以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、自動取引装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、使用者によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。因みに紙幣は、例えば長方形の紙により、紙葉状に構成されている。
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルとなっている。テンキー7は、「0」~「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
[2.紙幣入出金機の構成]
媒体処理装置としての紙幣入出金機10は、図2に側面図を示すように、内部に媒体としての紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この紙幣は、例えば紙や樹脂等の材料により、薄い長方形の紙葉状に形成されている。なお以降の各図では、紙幣が搬送される搬送路を直線又は曲線により表しており、また搬送路に沿って配置される搬送ローラ対を円により表している。
紙幣入出金機10は、大きく分けて、全体の外側部分を構成する紙幣入出金機フレーム11と、該紙幣入出金機フレーム11における上下方向のほぼ中央よりも上側部分を占める上部ユニット12と、その下側部分を占める下部ユニット13とにより構成されている。上部ユニット12及び下部ユニット13は、仮想的な平面である境界面BDにより上下に分離されており、且つ互いに隣接している。
紙幣入出金機フレーム11は、筐体2(図1)の内部に取り付けられている。上部ユニット12及び下部ユニット13は、この紙幣入出金機フレーム11に対し、それぞれ前後方向に沿ったスライドレール14及び15を介して取り付けられている。このため紙幣入出金機10では、筐体2の前扉が開放された状態において、図3(A)及び(B)に示すように、紙幣入出金機フレーム11に対し上部ユニット12及び下部ユニット13をそれぞれ前方へ引き出すことができる。また紙幣入出金機10では、上部ユニット12及び下部ユニット13を後方へ押し込むことにより、図2に示したように、紙幣入出金機フレーム11内にそれぞれ格納することができる。
説明の都合上、以下では上部ユニット12及び下部ユニット13がそれぞれ移動する方向である前後方向を、移動方向とも呼ぶ。また以下では、上部ユニット12及び下部ユニット13をそれぞれ移動させるスライドレール14及び15を、移動部とも呼ぶ。
[2-1.上部ユニットの構成]
図2の一部を拡大した図4(A)に示すように、上部ユニット12には、全体を統括制御する紙幣制御部21、接客部22、上前搬送部23、鑑別部24、上後搬送部25、一時保留部26及びリジェクト庫27が設けられている。
紙幣制御部21は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行う。また紙幣制御部21は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
接客部22は、使用者との間で紙幣を受け渡すことにより、該使用者に紙幣を入金させ、又は該使用者に紙幣を出金する。接客部22は、その内部に紙幣を収容する収容器22Aを有している。また接客部22は、収容器22Aの上側に上下方向に貫通した孔部が形成されており、この孔部を可動式のシャッタ22Bにより開放又は閉塞する。
収容器22Aの前下側には、収容器22A内に収容されている紙幣を1枚ずつに分離して下方へ搬送する分離部22Cが設けられている。接客部22は、分離部22Cにより分離された紙幣を下方へ搬送し、下側に位置する上前搬送部23に引き渡す。また収容器22Aの後下側には、紙幣を収容器22A内へ放出する放出部22Dが設けられている。接客部22は、後方の上後搬送部25から引き渡される紙幣を前方へ搬送し、放出部22Dから収容器22A内へ放出させる。
上前搬送部23は、上部ユニット12の内部における前下側に位置しており、その内部における中央付近に上前切替部31が配置され、その周囲に搬送路32、33及び34といった3本の搬送路が形成されている。搬送路32は、接客部22の分離部22Cと接続されている。搬送路33は、鑑別部24と接続されている。搬送路34は、上部ユニット前受渡口T11と接続されている。上前搬送部23には、各搬送路に沿って、紙幣の移動範囲を規制する搬送ガイド(図示せず)が配置されており、また各搬送路に沿った複数箇所に、回転することにより紙幣に駆動力を伝達する搬送ローラ(図中複数の円で示す)が設けられている。
上前切替部31は、ブレードと呼ばれる部材(図中三角形で示す)を適宜回動させることにより、紙幣の搬送経路を2通りに切り替える。このため以下では、上前切替部31のように紙幣の搬送経路を2通りに切り替える切替部を2ウェイの切替部とも呼ぶ。この上前切替部31は、紙幣制御部21の制御に基づき、前上側の搬送路32及び後側の搬送路33を接続する搬送経路と、下側の搬送路34及び後側の搬送路33を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
鑑別部24は、接客部22の下側且つ上前搬送部23の後側に位置している。鑑別部24は、その内部において、複数の搬送ガイドや搬送ローラ対等により、前後方向に貫通する直線状の鑑別搬送路35が形成され、この鑑別搬送路35に沿って複数のセンサ36が配置されている。このセンサ36は、例えば磁気を読み取る磁気センサ、画像を読み取るイメージセンサ、紙幣の厚みを検知する厚みセンサ及び紙幣の走行状態を検出する走行センサ等の組合せにより構成される。
鑑別部24は、鑑別搬送路35に沿って搬送される紙幣からセンサ36により得られる種々の検知結果を鑑別結果として紙幣制御部21へ送出する。これに応じて紙幣制御部21は、この鑑別結果を基に紙幣の金種、真偽、正損(損傷しているか否か)等を判断すると共に搬送状態を認識し、得られた結果を基に該紙幣の搬送経路や搬送先を決定する。
上後搬送部25は、上部ユニット12における中央よりもやや後側に、すなわち接客部22及び鑑別部24の後側に位置している。この上後搬送部25は図4(B)に模式的な拡大図を示すように、その内部における中央付近に上後切替部41が配置され、その前上側に一時保留切替部42が配置され、その後側に区別切替部43が配置され、さらに各切替部に対して搬送路が3本ずつ接続されている。
因みに上後搬送部25では、上前搬送部23等と同様、紙幣を案内する搬送ガイド及び紙幣に駆動力を伝達する搬送ローラ対が適宜配置されており、上述した搬送路に沿って紙幣を搬送するようになっている。また図4(B)では、説明の都合上、搬送ローラを省略し、搬送路を実線により表している。
上後切替部41は、上前切替部31と同様に2ウェイとして構成され、前下側の搬送路44、前上側の搬送路45及び後側の搬送路46と接続されている。この上後切替部41は、前下側の搬送路44及び前上側の搬送路45を接続する搬送経路と、前下側の搬送路44及び後側の搬送路46を接続する搬送経路とを切り替える。
一時保留切替部42は、上述した上後切替部41と同様に、中心に位置するブレードを回転させて姿勢を変化させるものの、該上後切替部41等と異なり、紙幣の搬送経路を3通りに切り替える、いわゆる3ウェイの切替部となっている。一時保留切替部42は、後下側の搬送路45により上後切替部41と接続され、前側の搬送路47により接客部22(図4(A))と接続され、且つ上側の搬送路48により一時保留部26と接続されている。この一時保留切替部42は、紙幣制御部21の制御に基づき、後下側の搬送路45及び前側の搬送路47を接続する搬送経路と、後下側の搬送路45及び上側の搬送路48を接続する搬送経路と、前側の搬送路47及び上側の搬送路48を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
区別切替部43は、上述した一時保留切替部42と同様に構成されており、紙幣の搬送経路を3通りに切り替える3ウェイの切替部となっている。区別切替部43には、前側の搬送路46により上後切替部41と接続され、下側の搬送路49により上部ユニット後受渡口T12と接続され、且つ上側の搬送路50によりリジェクト庫27と接続されている。この区別切替部43は、紙幣制御部21の制御に基づき、前側の搬送路46及び下側の搬送路49を接続する搬送経路と、前側の搬送路46及び上側の搬送路50を接続する搬送経路と、下側の搬送路49及び上側の搬送路50を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
一時保留部26(図4)は、いわゆるテープエスクロ方式を採用しており、円筒状に形成され回転するドラムや、このドラムの周側面に一端が固定されたテープ、このテープを他端側から巻き取るリール、及び紙幣を搬送する搬送ローラ等を有している。この一時保留部26は、上後搬送部25から紙幣を受け取ると、この紙幣をドラムの周側面近傍まで搬送し、該ドラムを回転させることにより、紙幣をテープと共に周側面に巻き付けて収納する。また一時保留部26は、紙幣を繰り出す場合、リールを回転させると共にドラムを収納時と反対方向に回転させることにより、該ドラムの周側面からテープと共に紙幣を引き剥がし、これを搬送して上後搬送部25に順次引き渡す。
リジェクト庫27は、内部に紙幣を収納する収納空間を有すると共に、この収納空間内へ紙幣を放出する放出機構を有している。このリジェクト庫27は、上後搬送部25から紙幣を受け取ると、この紙幣を放出機構により収納空間内へ放出し、集積した状態で収納する。因みにリジェクト庫27には、例えば損傷の程度が大きく出金すべきで無いと判断された紙幣(以下これをリジェクト紙幣と呼ぶ)が搬送され、収納される。すなわちリジェクト庫27は、再利用が可能である正常な紙幣と区別して、このリジェクト紙幣を内部に収納することができる。
[2-2.下部ユニットの構成]
図2の一部を拡大した図5に示すように、下部ユニット13における上端部分には、概ね前後方向に沿って紙幣を搬送する下搬送部51が配置されている。該下搬送部51の下側には、下部フレーム13Fが設けられている。下部フレーム13Fは、中空の直方体状に形成されており、その上側が開放されると共に、内部の空間が前後方向に沿って3枚の仕切板(図示せず)により4個の空間に区分されている。以下、区分された各空間を装填空間とも呼ぶ。下部フレーム13Fの各装填空間には、前側から後側へ向けて、再利用(リサイクル)が可能な紙幣を収納する4個の紙幣収納庫52(52A、52B、52C及び52D)が前後方向に沿って配置されている。
因みに下部フレーム13Fにおける右上端近傍には、図示しない蝶番が設けられており、この蝶番により、上側の下搬送部51を回動可能に支持している。換言すれば、下部フレーム13Fは、この蝶番を回動中心として下搬送部51が回動されることにより、上側を閉塞又は開放することができる。このため下部ユニット13では、紙幣入出金機フレーム11から前方に引き出された状態(図3(B))において、下搬送部51が右方向へ回動されて下部フレーム13Fの上側が開放された状態にされると、各紙幣収納庫52を各装填空間から取り出させ、又は各紙幣収納庫52を各装填空間に装填させることができる。
紙幣収納庫52(52A、52B、52C及び52D)は、何れも同様に構成されており、上下方向に長い直方体状に形成されている。紙幣収納庫52の内部には、紙幣を集積して収納する収納空間、該収納空間の上側に配置され紙幣の分離処理及び放出処理を行う分離放出部、及び該分離放出部と紙幣収納庫52の上端との間で紙幣を搬送する収納庫搬送部等が設けられている。また各紙幣収納庫52は、それぞれ収納すべき紙幣の金種が予め設定されている。
紙幣収納庫52は、紙幣を収納する収納処理を行う場合、上側の下搬送部51から紙幣を受け取ると、この紙幣を収納庫搬送部により分離放出部へ搬送して収納空間内へ放出し、該収納空間内に集積した状態で収納する。また紙幣収納庫52は、紙幣を繰り出す繰出処理を行う場合、収納空間内に集積された紙幣を分離放出部により1枚ずつに分離し、これを収納庫搬送部により上方へ搬送して上側の下搬送部51に引き渡すことにより繰り出す。
下搬送部51(図5)には、その内部における前端近傍であって、紙幣収納庫52Aのほぼ真上となる位置に、切替部61が配置されている。また下搬送部51には、切替部61の後方であって紙幣収納庫52B及び52Cのほぼ真上となるそれぞれの箇所に、切替部62及び63がそれぞれ配置されている。さらに切替部63の後側には、切替部64が配置されている。
切替部61及び62は、何れも上部ユニット12(図4(A))の上前切替部31等と同様に2ウェイとして構成されている。また切替部61及び62の周囲には、上前切替部31等の場合と同様に、複数の搬送ローラ及び複数の搬送ガイド等により搬送路が3本ずつ形成されている。
切替部61の周囲には、上方へ向かう搬送路71、下方へ向かい紙幣収納庫52Aと接続された搬送路72、及び後方へ向かい切替部62と接続された搬送路73が設けられている。この切替部61は、上側の搬送路71及び下側の搬送路72を接続する搬送経路と、上側の搬送路71及び後側の搬送路73を接続する搬送経路とを切り替えることができる。因みに搬送路71の上端は、下部ユニット前受渡口T21となっており、上述した上部ユニット12の上部ユニット前受渡口T11(図4(A))との間で紙幣を相互に受け渡すことができる。
切替部62の周囲には、搬送路73に加えて、下方へ向かい紙幣収納庫52Bと接続された搬送路74、及び後方へ向かい切替部63に接続された搬送路75が設けられている。この切替部62は、前側の搬送路73及び下側の搬送路74を接続する搬送経路と、前側の搬送路73及び後側の搬送路75を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部63及び64は、何れも上部ユニット12(図4(A))の一時保留切替部42等と同様に3ウェイとして構成されており、紙幣制御部21の制御に基づいてブレードの傾斜方向を変化させ、紙幣の搬送経路を3通りに切り替えることができる。また切替部63及び64の周囲には、複数の搬送ローラ及び複数の搬送ガイド等により搬送路が3本ずつ形成されている。
切替部63の周囲には、第1の搬送路としての搬送路75に加えて、下方へ向かい双方向収納庫としての紙幣収納庫52Cと接続された搬送路76、及び後方へ向かい切替部64と接続された搬送路77が設けられている。この切替部63は、前側の搬送路75及び下側の搬送路76を接続する搬送経路と、前側の搬送路75及び後側の搬送路77を接続する搬送経路と、後側の搬送路77及び下側の搬送路76を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部64の周囲には、搬送路77に加えて、後方ないし下方へ向かい紙幣収納庫52Dと接続された搬送路78、及び上方へ向かう搬送路79が設けられている。この切替部64は、前側の搬送路77及び後側の搬送路78を接続する搬送経路と、前側の搬送路77及び上側の搬送路79を接続する搬送経路と、後側の搬送路78及び上側の搬送路79を接続する搬送経路とを切り替えることができる。因みに搬送路79の上端は、下部ユニット後受渡口T22となっており、上述した上部ユニット12の上部ユニット後受渡口T12(図4(A))との間で紙幣を相互に受け渡すことができる。
かかる構成により下搬送部51は、例えば上部ユニット12(図4(A))から下部ユニット前受渡口T21を介して紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を紙幣収納庫52A~22Dへ搬送して収納させること、或いは下部ユニット後受渡口T22から上部ユニット12へ戻すことができる。また下搬送部51は、紙幣収納庫52A~22Dから紙幣を受け取った場合、これを下部ユニット前受渡口T21へ搬送して上部ユニット12に引き渡すこともできる。
さらに下搬送部51は、例えば上部ユニット12から下部ユニット後受渡口T22を介して紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を紙幣収納庫52C又は52Dへ搬送して収納させることができる。また下搬送部51は、紙幣収納庫52C又は52Dから紙幣を受け取った場合、これを下部ユニット後受渡口T22へ搬送して上部ユニット12に引き渡すこともできる。
すなわち下搬送部51は、上部ユニット12から搬送されてきた紙幣を適宜振り分けて各紙幣収納庫52(52A~52D)へ搬送して収納させることができる。このため以下では、下搬送部51を振分搬送部とも呼ぶ。
[3.紙幣入出金機における各種処理]
次に、紙幣入出金機10における紙幣の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等について、それぞれ詳細に説明する。
[3-1.入金処理及び収納処理]
まず、現金自動預払機1(図1)において使用者(すなわち金融機関の顧客等)との間で入金取引が行われる場合について説明する。この場合、紙幣入出金機10は、前段の入金処理(入金計数処理又は受入処理とも呼ばれる)により、使用者に入金された紙幣の金種等を鑑別しながら枚数を計数し、これに続く後段の収納処理(入金収納処理とも呼ばれる)により、各紙幣を適切な収納箇所へ搬送して収納するようになっている。
具体的に紙幣入出金機10の紙幣制御部21は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6(図1)を介して使用者から入金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、入金処理を開始する。このとき紙幣入出金機10は、まず接客部22のシャッタ22B(図4)等を開いて使用者に収容器22A内へ紙幣を投入させる。次に紙幣制御部21は、使用者から操作表示部6(図1)を介して紙幣の取り込みを開始する操作入力を受け付けると、接客部22のシャッタ22B等を閉塞した上で、分離部22Cにより当該収容器22A内の紙幣を1枚ずつに分離して繰り出し、上前搬送部23に順次引き渡す。
上前搬送部23(図4)は、紙幣を搬送路32及び33に沿って搬送し、鑑別部24に引き渡す。鑑別部24は、鑑別搬送路35に沿って紙幣を搬送しながら鑑別し、得られた鑑別結果を紙幣制御部21へ供給する。これに応じて紙幣制御部21は、取得した鑑別結果を基に、まず各紙幣における損傷の程度や金種、或いは真偽を判断する。次に紙幣制御部21は、各紙幣について、正常な紙幣として認識でき以降の処理を継続できる入金受入紙幣であるか、或いは正常な紙幣として認識できないため使用者に返却すべき入金リジェクト紙幣であるかを判断する。
紙幣入出金機10は、紙幣制御部21の制御に基づき、紙幣ごとの鑑別結果に応じて搬送経路を切り替えながら紙幣を搬送する。具体的に紙幣入出金機10は、入金受入紙幣を上後搬送部25において搬送路44、45及び48に沿って進行させ、さらに一時保留部26に順次引き渡して収納させる。また紙幣入出金機10は、入金リジェクト紙幣を、搬送路44、45及び47に沿って進行させ、接客部22に引き渡す。接客部22は、搬送されてくる入金リジェクト紙幣を収容器22A内に放出して収容する。
紙幣入出金機10は、収容器22A内の紙幣を全て繰り出し終えると、入金処理を完了する。このとき紙幣入出金機10は、紙幣制御部21において、接客部22から取り込んだ紙幣の金種及び枚数の集計結果を基に入金額を算出すると共に、所定の操作指示画面を操作表示部6(図1)に表示させ、使用者にこの入金額を提示すると共に入金取引を継続するか否かを選択させる。
ここで紙幣入出金機10は、使用者により入金取引の中止が指示された場合、一時保留部26に保留している全ての紙幣を順次繰り出し、上後搬送部25により接客部22へ搬送し、当該接客部22の放出部22Dにより当該紙幣を収容器22A内に放出してから、シャッタ22B(図4)等を開放して使用者に返却する。
一方、紙幣入出金機10は、使用者により入金取引の継続が指示された場合、収納処理を開始する。具体的に紙幣制御部21は、一時保留部26に収納している紙幣(入金受入紙幣)を順次繰り出し、上後搬送部25により鑑別部24へ搬送して順次鑑別させる。このとき紙幣制御部21は、鑑別部24から得られる鑑別結果を基に、損傷の程度が大きいリジェクト紙幣についてはリジェクト庫27を、正常であり再利用可能な紙幣については金種ごとの各紙幣収納庫52(52A~52D)を、それぞれ搬送先として決定する。
続いて紙幣入出金機10は、正常な紙幣を上前搬送部23の搬送路33及び34に沿って搬送し、当該紙幣を上部ユニット前受渡口T11及び下部ユニット前受渡口T21の間で受け渡すことにより、下搬送部51(図5)に引き渡す。下搬送部51は、紙幣制御部21の制御に基づき、切替部61~64によりそれぞれの搬送経路を適宜切り替えることにより、当該紙幣をそれぞれの金種に応じた搬送先である各紙幣収納庫52(52A~52D)へ搬送して収納させる。
また紙幣入出金機10は、リジェクト紙幣を、正常な紙幣と同様に下搬送部51により切替部64まで搬送した後、搬送路79に沿って上方へ進行させ、下部ユニット後受渡口T22及び上部ユニット後受渡口T12の間で受け渡すことにより、上後搬送部25(図4)に引き渡す。上後搬送部25は、このリジェクト紙幣を搬送路49及び50に沿って進行させることにより、リジェクト庫27へ搬送して収納させる。
かくして紙幣入出金機10は、再利用すべき通常の紙幣を金種ごとに分類して各紙幣収納庫52に収納でき、また再利用すべきで無いリジェクト紙幣をリジェクト庫27に収納できる。やがて紙幣入出金機10は、一時保留部26に収納された全ての紙幣をそれぞれの搬送先へ搬送し終えると、この収納処理を終了する。
[3-2.出金処理]
次に、現金自動預払機1(図1)において使用者との間で出金取引が行われる場合について説明する。この場合、紙幣入出金機10は、使用者に指定された金額に応じた金種及び枚数の紙幣を出金する出金処理を行うようになっている。
具体的に紙幣入出金機10の紙幣制御部21は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6(図1)を介して使用者から出金取引を開始する旨や出金額の操作入力を受け付けると、出金処理を開始する。このとき紙幣制御部21は、まず出金額に応じた紙幣の金種及び枚数を決定する。続いて紙幣入出金機10は、決定した金種及び枚数に応じて、各紙幣収納庫52(図5)の内部に収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出し、下搬送部51に順次引き渡す。下搬送部51は、紙幣を前方へ搬送した後、下部ユニット前受渡口T21及び上部ユニット前受渡口T11の間で受け渡すことにより、上前搬送部23(図4)に引き渡す。
さらに紙幣入出金機10は、上前搬送部23により紙幣を搬送路34及び33に沿って搬送し、鑑別部24を通過する際に鑑別させる。ここで紙幣制御部21は、鑑別部24から得られる鑑別結果のうち主に走行状態を基に、正常な紙幣の搬送先を接客部22に決定する一方、例えば重送されている等、走行状態に問題があるリジェクト紙幣の搬送先をリジェクト庫27に決定する。
紙幣入出金機10は、正常な紙幣を、上後搬送部25により搬送路44、45及び47に沿って接客部22へ搬送し、収容器22Aの内部に放出して集積させる。その後、紙幣入出金機10は、接客部22のシャッタ22B等を開放することにより、収容器22A内の紙幣を使用者に取り出させて出金する。また紙幣制御部21は、リジェクト紙幣を、上後搬送部25により搬送路44、46及び50に沿って進行させてリジェクト庫27へ搬送し、その内部に収納させる。
[4.上前搬送部及び下搬送部の構成]
次に、上前搬送部23における搬送路34の近傍、及び下搬送部51における搬送路71近傍に関し、それぞれの詳細な構成について説明する。
上前搬送部23は、図6に斜視図を示すと共に図7に左側面図及び正面図を示すように、周囲を囲む上前搬送部筐体80の内部に、紙幣を案内する上前搬送ガイド81及び上後搬送ガイド82を配置している。
上前搬送ガイド81は、所定の樹脂材料による成型部品であり、全体として左右方向に長く前後方向に短い直方体状、若しくは板状に構成され、さらに後側面である上前案内面81Sが略平坦に形成されている。上前搬送ガイド81における下側の端部には、上前爪状部83が形成されている。上前爪状部83は、周囲よりも下方向に突出した凸部83Pと、周囲よりも上方向に凹んだ凹部83Dとが、左右方向(以下これを幅方向とも呼ぶ)に沿って交互に配置されている。
また上前搬送部23では、上前搬送ガイド81のうち、上前爪状部83及びその直近の部分のみを上前搬送部筐体80の下面80Bよりも下側に突出させており、これ以外の部分を該上前搬送部筐体80の内部に位置させている。さらに各凸部83Pの下端における上下方向の位置、すなわち下面80Bから下方への突出長さは、互いに同等となっている。
上後搬送ガイド82は、上前搬送ガイド81と同様、所定の樹脂材料による成型部品であり、該上前搬送ガイド81よりも前後方向に短い直方体状若しくは板状に構成され、さらに前側面である上後案内面82Sが略平坦に形成されている。上後搬送ガイド82における下側の端部には、上前搬送ガイド81の上前爪状部83と対応する上後爪状部84が形成されている。上後爪状部84は、上前爪状部83を後方向に投影した外形となっており、該上前爪状部83と同様に複数の凸部及び凹部が左右方向に沿って交互に配置されている。上前搬送部23では、上前搬送ガイド81の上前案内面81Sと上後搬送ガイド82の上後案内面82Sとに挟まれた空間が、紙幣を搬送するための搬送路34となっている。
さらに上前搬送部23の上前搬送部筐体80には、下面80Bから下方向に向けて、4本の脚部87FL、87FR、87RL及び87RR(以下、これらをまとめて脚部87と呼ぶ)が立設されている。この脚部87は、所定の樹脂材料によって構成されており、上前搬送部筐体80と一体に形成されている。
左前側の脚部87FLは、全体として左右方向に薄い直方体状若しくは薄板状に形成されており、上前爪状部83に設けられた凸部83Pのうち最も左側に位置する左端凸部83PLのちょうど前側に、すなわち真正面に位置している。この脚部87FLは、左右方向の長さと、下面80Bから下端までの長さ(すなわち上下方向の長さ)が、左端凸部83PLと同等に構成されている。これを換言すれば、脚部87FLは、左端凸部83PLを前方へ投影した範囲内に設けられている。
左後側の脚部87RLは、左端凸部83PLのちょうど後側に、すなわち真後ろに位置している。この脚部87RLも、脚部87FLと同様、左右方向の長さと、下面80Bから下端までの長さ(すなわち上下方向の長さ)が、左端凸部83PLと同等に構成されている。これを換言すれば、脚部87RLは、左端凸部83PLを後方へ投影した範囲内に設けられている。
右前側の脚部87FRは、左前側の脚部87FLと同様、全体として左右方向に薄い直方体状若しくは薄板状に形成されており、上前爪状部83に設けられた凸部83Pのうち最も右側に位置する右端凸部83PRのちょうど前側に、すなわち真正面に位置している。この脚部87FRは、左右方向の長さと、下面80Bから下端までの長さ(すなわち上下方向の長さ)が、右端凸部83PRと同等に構成されている。これを換言すれば、脚部87FRは、右端凸部83PRを前方へ投影した範囲内に設けられている。
右後側の脚部87RRは、右端凸部83PRのちょうど後側に、すなわち真後ろに位置している。この脚部87RRも、脚部87FRと同様、左右方向の長さと、下面80Bから下端までの長さ(すなわち上下方向の長さ)が、右端凸部83PRと同等に構成されている。これを換言すれば、脚部87RRは、右端凸部83PRを後方へ投影した範囲内に設けられている。
このため上前搬送部23は、正面から見た場合、図7(B)に示したように、左側下部において、脚部87FL、左端凸部83PL及び脚部87RLがちょうど重なった状態となり、右側下部において、脚部87FR、右端凸部83PR及び脚部87RRがちょうど重なった状態となる。
さらに上前搬送部23では、図7(A)及び(B)に示したように、重心23Gが上前搬送部筐体80における中心付近に位置することになる。このため上前搬送部23では、前後方向に関して、前側の脚部87FL及び87FRと、後側の脚部87RL及び87RRとの間に、重心23Gが位置することになる(図7(A))。また上前搬送部23では、左右方向に関して、左側の脚部87FL及び87RLと、右側の脚部87FR及び87RRとの間に、重心23Gが位置することになる(図7(B))。
一方、下搬送部51は、図7と対応する図8に左側面図及び正面図を示すように、周囲を囲む下搬送部筐体90の内部に、紙幣を案内する下前搬送ガイド91及び下後搬送ガイド92を配置している。
下前搬送ガイド91は、概ね上前搬送部23(図7)における上前搬送ガイド81を上下に反転させたような構成であり、後側面である下前案内面91Sが略平坦に形成されている。また下前搬送ガイド91における上側の端部には、上前爪状部83と対応する下前爪状部93が形成されている。下前爪状部93は、上前爪状部83を上下方向に反転させた構成と類似しており、周囲よりも上方向に突出した凸部93Pと、周囲よりも下方向にえぐられた凹部93Dとが、左右方向に沿って交互に配置されている。ただし下前爪状部93では、左右方向に関して、各凸部93P及び各凹部93Dの位置及び形状が、上前爪状部83に対して相補的に構成されている。
また下搬送部51では、下前搬送ガイド91のうち、下前爪状部93及びその直近の部分のみを下搬送部筐体90の上面90Tよりも上側に突出させており、これ以外の部分を該下搬送部筐体90の内部に位置させている。また各凸部93Pの上端における上下方向の位置、すなわち上面90Tから下方への突出長さは、互いに同等となっている。
下後搬送ガイド92は、概ね上前搬送部23(図7)における上後搬送ガイド82を上下に反転させたような構成であり、前側面である下後案内面92Sが略平坦に形成されている。下後搬送ガイド92における上側の端部には、上後爪状部84と対応する下後爪状部94が形成されている。下後爪状部94は、下前爪状部93を後方向に投影した外形となっており、該下前爪状部93と同様に複数の凸部及び凹部が左右方向に沿って交互に配置されている。下搬送部51では、下前搬送ガイド91の下前案内面91Sと下後搬送ガイド92の下後案内面92Sとに挟まれた空間が、紙幣を搬送するための搬送路71となっている。
因みに下搬送部51は、下搬送部筐体90の内部に各種部品を収納する都合上、下搬送部筐体90における下前搬送ガイド91よりも左側の筐体左端部90Lと、該下前搬送ガイド91よりも右側の筐体右端部90Rとにおいて、上面90Tが凹部93Dの底部分よりも上方であり、且つ凸部93Pの頂上部分よりも下方に位置している。
かかる構成により、紙幣入出金機10では、紙幣入出金機フレーム11に対し上部ユニット12及び下部ユニット13が何れも収納された状態において(図2)、上前搬送部23の下側に隣接するように下搬送部51を位置させ、且つ搬送路34(図4)の真下に搬送路71(図5)を位置させる。
このとき上前搬送部23及び下搬送部51は、図9に斜視図を示すと共に図10に正面図を示すように、上前搬送ガイド81の上前爪状部83と下前搬送ガイド91の下前爪状部93とを互いに噛み合わせ、上前案内面81Sと下前案内面91Sとを概ね連続するように接続させる。また上前搬送部23及び下搬送部51は、上後搬送ガイド82の上後爪状部84及び下後搬送ガイド92の上後爪状部84についても同様に噛み合わせ、上後案内面82Sと下後案内面92Sとを概ね連続するように接続させる。これにより上前搬送部23及び下搬送部51は、上部ユニット前受渡口T11及び下部ユニット前受渡口T21を接続でき、搬送路34及び搬送路71の間で紙幣を相互に受け渡すことができる。
説明の都合上、以下では上前爪状部83を第1爪状部と呼び、凸部83Pを第1凸部と呼ぶ。また以下では、下前爪状部93を第2爪状部と呼び、凸部93Pを第2凸部と呼ぶ。さらに以下では、上前案内面81Sを第1案内面とも呼び、下前案内面91Sを第2案内面とも呼ぶ。
[5.効果等]
以上の構成において、本実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10では、保守作業等が行われる際に、紙幣入出金機フレーム11に対し上部ユニット12及び下部ユニット13の何れか一方を前後方向に移動させるようにした(図3)。このとき上部ユニット12及び下部ユニット13は、スライドレール14及び15により、上下方向に関する位置を維持したまま、両者の境界である境界面BD(図2)に沿うようにして、前後方向に移動することができる。
上部ユニット12の上前搬送部23(図7)には、搬送路34を形成する上前搬送ガイド81の下端に上前爪状部83を設けると共に上後搬送ガイド82の下端に上後爪状部84を設けた。また下部ユニット13の下搬送部51(図8)には、搬送路71を形成する下前搬送ガイド91の上端に下前爪状部93を設けると共に下後搬送ガイド92の上端に下後爪状部94を設けた。このため紙幣入出金機10では、上前爪状部83及び93を相互に噛み合わせ、且つ上後爪状部84及び94を相互に噛み合わせることにより、搬送路34及び71を接続でき、紙幣を円滑に受け渡すことができる(図9及び図10)。
また上前搬送部23は、図7(B)に示したように、上前搬送部筐体80の下面80B側において、上前爪状部83における各凹部83Dの前側及び後側に、何ら部品を設けていない。これと同様に下搬送部51では、図8(B)に示したように、下搬送部筐体90の上面90T側において、下前爪状部93における各凹部93Dの前側及び後側に、何ら部品を設けていない。
このため紙幣入出金機10では、上部ユニット12及び下部ユニット13の何れか一方を移動させる際、上前搬送部23の上前搬送ガイド81における上前爪状部83の各凸部83Pを、下搬送部51における下搬送部筐体90の上面90Tや下前搬送ガイド91等に何ら干渉させること無く、円滑に移動させることができる。このとき紙幣入出金機10では、下搬送部51の下前搬送ガイド91における下前爪状部93の各凸部93Pについても、上前搬送部23における上前搬送部筐体80の下面80Bや上前搬送ガイド81等に何ら干渉させることが無い。
これに加えて上前搬送部23は、上前搬送部筐体80の下面80Bに4本の脚部87を設けた(図6及び図7)。また上前搬送部23では、脚部87における下端の高さを、上前爪状部83における各凸部83Pの下端と同等に揃えた。
このため上前搬送部23は、保守作業等において上部ユニット12から取り外されて床面等に載置される場合、上前爪状部83における各凸部83Pの下端と共に脚部87の下端を当接させること、すなわち該上前搬送部23の自重を脚部87により支えることができる。これにより上前搬送部23では、強度が比較的低い上前爪状部83の凸部83Pに加わる荷重を軽減できるので、該凸部83Pが破損する恐れを大幅に軽減できる。
また上前搬送部23は、前後方向及び左右方向に関して、重心23Gを挟む両側にそれぞれ脚部87を配置した(図7)。このため上前搬送部23は、床面等に載置された際に、各脚部87によりその姿勢を安定的させることができる。これと共に上前搬送部23は、床面等に載置される際に下面80Bが該床面に対して傾斜していた場合、最初に該床面に対して何れかの脚部87を当接させることができるので、比較的大きい力を当該脚部87に作用させることで、上前爪状部83の凸部83Pにこの力が加えられることによる破損を未然に防止できる。
さらに上前搬送部23は、左前の脚部87FL及び左後の脚部87RLを、左端凸部83PLの真正面及び真後ろにおいて、当該左端凸部83PLを前方又は後方に投影した範囲内にそれぞれ設けた。また上前搬送部23は、右前の脚部87FR及び右後の脚部87RRを、右端凸部83PRの真正面及び真後ろにおいて、当該右端凸部83PRを前方又は後方に投影した範囲内にそれぞれ設けた(図7)。
このため上前搬送部23は、紙幣入出金機10において上部ユニット12及び下部ユニット13の何れか一方を前後方向へ移動させる際、左側の脚部87FL及び87RLを、左端凸部83PLと同様に、下搬送部51側の下前爪状部93における左端凹部93DL内を通過させるようにして、円滑に移動させることができる。また上前搬送部23は、右側の脚部87FR及び87RRを、右端凸部83PRと同様に、下搬送部51側の下前爪状部93における右端凹部93DR内を通過させるようにして、移動させることができる。
すなわち紙幣入出金機10では、従来と比較して、上前搬送部23に脚部87が増設されたものの、上前爪状部83の凸部83Pを前後方向に投影させた範囲内に納めたため、下搬送部51側の形状を何ら変更する必要なく、上部ユニット12及び下部ユニット13を円滑にスライドさせることができる。これにより紙幣入出金機10では、下搬送部51に脚部87との干渉を回避するための窪み等を追加する必要が無く、該下搬送部51を必要最小限の大きさに抑え、当該紙幣入出金機10全体の大きさも極力小さく抑えることができる。
かくして紙幣入出金機10では、上前搬送部23及び下搬送部51の間における紙幣の円滑な受渡を前提として、上部ユニット12及び下部ユニット13の円滑なスライドと、上前搬送部23が床面等に載置された際の上前爪状部83における凸部83Pの破損防止とを、何れも実現すること、すなわちこれらを高い次元で両立させることができる。
以上の構成によれば、現金自動預払機1の紙幣入出金機10では、上部ユニット12に組み込まれる上前搬送部23の下面80Bに脚部87を設けたため、上前搬送部23が上部ユニット12から取り外されて床面等に載置される際に、該床面等に脚部87を当接させ、上前爪状部83の凸部83Pに大きな荷重が加えられて損傷することを防止できる。これと共に紙幣入出金機10では、上前搬送部23に設けた脚部87の外形を、上前爪状部83の凸部83Pを前後方向に投影させた範囲内に収めたため、上部ユニット12及び下部ユニット13の何れか一方を前後方向に移動させる際に、脚部87が上前爪状部83における左端凸部83PL又は右端凸部83PRと同等の軌跡を通過する。これにより紙幣入出金機10では、下搬送部51に脚部87との干渉を回避するための形状を別途設ける必要が無く、装置全体を極力小型に構成することができる。
[6.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、上前搬送部23において前側の脚部87FL及び87FRを上前爪状部83から前方に離れた位置に配置し、且つ後側の脚部87RL及び87RRを上後爪状部84から後方に離れた位置に配置する場合について述べた(図7等)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図11に示す上前搬送部123のように、前側の脚部187FL及び187FRを脚部87FL及び87FR(図7)よりも後方に延長して上前爪状部83に隣接させても良い。また、後側の脚部187RL及び187RRを脚部87RL及び87RR(図7)よりも前方に延長して上後爪状部84に隣接させても良い。
また上述した実施の形態においては、脚部87を上前搬送部筐体80と一体に形成し、下面80Bに立設させる場合について述べた(図6等)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上前搬送ガイド81の上前爪状部83と一体に前側の脚部87FL及び87FRを形成し、上後搬送ガイド82の上後爪状部84と一体に後側の脚部87RL及び87RRを形成しても良い。或いは、脚部87を他の部品とは別に形成し、上前搬送部筐体80の下面80Bに取り付けても良い。この場合、例えば脚部87を上前搬送部筐体80とは異なる材料、例えば金属材料により構成しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、左側の脚部87FL及び87RLを、上前爪状部83における最も左側の左端凸部83PLを前後方向へ投影させた範囲内に設け、右側の脚部87FR及び87RRを、上前爪状部83における最も右側の右端凸部83PRを前後方向へ投影させた範囲内に設ける場合について述べた(図7等)。しかしながら本発明はこれに限らず、上前爪状部83における他の凸部83Pを前後方向に投影させた範囲内に脚部87を設けても良い。この場合、左右方向に関して上前搬送部23の重心23Gを挟む両側にそれぞれ脚部87を設けることが望ましい。また、脚部87の数については、前側に2本、後側に2本とする構成に限らず、それぞれ任意の数としても良い。ただしこの場合、前側及び後側にそれぞれ1本以上とし、且つ合計3本以上とすることにより、安定性を確保することが望ましい。
さらに上述した実施の形態においては、上前搬送部23に脚部87を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上後搬送部25等、他の部品に脚部87を設けても良い。
さらに上述した実施の形態においては、現金自動預払機1に組み込まれる紙幣入出金機10に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば金融機関の窓口等において職員等が使用する紙幣処理装置(いわゆるテラーマシン)等、紙幣を取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、媒体としての紙幣を取り扱う現金自動預払機1の紙幣入出金機10に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば種々の金券や証券、あるいは入場券や整理券等、使用上の媒体を取り扱う種々の装置に適用しても良い。
さらに本発明は、上述した実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した実施の形態においては、第1ユニットとしての上前搬送部23と、第2ユニットとしての下搬送部51と、移動部としてのスライドレール14及び15とにより紙幣入出金機10を構成する場合について述べた。この場合、第1ユニット及び第2ユニットを、第1ガイドとしての上前搬送ガイド81と、第2ガイドとしての下前搬送ガイド91と、第1爪状部としての上前爪状部83と、第2爪状部としての下前爪状部93と、脚部としての脚部87とによって構成した。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる第1ユニットと、第2ユニットと、移動部と、第1ガイドと、第2ガイドと、第1爪状部と、第2爪状部と、脚部とによって媒体処理装置を構成しても良い。