例えば置換の組み合わせが多いがん細胞が存在する場合、またはそのようながん細胞の割合が多くなるほど、予後が不良であると決定することができる。予後が不良であると決定された場合には、さらに治療を継続することが好ましい。本発明の置換を有するがん細胞は、いわゆるがん幹細胞でありうる。したがって、本発明で予後を不良と決定された対象に対しては、がん幹細胞を治療標的とする治療が行われうる。がん幹細胞を治療標的とする治療としては、薬剤排出を抑制する薬剤などを用いることが挙げられる。がん幹細胞は、一般に、薬剤排出により薬剤耐性を発揮するため、薬剤排出を抑制する薬剤を併用することでがん幹細胞を効果的に減少しうる。
がん幹細胞は、細胞増殖がほとんど起こらない静止期と呼ばれる状態にとどまっているため、細胞***を阻害する一般的な抗癌剤の奏効性は低いことが知られている。したがって、細胞***抑制に関わる因子の機能を阻害する薬剤と抗癌剤を併用することで、静止期から増殖期に移行させ、がん幹細胞を効果的に減少しうる。また、がん幹細胞が有する抗酸化システムを阻害する薬剤を用いることで、酸化作用によるがん幹細胞の効率的な減少を可能にする。更には、がんの転移形成能に関与する遺伝子の存在を認識するポリヌクレオチド、または遺伝子から発現されるたんぱく質を特異的に認識する抗体に対し、抗癌剤を結合した複合体を使用することで、がん幹細胞をより効果的に死滅しうる。
本発明の好ましい態様の一つとして、前記特定タンパク質もしくは前記特定ポリヌクレオチドの有無またはその量を指標とすることに加えて、がん原発組織およびがん転移組織以外の試料由来のがん細胞数を指標とすることで、がん患者の予後を予測する方法が挙げられる。がん原発組織およびがん転移組織以外の試料由来のがん細胞数と予後とは関連性があり、当該がん細胞数が多いほど予後が悪い(血液試料中に含まれるがん細胞の場合は特表2011-505012号参照)。このことから、がん原発組織およびがん転移組織以外の試料由来のがん細胞数を計測することで、患者の予後を予測することができる。従って、前記特定タンパク質もしくは前記特定ポリヌクレオチドに基づく本発明の予後予測方法に加え、がん原発組織およびがん転移組織以外の試料由来のがん細胞数を計測することで、がん患者の予後予測をより精度高く行なうことができる。なお、がん細胞数を指標とする場合においては、単に採取した試料中に一定のしきい値以上のがん細胞が存在するかを評価してもよく、試料を複数回採取し、当該採取した各試料中に含まれるがん細胞数の経時変化を評価してもよい。
以下、試料として血液試料を、試料からがん細胞を回収する装置として図1および図2に示す細胞回収装置100をそれぞれ用い、本発明の予後予測をがんの転移形成能に関与する特定ポリヌクレオチドの検出により行なう場合を例に説明するが、本発明は本説明の内容に限定されるものではない。
[1]がん患者(がんの疑いのある患者も含む)から血液を採取する。なお、血液を採取する際、クエン酸、ヘパリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの抗凝固剤を添加してもよい。また必要に応じ、採取した血液を生理食塩水などで希釈してもよい。
[2]採取した血液(または希釈した血液)を密度勾配遠心法に供し、当該血液中に含まれる夾雑細胞(赤血球、白血球など)を除去する。密度勾配遠心法は、物質をその比重に基づき分離する方法であり、密度勾配を形成した媒体(密度勾配溶液)上に採取した血液(または希釈した血液)を重層した後、遠心分離を行なうことにより、夾雑細胞やごみを除去し、がん細胞(CTC)を含む画分(上層)を回収することができる。なお、前記遠心分離を行なう前に、採取した血液(または希釈した血液)に、夾雑細胞(赤血球、白血球など)と結合可能な結合剤(例えば、RosetteSep(StemCell Technologies社製))を添加することもできる。前記結合剤は、赤血球、白血球および/またはこれら細胞の表面抗原と結合することで細胞凝集体を形成し、これら細胞の密度を大きくすることができるため、密度勾配遠心法によるCTCの分離を容易にする。密度勾配遠心法により夾雑細胞やごみが除去されたCTCを含む画分は、速やかに後続の操作を行なうことが好ましいが、後続の操作を速やかに行なえない場合は、凍結保存による保存処理を行なってもよい。凍結保存する際は、CELLBANKER2(日本全薬工業社製)などの細胞保存溶液にCTCを含む画分を懸濁させた後、-80℃で凍結保存すればよい。
[3][2]で得られたCTCを含む画分に塩化アンモニウムを含む溶液を添加して撹拌することで、当該画分に混入した赤血球を溶血させる。本操作により、分離回収したCTCの観察が良好になる。
[4][3]で得られた溶血処理後のCTCを含む溶液を遠心分離することで血液成分を除去することでCTCをペレット状にした後、適切な溶液を用いてCTCを懸濁させる。
[5][4]で調製したCTCを含む懸濁液を再度遠心分離し、CTCを含むペレットを回収する。なお、必要に応じ、前記回収したペレットを溶液に再度懸濁させ、遠心分離する工程を追加してもよい。
[6][5]で得られたCTCを、図1に示す細胞回収装置100に設けた細胞保持手段10上に展開後、誘電泳動力80により細胞70を保持部60へ保持させる(図3(1))。
[7]接着物質90を細胞回収装置100に導入し、CTCを保持部60に接着する(図3(2))。接着物質90としては、例えばポリ-L-リジンを用いることができ、その濃度は0.01(w/v)%以下とするとよい。
[8]保存処理剤および細胞膜透過処理剤を細胞回収装置100に導入し、CTCの保存および膜透過処理を施す。保存処理剤としては、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドドナー化合物(加水分解を受けることでホルムアルデヒドを放出可能な化合物)、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、および重金属を含む溶液が例示できる。細胞膜透過処理剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、サポニンなどの界面活性剤が例示できる。
[9]抗体による非特異的な反応を防ぐため、保存および膜透過処理後の標的細胞を保持した保持部に対してタンパク質によるブロッキング処理を施す。
[10]ブロッキング処理した後、白血球が発現するタンパク質(白血球マーカー)、上皮系細胞が発現するタンパク質(上皮系マーカー)、もしくはがん細胞が発現するタンパク質(がん細胞由来マーカー)に対する蛍光標識抗体、または細胞核を蛍光染色させる試薬を用いて細胞を標識し(図3(3))、洗浄後、蛍光顕微鏡200などで細胞の蛍光像および明視野像を観察する(図3(4))。白血球が発現するタンパク質に対する抗体としては、抗CD45抗体を用いることができる。また、上皮系細胞が発現するタンパク質に対する抗体としては、抗CK抗体や抗EpCAM抗体などを用いることができる。細胞核を蛍光染色させる試薬としては、4’,6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)やHoechst 33342(商品名)などを用いることができる。
[11]観察した蛍光像および明視野像を基に標的細胞(CTC)71を検出する(図3(4))。CTCの検出は例えば、細胞核が染色されており、抗CD45抗体では標識されず、かつ上皮系細胞が発現するタンパク質に対する抗体(抗CK抗体や抗EpCAM抗体など)またはがん細胞が発現するタンパク質に対する抗体で標識された細胞をCTCとして検出すればよい。また細胞核が染色されており、抗CD45抗体では標識されず、かつ赤血球や白血球と比較して明視野像での細胞の形状が大きい細胞をCTCとして検出してもよい。
[12]蛍光顕微鏡200で検出したCTC71を回収するために、電極基板32をスペーサー20から取り外した後、回収装置300で吸引することでCTC71を回収する(図3(5))。電極基板32を取り外す際は、スペーサー20を剥がさないよう取り外す必要がある。もしスペーサー20が絶縁体12から剥がれると、装置内に保持されている溶液が系外に流れてしまい、CTC71が破壊されるからである。回収装置300によるCTC71の吸引は、前記(11)で検出したCTC71が保持されている保持部60に回収装置300を移動させ、回収装置300により液を吸引することでCTC71を回収する。なお、回収装置300によるCTC71の吸引位置を、CTC71を標本化した保持部60の中心から水平方向に一定距離ずらした位置とすると、CTC71の吸引を容易に行なえるため好ましい。具体的にはCTC71の吸引位置を、保持部60の中心から水平方向に保持部60の直径の0.1倍から2倍の長さ分(ただし隣接する保持部60間の距離の2分の1以下)ずらし、かつ保持部60の高さから垂直方向に保持部60の高さの0.01倍から2倍の高さ分高い位置とすると好ましい。また、回収装置300によるCTC71の吸引操作の前に、CTC71と保持部60との接着性を弱める酵素を含む溶液を添加する操作を行なってもよい。
[13]回収装置300による吸引で回収したCTC71を回収チュ-ブ400へ吐出する(図3(6))。回収チュ-ブ400へCTC71が吐出されたかどうかを光学検出器200で検出してもよい。
[14]回収チュ-ブ400に回収されたCTC71中の核酸を抽出し、PCR法により抽出した核酸に含まれる特定ポリヌクレオチドを増幅した後、サンガー法により特定ポリヌクレオチドの塩基配列を決定することで、特定ポリヌクレオチドの塩基置換を検出する。PCR増幅産物の配列解析には、次世代シーケンサーと呼称されるハイスループットな解析が可能な装置を使用してもよい。次世代シーケンサーとしては、例えば、Genome Sequencer FLXシステム(ロシュ・ダイアグノスティックス社)、HiSeq/Genome Analyzer IIx(GAIIx)/ MiSeq(イルミナ社)及びIon PGMシーケンサー(Ion PGM)(Thermo Fisher社)があげられる。
本発明の好ましい態様の一つとして、配列番号4~6のいずれか1つの塩基配列であって、以下の(i)から(iv)のうち少なくともいずれか1つの置換を有する、塩基配列からなるがんの転移形成予測のための遺伝子に関する:
(i)配列番号4の1305番目のアデニンがチミンに置換
(ii)配列番号5の8436番目のアデニンがチミンに置換
(iii)配列番号5の8441番目のチミンがグアニンに置換
(iv)配列番号6の3353番目のグアニンがアデニンに置換
これらの置換を有する塩基配列からなる遺伝子は、がんの転移形成能に関与することが明らかにされていることから、かかる遺伝子の存在を認識するプローブ、またはかかる遺伝子から発現されるタンパク質を特異的に認識する抗体は、予後の予測に有用である。また、かかる遺伝子から発現されるタンパク質の機能を活性化、もしくは抑制することで細胞周期もしくは増殖制御、細胞死、免疫シグナル伝達または炎症シグナル伝達などを制御する低分子化合物や活性を中和することができる抗体は、がんの治療、または転移の抑制に有用でありうる。また、がんの転移形成能に関与することから、かかる遺伝子の発現を抑制できる核酸医薬、例えばデコイ核酸、アンチセンス核酸、siRNA、miRNA、リボザイムなども、がんの治療、または転移の抑制に有用でありうる。さらに別の態様では、かかる遺伝子を有するがん細胞、より好ましくはがん幹細胞を用いたスクリーニング系を用いることで、候補薬剤のがん転移抑制作用を評価することができる。
本発明の特定タンパク質は、がん特異的抗原として、がんワクチン等の製造、およびそれを用いた治療への適用が可能である。がん特異的抗原は、がん細胞を認識して死滅させるのに有効なT細胞の発生を誘導できる。一例として、本発明の特定タンパク質(がん特異的抗原)の部分配列を含むがん抗原ペプチドを人工的に合成し、当該ペプチドを皮下または皮内に注射して体内の樹状細胞に前記特定タンパク質(前記特異的抗原)を認識させ、当該樹状細胞からT細胞に情報が伝達されることで細胞障害性T細胞を誘導し、それを用いてがんを治療するペプチドワクチン療法への適用が挙げられる。別の例として、末梢血から採取した単球をサイトカインによって分化させ、抗原提示能力が強い樹状細胞にした後、本発明の特定タンパク質(がん特異的抗原)を認識させる、または本発明の特定ポリヌクレオチド(がん特異的抗原をコードするポリヌクレオチド)を樹状細胞に直接導入することで細胞障害性T細胞を誘導し、がんを治療する樹状細胞ワクチン療法への適用も可能である。さらに別の例として、前記特異的抗原を認識した樹状細胞とリンパ球とを共培養することによって誘導、増殖させた細胞障害性T細胞を用いた活性化リンパ球療法への利用も可能である。また近年では、リンパ球に特定の抗原に対する抗原受容体遺伝子(例えば、がん特異的抗原を認識するT細胞受容体(T-Cell receptor[TCR])や、がん細胞表面に発現している標的抗原に対するキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor[CAR]))を遺伝子導入/発現させ、がん抗原特異的に改変した細胞障害性T細胞を利用する治療法の開発が進められている。
なお本発明の特定タンパク質および特定ポリヌクレオチドは、細胞障害性T細胞が有するT細胞受容体の同定にも利用可能であり、これにより、抗腫瘍効果が向上した遺伝子導入T細胞を作製できる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は当該例に限定されるものではない。
実施例1 肺がん、胃がん、扁平上皮がん(口腔がん)、大腸がん、乳がん患者からの血中循環がん細胞(CTC)の検出および、がん関連遺伝子変異の解析
(1)インフォームドコンセントを得たステージIVの各がん患者から、血液を採取した。
(2)(1)で採取した血液に、生理食塩水、白血球・血小板結合剤(RosetteSep、StemCell Technologies社製)を添加することで、希釈血液試料を調製した。
(3)調製した希釈血液試料を、密度1.084g/mLの密度勾配溶液に重層し、2000×gで10分間、室温にて遠心後、上清を回収した。
(4)(3)で回収した上清に、0.9%(w/v)塩化アンモニウムと0.1%(w/v)炭酸水素カリウムと含む溶血液で30mLまでメスアップし、300×gで10分間、室温にて遠心分離した。当該操作により上清に混入した赤血球が破壊され、分離回収した細胞の観察が良好になる。
(5)上清を除去後、分離回収した細胞を含むペレットを、300mMマンニトールを含む溶液30mLで再懸濁し、300×gで5分間、室温にて遠心分離後、上清を除去した。再度300mMマンニトールを含む溶液30mLで再懸濁した後、300×gで5分間、室温にて遠心分離し、上清を除去した。当該操作は、血液成分を除去し、標的細胞を濃縮するための操作である。
(6)(5)で上清を除去した細胞を含む懸濁液を図1および2に示す細胞回収装置1000に展開し、交流電圧を3分間印加することで前記装置が有する保持部60に細胞を保持させた。本実施例で用いた細胞回収装置100は、直径30μmで深さ40μmの微細孔からなる微細孔を複数有した絶縁体12と前記絶縁体と下部電極基板の間に設置した遮光性のクロム膜(遮光部材11)とからなる保持部60を、厚さ1mmのスペーサー20と下部電極基板31とで挟んだ構造であり、スペーサー20を上部電極基板31と下部電極基板32とで挟んだ構造である。
(7)(6)の条件で交流電圧を印加しながら、0.01(w/v)%のポリ-L-リジンを含む300mMマンニトール水溶液を導入し、3分間静置後、前記交流電圧の印加を停止し、前記水溶液を吸引除去した。
(8)50%(v/v)エタノールと1%(w/v)ホルムアルデヒドを含む水溶液(以下、細胞膜透過試薬)を導入し、10分間静置することで、細胞膜を透過させ、保持部60に導入した細胞を標本化した。
(9)細胞膜透過試薬を吸引除去し、PBS(Phosphate buffered saline)を導入することで、残留した細胞膜透過試薬を洗浄した。
(10)細胞膜内外のタンパク質と特異的に結合可能な蛍光標識された抗体と、細胞核を標識する蛍光試薬(DAPI:4’,6-DiAmidino-2-PhenylIndole(同仁化学研究所社))を含む水溶液(以下、標識試薬)を導入し、30分間静置した。なお前記標識された抗体として、白血球表面に発現しているCD45に対する抗体(Beckman-Coulter社)と、上皮系細胞の細胞質内で発現しているCK(サイトケラチン)に対する抗体(Miltenyi Biotec社)を用いている。
(11)標識試薬を吸引除去し、PBSを導入することで、残留した標識試薬を除去した。
(12)(11)で標識した細胞を含む細胞回収装置100を蛍光顕微鏡のステージ上に載置した後、複数の保持部60に捕捉した全ての細胞を観察するために保持部60全体の撮像を行なった。これにはコンピューター制御式電動ステージ、電子増倍型冷却CCDカメラ(EMCCD、FLOVEL社製ADT-100)を装備した蛍光顕微鏡(Olympus社製IX71)を用いた。画像取得及び解析ソフトウェアにはLabVIEW(National Instruments社)を用いた。
(13)(12)で撮像した細胞の中から、
細胞核を有していることを示すDAPIで染色されている細胞(DAPI陽性)であり、
白血球で発現しているCD45に対する抗体で染色されていない細胞(CD45陰性)であり、
上皮系の性質を有していることを示すCKに対する抗体で染色されていない細胞(CK陰性)であり、かつ赤血球や白血球と比較して明視野像での細胞の形状が大きい細胞を標的細胞(がん細胞)として計数した。
(14)細胞回収装置100の上部電極基板32を取り外した後、蛍光顕微鏡のステージ上へ載置し、保持部60内に保持された、(13)で計数済の標的細胞を円筒状の細管により吸引し、PCRチューブ内へ標的細胞を吐出した。
(15)標的細胞の遺伝子ホットスポット解析を、当該標的細胞における変異を同定するために実行した。具体的には前記標的細胞から抽出したゲノムDNAを1細胞全ゲノム増幅キット(Silicon Biosystems社製Ampli1)により増幅し、得られたPCR産物をゲル精製し、IonPGMシーケンサーおよびIon AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2キット(いずれもThermo Fisher社)によって50種のがん関連遺伝子における変異を解析した。
検出されたがん関連遺伝子変異は、既知のもの、および未知のものが混在していた。なお、がん細胞株を用いたシークエンス結果の質が担保されていることを確認した遺伝子変異を、解析した個々のCTCが有しているがん関連遺伝子変異とした。その遺伝子変異より、後述の比較例1および2で得られた遺伝子変異を除いたものが、CTC固有の遺伝子変異であると同定した。それらは全て未知の遺伝子変異であり、当該遺伝子変異が形質に与える影響は未知であった。変異のタイプはミスセンス変異あるいはインフレーム変異であり、タンパクレベルで影響を与える変異である可能性が示唆された。また、SIFTアルゴリズムに基づく同遺伝子変異のタンパク機能への影響予測(Nat Protoc.、4(2009)、1073-1081)では、タンパク機能に影響を与える遺伝子変異である事が示唆された。
本例で取得した遺伝子変異(塩基置換)および当該変異に相当するタンパク質変異(アミノ酸置換)の位置を表1に示す。表1に示す変異(塩基置換およびアミノ酸置換)はいずれもステージIVのがん患者特有の変異であることから、前記変異を検出することでがん患者の予後予測が可能であることが示唆される。
Figure 0007306618000001
比較例1 がん原発組織およびがん転移組織における遺伝子変異
実施例1(1)において採血したがん患者からがん原発組織を採取した。
がん原発組織および転移組織の切除検体、あるいはホルマリン固定パラフィン包埋組織検体より、QIAamp DNA FFPE Tissue Kit (Qiagen社製品)を用いて抽出したゲノムDNAを、上述のIonPGM(サーモフィッシャー)Ion AmpliSeqTM Cancer Hotspot Panel v2によって50種のがん関連遺伝子変異を解析した。
比較例2 正常の血球(白血球)における遺伝子変異
実施例1(1)において採血したがん患者から白血球を採取した。
患者末梢血よりDNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen社製品)を用いて抽出したゲノムDNAを、上述のIonPGM(サーモフィッシャー)Ion AmpliSeqTM Cancer Hotspot Panel v2によって50種のがん関連遺伝子変異を解析した。
実施例2 抗体・プローブ作成
本発明の因子に対する抗体を取得するための感作抗原として使用されるタンパク質又はその断片は、ヒト、マウス、ラットなど、その由来となる動物種に制限されない。しかし抗体産生細胞を作製する際の細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択することが好ましく、一般的には、哺乳動物由来のタンパク質が好ましく、特にヒト由来のタンパク質が好ましい。
まず公知の方法にしたがい、感作抗原を動物に免疫した。一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline)、生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに免疫応答の増強に有用なアジュバント(Adjuvant)を適量混合し、乳化後、哺乳動物に4~21日毎に数回投与する。続いて、免疫した哺乳動物の血清中に所望の抗体が上昇するのを確認した後、哺乳動物から免疫細胞を採取するが、好ましい免疫細胞としては、特に脾臓細胞由来のB細胞が挙げられる。 免疫細胞懸濁液は、脾臓内から注射針とピンセットを用いてRPMI1640培地に取り出して調製した。
続いて、前記免疫細胞とミエローマ細胞を融合し、目的の抗体を産生するハイブリドーマを作製した。具体的には、前記細胞融合は、細胞融合促進剤の存在下で実施される。融合促進剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用される。免疫細胞とミエローマ細胞との混合比は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1~10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他には細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000~6000程度)を通常30~60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって融合細胞を作製する。続いて、適当な培養液を添加した後、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことにより融合細胞の洗浄を行う。次に前記融合細胞をHAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培養液)に懸濁し、1ウェルあたり200μLとなるように96ウエルプレートに播種した。7日間、37℃、5%CO環境にて培養することで、脾臓細胞とミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
前記ハイブリドーマから得られた抗体は、モノクローナル抗体である。転移形成能を有するがん細胞の検出において、抗体は直接的または間接的に標識される。直接的な標識には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンおよびフィコエリスリンなど蛍光色素を抗体に結合させる。抗体と蛍光色素との結合には、抗体のアミノ基と反応する活性エステル(N-ヒドロキシスクシンイミド活性エステル)を導入した化合物や、SH基を標識に利用する場合は、マレイミド基を導入した低分子を使用する。別の手法として、検出可能なシグナルをもたらす蛍光タンパク質および酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)を抗体に結合してもよい。間接的な標識には、抗体に特異的な第2の抗体もしくは特異的な結合対(ビオチン-アビジン等)を用いて標識することで目的の細胞を検出する。
実施例3 予後予測
(1)インフォームドコンセントを得た癌患者から、治療経過に合わせて血液を数回採取した。
(2)(1)で採取した血液を溶血法、比重分離法、磁気ビーズ分離法等の1つ、もしくいずれかの組合せを用いることにより、血液内のCTCを濃縮した。
(3)濃縮後の細胞群を、生理食塩水、(Phosphate-Buffered Saline)、マンニトール等の細胞を等張に調整された糖溶媒に懸濁した。
(4)前記懸濁液をガラススライド、もしくは細胞と同サイズのマイクロウェルが多数配置されたようなマイクロウェルチップに展開した標本を作製した。
(5)ホルムアルデヒドやエタノール等に例示される細胞固定液、膜透過液を導入し、約10分間静置することで、細胞膜を透過させ、保持部に導入した細胞を標本化した。
(6)細胞固定、膜透過液を吸引除去し、PBS(Phosphate buffered saline)を導入することで、残留した細胞固定、膜透過液を洗浄した。
(7)がんの転移形成に関与する因子に結合する蛍光標識された抗体と、細胞核を標識する蛍光試薬(DAPI:4’,6-diamidino-2-phenylindole)を含む水溶液を導入し、30分間静置した。なお、混入した白血球の標識には、白血球表面に発現しているCD45に対する抗体を用いた。
(8)標識液を吸引除去し、PBSを導入することで、残留した標識液を除去した。
(9)標識後の標本(ガラススライド、マイクロウェルチップ)を蛍光顕微鏡のステージ上に載置した後、複数の保持孔に捕捉した全ての細胞を観察するために保持部全体の撮像を行なった。これにはコンピューター制御式電動ステージ、電子増倍型冷却CCDカメラ(EMCCD;FLOVEL,ADT-100)を装備した蛍光顕微鏡(IX71; Olympus)を用いた。画像取得及び解析ソフトウェアにはLabVIEW(National Instruments)を用いた。
(10)(9)で撮像した細胞の中から、
細胞核を有していることを示すDAPIで染色されている細胞(DAPI陽性)であり、
白血球で発現しているCD45に対する抗体で染色されていない細胞(CD45陰性)であり、がん転移形成に関与する因子の対する抗体で染色された標的細胞(DAPI陽性/CD45陰性/がん転移因子陽性細胞)を計数した。
予後予測の閾値は、健常者からの偽陽性数(ベースライン)、CTC数と無増悪生存期間および全生存期間の評価にて決定する。
例えば、進行性乳がん、前立腺がん、大腸がんにて米国FDA認可を取得しているCellSearchシステムでは、ベースライン若しくは処置終了時の患者において5以上CTCが検出された場合、無増悪生存期間および全生存期間の中央値が短く、CTC数が5個未満の患者は最長の無増悪生存期間および全生存期間の中央値を示した。加えて、処置前のCTC数が5個以上の患者において、処置後に5個未満に低下した群は、5個以上のCTC数を維持した患者より長い無増悪および全生存期間の中央値を有した(Cristofanilli M et al.、N Engl J Med、351(2004)、781-791)。
実施例4 がん細胞株への遺伝子導入
(1)実施例1で取得した遺伝子変異のうち、SMAD4遺伝子およびPIK3CA遺伝子を選択し、それぞれ野生型(SMAD4遺伝子:配列番号4、PIK3CA遺伝子:配列番号6)と変異型(SMAD4遺伝子:配列番号11、PIK3CA遺伝子:配列番号14)のcDNAをそれぞれ合成した。合成したcDNAはシーケンスにより配列を確認した。なおこれらの操作はユニーテック社に委託した。
(2)レトロウイルスベクターの骨格としてpMXs-Neoベクターを用い、(1)で合成したcDNAをそれぞれ挿入したベクターを作製した。また、pMX-Neoを基に、Neo(ネオマイシン)遺伝子を緑色蛍光タンパク質(EGFP)遺伝子に置換した空ベクターを作製した。作製したベクターは、0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動により前記配列が挿入されていることを確認した。また、シーケンスにより挿入した配列を確認した。なおこれらの操作はユニーテック社に委託した。
(3)Retrovirus Packaging Kit Ampho(タカラバイオ社)を用い、(2)で作製したベクターをそれぞれパッケージング細胞である293T細胞に形質導入し、48時間培養後に採取した培養液上清をフィルターろ過することにより、各種レトロウイルス液を得た。
(4)ヒト大腸がん細胞株WiDRに対しレトロウイルス感染を行ない、前記遺伝子をそれぞれ形質導入した。レトロウイルス感染は、WiDR細胞を6ウェルプレートに播種し、24時間後に(3)で取得したレトロウイルス液をそれぞれ2倍希釈となるようウェルに加え、そのまま48時間培養することにより行なった。前記方法により、5種の遺伝子導入WiDR細胞(野生型PIK3CA遺伝子導入WiDR細胞、変異型PIK3CA遺伝子導入WiDR細胞、野生型SMAD4遺伝子導入WiDR細胞、変異型SMAD4遺伝子導入WiDR細胞およびEGFP遺伝子(空ベクター)導入WiDR細胞)を取得した。
実施例5 遺伝子導入細胞の形態観察
実施例4で取得した5種の遺伝子導入WiDR細胞と、ネガティブコントロールとして遺伝子導入未実施のWiDR細胞をそれぞれ接着細胞培養用24ウェルプレートに播種し、96時間培養後、正立顕微鏡(Olympus社製IX71)を用いて細胞形態を観察した。
取得した細胞形態画像を図4に示す。ネガティブコントロールである遺伝子導入未実施のWiDR細胞は、敷石状に隣接して増殖していた(腫瘍組織で主に観察される上皮細胞様形態、図4(1))。EGFP遺伝子(空ベクター)(図4(2))、野生型PIK3CA遺伝子(図4(3))および変異型PIK3CA遺伝子(図4(4))を導入したWiDR細胞は、いずれもネガティブコントロール(図4(1))と同様に上皮細胞様形態を取っていた。また、野生型SMAD4遺伝子(図4(5))および変異型SMAD4遺伝子(図4(6))を導入したWiDR細胞は、ともに丸く浮遊系の形態となって増殖していた。SMAD4は腫瘍組織から血管内へ浸潤する際、上皮間葉転換により間葉系細胞へ形態変化させる因子であることが示唆された。
100:細胞回収装置
10:細胞保持手段
11:遮光部材
12:絶縁体
11a・12a:貫通孔
20:スペーサー
21:導入口
22:排出口
23:貫通部
31・32:電極基板
40:導線
50:信号発生器
60:保持部
70:細胞
71:標的細胞(CTC)
80:誘電泳動力
90:接着物質
200:蛍光顕微鏡
300:回収装置
400:回収チューブ

Claims (10)

  1. 血液試料において、血中循環がん細胞由来のタンパク質のアミノ酸置換を検出する工程を含む、がん患者における予後予測するための方法であって、
    前記アミノ酸置換が、以下の(1)から(4)のうち少なくともいずれか1つの置換である、前記法。
    (1)配列番号1の256番目のグルタミンがロイシンに置換
    (2)配列番号2の2684番目のグルタミンがロイシンに置換
    (3)配列番号2の2686番目のフェニルアラニンがバリンに置換
    (4)配列番号3の1066番目のアラニンがスレオニンに置換
  2. 前記血液試料からがん細胞を回収する工程をさらに含み、前記検出工程が、がん細胞が発現するタンパク質のアミノ酸置換を検出する、請求項1に記載の法。
  3. 血液試料からがん細胞を回収する工程を、血液試料中に含まれるがん細胞を保持可能な保持部を複数設けた細胞保持手段と誘電泳動力を発生させる手段とを備えた細胞回収装置を用いて行なう、請求項2に記載の方法。
  4. 血液試料において、血中循環がん細胞由来のポリヌクレオチドの塩基置換を検出する工程を含む、がん患者における予後予測するための方法であって、
    前記塩基置換が、以下の(I)から(IV)のうち少なくともいずれか1つの置換である、前記法。
    (I)配列番号1の256番目のグルタミンに対応するコドンがロイシンに対応するコドンに置換
    (II)配列番号2の2684番目のグルタミンに対応するコドンがロイシンに対応するコドンに置換
    (III)配列番号2の2686番目のフェニルアラニンに対応するコドンがバリンに対応するコドンに置換
    (IV)配列番号3の1066番目のアラニンに対応するコドンがスレオニンに対応するコドンに置換
  5. 血液試料において、血中循環がん細胞由来のポリヌクレオチドの塩基置換を検出する工程を含む、がん患者における予後予測するための方法であって、
    前記塩基置換が、以下の(i)から(iv)のうち少なくともいずれか1つの置換である、前記法。
    (i)配列番号4の1305番目のアデニンがチミンに置換
    (ii)配列番号5の8436番目のアデニンがチミンに置換
    (iii)配列番号5の8441番目のチミンがグアニンに置換
    (iv)配列番号6の3353番目のグアニンがアデニンに置換
  6. 前記血液試料からがん細胞を回収する工程をさらに含み、前記検出工程が、がん細胞においてポリヌクレオチドの塩基置換を検出する、請求項又はに記載の法。
  7. 血液試料からがん細胞を回収する工程を、血液試料中に含まれるがん細胞を保持可能な保持部を複数設けた細胞保持手段と誘電泳動力を発生させる手段とを備えた細胞回収装置を用いて行なう、請求項に記載の法。
  8. 請求項1~3のいずれか1項に記載の方法に用いるための抗体、またはそのフラグメントであって、以下の(1)から(4)のいずれかのポリペプチドからなる、がんの転移形成能に関与するタンパク質を特異的に認識する抗体、またはそのフラグメント
    (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、少なくとも配列番号1の256番目のグルタミンがロイシンに置換した前記ポリペプチド
    (2)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、少なくとも配列番号2の2684番目のグルタミンがロイシンに置換した前記ポリペプチド
    (3)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、少なくとも配列番号2の2686番目のフェニルアラニンがバリンに置換した前記ポリペプチド
    (4)配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、少なくとも配列番号3の1066番目のアラニンがスレオニンに置換した前記ポリペプチド
  9. 前記置換を有さないタンパク質を認識しない、請求項8に記載の抗体、またはそのフラグメント。
  10. 請求項4~7のいずれか1項に記載の方法に用いるためのプローブであって、配列番号4~6のいずれか1つの塩基配列において、以下の(i)から(iv)のうち少なくともいずれか1つの置換を有する、塩基配列の遺伝子の存在を測定するためのプローブ
    (i)配列番号4の1305番目のアデニンがチミンに置換
    (ii)配列番号5の8436番目のアデニンがチミンに置換
    (iii)配列番号5の8441番目のチミンがグアニンに置換
    (iv)配列番号6の3353番目のグアニンがアデニンに置換
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