JP7207858B2 - 熱電変換モジュール - Google Patents

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Description

本発明は、熱電変換モジュールに関する。
従来から、エネルギーの有効利用手段の一つとして、ゼーベック効果やペルチェ効果などの熱電効果を有する熱電変換モジュールにより、熱エネルギーと電気エネルギーとを直接相互変換するようにした装置がある。
前記熱電変換モジュールとして、いわゆるπ型の熱電変換素子の使用が知られている。π型は、互いに離間するー対の電極を基板上に設け、例えば、―方の電極の上にP型熱電素子を、他方の電極の上にN型熱電素子を、同じく互いに離間して設け、両方の熱電材料の上面を対向する基板の電極に接続することで構成されている。また、いわゆるインプレーン型の熱電変換素子の使用が知られている。インプレーン型は、P型熱電素子とN型熱電素子とが基板の面内方向に交互に設けられ、例えば、両熱電素子間の接合部の下部を電極を介し直列に接続することで構成されている。
このような中、熱電変換モジュールの屈曲性(可撓性)向上、熱電性能の向上等の要求がある。これらの要求を満足するために、特許文献1では、例えば、熱電変換モジュールに用いる基板として、可撓性を有するポリイミド等でなるフィルム基板が用いられ、それとともに放熱層となる高熱伝導率を有するグラファイトが、ポリイミドに積層された形態で用いられることが開示されている。また、N型の熱電半導体材料、P型の熱電半導体材料としては、熱電性能の観点から、ビスマステルライド系材料が用いられ、前記電極としては、熱伝導率が高い銅箔等からなる金属電極が用いられている。
特開2003-174203公報
しかしながら、本発明者らの検討により、ポリイミド等のフィルム基板を用いた熱電変換モジュールにおいて、フィルム基板、電極及び熱電素子層がこの順に積層された態様で、熱電素子層を高温度条件下でアニール処理する場合、又は温度差の付与等を高温度で行う場合、フィルム基板から発生する揮発成分(以下、「アウトガス」ということがある。)によって、フィルム基板と電極との間が膨らんでしまい、それにより熱電素子層及び電極層に割れや剥がれが生じたり、これにより熱電素子層と電極層との間の導電性の低下が生じたりすることから、熱電変換モジュールの熱電性能が低下する等の新たな問題が発生する懸念があることが見出された。
本発明は、上記問題を鑑み、高温度条件下でのフィルム基板中のアウトガスによる熱電素子層及び電極層に生じる割れ、剥がれが抑制され、熱電性能が良好である熱電変換モジュールを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、フィルム基板上の電極に貫通孔を設け、高温度条件下でフィルム基板から発生するアウトガスを、電極(金属層)に比べガス透過性の高い熱電素子層、又は熱電素子層間の空隙部を透過させることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の(1)~(12)を提供するものである。
(1)第1のフィルム基板の一方の面に、少なくとも第1の電極、熱電素子層をこの順に含む熱電変換モジュールであって、前記第1の電極に貫通孔を有する、熱電変換モジュール。
(2)前記熱電素子層の前記第1の電極とは反対側に、さらに第2の電極、第2のフィルム基板をこの順に含む、上記(1)に記載の熱電変換モジュール。
(3)前記熱電素子層の前記第1の電極とは反対側に、さらに第2のフィルム基板を含む、上記(1)に記載の熱電変換モジュール。
(4)前記第1のフィルム基板の他方の面及び/又は前記第2のフィルム基板の熱電素子層側の面とは反対側の面に放熱層を含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
(5)前記第1の電極1つ当たりの前記貫通孔の開口部の総面積が、該第1の電極1つの面積に対し、0.00010~0.01000である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
(6)前記第1の電極1つ当たりの前記貫通孔の個数が、1~100個である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
(7)前記貫通孔の形状が、円柱状、直方体状、立方体状、円錐台状、又は角錐台状である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
(8)前記貫通孔の形状が円柱状であり、該円柱状の貫通孔の開口部の直径が0.01~2mmである、上記(1)~(7)のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
(9)前記第1及び第2のフィルム基板が、ポリイミドフィルム、又はポリサルフォンフィルムである、上記(1)~(8)のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
(10)前記第1及び第2の電極が、金属材料からなり、該金属材料が、銅、金、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、白金、クロム、パラジウム、ステンレス鋼、モリブデン、コバルト又はこれらのいずれかの金属を含む合金である、上記(1)~(9)のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
(11)前記放熱層が、高熱伝導材料からなる、上記(4)に記載の熱電変換モジュール。
(12)前記高熱伝導材料が、銅、アルミニウム又はステンレスである、上記(11)に記載の熱電変換モジュール。
本発明によれば、高温度条件下でのフィルム基板中のアウトガスによる熱電素子層及び電極層に生じる割れ、剥がれが抑制され、熱電性能が良好である熱電変換モジュールを提供することができる。
本発明の貫通孔を有する電極を含む熱電変換モジュールの構成の一例を説明するための断面図である。 本発明の貫通孔を有する電極を含む熱電変換モジュールの構成の他の一例を説明するための断面図である。 本発明に用いた第1の電極上の貫通孔の開口部のパターンの一例を説明するための平面図である。 本発明の貫通孔を有する第1の電極及び放熱層を含む熱電変換モジュールの構成の一例を説明するための断面図である。
[熱電変換モジュール]
本発明の熱電変換モジュールは、第1のフィルム基板の一方の面に、少なくとも第1の電極、熱電素子層をこの順に含む熱電変換モジュールであって、前記第1の電極に貫通孔を有することを特徴としている。
本発明において、熱電変換モジュールを構成する第1のフィルム基板上の電極に貫通孔を設けることで、高温度条件下で第1のフィルム基板から発生するアウトガスを、直接熱電素子層周囲の空隙部に排出させる、又は電極としての金属層に比べガス透過性の高い熱電素子層を透過させ該熱電素子層周囲の空隙部に排出させることにより、電極の膨らみ、それに伴う熱電素子層の変形により生じる割れ、剥がれ等の欠陥が抑制され、結果として、フィルム基板と電極間の剥がれ、熱電素子層及び電極層間の剥がれ(接合不良)による導電性の低下が抑制されることにより、熱電変換モジュールの熱電性能を維持できる。
本発明の熱電変換モジュールにおいて、前記熱電素子層の前記第1の電極とは反対側に、さらに第2の電極、第2のフィルム基板をこの順に含むことが好ましい。
また、同様に、前記熱電素子層の前記第1の電極とは反対側に、さらに、電極を有さない第2のフィルム基板を含むことが好ましい。
図1は、本発明の貫通孔を有する電極を含む熱電変換モジュールの構成の一例を説明するための断面図である。熱電変換モジュール1は、いわゆるπ型の熱電変換素子として構成され、第1のフィルム基板2a及び対向する第2のフィルム基板2bと、前記第1のフィルム基板2a及び対向する前記第2のフィルム基板2bとの間に形成されるP型熱電素子層4、N型熱電素子層5と、前記第1のフィルム基板2a上に形成される第1の電極3a、対向する前記第2のフィルム基板2b上に形成される第2の電極3bとを含み、前記第1の電極3aには、貫通孔6を有する。ここで、貫通孔6は、前記第1の電極3aの略中心部に配置したものである。
同様に図2は、本発明の貫通孔を有する電極を含む熱電変換モジュールの構成の他の一例を説明するための断面図である。熱電変換モジュール11は、いわゆるインプレーン型の熱電変換素子として構成され、第1のフィルム基板12a及び対向する第2のフィルム基板12bと、前記第1のフィルム基板12a及び対向する前記第2のフィルム基板12bとの間に形成されるP型熱電素子層14、N型熱電素子層15と、前記第1のフィルム基板12a上に形成される第1の電極13とを含み、前記第1の電極13には、貫通孔16を有する。ここで、貫通孔16は、前記第1の電極13の略中心部に配置したものである。
<フィルム基板>
本発明の熱電変換モジュールは、第1の電極を有する第1のフィルム基板を含む。前述したように、π型の熱電変換素子として構成される場合、第1の電極を有する第1のフィルム基板に対向した、第2の電極を有する第2のフィルム基板を含むことが好ましい。さらに、前述したように、インプレーン型の熱電変換素子として構成される場合、第1の電極を有する第1のフィルム基板に対向した第2のフィルム基板を含むことが好ましい。前記第1のフィルム基板と該第1のフィルム基板に対向した前記第2のフィルム基板は同じであっても、異なっていてもよい。
第1及び第2のフィルム基板は、それぞれ独立に、耐熱性が高く、アウトガスの発生が少ないという観点から、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアラミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリサルフォンフィルムが好ましく、さらに、汎用性が高いという観点から、ポリイミドフィルムが特に好ましい。
前記第1及び第2のフィルム基板の厚さは、それぞれ独立に、耐熱性及び屈曲性の観点から、1~1000μmが好ましく、10~500μmがより好ましく、20~100μmがさらに好ましい。
また、上記第1及び第2のフィルム基板は、熱重量分析で測定される5%重量減少温度が300℃以上であることが好ましく、400℃以上であることがより好ましい。JIS K7133(1999)に準拠して200℃で測定した加熱寸法変化率が0.5%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがより好ましい。JIS K7197(2012)に準拠して測定した平面方向の線膨脹係数が0.1ppm・℃-1~50ppm・℃-1であり、0.1ppm・℃-1~30ppm・℃-1であることがより好ましい。
<貫通孔を有する電極>
本発明の熱電変換モジュールは、少なくとも前記第1のフィルム基板の一方の面に第1の電極を含み、該第1の電極に貫通孔を有する。また、前述したように、例えば、π型の熱電変換素子として構成される場合、前記第1のフィルム基板に対向した、第2の電極を有する第2のフィルム基板の該第2の電極に貫通孔を有していてもよい。
本発明に用いる貫通孔は、高温度条件下でのフィルム基板由来のアウトガスを、直接熱電素子層周囲の空隙部に排出させる、又は電極としての金属層に比べガス透過性の高い熱電素子層を透過させ該熱電素子層周囲の空隙部に排出させる作用を有する。
本発明の熱電変換モジュールの第1の電極に設ける貫通孔の形状は、特に制限されないが、加工が容易であることから、円柱状、直方体状、立方体状、円錐台状、角錐台状等が挙げられる。この中で、アウトガスが透過しやすい観点から、貫通孔の形状は、円柱状又は円錐台状であることが好ましい。
なお、本明細書において、「貫通孔」とは、電極における貫通孔の開口部の形状を第1の電極の厚さ方向に延在させた構造を有する。例えば、貫通孔の開口部の形状が、長方形である場合、貫通孔の形状は直方体であることを意味する。但し、このような場合、形成方法にもよるが、貫通孔の開口部の寸法に対し±20%の形状変化は許容されるものとする。
貫通孔の個数は、第1の電極の端部を含まず、前記第1の電極の内側の領域に配置されれば、貫通孔の形状によらず、第1の電極1つ当たり少なくとも1個必要である。但し、この場合、第1の電極の機能及び熱電性能に影響がなければ特に制限されないが、前記第1の電極1つ当たりの前記貫通孔の開口部の総面積が、前記第1の電極1つの面積に対し、好ましくは0.00010~0.01000、より好ましくは0.00020~0.00400、さらに好ましく0.0100~0.00300である。さらに、前記第1の電極1つ当たりの貫通孔の個数は、上記貫通孔の開口部の総面積を満たす範囲で、好ましくは1~100個であり、さらに好ましくは1~50個、特に好ましくは1~20個、最も好ましくは1~10個である。なお、第1の電極の面積は、貫通孔の孔を含む面積とする。また、貫通孔は、異なる形状のものを複数組み合わせて用いてもよい。
貫通孔が円柱状であり、貫通孔の開口部が円となる場合、開口部の直径は、好ましくは0.01~2mmであり、より好ましくは0.04~1mmであり、さらに好ましくは0.06~0.50mmである。
貫通孔の配置は、特に制限されず、アウトガスを透過し易ければ、1つの電極において、どの位置に配置してもよい。図3は、本発明に用いた第1の電極上の貫通孔の開口部のパターンの一例を説明するための平面図である。図3(a)においては、貫通孔の開口部のパターン20は第1の電極23上の略中心部に1つ、貫通孔26を配置するものであり、この配置は、図1、図2に示した配置と同様である。図3(b)においては、第1の電極23上の略中心部に1つ、さらに該略中心部に対し、左右対称にそれぞれ2つずつ、貫通孔26を配置するものである。同様に、図3(c)においては、第1の電極23上の略中心部に対し左右対称に1つずつ貫通孔26を配置するものである。図3(d)においては、第1の電極23上の略中心部に1つ、及び該略中心部の1つの貫通孔26に対し、上下に対称に2つ、さらに該略中心部の1つの貫通孔26及び上下の2つの貫通孔26に対し、左右対称にそれぞれ3つずつ、貫通孔26を配置するものである。
この中で、好ましくは、(a)(前述した図1、図2の場合に相当)及び(c)、さらに好ましくは(a)である。なお、貫通孔を電極の略中心部に配置する場合は、貫通孔の開口部の中心位置を電極の略中心位置に一致させるよう配置することが好ましい。
貫通孔の開口部の面積、個数、及び配置が上記の範囲にあれば、高温度条件下でのフィルム基板由来のアウトガスを、直接熱電素子層周囲の空隙部に排出させる、又は第1の電極としての金属層に比べガス透過性の高い熱電素子層を透過させ該熱電素子層周囲の空隙部に排出させることが容易となり、電極の膨らみ、それに伴う熱電素子層の変形により生じる割れ、剥がれ等の欠陥が抑制できる。
貫通孔の形成方法としては、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の方法を用いることができる。具体的には、第1の電極上に、フォトレジスト等を塗布し、所定のパターンを有するフォトマスクを準備し、露光、現像により、フォトレジストでパターンを形成し、ウェット又はドライエッチング等により電極を溶解又は除去させ、その後、残ったフォトレジストを剥離することで、第1の電極にパターンを加工する方法等が挙げられる。
第1の電極の金属材料としては、特に制限されないが、銅、金、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、白金、クロム、パラジウム、ステンレス鋼、モリブデン又はこれらのいずれかの金属を含む合金が好ましい。また、第1の電極としては、単層のみならず、複数組み合わせて多層構成としてもよい。
前記第1の電極の層の厚さは、好ましくは10nm~200μm、より好ましくは30nm~150μm、さらに好ましくは50nm~120μmである。第1の電極の層の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり、かつ電極として十分な強度が得られる。
第1の電極の形成は、前述した金属材料を用いて行う。第1の電極を形成する方法としては、フィルム基板上にパターンが形成されていない電極を設けた後、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法、または、スクリーン印刷法、インクジェット法等により直接電極のパターンを形成する方法等が挙げられる。
パターンが形成されていない電極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)等のドライプロセス、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティングや電着法等のウェットプロセス、銀塩法、電解めっき法、無電解めっき法、金属箔の積層等が挙げられ、電極の材料に応じて適宜選択される。
熱電性能の観点から、高い導電性、高い熱伝導性が求められるため、めっき法や真空成膜法で成膜した電極を用いることが好ましい。高い導電性、高い熱伝導性を容易に実現できることから、真空蒸着法、スパッタリング法等の真空成膜法、および電解めっき法、無電解めっき法が好ましい。形成パターンの寸法、寸法精度の要求にもよるが、メタルマスク等のハードマスクを介し、容易にパターンを形成することもできる。
前記金属材料の層の厚さは、好ましくは10nm~200μm、より好ましくは30nm~150μm、さらに好ましくは50nm~120μmである。金属材料の層の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり、電極として十分な強度が得られる。
第1の電極の金属材料としては、銅、金、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、白金、クロム、パラジウム、ステンレス鋼、モリブデン又はこれらのいずれかの金属を含む合金等が挙げられ、単層のみならず、組み合わせて多層構成としてもよい。
前記第1の電極の層の厚さは、好ましくは10nm~200μm、より好ましくは30nm~150μm、さらに好ましくは50nm~120μmである。電極の層の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり、電極として十分な強度が得られる。
なお、本発明に用いる第2の電極は、前述した第1の電極と同様のものを用いることができる。好ましい金属材料、厚さ、形成方法等はすべて同一である。
<熱電素子層>
本発明に用いる熱電素子層は、フィルム基板上に、熱電半導体微粒子、耐熱性樹脂、並びに、イオン液体及び無機イオン性化合物の一方又は双方を含む熱電半導体組成物からなるものが好ましい。
(熱電半導体微粒子)
熱電素子層に用いる熱電半導体微粒子は、熱電半導体材料を、微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕することが好ましい。
本発明に用いるP型熱電素子層及びN型熱電素子層を構成する材料としては、温度差を付与することにより、熱起電力を発生させることができる材料であれば特に制限されず、例えば、P型ビスマステルライド、N型ビスマステルライド等のビスマス-テルル系熱電半導体材料;GeTe、PbTe等のテルライド系熱電半導体材料;アンチモン-テルル系熱電半導体材料;ZnSb、ZnSb2、ZnSb等の亜鉛-アンチモン系熱電半導体材料;SiGe等のシリコン-ゲルマニウム系熱電半導体材料;BiSe等のビスマスセレナイド系熱電半導体材料;β―FeSi、CrSi、MnSi1.73、MgSi等のシリサイド系熱電半導体材料;酸化物系熱電半導体材料;FeVAl、FeVAlSi、FeVTiAl等のホイスラー材料、TiS等の硫化物系熱電半導体材料等が用いられる。
これらの中でも、本発明に用いる前記熱電半導体材料は、P型ビスマステルライド又はN型ビスマステルライド等のビスマス-テルル系熱電半導体材料であることが好ましい。
前記P型ビスマステルライドは、キャリアが正孔で、ゼーベック係数が正値であり、例えば、BiTeSb2-Xで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Xは、好ましくは0<X≦0.8であり、より好ましくは0.4≦X≦0.6である。Xが0より大きく0.8以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、P型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
また、前記N型ビスマステルライドは、キャリアが電子で、ゼーベック係数が負値であり、例えば、BiTe3-YSeで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Yは、好ましくは0≦Y≦3(Y=0の時:BiTe)であり、より好ましくは0.1<Y≦2.7である。Yが0以上3以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、N型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
熱電半導体微粒子の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは、30~99質量%である。より好ましくは、50~96質量%であり、さらに好ましくは、70~95質量%である。熱電半導体微粒子の配合量が、上記範囲内であれば、ゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が大きく、また電気伝導率の低下が抑制され、熱伝導率のみが低下するため高い熱電性能を示すとともに、十分な皮膜強度、屈曲性を有する膜が得られ好ましい。
熱電半導体微粒子の平均粒径は、好ましくは、10nm~200μm、より好ましくは、10nm~30μm、さらに好ましくは、50nm~10μm、特に好ましくは、1~6μmである。上記範囲内であれば、均一分散が容易になり、電気伝導率を高くすることができる。
前記熱電半導体材料を粉砕して熱電半導体微粒子を得る方法は特に限定されず、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、エッジミル、製粉ミル、ハンマーミル、ペレットミル、ウィリーミル、ローラーミル等の公知の微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕すればよい。
なお、熱電半導体微粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析装置(CILAS社製、1064型)にて測定することにより得られ、粒径分布の中央値とした。
また、熱電半導体微粒子は、アニール処理(以下、「アニール処理A」ということがある。)されたものであることが好ましい。アニール処理Aを行うことにより、熱電半導体微粒子は、結晶性が向上し、さらに、熱電半導体微粒子の表面酸化膜が除去されるため、熱電変換材料のゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が増大し、熱電性能指数をさらに向上させることができる。アニール処理Aは、特に限定されないが、熱電半導体組成物を調製する前に、熱電半導体微粒子に悪影響を及ぼすことがないように、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、同じく水素等の還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行うことが好ましく、不活性ガス及び還元ガスの混合ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。具体的な温度条件は、用いる熱電半導体微粒子に依存するが、通常、微粒子の融点以下の温度で、かつ100~1500℃で、数分~数十時間行うことが好ましい。
(耐熱性樹脂)
本発明に用いる耐熱性樹脂は、熱電半導体微粒子間のバインダーとして働き、熱電素子層の屈曲性を高めるためのものである。該耐熱性樹脂は、特に制限されるものではないが、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理等により熱電半導体微粒子を結晶成長させる際に、樹脂としての機械的強度及び熱伝導率等の諸物性が損なわれず維持される耐熱性樹脂を用いる。
前記耐熱性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、エポキシ樹脂、及びこれらの樹脂の化学構造を有する共重合体等が挙げられる。前記耐熱性樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐熱性がより高く、且つ薄膜中の熱電半導体微粒子の結晶成長に悪影響を及ぼさないという点から、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、屈曲性に優れるという点からポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂がより好ましい。前述の支持体として、ポリイミドフィルムを用いた場合、該ポリイミドフィルムとの密着性などの点から、耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂がより好ましい。なお、本発明においてポリイミド樹脂とは、ポリイミド及びその前駆体を総称する。
前記耐熱性樹脂は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、熱電素子層の屈曲性を維持することができる。
また、前記耐熱性樹脂は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、熱電素子層の屈曲性を維持することができる。
前記耐熱性樹脂の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.5~20質量%、さらに好ましくは1~20質量%である。前記耐熱性樹脂の配合量が、上記範囲内であれば、高い熱電性能と皮膜強度が両立した膜が得られる。
(イオン液体)
本発明で用いるイオン液体は、カチオンとアニオンとを組み合わせてなる溶融塩であり、-50~500℃の温度領域のいずれかの温度領域において液体で存在し得る塩をいう。イオン液体は、蒸気圧が極めて低く不揮発性であること、優れた熱安定性及び電気化学安定性を有していること、粘度が低いこと、かつイオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。また、イオン液体は、非プロトン性のイオン構造に基づく高い極性を示し、耐熱性樹脂との相溶性に優れるため、熱電素子層の電気伝導率を均一にすることができる。
イオン液体は、公知または市販のものが使用できる。例えば、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、イミダゾリウム等の窒素含有環状カチオン化合物及びそれらの誘導体;テトラアルキルアンモニウム系のアミン系カチオン及びそれらの誘導体;ホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、テトラアルキルホスホニウム等のホスフィン系カチオン及びそれらの誘導体;リチウムカチオン及びその誘導体等のカチオン成分と、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF6、ClO4、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、F(HF)n、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
上記のイオン液体の中で、高温安定性、熱電半導体微粒子及び樹脂との相溶性、熱電半導体微粒子間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、イオン液体のカチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
カチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体の具体的な例として、4-メチル-ブチルピリジニウムクロライド、3-メチル-ブチルピリジニウムクロライド、4-メチル-ヘキシルピリジニウムクロライド、3-メチル-ヘキシルピリジニウムクロライド、4-メチル-オクチルピリジニウムクロライド、3-メチル-オクチルピリジニウムクロライド、3、4-ジメチル-ブチルピリジニウムクロライド、3、5-ジメチル-ブチルピリジニウムクロライド、4-メチル-ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、4-メチル-ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。この中で、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファートが好ましい。
また、カチオン成分が、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体の具体的な例として、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-メチル-3-ブチルイミダゾリウムメチルスルフェート、1、3-ジブチルイミダゾリウムメチルスルフェート等が挙げられる。この中で、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]が好ましい。
上記のイオン液体は、電気伝導率が10-7S/cm以上であることが好ましい。電気伝導率が上記範囲であれば、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。
また、上記のイオン液体は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
また、上記のイオン液体は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
前記イオン液体の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~20質量%である。前記イオン液体の配合量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下が効果的に抑制され、高い熱電性能を有する膜が得られる。
(無機イオン性化合物)
本発明で用いる無機イオン性化合物は、少なくともカチオンとアニオンから構成される化合物である。無機イオン性化合物は室温において固体であり、400~900℃の温度領域のいずれかの温度に融点を有し、イオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を抑制することができる。
カチオンとしては、金属カチオンを用いる。
金属カチオンとしては、例えば、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、典型金属カチオン及び遷移金属カチオンが挙げられ、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンがより好ましい。
アルカリ金属カチオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs及びFr等が挙げられる。
アルカリ土類金属カチオンとしては、例えば、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+等が挙げられる。
アニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO3-、NO2-、ClO、ClO2-、ClO3-、ClO4-、CrO 2-、HSO 、SCN、BF 、PF 等が挙げられる。
無機イオン性化合物は、公知または市販のものが使用できる。例えば、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、又はリチウムカチオン等のカチオン成分と、Cl、AlCl 、AlCl 、ClO 等の塩化物イオン、Br等の臭化物イオン、I等のヨウ化物イオン、BF 、PF 等のフッ化物イオン、F(HF) 等のハロゲン化物アニオン、NO 、OH、CN等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
上記の無機イオン性化合物の中で、高温安定性、熱電半導体微粒子及び樹脂との相溶性、熱電半導体微粒子間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、無機イオン性化合物のカチオン成分が、カリウム、ナトリウム、及びリチウムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。また、無機イオン性化合物のアニオン成分が、ハロゲン化物アニオンを含むことが好ましく、Cl、Br、及びIから選ばれる少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
カチオン成分が、カリウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、KBr、KI、KCl、KF、KOH、KCO等が挙げられる。この中で、KBr、KIが好ましい。
カチオン成分が、ナトリウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、NaBr、NaI、NaOH、NaF、NaCO等が挙げられる。この中で、NaBr、NaIが好ましい。
カチオン成分が、リチウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、LiF、LiOH、LiNO等が挙げられる。この中で、LiF、LiOHが好ましい。
上記の無機イオン性化合物は、電気伝導率が10-7S/cm以上であることが好ましく、10-6S/cm以上であることがより好ましい。電気伝導率が上記範囲であれば、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。
また、上記の無機イオン性化合物は、分解温度が400℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
また、上記の無機イオン性化合物は、熱重量測定(TG)による400℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
前記無機イオン性化合物の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~10質量%である。前記無機イオン性化合物の配合量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下を効果的に抑制でき、結果として熱電性能が向上した膜が得られる。
なお、無機イオン性化合物とイオン液体とを併用する場合においては、前記熱電半導体組成物中における、無機イオン性化合物及びイオン液体の含有量の総量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~10質量%である。
熱電素子層の厚さは、特に限定されるものではなく、0.1~100μmが好ましく、1~50μmがさらに好ましい。
熱電半導体組成物からなる薄膜としてのP型熱電素子層及びN型熱電素子層は、さらにアニール処理(以下、「アニール処理B」ということがある。)を行うことが好ましい。該アニール処理Bを行うことで、熱電性能を安定化させるとともに、薄膜中の熱電半導体微粒子を結晶成長させることができ、熱電性能をさらに向上させることができる。アニール処理Bは、特に限定されないが、通常、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行われ、用いる樹脂及びイオン性化合物の耐熱温度等に依存するが、100~500℃で、数分~数十時間行われる。
<放熱層>
本発明の熱電変換モジュールには、放熱層を含むことが好ましい。
本発明の熱電変換モジュールをインプレーン型の熱電変換素子として用いる場合は、前記第1のフィルム基板の他方の面及び/又は前記第2のフィルム基板の熱電素子層側の面とは反対側の面上に放熱層を含むことが好ましい。放熱層として、以下の高熱伝導層A及び/又は高熱伝導層Bを含むことがより好ましい。高熱伝導層A及び/又は高熱伝導層Bを用いることにより、熱電変換モジュールの内部の熱電素子層に対し、効率良く面内方向に十分な温度差を付与することができる。
図4は、本発明の貫通孔を有する第1の電極及び放熱層を含む熱電変換モジュールの構成の一例を説明するための断面図である。
熱電変換モジュール31は、インプレーン型の熱電変換素子として構成され、第1のフィルム基板32a及び対向する第2のフィルム基板32b(又は粘着層32c)と、前記第1のフィルム基板32a及び対向する前記第2のフィルム基板32b(又は粘着層32c)との間に形成されるP型熱電素子層34、N型熱電素子層35と、前記第1のフィルム基板32a上に形成される第1の電極33とを含み、前記第1の電極33には、貫通孔(図示せず)を有する。さらに、前記第1のフィルム基板32aに、高熱伝導層A37aが直接接し、また、前記第2のフィルム基板32b(又は粘着層32c)上に、高熱伝導層B37bを含む。
〈高熱伝導層A〉
高熱伝導層Aは、本発明の熱電変換モジュールの第1のフィルム基板の他方の面の一部に直接接するように配置することが好ましい。
高熱伝導層Aは、高熱伝導性材料から形成される。高熱伝導層Aを形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット法等によりフィルム基板上に直接高熱伝導層のパターンを形成する方法等が挙げられる。
また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)等のドライプロセス、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティング法や電着法等のウェットプロセス、銀塩法、電解めっき法、無電解めっき法等により得られた、さらには圧延金属箔又は電解金属箔等、パターンが形成されていない高熱伝導性材料からなる高熱伝導層Aを、上記のフォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、フィルム基板の他方の面の一部に直接、所定のパターン形状に加工する方法が挙げられる。
電解金属箔として、例えば、電解銅箔は、硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造することができる。また、圧延金属箔として、例えば、圧延銅箔や圧延アルミ箔は、圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としては、タフピッチ銅(JIS H3100 C1100)や後述する無酸素銅(JIS H3100 C1020)といった高純度の銅の他、例えば、Sn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。
また、溶着法によりフィルム基板上に直接金属箔を設けることもできる。
本発明では、フィルム基板上に高熱伝導層Aを形成する工程としては、プロセスの簡易性の観点から、電解めっき法や無電解めっき法、及びその併用、並びに金属箔を溶着法によりフィルム基板上に設けることが好ましい。
高熱伝導層Aは、プロセスの簡易性の観点から、高熱伝導性材料を、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の化学的処理、例えば、フォトレジストのパターニング部をウェットエッチング処理し、前記フォトレジストを除去することにより所定のパターンを形成することが好ましい。
〈高熱伝導層B〉
高熱伝導層Bは、本発明の熱電変換モジュールの第2のフィルム基板の熱電素子層側とは反対側の面に、又は熱電素子層上に粘着層等を介し、配置されることが好ましい。
本発明に用いる高熱伝導層Bは、高熱伝導性材料から形成される。高熱伝導層Bを形成する方法としては、特に制限されないが、スクリーン印刷法、インクジェット法等により直接高熱伝導層のパターンを形成する方法等が挙げられる。
さらに、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)などのドライプロセス、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティングや電着法等のウェットプロセス、銀塩法等によって、パターンが形成されていない高熱伝導性材料からなる高熱伝導層Bを、上記のフォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法が挙げられる。
高熱伝導層Bは、熱電素子層の構成材料、プロセスの簡易性の観点から、シート状の高熱伝導性材料を、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の化学的処理、例えば、フォトレジストのパターニング部をウェットエッチング処理し、前記フォトレジストを除去することにより所定のパターンを形成し、前述した粘着層等を介して熱電素子層上に形成することが好ましい。
粘着層を構成する粘着剤としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系ポリマー、フッ素系ポリマー、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。これらの中でも、安価であり、耐熱性に優れるという観点からアクリル系重合体をベースポリマーとした粘着剤、ゴム系ポリマーをベースポリマーとした粘着剤が好ましく用いられる。
本発明に用いる高熱伝導材料からなる高熱伝導層A及び高熱伝導層Bの熱伝導率は、それぞれ独立に、好ましくは5~500W/(m・K)、より好ましくは8~500W/(m・K)、さらに好ましくは10~450W/(m・K)、特に好ましくは12~420W/(m・K)、最も好ましくは15~400W/(m・K)である。熱伝導率が上記の範囲にあると、熱電素子層の面内方向に、効率よく温度差を付与することができる。
高熱伝導層A及び高熱伝導層Bに用いる高熱伝導材料としては、それぞれ独立に、銅、銀、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム等の単金属、ステンレス、真鍮(黄銅)等の合金が挙げられる。この中で、好ましくは、銅(無酸素銅含む)、アルミニウム、ステンレスであり、熱伝導率が高く、加工性が容易であることから、さらに好ましくは、銅である。
ここで、本発明に用いられる高熱伝導材料の代表的なものを以下に示す。
・無酸素銅
無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)とは、一般的に酸化物を含まない99.95%(3N)以上の高純度銅のことを指す。日本工業規格では、無酸素銅(JIS H 3100, C1020)および電子管用無酸素銅(JIS H 3510, C1011)が規定されている。
・ステンレス(JIS)
SUS304:18Cr-8Ni(18%のCrと8%のNiを含む)
SUS316:18Cr-12Ni(18%のCrと12%のNi、モリブデン(Mo)を含む)ステンレス鋼)
高熱伝導層A及び高熱伝導層Bの厚さは、それぞれ独立に、40~550μmが好ましく、60~530μmがより好ましく、80~510μmがさらに好ましい。高熱伝導層A及び高熱伝導層Bの厚さがこの範囲であれば、熱を特定の方向に選択的に放熱することができ、P型熱電素子とN型熱電素子とを電極を介し交互にかつ電気的に直列接続した熱電素子層の面内方向に、効率よく温度差を付与することができる。
高熱伝導層A及び高熱伝導層Bの配置及びそれらの形状は、特に限定されず、用いる熱電変換モジュールの熱電素子層、すなわち、P型熱電素子層とN型熱電素子層の配置及びそれらの形状により、適宜調整する必要がある。
前記高熱伝導層A及び高熱伝導層Bが位置する割合が、1対のP型熱電素子層とN型熱電素子層とからなる直列方向の全幅に対し、それぞれ独立に、0.30~0.70であることが好ましく、0.40~0.60がより好ましく、0.48~0.52がさらに好ましく、特に好ましくは、0.50である。この範囲にあると、熱を特定の方向に選択的に放熱することができ、面内方向に効率よく温度差を付与できる。さらに、上記を満たし、かつ直列方向の1対のP型熱電素子層とN型熱電素子層とからなる接合部に対称に配置することが好ましい。このように、高熱伝導層A及び高熱伝導層Bを配置することにより、面内の直列方向の1対のP型熱電素子層とN型熱電素子層とからなる接合部と隣接する1対のN型熱電素子層とP型熱電素子層とからなる接合部間により高い温度差を付与できる。
本発明の熱電変換モジュールをπ型の熱電変換素子として用いる場合は、前記第1のフィルム基板の他方の面及び/又は前記第2のフィルム基板の熱電素子層側の面とは反対側の面に放熱層を含むことが好ましい。また、放熱層として、高熱伝導層を用いることがより好ましい。放熱層として、高熱伝導層を用いることにより、熱電変換モジュールの内部の熱電素子層の厚さ方向に対し、効率良く十分な温度差を付与することができる。
前記高熱伝導層に用いる高熱伝導材料としては、前述した、高熱伝導層A、高熱伝導層Bと同じものが用いられ、好ましい高熱伝導材料、厚さ、形成方法等はすべて同一であり、配置等含め、用途によって、適宜調整すればよい。例えば、前記第1のフィルム基板の他方の面に、熱源が配置された場合は、熱源の形状、寸法等により適宜調整されるが、一般に放熱層をパターンにせず、熱電素子層が配置される領域に対し全面に設け、熱源からの熱が均一に第1のフィルム基板に熱伝導するように配置する。また、同様に、前記第2のフィルム基板の熱電素子層側の面とは反対側の面には、効率良く均一に放熱するように放熱層をパターンにせず、熱電素子層が配置される領域に対し全面に設ける。
(熱電変換モジュールの製造方法)
本発明の熱電変換モジュールは、フィルム基板上に、電極を形成する工程(以下、「電極形成工程」ということがある。)、前記電極に貫通孔を形成する工程(以下、「貫通孔形成工程」ということがある。)、高熱伝導層Aのパターン形成工程(以下、「高熱伝導層Aパターン形成工程」ということがある。)、前記熱電半導体組成物を塗布し、乾燥し、熱電素子層を形成する工程(以下、「熱電素子層形成工程」ということがある。)、さらに該熱電素子層をアニール処理する工程(以下、「アニール処理工程」ということがある。)、さらにまたアニール処理した基板を他の基板と貼り合わせる工程(以下、「貼り合わせ工程」ということがある。)を含む方法により製造することができる。
以下、本発明の熱電変換モジュールの製造方法に含まれる工程について、順次説明する。
(電極形成工程)
電極形成工程は、例えば、第1のフィルム基板上に、前述した金属材料からなるパターンを形成する工程であり、基板上に形成する方法、及びパターンの形成方法については、前述したとおりである。また、特に、前述したπ型の熱電変換モジュール等を製造する場合は、前記第1のフィルム基板上に対向する第2のフィルム基板上に、前述した金属材料からなるパターンを形成する工程を含む。
(貫通孔形成工程)
貫通孔形成工程は、例えば、上記で得られた第1の電極上に、所定の貫通孔を形成する工程であり、パターンの形成方法については、前述したとおりである。
(高熱伝導層Aパターン形成工程>)
第1のフィルム基板の一方の面に積層する熱電素子層とは反対側の、第1のフィルム基板の他方の面に高熱伝導性材料からなる高熱伝導層Aのパターンを直接形成する工程である。
高熱伝導層Aを形成する方法は、前述したパターンが形成されていない高熱伝導性材料からなる高熱伝導層Aを、前述したフォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法等が挙げられる。
(熱電素子層形成工程)
熱電素子層形成工程は、熱電半導体組成物を、例えば、上記で得られた貫通孔を有する電極上に塗布する工程である。熱電半導体組成物を、第1のフィルム基板上の貫通孔を有する電極上に塗布する方法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、バーコート法、ドクターブレード法等の公知の方法が挙げられ、特に制限されない。塗膜をパターン状に形成する場合は、所望のパターンを有するスクリーン版を用いて簡便にパターン形成が可能なスクリーン印刷法、スロットダイコート法等が好ましく用いられる。
次いで、得られた塗膜を乾燥することにより、熱電素子層が形成されるが、乾燥方法としては、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80~150℃であり、加熱時間は、加熱方法により異なるが、通常、数秒~数十分である。
また、熱電半導体組成物の調製において溶媒を使用した場合、加熱温度は、使用した溶媒を乾燥できる温度範囲であれば、特に制限はない。
(アニール処理工程)
アニール処理工程は、例えば、上記で得られた第1のフィルム基板、貫通孔を有する電極及び熱電素子層をこの順に有する形態で、熱電素子層をアニール処理する工程である。アニール処理は上述したアニール処理Bで行われる。
(貼り合わせ工程)
貼り合わせ工程は、例えば、前記アニール処理工程で得られた貫通孔を有する電極及び熱電素子層を有する第1のフィルム基板を、対向する前記第2のフィルム基板、又は第2の電極を有する第2のフィルム基板と貼り合わせ、熱電変換モジュールを作製する工程である。この工程では、後述する高熱伝導層B積層工程を含んでいてもよい。
前記貼り合わせに用いる貼り合わせ剤としては、第2の電極を有する第2のフィルム基板の場合は、導電ペースト等が挙げられる。導電ペーストとしては、銅ペースト、銀ペースト、ニッケルペースト等が挙げられ、バインダーを使用する場合は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
また、第2の電極を有さない第2のフィルム基板の場合は、樹脂材料を使用することができる。樹脂材料としては、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はアクリル系樹脂を含むものであることが好ましい。さらに、前記樹脂材料は粘接着性、低水蒸気透過率性や、絶縁性を有していることが好ましい。本明細書において、粘接着性を有するとは、樹脂材料が、粘着性、接着性、貼り付ける初期において感圧により接着可能な感圧性の粘着性を有することを意味する。
貼り合わせ剤を基板上に塗布する方法としては、スクリーン印刷法、ディスペンシング法等の公知の方法が挙げられる。
熱電変換モジュールの製造方法において、高熱伝導層B積層工程が含まれることが好ましい。高熱伝導層B積層工程は、高熱伝導性材料からなる高熱伝導層Bを第2のフィルム基板を介し、又は粘着層を介し熱電素子層に積層する工程である。
高熱伝導層Bを形成する方法は、前述したとおりであり、高熱伝導性材料、熱電変換モジュールの構成材料、加工性の観点から適宜選択できる。
本発明では、好ましくは、熱電素子層の面に、前述した高熱伝導性材料をフォトリソグラフィー法等によりパターン化した高熱伝導層Bを、前述した粘着層を介して積層する。
なお、高熱伝導層A及び高熱伝導層B以外の前記高熱伝導層についても、前述したように同様の方法で形成、又は積層することができる。
本発明の熱電変換モジュールの製造方法によれば、簡便な方法で高温度条件下でのフィルム基板中のアウトガスによる熱電素子層及び電極層に生じる割れ、剥がれが抑制され、熱電性能が良好である、低コストの熱電素子層を用いた熱電変換モジュールを得ることができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例、比較例で作製した熱電変換モジュールの試験片の外観評価及び抵抗評価、並びに放熱層を配置した熱電変換モジュールの出力評価を、以下の方法で行った。
(a)外観評価
試験片(放熱層/フィルム基板/電極/熱電素子層)を、アニール処理前後で、以下の基準で外観評価をした。
<評価基準>
○:アニール前後で試験片の外観に形状変化が見られない。
×:アニール前後で試験片の熱電素子層、電極の一部に局所的な膨らみが発生するか、剥がれや割れが生じる。
(b)抵抗評価
アニール処理した試験片の取り出し電極間の電気抵抗値をディジタルハイテスタ(日置電機社製、型名:3801-50)を用いて測定し、以下の基準で評価をした。
<評価基準>
○:電気抵抗値測定可能。
×:電気抵抗値測定不可能。
(c)出力評価
得られた熱電変換モジュールの一方の面を、ホットプレートで50℃の温度に加熱した状態で保持し、他方の面を水冷ヒートシンクで20℃の温度に冷却すること(図4の構成;加熱:高熱伝導層Aの面、冷却:高熱伝導層Bの面)で、熱電変換モジュールに30℃の温度差を付与し、ディジタルハイテスタ(日置電機社製、型名:3801-50)で、熱電変換モジュールの出力取り出し電極間の電圧値(起電力)を測定し、以下の基準で評価をした。
<評価基準>
○:出力が得られる。
×:出力が得られない。
(実施例1)
<熱電変換モジュールの作製>
前述した図4の構成で、高熱伝導層A(放熱層)、ポリイミド基板(第1のフィルム基板)、電極(第1の電極)、熱電素子層をこの順に有する試験片を以下の方法で作製し、アニール処理後の外観評価を及び抵抗評価を行った。次いで、高熱伝導層Bを貼り合わせる(実装)ことにより、熱電変換モジュールを作製した。
(熱電半導体微粒子の作製方法)
ビスマス-テルル系熱電半導体材料であるP型ビスマステルライドBi0.4TeSb1.6(高純度化学研究所製、粒径:180μm)を、遊星型ボールミル(フリッチュジャパン社製、Premium line P-7)を使用し、窒素ガス雰囲気下で粉砕することで、平均粒径1.2μmの熱電半導体微粒子T1を作製した。粉砕して得られた熱電半導体微粒子に関して、レーザー回折式粒度分析装置(Malvern社製、マスターサイザー3000)により粒度分布測定を行った。
また、ビスマス-テルル系熱電半導体材料であるN型ビスマステルライドBiTe(高純度化学研究所製、粒径:180μm)を上記と同様に粉砕し、平均粒径1.4μmの熱電半導体微粒子T2を作製した。
(熱電半導体組成物の作製)
塗工液(P)
得られたP型ビスマス-テルル系熱電半導体材料の微粒子T1を92質量部、耐熱性樹脂としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸(シグマアルドリッチ社製、ポリ(ピロメリト酸二無水物-co-4,4´-オキシジアニリン)アミド酸溶液、溶媒:N-メチルピロリドン、固形分濃度:15質量%)3質量部、及びイオン液体として、N-ブチルピリジニウム5質量部を混合分散した熱電半導体組成物からなる塗工液(P)を調製した。
塗工液(N)
得られたN型ビスマス-テルル系熱電半導体材料の微粒子T2を90質量部、耐熱性樹脂としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸(シグマアルドリッチ社製、ポリ(ピロメリト酸二無水物-co-4,4´-オキシジアニリン)アミド酸溶液、溶媒:N-メチルピロリドン、固形分濃度:15質量%)3質量部、及びイオン液体として、N-ブチルピリジニウム5質量部を混合分散した熱電半導体組成物からなる塗工液(N)を調製した。
(電極及び高熱伝導層Aのパターンの形成)
熱電変換モジュールに用いる第1の電極及び放熱層としての高熱伝導層Aのパターンを第1のフィルム基板に形成するために、銅貼ポリイミドフィルム基板(宇部エクシモ社製、製品名:ユピセルN)を準備した。この銅貼ポリイミドフィルム基板は、厚さが25μmのポリイミド基板の両面に銅箔が積層されたものである。
ポリイミド基板の一方の面の銅箔を、フォトリソ法により所定の電極パターン(後述するニッケル層/金層形成前;厚さ:1μm、幅:1mm、長さ:6mm)に形成した。得られた電極パターン上には、無電解めっき法によりニッケル層(厚さ:1μm)を積層し、さらに、無電解めっき法によりニッケル層上に金層(厚さ:40nm)を積層することで3層構成の第1の電極パターンを形成した。
また、ポリイミド基板の他方の面の銅箔をフォトリソ法により所定のパターン(厚さ:100μm、幅:1mm、長さ:100mm、間隔:1mm、熱伝導率:398W/(m・K))に形成することにより、高熱伝導層Aを得た。
(貫通孔の作製)
上記で作製したポリイミド基板の電極面側に、ポジ型フォトレジスト(東京応化工業社製、OFPR-800LB-23cp)をスピンコート法で塗布、乾燥し、マスクアライナー装置(ミカサ社製、MA-10)を用い露光し、露光部分を現像液(現像液、東京応化工業社製、NMD-3)で溶解させることにより、貫通孔の開口部のパターンとなるレジストパターンを得た。次いで、王水により電極をエッチングし、レジスト残渣を剥離することにより、電極パターンの各電極の略中央部に、φ0.1mmの貫通孔を1個ずつ形成した。この際、光学顕微鏡観察により貫通孔の下部に位置するポリイミド基板表面にクラック等の欠陥が発生していない事を確認した。
(熱電素子層の作製)
上記で調製した塗工液(P)を、ステンシル印刷法により前記ポリイミドフィルムの貫通孔を有する電極面側に塗布し、温度120℃で、10分間大気中で乾燥し、厚さが50μmの薄膜を形成した。次いで、同様に、上記で調製した塗工液(N)を、前記ポリイミドフィルムの電極面側に塗布し、温度120℃で、10分間大気中で乾燥し、厚さが50μmの薄膜を形成した(評価の対象となる試験片に相当)。上記により、P型熱電素子層とN型熱電素子層とを交互に隣接して配置することで、1mm×6mmのP型熱電素子層及びN型熱電素子層を380対設けた熱電素子層(アニール処理Bの前の薄膜)を作製した。
さらに、得られたそれぞれの薄膜に対し、水素とアルゴンの混合ガス(水素:アルゴン=3体積%:97体積%)雰囲気下で、加温速度5K/minで昇温し、325℃で30分間保持し、薄膜形成後のアニール処理Bを行うことにより、熱電半導体材料の微粒子を結晶成長させ、P型熱電素子層及びN型熱電素子層を作製した。ここで、高熱伝導層A(放熱層)/ポリイミド基板/電極/熱電素子層の構成を持つ試験片の構成を構成Sと呼ぶことがある。
(高熱伝導層Bの実装)
ポリイミド基板の一方の面のP型熱電素子層とN型熱電素子層とからなる熱電素子層上に粘着層(リンテック社製、商品名:P1069、厚さ:22μm)を介して高熱伝導性材料からなる放熱層としてのストライプ状の高熱伝導層B(無酸素銅 JIS H 3100、C1020、厚さ:100μm、幅:1mm、長さ:100mm、間隔:1mm、熱伝導率:398W/(m・K))と、ポリイミド基板の他方の面の高熱伝導層Aとが、P型熱電素子層とN型熱電素子層とが隣接する接合部の上部及び下部に互い違いに、かつ高熱伝導層A及び高熱伝導層Bのそれぞれが接合部と対称になるように配置することで熱電変換モジュールを作製した。
(実施例2)
実施例1において、電極パターン、高熱伝導層Aおよび高熱伝導層Bの幅を5mm、にした以外は、実施例1と同様にして、熱電変換モジュールを作製した。
(実施例3)
実施例1において、貫通孔の数を2個にした以外は、実施例1と同様にして、熱電変換モジュールを作製した。なお、貫通孔の配置は、図3の(c)に示すように、電極の略中央部に且つ互いの貫通孔の中心同士の間隔が2mmとなるように配置した。
(比較例1)
実施例1において、電極に貫通孔を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、熱電変換モジュールを作製した。
実施例1~3及び比較例1で作製した試験片のアニール処理後の外観評価、抵抗評価及び熱電変換モジュールの出力評価を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 0007207858000001
電極に貫通孔を設けた実施例は、アニール処理後に外観に変化がなく、抵抗評価においても導電性を維持していた。一方、貫通孔を有さない比較例1では、電極及び熱電素子層に割れや剥離が生じ、電気抵抗値が無限大となり測定できなかった。
本発明の熱電変換モジュールは、フィルム基板からのアウトガスによる電極及び熱電素子層の割れ、剥がれが抑制でき、熱電性能が良好であることから、歩留まりの向上が期待される。また同時に、本発明の熱電変換モジュールを用いることにより、平坦でない面を有する車両、生体(人体含む)、構造物(例えば温水配管のパイプなど)等の放熱源や廃熱源へ設置する等、設置場所を制限されることもなく使用できる。
1:熱電変換モジュール
2a:第1のフィルム基板
2b:第2のフィルム基板
3a:第1の電極
3b:第2の電極
4:P型熱電素子層
5:N型熱電素子層
6:貫通孔
11:熱電変換モジュール
12a:第1のフィルム基板
12b:第2のフィルム基板
13:第1の電極
14:P型熱電素子層
15:N型熱電素子層
16:貫通孔
20:貫通孔の開口部のパターン
23:第1の電極
26:貫通孔
31:熱電変換モジュール
32a:第1のフィルム基板
32b:第2のフィルム基板
32c:粘着層
33:第1の電極
34:P型熱電素子層
35:N型熱電素子層
36:熱電素子層
37a:高熱伝導層A
37b:高熱伝導層B

Claims (12)

  1. 第1のフィルム基板の一方の面に、少なくとも第1の電極、熱電素子層をこの順に含む熱電変換モジュールであって、前記第1の電極に貫通孔を有する、熱電変換モジュール。
  2. 前記熱電素子層の前記第1の電極とは反対側に、さらに第2の電極、第2のフィルム基板をこの順に含む、請求項1に記載の熱電変換モジュール。
  3. 前記熱電素子層の前記第1の電極とは反対側に、さらに第2のフィルム基板を含む、請求項1に記載の熱電変換モジュール。
  4. 前記第1のフィルム基板の他方の面及び/又は前記第2のフィルム基板の熱電素子層側の面とは反対側の面に放熱層を含む、請求項2又は3に記載の熱電変換モジュール。
  5. 前記第1の電極1つ当たりの前記貫通孔の開口部の総面積が、該第1の電極1つの面積に対し、0.00010~0.01000である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール。
  6. 前記第1の電極1つ当たりの前記貫通孔の個数が、1~100個である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール。
  7. 前記貫通孔の形状が、円柱状、直方体状、立方体状、円錐台状、又は角錐台状である、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール。
  8. 前記貫通孔の形状が円柱状であり、該円柱状の貫通孔の開口部の直径が0.01~2mmである、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール。
  9. 前記第1及び第2のフィルム基板が、ポリイミドフィルム、又はポリサルフォンフィルムである、請求項のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール。
  10. 前記第1及び第2の電極が、金属材料からなり、該金属材料が、銅、金、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、白金、クロム、パラジウム、ステンレス鋼、モリブデン、コバルト又はこれらのいずれかの金属を含む合金である、請求項のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール。
  11. 前記放熱層が、高熱伝導材料からなる、請求項4に記載の熱電変換モジュール。
  12. 前記高熱伝導材料が、銅、アルミニウム又はステンレスである、請求項11に記載の熱電変換モジュール。
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