実施例に係る燃料電池システム1について図面を参照して説明する。図1に示すように、実施例に係る燃料電池システム1は、水素タンク30と、燃料電池スタック20と、気液分離容器10とを備えている。この燃料電池システム1は、例えば燃料電池自動車(以下「車両」という)に搭載される。
水素タンク30は、燃料電池スタック20に供給される水素ガスを貯蔵している。水素タンク30は、高圧の水素ガスを貯蔵するために、例えば3層構造で構成されている。水素タンク30は、例えばガラス繊維強化プラスチックの外層と、炭素繊維強化プラスチックの中層と、プラスチックライナーの内層とを備えている。
水素タンク30には水素供給路31の上流端部が接続されている。水素供給路31の下流端部は燃料電池スタック20に接続されている。水素タンク30と燃料電池スタック20とが水素供給路31を介して接続されている。水素供給路31は、水素タンク30に貯蔵されている水素ガスを燃料電池スタック20に供給する。水素供給路31には、上流側から下流側に向けて順に、主止弁32、減圧弁33、インジェクタ34(調圧手段の一例)及び圧力センサ35が設けられている。
主止弁32は、水素供給路31を開閉する。主止弁32が開弁すると、水素タンク30から燃料電池スタック20に水素ガスが供給される。主止弁32が閉弁すると、水素タンク30から燃料電池スタック20に水素ガスが供給されなくなる。減圧弁33は、水素供給路31を流れる水素ガスの圧力を調整する。減圧弁33は、水素供給路31を通じて燃料電池スタック20に供給される水素ガスの圧力を減圧することができる。インジェクタ34は、水素供給路31を通じて燃料電池スタック20に供給される水素ガスの圧力及び流量を調整する。インジェクタ34は例えば電磁弁である。インジェクタ34が開弁すると燃料電池スタック20に水素が供給される。インジェクタ34が閉弁すると燃料電池スタック20に水素が供給されなくなる。インジェクタ34の開度及び開弁時間の調整によって水素ガスの圧力及び流量が調整される。圧力センサ35は、水素供給路31内の水素ガスの圧力を検出する。圧力センサ35によって水素供給路31内の水素ガスの圧力を検出することによって、気液分離容器10内の圧力を間接的に検出することができる。後述するECU100が、圧力センサ35の検出圧力に基づいて気液分離容器10内の圧力を特定する。以下では、圧力センサ35の検出圧力は、圧力センサ35によって間接的に検出される気液分離容器10内の圧力であるとして説明する。
燃料電池スタック20には水素供給路31の下流端部が接続されている。また、燃料電池スタック20には空気供給路60の下流端部が接続されている。空気供給路60の上流端部は外部に開放されている。外部の空気が空気供給路60を介して燃料電池スタック20に供給される。例えば、車両の走行中に車両の外部の空気が空気供給路60を通じて燃料電池スタック20に供給される。空気供給路60にはコンプレッサ61が設けられている。コンプレッサ61は、空気供給路60に導入された空気を燃料電池スタック20に圧送する。空気供給路60には、その他にも例えばエアクリーナやインタークーラが設けられていてもよい。
燃料電池スタック20は、水素と酸素の化学反応によって電力を発電する装置である。水素と酸素が化学反応することによって水が生成される。燃料電池スタック20は複数の単セル(図示省略)を備えている。各単セルは、燃料極と空気極を備えており、燃料極に水素ガス(燃料ガス)が供給され、空気極に酸素を含む空気が供給されることによって発電する。燃料電池スタック20で発電された電力は、例えば、車両の走行用モータに供給される。燃料電池スタック20での発電に使用されなかった未反応の水素ガス(以下「燃料オフガス」という)は、燃料電池スタック20から排出される。燃料電池スタック20から排出される燃料オフガスには、発電時に生成された水が蒸気の状態で含まれている。
燃料電池スタック20には、排ガス路21の上流端部が接続されている。排ガス路21の下流端部は気液分離容器10に接続されている。燃料電池スタック20と気液分離容器10が排ガス路21を介して接続されている。排ガス路21は、燃料電池スタック20から排出される燃料オフガスを気液分離容器10に供給する。気液分離容器10に供給される燃料オフガスには水(水蒸気)が含まれている。
図2に示すように、気液分離容器10の上部に排ガス路21の下流端部が接続されている。排ガス路21から気液分離容器10内に燃料オフガスが導入される。気液分離容器10は、排ガス路21から気液分離容器10内に導入された燃料オフガスに含まれている水を分離して貯留する。気液分離容器10内に導入された燃料オフガスに含まれている水蒸気が冷やされ、気液分離容器10内に凝縮水(液水)が貯留される。例えば、外気によって水蒸気が冷やされて凝縮水(液水)が気液分離容器10内に貯留される。気液分離容器10内に貯留される液水の量は、燃料電池システム1の運転状況等によって変動する。
気液分離容器10の上部には、ガス循環路22の上流端部が更に接続されている。気液分離容器10内の燃料オフガスがガス循環路22に流入する。図1に示すように、ガス循環路22の下流端部は、インジェクタ34よりも下流側の水素供給路31に接続されている。ガス循環路22を流れた燃料オフガスが水素供給路31に導入される。ガス循環路22には循環ポンプ23が設けられている。循環ポンプ23は、例えば電動式のポンプであっても、機械式のポンプであってもよい。循環ポンプ23は、ガス循環路22に流入した燃料オフガスを水素供給路31に圧送する。水素供給路31に導入された燃料オフガスは、水素供給路31を通じて再び燃料電池スタック20に供給される。これによって、燃料電池スタック20から排出された燃料オフガスが再び燃料電池スタック20に供給されて発電に利用される。
図2に示すように、気液分離容器10は、底面部11と側面部12と角部13とを備えている。底面部11は、水平方向に延びており、平坦に構成されている。側面部12は、上方向に延びている。側面部12は鉛直方向に延びている。変形例では、側面部12は鉛直方向に対して傾斜していてもよい。角部13は、底面部11と側面部12との間に位置している。角部13は、底面部11と側面部12を接続している。
気液分離容器10の下部には排水路50が接続されている。排水路50は、気液分離容器10の側面部12に接続されている。排水路50は、第1部分51と第2部分52と第3部分53とを備えている。第1部分51が気液分離容器10に接続されている。
第1部分51は、気液分離容器10の角部13よりも上側で気液分離容器10の側面部12に接続されている。第1部分51の上流端部511が気液分離容器10に接続されている。第1部分51は、気液分離容器10から水平方向に直線状に延びている。第1部分51の下流端部512に第2部分52が接続されている。第1部分51は、その内周面の下端513の高さ位置が、気液分離容器10の底面部11の内面113の高さ位置よりも高い位置になるように配置されている。第1部分51の内径D51は、燃料電池スタック20の定格発電量に応じて設定される。第1部分51の内径D51は、燃料電池スタック20の定格発電量が大きいほど大きい内径である。定格発電量は、燃料電池スタック20が連続して発電することが可能な発電量の最大値(上限値)として設定されている発電量である。
第1部分51には、気液分離容器10に貯留されている液水の一部が流入する。その結果、第1部分51に液水が貯留される。第1部分51内の液水の量は、燃料電池システム1の運転状況等によって変動する。そのため、燃料電池システム1における液水の含水率が燃料電池システム1の運転状況等によって変動する。燃料電池システム1における液水の含水率とは、気液分離容器10の容積と、排水路50の第1部分51の容積との合計(X1)に対する、気液分離容器10内に貯留されている液水の体積と、排水路50の第1部分51内に残留している液水の体積との合計(X2)の割合である。例えば、気液分離容器10の容積が400ccであり、排水路50の第1部分51の容積が100ccである場合は、X1が500ccである。また、気液分離容器10内に残留している液水の体積が200ccであり、排水路50の第1部分51内に残留している液水の体積が50ccである場合は、X2が250ccである。この場合は、燃料電池システム1における液水の含水率が50%である。あるいは、燃料電池システム1における気液分離容器10の底面部11に対する気液分離容器10及び排水路50の第1部分51内の液水の液面高さの割合であってもよい。例えば、気液分離容器10の底面部11から頂面部15までの全長が15cmであり、気液分離容器10の底面部11から液水の液面高さが3cmである場合は、含水率は20%である。
第2部分52は、第1部分51よりも下流側に位置している。第2部分52の上流端部521が、第1部分51の下流端部512に接続されている。第2部分52は、第1部分51に接続されている接続部分から上方向に延びている。即ち、第2部分52は重力作用方向とは反対側に向かって延びている。第2部分52は、鉛直方向に直線状に延びている。第1部分51と第2部分52の接続部分には屈曲部55が形成されている。屈曲部55は、第1部分51と第2部分52の間で屈曲している。屈曲部55は、水平方向から鉛直方向へ屈曲している。屈曲部55は90度屈曲している。
第2部分52の内径D52は、燃料電池スタック20の定格発電量に応じて設定される。第2部分52の内径D52は燃料電池スタック20の定格発電量が大きいほど大きい内径である。第2部分52の内径D52は、第1部分51の内径D51よりも小さい。例えば、第1部分51の内径D51は、第2部分52の内径D52の1.5倍から5.5倍である。変形例では、第2部分52の内径D52は、第1部分51の内径D51と略同等であってもよい。
第2部分52には排水弁40が設けられている。排水弁40は、第2部分52の下流端部522に設けられている。排水弁40は、第1部分51よりも高い位置に配置されている。排水弁40は、気液分離容器10の底面部11よりも高い位置に配置されている。排水弁40は、弁体41と弁軸42とを備えている。弁体41及び弁軸42は、弁軸42の軸方向に進退する。弁体41は、第2部分52の下流端部522に対して当接及び離間する。排水弁40は、弁体41が上下動することで第2部分52を開閉する。排水弁40が開弁すると、燃料オフガス及び液水が第2部分52から第3部分53へ流れる。排水弁40が閉弁すると、燃料オフガス及び液水が第3部分53へ流れなくなる。排水弁40に異常が生じて排水弁40が閉弁したまま開弁しない場合は、燃料オフガス及び液水が外部へ排出されなくなる。
第3部分53は、第2部分52よりも下流側に位置している。第3部分53の上流端部531が、包囲部54を介して第2部分52の下流端部522に接続されている。包囲部54は、排水弁40を囲んでいる。第3部分53は、第2部分52に接続されている部分から下方向に延びている。第3部分53は、鉛直方向に直線状に延びている。第3部分53を流れた燃料オフガス及び液水が外部へ排出される。
上記の燃料電池システム1は、水平方向に対して傾斜することがある。例えば、燃料電池システム1が搭載されている車両が傾斜した道路で停車しているときに燃料電池システム1が傾斜する。燃料電池システム1が傾斜すると、図3に示すように、排水路50が水平方向に対して傾斜する。排水路50が傾斜したとしても、第1部分51内の液水が排水弁40に付着しないことが望ましい。例えば、排水路50が所定の角度θだけ傾斜したとする。この場合において、第1部分51の下流端部512の内周面の上端59から排水弁40までの距離L1が距離L2よりも長い場合は、第1部分51内が満水であっても、第1部分51内の液水が排水弁40まで到達しない。距離L2は、第1部分51と第2部分52との接続部分における第2部分52の内径D52と、所定の角度θの正接(tanθ)との積(=D52×tanθ)である。所定の角度θは、例えば35度以上かつ45度以下の角度である。所定の角度θは、例えば、燃料電池システム1が搭載されている車両が走行する道路の最大傾斜角度である。また、所定の角度θは、燃料電池システム1が搭載されている車両が走行可能な最大傾斜角度であってもよい。この構成によれば、第1部分51内が満水の状態で燃料電池システム1が所定の角度θだけ傾斜したとしても、第1部分51内の液水の液面が排水弁40よりも下側に位置することになる。そのため、燃料電池システム停止時において第1部分51内に貯まった液水が排水弁40に付着することを抑制することができる。
図1に示すように、燃料電池システム1は、温度センサ90と、ダイアグランプ91(報知部の一例)と、ECU(Engine Control Unit)100(制御部の一例)とを備えている。温度センサ90は、燃料電池システム1が搭載されている車両に取り付けられている。温度センサ90は、車両の周囲の外気温度を検出する。ダイアグランプ91は、例えば、車両の計器盤に配置されている。ダイアグランプ91は、車両に異常が生じている場合に点灯する。ダイアグランプ91は、例えば、排水弁40に異常が生じている場合に点灯する。ECU100は、例えばCPUと、ROMやRAM等のメモリとを備えている。ECU100は、燃料電池システム1の運転を制御する。
(排水処理)
次に、燃料電池システム1で実行される排水処理について説明する。図4は、排水処理のフローチャートである。排水処理は、燃料電池システム1の運転を停止する際に、気液分離容器10内及び排水路50の第1部分51内に残留している液水の一部又は全部を外部に排出するための処理である。図4に示すように、排水処理のS100では、ECU100が、燃料電池システム1が搭載されている車両のイグニッションをオフにする。例えば、運転停止のために車両の運転手によって車両のスタート/ストップボタンが押されると、ECU100がイグニッションをオフにする。
続くS102では、ECU100が、外気温度が0℃未満であるか否かを判断する。外気温度は、車両に取り付けられている温度センサ90によって検出される。外気温度が0℃未満である場合は、S102でECU100がYESと判断してS104に進む。そうでない場合は、ECU100がNOと判断してS106に進む。S106では、ECU100が、通常の運転停止処理を実行する。通常の運転停止処理では、排水路50に設けられている排水弁40(図1参照)が開弁されない。ECU100は、S106の処理が終了すると排水処理を終了する。なお、変形例では、S102における基準温度が0℃ではなく5℃であってもよい。S102における基準温度は特に限定されるものではない。
S102でYESの後のS104では、ECU100が、圧力センサ35の検出圧力が所定の第1基準圧力P1以上であるか否かを判断する。圧力センサ35の検出圧力は、圧力センサ35によって間接的に検出される気液分離容器10内の圧力である。第1基準圧力P1は、排水処理が実行されることによって、燃料電池システム1における液水の含水率が目標含水率R1になる圧力である。
ここで、圧力センサ35の検出圧力と、燃料電池システム1における液水の含水率との関係について説明する。図5は、圧力センサ35の検出圧力と、燃料電池システム1における液水の含水率との関係を示すグラフである。図5に示す圧力と含水率との関係は、予め実験的及び/又は解析的に特定されている。燃料電池システム1では、図5に示すように、例えば、圧力センサ35の検出圧力がPである状態において、排水路50に設けられている排水弁40が開弁され、その状態で所定の第1基準時間T1が経過すると、燃料電池システム1における液水の含水率がR近傍になる。また、圧力センサ35の検出圧力が所定の第1基準圧力P1である状態において、排水弁40が開弁され、その状態で所定の第1基準時間T1が経過すると、燃料電池システム1における液水の含水率が所定の目標含水率R1近傍になる。第1基準圧力P1は、排水処理が実行されることによって、燃料電池システム1における液水の含水率が目標含水率R1近傍になる圧力である。排水処理は、燃料電池システム1における液水の含水率が目標含水率以下になるように実行される。
図4に示すように、S104で圧力センサ35の検出圧力が第1基準圧力P1以上である場合は、ECU100がYESと判断してS108に進む。そうでない場合は、ECU100がNOと判断してS110に進む。
S104でNOの後のS110では、ECU100が、水素供給路31に設けられているインジェクタ34(図1参照)を開弁する。なお、変形例では、インジェクタ34が既に開弁している場合は、インジェクタ34の開度を大きくしてもよい。インジェクタ34が開弁されると、水素供給路31を通じて燃料電池スタック20に水素ガスが供給される。そうすると、燃料電池スタック20から排出される燃料オフガスの流量が多くなり、気液分離容器10内の圧力が高くなる。その結果、圧力センサ35の検出圧力が、インジェクタ34が開弁される前の検出圧力よりも高くなる。ECU100は、S110の処理が終了すると、再びS104の処理に戻る。ECU100は、S110の処理によって圧力センサ35の検出圧力が高くなり、その検出圧力が第1基準圧力P1以上になると、S104でYESと判断してS108に進む。
S104でYESの後のS108では、ECU100が、排水路50に設けられている排水弁40(図1参照)を開弁する。排水弁40が開弁されると、気液分離容器10内、排水路50の第1部分51内及び第2部分52内に滞留している燃料オフガスが、排水路50を通じて外部に排出される。また、気液分離容器10内及び第1部分51内に貯留されている液水が、排水路50を通じて外部に排出される。このとき、気液分離容器10内及び第1部分51内の液水は、燃料オフガスが液水の液面に沿って流れるときの力(この力をせん断力と呼ぶこともある)によって、排水路50の上流側から下流側へ向けて押し流される。
続くS112では、ECU100が、上記のS108で排水弁40を開弁してから所定の第1基準時間T1が経過したか否かを判断する。第1基準時間T1は、圧力センサ35の検出圧力が第1基準圧力P1の状態で排水処理が実行されることによって、燃料電池システム1における液水の含水率が目標含水率R1になるような時間である。第1基準時間T1が経過した場合は、S112でECU100がYESと判断してS114に進む。そうでない場合は、ECU100がNOと判断して待機する。
続くS114では、ECU100が、排水弁40を閉弁する。排水弁40が閉弁されると、燃料オフガス及び液水が外部に排出されなくなる。ECU100は、S114の処理が終了すると排水処理を終了する。排水処理が終了すると、燃料電池システム1の運転が停止する。燃料電池システム1の運転停止後の第1部分51における液水の含水率は、目標含水率R1又はその近傍の含水率になる。
(異常判断処理)
次に、燃料電池システム1で実行される異常判断処理について説明する。図6は、異常判断処理のフローチャートである。異常判断処理は、燃料電池システム1の運転を開始する際に、排水弁40の異常を判断するための処理である。図6に示すように、異常判断処理のS120では、ECU100が、燃料電池システム1が搭載されている車両のイグニッションをオンにする。例えば、運転開始のために車両の運転手によって車両のスタート/ストップボタンが押されると、ECU100がイグニッションをオンにする。イグニッションがオンになると、ECU100が燃料電池システム1の運転を開始する。
続くS122では、ECU100が、外気温度が0℃未満であるか否かを判断する。外気温度は、車両に取り付けられている温度センサ90によって検出される。外気温度が0℃未満である場合は、S122でECU100がYESと判断してS124に進む。そうでない場合は、ECU100がNOと判断して異常判断処理を終了する。
S122でYESの後のS124では、ECU100が、排水路50に設けられている排水弁40(図1参照)を開弁するための開弁信号を排水弁40に送信する。開弁信号の送信によって排水弁40が正常に開弁されると、気液分離容器10内、第1部分51内及び第2部分52内に滞留している燃料オフガスが、排水路50を通じて外部に排出される。また、気液分離容器10内及び第1部分51内に貯留されている液水が、排水路50を通じて外部に排出される。したがって、排水弁40が正常に開弁されると、気液分離容器10内の圧力が低くなる、あるいは、あまり高くならない。
一方、排水弁40が正常に開弁されない場合(即ち、排水弁40に異常が生じている場合)は、気液分離容器10内、第1部分51内及び第2部分52内に滞留している燃料オフガスが、外部に正常に排出されない。また、気液分離容器10内及び第1部分51内に貯留されている液水が、外部に正常に排出されない。例えば、排水弁40が凍結しており、閉弁したまま開弁しない場合は、燃料オフガス及び液水が外部に正常に排出されない。したがって、この場合は、気液分離容器10内の圧力が高くなる、あるいは、低くならない。
続くS126では、ECU100が、圧力センサ35の検出圧力が所定の第2基準圧力P2以下であるか否かを判断する。第2基準圧力P2は、排水弁40に異常が生じているか否かを判断するための基準圧力である。圧力センサ35の検出圧力が第2基準圧力P2以下である場合は、S126でECU100がYESと判断してS128に進む。そうでない場合は、ECU100がNOと判断してS130に進む。上記のS124で排水弁40が正常に開弁された場合は、S126でYESと判断される。
S126でYESの後のS128では、ECU100が、排水弁40を閉弁する。ECU100は、S128の処理が終了すると異常判断処理を終了する。
S126でNOの後のS130では、ECU100が、上記のS124で排水弁40を開弁してから所定の第2基準時間T2が経過したか否かを判断する。第2基準時間T2は、排水弁40に異常が生じているか否かを判断するための基準時間である。第2基準時間T2は、例えば30秒である。第2基準時間T2が経過した場合は、S130でECU100がYESと判断してS132に進む。そうでない場合は、ECU100がNOと判断してS126に戻る。
S130でYESの後のS132では、ECU100が、排水弁40を閉弁する。続くS134では、ECU100が、水素供給路31に設けられているインジェクタ34(図1参照)を開弁する。なお、変形例では、インジェクタ34が既に開弁している場合は、インジェクタ34の開度を大きくしてもよい。インジェクタ34が開弁されると、水素供給路31を通じて燃料電池スタック20に水素ガスが供給される。そうすると、燃料電池スタック20から排出される燃料オフガスの流量が多くなり、気液分離容器10内の圧力が高くなる。その結果、図7に示すように、圧力センサ35の検出圧力が時間経過に伴って高くなる。圧力センサ35の検出圧力は、インジェクタ34が開弁される前の検出圧力よりも高くなる。
図6に示すように、続くS136では、ECU100が、圧力センサ35の検出圧力が所定の第3基準圧力P3以上であるか否かを判断する。第3基準圧力P3は、上記の第2基準圧力P2(S126参照)よりも高い圧力である。圧力センサ35の検出圧力が第3基準圧力P3以上である場合は、S136でECU100がYESと判断してS138に進む。そうでない場合は、ECU100がNOと判断して検出圧力が第3基準圧力P3以上になるまで待機する(図7参照)。なお、変形例では、S136でNOの場合に、ECU100がインジェクタ34の開度を更に大きくしてもよい。
続くS138では、ECU100が、排水弁40を開弁するための開弁信号を排水弁40に送信する。開弁信号の送信によって排水弁40が正常に開弁されると、燃料オフガス及び液水が排水路50を通じて外部に正常に排出される。したがって、気液分離容器10内の圧力が低くなり、圧力センサ35の検出圧力が低くなる(図7のA)。一方、排水弁40が正常に開弁されない場合は、燃料オフガス及び液水が外部に正常に排出されない。したがって、この場合は、気液分離容器10内の圧力が低くならず、圧力センサ35の検出圧力が低くならない(図7のB)。
続くS140では、ECU100が、圧力センサ35の検出圧力が第2基準圧力P2以下であるか否かを判断する。圧力センサ35の検出圧力が第2基準圧力P2以下である場合は、S140でECU100がYESと判断してS142に進む。そうでない場合は、ECU100がNOと判断してS144に進む。上記のS138で排水弁40が正常に開弁された場合は、圧力センサ35の検出圧力が低くなることによって、S140でYESと判断される。S140でYESの後のS142では、ECU100が、排水弁40を閉弁する。ECU100は、S142の処理が終了すると異常判断処理を終了する。
S140でNOの後のS144では、ECU100が、上記のS138で排水弁40を開弁してから第2基準時間T2が経過したか否かを判断する。第2基準時間T2が経過した場合は、S144でECU100がYESと判断してS146に進む。そうでない場合は、ECU100がNOと判断してS140に戻る。上記のS138で排水弁40が正常に開弁されない場合は、第2基準時間T2が経過しても圧力センサ35の検出圧力が低くならないので、S144でYESと判断される。
S144でYESの後のS146では、ECU100が、燃料電池システム1の運転を停止する。続くS148では、ECU100が、排水弁40の閉弁固着異常が生じていると判断してダイアグランプ91を点灯させる。ECU100は、S148の処理が終了すると異常判断処理を終了する。
[効果]
以上、実施例に係る燃料電池システム1について説明した。上記の説明から明らかなように、燃料電池システム1は、気液分離容器10の側面部12に接続されて気液分離容器10に貯留されている液水を気液分離容器10から排出する排水路50と、排水路50に設けられている排水弁40とを備えている。排水路50は、気液分離容器10の側面部12から水平方向に延びている第1部分51と、第1部分51の気液分離容器10と反対側の下流端部512から重力作用方向と反対側に向かって延びている第2部分52とを備えている。排水弁40は第2部分52に設けられている。
この構成によれば、気液分離容器10と、その側面部12から水平方向に延びている排水路50の第1部分51との両者によって液水を貯留することができる。液水を貯留するための領域を水平方向の広範囲にわたって確保することができる。排水路50の第1部分51が気液分離容器10の底面部11に接続されずに側面部12に接続されて水平方向に延びているので、気液分離容器10に液水が貯留される場合に、排水路50の第1部分51が液水で満たされることを抑制することができる。これによって、第1部分51内の液水が凍結したとしても、第1部分51が凍結した液水で閉塞することを抑制することができ、第1部分51内に流体を流すための空間を確保することができる。更に、排水路50の第2部分52が重力作用方向と反対側に向かって延びており、その第2部分52に排水弁40が設けられているので、燃料電池システム1の停止時に第1部分51内の液水が排水弁40に付着することを抑制することができる。そのため、第1部分51内の液水が凍結したとしても、排水弁40の開閉駆動に影響が及ぶことを抑制することができる。以上より、気液分離容器10に接続されている排水路50内の液水が凍結したとしても、排水路50を通じて液水を排出することができる。例えば、燃料電池システム1の運転が開始される際に、気液分離容器10に新たな液水が貯留された場合に、その液水を排水路50を通じて外部に排出することができる。
上記の燃料電池システム1では、排水路50の第2部分52の内径D52が第1部分51の内径D51よりも小さい。この構成によれば、排水路50の第2部分52を流れる液水の流速を速くすることができ、液水を効率的に排出することができる。第2部分52が重力作用方向と反対側に向かって延びている構成では、第2部分52を流れる液水が重力に抗して流れるので、液水の流速を速くする構成が効果的である。
排水路50の第1部分51の内径D51及び第2部分52の内径D52は、燃料電池スタック20の定格発電量が大きいほど大きい。この構成によれば、燃料電池スタック20から排出される液水の量が多くなっても、その液水を排水路50の第1部分51及び第2部分52を通じて効率的に排出することができる。
上記の燃料電池システム1では、ECU100が、燃料電池システム1の運転を停止する際に、圧力センサ35によって検出される気液分離容器10内の圧力が第1基準圧力P1以上である場合に、排水弁40を第1基準時間T1以上開弁する開弁処理を実行する(図5のS104でYES、S108、S112、S114)。この構成によれば、気液分離容器10内の圧力が高い状態のときに排水弁40を開弁することによって、燃料オフガスの圧力を利用して第1部分51に残留している液水を効率的に外部に排出することができる。また、第1基準圧力P1及び第1基準時間T1を用いることによって、燃料電池システム1の運転停止後に燃料電池システム1における液水の含水率を目標含水率R1に近づけることができる。つまり、燃料電池システム1の運転停止後に第1部分51に残留する液水を所望量に制御することができる。
また、ECU100は、圧力センサ35によって検出される気液分離容器10内の圧力が第1基準圧力P1未満である場合は、インジェクタ34を開弁して気液分離容器10内の圧力を第1基準圧力P1以上にし、その後に排水弁40を第1基準時間T1以上開弁する開弁処理を実行する(図5のS104でNO、S110、S104でYES、S108、S112、S114)。この構成によれば、気液分離容器10内の圧力が低い場合に気液分離容器10内の圧力を高めることによって、排水路50の第1部分51に残留している液水を効率的に排出することができる。
排水路50の第1部分51と第2部分52との接続部分における第1部分51の内周面の上端59から排水弁40までの距離L1は、接続部分における第2部分52の内径D52と所定の角度θの正接(tanθ)との積(=D52tanθ=L2)よりも長い(図3参照)。所定の角度θは例えば35度以上かつ45度以下である。
燃料電池システム1は、例えば燃料電池システム1が搭載されている車両が傾斜した道路で停車しているときに傾斜する。燃料電池システム1が傾斜すると排水路50も傾斜する。上記の構成によれば、排水路50が所定の角度θだけ傾斜したとしても、排水路50の第1部分51に残留している液水が排水弁40まで到達することがないので、液水が排水弁40に付着することを抑制することができる。そのため、排水路50が傾斜している状態で第1部分51に残留している液水が凍結したとしても、その影響が排水弁40に及ぶことを抑制することができる。排水弁40が凍結することを抑制することができる。また、車両が走行する道路の最大傾斜角度は、法令等によって35度以上かつ45度以下に設定されていることが多い。上記の構成によれば、排水路50が35度以上かつ45度以下の角度で傾斜したとしても、排水弁40が凍結することを抑制することができる。
上記の燃料電池システム1では、ECU100が、燃料電池システム1の運転を開始する際に、インジェクタ34を開弁して気液分離容器10内の圧力を高めた後に排水弁40に開弁信号を送信し、開弁信号を送信してから第2基準時間T2が経過した後に圧力センサ35によって検出される気液分離容器10内の圧力が第2基準圧力P2以上である場合は、排水弁40の閉弁固着異常を判定する。(図6のS134、S136でYES、S138、S140でNO、S144、S148)。
インジェクタ34を開弁して気液分離容器10内の圧力を高くした場合に、排水弁40が正常に開弁される場合は、燃料オフガス及び液水が排水路50を通じて外部に正常に排出されるので、気液分離容器10内の圧力が低くなる。一方、インジェクタ34を開弁して気液分離容器10内の圧力を高くした場合に、排水弁40が正常に開弁されない場合は、燃料オフガス及び液水が排水路50を通じて外部に正常に排出されないので、気液分離容器10内の圧力が低くならない。この場合は、排水弁40の閉弁固着異常と判定される。これによって、排水弁40が正常に開弁されないことが分かる。この場合は、例えばECU100がダイアグランプ91を点灯することによって、排水弁40に異常が生じていることを報知することができる。
以上、一実施例について説明したが、具体的な態様は上記実施例に限定されるものではない。以下の説明において、上記の説明における構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
(他の実施例)
(1)図2に示すように、排水路50の第1部分51の容積Sは、ECU100が開弁処理(図4参照)を終了してから燃料電池システム1の運転が開始され排水弁40が最初に開弁されるまでの間に気液分離容器10及び排水路50の第1部分51に貯留される液水の体積(V1+V2)から、気液分離容器10の容積のうち下側部分の容積V3を差し引いた値に相当するように規定されていてもよい。つまり、S=(V1+V2)―V3であってもよい。
燃料電池システム1の運転を停止する際に行う開弁処理の終了後に気液分離容器10及び排水路50の第1部分51に残留する液水の総体積V1は、目標含水率R1時に気液分離容器10及び排水路50の第1部分51に残留する液水の総体積とも換言することができる。
液水の体積V2は、例えば、燃料電池スタック20が定格発電量で発電する場合において燃料電池システム1の運転が開始されてから排水弁40が最初に開弁されるまでの間に気液分離容器10に貯留される液水の体積である。液水の体積V2は、例えば、予め実験的及び/又は解析的に特定されている。例えば、燃料電池システム1の運転が開始されてから排水弁40が最初に開弁されるまでの時間が予め特定されている。また、その時間に対して、燃料電池スタック20が定格発電量で発電する場合において気液分離容器10に貯留される液水の体積(貯留量)が予め特定されている。それらに基づいて液水の体積V2を特定することができる。
以下に、詳細を説明する。燃料電池システム1の運転が開始され排水弁40が最初に開弁されるまでの期間とは、発電要求量に大きな変動がなく、単位時間当たりの発電量がほとんど一定であるものと想定される。したがって、燃料電池システム1の運転が開始され排水弁40が最初に開弁されるまでの間に発電される発電量の積算値を予め推測することができる。そして、図8から明らかなように、発電量の積算値が分かれば発電に伴って生じる液水の体積を求めることができる。よって、燃料電池システム1の運転が開始され排水弁40が最初に開弁されるまでの間に発電された発電量の積算値に基づいて気液分離容器10及び排水路50の第1部分51に貯留される液水の体積V2を予め求めることができる。
第1部分51の容積Sは、第1部分51が気液分離容器10に接続されている部分から、第1部分51が第2部分52に接続されている部分(図2参照)までの容積である。
気液分離容器10の容積のうち下側部分の容積V3は、底面部11から側面部12に接続される排水路50の第1部分51の内周面の上端514までの高さで区画される気液分離容器10の容積(図2参照)である。
上記の構成によれば、排水路50の第1部分51の必要最小限の容積を規定できるため、燃料電池システム1の小型化を図ることができる。
(2)他の実施例では、図9に示すように、排水路50の第1部分51の内周面の下端513の高さ位置と、気液分離容器10の底面部11の内面113の高さ位置とが、同じ高さ位置にされていてもよい。
(3)更に他の実施例では、図10に示すように、排水路50の第1部分51の上流端部511が、気液分離容器10内に配置されていてもよい。
(4)更に他の実施例では、図11に示すように、排水路50の第1部分51が、小径部71と大径部72を備えていてもよい。大径部72の内径D72は、小径部71の内径D71よりも大きい。大径部72は、小径部71よりも下流側に配置されている。大径部72の内周面の下端723の高さ位置は、気液分離容器10の底面部11の内面113の高さ位置よりも低い位置にされている。
(5)更に他の実施例では、図12に示すように、第2部分52は、第1部分51に接続されている位置から斜め上方向に延びている部分を備えていてもよい。
(6)上記の実施例では、圧力センサ35が水素供給路31に設けられていたが(図1参照)、他の実施例では、圧力センサ35が気液分離容器10に設けられていてもよい。気液分離容器10に設けられている圧力センサ35によって気液分離容器10内の圧力を直接的に検出してもよい。
(7)上記の実施例では、排水処理(図4参照)のS102で外気温度が0℃以上である場合(S102でNO)、排水弁40の開弁処理を行っていなかった。このことについて、外気温度が0℃以上であっても、夜通し燃料電池システム1を停止する場合に外気温度が停止期間中に低下し0℃未満となり、気液分離容器10内及び排水路50の第1部分51内に残留している液水が凍結するおそれがある。これを考慮し、図4に示すS102に係る処理である、外気温度が0℃未満であるか否かの判定処理は省略してもよい。
あるいは、他の実施例として、図13に示す排水処理を実施してもよい。本処理では、排水処理のS102でNOの場合にS116の処理が実行されてもよい。S116では、ECU100が、外気温度が5℃未満であるか否かを判断する。外気温度が5℃未満である場合は、S116でECU100がYESと判断してS118に進む。そうでない場合は、ECU100がNOと判断してS106に進む。S106では、ECU100が、通常の運転停止処理を実行する。
S116でYESの後のS118では、ECU100が、現在時刻が15時以降かつ24時以前であるか否かを判断する。現在時刻が15時以降かつ24時以前である場合は、S118でECU100がYESと判断してS104に進む。そうでない場合は、ECU100がNOと判断してS106に進む。S118でYESの後のS104以降の処理については、上記の実施例で説明したので詳細な説明を省略する(図4参照)。
(8)上記の実施例では、圧力センサ35によって気液分離容器10内の圧力が検出されていたが、この構成に限定されるものではない。他の実施例では、圧力センサ35を用いずに、ECU100が気液分離容器10内の圧力を推測する構成であってもよい。
(9)他の実施例では、燃料電池システム1における液水の含水率は、排水路50の第1部分51における液水の含水率であってもよい。排水路50の第1部分51における液水の含水率は、第1部分51の容積に対する、第1部分51内に残留している液水の体積の割合である。例えば、第1部分51の容積が100ccであり、第1部分51内に残留している液水の体積が50ccである場合は、含水率は50%である。あるいは、第1部分51における液水の含水率は、第1部分51の内径D51に対する、第1部分51内の液水の液面高さの割合であってもよい。例えば、第1部分51の内径D51が10mmであり、第1部分51内の液水の液面高さが5mmである場合は、含水率は50%である。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。