JP7229458B2 - 非晶質炭素膜とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、従来より優れた抗菌作用を発揮することができる非晶質炭素膜とその製造方法に関する。
医療の分野では、置換医療など医療技術の高度化が急速に進んでおり、医療の高度化に伴って、安価で安全性に優れた革新的な医療材料の開発が強く求められている。このような状況下、ダイヤモンド状炭素(DLC膜)とも称される非晶質炭素膜は、高硬度、低摩擦および耐食性を備えているだけでなく、優れた化学的安定性と、人体と同じ炭素と水素から構成され優れた生体適合性とを有しているため、上記した要求に適合する材料として特に注目されており、医療機器や医療デバイスへの応用が期待されている。
即ち、医療機器や医療デバイスには金属や高分子材料等の素材が用いられるが、これらの素材は体内に入ると異物として認識され、拒絶反応を誘起するという問題がある。そこで、このような拒絶反応の誘起を防止する方法として、素材の表面を改質することが検討されており、例えば、素材の表面を非晶質炭素膜で被覆することで生体適合性を付与する医療デバイスの製造技術の開発が活発に行われている。具体的には、これまでにステント、内視鏡、メスハンドル、注射針等の各種の医療機器や人工関節等の生体埋込型の医療デバイスにおいて、従来使用されてきた素材の表面に対して非晶質炭素膜を被覆させることが行われている。
一方、医療現場で使用される医療機器や医療デバイスの表面は、増殖の速い細菌や微生物の温床となりやすく、これらが人に感染すると感染症を発生する恐れがある。このため、素材の表面に被覆される非晶質炭素膜の表面も抗菌作用を有していることが好ましく、非晶質炭素膜に抗菌作用を付与する技術の開発が活発に行われている。
具体的には、例えば、特許文献1では、図8に示すように、基材1上に形成され、銀、銅、金、白金、亜鉛等から選択された抗菌作用を有する抗菌性金属の微粒子3を分散含有させたDLC膜2が提案されている。また、特許文献2では、抗菌性金属の薄膜の一部をDLC膜から露出させることが提案されている。
特開2015-81370号公報 特開平10-110257号公報
しかしながら、上記した各技術は、いずれも、抗菌性金属を用いて抗菌作用を付与しているため、コストが大きく上昇する恐れがある。また、その抗菌効果も、医療現場で使用される医療機器や医療デバイスにとって、十分なものとは言えなかった。
そこで、本発明は、抗菌性金属を用いなくても、従来より優れた抗菌作用を発揮することができる非晶質炭素膜とその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、最初に、細菌や微生物は素材表面に存在する水に着床することにより増殖するため、細菌や微生物の素材表面への着床を防止することにより、抗菌作用を高めることができると考えた。そして、具体的な手段として、非晶質炭素膜の撥水性を高めることが有効であると考え、非晶質炭素膜のフッ素化を試みた。しかし、フッ素化によってある程度の抗菌作用が発現する傾向は認められたものの、未だ十分とは言えないことが分かった。
そこで、次に、非晶質炭素膜のフッ素化をベースとして、種々の実験と検討を行い、抗菌効果の向上について評価した。そして、従来より、抗菌性を有する一方で撥水性を低下させることが知られており、フッ素化とは相容れないと考えられていた酸素を用いた場合、顕著な抗菌作用が発現されることを見出した。即ち、フッ素化された非晶質炭素膜の表面をさらに酸素で修飾した場合、顕著な抗菌作用が発現されることを見出した。
そして、さらに検討を進めたところ、非晶質炭素膜の膜表面における炭素の原子組成百分率C(at%)に対するフッ素の原子組成百分率F(at%)の比F/C、炭素の原子組成百分率C(at%)に対する酸素の原子組成百分率O(at%)の比O/C、および非晶質炭素膜の表面における純水に対する接触角のいずれかを適切に制御することにより抗菌作用をさらに向上させることができることが分かった。
具体的には、F/Cを0.05以上、またはO/Cを0.5以上、あるいは接触角を30°未満とすることにより、さらに抗菌性が向上して、JIS Z2801のフィルム接着法に規定する抗菌活性値Rにおいて、抗菌効果があるとされる2.0を大きく上回って、顕著な抗菌作用が確実に発現されることが分かった。
このような抗菌効果の向上が得られたのは、フッ素化されていない非晶質炭素膜を酸素で修飾するのみでは、抗菌作用が十分に発現されないことから考えると、フッ素化による抗菌効果と酸素の修飾による抗菌効果とが相乗的に発揮されたためと推測される。従来の非晶質炭素膜のフッ素化は撥水性を向上させるために行われる技術であるため、撥水性を低下させる酸素修飾と組み合わせることによりこのような優れた抗菌作用が得られたことは驚くべき結果と言える。
請求項1~請求項に記載の発明は、上記の知見に基づくものである。即ち、請求項1に記載の発明は、
フッ素を含有した非晶質炭素膜であって、
膜表面が酸素で修飾されており、膜表面における炭素の原子組成百分率Cに対する酸素の原子組成百分率Oの比O/Cが、0.5以上であり、
膜表面の純水に対する接触角が、30°未満であることを特徴とする非晶質炭素膜である。
そして、請求項2に記載の発明は、
膜表面における炭素の原子組成百分率Cに対するフッ素の原子組成百分率Fの比F/Cが、0.05以上であることを特徴とする請求項1に記載の非晶質炭素膜である。
また、請求項に記載の発明は、
JIS Z2801で規定されているフィルム接着法による評価方法における抗菌活性値Rの値が、2.0以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非晶質炭素膜である。
そして、前記した非晶質硬質炭素層は、薄すぎると膜欠陥により基材が露出してしまう懸念があり、一方、厚すぎると膜の応力により密着性が低下してしまうため、基材上に0.1~10μmの膜厚で形成されていることが好ましい。
即ち、請求項に記載の発明は、
膜厚が0.1~10μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の非晶質炭素膜である。
そして、上記した本発明に係る非晶質炭素膜は、まず、炭化水素系ガスおよび炭化フッ素系ガスを原料ガスとして用い、プラズマCVD法によって基材上にフッ素化非晶質炭素膜を成膜した後、酸素プラズマ処理によって、フッ素化非晶質炭素膜の表面を酸素で修飾することにより得ることができる。
即ち、請求項に記載の発明は、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の非晶質炭素膜の製造方法であって、
炭化水素系ガスおよび炭化フッ素系ガスを用いて、プラズマCVD法によって基材上にフッ素化非晶質炭素膜を形成する膜形成工程と、
酸素プラズマ処理によって、形成された前記フッ素化非晶質炭素膜の表面を酸素で修飾する酸素修飾工程とを備えていることを特徴とする非晶質炭素膜の製造方法である。
そして、上記したプラズマCVD法による成膜は、低温で成膜することが可能であるため、金属やセラミックスだけでなく、金属やセラミックスに比べて耐熱温度が低いが、医療機器や医療デバイスに多く用いられている高分子材料を基材に用いることができる。そして、高分子材料の中でも汎用ポリスチレン(GPPS)に用いることが医療用として安価で汎用性が高く加工が容易であるという観点からより好ましい。
即ち、請求項に記載の発明は、
前記基材が、高分子材料であることを特徴とする請求項に記載の非晶質炭素膜の製造方法である。
そして、請求項に記載の発明は、
前記高分子材料が、汎用ポリスチレンであることを特徴とする請求項に記載の非晶質炭素膜の製造方法である。
また、上記した酸素プラズマ処理の方法としては、例えば、減圧下での低温プラズマ処理や大気圧酸素プラズマ処理などを用いることができ、中でも、大気圧酸素プラズマ処理は、大気圧下、低温で高い密度のプラズマを被処理物に直接照射して素早い処理が可能であり、しかも、装置構成が簡単で安価であるため好ましい。
即ち、請求項に記載の発明は、
前記酸素プラズマ処理に、大気圧酸素プラズマ処理を用いることを特徴とする請求項ないし請求項のいずれか1項に記載の非晶質炭素膜の製造方法である。
本発明によれば、抗菌性金属を用いなくても、従来より優れた抗菌作用を発揮することができる非晶質炭素膜とその製造方法を提供することができる。
本発明の一実施の形態の非晶質炭素膜の断面の模式図である。 プラズマCVD装置の概略の構成を示す模式図である。 大気圧プラズマ処理装置の主要部を示す斜視図である。 大気圧プラズマ処理方法を示す模式図である。 フィルム接着法による抗菌特性評価試験の手順を示す模式図である。 フィルム接着法による抗菌特性評価試験後の試料表面の観察結果を示す図である。 フィルム接着法による抗菌特性評価試験後の試料表面の観察結果を示す図である。 従来技術の抗菌性非晶質炭素膜の断面の模式図である。
以下、実施の形態に基づき、図面を参照しつつ本発明を説明する。
[1]非晶質炭素膜
最初に、本実施の形態に係る非晶質炭素膜について説明する。図1は本発明の一実施の形態の非晶質炭素膜(DLC膜)の断面の模式図である。図1において、1は基材であり、4はフッ素含有DLC膜であり、5はフッ素含有DLC膜の上部で酸素により修飾されている酸素修飾層である。
図1に示すように、本実施の形態に係る非晶質炭素膜は、フッ素化によりフッ素を含有した非晶質炭素膜(フッ素含有DLC膜4)であって、基材1上に形成されている。そして、フッ素含有DLC膜4の表面には酸素で修飾された酸素修飾層5が形成されている。
前記したように、本発明者は、このような構成とすることにより、優れた抗菌作用を発揮する非晶質炭素膜が提供できることを見出した。
本実施の形態に係る非晶質炭素膜が、優れた抗菌作用を発揮する理由は、前記したように、フッ素化による抗菌効果と酸素の修飾による抗菌効果とが相乗的に発揮されたためと推測される。
具体的には、フッ素は膜に撥水性を付与するため、菌の着床を抑制することができる。さらに、フッ素は細菌の糖代謝を阻害することができるため、細菌の増殖を停止させることができる。
そして、膜の表面に修飾された酸素は、膜に付着した細菌中の化学物質や酸化還元酵素の働きにより還元されて活性酸素となって、近傍の細胞壁や細胞膜および細胞内酵素を破壊するため、菌の増殖を停止させることや、酸素による嫌気性細菌の生育を停止させることができると推測される。
なお、本実施の形態に係る非晶質炭素膜による抗菌効果は、嫌気性細菌、特に大腸菌、黄色ブドウ球菌などの通性嫌気性細菌に対してより大きな抗菌効果を発揮する。
本実施の形態において、より顕著な抗菌作用を確実に発現させるために、フッ素含有DLC膜4は、膜表面における炭素の原子組成百分率C(at%)に対するフッ素の原子組成百分率F(at%)の比F/Cが、0.05以上であることが好ましい。なお、このF/Cは、例えばXPS(X-Ray Photoelectron Spectoroscopy)を用いて計測されるDLC膜表面における各元素の原子組成百分率に基づいて求めることができる。なお、より顕著な抗菌作用を確実に発現させるためのF/Cに上限はないが、膜として形成させるといった観点から2.0以下であることが好ましい。
そして、フッ素含有DLC膜4の表面に形成された酸素修飾層5は、炭素の原子組成百分率C(at%)に対する酸素の原子組成百分率O(at%)の比O/Cが、0.5以上であることが好ましい。なお、このO/Cも前記したF/Cと同様にXPSを用いて計測することにより求めることができる。なお、より顕著な抗菌作用を確実に発現させるためのO/Cに上限はないが、フッ素の効果を発現させるといった観点から3.0以下であることが好ましい。
また、非晶質炭素膜の表面における純水に対する接触角は、30°未満であることが好ましい。接触角を30°未満とすることにより、親水性となり菌と接触しやすくなるため、より十分な抗菌効果を発現させることができる。
なお、この接触角の制御は、フッ素含有DLC膜4を成膜する際にF/Cを制御すること、酸素修飾層5を形成する際にO/Cを制御することのいずれかまたは両方を行うことによって行うことができる。
本実施の形態に係る非晶質炭素膜においては、F/C、O/C、接触角を上記のように制御することにより、JIS Z2801のフィルム接着法に規定する抗菌活性値Rを、抗菌効果があるとされる2.0以上(R≧2.0)とすることができ、医療機器、医療デバイスとして、より十分な抗菌性を確保することができる。抗菌活性値Rは、2.2以上であるとより好ましく、2.5以上であるとさらに好ましい。
本実施の形態において、基材1としては、特に限定されず、高分子材料、金属、セラミックス等、各種の医療機器や医療デバイスの材料として公知の材料を用いることができる。具体的な高分子材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、シリコン、ゴムなどが挙げられるが、これらの内でも、医療用として安価で汎用性が高く加工が容易であるという点を考慮すると汎用性ポリスチレンが好ましい。そして、金属としては、例えば、チタン、チタン合金、ステンレス、コバルトクロムモリブテン合金、コバルトクロム合金、アルマイト処理をしたアルミニウムなどが挙げられる。また、セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニアなどが挙げられる。
[2]非晶質炭素膜の製造方法
次に、本実施の形態に係る非晶質炭素膜の製造方法について説明する。
本実施の形態に係る非晶質炭素膜は、炭化水素系ガスおよび炭化フッ素系ガスを用いてプラズマCVD法によって基材上にフッ素化非晶質炭素膜を形成し、その後、酸素プラズマ処理によってフッ素化非晶質炭素膜の表面を酸素で修飾することにより製造することができる。以下、フッ素化非晶質炭素膜を形成する膜形成工程、酸素で修飾する酸素修飾工程の順に説明する。
1.膜形成工程
図2は、プラズマCVD装置の概略の構成を示す模式図である。図2において、11はプラズマCVD装置であり、12はチャンバー(成膜室)であり、12aはガス導入ポートであり、12bはガス排出口であり、13はカソードであり、14はアノードであり、15は高周波電源である。
チャンバー12は、ガス導入ポート12aにおいてエッチング用のHガスおよび原料ガスの供給源に接続されており、ガス排出口において真空ポンプに接続されている。カソード13は、周波数13.56MHzの高周波電源に接続されている。一方、アノード14およびチャンバー12は、接地されている。
先ず、基材1をカソード13上にセットした後、チャンバー12内を所定の真空度になるまで排気する。その後、ガス導入ポート12aからHガスを供給すると共に高周波電源15を作動させる。これにより、チャンバー12内にHプラズマが発生して、Hプラズマで基材1の表面をエッチングして、清浄化することができる。
次に、炭化水素ガスと、炭化フッ素ガスを所定の混合比で混合させた原料ガスをガス導入ポート12aから供給する。そして、高周波電源を印加し、原料ガスをプラズマ化することにより生成された原料ガスの解離分子、およびイオンを基材1に照射する。これにより、基材1上にフッ素含有DLC膜を成膜することができる。
なお、このフッ素含有DLC膜の成膜に際して、原料ガス中の炭化水素ガスと炭化フッ素ガスの混合比を調整することにより、F/Cを所望の値になるように制御することができる。
本実施の形態において、炭化水素ガスとしては、カーボンを供給できる炭化水素ガスであれば特に限定されないが、安価で入手も容易であるという観点から、メタンガスやエタンガス、アセチレンガスなどが好ましい。
炭化フッ素ガスとしては、フッ素を供給できる炭化フッ素ガスであれば特に限定されないが、安価で入手も容易であるという観点から、フッ化エタンガスやフッ化メタンガスなどが好ましい。
そして、非晶質硬質炭素層は前記した通り、薄すぎると膜欠陥により基材が露出してしまう懸念と、厚すぎると膜の応力により密着性が低下してしまうといった観点から、基材上に0.1~10μmの膜厚で形成されていることが好ましい。なお、DLC膜の膜厚は、例えば、成膜時間を調整することによって制御することができる。
本実施の形態において、プラズマCVD法は、DLC膜を低温で成膜することが可能な方法であるため、耐熱温度が70~90℃であるポリスチレン(PS)などの高分子材料製のような耐熱温度が低い基材上への成膜が可能である。
2.酸素修飾工程
フッ素含有DLC膜4を成膜後、フッ素含有DLC膜4の表面を酸素プラズマ処理して、酸素修飾層5を形成させる。O/Cは、例えば酸素プラズマによる処理時間を調整することによって所望の比に制御することができる。
具体的な酸素プラズマ処理法としては、例えば、減圧下での低温プラズマ処理法や大気圧酸素プラズマ処理などを挙げることができるが、中でも、前記した通り、大気圧酸素プラズマ処理は、大気圧下、低温で高い密度のプラズマを被処理物に直接照射して素早い処理が可能であり、しかも、装置構成が簡単で安価であるため好ましい。
大気圧プラズマ処理装置には、リモート型、ジェット型など各種の装置が開発されており、本実施の形態ではこれらの公知の装置を用いることができるが、中でもダメージフリーマルチプラズマジェット装置は、放電損傷を与えず低温で処理できるため特に好ましい。
図3は、大気圧プラズマ処理装置の主要部を示す斜視図であり、図4は大気圧プラズマ処理方法を示す模式図である。なお、ここでは、大気圧プラズマ処理装置として、ダメージフリーマルチプラズマジェット型の大気圧プラズマ処理装置を記載している。図3、図4において、21は大気圧プラズマノズルであり、22はステージであり、23は試料台である。なお、大気圧プラズマノズル21には、kHzオーダー(~20kHz)のパルス電源を備えるプラズマ生成部(図示省略)が連結されている。また、Wは基材の表面にフッ素含有DLC膜を形成させた試料である。
試料Wは、ステージ22上に設置された試料台23上にx方向に沿って載置される。大気圧プラズマノズル21は、x方向、z方向(上下方向)に移動可能であり、ステージ22はy方向(x方向に対して垂直な方向)に移動可能である。
そして、試料Wが大気圧プラズマノズル21の直下に位置するようにステージ22をy方向に移動させた後、試料Wの表面とノズルの先端との間隔が処理に好適な間隔となるように、大気圧プラズマノズル21をz方向に移動させる。その後、電源を作動させて酸素プラズマを生成させる。そして、生成させた酸素プラズマを大気圧プラズマノズル21から試料Wに向けて照射しながら、所定の速度で大気圧プラズマノズル21をx方向に移動させて、試料Wの表面をスキャンニングする。これにより、DLC膜の表面が酸素プラズマ処理されて、酸素修飾層5が形成される。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。
[1]実験1
1.実験方法
実験1として、基材に汎用ポリスチレン(GPPS)を用いて、基材上にフッ素含有と非含有の2種類のDLC膜(1.0μm厚)を形成させ、これら2種類のDLC膜のそれぞれについて、酸素修飾有と酸素修飾無の2種類、合計4種類のDLC膜を被覆した試験片を作製し、それぞれのDLC膜の抗菌特性を評価する実験を行った。
(1)DLC膜の作製
(a)フッ素含有DLC膜の形成
基材をHプラズマを用いてエッチングした後、高周波プラズマCVD法を用いてフッ素含有DLC膜を形成させた。下記に形成条件を示す。
原料ガス:メタン(CH)と6フッ化エタン(C)との混合ガス
(混合比:CH:C=4:6)
反応圧力:13.3GPa
印加電力:540W
成膜時間:30min
基材 :GPPS(サイズ:縦50mm×横50mm×厚10mm)
(b)フッ素非含有DLC膜の形成
原料ガスとしてメタン(CH)のみを用いたこと以外は、上記したフッ素含有DLC膜の形成と同じ条件でフッ素非含有DLC膜を形成した。
(2)酸素修飾
形成させたフッ素含有DLC膜、フッ素非含有DLC膜のそれぞれを2つに分け、一方を大気圧プラズマ処理して表面に酸素修飾を施し、他方については酸素修飾を施さなかった。酸素修飾に際して使用した大気圧プラズマ処理装置および処理条件を下記に示す。
処理装置 :ダメージフリーマルチプラズマジェット装置
反応ガス :酸素(O
反応ガス量:10L/min
処理時間 :15min
2.評価
(1)評価項目と評価方法
(a)F/C:作成した試験片のDLC膜表面をXPS法を用いてフッ素の原子組成百分率Fと炭素の原子組成百分率Cを計測し、計測結果からF/Cを求めた。なお、XPS計測は、(株)プラズマコンセプト東京社製ダメージフリーマルチプラズマジェット装置(JPS-90100MC)を用いて、X線:MgKα線、電圧:10.0kv、電流:10mAの条件下で行った。
(b)O/C:作成した試験片のDLC膜表面をXPS法を用いて酸素の原子組成百分率Oと炭素の原子組成百分率Cを計測し、計測結果からO/Cを求めた。
(c)接触角 :試験片のDLC膜表面に純水の液滴を表面に接触させて着滴したときの試料面とのなす角度を計測した。
(d)抗菌特性:JIS Z2801:2010で規定されているフィルム接着法による評価方法を用いて抗菌活性値Rを求めた。なお、菌種としては、大腸菌(NBRC-12732)、黄色ブドウ球菌(NBRC-3972)の2種類を使用した。
具体的には、図5に示す手順で評価した。即ち、作製した50×50mmの試験片(実験例1~4)を滅菌済シャーレに入れた後、約1.0×10個の試験菌を含む菌液0.4mLを試験片の中央部に滴下し、40×40mmに切断したポリエチレン(PE)フィルムで被覆した。そして、このシャーレを、35℃、相対湿度90%の環境下に置いて、24時間培養した。その後、試験菌を洗い出した後、シャーレに入れ、1cm当りの生菌数を測定した。作製した試験片とcontrolの試験片の測定結果から下記の式を用いて抗菌活性値R(n=3の平均値)を求めた。なお、無加工試験片(control)は、基材(GPPS)のみでDLC膜を設けていない(未コート)試験片を作製して、同様に培養したものである。
抗菌活性値R=log10A/B
A:無加工試験片(control)の培養後生菌数
B:対象試料の培養後生菌数
また、フィルム接着法試験後のシャーレを目視観察した。
(2)評価結果
(a)F/C、O/Cおよび接触角の評価結果
F/C、O/Cおよび接触角の評価結果を表1に示す。
Figure 0007229458000001
(b)抗菌特性試験の結果
抗菌特性試験の結果を表2、表3に示す。なお、抗菌特性については、抗菌活性値R≧2.5の場合を「優」で、2.5>R≧2.2の場合を「良」、2.2>R≧2.0の場合を「可」、R<2.0の場合を「不可」で表記した。また、フィルム接着法試験後のシャーレの観察結果を、図6(大腸菌)、図7(黄色ブドウ球菌)に示す。
Figure 0007229458000002
表2に示すように、大腸菌に対しての抗菌作用は、フッ素を含有し、酸素修飾された実施例1のみで抗菌性有りとされる2.0以上の値を示した。
そして、図6に示すように、実験例1-A(図6(a))では大腸菌が死滅したことを示す白色の斑点が全域に亘って観察され、一方、酸素修飾されていてもフッ素を含有していない実験例2-A(図6(b))、フッ素を含有していても酸素修飾されていない実験例3-A(図6(c))、フッ素を含有しておらず酸素修飾もされていない実験例4-A(図6(d))の場合には、それぞれ大腸菌に対して白色の斑点が観察されなかった。
Figure 0007229458000003
表3に示すように、黄色ブドウ球菌に対しての抗菌作用は、大腸菌に対する試験と同様にフッ素を含有し、酸素修飾された実験例1のみで、抗菌性有りとされる2.0以上の値を示した。
そして、黄色ブドウ球菌の抗菌特性試験においては、死滅した菌は大腸菌と異なり透明となるが、図7に示すように、実験例1-B(図7(a))では、黄色ブドウ球菌が死滅したことを示す透明な領域が全体に亘って観察され、一方、実験例2-B(図7(b))、実験例3-B(図7(c))、実験例4-B(図7(d))では、白色の斑点が観察された。
以上より、本実施の形態によれば、フッ素を含有し、酸素修飾されたDLC膜は、大腸菌、黄色ブドウ球菌の双方に対して、優れた抗菌効果を有していることが確認できた。一方、フッ素を含有していても酸素修飾されていないDLC膜、酸素修飾されていてもフッ素を含有していないDLC膜、およびフッ素非含有で酸素修飾もされていないDLC膜は、抗菌活性値Rが2.0を大きく下回っており、フッ素含有と酸素修飾のいずれか一方のみの場合およびフッ素非含有で酸素修飾がされていない場合は、顕著な抗菌効果が得られないことが確認できた。
[2]実験2
1.実験方法
実験2として、フッ素含有DLCを酸素修飾した非晶質炭素膜において、十分な抗菌性を得るために好ましいF/CとO/Cの範囲を調べるために実験を行った。実験1とプラズマCVDの成膜における原料気体の混合比率と、酸素修飾の処理時間以外については同様の方法で、表4に示す試験片を作成し、実験1と同様に評価した。なお、F/Cをそれぞれ、0.1、0.05、0.04とするためプラズマCVDを用いた成膜時のメタン:6フッ化エタンの混合比率を、4:5、2:5、1:3とし、O/C比をそれぞれ、1.0、0.5、0.4とするために酸素修飾の処理時間を、15min、7.5min、5.5minとした。
Figure 0007229458000004
2.評価結果
試験の結果を表5、表6に示す。
Figure 0007229458000005
Figure 0007229458000006
表5と表6に示す結果から、F/Cが0.05以上、またはO/Cが0.5以上で良好な抗菌性を得ることができることが分かった。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
1 基材
2 DLC膜
3 抗菌性金属の微粒子
4 フッ素含有DLC膜
5 酸素修飾層
11 プラズマCVD装置
12 チャンバー
12a ガス導入ポート
12b ガス排出口
13 カソード
14 アノード
15 高周波電源
21 大気圧プラズマノズル
22 ステージ
23 試料台
W 試料

Claims (8)

  1. フッ素を含有した非晶質炭素膜であって、
    膜表面が酸素で修飾されており、膜表面における炭素の原子組成百分率Cに対する酸素の原子組成百分率Oの比O/Cが、0.5以上であり、
    膜表面の純水に対する接触角が、30°未満であることを特徴とする非晶質炭素膜。
  2. 膜表面における炭素の原子組成百分率Cに対するフッ素の原子組成百分率Fの比F/Cが、0.05以上であることを特徴とする請求項1に記載の非晶質炭素膜。
  3. JIS Z2801で規定されているフィルム接着法による評価方法における抗菌活性値Rの値が、2.0以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非晶質炭素膜。
  4. 膜厚が0.1~10μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の非晶質炭素膜。
  5. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の非晶質炭素膜の製造方法であって、
    炭化水素系ガスおよび炭化フッ素系ガスを用いて、プラズマCVD法によって基材上にフッ素化非晶質炭素膜を形成する膜形成工程と、
    酸素プラズマ処理によって、形成された前記フッ素化非晶質炭素膜の表面を酸素で修飾する酸素修飾工程とを備えていることを特徴とする非晶質炭素膜の製造方法。
  6. 前記基材が、高分子材料であることを特徴とする請求項に記載の非晶質炭素膜の製造方法。
  7. 前記高分子材料が、汎用ポリスチレンであることを特徴とする請求項に記載の非晶質炭素膜の製造方法。
  8. 前記酸素プラズマ処理に、大気圧酸素プラズマ処理を用いることを特徴とする請求項ないし請求項のいずれか1項に記載の非晶質炭素膜の製造方法。
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