JP7228722B1 - ポリビニルアルコールフィルム、それを含む光学フィルム及びそれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 0007228722000001
【課題】本発明はポリビニルアルコールフィルム、それを含む光学フィルム及びそれらの製造方法を得ることにある。
【解決手段】本発明は、ポリビニルアルコールフィルム、それを含む光学フィルム及びそれら製造方法に関し、当該ポリビニルアルコールフィルムが有する1140cm-1/1090cm-1におけるFTIR-ATRの吸収ピーク比×結晶粒径の平均値×(最大結晶粒径-最小結晶粒径)により得られる統合化指標値は0.90~4.50の間である。本発明のポリビニルアルコールフィルムは、色の不均一性が低く、色彩均一性が高いという特性を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学フィルムとして、特に偏光フィルムとして用い得る、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol,PVA)フィルムに関する。
ポリビニルアルコールフィルムは一種の親水性ポリマーであり、透明性、機械的強度、水溶性、良好な加工性などの性能を有し、包装材料又は電子製品の光学フィルムにおいて、特に偏光フィルムにおいて広く用いられている。
PVAフィルムで光学フィルムを調製する製造工程では、必要とする性能に従い選択的に官能基修飾を使用することができ、その後で延伸が行われる。製造方法は乾式と湿式に大別することができ、乾式は、一定の温湿度下において、不活性ガス雰囲気下でPVAフィルムの延伸を行ってから、染色などの工程を行うものである。湿式は、PVAフィルムの染色を行ってから、溶液中で延伸を行うものである。乾式で調製されたPVAフィルムは、表面に平坦性がないか又は染色が不均一になるという問題がしばしば起こるが、湿式で製造されたPVAフィルムは良好な性能(例えば色が均一)を具備するため、現在では一般的に湿式法を用いてPVAフィルムを製造することが多い。
偏光フィルムを製造する場合には、延伸倍率が高くなるほど、得られる光学性能も高くなるため、延伸時にはPVAフィルムが断裂に近づく臨界近傍まで可能な限り延伸し、光学特性に優れたPVAフィルムを得る。
良好な偏光フィルムは色が均一で、色斑が少なく、皺がないなどの特性を有し、優れた光学特性を提供することができる。偏光フィルムの光学特性を向上させるため、従来技術ではポリビニルアルコールの構造を変化させたり、官能基(例えばカチオン基)を加えたりするなどして、粘度や鹸化度を変えることにより光学特性を向上させている。
しかし、従来技術では、PVAフィルムを用いて大きいサイズの光学フィルムを製造する際に、染色が不均一になる現象が頻繁に生じていた。本発明者は、染色の不均一の発生は恐らく、PVAフィルム内の結晶粒がやや多いか、結晶粒がやや大きいか、又は結晶粒の大きさが不均一であるために、ヨード液が均一に吸着できないことが原因であることを発見した。
上述の問題を解決するため、本発明は、結晶粒がやや小さく且つ単位面積内の結晶粒がやや少ないPVAフィルムを提供することにより、PVAフィルムに色の不均一性が低く、色彩均一性が高いという特性を持たせる。
本発明は、ポリビニルアルコールフィルムを提供することを目的としており、その1140cm-1/1090cm-1におけるFTIR-ATRの吸収ピーク比×結晶粒径の平均値×(最大結晶粒径-最小結晶粒径)により得た統合化指標値は0.90~4.50の間である。
好ましい実施例において、結晶粒径は(101)面の特徴ピークの半値全幅により下記数式に基づき計算する。
Figure 0007228722000002
式中のDは結晶粒サイズであり、Kは0.89(Scherrer定数)であり、λはX線の照射波長であり、FWHMは特徴ピークの半値全幅であり、θはブラッグ回折角である。
好ましい実施例において、ポリビニルアルコールフィルムの5cm×5cmの面積における結晶化度はXRDにより測定され、その結晶化度は20~50%の間である。
好ましい実施例中、ポリビニルアルコールフィルムの統合化指標値×結晶化度の値は0.10~2.20の間である。
好ましい実施例中、ポリビニルアルコールフィルムの統合化指標値×結晶化度の値は0.10~0.85の間である。
好ましい実施例中、ポリビニルアルコールフィルムは添加剤を含み、且つポリビニルアルコールフィルムを膨潤させた後の添加剤の総析出量比は84.0%以上である。
好ましい実施例中、その幅内において測定される最大-最小添加剤析出量の割合は2.0%~6.0%である。
好ましい実施例中、ポリビニルアルコールフィルム中の添加剤は可塑剤又は微量の界面活性剤であり、可塑剤は、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリメチロールプロパンであり、界面活性剤はカチオン、アニオン又は非イオン型界面活性剤に限定されず、界面活性剤は、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸塩型、ラウレス硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩型、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのスルホン酸塩型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポリエチレングリコールモノオクチルフェニルエーテルなどのアルコール系のフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレートなどのアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミンなどのアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなどのアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコールエーテル型、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミドなどのアルカノールアミド型、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルなどのアリルフェニルエーテル型などであり得る。
本発明の別の目的は、上述のポリビニルアルコールフィルムが含まれた光学フィルムを提供することである。
好ましい実施例中、光学フィルムは偏光フィルムである。
本発明の別の目的は、ポリビニルアルコールフィルムの製造方法を提供することであり、それには、(a)ポリビニルアルコール系樹脂を130℃以上の高い温度下で少なくとも180分間溶解し、ポリビニルアルコール鋳造溶液を形成する、溶解工程と、(b)ポリビニルアルコール鋳造溶液を鋳造ドラムに鋳込み、鋳造ドラムから剥離して、ポリビニルアルコール予備フィルムを得る、鋳造工程と、(c)ポリビニルアルコール予備フィルムを加熱ローラと乾燥機内で乾燥させて、ポリビニルアルコールフィルムが得られ、そのうち、乾燥機の温度は75℃以上且つ110℃以下の間とし、乾燥機内の幅方向沿いの温度差は25℃以下とする、乾燥工程と、を含む。
本発明の効果としては、本発明が提供するポリビニルアルコールフィルムは結晶化度が低く、色の不均一性が低く、色彩均一性が高いという特性を有し、後の光学フィルムの製造に用いた場合には、高い染色均一性を有することができる。また、本発明が使用する1140cm-1/1090cm-1におけるFTIR-ATRの吸収ピーク比及び確定ピーク位置は、従来技術と比べて数値の差をより明確にすることができる。
本発明の実施例に基づくポリビニルアルコールフィルムのFTIR-ATRの吸収ピークグラフである。 本発明の実施例に基づくポリビニルアルコールフィルムのXRDの回折図である。 本発明の実施例に基づくポリビニルアルコールフィルムの膨潤及び延伸の概念図である。 本発明の実施例に基づくポリビニルアルコールフィルムの左、中、右で10cm×10cmの面積の試験片を三枚切り出した概念図である。 本発明の実施例に基づくポリビニルアルコールフィルムの色均一性の出来栄えを測定した画像である。
以下の実施形態は、本発明を過度に限定するものではない。本発明が属する技術分野の当業者は、本発明の精神又は範囲から逸脱せずに本明細書中で検討する実施例に対して修正や変更を行うことができ、いずれも本発明の範囲に属する。
本明細書中の「1」及び「一種」という用語は、本明細書において文法の対象が1つ以上(即ち少なくとも1つ)存在することを指す。
本発明は、ポリビニルアルコールフィルムを提供することを目的としており、その1140cm-1/1090cm-1におけるFTIR-ATRの吸収ピーク比×結晶粒径の平均値×(最大結晶粒径-最小結晶粒径)により得られる統合化指標値は0.90~4.50の間である。また、本発明は、そのポリビニルアルコールフィルムが含まれた光学フィルムも提供する。
上述の「FTIR-ATRの吸収ピーク比(又はIRピーク比と呼ばれる)」は、赤外線スペクトルの特徴ピークと確定ピーク位置の比率であり、測定の概略図は図1に示す通りである。そのうち、1140~1144(cm-1)はPVA結晶化度吸収ピーク(ν(C-C)stretching vibrations)であり、PVAフィルム骨格中の主要構造であって、ここでは結晶化度特徴ピークとしている。1085~1095(cm-1)は確定ピーク位置としている。通常ピークポイントは1090cm-1に位置し、その特徴ピークは(ν(C-O)stretching vibrations)である。この特徴ピークはPVAフィルムの主要な特徴ピークであるとともに、ν(C-C)stretchingの影響が少ないため、確定ピーク位置とするのに適している。
本発明は、1140cm-1吸収ピーク/1090cm-1吸収ピークを利用してPVAフィルムの結晶化度を評価することができ、特徴ピーク/確定ピーク位置の比率が高いほど、結晶化度が高いことを表しており、単位面積内の結晶量が多いと、染色不均一の現象が発生しやすくなる。
本明細書に記載の「結晶粒サイズ平均値(又は結晶粒径の平均値と呼ぶ)」は、X線回析装置(XRD)の回析ピークの結果によって得ることができ、ピーク値の位置からその材料成分を確定し、且つピーク値の半値全幅から試料の寸法と粒径を算出することができる。結晶粒が大粒径であればあるほど、後の染色及び延伸時に結晶粒を完全に破壊することが難しくなり、結晶粒がまだ存在している領域に染色不均一の現象が生じる可能性が高くなる。
PVAフィルムのXRD回折図を示した図2を参照されたい。本発明は、(101)面の特徴ピークの半値全幅を用いて結晶粒サイズを算出する。計算式は以下の通りである。
Figure 0007228722000003
式中のDは結晶粒サイズであり、KはScherrer定数で0.89であり、λはX線の照射波長であり、FWHMは特徴ピークの半値全幅であり、Cosθはブラッグ回折角である。上述の「(101)面」は結晶面であり、通常PVAの(101)結晶面の範囲はだいたい2θ値の13~27度の間にある。
本明細書に記載の「結晶化度」は、ポリマー全体に対するポリマー中の結晶部分の占める割合である。XRD結晶化度は、部分結晶性ポリマーのX線回析ピークの強度の総面積中で結晶領域部分が寄与しているパーセンテージに基づき計算された結晶化度である。好ましい実施例において、ポリビニルアルコールフィルムの5cm×5cmの面積における結晶化度はXRDにより測定され、その結晶化度は20~50%の間であり、例えば、20~50%の間、20~45%の間、20~40%の間、20~35%の間、20~30%の間、20~25%の間、30~50%の間、30~45%の間、30~40%の間、30~35%の間、40~50%の間又は40~45%の間である。
本明細書に記載の「最大結晶粒-最小結晶粒値(又は最大結晶粒径-最小結晶粒径と呼ぶ)」とは、領域的な結晶粒の差を意味している。即ち、減算値が過度に大きい場合には、領域的な結晶粒の差が大き過ぎることを表している。膨潤及び延伸(図3に示す通り)後、結晶粒が大きいPVAは溶け残りが生じやすく、一方で小さな結晶粒は完全に溶解される。この場合、領域的に染色が不均一な状態が発生しやすくなる。上述の「溶け残り」とは、膨潤及び延伸後、大粒径の結晶粒が完全に溶解していないことを指す。上述の「膨潤」とは、溶媒がポリマーに浸透し、ポリマー鎖を切断してポリマーの体積を膨張させることを指す。膨潤及び溶解は、温度、構造などのパラメータの影響を受ける。
本明細書に記載の「統合化指標」は、上述の1140cm-1/1090cm-1におけるFTIR-ATRの吸収ピーク比×結晶粒径の平均値×(最大結晶粒径-最小結晶粒径)を計算して得るが、数値が小さいほど色均一性が良くなる。好ましい実施例中、統合化指標は0.90~4.50の間であり、具体的には例えば、0.90~4.50、0.90~4.00、0.90~3.50、0.90~3.00、0.90~2.50、0.90~2.00、0.90~1.50、0.90~1.00、1.00~4.50、1.00~4.00、1.00~3.50、1.00~3.00、1.00~2.50、1.00~2.00、1.00~1.50、1.50~4.50、1.50~4.00、1.50~3.50、1.50~3.00、1.50~2.50、1.50~2.00、2.00~4.50、2.00~4.00、2.00~3.50、2.00~3.00、2.00~2.50、2.50~4.50、2.50~4.00、2.50~3.50、2.50~3.00、3.00~4.50、3.00~4.00、3.00~3.50、3.50~4.50、3.50~4.00又は4.00~4.50である。
本明細書に記載の「統合化指標値×結晶化度の値」は、染色均一性がより優れたPVAフィルムを画定するのに用いることができ、好ましい実施例では0.10~2.20であり、具体的には、0.10~2.20、0.10~2.00、0.10~1.80、0.10~1.60、0.10~1.40、0.10~1.20、0.10~1.00、0.10~0.80、0.10~0.60、0.10~0.40、0.10~0.20、0.20~2.20、0.20~2.00、0.20~1.80、0.20~1.60、0.20~1.40、0.20~1.20、0.20~1.00、0.20~0.80、0.20~0.60、0.20~0.40、0.40~2.20、0.40~2.00、0.40~1.80、0.40~1.60、0.40~1.40、0.40~1.20、0.40~1.00、0.40~0.80、0.40~0.60、0.60~2.20、0.60~2.00、0.60~1.80、0.60~1.60、0.60~1.40、0.60~1.20、0.60~1.00、0.60~0.80、0.80~2.20、0.80~2.00、0.80~1.80、0.80~1.60、0.80~1.40、0.80~1.20、0.80~1.00、1.00~2.20、1.00~2.00、1.00~1.80、1.00~1.60、1.00~1.40、1.00~1.20、1.20~2.20、1.20~2.00、1.20~1.80、1.20~1.60、1.20~1.40、1.40~2.20、1.40~2.00、1.40~1.80、1.40~1.60、1.60~2.20、1.60~2.00、1.60~1.80、1.80~2.20、1.80~2.00又は2.00~2.20などである。より好ましい実施例において、統合化指標値×結晶化度の値は0.10~0.85の間であり、具体的には、0.10~0.85、0.10~0.80、0.10~0.70、0.10~0.60、0.10~0.50、0.10~0.40、0.10~0.30、0.10~0.20、0.20~0.85、0.20~0.80、0.20~0.70、0.20~0.60、0.20~0.50、0.20~0.40、0.20~0.30、0.30~0.85、0.30~0.80、0.30~0.70、0.30~0.60、0.30~0.50、0.30~0.40、0.40~0.85、0.40~0.80、0.40~0.70、0.40~0.60、0.40~0.50、0.50~0.85、0.50~0.80、0.50~0.70、0.50~0.60、0.60~0.85、0.60~0.80、0.60~0.70、0.70~0.85、0.70~0.80又は0.80~0.85などである。
本明細書に記載の「添加剤」は、可塑剤、界面活性剤、白濁剤、乳化剤又は起泡剤を含むがこれらに限らない。そのうち、可塑剤は、材料の柔軟性を増加させたり、材料を液化させたりすることができる。可塑剤は例えば、フタル酸エステル(Phthalate)、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)、グリセリン、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリメチロールプロパンなどであるが、これらに限らない。好ましい実施例中、可塑剤は、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリメチロールプロパンである。界面活性剤はカチオン、アニオン又は非イオン型界面活性剤に限定されず、界面活性剤は例えば、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸塩型、ラウレス硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩型、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのスルホン酸塩型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポリエチレングリコールモノオクチルフェニルエーテルなどのアルコール系のフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレートなどのアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミンなどのアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなどのアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコールエーテル型、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミドなどのアルカノールアミド型、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルなどのアリルフェニルエーテル型などであるが、これらに限らない。好ましい実施例中、添加剤の添加量は8~13%の間であり、例えば、8~13%、8~11%、8~9%、9~13%、9~11%、10~13%、10~11%、11~13%又は12~13%などである。
少なくとも1つの実施例によれば、本発明者は、PVAフィルムの結晶化度が高い場合には、フィルム中の添加剤の析出が難しくなり、添加剤の析出量が低くなり過ぎる状態を招いてしまうことを発見した。好ましい実施例中、ポリビニルアルコールフィルムは添加剤を含み、且つポリビニルアルコールフィルムを膨潤させた後の添加剤の総析出量比は84.0%以上であり、例えば、84.0%以上、86.0%以上、88.0%以上、90.0%以上、92.0%以上、94.0%以上、96.0%以上又は98.0%以上である。別の好ましい実施例中、本発明のポリビニルアルコールフィルムの幅内において測定される最大-最小添加剤析出量の割合は2.0%~6.0%であり、例えば、2.0%~6.0%、2.5%~6.0%、3.0%~6.0%、3.5%~6.0%、4.0%~6.0%、4.5%~6.0%、5.0%~6.0%、5.5%~6.0%、2.0%~5.0%、2.5%~5.0%、3.0%~5.0%、3.5%~5.0%、4.0%~5.0%、4.5%~5.0%、2.0%~4.0%、2.5%~4.0%、3.0%~4.0%、3.5%~4.0%、2.0%~3.0%又は2.5%~3.0%であるが、これらに限らない。上述の「幅」とは、生地の有効幅を指す。ここでは、PVAフィルムの全幅から左右で所定の長さを引いた後の残りの長さを表している。
本明細書に記載の「光学フィルム」とは、偏光フィルム、ブルーライトカットフィルム、フィルターレンズなどを指し得るが、本発明はこれらに限定されない。好適には、本発明のPVAフィルムは偏光フィルムとされる。
また、本発明は、ポリビニルアルコールフィルムの製造方法も提供するが、その工程は、ポリビニルアルコール系樹脂を溶解し、ポリビニルアルコール鋳造溶液を形成することと、ポリビニルアルコール鋳造溶液を鋳造ドラムに鋳込み、鋳造ドラムから剥離して、ポリビニルアルコール予備フィルムを得ることと、ポリビニルアルコール予備フィルムを加熱ローラと乾燥機内で乾燥させて、ポリビニルアルコールフィルムが得ることと、を含む。
ポリビニルアルコール鋳造溶液は、ポリビニルアルコール系樹脂を溶解タンク中で溶解して調製する。溶解タンク中の溶解温度は≧130℃が好ましい。少なくとも1つの実施例によれば、ポリビニルアルコール系樹脂は130℃以上の高い温度下で少なくとも180分間溶解して、ポリビニルアルコール鋳造溶液を形成する。具体的には、例えば130℃、135℃、140℃、145℃又は150℃など、少なくとも180分間、少なくとも190分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間又は少なくとも240分間などである。
ポリビニルアルコール鋳造溶液の調製では、ポリビニルアルコール樹脂の含有量は10~60wt%であり、好適には15~40wt%、より好適には20~30wt%であり、具体的には、例えば10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60wt%などである。ポリビニルアルコール樹脂の含有量が不足すると、ポリビニルアルコール鋳造溶液の粘度が低くなり過ぎて、乾燥負荷が過度に大きくなり、PVAフィルム調製における成膜効率が悪くなってしまう。反対に、ポリビニルアルコール樹脂の含有量が高過ぎると、ポリビニルアルコール樹脂が全体的に均一に溶解しにくくなり、クラスターが残りやすくなってしまう。
上述のポリビニルアルコール樹脂は、ビニルエステル系樹脂単量体の重合によりポリビニルエステル系樹脂を形成した後、鹸化反応を行って得たものである。そのうち、ビニルエステル系樹脂単量体は、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ペンタン酸ビニル又はオクタン酸ビニルなどのビニルエステル類を含むが、本発明はこれらに限定されず、好適には酢酸ビニルである。また、オレフィン類化合物又はアクリレート誘導体と上述のビニルエステル系樹脂単量体との共重合により形成された共重合体も使用可能である。オレフィン類化合物は、エチレン、プロピレン又はブチレンなどを含むが、本発明はこれらに限定されない。アクリレート誘導体はアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル又はアクリル酸n-ブチルなどを含むが、本発明はこれらに限定されない。
ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度/アルカリ化度は、好適には99.00%以上であり、これにより良好な光学特性が得られるが、具体的には、例えば99.00%~100.00%、99.00%~99.99%、99.00%~99.95%、99.00%~99.90%、99.00%~99.85%、99.00%~99.80%、99.00%~99.75%、99.00%~99.70%、99.00%~99.65%、99.00%~99.60%、99.00%~99.55%、99.00%~99.50%、99.00%~99.45%、99.00%~99.40%、99.00%~99.35%、99.00%~99.30%、99.00%~99.25%、99.00%~99.20%、99.00%~99.15%、99.00%~99.10%、99.00%~99.05%、99.20%~100.00%、99.20%~99.99%、99.20%~99.95%、99.20%~99.90%、99.20%~99.85%、99.20%~99.80%、99.20%~99.75%、99.20%~99.70%、99.20%~99.65%、99.20%~99.60%、99.20%~99.55%、99.20%~99.50%、99.20%~99.45%、99.20%~99.40%、99.20%~99.35%、99.20%~99.30%、99.20%~99.25%、99.40%~100.00%、99.40%~99.99%、99.40%~99.95%、99.40%~99.90%、99.40%~99.85%、99.40%~99.80%、99.40%~99.75%、99.40%~99.70%、99.40%~99.65%、99.40%~99.60%、99.40%~99.55%、99.40%~99.50%、99.40%~99.45%、99.60%~100.00%、99.60%~99.99%、99.60%~99.95%、99.60%~99.90%、99.60%~99.85%、99.60%~99.80%、99.60%~99.75%、99.60%~99.70%、99.60%~99.65%、99.80%~100.00%、99.80%~99.99%、99.80%~99.95%、99.80%~99.90%又は99.80%~99.85%などである。ポリビニルアルコールの重合度は800~10000の間であり、具体的には、例えば800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000又は10000などであり、重合度が800を上回ると良好な加工特性を具備するが、重合度が10000を上回ると溶解するのに都合が悪くなる。好適には、2200~10000の間である。
鋳造溶液中には、ポリビニルアルコール系樹脂のほかに、可塑剤を含めて成膜の加工性を増強することもでき、使用可能な可塑剤には、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセロールなどの多価アルコールが含まれるが、本発明はこれらに限定されず、好適にはエチレングリコール及びグリセロールである。可塑剤の添加量は通常、ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して3~30重量部の間であり、好適には7~20重量部の間であり、具体的には、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30重量部などである。可塑剤の含有量が不足すると、形成されるPVAフィルムに結晶が生じやすくなり、後続の加工における染色効果に影響を及ぼしてしまう。反対に、可塑剤の含有量が高すぎると、PVAフィルムの機械的性質が損なわれてしまう。
PVAフィルムの製造方法において使用する設備には、溶解タンク、フィルタ、コーティング機及び溶解タンクからコーティング機の前まで接続される輸送配管が含まれ、好ましい状態としては、それら設備に保温装置が被覆されており、保温装置は金属発熱体(電熱線)、又は内部に油や水などの液体が入れられたジャケットでよく、金属ワイヤ又はジャケット内の液体を加熱し、それら設備(特に設備と配管の表面)を均一に加熱して保温状態を維持させることで、設備又は配管の表面温度が失われてポリビニルアルコール鋳造溶液中のポリビニルアルコールにゲルやクラスターが形成されるのを防止する。また、保温温度は過度に高くしてはならず、さもないとポリビニルアルコール鋳造溶液の一部が脱水又はゲル化し、キツネ色又は黒色のゲルが形成され、後工程における塗布成膜後のPVAフィルムの表面品質や均一性に影響を及ぼしてしまう。塗布成形におけるポリビニルアルコール鋳造溶液の保温温度は80~120℃であり、具体的には、例えば80、85、90、95、100、105、110、115、120℃又は上述の任意の2つの数値の間であり、好適には90~110℃、より好適には90~100℃である。
ポリビニルアルコール鋳造溶液を鋳造ドラムに鋳込むとき、鋳造ドラムの回転速度は約3~7m/minであり、好適には4~6m/minである。ドラムの速度が遅すぎると、生産性が低下する恐れがある。反対に、ドラムの速度が速すぎると、鋳造溶液の乾燥が不十分となり、剥離性が低下してしまう。また、好ましい実施形態中、ドラムの温度は90~95℃に設定し、具体的には、例えば90、91、92、93、94、95℃又は上述の任意の2つの数値の間であり、ドラムの温度が高すぎると、ドラム上の鋳造溶液に起泡現象が生じやすくなる。
鋳造ドラム上で最初に成膜したPVAフィルムをドラムから剥離した後、乾燥を経てPVAフィルムが形成されるが、乾燥過程は、加熱ローラ上で行うか、又はフローティングドライヤー上で行うか、選択することができる。加熱ローラ及びフローティングドライヤーの数は特に限定されず、必要に応じて調整できる。少なくとも1つの好ましい実施例によれば、乾燥工程での乾燥機の温度は75℃以上且つ110℃以下の間であり、乾燥機内の幅方向沿いの温度差は25℃以下である。発明者は、温度差が大き過ぎる場合に結晶化度が不均一になりやすいことを発見した。また、隣接する乾燥室の温度差は65℃以下であるのが好ましく、より好適には60℃以下であり、最適なのは50℃であり、隣接する乾燥室の温度差が大き過ぎると、やはり結晶化度が不均一になりやすくなる。
PVAフィルムで光学フィルムを製造する際には延伸と染色を行うが、偏光フィルムを例とすると、偏光フィルムの製造工程ではI 、I ヨウ化物イオンが含まれたホウ酸水溶液でPVAフィルムの染色が行われるため、ホウ酸がPVAの無定形(amorphous)エリアとの架橋結合作用を生じた後、ヨウ化物イオンが固定され、ヨウ化物イオンの溶出を防ぐことができる。
以下では、実施例と合わせて本発明についてより詳しく説明する。但し、それらの実施例は本発明をより容易に理解できるよう助けるためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
以下、PVAフィルムの非限定的な調製方法を提供する。以下に開示する方法と同様の方法に基づき、非限定的実施例PVAフィルムを11種類(実施例PVA1~11)、及び比較例PVAフィルムを4種類(比較例PVA1~4)調製した。但し、実施例1~11及び比較例1~4を調製する具体的な方法は、通常、1つ以上の面で以下に開示する方法と異なっている。
具体的には、PVAフィルムの調製方法は以下の工程を含む。溶解タンク中に、鹸化度が>99.9%で且つ重合度が約2400のPVA樹脂1800kg、水4000kg、添加剤(可塑剤又は界面活性剤)190kgを加えて、攪拌しながら130~150℃まで昇温させ、この温度下で維持しながら180~240分間溶解を行い、均一に溶解した後、樹脂濃度を25.0~35.0%になるまで調整して、製膜原液を得た。製膜原液は二軸スクリュー押出機で消泡した後、歯車ポンプ(gear pump)を用いて、T型スリットダイから吐出し、回転する高温の鋳造ドラムにカーテンコーティングして乾燥製膜し、予備成形フィルムを鋳造ドラムから剥離した後、15本の加熱ローラでフィルムの上下両面を接触乾燥した。1本目の加熱ローラはすべての加熱ローラの中で最も高温とし、続く加熱ローラの温度は徐々に下がるよう調節した。次に乾燥機で乾燥を行い、上下両面を熱風で乾燥し、乾燥機の最高温度は75~110℃に調節し、最後にポリビニルアルコールフィルムの完成品を得た。
実施例1~11及び比較例1~4を評価し、それらのPVAフィルムの性質を判断した。表1は、実施例1~11及び比較例1~4の調製工程における制御変数、PVAフィルムの属性の概要、及びPVAフィルムの染色均一性の状態である。
Figure 0007228722000004
Figure 0007228722000005
上述の乾燥機のTD方向における最大温度差は、PVAフィルム生産時に測定される横断(Transverse Direction,TD)方向における温度の最大差異であり、例えば乾燥機のTD方向の最高温度が100℃、最低が80℃の場合、その温度差は20℃となる。
上述のFTIR-ATRのピーク比の測定方法は、以下を含む。機械方向(Machine Direction,MD)沿いは10cm、TD方向は全幅のPVAフィルムを取り、測定前に先ずそれを20℃、50%RHの湿度調整器に入れてから1日後に取り出し、すぐにフーリエ変換赤外分光器(Perkin Elmer Spectrum 100)で測定するものとし、測定範囲は、PVAフィルムの全幅から左右で各10cm引き、残りの幅の全長を測定して、10cm間隔の方式でサンプリングし、且つ各フィルム片がいずれも5cm×5cmの大きさになるよう切り出された試験片とし、測定方法は、ATRの吸収法を用い、650~4000cm-1領域、且つ積算回数4回で分析を行い、分析数値を得た後、1140cm-1及び1090cm-1での吸収値を読み取り、1140cm-1/1090cm-1の比率を算出する。
上述の結晶粒サイズの測定及び最大結晶粒-最小結晶粒値の測定方法は、以下を含む。MD方向沿いは10cm、TD方向は全幅のPVAフィルムを取り、測定前に先ずそれを20℃、50%RHの湿度調整器に入れてから1日後に取り出し、すぐにX線回析装置(XRD、型式:Bruker D2 Phaser)で測定するものとし、測定範囲は、PVAフィルムの全幅から左右で各10cm引き、残りの幅の全長を測定して、50cm間隔の方式でサンプリングし、且つ各フィルム片がいずれも5cm×5cmの大きさになるよう切り出された試験片とし、XRDでその(101)面の半値全幅を測定して、算出した結晶粒サイズの平均値を求め、且つ最大結晶粒-最小結晶粒値を計算する。
上述の結晶化度の測定方法は、以下を含む。MD方向沿いは10cm、TD方向は全幅のPVAフィルムを取り、測定前に先ずそれを20℃、50%RHの湿度調整器に入れてから1日後に取り出し、X線回析装置(Bruker D2 Phaser)で測定するものとし、測定範囲は、PVAフィルムの全幅から左右で各10cm引き、残りの幅の全長を測定して、50cm間隔の方式でサンプリングし、且つ各フィルム片がいずれも5cm×5cmの大きさになるよう切り出された試験片とし、XRDでその(101)面の面積を測定して、ベースラインを過ぎた後の(101)面領域の全体面積を割って平均結晶化度を算出する。
上述の添加剤の析出量比の測定方法は、以下を含む。図4に示す通り、MD方向沿いは20cm、TD方向は全幅のPVAフィルムを取り、測定前に先ずそれを20℃、50%RHの湿度調整器に入れてから1日後に取り出すものとし、測定範囲は、PVAフィルムの全幅から左右で各10cm引き、残りの幅の全長を測定してから、左、中、右で3つの試料を取り、且つ各フィルム片がいずれも10cm×10cmの大きさになるよう切り出された試験片とする。次に、PVAフィルムを105℃の乾燥機に10分間入れて、そのフィルムの重さ(M1)を量ってから、30℃の純水内にいれて5分間膨潤させた後、105℃の乾燥機に60分間入れて、すぐにそのフィルムの重さ(M2)を量る。添加剤析出量は、(M1-M2)/M1×100%=A1となる。添加剤析出量(A1)を計算した後、実際の添加量(A2)(wt%)との除算を行えば、添加剤の総析出量比(A1/A2)×100%が得られる。上述の実際の添加量とは、添加剤/(添加剤+PVA樹脂)の割合を指す。
上述の色均一性の出来栄えの測定は、2枚のPVAフィルムを直交にして重ね、光束発散度=14000lxのランプハウスを用いていずれかの面に照射を行い、もう一方の面の色均一性を観察するものであり、そのうち、「◎」のマークは、そのPVAフィルムに色の不均一がないことを表し、「〇」のマークは、PVAフィルムの色が若干不均一であることを表し、「X」のマークは、PVAフィルムの色が顕著に不均一であることを表している。図5は、本発明の実施例に基づくポリビニルアルコールフィルムの色均一性の出来栄えを測定した画像である。
表1の実施例によれば、PVAフィルムの調製工程における溶解温度が130℃以上、且つ溶解が180分間以上において、IRの吸収ピークの平均(1140cm-1/1090cm-1)は0.486~0.623であり、結晶粒サイズの平均値は4.32~6.95nmであり、最大結晶粒-最小結晶粒値は0.42~1.21nmであり、統合化指標は0.91~4.48の間であり、且つそのPVAフィルムの染色状態は色が若干不均一であるか、又は色の不均一がなかった。
発明者は、PVAフィルムの調製工程パラメータである溶解温度と溶解時間は互いに影響する変数であり、溶解温度が高くなく、及び/又は溶解時間が短い場合には、比較例1の結果のように、そのFTIR-ATRのピーク平均値が高くなり過ぎる現象が生じかねないことを発見した。それに比べ、実施例1~11は溶解温度を130℃以上、且つ溶解時間を180分間以上に制御しており、PVAフィルムのFTIR-ATRピーク平均値は比較的低かった。また、PVAフィルムの調製工程パラメータのうち、乾燥機の乾燥温度については、それが影響する指標は主に結晶粒サイズの平均値であり、比較例2及び4の結果のように、平均温度が高ければ高いほど、生じる結晶粒サイズも大きくなる。それに比べ、実施例1~11は乾燥機の温度を110℃以下に制御しており、PVAフィルムの結晶粒サイズの平均値は比較的低かった。また、PVAフィルムの調製工程パラメータのうち、乾燥機のTD方向における最大温度差については、それが影響する指標は主に最大結晶粒-最小結晶粒値であり、温度差が大きければ大きいほど、生じてしまう結晶粒サイズの差異も大きくなる。TD方向の温度差が生じる原因は、現場の乾燥機のチャンバーが大き過ぎることで、実際の温度制御に差異が生じるためと思われる。PVAフィルムの結晶化度は単位面積内の結晶化度であり、結晶粒サイズ及び結晶粒量の影響を受ける。実施例1~11は、PVAフィルムの調製工程における溶解温度/時間、乾燥機の乾燥温度及び乾燥機のTD方向における最大温度差を調整することにより、処理後のPVAフィルムの結晶粒を比較的小さくさせるとともに、単位面積内の結晶粒を比較的少なくさせ、これにより染色均一性が高いPVAフィルムを得ている。
別の面として、意外なことに、発明者は、添加剤析出量と統合化指標には一定程度の関係があることを発見した。統合化指標が高い場合には、結晶化度が相対的に高いことを表しており、この場合には一部の添加剤が結晶内に閉じ込められて析出できなくなる。表1の結果からは、比較例1~4のPVAフィルムにおける添加剤の平均溶出比がいずれも低過ぎる(<84.0%)状態であることが分かる。
要約すると、本発明のPVAフィルムは結晶化度が低く、1140cm-1/1090cm-1におけるFTIR-ATRの吸収ピーク比×結晶粒径の平均値×(最大結晶粒径-最小結晶粒径)により得る統合化指標値を0.90~4.50の間に制御することにより、得られるPVAフィルムに色の不均一性が低く、色彩均一性が高いという特性を持たせる。また、本発明が使用する1140cm-1/1090cm-1でのFTIR-ATRの吸収ピーク比は、従来技術と比べて数値の差をより明確にすることができる。
本明細書において提供する全ての範囲は、割り当て範囲内における各特定の範囲及び割り当て範囲の間の二次範囲の組み合わせを含むという意味である。また、別段の説明がない限り、本明細書が提供する全ての範囲は、いずれも範囲のエンドポイントを含む。従って、範囲1~5は、具体的には1、2、3、4及び5、並びに2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などの二次範囲を含む。
本明細書において参照される全ての刊行物及び特許出願はいずれも参照により本明細書に組み込まれ、且つありとあらゆる目的から、各刊行物又は特許出願はいずれも各々参照により本明細書に組み込まれることを明確且つ個々に示している。本明細書と参照により本明細書に組み込まれるあらゆる刊行物又は特許出願との間に不一致が存在する場合には、本明細書に準ずる。
本明細書で使用する「含む」、「有する」及び「包含する」という用語は、開放的、非限定的な意味を有する。「1」及び「当該」という用語は、複数及び単数を含むと理解されるべきである。「1つ以上」という用語は、「少なくとも1つ」を指し、従って単一の特性又は混合物/組み合わせた特性を含むことができる。
操作の実施例中又は他の指示する場所を除き、成分及び/又は反応条件の量を示す全ての数字は、全ての場合においていずれも「約」という用語を用いて修飾することができ、示した数字の±5%以内であるという意味である。本明細書で使用する「基本的に含まない」又は「実質的に含まない」という用語は、特定の特性が約2%未満であることを意味する。本明細書中に明確に記載されている全ての要素又は特性は、特許請求の範囲から否定的に除外することができる。

Claims (11)

  1. 1140cm-1/1090cm-1におけるFTIR-ATRの吸収ピーク比×結晶粒径の平均値×(最大結晶粒径-最小結晶粒径)により得た統合化指標値は0.90~4.50の間である、ポリビニルアルコールフィルム。
  2. 前記結晶粒径は、(101)面の特徴ピークの半値全幅により下記数式に基づいて計算され、
    Figure 0007228722000006
    式中のDは結晶粒サイズであり、Kは0.89(Scherrer定数)であり、λはX線の照射波長であり、FWHMは特徴ピークの半値全幅であり、cosθはブラッグ回折角である、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  3. 前記ポリビニルアルコールフィルムの5cm×5cmの面積における結晶化度は、XRDにより測定され、前記結晶化度は20~50%の間である、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  4. 前記統合化指標値×前記結晶化度の値は、0.10~2.20の間である、請求項3に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  5. 前記統合化指標値×前記結晶化度の値は、0.10~0.85の間である、請求項4に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  6. 添加剤を含み、且つ前記ポリビニルアルコールフィルムを膨潤させた後の前記添加剤の総析出量比は84.0%以上である、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  7. 幅内において測定される最大-最小添加剤析出量の割合は、2.0%~6.0%である、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  8. 前記添加剤は、可塑剤又は界面活性剤であり、前記可塑剤は、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリメチロールプロパンであり、前記界面活性剤は、カチオン、アニオン又は非イオン型界面活性剤である、請求項6に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  9. 請求項1~7のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルムを含む、光学フィルム。
  10. 偏光フィルムである、請求項9に記載の光学フィルム。
  11. 請求項1~7のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルムの製造方法であって、
    (a)ポリビニルアルコール系樹脂を130℃以上の高い温度下で少なくとも180分間溶解し、ポリビニルアルコール鋳造溶液を形成する、溶解工程と、
    (b)前記ポリビニルアルコール鋳造溶液を鋳造ドラムに鋳込み、前記鋳造ドラムから剥離して、ポリビニルアルコール予備フィルムを得る、鋳造工程と、
    (c)前記ポリビニルアルコール予備フィルムを加熱ローラと乾燥機内で乾燥させて、前記ポリビニルアルコールフィルムが得られ、そのうち、前記乾燥機の温度は75℃以上且つ110℃以下の間とし、前記乾燥機内の幅方向沿いの温度差は25℃以下とする、乾燥工程と、を含む製造方法。
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