1.第1変色幅W1および第2変色幅W2
本発明の可変色粘着シートは、外部刺激によって変色可能な粘着剤層を備え、下記試験1により求められる第1変色幅W1、および、下記試験2により求められる第2変色幅W2が、下記式(1)を満たす。
0.5<W2/W1<2 (1)
第1変色幅W1は、下記の<試験1>により求められる。
<試験1>
ステップA:粘着剤層に対して外部刺激を線状に付与する。
ステップB:ステップAの後に、粘着剤層内に形成された変色領域の幅を測定する。
第2変色幅W2は、下記の<試験2>により求められる。
<試験2>
ステップC:上記の<試験1>のステップA、ステップBの後に、85℃で120時間加熱処理する。
ステップD:ステップCの後に、粘着剤層内に形成された変色領域の幅を測定する。
可変色粘着シートは、上記のように、外部刺激によって変色可能な粘着剤層を備える。そのため、可変色粘着シートを被着体に貼り合わせた後、粘着剤層における変色予定部分に対して、外部刺激を付与することにより、粘着剤層を局所的に変色させることができる。このような可変色粘着シートでは、貼り合わせ後であって粘着剤層の変色部分形成前に、可変色粘着シートと被着体との間における異物および気泡の有無を検査できる。
また、可変色粘着シートでは、粘着剤層の第1変色幅W1および第2変色幅W2が上記式(1)を満たす。このような可変色粘着シートは、外部刺激付与によって粘着剤層に変色部分が形成された後に当該変色部分の劣化を抑制するに適し、従って、任意の箇所に、意匠性、遮蔽性、および、反射防止性を付与するのに適する。
この可変色粘着シートの使用方法の一例として、可変色粘着シートを、ディスプレイパネルにおける画素パネルの光出射側(画像表示側)に配置する場合がある。
詳しくは、ディスプレイパネルに備えられた画素パネル上に、ファインピッチで金属配線を設ける場合がある。そして、金属配線での外光反射を抑制する観点から、このような金属配線に対応するパターン形状で着色部分を設ける場合がある。
この可変色粘着シートでは、第1変色幅W1、および、第2変色幅W2が、上記式(1)を満たすため、遮蔽性、および、反射防止性を向上できる。その結果、金属配線での外光反射を抑制しつつ、金属配線が設けられたディスプレイパネルの視認性を向上できる。
また、第1変色幅W1、および、第2変色幅W2が、上記式(1)を満たすように調整する方法としては、例えば、金属錯体(後述)を用いる方法(第1の方法)、粘着剤層の弾性率を高める方法、粘着剤層中の着色成分が他の成分に結合されたものを用いる方法、非相溶性または低相溶性を利用した海島構造の島部に着色成分を設ける方法(第2の方法)が挙げられる。
粘着剤層の弾性率を高める方法としては、例えば、モノマー成分として多官能モノマーを用いる方法、架橋剤を用いる方法、および、これらの複合方法が挙げられる。
粘着剤層中の着色成分が他の成分に結合されたものを用いる方法としては、例えば、着色成分として、層中のポリマーに所定の色に発色可能な成分が連結・結合された着色ポリマーを用いる方法、当初は着色成分とポリマー成分が別々の成分であるが、反応により着色成分をポリマーに結合させる方法、および、これらの複合方法が挙げられる。
非相溶性または低相溶性を利用した海島構造の島部に着色成分を設ける方法としては、例えば、着色成分と相溶性の高いポリマーと、相溶性の低いポリマーを用い且つ相溶性が高いポリマーが島部となる海島構造として、着色成分を島部に設ける方法が挙げられる。
2.第1変色幅W1および第3変色幅W3
可変色粘着シートは、好ましくは、第1変色幅W1、および、下記試験3により求められる第3変色幅W3が、下記式(2)を満たす。
0.5<W3/W1<2 (2)
第3変色幅W3は、下記の<試験3>により求められる。
<試験3>
ステップE:上記の<試験1>のステップA、ステップBの後に、85℃で240時間加熱処理する。
ステップF:ステップEの後に、粘着剤層内に形成された変色領域の幅を測定する。
第1変色幅W1および第3変色幅W3が、上記式(2)を満たせば、任意の箇所に、より一層、意匠性、遮蔽性、および、反射防止性を付与できる。
また、第1変色幅W1、および、第3変色幅W3が、上記式(2)を満たすように調整する方法としては、上記した第1変色幅W1、および、第2変色幅W2が、上記式(1)を満たすように調整する方法と同様である。
3.平均透過率T1、平均透過率T2、および色差
可変色粘着シートは、好ましくは、下記試験4により求められる平均透過率T1、および、下記試験5により求められる平均透過率T2が、下記式(3)を満たし、好ましくは、下記式(4)を満たす。
0.2<T2/T1<3 (3)
0.2<T2/T1<2 (4)
平均透過率T1は、下記の<試験4>により求められる。
<試験4>
ステップG:粘着剤層に、300~400nmの波長帯の光を照射する。
ステップH:粘着剤層の、波長400nm~700nmにおける平均透過率を測定する。
平均透過率T1は、例えば、10%以上、好ましくは、15%以上である。平均透過率T1は、例えば、40%以下、好ましくは、30%以下である。平均透過率T1の測定方法について、より詳しくは、後述する耐候性試験において詳述する。
平均透過率T2は、下記の<試験5>により求められる。
<試験5>
ステップI:上記の<試験1>のステップGの後に、粘着剤層に、スーパーキセノンウェザーメーターで、波長300~400nmの範囲における照度が120Wであるキセノンランプを24時間照射する。
ステップJ:粘着剤層の、波長400nm~700nmにおける平均透過率を測定する。
平均透過率T2は、例えば、15%以上、好ましくは、24%以上である。平均透過率T2は、例えば、50%以下、好ましくは、40%以下である。平均透過率T2の測定方法について、より詳しくは、後述する耐候性試験において詳述する。
可変色粘着シートが上記式(3)または上記式(4)を満たせば、耐候性に優れる。平均透過率T1および平均透過T2が、上記式(3)または上記式(4)を満たすように調整する方法としては、例えば、粘着剤層への酸素透過性を小さくする方法、酸化防止剤を粘着剤層に添加する方法、および、紫外線吸収剤を含有する基材や粘着剤層を積層する方法が挙げられる。
また、後述する耐候性試験により測定される色差は、耐候性の観点から、例えば、30以下、好ましくは、28以下、より好ましくは、25以下、さらに好ましくは、20以下である。
4.可変色粘着シート
上記式(1)を満たし、好ましくは、上記式(2)~上記式(4)を満たす可変色粘着シートの一例としての、粘着シートSについて説明する。粘着シートSにおいては、第1変色幅W1、および、第2変色幅W2を、上記式(1)を満たすように調整する方法として、上記の第1の方法(第1の実施形態)および第2の方法(第2の実施形態)を採用しているが、これらに限定されない。
粘着シートSは、図1に示すように、粘着剤層10を備える。粘着シートSは、所定の厚みのシート形状を有し、厚み方向と直交する方向(面方向)に延びる。粘着シートSは、例えば、ディスプレイパネル(例えば、画素パネルおよびカバー部材を含む積層構造を有する)における画素パネルの画像表示側に配置される透明粘着シートとして、用いられる。
粘着剤層10は、粘着性組成物から形成された、透明性(可視光透過性)を有する感圧接着剤層である。粘着性組成物は、ベースポリマーと、酸との反応により発色する化合物と、酸発生剤とを含む。第1の実施形態では、粘着性組成物は、金属錯体を更に含む。
ベースポリマーは、粘着剤層10において粘着性を発現させるための粘着成分である。ベースポリマーは、室温域でゴム弾性を示す。ベースポリマーとしては、例えば、アクリルポリマー、ゴムポリマー、ポリエステルポリマー、ウレタンポリマー、ポリエーテルポリマー、シリコーンポリマー、ポリアミドポリマー、および、フッ素ポリマーが挙げられる。粘着剤層10における良好な透明性および粘着性を確保する観点から、ベースポリマーとしては、好ましくは、アクリルポリマーが用いられる。
粘着剤層10におけるベースポリマーの含有割合は、粘着剤層10でのベースポリマーの機能を適切に発現させる観点から、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上である。
アクリルポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50質量%以上の割合で含むモノマー成分を重合することにより得られるポリマーである。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。そのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、および、(メタ)アクリル酸エイコシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、好ましくは、炭素数1~12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが用いられ、より好ましくは、アクリル酸メチルと、炭素数2~12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルとが併用され、さらに好ましくは、アクリル酸メチルと、アクリル酸2-エチルヘキシルとが併用される。
モノマー成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、粘着剤層10において粘着性等の基本特性を適切に発現させる観点から、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。同割合は、例えば、99質量%以下である。
モノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性モノマーを含んでもよい。共重合性モノマーとしては、例えば、極性基を有するモノマー(極性基含有モノマー)が挙げられる。極性基含有モノマーは、アクリルポリマーへの架橋点の導入、アクリルポリマーの凝集力の確保など、アクリルポリマーの改質に役立つ。
極性基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、および、カルボキシ基含有モノマーが挙げられる。共重合性モノマーは、好ましくは、水酸基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、および、カルボキシ基含有モノマーからなる群から選択される少なくとも一種を含む。より好ましくは、共重合性モノマーは、水酸基含有モノマーおよび/または窒素原子含有環を有するモノマーを含む。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有モノマーとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが用いられ、より好ましくは、アクリル酸2-ヒドロキシエチルが用いられる。
モノマー成分における水酸基含有モノマーの割合は、アクリルポリマーへの架橋構造の導入、および、粘着剤層10における凝集力の確保の観点からは、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上である。同割合は、アクリルポリマー重合時の重合反応溶液の粘度調整、および、アクリルポリマーの極性(粘着剤層10における各種添加剤成分とアクリルポリマーとの相溶性に関わる)の調整の観点からは、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
窒素原子含有環を有するモノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、および、N-ビニルイソチアゾールが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーとしては、好ましくは、N-ビニル-2-ピロリドンが用いられる。
モノマー成分における、窒素原子含有環を有するモノマーの割合は、粘着剤層10における凝集力の確保、および、粘着剤層10における対被着体密着力の確保の観点からは、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上である。同割合は、アクリルポリマーのガラス転移温度の調整、および、アクリルポリマーの極性(粘着剤層10における各種添加剤成分とアクリルポリマーとの相溶性に関わる)の調整の観点からは、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、および、イソクロトン酸が挙げられる。
モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの割合は、アクリルポリマーへの架橋構造の導入、粘着剤層10における凝集力の確保、および、粘着剤層10における対被着体密着力の確保の観点からは、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上である。同割合は、アクリルポリマーのガラス転移温度の調整、および、酸による被着体の腐食リスクの回避の観点からは、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
モノマー成分は、他の共重合性モノマーを含んでいてもよい。他の共重合性モノマーとしては、例えば、酸無水物モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、スクシンイミド骨格を有するモノマー、マレイミド類、イタコンイミド類、アルコキシ基含有モノマー、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、および、芳香族ビニル化合物が挙げられる。
酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸および無水イタコン酸が挙げられる。
スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。
リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有アクリレート、アリルグリシジルエーテル、および、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルが挙げられる。
シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、例えば、N-ビニルカルボン酸アミド類、N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、および、N-(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。
N-ビニルカルボン酸アミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、および、N-ビニルアセトアミドが挙げられる。
N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、および、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
N-アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、および、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、およびN-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、および、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
スクシンイミド骨格を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、および、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミドが挙げられる。
マレイミド類としては、例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、および、N-フェニルマレイミドが挙げられる。
イタコンイミド類としては、例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、および、N-ラウリルイタコンイミドが挙げられる。
アルコキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール類が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、および、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、および、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールが挙げられる。
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルが挙げられる。
ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテルおよびエチルビニルエーテルが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、および、ビニルトルエンが挙げられる。オレフィン類としては、例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、および、イソブチレンが挙げられる。
共重合性モノマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
アクリルポリマーは、上記のモノマー成分を重合させることによって形成することができる。重合方法としては、例えば溶液重合、塊状重合、および乳化重合が挙げられ、好ましくは溶液重合が挙げられる。溶液重合では、例えば、モノマー成分と重合開始剤とを溶媒に配合して反応溶液を調製した後、その反応溶液を加熱する。そして、反応溶液中でのモノマー成分の重合反応を経ることによって、アクリルポリマーを含むアクリルポリマー溶液を得ることができる。
重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤が用いられる。重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上である。また、同使用量は、例えば、1質量部以下である。
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤および過酸化物系重合開始剤が挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、および、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドが挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルマレエ-ト、および、過酸化ラウロイルが挙げられる。
アクリルポリマーの重量平均分子量は、粘着剤層10における凝集力の確保の観点からは、例えば、100000以上、好ましくは、300000以上、より好ましくは、500000以上である。同重量平均分子量は、例えば、5000000以下、好ましくは、3000000以下、より好ましくは、2000000以下である。アクリルポリマーの重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)によって測定してポリスチレン換算により算出される。
ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、0℃以下、好ましくは、-10℃以下、より好ましくは、-20℃以下である。同ガラス転移温度は、例えば、-80℃以上である。
ポリマーのガラス転移温度(Tg)については、下記のFoxの式に基づき求められるガラス転移温度(理論値)を用いることができる。Foxの式は、ポリマーのガラス転移温度Tgと、ポリマーを構成するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。下記のFoxの式において、Tgはポリマーのガラス転移温度(℃)を表し、Wiはポリマーを構成するモノマーiの重量分率を表し、Tgiは、モノマーiから形成されるホモポリマーのガラス転移温度(℃)を示す。ホモポリマーのガラス転移温度については文献値を用いることができ、例えば、「Polymer Handbook」(第4版,John Wiley & Sons, Inc., 1999年)および「新高分子文庫7 塗料用合成樹脂入門」(北岡協三著,高分子刊行会,1995年)には、各種のホモポリマーのガラス転移温度が挙げられている。一方、モノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、特開2007-51271号公報に具体的に記載されている方法によって求めることも可能である。以上は、後述のハードセグメントおよびソフトセグメントのガラス転移温度についても同様である。
Foxの式 1/(273+Tg)=Σ[Wi/(273+Tgi)]
酸との反応により発色する化合物(発色性化合物)としては、例えば、ロイコ系色素、トリアリールメタン系色素、ジフェニルメタン系色素、フルオラン系色素、スピロピラン系色素、および、ローダミン系色素が挙げられる。発色性化合物は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
ロイコ系色素としては、例えば、2'-アニリノ-6'-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3'-メチルスピロ[フタリド-3,9'-[9H]キサンテン]、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジプロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、および、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリドが挙げられる。
トリアリールメタン系色素としては、例えば、p,p',p”-トリス-ジメチルアミノトリフェニルメタンが挙げられる。ジフェニルメタン系色素としては、例えば、4,4-ビス-ジメチルアミノフェニルベンズヒドリルベンジルエーテルが挙げられる。フルオラン系色素としては、例えば、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオランが挙げられる。スピロピラン系色素としては、例えば、3-メチルスピロジナフトピランが挙げられる。ローダミン系色素としては、例えば、ローダミン-B-アニリノラクタムが挙げられる。
粘着剤層10において、良好な黒系着色性を確保する観点から、発色性化合物としては、好ましくは、ロイコ系色素、より好ましくは、2'-アニリノ-6'-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3'-メチルスピロ[フタリド-3,9'-[9H]キサンテン]が用いられる。
ベースポリマー100質量部に対する発色性化合物の配合量は、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上である。同配合量は、例えば、10質量部以下、好ましくは、7質量部以下、より好ましくは、5質量部以下である。
酸発生剤としては、好ましくは、活性エネルギー線が照射されることによって酸を発生する光酸発生剤が用いられる。その場合、粘着剤層10は、外部刺激として活性エネルギー線の照射を受けた部分が変色可能である。具体的には、粘着剤層10において活性エネルギー線の照射を受けた部分では、光酸発生剤から酸が発生し、この酸によって発色性化合物が発色する。粘着剤層10において活性エネルギー線の照射を受けた部分は、発色性化合物の発色に応じて、例えば、黒系色に着色する。外部刺激としての活性エネルギー線の種類は、光酸発生剤の種類(具体的には、光酸発生剤が酸を発生する活性エネルギー線の波長)によって定まる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光、赤外線、X線、α線、β線、および、γ線が挙げられる。使用設備の多様性およびハンドリング容易性の観点からは、活性エネルギー線としては、好ましくは、紫外線が挙げられる。
光酸発生剤としては、例えば、紫外線照射によって酸を発生するオニウム化合物が挙げられる。オニウム化合物は、例えば、オニウムカチオンとアニオンとのオニウム塩の形態で提供される。オニウムカチオンとしては、例えば、ヨードニウムおよびスルホニウムが挙げられる。アニオンとしては、例えば、Cl-、Br-、I-、ZnCl3
-、HSO3
-、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、C4F9HSO3
-、(C6F5)4B-、および、(C4H9)4B-が挙げられる。光酸発生剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。光酸発生剤としては、好ましくは、スルホニウムとC4F9HSO3
-とからなるオニウム塩(オニウム化合物)が挙げられる。
ベースポリマー100質量部に対する酸発生剤の配合量は、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、より好ましくは、5質量部以上、さらに好ましくは、6質量部以上である。同配合量は、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
また、発色性化合物100質量部に対する酸発生剤の配合量は、例えば、100質量部以上、好ましくは、200質量部以上、より好ましくは、300質量部以上、さらに好ましくは、330質量部以上である。同配合量は、例えば、1000質量部以下、好ましくは、700質量部以下、より好ましくは、500質量部以下である。
金属錯体は、第1変色幅W1、および、第2変色幅W2を、上記式(1)を満たすように調整するために、配合される。ロイコ系色素などの着色成分は、金属錯体との配位結合により、移動が抑制される。金属錯体は、金属イオンに配位子が配位されたものである。金属イオンを構成する金属としては、周期律表(IUPAC Periodic Table of the Elements(version date 19 February 2010)に従う。以下同じ)第1族のアルカリ金属、第2族のアルカリ土類金属、第3族~第12族の遷移金属が挙げられる。金属としては、好ましくは、第2族のアルカリ土類金属、および、第3族~第12族の遷移金属、ロイコ系色素の発色体のカルボキシル基への強い配位性の観点からは、Mg(マグネシウム)、金属錯体によるロイコ系色素と形成される両性対イオンの寄与の観点からは、Zn(亜鉛)が挙げられる。
配位子としては、例えば、単座配位子、および、二座配位子が挙げられる。単座配位子としては、例えば、ヒドロキソ(OH-)、ハロゲン(例えば、クロロ(Cl-))、および、シアノ(CN-)が挙げられる。二座配位子としては、例えば、エチレンジアミン、ビピリジン、フェナントロリン、および、サリチル酸が挙げられる。このような金属錯体のうち、好ましくは、二座配位子、両性対イオンの寄与の観点からは、より好ましくは、サリチル酸亜鉛(具体的には、サリチル酸亜鉛三水和物)が挙げられる。金属錯体は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
ベースポリマー100質量部に対する金属錯体の配合量は、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上、より好ましくは、0.5質量部以上、さらに好ましくは、0.8質量部以上である。同配合量は、例えば、5質量部以下、好ましくは、2質量部以下である。
また、発色性化合物100質量部に対する金属錯体の配合量は、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、40質量部以上である。同配合量は、例えば、100質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。
また、粘着性組成物は、ベースポリマーへの架橋構造の導入の観点から、架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、オキサゾリン架橋剤、アジリジン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、および、金属キレート架橋剤が挙げられる。架橋剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
イソシアネート架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、および、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートが挙げられる。また、イソシアネート架橋剤としては、これらイソシアネートの誘導体も挙げられる。イソシアネート誘導体としては、例えば、イソシアヌレート変性体およびポリオール変性体が挙げられる。イソシアネート架橋剤の市販品としては、例えば、コロネートL(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体,東ソー製)、コロネートHL(へキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体,東ソー製)、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体,東ソー製)、および、タケネートD110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体,三井化学製)が挙げられる。
エポキシ架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、および、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
架橋剤としては、好ましくは、イソシアネート架橋剤、より好ましくは、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が挙げられる。
架橋剤の配合量は、粘着剤層10の凝集力を確保する観点からは、ベースポリマー100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは、0.07質量部以上である。粘着剤層10において良好なタック性を確保する観点からは、ベースポリマー100質量部に対する架橋剤の配合量は、例えば、10質量部以下であり、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、3質量部以下である。
ベースポリマーに架橋構造が導入される場合、架橋反応を効果的に進行させるために架橋触媒が用いられてもよい。架橋触媒としては、例えば、金属系架橋触媒が挙げられる。金属系架橋触媒としては、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、および、ブチルスズオキシドが挙げられる。架橋触媒としては、好ましくは、ジラウリン酸ジブチルスズが挙げられる。架橋触媒の使用量は、ベースポリマー100質量部に対して、例えば、0.0001質量部以上である。また、同使用量は、例えば、1質量部以下である。
また、架橋剤として、イソシアネート架橋剤(具体的には、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)を配合し、また、架橋触媒として、金属系架橋触媒(具体的には、ジラウリン酸ジブチルスズ)を配合する場合には、好ましくは、粘着性組成物に、アセチルアセトンを配合する。
アセチルアセトンを配合すると、アセチルアセトンがジラウリン酸ジブチルスズに配位する。これにより、粘着性組成物を、剥離フィルム(または基材20)上に塗布して塗膜を形成する前に、架橋反応の進行を抑制できる。また、詳しくは後述するが、塗膜形成時に加熱乾燥することで、アセチルアセトンを取り除き、架橋反応を進行させることができる。
アセチルアセトンの使用量は、架橋触媒100質量部に対して、例えば、100質量部以上、好ましくは、10000質量部以上である。また、同使用量は、例えば、50000質量部以下である。
また、粘着性組成物は、必要に応じて、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、重合性化合物およびその硬化物、光重合開始剤、シランカップリング剤、粘着性付与剤、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、界面活性剤、および、帯電防止剤が挙げられる。
重合性化合物としては、例えば、一つの重合性官能基(エチレン性不飽和二重結合)を有するモノマー(単官能モノマー)、および、複数の重合性官能基を有するモノマー(多官能モノマー)が挙げられる。単官能モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能モノマーとしては、例えば、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
粘着性組成物が、重合性化合物を含む場合には、好ましくは、粘着性組成物は、さらに、光重合開始剤を含む。
粘着性組成物は、ベースポリマーと、酸との反応により発色する化合物と、酸発生剤と、金属錯体と、必要により配合される架橋剤と、必要により配合される架橋触媒と、必要により配合されるアセチルアセトンと、必要により配合される他の成分とを、上記した割合で配合することによって、得られる。
粘着シートSは、例えば、上記の粘着性組成物を剥離フィルム(第1剥離フィルム)上に塗布して塗膜を形成した後、塗膜を乾燥させることによって、製造できる(図1では、仮想線で示す剥離フィルムL上に粘着シートSが配置されている)。
剥離フィルムとしては、例えば、可撓性を有するプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、および、ポリエステルフィルムが挙げられる。剥離フィルムの厚みは、例えば、3μm以上である。また、同厚みは、例えば、200μm以下である。剥離フィルムの表面は、好ましくは、離型処理されている。
粘着性組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、および、ダイコートが挙げられる。塗膜の乾燥温度は、例えば、50℃以上である。また、同感想温度は、例えば、200℃以下である。乾燥時間は、例えば、5秒以上である。また、同乾燥時間は、例えば、20分以下である。
粘着性組成物が架橋剤を含む場合、上記の乾燥と同時に、または、その後のエージングによって、架橋反応が進行する。エージング条件は、架橋剤の種類によって適宜設定される。エージング温度は、例えば、20℃以上である。また、同エージング温度は、例えば、160℃以下である。エージング時間は、例えば、1分以上である。また、同エージング時間は、例えば、7日以下である。
また、粘着性組成物がアセチルアセトンを含有する場合(換言すれば、アセチルアセトンがジラウリン酸ジブチルスズに配位している場合)には、乾燥時に、ジラウリン酸ジブチルスズに配位したアセチルアセトンが取り除かれる。これにより、架橋反応を進行させることができる。
また、エージングの前または後に、第1剥離フィルム上の粘着剤層10の上にさらに剥離フィルム(第2剥離フィルム)を積層してもよい。第2剥離フィルムは、例えば、表面離型処理が施された可撓性のプラスチックフィルムである。第2剥離フィルムとしては、第1剥離フィルムに関して上記したのと同様のものを用いることができる。
以上のようにして、剥離フィルムによって粘着面が被覆保護された粘着シートSを製造できる。各剥離フィルムは、粘着シートSを使用する際に必要に応じて粘着シートSから剥がされる。
粘着剤層10の厚みは、被着体に対する充分な粘着性を確保する観点から、例えば、10μm以上、好ましくは、15μm以上である。粘着シートSのハンドリング性の観点からは、粘着剤層10の厚みは、例えば、300μm以下、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、50μm以下である。
粘着剤層10のヘイズは、例えば、3%以下、好ましくは、2%以下、より好ましくは、1%以下である。このような構成は、粘着シートSを被着体に貼り合わせた後に粘着シートSと被着体との間における異物および気泡の有無を検査するのに適する。粘着剤層10のヘイズは、JIS K7136(2000年)に準拠して、ヘイズメーターを使用して測定できる。ヘイズメーターとしては、例えば、日本電色工業社製の「NDH2000」、および、村上色彩技術研究所社製の「HM-150型」が挙げられる。
粘着剤層10の波長400~700nmでの平均透過率(粘着剤層10に外部刺激を与える前の平均透過率)は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上、より好ましくは90%以上である。このような構成は、粘着シートSを被着体に貼り合わせた後に粘着シートSと被着体との間における異物および気泡の有無を検査するのに適する。
また、粘着シートSにおいて、粘着剤層10を、ガラス板に対して貼着した後、23℃、剥離角度180°および剥離速度300mm/分の剥離条件での剥離試験において、ガラス板に対して示す粘着力は、例えば、1.0N/25mm以上、好ましくは、5.0N/25mm以上である。同粘着力は、好ましくは、50N/25mm以下、より好ましくは、40N/25mm以下、さらに好ましくは、20N/25mm以下である。
粘着剤層10が、周波数1Hzおよび昇温速度5℃/分の条件での動的粘弾性測定で示す、25℃でのせん断貯蔵弾性率は、好ましくは、0.1×105Pa以上、より好ましくは、0.5×105Pa以上、さらに好ましくは、1×105Pa以上である。せん断貯蔵弾性率は、好ましくは、10×105Pa以下、より好ましくは5×105Pa以下、さらに好ましくは、3×105Pa以下である。
第2の実施形態では、粘着剤層10のポリマー成分(ベースポリマー)は、スフィア型のミクロ相分離構造を有する。スフィア型のミクロ相分離構造は、具体的には海島構造を有し、マトリクス(海部)中に球状の分散相(島部)が分散している。粘着剤層10において、分散相は発色性化合物と相溶性を有し、マトリクスは発色性化合物と相溶性を有さない。このような粘着シートSは、粘着剤層10に変色部分が形成された後(即ち、外部刺激によって発色性化合物が発色した後)に島部に発色性化合物が留まりやすいので、粘着剤層10内での発色性化合物の移動(拡散など)を抑制するのに適する。発色性化合物の移動の抑制により、変色部分の劣化(滲み、退色、色味の不均一化など)が抑制される。
ポリマー成分は、例えば、マトリクスを形成するソフトセグメントと、分散相を形成するハードセグメントとを分子内に有するポリマー(第1ポリマー)を含む。第1ポリマーとしては、例えば、ソフトセグメントとしての第1重合体ブロックと、ハードセグメントとしての第2重合体ブロックとを有するブロックポリマーが挙げられる。ブロックポリマーは、モノマー組成の異なる複数の第1重合体ブロックを有してもよいし、モノマー組成の異なる複数の第2重合体ブロックを有してもよい(この場合、ブロックポリマーは、モノマー組成に基づくブロック種類数が3以上であるマルチブロック共重合体である)。第1ポリマーとしては、ソフトセグメントとしてのポリマー主鎖と、ハードセグメントとしてのポリマー側鎖とを有するグラフトポリマーも挙げられる。グラフトポリマーは、モノマー組成の異なる複数のポリマー側鎖を有してもよいし、モノマー組成の異なる複数の重合体ブロックをポリマー主鎖内に有してもよい。ポリマー成分は、一種類の第1ポリマーを含んでもよいし、複数種類の第1ポリマーを含んでもよい。
ポリマー成分は、第1ポリマー以外のポリマー(第2ポリマー)を含んでもよい。例えば、ポリマー成分は、第1ポリマーのソフトセグメントと共にマトリクスを形成する第2ポリマーを含んでもよいし、第1ポリマーのハードセグメントと共に分散相を形成する第2ポリマーを含んでもよい。ポリマー成分は、一種類の第2ポリマーを含んでもよいし、複数種類の第2ポリマーを含んでもよい。
本実施形態では、島部を形成するハードセグメントは、実施例に関して後述する相溶性判定試験によって着色剤が相溶性を有すると判定されるモノマー溶液(25℃でモノマー溶液を用意できない場合はポリマー溶液)と同一のモノマー組成を80質量%以上含有するセグメントである。このようなハードセグメントから形成される島部に対し、発色性化合物は相溶性を有する。このハードセグメントのガラス転移温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは50℃以上である。
本実施形態では、海部を形成するソフトセグメントは、実施例に関して後述する相溶性判定試験によって着色剤が相溶性を有さないと判定されるモノマー溶液(25℃でモノマー溶液を用意できない場合はmポリマー溶液)と同一のモノマー組成を80質量%以上含有するセグメントである。このようなソフトセグメントから形成される第2相に対し、発色性化合物は相溶性を有さない。このソフトセグメントのガラス転移温度は、好ましくは0℃以下、より好ましくは0℃未満、更に好ましくは-30℃以下、特に好ましくは-50℃以下である。粘着剤層10の粘着力確保の観点から、ポリマー成分におけるソフトセグメントの質量割合は、好ましくはハードセグメントの質量割合より大きい。
本実施形態におけるベースポリマーに含まれるポリマーとしては、海島構造の形成のしやすさの観点から、好ましくは、ゴムポリマーおよび/またはアクリルポリマーが用いられる。
ゴムポリマーとしては、好ましくは、スチレン共重合体が用いられる。スチレン共重合体としては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、および、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)が挙げられる。これらスチレン共重合体において、スチレンはハードセグメントを形成し、スチレンと共重合している不飽和炭化水素はソフトセグメントを形成する。ゴムポリマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
スチレン共重合体におけるスチレン含有割合は、好ましくは5質量以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。スチレン共重合体におけるスチレン含有割合は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
第2の実施形態におけるアクリルポリマーの(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび共重合性モノマーとしては、第1の実施形態におけるアクリルポリマーに関して上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび共重合性モノマーを用いることができる。ハードセグメントを形成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、好ましくは、炭素数1~5のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが用いられ、より好ましくは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、およびアクリル酸n-ブチルからなる群より選択される少なくとも一つが用いられる。ソフトセグメントを形成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、好ましくは、炭素数7~20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが用いられ、より好ましくは、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、およびアクリル酸オクタデシルからなる群より選択される少なくとも一つが用いられる。ハードセグメントを形成する共重合性モノマーとしては、好ましくは芳香族ビニル化合物が用いられ、より好ましくはスチレンが用いられる。
ポリマー成分は、好ましくは、第1ポリマーとしてスチレン-イソプレン-スチレン共重合体を含み、第2ポリマーとしてスチレン・アクリル酸n-ブチル共重合体を含む。スチレン-イソプレン-スチレン共重合体100質量部に対するスチレン・アクリル酸n-ブチル共重合体の量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。
第2の実施形態の粘着シートSの粘着剤層10は、第1の実施形態に関して上述した金属錯体を含有してもよいし、含有しなくてもよい。
第1および第2の実施形態の各粘着シートSは、図2に示すように、粘着剤層10に加えて基材20を備える基材付き片面粘着シートであってもよい。この場合、粘着シートSは、具体的には、粘着剤層10と、その厚み方向Dの一方面側に配置される基材20とを備える。好ましくは、基材20は、粘着剤層10の厚み方向Dの一方面に接触する。
基材20は、透明な支持体として機能する要素である。基材20は、例えば、可撓性を有するプラスチックフィルムである。プラスチックフィルムの構成材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、ポリスチレン、および、ポリカーボネートが挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、および、エチレン・ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、および、ポリブチレンテレフタレートが挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド6,6、および、部分芳香族ポリアミドが挙げられる。基材20において、その透明性と機械的強度とを両立させる観点からは、基材20のプラスチック材料は、好ましくは、ポリエステル、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。
基材20は、透明性を有する。基材20のヘイズは、例えば、3%以下、好ましくは、2%以下、より好ましくは1%以下である。基材20のヘイズは、JIS K7136(2000年)に準拠して、ヘイズメーターを使用して測定できる。
基材20における粘着剤層10側の表面は、粘着剤層10との密着性を高めるための物理的処理、化学的処理、または、下塗り処理が施されていてもよい。物理的処理としては、例えば、コロナ処理およびプラズマ処理が挙げられる。化学的処理としては、例えば、酸処理およびアルカリ処理が挙げられる。
基材20の厚みは、基材20が支持体として機能するための強度を確保する観点からは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、20μm以上である。また、粘着シートSにおいて適度な可撓性を実現する観点からは、基材20の厚みは、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下、より好ましくは、100μm以下である。
図2に示す粘着シートSは、例えば、第1剥離フィルムの代わりに基材20を用いること以外は上記の製造方法と同様にして、製造できる。
図3は、第1および第2の実施形態の各粘着シートSの使用方法の一例を表す。本方法は、用意工程と、接合工程と、変色部分形成工程とを備える。
まず、用意工程では、図3Aに示すように、粘着シートSと、第1部材31と、第2部材32とを用意する。第1部材31は、例えば、ディスプレイパネルである。第1部材31は、他の電子デバイス、および、光学デバイスであってもよい。第2部材32は、例えば透明基材である。透明基材としては、透明プラスチック基材および透明ガラス基材が挙げられる。
次に、接合工程では、図3Bに示すように、粘着シートSを介して第1部材31および第2部材32を接合する。これにより、積層体Wが得られる。積層体Wにおいて、粘着シートSは、第1部材31の厚み方向一方面に接触するように配置され、第2部材32は、その粘着シートSの厚み方向一方面に接触するように配置される。
接合工程の後、必要に応じて、部材31,32と粘着シートSとの間における異物および気泡の有無を検査する。
次に、変色工程では、図3Cに示すように、積層体Wにおける粘着剤層10に外部刺激を与えて、粘着剤層10において変色部分11を形成する。具体的には、透明な第2部材32の側から、粘着剤層10における所定領域をマスクするためのマスクパターン(図示略)を介して、粘着剤層10に対して外部刺激としての活性エネルギー線を照射する。これにより、粘着剤層10におけるマスクパターンでマスクされていない部分を変色させる。
本工程では、粘着剤層10において、活性エネルギー線照射を受けた部分で、光酸発生剤から酸が発生し、この酸との反応によって発色性化合物が発色する。これによって、粘着剤層10に変色部分11が形成される。
粘着シートSは、粘着剤層10が、上記のように、発色性化合物を含有する。そのため、粘着シートSを被着体(本実施形態では部材31,32)に貼り合わせた後、粘着剤層10における変色予定部分に対する外部刺激の付与により、粘着剤層10を局所的に変色させることができる。被着体に貼り合わせた後に粘着剤層10に変色部分11を形成できる粘着シートSでは、貼り合わせ後であって粘着剤層10の変色部分11形成前に、粘着シートSと被着体との間における異物および気泡の有無を検査できる。
また、粘着シートSでは、粘着剤層10の第1変色幅W1および第2変色幅W2が上記式(1)を満たす。このような粘着シートSは、外部刺激付与によって粘着剤層10に変色部分が形成された後に当該変色部分の劣化を抑制するに適し、従って、任意の箇所に、意匠性、遮蔽性、および、反射防止性を付与するのに適する。
また、粘着シートSの使用方法の一例として、粘着シートSを、ディスプレイパネルにおける画素パネルの光出射側(画像表示側)に配置する場合がある。詳しくは、第1部材31がディスプレイパネルである場合、ディスプレイパネルが備える画素パネル上に形成された、金属配線としての導体層に対応する(即ち対面する)パターン形状で変色部分11を設ける。これにより、導体層での外光反射を抑制できる。
導体層の幅は、例えば10μm以上である。導体層の幅は、例えば300μm以下である。また、導体層は、好ましくは、ファインピッチで形成されている。各導体層同士の間隔は、例えば、10μm以上である。また、同間隔は、例えば、100000μm以下である。
変色部分11の線幅は、上記した導体層の幅と対応している。具体的には、変色部分11の線幅は、例えば10μm以上である。また、同線幅は、例えば300μm以下である。また、各変色部分11の間隔は、例えば10μm以上である。また、同間隔は、例えば100000μm以下である。
この粘着シートSでは、第1変色幅W1および第2変色幅W2が、上記式(1)を満たすため、遮蔽性、および、反射防止性を向上できる。その結果、金属配線での外光反射を抑制しつつ、金属配線が設けられたディスプレイパネルの視認性を向上できる。
なお、本発明の特徴は、上記したW2/W1を調整し、好ましくは、W3/W1を調整することにある。すなわち、本発明の可変色フィルムの利用形態として、線状の着色部分(発色部分)を形成することに限定されず、各種形状の着色部分を形成することができる。より具体的には、形成可能な着色部分としては、線状、点状、矩形状、円形状、楕円形状、不定形状などを例示できる。
本発明について、以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されない。また、以下に記載されている配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの上限(「以下」または「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」または「超える」として定義されている数値)に代替できる。
製造例1(ベースポリマーの調製)
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備える反応容器内で、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)63質量部と、メタクリル酸メチル(MMA)9質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)13質量部と、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)15質量部と、重合開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部と、溶媒としての酢酸エチル233質量部と含む混合物を、60℃で7時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、アクリルポリマーを含有するポリマー溶液を得た。このポリマー溶液中のアクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)は120万であった。
〔実施例1〕
〈粘着性組成物の調製〉
製造例1のアクリルポリマーを含有する上記のポリマー溶液に、アクリルポリマー(ベースポリマー)100質量部あたり、下記成分を均一に混合して粘着性組成物を調製した。
酸との反応により発色する化合物:ロイコ系色素(商品名「S-205」,2´-アニリノ-6´-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3´-メチルスピロ[フタリド-3,9´-[9H]キサンテン],山田化学工業社製)2.00質量部
酸発生剤:光酸発生剤(商品名「CPI-310B」,スルホニウムと(C6F5)4B-とのオニウム塩,サンアプロ社製)7.00質量部
金属錯体:サリチル酸亜鉛三水和物(富士フイルム和光純薬社製)0.38質量部
架橋剤:「タケネートD110N」(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の75%酢酸エチル溶液,三井化学製)0.25質量部(固形分換算量)
架橋触媒:ジラウリン酸ジブチルスズ(1質量%酢酸エチル溶液)0.01質量部(固形分換算量)
アセチルアセトン:3.00質量部
〈粘着剤層の形成〉
片面が剥離面となっている剥離フィルム(商品名「MRF#38」,ポリエステルフィルム,厚み38μm,三菱樹脂社製)に粘着性組成物を塗布して、塗膜を形成した。次に、この塗膜を、132℃で3分間乾燥させて、厚み25μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層に、片面が剥離面となっている剥離フィルム(商品名「MRF#38」,ポリエステルフィルム,厚み38μm,三菱樹脂社製)を貼り合わせた。その後、60℃で24時間、エージング処理し、粘着剤層において、架橋反応を進行させた。
以上のようにして、実施例1の粘着シートを作製した。実施例1の粘着シートにおける粘着剤層の組成について、単位を質量部として表1に示す(後記の実施例1~3および比較例1についても同様である)。
〔実施例2,3および比較例1〕
実施例1の粘着シートと同様にして、実施例2,3および比較例1の各粘着シートを作製した。ただし、粘着性組成物の組成を表1に示す量に変更した。
〔実施例4〕
〈粘着性組成物の調製〉
第1ポリマー(ベースポリマー)としてのスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(商品名「Quintac 3520」,スチレン含有割合15質量%,日本ゼオン社製)100質量部あたり、下記成分を均一に混合して粘着性組成物を調製した。
第2ポリマー:スチレン-アクリルブロック共重合体(商品名「FBP-001」,藤倉化成社製)5質量部
酸との反応により発色する化合物(発色性化合物):ロイコ系色素、2´-アニリノ-6´-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3´-メチルスピロ[フタリド-3,9´-[9H]キサンテン](商品名「S-205」,山田化学工業社製)2.00質量部
酸発生剤:光酸発生剤(商品名「CPI-310B」,スルホニウムと(C6F5)4B-とのオニウム塩,サンアプロ社製)7.00質量部
架橋剤:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名「テトラッド-C」,三菱ガス化学社製)0.25質量部
〈粘着剤層の形成〉
片面が離型処理されている厚さ38μmの基材フィルム(商品名「MRF#38」,ポリエステルフィルム,三菱樹脂社製)の離型処理面上に、粘着性組成物を塗布して塗膜を形成した。次に、この塗膜を、132℃で3分間の加熱によって、乾燥させた。これにより、基材フィルム上に厚さ25μmの粘着剤層を形成した。次に、基材フィルム上の粘着剤層に、片面が離型処理されている厚さ38μmの剥離フィルム(商品名「MRE#38」,ポリエステルフィルム,三菱樹脂社製)の離型処理面を貼り合わせた。その後、60℃で24時間、エージング処理し、粘着剤層中の架橋反応を進行させた。以上のようにして、実施例4の粘着シートを作製した。実施例4の粘着シートにおける粘着剤層の組成について、単位を質量部として表2に示す(後記の実施例5~7についても同様である)。
〔実施例5~7〕
実施例4の粘着シートと同様にして、実施例5~7の各粘着シートを作製した。ただし、第2ポリマーの配合量を表2に示す量に変更した。
<評価>
1.耐候性試験
(耐候性試験用試料の製造)
イーグルガラス(厚み0.55mm、松浪硝子社製)の厚み方向一方面に対して、各実施例および各比較例の粘着剤層25μm、UVA-TAC 32μm、UVA-OCA100μm、および、UVA-TAC 32μmの順になるように積層させた。各実施例および各比較例の積層体において、当該サンプルに対して紫外線を照射した。具体的には、サンプルにおける粘着シート(粘着剤層)に対し、23℃および相対湿度50%の環境下において、イーグルガラス側から同ガラス越しに、紫外線を照射した(当該UV照射により、粘着剤層中のロイコ系色素と光酸発生剤とを反応させた)。このUV照射では、クォークテクノロジー社製のUV-LED照射装置(型番「QEL-350-RU6W-CW-MY」)における波長365nmのUV-LEDランプを光源として使用し、照射積算光量を8000mJ/cm2(波長320~390nmの範囲での照射積算光量)とした。以上のようにして、耐候性試験用試料を作製した。
UVA-TAC:TACフィルム(KC2UA、コニカミノルタ社製)とハードコート層とを順に備えるフィルム(ハードコート処理により、KC2UA(厚み:25μm)の一方面にハードコート層(厚み:7μm)を形成することにより得られる(厚み:32μm)
UVA-OCA:紫外線吸収機能を有する粘着テープ、商品名「CS9934U」、厚み100μm、日東電工社製
(耐候性試験)
実施例1~3および比較例1の耐候性試験用試料において、平均透過率、L*、a*、および、b*の値を測定した。
具体的には、耐候性試験用試料において、イーグルガラス側から光が当たるように、透過率測定装置(U4150形分光光度計、日立ハイテクサイエンス社製)に設置した。そして、波長400nm~700nmにおける平均透過率、L*、a*、および、b*の値をそれぞれ測定した。
詳しくは、耐候性試験用試料の波長400nm~700nmにおける平均透過率(T1)と、耐候性試験用試料に対するL*(L1*)と、耐候性試験用試料に対するa*(a1*)と、耐候性試験用試料に対するb*(b1*)とをそれぞれ測定した。
次いで、耐候性試験用試料に、スガ試験機社製スーパーキセノンウェザーメーターSX75用いて、波長300~400nmの範囲における照度が120Wであるスーパーキセノンランプを、24時間照射した。これにより、24時間照射後の耐候性試験用試料を得た。
次いで、上記と同様の手順により、24時間照射後の耐候性試験用試料の平均透過率、L*、a*、および、b*の値を測定した。
詳しくは、24時間照射後の耐候性試験用試料の波長400nm~700nmにおける平均透過率(T2)と、24時間照射後の耐候性試験用試料に対するL*(L2*)と、24時間照射後の耐候性試験用試料に対するa*(a2*)と、24時間照射後の耐候性試験用試料に対するb*(b2*)とを、それぞれ測定した。
そして、下記式(7)に基づき、色差(ΔE)を算出した。
ΔE=((L2*-L1*)2+(a2*-a1*)2+(b2*-b1*)2)1/2 (7)
T1、T2、および、色差(ΔE)の結果を表1に示す。
2.耐久性試験
粘着シートの粘着剤層に対する、線状の開口部を有するフォトマスクを介した紫外線照射により、粘着剤層に線状の変色部分を形成した。フォトマスクは、粘着シートにおける基材フィルム側表面に配置されたドライフィルムフォトレジストから形成され、フォトマスクの開口部の線幅は200μmであった。紫外線照射では、クォークテクノロジー社製のUV-LED照射装置(型番「QEL-350-RU6W-CW-MY」)における波長365nmのUV-LEDランプを光源として使用し、フォトマスクおよび基材フィルム越しに粘着剤層に紫外線を照射し、照射積算光量を2000mJ/cm2(波長320~390nmの範囲での照射積算光量)とした。
次に、粘着剤層に形成された線状変色部分の線幅を測定した(第1変色幅W1の測定)。具体的には、まず、粘着剤層に形成された線状変色部分をデジタルマイクロスコープ(商品名「VHX-900」、KEYENCE社製)によって観察し、変色部分の一部とその近傍とを包含する領域を50倍の倍率で撮影した。次に、撮影された画像を画像解析ソフトによって二値化処理した。次に、二値化処理後の画像において、線状変色部分の線幅(第1変色幅W1)を測定した。
次に、粘着剤層に線状変色部分が形成されている粘着シートを、85℃で120時間、加熱処理した(第1耐久性試験)。
次に、粘着シートの粘着剤層における線状変色部分の線幅を測定した(第2変色幅W2の測定)。具体的な測定方法は、第1変色幅W1の測定に関して上記した測定方法と同じである。第1耐久性試験前の線状変色部分の第1変色幅W1、第1耐久性試験後の線状変色部分の第2変色幅W2、および、第1変色幅W1に対する第2変色幅W2の変化率(W2/W1)を、表1および表2に示す。
また、実施例1~7および比較例1の各粘着シートの粘着剤層について、第1耐久性試験に代えて第2耐久性試験を実施したこと以外は上記の方法と同様にして、形成される線状変色部分の線幅調べた。第2耐久性試験では、粘着剤層に線状変色部分が形成されている粘着シートを、85℃で240時間、加熱処理した。第2耐久性試験前の線状変色部分の第1変色幅W1、第2耐久性試験後の線状変色部分の第3変色幅W3、および、第1変色幅W1に対する第3変色幅W3の変化率(第3変色幅W3/第1変色幅W1)を、表1および表2に示す。
3.剥離試験
各実施例および各比較例の粘着剤層を、ガラス板に対して貼着した。その後、下記条件に基づき、ガラス板に対する粘着力を測定した。その結果を表1に示す。
(測定条件)
温度:23℃
剥離角度:180°
剥離速度:300mm/分
4.ミクロ相分離構造の確認
実施例4~7の各粘着シートの粘着剤層について、次のようにして、ミクロ相分離構造を確認した。まず、透過電子顕微鏡(TEM)による観察用のサンプルを作製した。具体的には、粘着剤層を染色した後に急速凍結し、当該粘着剤層からウルトラミクロトーム(Leica製)を使用して薄片を切り出した。そして、当該薄片について、透過型電子顕微鏡(商品名「HT7820」,日立ハイテクノロジーズ社製)を使用して観察および撮影を実施した。次に、得られたTEM画像を、画像解析ソフトによって解析して二値化した。実施例7における粘着剤層のミクロ相分離を代表的に図4に示す。
実施例4~7の各粘着シートの粘着剤層では、スフィア型のミクロ相分離構造を確認できた。各粘着剤層では、第1ポリマーのイソプレンブロック(ソフトセグメント)が形成するマトリクス(海部)に、第1ポリマーのスチレン(ハードセグメント)と第2ポリマー(スチレン・アクリル酸n-ブチル共重合体)とが形成する球状の分散相(島部)が、分散していた。
5.相溶性判定試験
実施例4~7で用いた発色性化合物および酸発生剤のそれぞれについて、各種モノマーまたはポリマー溶液との相溶性を調べた。
具体的には、まず、モノマー溶液として、スチレン、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、アクリル酸2-メトキシエチル(2MEA)、アクリル酸メチル、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸ラウリル(アクリル酸ドデシル)、およびアクリル酸ステアリル(アクリル酸オクタデシル)の各溶液を用意した。
次に、50mLのスクリュー管内で、モノマー溶液7.8gと、化合物C(発色性化合物または光酸発生剤)0.2gとを含む混合物(化合物Cの割合は2.5質量%)を撹拌した(第1の撹拌)。撹拌には、マグネティックスターラーを使用した。撹拌において、温度は25℃とし、スターラーの回転数は500rpmとし、撹拌時間は5分間とした。撹拌の後、このような撹拌によって化合物Cが濁り又は沈殿を生じずにモノマー溶液に溶解するかどうかを、目視で確認した。発色性化合物および光酸発生剤は、それぞれ、スチレン、アクリル酸n-ブチル、MMA、アクリル酸、NVP、2MEA、およびアクリル酸メチルの各溶液に対し、濁り又は沈殿を生じずに溶解した(化合物Cは相溶性を示した)。一方、発色性化合物および光酸発生剤は、それぞれ、2EHA、アクリル酸ラウリル、およびアクリル酸ステアリルの各溶液に対し、濁り又は沈殿を生じた(化合物Cは相溶性を示さなかった)。
一方、ポリマー溶液として、ポリイソプレン溶液を用意した(イソプレンの揮発性が高すぎするため、イソプレンのモノマー溶液を用意できなかった)。次に、50mLのスクリュー管内で、ポリマー溶液7.8gと、化合物C(発色性化合物または光酸発生剤)0.2gとを含む混合物(化合物Cの割合は2.5質量%)を撹拌した(第2の撹拌)。第2の撹拌の条件は、上述の第1の撹拌の条件と同じである。発色性化合物および光酸発生剤は、それぞれ、ポリマー溶液に対し、濁り又は沈殿を生じたこと(化合物Cは相溶性を示さなかった)ことを、第2の撹拌後の観察によって確認した。
そして、化合物Cが上述の相溶性を示すモノマー溶液と同一のモノマー組成を80質量%以上含有するセグメントが、当該セグメントを有するポリマー成分によるミクロ相分離構造内に形成する相に対し、化合物Cが相溶性を有すると判定した。また、化合物Cが上述の相溶性を示さないモノマー溶液と同一のモノマー組成を80質量%以上含有するセグメントが、当該セグメントを有するポリマー成分によるミクロ相分離構造内に形成する相に対し、化合物Cが相溶性を有さないと判定した。すなわち、実施例4~7で用いた発色性化合物および光酸発生剤は、それぞれ、スチレンとアクリル酸n-ブチルとを含むハードセグメント(HS)がミクロ相分離構造内で形成する島部に対して相溶性を有する(実施例4~7におけるHSでは、化合物Cが相溶性を示すモノマー(スチレン,アクリル酸n-ブチル)の割合は80質量%以上である)。実施例4~7で用いた発色性化合物および光酸発生剤は、それぞれ、イソプレンを含むソフトセグメント(SS)がミクロ相分離構造内で形成する海部に対して相溶性を有さない(実施例4~7におけるSSでは、化合物Cが相溶性を示さないイソプレンの割合は80質量%以上である)。
6.光透過率
実施例4~7の各粘着シートの粘着剤層について、次のようにして、波長400~700nmでの平均透過率を調べた。
まず、粘着シートをイーグルガラス(厚さ0.55mm,松浪硝子社製)に貼り合せて、測定用サンプル(第1の測定用サンプル)を作製した。次に、測定用サンプルについて、日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U4150を使用して、波長400~700nmでの平均透過率を測定した(第1の透過率測定)。本測定では、測定用サンプルに対してそのイーグルガラス側から光が当たるように測定用サンプルを装置内に設置した状態で、測定用サンプルの波長400~700nmにおける全光線透過率を1nmピッチで測定した。また、本測定では、イーグルガラスのみについて同一条件で測定して得られた透過率スペクトルをベースラインとして用いた。実施例1~3および比較例1における上述の平均透過率の測定も、具体的には本測定と同様に実施した。測定された粘着剤層の平均透過率T1(UV照射前の波長400~700nmでの平均透過率)を、表2に示す。
一方、実施例4~7の各粘着シートについて、次のようにして、UV照射後における波長400~700nmでの平均透過率を調べた。
まず、上述の第1の測定用サンプルと同様のサンプルを作製した。次に、当該サンプルに対して紫外線を照射した。具体的には、サンプルにおける粘着シート(粘着剤層)に対し、23℃および相対湿度50%の環境下において、イーグルガラス側から同ガラス越しに、紫外線を照射した(当該UV照射により、粘着剤層中のロイコ系色素と光酸発生剤とを反応させた)。このUV照射では、クォークテクノロジー社製のUV-LED照射装置(型番「QEL-350-RU6W-CW-MY」)における波長365nmのUV-LEDランプを光源として使用し、照射積算光量を8000mJ/cm2(波長320~390nmの範囲での照射積算光量)とした。以上のようにして、測定用サンプル(第2の測定用サンプル)を作製した。
次に、第2の測定用サンプルについて、日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U4150を使用して、波長400~700nmでの平均透過率を測定した(第2の透過率測定)。具体的な測定の方法および条件について、第2の透過率測定は、上述の第1の透過率測定と同じである。測定された粘着剤層の平均透過率T2(UV照射後の波長400~700nmでの平均透過率)を、表2に示す。また、上述の平均透過率T1に対する平均透過率T2の比率も、表2に示す。