JP7276484B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂成形品に撥水性を付与してその防汚性を長期に亘り持続させることができる撥水性付与剤と、この撥水性付与剤を含む熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。
本発明はまた、撥水性、およびその持続性に優れた熱可塑性樹脂成形品に関する。
水垢、湯垢や泥水による樹脂成形品の汚れの付着を防止し、また付着した汚れを落とし易くするために、樹脂成形品の表面に撥水性を付与することが行われている。
従来、樹脂成形品に撥水性を付与する方法として、樹脂成形品の表面に撥水性のコート剤を塗布して撥水性コート層を形成したり、撥水性フィルムを貼着したりする方法がある。
しかし、このような方法では樹脂成形品成形後の工数が増え、製造コストが嵩む上に、経時による撥水性コート層の摩滅や撥水性フィルムの剥離により目的の防汚効果が得られなくなる。
このような問題に鑑み、樹脂成形品を成形する樹脂組成物自体に撥水性を付与するために、樹脂組成物にシリコーンオイル等の撥水性成分を配合することが提案されている(特許文献1)。
特開2010-77270号公報
特許文献1の技術では、樹脂組成物に配合したシリコーンオイル等が樹脂成形品の表面にブリードし、脱脂処理などにより撥水効果が失われる。
また、特許文献1の技術では十分な撥水性が得られているとは言えず、更なる撥水性の向上が望まれる。例えば、特許文献1では、撥水性付与効果を水の滑落角で評価しているが、特許文献1の実施例における水の滑落角の測定値は30~40゜程度である。しかし、十分な防汚効果を得るためには、滑落角10゜以下のより高い撥水性が望まれる。
本発明は、撥水性付与効果が著しく高く、撥水性の持続性効果にも優れた撥水性付与剤と、この撥水性付与剤を含む熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供することを目的とする。
本発明はまた、撥水性に著しく優れ、撥水性の持続性にも優れた熱可塑性樹脂成形品を提供することを目的とする。
本発明者はまた、シリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの複合ゴム質重合体(A)を用いたグラフト共重合体(B)により、上記目的を達成できることを見出した。
本発明者はまた、成形品表面について、特定の蛍光X線分析で測定された表面Si量が所定の範囲内である成形品が、上記目的を達成できることを見出した。
本発明は以下を要旨とする。
[1] シリコーン系ゴム質重合体(S)に、(メタ)アクリル酸エステルを複合してなる複合ゴム質重合体(A)に、ビニル化合物(b)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(B)よりなる撥水性付与剤。
[2] 前記複合ゴム質重合体(A)の製造に用いるシリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸エステルの合計100質量%におけるシリコーン系ゴム質重合体(S)の割合が10~65質量%である[1]に記載の撥水性付与剤。
[3] 前記ビニル化合物(b)が、芳香族ビニルおよびシアン化ビニルを含み、前記複合ゴム質重合体(A)30~90質量%に対して、前記ビニル化合物(b)70~10質量%をグラフト重合してなる(ただし、複合ゴム質重合体(A)とビニル化合物(b)との合計を100質量%とする。)[1]又は[2]に記載の撥水性付与剤。
[4] [1]ないし[3]のいずれかに記載の撥水性付与剤を含む熱可塑性樹脂組成物。
[5] 組成物中の樹脂成分100質量%に対する前記複合ゴム質重合体(A)の含有量が10~50質量%であり、前記シリコーン系ゴム質重合体(S)の含有量が2~30質量%である[4]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6] 更に、滑剤(E)を含む[4]又は[5]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7] 組成物中の樹脂成分100質量部に対する前記滑剤(E)の含有量が0.2~10質量部である[6]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8] 前記滑剤(E)が、酸アミド系滑剤である[6]又は[7]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[9] 以下の蛍光X線分析で測定される表面Si量が50~400cpsである[4]ないし[8]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<蛍光X線分析>
当該熱可塑性樹脂組成物を成形して得られた試験片の表面に対して、測定時間100秒、試料室雰囲気Heパージ、コリメーター0.5×0.5mm、励起電圧50kv、管電流100μAの条件で蛍光X線分析を行い、1.60~1.88keVのSi検出強度を表面Si量とする。
[10] [4]ないし[9]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
[11] 熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品であって、以下の蛍光X線分析で測定される表面Si量が50~400cpsである成形品。
<蛍光X線分析>
該成形品の表面に対して、測定時間100秒、試料室雰囲気Heパージ、コリメーター0.5×0.5mm、励起電圧50kv、管電流100μAの条件で蛍光X線分析を行い、1.60~1.88keVのSi検出強度を表面Si量とする。
[12] 表面の水の接触角が90°以上、かつ水の滑落角が20°以下である[10]又は[11]に記載の成形品。
[13] 該熱可塑性樹脂組成物が、シリコーン系ゴム質重合体(S)に、(メタ)アクリル酸エステルを複合してなる複合ゴム質重合体(A)に、ビニル化合物(b)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(B)よりなる撥水性付与剤を含む[11]又は[12]に記載の成形品。
[14] 車両部材、建材、エクステリア部材、家電ハウジング、事務機器または空調機器ハウジングである[10]ないし[13]のいずれかに記載の成形品。
本発明の撥水性付与剤及びこの撥水性付与剤を含む熱可塑性樹脂組成物によれば、撥水性及びその持続性に優れ、長期に亘り水垢や泥水などによる汚れの付着を防止し、また、付着した汚れを容易に除去することができる、防汚性に優れた熱可塑性樹脂成形品を提供することができる。
しかも、本発明の撥水性付与剤によれば、得られる熱可塑性樹脂成形品の成形外観を大きく損なうことなく良好な撥水性を付与することができる。
本発明の撥水性付与剤を構成するグラフト共重合体(B)は、ゴム成分としてシリコーン系ゴム質重合体(S)に(メタ)アクリル酸エステルを複合してなる複合ゴム質重合体(A)を用いたことで、ブロッキング性に優れるという効果も有するものであり、取り扱い性に優れる。
本発明によれば、撥水性及びその持続性に優れ、長期に亘り水垢や泥水などによる汚れの付着を防止し、付着した汚れを容易に除去することができる、防汚性に優れた熱可塑性樹脂成形品を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本明細書において「単位」とは、重合前の単量体化合物(モノマー)に由来する構造部分をさす。例えば、「(メタ)アクリル酸エステル単位」とは「(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造部分」をさす。重合体中の各単量体単位の含有割合は、当該重合体の製造に用いた単量体混合物中の該単量体の含有割合に該当する。
「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」と「メタクリル酸」の一方または双方を意味する。「(メタ)アクリレート」についても同様である。
「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものを意味する。
本発明に係るシリコーン系ゴム質重合体(S)、複合ゴム質重合体(A)、グラフト共重合体(B)の体積平均粒子径は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定された値である。
〔撥水性付与剤〕
本発明の撥水性付与剤は、シリコーン系ゴム質重合体(S)に、(メタ)アクリル酸エステルを複合してなる複合ゴム質重合体(A)に、ビニル化合物(b)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(B)よりなるものである。
[複合ゴム質重合体(A)]
まず、本発明の撥水性付与剤であるグラフト共重合体(B)のゴム成分である複合ゴム質重合体(A)(以下、「本発明の複合ゴム質重合体(A)」と称す場合がある。)について説明する。
本発明の複合ゴム質重合体(A)は、シリコーン系ゴム質重合体(S)と、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤および必要に応じてその他のビニル化合物を用いて製造される。
<シリコーン系ゴム質重合体(S)>
本発明の複合ゴム質重合体(A)を構成するシリコーン系ゴム質重合体(S)としては特に制限はないが、ビニル重合性官能基を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。特に、ビニル重合性官能基を含有するシロキサン(ビニル重合性官能基含有シロキサン)単位0.3~3モル%と、ジメチルシロキサン単位97~99.7モル%とで構成され、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリジメチルシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサンが好ましい。
ポリオルガノシロキサンを構成するジメチルシロキサンとしては、例えば、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられる。中でも、3員環~7員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは1種のみでまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものであれば制限されないが、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β-メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、∂-メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p-ビニルフエニルジメトキシメチルシラン、γ-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンなどが挙げられる。これらのビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
シリコーン系ゴム質重合体(S)には、必要に応じて、構成成分としてシロキサン系架橋剤単位が含まれていてもよい。
シロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
シリコーン系ゴム質重合体(S)の製造方法は、限定されない。例えば、以下の方法により製造することができる。
まず、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンとからなるシロキサン混合物に、必要に応じてシロキサン系架橋剤を添加し、次いで、乳化剤および水によって乳化させてシロキサン混合物水性分散体を得る。
次いで、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して、シロキサン混合物水性分散体を微粒子化させる。ここで、ホモジナイザー等の高圧乳化装置を使用すると、シリコーン系ゴム質重合体(S)の粒子径の分布が小さくなるので好ましい。
次いで、微粒子化したシロキサン混合物水性分散体を、酸触媒を含む酸水溶液中に添加して高温下で重合させる。
そして、反応液を冷却し、さらに苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質で中和することで重合を停止させて、水性分散体に分散したシリコーン系ゴム質重合体(S)を得る。
シリコーン系ゴム質重合体(S)の製造において用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸系の乳化剤が好ましい。乳化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。乳化剤は、シロキサン混合物100質量部(固形分として)に対して、0.05~5質量部程度の範囲で使用される。
重合に用いる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類、および硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸類が挙げられる。酸触媒は、1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、シリコーン系ゴム質重合体(S)の水性分散体の安定化作用に優れているため、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n-ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。酸触媒としてn-ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、シリコーン系ゴム質重合体(S)の水性分散体に使用した乳化剤が、熱可塑性樹脂組成物の発色性に影響を及ぼすことを極力抑えることができる。
シリコーン系ゴム質重合体(S)は、上記のような乳化重合により、シリコーン系ゴム質重合体(S)を含むラテックスとして製造される。
通常、このシリコーン系ゴム質重合体(S)ラテックスのシリコーン系ゴム質重合体(S)濃度(固形分濃度)は10~40質量%程度である。
シリコーン系ゴム質重合体(S)の体積平均粒子径は1~100nmであることが好ましく、より好ましくは10~90nm、特に好ましくは30~70nmである。体積平均粒子径が1nmを下回るシリコーン系ゴム質重合体は製造が困難であり、100nmを上回ると、これを用いて得られた熱可塑性樹脂成形品の成形外観が劣るものとなる。
シリコーン系ゴム質重合体(S)の粒子径分布は特に制限ないが、複合ゴム質重合体(A)に均一に分散するよう単一な粒子径であることが好ましい。
シリコーン系ゴム質重合体(S)の体積平均粒子径を制御する方法としては、例えば、特開平5-279434号公報に記載された方法を採用できる。
シリコーン系ゴム質重合体(S)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<(メタ)アクリル酸エステル>
本発明の複合ゴム質重合体(A)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアルキル基の炭素数が1~22のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-ドデシル等のアルキル基の炭素数1~22のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。得られる複合ゴム質重合体(A)を用いたグラフト共重合体(B)よりなる撥水性付与剤を配合してなる熱可塑性樹脂成形品の撥水性、耐衝撃性および光沢が向上することから、(メタ)アクリル酸エステルの中でも、アクリル酸n-ブチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<シリコーン系ゴム質重合体(S)/(メタ)アクリル酸エステル比>
本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造に用いるシリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸エステルの合計100質量%におけるシリコーン系ゴム質重合体(S)の割合は10~65質量%で、(メタ)アクリル酸エステルの割合が90~35質量%であることが好ましく、この割合は、シリコーン系ゴム質重合体(S):12~55質量%で、(メタ)アクリル酸エステル:88~45質量%であることがより好ましく、シリコーン系ゴム質重合体(S):15~55質量%で、(メタ)アクリル酸エステル:85~45質量%であることがさらに好ましい。上記範囲よりもシリコーン系ゴム質重合体(S)が少ないとシリコーン系ゴム質重合体(S)による撥水性の効果を十分に得ることができない。上記範囲よりもシリコーン系ゴム質重合体(S)が多過ぎても、その理由の詳細は明らかではないが、本発明の複合ゴム質重合体(A)を用いた撥水性付与剤による撥水性付与効果はむしろ低下する傾向にある。
<架橋剤>
本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造に際しては、前述の(メタ)アクリル酸エステルから得られる(メタ)アクリル酸エステル単位部分に架橋構造を導入するために、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルと共に架橋剤を用いる。架橋剤を用いて得られる架橋ゴム質重合体(A)であれば、その架橋部分がグラフト共重合体(B)の製造の際に用いる後述のビニル化合物(b)とグラフト結合するためのグラフト交叉点としても機能する。
架橋剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、ブチレンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリグリセリンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の使用量には特に制限はないが、シリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸エステルとの合計100質量部に対して、架橋剤の割合が0.1~5.0質量部、特に0.2~4.0質量部となる量であることが好ましい。架橋剤の割合が上記範囲内であれば、得られる複合ゴム質重合体(A)を用いたグラフト共重合体(B)よりなる撥水性付与剤を配合してなる熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品が耐衝撃性に優れたものとなる。
<その他のビニル化合物>
本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造には、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル以外のその他のビニル化合物を用いてもよい。その他のビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤と共重合可能であれば特に限定されない。例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-,m-またはp-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン等の芳香族ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどのマレイミド類や、無水マレイン酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造にその他のビニル化合物を用いる場合、その他のビニル化合物の使用量は、シリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸エステルの合計100質量部に対するその他のビニル化合物の割合が30質量部以下、特に20質量部以下、とりわけ10質量部以下となるように用いることが好ましい。
<複合ゴム質重合体(A)の製造方法>
本発明の複合ゴム質重合体(A)は、シリコーン系ゴム質重合体(S)の存在下に(メタ)アクリル酸エステルを重合することにより製造することができる。
本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造においては、後述の説明において挙げたシリコーン系ゴム質重合体(S)以外の他のゴム成分や各種添加剤を重合系に添加することができる。
(メタ)アクリル酸エステルの重合方法は特に限定されず、重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等)が挙げられる。
乳化重合法による複合ゴム質重合体(A)の製造方法としては、例えば、反応器内にシリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤、および必要に応じて用いられるその他のビニル化合物と、乳化剤、開始剤および連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、複合ゴム質重合体(A)を含むラテックスから析出法によって複合ゴム質重合体(A)を回収する方法が挙げられる。
(乳化剤)
本発明の複合ゴム質重合体(A)を製造する際に用いる乳化剤としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩等で例示されるカルボン酸系の乳化剤、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれたアニオン系乳化剤等、公知の乳化剤を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
乳化剤の一部は、ラテックスを安定化させるために、重合反応中に適宜添加することができる。
過剰な乳化剤は成形品製造時に金型へのガスの付着を起こしやすくし、生産性を低下させる可能性がある。このため、乳化剤の添加量は、シリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤および必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して0.01~3.0質量部が好ましく、より好ましくは0.02~2.0質量部、さらに好ましくは0.03~1.0質量部である。乳化剤の添加量が上記範囲内であれば、安定に複合ゴム質重合体(A)を製造できる。
(開始剤)
開始剤としては、例えば、アゾ重合開始剤、光重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。これらのうち、加熱により重合を開始できるアゾ重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、レドックス系開始剤が好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アゾ重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]フォルムアミド、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクヘキサンカルボキシレート)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等が挙げられる。
無機過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばペルオキシエステル化合物が挙げられる。その具体例としては、α,α’-ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート、t-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシ2-ヘキシルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ2-ヘキシルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシマレイックアシッド、t-ブチルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルオイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルペルオキシ)イソフタレート、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシド)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、t-ブチルハイドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジメチルビス(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(t-ブチルペルオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレラート、2-エチルヘキサンペルオキシ酸t-ブチル、ジベンゾイルペルオキシド、パラメンタンハイドロペルオキシドおよびt-ブチルペルオキシベンゾエート等が挙げられる。
レドックス系開始剤としては、有機過酸化物と硫酸第一鉄、キレート剤および還元剤を組み合わせたものが好ましい。例えば、クメンヒドロペルオキシド、硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、およびデキストロースからなるものや、t-ブチルハイドロペルオキシド、ナトリウムホルムアルデヒトスルホキシレート(ロンガリット)、硫酸第一鉄、およびエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを組み合わせたもの等が挙げられる。
開始剤の添加量は、シリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤および必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して0.001~5質量部が好ましい。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α-メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
連鎖移動剤は、シリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸エステルと必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して1.2質量部以下で用いることが好ましい。
懸濁重合法による複合ゴム質重合体(A)の製造方法としては、例えば、反応器内にシリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤、および必要に応じて用いられるその他のビニル化合物と、懸濁剤、懸濁助剤、開始剤および連鎖移動剤を仕込み、加熱して重合し、スラリーを脱水、乾燥して複合ゴム質重合体(A)を回収する方法が挙げられる。
懸濁剤としては、例えば、アニオン系水溶性高分子、ノニオン系水溶性高分子、水難溶性無機塩等が挙げられる。
アニオン系水溶性高分子としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム-メタクリル酸アルキルエステル共重合体等の1種又は2種以上が挙げられる。中でも、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムが好ましい。
ノニオン系水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルアミン等の水溶性高分子の1種又は2種以上が挙げられる。好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、更に好ましくはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体である。
水難溶性無機塩としては、例えば、硫酸バリウム、第三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の1種又は2種以上が挙げられる。好ましくは第三リン酸カルシウムである。
懸濁剤は、シリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸エステルと必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して0.1~3質量部用いることが好ましい。
懸濁助剤としては、カルボン酸塩(例えば、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸カリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等)、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等のアルキル基および/又はアルケニル基を有する二塩基酸もしくはその塩の1種又は2種以上が挙げられる。
懸濁助剤としては、製造時の安定性等の点から、アルケニルコハク酸カリウムを用いることが好ましい。
懸濁助剤は、シリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸エステルと必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して0.0001~1質量部用いることが好ましい。
開始剤としては、有機ペルオキシド類が挙げられる。
開始剤は、シリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸エステルと必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して0.001~5質量部用いることが好ましい。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α-メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
連鎖移動剤は、シリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸エステルと必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して1.2質量部以下で用いることが好ましい。
<複合ゴム質重合体(A)の体積平均粒子径>
本発明の複合ゴム質重合体(A)の体積平均粒子径は、好ましくは5~200nm、より好ましくは10~170nmであり、特に好ましくは30~150nmである。
複合ゴム質重合体(A)の体積平均粒子径が上記下限値以上であれば安定な製造が可能である。複合ゴム質重合体(A)の体積平均粒子径が上記上限値以下であれば得られる熱可塑性樹脂成形品の外観特性が良好である。
[グラフト共重合体(B)]
本発明の撥水性付与剤であるグラフト共重合体(B)は、本発明の複合ゴム質重合体(A)に、ビニル化合物(b)、例えば、芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、およびシアン化ビニルから選ばれる少なくとも1種のビニル化合物(b)をグラフト重合させてグラフト層を形成したものである。
ビニル化合物(b)は、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、およびシアン化ビニル以外のその他のビニル化合物を含んでいてもよい。
グラフト共重合体(B)のグラフト層のグラフト率は以下の方法により算出され、後掲の実施例でもこの方法でグラフト率を求めた。
<グラフト率の算出>
グラフト共重合体(B)2.5gにアセトン80mLを加え65℃の湯浴で3時間還流し、アセトン可溶分の抽出を行う。残留したアセトン不溶物を遠心分離により分離し、乾燥した後質量を測定する。得られたグラフト共重合体(B)中のアセトン不溶物の質量と、該グラフト共重合体(B)の製造に用いた複合ゴム質重合体(A)の質量から、次の式を用いて、グラフト率を算出する。
Figure 0007276484000001
本発明のグラフト共重合体(B)のグラフト率は10~90%、特に30~85%が好ましい。グラフト共重合体(B)のグラフト率が上記範囲内であれば、このグラフト共重合体(B)を用いて良好な耐衝撃性、成形外観の熱可塑性樹脂成形品を得ることができる。
本発明の複合ゴム質重合体(A)にグラフト重合させる(メタ)アクリル酸エステルとしては、本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造に用いる(メタ)アクリル酸エステルとして例示したものの1種または2種以上を用いることができる。
芳香族ビニル、シアン化ビニルとしては、本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造において、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物としてそれぞれ例示した芳香族ビニル、シアン化ビニルの1種または2種以上を用いることができる。
本発明のグラフト共重合体(B)の製造に用いるビニル化合物(b)は、前述の(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル以外のその他のビニル化合物を含有していてもよい。その他のビニル化合物としては、本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造において、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物として例示したもののうちの、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル以外のビニル化合物の1種または2種以上が挙げられる。
グラフト共重合体(B)のグラフト層を形成するビニル化合物(b)として、芳香族ビニル、好ましくはスチレンと、シアン化ビニル、好ましくはアクリロニトリルの混合物を使用すると、得られるグラフト共重合体(B)の熱安定性が優れたものとなるため好ましい。この場合、スチレン等の芳香族ビニルとアクリロニトリル等のシアン化ビニルとの割合は、芳香族ビニル80~60質量%に対してシアン化ビニル20~40質量%であることが好ましい(ただし、芳香族ビニルとシアン化ビニルとの合計で100質量%とする)。
グラフト共重合体(B)のグラフト層は、複合ゴム質重合体(A)30~90質量%に対して、ビニル化合物(b)70~10質量%を乳化グラフト重合させて得られるものであると、このグラフト共重合体(B)を用いて得られる熱可塑性樹脂成形品の外観が優れるため好ましい(ただし、複合ゴム質重合体(A)とビニル化合物(b)との合計で100質量%とする。)。この割合は、さらに好ましくは、複合ゴム質重合体(A)40~70質量%で、ビニル化合物(b)60~30質量%である。
複合ゴム質重合体(A)へのビニル化合物(b)のグラフト重合方法としては、前述の乳化重合等により得られた複合ゴム質重合体(A)のラテックスにビニル化合物(b)を添加し、1段又は多段で重合する方法が挙げられる。多段で重合する場合には、複合ゴム質重合体(A)のゴムラテックスの存在下で、ビニル化合物(b)を分割添加又は連続添加して重合することが好ましい。このような重合方法により良好な重合安定性が得られ、且つ所望の粒子径および粒子径分布を有するラテックスを安定に得ることができる。
グラフト重合に用いる重合開始剤としては、前述の本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造に用いる前述のラジカル重合開始剤と同様のものが挙げられる。
複合ゴム質重合体(A)にビニル化合物(b)を重合する際には、複合ゴム質重合体(A)のラテックスを安定化させ、得られるグラフト共重合体(B)の平均粒子径を制御するために、乳化剤を添加することができる。ここで用いる乳化剤としては、特に限定しないが、前述の本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造に用いる前述の乳化剤と同様のものが挙げられる。乳化剤としては、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤が好ましい。
複合ゴム質重合体(A)にビニル化合物(b)をグラフト重合させる際の乳化剤の使用量は、特に限定しないが、得られるグラフト共重合体(B)100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.02~5質量部がより好ましい。
乳化重合で得られたグラフト共重合体(B)のラテックスから、グラフト共重合体(B)を回収する方法としては、特に限定されないが、下記の方法が挙げられる。
グラフト共重合体(B)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入し、グラフト共重合体(B)を固化させる。
次いで、固化したグラフト共重合体(B)を、水または温水中に再分散させてスラリーとし、グラフト共重合体(B)中に残存する乳化剤残渣を水中に溶出させ、洗浄する。
次いで、スラリーを脱水機等で脱水し、得られた固体を気流乾燥機等で乾燥することによって、グラフト共重合体(B)を粉体または粒子として回収する。
凝固剤としては、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)、金属塩(塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等)等が挙げられる。凝固剤は、乳化剤の種類に応じて適宜選定される。例えば、乳化剤としてカルボン酸塩(脂肪酸塩、ロジン酸石鹸等)のみを用いた場合、どのような凝固剤を用いてもよい。乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤を用いた場合、無機酸では不十分であり、金属塩を用いる必要がある。
本発明のグラフト共重合体(B)の体積平均粒子径は、好ましくは50~250nm、より好ましくは60~200nmである。
グラフト共重合体(B)の体積平均粒子径が上記下限値以上であれば安定な製造が可能である。グラフト共重合体(B)の体積平均粒子径が上記上限値以下であれば得られる熱可塑性樹脂成形品の外観特性が良好である。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述したグラフト共重合体(B)よりなる本発明の撥水性付与剤を含有するものである。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常、本発明の撥水性付与剤と他の熱可塑性樹脂とを混合してなる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の本発明の撥水性付与剤の含有量は、本発明の撥水性付与剤を配合したことにより、目的とする撥水性の付与効果が得られる程度であればよく、特に制限はないが、以下の複合ゴム質重合体(A)含有量、シリコーン系ゴム質重合体(S)含有量、表面Si量を満たすような量であることが好ましい。
<複合ゴム質重合体(A)の含有量>
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の本発明の撥水性付与剤であるグラフト共重合体(B)に含まれる複合ゴム質重合体(A)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して10~50質量%であることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中の複合ゴム質重合体(A)の含有量が上記下限未満では十分な撥水性付与効果を得ることができず、防汚性も十分でない場合がある。複合ゴム質重合体(A)の含有量が上記上限を超えても撥水性の向上効果に差異はなく、むしろ撥水性、防汚性が低下する傾向がある。
より好ましい複合ゴム質重合体(A)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して20~45質量%であり、さらに好ましくは25~45質量%である。
ここで、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂成分とは、通常熱可塑性樹脂組成物に含まれる本発明の撥水性付与剤であるグラフト共重合体(B)と他の熱可塑性樹脂との合計であり、通常、熱可塑性樹脂組成物中に含まれる後述の添加剤以外の成分に該当する。
<シリコーン系ゴム質重合体(S)の含有量>
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の本発明の撥水性付与剤であるグラフト共重合体(B)に含まれる複合ゴム質重合体(A)中のシリコーン系ゴム質重合体(S)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して2~30質量%であることが好ましい。
シリコーン系ゴム質重合体(S)の含有量が上記下限未満では十分な撥水性付与効果を得ることができず、防汚性も十分でない場合がある。シリコーン系ゴム質重合体(S)の含有量が上記上限を超えても撥水性の向上効果に差異はなく、むしろ撥水性、防汚性が低下する傾向がある。
より好ましいシリコーン系ゴム質重合体(S)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して4~20質量%であり、さらに好ましくは7~15質量%である。
熱可塑性樹脂組成物中の樹脂成分については上述の通りである。
<表面Si量>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、以下の蛍光X線分析で測定される表面Si量が50~400cpsとなるように本発明の撥水性付与剤を含むことが好ましい。
<蛍光X線分析>
当該熱可塑性樹脂組成物を成形して得られた試験片の表面に対して、測定時間100秒、試料室雰囲気Heパージ、コリメーター0.5×0.5mm、励起電圧50kv、管電流100μAの条件で蛍光X線分析を行い、1.60~1.88keVのSi検出強度を表面Si量とする。
蛍光X線分析による表面Si量が上記下限未満では十分な撥水性付与効果を得ることができず、防汚性も十分でない場合がある。表面Si量が上記上限を超えても撥水性の向上効果に差異はなく、むしろ撥水性、防汚性が低下する傾向がある。
より好ましい表面Si量は、100~350cpsであり、さらに好ましくは200~300cpsである。
表面Si量を求める蛍光X線分析法の具体的な方法は後述の実施例の項に記載される通りである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の撥水性付与剤を、上記の複合ゴム質重合体(A)含有量、シリコーン系ゴム質重合体(S)含有量及び表面Si量を満たすように含むことが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の本発明の撥水性付与剤とその他の熱可塑性樹脂の含有量は、本発明の撥水性付与剤に含まれる複合ゴム質重合体(A)の含有量、当該複合ゴム質重合体(A)に含まれるシリコーン系ゴム質重合体(S)の含有量によっても異なるが、通常、本発明の撥水性付与剤と他の熱可塑性樹脂の合計100質量部中に、本発明の撥水性付与剤を10~80質量部、特に20~70質量部含むことが好ましい。本発明の撥水性付与剤の含有量が上記範囲内であれば、流動性(成形性)や十分な撥水性付与効果を得た上で、成形品の耐衝撃性、剛性、その他の物性バランスが良好となる傾向がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられる他の熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-N-フェニルマレイミド共重合体、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-N-フェニルマレイミド共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンエーテル-ポリスチレン複合体、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレ酸共重合体、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリフェレン系樹脂、熱可塑性ポリウレタンなどの1種または2種以上が挙げられる。これらのうち、耐衝撃性と流動性の観点から、アクリロニトリル-スチレン共重合体が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、通常の熱可塑性樹脂組成物に配合される添加剤が含まれていてもよい。
添加剤としては、例えば顔料、染料等の着色剤、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン等)、難燃剤、安定剤、補強剤、加工助剤、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、前述の通り、本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造に際して、プレエマルションを作製する工程に添加してもよい。
これらの添加剤のうち、特に滑剤(E)を含むことで、撥水安定性、撥水持続性を高めることができ、好ましい。
前記滑剤(E)としては、高級脂肪酸、酸エステル、酸アミドおよび高級アルコールより選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
高級脂肪酸としては、例えば、アラキドン酸、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、ミスチリン酸、ラウリン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸セシル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールジステアリレート、ペンタエリスリトールテトラステアリレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ポリオキシエチレン、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸モノアミド、オレイン酸モノアミド、エルカ酸モノアミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミスチリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
中でも、滑剤(E)として、撥水性を効率よく発現させるために酸アミドが好ましい。酸アミドとしては、モノアミド系、ビスアミド系が挙げられるが、特に、ビスアミド系が撥水性の持続性効果を発現させる点から好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が滑剤(E)を含む場合、熱可塑性樹脂組成物中の滑剤(E)の含有量は、組成物中の樹脂成分100質量部に対して、0.2~10質量部であることがより好ましく、好ましくは0.5~8質量部、更に好ましくは0.8~6質量部、特に好ましくは1~5質量部である。
この範囲で滑剤(E)を含有することにより、安定した撥水性を発現でき、撥水性の持続性も向上させることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の撥水性付与剤と、必要に応じて他の熱可塑性樹脂や滑剤(E)等の添加剤とをV型ブレンダやヘンシェルミキサー等により混合分散させ、これにより得られた混合物を押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ロール等の混練機等を用いて溶融混練することにより製造される。
各成分の混合順序には特に制限はなく、全ての成分が均一に混合されればよい。
〔成形品〕
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものであり、撥水性および防汚性とその持続性に優れる。また、併用する他の熱可塑性樹脂やその配合量等を調整することで耐衝撃性や、剛性等の機械特性、成形外観に優れたものとすることもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形機法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等が挙げられる。これらのなかでも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
本発明の別態様の成形品は、熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品であって、以下の蛍光X線分析で測定される表面Si量が50~400cpsであることを特徴とする。
<蛍光X線分析>
該成形品の表面に対して、測定時間100秒、試料室雰囲気Heパージ、コリメーター0.5×0.5mm、励起電圧50kv、管電流100μAの条件で蛍光X線分析を行い、1.60~1.88keVのSi検出強度を表面Si量とする。
<表面Si量>
蛍光X線分析による表面Si量が50cps未満では十分な撥水性およびその持続性を得ることができず、防汚性も十分でない場合がある。表面Si量が400cpsを超えても撥水性の向上効果に差異はなく、むしろ撥水性、防汚性が低下する傾向がある。
より好ましい表面Si量は、100~350cpsであり、さらに好ましくは200~300cpsである。
表面Si量を求める蛍光X線分析法の具体的な方法は後述の実施例の項に記載される通りである。
上記表面Si量を満たす本発明の成形品の形状には特に制限はない。このため、表面Si量の蛍光X線分析において、成形品の形状が蛍光X線分析に適さない場合は、当該成形品の成形に用いた熱可塑性樹脂組成物を用いて同様の成形方法で蛍光X線分析に適当な形状の成形品を成形し、この成形品について蛍光X線分析を測定することで、当該成形品の表面Si量を求めることができる。後述の水の接触角および水の滑落角の測定においても同様である。
<水の接触角>
本発明の成形品は、表面の水の接触角が90°以上であることが好ましい。水の接触角は大きい程撥水性に優れる。
本発明の成形品の水の接触角の測定方法は以下の通りであり、より具体的には、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
<水の接触角の測定方法>
成形品の水平な表面に20μLの水滴を滴下し、滴下直後の水の接触角を測定する。
<水の滑落角>
本発明の成形品は、表面の水の滑落角が20°以下であることが好ましく、より好ましくは10°以下である。水の滑落角は小さい程撥水性に優れる。
本発明の成形品の水の滑落角の測定方法は以下の通りであり、より具体的には、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
<水の滑落角の測定>
成形品の水平な表面に0.2mLの水滴を滴下し、成形品を約2°/秒の速度で傾けた時に水滴が滑落し始める角度を測定する。
<表面Si量・水の接触角・水の滑落角の達成方法>
前述の蛍光X線分析による表面Si量が50~400cpsで、好ましくは表面の水の接触角が90°以上、水の滑落角が20°以下である本発明の成形品を得る方法としては、このような表面Si量、更には水の接触角および水の滑落角を有する成形品が得られれば良く、特に制限はない。例えば、前述した本発明の撥水性付与剤を用い、この撥水性付与剤を所定の割合で配合した本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形材料として用いる方法が挙げられる。
〔用途〕
本発明の成形品は、撥水性および防汚性とその持続性に優れることから、水滴や泥水が付着することで表面が汚れ易い部材に好適である。例えば、車両部材(マッドガード、エンブレム等)、建材(壁材、窓枠等)、エクステリア部材、家電ハウジング、事務機器、空調機器ハウジング、トイレ用器具、浴室用器具等において、その表面の優れた撥水性により、水を撥き、水垢や湯垢、泥汚れの付着を防止し、また、付着した汚れを容易に落とすことが可能である。
以下に、合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
以下において、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
[体積平均粒子径の測定]
合成例、実施例および比較例で製造したシリコーン系ゴム質重合体(S-1)、複合ゴム質重合体(A-1)~(A-3)、グラフト共重合体(B-1)~(B-3)、およびABSグラフト共重合体(X-1)の体積平均粒子径は、日機装社製のNanotrac UPA-EX150を用いて動的光散乱法より求めた。
[シリコーン系ゴム質重合体(S)の製造]
<合成例I:シリコーン系ゴム質重合体(S-1)の製造>
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部、イオン交換水300部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに300kg/cmの圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
別途、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器および撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部とイオン交換水90部を注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間にわたって滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いで、10%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、シリコーン系ゴム質重合体(S-1)のラテックス(固形分18.2%)を得た。
シリコーン系ゴム質重合体(S-1)ラテックス中に分散しているシリコーン系ゴム質重合体(S-1)の体積平均粒子径は50nmであった。
[複合ゴム質重合体(A)の製造と評価]
<合成例II-1:複合ゴム質重合体(A-1)の製造>
下記配合で複合ゴム質重合体(A-1)を製造した。
(配合)
シリコーン系ゴム質重合体(S-1)ラテックス (固形分として)14部
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム 0.2部
アクリル酸n-ブチル(BA) 86部
メタクリル酸アリル(AMA) 0.52部
1,3-ブチレングリコールジメタクリレート 0.17部
t-ブチルハイドロペルオキシド 0.22部
硫酸第一鉄 0.0002部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.33部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.0004部
イオン交換水 430部
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた窒素置換された反応器にシリコーン系ゴム質重合体(S-1)ラテックス14部(固形分として)、イオン交換水430部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム0.2部、アクリル酸n-ブチル86部、メタクリル酸アリル0.52部、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート0.17部、t-ブチルハイドロペルオキシド0.22部を仕込み、撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。60℃に加熱後、硫酸第一鉄、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを添加し重合反応を開始させた。重合発熱が確認された後、内温を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、60分保持し、アクリル酸エステル成分の重合を完結させて複合ゴム質重合体(A-1)のラテックスを得た。
得られたラテックス中の複合ゴム質重合体(A-1)の固形分は19.1%、体積平均粒子径は90nmであった。
<合成例II-2~II-3:複合ゴム質重合体(A-2)~(A-3)の製造>
シリコーン系ゴム質重合体(S-1)、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸アリル、1,3-ブチレングリコールジメタクリレートの量を表1に示す通り変更したこと以外は、合成例II-1と同様にして、それぞれ複合ゴム質重合体(A-2)~(A-3)のラテックスを得た。
得られた複合ゴム質重合体(A-1)~(A-3)の体積平均粒子径は表1に示す通りであった。
表1には各複合ゴム質重合体(A-2)~(A-3)のシリコーン系ゴム質重合体(S-1)/アクリル酸n-ブチル質量比をSLx/BA比として示す。
Figure 0007276484000002
[グラフト共重合体(B)の製造と評価]
<合成例III-1:グラフト共重合体(B-1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器に、以下の配合で原料を仕込み、撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。
(配合)
水(複合ゴム質重合体(A-1)ラテックス中の水を含む) 240部
複合ゴム質重合体(A-1)ラテックス (固形分として)50部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS-Na) 0.5部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.42部
硫酸第一鉄七水塩 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.003部
次いで、アクリロニトリル(AN)、スチレン(ST)、t-ブチルハイドロペルオキシドを以下の配合で含む混合液を100分間にわたって滴下しながら、80℃まで昇温した。
(配合)
アクリロニトリル(AN) 12.5部
スチレン(ST) 37.5部
t-ブチルハイドロペルオキシド 0.2部
滴下終了後、温度80℃の状態を30分間保持した後冷却して、グラフト共重合体(B-1)のラテックスを得た。
得られたラテックス中のグラフト共重合体(B-1)の固形分は28.6%、体積平均粒子径は120nm、グラフト率は45%であった。
次いで、1.5%酢酸カルシウム水溶液100部を80℃に加熱し、該水溶液を撹拌しながら、該水溶液にグラフト共重合体(B-1)ラテックス100部を徐々に滴下し、グラフト共重合体(B-1)を固化させ、さらに95℃に昇温して10分間保持した。
次いで、固化物を脱水、洗浄、乾燥し、粉末状のグラフト共重合体(B-1)を得た。
<合成例III-2~III-3:グラフト共重合体(B-2)~(B-3)の製造>
複合ゴム質重合体(A-1)のラテックスの代りに、複合ゴム質重合体(A-2)~(A-3)のラテックスをそれぞれ用いたこと以外は、合成例II-1と同様にして、それぞれグラフト共重合体(B-2)~(B-3)を得た。
製造されたグラフト共重合体(B-1)~(B-3)の原料配合と体積平均粒子径、グラフト率を表2にまとめて示す。
円柱状(直径5.6cm)の容器にグラフト共重合体(B-1)~(B-3)の粉末をそれぞれ20g量り取り、粉末に均一に荷重がかかるように重量20kgのおもりを載せ、温度35℃の環境下で2時間放置し、グラフト共重合体(B-1)~(B-3)の粉末をブロック状にした。このブロック状のグラフト共重合体(B-1)~(B-3)を目開き3.35mmの篩の上に載せ、ふるい振とう機にて篩下率が約100%となるに要する時間(ほぼ全量が篩から落下するに要する時間)を測定することで、耐ブロッキング性を評価した。この結果を表2に併記した。この時間が短い程耐ブロッキング性に優れるものであり、100秒以下であれば耐ブロッキング性に優れると判断される。
Figure 0007276484000003
[ABS樹脂の製造]
<合成例IV:ABS樹脂(X-1)の製造>
イオン交換水175部に、ポリブタジエンの乳化ラテックス54部(固形分換算)と、スチレ32.2部、アクリロニトリル13.8部からなる単量体混合物と、不均化ロジン酸カリウム1.3部、硫酸第一鉄0.0046部、フルクトース0.28部、t-ドデシルメルカプタン0.11部及びクメンハイドロパーオキサイド0.20部とを仕込み、60℃から反応を開始し、途中で70℃まで昇温し、2時間半後乳化グラフト重合を完結させた。反応性生物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してABS樹脂(X-1)(以下、「グラフト共重合体(X-1)」と称す。)を得た。
グラフト共重合体(X-1)のグラフト率は55%、体積平均粒子径は320nmであった。
[滑剤(E)]
以下の実施例11~18及び比較例6では、以下に示す滑剤(E-1)又は滑剤(E-2)を用いた。
酸モノアミド系滑剤(E-1):三菱ケミカル社製「アマイドAP-1」(ステアリン酸アミド)
酸ビスアミド系滑剤(E-2):三菱ケミカル社製「スリパックスL」(エチレンビスラウリン酸アミド)
[シリコーンオイルマスターバッチ]
以下の比較例1~6では、以下に示すシリコーンオイルマスターバッチを用いた。
シリコーンオイルマスターバッチ:富士ケミカル株式会社製「クリンベルCB-50AB」(シリコーンオイル/ABS樹脂=50/50(質量比)のシリコーンオイルマスターバッチ)
[実施例1~18、比較例1~6:熱可塑性樹脂組成物の製造と評価]
<AN-ST系熱可塑性樹脂組成物の製造>
実施例1~18では、表3A,3Bに示す割合のグラフト共重合体(B-1)~(B-3)と、懸濁重合法によって製造したアクリロニトリル(AN)-スチレン(ST)共重合体(テクノUMG(株)製「UMG AXS レジン S202N」)を配合した。実施例11~18では更に滑剤(E-1)又は(E-2)を表3A,3Bに示す割合で配合した。
比較例1~6では、グラフト共重合体(X-1)、アクリロニトリル(AN)-スチレン(ST)共重合体及びシリコーンオイルマスターバッチを表3Bに示す割合で配合した(ただし、比較例1では、アクリロニトリル-スチレン共重合体とシリコーンオイルマスターバッチのみ)。比較例6では更に滑剤(E-2)を表3Bに示す割合で配合した。
さらに全熱可塑性樹脂組成物にはカーボンブラック0.5部を添加してヘンシェルミキサーを用いて混合した。
この混合物を220℃に加熱した押出機に供給し、混練して熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
<供試成形体の作製>
上記熱可塑性樹脂組成物のペレットを用い、各々、日本製鋼所(株)製J85AD-110Hにて、シリンダー温度240℃、金型温度50℃、射出速度25mm/秒の条件で成形して、長さ86mm、幅50mm、厚み3mmの板状の成形体を得た。
比較例5においては、成形時にスクリューがスリップし計量できず成形不可であった。このため以下の評価を行うことはできなかった。
<評価>
(成形外観:発色性の評価)
供試成形体について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM-3500d」)を用いて、SCE方式にて明度L*を測定した。測定されたL*を「L*(ma)」とする。L*が低いほど黒色となり、発色性が良好と判定した。
「明度L*」とは、JIS Z 8729において採用されているL*a*b*表色系における色彩値のうちの明度の値(L*)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
(成形外観:表面光沢の測定)
スガ試験機株式会社製の「デジタル変角光沢計UGV-5D」を用い、JIS K 7105に準拠して、入射角60°、反射角60°における供試成形体の表面の反射率(%)を測定した。反射率が高いほど表面外観に優れることを意味する。
(表面Si量の測定(蛍光X線分析))
供試成形体の表面に対して、日立ハイテクサイエンス社製蛍光X分析装置EA6000VXを用いて、測定時間100秒、試料室雰囲気Heパージ、コリメーター0.5×0.5mm、励起電圧50kv、管電流100μAの条件で蛍光X線分析を行い、1.60~1.88keVのSi検出強度を表面Si量とした。
(撥水性:水の接触角の測定)
協和界面科学株式会社製 接触角計CA-Sミクロ2型を使用し、水平に設置した供試成形体の表面にイオン交換水20μLの水滴を滴下した直後の水の接触角を測定した。
水の接触角は90゜以上で大きいほど撥水性に優れると評価される。
(撥水性:水の滑落角の測定)
新東科学株式会社製 HEIDON Static Friction TESTER HEIDON-10を使用し、イオン交換水0.2mLの水滴を供試成形体の水平な上面に滴下し、成形体を約2°/秒の速度で傾けた。この時に水滴が滑落し始める角度を測定し、水の滑落角とした。
滑落角は20゜以下、さらに10゜以下と小さい程撥水性に優れる。
(防汚性:泥水の付着度合の評価)
供試成形体を傾斜角45゜に設置し、以下の泥水50mLをジョウロの蓮口から成形体の傾斜面に散布した。その後自然乾燥させた後、泥水の散布面を観察し、成形体の板面の面積に対する泥の乾燥固化物の付着面積の割合(百分率)を目視で見積もり、下記基準で評価した。点数が高い程、撥水性、防汚性に優れる。
泥水:JIS8種粉体(関東ローム層砂)/純水/中性界面活性剤=20/79.75/0.25(質量部)
<評価基準>
1点:付着面積割合 ほぼ100%
2点:付着面積割合 約80~100%
3点:付着面積割合 約50~80%
4点:付着面積割合 約20~50%
5点:殆ど付着していない。
上記の撥水性、防汚性の評価は、以下に記載する方法で脱脂処理した成形体に対して行った。この評価により、脱脂処理により影響を受けることなく撥水性、防汚性を発揮すること、即ち、撥水性、防汚性の持続性に優れることが分かる。
(脱脂処理方法)
脱脂綿にイソプロピルアルコールを含ませて、成形体を軽く拭き取って脱脂処理した。
(持続性評価)
実施例1~3,11~18及び比較例6では、供試成形体を温度60℃、湿度50%の高湿恒温槽内で100時間エージングした後に、上記の方法で撥水性として水の滑落角の測定、及び、防汚性として泥水の付着度合の評価を行った。
実施例1~18および比較例1~6の結果を表3A,3Bに示す。
Figure 0007276484000004
Figure 0007276484000005
表3A,3Bより、本発明の撥水性付与剤であるグラフト共重合体(B)を配合した実施例1~18の熱可塑性樹脂組成物よりなる成形品、ないしは、表面Si量が50~400cpsである本発明の成形品は、撥水性、防汚性に優れることが分かる。また、撥水性付与剤の配合により、成形性や成形外観は殆ど損なわれることはなく、通常のABS樹脂を配合した比較例2~4,6よりも成形外観は優れていることが分かる。
実施例1~18における熱可塑性樹脂組成物の複合ゴム質重合体(A)の含有量、シリコーン系ゴム質重合体(S)の含有量、表面Si量から、熱可塑性樹脂組成物の複合ゴム質重合体(A)の含有量は25~45質量%の範囲で、シリコーン系ゴム質重合体(S)の含有量は7~15質量%の範囲であり、表面Si量は200~300cpsの範囲であることが、特に撥水性付与効果の面で優れることが分かる。
さらに滑剤(E)を配合した実施例11~18から、滑剤(E)の配合で撥水性の効果が向上していることが分かる。特に、滑剤(E)としてビスアミド系を用いた実施例12,14,16,18は、優れた撥水性の持続性効果が得られることが分かる。
一方で、比較例6は、滑剤(E)を配合してもこのような効果は得られない。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2019年9月30日付で出願された日本特許出願2019-179865及び日本特許出願2019-179870に基づいており、その全体が引用により援用される。

Claims (9)

  1. シリコーン系ゴム質重合体(S)に、(メタ)アクリル酸エステルを複合してなる複合ゴム質重合体(A)に、ビニル化合物(b)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(B)よりなる撥水性付与剤と、滑剤(E)とを含む熱可塑性樹脂組成物
  2. 前記複合ゴム質重合体(A)における前記シリコーン系ゴム質重合体(S)と前記(メタ)アクリル酸エステルの合計100質量%に対する前記シリコーン系ゴム質重合体(S)の割合が10~65質量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物
  3. 前記ビニル化合物(b)が、芳香族ビニルおよびシアン化ビニルを含み、前記グラフト共重合体(B)は、前記複合ゴム質重合体(A)30~90質量%に対して、前記ビニル化合物(b)70~10質量%をグラフト重合してなる(ただし、複合ゴム質重合体(A)とビニル化合物(b)との合計を100質量%とする。)請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物
  4. 組成物中の樹脂成分100質量%に対する前記複合ゴム質重合体(A)の含有量が10~50質量%であり、前記シリコーン系ゴム質重合体(S)の含有量が2~30質量%である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 組成物中の樹脂成分100質量部に対する前記滑剤(E)の含有量が0.2~10質量部である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記滑剤(E)が、酸アミド系滑剤である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 以下の蛍光X線分析で測定される表面Si量が50~400cpsである請求項ないしのいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    <蛍光X線分析>
    当該熱可塑性樹脂組成物を成形して得られた試験片の表面に対して、測定時間100秒、試料室雰囲気Heパージ、コリメーター0.5×0.5mm、励起電圧50kv、管電流100μAの条件で蛍光X線分析を行い、1.60~1.88keVのSi検出強度を表面Si量とする。
  8. 請求項ないしのいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
  9. 車両部材、建材、エクステリア部材、家電ハウジング、事務機器または空調機器ハウジングである請求項に記載の成形品。
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