JP7292089B2 - 炭化珪素膜の製造方法 - Google Patents
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Description
基板の表面に炭化珪素の膜を形成する方法としては、CVD法、加熱昇華法、金属珪素基板の表面を炭化させる方法等が知られている。
CVD法は、例えば、特許文献1に記載されており、基板を加熱しながら、原料となるシラン化合物及び炭化水素を交互に基板上に供給し、基板の表面に炭化珪素薄膜を形成する方法が開示されている。また、加熱昇華法は、例えば、特許文献2に記載されており、第1の炭化珪素結晶基板上に予め炭化珪素薄膜を成長させ、当該炭化珪素薄膜を第2の炭化珪素結晶基板表面に接触させた状態で炭化珪素坩堝内に配置し、第1の炭化珪素結晶基板が低温側、第2の炭化珪素結晶基板が高温側となるように温度勾配を設け、第2の炭化珪素結晶基板を炭化珪素の昇華温度以上に加熱し、第2の炭化珪素結晶基板側から昇華した炭化珪素を第1の炭化珪素結晶基板上の炭化珪素薄膜上に再結晶化させて成長させる、炭化珪素薄膜の形成方法が開示されている。
本発明の目的は、炭化珪素結晶からなる膜を効率よく形成する方法を提供することである。
本発明は、以下に示される。
(1)炭化珪素に出力250W/cm2以上のレーザーを照射して該炭化珪素を昇華させ、昇華物を基材に接触させて、炭化珪素結晶を上記基材の表面に堆積させることを特徴とする、炭化珪素膜の製造方法(以下、「第1の観点の炭化珪素膜製造方法」という)。
(2)上記レーザーが照射される上記炭化珪素は、金属珪素及び炭素を含む原料体に出力250W/cm2未満のレーザーを照射して得られたものである(1)に記載の炭化珪素膜の製造方法。
(3)金属珪素及び炭素を含む原料体に出力250W/cm2以上のレーザーを照射して、炭化珪素の合成及び該炭化珪素の昇華を行って、昇華物を基材に接触させて、炭化珪素結晶を上記基材の表面に堆積させることを特徴とする、炭化珪素膜の製造方法(以下、「第2の観点の炭化珪素膜製造方法」という)。
(4)上記基材が予熱されている(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の炭化珪素膜の製造方法。
(5)上記レーザーが、不活性ガスの雰囲気下で照射される(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の炭化珪素膜の製造方法。
(6)上記基材が炭化珪素単結晶からなる(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の炭化珪素膜の製造方法。
基材が予熱されている場合には、炭化珪素結晶膜を更に効率よく形成することができる。
基材30の構成材料は、特に限定されないが、昇華物の温度が2000℃以上であることから、好ましくは無機材料であり、特に好ましくは金属、合金、セラミックス又はこれらの混合物である。
ファイバーレーザーは、光ファイバー中で希土類元素等をドープしたコア中で誘導放電を起こさせ、レーザーをファイバー中に閉じ込めた状態で伝送するものである。ファイバーレーザーを発振する装置は、固体レーザー等の他のレーザーを発振する装置と連結して、より高い出力を有するレーザー発振装置としてもよい。
上記レーザーの波長は、特に限定されないが、好ましくは500nm以上10μm以下、より好ましくは800nm以上1500nm以下である。
上記レーザーは、連続的に照射してよいし、分割(間欠等)して照射してもよい。
また、上記レーザーの照射時間は、特に限定されず、目的、用途等に応じて、適宜、選択すればよいが、例えば、厚さ5μmの膜を形成する場合、照射時間は、少なくとも1分間である。
また、原料である炭化珪素は、特に限定されず、結晶質及び非晶質のいずれでもよく、その調製方法も特に限定されない。第1の観点の炭化珪素膜製造方法で用いられる好ましい炭化珪素は、金属珪素及び炭素を含む原料体に出力250W/cm2未満(下限は、通常、150W/cm2)のレーザーを照射して得られたものである。この方法によれば、炭素がレーザーのエネルギーを吸収して発熱すると同時に、金属珪素と反応して炭化珪素が容易に形成される。但し、レーザーの出力が250W/cm2未満であるので、形成された炭化珪素が昇華することはない。
(1)金属珪素粉末及び炭素粉末の混合物
(2)金属珪素の上面側に炭素が堆積したもの(炭素堆積物)
上記(2)の態様は、レーザーを上方から照射する場合に少なくとも炭素に照射されることを考慮した構成であり、金属珪素及び炭素は、粉末でも、大面積の膜又は板でもよい。図3は、好ましい炭素堆積物を示すものであり、金属珪素からなる板15の表面に炭素粉末13が堆積したレーザー照射用試料22を示す。
図4に示していないが、密閉空間において、生成した炭化珪素昇華物18を流動させる手段を備えることができる。
図4では、基材30がレーザーの光路に位置したため、レーザー照射により基材30が予熱されることとなったが、図5は、基材30をレーザーの光路に配置しない方法であるため、別途、基材30を予熱する手段(図示せず)を備えることが特に好ましい。
シグマ・アルドリッチ社製金属珪素粉末(平均粒径:~40μm)と、高純度化学研究所社製グラファイト粉末(平均粒径:~5μm)とを、Si:C=1:1(モル比)となるように秤量し、ボールミルを用いて混合した。次いで、得られた混合原料を、ペレット成形器を用いて、圧力10MPaで仮成形に供した。そして、静水圧プレスにより、圧力245MPaで加圧し、直径10mm及び厚さ約1mmの円板状圧縮成形物(以下、「レーザー照射用試料」という)を得た。このレーザー照射用試料は、ボールミルを用いて得られた混合原料を加圧して得られたものであるため、特に、金属珪素粉末は、最大粒径が30μmの微細粉末となって含まれている。
その後、図4に示す構成で、台座50の上に載置した、金属珪素粉末11及び炭素粉末13の混合物成形体からなるレーザー照射用試料20に、ファイバーレーザー照射装置の光源40からレーザーを照射し、炭化珪素を生成及び昇華させて昇華物18を基材30の下面側に接触させて基材30の表面に炭化珪素結晶膜を形成させた。尚、レーザー照射用試料20及び基材30の間隔は10mmである。レーザー照射用試料20及び基材30は、るつぼからなる包囲体60で覆い、台座50及び包囲体60により形成される密閉空間に昇華物18が滞留するようにした。基材30及び包囲体60は、いずれも、レーザーを透過する材料からなるものを用い、基材30は、平滑な板であり、その構成材料は、炭化珪素の単結晶である。包囲体60の構成材料は、石英である。また、基材30及び光源40は、レーザー照射用試料20の真上に位置するように配置し、光源40の先端に光拡散レンズ(図示せず)を配設し、光源40からのレーザーが、レーザー照射用試料20の表面に広く照射されるようにした。
レーザー照射装置の光源40から、波長1064nm、出力300W/cm2のファイバーレーザーを、基材30を介して、レーザー照射用試料20の表面0.7cm2に対し、180秒間照射することにより、基材30の下面(レーザー照射用試料20側の表面)に炭化珪素結晶膜を形成した。基材30の構成材料である炭化珪素は、レーザーを透過する作用を有するだけでなく、レーザーにより予熱されるため、炭化珪素昇華物18が基材30に接触すると炭化珪素結晶膜が形成されたことが確認された。
ファイバーレーザーの出力を200W/cm2とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。レーザー照射用試料20の表面が焼結されただけで、炭化珪素の昇華は確認されず、炭化珪素結晶膜も形成されなかった。
基材30として、六方晶炭化珪素(4H-SiC)からなる板を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、炭化珪素結晶膜を得た(図9参照)。その後、図9において実線で囲んだ部分(図10)に対するEBSD法により、結晶の同定及び方位解析を行った。測定条件は、加速電圧:20kV、測定領域:150×70μm、測定点間隔:0.2μm、倍率:500倍である。その結果、結晶膜は、図11に示すように、大部分が立方晶炭化珪素(3C-SiC)であることが分かった。また、結晶方位は、面に垂直な方向では111配向であり(図12参照)、面内方向では101配向である(図13参照)ことが分かった。
レーザー照射装置の光源40から、波長1064nm、出力80W/cm2のファイバーレーザーを、基材30を介して、レーザー照射用試料20の表面0.7cm2に対し、60秒間照射することにより、炭化珪素焼結体を得た。
次いで、レーザー照射装置の光源40から、波長1064nm、出力300W/cm2のファイバーレーザーを、基材30を介して、炭化珪素焼結体の表面0.7cm2に対し、60秒間照射することにより、基材30の下面に炭化珪素結晶膜を形成させた(図14参照)。また、レーザーの照射時間と炭化珪素結晶膜の厚さとから算出される成膜速度は5μm/分であった。
レーザー照射用試料を、実施例1の混合物成形体に代えて、シリコンウエハの表面に日本船舶工具有限会社製エアゾール乾性黒鉛皮膜形成潤滑剤「DGFスプレー」(商品名)を吹き付けて黒鉛堆積膜を形成させたレーザー照射用試料(炭素粉末堆積物)22(図3参照)とし、黒鉛堆積膜にレーザーを照射した以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、基材30の下面(レーザー照射用試料22側の表面)に炭化珪素結晶膜を形成させた(図15参照)。また、レーザーの照射時間と炭化珪素結晶膜の厚さとから算出される成膜速度は10μm/分であった。
Claims (7)
- 金属珪素及び炭素を含む原料体に、波長が500nm以上10μm以下、且つ、出力250W/cm2以上のレーザーを照射して、炭化珪素の合成及び該炭化珪素の昇華を行って、昇華物を基材に接触させて、炭化珪素結晶を前記基材の表面に堆積させることを特徴とする、炭化珪素膜の製造方法。
- 炭化珪素に、波長が500nm以上10μm以下、且つ、出力250W/cm2以上のレーザーを照射して該炭化珪素を昇華させ、昇華物を基材に接触させて、炭化珪素結晶を前記基材の表面に堆積させることを特徴とする、炭化珪素膜の製造方法。
- 前記レーザーが照射される前記炭化珪素は、金属珪素及び炭素を含む原料体に、波長が500nm以上10μm以下、且つ、出力250W/cm2未満のレーザーを照射して得られたものである請求項2に記載の炭化珪素膜の製造方法。
- 前記レーザーの波長が800nm以上1500nm以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の炭化珪素膜の製造方法。
- 前記基材が予熱されている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の炭化珪素膜の製造方法。
- 前記レーザーが、不活性ガスの雰囲気下で照射される請求項1乃至5のいずれか一項に記載の炭化珪素膜の製造方法。
- 前記基材が炭化珪素単結晶からなる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の炭化珪素膜の製造方法。
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