JP7197892B2 - デニッシュペストリー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
なお、リン酸架橋澱粉は、その架橋の程度が強いものほどヒトに消化されにくく、難消化性澱粉(レジスタントスターチ)ともよばれるが、これを多量に添加してパン生地を焼成した場合、ボリュームが小さくなり、形状が安定せずに均一性を欠くといった課題はよく知られていた(例えば、特開2008-142016など)。したがって、リン酸架橋澱粉を配合することによりボリュームの向上したデニッシュペストリーを得たことは、予想外のことであった。
(1)澱粉質原料100質量部中に、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選ばれる一種以上を原料とするリン酸架橋澱粉であって、その沈降積が11~18であるリン酸架橋澱粉を17~71質量部配合した澱粉質原料を用いて製造されたデニッシュペストリー。
(2)リン酸架橋澱粉が、26~62質量部である、(1)に記載のデニッシュペストリー。
(3)澱粉質原料100質量部中に、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選ばれる一種以上を原料とするリン酸架橋澱粉であって、その沈降積が11~18のリン酸架橋澱粉17~71質量部を配合したデニッシュペストリー製造用ミックス。
(4)澱粉質原料100質量部中に、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選ばれる一種以上を原料とするリン酸架橋澱粉であって、その沈降積が11~18のリン酸架橋澱粉17~71質量部を配合することを特徴とする、デニッシュペストリーの製造方法。
なお、発酵を伴わないパイ等の焼菓子は、本発明のデニッシュペストリーには含まれない。
なお、「澱粉」には、澱粉に物理的又は化学的処理を施した加工澱粉が包含される。ただし、その化学的処理を施した加工澱粉には、本発明のデニッシュペストリーで使用する「リン酸架橋澱粉」は含まれない。
デニッシュペストリーに使用するリン酸架橋澱粉を得るため、表1に記載の原料澱粉を原料とし、架橋処理を行った。まず、水130質量部に硫酸ナトリウム20質量部を溶解し、そこへ各原料澱粉100質量部を加えてスラリーとした。このスラリーを、3%水酸化ナトリウム水溶液によってpH11.0~pH11.7に保持・撹拌しながら、トリメタリン酸ナトリウムを必要量(対澱粉0.5~10質量部)加え、41℃で10時間反応させた。その後、硫酸で中和、水洗し、表1に記載のリン酸架橋澱粉1~7を調製した。
次に、得られた各リン酸架橋澱粉について、架橋の度合いを確認するため、「沈降積」を測定した。まず、澱粉試料4.0g(固形分換算)を水96mlの割合で分散した懸濁液を、90℃まで加熱後、30℃に冷却した。この澱粉溶液を100mlメスシリンダーに入れ、水で100mlに調整し、24時間後の白濁層の容量(ml)を測定し、これを沈降積の値とした。測定の結果を表1に示す。
(1)クロワッサンの作製
次に、上述のリン酸架橋澱粉及びフランスパン用小麦粉を用いて、表2に示す配合及び表3に示す工程によってクロワッサンを作製した。なお、対照は、澱粉質原料としてフランスパン用小麦粉のみを配合して作製したクロワッサンとした。
得られた各クロワッサンについて、食感及び形状を評価した。
形状の評価は、自動体積計(3D Laser Volume Measurement Selnac-WinVM2100、アステックス社)を用いて、各クロワッサン10個の比容積及び高さを測定し、その平均値を算出することにより行った。
一般に、デニッシュペストリーは、比容積が大きいものほど好ましいが、比容積が比較的大きい場合でも、高さが過剰又は幅が過剰であるときは、形状の全体的なバランスがやや劣ることとなる。そこで、比容積のみならず、高さとのバランスも考慮して評価することとした。具体的には、比容積が5.0cm3/g以上かつ高さが40mm以上50mm未満のときに、形状が「優れている」(◎)、比容積が5.0cm3/g以上であって、高さが37.8mm以上40mm未満又は50mm以上52mm未満のときに、形状が「良い」(○)、比容積が5.0cm3/g未満、高さが37.8mm未満又は高さが52mm以上のいずれかのときに、形状が「悪い」(×)とした。形状の評価方法は、以下同様とした。
一方、食感の評価は、よく訓練された5名のパネラーにより官能評価を行い、対照と比較して、サクサクとした食感が「良好」な場合は○、「不良」な場合は×とした。
評価の結果、澱粉質原料100質量部のうち、その50質量部を、小麦澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉及び馬鈴薯澱粉を原料澱粉とする沈降積11~13の各リン酸架橋澱粉とした場合(実施例2~5)と、沈降積が18のタピオカリン酸架橋澱粉とした場合(実施例1)に、食感が良好であって、形状の良いクロワッサンが得られた。
(1)クロワッサンの作製
次に、タピオカ由来の沈降積13のリン酸架橋澱粉を用い、表5に示す配合割合でクロワッサンを作製した。なお、作業工程は、上述の表3と同様の方法で行った。
得られた各クロワッサンについて、上述と同様の方法で食感及び形状評価を行った。その結果を表6に示す。評価の結果、澱粉質原料100質量部のうち、その17.54質量部~70.16質量部を、タピオカ澱粉を原料澱粉とする沈降積13のリン酸架橋澱粉とした場合(実施例6~9)に、食感が良好であって、形状の良いクロワッサンが得られた。
(1)クロワッサンの作製
甘藷澱粉由来の沈降積12のリン酸架橋澱粉を用い、表7に示す配合割合でクロワッサンを作製した。なお、作業工程は、上述の表3と同様の方法で行った。
得られた各クロワッサンについて、上述と同様の方法で食感及び形状評価を行った。その結果を表8に示す。
評価の結果、澱粉質原料100質量部のうち、その17.54質量部~70.16質量部を、甘藷澱粉を原料澱粉とする沈降積12のリン酸架橋澱粉とした場合(実施例10~13)に、食感が良好であって、形状の良いクロワッサンが得られた。
(1)クロワッサンの作製
一般に、フラワーシート、カスタードクリーム又はジャム等の各種フィリング類を折り込んだデニッシュペストリーでは、時間の経過により、高さの落ち込みやボリュームの減少が見られる。そこで、タピオカ由来の沈降積13及び21の各リン酸架橋澱粉、並びにフランスパン用小麦粉を用いて、表9に示す配合及び表10に示す工程によってフラワーシートを折り込んだクロワッサンを作製し確認した。なお、対照は、澱粉質原料としてフランスパン用小麦粉のみを配合して作製するクロワッサンとした。
得られた各クロワッサンについて、作製した直後及び24時間後の形状を評価した。形状の評価は、上述と同様の方法によって比容積及び高さを測定し行った。
評価の結果、実施例14では、比容積及び高さがクロワッサン作製から24時間後もほぼ変わらなかった。一方、比較例7では、比容積及び高さがクロワッサン作製から24時間後、減少していた。
したがって、フラワーシートを折り込んだデニッシュペストリーにおいて、本発明の澱粉を使用すれば、時間の経過による、高さの落ち込みやボリュームの減少を抑えることが明らかとなった。
Claims (4)
- 澱粉質原料100質量部中に、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選ばれる一種以上を原料とするリン酸架橋澱粉であって、以下の沈降積が11~18であるリン酸架橋澱粉を17~71質量部配合した澱粉質原料を含む生地として発酵、焼成されてなるデニッシュペストリー:
(沈降積)
澱粉試料4.0g(固形分換算)を水96mlに分散した懸濁液を、90℃まで加熱後30℃に冷却して100mlメスシリンダーに入れて100mlに調整し、20時間静置したときの白濁層の容量(ml)。 - リン酸架橋澱粉が、26~62質量部である、請求項1記載のデニッシュペストリー。
- 澱粉質原料100質量部中に、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選ばれる一種以上を原料とするリン酸架橋澱粉であって、以下の沈降積が11~18のリン酸架橋澱粉17~71質量部を配合したデニッシュペストリー製造用ミックス:
(沈降積)
澱粉試料4.0g(固形分換算)を水96mlに分散した懸濁液を、90℃まで加熱後30℃に冷却して100mlメスシリンダーに入れて100mlに調整し、20時間静置したときの白濁層の容量(ml)。 - 澱粉質原料100質量部中に、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選ばれる一種以上を原料とするリン酸架橋澱粉であって、その沈降積が11~18のリン酸架橋澱粉17~71質量部を配合することを特徴とする、デニッシュペストリーの製造方法:
(沈降積)
澱粉試料4.0g(固形分換算)を水96mlに分散した懸濁液を、90℃まで加熱後30℃に冷却して100mlメスシリンダーに入れて100mlに調整し、20時間静置したときの白濁層の容量(ml)。
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