JP7231888B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主に変圧器や回転機器の鉄心等に用いられる方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を製造する方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主に変圧器や回転機器の鉄心等に用いられる軟磁性材料であり、磁気特性として、磁束密度が高く、鉄損が低いことが求められる。かかる方向性電磁鋼板は、二次再結晶を起こさせるのに必要なインヒビター、例えば、MnS、MnSeやAlN等を形成する成分を含む鋼スラブを熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍し、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とした後、脱炭焼鈍し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布した後、二次再結晶させる仕上焼鈍を施すことによって製造される。
ところで、方向性電磁鋼板の表面には、鏡面化する等の特殊な場合を除いて、フォルステライト(MgSiO)を主体とする被膜を形成するのが一般的である。このフォルステライト被膜は、鋼板表面に電気絶縁性を付与するだけでなく、その低熱膨張性により鋼板表面に引張応力を付与することで鉄損低減に寄与することが知られている。また、フォルステライト被膜は、仕上焼鈍において形成されるが、その形成挙動は、MnS、MnSeやAlN等のインヒビターの生成、すなわち、二次再結晶に多大な影響を及ぼす。さらに、フォルステライト被膜は、二次再結晶が完了した後、不要となったインヒビター形成成分を吸収し、鋼板を純化することでも磁気特性の改善に寄与している。
従って、欠陥のない、均一で密着性に優れたフォルステライト被膜を形成させることは、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造する上で極めて重要である。一般に、フォルステライト被膜は、以下の工程によって形成される。まず、冷間圧延によって最終板厚とした冷延板を、湿潤水素雰囲気中で、700~900℃の温度で一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍する。この工程で、後の仕上焼鈍の際、適切な二次再結晶組織が得られるような一次再結晶組織を形成させると同時に、製品板の磁気時効を防ぐため、Cを0.003mass%以下になるまで脱炭し、鋼板表層にSiOを主体とする酸化膜を形成させる。その後、鋼板表面にMgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍において、還元性または非酸化性雰囲気中で、1000~1200℃の温度で焼鈍することによって、下記の反応によりフォルステライト被膜が形成される。
2MgO+SiO→MgSiO
このフォルステライト被膜は、粒径が1~2μmの微細なフォルステライトの結晶が集積したセラミックス被膜であって、前述したように、脱炭焼鈍の際に形成される酸化膜を一方の原料として形成される。従って、この酸化膜の種類、量および分布等は、フォルステライトの核生成や粒成長挙動、ひいては、フォルステライト被膜の均一性や密着性に多大な影響を及ぼす。そのため、脱炭焼鈍の際、鋼板表層に形成される酸化膜の物性を適正化することは、被膜特性に優れたフォルステライト被膜を形成させる上で極めて重要である。
従来、フォルステライト被膜の均一性や密着性を改善する技術として、例えば、特許文献1には、脱炭焼鈍の際、鋼板最表層に方位差角が15°未満または45°以上の粒界を、その頻度にして40%以上生成させる方法が提案されている。また、特許文献2には、鋼スラブ中に、Crを0.1~1.0mass%添加し、脱炭焼鈍の際、鋼板表層に形成される酸化膜中にスピネル型のCr酸化物を生成させる方法が提案されている。このスピネル型のCr酸化物は、仕上焼鈍の際、以下の式に従ってMgOと反応する。
MgO+FeCr→Mg1-xFeO+Mg1-xFeCr
特許文献2によれば、このMg1-xFeOはフォルステライトの生成を促進させる。また、上記スピネル型のCr酸化物は、鋼板表面よりもやや内側に生成され、この位置でのフォルステライトの生成を促進することによって、被膜特性を改善する効果もある。
特開2001-200317号公報 特開2000-355717号公報
しかしながら、上記従来技術に記載の技術では、一定の被膜特性改善効果は認められるものの、依然として被膜特性にバラつきがあり、磁気特性が改善されない事例が散見されるという問題があった。
本発明は、従来技術が抱える上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた被膜特性を安定して得ることができる方向性電磁鋼板の製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記の課題を解決するべく、特に脱炭焼鈍後の鋼板最表層の粒界の方位差角が酸化膜の生成、ひいては、フォルステライト被膜の特性に及ぼす影響に着目して鋭意検討を重ねた。その結果、上記方位差角を有する粒界頻度が範囲にある場合に粒界酸化が促進され、鋼板表面よりもやや内側にスピネル型のCr酸化物が生成され、その結果、被膜特性が著しく改善されることを見出し、本発明を完成させた。
上記知見に基づく本発明は、C:0.01~0.10mass%、Si:2.0~5.0mass%、Mn:0.01~1.0mass%およびCr:0.01~0.2mass%を含有し、さらに、インヒビター形成成分として下記A~C群のうちから選ばれるいずれか1群の成分を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延し、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、上記脱炭焼鈍後の鋼板最表層に、方位差角が15~45°の粒界を80%以上の頻度で生成させることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。

・A群;S:0.002~0.03mass%およびSe:0.002~0.025mass%の内から選ばれる少なくとも1種
・B群;Al:0.005~0.04mass%およびN:0.003~0.012mass%
・C群;S:0.002~0.03mass%およびSe:0.002~0.025mass%の内から選ばれる少なくとも1種、Al:0.005~0.04mass%およびN:0.003~0.012mass%
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記脱炭焼鈍後の鋼板最表層に方位差角が15~45°の粒界を80%以上の頻度で生成させる方法が、上記熱間圧延の仕上圧延におけるワークロール径を600mm以下とする、上記熱間圧延の仕上圧延における摩擦係数を0.40以上とする、および、上記中間焼鈍における雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2を0.10~0.25の範囲とする、のうちのいずれか1以上の手段であることを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる上記鋼スラブは、上記成分組成に加えてさらに、B:0.0002~0.0025mass%、P:0.005~0.08mass%、Ti:0.001~0.01mass%、Ni:0.01~1.5mass%、Cu:0.01~0.5mass%、Nb:0.002~0.08mass%、Mo:0.005~0.1mass%、Sn:0.005~0.5mass%、Sb:0.005~0.5mass%およびBi:0.002~0.08mass%のうちから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
本発明によれば、脱炭焼鈍の際、鋼板最表層に特定の方位差角を有する粒界を所定の頻度以上に形成させることによって、鋼板表面よりもやや内側にスピネル型のCr酸化物を生成させるので、被膜特性に優れた方向性電磁鋼板をより安定して製造することが可能となる。
鋼板最表層における方位差角が15~45°の粒界頻度が、脱炭焼鈍後の鋼板板厚方向のCr濃度分布に及ぼす影響を示すグラフである。
まず、本発明を開発する契機となった実験について説明する。
C:0.03mass%、Si:3.2mass%、Mn:0.06mass%、Cr:0.05mass%を含有し、さらに、インヒビター形成成分としてS:0.003mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1380℃の温度に30min間加熱した後、熱間圧延して熱延板とした。この際、仕上圧延の最終スタンドのワークロール径を種々に変更し、上記スタンドのワークロールと鋼板間の摩擦係数を0.35とした。次いで、上記熱延板を1回目の冷間圧延して中間板厚1.7mmの冷延板とし、雰囲気のPH2O/PH2が0.30の湿潤水素雰囲気下で、1050℃×1minの中間焼鈍した後、2回目の冷間圧延して最終板厚0.23mmの冷延板とし、その後、PH2O/PH2が0.30の湿潤水素雰囲気下で840℃×2minの一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍を施した。
次いで、上記のようにして得た脱炭焼鈍後の鋼板最表層の各粒界の方位差角を、電子後方散乱回折(EBSP)によって測定した。ここで、上記鋼板最表層とは鋼板表面から5μmまでの範囲のことをいい、また、上記粒界の方位差角とは、その粒界を挟んで隣り合う粒の方位を重ね合わせるのに必要な最小回転角のことをいう。
次いで、上記脱炭焼鈍後の鋼板表面に、MgOを主体とし、TiOを2.0mass%添加した焼鈍分離剤を塗布した後、850℃の温度に50hr保持して二次再結晶させた後、水素雰囲気下で、1200℃の温度に5hr保持して純化処理する仕上焼鈍を施した後、上記仕上焼鈍後の鋼板表面に、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを主体とする絶縁コーティングを施した。
斯くして得た製品板の磁気特性および被膜特性(均一性および密着性)について調査した。なお、上記被膜の均一性は、被膜外観を目視観察することにより、また、被膜の密着性は、仕上焼鈍後の鋼板を直径が異なる丸棒に巻き付けて、被膜が剥離を起こさない最小の直径(以下、上記直径を「曲げ剥離径」とも称する)で評価した。
上記測定の結果を表1に示した。この表から、方位差角が15~45°の粒界の頻度が80%以上である場合に、光沢のある、均一で、密着性に優れたフォルステライト被膜が得られることがわかった。一方、上記粒界の頻度が80%に満たない場合は、光沢の少ない、不均一で、密着性に劣った被膜しか得られなかった。
Figure 0007231888000001
上記の結果は、特許文献1の結果と相反するように見えるが、本実験では、鋼スラブ中にCrを添加しているため、このCr添加によって粒界の方位差角の被膜特性に及ぼす影響が変化したものと考えられる。しかし、Crを添加しても、特許文献2に記載の方法では、一定の被膜特性改善効果は認められるものの、依然として特性にバラつきがあり、磁気特性が改善されない事態が散見されている。
次に、上記Cr添加の影響について調査するため、鋼板最表層の方位差角15~45°の粒界頻度と鋼板表面から板厚方向のCr濃度分布との関係を、グロー放電発光分析装置(GDS)を用いて測定し、その結果を図1に示した。この図から、上記方位差角が15~45°の粒界頻度が80%以上の場合には、鋼板表面よりやや内側に、Crのピークが観測された。すなわち、前記粒界の頻度が80%以上の場合には、鋼板表面よりもやや内側にスピネル型のCr酸化物が多く生成されることがわかった。
この原因について、発明者らは以下のように考える。
方位差角が15~45°の粒界は、高エネルギー粒界であり、元素の高速拡散経路となる。従って、この粒界頻度が高い場合には、体拡散ではなく、粒界拡散が支配的になる。また、一般的な脱炭焼鈍雰囲気下では、Crは内部酸化を起こす。従って、上記粒界の頻度が80%以上の場合は、酸素の粒界拡散によってCrの内部酸化が促進される結果、鋼板表面よりもやや内側に、スピネル型のCr酸化物が生成されたと推察される。
また、鋼板最表層の方位差角が15~45°の粒界頻度が80%以上の場合に、被膜特性に優れたフォルステライト被膜が得られたことについては、特許文献2と同様、鋼板表面よりもやや内側に、スピネル型のCr酸化物が生成される結果、この位置でフォルステライトの生成が促進されたためであると考えられる。ただし、本実験結果によれば、上記効果は、脱炭焼鈍の際、鋼板最表層に方位差角が15~45°の粒界頻度を80%以上形成させることによって、初めて、鋼板表面よりもやや内側にスピネル型のCr酸化物を形成させることができ、安定して得ることができる。なお、脱炭焼鈍後の鋼板再表層の方位差角が15~45°の粒界頻度は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。
本発明は、上記の新規な知見に基づき開発したものである。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。まず、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材(スラブ)の成分組成について説明する。
C:0.01~0.1mass%
Cは、一次再結晶集合組織を改善するために重要な成分であるが、含有量が0.01mass%に満たないと上記効果が十分に得られない。一方、0.1mass%超えると、脱炭焼鈍で磁気時効を起こさない0.003mass%以下までCを低減するのが難しくなる。また、脱炭に酸素が消費される分、酸素目付量が少なくなり、被膜特性の劣化を招くおそれもある。よって、Cは0.01~0.1mass%の範囲に限定する。好ましくは0.02~0.08mass%の範囲である。
Si:2.0~5.0mass%
Siは、鋼の比抵抗を高め、渦電流損を低減するために必須の成分であるが、含有量が2.0mass%に満たないと上記効果が十分に得られない。一方、5.0mass%を超えると、冷延性を著しく損なう。よって、Siは2.0~5.0mass%の範囲に限定する。好ましくは2.5~4.5mass%の範囲である。
Mn:0.01~1.0mass%
Mnは、Siと同様、鋼の比抵抗を高めて、渦電流損を低減する効果がある。また、熱延性を改善するのに重要な成分であるが、含有量が0.01mass%に満たないと、上記効果が十分に得られない。一方、1.0mass%を超えると、γ変態を誘起し、磁気特性の劣化を招く。よって、Mnは0.01~1.0mass%の範囲とする。好ましくは0.01~0.50mass%の範囲である。
Cr:0.01~0.2mass%
Crは本発明において重要な成分であり、鋼スラブ中に添加することによって、脱炭焼鈍の際、鋼板表層に形成される酸化膜にスピネル型のCr酸化物を生成させることができる。しかしながら、含有量が0.01mass%未満では、上記効果が十分に得られず、一方、0.2mass%を超えると、不均一酸化を促し、かえって被膜特性が劣化する。よって、Crは0.01~0.2mass%の範囲とする。好ましくは0.01~0.1mass%の範囲である。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材は、上記成分に加えて、二次再結晶を発現させるためのインヒビターを形成する成分を含有していることが必要である。
上記インヒビター形成成分としては、インヒビターの種類によって異なり、例えば、インヒビターとしてMnSおよび/またはMnSeを用いる場合には、上述したMnに加えて、S:0.002~0.03mass%およびSe:0.002~0.025mass%の内から選ばれる少なくとも1種を含有する必要がある。また、インヒビターとしてAlNを用いる場合には、Al:0.005~0.04mass%およびN:0.003~0.012mass%を含有することが必要である。なお、インヒビターは、MnSおよび/またはMnSeとともにAlNを用いてもよく、その場合は、S:0.002~0.03mass%およびSe:0.002~0.025mass%の内から選ばれる少なくとも1種と、Al:0.005~0.04mass%およびN:0.003~0.012mass%を含有することが必要である。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材は、上記成分以外の残部は、実質的にFeおよび不可避的不純物であるが、磁気特性の改善を目的として、上記成分に加えてさらに、B:0.0002~0.0025mass%、P:0.005~0.08mass%、Ti:0.001~0.01mass%、Ni:0.01~1.5mass%、Cu:0.01~0.5mass%、Nb:0.002~0.08mass%、Mo:0.005~0.1mass%、Sn:0.005~0.5mass%、Sb:0.005~0.5mass%、およびBi:0.002~0.08mass%の内から選ばれる少なくとも1種を適宜含有してもよい。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
まず、本発明の方向性電磁鋼板の鋼素材(スラブ)は、通常公知の精錬プロセスで、上述した本発明に適合する成分組成を有する鋼を溶製した後、常法の連続鋳造法あるいは造塊-分塊圧延法で製造することができる。
次いで、上記鋼素材(スラブ)は、1250℃以上の温度に再加熱した後、熱間圧延して所定の板厚の熱延板とする。スラブの再加熱温度が1250℃未満では、添加したインヒビター形成成分が鋼中に十分に固溶しない。好ましいスラブ加熱温度は1300℃以上である。スラブを加熱する手段は、ガス炉、誘導加熱炉、通電炉などの通常公知の手段を用いることができる。
次いで、上記再加熱したスラブを熱間圧延に供する。熱間圧延における圧延温度は、通常公知の条件で行えばよく、特別な制限はない。ただし、本発明の特徴である脱炭焼鈍後の鋼板最表層に、方位差角が15~45°の粒界を80%以上の頻度で生成させるためには、熱間圧延の際のワークロール径および/または摩擦係数を変えて、鋼板に掛かる剪断応力を制御することが重要である。
具体的には、熱間仕上圧延の最終スタンドにおけるワークロールを600mm以下とする、および/または、熱間仕上圧延の最終スタンドにおけるワークロールと鋼板間の摩擦係数を0.40以上とすることが重要である。上記条件を満たすことで、熱延板の鋼板表層に微細な組織が形成され、脱炭焼鈍における再結晶核が増加するので、脱炭焼鈍後の鋼板最表層に、方位差角が15~45°の粒界を80%以上の頻度で生成させることが可能となる。
次いで、上記熱間圧延後の熱延板は、必要に応じて、熱延組織を完全に再結晶させるため、熱延板焼鈍を施す。この熱延板焼鈍の温度は、950~1200℃の範囲とするのが好ましい。950℃未満では、熱延組織を完全に再結晶できないおそれがある。一方、1200℃を超えると熱延板焼鈍後の結晶粒径が粗大化し、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなる。より好ましくは1000~1100℃の範囲である。
次いで、上記熱間圧延後または熱延板焼鈍後の熱延板は、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とする。この冷間圧延条件については、常法に従って行えばよく、特に制限はない。
ただし、2回以上の冷間圧延を行う場合、脱炭焼鈍後の鋼板最表層に、位差角が15~45°の粒界をより高い頻度で生成させるためには、冷間圧延間で行う中間焼鈍における雰囲気の酸化ポテンシャルPH2O/PH2を制御することが重要である。
具体的には、中間焼鈍における雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2を0.10~0.25の範囲とすることが重要である。上記条件を満たすことで、中間焼鈍にける表層脱炭を抑制する、すなわち、炭化物の析出を促進し、これによって、脱炭焼鈍における再結晶核が増加するので、脱炭焼鈍後の鋼板最表層に、方位差角が15~45°の粒界を80%以上の頻度で生成させることが可能となる。
次いで、上記最終板厚とした冷延板は、一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍を施す。この脱炭焼鈍は、脱炭性を確保する観点から、焼鈍雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2が0.25~0.55の範囲の湿潤雰囲気下で、800~900℃の温度範囲で行うことが望ましい。この焼鈍により、鋼板中のCは0.003mass%以下まで低減されると同時に、脱炭焼鈍後の鋼板最表層に、方位差角が15~45°の粒界を80%以上の頻度で生成させることができる。
次いで、上記一次再結晶焼鈍後の鋼板は、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布、乾燥した後、二次再結晶を発現させるとともに純化処理する仕上焼鈍を施す。この仕上焼鈍により、鋼板中のAl、N,SおよびSeは、不純物レベル、具体的には、Al:0.004mass%以下、N:0.003mass%以下、S:0.002mass%以下およびSe:0.002mass%以下まで低減される。
次いで、上記仕上焼鈍後の鋼板は、鋼板表面に残留した未反応の焼鈍分離剤を除去するため、水洗やブラッシング、酸洗等を行った後、形状矯正と鉄損特性改善のための平坦化焼鈍を施すことが好ましい。
なお、鋼板(製品板)を積層して使用する場合には、鋼板間の絶縁性を確保するため、上記平坦化焼鈍において、または、その前後において、鋼板表面に絶縁被膜を被成することが好ましい。また、より鉄損を低減するためには、上記絶縁被膜は、鋼板に引張張力を付与する張力付与型の絶縁被膜を適用するのが望ましい。また、上記鉄損低減効果をより高めるためには、バインダーを介して絶縁被膜を被成したり、物理蒸着法や化学蒸着法で無機物層を鋼板表面に形成した後、絶縁被膜を被成したりし、被膜の密着性を向上させるのが好ましい。
さらに、より鉄損を低減するため、上記冷間圧延後のいずれかの工程において鋼板表面に溝を形成したり、仕上焼鈍後の鋼板表面に電子ビームやレーザビームを照射したり、鋼板表面に機械的に歪領域を導入することで磁区細分化処理を施してもよい。
表2に示した各種成分組成を有する鋼スラブを1380℃の温度に30min間加熱した後、熱間圧延して板厚2.4mmの熱延板とした。この際、仕上圧延の最終スタンドのワークロール径、および、上記スタンドのワークロールと鋼板間の摩擦係数を種々に変化させた。次いで、上記熱延板を1回目の冷間圧延し、中間板厚1.7mmの冷延板とし、酸化ポテンシャルPH2O/PH2を0.30に調整した湿潤雰囲気下で、1050℃×60sの中間焼鈍した後、1回目の冷間圧延して最終板厚0.23mmの冷延板とした。次いで、上記冷延板を、PH2O/PH2が0.30の湿潤水素雰囲気下で840℃×120sの一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍した後、上記脱炭焼鈍後の鋼板最表層の各粒界の方位差角を電子後方散乱回折(EBSP)で測定した。
次いで、上記脱炭焼鈍後の鋼板表面に、MgOを主体とし、TiOを2.0mass%添加した焼鈍分離剤を塗布、乾燥した後、850℃の温度に50hr保持する条件で二次再結晶を発現させた後、水素雰囲気下で1150℃の温度に5hr保持して純化処理する仕上焼鈍を施した後、上記仕上焼鈍後の鋼板表面に、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを主体とする絶縁コーティングを施した。
斯くして得た製品板の磁気特性、および被膜特性(均一性および密着性)について調査し、その結果を表2に併記した。なお、均一性は、被膜外観を目視観察することで、また、被膜密着性は、曲げ剥離径で評価した。表2から、本発明を適用することで、被膜特性に優れたフォルステライト被膜が得られることがわかる。
Figure 0007231888000002
表3に示した各種成分組成を有する鋼スラブを1380℃の温度に30min間加熱した後、熱間圧延して板厚2.4mmの熱延板とした。この際、仕上圧延の最終スタンドのワークロール径を650mmとし、上記スタンドのワークロールと鋼板間の摩擦係数を0.35とした。次いで、上記熱延板を1回目の冷間圧延し、中間板厚1.7mmの冷延板とした後、表3に示した種々の酸素ポテンシャルを有する湿潤雰囲気下で、1050℃×60sの中間焼鈍した後、1回目の冷間圧延して最終板厚0.23mmの冷延板とした。次いで、上記冷延板を、酸素ポテンシャルPH2O/PH2が0.30の湿潤水素雰囲気下で840℃×120sの一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍した後、上記脱炭焼鈍後の鋼板最表層の各粒界の方位差角を電子後方散乱回折(EBSP)で測定した。
次いで、上記脱炭焼鈍後の鋼板表面に、MgOを主体とし、TiOを2.0mass%添加した焼鈍分離剤を塗布、乾燥した後、850℃の温度に50hr保持する条件で二次再結晶を発現させた後、水素雰囲気下で1150℃の温度に5hr保持して純化処理する仕上焼鈍を施し後、上記仕上焼鈍後の鋼板表面に、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを主体とする絶縁コーティングを施した。
斯くして得た製品板の磁気特性、および被膜特性(均一性および密着性)について調査し、その結果を表3に併記した。なお、均一性は、被膜外観を目視観察することで、また、被膜密着性は、曲げ剥離径で評価した。表3から、本発明を適用することで、被膜特性に優れたフォルステライト被膜が得られることがわかる。
Figure 0007231888000003

Claims (3)

  1. C:0.01~0.10mass%、Si:2.0~5.0mass%、Mn:0.01~1.0mass%およびCr:0.01~0.068mass%を含有し、さらに、インヒビター形成成分として下記A~C群のうちから選ばれるいずれか1群の成分を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延し、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、上記脱炭焼鈍後の鋼板最表層に、方位差角が15~45°の粒界を80%以上の頻度で生成させることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。

    ・A群;S:0.002~0.03mass%およびSe:0.002~0.025mass%の内から選ばれる少なくとも1種
    ・B群;Al:0.005~0.04mass%およびN:0.003~0.012mass%
    ・C群;S:0.002~0.03mass%およびSe:0.002~0.025mass%の内から選ばれる少なくとも1種、Al:0.005~0.04mass%およびN:0.003~0.012mass%
  2. 上記脱炭焼鈍後の鋼板最表層に、方位差角が15~45°の粒界を80%以上の頻度で生成させる方法が、上記熱間圧延の仕上圧延におけるワークロール径を600mm以下とする、上記熱間圧延の仕上圧延における摩擦係数を0.40以上とする、および、上記中間焼鈍における雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2を0.10~0.25の範囲とする、のうちのいずれか1以上の手段であることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 上記鋼スラブは、上記成分組成に加えてさらに、B:0.0002~0.0025mass%、P:0.005~0.08mass%、Ti:0.001~0.01mass%、Ni:0.01~1.5mass%、Cu:0.01~0.5mass%、Nb:0.002~0.08mass%、Mo:0.005~0.1mass%、Sn:0.005~0.5mass%、Sb:0.005~0.5mass%およびBi:0.002~0.08mass%のうちから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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