以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
図1に示すカラー画像形成装置1の中央には、4つのプロセスユニット9Y,9M,9C,9Bkが着脱可能に設けられた画像形成部2が配置されている。各プロセスユニット9Y,9M,9C,9Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的な各プロセスユニット9としては、表面上に現像剤としてのトナーを担持可能なドラム状の回転体である感光体ドラム10と、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる帯電ローラ11と、感光体ドラム10の表面にトナーを供給する現像ローラを有する現像装置12等を備えている。
プロセスユニット9の下方には、露光部3が配置されている。露光部3は、画像データに基づいて、レーザ光を発するように構成されている。
画像形成部2の上方には転写部4が配置されている。転写部4は、駆動ローラ14及び従動ローラ15に周回走行可能に張架されている無端状の中間転写ベルト16、各プロセスユニット9の感光体ドラム10に対して中間転写ベルト16を挟んだ対向位置に配置されている一次転写ローラ17等で構成されている。各一次転写ローラ17はそれぞれの位置で中間転写ベルト16の内周面を押圧しており、中間転写ベルト16の押圧された部分と各感光体ドラム10とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。
また、中間転写ベルト16の駆動ローラ14と、中間転写ベルト16を挟んで駆動ローラ14に対向した位置には二次転写ローラ18が配設されている。二次転写ローラ18は中間転写ベルト16の外周面を押圧しており、二次転写ローラ18と中間転写ベルト16とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。
給紙部5は、画像形成装置1の下部に位置しており、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙カセット19や、給紙カセット19から用紙Pを搬出する給紙ローラ20等からなっている。
搬送路6は、給紙部5から搬出された用紙Pを搬送する搬送経路であり、一対のレジストローラ21の他、後述する排紙部8に至るまで、搬送ローラ対が搬送路6の途中に適宜配置されている。
定着装置7は、加熱源によって加熱される定着ベルト22、その定着ベルト22を加圧可能な加圧ローラ(加圧部材)23等を有している。
排紙部8は、画像形成装置1の搬送路6の最下流に設けられる。この排紙部8には、用紙Pを外部へ排出するための一対の排紙ローラ24と、排出された用紙Pをストックするための排紙トレイ25とが配設されている。
画像形成装置1の上部には、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各色トナーが充填されたトナーボトル29Y,C,M,Kが着脱可能に設けられている。そして、このトナーボトル29Y,C,M,Kから各現像装置12との間に設けた補給路を介して、各色の現像装置12に各色トナーが補給される。
以下、図1を参照して上記画像形成装置1の基本的動作について説明する。
画像形成装置1において、画像形成動作が開始されると、各プロセスユニット9Y,9C,9M,9Bkの感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。各感光体ドラム10に露光部3によって露光される画像情報は、所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。各感光体ドラム10上には静電潜像が形成され、各現像装置12に蓄えられたトナーが、ドラム状の現像ローラによって感光体ドラム10に供給されることにより、静電潜像は顕像であるトナー画像(現像剤像)として可視像化される。
転写部4では、駆動ローラ14の回転駆動により中間転写ベルト16が図の矢印Aの方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ17には、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、一次転写ニップにおいて転写電界が形成され、各感光体ドラム10に形成されたトナー画像は一次転写ニップにて中間転写ベルト16上に順次重ね合わせて転写される。
一方、画像形成動作が開始されると、画像形成装置1の下部では、給紙部5の給紙ローラ20が回転駆動することによって、給紙カセット19に収容された用紙Pが搬送路6に送り出される。搬送路6に送り出された用紙Pは、レジストローラ21によってタイミングを計られて、二次転写ローラ18と駆動ローラ14との間の二次転写ニップに送られる。このとき、中間転写ベルト16上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、二次転写ニップに転写電界が形成されている。二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト16上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置7へと搬送され、定着ベルト22と加圧ローラ23とによって用紙Pが加熱及び加圧されてトナー画像が用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された用紙Pは、定着ベルト22から分離され、搬送ローラ対によって搬送され、排紙部8において排紙ローラ24によって排紙トレイ25へと排出される。
以上の説明は、用紙P上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット9Y,9C,9M,9Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニット9を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
図2に示すように、本発明の第一実施形態に係る定着装置7は、定着ベルト22と、加圧ローラ23と、加熱部材としてのハロゲンヒータ31と、ニップ形成部材32と、支持部材としてのステー33と、反射部材34等を備えている。なお、以下の説明では、定着ベルト22の幅方向(図2の紙面と直交する方向)を単に幅方向とも呼ぶ。
定着ベルト22は、用紙Pに未定着画像Tを定着させる筒状の定着部材であり、用紙Pの未定着画像担持面側に配置される。本実施形態では、定着ベルト22が、ニッケルやSUS等の金属材料やポリイミドなどの樹脂材料で形成された内周側の基材と、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などで形成された外周側の離型層と、を有する無端状のベルト(フィルムも含む。)で構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴムなどのゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。この弾性層の厚さを100μm程度にすれば、未定着画像(未定着トナー)を押し潰して定着させるときに弾性層の弾性変形により、ベルト表面の微小な凹凸を吸収でき、光沢ムラの発生を回避できる。また、本実施形態では、定着ベルト22の低熱容量化の観点から、定着ベルト22として、薄肉で小径のベルトを採用している。具体的には、定着ベルト22を構成する基材、離型層のそれぞれの厚さを、20~50μm、10~50μmの範囲に設定し、定着ベルト22全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト22が弾性層を有する場合は、弾性層の厚さを、100~300μmに設定するとよい。さらに低熱容量化を図るには、定着ベルト22全体としての厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、本実施形態では、定着ベルト22の直径が、20~40mmに設定されており、望ましくは、直径を30mm以下とするのがよい。
加圧ローラ23は、定着ベルト22の外周側に対向するように配置された対向部材である。本実施形態では、加圧ローラ23が、芯金と、芯金の表面に設けられた発泡性シリコーンゴムやフッ素ゴムなどから成る弾性層と、弾性層の表面に設けられたPFAやPTFEなどから成る離型層と、で構成されている。また、本実施形態では、加圧ローラ23を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。中空ローラの場合、加圧ローラ23の内部にハロゲンヒータなどの加熱部材を配置することも可能である。また、加圧ローラ23の弾性層は、ソリッドゴムでもよいが、内部に加熱部材が配置されていない場合は、弾性層にスポンジゴムを用いて加圧ローラ23の断熱性を高めることが望ましい。これにより、定着ベルト22の熱が加圧ローラ23に奪われにくくなり、定着ベルト22の熱効率が向上する。
また、加圧ローラ23は、画像形成装置本体に設けられた駆動源によって図2中の矢印Aで示す方向に回転駆動するように構成されている。一方、定着ベルト22は、加圧ローラ23が回転駆動することにより、これに伴って図2中の矢印B方向に従動回転する。定着ベルト22と加圧ローラ23との間の定着ニップNに未定着画像Tが転写された用紙Pが搬送されると、回転する定着ベルト22と加圧ローラ23とによって用紙Pが搬送されて定着ニップNを通過する。このとき、用紙Pに対して熱と圧力が付与されることで、未定着画像Tが用紙Pに定着される。
また、加圧ローラ23と定着ベルト22は、互いに接近離間するように構成されている。万が一、定着ニップNに用紙が詰まった場合は、加圧ローラ23と定着ベルト22を互いに離間させ、定着ニップNを開放することで、詰まった用紙のジャム処理などのメンテナンス作業を行うことが可能である。加圧ローラ23と定着ベルト22とは、いずれか一方に対して他方を動かして接近離間させるように構成されていてもよいし、両方を動かすことで接近離間させる構成であってもよい。
ハロゲンヒータ31は、定着ベルト22の内周側に配置され、赤外線光を放射することで、定着ベルト22を輻射熱により内周側から加熱する加熱部材である。加熱部材として、ハロゲンヒータ31以外に、カーボンヒータやセラミックヒータなどを用いることも可能である。本実施形態では、定着ベルト22内にハロゲンヒータ31が1本だけ配置されているが、用紙の幅サイズに応じて異なる発熱領域を有する複数のハロゲンヒータ31を用いてもよい。
ニップ形成部材32は、加圧ローラ23との間で定着ベルト22を挟んで定着ニップNを形成するものである。詳しくは、ニップ形成部材32は、定着ベルト22の内周側で幅方向に渡って長手状に配置されており、定着ベルト22の内周面に接触する平面状のニップ形成面32a1を有するニップ形成部32aと、ニップ形成部32aのベルト回転方向両端から加圧ローラ23側とは反対側に屈曲する部分円弧状の屈曲部32bとを有している。また、ニップ形成部32aの用紙搬送方向(図の矢印C参照)の中央側には、複数の凸部32cが設けられる(詳しくは後述する)。加圧ローラ23の幅方向両端側がバネなどの加圧手段によってニップ形成部材32側に加圧される(図4の矢印H参照)ことで、加圧ローラ23と定着ベルト22とが接触し、これらの間に定着ニップNが形成される。
図2に示すように、ニップ形成面32a1は、定着ベルト22の内周面に対して直接接触しており、定着ベルト22が回転したとき、定着ベルト22はニップ形成面32a1に対して摺動する。このため、ニップ形成面32a1の耐摩耗性や摺動性を向上させるために、ニップ形成面32a1にアルマイト処理やフッ素樹脂系材料の塗布することが好ましい。また、経時的な摺動性の確保のために、ニップ形成面32a1にフッ素系グリース等の潤滑剤を塗布してもよい。本実施形態では、ニップ形成面32a1が、平坦面状となっているが、凹形状やその他の形状であってもよい。ニップ形成面32a1を平坦面状とすることで、平坦面状に定着ニップNを形成し、用紙Pに均一な圧力を付与することができる。
また、ニップ形成部材32は、ステー33よりも熱伝導率が大きい材料で形成されている。例えば、ニップ形成部材32の材料として、銅(熱伝導率:398W/mk)やアルミニウム(熱伝導率:236W/mk)などが好ましい。このように、ニップ形成部材32が熱伝導率の大きい材料で形成されていることで、ハロゲンヒータ31からの輻射熱はニップ形成部材32によって吸収され定着ベルト22へ効率良く伝達される。例えば、ニップ形成部材32の厚みを1mm以下に設定することで、ニップ形成部材32から定着ベルト22への熱伝達時間を短くすることができるため、定着装置7の立ち上がり速度を速める点において有利である。また、ニップ形成部材32の厚みを1mmより大きく5mm以下に設定した場合は、ニップ形成部材32の蓄熱性を高めることができる。
ステー33は、加圧ローラ23の加圧力に抗してニップ形成部材32を支持する支持部材である。ステー33は、ニップ形成部材32と同様、定着ベルト22の内周側でベルト幅方向に渡って長手状に配置されている。本実施形態では、ステー33が、一対の側壁部33aと、これらを連結する底壁部33bと、一対の側壁部33aのうち、用紙搬送方向上流側の側壁部33aの端部から、用紙搬送方向上流側へ折り曲げられた屈曲部33cとを有する。本実施形態では、一対の側壁部33aのうち、用紙搬送方向下流側の側壁部33aが、上流側の側壁部33aよりもその長さが長く設けられている。なお、用紙搬送方向の上流側および下流側とは、ニップ形成部材32の短手方向中央を境にした上流側および下流側のことをそれぞれ指しており、以下、用紙搬送方向の上流側および下流側(図の右側及び左側)を単に上流側、下流側とも呼ぶ。
ステー33は、屈曲部33cでニップ形成部材32の上流側の屈曲部32bを支持すると共に、下流側の側壁部33aでニップ形成部32aの下流側部分を支持している。ステー33がニップ形成部材32をその背面側から支持することにより、加圧方向の剛性が高まり、加圧ローラ23の加圧力によるニップ形成部32aの撓みが抑制される。特に下流側では、加圧ローラ23の加圧方向(図2における上下方向)に延在する下流側の側壁部33aが、ニップ形成部32aの下流側部分を支持することで、ニップ形成部材32の剛性を高めることができる。ステー33は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
反射部材34は、定着ベルト22の内周側でハロゲンヒータ31と対向するように配置されており、ハロゲンヒータ31から放射される輻射熱(赤外線光)をニップ形成部材32側へ反射するものである。本実施形態では、反射部材34が、ハロゲンヒータ31の周りを覆うようにして設けられる断面略台形状の反射部34aと、反射部34aのベルト回転方向Bの両端部から互いに離れる方向で、用紙搬送方向と平行な方向へ屈曲する一対の屈曲部34bとを有している。本実施形態では、各屈曲部34bが設けられる高さが異なっており、上流側の屈曲部34bが下流側の屈曲部34bよりも高い位置(図の上側の位置)に設けられている。反射部材34は、各屈曲部34bがステー33とニップ形成部材32との間に挟まれることで保持されている。
反射部34aは、各面がニップ形成部材32側へ向くように配置されていることで、ハロゲンヒータ31からの輻射熱をニップ形成部材32側へ反射する。すなわち、ニップ形成部材32は、ハロゲンヒータ31から直接照射される赤外線光に加えて、反射部34aによって反射された赤外線光の熱も照射されるため、効果的に加熱される。
また、反射部34aは、ハロゲンヒータ31とステー33との間に介在していることで、ハロゲンヒータ31からステー33への赤外線光の照射を遮断する機能も兼ねる。これにより、ステー33が加熱されることによる無駄な熱エネルギーの消費が抑制される。さらに、本実施形態では、ステー33と反射部34aとの間に空気層(隙間)が介在していることで、この空気層の断熱効果によってステー33への熱伝達がより一層抑制される。
以上のように、本実施形態では、ハロゲンヒータ31を覆うようにして反射部材34が設けられ、反射部材34の開口側、つまり、ニップ形成部材32の側に、ハロゲンヒータ31からの輻射熱および反射部材34からの反射熱が効率良く集熱されるようになっている。そして、加熱されたニップ形成部材32が、定着ニップNにおいて、定着ベルト22を効率良く加熱することができる。また、反射部材34の外周側を覆うようにステー33が設けられ、このステー33の外周側に、定着ベルト22が設けられる。言い換えると、定着ベルト22は、その周方向において、定着ニップNの部分では、ニップ形成部材32を介してハロゲンヒータ31に対向し、定着ニップN以外の部分では、反射部材34およびステー33を介して、ハロゲンヒータ31に対向する。
反射部材34(反射部34a)のハロゲンヒータ31側の面は、反射率を高くするような鏡面処理や表面処理がなされている。本実施形態では、反射率を分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製の紫外可視赤外分光光度計UH4150)を用いて測定し、測定時の入射角は5°である。一般的に、ハロゲンヒータは用途により色温度が異なるが、定着装置の加熱用としては色温度が2500K程度のものが用いられている。本実施形態で用いられる反射部材34の反射率は、発光強度の高いハロゲンヒータ31の波長、具体的には900~1600nmの波長、より好ましくは1000~1300nmの波長に対して70%以上であるのがよい。
また、反射部材34の反射と断熱の機能を、ステー33に持たせてもよい。例えば、ステー33の内面(ハロゲンヒータ31側の面)に断熱処理又は鏡面処理を施すことで、ステー33が反射部材34の機能を兼ねるように構成することができる。この場合、ステー33とは別体の反射部材34を省略することが可能である。また、ステー33を鏡面処理した場合のステー33の反射率は、上記反射部材34の反射率と同等であることが望ましい。
温度センサ28は、定着ベルト22の外周側に配置され、定着ベルト22の温度を検知するものである。本実施形態では、温度センサ28を、定着ベルト22に対してベルト幅方向の中央部と一端部側との2箇所に配置している。温度センサ28による定着ベルト22の表面温度の検知結果に基づいてハロゲンヒータ31の出力制御が行われる。これにより、定着ベルト22の温度が所望の温度(定着温度)となるように制御される。また、温度センサ28は、接触型又は非接触型のいずれでもよい。温度センサ28としては、例えばサーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなど、公知の温度センサを適用可能である。
図4に示すように、定着ベルト22は、その両端部に挿入された一対のベルト支持部材35によって回転可能に支持されている。このように、定着ベルト22の内周にベルト支持部材35が挿入されることによって、定着ベルト22は非回転状態では基本的に周方向の張力が付与されない状態、いわゆるフリーベルト方式で支持されている。
図3~図5に示すように、ベルト支持部材35は、定着ベルト22の内周に挿入されて定着ベルト22を支持するC字状の支持部35aと、定着ベルト22の端面に接触して定着ベルト22の幅方向移動(片寄り)を規制するフランジ状の規制部35bとを有している。支持部35aは、図6に示す例のように、全周に渡って連続する筒状であってもよい。各ベルト支持部材35は、定着装置7を構成するフレームである一対の側板36(図4参照)に固定されている。また、ベルト支持部材35には、開口部35c(図5参照)が設けられており、この開口部35cを通してハロゲンヒータ31やステー33の両端部が各側板36に固定されている。ハロゲンヒータ31やステー33は、ベルト支持部材35に固定されてもよい。
次に、図2および図7を用いて、本実施形態に係るニップ形成部材32に設けられた凸部32cについて、より詳細に説明する。
図2に示すように、ニップ形成部32aの用紙搬送方向の中央側に複数の(本実施形態では5つの)凸部32cが用紙搬送方向に並んで設けられる。図7に示すように、各凸部32cは、定着ベルト等の幅方向に延在し、用紙搬送方向と交差する方向(本実施形態では略直交する方向)で、加圧ローラ23とは反対側へ突出しており、各凸部32cは略同じ高さに設けられる。
各凸部32cは、ニップ形成部32aと同一の材質により形成され、例えば、押し出し加工によりニップ形成部32aと一体的に成形される。ただし、溶接加工等により、別途凸部32cを形成してもよい。つまりこの場合、ニップ形成部材32を板材で形成するとすると、ニップ形成部32aおよび屈曲部32bは、例えば平板を曲げ成形する等して形成するのに対して、凸部32cは、後加工により設けられる。また、以下で示す実施形態についても、これらの方法により凸部を形成することができる。
本実施形態のように、凸部32cを設けることで、ニップ形成部材32の剛性を高めることができる。つまり、ニップ形成部32aのニップ形成面32a1とは反対側に、加圧ローラ23と反対側へ突出する凸部32cを設けることで、加圧ローラ23が定着ベルト22を介してニップ形成部材32に圧接した際に、ニップ形成部32aの撓み(主に定着ベルトの幅方向の撓み)を抑制することができる。従って、ニップ形成部材32が、加圧ローラ23との間で凹凸の少ない平坦状の定着ニップNを形成することができる。これにより、定着ニップNに通紙される用紙Pに対して、場所による圧力偏差を極力小さくすることができる。このような圧力偏差が生じた場合、用紙Pのシワや跳ね上がり、またこれに起因する画像のこすれや搬送不良が生じたり、定着ニップNの場所ごとに用紙Pに与える熱量が不均一になり、部分的に定着不良(コールドオフセット)や過熱によるホットオフセット等の画像不良を生じてしまうが、本実施形態では、上記の凸部32cにより、これらの不具合を防止できる。
特に本実施形態では、加圧ローラ23からの加圧力が最も大きい箇所、つまり、ニップ形成部32aの用紙搬送方向中央側に凸部32cを設けることで、ニップ形成部32aの撓みを効果的に抑制することができる。
また、凸部32cを設けることで、ニップ形成部32aのニップ形成面32a1とは反対側、つまり、ハロゲンヒータ31に対向する側の表面積を大きくすることができる。これにより、ニップ形成部材32の加熱効率を向上させることができる。
以下、上記の第一実施形態と異なる実施形態の定着装置7、特にニップ形成部材32に設けられる凸部32cの構成が異なる複数の形態の定着装置7について、順に説明する。上記実施形態と同様の構成については適宜省略し、上記実施形態と異なる構成を中心に説明する。
図8に示すように、第二実施形態の定着装置7では、凸部32cが設けられる範囲が第一実施形態と異なる。具体的には、第一実施形態ではニップ形成部32aの用紙搬送方向中央側に凸部32cが設けられる(図2参照)のに対して、本実施形態では、ニップ形成部32aの用紙搬送方向上流側から下流側に渡って凸部32cが設けられる。
用紙搬送方向の両端には、それぞれ屈曲部32bが設けられる。各屈曲部32bは、ステー33の側壁部33aに支持されると共に、側壁部33aとの間で、反射部材34の屈曲部34bを挟持する部分である。本実施形態では、屈曲部32bは、用紙搬送方向に対して垂直な方向へ突出しており、その高さは両端側で等しく、凸部32cと略同じ高さに設けられる。また本実施形態では、ステー33および反射部材34が図の左右方向に対して略対称の形状をなしており、ステー33の一対の側壁部33aが同じ長さで設けられ、反射部材34の搬送方向両側に同じ高さの屈曲部34bが設けられる。
図9に示すように、前述の実施形態と同様、各凸部32cは、定着ベルト等の幅方向に延在し、各凸部32cの高さは略同じに設けられる。
このように、用紙搬送方向上流側から下流側に渡って凸部32cを設けることにより、定着ニップNの上流側から下流側に渡って、ニップ形成部32aの剛性を高めることができ、定着ニップN全域を平坦化することができる。
図10に示すように、ニップ形成部材32の凸部32c側の表面には、熱吸収性の材料によるコーティングを施した被覆面32dが設けられる。このような熱吸収性の材料によるコーティングの具体例としては、熱伝導性や熱吸収性に優れたセラミック材を凸部32c側の表面に塗装したり、グラファイトシート等の熱伝導性に優れたシート材を薄膜化して凸部32c側の表面に形成することができる。また熱伝導性の観点からは、ダイヤモンドを微粉化して塗装することが最も好ましい。このような被覆面32dを設けることにより、ニップ形成部材32のハロゲンヒータ側の面の熱吸収性を向上させ、ニップ形成部材32がハロゲンヒータ31からの熱をより効率良く吸収することができる。なお、ニップ形成面32a1にはコーティングは施されていない。
また、ニップ形成部材32の凸部32c側の表面にサンドブラスト等の加工を施してニップ形成面32a1よりもその表面粗さを大きくし、その表面積を大きくしてもよい。これにより、ニップ形成部材32の熱吸収効率を向上させることができる。
図11に示すように、本発明の第三実施形態に係る定着装置7は、第二実施形態と同様、ニップ形成部32aの用紙搬送方向上流側から下流側に渡って凸部32cが設けられる。第二実施形態と異なる点として、本実施形態では、屈曲部32bに加えて、各凸部32cのうち、最も上流側および下流側の凸部32c1、32c6が、それぞれステー33の側壁部33aに支持されると共に、側壁部33aとの間で、反射部材34の屈曲部34bを挟持している。
前述のように、ニップ形成部32aに各凸部32cを設けることで、加圧ローラの圧接力に対するニップ形成部材32の剛性を大きくすることができる。そして、このように剛性を大きくすることにより、ステー33および反射部材34によって支持されるニップ形成部材32の支持位置を、よりニップ形成部材32の内側に配置することが可能になる。つまり、ステー33および反射部材34のニップ形成部材32に対する当接位置を、紙搬送方向の両端に設けられた各屈曲部32bよりも内側の凸部32c1、32c6に配置しても、ニップ形成部材32の剛性を一定以上確保することが可能になる。従って、ステー33や反射部材34の用紙搬送方向の幅を従来よりも小さくすることができる。これにより、定着ベルト22の径も小さくし、定着装置7全体を小型化することが可能になる。例えば、従来の定着ベルト22を図の点線部とすると、本実施形態の定着ベルト22を図の実線部のように小さくすることができる。
図12に示すように、本発明の第四実施形態に係る定着装置7では、ニップ形成部材32に設けられた各凸部32c1~32c6が、その用紙搬送方向上流側から下流側へ向けて、その高さが高くなっている。つまり、凸部32c1がその高さが最も低く、凸部32c6が最も高くなっている。
前述のように、ニップ形成部材32のハロゲンヒータ31側の表面積を大きくすることで、ニップ形成部材32が受け取る熱量を大きくすることができる。この点、第四実施形態では、用紙搬送方向下流側へ向かうほど、凸部の表面積が大きくなっており、その蓄熱効果が高くなる。従って、定着ニップNの入口側から出口側に至るまで高温状態を維持することができ、定着ニップNを通紙される用紙Pに対して継続して一定以上の熱量を与えることができる。これにより、光沢の高い良好な状態で、用紙P表面に画像を定着させることができる。
図13に示すように、本発明の第五実施形態に係る定着装置7では、第四実施形態とは逆に、ニップ形成部材32に設けられた各凸部32c1~32c6が、その用紙搬送方向上流側から下流側へ向けて、その高さが低くなっている。つまり、凸部32c1がその高さが最も高く、凸部32c6が最も低くなっている。
本実施形態では、第四実施形態と比較すると、ニップ出口側でニップ形成部材32が受け取る熱量が相対的に小さくなり、定着ニップN(定着ベルト22)が相対的に低温になる。これにより、定着ニップNの出口側において、用紙Pが定着ベルト22に巻き付くことを防止し、用紙Pの定着ベルト22からの分離性を向上させることができる。
図14に示すように、本発明の第六実施形態に係る定着装置7では、ニップ形成部材32に設けられた各凸部32c1~32c6のうち、用紙搬送方向中央側の凸部32c3、32c4の高さが高く、端部側の凸部32c1、32c6の高さが低くなっている。
本実施形態では、ニップ形成部材32の用紙搬送方向中央側の剛性を特に大きくすることができる。加圧ローラからのニップ形成部材に対する面圧はその用紙搬送方向中央側で最も大きくなる。従って、本実施形態の構成により、加圧ローラからの圧接力によるニップ形成部材32の撓みを抑制でき、用紙搬送方向中央側における定着ニップNの幅を一定以上確保できる。また、用紙搬送方向端部側に凸部を設けることで、ニップ形成部32aの剛性を端部側においても高めることができると共に、その高さを相対的に低くすることで、ニップ形成部材32の熱容量を小さく抑えることができる。
図15に示すように、本発明の第七実施形態に係る定着装置7では、第六実施形態とは逆に、ニップ形成部材32に設けられた各凸部32c1~32c6のうち、用紙搬送方向中央側の凸部32c3、32c4の高さが低く、端部側の凸部32c1、32c6の高さが高くなっている。
本実施形態では、定着ニップNの入口側および出口側で、ニップ形成部材32の表面積を確保すると共に、ハロゲンヒータ31から最も遠い距離にある端部側で、凸部32c1,32c6をハロゲンヒータ31に近づけることができる。従って、定着ニップNの用紙搬送方向上流端側および下流端側において、定着ニップNの温度落ち込みが生じやすい箇所、具体的には、定着ベルト22の幅方向の端部側における温度落ち込みを抑制できる。
図16に示すように、本発明の第八実施形態に係る定着装置に設けられたニップ形成部材32では、凸部32cが、その高さが定着ベルト22等の幅方向に対して変化した、幅方向に円弧状をなしている。具体的には、凸部32cの幅方向中央側の高さH2が最も高く、端部側の高さH1,H3が相対的に小さくなっている。なお、各凸部32c同士を比較すると、その高さは略等しくなっている。
本実施形態では、ニップ形成部材32の幅方向の中央側における剛性を特に高めることができ、加圧ローラ23のニップ形成部材32に対する圧接時の、ニップ形成部材32の撓みを効果的に抑制することができる。
図17に示すように、本発明の第九実施形態に係る定着装置に設けられたニップ形成部材32では、各凸部32c1~32c6が、ハロゲンヒータ31の側を向くような傾斜面になっている。例えば、図17の拡大図に示すように、凸部32c3、32c4のハロゲンヒータ31側の端面32caが、ハロゲンヒータ31の側を向いた傾斜面に形成されている。これにより、ニップ形成部材32の熱吸収効率を向上させることができる。
図18(A)に示すように、本発明の第十実施形態に係る定着装置に設けられるニップ形成部材32は、第一ニップ板(第一ニップ部材)321と、第一ニップ板321に重ね合わせされ、その内側に設けられる第二ニップ板(第二ニップ部材)322とからなる。
第一ニップ板321は、平坦状の銅板からなり、用紙搬送方向両端が垂直方向に屈曲した形状をしている。第二ニップ板322は、アルミ材あるいは銅板からなり、第一ニップ板321側が平坦面状に形成され、その反対側に複数の凸部を有している。
図18(B)に示すように、第一ニップ板321の内側に第二ニップ板322が一体的に設けられ、ニップ形成部材32が構成される。第一ニップ板321の板状部分と第二ニップ板322とが重ね合わせされてニップ形成部32aを構成している。第一ニップ板321の板状部分のうち、第二ニップ板322と反対側の面が、ニップ形成面32a1となる。また、第二ニップ板322に設けられた複数の凸部が、ニップ形成部材32の凸部32cとして機能する。
第一ニップ板321を銅板で構成した場合には、定着ニップ側でのニップ形成部材32の剛性や熱伝導性を高めることができる。また、凸部32cを含む第二ニップ板322の側をアルミ材で構成することにより、凸部32cを前述した押し出し加工等により容易に形成することができ、その成形性が向上する。以上のように、成形性と剛性や熱伝導性等の機能性を兼ね備えたニップ形成部材32を実現することができる。
また図19に示すように、第二ニップ板322を金属材によって構成し、ヘミング曲げによって各凸部322cを形成することもできる。
以上の実施形態では、図7等に示すように、定着ベルト等の幅方向に延在する凸部32cが用紙搬送方向に複数並んで配置される場合を示した。しかしこれとは逆に、用紙搬送方向に延在する凸部32cが、幅方向に複数並んで配置されるような構成であってもよい。例えば、図20(A)に示すように、各凸部32cを用紙搬送方向(図の矢印C参照)に略平行な方向へ延在するように設けてもよいし、図20(B)、図20(C)に示すように、用紙搬送方向に対して傾斜させて設けてもよい。図20(B)では、用紙搬送方向上流側から下流側へ向けて、凸部32cがニップ形成部材32の幅方向(図の左右方向)の内側から外側へ向いている。ただし、これとは逆に、用紙搬送方向上流側から下流側へ向けて、凸部32cがニップ形成部材32の幅方向の外側から内側へ向いていてもよい。また、図20(C)では、用紙搬送方向上流側から下流側へ向けて、凸部32cが幅方向の一方側へ傾斜している。図7等の幅方向に延在する凸部32cが、ニップ形成部材32の、主に当該幅方向における撓みを抑制するのに効果があるのに対して、図20に示すように、用紙搬送方向に延在する凸部32cは主に当該搬送方向の撓みを抑制するのに効果的である。
また、ニップ形成部材32に設けられる凸部32cのハロゲンヒータ31側の端面の形状は、図2に示すような平坦面や図17に示すような傾斜面に限らない。例えば、図21(A)に示すように、端面側にRを設けた曲面状としてもよいし、図21(B)に示すように、凸部32cの先端を尖らせることもできる。さらに、図21(C)に示すように、凸部32c全体を曲面状、特に断面半円弧状とすることもでるし、図21(D)に示すように、各凸部32cの高さを不規則に設けてもよい。
また、ニップ形成部材をベルト幅方向と直交する断面が中空環状の複層構成とすることもできる。例えば、図22に示す本発明の第十実施形態の定着装置のように、ニップ形成部材42は、ニップ形成面421aを有する第一層421と、ハロゲンヒータ31側の第二層422とを有する。第一層421と第二層422との間には隙間が設けられ、二つの層は用紙搬送方向の両側で連続した環状をなし、幅方向(図の紙面直交方向)に延在した筒状体である。また、ニップ形成部材42を四角筒状(中空の矩形状がベルト幅方向に延在する形状)とすることもできる。
ニップ形成部材42には、第一層421と第二層422との間を橋架された補強部423、423が設けられる。補強部423は、幅方向に複数設けられてもよいし、幅方向に延在した長手状の部分であってもよい。ただし、ニップ形成部材42の剛性によっては補強部423を設けない構成とすることもできる。
図22の拡大図に示すように、第二層422には図の上下方向に貫通する貫通孔422aが設けられる。貫通孔422aにより、ハロゲンヒータ31の熱を定着ベルト22の側へ伝達しやすくすることができる。貫通孔422aは幅方向や用紙搬送方向に複数設けられてもよいし、幅方向に延在した長手状の孔であってもよい。
本実施形態のようにニップ形成部材42を複層構成とし、各層が幅方向に延在する形状とすることで、ニップ形成部材42の剛性を高め、主にニップ形成部材42の定着ベルト幅方向における撓みを抑制することができる。
なお、図23に示すように、L字状の第一部材43と第二部材44とを重ね合わせることで、図22と同じ形状のニップ形成部材42を形成することもできる。この場合、例えば2枚の金属板を折り曲げ成形してそれぞれL状に形成した後、両者を接合することにより、ニップ形成部材42を成形することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
以上の実施形態では、凸部32cが用紙搬送方向と略直交する方向へ設けられるものとしたが、これに限らず、多少の傾斜があってもよい。加圧ローラ23と反対側へ突出する凸部を設けることにより、前述のように、ニップ形成部材32の加圧ローラ23の圧接力に対する剛性を高めることができる。