JP7261529B1 - ウイルス増殖阻害作用を有するトリアジン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
3CLプロテアーゼを標的とした、COVID-19治療薬としては、2021年6月、Pfizer社によるPF-00835231のプロドラッグであるLufotrelvir(PF-07304814)のPhase1b試験の完了がClinicalTrials.govに掲載された(NCT04535167)。また、2021年3月、Pfizer社は新型コロナウイルス感染症に対する治療薬PF-07321332のPhase1試験を開始すると発表した。PF-00835231、LufotrelvirおよびPF-07321332の構造式は以下に示す通りで、本発明に係る製造方法により製造された化合物とは化学構造が異なる(非特許文献5、12および13、ならびに特許文献6および7)。
PF-00835231:
Lufotrelvir(PF-07304814):
PF-07321332:
さらに2021年7月、ハイリスク因子を持つCOVID-19患者を対象とした、PF-07321332およびリトナビル併用のPhase2/3試験が開始されることがClinicalTrials.govに掲載された(NCT04960202)。リトナビルは、CYP3Aによる薬剤の代謝を阻害することにより、薬物動態学的増強因子として働く。また、2021年11月、Pfizer社のホームページにおいて、PAXLOVID(TM)(PF-07321332;リトナビル)は、成人のハイリスク患者において、プラセボと比較して入院または死亡のリスクを89%減少させたことが報告された(非特許文献14)。さらに、2021年12月、PAXLOVID(TM)は米国で緊急使用許可が承認され、2022年2月10日、パキロビッド(登録商標)パックが日本で特例承認された。
Ρ2X3および/またはΡ2X2/3受容体拮抗作用を有するトリアジン誘導体およびウラシル誘導体が特許文献1~4および8~12に開示されているが、いずれの文献においても、3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果については記載も示唆もされていない。また、本発明に係る製造方法および合成中間体は記載も示唆もされていない。
抗腫瘍効果を有するトリアジン誘導体が非特許文献9~11に開示されているが、いずれの文献においても、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果については記載されておらず、また、本発明に関連する化合物、製造方法および合成中間体は記載も示唆もされていない。
ガラニン受容体調節作用を有するトリアジン誘導体が特許文献5に開示されているが、いずれの文献においても、3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果については記載も示唆もされていない。また、本発明に係る製造方法および合成中間体は記載も示唆もされていない。
(1)式(I):
(式中、R1は置換もしくは非置換のC1-C4アルキル、R2はそれぞれ独立して、ハロゲン、シアノまたはメチル、nは1~5の整数である。)で示される化合物またはその塩と、式(II):
(式中、R3はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-C4アルキル、mは0~5の整数である)で示される化合物またはその塩を、酸存在下で反応させることを特徴とする、式(III):
で示される化合物またはその塩の製造方法。
(2)酸が、トリフルオロ酢酸である、上記(1)記載の製造方法。
(3)式(III)で示される化合物が、式(III-1):
である、上記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)式(IV):
(式中、R4は置換もしくは非置換の芳香族複素環式基、または置換もしくは非置換の芳香族炭素環式基であり、pは0または1であり、その他の記号は上記(1)と同意義である。)で示される化合物またはその塩と、式(V):
(式中、R5はそれぞれ独立して、ハロゲン、または置換もしくは非置換のアルキルであり、qは0~5の整数である。)で示される化合物またはその塩を、酸存在下で反応させることを特徴とする、式(VI):
(式中の記号は上記と同意義である。)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の製造方法。
(5)酸が酢酸である、上記(4)記載の製造方法。
(6)式(VI)で示される化合物が、
式(VII):
である、上記(4)または(5)記載の製造方法。
(7)上記(1)~(3)のいずれかの製造方法より、式(III-1):
で示される化合物またはその塩を得る工程を含む、式(VII):
で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の製造方法。
(8)式(VII):
で示される化合物またはその塩を、フマル酸、アセトンおよび水存在下で結晶化することを特徴とする、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の製造方法。
(9)上記(1)~(7)のいずれかに記載の製造方法を使用することにより得られた式(VII):
で示される化合物またはその塩を、結晶化させることを特徴とする、上記(8)記載の製造方法。
(10)結晶化温度が40~60℃であり、結晶化時間が120分以上である、上記(8)または(9)記載の製造方法。
(11)式(VIII):
で示される化合物、またはその塩。
(12)式(IX):
で示される化合物、またはその塩。
(13)式(X):
で示される化合物、またはその塩。
(14)式(XI):
で示される化合物、またはその塩。
(15)式(VII):
で示される化合物のトルエン和物。
(16)実質的に、式(VII):
で示される化合物のフリー体が含まれない、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形。
(17)以下の式:
で示される化合物のメシル酸塩。
(18)以下の式:
で示される化合物のメシル酸塩。
(19)以下の式:
で示される化合物、またはその塩。
(20)以下の式:
で示される化合物、またはその塩。
(21)以下の式:
で示される化合物の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン塩である、上記項目(20)記載の塩。
また、本発明に係る製造方法により製造された化合物は、医薬原体として有用である。
さらに、本発明に係る製造方法により製造された式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶を含有する医薬組成物は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤として非常に有用である。本発明に係る製造方法は、本発明に係る化合物を収率よく製造することが出来る方法である。
「からなる」という用語は、構成要件のみを有することを意味する。
「含む」という用語は、構成要件に限定されず、記載されていない要素を排除しないことを意味する。
以下、本発明について実施形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。
また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
「アルキル」の好ましい態様として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルが挙げられる。さらに好ましい態様として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチルが挙げられる。
「C1-C4アルキル」とは、炭素数1~4の直鎖又は分枝状の炭化水素基を包含する。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等が挙げられる。
「芳香族炭素環式基」の好ましい態様として、フェニルが挙げられる。
2環以上の芳香族複素環式基は、単環または2環以上の芳香族複素環式基に、上記「芳香族炭素環式基」における環が縮合したものも包含し、該結合手はいずれの環に有していても良い。
単環の芳香族複素環式基としては、5~8員が好ましく、より好ましくは5員または6員である。5員芳香族複素環式基としては、例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル等が挙げられる。6員芳香族複素環式基としては、例えば、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル等が挙げられる。
2環の芳香族複素環式基としては、8~10員が好ましく、より好ましくは9員または10員である。例えば、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プリニル、プテリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジル、トリアゾロピリジル、イミダゾチアゾリル、ピラジノピリダジニル、オキサゾロピリジル、チアゾロピリジル等が挙げられる。9員芳香族複素環式基としては、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、プリニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾフラニル、イミダゾピリジル、トリアゾロピリジル、オキサゾロピリジル、チアゾロピリジル等が挙げられる。10員芳香族複素環式基としては、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プテリジニル、ピラジノピリダジニル等が挙げられる。
3環以上の芳香族複素環式基としては、13~15員が好ましい。例えば、カルバゾリル、アクリジニル、キサンテニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、ジベンゾフリル等が挙げられる。
「芳香族複素環式基」の好ましい態様として、トリアゾリルが挙げられる。
置換基群A:ハロゲン、シアノおよびニトロ。
「置換C1-C4アルキル」の置換基としては、次の置換基群Bが挙げられる。任意の位置の炭素原子が次の置換基群Bから選択される1以上の基と結合していてもよい。
置換基群B:ハロゲン、シアノおよびニトロ。
置換基群C:ハロゲン、シアノ、ニトロおよびアルキル。
例えば、式(VII)で示される化合物は、以下のような互変異性体を包含する。
で示される化合物のフリー体が含まれない、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形とは、粉末X線回折測定等の測定機器で、式(VII)で示される化合物のフリー体由来のピークが検出されない(検出限界以下である)、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形を意味する。
また、本発明に係る結晶は重水素変換体であってもよい。本発明に係る結晶は同位元素(例、3H,14C,35S,125I等)で標識されていてもよい。
式(VII)で示される化合物の塩は、例えば、式(VII)で示される化合物とカウンター分子又はカウンターイオンからなり、任意の数のカウンター分子又はカウンターイオンを含んでいても良い。式(VII)で示される化合物の塩は、化合物とカウンター分子又はカウンター原子との間でプロトン移動することにより、イオン結合を介するものをいう。
さらに、「結晶」には、組成が同一でありながら結晶中の配列が異なる「結晶多形」が存在することがあり、それらを含めて「結晶形態」という。
加えて、式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物は、これらの塩又はこれらの製薬上許容される溶媒和物に変換してもよい。本発明に係る結晶は、これらの塩、水和物、溶媒和物、結晶多形のいずれであってもよく、二つ以上の混合物であっても、発明の範囲内に包含されることが意図される。
結晶形態および結晶化度は、例えば、粉末X線回折測定、ラマン分光法、赤外吸収スペクトル測定法、水分吸脱着測定、示差走査熱量測定、溶解特性を含めた多くの技術によって測定することができる。
溶媒分子としては、例えば、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2‐ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2‐ジメトキシエタン、N,N‐ジメチルアセトアミド、N,N‐ジメチルホルムアミド、1,4‐ジオキサン、2‐エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2‐メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N‐メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2‐トリクロロエテン、キシレン、酢酸、アニソール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、酢酸n‐ブチル、t‐ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3‐メチル‐1‐ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2‐メチル‐1‐プロパノール、ペンタン、1‐ペンタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸、好ましくは、酢酸、アニソール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、酢酸n‐ブチル、t‐ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3‐メチル‐1‐ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2‐メチル‐1‐プロパノール、ペンタン、1‐ペンタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸、より好ましくは、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などが挙げられる。
また、式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物、またはその塩、共結晶および複合体は、大気中に放置することにより、水分を吸収し、吸着水が付着する場合や、水和物を形成する場合がある。
粉末X線回折(XRPD)は、固体の結晶形態及び結晶性を測定するための最も感度の良い分析法の1つである。X線が結晶に照射されると、結晶格子面で反射し、互いに干渉しあい、構造の周期に対応した秩序だった回折線を示す。一方、非晶質固体については、通常、その構造の中に秩序だった繰返し周期をもたないため、回折現象は起こらず、特徴のないブロードなXRPDパターン(ハローパターンとも呼ばれる)を示す。
本明細書中で用いる特徴的な回折ピークは、観測された回折パターンから選択されるピークである。特徴的な回折ピークは、好ましくは回折パターンにおける約10本、より好ましくは約5本、さらに好ましくは約3本から選択される。
複数の結晶を区別する上では、ピークの強度よりも、当該結晶で確認され、他の結晶では確認されないピークが、その結晶を特定する上で好ましい特徴的なピークとなる。そういった特徴的なピークであれば、一つまたは二つのピークでも、当該結晶を特徴付けることができる。測定して得られたチャートを比較し、これらの特徴的なピークが一致すれば、粉末X線回折スペクトルが実質的に一致するといえる。
結晶を特定する方法の一つで、当該結晶における結晶学的パラメーター、さらに、原子座標(各原子の空間的な位置関係を示す値)および3次元構造モデルを得ることができる。桜井敏雄著「X線構造解析の手引き」裳華房発行(1983年)、Stout & Jensen著 X-Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968)などを参照。本発明に係る複合体、塩、光学異性体、互変異性体、幾何異性体の結晶の構造を同定する際には、単結晶構造解析が有用である。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、ヒトに感染するコロナウイルスが挙げられる。ヒトに感染するコロナウイルスとしては、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2が挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、アルファコロナウイルスおよび/またはベータコロナウイルス、より好ましくはベータコロナウイルスが挙げられる。
一つの態様として、アルファコロナウイルスとしては、HCoV-229EおよびHCoV-NL63が挙げられる。特に好ましくは、HCoV-229Eが挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2が挙げられる。好ましくはHCoV-OC43またはSARS-CoV-2、特に好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)、ベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)、およびベータコロナウイルスC系統(β-coronavirus lineage C)が挙げられる。より好ましくは、ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)、およびベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)、特に好ましくはベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)が挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、サルベコウイルス亜属が挙げられる。
ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)としては、例えばHCoV-HKU1およびHCoV-OC43、好ましくは、HCoV-OC43が挙げられる。ベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)としては、例えばSARS-CoVおよびSARS-CoV-2、好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。ベータコロナウイルスC系統(β-coronavirus lineage C)としては、好ましくはMERS-CoVが挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、HCoV-229E、HCoV-OC43、および/またはSARS-CoV-2、特に好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。
コロナウイルス感染症としては、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2による感染症が挙げられる。好ましくは、HCoV-229E、HCoV-OC43、および/またはSARS-CoV-2による感染症、特に好ましくは、SARS-CoV-2による感染症が挙げられる。
コロナウイルス感染症としては、特に好ましくは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が挙げられる。
工程1 式(III)で示される化合物の製造方法
式中の記号は上記と同意義である。
本工程は、式(I)で示される化合物と式(II)で示される化合物を酸存在下で反応させることを特徴とする、式(III)で示される化合物の製造方法である。
式(I)で示される化合物に対して、式(II)で示される化合物は、通常、1.0~5.0当量、例えば、1.0~3.0当量用いることができる。
溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されず、酸を溶媒として利用してもよい。酸、トルエン、塩化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられ、単独または混合して用いることができる。好ましくは、酸が挙げられる。
酸としては、プロトン酸、ルイス酸が挙げられ、好ましくは、トリフルオロ酢酸が挙げられる。
式(I)で示される化合物に対して、酸の使用量は通常、1.0当量~大過剰、例えば、5.0当量~大過剰用いることができる。
反応温度は、特に制限されないが通常、約0℃~約50℃、好ましくは、室温~40℃で行うことができる。
反応時間は、特に制限されないが通常、0.1時間~12時間、好ましくは、0.1~5時間である。
式中の記号は上記と同意義である。
本工程は、式(IV)で示される化合物と式(V)で示される化合物を酸存在下で反応させることを特徴とする、式(VI)で示される化合物の製造方法である。
式(IV)で示される化合物に対して、式(V)で示される化合物は、通常、1.0~5.0当量、例えば、1.0~1.5当量用いることができる。
溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されず、酸を溶媒として利用してもよい。トルエン、tブタノール、tアミルアルコール等が挙げられ、単独または混合して用いることができる。好ましくは、トルエン挙げられる。
酸としては、酢酸、2,2―ジメチルブタン酸等が挙げられる。好ましくは、酢酸が挙げられる。
式(IV)で示される化合物に対して、酸の使用量は通常、1.0当量~10当量、例えば、3.0当量~10当量用いることができる。
反応温度は、特に制限されないが通常、室温~約150℃またはマイクロウェーブ照射下、好ましくは、50~150℃またはマイクロウェーブ照射下で行うことができる。
反応時間は、特に制限されないが通常、0.1時間~12時間、好ましくは、3~10時間である。
本工程は、式(VII)で示される化合物をフマル酸、アセトンおよび水存在下で結晶化することを特徴とする、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の製造方法である。
式(VII)で示される化合物に対して、フマル酸の使用量は通常、1.0当量~3.0、例えば、1.0当量~1.5当量用いることができる。
結晶化温度は、特に制限されないが通常、40~80℃、好ましくは、40~60℃で行うことができる。
結晶化時間は、特に制限されないが通常、1時間以上、好ましくは、2時間以上、さらに好ましくは2~12時間である。
アセトンおよび水存在下であればよく、好ましくはアセトンおよび水の割合としては、85:15~50:50で行うことができる。
さらに本発明に係る製造方法により製造された化合物は、医薬としての有用性を備えており、好ましくは、下記のいずれか、または複数の優れた特徴を有している。
a)CYP酵素(例えば、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4等)に対する阻害作用が弱い。
b)高いバイオアベイラビリティー、適度なクリアランス等良好な薬物動態を示す。
c)代謝安定性が高い。
d)CYP酵素(例えば、CYP3A4)に対し、本明細書に記載する測定条件の濃度範囲内で不可逆的阻害作用を示さない。
e)変異原性を有さない。
f)心血管系のリスクが低い。
g)高い溶解性を示す。
h)タンパク質非結合率(fu値)が高い。
i)高いコロナウイルス3CLプロテアーゼ選択性を有している。
j)高いコロナウイルス増殖阻害活性を有している。例えば、ヒト血清(HS)またはヒト血清アルブミン(HSA)添加下において、高いコロナウイルス増殖阻害活性を有している。
コロナウイルス増殖阻害剤としては、例えば後述のCPE抑制効果確認試験(SARS-CoV-2)において、例えばEC50が10μM以下、好ましくは1μM以下、より好ましくは100nM以下である態様が挙げられる。
また、本発明に係る製造方法により製造された化合物の塩・結晶・複合体・共結晶は、医薬としての有用性を備えており、好ましくは、下記のいずれか、または複数の優れた特徴を有している。
bb)高いバイオアベイラビリティー、適度なクリアランス、高いAUC、高い最高血中濃度等、良好な薬物動態を示す。
gg)高い溶解性、高い化学安定性、低い吸湿性を示す。
BINAP:2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル
Boc:tert-ブトキシカルボニル
CPME:シクロペンチルメチルエーテル
CbzCl:クロロぎ酸ベンジル
DME:ジメチルエーテル
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
DTT:ジチオトレイトール
EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EDT:1,2-エタンジチオール
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
FBS:ウシ胎児血清
HOBT:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
LHMDS:リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
MEK:メチルエチルケトン
MEM:イーグル最小必須培地
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
TFA:トリフルオロ酢酸
TMSCl:クロロトリメチルシラン
mM:mmol/L
μM:μmol/L
nM:nmol/L
各実施例および参考例で得られたNMR分析は400MHzで行い、DMSO-d6、CDCl3を用いて測定した。また、NMRデータを示す場合は、測定した全てのピークを記載していない場合が存在する。
明細書中に「RT」または「保持時間」とあるのは、LC/MS:液体クロマトグラフィー/質量分析または液体クロマトグラフィーでのリテンションタイムを表し、以下の条件で測定した。
なお、明細書中、MS(m/z)との記載は、質量分析で観測された値を示す。
(測定条件1)
カラム:ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 (1.7μm i.d.2.1x50mm) (Waters)
流速:0.8mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:3.5分間で5%-100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、0.5分間、100%溶媒[B]を維持した。
(測定条件2)
カラム:ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 (1.7μm i.d.2.1x50mm) (Waters)
流速:0.8mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は10mM炭酸アンモニウム含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:3.5分間で5%-100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、0.5分間、100%溶媒[B]を維持した。
(測定条件4)
カラム:Xselect CSH C18 (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:17分間で5%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、95%溶媒[B]を維持した。
流量:1.0mL/分
注入量:5μL
(測定条件5)
カラム:Xselect CSH C18 (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:17分間で5%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、95%溶媒[B]を維持した。
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件7)
カラム:Xselect CSH Fluoro-Phenyl (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:255nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:6分間、20%溶媒[B]を維持し,21分間で20%-42%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、4分間で42%-50%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い,最後に3分間で50%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った。
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件8)
カラム:Xselect CSH Fluoro-Phenyl (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:255nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:2分間、20%溶媒[B]を維持し,6分間で20%-37%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、10分間で37%-50%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、2分間で50%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った。
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件9)
カラム:YMC Jsphere ODS-H80(4μm i.d.4.6x250mm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:250nm
移動相:[A]は0.2%トリフルオロ酢酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用メタノール
グラジエント:6分間で10%-70%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、70%溶媒[B]を維持,その後,3分間で70%-90%のリニアグラジエント,その後,5分間,90%溶媒[B]を維持,その後,1分間で90%-95%のリニアグラジエント,その後5分間,95%溶媒[B]を維持
流量:1.0mL/分
注入量:5μL
(測定条件10)
カラム:Xselect CSH C18(3.5μm i.d.4.6x150mm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:17分間で5%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、95%溶媒[B]を維持
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件11)
カラム:XBridge C18(3.5μm i.d.4.6x150mm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:210nm
移動相:[A]は10mMアンモニア含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用メタノール
グラジエント:5分間で5%溶媒[B]を維持し、10分間で5%-38%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、5分間で38%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った。
流量:0.8mL/分
注入量:10μL
日本薬局方の一般試験法に記載された粉末X線回折測定法に従い、各実施例で得られた結晶の粉末X線回折測定を行った。測定条件を以下に示す。
(装置)
リガク社製MiniFlex600
(操作方法)
検出器:高速一次元検出器(D/TecUltra2)
光源の種類:Cu管球
使用波長:CuKα線
管電流:15mA
管電圧:40Kv
試料プレート:無反射試料板
単結晶構造解析の測定条件および解析方法を以下に示す。
(装置)
リガク社製 XtaLAB P200 MM007
(測定条件)
測定温度:25℃
使用波長:CuKα線(λ=1.5418Å)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
(データ処理)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
データはローレンツ及び偏光補正、吸収補正を行った。
(結晶構造解析)
直接法プログラムShelXT(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて位相決定を行い、精密化はShelXL(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて、full-matrix最小二乗法を実施した。非水素原子の温度因子はすべて異方性で精密化を行った。水素原子はShelXLのデフォルトパラメータを用いて計算により導入し、riding atomとして取り扱った。全ての水素原子は、等方性パラメーターで精密化を行った。
図1の作図にはPLATON(Spek,1991)/ORTEP(Johnson,1976)を使用した。
化合物1(35.0kg、238.8mol、塩酸塩)、N,N-ジメチルアセトアミド(273L)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(87.2kg、573.1mol)および化合物2(26.0kg、262.7mol)を混合し、25℃で10分間攪拌した。反応溶液にN,N'-カルボニルジイミダゾール(50.3kg、310.4mol)、N,N-ジメチルアセトアミド(7L)を混合し、50℃で90分間攪拌した。反応溶液にメタノール(18.4kg、573.1mol)を加え、25℃に冷却し、10%硫酸でpHを2.5に調整した。スラリーを5℃に冷却し、固体をろ取し、20%メタノール水で洗浄後、乾燥することで化合物3(38.12kg、162.0mol、収率:67.9%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=8.9min、HPLC測定条件4
化合物3(34.5kg、146.7mol)、アセトニトリル(345L)、ジイソプロピルエチルアミン(26.5kg、205.4mol)および化合物4(39.6kg、176.0mol)を混合し、60℃で300分間攪拌した。反応溶液を25℃に冷却し、水(172.5L)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、66%アセトニトリル水で洗浄後、乾燥することで化合物5(46.10kg、121.5mol、収率:82.9%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=14.7min、HPLC測定条件4
化合物5(29.0kg、76.4mol)、トリフルオロ酢酸(72.5L)、化合物6(16.5kg、152.9mol)を混合し、35℃で180分間攪拌した。反応溶液を冷却し、酢酸エチル(348L)を加え、38%リン酸三カリウム水溶液、2.3%食塩水、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を203Lまで濃縮し、ヘプタン(261L)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、酢酸エチルとヘプタンの混合溶媒で洗浄後、乾燥することで化合物7(23.60kg、65.0mol、収率:85.0%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=12.5min、HPLC測定条件5
化合物7(23.3kg、64.1mol)、化合物8(14.0kg、83.4mol、塩酸塩)、ヨウ化カリウム(6.4kg、38.5mol)、炭酸セシウム(31.3kg、96.2mol)およびN,N-ジメチルアセトアミド(139.8L)を混合し、40℃で360分間攪拌した。反応溶液を25℃に冷却し、酢酸(34.6kg、577.2mol)を加えた。不溶物をろ別し、ろ液にアセトニトリル(93.2L)、水(326.2L)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、20%アセトニトリル水溶液で洗浄後、乾燥することで化合物9(20.35kg、44.4mol、収率:69.2%)を得た。
HPLC(UV=255nm):RT=25.1min、HPLC測定条件7
化合物9(39.0kg、80.7mol)、化合物10(16.2kg、84.8mol)、酢酸(30.7kg、484.3mol)およびトルエン(234L)を混合し、100℃で360分間攪拌した。トルエン(390L)を加え、得られたスラリーを25℃に冷却した。固体をろ取し、アセトンで洗浄し、式(VII)で示される化合物の未乾結晶を得た。
得られた式(VII)で示される化合物の半量を未乾結晶にアセトン(613.5L)と水(109.2L)を加え、50℃で溶解した。得られた溶解液を活性炭処理し、処理液にアセトン(150.2L)と水(5.9L)を加え、702Lまで濃縮した。濃縮液を50℃に温度調節し、フマル酸(4.6kg、72.6mol)、アセトン(150.2L)、水(5.9L)を加え、464Lまで濃縮した。濃縮液にアセトン(78L)を加え、265Lまで濃縮し、アセトン(19.5L)を加えた。スラリーを55℃に温度調節し、120分間以上攪拌した。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、アセトンで洗浄後、乾燥した。同様の操作を残りの半量についても繰り返すことで、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(41.68kg、64.3mol、収率:75.6%)を得た。
HPLC(UV=255nm):RT=12.8min、HPLC測定条件8
工程1
化合物9(150mg,0.327mmol)と化合物10(65.4mg,0.360mmol)をトルエン(1.5mL)および酢酸(0.187ml,3.27mmol)と混合し、100℃で9時間撹拌した。室温に冷却後、ヘプタン(1.5mL,10V)を加えろ過し、得られた結晶をヘプタン(0.7mL)で3回洗浄した。減圧乾燥を行い、式(VII)で示される化合物の結晶(168mg、収率87%)を得た。得られた結晶にはトルエンが溶媒和物として0.5から0.6分子相当が含まれており、通常操作範囲の減圧乾燥下では、トルエンは除去されなかった。品質的に良好な式(VII)で示される化合物のトルエン和物の取得を確認した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm:7.93(s,1H),7.70(d,J=2.57Hz,2H),7.62(brs,1H),7.35-7,45(m,1H),7.07(m,1H),6.92-6.97(td,J=9.63,6.42,1H),5.34(s,2H),5.14(s,2H),4.20(s,3H),3.87(s,2H).
7.14-7.27ppm,2.35ppmに、トルエン0.5分子から0.6分子に相当するピークを確認した。
化合物S-1(5.50kg、29.5mol)、アセトニトリル(21.7kg)および氷酢酸(115.00kg)を混合し、5℃に冷却した。17%亜硝酸ナトリウム水溶液(13.03kg)を加え1時間撹拌し、25℃に昇温後1.5時間撹拌した。不溶物をろ別し、アセトニトリル(21.7kg)、テトラヒドロフラン(49.0kg)で不溶物を洗浄した。集めたろ液に水(460L)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、水で洗浄後、乾燥することで化合物S-2(3.75kg、19.0mol、収率:64.4%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=196(M-H)、RT=11.8min、LC/MS測定条件4
化合物S-2(3.25kg、16.4mol)と酢酸エチル(58.7kg)を混合し、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレート(2.09kg、14.1mol)を加え、25℃で7時間撹拌した。この反応液に酢酸エチル(29.5kg)、メタノール(10.3kg)の混合液を加えた。この混合液を5%炭酸ナトリウム水溶液(66.3kg)に加え、有機層と水層に分離した。有機層を5%塩化ナトリウム水溶液(65.8kg)で2回洗浄し、活性炭処理し、42kgまで濃縮した。テトラヒドロフラン(87.0kg)を加え、23kgまで濃縮する操作を2回繰り返し、さらにテトラヒドロフラン(87.0kg)を加え、18.9kgまで濃縮し、33℃に昇温した。この混合液にヘプタン(47.0kg)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、テトラヒドロフラン、ヘプタンの混合液で洗浄後、乾燥することで化合物S-3(1.68kg、7.9mol,収率:48.2%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=212(M+H)、253(M+CH3CN+H)RT=12.4min、LC/MS測定条件4
化合物S-3(1040g、4.9mol)、10%パラジウム炭素(PEタイプ、含水)(523g、0.25mol)および酢酸エチル(8.99kg)を混合し、ヒドラジン一水和物(504g、10.1mol)を加え、35℃で3時間撹拌した。10%パラジウム炭素をろ別し、水(1560g)、酢酸エチル(9.00kg)で10%パラジウム炭素を洗浄した。集めたろ液に2mol/L塩酸(750g)を加え、有機層と水層に分離した。得られた水層を酢酸エチル(4.69kg)で抽出した。有機層を併せて活性炭処理し、11.09kgまで濃縮した。この濃縮液に4mol/L塩化水素・酢酸エチル溶液(1124g)を加えた。固体をろ取し、酢酸エチルで洗浄後、乾燥することで化合物S-4(0.84kg、3.9mol、収率:78.5%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=182(M+H)、223(M+CH3CN+H)RT=6.6min、LC/MS測定条件4
塩素濃度(イオンクロマトグラフィー):16.74%
化合物A-1(9.2kg,65.1mol)およびテトラヒドロフラン(64L)を混合し、0℃に冷却し、スラリーとした。ここに、水素化ビス(2-メトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-AL)/トルエン溶液(65wt%)(26.4kg,84.9mol)とテトラヒドロフラン(28L)を混合したRed-AL/テトラヒドロフラン溶液を内温8℃以下に保ちながら60分間かけて滴下した。その後、0℃~5℃で30分間撹拌した。本反応液に対してアセトン(4.9kg,84.3mol)を30分間かけて滴下し、25℃に昇温した。別の反応器に酒石酸カリウムナトリウム・4水和物(46kg,163mol)とテトラヒドロフラン(138L)を混合したスラリーを準備し、先のRed-AL還元をアセトンでクエンチした反応液を30分間かけて滴下した(この間に内温は40℃付近になった)。2時間、40℃で撹拌を継続したのち、25℃に冷却した。水(2.5kg)を加えて撹拌したのち、ブフナーろ過を行い、得られたろ液を35kg(28L)まで減圧濃縮した。ろ液(28L)を3等分し、1つ目についてトルエン(2.6kg)を加え、減圧濃縮を行う操作を8回繰り返したのち、最終的に濃縮乾固した。濃縮乾固した生成物にジクロロメタン(13.5kg)を加えて生成物A-2のジクロロメタン溶液とした。同じ操作を2つ目、3つ目にも実施し、A-2(5.53kg)とジクロロメタン(42.7kg)で構成されるA-2/ジクロロメタン溶液を調整した(収率:74.8%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,30℃)δ ppm:8.00(s,1H),4.74(s,2H),3.90(s,3H).
工程1で製造したA-2/ジクロロメタン溶液(5.53kgのA-2(48.8mol)を含むジクロロメタン溶液49.8kg)にジクロロメタン(44L)を加え、25℃に温度調整した。塩化チオニル(7.8kg,65.5mol)とジクロロメタン(27L)の混合溶液を30分間かけて滴下し、ジクロロメタン(8.2L)を用いてライン洗浄し洗液として流入後、室温で7時間撹拌した。別途、酢酸ナトリウム(36.2kg,436mol)と水道水(143L)から20%酢酸ナトリウム水溶液(179kg)を調整した。20%酢酸ナトリウム(119kg)を先の反応液に滴下した。滴下終了時点のpHは4.6付近であった。本操作で得られた有機層を塩化ナトリウム(5.5kg)と水道水(49L)から調整した10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄、水層についてもジクロロメタン(55L)で抽出した。合併有機層(ジクロロメタン溶液)を33Lまで濃縮したのち、酢酸エチル(27.5L)を加え、濃縮した。33Lまで濃縮後、あらためて酢酸エチル(47.5L)を加え、ジャケット温度60℃のもとで常圧濃縮し、生じた無機塩をろ過後した。ろ液に塩酸・酢酸エチル溶液(4mol/L,12.6kg)を加えて塩酸塩化し、25℃で30分間撹拌した後、5℃付近に冷却した。30分間撹拌し、晶析熟成の後、得られた晶析スラリーをろ過、冷却した酢酸エチル(55L)で洗浄、減圧乾燥し、化合物8(5.25kg)を得た(淡黄色粉末,収率:64.8%)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-D6,30℃)δ ppm:8.54(s,1H),4.70(s,2H),3.86(s,3H).
窒素雰囲気下で、0℃~5℃下に冷却した98%硫酸(395.7L)に対して化合物B-1(79.1kg,499mol)を分割して加えた(内温を0℃~5℃に保つ)。硝酸カリウム(55.5kg)を内温0℃~12℃に保ち、15回に分けて(20分以上の間隔を空けて)分割投入した。内温0℃~5℃で5時間撹拌した。0℃~5℃に冷却した水(791L)に内温0℃~5℃に保ちながら、先の反応液をゆっくり流入し、98%硫酸(39.6L)で洗いこみを行なったのち、内温0℃で5時間撹拌した。スラリーを遠心分離機によりろ過し、水(791L)で洗浄した。得られた粗固体を水(791L)に懸濁させ、20℃~30℃で30分間撹拌したのち、固体をろ過、水(791L)で3回洗浄した後、減圧乾燥し、化合物B-2(99.61kg)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm:10.31(s,1H),8.46(d,J=6.60Hz,1H),7.47(d,J=9.17Hz,1H).
HPLC(UV=250nm):RT=10.9min、HPLC測定条件9
エタノール(697L)、水(697L)およびヒドラジン1水和物(73.5kg,1468mol)を混合し、45℃に加熱した。ここに、化合物B-2(99.6kg,489mol)とエタノール(299L)の混合溶液を60分かけて滴下し、さらに8時間、45℃から50℃で9時間撹拌した。内温を40℃~50℃に保ちながら、炭酸水素カリウム(53.9kg,538mol)と水(1295L)から調整した水溶液を30分間以上かけて滴下した。0℃~5℃に冷却し、1時間撹拌したのち、ろ過を行なった。水(1335L)とエタノール(657L)を混合し、0℃~5℃に冷却させたエタノール水溶液を用いて先の固体を洗浄した。減圧乾燥を行って、化合物S-2(83.25kg)を得た(収率:86.9%)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ ppm:13.56-13.98(m,1H),8.67(s,1H),8.37(d,J=0.98Hz,1H),7.92(d,J=0.61,1H).
HPLC(UV=250nm):RT=10.4min、HPLC測定条件9
化合物S-2(84kg,430mol)と酢酸エチル(1596L)を混合し、20℃~30℃で撹拌した。トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレート(77.6kg,525mol)を数回に分けて投入し、酢酸エチル(84L)を加え、25℃で6時間撹拌した。メタノール(252L)と酢酸エチル(420L)の混合溶液を2時間かけて先の反応液に滴下し、過剰のトリメチルオキソニウムテトラフルオロボレートのクエンチを行った。炭酸ナトリウム(84kg)と水(1596L)を混合した炭酸ナトリウム水溶液に、先のクエンチ後の反応液を1時間かけて滴下し、酢酸エチル(420L)とメタノール(84L)を加えた。分液操作により得られた有機層を飽和食塩水(1680kg)で2回洗浄し、得られた有機層に対して活性炭ろ過処理を行った。その後、有機層を減圧濃縮したのち、テトラヒドロフラン(2520L)を流入し、さらに減圧濃縮を行った。テトラヒドロフランの追加流入と減圧濃縮の操作を再度実施したのち、ヘプタン(2139L)を滴下し、-5℃~5℃に冷却した後、0℃付近で1時間撹拌、晶析熟成した。晶析スラリーをろ過し、冷却したテトラヒドロフラン(224L)とへプタン(912L)の混合溶液で洗浄した。減圧乾燥を行って、化合物S-3(65.73kg)を得た(収率:74.1%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm:8.31(s,1H),8.13(s,1H),7.81(s,1H),4.27(s,3H).
HPLC(UV=254nm):RT=10.3min、HPLC測定条件10
化合物S-3(65.7kg,310mol)と酢酸エチル(657L)を混合し、室温で撹拌した後、10℃付近に冷却し、窒素置換を行った。5%の白金-炭素(57.7kg,53%水分含有)を加えた。水素置換後、内温を25℃付近に調節しながら4時間撹拌した。原料消失を確認後に窒素置換、ろ過操作を実施し白金-炭素触媒を除去した。分液操作を実施後、有機層を濃縮、酢酸エチル溶液にヘプタンを滴下し、晶析スラリーを形成させた。ろ過、ヘプタン/酢酸エチルで洗浄後、減圧乾燥を実施し、化合物10(37.24kg)を得た(収率:66.2%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm:7.70(s,1H),7.64(s,1H),6.89(s,1H),4.15(s,3H).
HPLC(UV=254nm):RT=4.8min、HPLC測定条件10
化合物C-1(10.00g、48.0mmol、メシル酸塩)、N,N'-カルボニルジイミダゾール(8.18g、50.4mmol)、アセトニトリル(60.00mL)、およびジイソプロピルエチルアミン(6.83g、52.8mmol)を混合し、10℃で60分間攪拌した。反応液に化合物1(8.09g、55.2mmol、塩酸塩)、ジイソプロピルエチルアミン(7.14g、55.2mmol)を混合し、50℃で210分間攪拌した。反応液を冷却し、45gまで濃縮した。2-プロパノール(100mL)を加え、60gまで濃縮した後、2-プロパノール(100mL)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、2-プロパノールで洗浄後、乾燥することで化合物C-2(10.48g、42.2mmol、収率:88%)を得た。
HPLC(UV=210nm):RT=14.5min、HPLC測定条件11
化合物C-2(8.00g、32.2mmol)、N,N'-カルボニルジイミダゾール(6.79g、41.9mmol)、テトラヒドロフラン(80.0mL)、および1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(5.40g,35.4mmol)を混合し、25℃で120分間攪拌した。テトラヒドロフラン(80.0mL)を滴下し、反応液を0℃に冷却し、晶析スラリーを形成させた。固体をろ取し、テトラヒドロフランで洗浄後、加熱乾燥することで化合物C-3の結晶(12.6g、29.6mmol、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン塩、収率:92%)を得た。
HPLC(UV=210nm):RT=1.9min、HPLC測定条件11
化合物C-3(1.00g、2.3mmol、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン塩)、N,N-ジメチルアセトアミド(5.0mL)、および化合物4(579.2mg、2.6mmol)を混合し、70℃で300分間攪拌した。反応液を冷却し、アセトニトリル(10mL)を加え、9.4gまで濃縮する操作を2回繰り返した。濃縮液に化合物6(461mg、4.7mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(456mg、3.5mmol)を加え、60℃で160分間攪拌した。反応液を25℃に冷却し、酢酸(703mg、11.7mmol)、水(8.0mL)および種晶を加え、得られた晶析スラリーを0℃に冷却した。スラリーに水(12.0mL)を加え、固体をろ取し、20%アセトニトリル水溶液で洗浄後、乾燥することで化合物9(0.86g、1.9mmol,収率:79.5%)を得た。
HPLC(UV=255nm):RT=14.5min、HPLC測定条件8
参考例3の工程1と同様にして、化合物B-2を得た。続いて、化合物B-2(30g、147mmol)とNMP(120mL)を混合し、氷冷下で1-Boc-1-メチルヒドラジン(56g、383mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応液にジイソプロピルエチルアミン(38.6mL、221mmol)を加え、90℃にて20時間攪拌した。反応液を80℃にして水(240mL)を加えた後、室温に冷却し、析出した不溶物をろ別した。得られた固体をNMP/水=1/2(15mL)の混合液で3回洗浄し、さらに水(30mL)で3回洗浄した。得られた固体を酢酸イソプロピル(60mL)、ヘプタン(240mL)に懸濁させ室温で攪拌後、酢酸イソプロピル/ヘプタン=1/4(30mL)で3回洗浄することで化合物D-3を得た。得られた固体を酢酸イソプロピル(100mL)に懸濁させた。得られた懸濁液をメシル酸(96mL、1474mmol)と酢酸イソプロピル(100mL)の混液に55℃にて加え、酢酸イソプロピル(60mL)で洗いこみ、同温にて25分間攪拌した。氷冷下、水(240mL)、水酸化ナトリウム水溶液(239mL、1916mmol)および酢酸イソプロピル(150mL)を反応液に加え、40℃にて攪拌した。得られた反応液に酢酸イソプロピル(150mL)を加えた。得られた有機層を水(90mL)で3回洗浄し、45gまで濃縮した。酢酸イソプロピル(12g)、ヘプタン(210mL)を加え、得られた不溶物をろ別し、固体を酢酸イソプロピル/ヘプタン=1/7(30ml)で3回洗浄、乾燥することで、化合物S-3(25.3g、120mmol、収率:81.1%)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm:8.34(s,1H),8.13(s,1H),7.84(s,1H),4.28(s,3H).
氷冷下、化合物T-1(40g、182mmol)、濃硫酸(200mL、3677mmol)および69%硝酸(23.3g、255mmol)を混合し、氷冷から室温にて3時間攪拌し、その後終夜静置した。氷水520mLにその混合液を注入し、ジクロロメタン(200mL)を加え、分液操作を行った。得られたジクロロメタン溶液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(400mL)で2回洗浄し、濃縮乾固した。得られた固体にメタノール(120mL)を加えたのち、内容量が116gになるまで濃縮した。得られたスラリーに内容量が333gになるまでメタノールを加えたのち、水(240mL)を加え、得られた不溶物をろ別し、固体をメタノール/水=1/1(200mL)で洗浄、乾燥することで、化合物T-2/T-3=1/2.78の混合物(30.67g、収率:58.5%)を得た。
LC/MS(ESI):m/zとしてMS検出されず、RT=2.04min、LC/MS測定条件1
窒素気流下、T-2/T-3=1/2.78の混合物(200mg)に2-プロパノール(1.4mL)を加え、60℃まで昇温し、トリエチルアミン(0.289mL、2.07mmol)を加え、1.5時間攪拌した。その後、メチルアミン塩酸塩(94mg、1.39mmol)を水(0.4mL)に溶かした溶液を60℃で反応液に加え、3時間攪拌した。得られた反応液に60℃で水(8mL)を加えた後、室温に冷却し30分間攪拌した。析出した不溶物をろ別し、得られた固体を水(5mL)で洗浄、乾燥することで、化合物T-4(194mg、0.699mmol、収率:100%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=277(M+H)、RT=2.46min、LC/MS測定条件2
窒素気流下、化合物T-4(500mg,1.80mmol)と2-プロパノール(2.5mL)およびトリブチルホスフィン(802mg、3.96mmol)を混合し、80℃にて1.5時間撹拌した。室温へ冷却した後、トルエン(3mL)にて3回溶媒置換を行い、濃縮後の残渣が5gになるまで濃縮を行った。その後、反応液を4℃まで氷冷し、4mol/L塩酸-酢酸エチル溶液(1.5mL)を加え20分間攪拌した。得られた晶析スラリーをろ別し、トルエン(2.5mL)で洗浄、乾燥することで固体を得た。水(4.3mL)と炭酸水素ナトリウム(0.192g、2.29mmol)の混液に、得られた固体を少しずつ加え、pHを7~8に調整し30分間攪拌して、晶析スラリーを得た。ろ別し、水(8.6mL)で洗浄、乾燥することで、化合物T-5(351mg、1.43mmol、収率:79.4%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=245(M+H)、RT=1.90min、LC/MS測定条件1
窒素気流下、化合物T-5(2.015g、8.21mmol)、DME(20mL)、ナトリウムtert-ブトキシド(1.104g、11.49mmol)、ベンゾフェノンイミン(1.645mL、9.80mmol)、BINAP(0.153g、0.246mmol)、およびジアセトキシパラジウム(0.036g、0.160mmol)を混合し、80℃にて9時間攪拌して、終夜静置した。得られた懸濁液にエタノール(10mL)を加え、5℃に冷却した。懸濁液に30%硫酸(20mL)を少しずつ加え、室温にて終夜攪拌した。得られた反応液に酢酸エチル(40mL)、水(20mL)を加え、分液操作を実施した。得られた水層を酢酸エチル(10mL)で洗浄し、有機層を10%硫酸(10mL)で洗浄した。得られた水層を合わせ、氷冷後、48%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHが8になるまで中和した。酢酸エチル(20mL)を加え、析出した硫酸ナトリウムをろ別し、分液操作を実施した。得られた水層に酢酸エチル(20mL)を加え、分液操作を実施した。得られた有機層を合わせ、濃縮し、さらに酢酸エチル(10mL)にて溶媒置換を4回繰り返した。ヘプタン(12mL)を加え、得られた晶析スラリーを氷冷下1時間攪拌した。ろ別し、酢酸エチル/ヘプタン=1/3(6mL)にて洗浄、乾燥することで、化合物10(1.18g、6.5mmol、収率:79.2%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=182(M+H)、RT=0.88min、LC/MS測定条件1
化合物U-1(2.09g、22.6mmol、塩酸塩)とCPME(12.04g)および水(7g)を混合し、炭酸カリウム(4.25g、30.8mmol)を水(7g)に溶解させた溶液を、反応液の温度が20~30℃になるようにゆっくり加えた。得られた混合溶液を激しく攪拌し、CbzCl(3.50g、20.5mmol)を反応液の温度が20~30℃になるようにゆっくり加え、室温にて1時間攪拌した。得られた溶液に分液操作を施し、有機層を水(14g)で洗浄後、濃縮した。残渣にCPME(15.05g)を加え、さらに残渣が10.5gになるまで濃縮した。得られた溶液を45℃まで昇温し、ヘプタン(9.58g)を温度を維持したまま30分間かけて加え、その後さらに30分間攪拌した。ヘプタン(19.15g)を加えた後、得られた晶析スラリーを氷冷下で30分間攪拌した。ろ別し、得られた固体をCPME-ヘプタン(3g-9.58g)の混液で洗浄、乾燥することで、化合物U-2(3.41g、17.93mmol、収率:86%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=9.51min、HPLC測定条件5
化合物U-2(8.00g、42.1mmol)にメタノール(31.66g)を加え、0℃まで冷却後、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液(2.43g、12.6mmol)を加え、同温度にて4時間攪拌した。得られた溶液に、N-メチルホルモヒドラジド(3.74g、50.5mmol)をメタノール(19g)に溶かした溶液を0~5℃で加え、さらに酢酸(2.53g、42.1mmol)を同温度にて加え、0℃にて2時間攪拌した。得られた溶液を60℃まで昇温し、同温度にて4時間攪拌した。反応液を32gまで濃縮した後、酢酸エチル(57.73g)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(67.53g)を加えた。得られた混合溶液を10分間攪拌し、分液操作を行った。得られた水層についても酢酸エチル(57.73g)で抽出した。合わせた有機層を40gまで濃縮した。MEK(64.4g)を加え、さらに40gまで濃縮する操作を2回繰り返した。得られた濃縮液にメシル酸(4.04g、42.0mmol)をMEK(32.2g)に溶かした溶液を20~30℃で加え、室温にて30分間攪拌した。析出した晶析スラリーをろ別し、得られた固体をMEK(25.76g)で洗浄、乾燥することで、化合物U-3(10.1g、29.5mmol、メシル酸塩、収率:70%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=7.90min、HPLC測定条件5
化合物U-3(10g、29.2mol、メシル酸塩)とメタノール(79.15g)を混合し、室温で撹拌した後、窒素置換を行った。パラジウム-炭素(パラジウム10%)(0.5g、5重量%)を加え、水素置換後、室温にて7時間撹拌した。窒素置換後、セライト(登録商標)ろ過操作にてパラジウム-炭素触媒を除去した。得られたろ液を50gまで濃縮した。MEK(40.25g)を加え、40gまで濃縮する操作を2回繰り返した。得られた晶析スラリーをろ別し、MEK(25.76g)で洗浄、乾燥することで、化合物C-1(5.3g、25.5mmol、メシル酸塩、収率:87%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=2.75min、HPLC測定条件11
(参考例8-1)
化合物7(4.00g、11.0mmol)、化合物8(2.40g、14.3mmol、塩酸塩)、塩化リチウム(0.61g、14.3mmol)、トリエチルアミン(3.34g、33.0mmol)およびN,N-ジメチルアセトアミド(20.0mL)を混合し、40℃で15時間攪拌した。反応溶液を25℃に冷却し、酢酸(3.97g、66.1mmol)を加えた後、アセトニトリル(20.0mL)、水(8.0mL)を加えて不溶物を溶解させた。その後、水(48.0mL)を加えた後、0℃に冷却し、固体をろ取した。20%アセトニトリル水溶液で洗浄後、乾燥することで化合物9(4.28g、9.3mmol、収率:84.8%)を得た。
HPLC(UV=255nm):RT=25.1min、HPLC測定条件7
化合物7(6.00g、16.5mmol)、化合物8(3.60g、21.4mmol、塩酸塩)、塩化リチウム(0.94g、22.2mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(6.13g、40.3mmol)およびN,N-ジメチルアセトアミド(36.0mL)を混合し、40℃で7時間攪拌した。反応溶液を25℃に冷却し、酢酸(2.00g、33.3mmol)とN,N-ジメチルアセトアミド(1.8mL)を加えた後、水(3.1mL)を加えた。その後、水(33.0mL)を加えて固体をろ取し、20%アセトニトリル水溶液で洗浄後、乾燥することで化合物9(6.72g、14.7mmol、収率:88.8%)を得た。
HPLC(UV=255nm):RT=25.1min、HPLC測定条件7
R1 (I>2.00s(I))は0.0470であり、最終の差フーリエから電子密度の欠如も誤置もないことを確認した。
結晶学的データを表1に示す。
ここで、Volumeは単位格子体積、Zは単位格子中の分子数を意味する。
なお、表2~表3および表5における非水素原子の番号は、それぞれ図1記載された番号に対応している。
N10-C9の結合距離(約1.26Å)は、N16-C9の結合距離(約1.37Å)よりも短いため、フマル酸共結晶I形の式(VII)で示される化合物は、イミノ構造:
であると同定した。
粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ):7.7±0.2°、9.5±0.2°、10.0±0.2°、10.9±0.2°、13.8±0.2°、14.6±0.2°、18.6±0.2°、22.6±0.2°、23.4±0.2°および24.6±0.2°にピークが認められた。
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の粉末X線回折パターンを図2に示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。
粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ):7.4±0.2°、8.1±0.2°、13.7±0.2°、15.1±0.2°、16.3±0.2°、19.3±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、24.6±0.2°、26.6±0.2°、27.8±0.2°および29.5±0.2°にピークが認められた。
式(VII)で示される化合物のトルエン和物の粉末X線回折パターンを図3に示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。
式(VII)で示される化合物のトルエン和物については、分子構造(アミノ体/イミノ体)は同定していない。
本発明に係る式(VII)で示される化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害作用を有し、コロナウイルス3CLプロテアーゼを阻害するものであればよい。
具体的には、以下に記載する評価方法において、IC50は50μM以下が好ましく、より好ましくは、1μM以下、さらにより好ましくは100nM以下である。
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注する。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×104cells/well)とSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY/WK-521/2020、hCoV-19/Japan/QK002/2020、hCoV-19/Japan/QHN001/2020、hCoV-19/Japan/QHN002/2020、hCoV-19/Japan/TY7-501/2021、hCoV-19/Japan/TY7-503/2021、hCoV-19/Japan/TY8-612/2021、hCoV-19/Japan/TY11-927-P1/2021(30-1000TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料が入ったウェルに分注した後、CO2インキュベーターで3日間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
・50% SARS-CoV-2感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。
y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}
%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells
min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
(SARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY/WK-521/2020)
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形:0.37μM
<材料>
・市販のRecombinant SARS-CoV-2 3CL Protease
・市販の基質ペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-Gln-Ser-Gly-Phe-Arg-Lys-Met-Glu(Edans)-NH2(配列番号:1)
・Internal Standardペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Gln(配列番号:2)
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Glnは、文献(Atherton, E.; Sheppard, R. C.、“In Solid Phase Peptide Synthesis, A Practical Approach”、IRL Press at Oxford University Pres、1989.およびBioorg. Med. Chem.、5巻、9号、1997年、1883-1891頁、等)を参考に合成できる。以下に一例を示す。
Rinkアミド樹脂を用いて、Fmoc固相合成によって、H-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Glu(resin)-OαOtBu(Lys側鎖はBoc保護、Thr側鎖はtert-ブチル基で保護、Ser側鎖はtert-ブチル基で保護、GluのC末端OHはtert-ブチル基で保護されており、Glu側鎖のカルボン酸を樹脂に縮合)を合成する。N末端Dabcyl基の修飾は4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-カルボン酸(Dabcyl-OH)をEDC/HOBTを用いて樹脂上で縮合する。最終脱保護、および樹脂からの切り出しはTFA/EDT=95:5で処理することで行う。その後、逆相HPLCによって精製する。
・RapidFire Cartridge C4 typeA
<操作手順>
・アッセイバッファーの調製
本試験では、20mM Tris-HCl、1mM EDTA、10mM DTT、0.01% BSAからなるアッセイバッファーを使用する。
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、384ウェルプレートに分注する。
・酵素と基質の添加、酵素反応
準備した化合物プレートに、8μMの基質、及び6nMの酵素溶液を添加し、室温で3時間インキュベーションを行う。その後、反応停止液(0.072μM Internal Standard、0.1% ギ酸、10% アセトニトリル)を加え酵素反応を停止させる。
・反応産物の測定
反応完了したプレートはRapidFire System 360及び質量分析器(Agilent、6550 iFunnel Q-TOF)を用いて測定する。測定時の移動相としてA溶液(75% イソプロパノール、15% アセトニトリル、5mM ギ酸アンモニウム)とB溶液(0.01% トリフルオロ酢酸、0.09% ギ酸)を用いる。
質量分析器によって検出された反応産物は、RapidFire Integratorを用いて算出しProduct area値とする。また、同時に検出されたInternal Standardも算出しInternal Standard area値とする。
<各測定項目値の算出>
・P/ISの算出
前項目で得られたarea値を下記の式によって計算し、P/ISを算出する。
P/IS= Product area値/ Internal Standard area値
・50% SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼ阻害濃度(IC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Inhibitionとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をIC50として算出する。
y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}
%Inhibition = {1-(Sample - Control(-)) / Control(+)-Control(-))} * 100
Control(-):the average of P/IS ratio in the wells without SARS-CoV-2 3CL protease and test substance
Control(+):the average of P/IS ratio in the wells with SARS-CoV-2 3CL protease and without test substance
min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形:0.0132μM
本発明に係る製造方法により製造された化合物は、任意の従来の経路により、特に、経腸、例えば、経口で、例えば、錠剤またはカプセル剤の形態で、または非経口で、例えば注射液剤または懸濁剤の形態で、局所で、例えば、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤またはクリーム剤の形態で、または経鼻形態または座剤形態で医薬組成物として投与することができる。少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と一緒にして、遊離形態または薬学的に許容される塩の形態の本発明に係る製造方法により製造された化合物を含む医薬組成物は、従来の方法で、混合、造粒またはコーティング法によって製造することができる。例えば、経口用組成物としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等および有効成分等を含有する錠剤、顆粒剤、カプセル剤とすることができる。また、注射用組成物としては、溶液剤または懸濁剤とすることができ、滅菌されていてもよく、また、保存剤、安定化剤、緩衝化剤等を含有してもよい。
Claims (18)
- 酸が、トリフルオロ酢酸である、請求項1記載の製造方法。
- 酸が酢酸である、請求項4記載の製造方法。
- 結晶化温度が40~60℃であり、結晶化時間が120分以上である、請求項9記載の製造方法。
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