JP7256954B2 - 分散液、インクジェット記録用インク組成物、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
前記置換トリアジンを顔料の表面と反応させ、表面改質顔料を形成させるステップを含む、顔料の改質方法が記載されている。
一方で定着樹脂とは別に、色材分散剤が色材を分散するのに用いられる。当該色材分散剤は、定着樹脂と色材の間に入ることで画像の定着を阻害しやすい。これに対して、定着樹脂を多く用いると、インク組成物の粘度が上昇しやすく、記録ヘッドの目詰まりの原因となりやすい。
また、定着樹脂に樹脂エマルションを使用すると、樹脂粒子が布帛の繊維にとどまらないので多く用いる必要があったり、インク組成物中で沈降が生じやすくなる。さらに、各種の被記録媒体との密着性を向上させる手法としては、被記録媒体と画像を密着させるアンカー剤を塗布する手法がとられる。しかしながら、被記録媒体の材料コストアップ、塗布装置等の装置の大型化など招いてしまう。
当該樹脂は、好ましくは、前記トリアジン化合物由来の残存ハロゲン原子を有し、好ましくは前記変性ポリビニルアルコールと、前記トリアジン化合物とを50℃以上70℃未満の温度で反応させて合成される。
当該トリアジン化合物は、好ましくは、3個のハロゲン原子を有するトリアジン化合物である。
当該分散液は、好ましくは、活性水素基を含むポリウレタン系樹脂をさらに含有する。
本発明に係るインクジェット記録方法は、当該インク組成物を、記録ヘッドから吐出して被記録媒体へ付着させるインク付着工程を含む。
当該被記録媒体は、好ましくは、表面にヒドロキシ基を有する。
当該インクジェット記録方法は、好ましくは、当該インク付着工程と同時又はその後に、前記ヒドロキシ基と前記樹脂中の前記ハロゲン原子との反応温度以上に、前記被記録媒体を加熱する加熱工程を含む。
当該加熱工程における加熱温度は、好ましくは、60℃以上である。
本実施形態の分散液は、アニオン基又はカチオン基を導入した変性ポリビニルアルコール(以下、単に「変性ポリビニルアルコール」ともいう)と、2個以上のハロゲン原子を有するトリアジン化合物(以下、単に「トリアジン化合物」ともいう)と、により合成される樹脂(以下、単に「樹脂(A)」ともいう)と、非水溶性色材と、水と、を含有する。
上述の分散液によれば、優れた粘性を示し、布帛への定着画像の摩擦堅牢性及びフィルムへの定着画像の摩耐擦過性に優れるインク組成物が得られる。
樹脂(A)は、好ましくはトリアジン化合物由来の残存ハロゲン原子を有する。残存ハロゲン原子を有することで、印刷後に、被記録媒体表面のヒドロキシ基とさらに反応し、摩擦堅牢性及び耐擦過性に優れるインク組成物が得られる。
「アニオン基」とは、インク組成物中で、遊離し、変性ポリビニルアルコールの分子鎖にアニオンが導入される基を意味する。
「カチオン基」とは、インク組成物中で、遊離し、変性ポリビニルアルコールの分子鎖にアニオンが導入される基を意味する。
アニオン基としては、特に限定されないが、例えば、スルホ基、カルボキシル基又はこれらの塩が挙げられる。
カチオン基としては、特に限定されないが、例えば、4級アンモニウム基、アミノ基又はその塩が挙げられる。
「けん化度」とは、変性ポリビニルアルコール中に含まれるモノマー単位のうち、ヒドロキシ基が導入されたモノマー単位の割合(mol%)を意味する。
当該粘度は、変性ポリビニルアルコールの4質量%の水溶液において、20℃で測定した粘度とする。
これらの中でも、アニオン基を導入した変性ポリビニルアルコールが好ましく、スルホン酸変性ポリビニルアルコールがより好ましい。
トリアジン化合物は、好ましくは2個又は3個のハロゲン原子を有し、より優れた粘性及び耐擦過性を得る観点から、より好ましくは3個のハロゲン原子を有する。
これらの中でも、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジクロロ-1,3,5-トリアジンが好ましく、より優れた粘性及び耐擦過性を得る観点から、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンが好ましい。
0.5≦(x×a-y)/x≦2.0 (1a)
0.7≦(x×a-y)/x≦1.8 (1b)
0.8≦(x×a-y)/x≦1.6 (1c)
上記の式を満たすことで、樹脂(A)中に、ハロゲン原子が残りやすくなり、印刷後の摩擦堅牢性及び耐擦過性を向上させることができる。
樹脂(A)は、特に限定されないが、好ましくは、変性ポリビニルアルコールと、トリアジン化合物とを50℃以上70℃未満の温度で反応させて合成される。
反応は、例えば、水媒体中で、変性ポリビニルアルコールと、トリアジン化合物とを混合し、懸濁させて反応させてもよい。
反応温度は、好ましくは50℃以上70℃未満であり、より好ましくは55℃以上65℃以下である。
反応における当量比(X基/OH基)は、上述の範囲が好ましい。また、当該反応において、上述の式(1a)、式(1b)、又は式(1c)を満たすことがより好ましい。
本実施形態の分散液において、非水溶性色材と樹脂(A)との質量比は、非水溶性色材/樹脂(A)として、好ましくは40/60~90/10であり、より好ましくは50/50~80/20であり、さらに好ましくは55/45~75/25である。
本実施形態の非水溶性色材としては、特に限定されないが、顔料又は油溶性染料が挙げられる。
油溶性染料としては、特に限定されないが、例えば、分散染料、建染染料、又は有機溶剤溶解性染料等を用いることができる。
本実施形態のインク組成物は、水を含有する。水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水が挙げられる。
本実施形態の分散液において、水の含有量は、分散液全量100質量%に対して、好ましくは60質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは75質量%以上90質量%以下である。
本実施形態の分散液は、摩擦堅牢性及び耐擦過性をより向上させる観点から、活性水素基を含むポリウレタン系樹脂(以下、単に「ポリウレタン系樹脂」ともいう)をさらに含有する。ポリウレタン系樹脂に含まれる活性水素基が、樹脂(A)に含まれるハロゲン原子と反応し、架橋構造を形成するため、摩擦堅牢性及び耐擦過性がより向上すると考えられるが、要因はこれに限定されない
活性水素基としては、特に限定されないが、ヒドロキシ基、アミノ基が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシ基が好ましい。
ポリウレタン系樹脂としては、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂が挙げられる。これらのウレタン樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
樹脂粒子の平均粒子径は、本発明の作用効果をより有効にかつ確実に奏する観点から、好ましくは50nm以上300nm以下であり、より好ましくは55nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは60nm以上150nm以下であり、よりさらに好ましくは65nm以上100nm以下である。樹脂粒子の平均粒子径は、例えば、顔料の平均粒子径の測定方法として例示した測定方法で測定できる。
本実施形態の分散液において、ポリウレタン系樹脂を含有する場合、樹脂(A)とポリウレタン系樹脂の質量比(樹脂(A)/ポリウレタン系樹脂)は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、好ましくは30/70~80/20であり、より好ましくは40/60~70/30であり、さらに好ましくは45/65~65/35である。
本実施形態の分散液において、脱酸剤の含有量は、分散液全量100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上8.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上5.0質量%以下である。
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう)は、上述の本実施形態の分散液を含む。
本実施形態のインク組成物において、樹脂(A)の含有量は、インク組成物全量100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上10質量%以下である。
本実施形態のインク組成物において、非水溶性色材の含有量は、インク組成物全量100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上10質量%以下である。
非水溶性色材と樹脂(A)の質量比は上述の分散液における範囲が好ましい。
本実施形態のインク組成物において、ポリウレタン系樹脂を含有する場合、ポリウレタン系樹脂の含有量は、インク組成物全量100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下である。
本実施形態のインク組成物は、粘度調整及び保湿効果の観点から、水溶性有機溶剤をさらに含有していてもよい。
本実施形態のインク組成物は、インクジェット記録方式でインク組成物を安定に吐出させることができ、かつ、インク組成物の浸透を適切に制御できる観点から、好ましくは界面活性剤をさらに含有する。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤(例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキサイド付加物)、フッ素系界面活性剤(例えば、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物)、及びシリコーン系界面活性剤(例えば、ポリシロキサン系化合物、及びポリエーテル変性オルガノシロキサン)が挙げられる。
本実施形態のインク組成物の粘度は、25℃でずり速度10(1/s)において、好ましくは0.03Pa・s未満であり、より好ましくは0.01Pa・s未満であり、さらに好ましくは0.005Pa・s未満である。分散液の粘度は、特に限定されないが、例えば、25℃でずり速度10(1/s)において、0.00001Pa・s以上である。
本実施形態のインク組成物の粘度は、25℃でずり速度1000(1/s)において、好ましくは0.03Pa・s未満であり、より好ましくは0.01Pa・s未満であり、さらに好ましくは0.005Pa・s未満である。分散液の粘度は、特に限定されないが、例えば、25℃でずり速度1000(1/s)において、0.00001Pa・s以上である。
上記の粘度は、25℃でE型粘度計(例えば、東機産業株式会社製TVE-22)により測定した値である。
本実施形態のインクジェット記録方法は、上述の本実施形態のインク組成物を、記録ヘッドから吐出して被記録媒体へ付着させるインク付着工程を含む。
本実施形態のインク付着工程は、例えば、被記録媒体の面(画像形成領域)に向けて、インク組成物をインクジェット方式により吐出し、被記録媒体に付着させて、画像を形成する。なお、吐出条件は、吐出されるインク組成物の物性によって適宜決定すればよい。
被記録媒体は、摩擦堅牢性及び耐擦過性を向上させる観点から、表面にヒドロキシ基を有することが好ましい。被記録媒体のヒドロキシ基と、インク組成物に含まれる樹脂(A)の残存ハロゲン原子が反応し、被記録媒体への定着が強固になり、摩擦堅牢性及び耐擦過性を向上させることができるものと考えられる。ただし、この要因には限定されない。
布帛としては、特に限定されないが、例えば、絹、綿、羊毛、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の天然繊維及び合成繊維が挙げられる。布帛としては、1種の繊維からなるものであっても、2種以上の繊維を混紡したものであってもよい。
紙としては、特に限定されないが、例えば、普通紙、インクジェット用紙、アート紙、コート紙、キャスト紙が挙げられる。インクジェット用紙は、シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、又は、ポリビニルアルコール等のヒドロキシ基を有する親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えていてもよい。
プラスチックとしては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルム又はプレートが挙げられる。
紙製の基材にコーティングするプラスチック類としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタンが挙げられる。
これらの被記録媒体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ヒドロキシ基を導入する処理としては、特に限定されないが、例えば、コロナ処理、ヒドロキシ基を有する材料によりインク受容層を設ける処理が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する材料としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、澱粉、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、及びゼラチンが挙げられる。これらの材料は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態のインクジェット記録方法は、好ましくは、インク付着工程と同時又はその後に、ヒドロキシ基と樹脂(A)中のハロゲン原子との反応温度以上に、被記録媒体を加熱する加熱工程をさらに含む。
加熱工程を有することにより、被記録媒体の表面のヒドロキシ基と、樹脂(A)中の残存ハロゲン原子が反応し、被記録媒体に非水溶性色材をより良好に固着できる。加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、HT法(高温スチーミング法)、HP法(高圧スチーミング法)、サーモゾル法が挙げられる。
被記録媒体として布帛を用いる場合、加熱処理時の温度は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、好ましくは100℃以上180℃以下であり、より好ましくは130℃以上175℃以下であり、さらに好ましくは150℃以上170℃以下である。
プラスチック、又は、紙基材にプラスチック類をコーティングした被記録媒体を用いる場合、加熱処理時の温度は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは60℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは60℃以上140℃以下であり、よりさらに好ましくは60℃以上130℃以下である。
被記録媒体が布帛である場合、本実施形態のインクジェット記録方法は、加熱工程後に、インク組成物が付着した被記録媒体を洗浄する洗浄工程をさらに含んでいてもよい。洗浄工程により、繊維に染着していない非水溶性着色剤を効果的に除去することができる。洗浄工程は、例えば水を用いて行うことができ、必要に応じてソーピング処理を行ってもよい。ソーピング処理方法としては、特に限定されないが、例えば、即ち未固着の顔料を熱石鹸液などで洗い落とす方法が挙げられる。
合成例1:樹脂1の合成
300mL三口フラスコにスルホン酸変性ポリビニルアルコール(製品名:ゴーセネックス(登録商標)L-3266,日本合成化学工業株式会社製、けん化度85mol%)4.7質量部(ヒドロキシ基のモル量:0.079mol部(トリアジン化合物に対して、1.5倍のモル量))と、水85質量部とを入れて0℃に冷却した。ここにトリアジン化合物として、塩化シアヌル(東京化成工業株式会社製)10質量部(0.054mol部)を徐々に加え30分撹拌させ懸濁液を得た。その後、60℃に昇温して2時間反応させた。反応終了後、樹脂1の水溶液を100質量部得た。
300mL三口フラスコにスルホン酸変性ポリビニルアルコール(製品名:ゴーセネックス(登録商標)CKS-50,日本合成化学工業株式会社製、けん化度99mol%)4.7質量部(ヒドロキシ基のモル量:0.11mol部(トリアジン化合物に対して、2倍のモル量))と、水85質量部とを入れて0℃に冷却した。ここにトリアジン化合物として、塩化シアヌル(東京化成工業株式会社製)10質量部(0.054mol部)を徐々に加え30分撹拌させ懸濁液を得た。その後、60℃に昇温して2時間反応させた。反応終了後、樹脂2の水溶液を100質量部得た。
300mL三口フラスコにスルホン酸変性ポリビニルアルコール(製品名:ゴーセネックス(登録商標)L-3266,日本合成化学工業株式会社製、けん化度85mol%)2.4質量部(ヒドロキシ基のモル量:0.041mol部(トリアジン化合物に対して、0.76倍のモル量))と、水85質量部を入れて0℃に冷却した。ここにトリアジン化合物として、2,4‐ジクロロ-1,3,5-トリアジン(東京化成工業株式会社製)8.1質量部(0.054mol部)を徐々に加え30分撹拌させ懸濁液を得た。その後、60℃に昇温して2時間反応させた。反応終了後、樹脂3の水溶液を100質量部得た。
300mL三口フラスコにカチオン(4級アンモニウム塩)変性ポリビニルアルコール(ゴーセネックス(登録商標)K-434,日本合成化学工業株式会社製、けん化度85mol%)4.7質量部(ヒドロキシ基のモル量:0.079mol部(トリアジン化合物に対して、1.5倍のモル量))と、水85質量部とを入れて0℃に冷却した。ここにトリアジン化合物として、塩化シアヌル(東京化成工業株式会社製)10質量部(0.054mol部)を徐々に加え30分撹拌させ懸濁液を得た。その後、60℃に昇温して2時間反応させた。反応終了後、樹脂4の水溶液を100質量部得た。
300mL三口フラスコにスルホン酸変性ポリビニルアルコール(製品名:ゴーセネックス(登録商標)L-3266,日本合成化学工業株式会社製、けん化度85mol%)2.4質量部(ヒドロキシ基のモル量:0.041mol部(トリアジン化合物に対して、0.76倍のモル量))と、水85質量部とを入れて0℃に冷却した。ここにモノクロロトリアジン10質量部(0.054mol部)を徐々に加え30分撹拌させ懸濁液を得た。その後、60℃に昇温して2時間反応させた。反応終了後、樹脂51の水溶液を100質量部得た。
実施例A1:分散液1の製造
ジルコニアビーズ80質量部と、樹脂1の水溶液13質量部と、非水溶性色材としてC.I.ピグメントブルー15:3(以下、「PB15:3」ともいう)4質量部と、脱酸剤としてトリエタノールアミン1質量部と、純水17質量部と、を加えてビーズミルにて1時間粉砕し、分散液1とした。
ジルコニアビーズ80質量部と、樹脂2の水溶液13質量部と、非水溶性色材としてPB15:3を4質量部と、脱酸剤としてトリエタノールアミン1質量部と、純水17質量部とを加えてビーズミルにて1時間粉砕し、分散液2とした。
ジルコニアビーズ80質量部と、樹脂3の水溶液15質量部と、非水溶性色材としてC.I.ピグメントレッド122(以下、「PR122」ともいう)を4質量部と、脱酸剤としてトリエタノールアミン1質量部と、純水17質量部とを加えてビーズミルにて1時間粉砕し、分散液3とした。
ジルコニアビーズ80質量部と、樹脂1の水溶液10質量部と、ポリウレタン系樹脂(製品名:ユーコート(登録商標)UX-485、固形分濃度:40質量%、三洋化成工業株式会社製(以下、単に「UX-485」ともいう))3質量部と、非水溶性色材としてPB15:3を4質量部と、脱酸剤としてトリエタノールアミン1質量部と、純水17質量部とを加えてビーズミルにて1時間粉砕し、分散液4とした。
ジルコニアビーズ80質量部、樹脂4の水溶液10質量部と、ポリウレタン系樹脂(製品名:ユーコート(登録商標)UX-485、固形分濃度:40質量%、三洋化成工業株式会社製)を3質量部、非水溶性色材としてカーボンブラック(以下、「CB」ともいう)4質量部と、脱酸剤としてトリエタノールアミン1質量部と、純水17質量部とを加えてビーズミルにて1時間粉砕し、分散液5とした。
実施例A1の樹脂1の水溶液の代わりに樹脂2の水溶液を用い、非水溶性色材として、PB15:3の代わりにC.I.ピグメントイエロー180(以下、「PY180」ともいう)を用い、ポリウレタン系樹脂(製品名:ユーコート(登録商標)UX-485、三洋化成工業株式会社製)の代わりにポリウレタン系樹脂(製品名:ユリアーノ(登録商標)W600、荒川化学工業株式会社製)(以下、単に「W600」ともいう)を用いた以外は分散液1と同様な方法で分散液6を得た。
樹脂1の水溶液の代わりに、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう)を用い、1官能である、モノクロロトリアジンを用いた以外は実施例A1と同様の方法で分散液51を得た。
樹脂1の水溶液の代わりに、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう)を用いた以外は、実施例A1と同様の方法で分散液52を得た。
樹脂1の水溶液の代わりに、樹脂51の水溶液を用いた以外は、実施例A1と同様の方法で分散液53を得た。
実施例B1~B6、比較例B1~B3
表2に示した成分を混合し、インク組成物を得た。
得られたインク組成物について、以下のインクジェット記録方法を実施し、評価を行った。
インクジェット記録方法の条件
上記で得られた各インク組成物をそれぞれインクカートリッジに充填し、ピエゾ素子のエネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(製品名:PX-G930、セイコーエプソン株式会社製)に搭載した。実施例及び比較例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が28ng±10%であるインク滴を1滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。記録条件は、温度:23℃、相対湿度:55%とした。
得られたインク組成物について、25℃でE型粘度計(製品名:TVE-22、東機産業株式会社製)により測定し、粘度の大きさにより分散性を下記基準に従い評価した。なお、測定時のずり速度を1(1/s)及び1000(1/s)とした。
(評価基準)
A:ずり速度10(1/s)、1000(1/s)のときの粘性がともに0.005Pa・s未満
B:ずり速度10(1/s)、1000(1/s)のときの粘性がともに0.005Pa・s以上0.01Pa・s未満
C:ずり速度10(1/s)、1000(1/s)のときの粘性がともに0.01 Pa・s以上0.02Pa・s未満
D:ずり速度10(1/s)、1000(1/s)のときの少なくもいずれかが0.02Pa・s以上0.03Pa・s未満
E:ずり速度10(1/s)、1000(1/s)のときの少なくもいずれかが0.03Pa・s以上
布帛に対して、インクジェット記録装置(製品名:PX-G930、セイコーエプソン株式会社製)の改造機(布帛への記録が可能なように布帛固定手段を有する。)を用いたインクジェット記録方法により、各インク組成物を付着させた。記録条件としては、15mg/inch2の付着量でベタ画像を記録した。このようにして布帛へインクジェット記録を行った。ここで、「ベタ画像」とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像を意味する。
その後、ヒートプレス機を用いて160℃で1分間加熱処理を行い、当該インク組成物を布帛に定着させた。このようにして、布帛に画像が形成された(インクが捺染された)捺染物を製造した。
各捺染物について、学振型摩擦堅牢度試験機(製品名:AB-301、テスター産業株式会社製)を使用し、200gの加重、10cm/sの速度条件下で、100回の往復を実施し、その後、JIS染色堅牢度試験用白布(JIS L 0803:2011準拠3-1号)を使用して移染濃度光学濃度値(以下「移染濃度OD値」ともいう)を測定し、以下の評価基準により摩擦堅牢性を評価した。移染濃度OD値が低いほど、摩擦堅牢性に優れることを意味する。結果を表2に示す。
評価基準
A:移染濃度OD値が0.15以下である。
B:移染濃度OD値が0.15超0.20以下である。
C:移染濃度OD値が0.20超0.25以下である。
D:移染濃度OD値が0.25超0.30以下である。
E:移染濃度OD値が0.3超である。
上記のインクジェット記録装置を用いて、コロナ処理された二軸延伸ポリプロピレンフィルム(製品名:OPP無地ロール25μm厚、東洋紡株式会社製)に、記録デューティが100%である、1.0インチ×0.5インチのベタパターン画像を記録した記録物を得た。プラテン温度を60℃で1440dpi×1440dpiのドット密度で印刷した。記録の1日後にそれぞれ、記録物のベタ画像の上に金巾綿を押し当てて評価した。評価は、JIS L0849:2013に基づいて学振式耐擦過性評価装置(製品名:AB-301、テスター産業株式会社製)を用いて200g荷重100往復の条件で行った。その後、金巾綿の汚れ、非記録部の汚れ及び印刷部分の剥がれ具合を目視で確認して、表に示す評価基準にしたがって耐擦過性の評価を行った。結果を表2に示す。
評価基準
A:金巾綿の汚れが及び非記録部の汚れもほとんどなく、印刷部分の剥がれ具合がほとんどなかった。
B:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがあるが少なく、印刷部分の剥がれ具合がほとんどなかった。
C:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがあり、印刷部分の剥がれ具合が多少あった。
D:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがかなりあり、印刷部分の剥がれ具合が多かった。
CMC:カルボキシメチルセルロース
Claims (10)
- アニオン基又はカチオン基を導入した変性ポリビニルアルコールと、3個のハロゲン原子を有するトリアジン化合物又は2,4-ジクロロ-1,3,5-トリアジンと、により合成される樹脂と、
非水溶性色材と、
水と、
を含有し、
前記トリアジン化合物の一分子中のハロゲン原子数をa、前記トリアジン化合物のモル量をx(mol)、前記変性ポリビニルアルコールのヒドロキシ基(OH基)のモル量をy(mol)とした場合、以下の式(1a)を満たす、分散液。
0.5≦(x×a-y)/x≦2.0 (1a) - 前記樹脂が、前記トリアジン化合物由来の残存ハロゲン原子を有する、請求項1に記載の分散液。
- 前記トリアジン化合物が、3個のハロゲン原子を有するトリアジン化合物である、請求項1又は2に記載の分散液。
- 活性水素基を含むポリウレタン系樹脂をさらに含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載に記載の分散液。
- 前記樹脂が、前記変性ポリビニルアルコールと、前記トリアジン化合物とを50℃以上70℃未満の温度で反応させて合成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の分散液。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の分散液を含む、インクジェット記録用インク組成物。
- 請求項6に記載のインク組成物を、記録ヘッドから吐出して被記録媒体へ付着させるインク付着工程を含む、インクジェット記録方法。
- 前記被記録媒体が、表面にヒドロキシ基を有する、請求項7に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インク付着工程と同時又はその後に、前記ヒドロキシ基と前記樹脂中の前記ハロゲン原子との反応温度以上に、前記被記録媒体を加熱する加熱工程を含む、請求項8に記載のインクジェット記録方法。
- 前記加熱工程における加熱温度が、60℃以上である、請求項9に記載のインクジェット記録方法。
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