JP7272066B2 - バイオフィルム形成抑制コート剤及びバイオフィルム形成抑制積層体 - Google Patents
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Description
(式中、
R1、R3 、R6はそれぞれ独立して炭素数1~6のアルキレン基を、
R2、R4、R5、R7、R8はアルキル基、アリール基、アラルキル基、ピリジル基を、
YはOまたはNHを表し、
**はウレタン系ポリマーの主鎖との結合位置を表す。)
本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、医療機器、製造設備又は水槽内面等、微生物が付着し、バイオフィルムが形成することが想定される物質表面に、好適に用いることができる。
<ウレタン系ポリマー(a)>
本発明のウレタン系ポリマー(a)は、アミンオキシド基を含み、かつ、質量平均分子量が10,000~10,000,000であればよく、従来公知のポリマーを用いることができ、2種以上を併用してもよい。具体的には、下記一般式(1)(2)(3)で表される構造を含むことが好ましい。
R1、R3 、R6はそれぞれ独立して炭素数1~6のアルキレン基を、
R2、R4、R5、R7、R8はアルキル基、アリール基、アラルキル基、ピリジル基を、
YはOまたはNHを表し、
**はウレタン系ポリマーの主鎖との結合位置を表す。)
あるいは、3級アミノ基を有するウレタン系ポリマーを得た後、前記3級アミノ基に酸化剤を反応させ、ポリマーにアミンオキシド基を導入することができる。副反応を生じ難いという点で後者の方法が好ましい。なお、3級アミノ基に酸化剤を反応させることを、以下「オキシド化」ともいう。
オキシド化前の前駆体としての3級アミノ基含有モノマーとしては、炭素数1~20の3級アミノ基含有ジオールが挙げられる。例えば、N-アルキルジアルカノールアミン、N,N-ジアルキルモノアルカノールアミンが挙げられる。
N-アルキルジアルカノールアミンとしては、例えば、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン及びN-メチルジプロパノールアミンが挙げられる。
N,N-ジアルキルモノアルカノールアミンとしては、例えば、N,N-ジメチルエタノールアミンが挙げられる。
その他、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ベンジルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミン、ジエタノール-p-トルイジン、ジイソプロパノール-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-クロロアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-ピリジンカルボアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-α-アミノピリジン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、3-ジエチルアミノプロパン-1,2-ジオール、3-ジメチルアミノプロパン-1,2-ジオール等が、3級アミノ基含有モノマーとして挙げられる。
ポリオール成分は特に限定されるものではないが、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のグリコール類や、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールまたはポリエーテルポリオールとポリイソシアネートの反応物であるポリウレタンポリオール、多価アルコールのポリエーテル付加物等が挙げられる。
架橋剤と反応する官能基を有するポリオールとしては、カルボキシル基含有ポリオールが挙げられる。例えば、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、およびこれらの誘導体(カクロラクトン付加物、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物など)、3-ヒドロキシサリチル酸、4-ヒドロキシサリチル酸、5-ヒドロキシサリチル酸、2-カルボキシー1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。なかでも、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸は、樹脂中のカルボキシル基濃度を増加させることができるという点において本発明では好ましい。
ポリイソシアネート成分としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
ウレタン系ポリマーを得る際には、必要に応じてポリアミン成分を用いることが出来る。ポリアミン成分としては、例えば、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジアミン、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等のジアミンを挙げることができる。イソホロンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンは、反応の制御が容易で衛生性に優れていることから好ましい。
ポリアミン成分を用いることにより、ウレタン結合よりも凝集力の高いウレア結合が形成されるので、凝集力の大きな粘着剤を得ることができる。
ウレタン系ポリマーを得る際に末端停止剤の1つとして用いられる単官能の水酸基成分としては特に限定はなく、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-ジエチルアミノエタノール等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができる。なかでも、2-ジエチルアミノエタノールは末端に3級アミノ基を導入できるという点で好ましい。
単官能の水酸基成分と同様に末端停止剤の1つとして用いられる単官能のアミン成分としては特に限定はなく、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどを挙げることができる。
これら単官能の水酸基成分および/または単官能のアミン成分を末端封止剤として用いることで、ウレタン系ポリマーの経時安定性を向上させることが出来る。
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物などの各種溶剤を使用することができる。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、上記ポリオール成分とポリイソシアネート成分とアミンオキシド基の導入源となるモノマーとを、有機溶剤中で触媒の存在下に120℃ 以下で反応させて得ることが好ましく、70~110℃ で1~20時間反応させることがより好ましい。110℃よりも高温にすると反応速度の制御が困難になり、所定の分子量と構造を有するウレタンプレポリマーが得にくくなる。
イソシアネート基とポリアミン成分との反応は、有機溶剤中で60℃以下で行うことが好ましい。それより高温だと反応速度の制御が困難になり、所定の分子量と構造を有するウレタン系ポリマーが得にくくなる。
3級アミノ基含有不飽和モノマー、または、3級アミノ基を有するウレタンポリマーを含む溶液に、オキシド化剤を加えて20℃~100℃の範囲で0.1~100時間、好ましくは1~50時間反応させることによって、3級アミノ基をオキシド化することができる。
過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルハイドロパーオキシド等が挙げられ、過酸化水素が好ましく、通常は水溶液の形で用いられる。程度の違いはあるが、過酸化物にはラジカル発生剤としての機能もあるので、3級アミノ基含有不飽和モノマー(a1)を必須の原料とするビニル系ポリマーの場合には、重合後にオキシド化することが好ましい。また、後述するウレタン系ポリマーの場合にも副反応が生じないように、重合後にオキシド化することが好ましい。
一般的にはオキシド化剤の使用量は、オキシド化可能な官能基、即ち、3級アミノ基に対して、0.2~3倍モル当量の割合で使用し、更に0.5~2倍モル当量使用するのがより好ましい。
得られたポリマー溶液はそのまま使用することもできるが、必要に応じて再沈殿、溶媒留去等の公知の方法でアミンオキシド基含有ポリマーを単離して使用することも出来る。また、単離したアミンオキシド基含有ポリマーは、必要ならば再沈殿や、溶剤洗浄、膜分離、吸着処理等によってさらに精製できる。
アミンオキシド基は、バイオフィルム形成抑制性をポリマーに付与する。ウレタン系ポリマー(a)中のアミンオキシド基含有量は、好ましくは0.25~5mmol/gであり、より好ましくは0.5~2mmol/gである。0.25~5mmol/gであることにより、長時間水中に浸漬しても最適なバイオフィルム形成抑制能を維持することができる。
ウレタン系ポリマー(a)中のアミンオキシド基含有量は、アミンオキシド基を有するモノマーを重合してウレタン系ポリマー(a)を得る場合には、重合に用いたアミンオキシド基を有するモノマーの量から求めることができる。一方、3級アミノ基含有モノマーを必須とするモノマーを重合した後に得られたポリマーをオキシド化する場合には、下記数式1によって算出できる。
ウレタン系ポリマー(a)の質量平均分子量は、10,000~10,000,000であり、好ましくは5,000~6,000,000であり、より好ましくは10,000~600,000であり、特に好ましくは10,000~100,000である。
分子量が10,000以上であることにより、凝集力を付与でき、塗工基材からの剥離を抑制でき、長期間のバイオフィルム形成抑制効果を発揮する。また、10,000,000以下であることにより、適正な粘度になることから、塗工適性が向上する。そのため、ウレタン系ポリマー(a)の質量平均分子量を、上記特定範囲内に限定する。
本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、架橋剤を含むことができる。架橋剤を含むことにより、前述のウレタン系ポリマー(a)が架橋性基を有する場合、塗膜に架橋を形成して耐水性を向上させることができる。
本発明で用いることのできる架橋剤としては、前述のウレタン系ポリマー(a)中に含まれるカルボキシル基と反応するものが好ましく、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、及びアジリジニル基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するものの他、金属キレート化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、塗膜の弾性率や耐性を上げる目的で使用したり、接着力を調製したりするために用いることができる。
本発明で用いられるエポキシ基を有する架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、特に限定されるものではない。
2官能エポキシ基を有する架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンオキサイドジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン等の芳香族エポキシ化合物、上記記載の芳香族エポキシ化合物の水素添加物、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。
エポキシ基を3つ以上有する架橋剤としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、トリスフェノール型エポキシ化合物、テトラキスフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。
本発明で用いられるイソシアネート基を有する架橋剤としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有した化合物であればよく、特に限定されるものではない。
2官能イソシアネート化合物としては、例えば、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
3官能イソシアネート化合物としては、上記で説明したジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
また、イソシアネート基を有する架橋剤中のイソシアネート基は、ブロック化されていても良いし、ブロック化されていなくても良い。
本発明で用いられるブロック化イソシアネート架橋剤としては、前記イソシアネート化合物中のイソシアネート基がε-カプロラクタム、MEKオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックされたブロック化イソシアネート化合物であればよく、特に限定されるものではない。
本発明で用いられるアジリジン化合物としては、1分子中に2個以上のアジリジン基を有した化合物であればよく、特に限定されるものではない。アジリジン化合物としては、例えば、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
本発明で用いられるカルボジイミド基含有化合物としては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズを用いることができ、V-02、V-04、V-06、V-10などの水性タイプ、V-01、V-03、V-05、V―07、V―09などの油性タイプ等が挙げられる。
本発明では、β-ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物も架橋剤として用いることができる。
β-ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物としては、分子内にβ-ヒドロキシアルキルアミド基を含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。β-ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物としては、N,N,N’,N’-テトラキス(ヒドロキシエチル)アジパミド(エムスケミー社製PrimidXL-552)をはじめとする種々の化合物を挙げることができる。
本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、コート剤100質量%中、前記ウレタン系ポリマー(a)を1~50質量%含むことが好ましく、5~30質量%含むことがより好ましい。ウレタン系ポリマー(a)含有量を1質量%以上とすることで、アミンオキシド基によるバイオフィルム形成抑制の効果を発揮することができる。また、本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、ウレタン系ポリマー(a)以外の成分を含んでも良い。
本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、ウレタン系ポリマー(a)以外の成分として溶媒を含有してもよく、2種以上を併用して含んでもよい。溶媒は、アミンオキシド量に依存するウレタン系ポリマー(a)の溶解性や印刷条件等を考慮し、従来公知の溶媒から適宜選択することができる。
例えば、ウレタン系ポリマー(a)中のアミンオキシド量がの多い場合、水、メタノールやエタノール等のアルコール類、アセトンやエチルメチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフランやジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチルや酢酸エチル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ギ酸や酢酸等の有機酸、N,N-ジメチルホルムアミド等の有機塩基を選択することができる。一方、ウレタン系ポリマー(a)中のアミンオキシド量がの少ない場合、アセトンやエチルメチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフランやジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチルや酢酸エチル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルに加え、ジクロロメタンやトリクロロメタン等のハロゲン溶媒を選択することができる。
本発明のバイオフィルム形成抑制積層体は、基材上に、本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤からなる塗膜を有するものである。
塗膜を形成する方法としては、基材に応じて、様々な塗膜形成方法(塗工・印刷・乾燥方法)を選択することができる。一例として、グラビア・オフセット等の各種印刷方式のほか、インクジェット方式、スプレー方式、浸漬方式等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。塗工後の乾燥は、溶媒を除去できればよく、バイオフィルム形成抑制コート剤に含まれる溶媒等から適宜乾燥温度を選択することができる。工業的には、40~180℃で2分間程度であるのが望ましい。さらに、本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤が架橋剤を含む場合、架橋反応を促進させるための工程を設けることが好ましい。架橋条件は、一般的に40~150℃で6~24時間であるが、これらに限定されない。
バイオフィルム形成抑制コート剤からなる塗膜の厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択でき、0.5~2μmでも十分効果を発揮する。
本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、バイオフィルムの危害が懸念される広い分野に適用することが可能であるため、医療機器、製造設備又は水槽内面等、微生物が付着し、バイオフィルムが形成することが想定される物質表面に、好適に用いることができる。そのため、基材としては、上記用途で従来公知に用いられる基材であれば制限無く使用することができ、例えば、プラスチック、ガラス、セラミックス、金属等の材質からなる基材が挙げられる。
ウレタン系ポリマー(a)の質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用した。測定装置及び測定条件としては、下記条件1によることを基本とし、試料の溶解性等により条件2とした。ただし、重合体種によっては、さらに適宜適切なキャリア(溶離液)及びそれに適合したカラムを選定した。その他の事項については、JISK7252-1~4:2008に基づいた。なお、難溶の高分子化合物については下記条件の下、溶解可能な濃度で測定した。
また、ウレタン系ポリマー(a)の分子量測定が困難な場合は、アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量をウレタン系ポリマー(a)の質量平均分子量とした。アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用し、測定装置及び測定条件としては、下記条件3によった。
(条件1)
カラム:TOSOHTSKgelSuperHZM-H、
TOSOHTSKgelSuperHZ4000 及び
TOSOHTSKgelSuperHZ10,000を連結したもの。
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件2)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAWM-Hを2本連結したもの。
キャリア:10mMLiBr/N-メチルピロリドン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件3)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAW4000、
TOSOHTSKgelSuperAW3000 及び
TOSOHTSKgelSuperAW2500を連結したもの。
キャリア:N,N-ジメチルホルムアミド(1L)、トリエチルアミン(3.04g)、 LiBr(0.87g)の混合液
測定温度:40℃
キャリア流量:0.6mL/min
酸価は、樹脂1g中に含有する酸基は中和するのに必要とする水酸化カリウムのmmolで、測定方法は既知の方法でよく、一般的にはJISK0070に準じて行われる。その手法を以下に示した。
試料を0.5~2g精秤する(固形分量:Sg)。精秤した試料に中性エタノール10mLを加え溶解させる。得られた溶液を0.1mol/lエタノール性水酸化カリウム溶液(力価:F)で電位差滴定を行なう。電位差曲線が極大となった点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い次の(式2)により酸価を求めた。
(式2) 酸価(mmol/g)=(A×F×0.1)/S
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmmolである。アミン価の測定方法については、以下の方法により行った。
試料を0.5~2g精秤する(固形分量:Sg)。精秤した試料に中性エタノール10mLを加え溶解させる。得られた溶液を0.1mol/lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で電位差滴定を行なう。電位差曲線が極大となった点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い次の(式3)によりアミン価を求めた。
(式3) アミン価(mmol/g)=(A×f×0.1)/S
(製造例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、3級アミノ基含有ジオールとしてN-メチルジエタノールアミンを4.75部、ポリオール成分としてP2011(クラレポリオールP2011(ポリエステルポリオール、株式会社クラレ製、水酸基価56.1)を130.10部、ポリイソシアネート成分としてヘキサメチレンジイソシアネートを19.6部仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃まで昇温し、均一に溶解させた。続いて、これに触媒としてジブチル錫ジラウレート0.002部を投入し、110℃で3時間反応させた。
その後、温度を40℃に低下し、ポリアミン成分としてイソホロンジアミン0.60部を滴下し、鎖延長反応を行った。さらに末端停止剤としてジエチルエタノールアミンを1.65部加え、40℃で30分反応させることで、アミンオキシド前駆体ポリマー、即ち3級アミノ基を有するポリマーの溶液を得た、
次に、得られた3級アミノ基を有するポリマーの溶液に、オキシド化剤として35%過酸化水素水を3.91部(3級アミノ基と等モル量)加え、70℃で16時間反応させることでアミノ基のオキシド化を行った。アミンオキシド変換率が98%を超えたことを確認後、冷却して取り出し、その後、オーブンで溶媒を完全に揮発させ、ウレタン系ポリマー(a)を得た。
得られたポリマーのアミンオキシド基含有量は、0.26mmol/gであった。
また、得られたウレタン系ポリマー(a)の質量平均分子量は15200であった。
製造例1と同様の方法で、表1の組成及び仕込み質量部に従って合成を行い、ポリマー(製造例2~6)(比較製造例1~2)を合成した。
MDEA:N-メチルジエタノールアミン
DMAP:3-ジメチルアミノプロパン-1,2-ジオール
DMBA:ジメチロールブタン酸
P2011:クラレポリオールP2011(ポリエステルポリオール、株式会社クラレ製、水酸基価56.1)
PEG♯2000:PEG♯2000(ポリエチレングリコール、日油株式会社製、分子量2,000)
D2000:ユニオールD2000(ポリプロピレングリコール、日油株式会社製、分子量2,000)
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
IPDA:イソホロンジアミン
DEEA:ジエチルエタノールアミン
HPO:35%過酸化水素水
[実施例1]
(バイオフィルム形成抑制コート剤1)
得られたアミンオキシド基含有ポリマー(製造例1)10.0部をエタノール90.0部で希釈し、10%塗液を調製し、バイオフィルム形成抑制コート剤1を得た。
(バイオフィルム形成抑制コート剤2~12)
実施例1と同様にして、表2の組成及び仕込み質量部にてバイオフィルム形成抑制コート剤2~12を調整した。
ALCH:川研ファインケミカル株式会社製、アルミキレート化合物
PZ33:日本触媒株式会社製、多官能アジリジン化合物
V02:日清紡株式会社製、水性カルボジイミド基含有化合物
EX321L:ナガセケムテックス株式会社製、多官能脂肪族エポキシ化合物
XL552:エムスケミー株式会社製、ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物
EtOH:エタノール
EtOAc:酢酸エチル
実施例及び比較例で得られたバイオフィルム形成抑制コート剤(塗液)について、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
得られたコート剤1-12を、精密秤量した浅型金属容器に2.0g添加し、150℃で10分加熱し乾燥させた。オーブンから取り出し、浅型金属容器ごと精密秤量した後、浅型金属容器にイオン交換水5.0gを加え一晩静置した。浅型金属容器からイオン交換水を吸引排出した後、再度150℃で10分乾燥し、浅型金属容器を精密秤量した。下記式で水への溶解度を算出し、耐水性を4段階の評価基準に基づいて評価した。
水への溶解度(%)=100-[(z-x)/(y-x)]×100
x:浅型金属容器の質量(g)
y:イオン交換水で処理する前の質量(g)
z:イオン交換水で処理した後の質量(g)
◎:水への溶解度≦2%:非常に良好
○:2%<水への溶解度≦4%:良好
△:4%<水への溶解度≦10%:使用可能
×:10%<水への溶解度:使用不可
得られたコート剤1-12を、各々75μm厚ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(パナック(株)製;ルミラー#75、表面オゾン処理済)上に、乾燥後膜厚が1.0μmになるようバーコーターで塗工し、80℃で2分乾燥した後、80℃で24時間加熱し、積層体1-12を得た。別途、黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)を、37℃で24時間前培養し、増殖させた。菌液をリン酸緩衝水(PBW)に加えて、1%菌液を調製した。
得られた積層体を、1.5cm×1.5cmの大きさに切り取り、塗工面が上向きになるように24ウェルマイクロプレート(ファルコン社製)の各ウェルに1枚ずつセットし、滅菌水1.0mL加え、37℃で24時間浸漬した。
次いで、24ウェルマイクロプレートから、滅菌水1.0mLを除去し、別途調製した黄色ブドウ球菌液1.0mLを加え、25℃で24時間又は25℃で168時間、それぞれ培養した。24時間又は168時間培養後、菌液を除去し、塗膜を滅菌水1.2mLで3回洗浄し、0.1%クリスタルバイオレット水溶液(和光純薬工業株式会社製)を添加し、20分間静置してバイオフィルムを染色した。その後、滅菌水1.2mLで3回洗浄し、風乾して、バイオフィルムが染色された積層体を得た。
上記染色された積層体について、33%酢酸溶液2.0mLを用いてクリスタルバイオレットを抽出し、マイクロプレートリーダーを用いて、抽出液の吸光度を測定した。
バイオフィルム形成抑制性を、吸光度から以下の4段階の評価基準で評価した。結果を表3に示す。
◎:吸光度≦0.10:非常に良好
○:0.10<吸光度≦0.13:良好
△:0.13<吸光度≦0.20:使用可能
×:0.20<吸光度:使用不可
特に、ウレタン系ポリマー(a)中のアミンオキシド基含有量が、0.25~5mmol/gであると、長時間水中に浸漬しても最適なバイオフィルム形成抑制能を維持することを確認した。また、カルボキシル基を有するポリオール成分を用いた場合に、耐水性及び長期バイオフィルム形成抑制能に優れることが示された。
Claims (5)
- アミンオキシド基を含み、かつ、質量平均分子量が10,000~10,000,000であるウレタン系ポリマー(a)を含むことを特徴とするバイオフィルム形成抑制コート剤。
- ウレタン系ポリマー(a)が、アミンオキシド基を0.25~5mmol/g含む請求項1に記載のバイオフィルム形成抑制コート剤。
- さらに架橋剤を含む請求項1~3いずれか1項に記載のバイオフィルム形成抑制コート剤。
- 基材上に、請求項1~4いずれか1項に記載のバイオフィルム形成抑制コート剤からなる塗膜を有する、バイオフィルム形成抑制積層体。
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