以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。
図1は、焼成炉本体10を示す斜視図である。図1では、焼成炉本体10は、左側壁を省略した状態で左斜め上方から見た状態が図示されている。ここで、連続焼成炉1で加熱処理される材料は、適宜に「被処理物」と称される。焼成炉本体10は、被処理物を処理室内で搬送しながら連続的に加熱処理する焼成炉である。処理室12は、直線に沿って延びた搬送経路15L,15Rを備えている。図1に示されているように、搬送経路15L,15Rは、複数列設けられていてもよい。図1に示された形態では、連続焼成炉1には、左右に2列の搬送経路15L,15Rが設けられている。
ここでは、焼成炉本体10は、鉛直方向に沿って上下が定められている。また、搬送経路15L,15Rの搬送方向に沿って前方を前、後方を後として焼成炉本体10の前後が定められている。さらに搬送経路15L,15Rの前方を向いた状態を基準として、焼成炉本体10の左右が定められている。
ここで例示される連続焼成炉1は、処理室12内を全て耐反応性および耐熱性などに優れた、SiCなどのセラミックス材料で構成することができる。特に、金属材料などの金属異物の混入が、被処理物に混入されることが防止されうる。このため、連続焼成炉1は、特に、金属異物の混入が許容されない材料の加熱処理に好適に用いられうる。
金属異物の混入が許容されない材料としては、例えば、種々の蓄電デバイスの電極活物質や固体電解質として用いられる材料が挙げられる。ここで、蓄電デバイスには、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。リチウムイオン二次電池のような蓄電デバイスでは、電極活物質や固体電解質に金属異物が混入すると、電池反応中に金属が溶出したり、デントライトを生じさせたりする原因となる。
ここで、リチウムイオン二次電池に用いられる焼成材料には、例えば、層状構造やスピネル構造などのリチウム複合金属酸化物が挙げられる。リチウム複合金属酸化物には、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2,LiNiO2,LiCoO2,LiFeO2,LiMn2O4,LiNi0.5Mn1.5O4,LiFePO4などが挙げられる。これらは、正極活物質材料として用いられうる。
また、固体電解質材料として用いられる焼成材料には、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質などの無機固体電解質がある。
酸化物系固体電解質としては、特に限定されず、例えば酸素(O)を含有し、かつリチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものを好適に用いることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、リン酸リチウム(Li3PO4),Li3PO4NX,LiBO2NX,LiNbO3,LiTaO3,Li2SiO3,LiTi2(PO4)3,Li5La3Ta2O12,Li7La3Zr2O12,Li6BaLa2Ta2O12などが挙げられる。
硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、例えば硫黄(S)を含有し、かつリチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものを好適に用いることができる。硫化物系固体電解質としては、例えば、Li2S-P2S5,Li2S-SiS2,LiI-Li2S-SiS2,LiI-Li2S-P2S5,LiI-Li2S-B2S3,Li3PO4-Li2S-Si2S,Li3PO4-Li2S-SiS2,LiPO4-Li2S-SiS,LiI-Li2S-P2O5,LiI-Li3PO4-P2S5などが挙げられる。
蓄電デバイスは、特に、車両の電動化に伴い、需要が高まっている。蓄電デバイスに用いられる焼成材料の焼成処理では、単位時間当りの処理量を多くすることが求められている。他方で、蓄電デバイスの安定した性能を得るため、蓄電デバイスに用いられる材料には、焼成雰囲気や焼成温度などの観点で、均質に加熱処理される必要がある。このため、被処理材料は、予め定められた加熱処理用の容器に、予め定められた適当な量が入れられる。さらに加熱処理用の容器は、図1に示されているように、複数段重ねられ、さらに多列に並べられて連続焼成炉1に導入される。これによって、連続焼成炉1での単位時間当りの処理量が増える。
〈加熱処理設備200〉
図2は、加熱処理設備200の全体構成が示された模式図である。加熱処理設備200は、図2に示されているように、連続焼成炉1を含んでいる。また、加熱処理設備200は、複数の領域201~206に分けられる。領域201~206では、連続焼成炉1に向けて、図2に示されているように、加熱処理用の容器Tが順に搬送される。容器Tには、被処理物が収容され、かつ、複数段重ねられ、搬送台16に載置される。搬送台16は「セッター」とも称される。
複数の領域201~206では、加熱処理用の容器Tに被処理物が投入され、さらに段積みされ、連続焼成炉1に導入される。図示は省略するが、段積みされた複数の容器Tのうち、最上段の容器Tの上部には、蓋が取り付けられる。焼成炉の加熱処理用の容器Tは、「サヤ」とも称される。蓋は、容器Tと同じ材料で作製されていてもよい。
領域201では、容器Tが一段ずつ搬送される。そして、予め定められた量の被処理物が容器Tに投入される。図2に示された形態では、容器Tは、底が平らで、周りが側壁で囲まれた略矩形の容器である。被処理物は、例えば、熱が均一に行き渡りうるように予め定められた所定の深さで平らに均されているとよい。
領域202では、容器Tは、予め定められた数が積み重ねられる。本実施形態では、容器Tは、9段に積み重ねられている。容器Tは、上面が開口している。図1に示されているように、容器Tの側壁は、上縁が下方に凹んでいる。容器Tは、複数段重ねられたときに、側壁の上縁が凹んだところを通じて、重ねられた容器Tに隙間t1が形成される。かかる隙間t1は、容器T内部に通じており、通気窓とも称される。最上段の容器Tには、蓋が取付けられる。最上段の容器Tでは、蓋との間で同様に隙間t1が形成されるとよい。
領域203では、段積みされた容器Tdが、さらに搬送台16に載せられる。本実施形態では、搬送台16は、所要の剛性を有する略矩形のプレートである。段積みされた容器Tdは、図2に示されているように、搬送台16に複数本載置される。図2に示された形態では、2列×2行の配置で搬送台16の上に、段積みされた容器Tdが4本載置されている。
領域204では、段積みされた容器Tdが載置された搬送台16が、連続焼成炉1の導入部1S(領域205)に向けて搬送される。領域204には、シャッターSh1,Sh2によって区画された置換室E1が用意されている。シャッターSh1は、連続焼成炉1の外部と置換室E1とを区画している。シャッターSh2は、置換室E1と、連続焼成炉1の内部とを区画している。段積みされた容器Tdが載置された搬送台16は、シャッターSh2が閉じられた状態で、シャッターSh1が開かれ、置換室E1に導入される。
置換室E1に、段積みされた容器Tdが載置された搬送台16が導入されると、シャッターSh1は閉じられる。そして、置換室E1内のガス雰囲気は、連続焼成炉1の導入部1Sに繋げられるのに適した雰囲気に調整される。次に、シャッターSh2が開かれ、置換室E1と連続焼成炉1の導入部1Sとが繋げられる。そして、段積みされた容器Tdが載置された搬送台16が、置換室E1から連続焼成炉1の導入部1Sに移送される。かかる置換室E1から連続焼成炉1の導入部1Sへの移送では、セラミックローラーのように、金属異物を生じさせない搬送手段が用いられているとよい。
領域205は、連続焼成炉1の導入部1Sであり、シャッターSh2によって置換室E1と仕切られている。図示は省略するが、少なくとも置換室E1から連続焼成炉1の導入部1Sは、外壁で囲まれている。そして、シャッターSh1,Sh2によって外部から閉じられた空間が形成されている。
図3は、連続焼成炉1の導入部1Sを示す平面図である。図3では、導入部1Sに導入された搬送台16の位置は、2点鎖線で示されている。連続焼成炉1の導入部1Sは、図3に示されているように、焼成炉本体10の搬送経路15L,15Rの手前側に設けられている。連続焼成炉1の導入部1Sでは、搬送経路15L,15Rの搬送方向に直交する方向に沿って、置換室E1から搬送台16が導入される。
導入部1Sの床は、ローラーR1と、ストッパSp1,Sp2と、転送ローラーR2とを備えている。また、導入部1Sには、プッシャー30が設けられている。
ローラーR1は、置換室E1からの搬送方向h1に沿って、搬送台16を導入するためのローラーである。ローラーR1は、置換室E1からの搬送方向h1に沿って、間欠的に複数本設けられている。図3に示された形態では、ローラーR1は、円柱状であり、ローラーR1の回転軸は、置換室E1からの搬送方向h1対して直交する向きに向けられている。
ストッパSp1,Sp2は、置換室E1から搬送方向h1に沿って導入された搬送台16を位置決めする部材である。ストッパSp1は、2本の搬送経路15L,15Rのうち、搬送経路15Lに搬送台16の位置を合わせるように搬送方向h1の所定の位置に配置されている。ストッパSp2は、搬送経路15Rに搬送台16の位置を合わせるように搬送方向h1の所定の位置に配置されている。ストッパSp2には、昇降機構が設けられている。そして、ストッパSp2は、昇降機構によって、ローラーR1よりも低い位置に降下したり、ローラーR1よりも高い位置に上昇したりする。
転送ローラーR2は、搬送台16を2本の搬送経路15L,15Rの搬送方向に沿って転送するためのローラーである。転送ローラーR2は、ローラーR1の間に配置されている。転送ローラーR2は、ベースR21の上面に転送用ローラーR22が取付けられている。転送ローラーR2のベースR21には、昇降機構(図示省略)が設けられている。転送用ローラーR22は、昇降機構によって、ローラーR1よりも低い位置に降下したり、ローラーR1よりも高い位置に上昇したりする。
置換室E1から導入部1Sに搬送台16が導入される際には、まず転送用ローラーR22とストッパSp2が、ローラーR1よりも低い位置に降下した状態に操作される。搬送台16は、ローラーR1の上に載り、置換室E1から搬送方向h1に沿って導入部1Sに導入される。このとき、ストッパSp1によって、導入された搬送台16の位置が、搬送経路15Lに合わせられる。次に、ストッパSp2を上昇させる。そして、置換室E1から導入部1Sにさらに別の搬送台16が導入される。当該搬送台16の位置は、ストッパSp2によって、搬送経路15Rに合わせられる。
次に、転送用ローラーR22を、ローラーR1よりも高い位置に上昇させる。そして、プッシャー30によって、搬送台16が搬送経路15L,15Rに向けて押し出される。これにより、搬送経路15L,15Rにそれぞれ搬送台16が導入される。なお、この際、ストッパSp1,Sp2は、プッシャー30に干渉しない位置に退避しているとよい。ストッパSp1,Sp2は、プッシャー30に干渉しなければ上昇したままでもよい。
領域206では、連続焼成炉1の焼成炉本体10の手前で、搬送経路15L,15Rに沿って搬送台16が連なっている。領域206では、導入部1Sから押し出される搬送台16が、連なった搬送台16の最後尾を押す。これにより、段積みされた容器Tdが載置された搬送台16は、順に焼成炉本体10の搬送経路15L,15Rに導入されていく。ここで、ローラーR1と、ストッパSp1,Sp2と、転送ローラーR2は、少なくとも搬送台16と接触する部材または部位が、所要の機械強度を有するセラミックス材料で構成されているとよい。かかるセラミックス材料は、例えば、SiC,ムライト,アルミナなどであり得る。
〈連続焼成炉1の全体構成〉
次に、連続焼成炉1の全体構成を説明する。連続焼成炉1は、図1から図3に示されているように、焼成炉本体10とプッシャー30とを備えている。焼成炉本体10は、被処理物を加熱処理する処理室12を内部に有している。
処理室12は、搬入口13と、搬送経路15L,15Rと、搬出口14とを備えている。搬送経路15L,15Rは、搬入口13から直線に沿って延びている。搬出口14は、搬送経路15L,15Rの搬入口13とは反対側の端部に設けられている。
詳細には、本実施形態の焼成炉本体10は、底壁11B、右側壁11R、左側壁11L(図4参照)、および上壁11Uを備える。底壁11Bは、処理室12の下側を覆うと共に、焼成炉本体10の全体を支持する。右側壁11Rは、底壁11Bの右端部から上方へ延び、処理室12の右側を覆う。左側壁11L(図4参照)は、底壁11Bの左端部から上方へ延び、処理室12の左側を覆う。上壁11Uは、処理室12の上側を覆う。底壁11B、右側壁11R、左側壁11L、および上壁11Uは、耐熱性を有し、且つ、内部の処理室12の気密性を保つ。なお、図示は省略するが、焼成炉本体10には、処理室12の手前側(図1における右側)の搬入口13を開閉する搬入扉、および、処理室12の奥側(図1における左側)の搬出口14を開閉する搬出扉が設けられている。
焼成炉本体10における処理室12内には、搬入口13から搬出口14まで直線状に延びる搬送経路15R,15Lが設けられている。図1に例示する焼成炉本体10には、処理室12内の右側を搬入口13から搬出口14まで延びる右搬送経路15Rと、処理室12内の左側を搬入口13から搬出口14まで延びる左搬送経路15Lが設けられている。ここでは、左右の搬送経路15R,15Lは、互いに平行に延びている。図1に示された形態では、搬送経路15L,15Rは、2列であるが、処理室12に設けられる搬送経路は、特に限定されない限りにおいて、2列に限定されない。例えば、3つ以上の搬送経路が焼成炉本体10に形成されてもよい。複数列の搬送経路が焼成炉本体10に設けられることによって、搬送経路が1つである場合に比べて、多くの被処理物が効率よく加熱処理される。なお、焼成炉本体10に設けられる搬送経路を1つとすることも可能である。
〈フリーローラー〉
搬送経路15R,15Lの底部には、複数のフリーローラー20が搬送方向に沿って順に並べられている。段積みされた容器Tdが載置された搬送台16は、搬送方向に沿って並べられた複数のフリーローラー20上に載置される。本実施形態では、複数(図1では9段)の容器Tが積み重ねられた状態で、搬送経路15R,15Lを搬送される。このため、容器Tが積み重ねられずに一段で搬送される場合に比べて、処理室12において多くの被処理物が効率よく加熱処理される。
図4は、焼成炉本体10の断面図である。図4では、搬送経路15L,15Rを横断し、かつ、搬送経路15L,15Rの手前側から見た焼成炉本体10の断面図が示されている。図5は、フリーローラー20の端部に設けられた支持構造を示す側面図である。以下、図1、図4および図5を参照して、フリーローラー20の構成について説明する。複数のフリーローラー20は、搬送経路15R,15Lの底部において、搬送方向に沿って並べて設けられている。複数のフリーローラー20の各々は、円柱状の軸部材である。本実施形態では、フリーローラー20は、長さ方向において継ぎ目のない外形円柱状を有している。フリーローラー20の各々は、搬送経路15L,15Rの搬送方向に対して垂直に交差する方向に沿って、搬送経路15L,15Rの底部を横断している。
本実施形態では、複数のフリーローラー20の両端は、図4に示されているように、それぞれ処理室12を貫通し、処理室12の外において回転自在に支持されている。このため、回転支持部材22R,22Lから異物が発生しても、異物は処理室12の内部で搬送される被処理物に混入し難い。複数のフリーローラー20の両端は、図5に示されているように、それぞれ処理室12の外において、フリーローラー20の回転軸に揃えられた回転軸を有する、少なくとも2つの支持ローラー22R1,22R1の上に載せられている。このため、熱膨張や熱収縮が生じてフリーローラー20の外径や長さが変化しても、フリーローラー20は支持ローラー22R1,22R1の上で安定して回転することができる。
詳細には、本実施形態では、図4に示されているように、複数のフリーローラー20の各々は、少なくとも、搬送経路15R,15Lを挟んで対向する2か所において、回転自在に支持されている。このため、例えば、1つの箇所で回転自在に支持される片持ちローラーを採用する場合に比べて、フリーローラーにかかる負荷が増加し難い。また、各々のフリーローラー20は、搬送経路15L,15Rの搬送方向に対して垂直に交差する方向に沿って、搬送経路15L,15Rの底部を横断している。このため、搬送方向に交差する方向の全長に渡って搬送台16の底部に接触する。棒状のフリーローラー20に係る負荷は低く抑えられ、フリーローラー20の変形、破損、および、部材が削れることによる異物の発生なども少なく抑制される。なお、当然ではあるが、搬送台16に載せられる容器Tの数など、段積みされた容器Tdが載置された搬送台16の重量は、フリーローラー20の予め定められた耐荷重の範囲内であるとよい。
また、本実施形態のフリーローラー20は、軸部材であり、多列に並んだ搬送経路15R,15Lを横断するように配置されている。つまり、各々のフリーローラー20は、多列に搬送経路15R,15Lの底部を、搬送経路15L,15Rの搬送方向に対して垂直に交差する方向に沿って横断している。そして、フリーローラー20は、多列に並べられた搬送経路15L,15Rのそれぞれにおいて搬送台16を支持し、搬送経路15R,15L上に沿って搬送台16を纏めて搬送することができる。このため、各々の搬送経路15R,15L毎にフリーローラーが別々に設けられている場合に比べて、連続焼成炉1の構成が簡素化される。
各々のフリーローラー20の左右の端部は、図4に示されているように、処理室12の外において回転支持部材22R,22Lによって回転自在に支持されている。本実施形態では、右側の回転支持部材22Rは、フリーローラー20の右端部を支持している。左側の回転支持部材22Lは,フリーローラー20の左端部を支持している。右側の回転支持部材22Rは、フリーローラー20を支持する一対の支持ローラー22R1,22R1(図5参照)を備えている。左側の回転支持部材22Lは、図示は省略するが、右側と同様にフリーローラー20を支持する一対の支持ローラーを備えている。
一対の支持ローラー22R1,22R1の回転軸は、フリーローラー20の回転軸に揃えられている。本実施形態では、支持ローラー22R1,22R1の回転軸は、フリーローラー20の回転軸に平行である。支持ローラー22R1,22R1は、フリーローラー20の端部の外形よりも狭い間隔で、フリーローラー20の端部の下面を支持するように配置されている。一対の支持ローラー22R1,22R1は、それぞれ図示は省略するが、回転自在に支持されている。一対の支持ローラー22R1,22R1には、例えば、ニードルベアリングで構成されていてもよい。一対の支持ローラー22R1,22R1は、例えば、図示は省略するが、焼成炉本体10の内壁や、処理室12の外壁などに回転自在に支持されているとよい。
さらに詳細には、本実施形態では、焼成炉本体10における右側壁11Rおよび左側壁11Lの各々に、フリーローラー20が挿通される孔部17が形成されている。各々の孔部17には、孔部17を通じた気体および異物の移動を抑制する遮断部24R,24Lが設けられている。回転支持部材22R,22Lは、遮断部24R,24Lによって閉塞された処理室12の外部に設置されている。従って、仮に回転支持部材22R,22Lから異物が発生しても、異物は処理室12の内部の被処理物に混入し難い。よって、回転支持部材22R,22Lの材質を、被処理物の種類に応じた材質(例えば、被処理物に混入しても問題ない材質など)に限定する必要が無い。例えば、本実施形態のように、金属屑の混入が問題となる被処理物を連続焼成炉1によって処理する場合でも、回転支持部材22R,22Lの材質を金属とすることが可能である。
本実施形態では、フリーローラー20のうち、少なくとも処理室12内で露出される部位の材質として、炭化ケイ素を含むSiC系材料からなるセラミックローラーが採用されている。SiC系材料をフリーローラー20の材質として使用することで、フリーローラー20に所要の強度が確保される。さらに、金属屑の混入が問題となる被処理物を連続焼成炉1によって処理する場合に、フリーローラー20から生じた異物が被処理物に影響を与えない。よって、金属屑の混入が問題となる被処理物であっても、適切に処理される。また、SiC系材料からなるセラミックローラーは、剛性が高くほとんど撓まないので、処理室12内で安定して回転する。
〈プッシャー〉
図1を参照して、プッシャー30の構成について説明する。処理室12の搬入口13にはプッシャー30が設けられている。プッシャー30は、押し出し装置31と押し込み部材32とを備えている。押し込み部材32は、搬送経路15L,15Rの搬入口13側において、処理室12の外に設けられている。押し出し装置31は、押し込み部材32を、搬送経路15L,15Rに向けて押し出す装置である。プッシャー30は、複数のフリーローラー20上において搬送方向(図1の左右方向)に連なる複数の搬送台16を、搬送方向の下流側(図1の左側)に押し込む。本実施形態では、プッシャー30の押し込み部材32は、複数列の搬送経路15L,15Rの搬入口13にそれぞれ対向しており、複数列の搬送経路15L,15Rに向けて搬送物を纏めて押すように構成されている。
プッシャー30は、押し出し装置31によって、押し込み部材32を搬送方向(図1の左右方向)に移動させる。本実施形態では、押し込み部材32が搬送方向の下流側(図1の左側)に移動すると、押し込み部材32は、段積みされた容器Tdが載置された搬送台16に接触し、搬送台16を搬送経路15L,15Rに向けて押す。押し込み部材32のうち、搬送台16に接触する先端の接触部は、搬送経路15R,15Lが延びる搬送方向に垂直に交差する方向に延びている。押し出し装置31は、例えば、油圧シリンダなどで構成されてもよい。また、押し込み部材32は、所要の機械強度を有するセラミックス材料で構成されているとよい。例えば、炭化ケイ素を含むSiC系材料からなるセラミックス材が用いられているとよい。このような材料が用いられていることによって押し込み部材32が搬送台16との接触で摩耗しても、金属異物が発生しない。
押し込み部材32に押された搬送台16は、搬送経路15R,15L上で搬送方向に連なる複数の搬送台16の最後尾に当たる。そして、押し込み部材32がさらに当該搬送台16を押すことによって、搬送経路15L,15Rの搬送方向に沿って連なった複数の搬送台16が、搬送方向の前方に向けて前進する。順次、押し込み部材32によって、搬送台16が、搬送経路15R,15L上で搬送方向に押し込まれることによって、搬送方向に沿って連なった複数の搬送台16の最後尾に搬送台16が追加され、かつ、搬送方向に沿って連なった複数の搬送台16が搬送経路15L,15Rに沿って前進する。プッシャー30は、所定時間毎に、新たな搬送台16を搬送経路15L,15Rに沿って所定距離だけ押し込む。その結果、搬送経路15R,15L上に連なる複数の搬送台16が、間欠的に搬送される。
本実施形態では、搬送台16は、矩形のプレートである。搬送経路15R,15L上に連なる複数の搬送台16は、1つ前の搬送台16の後側の側面に、後続する搬送台16の前側の側面が当たる。このため、1つ前の搬送台16と後続する搬送台16の向きが搬送方向に揃う。搬送経路15L,15Rの複数のフリーローラー20上に沿って搬送経路15R,15Lを下流側に搬送される。搬送経路15R,15L上に連なる複数の搬送台16の搬送方向は、プッシャー30による押し出し方向に沿いやすい。従って、段積みされた容器Tdが載置された搬送台16が搬送経路15R,15Lから離脱する可能性が低い。
本実施形態のプッシャー30は、1つの押し出し装置31によって、複数列(本実施形態では2列)の搬送経路15R,15Lに複数列の搬送台16を纏めて押し出す。従って、複数列の搬送台16が効率よく搬送される。本実施形態では、搬送台16には、段積みされた容器Tdが複数本載置されている。このため、処理室12での被処理物の処理量を多くすることができ、生産性が向上する。複数列の搬送台16が同期して搬送されるので、処理室12での複数本の段積みされた容器Tdの取り扱いも容易となる。
〈ガイド〉
焼成炉本体10は、各々の搬送経路15R,15Lにおける搬送台16の搬送を案内するガイド40R,40C,40Lを備えている。従って、搬送台16の搬送方向が一時的に乱れた場合でも、搬送台16の搬送がガイド40R,40C,40Lによって案内される。このため、搬送台16は搬送経路15R,15L上を正常に搬送される。図6は、ガス供給管60、ヒータ50およびガイド40Cを示す斜視図である。図6では、ガス供給管60、ヒータ50およびガイド40Cの配置が模式的に示されている。
図1、図4、および図6を参照して、ガイド40R,40C,40Lについて説明する。図1および図4に示されているように、ガイド40R,40C,40Lは、各々の搬送経路15R,15Lを挟んで対向する両側の位置に、搬送方向に沿って設けられている。本実施形態のガイド40R,40C,40Lは、連なって搬送される搬送台16に接触することによって、処理室12内での搬送台16を搬送経路15L,15Rに沿って確実に案内する。また、ガイド40R,40C,40Lの材質には、ハイアルミナレンガが採用されている。その結果、ガイド40R,40C,40Lの耐熱性および強度が確保されている。
本実施形態では、右のガイド40Rは右搬送経路15Rの右側に設けられており、中間のガイド40Cは右搬送経路15Rの左側に設けられている。また、中間のガイド40Cは左搬送経路15Lの右側に設けられており、左のガイド40Lは左搬送経路15Lの左側に設けられている。つまり、複数の搬送経路15R,15Lの間に設けられた中間のガイド40Cは、隣接する2つの搬送経路15R,15Lの各々における搬送台16の搬送を共に案内する。従って、簡素な構成で適切に搬送台16の搬送が案内される。ただし、複数の搬送経路15R,15Lの各々に対し、ガイドが別々に設けられてもよい。
以下では、複数のガイド40R,40C,40Lのうち、中間のガイド40Cを例示して説明を行う。しかし、以下説明する構成は、右のガイド40Rおよび左のガイド40Lでも同様である。図6に示されているように、ガイド40Cのうち、搬送経路15R,15L(図1および図4参照)上を搬送される搬送台16に接触する接触部41が、搬送方向に平行な方向に隙間なく連続して延びている。従って、搬送台16が搬送中にガイド40Cに接触しても、搬送台16はガイド40Cに引っ掛かり難い。よって、搬送台16の不要な回転、および、部材の破損などが生じる可能性がさらに低下する。このため、搬送台16の上に多段に段積みされた容器Tdを安定して搬送することができる。
図6に示されているように、ガイド40Cには、フリーローラー20(図1、図4、図5参照)が搬送方向に交差する方向に挿通されるローラー挿通穴42が形成されている。ローラー挿通穴42の内径は、フリーローラー20の外径よりも広い。このため、フリーローラー20に干渉せず、搬送経路15L,15Rに沿って連続したガイド40R,40C,40Lを形成することができる。また、本実施形態では、フリーローラー20は、SiCのようにほとんど撓まないセラミックス材料からなる。このため、フリーローラー20は、段積みされた容器Tdが載せられた搬送台16を支持しつつ、ローラー挿通穴42内で接触せずに回転することができる。
〈容器Tdの搬送空間〉
図4を参照して、処理室12の内部で容器Tdが搬送される空間について説明する。処理室12の内部において、搬送経路15R,15Lの各々を挟んで対向して配置された一対のガイドの間の幅を、w1とする。処理室12内の、フリーローラー20よりも上方の高さを、h1とする。処理室12の内部で、段積みされた容器Tdが搬送可能な空間は、h1/w1>1の条件を満たす。ここで、ガイドの間の幅w1は、換言すると、搬送方向に直交する方向における、一対のガイド間の距離である。搬送経路15Lのガイドの間の幅w1は、ガイド40Lとガイド40Cとの間の距離である。搬送経路15Rのガイドの間の幅w1は、ガイド40Cとガイド40Rの間の距離である。フリーローラー20よりも上方の高さh1は、換言すると、処理室12の内部において、フリーローラー20よりも上方で、搬送物の搬送が許容される高さ制限までの高さでありうる。h1/w1は、搬送経路15L,15Rで搬送物が搬送される搬送空間を搬送方向に向けて正面から見たときの縦横比でありうる。h1/w1>1の条件を満たすので、本実施形態の連続焼成炉1では、多数の容器Tが高さ方向に積み重ねられた状態であっても、段積みされた容器Tdが、処理室12内の空間を適切に搬送される。なお、搬送空間の縦横比h1/w1は、例えば、2以上でもよく、3以上でもよい。
以上のように、ここで開示された連続焼成炉1は、被処理物を加熱処理するための処理雰囲気が形成される処理室12を内部に有する焼成炉本体10と、プッシャー30とを有している。処理室12は、搬入口13から直線に沿って延びた搬送経路15L,15Rを備えている。焼成炉本体10は、搬送経路15L,15Rに沿って搬送経路15L,15Rの底部に順に並べられた複数のフリーローラー20を備えている。プッシャー30は、搬送経路15L,15Rの搬入口13側において、処理室12の外に設けられた押し込み部材32と、押し込み部材32を、搬送経路15L,15Rに向けて押し出す押し出し装置31とを備えている。
かかる連続焼成炉1によれば、処理室12の外に配置されたプッシャー30は、搬送経路15L,15Rの搬入口13から搬送経路15L,15Rに沿って搬送台16を押し込むことができる。搬送台16は、搬送経路15L,15Rに沿って搬送経路15L,15Rの底部に順に並べられた複数のフリーローラー20の上で連なって搬送される。フリーローラー20は、プッシャー30によって押されて搬送される搬送物との摩擦によって回転する。このため、搬送経路15L,15Rを搬送される搬送物は、プッシャー30によって規定される適切な速度で搬送経路15L,15Rに沿って安定して搬送される。また、プッシャー30は、処理室12の外に設けられるため、処理室12の中では、搬送に伴う異物が生じ難く、搬送台16に異物が混入しにくい。このため、いわゆるコンタミネーションが低減される。
図1に示された形態では、処理室12は、互いに平行に延びた複数列の搬送経路15L,15Rを備えている。このため、搬送物を一度に纏めて送ることができ、被処理物の生産性を向上させることができる。
また、複数のフリーローラー20の各々は、継ぎ目のない円柱状の軸部材である。そして、複数のフリーローラー20の各々は、複数列の搬送経路15L,15Rを搬送方向に対して垂直に交差する方向に沿って横断している。このため、複数列の搬送経路15L,15Rにおいて、タイミングを合わせて搬送物を搬送することができる。複数列の搬送経路15L,15Rで被処理物の処理時間を合わせることができる。
また、プッシャー30の押し込み部材32は、複数列の搬送経路15L,15Rの搬入口13にそれぞれ対向している。そして、押し込み部材32は、複数列の搬送経路15L,15Rに向けて搬送物を纏めて押すように構成されている。複数列の搬送経路15L,15Rにおいて、タイミングを合わせて搬送物を搬送することができる。複数列の搬送経路15L,15Rで被処理物の処理時間を合わせることができる。
〈ヒータ・ガス供給管〉
焼成炉本体10は、図1、図2および図4に示されているように、複数のヒータ50、複数のガス供給管60、および複数の排気口70を備えている。ヒータ50は、処理室12内を加熱する装置である。ヒータ50は、少なくとも放熱部が処理室12内に設けられているとよい。搬送台16に段積みされた容器Tdに収容された被処理物は、ヒータ50によって加熱された処理室12内で加熱される。ガス供給管60は、雰囲気ガスを処理室12内に供給する配管である。本実施形態では雰囲気ガスは、酸素である。排気口70は、被処理物が加熱処理されることで発生する不要な反応ガスを、処理室12内から外部に排出するための開口である。本実施形態では、反応ガスは加熱されて処理室12内を上方へ移動する。このため、排気口70は、焼成炉本体10の上壁11Uに設けられている。
本実施形態では、被処理物は、蓄電デバイスの電極や固体電解質に用いられる材料である。このような材料は、粉体で用意される。本実施形態では、被処理物は、底が平らな容器に収容されている。容器Tは、さらに段積みされ、複数の段積みされた容器Tdが、複数本搬送台16に載置された状態で、連続焼成炉1に導入される。このように、この連続焼成炉1では、段積みされた容器Tdを搬送することができる。そして、単位時間当たりの被処理物の処理量を格段に増やすことができる。
他方で、蓄電デバイスの電極や固体電解質に用いられる材料では、安定した性能が得られるように、予め定められた雰囲気ガス中、予め定められた温度で、予め定められた時間、焼成される必要がある。段積みされた容器Tdの中で、被処理物を焼成する場合には、段積みされた各容器T内で、被処理物が一定の焼成条件を満足している必要がある。
本実施形態の焼成炉本体10では、上述したように、互いに平行に延びる複数列の搬送経路15R,15Lが設けられている。被処理物が収容された容器Tは、高さ方向に積み重ねられた状態で、搬送台16の上に載せられて、各々の搬送経路15R,15Lを搬送される。
段積みされた容器Tdが搬送される搬送経路15L,15Rの搬送空間は、高さ方向に高い。このため、例えば、搬送経路15L,15Rの上部から加熱するだけでは、搬送空間の高さ方向で雰囲気ガスの温度を均一にすることは難しい。また、処理室12の側方から加熱するとしても、焼成炉本体10には、平行に延びる複数列の搬送経路15L,15Rが設けられているため、搬送経路15L,15R毎にも温度を均一にすることが難しい。このため、段積みされた容器Tdを、複数列の搬送経路15L,15Rに沿って搬送する場合、段積みされた各容器T内に収容された被処理物に均等に熱を加えることが難しい場合がある。同様に、処理室12の側方から段積みされた容器Tdに向けて雰囲気ガスを供給するだけでは、処理室12内における雰囲気ガスの濃度が均一になり難い。
本実施形態の連続焼成炉1の搬送経路15L,15Rは、段積みされた容器Tdを搬送するため、1つの容器Tに対して数倍の高さがある。さらに、段積みされた容器Tdは、一つの搬送台16の上に複数載置された状態で搬送される。被処理物は、このように段積みされた容器Tdの中で、焼成される。このため、このような連続焼成炉1では、搬送経路15L,15Rの上下方向での焼成条件が、より均一であることが望ましい。また、連続焼成炉1の処理室12に、複数列の搬送経路15L,15Rが形成される場合には、搬送経路15L,15R間でも、焼成条件が、より均一であることが望ましい。
〈ヒータ50〉
ヒータ50は、図4に示されているように、側部ヒータ50R,50C,50Lを備えている。側部ヒータ50R,50C,50Lは、処理室12の内部で、かつ、ガイド40R,40C,40Lによって設定された搬送経路15L,15Rの両側の規制領域に配置されている。側部ヒータ50R,50C,50Lが、搬送経路15L,15Rの両側の規制領域に配置されていることによって、搬送経路15L,15Rの搬送空間の温度を均一に保つことが容易になる。ここで、搬送経路15L,15Rの両側の規制領域は、ガイド40R,40C,40Lによって設定される。つまり、搬送経路15L,15Rの両側は、ガイド40R,40C,40Lの接触部41によって規定される。規制領域は、側部ヒータ50R,50C,50Lは、ガイド40R,40C,40Lの接触部41によって、搬送経路15L,15Rを搬送される搬送物が規制される領域である。側部ヒータ50R,50C,50Lは、処理室12内において、かかる規制領域の上方空間に設けられているとよい。ここで、搬送物は、搬送台16および搬送台16に載せられた段積みされた容器Tdである。側部ヒータ50R,50C,50Lが、搬送経路15L,15Rの両側の規制領域に配置されていることによって、搬送台16に載せられた段積みされた容器Tdは、搬送経路15L,15Rの両側から加熱される。
本実施形態では、図4に示されているように、段積みされた容器Tdが搬送されるため、処理室12の内部において、搬送経路15R,15Lの各々を挟んで対向して配置された一対のガイドの間の幅w1よりも、フリーローラー20よりも上方の高さh1が高い。搬送空間の縦横比h1/w1は、例えば、1.5以上、あるいは2以上、さらには3以上とされうる。ここで開示された連続焼成炉1によれば、側部ヒータ50R,50C,50Lは、処理室12の内部で、かつ、ガイド40R,40C,40Lによって設定された搬送経路15L,15Rの両側の規制領域に配置されている。このため、搬送空間の側方から熱を与えることができる。このため、高さ方向に高い搬送空間を有している場合でも、搬送空間の温度を均一に調整することが容易になる。このため、搬送台16に載せられた段積みされた容器T毎に予め定められた焼成条件を確保することが実現されうる。
本実施形態では、ガイド40R,40C,40Lは、フリーローラー20よりも高い位置において、搬送経路15L,15Rの下部の両側で搬送経路15L,15Rに沿って平行に連続して延びている。このため、プッシャー30によって、搬送経路15L,15Rに押し込まれる搬送物は、搬送経路15L,15Rに沿ってスムーズに移動する。搬送経路15L,15Rを移動する搬送物が、側部ヒータ50R,50C,50Lに当たることが防止される。
なお、図7は、連続焼成炉1の他の形態を示す断面図である。図7に示されているように、連続焼成炉1は、上部ヒータ50Uと、下部ヒータ50Dとを適宜に備えていてもよい。上部ヒータ50Uは、処理室12の内部で、かつ、搬送経路15L,15Rに設定された搬送物の高さ制限よりも上方の上部領域に配置されているとよい。ここで、搬送物の高さ制限は、搬送経路15L,15R毎に予め定められているとよい。搬送物の高さ制限よりも上方の上部領域に上部ヒータ50Uが配置されていることによって、処理室12の上部の雰囲気ガスの温度を均一に保ちやすくなる。上部ヒータ50Uは、連続焼成炉1に適宜に設けられているとよい。
下部ヒータ50Dは、処理室12の内部で、かつ、フリーローラー20によって搬送経路15L,15Rに設定された搬送物が搬送される領域よりも下方の下部領域に配置されているとよい。ここで、搬送物が搬送される領域は、フリーローラー20によって規定される。下部ヒータ50Dは、フリーローラー20によって規定される搬送物が搬送される領域よりも下方の領域に配置されているとよい。下部ヒータ50Dは、例えば、搬送経路15L,15Rの底部に間欠的に配置されたフリーローラー20の間に、配置されていてもよい。下部ヒータ50Dが設けられていることによって、搬送経路15L,15Rの下部の雰囲気ガスの温度を均一に保ちやすくなる。下部ヒータ50Dは、連続焼成炉1に適宜に設けられているとよい。
処理室12は、図1および図4に示されているように、それぞれ間隔を空けて平行に延びた複数列の搬送経路15L,15Rを備えている。ガイド40R,40C,40Lは、複数列の搬送経路15L,15Rの間、および、複数列の搬送経路15L,15Rの両側にそれぞれ配置されている。側部ヒータ50R,50C,50Lは、複数列の搬送経路15L,15Rのそれぞれの間および複数列の搬送経路15L,15Rの両側のそれぞれに配置されている。つまり、処理室12が、複数列の搬送経路15L,15Rを備えている場合には、搬送経路15L,15Rの間にもガイド40Cが設けられている。当該ガイド40Cによって設定される、搬送経路15L,15Rの間の規制領域に、側部ヒータ50Cが設けられている。
詳しくは、本実施形態の連続焼成炉1では、側部ヒータとして、側方ヒータ50R,50Lと、中間ヒータ50Cとを備えている。側方ヒータ50R,50Lは、複数列の搬送経路15L,15Rの両側に配置されている。換言すると、側方ヒータ50R,50Lは、複数列の搬送経路15R,15Lの搬送方向に交差する方向において、搬送経路15L,15Rの外側(側方)に設けられている。中間ヒータ50Cは、複数列の搬送経路15R,15Lの間に設けられている。このため、複数列の搬送経路15R,15Lに沿って搬送される被処理物には、左右の側方ヒータ50R,50Lが発生させる熱だけでなく、複数列の搬送経路15R,15Lの間の中間ヒータ50Cが発生させる熱も加えられる。従って、複数列の搬送経路15R,15L上を搬送される段積みされた容器Tdに収容された被処理物に、より均等に熱が加わりやすい。
複数列の搬送経路15L,15Rのそれぞれの間および複数列の搬送経路15L,15Rの両側のそれぞれに配置された側部ヒータは、隣接する規制領域において、搬送経路15L,15Rに沿ってずらして配置されていてもよい。ここで、図8は、焼成炉本体10の変形例を示す斜視図である。図8では、側部ヒータ50R,50C,50Lのうち、中間ヒータ50Cは、両側の側方ヒータ50R,50Lに搬送経路15L,15Rに沿ってずらして配置されている。これにより、例えば、処理室12の雰囲気ガスの温度調整を容易にすることができる。このように側部ヒータ50R,50C,50Lの配置は、処理室12の雰囲気ガスの温度調整を容易にするとの観点において、隣接する規制領域において適宜に設定されているとよい。また、例えば、隣接する規制領域に配置される側部ヒータ50R,50C,50Lは、千鳥配置とされてもよい。
側部ヒータ50R,50C,50Lは、それぞれラジアントチューブ50R1,50C1,50L1と、ラジアントチューブ50R1,50C1,50L1に接続されたバーナー本体50R2,50C2,50L2とを備えている。ラジアントチューブ50R1,50C1,50L1は、処理室12の内部において搬送経路15L,15Rの両側に配置されている。バーナー本体50R2,50C2,50L2は、処理室12の外において、焼成炉本体10に取付けられている。
本実施形態では、ラジアントチューブ50R1,50C1,50L1は、直管型チューブである。側部ヒータ50R,50C,50Lは、搬送経路15L,15Rの両側に複数配置されている。つまり、処理室12の内部において搬送経路15L,15R毎に搬送経路15L,15Rの両側に複数本の側部ヒータが間欠的に配置されている。このため、搬送経路15L,15Rに沿って、雰囲気ガスの温度を適切に調整しやすい。複数の側部ヒータ50R,50C,50Lの直管型チューブである場合には、例えば、図6に示されているように、上下方向に沿って配置されていてもよい。このように、複数の側部ヒータ50R,50C,50Lをそれぞれ直管型チューブとし、上下方向に沿って配置することによって、長さ方向に長く、高さ方向に高い搬送経路15L,15Rの搬送空間に対して、側部ヒータ50R,50C,50Lを間欠的に配置することができる。これにより、段積みされた容器Tdが搬送される搬送空間が満遍なく均一に加熱されやすくなる。なお、本実施形態では、側部ヒータ50R,50C,50Lは、上下方向に沿って配置されているが、それぞれ、搬送経路15L,15Rに沿って斜めに傾けられていてもよい。例えば、搬送経路15L,15Rの両側の規制領域において、それぞれ複数の側部ヒータ50R,50C,50Lが、一様に斜めに傾けられていてもよい。
また、ラジアントチューブがセラミックチューブであってもよい。ラジアントチューブが、SiCのようなセラミックからなるセラミックチューブであることによって、側部ヒータ50R,50C,50Lに起因して搬送空間での金属異物が発生することも防止できる。
バーナー本体50R2,50C2,50L2は、図4に示されているように、処理室12の外において、焼成炉本体10に配置されてもよい。例えば、複数列の搬送経路15L,15Rの間に配置された側部ヒータ50Cのバーナー本体50C2は、焼成炉本体10の上部に配置されているとよい。この場合、バーナー本体50C2は、焼成炉本体10の上部に配置されているので、複数列の搬送経路15L,15Rの間に配置された側部ヒータ50Cのバーナー本体50C2に対して短距離で、バーナー本体50C2が接続される。このため、側部ヒータ50Cの熱効率が高く維持される。
また、本実施形態では、複数列の搬送経路15L,15Rの両側のそれぞれに配置された側部ヒータ50R,50Lのバーナー本体50R2,50L2は、焼成炉本体10の上部に配置されている。なお、かかる形態に限定されず、複数列の搬送経路15L,15Rの両側のそれぞれに配置された側部ヒータ50R,50Lのバーナー本体50R2,50L2は、焼成炉本体10の側部に配置されていてもよい。この場合も、バーナー本体50R2,50L2は、焼成炉本体10の上部または側部に配置されている。このため、複数列の搬送経路15L,15Rの両側に配置された側部ヒータ50R,50Lのバーナー本体50R2,50L2に対して短距離で、バーナー本体50R2,50L2が接続される。このため、側部ヒータ50R,50Lの熱効率が高く維持される。
このように各々のヒータ50には、管状のチューブバーナ(本実施形態では、ラジアントチューブバーナ)が採用することができる。従って、ヒータ50を容易に適切な位置に設置することができる。一例として、本実施形態のヒータ50は、直線状に延びるチューブバーナである。本実施形態では、処理室12内において、平面視において、ガイド40R,40C,40Lの上方領域に、直線状のラジアントチューブが配置されている。このため、搬送経路15L,15Rを搬送される搬送台16に載置された段積みされた容器Tdに、ヒータ50が当たらない。また、各ヒータ50のラジアントチューブ50R1,50C1,50L1は、図4に示されているように、焼成炉本体10の上壁11Uに貫通するように取付けられている。ヒータ50のバーナー本体50R2,50C2,50L2は、焼成炉本体10の上壁11Uの外側に貫通したラジアントチューブ50R1,50C1,50L1の基端部に取付けられている。このようなヒータ50によれば、処理室12には、ラジアントチューブ50R1,50C1,50L1が延びており、ラジアントチューブ50R1,50C1,50L1内で、ガスが燃焼される。ラジアントチューブ50R1,50C1,50L1で生じた熱は、輻射熱により、処理室12内に広がる。
なお、かかるヒータ50にチューブバーナを用いる場合、搬送経路15L,15Rを搬送される搬送台16に載置された段積みされた容器Tdに、ヒータ50が当たらないように、チューブバーナの形状が選択されうる。かかる観点において、チューブバーナは、平面視において、ガイド40R,40C,40Lの上方領域に配置されているとよい。チューブバーナは、直線状以外の形状(例えば、U字状、W字状など)であってもよい。チューブバーナは、直線状以外の形状である場合、ガイド40R,40C,40Lの上方領域において、搬送経路15R,15Lに沿って配置されていてもよい。
このように、本実施形態では、側方ヒータ50R,50Lおよび中間ヒータ50Cは、いずれも処理室12内において上下方向に延びている。従って、搬送経路15R,15Lの距離を長くした場合であっても、各ヒータ50を容易に適切な位置に配置することが可能である。特に、中間ヒータ50Cの長手方向を上下方向とすることで、上壁11Uおよび底壁1Bの少なくとも一方(本実施形態では上壁11U)に中間ヒータ50Cを固定した状態で、複数列の搬送経路15R,15Lの間に中間ヒータ50Cを適切に配置することができる。ただし、ヒータ50の設置方法を変更することも可能である。例えば、側方ヒータ50R,50Lの長手方向を、連続焼成炉1の前後方向(図1における左右方向)としてもよい。
〈ガス供給管60〉
また、図1に示されているように、本実施形態の連続焼成炉1は、ガス供給管60R,60C,60Lを備えている。ガス供給管60R,60Lは、複数列の搬送経路15R,15Lよりも搬送方向に交差する方向の外側(側方)に設けられている。ガス供給管60Cは、複数列の搬送経路15R,15Lの間に設けられている。その結果、複数列の搬送経路15R,15L上の被処理物には、左右のガス供給管60R,60Lから供給される雰囲気ガスだけでなく、複数列の搬送経路15R,15Lの間のガス供給管60Cから供給される雰囲気ガスも行き渡る。従って、大量の被処理物に対して雰囲気ガスが均一に行き渡りやすい。
図6に示されているように、各々のガス供給管60には、管内に導入された雰囲気ガスを処理室12内に供給するガス供給孔61が複数形成されている。雰囲気ガスは、各々のガス供給孔61を通じて適切に処理室12内に供給される。詳細には、複数列の搬送経路15R,15Lの間のガス供給管60Cには、左搬送経路15L(図1および図2参照)の方向(図4における紙面左手前側)を向くガス供給孔61と、右搬送経路15R(図1および図2参照)の方向を向くガス供給孔(図示せず)が共に形成されている。従って、2つの搬送経路15R,15Lの間のガス供給管60Cから、2つの搬送経路15R,15Lの各々の方向に、雰囲気ガスが適切に供給される。なお、側方のガス供給管60R,60Lには、少なくとも、搬送経路15R,15L側(つまり、処理室12の内側)を向くガス供給孔が形成されている。
図1に示されているように、各々のガス供給管60は、いずれも処理室12内を上下方向に延びている。従って、搬送経路15R,15Lの距離が長い場合には、ガス供給管60は、搬送経路15L,15Rに対して適当な間隔で配置されているとよい。ガス供給管60は、上下方向に延びているので、搬送経路15L,15Rに対して適切な位置に配置することが可能である。特に、複数列の搬送経路15R,15Lの間のガス供給管60Cの長手方向を上下方向とすることで、上壁11Uおよび底壁1Bの少なくとも一方(本実施形態では上壁11U)にガス供給管60Cを固定した状態で、複数列の搬送経路15R,15Lの間にガス供給管60Cを適切に配置することができる。ただし、ガス供給管60の設置方法を変更することも可能である。例えば、側方のガス供給管60R,60Lの長手方向を、連続焼成炉1の前後方向(図1における左右方向)としてもよい。また、側方のガス供給管60R,60Lの代わりに、右側壁11Rおよび左側壁11Lの各々に複数の雰囲気ガス供給孔を設けてもよい。
以下では、中間ヒータ50Cおよび中間のガス供給管60Cと、中間のガイド40Cの位置関係について説明する。しかし、以下説明する位置関係は、側方ヒータ50R,50Lおよび側方のガス供給管60R,60Lと、側方のガイド40R,40Lでも同様である。図6に示されているように、搬送方向(図6における左右方向)に垂直に交差する水平方向を、容器Tの搬送が規制される規制方向とする。中間ヒータ50Cおよびガス供給管60Cの規制方向における両端部は、ガイド40Cの規制方向における両端部の間(詳細には内側)に位置する。
換言すると、中間ヒータ50Cおよびガス供給管60Cのうち、左搬送経路15L(図1および図4参照)側の端部は、左搬送経路15Lを搬送される搬送物と接触するガイド40Cの接触部41よりも、左搬送経路15Lから遠ざかる側に位置する。同様に、中間ヒータ50Cおよびガス供給管60Cのうち、右搬送経路15R(図1および図4参照)側の端部は、右搬送経路15Rを搬送される搬送物と接触するガイド40Cの接触部(図示せず)よりも、右搬送経路15Rから遠ざかる側に位置する。
つまり、ヒータ50およびガス供給管60のうち、搬送経路側の端部は、ガイド40R,40C,40Lにおける搬送物との接触部よりも、搬送物から遠ざかる側に位置する。従って、搬送物(本実施形態では、容器Tおよび搬送台16)の搬送方向が乱れたとしても、搬送物は、ヒータ50およびガス供給管60に接触しない。よって、ヒータ50およびガス供給管60に破損などが生じる可能性が低下する。
また、図7に示されているように、連続焼成炉1は、上部供給管60Uと、下部供給管60Dとを適宜に備えていてもよい。上部供給管60Uは、処理室12の内部で、かつ、搬送経路15L,15Rに設定された搬送物の高さ制限よりも上方の上部領域に配置されているとよい。下部供給管60Dは、処理室12の内部で、かつ、フリーローラー20によって搬送経路15L,15Rに設定された搬送物が搬送される領域よりも下方の下部領域に配置されているとよい。かかる上部供給管60Uと下部供給管60Dが配置されていることによって、処理室12内の上部または下部の雰囲気ガスの濃度を均一に保つことが容易になる。
ここでは、被処理物として、蓄電デバイス用の電極材料や固体電解質材料が例示されているが、これらに限定されない。ここで例示された連続焼成炉1によれば、適宜に、搬送物の安定した搬送が実現できる。粉体材料の焼成において、粉体材料が収容された容器を段積みした状態で安定して搬送できる。また、焼成炉本体10の処理室12内をオールセラミックで構成できる。この場合、被処理物に対して金属異物の混入を防止できる。また、上述したように、搬送経路15L,15Rの搬送空間の側方に側部ヒータ50R,50C,50Lが設けられることによって、搬送物が搬送される搬送経路15L,15Rの搬送空間の温度管理が容易になる。また、搬送経路15L,15Rの搬送空間の側方に、ガス供給管60R,60C,60Lが設けられることによって、搬送物が搬送される搬送経路15L,15Rの搬送空間の雰囲気ガスの濃度管理が容易になる。これらの構成は、連続焼成炉1においてそれぞれ適宜に組み合わされ、相互に作用して連続焼成炉1の機能を向上させうる。
また、ここで開示される粉体材料の連続焼成方法は、図2に示されているように、粉体材料を容器Tに収容する工程(201)と、粉体材料が収容された複数の容器Tを段積みする工程(202)と、段積みされた容器Tdを搬送台16に載置する工程(203)と、段積みされた容器Tdが載置された搬送台16を連続焼成炉1に用意された搬送経路15L,15Rに沿って押し込む工程(205)とを備えている。ここで、連続焼成炉1に用意された搬送経路15L,15Rは、搬送経路15L,15Rの底部に間欠的に配置された複数のフリーローラー20と、搬送経路15L,15Rの両側において搬送経路15L,15Rに押し込まれた搬送台16を案内するガイド40R,40C,40Lとを備えている。段積みされた容器Tdが載置された搬送台16は、ガイド40R,40C,40Lで規定される搬送経路15L,15Rに沿って順に連なって搬送経路15L,15Rを移動する。かかる粉体材料の連続焼成方法によれば、上述のように粉体材料を大量に焼成炉に搬送でき、粉体材料の連続的な処理が可能である。
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。また、上記実施形態で例示された複数の技術の一部を連続焼成炉に採用することも可能である。