以下、図面を参照して、本発明の様々な実施形態に係るキャブマウントについて説明をする。
本実施形態において、キャブマウントは、車両のキャブ(ボディ)を、車両のフレーム(シャシ)に対して連結する防振装置である。以下の各実施形態に関する説明において、実質的に同一の部分は、同一符号を用いることによって、適宜、その説明を省略する。
以下の説明において、軸方向とは、キャブマウントの軸線が延在する方向をいい、本実施形態では、キャブマウントの軸線O(以下、「軸線O」ともいう。)は、後述の軸部材5の軸線と同軸である。本実施形態において、軸線Oは、鉛直方向に対して平行に延在している。なお、本実施形態において、軸方向一方側とは、鉛直方向上側(単に「上側」ともいう。)をいう。また、本実施形態において、軸方向他方側とは、鉛直方向下側(単に「下側」ともいう。)をいう。さらに、軸直方向とは、軸方向に対して直交する方向をいい、径方向の意味を含む。なお、本実施形態において、軸直方向外側とは、軸線Oから遠い側(「径方法外側」ともいう。)をいう。また、本実施形態において、軸直方向内側とは、軸線Oに近い側(「径方法内側」ともいう。)をいう。
図1は、キャブマウントを、軸線Oを含む一軸方向断面で示す図である。本実施形態では、前記一軸方向断面は、前後方向断面である。前記前後方向断面は、前記キャブマウントを車両に装着した時に、車両の前後方向に延在する軸方向断面である。また、図2は、キャブマウントを、軸線Oを含む他の断面で示す。前記他の断面は、上側又は下側からみた平面視において、前記一断面と直交する断面である。本実施形態では、前記他の断面は、左右方向断面である。前記左右方向断面は、前記キャブマウントを車両に装着した時に、車両の左右方向に延在する軸方向断面である。
図1中、符号1Aは、本発明の第1実施形態に係るキャブマウントである。
図1に示すように、キャブマウント1Aは、フレーム2を挟み込む、アッパーマウント部3と、ロアーマウント部4と、を備えている。
本実施形態において、アッパーマウント部3は、フレーム2よりも上側に配置されている。本実施形態において、アッパーマウント部3よりも上側には、キャブ6が配置されている。本実施形態において、キャブ6は、上部プレート7を介してアッパーマウント部3に取り付けられている。本実施形態では、上部プレート7は、第1上部プレート7aおよび第2上部プレート7bの、2つの上部プレートで構成されている。ただし、上部プレート7は、少なくとも1つの上部プレートで構成することができる。
また、本実施形態において、ロアーマウント部4は、フレーム2よりも下側に配置されている。本実施形態において、ロアーマウント部4よりも下側には、下部プレート8が取り付けられている。本実施形態では、下部プレート8は、1つの下部プレートで構成されている。ただし、下部プレート8は、少なくとも1つの下部プレートで構成されていてもよい。
また、キャブマウント1Aは、アッパーマウント部3およびロアーマウント部4を貫通する軸部材5と、を備えている。
本実施形態では、アッパーマウント部3およびロアーマウント部4は、予め圧縮された状態でフレーム2に取り付けられている。本実施形態では、フレーム2には、下側に突出する凹部2aが形成されている。本実施形態では、アッパーマウント部3の下部は、フレーム2の凹部2aの内側面2f11に配置されている。本実施形態では、フレーム2には、凹部2aを軸方向の周りに取り囲む平坦部2bが形成されている。本実施形態では、凹部2aの内側面2f11は、平坦部2bの上端面2f12に連なる。また、本実施形態では、平坦部2bの下端面2f22は、凹部2aの外側面2f21に連なる。本実施形態では、ロアーマウント部4は、凹部2aの外側面2f21の下端面2f211に配置されている。
本実施形態において、軸部材5は、フレーム2とともにアッパーマウント部3およびロアーマウント部4を貫通している。また、本実施形態において、軸部材5は、中空の軸部材である。本実施形態では、軸部材5は、ボルトBおよびナットNを備えている。ボルトBは、キャブ6および上部プレート7から下部プレート8を貫通している。ナットNは、ボルトBの先端にねじ付けられている。アッパーマウント部3およびロアーマウント部4は、ナットNをボルトBにねじ込むことによって、互いに軸方向に接近する。これにより、アッパーマウント部3およびロアーマウント部4は、それぞれ、フレーム2に対して予め圧縮された状態に取り付けられる。なお、本実施形態において、ボルトBとキャブ6との間およびナットNと下部プレート8との間には、それぞれ、ワッシャWを介在させている。なお、本実施形態では、ボルトBを上側から下側に貫通させてナットNを取り付けているが、車両への組付け作業性等を考慮して、ボルトBを下側から上側に貫通させてナットNを取り付けることも可能である。
アッパーマウント部3は、軸部材5を軸方向の周りに取り囲む弾性体31と、弾性体31よりも剛性が高い高剛性部材32とを備えている。
本実施形態において、弾性体31は、ゴムによって形成されている。但し、弾性体31は、ゴムに限定されるものではない。例えば、弾性体31は、ゴム弾性を有する材料によって形成することができる。また、本実施形態において、高剛性部材32は、弾性体31よりもばね剛性が高い材料によって形成されている。こうした材料としては、例えば、ナイロン6,6等のポリアミド系の合成樹脂が挙げられる。ただし、高剛性部材32は、弾性体31を形成する弾性材料よりも剛性が高い材料であれば、様々な材料を使用することができる。例えば、高剛性部材32は、ガラス繊維、炭素繊維等を含む合成樹脂によって形成することも可能である。なお、本実施形態では、ロアーマウント部4は、前記弾性材料のみによって形成されている。
高剛性部材32は、弾性体31を介して軸部材5に対して軸直方向に間隔を置いて配置されている。
高剛性部材32は、軸部材5との間に、当該軸部材5との間に介在させた弾性体31からなる弾性体領域部31Aを形成している。本実施形態では、弾性体領域部31Aは、軸部材5と高剛性部材32との間に、弾性体31の一部を介在させることによって形成されている。本実施形態において、高剛性部材32は、弾性体31に埋設されている。具体例としては、弾性体31は、高剛性部材32をインサート品として、ゴムを用いて射出形成することができる。
本実施形態では、弾性体31は、軸方向の周りを取り囲む円筒形状である。本実施形態において、弾性体31は、軸線Oから軸直方向の間隔(外径半径)がr31の円筒形状である。即ち、本実施形態において、弾性体31は、軸部材5と同軸に配置されている。本実施形態では、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、弾性体31によって被覆されている。また、本実施形態のように、高剛性部材32の軸直方向外側面32f2は、弾性体31によって被覆されていることが好ましい。この場合、アッパーマウント部3は、フレーム2の凹部2aの内側面2f11に対して安定した状態に配置することができる。ただし、高剛性部材32の軸直方向外側面32f2は、弾性体31によって被覆されていなくてもよい。
また、本実施形態では、高剛性部材32の上側面32f3は、フレーム2の凹部2aの上端(本実施形態では、平坦部2bの上端面2f12)と同一の高さ(軸方向高さ)である。ただし、高剛性部材32の上側面32f3は、フレーム2の凹部2aの上端面よりも上側とすることができる。或いは、高剛性部材32の上側面32f3は、フレーム2の凹部2aの上端面よりも下側(凹部2aの内部)とすることができる。
通常路面での走行では、キャブマウント1Aに入力される荷重は、車両上下方向の荷重である。この荷重は、主として、弾性体31によって吸収される。また、車両の加減速時に生じる得る前後方向の荷重、車両の旋回時に生じ得る左右方向の荷重は、主として、弾性体31によって吸収されるが、荷重入力が大きい場合、弾性体31(弾性体領域部31A)から高剛性部材32を経て、最終的に、主として、当該高剛性部材32によって吸収される。また、悪路での走行において、大きな荷重が入力される場合も同様である。
さらに、本発明によれば、軸方向断面視において、軸部材5と高剛性部材32との間に形成された弾性体領域部31Aの断面積は、軸方向の周りの少なくとも一部で変化している。
言い換えれば、弾性体領域部31Aのボリュームを軸方向の周りの少なくとも一部で変化させている。ここで、弾性体領域部31Aのボリュームは、軸部材5と高剛性部材32との間に介在する弾性体31の量をいう。図1および2では、弾性体領域部31Aのボリュームは、軸方向断面視において、弾性体領域部31Aの断面積S31Aで示されている。
図1を参照すれば、符号S31A1は、軸部材5よりも前側の弾性体領域部31A(以下、「前側弾性体領域部31A1」ともいう。)の断面積である。また、符号S31A2は、軸部材5よりも後側の弾性体領域部31A(以下、「後側弾性体領域部31A2」ともいう。)の断面積である。前側弾性体領域部31A1および後側弾性体領域部31A2は、その伸張または圧縮によって、主として、軸直方向に作用する。本実施形態では、前側弾性体領域部31A1および後側弾性体領域部31A2は、車両に装着した後、主として、車両加速時または車両減速時に作用する。本実施形態では、前側弾性体領域部31A1の断面積S31A1と、後側弾性体領域部31A2の断面積S31A2とは等しい。
図2を参照すれば、符号S31A3は、軸部材5よりも右側の弾性体領域部31A(以下、「右側弾性体領域部31A3」ともいう。)の断面積である。また、符号S31A4は、軸部材5よりも左側の弾性体領域部31A(以下、「左側弾性体領域部31A4」ともいう。)の断面積である。右側弾性体領域部31A3および左側弾性体領域部31A4も、その伸張または圧縮によって、主として、軸直方向に作用する。本実施形態では、右側弾性体領域部31A3および左側弾性体領域部31A4は、車両に装着した後、主として、車両旋回時に作用する。本実施形態では、右側弾性体領域部31A3の断面積S31A3と、左側弾性体領域部31A4の断面積S31A4とは等しい。
本実施形態では、右側弾性体領域部31A3の断面積S31A3と、左側弾性体領域部31A4の断面積S31A4とは、いずれも、前側弾性体領域部31A1の断面積S31A1と、後側弾性体領域部31A2の断面積S31A2とのいずれよりも大きい。このように、本実施形態では、車両前後方向において、弾性体領域部31Aのボリュームを減少させることによって、加減速時におけるストッパ性能を重視した剛性のチューニングを容易に行うことができる。また、本実施形態では、車両左右方向において、弾性体領域部31Aのボリュームを増加させることによって、車両旋回時における制振性能を重視した耐久性を優れた剛性のチューニングを容易に行うことができる。
また、本発明によれば、本実施形態と反対に、前側弾性体領域部31A1の断面積S31A1と、後側弾性体領域部31A2の断面積S31A2とは、いずれも、右側弾性体領域部31A3の断面積S31A3と、左側弾性体領域部31A4の断面積S31A4とのいずれよりも大きくすることができる。この場合、車両前後方向において、弾性体領域部31Aのボリュームを増加させることによって、車両旋回時における制振性能を重視した耐久性を優れた剛性のチューニングを容易に行うことができる。また、この場合、車両左右方向において、弾性体領域部31Aのボリュームを減少させることによって、加減速時におけるストッパ性能を重視した剛性のチューニングを容易に行うことができる。
即ち、本実施形態によれば、軸部材5と高剛性部材32との軸直方向の間隔Daを変更するだけの容易な設定変更によって、車両の前後方向および左右方向に沿って剛性を変化させつつ、当該剛性の変化を軸方向の周りで所望の変化にチューニングすることができる。したがって、本実施形態に係るキャブマウント1Aによれば、軸直方向に沿って剛性を変化させつつ、当該剛性の変化を軸方向の周りで容易にチューニングすることが可能である。
また、本発明によれば、高剛性部材32は、環状部材であることが好ましい。この場合、軸方向の周りでの、剛性のチューニングがさらに容易である。
ここで、図3Aは、キャブマウント1Aに係る高剛性部材32として適用可能な、当該高剛性部材32の一例を概略的に示す平面図である。また、図3Bは、図3AのX-O-Y断面図である。ここで、図3Aを参照すれば、X-O断面と、Y-O断面とは、平面視において、互いに直交する断面であって、軸線Oで繋がる断面である。
図3Aを参照すれば、高剛性部材32は、平面視において、円形の外形形状を有している。詳細には、高剛性部材32は、平面視において、軸線Oを中心とする半径r32oの真円の外径形状を有している。また、高剛性部材32は、平面視において、楕円形の内径形状を有している。符号D32は、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1と、軸線Oと、の間の間隔である。符号D32xは、X-O方向(X-O軸線上)の間隔である。また、符号D32yは、Y-O方向(Y-O軸線上)の間隔である。本実施形態では、間隔D32xは、間隔D32yよりも短い。例えば、間隔D32xおよび間隔D32yは、D32x:D32y=1.0:1.2の比率で構成することができる。
本実施形態では、高剛性部材32の内径形状は、楕円形状である。本実施形態では、X-O方向が短軸である。また、本実施形態では、Y-O方向が長軸である。ただし、高剛性部材32の内径形状は、楕円形状に限定されるものではない。例えば、高剛性部材32の内径形状は、長軸方向の端点に向かって先細りする紡錘形とすることができる。
図4は、図1のA-A断面図である。ここで、A-A断面は、高剛性部材32の上側面32f3を含む断面である。
本実施形態では、高剛性部材32がO-X断面が前後方向断面となるように、弾性体31に埋設されている。この場合、高剛性部材32を所望の向きに方向付けて弾性体31に埋設するだけで、本実施形態のように、弾性体領域部31Aのボリュームを車両前後方向で増加させることができる。また、高剛性部材32は、当該高剛性部材32がO-X断面を左右方向断面となるように、弾性体31に埋設することができる。この場合も、高剛性部材32を所望の向きに方向付けて弾性体31に埋設するだけで、弾性体領域部31Aのボリュームを車両左右方向で増加させることができる。したがって、本実施形態のように、高剛性部材32を、環状部材とすれば、軸方向の周りでの、剛性のチューニングがさらに容易である。
また、本発明によれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、軸方向断面視において、軸方向に対して平行に延在しているものとすることができる。この場合、高剛性部材32の形状がシンプルなものとなることから、当該高剛性部材32を簡易に製造することができる。したがって、この場合、簡易に製造可能なキャブマウントとなる。
図3Bを参照すれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、軸方向に対して平行である。この場合、図1および図2に示すように、軸部材5の軸直方向外側面5fと高剛性部材32の軸直方向内側面32f1との間の軸直方向間隔Daは、軸方向で一定となる。このため、本実施形態によれば、高剛性部材32の形状がシンプルなものとなることから、当該高剛性部材32を簡易に製造することができる。したがって、本実施形態に係るキャブマウント1Aは、簡易に製造可能なキャブマウントとなる。
また、高剛性部材32を環状部材した場合、当該高剛性部材32の内径形状は、様々に変更することができる。図5は、キャブマウント1Aに係る高剛性部材32として適用可能な、当該高剛性部材32の他の例を概略的に示す平面図である。
図5を参照すれば、この例の高剛性部材32は、平面視において、複数の溝部32aが軸方向の周りに間隔を置いて配置された内径形状を有している。図5に示すように、溝部32aは、平面視において、軸線Oを中心とする半径r32iの真円に対して、径方向外向きに窪んでいる。この例では、4つの溝部32aが、軸線Oを中心とする互いに直交する位置に形成されている。この場合、4つの溝部32aの径方向深さD32aを適宜、変更すれば、軸方向の周りでの、剛性のチューニングが容易である。
ところで、上述したキャブマウント1Aは、平面視において、互いに直交する方向での、剛性のチューニングを行った実施形態である。しかしながら、本発明によれば、当該チューニングは、軸線Oを含んだ一断面の、当該軸線Oを挟んだ両側での、剛性のチューニングを行う場合にも適用することができる。
図6は、本発明の他の実施形態に係るキャブマウント1Bを、軸線Oを含む一断面で概略的に示す図である。
図6に示すように、本実施形態では、前側弾性体領域部31A1のボリューム(S31A1)と、後側弾性体領域部31A2のボリューム(S31A2)が異なる。本実施形態では、前側弾性体領域部31A1のボリュームが後側弾性体領域部31A2のボリュームよりも小さい。このように、本実施形態では、車両前側にいて、弾性体領域部31Aのボリュームを減少させることによって、加減速時におけるストッパ性能を重視した剛性のチューニングを容易に行うことができる。また、本実施形態では、車両後側において、弾性体領域部31Aのボリュームを増加させることによって、車両旋回時における制振性能を重視した耐久性を優れた剛性のチューニングを容易に行うことができる。なお、本発明によれば、前側弾性体領域部31A1のボリューム(S31A1)が後側弾性体領域部31A2のボリューム(S31A2)よりも大きくすることもできる。また、本発明によれば、右側弾性体領域部31A3のボリューム(S31A3)と、左側弾性体領域部31A4のボリューム(S31A4)とを異ならせることもできる。
また、本発明によれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、軸方向に沿って変化しているものとすることができる。この場合、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1を軸方向に沿って変化させることによって、前記剛性の変化を効果的にチューニング可能となる。特に、本実施形態のように、高剛性部材32が弾性体31の上側または下側のいずれか一方側に片寄って配置した場合、弾性体領域部31Aのボリュームが弾性体31の他方側側に向かうにしたがって増加させることが好ましい。この場合、軸部材5の傾きを考慮した剛性の変化にチューニングできることから、剛性のチューニングをより効果的に行うことができる。
図7は、本発明の他の実施形態に係るキャブマウント1Cであって、当該キャブマウント1Cのアッパーマウント部3の一部をその周辺とともに、軸線Oを含む一断面で拡大して示す図である。
本実施形態において、高剛性部材32は、弾性体31の下側に片寄って配置している。これに対して、本実施形態では、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、上側に向かうしたがって軸線Oから離間するように傾斜している。この場合、弾性体31の上側部分の剛性を、当該弾性体31の剛性に維持しつつ、弾性体31の下側部分では、軸部材5の傾きを考慮した剛性の変化にチューニングすることができる。したがって、本実施形態によれば、弾性体領域部31Aのボリュームが上側に向かうにしたがって増加することによって、剛性のチューニングをより効果的に行うことができる。本実施形態では、高剛性部材32の上側面32f3から下側に向かうにしたがって軸線Oに接近するように傾斜している。詳細には、軸直方向内側面32f1は、軸線Oに対して鋭角側が一定の角度αで傾斜している。より詳細には、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、軸線Oに対して平行な軸直方向最内側面32f11と、軸線Oに対して角度αで傾斜している軸直方向内側傾斜面32f12とによって形成されている。
なお、本発明によれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、軸直方向内側傾斜面32f12のみによって形成することができる。即ち、本発明によれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1において、軸直方向最内側面32f11を省略することができる。また、本発明によれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、下側に向かうしたがって軸線Oから離間するように傾斜させることもできる。
次いで、図8は、本発明の他の実施形態に係るキャブマウント1Dであって、当該キャブマウント1Dのアッパーマウント部3の一部をその周辺とともに、軸線Oを含む一断面で拡大して示す図である。
本実施形態において、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、上側に向かうしたがって軸線Oから離間するように湾曲している。この場合も、軸方向での、剛性のチューニングが容易である。また、この場合も、弾性体領域部31Aのボリュームが上側に向かうにしたがって増加することによって、剛性のチューニングをより効果的に行うことができる。本実施形態では、高剛性部材32の上側面32f3から下側に向かうにしたがって軸線Oに接近するように湾曲している。詳細には、径方向外側に突出するように湾曲させている。この湾曲形状は、例えば、曲率半径r1の円弧形状とすることができる。より詳細には、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、軸線Oに対して平行な軸直方向最内側面32f11と、径方向外側に突出するように湾曲させた軸直方向内側湾曲面32f13とによって形成されている。
なお、本発明によれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、軸直方向内側湾曲面32f13のみによって形成することができる。即ち、本発明によれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1において、軸直方向最内側面32f11を省略することができる。また、本発明によれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、下側に向かうしたがって軸線Oから離間するように湾曲させることもできる。
さらに、図9は、本発明の他の実施形態に係るキャブマウント1Eであって、当該キャブマウント1Eのアッパーマウント部3の一部をその周辺とともに、軸線Oを含む一断面で拡大して示す図である。
本実施形態において、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、上側に向かうしたがって軸線Oから離間するように段差となっている。この場合も、軸方向での、剛性のチューニングが容易である。また、この場合も、弾性体領域部31Aのボリュームが上側に向かうにしたがって増加することによって、剛性のチューニングをより効果的に行うことができる。本実施形態では、高剛性部材32の上側面32f3から下側に向かうにしたがって軸線Oに接近するような段差Sとなっている。本実施形態では、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、軸線Oに対して平行な軸直方向最内側面32f11と、少なくとも1つの段差Sからなる軸直方向内側段差面32f14とによって形成されている。詳細には、軸直方向内側段差面32f14は、複数の段差Sによって形成されている。本実施形態では、段差Sは、軸線Oに対して平行な軸方向延在部f1と、軸直方向に対して平行な軸直方向延在部f2とによって形成されている。本実施形態では、各段差Sにおいて、複数の軸方向延在部f1は、同一の軸方向長さであるが、当該軸方向長さは、異ならせることができる。また、本実施形態では、各段差Sにおいて、複数の軸直方向延在部f2も、同一の軸方向長さであるが、当該軸方向長さも、異ならせることができる。
なお、本発明によれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、軸直方向内側段差面32f14のみによって形成することができる。即ち、本発明によれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1において、軸直方向最内側面32f11を省略することができる。また、本発明によれば、高剛性部材32の軸直方向内側面32f1は、下側に向かうしたがって軸線Oから離間するように湾曲させることもできる。
また、上述の各実施形態において、アッパーマウント部3には、その内径面(内周面)および外径面(外周面)の少なくともいずれか一方に、少なくとも1つの窪みdを形成することができる。この場合、動倍率を所望の値に制御し、また、荷重たわみが一定の値となるように制御することができる。上記各実施形態では、アッパーマウント部3の外周面には、窪みdが形成されている。また、上記各実施形態では、ロアーマウント部4にも窪みdが形成されている。
また、図1に示すように、アッパーマウント部3は、当該アッパーマウント部3の圧縮変形を制限するストッパ部1Sを備えている。本実施形態において、ストッパ部1Sは、上側ストッパ1S1と、下側ストッパ1S2とによって構成されている。本実施形態では、上側ストッパ1S1は、上部プレート7(第2上部プレート7b)によって形成されている。ただし、上側ストッパ1S1は、キャブ6側で設置することも可能である。また、本実施形態では、下側ストッパ1S2は、弾性体によって形成されている。本実施形態では、下側ストッパ1S2は、弾性体31と一体に形成されている。
さらに、本発明に係るキャブマウントにおいて、高剛性部材32は、軸方向の周りに配置された、少なくとも1つの小片部材であってもよい。この場合、軸方向の周りでの、剛性のチューニングをより細かく行うことができる。
図3Aを参照すれば、高剛性部材32は、平面視において、軸方向の周りに配置された、少なくとも1つの小片部材によって形成することができる。この場合、軸方向の周りでの、剛性のチューニングをより細かく行うことができる。
各実施形態を用いて説明したように、本発明によれば、軸直方向に沿って剛性を変化させつつ、当該剛性の変化を軸方向の周りで容易にチューニングすることが可能なキャブマウントを提供することができる。
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。本発明によれば、弾性体領域部32Aのボリュームは、車両装着時前方向、車両装着時後方向、車両装着時右方向および車両装着時左方向の少なくともいずれか1つを変化させることができる。また、本発明において、フレーム2には、当該フレーム2に取り付けられるブラケットを含む。上述した各実施形態に採用された様々な構成は、適宜、相互に置き換えることができ、又は、組み合わせることができる。