以下、図面を参照して、本発明の実施形態のトレイ搬送装置及び実装装置について説明する。なお、図面は、あくまで模式図であり、装置構成の一部の部材はいずれかの図面でのみ記載され、他の図面では省略している場合がある。
[1.実施形態]
[1-1.概略構成]
図1は、実施形態に係るトレイ搬送装置の平面図である。図2は、実施形態に係るトレイ搬送装置の正面図である。
トレイ搬送装置100は、基板Sが載置されるトレイ200を搬送する装置である。図1及び図2に示すように、トレイ搬送装置100は、第1供給部10、第1排出部20、ピックアップステージ30、第2供給部40、第2排出部50、及び搬送アーム60を備える。このトレイ搬送装置100は、トレイ200を搬送アーム60により第1供給部10からピックアップステージ30に搬送し、ピックアップステージ30でトレイ200の内部の収容物がピックアップされて空になったトレイ(受け渡し済みのトレイ)200を搬送アーム60により第1排出部20に搬送する。また、トレイ搬送装置100は、トレイ200を第2供給部40からピックアップステージ30に搬送し、ピックアップステージ30でトレイ200の内部の収容物がピックアップされて空になったトレイ200を搬送アーム60により第2排出部50に搬送する。なお、本実施形態では、受け渡し済みのトレイ200を便宜上「空のトレイ200」と称することもある。
トレイ200は、収容部に収容物を収容してトレイ搬送装置100で搬送される部材である。収容物は、ここでは、基板Sである。収容部での基板Sの収容数は、単数であっても複数であっても良い。ここでは、トレイ200の収容部に複数の基板Sがアレイ状に収容されている。
以下の説明では、トレイ200の一方の面を表面、他方の面を裏面とする。例えば、トレイ200が基板Sの収容部を上向きにした状態で水平に置かれた場合、上側が表面、下側が裏面となる。
図3は、複数のトレイ200が積層されてなる段積みトレイDの断面図である。図3に示すように、トレイ200は、収容部201、表当接部202、裏当接部203を有する。収容部201は、トレイ200の表面に設けられた、基板Sを収容する部分である。表当接部202及び裏当接部203は、それぞれトレイ200の表面と裏面に設けられている。裏当接部203は、積層したトレイ200の表面に当接して積層方向に直交する方向への変位が規制される。表当接部202は、積層されたトレイ200の裏当接部203に当接して、積層方向に直交する方向への変位を規制する。つまり、複数のトレイ200が積層されると、表当接部202及び裏当接部203は、互いに当接して積層方向に直交する方向への変位を規制する。
より具体的には、トレイ200は、平面視すると矩形状である。表当接部202は、トレイ200の表面の全周に亘って、連続して***した土手状の部分である。裏当接部203は、トレイ200の裏側の全周に亘って、連続して窪んだ溝状の部分である。収容部201は、表当接部202及び裏当接部203によって囲まれた矩形の窪んだ領域である。さらに、トレイ200の最外周の縁部は、トレイ200が載置される載置面に対して平行な面となっている。
また、図3に示すように、表当接部202及び裏当接部203は、それぞれ垂直方向に対して傾斜した傾斜面202a、203aを有する。傾斜面202aは、表当接部202の外側面であり、下方に行くに従って外方に傾斜している。傾斜面203aは、裏当接部203の外方の内側面であり、下方に行くに従って外方に傾斜している。表当接部202の傾斜面202aの裏側が、裏当接部203の傾斜面203aとなっている。トレイ200が積層された場合、図3に示すように、下側のトレイ200の表当接部202の傾斜面202aが、上側のトレイ200の裏当接部203の傾斜面203aに当接する。
[1-2.詳細構成]
トレイ搬送装置100は、複数のトレイ200が積層されてなる段積みトレイDから順次トレイ200を搬送する。
図1に示すように、第1供給部10、第2排出部50、ピックアップステージ30、第1排出部20、及び第2供給部40は、この順で一列に配置されている。すなわち、第1供給部10、第1排出部20は、ピックアップステージ30を挟んで設けられ、第2供給部40、第2排出部50は、ピックアップステージ30を挟んで設けられている。また、第1供給部10のトレイ200は、搬送アーム60によりピックアップステージ30を経由して第1排出部20に空のトレイ200として搬送され、第2供給部40のトレイ200は、搬送アーム60によりピックアップステージ30を経由して第2排出部50に空のトレイ200として搬送される。このように、トレイ搬送装置100は、第1供給部10と第1排出部20を組とし、第2供給部40と第2排出部50を組とし、トレイ200の供給と排出の組を2組有する。トレイ搬送装置100では、供給と排出の向きが各組で互いに逆向きになっている。また、第1供給部10と第1排出部20の組によるトレイ200の搬送ルートを供給排出ルート1とし、第2供給部40と第2排出部50の組によるトレイ200の搬送ルートを供給排出ルート2とする。
各部10~50の配置間隔は、等間隔である。等間隔とは、例えば、各部10~50において載置されるトレイ200の載置領域中心の間隔が一定であることをいう。
以下、第1供給部10、第2排出部50、ピックアップステージ30、第1排出部20、及び第2供給部40の一列の方向は水平面に沿う一方向であり、この方向をX軸方向とし、X軸方向と直交し、水平面と平行な方向をY軸方向とし、水平面(X軸方向及びY軸方向)と直交する方向をZ軸方向とする。Z軸方向の移動を昇降という。
図2に示すように、第1供給部10は、段積みトレイDが載置され、トレイ200を供給する。具体的には、第1供給部10は、段積みトレイDを載置する載置部材11と、載置部材11を昇降させる昇降機構12とを有する。載置部材11は、例えば、トレイ200を載置する載置面を有する板状体である。昇降機構12は、ピン12a、シリンダ12bを有する。ピン12aは、シリンダ12bの先端に設けられ、載置部材11に設けられた孔に固定される。シリンダ12bは、ピン12aを昇降させる機構である。昇降機構12は、載置部材11に載置された段積みトレイDからトレイ200が1つ取り出されると、トレイ200一枚分、載置部材11を上昇させる。
第1排出部20は、空のトレイ200を排出するために空のトレイ200を載置する。具体的には、第1排出部20は、空のトレイ200を載置する載置部材21と、載置部材21を昇降させる昇降機構22とを有する。載置部材21、昇降機構22は、載置部材11、昇降機構12と同じ構成である。昇降機構22は、ピン22aとシリンダ22bとを有する。ピン22aは、シリンダ22bの先端に設けられ、載置部材21に設けられた孔に固定される。シリンダ22bは、ピン22aを昇降させる機構である。昇降機構22は、載置部材21に空のトレイ200が1つ載置されると、トレイ200一枚分、載置部材21を下降させる。
第2供給部40は、段積みトレイDが載置され、トレイ200を供給する。具体的には、第2供給部40は、段積みトレイDを載置する載置部材41と、載置部材41を昇降させる昇降機構42とを有する。載置部材41、昇降機構42は、載置部材11、昇降機構12と同じ構成である。昇降機構42は、ピン42aとシリンダ42bとを有する。ピン42aは、シリンダ42bの先端に設けられ、載置部材41に設けられた孔に固定される。シリンダ42bは、ピン42aを昇降させる機構である。
第2排出部50は、空のトレイ200を排出するために空のトレイ200を載置する。具体的には、第2排出部50は、空のトレイ200を載置する載置部材51と、載置部材51を昇降させる昇降機構52とを有する。載置部材51、昇降機構52は、載置部材11、昇降機構12と同じ構成である。昇降機構52は、ピン52aとシリンダ52bとを有する。ピン52aは、シリンダ52bの先端に設けられ、載置部材51に設けられた孔に固定される。シリンダ52bは、ピン52aを昇降させる機構である。
なお、図4に示すように、載置部材11、21、41、51には、ダミートレイ210が固定されていても良い。ダミートレイ210は、トレイ200と同形の部材であり、載置されるトレイ200又は空のトレイ200の位置決めのために、載置部材11、21、41、51に対して固定具Bにより固定されている。固定具Bとしては、例えばボルトである。ボルトは、ダミートレイ210の載置部材11、21、41、51に平行な縁部に形成された孔に挿通され、載置部材11、21、41、51に形成されたねじ穴にねじ込むことにより、ダミートレイ210が載置部材11、21、41、51に固定される。
ピックアップステージ30(以下、単に「ステージ30」ともいう。)は、収容部201の基板Sが外部に受け渡されるステージである。ステージ30には、第1供給部10又は第2供給部40から供給されたトレイ200が載置され、ステージ30と外部装置70との間に設けられたピックアップ装置により、トレイ200の基板Sが1枚ずつピックアップされ、外部装置70に受け渡される。具体的には、ピックアップ装置は、ステージ30の上方にステージ30上のトレイ200を視野に収めるカメラCを備え、当該カメラCによる撮像により得た画像で認識される基板Sの中心を吸着パッド等で保持し、外部装置70に移載する。外部装置70は、ここでは、基板Sの周縁に設けられた端子に、電子部品を実装する実装装置であり、より具体的には、この実装装置を構成する端子清掃装置である。端子清掃装置は、電子部品を実装する前に基板Sを清掃するものである。実装装置は、端子清掃装置の他、基板Sの端子、或いは、電子部品の電極に異方性導電性テープ(ACF)を貼付するテープ貼付装置、ACFを介して基板Sの端子に電子部品を仮圧着する仮圧着装置、仮圧着された電子部品を本圧着する本圧着装置等を備えて構成される。
搬送アーム60は、収容部201に基板Sが収容されたトレイ200、収容部201に基板Sのない空のトレイ200を搬送する。図1及び図2に示すように、搬送アーム60は、2つのアーム61、62を有する。アーム61、62は、トレイ200を保持する保持部61a、62aを有する。保持部61a、62aは、例えば、図示しない減圧装置に接続された吸着孔により、基板Sを吸着する吸着パッドである。保持部61a、62aは、トレイ200の表当接部202を吸着する。
より詳細には、アーム61、62は、ここでは、角が角張ったU字形状を成し、保持部61a、62aは、トレイ200を保持する保持面を下方に向けられて、例えば、アーム61、62のU字の両脚部分に設けられている。
アーム61、62は、第1供給部10、第2排出部50、ステージ30、第1排出部20、及び第2供給部40の配置間隔と同じ間隔を空けて連ねて設けられている。アーム61、62は、ここでは、各部10~50の配置間隔と同じ間隔を空けて一体化されている。そのため、アーム61、62は、同方向に一緒に移動する。
搬送アーム60は、図示しない駆動機構によって、第1供給部10、第2排出部50、ステージ30、第1排出部20、及び第2供給部40が成す列の方向(X軸方向)に沿って各部10~50の上方を一方向に移動する。例えば、アーム61が第1供給部10の真上に位置しているとすると、アーム62は第2排出部50の真上に位置する。この状態で、搬送アーム60が2ピッチ分X軸方向に移動すると、アーム61がステージ30の真上に位置し、アーム62が第1排出部20の真上に位置する。図示しない駆動機構は、例えば、X軸方向に延びるレール、レール上をスライドするスライダ、スライダを駆動させるボールネジ、ボールネジを回動させる駆動源により構成することができる。なお、アーム61、62が各部10~50の上方を移動する際の移動経路を「搬送経路」と称する。
アーム61、62が各部10~50の真上に位置するとは、各部10~50から基板Sのあるトレイ200若しくは空のトレイ200を保持できるように、アーム61、62が各部10~50と対面し、又は、各部10~50に基板Sのあるトレイ200若しくは空のトレイ200を載置することができるように、アーム61、62が各部10~50と対面する位置にあることをいい、この位置がアーム61、62の停止位置である。より具体的には、アーム61は、各部10、50、30、20の真上を停止位置とし、アーム62は、各部50、30、20、40の真上を停止位置とする。また、隣同士の当該停止位置の間隔を1ピッチとする。
また、搬送アーム60は、図示しない昇降機構によって、アーム61、62を昇降させる。この昇降機構は、例えばシリンダ等により構成することができる。
搬送アーム60は、アーム61が、第1供給部10からステージ30へのトレイ200の搬送を行い、アーム62が、ステージ30から第1排出部20への空のトレイ200の搬送を行う。このアーム61、62の搬送は並行して行ってもよい。また、アーム61によって第1供給部10のトレイ200の搬送がすべて終了すると、アーム62が、第2供給部40からステージ30へのトレイ200の搬送を行い、アーム61が、ステージ30から第2排出部50への空のトレイ200の搬送を行う。このアーム61、62の搬送は並行して行ってもよい。
また、図1及び図2に示すように、トレイ搬送装置100は、シャッタ80を備える。シャッタ80は、第1供給部10と第2排出部50の間、及び、第2供給部40と第1排出部20の間に設けられている。シャッタ80は、例えば開閉式のシャッタであり、長方形の部材が蛇腹状に連結してなるスラットと、第1供給部10と第2排出部50の間、及び、第2供給部40と第1排出部20の間の上方に設けられ、スラットを巻き取って収容するケースと、スラットをガイドするレールとを有する。スラットをレールに沿ってケースから降ろすことで、スラットにより各部10、50間、各部40、20間を遮断し、シャッタ80が閉められた状態となる。また、スラットをレールに沿って上げ、ケースに収容することで、各部10、50間、各部40、20間が開放され、シャッタ80が開けられた状態となる。
シャッタ80は、例えば、作業員が、第1供給部10、第2供給部40に段積みトレイDをセットする際に、それぞれの供給部10、40に設けられた不図示の開閉扉等を操作することで、自動的に開閉されるようになっている。より具体的には、開閉扉の解錠ボタンを操作することでシャッタ80が閉じられ、開閉扉が閉じられたことが不図示のセンサ等により検知されると、シャッタ80が開放されるようになっている。このような制御は、後述の不図示の制御装置によって実行される。これにより、トレイ200のセット又は回収の作業中に、作業員の手などが隣接する動作中の他の部内に侵入することに起因する事故や搬送アーム60に誤動作による事故が生じることを防止する。
なお、トレイ搬送装置100は、図示しない制御装置によって制御される。制御装置は、トレイ搬送装置100の各部10~50の起動、停止、速度、動作タイミング等を制御する。これらの制御は、図示しない各種のセンサやタイマからの入力信号に基づく演算処理により行われる。
制御装置は、例えば、専用の電子回路又は所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって実現できる。制御装置には、作業員が制御に必要な指示や情報を入力する入力装置、装置の状態を確認するための出力装置が接続されている。
[1-3.作用]
図5及び図6~図9を用いて、トレイ搬送装置100の作用を説明する。図5は、トレイ搬送装置100の動作の一例を示すフローチャートである。図6~図9は、トレイ200の搬送過程を示す図である。なお、予めダミートレイ210が載置部材11、21、41、51にそれぞれ固定されており、各部材に基板Sのあるトレイ200又は空のトレイ200を位置決めして載置できるようになっているものとする。また、載置部材11のダミートレイ210には、段積みトレイDが予め載せられているものとする。なお、図6~図9において、X軸方向に沿って、左側から右側に向かう方向を「X軸正方向」、反対に、右側から左側に向かう方向を「X軸負方向」と称する。また、以下の一連の動作は、前述した制御装置の制御下で実行される。
まず、図6(a)に示すように、昇降機構12により、段積みトレイDの最上段のトレイ200が搬送アーム60との受け渡し位置に位置するように載置部材11を上昇させる(ステップS01)。受け渡し位置は、予め設定された高さ位置であり、本実施形態では、ステージ30に合わせて設定されている。より具体的には、ステージ30に載置されたトレイ200と第1供給部10の最上段のトレイ200とが同じ高さ位置となるように受け渡し位置が設定される。
搬送アーム60は、アーム61を第1供給部10の真上に位置させ、アーム62を第2排出部50の真上に位置させ、アーム61により、第1供給部10の最上段のトレイ200を保持する(ステップS02)。具体的には、搬送アーム60は、受け渡し位置まで下降し、アーム61の保持部61aでトレイ200を吸着保持し、搬送アーム60の搬送経路まで戻る。なお、最上段のトレイ200が保持されると、昇降機構12は、トレイ200一枚分、載置部材11を上昇させる。次のトレイ200の受け渡しに備えるためである。以降、トレイ200が受け渡される度に、トレイ200一枚分、載置部材11を上昇させる。なおこのとき、アーム62は、第2排出部50上で、アーム61と一緒に下降及び上昇動作を行うが、トレイ200の保持や載置は行わない。なお、アーム61が第1供給部10の真上に位置しアーム62が第2排出部50の真上に位置する搬送アーム60の位置を「第1スタートポジション」と称することとする。
搬送アーム60は、搬送経路上を2ピッチ分X軸正方向に移動する(ステップS03)。これにより、アーム61がステージ30の真上に位置し、アーム62が第1排出部20の真上に位置する。
その後、図6(b)に示すように、搬送アーム60は、ステージ30との受け渡し位置まで昇降機構により下降し、吸着保持を解除してステージ30上にトレイ200を載置する(ステップS04)。この後、搬送アーム60は、第1スタートポジションに戻る(ステップS05)。ステージ30上のトレイ200の基板Sをピックアップ装置が1枚ずつ外部装置70に搬送している間、図6(c)に示すように、アーム61により、第1供給部10の最上段のトレイ200を保持して待機する(ステップS06)。
ステージ30での基板Sの受け渡しが終了すると、搬送アーム60は、搬送経路上を1ピッチ分X軸正方向に移動する(ステップS07)。これにより、アーム61が第2排出部50の真上に位置し、何も保持していないアーム62がステージ30の真上に位置する。その後、図7(d)に示すように、搬送アーム60は、アーム62によりステージ30上の空のトレイ200を保持する(ステップS08)。具体的には、搬送アーム60は、ステージ30との受け渡し位置まで昇降機構により下降し、アーム62の保持部62aにより空のトレイ200を吸着保持し、搬送経路に戻る。なお、この搬送アーム60の下降及び上昇動作の間、アーム61はトレイ200を保持したままである。
そして、搬送アーム60は、搬送経路上を1ピッチX軸正方向に移動する(ステップS09)。これにより、トレイ200を保持したアーム61がステージ30の真上に位置し、空のトレイ200を保持したアーム62が第1排出部20の真上に位置する。図7(e)に示すように、搬送アーム60は、ステージ30へのトレイ200の載置と、第1排出部20への空のトレイ200の載置とを同時に行う(ステップS10)。その際、第1排出部20は、昇降機構22により、ダミートレイ210の高さがステージ30に載置されたトレイ200と同じ高さになる受け渡し位置となるよう位置づけられている。
トレイ200の載置と空のトレイ200の載置とを同時に行った段階で、第1供給部10のトレイ200が全てなくなったか否かを判別する。その結果、トレイ200の全てがなくなっていなければ(ステップS11のNO)、ステップS05に戻り、図7(f)に示すように、ステップS05からS10を繰り返す。反対に、第1供給部10のトレイ200が全てなくなっていたら(ステップS11のYES)、図8(g)に示すように、何も保持していない搬送アーム60は、アーム61が第1排出部20の真上に位置し、アーム62が第2供給部40の真上に位置する第2スタートポジションに移動する(ステップS12)。すなわち、トレイ搬送装置100は、第1供給部10から第1排出部20への供給排出ルート1から、第2供給部40から第2排出部50への供給排出ルート2へ切り替える。
ここで、供給排出ルート1では、第1スタートポジションでアーム61にトレイ200を保持してから、ステージ30上の空のトレイ200を保持、ステージ30上へのトレイ200への載置、空のトレイ200の排出までの動作を、X軸正方向への移動のみで順次行い、その後、X軸負方向の移動のみで第1スタートポジションに戻る動作を繰り返すように制御される。つまり、供給排出ルート1では、X軸方向の正負への往復移動のみで一連の動作の制御が実行される。
なお、搬送アーム60が第2スタートポジションに向けて移動を開始すると、ステージ30では、基板Sの受け渡しが開始される。
ステップS01の前段階又はステップS01が開始されてから搬送アーム60が第2スタートポジションに位置するまでに、第2供給部40には、作業員又は不図示の搬送装置により、段積みトレイDがセットされている。すなわち、段積みトレイDが載置部材41のダミートレイ210上に載せられている。このセットの際、第2供給部40と第1排出部20との間のシャッタ80を閉めることで(例えば図7(f)参照)、当該間がシャッタ80により遮断されるので、作業員又は搬送装置に干渉することなく安全にトレイ200をセットできる。また、最上段のトレイ200が受け渡し位置に位置するまで載置部材41が昇降機構42により上昇している(ステップS13)。
図8(h)に示すように、搬送アーム60が第2スタートポジションに位置すると、アーム62により、第2供給部40の最上段のトレイ200を保持して待機する(ステップS14)。具体的には、搬送アーム60は、受け渡し位置まで下降し、アーム62の保持部62aでトレイ200を吸着保持し、搬送経路まで戻る。このとき、ステージ30では、第1供給部10から最後に搬送されたトレイ200の基板Sの受け渡しが行われており、搬送アーム60は当該受け渡しが終了するまで待機する。なお、第2供給部40の最上段のトレイ200が保持されると、昇降機構42は、トレイ200一枚分、載置部材41を上昇させる。次のトレイ200の受け渡しに備えるためである。以降、トレイ200が受け渡される度に、トレイ200一枚分、載置部材41を上昇させる。
ステージ30で、第1供給部10の最後のトレイ200の基板Sの受け渡しが完了すると、搬送アーム60は、1ピッチ分X軸負方向に移動する(ステップS15)。これにより、何も保持していないアーム61がステージ30の真上に位置し、トレイ200を保持したアーム62が第1搬出部20の真上に位置する。
その後、図9(i)に示すように、搬送アーム60は、アーム61によりステージ30上の空のトレイ200を保持する(ステップS16)。具体的には、搬送アーム60は、ステージ30との受け渡し位置まで昇降機構により下降し、アーム61の保持部61aにより空のトレイ200を吸着保持し、搬送経路に戻る。
そして、搬送アーム60は、1ピッチX軸負方向に移動する(ステップS17)。これにより、空のトレイ200を保持したアーム61が第2排出部50の真上に位置し、トレイ200を保持したアーム62がステージ30の真上に位置する。図9(j)に示すように、搬送アーム60は、第2排出部20への空のトレイ200の載置と、ステージ30へのトレイ200の載置とを同時に行う(ステップS18)。その際、第2排出部50は、昇降機構52により、ダミートレイ210の高さがステージ30に載置されたトレイ200と同じ高さになる受け渡し位置となるように位置されている。
トレイ200の載置と空のトレイ200の載置とを同時に行った段階で、第2供給部40のトレイ200がすべてなくなったか否かを判別する。その結果、トレイ200の全てがなくなっていなければ(ステップS19のNO)、ステップS14に戻り、ステップS14からS18を繰り返す。反対に、第2供給部40のトレイ200が全てなくなっていたら(ステップS19のYES)、搬送アーム60は、第2スタートポジションに戻り、ステージ30上のトレイ200の基板Sの受け渡しが完了するまで待機する。そして、ステージ30上での基板Sの受け渡しの完了後、搬送アーム60は、ステージ30上の空のトレイ200をアーム61で保持し、第2排出部50に受け渡して、第2排出部50に段積みされた空のトレイ200を外部に排出して終了する。
このように、供給排出ルート2では、第2スタートポジションでアーム62にトレイ200を保持してから、ステージ30上の空のトレイ200の保持、ステージ30上へのトレイ200の載置、空のトレイ200の排出までを、X軸負方向への移動のみで順次行い、その後、X軸正方向の移動のみで第2スタートポジションに戻る動作を繰り返すように制御される。つまり、供給排出ルート2では、X軸方向の負正への往復移動のみで一連の動作の制御が実行される。
なお、搬送アーム60が第2供給部40の最後のトレイ200をステージ30に搬送し終えてさらに第1供給部10からトレイ200を供給するようにしても良い。この場合は、ステージ30上での基板Sの受け渡しの完了後、つまり、ステップS19でのYES判定の後、何も保持していない搬送アーム60は、第1スタートポジションに移動し、ステップS05からS18を繰り返す。またこの場合、搬送アーム60が第1スタートポジションに戻るまでの間、すなわち、供給排出ルート2でトレイ200の搬送が実行されている間に、作業員又は不図示の搬送装置により、第1供給部10に段積みトレイDがセットされている。
このように、予定されたすべてのトレイ200の基板Sの受け渡しが完了したら、搬送アーム60は、ステージ30上の空のトレイ200をアーム61又はアーム62で保持し、第1排出部20又は第2排出部50に受け渡して、段積みされた空のトレイ200を外部に排出して終了する。
以上のように、本実施形態のトレイ搬送装置100は、第1供給部10、第2排出部50、ステージ30、第1排出部20、及び第2供給部40は、この順序で一列に等間隔で配置し、搬送アーム60を、アーム61、62を上記等間隔と同じ間隔で設けるようにしたので、供給排出ルート1から2に切り替えるに当たり、ステージ30上でトレイ200から基板Sを受け渡している間に、第2供給部40で搬送アーム60が次にステージ30上に載置するトレイ200を準備することができるので、第1供給部10でトレイ200がなくなっても、トレイ200の供給中断時間をなくすことができ、トレイ200の供給効率を向上させることができる。
同様に、供給排出ルート2から1に切り替えるに当たり、ステージ30上でトレイ200から基板Sを受け渡している間に、第1供給部10で搬送アーム60が次にステージ30上に載置するトレイ200を準備することができるので、第2供給部40でトレイ200がなくなっても、トレイ200の供給中断時間をなくすことができ、トレイ200の供給効率を向上させることができる。
また、各部10~50及びアーム61、62の配置間隔を等間隔としたので、搬送アーム60は、第1供給部10の最後のトレイ200をステージ30に搬送した後、1ピッチ分の移動で第2供給部40のトレイ200を保持できるので、1つの搬送アーム60でトレイの供給源の切り替えができるとともに、搬送アーム60の搬送経路を短くすることができる。つまり、装置構成及び動作を簡素化することができ、トレイ200の供給効率を向上させることができる。
言い換えると、トレイ搬送装置100は、供給排出ルート1と供給排出ルート2とで、トレイ200の供給方向を逆にし、供給排出ルート1では、アーム61に基板Sのあるトレイ200を供給するために搬送する役割を持たせ、アーム62には空のトレイ200を排出するために搬送する役割を持たせ、一方、供給排出ルート2では、アーム62に基板Sのあるトレイ200を供給するために搬送する役割を持たせ、アーム61には空のトレイ200を排出するために搬送する役割を持たせている。そのため、1つの搬送アーム60でトレイの供給源の切り替えができるとともに、搬送アーム60の搬送経路を短くすることができる。
また、供給排出ルート1では、第1供給部10からのトレイ200の受け取り、ステージ30からの空のトレイ200の受け取り、第1排出部20への空のトレイ200の排出という第1供給部10から第1排出部20への一連の動作をX軸正方向へのピッチ移動のみで行い、この間にX軸負方向への移動を含まない。そのため、搬送アーム60の移動制御が簡素化できるとともに、一方向への移動のみで戻り方向への移動を含まないことにより、一連の動作を効率良く行うことができる。
供給排出ルート2でも同様に、第2供給部40から第2排出部50への一連の動作をX軸負方向への移動のみで行い、X軸正方向への移動を含まない。そのため、搬送アーム60の移動制御が簡素化できるとともに、一連の動作を効率良く行うことができる。
[1-4.効果]
(1)本実施形態のトレイ搬送装置100は、複数のトレイ200が積層されてなる段積みトレイDから順次トレイ200を搬送するトレイ搬送装置100であって、段積みトレイDが載置される第1供給部10及び第2供給部40と、トレイ200の内部の収容物である基板Sを外部に受け渡すために、トレイ200が載置されるステージ30と、ステージ30で収容物の受け渡しが完了した受け渡し済みのトレイ200を排出するために受け渡し済みのトレイ200を載置する第1排出部20及び第2排出部50と、トレイ200を搬送する搬送アーム60と、を備えるようにした。そして、第1供給部10、第2排出部50、ステージ30、第1排出部20、及び第2供給部40は、この順序で一列に配置した。搬送アーム60は、トレイ200を保持するアーム61及びアーム62を有し、アーム61及びアーム62は、一列の方向に沿って一緒に移動し、第1供給部10からステージ30へのトレイ200の搬送を、アーム61が行い、ステージ30から第1排出部20への受け渡し済みのトレイ200の搬送を、アーム62が行い、第2供給部40からステージ30へのトレイの搬送を、アーム62が行い、ステージ30から第2排出部50への受け渡し済みのトレイ200の搬送を、アーム61が行うようにした。
これにより、装置構成及び動作の簡素化を図ることができ、トレイ200の供給効率を向上させることができる。すなわち、1つの搬送アーム60で第1供給部10のトレイ200も第2供給部40のトレイ200も搬送するので、トレイ200を供給する供給部と、空のトレイ200を排出する排出部と、トレイ200を搬送する搬送部とを備えた従来のトレイ搬送装置を2台設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。また、搬送アーム60を一列の方向に沿って移動させ、収容物のあるトレイ200と空のトレイ200を搬送するアームの役割を第1アーム61と第2アーム62で入れ替えるようにしたので、動作を簡素化することができる。
(2)搬送アーム60は、アーム61によって第1供給部10のトレイの搬送がすべて終了すると、第2供給部40からステージ30へのトレイの搬送を、アーム62が行い、ステージ30から第2排出部50への受け渡し済みのトレイ200の搬送を、アーム61が行うようにした。これにより、トレイ供給中断時間をなくすことができ、トレイの供給効率を向上させることができる。
(3)搬送アーム60は、アーム61がステージ30の真上に位置し、アーム62が第1排出部20の真上に位置する停止位置において、ステージ30へのトレイ200の載置と第1排出部20への受け渡し済みのトレイ200の載置とを並行して行い、アーム61が第2排出部50の真上に位置し、アーム62がステージ30の真上に位置する停止位置において、ステージ30へのトレイ200の載置と第2排出部50への受け渡し済みのトレイ200の載置とを並行して行うようにした。これにより、基板Sのあるトレイ200の供給と受け渡し済みのトレイ200の排出とを並行して行えるので、トレイ200の搬送効率を向上させることができる。
(4)第1排出部20及び第2排出部50は、受け渡し済みのトレイを載置する載置面を有する載置部材21、51と、載置部材21、51を昇降させる昇降機構22、52と、を有するようにした。これにより、ステージ30の高さに載置部材21、51の高さを合わせる調整をすることができるので、ステージ30上へのトレイ200の載置と、排出部20、50の載置部材21、51への受け渡し済みのトレイ200の載置とを同時に行うことができ、ステージ30が載置部材21、51の高さまで下がって高さを揃えることにより生じる搬送アーム60の昇降時間を削減することができる。その結果、トレイ200の搬送効率を向上させることができる。
(5)第1供給部10及び第2供給部40は、トレイ200を載置する載置面を有する載置部材11、41と、載置部材11、41を昇降させる昇降機構12、42と、を有するようにした。これにより、載置部材11、41の載置面を搬送アーム60に近づけることができるので、第1供給部10及び第2供給部40からトレイ200を搬送アーム60に受け渡す際の搬送アーム60の昇降時間を削減することができ、トレイ200の搬送効率を向上させることができる。
(6)第1供給部10と第2排出部50の間、又は、第2供給部40と第1排出部20の間には、シャッタ80を設けるようにした。これにより、作業員の手が誤って隣接する他の部に進入したり、搬送アーム60が誤って第1供給部10、第2供給部40に進入したりするのを防ぐことができる。そのため、第1供給部10又は第2供給部40でトレイ200の供給をしている間、他方の第2供給部40又は第1供給部10において、作業員が安全に段積みトレイDをセットすることができる。
[2.他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
(1)トレイ搬送装置100は、基板Sに電子部品を実装する実装装置に適用することができる。すなわち、実装装置は、トレイ搬送装置100と、基板Sに電子部品を実装する実装部と、を備える。実装部は、例えば、基板Sの周縁上面に設けられた端子部を清掃し、この端子部に、粘着テープを介して電子部品を仮圧着後、熱と圧力を加えて本圧着することにより、基板Sに電子部品を実装する。トレイ搬送装置100は、トレイ200の収容物を、基板S又は電子部品とし、実装部に基板S又は電子部品を供給しても良い。また、実装装置が、トレイ200の収容物を基板Sとするトレイ搬送装置100と、トレイ200の収容物を電子部品とするトレイ搬送装置100を備えるようにしても良い。換言すれば、トレイ200の収容物は、基板Sに限定されず、電子部品としても良い。また、トレイ搬送装置100は、実装装置以外の装置に部品を供給するようにしても良く、トレイ200の収容物は、基板S、電子部品に限らず、これら以外の部品としても良い。
(2)上記実施形態では、ステージ30の高さに合わせて載置部材11、21、41、51の高さを調整するようにしたが、ステージ30に、ステージ30を昇降させる昇降機構を設け、ステージ30の高さを載置部材11、21、41、51に合わせて調整するようにしても良い。
(3)上記実施形態では、アーム61、62を一体化させるようにしたが、アーム61、62を独立とし、各アーム61、62を各部10~50の配置間隔と同じ間隔を保って同期して移動させることで一緒に移動させるようにしても良い。
(4)上記実施形態では、ステージ30上で収容された基板Sがすべて受け渡されて空になったトレイ200を排出部20、50に排出するようにしたが、これに限られるものではない。すなわち、受け渡し済みのトレイ200は、空のトレイに限らない。例えば、ピックアップ装置の備えるカメラCによる撮像により得られた基板Sの画像を認識した結果、基板Sに傷や割れなどの欠陥が検出された場合、その基板Sをピックアップせずに取り残すことがある。このような場合、取り残した基板Sが収容されたままのトレイ200を受け渡し済みのトレイ200として、排出するようにしてもよい。
つまり、本発明において、ステージ30で収容物(基板S)の受け渡しが完了した状態とは、トレイ200に収容された全ての収容物の受け渡しが完了した状態だけに限らず、トレイ200に取り残しの収容物がある状態も含む。要は、受け渡すべき収容物の受け渡しが完了した状態のことである。したがって、第1排出部20及び第2排出部50に排出されるトレイ200も、必ずしも空である必要はない。
(5)上記実施形態では、一方の供給部10、40のトレイ200がすべてなくなった時点で、他方の供給部10、40からトレイ200を供給するように供給排出ルート1、2を切り替えるようにしたが、これに限られるものではない。例えば、供給排出ルート1でトレイ200の搬送を行なっているときに、第1供給部10または第1排出部20に故障などの異常が生じることが考えられる。このような場合、第1供給部10にトレイ200が残っている状態で、第2供給部40からのトレイ200の供給、つまり、供給排出ルート2に切り替えるようにしてもよい。このようにすることにで、第1供給部10または第1排出部20に故障などの異常が生じても、トレイ200の搬送を継続させることができる。また、供給排出ルート2でのトレイ200の搬送中に、第1供給部10または第1排出部20の不具合の解消を図ることができるので、予定された数量のトレイ200の供給が完了する前にトレイ200の搬送が停止することが防止できる。このため、トレイ搬送装置100を適用した実装装置等の生産性を向上させることができる。
なお、供給部10、40や排出部20、50の異常は、各部10、20、40、50の動作状態を検知するセンサを設けておき、制御装置がこれらのセンサの出力を監視することによって検知することが可能である。制御装置が異常を検知した場合、当該ルート1、2でのトレイ200の搬送を中断し、他方のルート1、2によるトレイ200の搬送に切り替えればよい。
(6)上記実施形態では、シャッタ80を巻き取り式のシャッタとしたが、これに限られるものではない。作業員が作業を行っている供給部10、40に隣接する他の部に作業員の手が進入したり、作業員が作業を行っている供給部10、40に搬送アーム60が進入したりすることが防止できる構成であれば、他の構成のもの、例えば、板状のものであってもよい。
また、シャッタ80の開閉制御は、供給部10、40の開閉扉の操作に基づくものに限られるものではなく、例えば、供給排出ルート1、2の切り替えに基づいて開閉するようにしてもよい。すなわち、供給排出ルート1でトレイ200の搬送を行うときは、第1供給部10と第2排出部50の間のシャッタ80を開放し、第1排出部20と第2供給部40の間のシャッタ80を閉じるように制御し、供給排出ルート2でトレイ200の搬送を行うときは、第1供給部10と第2排出部50の間のシャッタ80を閉じ、第1排出部20と第2供給部40の間のシャッタ80を開放するように制御してもよい。