JP7276043B2 - スカンジウムの回収方法、並びにイオン交換処理方法 - Google Patents

スカンジウムの回収方法、並びにイオン交換処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7276043B2
JP7276043B2 JP2019173049A JP2019173049A JP7276043B2 JP 7276043 B2 JP7276043 B2 JP 7276043B2 JP 2019173049 A JP2019173049 A JP 2019173049A JP 2019173049 A JP2019173049 A JP 2019173049A JP 7276043 B2 JP7276043 B2 JP 7276043B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
scandium
chelate resin
resin
chromium
adsorbed
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019173049A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021050378A (ja
Inventor
剛 小原
宙 小林
修 中井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority to JP2019173049A priority Critical patent/JP7276043B2/ja
Priority to PCT/JP2020/033774 priority patent/WO2021059941A1/ja
Publication of JP2021050378A publication Critical patent/JP2021050378A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7276043B2 publication Critical patent/JP7276043B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22BPRODUCTION AND REFINING OF METALS; PRETREATMENT OF RAW MATERIALS
    • C22B3/00Extraction of metal compounds from ores or concentrates by wet processes
    • C22B3/20Treatment or purification of solutions, e.g. obtained by leaching
    • C22B3/42Treatment or purification of solutions, e.g. obtained by leaching by ion-exchange extraction
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J45/00Ion-exchange in which a complex or a chelate is formed; Use of material as complex or chelate forming ion-exchangers; Treatment of material for improving the complex or chelate forming ion-exchange properties
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J49/00Regeneration or reactivation of ion-exchangers; Apparatus therefor
    • B01J49/50Regeneration or reactivation of ion-exchangers; Apparatus therefor characterised by the regeneration reagents
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C02TREATMENT OF WATER, WASTE WATER, SEWAGE, OR SLUDGE
    • C02FTREATMENT OF WATER, WASTE WATER, SEWAGE, OR SLUDGE
    • C02F1/00Treatment of water, waste water, or sewage
    • C02F1/42Treatment of water, waste water, or sewage by ion-exchange
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22BPRODUCTION AND REFINING OF METALS; PRETREATMENT OF RAW MATERIALS
    • C22B3/00Extraction of metal compounds from ores or concentrates by wet processes
    • C22B3/04Extraction of metal compounds from ores or concentrates by wet processes by leaching
    • C22B3/06Extraction of metal compounds from ores or concentrates by wet processes by leaching in inorganic acid solutions, e.g. with acids generated in situ; in inorganic salt solutions other than ammonium salt solutions
    • C22B3/08Sulfuric acid, other sulfurated acids or salts thereof
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22BPRODUCTION AND REFINING OF METALS; PRETREATMENT OF RAW MATERIALS
    • C22B3/00Extraction of metal compounds from ores or concentrates by wet processes
    • C22B3/20Treatment or purification of solutions, e.g. obtained by leaching
    • C22B3/44Treatment or purification of solutions, e.g. obtained by leaching by chemical processes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22BPRODUCTION AND REFINING OF METALS; PRETREATMENT OF RAW MATERIALS
    • C22B59/00Obtaining rare earth metals
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Environmental & Geological Engineering (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Geology (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • General Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Geochemistry & Mineralogy (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Hydrology & Water Resources (AREA)
  • Water Supply & Treatment (AREA)
  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)
  • Treatment Of Water By Ion Exchange (AREA)

Description

本発明は、スカンジウムの回収方法、並びにその回収方法に適用されるイオン交換処理方法に関する。
スカンジウム(Sc)は、高強度アルミ合金の添加剤や燃料電池の電極材料として極めて有用である。しかしながら、生産量が少なく、高価であるため、利用は限られていた。
ところで、ラテライト鉱やリモナイト鉱等に代表されるニッケル酸化鉱石には、微量のスカンジウムが含まれていることが知られている。しかしながら、ニッケル酸化鉱石はニッケル含有品位が低いことから、ニッケルを回収するにあたってコストを要するという問題があった。そのため、炉を用いて高温で熔解する乾式製錬に付し、鉄とニッケルの合金であるフェロニッケルを得てステンレスの原料に用いること以外には利用できなかった。
乾式製錬法を用いてニッケル酸化鉱石を処理した場合、スカンジウムはニッケルと分離されるものの、多くの不純物と共に化学的に安定した形態であるスラグに分配されてしまうため、スカンジウムを高純度で回収することは技術的に困難となる。そのため、ニッケル酸化鉱石に含まれるスカンジウムを工業的に回収研究はほとんどなされていなかった。
しかしながら、近年、ニッケル酸化鉱石を硫酸と共に加圧容器に装入し、240℃~260℃程度の高温に加熱してニッケルを含有する浸出液と浸出残渣とに固液分離する高圧酸浸出(High Pressure Acid Leach:HPAL)プロセスが工業的に実用化された(例えば特許文献1参照)。
このHPALプロセスでは、浸出処理により得られた浸出液に中和剤を添加して不純物を分離し、次いで硫化剤を添加してニッケルをニッケル硫化物として回収する。そして、回収したニッケル硫化物を既存のニッケル製錬工程で処理することで、電気ニッケルや硫酸ニッケルのようなニッケル塩化合物を得ることができる。
このようなHPALプロセスを用いた場合、ニッケル酸化鉱石に含まれるスカンジウムは、ニッケルと共に浸出液に含まれる。そして、得られた浸出液に対し、中和剤を添加して不純物を分離し、次いで硫化剤を添加して硫化処理を施すと、ニッケルはニッケル硫化物として回収される一方で、スカンジウムは硫化剤添加後の酸性溶液(硫化後液)に含まれるようになる。そのため、HPALプロセスを使用することで、ニッケルとスカンジウムとを効果的に分離することができる。
しかしながら、HPALプロセスで分離したスカンジウムは希薄であり、多種多様な不純物が共存した状態なので、スカンジウムを不純物と分離することによって濃縮して回収するには、更なる精製処理が必要となる。この精製処理は、例えば特許文献2に、キレート樹脂を用いた方法として報告されている。
具体的に、特許文献2に開示の方法は、先ず、ニッケル酸化鉱石を酸化性雰囲気の高温高圧の下で酸性水溶液中にニッケルとスカンジウムとを選択的に浸出させて酸性溶液を得た後、酸性溶液のpHを2~4の範囲に調整して、硫化剤の使用によってニッケルを硫化物として選択的に沈澱回収する。次に、得られたニッケル回収後の溶液(硫化後液)をキレート樹脂と接触させてスカンジウムを吸着させて、キレート樹脂を希酸で洗浄した後、洗浄後キレート樹脂と強酸とを接触させてスカンジウムを溶離するというものである。
なお、ニッケル酸化鉱石中に含まれる不純物は、産出する地域によって種類や量の大小にばらつきはあるものの、鉄、アルミニウム、クロム、マンガン、マグネシウム等の元素が含まれていることが知られている。
特に、ニッケル酸化鉱石に含まれるクロムは、スカンジウムと似た挙動をとり、キレート樹脂に吸着しやすい一方で、スカンジウムを溶離する場合よりも高濃度の硫酸を用いなければ溶離が難しいという特徴がある。
そのため、特許文献3では、スカンジウムを溶離する際に使用する硫酸溶液よりも高い濃度の硫酸溶液を用いて、キレート樹脂からクロムを溶離する方法が開示されている。
具体的に、特許文献3には、スカンジウム、アルミニウム、及びクロムを含有するニッケル酸化鉱石を原料とする湿式製錬処理により得られる硫化後液に対してキレート樹脂を用いたイオン交換処理を行うイオン交換工程を有するスカンジウムの回収方法が開示されている。そして、イオン交換工程では、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる吸着工程と、キレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸を接触させてスカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程と、スカンジウム溶離工程を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させてキレート樹脂に吸着したクロムを除去するクロム除去工程と、を含むことが開示されている。
すなわち、特許文献3に開示の方法は、不純物元素のクロムも、スカンジウムと共にキレート樹脂に吸着させ、溶離に使用する硫酸溶液の濃度の違いを利用して、クロムがキレート樹脂に吸着した状態でスカンジウムだけをキレート樹脂から溶離させ、クロムと分離するというものものである。
しかしながら、このような方法によりクロムをキレート樹脂から溶離しても、そのキレート樹脂を繰り返して使用するに従ってクロムがキレート樹脂中に次第に蓄積していき、その分だけスカンジウムの吸着が妨げられることがあった。そしてその結果として、スカンジウムの回収量が低下し、キレート樹脂から溶離されるスカンジウム濃度も低下して、スカンジウムの濃縮処理が阻害されるという問題があった。
このような問題に対して、キレート樹脂からクロムを完全に溶離するために硫酸溶液の濃度を上げ、通液量を増すという方法も一定の効果はあると考えらえる。しかしながら、過剰な強度の酸を多量に使用することは、硫酸の使用コストや樹脂の損傷を増加させることになり、好ましいことではない。さらに、キレート樹脂から溶離後のクロムを含む強酸性溶液の処理に要するコストや手間もかかる。
特開平3-173725号公報 特開平9-194211号公報 特開2014-218719号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、少なくとも、スカンジウムとクロムとを含有する酸性溶液から、キレート樹脂を用いたイオン交換処理を経てスカンジウムを回収するにあたり、キレート樹脂の生産性の低下を抑制するとともに、スカンジウムを効率的に濃縮する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、少なくとも、スカンジウムとクロムとを含有する酸性溶液をキレート樹脂に接触させることによりスカンジウムを接触させるイオン交換処理において、キレート樹脂に接触させるにあたり、その酸性溶液の温度を所定の低温範囲に維持して接触させることにより、キレート樹脂へのクロムの吸着を抑制でき、そしてこれを利用することでスカンジウムの回収量を増加できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、少なくとも、スカンジウムとクロムとを含有する酸性溶液からスカンジウムを回収する方法において、前記酸性溶液をキレート樹脂に接触させることにより該酸性溶液中のスカンジウムを該キレート樹脂に吸着させ、その後スカンジウム溶離液を得るイオン交換処理工程を含み、前記イオン交換処理工程では、前記酸性溶液を前記キレート樹脂に接触させるに際し、該酸性溶液の温度を、20℃を超えて50℃以下の範囲に維持して接触させる、スカンジウムの回収方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記酸性溶液は、ニッケル酸化鉱石を硫酸による浸出処理に付し、得られた浸出液に硫化剤を添加してニッケル硫化物を分離した後の溶液である、スカンジウムの回収方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記キレート樹脂が、イミノジ酢酸を官能基とする樹脂である、スカンジウムの回収方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記イオン交換処理工程は、前記酸性溶液を前記キレート樹脂に接触させて、該キレート樹脂にスカンジウムを吸着させる工程と、スカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.3N未満の硫酸を接触させ、該キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去する工程と、アルミニウムを除去したキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸を接触させ、該キレート樹脂に吸着したスカンジウムを溶離してスカンジウム溶離液を得る工程と、スカンジウムを溶離したキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、該キレート樹脂に吸着したクロムを除去する工程と、を有し、前記クロムを除去した後のキレート樹脂を、前記スカンジウムを吸着させる工程に繰り返して使用する、スカンジウムの回収方法である。
(5)本発明の第5の発明は、少なくとも、スカンジウムとクロムとを含有する酸性溶液に対してキレート樹脂を用いたイオン交換処理を施し、スカンジウムを濃縮させた溶液を得るイオン交換処理方法であって、前記酸性溶液をキレート樹脂に接触させることにより該酸性溶液中のスカンジウムを該キレート樹脂に吸着させる工程を含み、前記酸性溶液を前記キレート樹脂に接触させるに際し、該酸性溶液の温度を、20℃を超えて50℃以下の範囲に維持して接触させる、イオン交換処理方法である。
本発明によれば、少なくとも、スカンジウムとクロムとを含有する酸性溶液から、キレート樹脂を用いたイオン交換処理を経てスカンジウムを回収するにあたり、キレート樹脂へのクロムの吸着を抑制することができる。
そしてこれにより、キレート樹脂を繰り返し使用したときでもキレート樹脂へのスカンジウムの吸着量の低下を防ぐことができる。その結果、キレート樹脂から溶離させて得られるスカンジウム溶離液のスカンジウム濃度を高くすることができ、高純度なスカンジウムを回収できるとともに、スカンジウムの回収量を増加させることができる。
スカンジウムの回収方法の流れの一例を示す工程図である。 硫化後液の液温に対する、キレート樹脂へのスカンジウムとクロムの分配係数の測定結果を示すグラフ図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、本明細書にて、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
本発明に係るスカンジウムの回収方法は、少なくとも、スカンジウム(Sc)とクロム(Cr)とを含有する酸性溶液からスカンジウムを回収する方法である。例えば、その酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱石を硫酸による浸出処理に付し、得られた浸出液に硫化剤を添加してニッケル硫化物を分離した後の溶液が挙げられる。
具体的に、このスカンジウムの回収方法は、酸性溶液をキレート樹脂に接触させることによりその酸性溶液中のスカンジウムをキレート樹脂に吸着させ、その後スカンジウム溶離液を得るイオン交換処理工程を含む。そして、イオン交換処理工程では、酸性溶液をキレート樹脂に接触させるに際し、酸性溶液の温度を比較的低い温度範囲、具体的には20℃を超え50℃以下の範囲に維持して接触させることを特徴としている。
このように、本発明に係るスカンジウムの回収方法では、キレート樹脂を用いたイオン交換処理工程において、キレート樹脂に接触させる酸性溶液の温度を調整し、比較的低い温度に維持した状態で接触させるようにしている。これにより、酸性溶液に含まれる特にクロムのキレート樹脂への吸着を抑制でき、キレート樹脂を繰り返し使用したときでもキレート樹脂へのスカンジウムの吸着量の低下を防ぐことができる。その結果、キレート樹脂から溶離させて得られるスカンジウム溶離液のスカンジウム濃度を高くすることができ、回収するスカンジウムの純度を向上させることができる。また、スカンジウムの回収量を増加させることができる。
図1は、スカンジウムの回収方法の流れの一例を示す工程図である。この例では、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスを経て得られる酸性溶液である硫化後液を用いて、その硫化後液からスカンジウムを回収する流れを示している。なお、硫化後液には、少なくとも、スカンジウム及びクロムが含まれている。
図1に示すように、スカンジウムの回収方法は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスを実行してニッケル硫化物と硫化後液とを生成させる湿式製錬処理工程S1と、湿式製錬処理工程S1から得られた酸性溶液に対してイオン交換処理を施してスカンジウム溶離液を得るイオン交換処理工程S2と、スカンジウム溶離液からスカンジウムを回収するスカンジウム回収工程S3と、を有する。また、スカンジウム溶離液をキレート樹脂に再吸着させるための再吸着処理工程S4を有するようにすることもできる。
(1)湿式製錬処理工程
スカンジウム回収の処理対象となるスカンジウムを含有する酸性溶液としては、上述したように、ニッケル酸化鉱石に対して硫酸により浸出して得られる硫酸酸性溶液等の、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬処理を経て得られる溶液を用いることができる。
具体的に、スカンジウムを含有する酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱石を高温高圧下で硫酸により浸出して浸出液を得る浸出工程S11と、浸出液に中和剤を添加して不純物を含む中和澱物と中和後液とを得る中和工程S12と、中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る硫化工程S13と、を有する湿式製錬処理工程S1により得られる硫化後液を用いることができる。以下では、湿式製錬処理工程S1の流れを簡単に説明する。
(浸出工程)
浸出工程S11は、例えば高温加圧容器(オートクレーブ)等を用いて、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加して240℃~260℃の温度下で撹拌処理を施し、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを形成する工程である。なお、浸出工程S11における処理は、従来知られているHPALプロセスに従って行えばよい。
ニッケル酸化鉱石としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が挙げられる。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8重量%~2.5重量%であり、水酸化物又はケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有される。また、これらのニッケル酸化鉱石には、スカンジウムが含まれている。
浸出工程S11では、得られた浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを洗浄しながら、ニッケルやコバルト、スカンジウム等を含む浸出液と、ヘマタイトである浸出残渣とに固液分離する。固液分離処理では、例えば、浸出スラリーを洗浄液と混合した後、凝集剤供給設備等から供給される凝集剤を用いて、シックナー等の固液分離設備を利用して行うことができる。
(中和工程)
中和工程S12は、得られた浸出液に中和剤を添加してpH調整し、不純物元素を含む中和澱物と中和後液とを得る工程である。中和工程S12における中和処理により、ニッケルやコバルト、スカンジウム等の有価金属は中和後液に含まれるようになり、鉄、アルミニウムをはじめとした不純物の大部分が中和澱物となる。
中和剤としては、従来公知のもの使用することができ、例えば、炭酸カルシウム、消石灰、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
(硫化工程)
硫化工程S13は、中和工程S12にて得られた中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る工程である。硫化工程S13における硫化処理により、ニッケル、コバルト、亜鉛等は硫化物となり、スカンジウムは硫化後液に含まれることになる。
具体的に、硫化工程S13では、得られた中和後液に対して、硫化水素ガス、硫化ナトリウム、水素化硫化ナトリウム等の硫化剤を添加し、不純物成分の少ないニッケル及びコバルトを含む硫化物(以下では単に「ニッケル硫化物」ともいう)と、ニッケル濃度を低い水準で安定させ、スカンジウムを含有させた硫化後液とを生成させる。
硫化工程S13における硫化処理では、ニッケル硫化物を含むスラリーに対してシックナー等の沈降分離装置を用いた沈降分離処理を施し、ニッケル硫化物をシックナーの底部より分離回収する。一方で、水溶液成分であって、スカンジウムを含有する硫化後液についてはオーバーフローさせて回収する。
スカンジウムの回収方法では、以上のようなニッケル酸化鉱石の湿式製錬処理工程S1の各工程を経て得られる硫化後液を、スカンジウム回収処理の対象となる、少なくとも、スカンジウムとクロムとを含有する酸性溶液として用いることができる。
(2)イオン交換処理工程
イオン交換処理工程S2は、湿式製錬処理工程S1を経て得られた硫化後液に対してキレート樹脂(イオン交換樹脂)を用いたイオン交換処理を施すことによって、スカンジウムを濃縮させたスカンジウム溶離液を得る工程である。
スカンジウムを含有する酸性溶液である硫化後液には、スカンジウムのほかに、例えば上述した硫化工程S15における硫化処理では硫化されずに溶液中に残留した、少なくともクロム等の不純物が含まれている。このことから、硫化後液からスカンジウムを回収するにあたり、予め、その硫化後液中に含まれる不純物を除去してスカンジウムを濃縮させることが好ましい。
イオン交換処理工程S2としては、例えば、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムを吸着させる吸着工程S21と、スカンジウムを吸着したキレート樹脂に所定の規定度の硫酸を接触させてアルミニウムを除去するアルミニウム除去工程S22と、キレート樹脂に所定の規定度の硫酸を接触させてスカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程S23と、キレート樹脂に所定の規定度の硫酸を接触させてキレート樹脂に吸着したクロムを除去するクロム除去工程S24と、を有するものを例示できる。
イオン交換処理に用いるキレート樹脂の種類としては、特に限定されない。例えばイミノジ酢酸を官能基とする樹脂を用いることができ、このようなキレート樹脂によれば、スカンジウムの吸着選択性を高めることができる。また、例えばキレート樹脂をカラムに充填し、酸性溶液をカラムに通液させることによってそのキレート樹脂に接触させて、キレート樹脂にスカンジウムを吸着させる。
(吸着工程)
吸着工程S21では、例えばカラムにキレート樹脂を充填させ、そのカラムに酸性溶液である硫化後液を通液することによって酸性溶液をキレート樹脂に接触させて、溶液中のスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる。キレート樹脂としては、上述したように、例えばイミノジ酢酸を官能基とする樹脂を用いることができる。
ここで、本発明に係るスカンジウムの回収方法では、この吸着工程S21において、酸性溶液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムを吸着させるに際し、酸性溶液を所定の温度範囲に調整し維持した状態で接触させる。具体的には、酸性溶液の温度を、20℃を超え50℃以下の温度に維持して、キレート樹脂に接触させることを特徴としている。
上述したようなHPALプロセスによる湿式製錬処理工程S1を経て得られた硫化後液からスカンジウムを回収しようとする場合、キレート樹脂に通液する時点での硫化後液の液温は、60℃~80℃程度と比較的高いのが一般的である。これは、湿式製錬処理工程S1での加圧浸出(浸出工程S11での処理)は240℃~250℃程度の高い温度で行われるためであり、また、溶液中の溶解度をできるだけ高く維持して、設備をコンパクト化するためにも、わざわざ冷却設備を設ける必要がないためである。
このような一般的な温度範囲に対して、本発明に係る回収方法では、キレート樹脂に接触させる硫化後液の液温を50℃以下、好ましくは40℃以下に低下させてからキレート樹脂に接触させるようにしている。より具体的には、硫化後液の温度を、従来一般的な60℃~70℃の範囲から50℃以下となるように冷却設備や熱交換器等を用いて低下させて、その温度範囲を維持したままキレート樹脂に接触させる。
このような方法によれば、硫化後液に含有されるクロムイオンのキレート樹脂への吸着量を減少させることができ、その分だけスカンジウムイオンの吸着量を増加させることができる。
具体的にその効果としては、酸性溶液である硫化後液の液温を50℃に維持してキレート樹脂に接触させることにより、スカンジウムの吸着率は90%を超えるようになる。また、好ましくは40℃以下の液温に維持して接触させると、ほぼ100%の吸着率でスカンジウムが吸着する。このようなことから、キレート樹脂から溶離して得られるスカンジウム回収量を極めて効果的に増加させることができ、好ましい。
また、後述するクロム除去工程S24にてクロムを除去した後のキレート樹脂を再度吸着工程S21に繰り返して使用する場合でも、スカンジウムの吸着量の低下を抑えることができる。そしてその結果、キレート樹脂から溶離させて得られるスカンジウム溶離液のスカンジウム濃度を高くすることができ、高純度なスカンジウムを回収できるとともに、スカンジウムの回収量を増加させることができる。
また、このようにクロムのキレート樹脂への吸着量を抑えることができることから、例えば高濃度の硫酸溶液を用いたクロム除去処理等を行う必要がなく、キレート樹脂の損傷を抑え、寿命を延ばすことができる。
なお、酸性溶液の温度を比較的低い温度に維持するとはいえ、当然ながら凍っていたり過飽和となって通液中に晶出するような温度とすることは好ましくない。また、スケーリングと呼ばれるカルシウム等の析出物が生じると、キレート樹脂や配管等の設備にもダメージを与え、析出物を除去する手間もかかる。したがって、実用的な取り扱いを考えると、20℃を超えた温度とすることがよく、好ましくは室温、すなわち25℃を下限とすることが好ましく、30℃を下限とすることがより好ましい。
(アルミニウム除去工程)
アルミニウム除去工程S22では、吸着工程S21でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.3N未満の硫酸を接触させ、そのキレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去する。なお、硫酸によりキレート樹脂からアルミニウムを除去すると、アルミニウムを溶離させた溶液(アルミニウム溶離液)が回収される。
アルミニウムを除去するに際しては、キレート樹脂に接触させる硫酸のpHを1.0~2.5の範囲に維持することが好ましく、1.5~2.0の範囲に維持することがより好ましい。硫酸のpHが1.0未満であると、アルミニウムだけでなく、吸着させたスカンジウムもキレート樹脂から除去される可能性がある。一方で、硫酸のpHが2.5を超えると、アルミニウムが適切にキレート樹脂から除去されない可能性がある。そのため、硫酸濃度としては、0.3N未満とし、好ましくは0.1N~0.2N程度とする。
(スカンジウム溶離工程)
スカンジウム溶離工程S23では、アルミニウムを除去したキレート樹脂に0.3N以上3.0N未満の硫酸を接触させ、キレート樹脂からスカンジウムを溶離し、スカンジウム溶離液を得る。
スカンジウム溶離液を得るに際しては、溶離液(溶離させるための溶液)に用いる硫酸の規定度を0.3N以上3.0N未満の範囲に維持することが好ましく、0.5N以上2.0N未満の範囲に維持することがより好ましい。規定度が3.0N以上であると、スカンジウムだけでなく、キレート樹脂に吸着した不純物のクロムまでも溶離してスカンジウム溶離液に含まれてしまうことがある。一方で、規定度が0.3N未満であると、スカンジウムが適切にキレート樹脂から溶離されないため、好ましくない。
なお、このスカンジウム溶離工程S23から得られたスカンジウム溶離液を繰り返し用い、すなわち、得られたスカンジウム溶離液をキレート樹脂に再度接触させてスカンジウム溶離工程S23を繰り返し行うようにしてもよい(スカンジウム溶離液の精製)。これにより、スカンジウム溶離液に含まれるスカンジウムの濃度を高めることができる。
(クロム除去工程)
クロム除去工程S24では、スカンジウム溶離工程S23を経てスカンジウムを溶離させたキレート樹脂に3.0N以上の硫酸を接触させ、キレート樹脂に吸着した不純物であるクロムを除去する。なお、硫酸によりキレート樹脂からクロムを除去すると、クロムを溶離させた溶液(クロム溶離液)が回収される。
クロムを除去するに際しては、硫酸の規定度を3.0N以上とすることが好ましい。硫酸の規定度が3.0Nを下回ると、クロムが適切にキレート樹脂から除去されない可能性がある。
ここで、クロム除去工程S24にてキレート樹脂に吸着したクロムを除去した後のキレート樹脂については、上述した吸着工程S21に繰り返して、スカンジウムを吸着させるキレート樹脂として再度使用することができる。
上述したように、本発明に係る回収方法では、酸性溶液である硫化後液の液温を、20℃を超え50℃以下の比較的低い温度に維持してキレート樹脂に接触させるようにしていることから、クロムの吸着量を抑えることができる。これにより、クロム除去工程S24を経て回収されるキレート樹脂には、クロムの残存がほとんどない。そのため、クロムを除去した後のキレート樹脂を繰り返し使用した場合でも、クロムが徐々に蓄積されることもなく、スカンジウムの吸着量の低下を効果的に防ぐことができる。
また、このように有効にキレート樹脂を繰り返し使用できることから、スカンジウムの回収処理を経済的にも効率的に実施することができ、好ましい。
(鉄除去工程)
また、図示していないが、上述したアルミニウム除去工程S22に先立ち、不純物である鉄を除去する鉄除去工程を設けるようにしてもよい。硫化後液には、その原料のニッケル酸化鉱石に由来して鉄が含まれることがある。このようなとき、不純物を低減してスカンジウム溶離液中のスカンジウム濃度を高める観点から、鉄除去工程を設けて、キレート樹脂に吸着した鉄を除去することが好ましい。
具体的に、鉄除去工程は、アルミニウム除去工程S22の前工程として設けるようにし、アルミニウム除去工程S22で使用する硫酸の規定度よりも小さい規定度の硫酸をキレート樹脂に接触させて、キレート樹脂に吸着した鉄を除去する。鉄を除去するに際して、硫酸のpHとしては1.0~3.0の範囲に維持することが好ましい。硫酸のpHが1.0未満であると、鉄だけでなく、スカンジウムもキレート樹脂から除去される可能性があり、一方で硫酸のpHが3.0を超えると、鉄が適切にキレート樹脂から除去されない可能性がある。
(3)スカンジウム回収工程
スカンジウム回収工程S3は、イオン交換処理工程S2を経て得られたスカンジウム溶離液からスカンジウムを回収する工程である。例えば、スカンジウムは、酸化スカンジウムの形態として回収することができる。
スカンジウム回収工程S3における処理方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、スカンジウム溶離液にアルカリを添加して中和処理を施すことにより水酸化スカンジウムの沈澱物として回収する方法や、スカンジウム溶離液にシュウ酸を添加してシュウ酸塩の沈澱物として回収する方法(シュウ酸塩化処理)を用いることができる。中でも、シュウ酸塩化処理を用いた方法によれば、より効果的に不純物を分離することができる。
具体的に、シュウ酸塩化処理を用いた回収方法では、スカンジウム溶離液にシュウ酸を加えることによりシュウ酸スカンジウムの沈澱物を生成させ、その後、シュウ酸スカンジウムを乾燥し、焙焼することにより酸化スカンジウムとして回収する。なお、シュウ酸塩化処理では、シュウ酸溶液を収容した反応槽に抽出残液を添加することでシュウ酸スカンジウムの沈澱物を生成させてもよい。
焙焼処理は、例えばシュウ酸塩化処理により得られたシュウ酸スカンジウムの沈澱物を水で洗浄し、乾燥させた後に、焙焼する処理である。この焙焼処理を経ることで、スカンジウムを極めて高純度な酸化スカンジウムとして回収することができる。焙焼処理条件は、特に限定されないが、例えば管状炉に入れて約900℃で2時間程度加熱すればよい。
なお、図示していないが、スカンジウム回収工程S3に先立ち、イオン交換処理工程S2を経て得られたスカンジウム溶離液に対して溶媒抽出処理を施すようにしてもよい(溶媒抽出工程)。このようにして溶媒抽出処理を施すことにより、例えば抽出剤を含む有機溶媒に、スカンジウム溶離液に含まれる不純物を選択的に抽出し、スカンジウム溶離液を精製することができ、スカンジウムを濃縮させた溶液(抽出残液)を得ることができる。
(4)再吸着処理工程
また、必須の態様ではないが、イオン交換処理工程S2を経て得られたスカンジウム溶離液をキレート樹脂に再吸着させるための再吸着処理を行うようにしてもよい(再吸着処理工程S4)。
具体的に、キレート樹脂を再吸着させるためのスカンジウム溶離液に対する処理としては、例えば、スカンジウム溶離液に中和剤を添加してpHを2.0以上4.0以下の範囲、好ましくはpH3.0を中心とした2.7~3.3の範囲に調整し、次いで、還元剤を添加し、次いで、硫酸を添加してpHを1.0以上2.5以下の範囲、好ましくはpH2.0を中心とした1.7~2.3の範囲に調整する処理を行う。このようにしてpHを調整した後の溶液(pH調整後液)を用いて、イオン交換処理工程S2(吸着工程S21、アルミニウム除去工程S22、スカンジウム溶離工程S23)での処理を再び行う。
このようにして、得られたスカンジウム溶離液に対して再吸着処理を行い、処理後の溶液(pH調整後液)をイオン交換処理工程S2に繰り返してキレート樹脂に再吸着させることで、回収されるスカンジウムの品位をより一層に高めることができる。また、スカンジウム溶離液からスカンジウムを分離する際の薬剤コストや設備規模を縮減できる。
ここで、中和剤としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、還元剤についても、従来公知のものを用いることができ、例えば、硫化水素ガス、硫化ナトリウム等の硫化剤や、二酸化硫黄ガス、ヒドラジン、金属鉄等が挙げられる。
還元剤の添加は、酸化還元電位(ORP)が銀/塩化銀電極を参照電極とする値で200mVを越えて300mV以下となる範囲に維持するように行うことが好ましい。例えば還元剤として硫化剤を使用した場合、酸化還元電位が200mV以下であると、添加された硫化剤に由来する硫黄分が微細な固体として析出し、硫化後の濾過処理において濾布を目詰まりさせて固液分離を悪化させ生産性低下の原因となることがある。また、キレート樹脂に再通液する際に、カラム内で目詰まりや液流れの偏りを生じ、均一な通液が行えない等の原因となることがある。一方、全ての還元剤において、酸化還元電位が300mVを超えると、残留する鉄イオン等がキレート樹脂に吸着して、スカンジウムの吸着を阻害する等の問題が生じる可能性がある。
また、スカンジウム溶離液のキレート樹脂への再吸着を行うにあたり、そのキレート樹脂としては、既に使用したものを再使用してもよいし、新たなキレート樹脂を使用してもよい。不純物のコンタミを防止する観点から、クロム除去工程S24を経て回収されたキレート樹脂を再使用するか、あるいは新たなキレート樹脂を使用することが好ましい。特に、クロム除去工程S24を経て回収されたキレート樹脂を再使用することによれば、不純物のコンタミを防止できるだけでなく、キレート樹脂の使用量を抑えることができる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[試験例1:キレート樹脂に接触させる硫化後液の液温についての検証]
ニッケル酸化鉱石をHPALプロセスに基づく湿式製錬処理に付してニッケルを回収し、得られた酸性溶液である硫化後液を用いて、イミノジ酢酸を官能基として有するキレート樹脂に接触させ、その硫化後液中のスカンジウムをキレート樹脂に吸着させるイオン交換処理を行った。なお、硫化後液は、少なくともスカンジウムとクロムとを含有していた。
このとき、硫化後液をキレート樹脂に接触させるに際して、その硫化後液の温度を所定の温度に調整し維持した状態で接触させた。具体的には、ビーカーに硫化後液1Lを投入して、硫化後液の温度(液温)を30℃~60℃に制御した。そこへ、キレート樹脂を30ml投入し、バッチ処理により硫化後液を接触させて、スカンジウムを吸着させた。
このような処理により、吸着前後の各元素濃度を測定し、スカンジウムとクロムの分配係数を下記式[1]から求めた。
分配係数=樹脂中対象元素濃度(mg/L)/吸着後液中対象元素濃度(mg/L)
・・・式[1]
図2に、硫化後液の液温に対する、キレート樹脂へのスカンジウムとクロムの分配係数の測定結果、すなわち温度依存性の関係を示す。なお、分配係数が大きいほど、キレート樹脂に吸着されやすいことを示す。
図2のグラフからわかるように、キレート樹脂に接触させる硫化後液の液温が高くなるほど、キレート樹脂へのクロムの吸着量が増加するのに対し、スカンジウムの吸着量は漸減する結果が得られた。特に、硫化後液の液温が50℃を超えると、クロムの吸着量は急激に増加することがわかる。
このような結果から、少なくともスカンジウムとクロムとを含有する酸性溶液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムを吸着させるに際して、その硫化後液の液温(吸着時の液温)を50℃以下に調整することで、キレート樹脂へのクロムの吸着を効果的に抑制できることが確認できた。
なお、液温が高いほどクロムが吸着してスカンジウムの吸着量は低下する傾向となる。このことは、クロム除去工程(図1の工程S24)においてキレート樹脂からのクロムの溶離が不十分となった場合、そのキレート樹脂を繰り返し使用して再度スカンジウム吸着を行っても、そのキレート樹脂に残存したクロムによってスカンジウムが吸着できるサイトが減少し、その結果スカンジウム吸着が著しく低下すると考えられる。
[試験例2:硫化後液の液温とスカンジウム回収量との関係についての検証]
引き続いて、スカンジウム回収量に及ぼす液温の影響について検討した。
具体的には、湿式製錬処理を経て得られた硫化後液を、イミノジ酢酸を官能基として有するキレート樹脂0.5リットルを充填したカラムに、液量10リットルで通液することにより、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムを吸着させた。次いで、キレート樹脂に濃度0.5規定の硫酸溶液を通液して、スカンジウムを溶離した。
スカンジウムの溶離後は、キレート樹脂体積の1倍量に相当する濃度5規定の硫酸溶液を用いてクロムを溶離させる処理を行った。さらに、クロム溶離後は、純水を用いて洗浄を行い、樹脂に残存した硫酸溶液を除去する操作を行った。
このような、吸着、溶離、洗浄の処理サイクルを20回繰返して、各バッチにおけるスカンジウムの吸着率を調査した。なお、吸着率は、下記式[2]で定義され、20サイクルのスカンジウム吸着率の平均値を求めた。スカンジウム吸着率90%を工業的な操業での合否の判断基準とした。
スカンジウム吸着率=(硫化後液中のスカンジウム量-吸着後液中のスカンジウム量)÷硫化後液中のスカンジウム量 ・・・式[2]
(実施例1)
実施例1では、得られた硫化後液の液温を30℃に調整し維持して、イミノジ酢酸を官能基として有するキレート樹脂550ccに対して、その硫化後液を11000cc通液して接触させ、硫化後液中のスカンジウムや他の不純物を吸着させた。
その後、濃度0.5規定の硫酸溶液を用いてキレート樹脂からスカンジウムを溶離した。スカンジウム溶離後は、濃度5規定の硫酸溶液を用いてクロムを溶離し、その後、キレート樹脂を水洗浄して樹脂に残存する硫酸溶液を除去する操作を行った。
このときのスカンジウムの吸着率の平均値は99%であり、ほぼ完全にスカンジウムを吸着させることができた。
(実施例2)
実施例2では、得られた硫化後液の液温を40℃に調整し維持して、キレート樹脂に接触させたこと以外は、実施例1と同じ条件とした。
その結果、スカンジウムの吸着率の平均値は99%であり、ほぼ完全にスカンジウムを吸着させることができた。
(実施例3)
実施例3では、得られた硫化後液の液温を50℃に調整し維持して、キレート樹脂に接触させたこと以外は、実施例1と同じ条件とした。
その結果、スカンジウムの吸着率の平均値は96%であった。
(比較例1)
比較例1では、得られた硫化後液の液温を60℃に調整し維持して、キレート樹脂に接触させたこと以外は、実施例1と同じ条件とした。
その結果、スカンジウムの吸着率の平均値は79%であり、上述した実施例1~3と比べて大きく低下し、合否基準を下回った。
(比較例2)
比較例2では、得られた硫化後液の液温を60℃に調整し維持してキレート樹脂に接触させ、スカンジウム溶離後にクロムを溶離させるために用いる硫酸溶液の量を実施例1で用いた硫酸溶液の2倍量としたこと以外は、実施例1と同じ条件とした。
その結果、スカンジウムの吸着率の平均値は86%であり、上述した実施例1~3と比べて大きく低下し、合否基準を下回った。なお、硫酸溶液を多く使用したため、経済効率的にも好ましくない処理となった。
(比較例3)
比較例3では、得られた硫化後液の液温を30℃に調整し維持してキレート樹脂に接触させ、スカンジウム溶離後にクロムを溶離させるために用いる硫酸溶液の量を実施例1で用いた硫酸溶液の0.5倍量としたこと以外は、実施例1と同じ条件とした。
その結果、スカンジウムの吸着率の平均値は60%であり、上述した実施例1~3と比べて大きく低下し、合否基準を下回った。
以上のように、試験例2における実施例及び比較例の結果から、硫化後液の温度を低下させてキレート樹脂に接触させることで、スカンジウム吸着率が90%を超える範囲に安定化できることがわかった。具体的に、液温を50℃以下、特に40℃以下としてキレート樹脂に接触させることで、ほぼ100%のスカンジウム吸着率が得られることがわかった。また、硫化後液の液温を低下させてキレート樹脂に接触させることでクロム吸着量を減少させるとともに、併せてクロム溶離も十分に行うことにより、スカンジウムのキレート樹脂への吸着率を安定して高く維持できることもわかった。
なお、キレート樹脂からのクロム溶離に用いる硫酸溶液としては、濃度だけでなくキレート樹脂の体積と同じ(1倍)以上の量も必要であることが確認された。

Claims (5)

  1. 少なくとも、スカンジウムとクロムとを含有する酸性溶液からスカンジウムを回収する方法において、
    前記酸性溶液をキレート樹脂に接触させることにより該酸性溶液中のスカンジウムを該キレート樹脂に吸着させる工程と、前記キレート樹脂に吸着したスカンジウムを溶離してスカンジウム溶離液を得る工程と、前記キレート樹脂に吸着したクロムを除去する工程と、を有するイオン交換処理工程を含み、
    前記イオン交換処理工程における前記スカンジウムをキレート樹脂に吸着させる工程では、前記酸性溶液を前記キレート樹脂に接触させるに際し、該酸性溶液の温度を、20℃を超えて50℃以下の範囲に維持して接触させ、
    前記イオン交換処理工程における前記キレート樹脂に吸着したクロムを除去する工程では、3N以上の濃度であって、前記キレート樹脂の体積と同じ(1倍)以上の量の硫酸溶液を用いる、
    スカンジウムの回収方法。
  2. 前記酸性溶液は、ニッケル酸化鉱石を硫酸による浸出処理に付し、得られた浸出液に硫化剤を添加してニッケル硫化物を分離した後の溶液である、
    請求項1に記載のスカンジウムの回収方法。
  3. 前記キレート樹脂が、イミノジ酢酸を官能基とする樹脂である、
    請求項1又は2に記載のスカンジウムの回収方法。
  4. 前記イオン交換処理工程は
    カンジウムを吸着したキレート樹脂に0.3N未満の硫酸を接触させ、該キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去する工程、をさらに有し、
    前記キレート樹脂に吸着したスカンジウムを溶離してスカンジウム溶離液を得る工程では、アルミニウムを除去したキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸を接触させ、前記キレート樹脂に吸着したスカンジウムを溶離してスカンジウム溶離液を得、
    前記クロムを除去した後のキレート樹脂を、前記スカンジウムを吸着させる工程に繰り返して使用する、
    請求項1乃至3のいずれかに記載のスカンジウムの回収方法。
  5. 少なくとも、スカンジウムとクロムとを含有する酸性溶液に対してキレート樹脂を用いたイオン交換処理を施し、スカンジウムを濃縮させた溶液を得るイオン交換処理方法であって、
    前記酸性溶液をキレート樹脂に接触させることにより該酸性溶液中のスカンジウムを該キレート樹脂に吸着させる工程と、前記キレート樹脂に吸着したスカンジウムを溶離してスカンジウム溶離液を得る工程と、前記キレート樹脂に吸着したクロムを除去する工程と、を含み、
    前記スカンジウムをキレート樹脂に吸着させる工程では、前記酸性溶液を前記キレート樹脂に接触させるに際し、該酸性溶液の温度を、20℃を超えて50℃以下の範囲に維持して接触させ、
    前記イオン交換処理工程における前記キレート樹脂に吸着したクロムを除去する工程では、3N以上の濃度であって、前記キレート樹脂の体積と同じ(1倍)以上の量の硫酸溶液を用いる、
    イオン交換処理方法。
JP2019173049A 2019-09-24 2019-09-24 スカンジウムの回収方法、並びにイオン交換処理方法 Active JP7276043B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019173049A JP7276043B2 (ja) 2019-09-24 2019-09-24 スカンジウムの回収方法、並びにイオン交換処理方法
PCT/JP2020/033774 WO2021059941A1 (ja) 2019-09-24 2020-09-07 スカンジウムの回収方法、並びにイオン交換処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019173049A JP7276043B2 (ja) 2019-09-24 2019-09-24 スカンジウムの回収方法、並びにイオン交換処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021050378A JP2021050378A (ja) 2021-04-01
JP7276043B2 true JP7276043B2 (ja) 2023-05-18

Family

ID=75156041

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019173049A Active JP7276043B2 (ja) 2019-09-24 2019-09-24 スカンジウムの回収方法、並びにイオン交換処理方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP7276043B2 (ja)
WO (1) WO2021059941A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7521798B2 (ja) 2020-10-07 2024-07-24 株式会社群馬コイケ ガス切断火口

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007327126A (ja) 2006-06-09 2007-12-20 Japan Atomic Energy Agency 固体高分子材料中のスカンジウムを溶出回収する方法
JP2013095979A (ja) 2011-11-02 2013-05-20 Toshiba Corp 金属回収方法
JP2014177391A (ja) 2013-02-15 2014-09-25 Sumitomo Metal Mining Co Ltd スカンジウムの回収方法
JP2014218719A (ja) 2013-05-10 2014-11-20 住友金属鉱山株式会社 スカンジウム回収方法
JP2015163729A (ja) 2014-01-31 2015-09-10 住友金属鉱山株式会社 スカンジウム回収方法
JP2015183228A (ja) 2014-03-24 2015-10-22 田中貴金属工業株式会社 パラジウムと白金の分離方法
JP2016065283A (ja) 2014-09-25 2016-04-28 住友金属鉱山株式会社 スカンジウムの回収方法
JP2017150019A (ja) 2016-02-23 2017-08-31 住友金属鉱山株式会社 スカンジウムの回収方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03291332A (ja) * 1990-04-09 1991-12-20 Unitika Ltd 希土類元素の分離法

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007327126A (ja) 2006-06-09 2007-12-20 Japan Atomic Energy Agency 固体高分子材料中のスカンジウムを溶出回収する方法
JP2013095979A (ja) 2011-11-02 2013-05-20 Toshiba Corp 金属回収方法
JP2014177391A (ja) 2013-02-15 2014-09-25 Sumitomo Metal Mining Co Ltd スカンジウムの回収方法
JP2014218719A (ja) 2013-05-10 2014-11-20 住友金属鉱山株式会社 スカンジウム回収方法
JP2015163729A (ja) 2014-01-31 2015-09-10 住友金属鉱山株式会社 スカンジウム回収方法
JP2015183228A (ja) 2014-03-24 2015-10-22 田中貴金属工業株式会社 パラジウムと白金の分離方法
JP2016065283A (ja) 2014-09-25 2016-04-28 住友金属鉱山株式会社 スカンジウムの回収方法
JP2017150019A (ja) 2016-02-23 2017-08-31 住友金属鉱山株式会社 スカンジウムの回収方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7521798B2 (ja) 2020-10-07 2024-07-24 株式会社群馬コイケ ガス切断火口

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021050378A (ja) 2021-04-01
WO2021059941A1 (ja) 2021-04-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101809883B1 (ko) 스칸듐의 회수 방법
JP5994912B2 (ja) スカンジウムの回収方法
AU2017369090B2 (en) Ion exchange processing method, and scandium recovery method
AU2017222881B2 (en) Method for recovering scandium
JP6172100B2 (ja) スカンジウムの回収方法
JP6787357B2 (ja) イオン交換処理方法、スカンジウムの回収方法
JP7276043B2 (ja) スカンジウムの回収方法、並びにイオン交換処理方法
EP2924133B1 (en) Settling separation method for nuetralized slurry and wet smelting method for nickel oxide ore
JP6256491B2 (ja) スカンジウムの回収方法
WO2021059940A1 (ja) スカンジウムの回収方法、並びにイオン交換処理方法
WO2022014234A1 (ja) スカンジウムの回収方法
JP6206358B2 (ja) スカンジウムの回収方法
JP7338283B2 (ja) スカンジウムの回収方法
JP2023130638A (ja) スカンジウムの回収方法
JP7327276B2 (ja) スカンジウムの回収方法
JP7508977B2 (ja) 脱亜鉛処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
WO2021059942A1 (ja) スカンジウムの回収方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220609

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230110

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230306

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230404

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230417

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7276043

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150