以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
図1に示すカラー画像形成装置1の中央には、4つのプロセスユニット9Y,9M,9C,9Bkが着脱可能に設けられた画像形成部2が配置されている。各プロセスユニット9Y,9M,9C,9Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的な各プロセスユニット9としては、表面上に現像剤としてのトナーを担持可能なドラム状の回転体である感光体ドラム10と、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる帯電ローラ11と、感光体ドラム10の表面にトナーを供給する現像ローラ13を有する現像装置12等を備えている。なお、図1では、ブラックのプロセスユニット9Kが備える感光体ドラム10、帯電ローラ11、現像装置12のみに符号を付しており、その他のプロセスユニット9Y,9M,9Cにおいては符号を省略している。
プロセスユニット9の下方には、露光部3が配置されている。露光部3は、画像データに基づいて、レーザ光を発するように構成されている。
画像形成装置1の上部のボトル収容部29には、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各色トナーが充填されたトナーボトル26Y,C,M,Kが着脱可能に設けられている。そして、このトナーボトル26Y,C,M,Kから各現像装置12との間に設けた補給路を介して、各色の現像装置12に各色トナーが補給される。
画像形成部2の上方には転写部4が配置されている。転写部4は、無端状の中間転写ベルト16と、各プロセスユニット9の感光体ドラム10に対して中間転写ベルト16を挟んだ対向位置に配置されている一次転写ローラ17と、二次転写ローラ18と、二次転写バックアップローラ14と、クリーニングバックアップローラ15と、テンションローラ27と、ベルトクリーニング装置28とを備える。
中間転写ベルト16は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ14、クリーニングバックアップローラ15及びテンションローラ27によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ14を回転駆動することによって、中間転写ベルト16は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
4つの一次転写ローラ17は、それぞれ、各感光体ドラム10との間で中間転写ベルト16を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ17には、電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ17に印加されるようになっている。
二次転写ローラ18は、二次転写バックアップローラ14との間で中間転写ベルト16を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、上記一次転写ローラ17と同様に、二次転写ローラ18にも電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ18に印加されるようになっている。
ベルトクリーニング装置28は、中間転写ベルト16に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置28で回収された廃トナーは、廃トナー移送ホースを介して廃トナー収容器に収容される。
給紙部5は、画像形成装置1の下部に位置しており、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙カセット19や、給紙カセット19から用紙Pを搬出する給紙ローラ20等からなっている。
搬送路6は、給紙部5から搬出された用紙Pを搬送する搬送経路であり、一対のレジストローラ21の他、後述する排紙部8に至るまで、搬送ローラ対が搬送路6の途中に適宜配置されている。
定着装置7は、加熱源によって加熱される定着部材としての定着ベルト22、その定着ベルト22を加圧可能な加圧部材としての加圧ローラ23等を有している。
排紙部8は、画像形成装置1の搬送路6の最下流に設けられる。この排紙部8には、用紙Pを外部へ排出するための一対の排紙ローラ24と、排出された用紙Pをストックするための排紙トレイ25とが配設されている。
以下、図1を参照して上記画像形成装置1の基本的動作について説明する。
画像形成装置1において、画像形成動作が開始されると、各プロセスユニット9Y,9C,9M,9Bkの感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。各感光体ドラム10に露光部3によって露光される画像情報は、所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。各感光体ドラム10上には静電潜像が形成され、各現像装置12に蓄えられたトナーが、ドラム状の現像ローラ13によって感光体ドラム10に供給されることにより、静電潜像は顕像であるトナー画像(現像剤像)として可視像化される。
転写部4では、二次転写バックアップローラ14の回転駆動により中間転写ベルト16が図1の矢印の方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ17には、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、一次転写ニップにおいて転写電界が形成され、各感光体ドラム10に形成されたトナー画像は一次転写ニップにて中間転写ベルト16上に順次重ね合わせて転写される。
一方、画像形成動作が開始されると、画像形成装置1の下部では、給紙部5の給紙ローラ20が回転駆動することによって、給紙カセット19に収容された用紙Pが搬送路6に送り出される。搬送路6に送り出された用紙Pは、レジストローラ21によってタイミングを計られて、二次転写ローラ18と二次転写バックアップローラ14との間の二次転写ニップに送られる。このとき、中間転写ベルト16上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、二次転写ニップに転写電界が形成されている。二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト16上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置7へと搬送され、定着ベルト22と加圧ローラ23とによって用紙Pが加熱及び加圧されてトナー画像が用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された用紙Pは、定着ベルト22から分離され、搬送ローラ対によって搬送され、排紙部8において排紙ローラ24によって排紙トレイ25へと排出される。
以上の説明は、用紙P上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット9Y,9C,9M,9Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニット9を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
図2に示すように、定着装置7は、ベルト状の定着ベルト22、ニップ形成部材30、伝熱部材31、ニップ形成部材30を支持する補強部材32、及び、定着ベルト22を加熱する加熱部材としてのヒータ33を備えている。さらに、定着ベルト22に対向して設けられた加圧ローラ23、温度センサ45、加圧ローラ23を定着ベルト22に対して接離させる接離機構35、及び、定着ベルト22から用紙Pを分離する分離板36などを備えている。
定着ベルト22は、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトであって、図2中の矢印B1方向(反時計回り)に回転する。また、定着ベルト22は、ニップ形成部材30と摺接する面である内周面側から、基材層、弾性層、離型層が順次積層されていて、その全体の厚さが1[mm]以下に設定されている。
定着ベルト22の基材層は、層厚が30[μm]〜100[μm]であって、ニッケル、ステンレス鋼等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。定着ベルト22の弾性層は、層厚が100[μm]〜300[μm]であって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、及び、フッ素ゴム等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、定着ニップNにおける定着ベルト22表面の微小な凹凸が形成されなくなり、用紙P上のトナー像Dに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。定着ベルト22の離型層は、層厚が10[μm]〜50[μm]である。また、この離型層は、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナーに対する離型性(剥離性)が担保される。定着ベルト22の直径は15[mm]〜120[mm]の範囲で設定され、本実施形態では約30[mm]に設定されている。
定着ベルト22の内周面側には、ニップ形成部材30、伝熱部材31、補強部材32、ヒータ33、反射部材34等が設けられている。
ヒータ33の一例として、本実施形態ではハロゲンヒータが用いられるが、ハロゲンヒータ以外に、IH、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いてもよい。
ニップ形成部材30は、加圧ローラ23側の面が加圧ローラ23の曲率に沿って凹状に形成されている。これにより、用紙Pは、加圧ローラ23の表面に倣うように定着ニップNを通過し、定着動作後に、定着ベルト22に吸着することなく容易に定着ベルト22から分離される。
伝熱部材31は、厚み0.1[mm]の板金を一端部と他端部とが対向するように略C形状に曲げた管状のパイプ状部材である。伝熱部材31は、定着ベルト22の定着ニップNを除く位置で、その内周面に対向するように形成される。また、定着ニップNに対向する部分は、定着ベルト22の内径側へ向かって凹状に形成されるとともに、ニップ形成部材30が配設される開口部が設けられている。
伝熱部材31は、その幅方向両端部が第一支持部材37および第二支持部材38(図3参照)にそれぞれ固定支持されている。また、図2に示すように、伝熱部材31はヒータ33からの輻射熱(輻射光)を定着ベルト22に伝達する。つまり、定着ベルト22は、伝熱部材31を介してヒータ33から加熱される。
伝熱部材31の材料は、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼等の金属熱伝導体(熱伝導性を有する金属)を用いることができる。また、伝熱部材31の厚みを0.2[mm]以下に設定することで、伝熱部材31や定着ベルト22の加熱効率を向上させることができる。本実施形態では、伝熱部材31を厚みが0.1[mm]のステンレス鋼板で形成している。
ヒータ33の輻射熱により、伝熱部材31を介して定着ベルト22が加熱される。そして、定着ニップNにおいて、定着ベルト22の熱が、用紙Pおよび用紙P上のトナー像Dに加えられる。なお、定着ベルト22の表面には、サーミスタ等の温度センサ45が対向して設けられ、温度センサ45による定着ベルト22表面温度の検知結果に基づいて、ヒータ33の出力制御が行われる。このようなヒータ33の出力制御によって、定着ベルト22の温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
伝熱部材31は、ヒータ33による輻射熱を定着ベルト22の周方向に伝達し、定着ニップNを除いて、定着ベルト22の周方向全体に渡って熱を伝達することができる。このため、定着ベルト22の加熱時間を短縮する等、装置を高速化した場合であっても、定着ベルト22が充分に加熱されて定着不良の発生を抑止することができる。
また、伝熱部材31が、その内周面の形状に沿って設けられることにより、定着ベルト22を内側から支持することができ、可撓性を有する定着ベルト22の周形状を維持することができる。伝熱部材31と定着ベルト22との摺動抵抗を低下させるために、定着ベルト22の内周面と摺接する伝熱部材31の摺接面の定着ベルト22に対する摩擦係数が低い材料で、伝熱部材31を形成してもよい。さらに、定着ベルト22の内周面にフッ素を含む材料からなる表面層を形成してもよい。
補強部材32は、ニップ形成部材30を、定着ニップNとは反対側から支持している。これにより、定着ニップNにおいて、ニップ形成部材30が加圧ローラ23の加圧力を受けて大きく変形することを抑制できる。
補強部材32は、上記の機能を満足するために、ステンレス鋼や鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが好ましい。また、補強部材32における、ヒータ33に対向する面の一部又は全部に、断熱部材を設けたり、BA処理(光輝焼鈍処理)や鏡面研磨処理を施したりすることもできる。これにより、ヒータ33の輻射熱が補強部材32に吸収されにくくなり、より効率的に定着ベルト22を加熱できる。
反射部材34は、補強部材32とヒータ33の間に設けられている。反射部材34は、ヒータ33から補強部材32の側へ照射される輻射熱の一部を定着ベルト22へ反射し、定着ベルト22を効率良く加熱することができる。反射部材34の材料として、例えばアルミニウムやステンレス等を用いることができる。
加圧ローラ23は、中空構造の芯金23a上に弾性層23bを形成してなる。本実施形態では、加圧ローラ23の直径は約30[mm]に設定される。弾性層23bは、シリコーンゴムや発泡性シリコーンゴムやフッ素ゴム等の材料で形成されている。加圧ローラ23の弾性層23bを発泡性シリコーンゴム等のスポンジ状の材料で形成した場合には、定着ニップNに作用する加圧力を減ずることができ、ニップ形成部材30に生じる撓みを軽減できると共に、加圧ローラ23の断熱性が高められて、定着ベルト22の熱が加圧ローラ23側に移動しにくくなるために、定着ベルト22の加熱効率が向上する。なお、弾性層23bの表層にPFAやPTFE等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。また、芯金23aの内部に、ハロゲンヒータ等の加熱部材を設けることもできる。
加圧ローラ23は、定着ベルト22に圧接して、双方の部材間に所望の定着ニップNを形成する。また、加圧ローラ23には駆動機構の駆動ギヤに噛合するギヤが設けられている。加圧ローラ23は、駆動機構から伝達される回転駆動力によって図2中の矢印B2方向(時計回り)に回転駆動する。
本実施形態では、定着ベルト22と加圧ローラ23の直径を同じ大きさに設定している。しかし、定着ベルト22の直径を加圧ローラ23の直径よりも小さく設定し、定着ニップNにおいて、用紙Pが定着ベルト22から分離しやすくすることもできる。
次に、上述のように構成された定着装置7の通常時の動作について簡単に説明する。
画像形成装置1に電源が投入されると、ヒータ33に電力が供給されるとともに、加圧ローラ23の図2中矢印B2方向への回転駆動が開始される。この加圧ローラ23の回転により、加圧ローラ23に圧接する定着ベルト22が矢印B1方向へ従動回転する。従動回転する定着ベルト22は、ヒータ33の加熱により全周に亘って加熱される。
画像形成工程などを経て定着装置7へ搬送されてきた用紙Pは、図2の矢印C1方向へ搬送されて定着ニップNへ案内される。そして、定着ニップNにおいて、加熱および加圧されて、用紙Pの表面にトナー像Dが定着される。その後、定着ニップNを通過した用紙Pは、矢印C2方向へ搬送され、分離板36によって定着ベルト22から分離され、さらに下流の工程へ搬送される。こうして、定着装置7における一連の定着プロセスが完了する。
次に、ヒータ33およびその周辺の構成について、図3および図4を用いて具体的に説明する。なお、図3では、ヒータ33およびその支持構造についてのみ記載し、定着ベルト22や加圧ローラ23等のその他の部材の記載を省略している。なお、図3に示すY方向がヒータ33等の軸方向であり、以下、Y方向を単に軸方向、Y方向の紙面左側を軸方向一端側、Y方向の紙面右側を軸方向他端側とそれぞれ呼ぶ。
図3に示すように、ヒータ33の軸方向両端には、ヒータ33の軸方向一端側を支持する第一支持部材37、ヒータ33の軸方向他端側を支持する第二支持部材38、第一支持部材37および第二支持部材38が取り付けられる側板39が設けられる。
側板39は、第一支持部材37が取り付けられる一端側垂直板39aと、第二支持部材38が取り付けられる他端側垂直板39bと、これら垂直板を軸方向に連結する連結部39cからなる。第一支持部材37と第二支持部材38は、例えばネジなどによって一端側垂直板39a、他端側垂直板39bにそれぞれ取り付けられる。一端側垂直板39aには、定着ベルト22、加圧ローラ23(図2参照)の一端側が挿入される一端側挿入孔39d、39eが設けられ、他端側垂直板39bには、定着ベルト22、加圧ローラ23の他端側を挿入する他端側挿入孔39f、39gが設けられる。定着ベルト22および加圧ローラ23は、その両端が側板39の各挿入孔に挿入され、側板39に支持されている。
図4に示すように、ヒータ33は、ガラス管33aと、発熱部材33bと、ガラス管33aの一端側に第一保持部材33cと、ガラス管33aの他端側に保持部材としての第二保持部材33eを備える。また、ヒータ33の軸方向一端側にはリード線50、軸方向他端側にはリード線51がそれぞれ接続されている。第一保持部材33cおよび第二保持部材33eは、それぞれガラス管33aの軸方向一端側と軸方向他端側を覆うようにして保持し、ガラス管33aと一体的に設けられている。また、第一保持部材33cおよび第二保持部材33eの材料として、例えばセラミックを用いることができる。
第一支持部材37の挿入孔37aにヒータ33の軸方向一端が、第二支持部材38の挿入孔38aにヒータ33の軸方向他端がそれぞれ挿入され、各支持部材がヒータ33の軸方向両端側をそれぞれ支持している。
第一支持部材37および第二支持部材38は、軸方向中央側(ヒータ33の軸方向中央側)へ突出する筒状の突出部37b、38bをそれぞれ有する。突出部37b、38bは、伝熱部材31(図2参照)の軸方向両端をその内周面側から支持し、伝熱部材31の断面形状を維持している。
図5に示すように、ガラス管33aの端部には、金属箔33gが埋設された封止部が形成される。第二保持部材33eは、ガラス管33aの端部に設けられた封止部を覆うようにして保持するベース33e1と、前述の第二支持部材38の挿入孔38aに挿入される挿入部33e2からなる。また、リード線51は、導線51aが絶縁被覆51bで覆われた構成をしている。なお、図5ではヒータ33の他端側を例示しているが、ヒータ33の一端側についても、同様の構成をしている。
発熱部材33bの軸方向端部側には内部線33b1が伸びており、軸方向端部で金属箔33gに接続されている。また、導線51aは、その一端で金属箔33gに連結されている。発熱部材33bは、内部線33b1、金属箔33gを介して導線51aと導通している。
図4に示すように、ヒータ33の各支持部材によって支持される支持領域(ヒータ33の一端側のベース33c1から他端側のベース33e1までの範囲)の幅H1は、第一支持部材37の内面と第二支持部材38の内面との距離H2よりも距離G1だけ小さい。言い換えると、ヒータ33は、これら二つの支持部材との間で距離G1だけのガタを設けられて、二つの支持部材に支持されている。このガタG1は、各部材の寸法誤差、発熱部材33bの発熱によるヒータ33の熱膨張等を考慮して設けられたものである。
ところで、定着ニップNに通紙される用紙Pは、軸方向において、発熱部材33bの発熱領域HAに対応する位置に通紙され、ヒータ33によって加熱された定着ベルト22からその熱を伝達される。本実施形態では、ヒータ33が図4の左側に寄せられ、第一保持部材33cが第一支持部材37に当接した位置で、ヒータ33が第一支持部材37に支持されている。この位置を基準位置とし、発熱領域HAと通紙領域PAが位置合わせされている。ただし、これに限らず、図の中央位置や右側に寄せた位置を基準とすることもできる。
図4の構成では、通紙範囲PAに対してヒータ33の発熱領域HAをわずかに大きな範囲で設けているため、発熱領域HAの両端に、非通紙領域PBが生じる。
図4の下側には、軸方向における定着ベルト22の温度Tの分布を示している。軸方向において、通紙領域PAでは、用紙Pや用紙P上のトナー像Dによって定着ベルト22の熱が奪われるため、温度Tは低下する。一方で、前述の領域PBでは、用紙Pやトナー像Dによって定着ベルト22の熱が奪われず、温度Tが上昇する。
図4のように、ヒータ33が狙いの位置に配置され、領域PBの範囲が小さい場合には、領域PBにおける温度上昇の割合も小さく、安定的に温度を制御することが可能である。
しかし、ヒータ33は、第一支持部材37および第二支持部材38の間で、前述のガタGを有しているため、ヒータ33が必ずしも狙いの位置に配置されるわけではない。例えば、図6に示すように、ヒータ33が第二支持部材38に当接する位置まで移動すると、発熱領域HAと通紙領域PAのズレが大きくなり、発熱領域HAの軸方向他端側(図6の右側)に大きな範囲の領域PBが形成される。この場合、領域PBにおいて、定着ベルト22の温度Tが局所的に過剰に上昇してしまう。そして、このように定着ベルト22の温度が局所的に過剰に上昇すると、定着ベルト22の劣化が早まったり、用紙Pに形成する画像の質に影響を与える等の問題を生じてしまう。さらに、通紙領域PAの軸方向一方側端部の領域PCでは、用紙Pが発熱領域HAから外れてしまい、十分にトナー像Dが加熱されずに画像不良を生じてしまう。
特に近年では、画像形成動作の高速化や省エネルギー化の観点から、低熱容量の定着ベルト22が使用されており、上記の様な問題が生じやすい。つまり、このような低熱容量の定着ベルト22は、高温になりやすいだけでなく、部材内部の熱流束が小さいために熱が拡散しにくく、局所的な温度ムラが生じると、その解消に時間がかかるため、特に局所的な温度上昇が生じやすい。また、本実施形態のように、一つの発熱部材33bにより定着ベルト22を加熱する構成の場合、複数の発熱部材を備えた定着装置と比較して、発熱部材1つ当たりの発熱量が大きくなるため、特に上記の問題が生じやすい。
そこで、上記の課題を解決する本実施形態の定着装置として、図7に示すように、定着装置7は、ヒータ33の軸方向他端側に当接する、付勢部材としてのバネ40を備えている。なお、以下の説明では、前述した構成と異なる点について説明し、同様の構成については適宜省略する。
バネ40は、その一端がヒータ33の他端側のベース33e1に当接し、ヒータ33を軸方向他端側(図の矢印方向)へ付勢している。また、バネ40の他端は第二支持部材38に固定されている。バネ40の付勢力により、ヒータ33は、軸方向一端側のベース33c1の一端側の側面が第一支持部材37に当接しており、ヒータ33を第一支持部材37に対して位置決めすることができる。
このように、本実施形態では、バネ40がヒータ33に直接当接した構成している。また、第一支持部材37は、ヒータ33の一端側に設けられたベース33e1に当接し、ヒータ33を支持している。
本実施形態では、バネ40としてステンレス鋼のバネを用いている。バネ40にステンレス鋼を用いることにより、比較的安価にバネ40を構成することができる。また、ステンレス鋼は耐熱性に優れると共に経時的な耐久性にも優れ、バネ40の付勢力の低下や破損が生じにくいという利点がある。また、バネ40として、ニッケル合金を用いることもでき、例えばインコネル(登録商標)を用いることができる。バネ40にニッケル合金を用いることで、ステンレス鋼よりも優れた耐熱性を有し、数百度の環境下でも付勢力を損なわないバネ40を構成することができる。このように、付勢部材としてバネを用いることにより、耐熱性に優れた付勢部材を形成することができる。
ここで、ガラス管33aの軸方向の線膨張係数をα、軸方向と直交する断面の断面積をA、ヤング率をE,発熱部材33bの発熱による上昇温度をΔTとし、ヒータ33が正規の位置に配置された状態のバネ40のヒータ33に対する付勢力をFとすると、F<αΔTAEとなるように、バネ40の付勢力Fが調整されている。これにより、ガラス管33aが発熱部材33bの発熱により熱膨張しようとした場合には、バネ40の付勢力に抗して軸方向他端側へ膨張することができる。なお、ヒータ33の正規の位置にある状態とは、本実施形態においては、ヒータ33のベース33c1が第一支持部材37に当接した状態のことである。また、ベース33c1やベース33e1の軸方向の膨張によるバネ40への押圧力が、ガラス管33aの軸方向の膨張による押圧力に対して無視できないほど大きい場合には、上記のαΔTAEに加えて、ベース33c1,33e1の熱膨張による軸方向他端側への押圧力を考慮してもよい。
以上のように、本実施形態では、バネ40によってヒータ33を軸方向一端側へ付勢し、ヒータ33を、ベース33c1が第一支持部材37に当接する位置で位置決めしている。このため、ヒータ33が、第一支持部材37と第二支持部材38の間で一定のガタGを設けて支持された構成であっても、ヒータ33を上記の位置で確実に位置決めすることができる。従って、図6のように、ヒータ33がガタG1の範囲で位置ズレして領域PBが大きくなり、定着ベルト22の温度が局所的に過剰に上昇することを防止できる。また、ガタGを設けると共に、前述のようにバネ40の付勢力を調整することで、ヒータ33を正確に位置決めできると共に、発熱部材33bの発熱によるガラス管33aの熱膨張を許容することもできる。さらに、第一支持部材37および第二支持部材38は、定着ベルト22および加圧ローラ23の軸方向両端を支持する側板39に取り付けられている。このため、ヒータ33を第一支持部材37や第二支持部材38に対して位置決めすることで、側板39に対して位置決めすることができ、側板39に取り付けられた各部材との位置関係を定めることもできる。
本実施形態では、バネ40が、ヒータ33のうち、セラミックで形成されたベース33e1に当接し、ヒータ33を軸方向一端側へ付勢している。これに対して、ガラス管33aにバネ40を当接させてもよいが、この場合、バネ40の付勢力によってガラス管33aが破損したり、バネ40が、発熱部材33bの発熱により高温になったガラス管33aから熱を伝達されて、バネ40の劣化や破損につながるおそれがある。また、バネ40をリード線51に当接させると、バネ40の付勢力によってリード線51が断線するおそれがある。このため、本実施形態の構成がより好ましい。
図8は、本発明の第二実施形態について説明する図である。図8に示すように、本実施形態では、前述のバネ40を第一付勢部材とすると、ヒータ33の軸方向他端側に、第2付勢部材としてのバネ41を備えている。
バネ41は、その一端が第一支持部材37に固定され、他端がヒータ33の一端側のベース33c1に当接している。バネ41は、ベース33c1に当接して、ヒータ33を軸方向他端側へ付勢している。
本実施形態では、ヒータ33が、軸方向両端で、それぞれのバネ40,41によって付勢されており、バネ40,41は同等の付勢力になるように調整されている。これにより、ヒータ33は、ベース33c1と第一支持部材37、および、ベース33e1と第二支持部材38の間に、それぞれガタG2(例えば、ガタG2はガタG1の半分の距離)を有している。このように、両側から等しい力で付勢することにより、ヒータ33を第一支持部材37と第二支持部材38の中央に位置決めすることができる。このため、前述した実施形態と同様、ヒータ33がガタの範囲内で位置ズレして、定着ベルト22の温度が局所的に過剰に上昇することを防止できる。また、この場合にも、ガラス管33aが膨張しようとする力(前述のαΔTAEに相当する力)がバネ40,41からの付勢力を上回るように、バネ40,41の付勢力を調整することで、ガラス管33aの熱膨張を許容できる。
図9に示す第三実施形態の定着装置では、ヒータ33を付勢する付勢部材として板バネ42を用いている。図9に示すように、板バネ42は、その一端がヒータ33の他端側のベース33e1に当接し、他端が第二支持部材38に固定されている。図示例では、板バネ42の他端が第二支持部材38を挟持している。板バネ42は、本実施形態では弾性を有する金属材により構成される。
板バネ42は、ベース33e1に当接する端部が、軸方向一端側へ弾性変形しようとする力(図の矢印方向の力)により、ヒータ33を軸方向一端側へ付勢している。これにより、前述のバネ40を用いた実施形態と同様に、ヒータ33を軸方向一端側の第一支持部材37に当接させ、ヒータ33の第一支持部材37に対する位置決めを行うことができる。
図10に示すように、本発明の第四実施形態では、付勢部材としての板バネ43を、第二支持部材38よりも軸方向の外側(図の右側)に設けている。以下、ヒータ33の軸方向中央側を軸方向内側、ヒータ33の軸方向端部側を軸方向外側と呼ぶ。
板バネ43は、弾性変形する弾性部43aと、弾性部43aの一端を覆う絶縁部材43bからなる。
ヒータ33は、軸方向他端側の挿入部33e2が第二支持部材38に挿入され、挿入部33e2の一部は、第二支持部材38よりも軸方向外側へ突出している。そして、板バネ43の一端は、絶縁部材43bを介して、この挿入部33e2の軸方向外側への突出部分に当接している。また、板バネ43は、その他端が、ネジ44によって第二支持部材38の軸方向外側の側面に固定されている。板バネ43は、挿入部33e2に当接する端部が、軸方向一端側(図の矢印方向)へ弾性変形しようとする力により、ヒータ33を軸方向一端側へ付勢している。
本実施形態では、板バネ43を第二支持部材38よりも外側に設けられる挿入部33e2の軸方向の外側(図の右側)端部に当接させることにより、板バネ43が発熱部材33bの輻射熱をほとんど受けなくなり、熱的影響による板バネ43の劣化や破損を防止できる。従って、板バネ43を形成する材料として、より耐熱性の低いものを選択することができ、部材のコストダウンにつながる。
また、図11に示すように、板バネ43のヒータ33に当接する側の端部を絶縁部材43bによって覆うことにより、仮にリード線51の絶縁被覆51bが傷つき、導線51aが外部に露出することがあったとしても、弾性部43aが活電部である導線51aに接触することを防止でき、金属製の弾性部43aと導線51aの短絡を防止できる。なお、導線51aを保護する構成によって、適宜、絶縁部材43bを省略することができる。
また、付勢部材の取り付け位置は、前述の支持部材に限らない。例えば、図12に示すように、板バネ43を、ネジ44等の固定部材によって側板39の軸方向外側の側面に固定してもよい。このように、付勢部材の固定位置は、付勢部材のヒータに対する付勢力や、各部材の寸法や、前述の発熱部材の熱的影響などを考慮して、適宜、最適な構成を選択することができる。
以上の実施形態では、付勢部材として、板バネを第二支持部材38や側板39よりも軸方向外側に設ける構成について説明したが、図7で例示したバネ40を第二支持部材38や側板39よりも軸方向外側に設けてもよい。この場合、バネ40の他端側(ヒータ33に当接する一端側とは反対側の端部)を固定する部材を設ける必要がある。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
本発明の定着装置の構成としては、前述の実施形態で説明した図2の定着装置に限らず、例えば図13に示す定着装置を本発明の構成として採用することもできる。
図13に示す定着装置7は、図2の定着装置と同様に、薄肉で可撓性を有する無端状の定着ベルト22と、定着ベルト22を内周面側から加熱するヒータ33が設けられる。また、図2の構成の定着装置と異なり、本実施形態の定着装置7には、ヒータ33と定着ベルト22の間に伝熱部材31(図2参照)が設けられておらず、定着ベルト22がヒータ33によって直接加熱される。従って、本実施形態の定着装置7では、伝熱部材31を介して定着ベルト22が加熱される構成と比較すると、同じヒータ33からの発熱量でも定着ベルト22がより加熱されやすく、定着装置の省エネルギー化を実現できる一方で、前述した非通紙領域における定着ベルト22の過剰な温度上昇が生じやすい。
また、図13に示すように、定着装置7には、平面状のニップ形成面を備えたニップ形成部材30が設けられる。ニップ形成部材30は、ベースパッド301と、ベースパッド301の表面に設けられた低摩擦シート302とを有する。ニップ形成部材30が平面状のニップ形成面を有することにより、定着ニップNの形状が用紙Pの画像面に対して略平行になって、定着ベルト22と用紙Pとの密着性が高まるので、定着性が向上する。さらに、定着ニップNの出口側における定着ベルト22の曲率が大きくなるため、定着動作後の用紙Pを定着ベルト22から容易に分離させることができる。
図2の定着装置と同様、ニップ形成部材30は、その後方から補強部材32によって支持されている。補強部材32は、用紙搬送方向に延在し、ニップ形成部材30を支持するベース部32aと、ベース部32aの用紙搬送方向両端に、用紙搬送方向と直交する方へ延在する立ち上がり部32bとを備えたU字状をしている。立ち上がり部32bを設けることにより、補強部材32が加圧ローラ23の加圧方向に延在する横長の断面を有するようになり、断面係数が大きくなって、補強部材32の機械的強度を向上させることが可能となる。
二つの立ち上がり部32bの間には、ヒータ33が設けられている。図2の定着装置と同様に、ヒータ33と補強部材32の間には反射部材34が設けられ、ヒータ33から補強部材32へ放射される輻射熱を定着ベルト22へ反射している。また、定着ベルト22の表面には、サーミスタ等の温度センサ45が対向して設けられている。
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
以上の実施形態では、ヒータ33が一つの発熱部材33bを有する構成について説明したが、複数の発熱部材33bを有する構成であってもよい。また、ヒータ33が定着ベルト22の内周面側に設けられ、定着ベルト22を加熱する構成を説明したが、ヒータ33が加圧ローラ23に設けられる構成であってもよい。