本開示に係る調湿システム用液体吸湿材料は、空気中に含まれる水分を液体吸湿材料により吸湿する吸湿部と、前記液体吸湿材料が吸湿した水分を空気中に放湿する放湿部と、放湿された水分を空気に放散させて加湿する加湿部と、を備える調湿システムに用いられ、少なくとも0℃~5℃の範囲内において液体であるイオン液体と、当該イオン液体に相溶して得られる相溶物の引火点を、当該イオン液体の引火点よりも上昇させるか、または、当該相溶物の引火点を無くす、引火性減殺剤と、を含有する構成である。
前記構成によれば、液体吸湿材料は、主成分としてイオン液体を含有するとともに、さらにイオン液体に相溶する引火性減殺剤が含有されている。これにより液体吸湿材料の主成分であるイオン液体が引火性を有するものであっても、引火性減殺剤を含有することで、液体吸湿材料全体として見たときに引火性を低減または実質的に無くすことが可能になる。その結果、液体吸湿材料は、良好な吸湿性を実現できるとともに、引火性を実質的に考慮する必要がなくなるため良好な取扱性も実現することができる。また、このような液体吸湿材料を用いることにより、調湿システムにおいて引火性に対応するためのさまざまな対策をとる必要が無くなる。それゆえ、調湿システムの構成の複雑化等を回避することができる。
前記構成の調湿システム用液体吸湿材料においては、前記引火性減殺剤が、0℃~5℃の範囲内において液体である構成であってもよい。
前記構成によれば、引火性減殺剤が0℃~5℃の範囲内で液体であるため、イオン液体と同様に0℃~5℃で液体状態となる。これにより、特に冬季において、吸湿部が良好に水分を吸湿したり放湿部が良好に吸湿した水分を放湿したりすることができるため、調湿システムを良好に動作させることができる。
また、前記構成の調湿システム用液体吸湿材料においては、前記引火性減殺剤が、水または水溶液である構成であってもよい。
前記構成によれば、引火性減殺剤の主成分が水であるので、液体吸湿材料において、より良好な吸湿性を実現しつつその引火性をより良好に減殺することができる。
また、前記構成の調湿システム用液体吸湿材料においては、前記引火性減殺剤の含有量は、前記イオン液体および前記引火性減殺剤の総量に対して10重量%を超えている構成であってもよい。
前記構成によれば、引火性減殺剤の含有量が、イオン液体および引火性減殺剤の総量の10重量%を超えている。これにより、液体吸湿材料において、より良好な吸湿性を実現しつつその引火性をより良好に減殺することができる。
また、前記構成の調湿システム用液体吸湿材料においては、前記引火性減殺剤の含有量は、前記イオン液体および前記引火性減殺剤の総量に対して80重量%以下である構成であってもよい。
前記構成によれば、引火性減殺剤の含有量が、イオン液体および引火性減殺剤の総量の80重量%以下である。これにより、液体吸湿材料において、より良好な吸湿性を実現しつつその引火性をより良好に減殺することができる。
また、前記構成の調湿システム用液体吸湿材料においては、さらに難燃剤を含有する構成であってもよい。
前記構成によれば、イオン液体が引火性を有するものであっても、難燃剤を添加することで、液体吸湿材料の可燃性を抑制することができる。
また、前記構成の調湿システム用液体吸湿材料においては、前記イオン液体は、周囲の相対湿度が30~95%の範囲内にある状態で、1時間経過した後に、その含水率が10重量%を超えるものである構成であってもよい。
前記構成によれば、調湿システムが加湿運転していないときに液体吸湿材料が周囲から吸湿して多くの水分を蓄積することができる。そのため、調湿システムが加湿運転を開始したときには、蓄積した水分を一挙に放出して迅速に加湿することが可能となる。しかも、水は引火性減殺剤としての機能も有するため、加湿運転していないときに多くの水分を蓄積することで、液体吸湿材料の引火性のさらなる低減または引火性の十分な消失を実現することができる。
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
まず、本開示に係る調湿システムの代表的な構成例について、図1および図2(A)、図2(B)を参照して具体的に説明する。
[調湿システムの構成例]
図1に示すように、本実施の形態に係る調湿システム10は、吸湿部11、放湿部12、加湿部13、循環供給部14、および貯留部15を備えており、吸湿部11、放湿部12、循環供給部14、および貯留部15は吸湿材料配管16により接続されている。また加湿部13は放湿部12に対して加湿用配管17を介して接続されている。吸湿材料配管16には、液体吸湿材料が流通しており、この液体吸湿材料は、後述するように、少なくともイオン液体を含んでいる。
吸湿部11は、空気中に含まれる水分を液体吸湿材料により吸湿する。放湿部12は、液体吸湿材料が吸湿した水分を空気中に放出する。吸湿部11および放湿部12の具体的な構成は特に限定されないが、本開示においては、吸湿部11および放湿部12の少なくとも一方に空気接触部20が設けられている構成である。図1に示す調湿システム10では、吸湿部11および放湿部12のいずれにも空気接触部20が設けられている。
空気接触部20は、空気流動経路21を備えており、この空気流動経路21に空気を流しながら液体吸湿材料を供給することにより、この液体吸湿材料と空気とを接触させる。空気接触部20が吸湿部11に設けられている場合には、液体吸湿材料と空気とを接触させることにより、空気中の水分を液体吸湿材料が吸湿する。空気接触部20が放湿部12に設けられている場合には、液体吸湿材料と空気とを接触させることにより、液体吸湿材料に含まれる水分を空気に放湿する。なお、空気接触部20のより具体的な構成例については後述する。
加湿部13は、放湿部12により液体吸湿材料から放湿された水分を空気に放散させて加湿する。本実施の形態では、吸湿部11は、例えば外気から水分を液体吸湿材料に吸湿させて放湿部12に放湿させる。放湿部12において空気流動経路21内に流動する空気に放湿された水分は、例えば加湿用配管17を介して加湿部13に供給されるので、加湿部13は、供給された水分を例えば室内空気を加湿するために放散する。それゆえ、吸湿部11および放湿部12は、外気から水分を回収する「水分回収部」として機能し、加湿部13は、「水分回収部」により回収された水分を利用して室内空気を加湿することになる。
放湿部12とは別に加湿部13を備えることにより、「水分回収部」で回収した水分を効率的に加湿に用いることができるとともに、加湿のために外部から水分を供給する必要がなくなるので、加湿に関してメンテナンスフリーまたはそれに準ずる状況を実現することが可能となる。また、加湿部13は、必要に応じて室内の湿度を測定する湿度計を備えており、湿度に応じて加湿を制御するように構成されてもよい。これにより、室内の湿度に応じて好適な加湿が可能となる。
循環供給部14は、液体吸湿材料を循環させて空気接触部20に供給する。貯留部15は、液体吸湿材料を貯留する。なお、図1では、貯留部15の内部に液体吸湿材料40が貯留されている状態を模式的な断面図として図示している。図1に示すように、吸湿材料配管16は、吸湿部11および放湿部12を相互に接続されているので、液体吸湿材料は、循環供給部14により吸湿材料配管16を介して吸湿部11および放湿部12を循環するように流通可能となっている。なお、本実施の形態では、吸湿材料配管16のうち、吸湿部11から放湿部12に向かって液体吸湿材料が流れる部分を、説明の便宜上「第一配管16a」と称し、放湿部12から吸湿部11に向かって液体吸湿材料が流れる部分を、説明の便宜上「第二配管16b」と称する。
ここで、図1に示す模式的な構成では、循環供給部14および貯留部15は、第二配管16bに設けられており、放湿部12から、貯留部15および循環供給部14を介して吸湿部11に液体吸湿材料が流れるようになっているが、この構成は便宜的なものであり、本開示は図1に示す構成に限定されない。例えば、循環供給部14は、第一配管16aに設けられてもよいし、第一配管16aおよび第二配管16bの双方に設けられてもよいし、第一配管16aまたは第二配管16bに限定されず吸湿材料配管16のいずれかの箇所に複数の循環供給部14が設けられてもよい。
貯留部15についても循環供給部14と同様に図1に示す構成に限定されない。例えば、第二配管16bではなく第一配管16aに貯留部15が設けられてもよいし、吸湿材料配管16のいずれかの箇所に複数の貯留部15が設けられてもよい。また、貯留部15は、他の構成に一体化されてもよい。例えば、吸湿部11または放湿部12の一部に液体吸湿材料を貯留する槽としての貯留部15が設けられてもよい。
本開示に係る調湿システム10においては、吸湿部11、放湿部12、加湿部13、循環供給部14、貯留部15、吸湿材料配管16、および加湿用配管17のより具体的な構成は特に限定されず、公知の各種構成を好適に用いることができる。吸湿部11および放湿部12は、少なくとも空気接触部20を備えていればよく、吸湿部11または放湿部12には、空気接触部20以外の構成が設けられてもよいし、空気接触部20のみで構成されてもよい。吸湿部11または放湿部12が、空気接触部20のみで構成されているのであれば、調湿システム10は、吸湿部11となる「第一の空気接触部20」と放湿部12となる「第二の空気接触部20」とを備えている、ということもできる。
空気接触部20のより具体的な構成についても、吸湿部11、放湿部12、加湿部13等と同様に特に限定されないが、代表的な構成として、例えば、図2(A)または図2(B)に示すように、鉛直方向に沿って配置され、その上方から液体吸湿材料を流入させて下方から流出させる吸湿材料流動経路22を備えている構成を挙げることができる。例えば、吸湿部11であれば、図2(A)に示すように、吸湿材料配管16のうち第二配管16bが上方に位置し、第一配管16aが下方に位置し、これらの間に鉛直方向に沿って吸湿材料流動経路22が位置する構成を挙げることができる。
このとき、空気接触部20が備える空気流動経路21は、吸湿材料流動経路22と同じく鉛直方向に沿って配置されてもよいが、図2(A)に示すように、吸湿材料流動経路22に交差するように設けられてもよい。図2(A)に示す例では、空気流動経路21は吸湿材料流動経路22に対して直交するように設けられている。そのため、鉛直方向に流れる液体吸湿材料に対して水平方向から空気が流動することになる。これにより、液体吸湿材料と空気とを良好に接触させることができる。
図2(B)に例示する放湿部12も、図2(A)に例示する吸湿部11と同様に、吸湿材料流動経路22が鉛直方向に沿って配置され、空気流動経路21が吸湿材料流動経路22に交差するように(図2(B)では直交する方向に)配置されていればよい。放湿部12では、液体吸湿材料に含まれる水分を放散させるので、上方には第一配管16aが位置し下方には第二配管16bが位置する。なお、図2(A)および図2(B)においては、吸湿材料流動経路22における液体吸湿材料の流動方法を矢印c0で図示している。その他の矢印については、後述する調湿システム10の動作例において説明する。
また、図2(B)に示すように、例えば吸湿材料流動経路22の上流側には、吸湿材料加熱部24が設けられてもよい。吸湿材料加熱部24により吸湿した液体吸湿材料を加熱することにより、当該液体吸湿材料から水分をより放湿させやすくすることができる。吸湿材料加熱部24の位置は特に限定されず、第一配管16aに設けられてもよいし、吸湿材料流動経路22の上流側の位置に設けられてもよいし、第一配管16aおよび吸湿材料流動経路22の間に加熱領域を設け、この加熱領域に吸湿材料加熱部24を配置してもよい。
また、吸湿材料加熱部24による液体吸湿材料の加熱方法は特に限定されない。図2(B)に模式的に示す構成では、吸湿材料加熱部24が第一配管16aに設けられているので、第一配管16a内を流動する液体吸湿材料を間接的または直接的(加熱領域を設ける場合等)に加熱すればよい。また、吸湿材料加熱部24が吸湿材料流動経路22の上流側の位置に設けられていれば、当該吸湿材料流動経路22に流入する液体吸湿材料を間接的または直接的に加熱すればよい。
あるいは、図示しないが、吸湿材料加熱部24は、空気流動経路21内に熱空気流を送風する構成であってもよい。図2(B)に示す例では、前記の通り、吸湿材料流動経路22に沿って鉛直方向に流れる液体吸湿材料に対して、空気流動経路21に沿って水平方向から空気が流動するが、吸湿材料加熱部24の熱空気流は、液体吸湿材料の流動方向および空気の流動向のそれぞれに交差するように送風されればよい。図2(B)に示す例では、紙面に対する垂直方向に送風される構成を挙げることができる。この場合、液体吸湿材料の流動方向、空気の流動方向、および熱空気流の送風方向のいずれも直交することになる。
空気流動経路21または吸湿材料流動経路22の具体的な構成は特に限定されず、空気または液体吸湿材料が流動可能であり、かつ、空気および液体吸湿材料が接触可能に構成されていればよい、特に、本実施の形態では、空気流動経路21は、通常の管状部材であればよいが、吸湿材料流動経路22は、流動する液体吸湿材料と空気との接触頻度を向上するために、空間充填立体23そのもので構成されているか、あるいは、管状部材内に空間充填立体23が充填されている構成であればよい。
空間充填立体23の具体的な構成は特に限定されないが、代表的には、液体吸湿材料の流動方向に沿って中空の柱状体を充填した構成を挙げることができ、より具体的には、例えば、ハニカム構造体を挙げることができる。ハニカム構造体等の空間充填立体23は、単なる管状部材に比較して非常に表面積が大きいため、吸湿材料流動経路22を「高表面積部」として構成することができる。これにより、液体吸湿材料と空気とを高頻度で接触させることが可能になり、水分を効率的に吸放湿させることができる。
空間充填立体23がハニカム構造体である場合、このハニカム構造体は、一般的には、中空の正六角柱を隙間なく並列させた構造体であればよい。しかしながら、ハニカム構造体の断面形状は必ずしも正六角形に限定されず、正六角形に準ずるような形状であってもよいし、通常「ハニカム状」と見なされる他の断面形状であってもよい。本実施の形態におけるハニカム構造体は、正六角形の断面形状を有する狭義のものに限定されず、類似の形状等を含む広義の物であってもよい。また、柱状体の断面は1種類に限定されず複数種類の断面の柱状体が充填される構成であってもよい。
空間充填立体23がハニカム構造体等のように柱状体を充填する構成であれば、柱状体の長手方向(すなわち液体吸湿材料の流動方向)に交差(または直交)する方向には、空気を流通させて液体吸湿材料に空気を良好に接触させる構成が設けられていればよい。代表的には、例えば、ハニカム構造体の交差方向に空気が流通可能なスリット等の貫通孔が設けられている構成を挙げることができる。
また、空間充填立体23が、柱状体を充填する構成ではなく多面体を充填する構成である場合には、多面体同士が隣接する壁面であって、液体吸湿材料の流動方向となる位置に液体吸湿材料が流動できる程度の貫通孔を形成しておけばよい。また、貫通孔の位置は、必ずしも流動方向に沿って連続するように設けている必要はなく、流動方向に対して隣接する貫通孔の位置を敢えてずらすように設けてもよい。これにより、液体吸湿材料の流れを曲折させて空気との接触頻度を向上させることが可能になる。
さらに、吸湿材料流動経路22は、空間充填立体23で充填されている構成に限定されず、流動する液体吸湿材料に空気を良好に接触させる「高表面積部」として機能するものであれば他の構成を採用することができる。例えば、吸湿材料流動経路22の延伸方向(すなわち液体吸湿材料の流動方向)に沿って複数の線状体、棒状体、または板状体を平行配置し、これら線状体、棒状体または板状体に液体吸湿材料を伝わせるように流通させるとともに、線状体、棒状体または板状体に交差(または直交)する方向に空気を流通させる構成を挙げることができる。
さらに、前記の線状体、棒状体、または板状体を、説明の便宜上、吸湿材料流動経路22に平行配置される「平行配置部材」とすれば、これら平行配置部材の表面は平滑であってもよいが、その表面には凹凸形状、孔形状、または割れ目形状等の物理形状が形成されてもよい。平行配置部材の表面が、凹凸形状、孔形状、または割れ目形状等の物理形状を有することで、当該平行配置部材の表面積が増大する。これにより、液体吸湿材料と空気との接触が促進されるので、吸放湿の効率が向上する。
平行配置部材の表面に形成される前記物理形状の具体的な構成は特に限定されない。例えば、凹凸形状としては、線状体の線がうねる(曲がりくねる、波打つ)形状、同じく棒状体の棒がうねる形状、同じく板状体の板がうねる形状等が挙げられる。孔形状としては、平行配置部材の表面に複数の孔が形成された形状、平行配置部材そのものが多孔体で形成されている構成等が挙げられる。割れ目形状としては、線または棒の分岐、板状体の一部に形成された割れ目等が挙げられる。これら物理形状は、平行配置部材に対して1種類のみ形成されてもよいし、2種類以上が組み合わせられて形成されてもよい。
[液体吸湿材料]
次に、本開示に係る調湿システム10に好適に用いられる液体吸湿材料について具体的に説明する。
本開示に係る液体吸湿材料は、少なくとも0℃~5℃の範囲内において液体であり、かつ、含水率(吸湿率)によりその粘度が低下するイオン液体を含有するものであればよいが、さらに、本開示においては、当該イオン液体に相溶して得られる相溶物の引火点を、当該イオン液体の引火点よりも上昇させるか、または、当該相溶物の引火点を無くす、引火性減殺剤を含有している。なお、含水率は、イオン液体および水の総重量に対する水の重量の百分率(%)で定義される。すなわち、イオン液体および水の総量を100重量%としたときの水の重量%が含水率である。含水率の具体的な測定方法は特に限定されず、重量(または質量)を基準とした公知の方法を用いればよい。
イオン液体は、アニオンおよびカチオンからなる液体であり、例えば、融点が300℃以下または100℃以下のイオン性物質を指すと言われるが、使用条件で液体であれば、必ずしも融点については限定されない。本開示においては、調湿システム10において吸湿材料として用いられるものであるため、当該調湿システム10の使用条件に基づいて、少なくとも0℃~5℃の温度範囲内で液体であるイオン性物質であればよい。本開示に係る液体吸湿材料が、この温度範囲で液体でないイオン液体を含有すると、特に冬季において、吸湿部11が水分を吸湿したり放湿部12が吸湿した水分を放湿したりすることができなくなり、調湿システム10が良好に動作できなくなる。
0℃~5℃の温度範囲を、便宜上「必要温度範囲」とすれば、本開示においてイオン液体が液体である温度範囲は、必要温度範囲を含んでいればよく、その上限および下限は特に限定されない。上限については、例えば、常温(20℃±15℃すなわち5℃~35℃)の範囲内もしくは常温を超える温度範囲であってもよい。常温を含む温度範囲でイオン液体が液体であれば、その温度においても調湿システム10を良好に動作させることができる。また、下限については、例えば-20℃以上を挙げることができる。-20℃以上でイオン液体が液体であれば、ほとんどの寒冷地においても調湿システム10を良好に動作させることができる。
なお、本開示においては、イオン液体は、必要温度範囲内で液体であれば、他の温度範囲で液体でなくてもよい。本開示における必要温度範囲は、冬季に想定される温度範囲であるので、必要温度範囲内で液体であるイオン液体は、ほとんどの場合、常温でも液体である。
本開示に係る液体吸湿材料においては、前記の通り、イオン液体は、その含水率によりその粘度が低下するものであればよい。すなわち、本開示において用いられるイオン液体は、含水率が低ければ粘度が高く含水率が高ければ粘度が低いものであればよい。イオン液体が低含水率で高粘度であれば、吸湿部11では、粘度の高い液体吸湿材料を供給することができる。これにより、吸湿対象である空気と液体吸湿材料との接触時間を良好に確保することができる。また、イオン液体が高含水率で低粘度であれば、放湿部12では、含水率の低下により粘度が上昇することになるので、液体吸湿材料に含まれる水分を十分空気に放散する接触時間を確保することができる。なお、イオン液体の具体的な粘度については特に限定されず、適度な流動性を実現できる範囲内であればよい。
イオン液体の具体的な種類は特に限定されない。一般に、イオン液体は、その使用目的に応じて、カチオンまたはアニオンの具体的な構造、カチオンおよびアニオンの組合せ等により自由な分子設計が可能である。ただし、イオン液体の物性とカチオンまたはアニオンの構造との関係性については、未だに十分な解明が進んでいない。そのため、本開示においては、前記の通り、必要温度範囲で液体であるものを用いればよい。ただし、イオン液体の分子量については、100~300未満の範囲内であればよい。
本発明者らの鋭意検討によれば、吸湿材料として望ましいイオン液体では、カチオンおよびアニオン間のイオン強度が中庸であることが望ましく、イオン強度が強すぎたり弱すぎたりするものは望ましくない。イオン液体の分子量が100未満であったり300を超えたりするものは、カチオンまたはアニオンの分子が小さすぎたり大きすぎたりして中庸のイオン強度が得られず、良好な吸湿性能が得られないおそれがある。
より具体的なイオン液体の種類については特に限定されない。代表的なカチオンとしては、例えば、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、アンモニウム、ホスホニウム、モルホリニウム、ピペリジニウム、スルホニウム等を挙げることができる。これらの中でも、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、アンモニウム、ホスホニウムを好ましく用いることができる。また、カチオンは1種類のみ選択してもよいし複数種類のカチオンを混合して用いてもよい。
具体的なイミダゾリウムとしては、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-ドデシルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム、2,3-ジメチル-1-プロピルイミダゾリウム、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム、1-(3-ヒドロキシプロピル)-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-メチル-3-ペンチルイミダゾリウム、1-アリル-3-メチルイミダゾリウム、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウム等が挙げられるが特に限定されない。
また、具体的なピリジニウムとしては、例えば、1-エチルピリジニウム、1-プロピルピリジニウム、1-ブチルピリジニウム、1-ヘキシルピリジニウム、1-オクチルピリジニウム、1-ブチル-3-メチルピリジニウム、1-ブチル-4-メチルピリジニウム、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウム、1-エチル-3-(ヒドロキシメチル)ピリジニウム、1-オクチル-4-メチルピリジニウム等が挙げられるが特に限定されない。
また、具体的なピロリジニウムとしては、例えば、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム、1-エチル-1-メチルピロリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピロリジニウム等が挙げられるが特に限定されない。
また、具体的なアンモニウムとしては、例えば、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルメチルアンモニウム、ジエチル(メチル)プロピルアンモニウム、アミルトリエチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、テトラアミルアンモニウム等が挙げられるが特に限定されない。
また、具体的なホスホニウムとしては、例えば、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルオクチルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチル(2-メトキシエチル)ホスホニウム、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム等が挙げられるが特に限定されない。
また、代表的なアニオンとしては、Cl- ,Br- ,I- 等のハロゲンイオン;NO2
-,NO3
-等の酸化窒素系(NO系)イオン;BF4
-,PF6
-,AlCl4
-,AsF6
-,SbF6
-,NbF6
-,TaF6
-等のハロゲン系無機酸イオン;(CH3O)HPO2
-,CH3PO3
-等のホスホン酸系イオン;(CH3O)2PO2
-,(C2H5O)2PO2
-等のリン酸系イオン;CH3COO-,CH3SO3
-,CH3CH2OSO3
-等の有機酸イオン;CF3COO-,CF3SO3
-,(CF3SO2)3C-,CF3CF2CF2COO-,CF3CF2CF2CF2COO-等のハロゲン系有機酸イオン;(CF3SO2)2N-,(CF3CF2SO2)2N-,(CF3SO2)(CF3CO)N-,(CN)2N-等のアミド系イオン;等が挙げられるが特に限定されない。
本開示において好適に用いられる具体的なイオン液体としては、代表的には、置換炭素鎖が短い(炭素数の合計が6以下)カチオンと、カルボン酸系またはホスホン酸系アニオンとの組合せを挙げることができる。より具体的には、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルスルファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルフォネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート,1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルホスフェート,1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメチルホスホネート等を挙げることができる。
引火性減殺剤は、前記の通り、前述したイオン液体に相溶することが可能であり、かつ、当該イオン液体に相溶して得られる相溶物の引火点を、当該イオン液体の引火点よりも上昇させる(引火性を低減させる)か、または、当該相溶物の引火点を無くす(引火性を消失させる)ものであればよい。また、本開示に係る液体吸湿材料で用いられるイオン液体は、前記の通り、0℃~5℃の範囲内で液体であるので、引火性減殺剤も0℃~5℃の範囲内において液体であることが好ましい。
引火性減殺剤の具体的な種類は特に限定されないが、代表的には水または水溶液を挙げることができる。言い換えれば、本開示に係る液体吸湿材料は、水をある程度吸湿した状態であれば、主成分であるイオン液体が引火性を有するものであっても、引火性を低減または消失させることが可能となる。なお、引火性減殺剤が水溶液である場合にも、その水溶液の具体的な種類は特に限定されない。その水溶液がイオン液体に対して相溶性を有し、かつ、当該イオン液体の引火性を減殺することが可能であればどのような水溶液であってもよい。また、水溶液の種類によっては、液体吸湿材料に追加的な性質を付与することが可能である。それゆえ、水溶液の溶質を適宜選択することによって、液体吸湿材料に所望の性質を付与することが可能となる。
本開示に係る液体吸湿材料においては、引火性減殺剤の含有量は特に限定されず、イオン液体が引火性を有する場合に、当該イオン液体の引火性を低減または消失できる量であればよい。代表的な含有量の下限は、液体吸湿材料が含有するイオン液体および引火性減殺剤の総量を100重量%としたときに、当該総量に対して10重量%を超えていればよく、20重量%以上であってもよいし、30重量%以上であってもよい。一方、その含有量の上限は、イオン液体および引火性減殺剤の総量に対して80重量%以下であればよく、50重量%以下であってもよいし、40重量%以下であってもよい。言い換えれば、液体吸湿材料に配合するイオン液体および引火性減殺剤の全重量を100重量部としたときには、100重量部中の引火性減殺剤の量は、少なくとも10重量部を超え、80重量部以下となるように配合されることが好ましい。
後述する実施例に示すように、引火性減殺剤の含有量(配合量)がイオン液体および引火性減殺剤の総量よりも10重量%以下であっても、イオン液体の引火点は有意に上昇するため、当該イオン液体の引火性を低減することができる。さらに、引火性減殺剤の含有量(配合量)が10重量%付近になれば、イオン液体の引火点を無くすことが可能になり、当該イオン液体の引火性を実質的に消失させることができる。したがって、イオン液体に引火性減殺剤を少量配合することでも引火性を低減することが可能であるが、好ましくは10重量%を超える量を配合することで引火性を実質的に消失させることができる。
引火性減殺剤は、液体吸湿材料に予め配合していればよい。それゆえ、本開示に係る液体吸湿材料は、イオン液体および引火性減殺剤を含有するものであればよい。ただし、引火性減殺剤が水または水溶液である場合には、液体吸湿材料の吸放湿量を調整(制御)することにより、引火性減殺剤の含有量を調節することができる。この場合、液体吸湿材料に吸湿されている水は、当該液体吸湿材料から見て「被吸収成分」であるとともに主成分であるイオン液体の「引火性減殺剤」であることになる。それゆえ、本開示に係る液体吸湿材料においては、引火性減殺剤である水または水溶液は、使用中に含有量(配合量)が調節されてもよいし、使用時に配合されてもよい。
ここで、引火性減殺剤の含有量(配合量)が多くなり過ぎると、イオン液体の種類等の諸条件にもよるが、液体吸湿材料による吸湿性能に影響が生じる可能性がある。そこで、良好な吸湿性能を得る観点では、引火性減殺剤の含有量(配合量)は前記の通り80重量%以下であることが好ましい。特に、引火性減殺剤が水または水溶液であれば、引火性減殺剤の含有量(配合量)の上限は、液体吸湿材料の飽和吸湿率を基準(100%)として90%以下にしてもよい。
液体吸湿材料を任意の温度および任意の湿度で放置したときには、当該液体吸湿材料の吸湿率は所定の値に収束して保持される。これを液体吸湿材料の飽和吸湿率と定義する。したがって、液体吸湿材料の飽和吸湿率は、任意の温度および任意の湿度で液体吸湿材料を放置した際に実現される吸湿量(水分量)の比であるということができる。例えば、液体吸湿材料が、イオン液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートにより構成されている場合に、当該液体吸湿材料の使用環境(使用雰囲気)における温度(環境温度)および相対湿度(環境湿度)が任意の値である場合に、その飽和吸湿率は、次の表1に示すような値を示す。
上記表1では、例えば、環境温度が20℃で環境相対湿度が50%のときには、液体吸湿材料の飽和吸湿率は39重量%である。そこで、このような環境温度および環境相対湿度において当該液体吸湿材料が含有する引火性減殺剤の上限は、39重量%の吸湿率の90%であるため、35.1重量%(=39重量%×0.9)以下であればよい。また、前記の通り、液体吸湿材料の吸放湿量(水の吸収量)を調整(制御)することで引火性減殺剤(水)の含有量(配合量)を調節することが可能である。それゆえ、液体吸湿材料の引火性の減殺と液体吸湿材料による吸湿性とのバランスを取る観点から、液体吸湿材料の使用時に、当該液体吸湿材料が含有する水分量を好適な範囲に調節してもよい。
なお、表1から明らかなように、液体吸湿材料(主成分であるイオン液体)は、環境温度が高温になると吸湿量が低下する。それゆえ、引火性減殺剤の好ましい上限を設定する観点では、環境温度は少なくとも使用条件に基づいて常温およびその近傍となる温度範囲を想定すればよい。通常、常温は20℃±15℃(5℃~35℃)とされているが、液体吸湿材料の使用条件を考慮すれば、低温側では0℃~5℃の温度範囲を少なくとも考慮することが好ましく、高温側では60~65℃の温度範囲を少なくとも考慮することが好ましい。それゆえ、引火性減殺剤の上限を設定する上での好ましい環境温度の範囲としては、0℃~65℃の範囲を挙げることができる。
また、引火性減殺剤の上限を設定する上での好ましい環境相対湿度の範囲についても、環境温度と同様に設定することができる。一般に「常湿」は、45%~85%の範囲内とされているが、液体吸湿材料の使用条件を考慮すれば、10%までの低湿状況と90%までの高湿状況とを考慮することが好ましい。それゆえ、引火性減殺剤の上限を設定する上での好ましい環境相対湿度の範囲としては、10%~90%の範囲を挙げることができる。
このように本開示に係る液体吸湿材料は、主成分として、少なくとも0℃~5℃の範囲内において液体であるイオン液体を含有するとともに、さらにイオン液体に相溶する引火性減殺剤が含有されている。これにより液体吸湿材料の主成分であるイオン液体が引火性を有するものであっても、引火性減殺剤を含有することで、液体吸湿材料全体として見たときに引火性を低減または実質的に無くすことが可能になる。その結果、液体吸湿材料は、良好な吸湿性を実現できるとともに、引火性を実質的に考慮する必要がなくなるため良好な取扱性も実現することができる。
本開示に係る液体吸湿材料は、前述したイオン液体および引火性減殺剤を含んでいればよいが、イオン液体および引火性減殺剤以外の成分を含んでいてもよい。したがって、本開示に係る液体吸湿材料は、イオン液体および引火性減殺剤から構成される組成物であってもよいし、イオン液体および引火性減殺剤を含有するとともに他の成分を含有する組成物であってもよい。具体的な他の成分は特に限定されないが、難燃剤、着色剤、着香剤(香料)、防かび剤、消泡剤、粘度調整剤等の公知の添加剤を挙げることができる。また、イオン液体は2種類以上を用いてもよいが、イオン液体以外の吸湿剤(乾燥剤)を混合してもよい。
これらの中でも代表的な他の成分としては、難燃剤を挙げることができる。特許文献1にも記載されているように、イオン液体は、技術常識的には、不揮発性、不燃性または難燃性を有するものであると考えられてきた。ところが、本発明者らの鋭意検討の結果、イオン液体の中には、引火性を有するものが存在することが明らかとなった。それゆえ、本開示に係る液体吸湿材料には、イオン液体の種類にもよるが難燃剤を含有することが好ましい。
難燃剤としては、イオン液体の種類にもよるが、イオン液体に溶解または分散可能なものであれば公知のものを好適に用いることができる。具体的な難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤、アンチモン系難燃剤、シリコーン化合物、ヒンダートアミン化合物、有機金属化合物、窒素含有化合物等が挙げられるが特に限定されない。これら難燃剤は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせてもよい。
より具体的な難燃剤としては、例えばハロゲン系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、TBBA-ビス(ジブロモプロピルエーテル)、デカブロモジフェニルエーテル(Deca-BDE)、トリブロモフェール、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、1,2‐ビス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)エタン、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD) 、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、ポリ(ジブロモフェノール)、ヘキサブロモベンゼン(HBB)、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)等の臭素系難燃剤;塩素化パラフィン、クロロシクロアルカン系(商品名デクロラン)、クロレンド酸類等の塩素系難燃剤;等を挙げることができる。
また、例えばリン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステル; ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート(BDP)、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート(RDP)、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート(RDX)、ビフェニルビス-ジフェニルホスフェート等の縮合リン酸エステル;トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリスクロ(β-クロロプロピール)、トリスクロロエチルホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステルまたは含むハロゲン縮合リン酸エステル;ポリリン酸塩類;赤リン類;リン酸エステルアミド;等を挙げることができる。
また、例えば無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム 、水酸化マグネシウム等の水酸化金属化合物;ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、硫化亜鉛等の亜鉛系化合物;ゼオライト、酸化チタン、シリカ、カーボン等のナノフィラー類;三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、四酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等のアンチモン化合物;モリブデン化合物;等を挙げることができる。
また、例えば窒素含有化合物としては、スルファミン酸グアニジン等のグアニジン化合物;硫酸メラミン等のメラミン化合物;等を挙げることができる。
本開示に係る液体吸湿材料においては、これら難燃剤の含有量は特に限定されず、イオン液体を主成分とする液体吸湿材料に難燃性を付与できる程度の量であればよい。一般的に、難燃剤を含有する材料においては、当該材料における難燃剤の含有量は、難燃対象となる材料の重量を基準とする難燃剤の配合量として規定される。それゆえ、本開示においても、液体吸湿材料における難燃剤の含有量を、イオン液体を基準とした配合量として規定する。
本開示に係る液体吸湿材料において、難燃剤の配合量の一例としては、例えば、液体吸湿材料が含有するイオン液体100重量部に対して1~50重量部の範囲内を挙げることができる。言い換えれば、液体吸湿材料が含有するイオン液体の重量に対して1重量%以上50重量%以下の範囲内で難燃剤を配合すればよい。
また、難燃剤の配合量の好ましい下限としては、イオン液体の重量(100重量部)に対して3重量%(3重量部)以上であってもよく、5重量%(5重量部)以上であってもよい。また、難燃剤の配合量の好ましい上限としては、イオン液体の重量(100重量部)に対して40体積%(40重量部)以下であってもよく、35重量%(35重量部)以下であってもよく、30重量%(30重量部)以下であってもよい。好ましい配合量の範囲は、難燃剤の種類によって適宜設定することができる。
また、本開示に係る液体吸湿材料においては、前記の通り、主成分であるイオン液体が、少なくとも0℃~5℃の範囲内において液体であり、かつ、含水率(吸湿率)によりその粘度が低下するイオン液体を含有するものであればよい。本開示においては、主成分であるイオン液体は、0℃~5℃の範囲内での飽和含水率が20重量%を超えていること(飽和含水率条件)が好ましく、また、周囲の相対湿度が30~95%の範囲内にある状態で、1時間経過した後に、その含水率が10重量%を超えている(周囲湿度含水率条件)ことが好ましい。
イオン液体が、これら飽和含水率条件または周囲湿度含水率条件の少なくとも一方を満たすことで、調湿システム10が加湿運転していないときに液体吸湿材料が周囲から吸湿して多くの水分を蓄積することができる。そのため、調湿システム10が加湿運転を開始したときには、蓄積した水分を一挙に放出して迅速に加湿することが可能となる。また、本開示においては、代表的な引火性減殺剤として水または水溶液を用いることができる(言い換えれば、吸湿された水は引火性減殺剤の機能を有する)ので、加湿運転していないときに多くの水分を蓄積することで、液体吸湿材料の引火性のさらなる低減または引火性の十分な消失を実現することができる。
なお、周囲湿度含水率条件は周囲の相対湿度に基づいて規定される含水率である。そこで、本開示においては、周囲湿度含水率条件は、一般的な含水率の測定方法とは異なり、次に説明する含水率の測定方法で評価する。具体的には、温度5℃、湿度50%に調整した恒温恒湿室内に、測定対象のイオン液体を液膜厚が約0.6mmになるようにシャーレに入れて静置する。このとき、イオン液体の初期の含水率は0.5重量%以下とする。その後、風速2m/秒で1時間放置したときのイオン液体の重量変化を測定する。この重量変化(重量増加)を当該イオン液体の吸湿量と判断して、重量の変化率を当該イオン液体の含水率(吸湿率)として算出する。
この含水率の測定方法では、トリエチレングリコールを標準物質として用い、測定対象のイオン液体の含水率の測定について妥当性を判断することができる(つまり、トリエチレングリコールの含水率の測定を、イオン液体の含水率の測定についてのコントロール実験として取り扱うことができる)。この測定方法によりトリエチレングリコールの含水率が9~13重量%の範囲内に入っていれば、イオン液体の含水率の測定結果は精度良いものと判断することができる。
[調湿システムの動作例]
次に、前記構成の調湿システム10の動作の一例について、図1および図2を参照して具体的に説明する。
まず、図1において網掛けの二重線ブロック矢印A1で示すように、低温で高湿の空気が吸湿部11に設けられる空気接触部20に導入される。これを低温高湿空気A1とすれば、この低温高湿空気A1は例えば外気であればよく、調湿システム10は、このような外気を導入可能な公知の構成を備えていればよい。低温高湿空気A1は、空気接触部20の空気流動経路21に流入する。本実施の形態では、空気接触部20は、図2(A)に示すように、鉛直方向に配置される吸湿材料流動経路22を備えており、この吸湿材料流動経路22は空気流動経路21に対して交差(例えば直交)して設けられている。吸湿材料流動経路22の配置方向(上下方向)を縦方向とすれば、空気流動経路21の配置方向(左右方向)は横方向ということができるので、低温高湿空気A1は、吸湿材料流動経路22に対して横方向から流入することになる。
吸湿材料流動経路22には、図1および図2(A)において点線の矢印で示すように、吸湿材料配管16のうち第二配管16bから、低含水率の液体吸湿材料が供給される。これを低含水吸湿材料c2とすれば、図2(A)に示すように、低含水吸湿材料c2は、吸湿材料流動経路22の上方から下方に向かって矢印c0に示すように流れることになる。これに対して、低温高湿空気A1は、縦方向(上下方向)に交差(直交)する横方向から流入するので、低含水吸湿材料c2の流れに対して側方からの低温高湿空気A1の流れが衝突することになる。
ここで、前述したように、吸湿材料流動経路22は、例えばハニカム構造体のような空間充填立体23そのもので構成されているか、あるいは、吸湿材料流動経路22の本体となる管状部材の内部に空間充填立体23が充填されている構成等のような「高表面積部」であればよい。このような「高表面積部」では、横方向(交差、直交する方向)からの送風により空気が流通し、縦方向(上下方向)には液体吸湿材料が流通することになる。それゆえ、吸湿材料流動経路22を流れる低含水吸湿材料c2は、高い表面積の流動経路を流れることになるので、低温高湿空気A1と効率的に接触することができる。
加えて、液体吸湿材料の主成分はイオン液体であり、このイオン液体は、本開示においては含水率によりその粘度が低下するものである。低含水吸湿材料c2は含水率が低いため、相対的に粘度が高くなり、高表面積の吸湿材料流動経路22を相対的に緩やかに流れることになる。これにより、液体吸湿材料と低温高湿空気A1との接触頻度をより一層向上することができるので、低温高湿空気A1に含まれる水分を液体吸湿材料により効率的に吸湿させることが可能になる。
その結果、低温高湿空気A1は、吸湿材料流動経路22を通過すると、網掛けなしの二重線ブロック矢印A2で示すように、低温で低湿の空気すなわち低温低湿空気A2となって、空気流動経路21から排出される。また、低含水吸湿材料c2は、吸湿材料流動経路22から流出すると、実線の矢印で示すように、含水率の高い液体吸湿材料すなわち高含水吸湿材料c1となって、第一配管16aに流入する。
その後、高含水吸湿材料c1は、第一配管16aを流通して放湿部12に到達する。放湿部12では、例えば、調湿対象である室内空気が空気接触部20に導入される。室内空気は外気に比べて相対的に高温であり湿度が低いので、図1および図2(B)において網掛けなしの太線ブロック矢印で示すように、高温低湿空気B1として空気流動経路21に流入する。
本実施の形態では、放湿部12に設けられる空気接触部20は、吸湿部11と同様に、図2(B)に示すように、鉛直方向に配置される吸湿材料流動経路22を備えており、この吸湿材料流動経路22は空気流動経路21に対して交差(例えば直交)して設けられている。それゆえ、高温低湿空気B1は、縦方向に配置する吸湿材料流動経路22に対して横方向から流入することになる。
吸湿材料流動経路22には、図1および図2(B)において実線の矢印で示すように、第一配管16aから、高含水吸湿材料c1が供給される。吸湿材料流動経路22は縦方向に配置されているので、図2(B)に示すように、高含水吸湿材料c1は、吸湿材料流動経路22の上方から下方に向かって矢印c0に示すように流れることになる。このとき、吸湿材料流動経路22の上流側には吸湿材料加熱部24が設けられているので、吸湿材料流動経路22に流入する前の高含水吸湿材料c1は加熱される。
高温低湿空気B1は、吸湿材料流動経路22に対して横方向(交差または直交方向)から流入するので、高含水吸湿材料c1の流れに対して側方からの高温低湿空気B1の流れが衝突する。吸湿材料流動経路22は、高表面積な構造体である空間充填立体23により構成されているとともに、液体吸湿材料の主成分は、高含水率で低粘度となるイオン液体である。それゆえ、高含水吸湿材料c1は、円滑に吸湿材料流動経路22を流れ、効率的に高温低湿空気B1に接触することができる。
ここで、高含水吸湿材料c1は、低含水吸湿材料c2に比べて低粘度であるため、吸湿材料流動経路22を流通する時間が短くなる。単純に考えれば、流通時間が短ければ液体吸湿材料と空気との接触頻度が低下し、効率的な放湿ができない可能性が出てくる。しかしながら、そもそも放湿部12に導入される高温低湿空気B1は、相対的に高温であるため低温の空気に比べて飽和水蒸気圧が高くなっているとともに湿度が低い状態である。それゆえ、吸湿部11に比べて相対的に空気への接触時間が短くても、液体吸湿材料から空気に対して良好に放湿することが可能となる。
しかも、本実施の形態では、吸湿材料流動経路22に流入する高含水吸湿材料c1を吸湿材料加熱部24により加熱している。これにより、液体吸湿材料に含まれる水分は蒸発し易くなっているので、飽和水蒸気圧が高く低湿である高温低湿空気B1に対して、さらに一層良好に放湿することが可能になる。言い換えれば、吸湿部11では、空気が低温であるので、効率的な吸湿を目指す上では液体吸湿材料が高粘度であることが特に望ましく、放湿部12では、空気が高温であるので、液体吸湿材料が低粘度であっても効率的な放湿が可能になる。
このように、吸湿材料流動経路22を高含水吸湿材料c1が流れて高温低湿空気B1に効率的に接触することにより、高含水吸湿材料c1から高温低湿空気B1に対して効率的に水分が放散される。その結果、高温低湿空気B1は、吸湿材料流動経路22を通過すると、網掛けの太線ブロック矢印B2で示すように、高温で高湿の空気すなわち高温高湿空気B2となって、空気流動経路21から排出される。また、高含水吸湿材料c1は、吸湿材料流動経路22から流出すると、点線の矢印で示すように、低含水吸湿材料c2となって、第二配管16bに流入する。その後、低含水吸湿材料c2は、図1に示すように、吸湿部11に再び導入されるので、前述した吸湿および放湿が繰り返される。
高温高湿空気B2は、図1に示すように、加湿用配管17を介して加湿部13に導入される。加湿部13では、高温高湿空気B2に含まれる水分を供給することにより室内空気を加湿する。ここで、前述したように、加湿部13が湿度を測定可能であれば、室内の湿度に応じて加湿することが可能である。このように、放湿部12で排出される高温高湿空気B2をそのまま室内に循環させるのではなく、加湿部13により加湿を制御することで、室内空気を良好に加湿することができる。
前記の通り、放湿部12では、高含水吸湿材料c1は、高温低湿空気B1に接触して放湿することにより、低含水吸湿材料c2となって第二配管16bに流出する。放湿部12は第二配管16bの一部を介して貯留部15に接続されているので、点線の矢印で示すように、低含水吸湿材料c2は貯留部15に流入し、当該貯留部15に貯留される。
貯留部15に貯留される液体吸湿材料(低含水吸湿材料c2)は、貯留状態が長時間継続するわけではなく、調湿システム10が動作している間、循環供給部14により吸湿材料配管16内を循環して吸湿部11および放湿部12に供給される。それゆえ、貯留部15では、流入した液体吸湿材料が一時的に貯留されるものの、循環供給部14により第二配管16bを介して吸湿部11に対して随時供給される(点線の矢印参照)。
また、本開示に係る調湿システム10においては、吸湿部11と放湿部12とが別々に設けられ、液体吸湿材料がこれら吸湿部11および放湿部12を循環しながら吸放湿を繰り返す構成となっている。これにより、従来の固体吸湿材料(ゼオライト等)を用いる構成に比較して、消費エネルギーを低減することができる。
具体的には、従来の固体吸湿材料を用いる構成では、固体吸湿材料そのものと、この固体吸湿材料を担持させる基体との双方を昇降温させる必要がある。これに対して、本開示のように、液体吸湿材料を循環させる構成であれば、実質的に液体吸湿材料のみを昇降温させるだけでよい。また、吸湿部11および放湿部12を空間的に区画することにより、吸湿部11を常に相対的に低温に保持することができ、放湿部12を常に相対的に高温に保持することができる。
このように、本開示によれば、液体吸湿材料として、低温で液体であるイオン液体を少なくとも用いるとともに、吸湿部11または放湿部12には、空気流動経路21に空気を流しながら液体吸湿材料を供給する空気接触部20が設けられている。これにより、低温環境でも良好に空気を除湿したり加湿したりすることができるとともに、流動する空気に液体吸湿材料を供給することで、空気と液体吸湿材料とを効率的に接触させ、効率的な空気の除湿または加湿を実現することができる。
特に、液体吸湿材料が含有するイオン液体は、含水率により粘度が変化するものである。それゆえ、吸湿部11では粘度の高い液体吸湿材料を供給することにより、吸湿対象である空気と液体吸湿材料との接触時間を良好に確保することができる。また、放湿部12では、含水率が高く粘度が低い状態であっても空気が相対的に高温であれば、液体吸湿材料に含まれる水分を十分空気に放散することが可能となる。
[変形例等]
本実施の形態では、前述した通り、図1に示すように、吸湿部11および放湿部12のいずれにも空気接触部20が設けられているが、本開示はこれに限定されず、吸湿部11または放湿部12のいずれか一方が空気接触部20を備える構成であってもよい。例えば、図3に示すように、吸湿部11のみが空気接触部20を備えており、放湿部12は空気接触部20を備えていない構成であってもよい。
特に、吸湿部11では、低温の空気に対して液体吸湿材料を接触させることになるので、吸湿部11は、液体吸湿材料が高粘度であるとともに高表面積部(吸湿材料流動経路22)を含む空気接触部20を備えていることが好ましい。一方、放湿部12では、空気が相対的に高温であり、液体吸湿材料も加熱することにより水分を放散させやすいので、必ずしも空気接触部20を備えていなくてもよい。放湿部12は、高含水吸湿材料c1から水分を放散させて加湿用の水分を回収できる構成であればよい。
また、本実施の形態では、放湿部12の空気流動経路21から排出される高温高湿空気B2は、加湿用配管17を介して加湿部13に導入されるが、本開示はこれに限定されず、例えば、図4に示すように、放湿部12および加湿部13の間に水凝縮部18を備える構成であってもよい。
水凝縮部18の具体的な構成は特に限定されず、放湿部12から放湿された水分を凝縮するものであれば公知の構成を好適に用いることができる。例えば、水凝縮部18は、空気流動経路21から加湿用配管17を介して流入する高温高湿空気B2を冷却(あるいは降圧)することにより、高温高湿空気B2に含まれる水蒸気を凝縮させて液体の水分(凝縮水)として一時的に貯留する。水凝縮部18に貯留された凝縮水は、図4において実線の矢印dに示すように、加湿用配管17を介して加湿部13に必要に応じて供給され、加湿部13は、供給された凝縮水を利用して室内空気を加湿する。
このように、調湿システム10が水凝縮部18を備えることにより、高温高湿空気B2に含まれる水分を気体(水蒸気)ではなく液体に相転移させるので、加湿部13では液体の水分を利用して空気を加湿することが可能となる。また、水凝縮部18が凝縮した水分を貯留可能とする構成であれば、加湿部13において高温高湿空気B2に含まれる水分を全て加湿に利用しない場合には、余剰の水分を貯留しておくことができる。しかも、水凝縮部18で水分を貯留しておけば、吸湿部11および放湿部12により十分に水分を回収できない場合でも、加湿部13による加湿を実行することができる。
なお、吸湿部11により液体吸湿材料に吸湿させた水分は、放湿部12を介して水凝縮部18で貯留してもよいが、例えば、第一配管16aに貯留部15を設けることにより、高含水吸湿材料c1に含有させた状態で貯留することもできる。
また、本実施の形態では、図1、図3または図4に示すように、吸湿部11および放湿部12がそれぞれ独立した構成となっているが、本開示はこれに限定されず、例えば、図5に示すように、吸湿部11および放湿部12が一体化された吸放湿部19を備える構成であってもよい。
吸放湿部19の具体的な構成は特に限定されず、吸湿部11用の空気接触部20と放湿部12用の空気接触部20とを2つ備える構成であってもよい(図1参照)し、吸湿部11用の空気接触部20のみを備え、放湿部12用としては、空気接触部20とは異なる放湿機構(放湿手段)を備える構成であってもよい(図3参照)。あるいは、この逆の構成で、吸放湿部19には、放湿部12用の空気接触部20を備え、吸湿部11用としては、空気接触部20とは異なる吸湿機構(吸湿手段)を備える構成であってもよい。
あるいは、吸放湿部19は、同一の空気接触部20を、ある時間帯では吸湿に利用し他の時間帯では放湿に利用する構成であってもよいし、液体吸湿材料を加熱する機構(吸湿材料加熱部24、加熱媒体添加部あるいは他の加熱手段)が移動することで吸放湿を繰り返す構成であってもよい。また、図4に示すように、吸放湿部19と加湿部13との間に介在する水凝縮部18を備える構成であってもよい。
本発明について、実施例および参考例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
(参考例)
参考例の液体吸湿材料として、イオン液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(便宜上「(emin)(AcO)」と表記する。)のみで構成されており、引火性減殺剤である水を含有しないもの(吸湿率0重量%)を準備した。この参考例の液体吸湿材料について、危険物の規制に関する政令(日本国政令)で定められた引火点測定試験に基づいて引火点を測定した。
その結果、参考例の液体吸湿材料の引火点は164℃であった。それゆえ、この参考例の液体吸湿材料は、日本国消防法の別表第一における第四類第三石油類の引火性液体に分類される。
(実施例1)
実施例1の液体吸湿材料として、イオン液体である(emin)(AcO)90重量%に対して引火性減殺剤である水を10重量%配合したもの(吸湿率10重量%)を調製した。この実施例1の液体吸湿材料について参考例と同様にして引火点を測定した。
その結果、実施例1の液体吸湿材料の引火点は197℃であった。それゆえ、この実施例1の液体吸湿材料は、参考例の液体吸湿材料と同様に、日本国消防法の別表第一における第四類第三石油類の引火性液体に分類されるものの、その引火点は、参考例の液体吸湿材料よりも上昇し、引火性が低減していた。
(実施例2)
実施例2の液体吸湿材料として、イオン液体である(emin)(AcO)80重量%に対して引火性減殺剤である水を20重量%配合したもの(吸湿率20重量%)を調製した。この実施例2の液体吸湿材料について参考例と同様にして引火点を測定した。
その結果、実施例2の液体吸湿材料は170℃で沸騰し、引火点を測定することができなかった。それゆえ、この実施例2の液体吸湿材料は、日本国消防法の別表第一における引火性液体に分類されるものではなかった。
(実施例3)
実施例3の液体吸湿材料として、イオン液体である(emin)(AcO)70重量%に対して引火性減殺剤である水を30重量%配合したもの(吸湿率30重量%)を調製した。この実施例2の液体吸湿材料について参考例と同様にして引火点を測定した。
その結果、実施例3の液体吸湿材料は140℃で沸騰し、引火点を測定することができなかった。それゆえ、この実施例3の液体吸湿材料は、日本国消防法の別表第一における引火性液体に分類されるものではなかった。
(実施例および参考例の比較)
前記の通り、参考例の液体吸湿材料すなわち100%(emin)(AcO)は、引火点が164℃の引火性液体であったが、実施例1の液体吸湿材料のように引火性減殺剤として水を配合することで、引火点を上昇させ引火性を低減できることが明らかとなった。また、実施例の液体吸湿材料および実施例2の液体吸湿材料では、引火性減殺剤として水をより多く配合することで、引火点が無くなり引火性を消失できることが明らかとなった。
さらに、図6に示すように、縦軸を引火性または沸点(単位:℃)とし、横軸を吸湿率(単位:重量%)とするグラフに、参考例および実施例1~3の結果をプロットしたところ、図中点線グラフで示すように、引火性減殺剤の含有量が約10重量%に至るまでは液体吸湿材料の引火点が上昇し、図中実線グラフで示すように、約10重量%を超えると引火点が無くなり沸点も低下することが明らかとなった。
この結果から、液体吸湿材料として、主成分であるイオン液体に対して引火性減殺剤を配合することで引火性を低減できること、並びに、引火性減殺剤の配合量が10重量%を超えると引火点そのものが無くなり、引火性を消失できることがわかる。
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。