JP7268518B2 - 転写シート - Google Patents

Description

本発明は、薄膜層の転写のための転写シートに関する。

数ｎｍ～数μｍ程度の厚さを有した薄膜層は、生体器官の表面に対する接着性を有する。そのため、医療用途や美容用途において、上記薄膜層を臓器や皮膚等に貼り付けて使用することが提案されている。

薄膜層を被転写体に転写するために用いられる転写シートは、薄膜層と、薄膜層を支持する支持層とを備えている。支持層上の薄膜層の表面を被転写体に接触させた後に、薄膜層から支持層を剥離することによって、薄膜層が被転写体に転写される（例えば、特許文献１参照）。

特開２０１７－１９１１６号公報

薄膜層の転写に際しては、転写シートを被転写体における薄膜層の貼付箇所まで移動させること、および、貼付箇所に薄膜層の表面を接触させた後、薄膜層から支持層を剥離することが必要である。転写シートを取り扱い易くするためには、こうした転写シートの移動と支持層の剥離とが簡便に可能であることが望ましい。ところが、薄膜層は極めて薄いため、薄膜層と支持層との間の密着力が低すぎると、薄膜層を貼付箇所まで運ぶときに、風を受けて薄膜層が支持層から剥がれることや、静電気の影響を受けて薄膜層にシワやヨレが生じることが起こる。一方で、薄膜層と支持層との間の密着力が高すぎると、薄膜層からの支持層の剥離が困難となる。

本発明は、容易に取り扱うことのできる転写シートを提供することを目的とする。

上記課題を解決する転写シートは、０．０１ｇ／ｍ^２以上１０ｇ／ｍ^２以下の平均質量を有する薄膜層と、前記薄膜層を支持する支持層と、を備え、前記支持層は、当該支持層における前記薄膜層に接する面に位置する複数の繊維を含み、前記薄膜層は、前記繊維に接している複数の接触部と、前記繊維から離れている非接触部とを有し、前記複数の接触部に、前記繊維と面接触する前記接触部であって、かつ、当該接触部での前記薄膜層の平均膜厚が、前記非接触部での前記薄膜層の平均膜厚よりも小さい前記接触部が含まれる。

上記構成によれば、薄膜層が支持層と部分的に接していることにより、薄膜層がその全面で支持層と接している場合と比較して、薄膜層と支持層との間の密着力が小さくなる。その結果、転写シートを被転写体に接触させた後に、薄膜層から支持層を容易に剥離することができる。一方で、複数の接触部２２の少なくとも一部において、薄膜層が薄く広がるように支持層の繊維の表面に沿って当該繊維と接している。そのため、接触部にて点状に薄膜層と繊維とが接触する場合と比較して、薄膜層と支持層との間の密着力が大きくなる。その結果、転写シートを被転写体まで移動させる際に、薄膜層が支持層から剥がれることや、薄膜層にシワやヨレが生じることが抑えられる。したがって、転写シートの取り扱いが容易になる。

上記構成において、前記繊維と面接触し、かつ、前記非接触部での前記平均膜厚よりも小さい前記平均膜厚を有する前記接触部は、前記繊維の周に沿って、当該繊維の繊維径の１０％以上の長さを有してもよい。

上記構成によれば、繊維と面接触する接触部において、繊維と接する部分の面積が十分に確保されるため、薄膜層と支持層との間の密着力が過小となることが好適に抑えられる。

上記構成において、前記薄膜層は、前記複数の接触部の少なくとも一部の隣接領域に、前記薄膜層の厚さが局所的に大きくなった膨大部を有してもよい。
上記構成によれば、接触部の平均膜厚が、非接触部の平均膜厚よりも小さい場合であっても、接触部およびその近傍の領域で薄膜層の強度が低くなることが抑えられる。

上記構成において、前記複数の接触部は、前記接触部において前記薄膜層が前記支持層に向かって突き出た形状を有する突出接触部を含んでもよい。
上記構成によれば、薄膜層が平坦である場合には接触し得ない位置の繊維と薄膜層との接触が可能となる。これにより、接触部の数の増大が可能であり、薄膜層と支持層との間の密着力を高めることができる。

上記構成において、前記転写シートの平面視にて、前記薄膜層は、１ｍｍ^２あたりに１以上の前記突出接触部を有してもよい。
上記構成によれば、上述の薄膜層と支持層との間の密着力を高める効果が好適に得られる。

本発明によれば、転写シートの取り扱いを容易にすることができる。

転写シートの一実施形態について、転写シートの断面構造を示す図。 一実施形態の転写シートにおける接触部の分布の一例を示す図。 一実施形態の転写シートにおける接触部付近の断面構造を示す図。 一実施形態の転写シートにおける接触部付近の断面構造を拡大して示す図。 一実施形態の転写シートにおける接触部付近の断面構造の他の例を示す図。

図面を参照して、転写シートの一実施形態を説明する。
［転写シートの全体構成］
図１が示すように、転写シート１０は、薄膜層２０と、薄膜層２０を支持する支持層３０とを備えている。

薄膜層２０は、第１面２１Ｆと、第１面２１Ｆとは反対側の面である第２面２１Ｒとを有している。第１面２１Ｆは、薄膜層２０の転写に際して被転写体に接する面である。第２面２１Ｒは、支持層３０に接している。

薄膜層２０は、単独で被転写体に対する接着性を発現する程度に薄い。被転写体に対する接着性を発現する程度に薄いことを、薄膜層２０の質量で表すと、例えば、薄膜層２０の密度が１ｇ／ｃｍ^３以上３ｇ／ｃｍ^３以下であるとき、薄膜層２０の単位面積あたりの平均質量は、０．０１ｇ／ｍ^２以上１０ｇ／ｍ^２以下である。上記平均質量は、平面視にて１ｍ^２の面積を有する部分あたりに換算した薄膜層２０の質量である。薄膜層２０の平均質量が上記範囲内であれば、粘着層を用いずとも、薄膜層２０自身が、例えば生体の皮膚あるいは臓器である被転写体の表面に貼り付く。なお、図１においては、支持層３０の厚さに対する薄膜層２０の厚さの比率を、実際よりも大きく図示している。

薄膜層２０の材料は、特に限定されず、被転写体への薄膜層２０の貼り付けの目的に応じて選択されればよい。薄膜層２０の材料は、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリ（メタ）アクリル酸、ポリウレタン、および、これらの高分子の共重合体、ヒアルロン酸、キトサン等の多糖類、カゼイン、フィブロイン等のたんぱく質、シリコーン、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー、スチレンブタジレン系エストラマー等である。薄膜層２０は、１種類の材料から形成されていてもよいし、複数種類の材料から形成されていてもよい。

薄膜層２０は、薄膜層２０の機能を高める、もしくは、薄膜層２０に機能を付加する機能性物質を含有していてもよい。機能性物質は、例えば、美容成分や薬効成分である。薄膜層２０が美容成分を含有する構成であれば、美容用途において、被転写体としての肌に貼り付けることに適した薄膜層２０が実現される。

美容成分としては、例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、セラミド、プルラン、サクラン等の保湿効果を有する成分、ビタミンＣおよびその誘導体、コウジ酸やレチノイン酸およびその誘導体、ハイドロキノン等の美白成分、ビタミンＡおよびその誘導体、αリポ酸、アデノシン、α－ヒドロキシ酸等の抗シワ成分が挙げられる。また、薬効成分としては、サリチル酸等のニキビ治療成分、グリチルレチン酸（塩）等の抗炎症成分が挙げられる。また、薄膜層２０は、安定剤として、ジブチルヒドロキシトルエン（ＢＨＴ）やビタミンＥおよびその誘導体である酢酸トコフェロール等を含有していてもよい。

また、機能性物質は、薄膜層２０における紫外線遮断機能を高める物質であってもよい。こうした機能性物質は、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤である。紫外線吸収剤としては、例えば、メトキシケイヒ酸オクチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ｔ－ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン、パラメトキシケイ皮酸２－エチルヘキシルが用いられる。紫外線散乱剤としては、例えば、酸化チタンや酸化亜鉛等の金属酸化物が用いられる。薄膜層２０が紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を含有する構成であれば、薄膜層２０が被転写体に貼り付けられた場合に、被転写体に紫外線が入射することが抑えられる。

また、機能性物質は、薄膜層２０に着色による装飾機能を付加する物質であってもよい。こうした機能性物質は、着色顔料として機能する有機顔料や無機顔料である。
また、機能性物質は、薄膜層２０に光の散乱機能を付加する物質であってもよい。こうした機能性物質は、例えば、粒子である。粒子の含有によって、薄膜層２０の内部で粒子とその周囲との屈折率の差に起因して、光の散乱が生じる。こうした内部散乱の程度は、粒子の形状、および、薄膜層２０を構成する高分子材料と粒子との屈折率差に応じて変わる。

上記粒子としては、無機フィラーや有機フィラーが用いられる。無機フィラーの材料としては、例えば、タルク、シリカ、マイカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、金属石鹸、シリコーン等が挙げられる。有機フィラーの材料としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース等が挙げられる。薄膜層２０に内部散乱を生じさせるためには、薄膜層２０の主成分とは異なる屈折率を有する材料からなる粒子を用いればよい。薄膜層２０が含む粒子のレーザー回折散乱法による体積平均粒子径は、０．５μｍ以上であることが好ましい。また、上記体積平均粒子径は、薄膜層２０の製造工程での粒子の沈降を抑える観点から２０．０μｍ以下であることが好ましい。

なお、薄膜層２０に粒子を含有させることの他に、薄膜層２０の表面に凹凸を設けることによっても、薄膜層２０に光の散乱機能を付加することができる。薄膜層２０の表面が凹凸を有していることによって、当該表面で光の散乱が生じる。表面散乱の程度は、薄膜層２０の表面の凹凸形状、および、薄膜層２０を構成する高分子材料の屈折率に応じて変わる。上記凹凸を有する表面は、第１面２１Ｆであってもよいし、第２面２１Ｒであってもよいし、第１面２１Ｆおよび第２面２１Ｒの双方であってもよい。第１面２１Ｆと第２面２１Ｒとの双方が凹凸を有する場合、第１面２１Ｆにて凸部が位置する箇所において、第２面２１Ｒには凸部が位置してもよいし、凹部が位置してもよいし、平坦な部分が位置してもよい。

また、薄膜層２０が粒子を含有している場合において、当該粒子が薄膜層２０の表面に露出することに起因して薄膜層２０の表面が粒子の形状に沿った凹凸を有している場合には、内部散乱に加えて、薄膜層２０の表面でも光の散乱が生じる。

薄膜層２０の表面が凹凸を有していると、上述した散乱機能の他に、薄膜層２０における耐ブロッキング性、耐摩耗性、印刷適正等の向上も可能である。また、薄膜層２０が美容用途に用いられ、薄膜層２０が肌に貼り付けられた後に薄膜層２０の上から化粧料が塗布される場合には、第２面２１Ｒが凹凸を有していることにより、化粧料の付着性が高められる。

なお、機能性物質が向上あるいは付加する機能としては、上述した機能の他に、耐薬品性、耐油性、耐候性、防湿性、防水性、防錆性、抗菌性、芳香性等が挙げられる。
薄膜層２０は、単一の薄膜から構成されていてもよいし、複数の薄膜の積層体であってもよい。

薄膜層２０が、複数の薄膜から構成される場合、複数の薄膜には、互いに同一の材料から形成されている薄膜が含まれてもよいし、互いに異なる材料から形成されている薄膜が含まれてもよい。

薄膜層２０が、互いに異なる材料から形成された複数の薄膜を備える場合、被転写体に貼り付けられる第１面２１Ｆと、薄膜層の２０の転写後に外気に曝される第２面２１Ｒとが、こうした各面の使用態様に適した材料から構成されるように、薄膜の材料を選択することもできる。なお、薄膜層２０を構成する各薄膜は、薄膜層２０の全域に位置してもよいし、一部に位置してもよい。

支持層３０は、複数の繊維を含む。支持層３０は、例えば、織物、編物、不織布である。このうち、支持層３０として、不織布が用いられることが好ましい。不織布は、天然繊維もしくは化学繊維から構成される。天然繊維としては、綿、麻、パルプ、毛、絹等を用いることができる。化学繊維としては、ポリエステル、ポリオレフィン、キュプラ、レーヨン、リヨセル、アセテート、ジアセテート、ナイロン、アラミド、アクリル等からなる繊維を用いることができる。また、不織布を構成する繊維には、複数の種類の繊維が含まれていてもよいし、天然繊維と化学繊維とが含まれていてもよい。なお、支持層３０の厚さは特に制限されないが、例えば、１０μｍ以上１ｍｍ以下の範囲から選択される。

支持層３０として用いる不織布の製造方法は特に限定されず、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブロー法、エアレイ法、フラッシュ紡糸法、および、樹脂接着法のうちのいずれかによって製造された不織布であればよい。支持層３０として用いる不織布の目付けは、１０ｇ／ｍ^２以上１５０ｇ／ｍ^２以下であることが好ましく、肌触り等の使用感に優れることから、２０ｇ／ｍ^２以上５０ｇ／ｍ^２以下であることがより好ましい。不織布の目付けは、すなわち、不織布の単位面積あたりの平均質量である。

なお、支持層３０における薄膜層２０と接する面である支持面３１Ｓに複数の繊維が位置していれば、支持層３０は、繊維とは異なる材料から構成された部分を有していてもよい。例えば、支持層３０は、不織布と樹脂フィルムとが貼り合わされた構造を有していてもよい。支持層３０が、不織布と樹脂フィルムとの積層体であれば、支持層３０が不織布のみからなる場合と比較して、支持層３０の強度が高められる。

［薄膜層と支持層との接触部分の構成］
上述のように、支持層３０の支持面３１Ｓには、複数の繊維が位置しており、支持面３１Ｓは、繊維に沿った凹凸を有している。そのため、薄膜層２０の第２面２１Ｒは、その全面においては支持面３１Ｓと接しておらず、繊維の位置する部分で当該繊維と接することにより、支持面３１Ｓと部分的に接している。薄膜層２０が支持層３０と部分的に接していることにより、薄膜層２０が第２面２１Ｒの全面で支持層３０と接している場合と比較して、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力が小さくなる。その結果、転写シート１０を被転写体に接触させた後に、薄膜層２０から支持層３０を容易に剥離することができる。

図２は、支持層３０として不織布を用いた場合における、転写シート１０の平面視での薄膜層２０と支持層３０とが接している部分の分布の一例を示す。
薄膜層２０は、支持層３０の繊維と接している部分である複数の接触部２２と、支持層３０の繊維から離れている部分である非接触部２３とを有している。図２においては、接触部２２にドットを付して示している。接触部２２は、繊維の延びる方向に細長く延び、複数の接触部２２は、支持面３１Ｓでの繊維の配置に対応する配置を有する。上記平面視において複数の接触部２２は分散しており、接触部２２の間の領域が非接触部２３である。

上記平面視にて単位面積あたりに接触部２２が占める面積の割合は、０．０５％以上５０％以下であることが好ましい。これにより、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力が良好な範囲に収まりやすくなる。

なお、薄膜層２０は、支持面３１Ｓに位置する繊維のすべてと接しているとは限らない。また、１本の繊維は、当該繊維の延びる方向においてその全体が薄膜層２０と接しているとは限らない。すなわち、各繊維は、繊維の延びる方向において部分的に薄膜層２０と接していることがあり得る。

図３および図４を参照して、転写シート１０の断面における接触部２２とその付近の構造を説明する。
本実施形態の転写シート１０においては、上述のように、薄膜層２０が支持層３０と部分的に接していることにより、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力が過大になることを抑えている。一方で、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力が小さすぎると、転写シート１０を被転写体における薄膜層２０の貼付箇所まで移動させる際に、支持層３０からの薄膜層２０の剥がれや、薄膜層２０のシワやヨレが生じ、転写シート１０が取り扱いにくい。本実施形態においては、接触部２２における薄膜層２０と繊維との密着状態の制御によって、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力が過小になることを抑えている。

図３が示すように、接触部２２の部分で、薄膜層２０は、支持層３０に向かって突き出る形状を有していることが好ましい。すなわち、接触部２２にて、第１面２１Ｆは周囲に対して窪んだ凹部となり、第２面２１Ｒは周囲から突き出た凸部となっている。

接触部２２にて薄膜層２０が支持層３０に向かって突き出ていることで、薄膜層２０が平坦である場合には接触し得ない位置の繊維３２と薄膜層２０との接触が可能となる。これにより、接触部２２の数の増大が可能であり、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力を高めることができる。こうした効果を良好に得るためには、薄膜層２０は、支持層３０に向かって突き出る形状を有した接触部２２である突出接触部を、転写シート１０の平面視にて１ｍｍ^２あたり１つ以上有することが好ましい。

なお、複数の接触部２２のなかには、接触部２２およびその周囲にて薄膜層２０が平坦である箇所や、薄膜層２０が支持層３０に向かって延び、接触部２２の付近で破断している箇所が含まれ得る。また、複数の接触部２２のなかには、薄膜層２０が、接触部２２にて支持層３０とは反対側に突き出るように変形している箇所、すなわち、接触部２２にて、薄膜層２０が繊維３２に押し上げられており、第１面２１Ｆが凸部かつ第２面２１Ｒが凹部となっている箇所が含まれ得る。図５に、接触部２２およびその周囲にて薄膜層２０が平坦である箇所の例を示す。

接触部２２は、繊維３２の表面に沿った広がりを有すること、すなわち、繊維３２と面接触することが好ましく、具体的には、繊維３２の周に沿った広がりを有することが好ましい。そして、接触部２２での薄膜層２０の厚さＴ１は、非接触部２３での薄膜層２０の厚さＴ２よりも小さいことが好ましい。すなわち、薄膜層２０は、接触部２２において薄く広がるように繊維３２の表面に沿って繊維３２に密着していることが好ましい。この場合、薄膜層２０の第２面２１Ｒは、接触部２２において、繊維３２の表面に沿った形状を有している。接触部２２がこうした構成を有することで、接触部２２が断面にて点状に繊維３２と接触する場合と比較して、接触部２２における薄膜層２０と支持層３０との間の密着力が大きくなる。

図４が示すように、詳細には、繊維３２の周に沿った接触部２２の長さＬが、当該繊維３２の繊維径ｄの１０％以上の大きさを有することが好ましい。また、複数の接触部２２の１０％以上において、接触部２２と繊維３２とが面接触し、かつ、接触部２２での薄膜層２０の平均膜厚が、非接触部２３での薄膜層２０の平均膜厚よりも小さいことが好ましい。こうした構成によれば、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力が小さくなりすぎない。そのため、転写シート１０を被転写体の貼付箇所まで移動させる際に、薄膜層２０が支持層３０から剥がれることや、薄膜層２０にシワやヨレが生じることが抑えられる。

接触部２２での薄膜層２０の平均膜厚は、電子顕微鏡を用いた断面観察によって求められる。例えば、転写シート１０の平面視にて１辺が１０ｃｍの正方形領域に含まれる１０個以上の接触部２２について平均膜厚が算出されることにより、平均膜厚が非接触部２３よりも小さい接触部２２の割合が求められる。詳細には、上記正方形領域内に分散した複数の箇所から断面観察用の試料を作製して１０個以上の接触部２２を選定し、各接触部２２について、接触部２２内にて繊維３２の周に沿って等配した５点の測定点の厚さＴ１を測定する。５点の測定点での厚さＴ１の平均値が、接触部２２ごとの平均膜厚である。なお、厚さＴ１は、測定点での第１面２１Ｆの接線と直交する方向に沿った薄膜層２０の長さである。

非接触部２３での薄膜層２０の平均膜厚は、上記正方形領域に含まれる非接触部２３内に設定された１０箇所の測定領域について、各測定領域の平均膜厚を平均した値である。各測定領域の平均膜厚は、電子顕微鏡を用いた断面観察によって求められる。詳細には、上記正方形領域内に分散した複数の箇所から断面観察用の試料を作製して１０個の測定領域を選定し、各測定領域について、非接触部２３内にて薄膜層２０の延びる方向に沿って等配した１０点の測定点の厚さＴ２を測定する。そして、１０点の測定点での厚さＴ２の平均値が、測定領域ごとの平均膜厚であり、１０個の測定領域についての上記平均膜厚を平均した値が、非接触部２３の平均膜厚である。なお、厚さＴ２は、測定点での第１面２１Ｆの接線と直交する方向に沿った薄膜層２０の長さである。

ここで、薄膜層２０は、局所的に薄い部分や厚い部分を有し得るため、非接触部２３の平均膜厚を求めるための上記測定領域は、上記局所的に薄い部分や厚い部分を除く領域に設定されることが好ましい。具体的には、上記測定領域として、薄膜層２０の延びる方向に沿って、当該測定領域に最も近い接触部２２に接する繊維３２の周の長さの１／２以上の長さを有して、その全域で繊維３２と接していない領域であって、かつ、当該測定領域における１０点の測定点での厚さＴ２の変動係数ＣＶが０．１５以下である領域が選択される。

非接触部２３の平均膜厚は、１ｎｍ以上５０００ｎｍ以下である。非接触部２３の平均膜厚が上記範囲内であれば、薄膜層２０が十分に薄いため、薄膜層２０における被転写体の表面形状への追従性が高められ、被転写体に対する薄膜層２０の密着性が高められる。被転写体に対する薄膜層２０の密着性をより高めるため、また、被転写体が皮膚である場合において薄膜層２０が貼り付けられた際に生体が覚える違和感を低減するためには、非接触部２３の平均膜厚は、１０００ｎｍ以下であることがより好ましく、９００ｎｍ以下であることがさらに好ましい。また、薄膜層２０の強度を高めるためには、非接触部２３の平均膜厚は、１００ｎｍ以上であることがより好ましく、３００ｎｍ以上であることがさらに好ましい。

なお、複数の接触部２２には、接触部２２の平均膜厚が、非接触部２３の平均膜厚以上となる接触部２２が含まれていてもよい。例えば、薄膜層２０の成膜時において局所的に厚い部分が形成され、こうした部分が繊維３２と接する場合には、接触部２２の平均膜厚が、非接触部２３の平均膜厚以上となることがあり得る。複数の接触部２２に、繊維３２と面接触し、かつ、平均膜厚が非接触部２３よりも小さい接触部２２が含まれていれば、こうした接触部２２が存在しない場合と比較して、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力の増大が可能である。

また、薄膜層２０の質量から換算した平均膜厚を仮想膜厚とするとき、複数の接触部２２の１０％以上において、接触部２２の平均膜厚は、仮想膜厚よりも小さいことが好ましい。仮想膜厚は、薄膜層２０の総材料から均一な厚さの１枚の膜を形成したと仮定した場合における当該膜の厚さであり、薄膜層２０の単位面積あたりの質量に基づいて算出される。

繊維３２の周に沿った接触部２２の長さＬおよび繊維径ｄも、接触部２２の平均膜厚の算出時と同様の断面観察によって求められる。例えば、上記正方形領域内で選定された１０個以上の接触部２２についての断面観察において、各接触部２２の長さＬが、当該接触部２２と接している繊維３２の繊維径ｄの１０％以上の大きさを有していればよい。

なお、長さＬは、転写シート１０の厚さ方向に沿った断面での、接触部２２における繊維３２と接している部分の繊維３２の周に沿った長さであり、繊維径ｄは、上記断面での、繊維３２の径の最大値である。

繊維３２の繊維径ｄは、５ｎｍ以上３０μｍ以下であることが好ましい。繊維径ｄが上記範囲内であれば、良好な転写性を確保しやすい。
長さＬの上限に制限はなく、長さＬは繊維３２の半周を超えていてもよいが、接触部２２が繊維３２を囲んでいると、繊維３２から接触部２２が剥がれ難くなる。したがって、長さＬは繊維３２の周の長さの１／２以下であることが好ましい。

また、薄膜層２０は、接触部２２の隣接領域に、薄膜層２０の厚さが局所的に大きくなっている膨大部２４を有していることが好ましい。膨大部２４は、言い換えれば、薄膜層２０がその周囲と比較して膨らんでいる部分である。接触部２２の隣接領域は、転写シート１０の厚さ方向に沿った断面において、繊維３２の周に沿った方向での接触部２２の中心から、薄膜層２０の延びる方向に沿って繊維３２の半周以下の長さを有する領域である。接触部２２の平均膜厚が、非接触部２３の平均膜厚よりも小さい場合であっても、接触部２２の隣接領域に膨大部２４が位置していることによって、接触部２２およびその近傍の領域で薄膜層２０の強度が低くなることが抑えられる。

なお、図３および図４では、接触部２２の両隣に膨大部２４が位置している形態を図示しているが、膨大部２４は、薄膜層２０の延びる方向に沿った接触部２２の２つの端部の一方の隣にのみ、位置していてもよい。また、複数の接触部２２には、両隣のいずれにも膨大部２４が位置しない接触部２２が含まれてもよい。なお、膨大部２４は、非接触部２３の一部である。

［転写シートの製造方法］
転写シート１０は、成膜用基材上に形成した薄膜層２０を、支持層３０に転写することによって形成される。

薄膜層２０の成膜方法としては、溶液キャスト法等の薄膜形成方法が利用される。溶液キャスト法は、薄膜層２０の材料を液体に溶解あるいは分散させることにより塗液を生成した後、塗液を成膜用基材に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥して当該膜を固化することにより、薄膜層２０を形成する。

成膜用基材への塗液の塗布方法としては、例えば、ダイレクトグラビア、リバースグラビア、小径リバースグラビア、マイヤーコート、ダイ、カーテン、スプレー、スピンコート、スクリーン印刷、コンマ、ナイフ、グラビアオフセット、ロールコート等の公知のコーティング方法が使用できる。

形成される薄膜層２０の厚さは、塗液に含まれる固形分の割合と塗布方法とによって制御される。薄膜層２０が複数の薄膜から構成される場合、塗液の塗布と塗膜の乾燥とが繰り返されることにより、複数の薄膜が積層されて、薄膜層２０が形成される。薄膜を部分的に形成する場合、すなわち、パターニングされた薄膜を形成する場合には、塗布方法として、ダイレクトグラビア、スプレー、スクリーン印刷、グラビアオフセットの各コーティング方法を用いることが適している。

なお、成膜用基材として凹凸を有する基材を用いることや、塗膜の乾燥前あるいは後に凹凸を有する版を塗膜の表面に押し付けることや、上記薄膜のパターニングによって、薄膜層２０の表面に凹凸を形成することができる。

薄膜層２０の形成後、成膜用基材上の薄膜層２０の表面である第２面２１Ｒに、支持層３０の支持面３１Ｓを接触させ、成膜用基材から支持層３０へ薄膜層２０を転写する。転写方法としては、吸引による剥離を利用する方法や犠牲膜を利用する方法等、公知の転写方法が用いられればよい。

薄膜層２０と支持層３０とが接した状態で、薄膜層２０と支持層３０とに熱を加えることにより、上述した接触部２２および非接触部２３を有する転写シート１０が形成できる。例えば、薄膜層２０と支持層３０との積層体をオーブンで加熱し、この加熱条件の調整によって、接触部２２の大きさ、厚さ、数等を制御することができる。加熱条件には、例えば、加熱温度、加熱時間、熱風の風量が含まれる。

具体的には、加熱により薄膜層２０が軟化することで、薄膜層２０が薄く広がるように繊維３２に密着し、また、膨大部２４が形成される。薄膜層２０の軟化の程度が大きいほど、接触部２２の数の増加、接触部２２の薄膜化、および、接触部２２の大きさ、すなわち、接触部２２と繊維３２との接触面積の拡大による長さＬの増大が可能である。また、薄膜層２０の軟化の程度が大きいほど、接触部２２から移動した材料が接触部２２の周辺に溜まって膨大部２４が形成されやすくなる。なお、軟化の程度が大きいと、加熱中において薄膜層２０は液状になる場合もあり得る。

加熱温度の調整により、薄膜層２０の材料の融点と加熱温度との関係に応じて、薄膜層２０の軟化の程度を制御することができる。また、加熱時間の調整によっても、薄膜層２０の軟化の程度を制御することができる。また、熱風の風量が強いほど、薄膜層２０が強く支持層３０に押し付けられるため、接触部２２が薄く広がり、膨大部２４が形成されやすくなる。さらに、薄膜層２０の軟化の程度が大きいほど、また、熱風の風量が強いほど、支持層３０に向かって突き出る形状を有した接触部２２が形成されやすい。

なお、接触部２２の数および大きさは、薄膜層２０の成膜厚さによっても変化させることができる。薄膜層２０の全体的な膜厚が小さいと、軟化による材料の流動が小さくなるため、接触部２２が形成されにくく、接触部２２の大きさも大きくなり難い。薄膜層２０の成膜厚さを大きくするほど、接触部２２の数の増加、および、接触部２２の大きさの拡大が可能である。

こうした観点から、薄膜層２０の成膜厚さは１００ｎｍ以上であることが好ましく、形成後の転写シート１０において、非接触部２３の平均膜厚は１００ｎｍ以上であることが好ましい。非接触部２３の平均膜厚が１００ｎｍ以上となる程度に成膜厚さを設定することで、接触部２２の数および大きさが良好に得られやすく、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力を良好に制御しやすくなる。

［薄膜層の転写方法］
薄膜層２０の転写に際しては、被転写体の貼付箇所に薄膜層２０の第１面２１Ｆを接触させた後に、薄膜層２０から支持層３０を剥離する。支持層３０の剥離の際には、被転写体上の転写シート１０に液体を供給し、液体を薄膜層２０と支持層３０との間まで浸透させることによって、薄膜層２０からの支持層３０の剥離を促進させてもよい。

上述のように、本実施形態の転写シート１０においては、支持層３０の支持面３１Ｓを繊維３２から構成し、薄膜層２０と繊維３２との接触状態を制御することにより、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力を過小でなく、かつ、過大でないように制御している。したがって、転写シート１０の貼付箇所への移動と支持層３０の剥離とが簡便に可能であるため、転写シート１０の取り扱いが容易になる。

被転写体は特に限定されず、例えば、生体、金属製品、ガラス製品、樹脂製品、植物、紙、固形薬剤、食品等が被転写体となり得る。特に、被転写体が、生体の皮膚や臓器である場合に、本実施形態の転写シート１０は好適に用いられる。

［実施例］
上述した転写シートについて、具体的な実施例を用いて説明する。以下の実施例の転写シートの形成に用いた材料は下記である。
成膜用基材：ポリエチレンテレフタレートフィルム（ルミラー Ｓ１０：東レ社製）
薄膜層：ＤＬ－ポリ乳酸（重量平均分子量：４４万）
支持層：セルロース不織布（フタムラ社製、目付け２０ｇ／ｍ^２）

（実施例１）
薄膜層の材料を、酢酸エチルに溶液中の固形分が３％となるように溶解して、薄膜層用塗液を調整した。成膜用基材に、薄膜層用塗液をワイヤーバー（＃２番手）を用いて塗布し、塗膜を乾燥により固化して、薄膜層を得た。

成膜用基材上の薄膜層に支持層を重ね、成膜用基材から支持層に薄膜層を転写した。転写後、薄膜層と支持層との積層体をオーブンに入れて、温度６０度、風速１０ｍ/ｍｉｎで２０秒間、加熱した。これにより、実施例１の転写シートを得た。

実施例１の転写シートについて、後述の方法で断面観察を行った。その結果、非接触部の平均膜厚は１００ｎｍ、２０個の接触部における長さＬの繊維径ｄに対する割合の最小値である最小長さ率は５％、２０個の接触部における平均膜厚が非接触部よりも小さい接触部の割合である接触部薄膜率は５％であった。

（実施例２）
薄膜層の材料を、酢酸エチルに溶液中の固形分が３％となるように溶解して、薄膜層用塗液を調整した。ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）を塗布した成膜用基材に薄膜層用塗液を、ワイヤーバー（＃２番手）を用いて塗布し、塗膜を乾燥により固化して、薄膜層を得た。

上記成膜用基材と薄膜層との積層体を水中に入れ、ＰＶＡを溶解させることにより薄膜層を成膜用基材から剥離させ、その後、水中の薄膜層を支持層上に掬い上げて、薄膜層を支持層に転写した。転写後、薄膜層と支持層との積層体をオーブンに入れて、温度８０度、風速１０ｍ/ｍｉｎで３０秒間、加熱した。これにより、実施例２の転写シートを得た。
実施例２の転写シートについて、後述の方法で断面観察を行った。その結果、非接触部の平均膜厚は１００ｎｍ、最小長さ率は１０％、接触部薄膜率は１０％であった。

（実施例３）
薄膜層の材料を、酢酸エチルに溶液中の固形分が５％となるように溶解して、薄膜層用塗液を調整した。成膜用基材に、薄膜層用塗液をワイヤーバー（＃６番手）を用いて塗布し、塗膜を乾燥により固化して、薄膜層を得た。

成膜用基材上の薄膜層に支持層を重ね、成膜用基材から支持層に薄膜層を転写した。転写後、薄膜層と支持層との積層体をオーブンに入れて、温度８０度、風速１０ｍ/ｍｉｎで４５秒間、加熱した。これにより、実施例３の転写シートを得た。
実施例３の転写シートについて、後述の方法で断面観察を行った。その結果、非接触部の平均膜厚は６００ｎｍ、最小長さ率は１２％、接触部薄膜率は１０％であった。

（実施例４）
薄膜層の材料を、酢酸エチルに溶液中の固形分が１０％となるように溶解して、薄膜層用塗液を調整した。成膜用基材に、薄膜層用塗液をワイヤーバー（＃３番手）を用いて塗布し、塗膜を乾燥により固化して、薄膜層を得た。

成膜用基材上の薄膜層に支持層を重ね、成膜用基材から支持層に薄膜層を転写した。転写後、薄膜層と支持層との積層体をオーブンに入れて、温度８０度、風速１５ｍ/ｍｉｎで４５秒間、加熱した。これにより、実施例４の転写シートを得た。
実施例４の転写シートについて、後述の方法で断面観察を行った。その結果、非接触部の平均膜厚は６００ｎｍ、最小長さ率は１６％、接触部薄膜率は１５％であった。

（実施例５）
薄膜層の材料を、酢酸エチルに溶液中の固形分が５％となるように溶解して、薄膜層用塗液を調整した。成膜用基材に、薄膜層用塗液をワイヤーバー（＃６番手）を用いて塗布し、塗膜を乾燥により固化して、薄膜層を得た。

成膜用基材上の薄膜層に支持層を重ね、成膜用基材から支持層に薄膜層を転写した。転写後、薄膜層と支持層との積層体をオーブンに入れて、温度１００度、風速１５ｍ/ｍｉｎで３０秒間、加熱した。これにより、実施例５の転写シートを得た。
実施例５の転写シートについて、後述の方法で断面観察を行った。その結果、非接触部の平均膜厚は６００ｎｍ、最小長さ率は１６％、接触部薄膜率は１０％であった。

（実施例６）
薄膜層の材料を、酢酸エチルに溶液中の固形分が１０％となるように溶解して、薄膜層用塗液を調整した。成膜用基材に、薄膜層用塗液をワイヤーバー（＃３番手）を用いて塗布し、塗膜を乾燥により固化して、薄膜層を得た。

成膜用基材上の薄膜層に支持層を重ね、成膜用基材から支持層に薄膜層を転写した。転写後、薄膜層と支持層との積層体をオーブンに入れて、温度１００度、風速１５ｍ/ｍｉｎで４５秒間、加熱した。これにより、実施例６の転写シートを得た。
実施例６の転写シートについて、後述の方法で断面観察を行った。その結果、非接触部の平均膜厚は６００ｎｍ、最小長さ率は２０％、接触部薄膜率は１５％であった。

（実施例７）
薄膜層の材料を、酢酸エチルに溶液中の固形分が１０％となるように溶解して、薄膜層用塗液を調整した。成膜用基材に、薄膜層用塗液をワイヤーバー（＃６番手）を用いて塗布し、塗膜を乾燥により固化して、薄膜層を得た。

成膜用基材上の薄膜層に支持層を重ね、成膜用基材から支持層に薄膜層を転写した。転写後、薄膜層と支持層との積層体をオーブンに入れて、温度１００度、風速２０ｍ/ｍｉｎで４５秒間、加熱した。これにより、実施例７の転写シートを得た。
実施例７の転写シートについて、後述の方法で断面観察を行った。その結果、非接触部の平均膜厚は１２００ｎｍ、最小長さ率は３０％、接触部薄膜率は２０％であった。

（断面観察）
各実施例について、転写シートを１辺が１０ｃｍの正方形状に切り出し、ランダムに断面観察の場所を選定し、走査型電子顕微鏡による断面観察を行った。観察領域内から、２０個の接触部を選出し、平均膜厚と、長さＬの繊維径ｄに対する割合とを算出するとともに、接触部の隣接領域における膨大部の有無を確認した。また、観察領域内の非接触部に１０個の測定領域を設定し、平均膜厚を算出した。

（評価方法）
各実施例について、転写シートを、短辺が３０ｍｍ、長辺が１００ｍｍの長方形形状に切り出して試験片を作製した。摩擦試験として、試験片における薄膜層が位置する面を、２００ｇ／ｃｍ^２の荷重をかけて３往復擦ること行った。摩擦試験は、各実施例について、３つの試験片に対して実施した。

摩擦試験の結果、３つの試験片のすべてにおいて、薄膜層にシワ、ヨレ、あるいは、剥がれである瑕疵が生じていない場合を「◎」、薄膜層に瑕疵が生じていない試験片が２つである場合を「〇」、薄膜層に瑕疵が生じていない試験片が１つである場合を「△」とした。「〇」および「△」の結果が得られた実施例について、薄膜層に瑕疵が生じた試験片におけるシワ、ヨレ、剥がれは、いずれも軽微であった。

（評価結果）
各実施例について、非接触部の平均膜厚、長さＬの繊維径ｄに対する割合の最小値、平均膜厚が非接触部よりも小さい接触部の割合、膨大部の有無、および、密着性の評価結果を表１に示す。

表１が示すように、いずれの実施例においても、薄膜層にシワ、ヨレ、剥がれが生じない試験片が確認された。特に、長さＬの繊維径ｄに対する割合が１０％以上であり、かつ、平均膜厚が非接触部よりも小さい接触部の割合が１０％以上である実施例２～７では、過半数の試験片で薄膜層にシワ、ヨレ、剥がれが生じず、薄膜層と支持層との間の密着力が良好であることが確認された。

以上、実施形態および実施例にて説明したように、上記転写シートによれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
（１）薄膜層２０が、支持層３０を構成する繊維３２に接している複数の接触部２２と、繊維３２から離れている非接触部２３とを有する。そして、複数の接触部２２に、繊維３２と面接触し、かつ、平均膜厚が非接触部２３よりも小さい接触部２２が含まれる。

上記構成によれば、薄膜層２０が支持層３０と部分的に接していることにより、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力が過大となることが抑えられる。その結果、転写シート１０を被転写体に接触させた後に、薄膜層２０から支持層３０を容易に剥離することができる。一方で、複数の接触部２２の少なくとも一部において、薄膜層２０が薄く広がるように支持層３０の繊維３２の表面に沿って当該繊維３２と接しているため、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力が過小となることが抑えられる。その結果、転写シート１０を被転写体まで移動させる際に、薄膜層２０が支持層３０から剥がれることや、薄膜層２０にシワやヨレが生じることが抑えられる。したがって、転写シート１０の取り扱いが容易になる。

（２）上記繊維３２と面接触し、かつ、平均膜厚が非接触部２３よりも小さい接触部２２は、繊維３２の周に沿って、当該繊維３２の繊維径ｄの１０％以上の長さを有する。こうした構成によれば、繊維３２と面接触する接触部２２において、繊維３２と接する部分の面積が十分に確保されるため、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力が過小となることが好適に抑えられる。

（３）薄膜層２０が、複数の接触部２２の少なくとも一部の隣接領域に、薄膜層２０の厚さが局所的に大きくなった膨大部２４を有する。こうした構成によれば、接触部２２の平均膜厚が、非接触部２３の平均膜厚よりも小さい場合であっても、接触部２２およびその近傍の領域で薄膜層２０の強度が低くなることが抑えられる。

（４）複数の接触部２２には、接触部２２において薄膜層２０が支持層３０に向かって突き出た形状を有する突出接触部が含まれる。こうした構成によれば、薄膜層２０が平坦である場合には接触し得ない位置の繊維３２と薄膜層２０との接触が可能となる。これにより、接触部２２の数の増大が可能であり、薄膜層２０と支持層３０との間の密着力を高めることができる。さらに、転写シート１０の平面視にて、薄膜層２０が、１ｍｍ^２あたりに１以上の上記突出接触部を有することにより、上述の薄膜層２０と支持層３０との間の密着力を高める効果が好適に得られる。

１０…転写シート、２０…薄膜層、２１Ｆ…第１面、２１Ｒ…第２面、２２…接触部、２３…非接触部、２４…膨大部、３０…支持層、３１Ｓ…支持面、３２…繊維。

Claims (4)

1. ０．０１ｇ／ｍ^２以上１０ｇ／ｍ^２以下の平均質量を有する薄膜層と、
   前記薄膜層を支持する支持層と、を備え、
   前記支持層は、当該支持層における前記薄膜層に接する面に位置する複数の繊維を含み、
   前記薄膜層は、前記繊維に接している複数の接触部と、前記繊維から離れている非接触部とを有し、
   前記複数の接触部に、前記繊維と面接触する前記接触部であって、かつ、当該接触部での前記薄膜層の平均膜厚が、前記非接触部での前記薄膜層の平均膜厚よりも小さい前記接触部が含まれ、
   前記繊維と面接触し、かつ、前記非接触部での前記平均膜厚よりも小さい前記平均膜厚を有する前記接触部は、前記繊維の周に沿って、当該繊維の繊維径の１０％以上の長さを有する
   転写シート。
2. ０．０１ｇ／ｍ^２以上１０ｇ／ｍ^２以下の平均質量を有する薄膜層と、
   前記薄膜層を支持する支持層と、を備え、
   前記支持層は、当該支持層における前記薄膜層に接する面に位置する複数の繊維を含み、
   前記薄膜層は、前記繊維に接している複数の接触部と、前記繊維から離れている非接触部とを有し、
   前記複数の接触部に、前記繊維と面接触する前記接触部であって、かつ、当該接触部での前記薄膜層の平均膜厚が、前記非接触部での前記薄膜層の平均膜厚よりも小さい前記接触部が含まれ、
   前記薄膜層は、前記複数の接触部の少なくとも一部の隣接領域に、前記薄膜層の厚さが局所的に大きくなった膨大部を有する
   転写シート。
3. ０．０１ｇ／ｍ^２以上１０ｇ／ｍ^２以下の平均質量を有する薄膜層と、
   前記薄膜層を支持する支持層と、を備え、
   前記支持層は、当該支持層における前記薄膜層に接する面に位置する複数の繊維を含み、
   前記薄膜層は、前記繊維に接している複数の接触部と、前記繊維から離れている非接触部とを有し、
   前記複数の接触部に、前記繊維と面接触する前記接触部であって、かつ、当該接触部での前記薄膜層の平均膜厚が、前記非接触部での前記薄膜層の平均膜厚よりも小さい前記接触部が含まれ、
   前記複数の接触部は、前記接触部において前記薄膜層が前記支持層に向かって突き出た形状を有する突出接触部を含む
   転写シート。
4. 前記転写シートの平面視にて、前記薄膜層は、１ｍｍ^２あたりに１以上の前記突出接触部を有する
   請求項３に記載の転写シート。

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