JP7234677B2 - 多官能プロパルギル化合物及びそれを含む光学用組成物 - Google Patents

多官能プロパルギル化合物及びそれを含む光学用組成物 Download PDF

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Description

本発明は新規な多官能プロパルギル化合物及びそれを含む光学材料用組成物に関する。より詳細には、光学接着剤、プリズム、コーティング剤等の光学材料に好適に使用される新規な多官能プロパルギル化合物及びそれを含む光学材料用組成物に関する。
プラスチック材料は軽量かつ靱性に富み、しかも染色や加工性にも優れることから、各種光学材料、例えば眼鏡レンズ、カメラレンズ、光学接着剤、プリズム、コーティング剤に広く用いられている。光学材料、中でもレンズに特に要求される性能は、物理的性質としては、低比重、高透明性及び低黄色度、高耐熱性、高強度等であり、光学性能としては高屈折率と高アッベ数である。高屈折率はレンズの薄肉化を可能とし、高アッベ数はレンズの色収差を低減する。しかし、一般に屈折率が上昇するほどアッベ数は低くなるため、両者を同時に向上させる検討がなされている。
これらの検討の中で最も代表的な方法は、硫黄を含有する樹脂、例えばスルフィド系樹脂を使用する方法である。スルフィド系樹脂は、エピスルフィド化合物を含む重合性組成物を重合させて得られ、高屈折率及び高アッベ数を両立しうる材料として検討されている。また、ポリチオール化合物も高屈折率材料として知られており、ポリチオール化合物を他の単量体化合物と組み合わせた光学材料も盛んに検討されている。例えば、特許文献1には、ポリチオール化合物とプロパルギルイソ(チオ)シアネート化合物等とを含む光学材料用重合性組成物が開示され、該組成物から屈折率及びアッベ数の光学物性に優れる成形体を得たことが報告されている。また、特許文献2には、両末端に炭素-炭素三重結合を有する化合物が開示されている。
光学部品やデバイスの高機能化等のニーズに対応するためには、光重合性、および/または、様々な光学特性(屈折率、アッベ数、耐熱性、高ガラス転移温度など)を有する多様な単量体化合物が必要不可欠である。
国際公開第2014/157664号 国際公開第2016/129563号
本発明は、光学材料を製造し得る新規な単量体化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、このような状況に鑑み鋭意研究を重ねた結果、以下の本発明により上記課題を解決することができることを見出した。即ち、本発明は以下の通りである。
[1] 下記式(1)で表される多官能プロパルギル化合物:
Figure 0007234677000001
(式中、
mは、3~30の整数を示し、
は、1つまたは複数のスルフィド結合を鎖中に有していてもよいアルキルを示し、前記アルキルは場合により置換されており、
はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル、置換又は非置換のフェニル、置換又は非置換のナフチル、およびシリルからなる群から選択される。)
[2] 下記式(2)または(3)で表される[1]に記載の化合物:
Figure 0007234677000002
(式中、
pは1~10の整数を示し、
は出現するごとにそれぞれ独立して、1~5の整数を示し、
は1~5の整数を示し、
およびnはそれぞれ独立して、0~5の整数を示し、
~Rは出現するごとにそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル、-SH、及び下記式(4)で表される基から選択され、
Figure 0007234677000003
は、単結合または炭素数1~2のアルキルを示し、
波線部は結合部を示し、
~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル、置換又は非置換のフェニル、置換又は非置換のナフチル、およびシリルからなる群から選択され、
式(2)または(3)で表される化合物中に含まれる炭素―炭素三重結合の総数は3~10である。)
[3] R~Rが水素原子である、[2]に記載の化合物。
[4] 前記式(2)で表され、式(2)で表される化合物中に含まれる炭素―炭素三重結合の総数は3~5である、[2]または[3]に記載の化合物。
[5] 前記式(3)で表され、式(3)で表される化合物中に含まれる炭素―炭素三重結合の総数は3~5である、[2]または[3]に記載の化合物。
[6] 下記式(5)で表される繰り返し構造を含む、[1]に記載の化合物。
Figure 0007234677000004
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~5のアルキルを示し、
10は、それぞれ独立して、単結合または炭素数1~2のアルキルを示し、
は、3~50の整数を示す。)
[7] 下記化合物群から選択される、[1]に記載の化合物:
Figure 0007234677000005
Figure 0007234677000006
[7-1] 硫黄含有率が30~60重量%である、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物。
[8] [1]~[7][7-1]のいずれかに記載の化合物と、ポリチオール化合物とを含む、光学材料用組成物。
[9] [8]に記載の光学材料用組成物と重合触媒とを含む重合硬化性組成物を硬化した光学材料。
[10] ガラス転移温度が20℃以上である、[9]に記載の光学材料。
[11] [1]~[7][7-1]のいずれかに記載の化合物の製造方法であって、
下記式(1)’で表されるポリチオール化合物と下記式(A)で表されるプロパルギルハロゲン化物とを塩基の存在下で反応させることを含む、製造方法:
Figure 0007234677000007
(式中、mおよびRは前記式(1)と同義であり、Xはハロゲンである)。
本発明によれば、光学材料を製造し得る新規な単量体化合物が提供される。
本発明の化合物は、以下の一以上の効果を有する。
(1)光重合硬化性に優れる。例えばポリチオール化合物と光硬化重合可能である。
(2)高い屈折率を有する光学材料を得ることが可能である。
(3)架橋密度が増加し、ガラス転移点が高い光学材料を得ることが可能である。
(4)高屈折率かつ高アッベ数を有する光学材料を得ることが可能である。
図1Aおよび図1Bはそれぞれ、実施例1で製造した化合物1のH NMRチャート及び13C NMRチャートを示す図である。 図2Aおよび図2Bはそれぞれ、比較例1で製造した化合物c1のH NMRチャート及び13C NMRチャートを示す図である。 図3Aおよび図3Bはそれぞれ、比較例2で製造した化合物c2のH NMRチャート及び13C NMRチャートを示す図である。 図4Aおよび図4Bはそれぞれ、実施例3で製造した化合物2のH NMRチャート及び13C NMRチャートを示す図である。 図5Aおよび図5Bはそれぞれ、実施例4で製造した化合物6のH NMRチャート及び13C NMRチャートを示す図である。 図6Aおよび図6Bはそれぞれ、実施例5で製造した化合物7のH NMRチャート及び13C NMRチャートを示す図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下に、本明細書において記載する用語等の意義を説明し、本発明を詳細に説明する。
「アルキル」は、完全に飽和な直鎖、分岐、または環状の炭化水素鎖を指す。本明細書において、「アルキル」は、炭化水素鎖から1個の水素原子を除いた1価の基に加えて、炭化水素鎖から複数(x個)の水素原子を除いた多価(x価)の基を包含する。
例えば、「炭素数1~10のアルキル」は、最大10個の炭素原子を有するアルキルであり、例えば、以下に限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルなどが含まれる。
「低級アルキル」は、炭素数1~6のアルキルを指す。
「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)を指す。
「シリル」としては、例えば、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリフェニルシリル、フェニルジエチルシリル等を挙げることができる。 「シアノ」は、-CNを指す。
「炭素数1~4のアルキルチオ」は、炭素数1~4のアルキルの末端に硫黄原子(S)が結合した基である。例えば、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ、イソブチルチオ、t-ブチルチオ、1-メチルプロピルチオが挙げられる。
「炭素数6~20のアリール」とは、炭素数が6~20個の芳香族性の炭化水素環式基を指す。例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、インデニル、アズレニルなどが挙げられる。
本発明の一形態は、下記式(1)で表される多官能プロパルギル化合物(以下「多官能プロパルギル化合物」とも称する)を提供する。
Figure 0007234677000008
実施形態の多官能プロパルギル化合物は、末端に3つ以上の炭素―炭素三重結合、-C≡C-(好ましくはプロパルギル基、-CH-C≡CH)を含む重合性基を有する多官能プロパルギル化合物である。多官能プロパルギル化合物は、ポリチオール化合物との反応性に優れ、多官能プロパルギル化合物とポリチオール化合物とを重合させることにより優れた光学特性を有する硬化物を得ることが可能である。特に、多官能プロパルギル化合物は光重合硬化性に優れ、ポリチオール化合物と光硬化重合可能である。本発明の多官能プロパルギル化合物は少なくとも3つの炭素―炭素三重結合を有する多官能性化合物である。3つ以上の炭素―炭素三重結合の各々につき各2個のチオール基が付加し得るため、架橋密度が増加し、ガラス転移点が高い重合体が得られ得る。さらに、本発明の多官能プロパルギル化合物は複数の(少なくとも3つ)スルフィド結合(-S-)の存在によって高い硫黄含有率および高い屈折率を有し得る。
上記式(1)中、mは、3~30の整数を示す。mは好ましくは3~20であり、より好ましくは3~10であり、さらに好ましくは3~8であり、好ましくは3~5である。mは式(1)中に存在する炭素―炭素三重結合の総数に対応する。mが大きいほど硬化後の架橋密度が増加し、これによりガラス転移点が上昇(耐熱性が向上)し得る。一方、mが大きくなりすぎると合成が煩雑化する傾向があり、mは上記上限以下であることが好ましい。
上記式(1)中、Rは、1つまたは複数のスルフィド結合(-S-)を鎖中に有していてもよいアルキルを示す。Rはm価の基であり、例えば「炭素数1~30のアルキル」は炭素数1~30のアルカンからm個の水素原子を除いた基を指す。Rはスルフィド結合(-S-)を鎖中に有しない場合にはm価のアルキルである。Rがスルフィド結合(-S-)を鎖中に有する場合、例えば、r個のスルフィド結合(-S-)を鎖中に有する場合には、(r+1)個のアルキルがr個のスルフィド結合(-S-)を介して結合した構造、すなわち-(アルキル)-S-(アルキル)-・・・・-(アルキル)-S-(アルキル)-の構造を有する。Rにおけるアルキルは直鎖状、分岐状、または環状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状アルキルまたは分岐状アルキルである。rは、例えば1~30の整数であり、または1~20であり、または1~10である。Rにおけるアルキルの炭素数は、例えば1~100の整数であり、または1~60であり、または1~30である。Rにおけるアルキルの炭素数は、Rに含まれる炭素原子の総数を意味する。ポリマータイプ(例えば後述する式(5)で表される繰り返し構造を有する化合物)でない場合、Rにおけるアルキルの炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~5である。
また、Rにおけるアルキルは場合により置換されていてもよい。該アルキルの置換基としては、例えば-SHであり、Rは3~5個の-SHで置換されたアルキルでありうる。
一実施形態において、Rがスルフィド結合(-S-)を鎖中に有する炭素数2~30のアルキルである。R中にスルフィド結合(-S-)を含有することにより高屈折率の化合物が得られ得る。好ましい一形態は、Rが(r+1)個の低級アルキル(好ましくは炭素数1~4のアルキル、より好ましくは炭素数1~3のアルキル)がr個のスルフィド結合(-S-)を介して結合した構造を有する。rは1~29(好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~5)の整数である。R中に多数の硫黄原子(S)を含むことにより、高屈折率な化合物が得られ得る。
はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル、置換又は非置換のフェニル、置換又は非置換のナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)、およびシリルからなる群から選択される。式(1)中に存在するm個のRは同一でも異なっていてもよい。ただし、ジアステレオマー等の異性体の生成を抑制する点及び光重合をより均一に行う点からはRは同一であることが好ましい。Rは光重合性の面から、好ましくは水素原子、炭素数1~10のアルキル、置換又は非置換のフェニル、置換又は非置換のナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)から選択され、より好ましくは水素原子である。Rが水素原子である場合、重合性基がプロパルギル基となり、ポリチオール化合物との光重合性、硬化物の屈折率が向上し得る。特に好ましくは、式(1)中に存在するm個のRがいずれも水素原子である。
一実施形態において、多官能プロパルギル化合物は、下記式(2)または(3)で表される化合物(以下「多官能プロパルギル化合物(2)」または「多官能プロパルギル化合物(3)」とも称する)である。
Figure 0007234677000009
上記多官能プロパルギル化合物(2)または(3)中に含まれる炭素―炭素三重結合の総数は3~10であり、好ましくは3~8であり、より好ましくは3~5である。炭素―炭素三重結合の総数が大きいほど硬化後の架橋密度が増加し、これによりガラス転移点が上昇(耐熱性が向上)し得る。一方、炭素―炭素三重結合の総数が大きくなりすぎると合成が煩雑化する傾向があり、合成の面から上記上限以下であることが好ましい。
上記式(2)中、pは1~10の整数を示す。重合のしやすさの面から、pは好ましくは1~5の整数である。
上記式(2)中、nは出現するごとにそれぞれ独立して、1~5の整数を示す。nは、1~5の整数を示す。合成のしやすさの面から、nおよびnは出現するごとにそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1~2の整数である。
上記式(3)中、nおよびnはそれぞれ独立して、0~5の整数を示す。合成のしやすさの面から、nおよびnはそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1~2の整数である。
上記式(2)および式(3)中、R~Rは出現するごとにそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル、-SH、及び下記式(4)で表される基から選択される。式(2)中に存在するn個のR、n個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。式(3)中に存在するn個のR、n個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、式(2)中に存在するp個の
Figure 0007234677000010
もそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、nおよびRは出現するごとにそれぞれ独立して選択される。R~Rは、それぞれ独立して、好ましくは、水素原子、炭素数1~10のアルキル、-SH、及び下記式(4)で表される基から選択され、より好ましくは水素原子、-SH及び下記式(4)で表される基から選択され、さらに好ましくは水素原子及び下記式(4)で表される基から選択される。
Figure 0007234677000011
上記式(4)中、波線部は結合部を示す。Rは、単結合または炭素数1~2のアルキル(具体的にはメチレン、エチレン)を示し、屈折率の点で好ましくは単結合またはメチレンである。
上記式(2)~(4)中、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル、置換又は非置換のフェニル、置換又は非置換のナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)、およびシリルからなる群から選択される。R~Rは光重合性の面から、好ましくは水素原子、炭素数1~10のアルキル、置換又は非置換のフェニル、置換又は非置換のナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)から選択され、より好ましくは水素原子である。R~Rが水素原子である場合、重合性基がプロパルギル基となり、ポリチオール化合物との光重合性、硬化物の屈折率が向上し得る。上記式(2)または式(3)において同一化合物中に存在するR~Rは同一でも異なっていてもよい。ただし、ジアステレオマー等の異性体の生成を抑制する点及び光重合をより均一に行う点からは同一化合物中に存在するR~Rは同一であることが好ましい。特に好ましくは、上記式(2)~(4)中のR~Rがいずれも水素原子である。
上記式(1)~(4)における、R~Rにおけるフェニル及びナフチルは、場合により-SR(式中、Rは水素原子または炭化水素基である)、-S(O)R(式中、Rは炭化水素基である)、-S(O)R(式中、Rは炭化水素基である)、炭素数1~4のアルキル、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)、炭素数1~4のアルキルチオ、及びシアノからなる群からそれぞれ独立して選択される1~7個の置換基で置換されていてもよい。式中のRにおける炭化水素基は特に制限されないが、例えば、炭素数1~10のアルキルまたは炭素数6~20のアリールが挙げられ、好ましくは、屈折率の観点からメチル、フェニル、ナフチルである。
中でも、フェニル及びナフチルの好ましい置換基は、非置換、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。好ましくはR~Rにおけるフェニル及びナフチルは、製造工程の簡略化の点から非置換のフェニル及びナフチルである。
好ましい実施形態において、多官能プロパルギル化合物は、上記式(2)で表され、RおよびRは水素原子であり、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5(より好ましくは炭素数1~2)のアルキル、及び上記式(4)で表される基から選択され、RおよびRが上記式(4)で表される基である場合、Rは、単結合または炭素数1~2のアルキルであり、Rは水素原子であり、pは1~3の整数を示し、nおよびnはそれぞれ独立して、1~5の整数(より好ましくは1~2の整数)を示し、プロパルギル基の総数は3~8(より好ましくは3~5)である。
当該実施形態において、さらに好ましくは、RおよびRは水素原子及び上記式(4)で表される基から選択される。
他の好ましい実施形態において、多官能プロパルギル化合物は、上記式(3)で表され、RおよびRは水素原子であり、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5(より好ましくは炭素数1~2)のアルキル、及び上記式(4)で表される基から選択され、R~Rが上記式(4)で表される基である場合、Rは、単結合または炭素数1~2のアルキルであり、Rは水素原子であり、nおよびnはそれぞれ独立して、1~5の整数(より好ましくは1~2の整数)を示し、プロパルギル基の総数は3~8(より好ましくは3~5)である。
当該実施形態において、さらに好ましくは、RおよびRは上記式(4)で表される基から選択され、RおよびRは水素原子及び炭素数1~5(より好ましくは炭素数1~2)のアルキル、から選択される。
好ましい実施形態において、多官能プロパルギル化合物は、下記式(5)で表される繰り返し構造を含むポリマーである。
Figure 0007234677000012
上記式(5)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~5のアルキルを示す。Rは、好ましくは水素原子または炭素数1~2のアルキルであり、より好ましくは水素原子である。
上記式(5)中、R10はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1~2のアルキル(具体的にはメチレン、エチレン)を示す。R10は、好ましくはメチレンである。
上記式(5)中、nは3~50の整数を示す。nは好ましくは3~30であり、より好ましくは5~30である。あるいは、nは例えば5~20または5~10である。
上記式(5)で表される繰り返し構造を含む多官能プロパルギル化合物は、重合性官能基数及びモノマーの粘性を調整できる面で好ましい。
上記式(5)で表される繰り返し構造を含む多官能プロパルギル化合物の末端は特に制限されないが、通常は水素原子、炭素数1~4のアルキル、または炭素数1~4のアルキルチオである。
一実施形態において、多官能プロパルギル化合物は、下記式(5a)で表される。
Figure 0007234677000013
上記式(5a)中、R、R10、およびnは、上記式(5)と同義である。上記式(5a)中、R11およびR12はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~4のアルキル、および炭素数1~4のアルキルチオから選択される。
一実施形態において、多官能プロパルギル化合物は、下記式(5b)で表される。
Figure 0007234677000014
上記式(5b)中、nは、上記式(5)と同義である。
一実施形態において、多官能プロパルギル化合物の硫黄含有率は、高屈折率の面から、30重量%以上である。好ましくは30~60重量%であり、より好ましくは40~60重量%である。多官能プロパルギル化合物の硫黄含有率は、多官能プロパルギル化合物に含まれる硫黄原子の重量割合である。
多官能プロパルギル化合物の具体例は例えば以下の通りである。
Figure 0007234677000015
Figure 0007234677000016
実施形態の多官能プロパルギル化合物は、光重合性に優れる。
さらに、実施形態の多官能プロパルギル化合物は、高い硫黄含有率および高い屈折率を有しうる。光学材料として使用するためには、単量体である多官能プロパルギル化合物の屈折率は1.55以上であることが好ましく、1.60以上であることがより好ましい。屈折率は屈折率計により測定することができる。屈折率は、20~25℃、589nm(D線)で測定した値である。
また、実施形態の多官能プロパルギル化合物は高い架橋密度の重合体を与える単量体として有用である。
実施形態の多官能プロパルギル化合物は、ポリチオール化合物とプロパルギルハロゲン化物(HC≡CHX;Xはハロゲンである)とを反応させることにより合成することができる。ポリチオール化合物のチオール基(-SH)がHC≡CHXと反応することにより、ポリチオール化合物のチオール基がプロパルギル基に変換された化合物を得ることができる。
例えば、式(1)の多官能プロパルギル化合物は、下記式(1)’で表されるポリチオール化合物と下記式(A)で表されるプロパルギルハロゲン化物とを塩基の存在下で反応させることを含む、製造方法により製造することができる。
Figure 0007234677000017
上記式(1)’中、mおよびRは前記式(1)と同義である。
上記式(A)中、Xはハロゲンである。
具体的には、以下のスキーム1により合成可能である。
Figure 0007234677000018
具体的にはポリチオール化合物(1)’(R-(SH))とプロパルギルブロミドなどのプロパルギルハロゲン化物とを塩基の存在下で反応させることにより多官能プロパルギル化合物を得ることができる。
(方法1)
例えば、塩基として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの強塩基を用いる方法がある。好ましくは、ポリチオール化合物と強塩基とを有機溶媒中で十分に混合した後にプロパルギルハロゲン化物を添加して反応を進行させる。反応は撹拌しながら行うことが好ましい。これにより多官能プロパルギル化合物が得られる。
反応系におけるポリチオール化合物とプロパルギルハロゲン化物との混合比率は反応が進行し得る限り特に制限されない。例えば、廃棄物及び副生成物の抑制の点で、ポリチオール化合物のチオール基1ユニットに対するプロパルギルハロゲン化物の量が1~1.5当量であることが好ましい。
ポリチオール化合物とプロパルギルハロゲン化物との反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としてはポリチオール化合物とプロパルギルハロゲン化物との反応が進行しうる限り特に制限されないが、反応性及び経済性の点で、アルコール(例えばメタノール、エタノール)、水、アセトンなどの有機溶媒が好ましい。これらは単独でも混合して用いてもよい。
強塩基の添加量は、ポリチオール化合物とプロパルギルハロゲン化物との反応が進行し得る限り特に制限されない。例えば、廃棄物及び副生成物の抑制の点で、ポリチオール化合物のチオール基1ユニットに対する塩基の量が1~1.5当量であることが好ましい。
反応温度は、反応が進行するのであれば特に制限はないが、反応性及び選択性の点で好ましくは0~60℃で実施する。
反応時間も特に制限されないが、例えば1~24時間である。なお、反応時間は、反応物の混合(滴下)が完了した時点から反応終了までの時間を指す。
(方法2)
別法として、塩基として、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等を用いる方法がある。好ましくは、ポリチオール化合物と塩基とを有機溶媒中で十分に混合した後に、室温~80℃でプロパルギルハロゲン化物を添加して反応を進行させる。反応は撹拌しながら行うことが好ましい。これにより多官能プロパルギル化合物が得られる。
反応系におけるポリチオール化合物とプロパルギルハロゲン化物との混合比率は反応が進行し得る限り特に制限されない。例えば、廃棄物及び副生成物の抑制の点で、ポリチオール化合物のチオール基1ユニットに対するプロパルギルハロゲン化物の量が1~2当量であることが好ましい。
ポリチオール化合物とプロパルギルハロゲン化物との反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としてはポリチオール化合物とプロパルギルハロゲン化物との反応が進行しうる限り特に制限されないが、反応性の点で、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、ジクロロメタン等の有機溶媒が好ましい。これらは単独でも混合して用いてもよい。
塩基の添加量は、ポリチオール化合物とプロパルギルハロゲン化物との反応が進行し得る限り特に制限されない。例えば、反応性の点で、ポリチオール化合物のチオール基1ユニットに対する塩基の量が1~3当量であることが好ましい。
反応温度は、反応が進行するのであれば特に制限はないが、反応性及び選択性の点で好ましくは室温~80℃で実施する。
反応時間も特に制限されないが、例えば1~24時間である。なお、反応時間は、反応物の混合(滴下)が完了した時点から反応終了までの時間を指す。
上記方法1または方法2で得たプロパルギル化合物のアルキン末端に水素原子以外の置換基(R)を導入する場合には、さらに、例えば、パラジウム錯体及び銅錯体を触媒として用いる薗頭カップリング反応を行う(K. Sonogashira, J. Organomet. Chem., 2002, 653, 46-49)。具体的には、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を触媒としてハロゲン化アリールと反応させるとアルキン末端にアリール基を導入でき(Y. Liang, Y.-X. Xie, J.-H. Li, J. Org. Chem., 2006, 71, 379-381)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)とヨウ化銅を触媒としてハロゲン化アルキルと反応させるとアルキン末端にアルキル基を導入できる(C.-M. Chao, D. Beltrami, P. Y. Toullec, V. Michelet, Chem. Commun., 2009, 45, 6988-6990)。また、硝酸銀を触媒としてN-ブロモスクシンイミドと反応させるとアルキン末端に臭素を導入でき(T. R. Hoye, B. Baire, D. Niu, P. H. Willoughby, B. P. Woods, Nature, 2012, 490, 208-212)、同様に硝酸銀を触媒としてN-クロロスクシンイミドと反応させるとアルキン末端に塩素を導入できる(E. Bednarova, E. Colacino, F. Lamaty, M. Kotora, Adv. Synth. Catal., 2016, 358, 1916-1923)。
反応後、目的とする多官能プロパルギル化合物の単離、精製を行い、反応生成物中に含まれる副生成物や異性体化合物を除去してもよい。単離、精製は常法により行うことができる。例えば、溶媒による抽出、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、減圧蒸留または再結晶など公知の方法によって行うことができる。
例えば、上記多官能プロパルギル化合物(2)または(3)は下記の対応するポリチオール化合物(2)’または(3)’とプロパルギルハロゲン化物(HC≡CHX;Xはハロゲンである)とを反応させることにより上記スキーム1にしたがって合成することができる。
Figure 0007234677000019
上記式(2)’または(3)’中、pおよびn~nは前記式(2)または(3)と同義である。
上記式(2)’または(3)’中、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル、-SH、及び下記式(4)’で表される基から選択され、式(4)’で表される基を除き前記式(2)または(3)と同義である。式(4)’中のRの定義は前記式(4)と同義である
Figure 0007234677000020
例えば、上記多官能プロパルギル化合物1~6、7aは、下記の対応するポリチオール化合物1’~6’、7a’から上記スキーム1により合成することができる。
Figure 0007234677000021
また、上記式(5)で表される繰り返し構造を有する化合物(例えば上記多官能プロパルギル化合物7)を合成する場合には、例えば、下記のスキームに示すように、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)のような強塩基を触媒とする2-(2-プロピニルチオメチル)チイランのリビングアニオン重合によっても合成できる。
Figure 0007234677000022
例えば、M. J. Uddin, T. A. Werfel, B. C. Crews, M. K. Gupta, T. E. Kavanaugh, P. J. Kingsley, K. Boyd, L. J. Marnett, C. L. Duvall, Biomaterials, 2016, 92, 71-80には、プロピレンスルフィドをモノマーとする類似の反応が報告されており、当該反応を参照して及びこれを改変して、所望の式(5)で表される繰り返し構造を有するポリマー化合物を合成することができる。例えば、後述する実施例5に記載の方法により式(5b)で表されるポリマーを合成することができる。
原料となるポリチオール化合物は市販品を使用してもよいが、従来公知の方法で合成して得てもよい。ポリチオール化合物の合成方法は例えば、特開平2-270859号、特開平6-72989号、特開平7-252207号、特開2005-263791号などに開示されている。当業者であれば当該合成方法を参照して及びこれを改変して所望の3官能以上のポリチオール化合物(上記式(1)’~(3)’で表されるポリチオール化合物、例えば、上記化合物1’~7’)を合成することができる。
例えば、特開2005-263791号には、ビシナルジチオールの合成方法として、1以上のチイラン環を有するエピスルフィド化合物とチオカルボンS-酸とを塩基の存在下で反応させてチオカルボン酸S-エステルを得、次いで該チオカルボン酸S-エステルを塩基の存在下で加水分解してメルカプチドを得、次いで該メルカプチドを酸によりビシナルジチオールに変換する方法が開示されている。同文献の実施例1には、下記スキームによりチオ酢酸(AcSH)から1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン(TMTH)(化合物1’)を得る方法が開示されている。
Figure 0007234677000023
また、特開平2-270859号には、ポリチオール化合物の合成方法として、グリセリン誘導体やエピハロヒドリンと2-メルカプトエタノールをアルカリ存在下、冷却又は加熱しながら反応させ、トリオールを得、該トリオールを鉱酸の存在下でチオ尿素と反応させた後に、アルカリによる加水分解をする方法が開示されている。また、同文献の実施例には下記スキームにより4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール(GST)(上記化合物2’)を得る方法が開示されている。
Figure 0007234677000024
また、特開平7-252207号には、4官能以上のポリチオール化合物の合成方法として、エピクロロヒドリンと2-メルカプトエタノールをアルカリ存在下で反応させてテトラオールを得、該テトラオールを鉱酸の存在下でチオ尿素と反応させた後に、アルカリによる加水分解をする方法;および;エピクロロヒドリンとチオグリセロールとをアルカリ存在下で反応させてトリオールを得、該トリオールに塩化チオニルを反応させた後に、チオ尿素を反応させてイソチウロニウム塩体とした後、抱水ヒドラジンを加えて加水分解を行う方法が開示されている。また、同文献の実施例1には下記スキームにより4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン混合物(DDT)(上記化合物4’、3’、5’の異性体混合物)を得る方法が開示されている。
Figure 0007234677000025
また、特開平6-72989号にはペンタエリスリチオールの製造法として、ペンタエリスリトールテトラハライドを極性溶媒中でトリチオ炭酸塩と反応させ、次いで酸により加水分解する方法が開示されている。また、同文献の実施例1には下記スキームによりペンタエリスリチオール(上記化合物6’)を得る方法が開示されている。
Figure 0007234677000026
本発明のさらなる一形態は上記式(1)で表される多官能プロパルギル化合物を含む光学材料用組成物に関する。組成物中に含まれる多官能プロパルギル化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもよい。本形態の光学材料用組成物は前記式(1)で表される多官能プロパルギル化合物と前記式(1)で表される多官能プロパルギル化合物以外の重合可能な化合物(重合性化合物)とを含む。重合性化合物としては、ポリチオール化合物、不飽和二重結合を有する化合物、更にポリチオール化合物を介して重合可能なポリイソシアネート化合物、エピスルフィド化合物、硫黄、テトラチアスピロ化合物が挙げられる。多官能プロパルギル化合物以外の複数の種類の重合性化合物を併用し、その配合比や種類を調整することで、得られる硬化物の、屈折率、ガラス転移温度、柔軟性、接着性、重合収縮、表面硬度などの少なくとも一つの特性を調整することができる。
光学材料用組成物における式(1)で表される多官能プロパルギル化合物の含有量は特に制限されないが、光学材料用組成物の合計(100質量部)に対して、10質量部以上とすることが好ましく、30質量部以上とすることがより好ましく、50質量部以上とすることが特に好ましい。これにより、高い屈折率および高いガラス転移温度などの少なくとも一つの改良された光学材料が得られる。
一実施形態において、光学材料用組成物は、上記式(1)で表される多官能プロパルギル化合物とポリチオール化合物とを含む。ポリチオール化合物は光重合可能であり、上記式(1)で表される多官能プロパルギル化合物との光硬化重合性に優れることに加え、得られる光学材料(樹脂)の加熱時の色調を改善しうる。
特に、実施形態の多官能性プロパルギル化合物の炭素―炭素三重結合(プロパルギル基)によるチオール-イン反応は、高い架橋密度の重合体を与え、したがって、ガラス転移点及び屈折率が向上した重合体が得られる。
ポリチオール化合物は、分子中に2個以上のチオール基を含む化合物である。ポリチオール化合物は特に制限されず、すべてのポリチオール化合物を包含する。
ポリチオール化合物の好ましい具体例は、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン、ペンタエリスリチオール、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、及びトリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネートであり、より好ましくは、1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン、ペンタエリスリチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、2,5-ビス(2-メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、及びペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートであり、特に好ましい化合物は、1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン、ペンタエリスリチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、及び4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンである。
ポリチオール化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもよい。
実施形態の光学材料用組成物中のポリチオール化合物の配合量は特に制限されない。実施形態の光学材料用組成物におけるポリチオール化合物の含有量は、光学材料用組成物の合計(100質量部)に対して、例えば10質量部以上90質量部以下である。好ましくは、上記式(1)で表される多官能プロパルギル化合物の三重結合(末端のプロパルギル基)数の2倍とポリチオール化合物のSH基の官能基比が例えば99:1~1:99、好ましくは99:1~40:60の比率となる量で混合し得る。
本発明の光学材料用組成物は、得られる樹脂の強度を改善するためポリイソシアネート化合物を重合性化合物として含んでも良い。ポリイソシアネート化合物は分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。特に、光学材料用組成物はポリチオール化合物とともにポリイソシアネート化合物を含むことが好ましい。ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とポリチオール化合物のチオール基とは容易に熱硬化反応して高分子量化し、光学材料の機械的強度が向上しうる。
ポリイソシアネート化合物は特に制限されず、すべてのポリイソシアネート化合物を包含する。
ポリイソシアネート化合物の好ましい具体例は、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルネン、及び2,5-ジイソシアナトメチル-1,4-ジチアンの中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物であり、中でも好ましい化合物は、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びm-キシリレンジイソシアネートであり、特に好ましい化合物は、イソホロンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンである。
ポリイソシアネート化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもよい。
光学材料用組成物中に含まれるポリイソシアネート化合物のNCO基に対するポリチオール化合物中のSH基の割合、即ち[組成物中ポリチオール化合物の合計SH基数/組成物中ポリイソシアネート化合物のNCO基数](SH基/NCO基)は、好ましくは1.0~2.5であり、より好ましくは1.25~2.25であり、さらに好ましくは1.5~2.0である。上記割合が1.0を下回ると成型時に黄色く着色する場合があり、2.5を上回ると耐熱性が低下する場合がある。
本発明の光学材料用組成物は、屈折率調整のためエピスルフィド化合物を重合性化合物として含んでも良い。本発明で用いられるエピスルフィド化合物は、特に制限されず、すべてのエピスルフィド化合物を包含する。好ましい化合物は、ビス(β-エピチオプロピル)スルフィド及び、ビス(β-エピチオプロピルジスルフィド)であり、特に、ビス(β-エピチオプロピル)スルフィドが好ましい。
本発明の光学材料用組成物は得られる光学材料(樹脂)の屈折率を向上するため硫黄を重合性化合物として含んでも良い。好ましくは硫黄とエピスルフィド化合物とを併用することが好ましい。かかる場合は、あらかじめエピスルフィド化合物と硫黄を予備的に反応させておくことが好ましい。
硫黄の形状はいかなる形状でもよい。具体的には、硫黄は、微粉硫黄、コロイド硫黄、沈降硫黄、結晶硫黄、昇華硫黄等であるが、好ましくは、粒子の細かい微粉硫黄である。入手方法は特に限定されず、市販品を使用できる。
本発明の光学材料用組成物は、テトラチアスピロ化合物を含んでもよい。テトラチアスピロ化合物は、テトラチアスピロ環(テトラチアスピロ[4.4]ノナン)を有する二官能性モノマーであり、例えば、末端に二重結合(アリル基)または三重結合(プロパルギル基)を有する化合物が挙げられる。テトラチアスピロ化合物の具体例は、例えば、国際公開第WO 2017/183549号のパンフレット、特願2017-119930号明細書に記載されている。
上記式(1)の多官能プロパルギル化合物は3つ以上の炭素―炭素三重結合(好ましくはプロパルギル基)を含む重合性基を有するため、重合反応により硬化し、光学材料(樹脂)が得られる。重合反応としては、光重合反応や熱重合反応などが挙げられる。周辺部材への熱的影響を考慮することなく重合可能である光重合反応(光重合性組成物)の方が好ましい。熱重合と光重合(光線照射による硬化)とを組み合わせてもよい。
例えば、多官能プロパルギル化合物の末端の炭素―炭素三重結合(好ましくはプロパルギル基)とポリチオール化合物のチオール基との付加反応(チオール-イン反応)により硬化反応が進行する。
Figure 0007234677000027
上記のように、チオール-イン反応では、末端の炭素―炭素三重結合(プロパルギル基)1つに対して2つのチオール基(SH)が反応し得るのに対し、チオール-エン反応では、末端の二重結合1つに対して1つのチオール基(SH)が反応し得る。したがって、チオール-イン反応により得られる硬化物は、不飽和二重結合を含む重合性基(例えば、アリル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基など)とのチオール基との間のチオール-エン反応により得られる硬化物に比べて、架橋密度がより高くなる。実施形態の多官能プロパルギル化合物は、少なくとも3つの炭素―炭素三重結合を有しており、高架橋密度および高ガラス転移点を有する重合体を形成しうる。
本発明の光学材料用組成物を重合反応させて光学材料を得るに際して、重合反応を促進するため重合触媒を添加することが好ましい。すなわち、本発明の組成物は前記光学材料用組成物と重合触媒とを含む重合硬化性組成物でありうる。上記式(1)の多官能プロパルギル化合物は容易に光重合可能である。したがって、本発明の一実施形態では、光学材料用組成物と重合触媒とを含む重合硬化性組成物を、紫外線または可視光の照射により硬化させることを特徴とする硬化物の製造方法が提供される。
光重合反応の場合、本発明の組成物(光学材料用組成物または重合硬化性組成物)を、光線(活性エネルギー線)の照射により硬化させることにより、硬化物としての光学材料(樹脂)が製造される。光線としては組成物の効果が可能であれば特に制限されないが、通常、紫外線、可視光線、放射線、電子線であり、好ましく紫外線または可視光、より好ましくは重合速度が速いことから紫外線である。光線の照射強度は特に制限されないが、通常10~100000mW/cmである。照射時間は特に制限されないが、通常1分~数時間、例えば1~60分である。照射温度は特に制限されず、室温付近で重合可能である。
重合触媒としては、特に制限はなく、反応物の種類、重合条件等に合わせて、適宜選択すればよい。光重合の場合、光(好ましくは活性エネルギー線)の照射によりラジカルを発生する化合物(光分解型ラジカル重合開始剤)が好ましく、具体例としては、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、アシルフォスフィンオキサイド誘導体が挙げられる。その中でも市販品として、ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(チバ・スペシャルティケミカルズの商品名イルガキュア(登録商標)184)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア(登録商標)2959)、2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティケミカルズの商品名イルガキュア(登録商標)TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティケミカルズの商品名イルガキュア(登録商標)819)などが好ましく使用される。
あるいは、光重合反応に用いる重合触媒として、酸化剤と還元剤との共存でラジカル(遊離基)を発生する化合物(レドックス系重合開始剤)を使用することも好ましい。具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t-ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物等から選択される酸化物と、L-アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム等から選択される還元性化合物とを組み合わせた系が挙げられる。
あるいは、光重合反応に用いる重合触媒として、可視光などの光の照射によりラジカルを発生する光レドックス触媒も好ましく使用される。具体例としては、ルテニウム(II)ポリピリジル錯体(例えば、Ru(bpz)-(PF触媒など)、イリジウム(III)フェニルピリジル錯体などの遷移金属錯体が挙げられる。
熱重合反応の場合、本発明の組成物(光学材料用組成物または重合硬化性組成物)を、加熱によって重合(硬化)させることで硬化物としての光学材料(樹脂)が製造される。
熱重合反応に用いる重合触媒として、加熱によりラジカルを発生する化合物(熱分解型ラジカル重合開始剤)が好ましい。具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素;t-ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-2-(イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)などのアゾ化合物が挙げられる。
重合触媒は一種を単独でまたは複数種を混合して使用することができる。
重合触媒の添加量は、組成物の成分、混合比及び重合硬化方法によって変化するため一概には決められないが、通常は光学材料用組成物の合計100質量%に対して、0.0001質量%~10質量%、好ましくは、0.001質量%~5質量%である。添加量が10質量%より多いと急速に重合する場合がある。添加量が0.0001質量%より少ないと光学材料用組成物が十分に硬化せず耐熱性が不良となる場合がある。したがって、本発明の好ましい一形態において、光学材料の製造方法は重合触媒を前記光学材料用組成物総量に対して0.0001~10質量%添加し、重合硬化させる工程を含む。
本発明の組成物の加熱による重合(硬化)は通常、以下のようにして行われる。即ち、硬化時間は通常1~100時間であり、硬化温度は通常-10℃~140℃である。重合は所定の重合温度で所定時間保持する工程、0.1℃~100℃/hの昇温を行う工程、0.1℃~100℃/hの降温を行う工程によって、またはこれらの工程を組み合わせて行う。なお、硬化時間とは昇温過程等を含めた重合硬化時間をいい、所定の重合(硬化)温度で保持する工程に加えて、所定の重合(硬化)温度へと昇温・冷却工程を含む。
重合硬化工程(光重合及び熱重合)は特に限定されないが、金属、セラミック、ガラス、樹脂製等の金型を用いた硬化工程であることが好適である。具体的には、組成物の各成分(光学材料組成物の各成分、重合触媒等)を混合する。これらは、全て同一容器内で同時に撹拌下に混合しても、各原料を段階的に添加混合しても、数成分を別々に混合後さらに同一容器内で再混合しても良い。また、各原料及び副原料はいかなる順序で混合してもかまわない。混合にあたり、設定温度、これに要する時間等は基本的には各成分が十分に混合される条件であれば良い。このようにして得られた光学材料用組成物または重合硬化性組成物はモールド等の型に注型し、加熱や紫外線などの光線の照射によって重合硬化反応が進められた後、型から外される。このようにして、本発明の光学材料用組成物または重合硬化性組成物を硬化した光学材料が得られる。重合反応(硬化工程)は、空気中、または、窒素等の不活性ガス雰囲気下、減圧下または加圧下のいずれの雰囲気下でも行うことができる。
硬化終了後、得られた光学材料を50~150℃の温度で10分~5時間程度アニール処理を行うことは、本発明の光学材料の歪を除くために好ましい処理である。さらに得られた光学材料に対して、必要に応じてハードコート、反射防止、等の表面処理を行ってもよい。
本発明の光学材料を製造する際、光学材料用組成物に紫外線吸収剤、酸化防止剤、密着性改善剤、離型剤等の添加剤を加え、得られる光学材料の実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。
本発明の組成物(光学材料用組成物・重合硬化性組成物)は、上述のようにして高い屈折率、高い架橋密度、高いガラス転移温度などの少なくとも一つに優れた成形体を与えることができる。このように、上記組成物を硬化して得られる成形体(硬化物)もまた、本発明の1つである。
一実施形態の成形体(硬化物)は、ガラス転移温度が20℃又は室温以上(より好ましくは70℃以上)である。このような成形体は、広範な用途に使用できる。
一実施形態の成形体(硬化物)は、高屈折率材料である。具体的には屈折率が、1.60以上であることが好ましく、1.65以上であることがより好ましく、1.69以上であることが一層好ましく、1.70以上であることがさらに好ましい。屈折率は屈折率計により測定することができる。屈折率は、20~25℃、589nm(D線)で測定した値である。
一実施形態の成形体(硬化物)は、アッベ数(ν)が32以上(より好ましくは33以上、さらに好ましくは35以上)である。アッベ数は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
成形体は、例えば、光学材料(部材)、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に有用である。中でも、光学材料、例えば、眼鏡レンズ、(デジタル)カメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料、プリズム、フィルター、回折格子、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイバックライト、導光板、ディスプレイ保護膜、反射防止フィルム、防曇フィルム等のコーティング剤(コーティング膜)などの表示デバイス用途等が好適である。上記光学材料としては、特に、光学用接着剤、プリズム、コーティング剤であることが好適である。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。 本明細書において、「室温」または「rt」は通常約10℃から約35℃を示す。%は特記しない限り重量パーセントを示す。
<評価>
1.屈折率の評価
化合物及び光学材料(硬化物)の屈折率は、屈折率計(島津製作所製KPR-2000)にて測定した。単量体化合物の屈折率は、21℃、589nm(D線)で測定した値である。なお、単量体化合物はいずれも液体またはシロップ状であり、液体状態で屈折率を測定した。硬化物の屈折率は、25℃、589nm(D線)で測定した値である。
2.化合物の同定
400MHz核磁気共鳴分光装置(H及び13C NMR)(JEOL社製 ECS-400SS)。
3.5%重量減少温度の測定
5%重量減少温度は示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA6200)を用いて測定した。具体的には、サンプルを、窒素雰囲気下で常温より10℃/分で昇温し、重量が初期重量に比べて5%の重量減少した温度を求めた。5%重量減少温度が大きいほど耐熱性が高いことを示す。
4.ガラス転移温度の測定
実施例6、比較例4のガラス転移温度は、セイコーインスツル製DMS6100を用いた動的粘弾性測定(DMA)により測定した。具体的には、サンプルを30℃より2℃/分で昇温しつつ1Hzの振動を与え、得られたtanδの曲線のピークトップをガラス転移温度とした。
比較例3のガラス転移温度は、示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した(日立ハイテクサイエンス社製DSC6200)。具体的には、サンプルを、窒素雰囲気下で-80℃または-60℃より5℃/分で昇温し、ベースラインが下がる場所の変曲点での接線の交点をガラス転移温度とした。
5.アッベ数の評価
光学材料(硬化物)のアッベ数(ν)は、屈折率計(アタゴ製DR-M4)にてF線(486nm)の屈折率(n)、d線(588nm)の屈折率(n)、およびC線(656nm)の屈折率(n)を測定し、ν=(n-1)/(n-n)の式より算出した。
6.S-プロパルギルポリマーの分子量測定
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー社製 HLC-8220)を用いて、後述するS-プロパルギルポリマー(化合物7)の数平均分子量(M)および分子量分布(M/M)を決定した。
具体的には、化合物7を0.01M LiBr含有DMFに溶解し、GPCを用いて測定を行い、重合体の数平均分子量(M)および分子量分布(M/M)を決定した。各重合体のM、M、及びM/Mは、標準ポリスチレンによる検量線を基に算出した。
装置:東ソー社製 HLC-8220
カラム:東ソー社製 TSKgel 3本 (Super AW4000, Super AW3000, Super AW2500)およびTSKガードカラム(Super AW-H)を直列接続
移動相溶媒:0.01M LiBr含有DMF
流速:0.5mL/分
温度:40℃
サンプル濃度:0.07%
サンプル注入量:50μL
検出器:RI
<多官能プロパルギル化合物の製造>
<実施例1>
1,2,6,7-テトラキス(プロパルギルチオ)-4-チアヘプタン(化合物1)の合成(方法1)
Figure 0007234677000028
50mLナスフラスコ中の1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン(1.23g,5mmol)にメタノール(5mL)を加えて撹拌を開始し、そこへメタノール(10mL)に溶解した純度85%の水酸化カリウム(1.39g,21mmol)の溶液を室温で10分かけて滴下した。更に室温で10分撹拌した後に氷浴で0℃に冷却し、そこへメタノール(5mL)に溶解したプロパルギルブロミド(2.50g,21mmol)の溶液を10分かけて滴下した。更に0℃で2時間攪拌した後にエバポレーターで溶媒留去した。残渣にエーテル(30mL)を加えて純水(10mL×4)と飽和食塩水(10mL)とで洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。エバポレーターで溶媒留去後に残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム=3:2)で精製し、淡橙色油状物の1,2,6,7-テトラキス(プロパルギルチオ)-4-チアヘプタン(化合物1)を収率90%(1.79g)で得た。この四官能性S-プロパルギルモノマーである1,2,6,7-テトラキス(プロパルギルチオ)-4-チアヘプタン(化合物1)の屈折率は1.613(589nm,21℃)であった。また、得られた化合物1の構造をH及び13C NMR分析にて同定した(図1)。なお、化合物1の硫黄含有率は40.2重量%である。
<実施例2>
1,2,6,7-テトラキス(プロパルギルチオ)-4-チアヘプタン(化合物1)の合成(方法2)
Figure 0007234677000029
50mLナスフラスコ中の1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン(1.23g,5mmol)に乾燥アセトニトリル(20mL)と炭酸カリウム(5.53g,40mmol)を加えて撹拌を開始し、そこへプロパルギルブロミド(3.57g,30mmol)を添加し、次いで油浴45℃で12時間撹拌した。エバポレーターで溶媒留去後の残渣に酢酸エチル(20mL)を加えて純水(20mL×3)と飽和食塩水(10mL)とで洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。エバポレーターで溶媒留去後に残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム=3:2)で精製し、淡橙色油状物の1,2,6,7-テトラキス(プロパルギルチオ)-4-チアヘプタン(化合物1)を収率94%(1.86g)で得た。得られた1,2,6,7-テトラキス(プロパルギルチオ)-4-チアヘプタン(化合物1)の屈折率とH及び13C NMRは、実施例1で合成した化合物1と同じであった。
<比較例1>
ビス(プロパルギル)スルフィド(化合物c1)の合成
Figure 0007234677000030
20mLナスフラスコ中の硫化ナトリウム九水和物(2.40g,10mmol)に純水(2mL)を加えて均一な溶液とし、そこへt-ブチルメチルエーテル(2mL)に溶解したプロパルギルブロミド(2.38g,20mmol)の溶液を加えて室温で4時間撹拌した。この反応液をt-ブチルメチルエーテル(10mL×2)で抽出し、合わせた有機相を20%チオ硫酸ナトリウム水溶液(10mL)と純水(10mL×2)と飽和食塩水(10mL)とで洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。エバポレーターで溶媒留去後に残渣を減圧蒸留(圧力:1.6kPa、温度:53~54℃)で精製し、微黄色透明液体のビス(プロパルギル)スルフィド(化合物c1)を収率89%(980mg)で得た。この二官能性S-プロパルギルモノマー(化合物c1)の屈折率は1.514(589nm,21℃)であった。また、得られた化合物c1の構造をH及び13C NMR分析にて同定した(図2)。なお、化合物c1の硫黄含有率は29.1重量%である。
<比較例2>
1,2-ビス(プロパルギルチオ)プロパン(化合物c2)の合成
Figure 0007234677000031
50mLナスフラスコ中の1,2-プロパンヂチオール(1.08g,10mmol)にメタノール(5mL)を加えて撹拌を開始し、そこへメタノール(10mL)に溶解した純度85%の水酸化カリウム(1.39g,21mmol)の溶液を室温で10分かけて滴下した。更に室温で10分撹拌した後に氷浴で0℃に冷却し、そこへメタノール(5mL)に溶解したプロパルギルブロミド(2.50g,21mmol)の溶液を10分かけて滴下した。更に0℃で1時間攪拌した後にエバポレーターで溶媒留去した。残渣にエーテル(20mL)を加えて純水(10mL×3)と飽和食塩水(10mL)とで洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。エバポレーターで溶媒留去後に残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15:1)で精製し、淡黄色油状物の1,2-ビス(プロパルギルチオ)プロパン(化合物c2)を収率81%(1.49g)で得た。この二官能性S-プロパルギルモノマーである1,2-ビス(プロパルギルチオ)プロパン(化合物c2)の屈折率は1.550(589nm,21℃)であった。また、得られた化合物c2の構造をH及び13C NMR分析にて同定した(図3)。なお、化合物c2の硫黄含有率は34.8重量%である。
<実施例3>
1,8-ビス(プロパルギルチオ) -4-(プロパルギルチオ)メチル-3,6-ジチアオクタン(化合物2)の合成
Figure 0007234677000032
50mLナスフラスコ中の4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール(1.30g,5mmol)にメタノール(5mL)を加えて撹拌を開始し、そこへメタノール(8mL)に溶解した水酸化ナトリウム(632mg,15.8mmol)の溶液を室温で10分かけて滴下した。更に室温で10分撹拌した後に氷浴で0℃に冷却し、そこへメタノール(4mL)に溶解したプロパルギルブロミド(1.88g,15.8mmol)の溶液を20分かけて滴下した。更に0℃で2時間攪拌した後にエバポレーターで溶媒留去した。残渣にエーテル(30mL)を加えて純水(10mL×4)と飽和食塩水(10mL)とで洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。エバポレーターで溶媒留去後に残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、淡黄色油状物の1,8-ビス(プロパルギルチオ)-4-(プロパルギルチオ)メチル-3,6-ジチアオクタン(化合物2)を収率91%(1.70g)で得た。この三官能性S-プロパルギルモノマーである化合物2の屈折率は1.662(589nm,21℃)であった。また、得られた化合物2の構造をH及び13C NMR分析にて同定した(図4)。なお、化合物2の硫黄含有率は42.8重量%である。
<実施例4>
テトラキス(プロパルギルチオメチル)メタン(化合物6)の合成
Figure 0007234677000033
50mLナスフラスコ中のテトラキス(メルカプトメチル)メタン(1.00g,5mmol)にメタノール(5mL)を加えて撹拌を開始し、そこへメタノール(10mL)に溶解した水酸化ナトリウム(840mg,21mmol)の溶液を室温で10分かけて滴下した。更に室温で10分撹拌した後に氷浴で0℃に冷却し、そこへメタノール(5mL)に溶解したプロパルギルブロミド(2.50g,21mmol)の溶液を20分かけて滴下した。更に0℃で2時間攪拌した後にエバポレーターで溶媒留去した。残渣にエーテル(30mL)を加えて純水(10mL×4)と飽和食塩水(10mL)とで洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。エバポレーターで溶媒留去後に残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム=3:2)で精製し、淡黄色油状物のテトラキス(プロパルギルチオメチル)メタン(化合物6)を収率78%(1.37g)で得た。この四官能性S-プロパルギルモノマーである化合物6の屈折率は1.603(589nm,21℃)であった。また、得られた化合物6の構造をH及び13C NMR分析にて同定した(図5)。なお、化合物6の硫黄含有率は36.4重量%である。
<実施例5>
ポリ(2-(プロパルギルチオメチル)チイラン)(化合物7)の合成
Figure 0007234677000034
窒素雰囲気下、10mLナスフラスコ中の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(76mg,0.5mmol)に乾燥テトラヒドロフラン(0.5mL)を加えて撹拌を開始し、氷浴で0℃に冷却した。そこへプロパンチオール(38mg,0.5mmol)を加えて0℃で10分間撹拌後、乾燥テトラヒドロフラン(0.5mL)に溶解した2-(プロパルギルチオメチル)チイラン(721mg,5mmol)を加え、0℃で2時間撹拌した。この反応液にヨードプロパン(85mg,0.5mmol)を加え、氷浴を外して室温で6時間撹拌した。反応液をメタノール(50mL)で再沈殿後に生じた析出物を更にメタノール(20mL×2)で洗浄し、40℃で48時間真空乾燥して褐色シロップ状のポリ(2-(プロパルギルチオメチル)チイラン)(化合物7)を収率90%(705mg)で得た。この反応性高分子(多官能性S-プロパルギルポリマー)である化合物7の屈折率は1.636(589nm,21℃)であった。また、得られた化合物7の構造をH及び13C NMR分析にて同定した(図6)。化合物7のGPC分析により、数平均分子量(M)は3,850、分子量分布(M/M)は1.94であり、このMの値より重合度(k)は26と算出された。この重合度における化合物7の硫黄含有率は43.9重量%である。
<光学材料の製造>
上記で合成した多官能プロパルギル化合物(化合物1、c1、c2、化合物2、化合物6、化合物7)とポリチオール化合物(化合物t1)とを触媒(i1)の存在下で光重合させることにより、光学材料を製造した。
<実施例6>
四官能性S-プロパルギルモノマー(化合物1)とポリチオールの光硬化反応
上記実施例1で合成したS-プロパルギルモノマー(化合物1)とポリチオール化合物(下記化合物t1)とを触媒(i1)の存在下で光重合させることにより、硬化物(Poly-1)を製造した。具体的には以下の方法により製造した。
Figure 0007234677000035
実施例1で得られた化合物1(79.7mg,0.2mmol)とポリチオールとしての1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン(化合物t1)(98.6mg,0.4mmol)を混合し、光学材料用組成物を得た。そこへ、イルガキュア184(触媒(i1))(1.6mg,8μmol)を加えて溶解し、均一な淡橙色の混合液(重合硬化性組成物)を得た。この混合液を250μm厚のスペーサーを介して2枚の石英ガラス板で挟み、メタルハライドランプ(40mW/cm)を室温で30分間照射したところ硬化反応が進行し、淡橙色透明で硬質なフィルム(Poly-1)を得た。このPoly-1の屈折率は1.7068(589nm,25℃)であった。また、Poly-1のIR測定により炭素-炭素三重結合の吸収の消失を確認した。
<比較例3>
二官能性S-プロパルギルモノマー(c1)とポリチオールの光硬化反応
上記比較例1で合成したS-プロパルギルモノマー(化合物c1)とポリチオール化合物(下記化合物t1)とを触媒(i1)の存在下で光重合させることにより、硬化物(Poly-2)を製造した。具体的には以下の方法により製造した。
Figure 0007234677000036
比較例1で得られた化合物c1(44.1mg,0.4mmol)とポリチオールとしての1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン(化合物t1)(98.6mg,0.4mmol)を混合し、光学材料用組成物を得た。そこへイルガキュア184(触媒(i1))(1.6mg,8μmol)を加えて溶解し、均一な淡橙色の混合液(重合硬化性組成物)を得た。この混合液を250μm厚のスペーサーを介して2枚の石英ガラス板で挟み、メタルハライドランプ(40mW/cm)を室温で30分間照射したところ硬化反応が進行し、淡橙色透明で硬質なフィルム(Poly-2)を得た。このPoly-2の屈折率は1.653(589nm,25℃,アタゴDR-M4)であった。また、Poly-2のIR測定により炭素-炭素三重結合の吸収の消失を確認した。
<比較例4>
二官能性S-プロパルギルモノマー(c2)とポリチオールの光硬化反応
上記比較例2で合成したS-プロパルギルモノマー(化合物c2)とポリチオール化合物(下記化合物t1)とを触媒(i1)の存在下で光重合させることにより、硬化物(Poly-3)を製造した。具体的には以下の方法により製造した。
Figure 0007234677000037
比較例2で得られた化合物c2(73.7mg,0.4mmol)とポリチオールとしての1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン(化合物t1)(98.6mg,0.4mmol)を混合し、光学材料用組成物を得た。そこへイルガキュア184(触媒(i1))(1.6mg,8μmol)を加えて溶解し、均一な淡橙色の混合液(重合硬化性組成物)を得た。この混合液を250μm厚のスペーサーを介して2枚の石英ガラス板で挟み、メタルハライドランプ(40mW/cm)を室温で30分間照射したところ硬化反応が進行し、淡橙色透明で硬質なフィルム(Poly-3)を得た。このPoly-3の屈折率は1.681(589nm,25℃,アタゴDR-M4)であった。また、Poly-3のIR測定により炭素-炭素三重結合の吸収の消失を確認した。
上記で得た硬化物(光学材料)の5%重量減少温度、ガラス転移温度、屈折率を測定し、結果を表1に示す。
Figure 0007234677000038
式(1)で表される多官能プロパルギル化合物(化合物1)は紫外線により光重合可能であることが確認された。 実施例6の硬化物(Poly-1)は、比較例3の硬化物(Poly-2)と比較して屈折率が大きく向上し、比較例4の硬化物(Poly-3)と比較しても向上した。実施例6、比較例3および比較例4の光硬化反応で得られた硬化物(Poly-1、Poly-2およびPoly-3)はいずれも炭素-炭素単結合および炭素-硫黄単結合で構成される脂肪族スルフィド構造が主成分なので、5%重量減少温度は同等であった。また、実施例6の硬化物(Poly-1)は、比較例3および比較例4の硬化物(Poly-2およびPoly-3)と比較して高いガラス転移温度を有していた(Poly-3は二つのガラス転移温度を有した)。
<実施例7>
三官能性S-プロパルギルモノマー(化合物2)とポリチオールの光硬化反応
上記実施例3で合成したS-プロパルギルモノマー(化合物2)とポリチオール化合物(下記化合物t1)とを触媒(i1)の存在下で光重合させることにより、硬化物(Poly-4)を製造した。具体的には以下の方法により製造した。
Figure 0007234677000039
実施例3で得られた化合物2(74.9mg,0.2mmol)とポリチオールとしての1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン(化合物t1)(74.0mg,0.3mmol)を混合し、光学材料用組成物を得た。そこへ、イルガキュア184(触媒(i1))(1.2mg,6μmol)を加えて溶解し、均一な微黄色の混合液(重合硬化性組成物)を得た。この混合液を250μm厚のスペーサーを介して2枚の石英ガラス板で挟み、メタルハライドランプ(40mW/cm2)を室温で30分間照射したところ硬化反応が進行し、淡橙色透明で硬質なフィルム(Poly-4)を得た。このPoly-4の屈折率は1.7041(589nm,25℃)であった。また、Poly-4のIR測定により炭素-炭素三重結合の吸収の消失を確認した。
<実施例8)
四官能性S-プロパルギルモノマー(化合物6)とポリチオールの光硬化反応
上記実施例4で合成したS-プロパルギルモノマー(化合物6)とポリチオール化合物(下記化合物t1)とを触媒(i1)の存在下で光重合させることにより、硬化物(Poly-5)を製造した。具体的には以下の方法により製造した。
Figure 0007234677000040
実施例4で得られた化合物6(70.5mg,0.2mmol)とポリチオールとしての1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン(化合物t1)(98.6mg,0.4mmol)を混合し、光学材料用組成物を得た。そこへ、イルガキュア184(触媒(i1))(1.6mg,8μmol)を加えて溶解し、均一な淡黄色の混合液(重合硬化性組成物)を得た。この混合液を250μm厚のスペーサーを介して2枚の石英ガラス板で挟み、メタルハライドランプ(40mW/cm2)を室温で30分間照射したところ硬化反応が進行し、淡橙色透明で硬質なフィルム(Poly-5)を得た。このPoly-5の屈折率は1.7002(589nm,25℃)であった。また、Poly-5のIR測定により炭素-炭素三重結合の吸収の消失を確認した。
<実施例9>
多官能性S-プロパルギルポリマー(化合物7)とポリチオールの光硬化反応
上記実施例5で合成したS-プロパルギルポリマー(化合物7)とポリチオール化合物(下記化合物t1)とを触媒(i2)の存在下で光多官能性S-プロパルギルポリマー重合させることにより、硬化物(Poly-6)を製造した。具体的には以下の方法により製造した。
Figure 0007234677000041
実施例5で得られた化合物7(74.4mg,プロパルギル基:0.5meq/74.4mg)とポリチオールとしての1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン(化合物t1)(61.6mg,0.25mmol)を混合し、光学材料用組成物を得た。そこへ、イルガキュア1173(触媒(i2))(1.6mg,10μmol)を加えて溶解し、均一な淡橙色の混合液(重合硬化性組成物)を得た。この混合液を250μm厚のスペーサーを介して2枚の石英ガラス板で挟み、メタルハライドランプ(40mW/cm2)を室温で30分間照射したところ硬化反応が進行し、淡橙色透明で硬質なフィルム(Poly-6)を得た。このPoly-6の屈折率は1.6986(589nm,25℃)であった。また、Poly-6のIR測定により炭素-炭素三重結合の吸収の消失を確認した。
上記で得た硬化物(光学材料)の5%重量減少温度、屈折率、アッベ数を測定し、結果を表2に示す。
Figure 0007234677000042
実施例7-9で得られた硬化物(Poly-4、Poly-5、Poly-6)は、表1の実施例6で得られた硬化物(Poly1-3)と同様に炭素-炭素単結合および炭素-硫黄単結合で構成される脂肪族スルフィド構造が主成分なので、5%重量減少温度は同等であった。
実施例7-9で得られた硬化物(Poly-4、Poly-5、Poly-6)の屈折率は、実施例6で得られた(Poly-1)と同様に1.700付近の高い値を示した。三官能以上の多官能性S-プロパルギル化合物は、高屈折率を有する光学材料を製造し得る単量体(および反応性高分子)として有用であることが確認された。
また、実施例7-9で得られた硬化物(Poly-4、Poly-5、Poly-6)はアッベ数も35-36付近の高い値を示した。一般的なポリスチレンやポリカーボネートは屈折率が1.59のときアッベ数が30付近であり、これらの一般的な光学材料用樹脂と比較して、本発明の多官能プロパルギル化合物を硬化してなる硬化物(Poly-4、Poly-5、Poly-6)はアッベ数が非常に優れている(高アッベ数)と言える。
上記結果から、本発明の多官能プロパルギル化合物は、二官能プロパルギル化合物と比較して、優れた耐熱性を維持しつつ、屈折率を顕著に向上し得ることが確認される。また、本発明の多官能プロパルギル化合物は、高屈折率(例えば)および高アッベ数を両立し得る硬化物(光学材料)を提供し得ることが確認された。本発明の多官能プロパルギル化合物は優れた光学性能(高屈折率および/または高アッベ数)、ならびに/または優れた耐熱性(高いガラス転移温度)を有する光学材料を製造し得る単量体として有用である。
本発明の多官能プロパルギル化合物は、光重合可能であり、光学材料を製造するための単量体として有用である。

Claims (8)

  1. 下記式(2)または(3)で表される多官能プロパルギル化合物:
    Figure 0007234677000043
    (式中、
    pは1~10の整数を示し、
    は出現するごとにそれぞれ独立して、1~5の整数を示し、
    は1~5の整数を示し、
    およびnはそれぞれ独立して、0~5の整数を示し、
    ~Rは出現するごとにそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル、-SH、及び下記式(4)で表される基から選択され、
    Figure 0007234677000044
    は、単結合または炭素数1~2のアルキルを示し、
    波線部は結合部を示し、
    ~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル、置換又は非置換のフェニル、置換又は非置換のナフチル、およびシリルからなる群から選択され、
    式(2)または(3)で表される化合物中に含まれる炭素―炭素三重結合の総数は3~10である。)
  2. ~Rが水素原子である、請求項に記載の化合物。
  3. 前記式(2)で表され、式(2)で表される化合物中に含まれる炭素―炭素三重結合の総数は3~5である、請求項またはに記載の化合物。
  4. 前記式(3)で表され、式(3)で表される化合物中に含まれる炭素―炭素三重結合の総数は3~5である、請求項またはに記載の化合物。
  5. 下記式(5)で表される繰り返し構造を含む、多官能プロパルギル化合物。
    Figure 0007234677000045
    (式中、
    はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~5のアルキルを示し、
    10はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1~2のアルキルを示し、
    は3~50の整数を示す。)
  6. 下記化合物群から選択される化合物:
    Figure 0007234677000046
    Figure 0007234677000047
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載の化合物と、ポリチオール化合物とを含む、光学材料用組成物。
  8. 請求項に記載の光学材料用組成物と重合触媒とを含む重合硬化性組成物を硬化した光学材料。
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