以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「遠位側」、操作する手元側を「近位側」と称することとする。
本発明の実施形態に係る医療デバイス1は、穿刺する機能を有するガイドワイヤ10によって、右心房Rから左心房L(図5を参照)へ通じる孔を卵円窩Oに形成するために用いられる。孔は切れ目でもよい。卵円窩Oに孔がある場合、経皮的に大静脈に挿入したアブレーションカテーテルを右心房Rへ導いた後、孔を介して左心房Lへ挿入し、肺静脈口の周囲をアブレーションすることができる。すなわち、医療デバイス1は、卵円窩にアブレーションカテーテルのアクセスルートを形成するためのデバイスである。
医療デバイス1は、図1~3に示すように、穿刺を行う機能を有するガイドワイヤ10と、ガイドワイヤ10を挿入可能なシース組立体20とを有している。シース組立体20は、ガイドワイヤ10が挿入されるインサータ60と、インサータ60が挿入されるダイレータ40と、ダイレータ40が挿入される外シース50とを有している。
ガイドワイヤ10は、ダイレータ40を含むシース組立体20やアブレーションカテーテルを、血管内で目的の位置までガイドする長尺なデバイスである。さらに、ガイドワイヤ10は、卵円窩Oを穿刺する機能をも備えている。ガイドワイヤ10は、長尺なシャフト部11と、鋭利な針部16を備える穿刺部15と、穿刺部15を収容するカバー部30とを備えている。シャフト部11は、長尺な線材であり、近位側に位置しているシャフト近位部12と、遠位側に位置しているシャフト遠位部14と、シャフト近位部12およびシャフト遠位部14の間に位置しているシャフト縮径部13とを備えている。シャフト近位部12は、近位側に位置する外径が一定の部位である。シャフト縮径部13は、シャフト近位部12から遠位側へ向かって延在し、外径がテーパ状に減少する部位である。シャフト縮径部13は、外径がテーパ状に減少することで、曲げ剛性等の物性が、軸方向にそって徐々に変化している。このため、シャフト縮径部13は、物性が急激に変化することにより生じやすいキンク等の発生を抑制できる。また、シャフト縮径部13の曲げ剛性が、軸方向にそって徐々に減少している。このため、シャフト部11が、曲がりくねった血管内で高い押し込み性および到達性を備える。シャフト遠位部14は、シャフト縮径部13から遠位側へ延在する外径が一定の部位である。シャフト遠位部14の外径は、シャフト近位部12の外径よりも小さい。なお、シャフト遠位部14の外径は、一定でなくてもよい。
シャフト部11の構成材料は、可撓性を有し、かつある程度硬質であることが好ましく、例えば、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンなどの金属、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。形状記憶合金は、Ni-Ti系、Cu-Al-Ni系、Cu-Zn-Al系などが好適に使用できる。また、シャフト部11は、X線造影性材料を含んでもよい。X線造影性材料は、例えば、金、白金、イリジウム、タングステンあるいはそれらの合金、銀-パラジウム合金からなる群のうち少なくともいずれか1つの金属もしくは2つ以上の合金から形成されたものが好適である。
シャフト部11の軸方向の長さは、例えば300~5000mm、好ましくは1000~3000mm、より好ましくは1500~2500mmである。シャフト遠位部14の外径は、例えば0.04~0.8mm、好ましくは0.08~0.4mm、より好ましくは0.12~0.2mmである。シャフト近位部12の外径は、例えば0.3~1.0mm、好ましくは0.4~0.8mm、より好ましくは0.5~0.6mmである。
穿刺部15は、生体組織に突き刺さる鋭利な針部16を有する円管である。穿刺部15は、近位側から遠位側へ貫通する貫通孔17を備えている。穿刺部15は、シャフト部11の遠位部に固定されている。穿刺部15は、遠位端に、中心軸と傾斜する傾斜面18を備えている。傾斜面18は、生体組織を穿刺するための鋭利な針部16の遠位端である。穿刺部15の内部には、シャフト遠位部14の遠位端が配置されている。シャフト遠位部14の遠位端は、穿刺部15の内周面に、針固定部19によって溶接や接着等によって固定されている。穿刺部15の内径は、シャフト遠位部14の外径よりも大きい。そして、針固定部19は、シャフト遠位部14の周方向の一部にのみ設けられている。このため、シャフト遠位部14および針固定部19は、穿刺部15の内部での流体の流通性を阻害しない。なお、針固定部19は、複数設けられてもよい。また、穿刺部15の軸心およびシャフト遠位部14の軸心は、略一致することが好ましい。穿刺部15の軸心およびシャフト遠位部14の軸心は、一致しなくてもよい。穿刺部15の針部16の形状は、生体組織を穿刺できるのであれば、特に限定されず、例えば円錐形状、ナイフ型の平板、シャベル状の曲面板であってもよい。したがって、穿刺部15は、貫通孔17が形成されなくてもよい。また、穿刺部15の断面形状は、円形でなくてもよい。また、穿刺部は、シャフト部と一体的な構造であってもよい。穿刺部15は、エネルギーを放出できる電極等のエネルギー部でもよい。
穿刺部15の軸方向の長さは、ガイドワイヤ10の血管内での柔軟性を阻害しない程度であることが好ましい。穿刺部15の軸方向の長さは、例えば2~10mm、好ましくは3~8mm、より好ましくは4~6mmである。穿刺部15の外径は、例えば0.3~1.0mm、好ましくは0.4~0.8mm、より好ましくは0.5~0.6mmである。穿刺部15の内径は、例えば0.1~0.9mm、好ましくは0.2~0.7mm、より好ましくは0.3~0.5mmである。穿刺部15の傾斜面18の中心軸に対する傾斜角度α1は、適宜設定されるが、例えば3~45度、好ましくは5~40度、より好ましくは10~35度である。
穿刺部15の構成材料は、ある程度硬質であることが好ましく、例えば、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンなどの金属、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。また、穿刺部15は、X線造影性材料を含んでもよい。X線造影性材料は、例えば、金、白金、イリジウム、タングステンあるいはそれらの合金、銀―パラジウム合金からなる群のうち少なくともいずれか1つの金属もしくは2つ以上の合金から形成されたものが好適である。穿刺部15の表面は、シリコーンコートや親水性コートを施すことが可能である。
カバー部30は、穿刺部15を突出可能に収容する、全体として管状の弾性的に変形可能な部材である。カバー部30は、螺旋を描く線材31により形成されている。線材31の遠位側の端部は、接触する生体組織の損傷を抑制するために、ろう付けして隣接する線材31の間の隙間を埋められる。または、線材31の遠位側の端部は、線材31同士を接触させて溶接された後、外縁部が曲面加工されて滑らかに形成されている。カバー部30は、螺旋のピッチ間距離が長い疎ピッチ部33と、螺旋のピッチ間距離が疎ピッチ部33よりも短い密ピッチ部34と、密ピッチ部よりも遠位側に位置するカーブ部35とを有している。ピッチ間距離とは、螺旋が周方向に360度巻回する際の軸方向への移動距離である。疎ピッチ部33、密ピッチ部34およびカーブ部35は、連続する1つの線材31により形成されている。なお、疎ピッチ部33、密ピッチ部34およびカーブ部35は、複数の線材により形成されてもよい。また、線材31は、隙間なく螺旋を描く密ピッチ部34が設けられなくてもよい。また、カバー部は、弾性変形可能な樹脂チューブや、線材を編組したメッシュ状のチューブにより形成されてもよい。メッシュ状のチューブは、少なくとも一部が樹脂チューブに埋め込まれても、埋め込まれなくてもよい。
疎ピッチ部33は、隙間を有して隣接しつつ螺旋を描く線材31により形成されている。疎ピッチ部33の近位端32は、はんだ、接着剤、溶接により溶融した材料等からなる接合部36によって、シャフト部11に固定されている。接合部36は、近位端32とシャフト部11の間の段差および隙間を埋めている。疎ピッチ部33は、軸方向に沿って、略一定の外径および内径を有している。疎ピッチ部33は、シャフト近位部12の遠位部と、シャフト縮径部13と、シャフト遠位部14の近位部を囲んでいる。疎ピッチ部33の螺旋の軸心は、シャフト近位部12、シャフト縮径部13およびシャフト遠位部14の軸心と略一致する。疎ピッチ部33の内径は、疎ピッチ部33の内部に位置するシャフト部11の外径よりも大きい。このため、シャフト部11と疎ピッチ部33の間には、流体を流通させる流路が形成される。疎ピッチ部33は、図7(A)に示すように、軸方向に並ぶ線材31の間の隙間が減少するように軸方向へ収縮可能である。疎ピッチ部33が軸方向に収縮すると、疎ピッチ部33よりも遠位側に位置する密ピッチ部34およびカーブ部35が、穿刺部15に対して近位側へ移動する。これにより、密ピッチ部34の内部に収容されている穿刺部15の針部16が、カーブ部35を通って、遠位側へ突出する。
密ピッチ部34は、図3に示すように、隙間なく隣接して螺旋を描く線材31により形成されている。密ピッチ部34は、軸方向に沿って、略一定の外径および内径を有している。密ピッチ部34は、穿刺部15と、穿刺部15の内部に位置するシャフト遠位部14の一部を囲んでいる。密ピッチ部34の螺旋の軸心は、穿刺部15およびシャフト遠位部14の軸心と略一致する。なお、密ピッチ部34は、疎ピッチ部33よりもピッチ間距離が短ければ、軸方向に並ぶ線材31の間に隙間を有してもよい。また、密ピッチ部34および疎ピッチ部33のピッチ間距離は、一致することもあり得る。または、密ピッチ部34のピッチ間距離が、疎ピッチ部33のピッチ間距離よりも長いこともあり得る。密ピッチ部34の内径は、穿刺部15の外径よりもわずかに大きい。これにより、密ピッチ部34の軸方向への変形が、穿刺部15との摩擦力によって阻害されない。密ピッチ部34の内周面は、穿刺部15の外周面と接触してもよく、接触しなくてもよい。
カーブ部35は、螺旋を描く線材31により、全体として曲がった筒形状となるように形成されている。カーブ部35は、針部16の遠位端付近からカバー部30の遠位側の端面まで位置する。カーブ部35は、針部16の遠位端付近からカバー部30の遠位側の端面の間の一部であってもよい。その場合、カーブ部35は、カバー部30の直線状の部分よって挟まれて位置する。カーブ部35においてカバー部30が曲がる角度βは、特に限定されないが、45度以上であって180度以下であることが好ましく、さらに90度以上であって180度以下であることがより好ましい。角度βが90度以上であれば、ガイドワイヤ10を生体内で押し進める際に、ガイドワイヤ10の遠位端が生体組織に突き当たり難くなり、生体組織の損傷を抑制できる。角度βが180度以下であれば、カーブ部35の湾曲を利用して、生体内のガイドワイヤ10を目的の方向へ方向づけることが容易となり、操作性が向上する。カーブ部35の遠位側の端面、すなわち、カバー部30の遠位側の端面は、遠位側へ向かってテーパ状に縮径している。カーブ部35は、湾曲しているため、湾曲の内側と外側で、線材31の間の隙間の広さが異なる。カーブ部35の線材31は、湾曲の内側において、隙間なく隣接している。なお、線材31は、湾曲の内側において、隙間を有して隣接してもよい。カーブ部35の線材31は、湾曲の外側において、内側よりも広い隙間を有して隣接する。なお、カーブ部35の線材31は、湾曲した状態において、湾曲の内側および外側の両方で隙間なく隣接して螺線を描いてもよい。この場合、線材31は、位置によって形状が異なっている。
カーブ部35が曲がる方向は、傾斜面18において鋭利な針部16が位置する方向と一致する。このため、針部16がカーブ部35の内部を遠位側へ移動する際に、針部16がカーブ部35の内周面と接触することを抑制できる。このため、針部16が意図せずにカーブ部35から突出して生体組織を傷つけることを抑制でき、安全性が向上する。
カーブ部35は、重力や血流等からの外力が作用しない自然状態において、曲がっている。なお、カーブ部35は、使用環境において曲がっていれば、自然状態において曲がっていなくてもよい。例えば、カーブ部35は、自重が作用することによって曲がっていてもよく、血液の流れから力を受けて曲がっていてもよい。カバー部30は、柔軟であるため、自然状態において曲がっていなくても、自重や血流等からの外力が作用することで、カーブ部35が形成され得る。
カバー部30を形成する線材31の、当該線材31の延在方向と直交する断面形状は、長方形(または正方形)である。このため、カバー部30が軸方向へ収縮すると、軸方向へ並ぶ線材31が広い面積で接触する。このため、軸方向へ収縮したカバー部30は、軸方向への力の伝達力が高い。なお、カバー部30を形成する線材31の断面形状は、長方形や正方形でなくてもよく、例えば円形、楕円形、平行四辺形、台形等であってもよい。
ガイドワイヤ10は、近位側から軸方向に並ぶように、ガイドワイヤ近位部37と、ガイドワイヤ中間部38と、ガイドワイヤ遠位部39とを有している。ガイドワイヤ近位部37は、外径が一定のシャフト近位部12およびカバー部30の近位部により構成される。ガイドワイヤ中間部38は、シャフト縮径部13の近位端よりも遠位側であって、穿刺部15の近位端よりも近位側に位置するシャフト部11およびカバー部30により構成される。ガイドワイヤ遠位部39は穿刺部15の近位端よりも遠位側に位置する穿刺部15、カバー部30およびシャフト部11により構成される。ガイドワイヤ遠位部39の一部は、ガイドワイヤ中間部38よりも曲げ剛性が高い。ガイドワイヤ近位部37は、ガイドワイヤ中間部38の一部よりも曲げ剛性が高い。ガイドワイヤ10の長さは、適宜設定されるが、例えば300~5000mmである。
カバー部30は、直線状の線材31を螺旋状に巻回して形成される。または、カバー部30は、レーザー加工等により、円管から切り出されてもよい。
カバー部30の構成材料は、弾性的に変形可能であり、かつある程度硬質であることが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンなどの金属、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。形状記憶合金は、Ni-Ti系、Cu-Al-Ni系、Cu-Zn-Al系などが好適に使用できる。また、カバー部30は、X線造影性材料を含んでもよい。X線造影性材料は、例えば、金、白金、イリジウム、タングステンあるいはそれらの合金、銀-パラジウム合金からなる群のうち少なくともいずれか1つの金属もしくは2つ以上の合金から形成されたものが好適である。また、カバー部30は、螺旋状に形成されることで、凹凸が増加し、高い超音波造影性を有することができる。カバー部30は、塑性変形してもよい。例えば、カバー部30の少なくともカーブ部35が塑性変形可能であれば、カーブ部35の曲がりを、施術前に施術者が目的に応じて調節することが可能である。
一般的に、ガイドワイヤ10は、挿入する生体管腔を傷つけず、かつ曲がりくねった生体管腔内で押し進められるように、ある程度の剛性を有しつつも、高い柔軟性を有している。したがって、本実施形態におけるガイドワイヤ10は、撓み(径方向への変形)が制限されていない状態で、カバー部30の遠位端に近位側へ向かう力を受けると、ガイドワイヤ10のいずれかの部位が撓み、力がカバー部30の遠位部から他の部位へ逃げる。さらに、ガイドワイヤ10の遠位部は、曲がっているため、遠位端に力が作用し難く、カバー部30を軸方向へ収縮させる力が作用し難い。このため、カバー部30が、遠位端に近位側へ向かう力を受けても、カバー部30を軸方向へ収縮させるために必要な力が、カバー部30に作用しない。したがって、カバー部30は、撓みが自由な状態で近位側へ向かう力を受けることで撓み、針部16を収容した状態を維持する。
インサータ60は、図1および2に示すように、ガイドワイヤ10を挿入可能であり、かつダイレータ40に挿入される。卵円窩Oを適切に穿刺するためには、右心房R内で卵円窩Oに適切に向かうように、医療デバイス1に適度な角度と剛性を備える必要がある。インサータ60は、ダイレータ40に挿入されて、医療デバイス1の剛性および角度を高めることができる。例えば、公知の穿刺針は、鋭利な針部の近位側に、針部よりも外径が大きく所定の角度で曲がった金属シャフトが設けられている。本実施形態では、医療デバイス1に適度な角度と剛性を付与するために、インサータ60を別途設けている。インサータ60は、ガイドワイヤ10とは独立しているため、卵円窩Oの穿刺後、ガイドワイヤ10を残して、インサータ60のみを抜去することが可能である。このため、外シース50のガイドワイヤ10を介した運搬を、より円滑にすることが可能である。また、インサータ60を、ダイレータ40の内径縮径部45に突き当てて、ダイレータ近位部44に配置することで、インサータ60およびダイレータ遠位部43の内腔が、略均一の内径で連続する。このため、インサータ60およびダイレータ40の内腔でのガイドワイヤ10の挿入性が高まる。したがって、公知の穿刺針を挿入するために内径縮径部45を有するダイレータ40の内部で、ガイドワイヤ10が引っ掛かることを抑制できる。
インサータ60は、ガイドワイヤ10を挿入可能なインサータ本体61と、インサータ本体61の近位側に設けられるインサータハブ62とを有している。
インサータ本体61は、管体であり、ガイドワイヤ10を挿入可能である。インサータ本体61の外表面は、ダイレータ40に対して低摩擦で接触できるように、低摩擦材料がコーティングされてもよい。低摩擦材料は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマーやシリコーンオイルが挙げられる。また、インサータ本体61の内表面は、ガイドワイヤ10に対して低摩擦で接触できるように、低摩擦材料がコーティングされてもよい。
インサータ本体61は、自然状態において、遠位部に所定の角度で曲がったインサータ曲げ部63を有する。インサータ本体61の近位部に対するインサータ曲げ部63の角度β1は、特に限定されないが、例えば20~90度、より好ましくは30~85度、さらに好ましくは40~80度である。インサータ曲げ部63は、右心房に挿入したガイドワイヤ10の針部16を、卵円窩Oへ向ける役割を果たす。インサータ本体61の遠位側端部の外周の縁部は、ダイレータ40に円滑に挿入できるように、曲面に加工されていることが好ましい。
インサータ本体61の構成材料は、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンなどの金属、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。また、インサータ本体61は、X線造影性材料を含んでもよい。
インサータハブ62は、インサータ本体61の近位部に連結される筒部64と、ダイレータ40に接続される第1接続部65と、ポート部66と、弁体67と、回転固定部68とを有している。筒部64は、インサータハブ62の遠位側の端部に位置している。筒部64は、連結されるインサータ本体61の内腔に連通可能である。第1接続部65は、筒部64の外周面に回転可能に設けられる筒状の部材である。第1接続部65の内周面には、ダイレータ40の近位部に設けられる第2接続部41と螺合可能な雌コネクタが形成されている。ポート部66は、例えば三方活栓やシリンジ等を接続可能である。ポート部66は、インサータ本体61の内腔をプライミングしたり、インサータ本体61に造影剤や薬剤等を注入したりすることができる。また、ポート部66を利用して、生体内の血液を外部へ導いて、血圧を計測することもできる。血圧を計測することで、針部16が目的の位置へ到達したことを正確に確認できる。ポート部66がインサータハブ62に対して設けられる方向は、インサータ曲げ部63の曲がっている方向と一致する。このため、インサータハブ62におけるポート部66の位置を確認することで、インサータ曲げ部63が曲がっている方向を、体外でも容易に把握できる。弁体67は、インサータハブ62の近位部の内部に位置している。弁体67には、ガイドワイヤ10が摺動可能に貫通する。弁体67は、ガイドワイヤ10の外周面と摺動可能に接触する。弁体67は、例えば円盤状の弾性体の中央に切れ目を入れた部材である。弾性体は、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、各種エラストマー等である。弁体67は、インサータ本体61から血液が漏れることを抑制するとともに、体内へ空気が混入することを抑制する。回転固定部68は、インサータハブ62の外周面に螺合する。回転固定部68は、インサータハブ62の外周面に対して回転することで、軸方向へ移動可能である。回転固定部68は、遠位側へ突出して弁体67と接触する押圧部69を有している。回転固定部68が、回転して遠位側へ移動すると、押圧部69が弁体67を押圧し、弁体67を圧縮する。これにより、弁体67は、弁体67を貫通するガイドワイヤ10を、移動不能に固定できる。また、回転固定部68が、回転して近位側へ移動すると、押圧部69が弁体67から離れる方向へ移動する。これにより、押圧部69による弁体67の圧縮が解消され、ガイドワイヤ10が、弁体67を摺動可能となる。インサータ60は、ガイドワイヤ10を挿入した状態のまま、ポート部66から造影剤や薬剤等を注入したり、血圧を計測することができる。したがって、インサータ60は、利便性が高い。
インサータハブ62の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂の総称)等の硬質の樹脂、ステンレス等の金属などが好適に使用できる。
ダイレータ40は、ガイドワイヤ10により形成された卵円窩Oの孔を広げるために用いられる。ダイレータ40は、遠位側端部に、遠位側に向かってテーパ状に縮径するテーパ部42を有している。ダイレータ40の内腔は、テーパ部42の最も縮径した端部で開口している。テーパ部42の中心軸に対する傾斜角度α2は、適宜設定されるが、例えば1~20度、より好ましくは3~15度、さらに好ましくは4~10度である。ダイレータ40の近位部の外周面には、インサータハブ62の第1接続部65と連結可能な第2接続部41が設けられている。第2接続部41は、雄コネクタである。
ダイレータ40は、遠位側に位置する内径の小さいダイレータ遠位部43と、近位側に位置するダイレータ遠位部43よりも内径が大きいダイレータ近位部44を有している。ダイレータ遠位部43とダイレータ近位部44の間には、内径が遠位側に向かって縮径する内径縮径部45が設けられる。ダイレータ近位部44の内周面は、インサータ本体61の外周面と摺動可能に密接可能である。ダイレータ近位部44にインサータ本体61を挿入すると、インサータ本体61が、ダイレータ40に対して正確な位置に固定される。このとき、インサータ本体61の遠位側端部が、内径縮径部45と接触する。なお、ダイレータ40の内径は、軸方向に沿って一定であってもよい。
ダイレータ40は、自然状態において、遠位部に所定の角度で曲がったダイレータ曲げ部46を有する。ダイレータ40の近位部に対するダイレータ曲げ部46の角度β2は、特に限定されないが、例えば10~70度、より好ましくは20~60度、さらに好ましくは30~50度である。ダイレータ曲げ部46は、右心房に挿入したガイドワイヤ10の穿刺部15や、ダイレータ40のテーパ部42を、卵円窩Oへ向ける役割を果たす。
ダイレータ40の長さは、適宜設定されるが、例えば150~1500mmである。ダイレータ40の外径は、適宜設定されるが、例えば2~6mmである。ダイレータ遠位部43の内径は、適宜設定されるが、例えば0.5~1.5mmである。ダイレータ近位部44の内径は、適宜設定されるが、例えば1.0~2.0mmである。ダイレータ遠位部43の長さは、適宜設定されるが、例えば1~15mm、より好ましくは2~12mm、さらに好ましくは3~10mmである。ダイレータ近位部44の内周面とインサータ本体61の外周面の間の半径でのクリアランスは、適宜設定されるが、例えば0.03~0.1mmである。
ダイレータ40の構成材料は、可撓性を有することが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンなどの金属などが好適に使用できる。また、ダイレータ40は、X線造影性材料や超音波造影性材料を含んでもよい。
外シース50は、アブレーションカテーテルのアクセスルートを提供する。外シース50は、シース本体51と、シース本体51の近位部に連結されるハブ54と、ハブ54に連通するシースポート部56と、ハブ54の内部の弁体55とを有している。
シース本体51は、ダイレータ40を軸方向へ移動可能に収容する長尺な管体である。シース本体51は、ダイレータ40と円滑に摺動する内周面を有する。シース本体51は、自然状態において、遠位部に所定の角度で曲がったシース曲げ部52を有する。シース本体51の近位部に対するシース曲げ部52の角度β3は、特に限定されないが、例えば10~180度、より好ましくは30~150度、さらに好ましくは45~135度である。シース曲げ部52は、右心房に挿入したガイドワイヤ10の穿刺部15や、シース本体51の遠位部を、卵円窩へ向ける役割を果たす。
シース本体51は、遠位側端部に、遠位側に向かってテーパ状に縮径するシーステーパ部53を有している。シース本体51の内腔は、シーステーパ部53の最も縮径した端部で開口している。シーステーパ部53の中心軸に対する傾斜角度α3は、適宜設定されるが、例えば1~15度、より好ましくは2~10度、さらに好ましくは3~7度である。外シース50にダイレータ40を挿入したシース組立体20において、シーステーパ部53は、ダイレータ40のテーパ部42の近位側に位置し、テーパ部42と連続するように位置することができる。シース本体51の内周面は、ダイレータ40の外周面が摺動可能に接するように、ダイレータ40の外周面との間にクリアランスを有することが好ましい。
シース本体51は、その全長にわたってダイレータ40が貫通可能である。したがって、シース本体51の軸方向の長さは、ダイレータ40よりも短い。
シース本体51の長さは、適宜設定されるが、例えば400~1000mmである。シース本体51の外径は、適宜設定されるが、例えば2.5~7.0mmである。シース本体51の内径は、適宜設定されるが、例えば2~6mmである。シース本体51の内周面とダイレータ40の外周面の間の半径でのクリアランスは、適宜設定されるが、例えば0.1~0.5mmである。
シース本体51の構成材料は、可撓性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。また、シース本体51の構成材料は、X線造影性材料、金属ブレードやコイルを含んでもよい。
ハブ54は、シース本体51の近位部に設けられ、シース本体51の内腔と連通する。ハブ54には、ダイレータ40が貫通する。シースポート部56は、ハブ54に連結され、ハブ54の内腔を介してシース本体51の内腔と連通する。シースポート部56は、端部に三方活栓57を有している。三方活栓57にシリンジ等を接続することで、シース本体51の内腔をプライミングしたり、シース本体51に造影剤や薬剤等を注入したりすることができる。
弁体55は、ハブ54およびシース本体51の内腔を封止するための部材である。弁体55は、柔軟に変形可能であり、ハブ54の内周面に配置される。弁体55は、ダイレータ40の外周面と摺動可能に接触する。また、弁体55は、ダイレータ40が挿入された状態で、弾性力によりダイレータ40を押圧し、ダイレータ40と外シース50を固定することができる。なお、弁体55で固定されても、ダイレータ40と外シース50を把持して力を作用させることで、軸方向へ相対的に移動させることは可能である。また、ダイレータ40をハブ54から引き抜くことで、弁体55のダイレータ40が挿入された孔部は閉じ、ハブ54の内腔を近位側から封止する。弁体55は、例えば円盤状の弾性体の中央に切れ目を入れた部材である。弾性体は、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、各種エラストマー等である。弁体55は、ダイレータ40の抜き差しを許容しつつ、外シース50を介して血液が漏れることを抑制するとともに、体内へ空気が混入することを抑制する。
インサータ60、ダイレータ40および外シース50を組み合わせた状態において、インサータ曲げ部63、ダイレータ曲げ部46およびシース曲げ部52の位置、曲げ方向および曲げ角度は、一致または略一致することが好ましい。これにより、ガイドワイヤ10の針部16を望ましい方向へ突出させることができる。
次に、本実施形態に係る医療デバイス1を用いて卵円窩Oに孔を開けて、アブレーションカテーテルのためのアクセスルートを設ける方法を、図4のフローチャートを参照しつつ説明する。
始めに、大腿静脈に針を穿刺し、この針の中に汎用のガイドワイヤ(不図示)を挿入する。次に、針を抜去し、汎用のガイドワイヤに沿って、外シース50の内部にダイレータ40を挿入した組立体を血管内に挿入する(ステップS10)。汎用のガイドワイヤを先行させつつ組立体を押し進め、組立体が右心房Rを超え、ダイレータ40の遠位端が上大静脈まで到達した後、汎用のガイドワイヤを抜去する。なお、汎用のガイドワイヤに代えて、ガイドワイヤ10を用いてもよい。
次に、インサータ60およびガイドワイヤ10を、外シース50およびダイレータ40からなる組立体に挿入する(ステップS11)(図6(A)を参照)。このとき、ガイドワイヤ10の遠位端は、ダイレータ40の遠位側の開口部と、インサータ60の遠位側の開口部の間に配置する。インサータ60の第1接続部65は、ダイレータ40の第2接続部41に連結される。なお、インサータ60は、ダイレータ40に連結されなくてもよい。したがって、第1接続部65および第2接続部41は、設けられなくてもよい。ガイドワイヤ10は、穿刺部15を収容しているカバー部30の外周面が完全には拘束されていない。このため、ガイドワイヤ10がインサータ60およびダイレータ40内を移動する際に、ガイドワイヤ10の穿刺部15は、カバー部30に収容された状態が維持される。次に、シース組立体20を後退させて右心房R内へ引き込む。これにより、図5、6(A)に示すように、シース組立体20の遠位側端部が、卵円窩Oの近傍へ自然と導かれる(ステップS12)。
次に、心腔内心エコーカテーテル(ICE:Intra cardiac echo catheter)により左心房Lおよび右心房R内を観察しつつ、図6(B)に示すように、シース組立体20を遠位側へ押し込む(ステップS13)。これにより、卵円窩Oは、ダイレータ40により左心房L側へ押されて突出した状態となる。このとき、外シース50、ダイレータ40およびインサータ60の遠位部が曲がっているため、ダイレータ40の遠位側の端部を、卵円窩Oへ容易に向けることができる。なお、卵円窩Oを、左心房L側へ突出した状態としなくてもよい。シース組立体20は、ダイレータ40に挿入されるインサータ60により補強される。このため、シース組立体20は、剛性の高い曲がった公知の穿刺針が挿入されなくても、穿刺に適切な剛性および角度で、卵円窩Oに向かうことができる。
次に、図7(A)に示すように、体外に位置するガイドワイヤ10の近位部をインサータハブ62へ押し込む。カバー部30のカーブ部35は、インサータ60の内部で、直線的に延ばされる。直線的に延ばされたカーブ部35の線材31は、隙間なく隣接して螺旋を描いている。なお、直線的に延ばされたカーブ部35の線材31は、隙間を有して隣接して螺旋を描いてもよい。ガイドワイヤ10がインサータ60およびダイレータ40の内部を遠位側へ移動すると、ガイドワイヤ10の遠位端に位置するカバー部30が、卵円窩Oに接触する(ステップS14)。これにより、ガイドワイヤ10の最遠位に位置するカバー部30の遠位端に、近位側へ向かう力が作用する。カバー部30の遠位側の端部が同一平面で卵円窩Oに接触する場合、針部16が卵円窩Oに対して垂直になる。これにより、カバー部30が収縮しやすくなり、針部16がカバー部30から露出しやすくなると共に、針部16が卵円窩Oを穿刺しやすい。例えば、カバー部30が円筒の場合、遠位側の端部の全周が同時に、卵円窩Oに接触すると穿刺しやすい。カバー部30の疎ピッチ部33は、遠位端に近位側へ向かう力を受けることで、線材31の間の隙間を減少させるように軸方向へ弾性的に収縮する。直線的に延ばされたカーブ部35の線材31の間に隙間がある場合には、カーブ部35は、線材31の間の隙間を減少させるように軸方向へ弾性的に収縮する。カバー部30は、外径が減少して剛性が低いシャフト縮径部13およびシャフト縮径部13よりも遠位側のシャフト遠位部14を囲んでいる。このため、カバー部30は、剛性が低下することで撓みやすいシャフト部11の周囲を補填して隙間を減少させる。このため、シャフト部11に固定される穿刺部15による卵円窩Oの穿刺を、効果的に行うことができる。また、密ピッチ部34は、軸方向へ収縮できないため、ダイレータ40またはインサータ60の内部に収容されることで、軸方向へ力を効果的に伝達し、効果的な穿刺を可能とする。また、カバー部30の先端が生体組織に接触後、カバー部30の線材31が完全に収縮する前に、穿刺部15がダイレータ40(長尺体)から露出し、生体組織に穿刺してもよい。言い換えると、カバー部30の線材31の収縮距離が、カバー部30の先端と穿刺部15の先端の距離よりも長い。また、カバー部30は、カバー部30のみが生体組織に接触するだけでは、生体組織の厚みや硬さ等を穿刺できる力はなく、穿刺部15が生体組織に形成した孔に入り込みやすい形状がよい。
疎ピッチ部33が軸方向に収縮すると、疎ピッチ部33よりも遠位側に位置する密ピッチ部34およびカーブ部35が、穿刺部15に対して近位側へ移動する。これにより、密ピッチ部34の内部に収容されている穿刺部15の針部16が、カーブ部35を通って、カバー部30から遠位側へ露出する。したがって、ガイドワイヤ10を遠位側へ押し込むと、カバー部30から露出する穿刺部15によって、卵円窩Oに孔を形成できる(ステップS15)。針部16が露出するまでカバー部30を軸方向へ収縮させる力は、ダイレータ40または生体内へガイドワイヤ10を挿入時にガイドワイヤ10に作用する摩擦抵抗値よりも大きいことが望ましい。これにより、ガイドワイヤ10がダイレータ40または生体内を移動する際に、カバー部30が摩擦力によって収縮して針部16が突出することを抑制できる。穿刺部15が卵円窩Oを貫通して左心房Lへ到達した後、さらにガイドワイヤ10を押し込むと、形成された孔をカバー部30が貫通する。このとき、疎ピッチ部33、密ピッチ部34およびカーブ部35の線材31が、隙間なく隣接しているため、軸方向へこれ以上収縮できない。このため、ガイドワイヤ10を押し込むと、カバー部30が、形成された孔を穿刺部15に続いて貫通する。カバー部30の遠位端が孔を貫通すると、図7(B)に示すように、弾性的に収縮しているカバー部30が、自己の復元力により軸方向へ拡張する。これにより、穿刺部15は、カバー部30に収容される(ステップS16)。穿刺部15は、密ピッチ部34に収容される。カーブ部35は、元の曲がった形状に復元し、針部16の遠位側に位置する。穿刺部15を収容したカバー部30は、ダイレータ40から突出しているため、自由に撓むことができる。このため、左心房L内の穿刺部15は、カバー部30に収容された状態が維持される。したがって、穿刺部15が目的外の位置を誤穿刺することを抑制できる。カーブ部35が曲がっているため、ガイドワイヤ10の遠位端が生体組織に突き当たり難い。このため、カーブ部35によって、生体組織の損傷を抑制できる。ガイドワイヤ10は、細いシャフト部11の外周にカバー部30が設けられている。このため、針部16により形成した孔にカバー部30を押し込むことで、孔を円滑に広げることができる。このため、ガイドワイヤ10は、カバー部30を利用して、適切な大きさの孔を卵円窩Oに形成できる。穿刺部15の一部のみがダイレータ40から突出している場合、穿刺部15は、ダイレータ40に支持されて穿刺能力を発揮できる。このため、安全性を確保するために、針部16が卵円窩Oを貫通後、カバー部30の遠位端は、穿刺部15よりも遠位側に位置することが好ましい。この後、穿刺部15の全体がダイレータ40から突出すると、穿刺部15はダイレータ40の支持を失う。これにより、ガイドワイヤ10のダイレータ40から突出した部位が柔軟に曲がるため、穿刺部15が穿刺能力を発揮せず、安全性を確保できる。
穿刺部15が卵円窩Oを貫通すると、卵円窩Oを左心房L側へ押圧していたダイレータ40のテーパ部42の一部が、卵円窩Oに開けられた孔に入り込む。なお、テーパ部42の一部が、卵円窩Oの孔に入り込まなくてもよい。
穿刺部15が卵円窩Oを貫通すると、穿刺部15の貫通孔17、カバー部30とシャフト部11の間の隙間、およびカバー部30を構成する線材31の隙間を介して、左心房Lがダイレータ40およびインサータ60の内腔と良好に連通する。このため、インサータ60のポート部66を介して血圧を計測することで、穿刺部15が左心房Lへ到達したことを正確に確認できる。また、インサータ60のポート部66から、穿刺部15の貫通孔17を介して、左心房Lへ造影剤を放出できる。
次に、シース組立体20を、ガイドワイヤ10を先行させつつ遠位側へ移動させる。これにより、図8(A)に示すように、ダイレータ40のテーパ部42および外シース50のシーステーパ部53が、卵円窩Oの孔を押し広げつつ卵円窩Oを通過し、左心房Lに到達する。つまり、ガイドワイヤ10は、ダイレータ40の少なくとも右心房Rから左心房Lの卵円窩O側までの移動をガイドする。このとき、テーパ部42およびシーステーパ部53が、遠位側へ縮径しているため、卵円窩Oの孔を滑らかに広げることができる(ステップS17)。また、ガイドワイヤ10が、卵円窩Oを貫通した状態で維持されているため、ダイレータ40および外シース50を、ガイドワイヤ10に沿って、卵円窩Oの孔に容易に押し込むことができる。また、穿刺部15により卵円窩Oを穿刺した際に、ダイレータ40のテーパ部42の一部が、卵円窩Oの孔に入り込んでいるため、ダイレータ40および外シース50を、卵円窩Oの孔に押し込むことが容易である。また、ガイドワイヤ10を先行させることにより、外シース50を安全に左房壁側(たとえば肺静脈近傍)まで移動させることができる。
次に、図8(B)に示すように、外シース50および必要に応じてガイドワイヤ10を残して、インサータ60およびダイレータ40を、体外へ抜去する(ステップS18)。ダイレータ40により広げられた卵円窩Oの孔は、外シース50により維持される。外シース50からダイレータ40を抜去すると、弁体55が閉じ、血液の漏えいや、血管内への空気等の混入を抑制できる。この後、外シース50の近位側から、弁体55を介して第2の医療デバイスを挿入する。第2の医療デバイスは、例えば、アブレーションカテーテル等の治療デバイス、画像診断デバイス、電極カテーテル等である。これにより、卵円窩Oを貫通する外シース50を利用して、第2の医療デバイスを所望の部位(例えば、左心房L、右心房R、左心耳、僧帽弁等)へ挿入することができる(ステップS19)。第2の医療デバイスを使用した後(ステップS20)、第2の医療デバイスおよび外シース50を体外に抜去すると(ステップS21)、卵円窩Oの孔が収縮する。これにより、手技が完了する。
ダイレータ40および外シース50を卵円窩Oの孔に押し込む前に、ガイドワイヤ10を押し込む際の反作用によって、図9に示すように、ダイレータ40が卵円窩Oから離れる可能性がある。心臓の拍動や、心臓内の血流からダイレータ40が受ける力も、ダイレータ40が卵円窩Oから離れる要因となり得る。このとき、カバー部30の疎ピッチ部33は、密ピッチ部34よりも近位側に位置しているため、ダイレータ40よりも遠位側に露出し難い。すなわち、カバー部30のダイレータ40よりも遠位側に露出する部位は、密ピッチ部34である可能性が高い。密ピッチ部34は、疎ピッチ部33よりも折れ曲がり難いため、ダイレータ40と卵円窩Oの間で、ガイドワイヤ10が折れ曲がることを抑制できる。このため、ダイレータ40が卵円窩Oから離れても、ガイドワイヤ10に沿ってダイレータ40および外シース50を卵円窩Oの孔に押し込むことが容易となる。また、疎ピッチ部33よりも線材31の隙間が小さい密ピッチ部34が、穿刺部15を覆っているため、穿刺部15が線材31の隙間から突出することを抑制でき、安全性が高い。
以上のように、本実施形態におけるガイドワイヤ10は、生体内に挿入される管状のダイレータ40(長尺体)をガイドするためのガイドワイヤ10であって、可撓性を備える長尺なシャフト部11と、シャフト部11の遠位部に固定(配置)され、生体組織に孔を形成する穿刺部15と、軸方向へ弾性的に変形可能であって穿刺部15を覆うカバー部30と、を有し、カバー部30がダイレータ40から露出すると、カバー部30が穿刺部15を覆い、かつカバー部30が曲がる。
上記のように構成したガイドワイヤ10は、カバー部30がダイレータ40の内部に位置した状態で、ダイレータ40とカバー部30によって、シャフト部11の遠位部の撓みが制限されることで、穿刺部15により卵円窩Oに孔を形成できる。このように、本ガイドワイヤ10は、ダイレータ40やアブレーションカテーテルを導くガイドワイヤ10として機能しつつ、生体組織に孔を形成できる。そして、本ガイドワイヤ10は、穿刺機能を有する別途のデバイスを用いる必要がないため、高い作業性を有する。また、カバー部30がダイレータ40等の長尺体から露出すると、カバー部30が穿刺部15を覆い、かつ、カバー部30が穿刺部15の遠位側で曲がる。このため、本ガイドワイヤ10は、穿刺部15による誤穿刺を抑制して高い安全性を得られる。
また、カバー部30は、ダイレータ40に収容されることで直線状に変形可能である。これにより、カバー部30は、ダイレータ30の内部で直線状となり、軸方向へ収縮しやすくなって穿刺部45を露出させることが容易となる。
また、カバー部30は、シャフト部11に固定され、カバー部30はダイレータ40の内部に収容された状態で、遠位端に近位側へ向かう力を受けて軸方向へ弾性的に収縮して穿刺部15を露出させ、カバー部30はダイレータ40の外部に位置された状態で、遠位端に近位側へ向かう力を受けてシャフト部11の遠位部と共に撓み、穿刺部15を収容した状態を維持する。このため、ガイドワイヤ10は、カバー部30がダイレータ40の外部に露出された状態では、カバー部30の遠位端に近位側へ向かう力を受けても、カバー部30が撓んで穿刺部15をカバー部30に収容した状態を維持する。このため、ガイドワイヤ10は、穿刺部15をカバー部30から突出させずに安全性を維持しつつ、ダイレータ40等を目的の位置までガイドできる。また、カバー部30がダイレータ40に収容された状態で、カバー部30の遠位端が生体組織に当接して近位側へ向かう力を受けることで、カバー部30が軸方向に弾性的に収縮して穿刺部15が露出される。したがって、カバー部30がダイレータ40等に収容されていることで、穿刺部15により生体組織に孔を形成できる。カバー部30は、突出した穿刺部15が生体組織を貫通後、自己の復元力により元の形状へ戻って穿刺部15を収容する。また、本ガイドワイヤ10は、穿刺部15を収容するカバー部30により、穿刺部15によって形成した孔を広げることができ、生体組織に適切な大きさの孔を形成できる。
また、カバー部30は、自然状態において曲がっているカーブ部35を有する。これにより、カバー部30がダイレータ40の外部に位置する状態において、カバー部30の遠位端に、カバー部30を軸方向へ収縮させる力が作用し難い。このため、カバー部30から穿刺部15が突出せず、穿刺部15による誤穿刺を抑制して高い安全性を得られる。また、生体内において、カバー部30の遠位端が生体組織に突き当たり難くなり、生体組織の損傷を抑制できる。
また、カーブ部35の近位端は、穿刺部15の遠位側に位置する。これにより、カーブ部35は、ダイレータ40の外部に位置する状態で力を受けても、軸方向へ収縮し難い。このため、カバー部30が穿刺部15を覆った状態を維持でき、高い安全性を得られる。また、生体内において、カーブ部35の遠位端が生体組織に突き当たり難くなり、生体組織の損傷を抑制できる。
また、穿刺部15は、軸方向へ貫通する貫通孔17を有する。これにより、穿刺部15が卵円窩Oを貫通すると、例えば造影剤等を、穿刺部15を介して生体内へ供給できる。また、穿刺部15が卵円窩Oを貫通すると、貫通孔17を介して生体内の圧力を計測でき、貫通の有無を正確に把握できる。
また、カバー部30は、螺旋状の部材であり、カバー部30の少なくとも一部は、螺旋を形成して軸方向に並ぶ線材31同士の間に隙間を有する。これにより、カバー部30は、穿刺部15を覆った状態から、線材31の間の隙間を減少させるように軸方向へ収縮して、穿刺部15を露出させることができる。
また、カバー部30は、螺旋を形成して軸方向に並ぶ線材31同士の間に隙間を有する疎ピッチ部33と、疎ピッチ部33よりも遠位側に位置し、螺旋を形成して軸方向に並ぶ線材31のピッチ間距離が疎ピッチ部33よりも短い密ピッチ部34と、を有する。これにより、疎ピッチ部33は、穿刺部15を覆った状態から、線材31の間の隙間を減少させるように軸方向へ収縮して、穿刺部15を露出させることができる。また、密ピッチ部34は、軸方向へ収縮し難いため、軸方向へ力を効果的に伝達し、効果的な穿刺を可能とする。ところで、ガイドワイヤ10により生体組織に孔を形成した後、ダイレータ40を孔に押し込む前に、ダイレータ40が生体組織から離れる可能性がある。このとき、カバー部30の疎ピッチ部33は、密ピッチ部34よりも近位側に位置しているため、ダイレータ40よりも遠位側に露出し難い。すなわち、カバー部30のダイレータ40よりも遠位側に露出する部位は、密ピッチ部34である可能性が高い。密ピッチ部34は、疎ピッチ部33よりも折れ曲がり難いため、ダイレータ40と生体組織の間で、ガイドワイヤ10が折れ曲がることを抑制できる。このため、ダイレータ40が生体組織から離れても、ガイドワイヤ10に沿ってダイレータ40を生体組織の孔に押し込むことが容易となる。
また、穿刺部15の遠位部は、当該穿刺部15の中心軸に対して傾斜する傾斜面18を有し、穿刺部15の鋭利な針部16は、傾斜面18の遠位端に位置し、カーブ部35が曲がる方向は、傾斜面18において針部16が位置する方向と一致する。これにより、穿刺部15がカバー部30の内部を遠位側へ移動する際に、針部16がカーブ部35の内表面と接触することを抑制できる。このため、針部16がカーブ部35を傷つけることを抑制でき、針部16が意図せずにカーブ部35から突出して生体組織を傷つけることを抑制できる。
また、本実施形態に係る医療デバイス1は、生体内の卵円窩O(生体組織)に孔を形成するための医療デバイス1であって、生体内に挿入される管状のダイレータ40(長尺体)と、ダイレータ40に挿入可能なガイドワイヤ10と、を有し、ガイドワイヤ10は、可撓性を備える長尺なシャフト部11と、シャフト部11の遠位部に固定(配置)され、生体組織に孔を形成する穿刺部15と、軸方向へ弾性的に変形可能であって穿刺部15を覆うカバー部30と、を有し、カバー部30がダイレータ40から露出すると、カバー部30が穿刺部15を覆い、かつカバー部30が曲がる。
上記のように構成した医療デバイス1は、上述のガイドワイヤ10が挿入されるダイレータ40(長尺体)を有するため、ガイドワイヤ10のカバー部30をダイレータ40に収容できる。カバー部30をダイレータ40に収容した状態で、ダイレータ40とカバー部30によって、カバー部30の遠位側の端部が卵円窩Oに接触され、カバー部30が軸方向に収縮し穿刺部15を露出することで、穿刺部15により卵円窩Oに孔を形成できる。また、カバー部30が卵円窩Oを貫通し、ダイレータ40から露出すると、カバー部30が穿刺部15を覆い、かつ、カバー部30が穿刺部15を露出しないように曲がる。このため、医療デバイス1は、穿刺部15による誤穿刺を抑制して高い安全性を得られる。カバー部30は、カーブ部がなくてもよい。この場合、カバー部30がダイレータ40に収容された状態や、カバー部30が卵円窩Oを貫通後の穿刺部15を覆った状態で、カバー部30は直線状であってもよい。さらに、ダイレータ40に収容された状態、および穿刺部15を覆った状態で、カバー部30は同じ形状であってもよい。
また、本発明は、上述の医療デバイス1を使用して生体内の卵円窩O(生体組織)に孔を形成するための処置方法(治療方法)をも含む。当該処置方法は、ダイレータ40にガイドワイヤ10の穿刺部15およびカバー部30を収容し、ダイレータ40の遠位端を生体組織に接触させるステップと(ステップS13)、カバー部30の遠位端を卵円窩Oに押し付けて、カバー部30から露出する穿刺部15により卵円窩Oに孔を形成するステップと(ステップS15)、穿刺部15に続いてカバー部30を卵円窩Oの孔に押し込み、カバー部30を軸方向へ拡張させて当該カバー部30に穿刺部15を収容し、穿刺部15の遠位側にカバー部30の遠位部を配置し、カバー部30およびシャフト部11の少なくとも一方を湾曲させるステップ(ステップS16)と、ガイドワイヤ10に沿ってダイレータ40を移動させるステップと、を有する(ステップS17)。
上記のように構成した処置方法は、ガイドワイヤ10の穿刺部15およびカバー部30をダイレータ40に収容し、カバー部30の遠位端を生体組織に押し付けて、穿刺部15により生体組織に孔を形成する。このため、本処置方法は、穿刺機能を有する別途のデバイスを用いる必要がないため、高い作業性を有する。また、カバー部30がダイレータ40の外部に位置された状態で、カバー部30の遠位端に近位側へ向かう力を受けることでシャフト部11の遠位部はカバー部30と共に撓む。穿刺部15の遠位側には、カバー部30の曲がった部位が配置される。このため、本処置方法は、穿刺部15による誤穿刺を抑制して安全性を確保できる。また、本処置方法は、穿刺部15を収容するカバー部30により、穿刺部15によって形成した孔を広げることができ、生体組織に適切な大きさの孔を形成できる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述した医療デバイスは、卵円窩以外の生体内の生体組織を穿刺するために用いられてもよい。また、医療デバイスは、生体組織の孔を広げるために使用されなくてもよい。例えば、医療デバイスは、生体内の生体組織(例えば、心筋、臓器)を穿刺し、薬剤、造影剤または生理食塩液等を注入する注入具として使用されてもよい。薬剤は、例えば心筋へ注入するための細胞を含んでもよい。針部16を収容している長尺体は、生体組織に形成した孔へ押し込まれてもよいが、押し込まれなくてもよい。
また、カバー部30は、1つの線材31ではなく、複数の線材により形成されてもよい。したがって、カバー部は、多条バネや、メッシュにより形成されてもよい。また、カバー部は、可撓性のある樹脂チューブであってもよい。
また、ダイレータ40とインサータ60は、別体であるが、一体であってもよい。また、ダイレータ40(長尺体)があれば、インサータ60は設けられなくてもよい。
また、図10に示す第1の変形例のように、疎ピッチ部83の近位側に、密ピッチ部82が設けられてもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。ガイドワイヤ80のカバー部81は、密ピッチ部82と、密ピッチ部82の遠位側に位置する疎ピッチ部83と、疎ピッチ部83よりも遠位側に位置するカーブ部35とを有している。密ピッチ部82は、線材31が隙間なく螺旋を描いている。密ピッチ部82は、カバー部81の最も近位側に位置している。密ピッチ部82の近位端が、シャフト部11に固定されている。疎ピッチ部83は、線材31が隙間を有して隣接しつつ螺旋を描いている。カバー部81の近位部に、複数の流通孔84が形成されてもよい。流通孔84は、例えば軸方向に並ぶ線材31の縁部に形成されるが、孔の形態は限定されない。カバー部81の近位部に流通孔84が形成されることで、線材31の螺旋が密であっても(軸方向に並ぶ線材31の間に隙間がなくても)、カバー部81の内周面と外周面の間で、流体を流通させることが容易となる。これにより、穿刺部15の貫通孔17、カバー部81とシャフト部11の間の隙間、および流通孔84を介して、造影剤や血液を良好に流通させることができる。そして、カバー部81の近位部の線材31が隙間なく密に配置されるため、ダイレータ40の内部で、力を軸方向へ効果的に伝達できる。なお、カバー部81の流通孔84が形成される位置は、近位部に限定されない。
また、図11(A)に示す第2の変形例のように、ガイドワイヤ90のカバー部91は、管状部材であるカーブ部92を有してもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。カーブ部92は、柔軟であって弾性的に変形可能な樹脂製の管状部材である。カーブ部92は、固定部36でシャフト部11に固定されている疎ピッチ部33の遠位部に位置されている。カーブ部92は、疎ピッチ部33の遠位部からカバー部91の遠位端まで位置する。カーブ部92は、疎ピッチ部33の遠位部からカバー部91の遠位端の間の一部であってもよい。その場合、カーブ部92は疎ピッチ部33とカバー部91の挑戦状の部分によって挟まれて位置する。カーブ部92の近位部は、穿刺部15を覆っている。
ガイドワイヤ90がダイレータ40等の長尺体の内部に位置すると、カバー部91は、直線状に変形する。この状態で、カバー部91の遠位端に近位側へ向かう力が作用すると、疎ピッチ部33が軸方向へ収縮する。これにより、針部16は、図11(B)に示すように、カーブ部92から露出して、生体組織を穿刺できる。針部16に続いてカバー部91の遠位端が生体組織の孔を通過すると、図11(A)に示すように、疎ピッチ部33が自己の復元力によって軸方向へ拡張する。これにより、カーブ部92は針部16を覆い、曲がった形状に復元する。このため、ガイドワイヤ90は、カーブ部92を有するカバー部91によって、穿刺を行う針部16による誤穿刺を抑制できる。
また、図12(A)に示す第3の変形例のように、ガイドワイヤ110のカバー部111は、ダイレータ40内で軸方向へ収縮することで径方向外側へ拡張する遠位カバー部112と、管状の近位カバー部114と、管状のカーブ部115とを備えてもよい。遠位カバー部112は、螺旋を描く複数のスリット113が形成されている。スリット113は、遠位カバー部112の内周面と外周面の間を貫通している。近位カバー部114は、弾性的に変形可能な管状部材であり、近位部に、複数の流通孔116が形成されている。カバー部111の近位部に流通孔116が形成されることで、カバー部111の内部と外部の間で、流体を流通させることが容易となる。これにより、穿刺部15の貫通孔17、カバー部111とシャフト部11の間の隙間、および流通孔116を介して、造影剤や血液を良好に流通させることができる。なお、カバー部111の流通孔116が形成される位置は、近位部に限定されない。ガイドワイヤ110がダイレータ40等の長尺体の内部に位置すると、カバー部111は、直線状に変形する。この状態で、カバー部111の遠位端に近位側へ向かう力が作用すると、図12(B)に示すように、スリット113が広がり、ダイレータ40の内腔の範囲内で径方向へ拡張する。このため、カバー部111は、遠位端に近位側へ向かう力を受けると、軸方向へ収縮しつつ、径方向外側へ拡張する。このため、針部16が生体組織を貫通した後、径方向へ拡張した遠位カバー部112が生体組織の孔を通過することで、孔を大きく拡げることができる。針部16に続いてカバー部111の遠位端が生体組織の孔を通過すると、遠位カバー部112が自己の復元力によって軸方向へ拡張する。これにより、カーブ部115は針部16を覆い、曲がった形状に復元する。このため、ガイドワイヤ110は、カーブ部115を有するカバー部111によって、穿刺を行う針部16による誤穿刺を抑制できる。
また、図13(A)に示す第4の変形例のように、ガイドワイヤ130のカバー部140は、カーブ部35の遠位側に遠位パイプ141を備えてもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
遠位パイプ141は、カーブ部35の遠位部に固定された円管である。遠位パイプ141は、螺旋状の疎ピッチ部33、密ピッチ部34およびカーブ部35よりも曲げ剛性が高い。
遠位パイプ141の構成材料は、ある程度の剛性を備えることが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンなどの金属、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。
ガイドワイヤ130がダイレータ40等の長尺体の内部に位置すると、カバー部140は、直線状に変形する。この状態で、ガイドワイヤ130をダイレータ40に対して遠位側へ移動させ、ガイドワイヤ130の遠位端が生体組織に接触すると、ガイドワイヤ130の最遠位に位置するカバー部140の遠位端に、近位側へ向かう力が作用する。これにより、図13(B)に示すように、疎ピッチ部33の線材31の間の隙間が減少し、疎ピッチ部33が軸方向に収縮する。これにより、カバー部140の密ピッチ部34および遠位パイプ141が近位側へ移動し、カバー部140に収容されている穿刺部15の針部16が露出する。このとき、穿刺部15の近位部は、剛性の高い遠位パイプ141に囲まれている。このため、穿刺部15は、カバー部140の遠位パイプ141によって支持されて姿勢が安定する。したがって、ガイドワイヤ130は、穿刺部15によって生体組織に孔を円滑に形成できる。針部16に続いてカバー部140の遠位端が生体組織の孔を通過すると、疎ピッチ部33が自己の復元力によって軸方向へ拡張する。これにより、カバー部140が針部16を覆い、曲がった形状に復元する。このため、ガイドワイヤ130は、カーブ部35を有するカバー部140によって、穿刺を行う針部16による誤穿刺を抑制できる。
また、図14に示す第5の変形例のように、ガイドワイヤ150のカバー部160は、カーブ部35の遠位側に、傾斜部161を備えてもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
傾斜部161は、カーブ部35の遠位側に設けられる。傾斜部161の遠位側の端部は、カバー部160の中心軸に対して傾斜している。カーブ部35が直線状に変形した状態において、カバー部160の中心軸に対する傾斜部161の傾斜方向は、穿刺部15の中心軸に対する傾斜面18の傾斜方向と一致することが好ましいが、一致しなくてもよい。カバー部160の中心軸に対する傾斜部161の傾斜角度α4は、穿刺部15の中心軸に対する傾斜面18の傾斜角度α1よりも大きい。したがって、傾斜部161の端部は、針部16のような穿刺能力はない。傾斜部161は、ろう付けして隣接する線材31の間の隙間を埋めるか、または線材31同士を接触させて溶接された後、傾斜するように切断され、外縁部が曲面加工されて滑らかに形成されている。
ガイドワイヤ150がダイレータ40等の長尺体の内部に位置すると、カバー部160は、直線状に変形する。この状態で、ガイドワイヤ150をダイレータ40に対して遠位側へ移動させ、ガイドワイヤ150の遠位端が生体組織に接触すると、ガイドワイヤ150の最遠位に位置するカバー部160の遠位端に、近位側へ向かう力が作用する。これにより、図15(A)に示すように、疎ピッチ部33の線材31の間の隙間が減少し、疎ピッチ部33が軸方向に収縮する。これにより、カバー部160の密ピッチ部34およびカーブ部35が近位側へ移動し、カバー部160に収容されている穿刺部15の針部16が露出する。このとき、穿刺部15の近位部は、隣り合う線材31同士が固定されているカバー部160の傾斜部161に囲まれている。このため、穿刺部15は、剛性の高い傾斜部161によって支持されて姿勢が安定する。したがって、ガイドワイヤ150は、穿刺部15によって生体組織に孔を円滑に形成できる。
収縮したカバー部160は、穿刺部15に続いて、穿刺部15が形成した孔に押し込まれる。カバー部160の遠位端に傾斜部161が設けられているため、カバー部160は、小さい力で円滑に生体組織の孔を通過できる。このとき、収縮した状態のカバー部160の傾斜部161の遠位端が、穿刺部15の傾斜面18の近位端と一致、または近位端よりも近位側に位置する。これにより、傾斜部161は、穿刺部15の傾斜面18が生体組織を通過した後に、生体組織に到達する。このため、カバー部160は、小さい力で円滑に、生体組織の孔を押し広げることができる。また、傾斜部161の傾斜方向が傾斜面18の傾斜方向と一致するため、カバー部160は、穿刺部15によって形成された生体組織の孔を、円滑に大きく押し広げることができる。針部16に続いてカバー部160の遠位端が生体組織の孔を通過すると、疎ピッチ部33が自己の復元力によって軸方向へ拡張する。これにより、カバー部160が針部16を覆い、曲がった形状に復元する。このため、ガイドワイヤ150は、カーブ部35を有するカバー部160によって、穿刺を行う針部16による誤穿刺を抑制できる。なお、図15(B)に示す第6の変形例のように、収縮した状態のカバー部160の傾斜部161の遠位端が、穿刺部15の傾斜面18の遠位端よりも近位側であって、近位端よりも遠位側に位置してもよい。この場合、鋭利な針部16のカバー部160からの露出量を抑え、収縮したカバー部160が再び針部16を完全に覆うまでの移動距離を短縮でき、安全性が向上する。なお、カバー部160の傾斜部161は、線材31により形成されているが、傾斜部は、例えば別部材を線材31に固定して形成されてもよい。
また、図16(A)に示す第7の変形例のように、ガイドワイヤ170のカバー部180は、第1のストッパー181と第2のストッパー182を備えてもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
カバー部180は、疎ピッチ部33の内周面に、穿刺部185の近位端と接する少なくとも1つの第1のストッパー181を有している。第1のストッパー181は、穿刺部185が第1のストッパー181よりも近位側へ移動することを制限する。このため、例えばガイドワイヤ170を体外に抜去する際などに、カバー部180が遠位側へ引っ張られると、第1のストッパー181が穿刺部185の近位端に接触する。このため、カバー部180の線材31のピッチ間距離が広くなり過ぎることを抑制できる。したがって、線材31の隙間から針部16が突出することを抑制できるとともに、カバー部180がガイドワイヤ170から脱落することを抑制でき、高い安全性を得られる。
カバー部180は、遠位端に、内径が減少する第2のストッパー182を有している。第2のストッパー182は、図16(B)に示すように、カバー部180が収縮した際に、穿刺部185の全体が第2のストッパー182よりも遠位側へ移動することを制限する。このため、万一、穿刺部185とシャフト部11の針固定部19による固定が外れた場合であっても、穿刺部185がカバー部180内に保持され、体内に残留することを抑制できる。
穿刺部185の近位部は、スパイラルカットが施され、螺旋状に形成されている。これにより、穿刺部185の近位部が柔軟となり、曲がりやすい。このため、軸方向における穿刺部185とシャフト部11の間で、曲げ剛性が滑らかに変化し、キンクが生じ難くなる。なお、穿刺部の近位部を柔軟にするために、スパイラルカットを施すのではなく、柔軟なチューブを接続してもよい。
また、図17(A)に示す第8の変形例のように、ガイドワイヤ190のカバー部200は、疎ピッチ部201と、疎ピッチ部201よりも遠位側の密ピッチ部202と、密ピッチ部202よりも遠位側の遠位パイプ203とを備えてもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
疎ピッチ部201は、密ピッチ部202よりも螺旋のピッチ間距離が長い。カバー部200の近位側、すなわち疎ピッチ部201の近位端が、シャフト部11に対して固定されている。疎ピッチ部201は、軸方向に並ぶ線材31の間の隙間が減少するように軸方向へ収縮可能である。疎ピッチ部201および密ピッチ部202は、シャフト部11の一部を囲んでいる。密ピッチ部202の内径は、穿刺部15の外径よりも小さい。密ピッチ部202の遠位端は、内周面に段差を有し、この段差が、穿刺部15の近位端と接する第1のストッパー204である。第1のストッパー204は、穿刺部15が第1のストッパー204よりも近位側へ移動することを制限する。遠位パイプ203は、密ピッチ部202の遠位部に固定された円管である。遠位パイプ203は、遠位側に曲がったカーブ部206を有している。遠位パイプ203は、柔軟であって弾性的に変形可能な管状部材である。遠位パイプ203は、疎ピッチ部201および密ピッチ部202よりも曲げ剛性が高い。遠位パイプ203は、穿刺部15と、シャフト部11の一部を囲んでいる。遠位パイプ203の外径は、密ピッチ部202の外径と略同一である。遠位パイプ203の内径は、密ピッチ部202の内径よりも大きく、かつ穿刺部15の外径よりも大きい。したがって、遠位パイプ203は、密ピッチ部202よりも薄い。遠位パイプ203は、遠位部の内周面に、径方向内側へ突出する第2のストッパー205を有している。第2のストッパー205は、周方向において、穿刺部15の針部16が設けられる位置と反対側に位置している。穿刺部15は、遠位部の内周面に、遠位端から近位方向へ延びる溝部15Aを有している。溝部15Aは、第2のストッパー205の近位側に位置している。溝部15Aには、遠位側から第2のストッパー205が入り込むことができる。
ガイドワイヤ190を体外に抜去する際などに、カバー部200が遠位側へ引っ張られると、図17(A)に示すように、第1のストッパー204が穿刺部15の近位端に接触する。このため、カバー部200の線材31のピッチ間距離が広くなり過ぎることを抑制できる。したがって、線材31の隙間から針部16が突出することを抑制できるとともに、カバー部200がガイドワイヤ190から脱落することを抑制でき、高い安全性を得られる。また、遠位パイプ203が薄いため、穿刺部15の外径を大きくでき、穿刺部15によって生体組織に孔を大きく形成できる。また、遠位パイプ203が薄いため、穿刺部15により穿刺した後、遠位パイプ203を小さい抵抗で円滑に生体組織の孔へ挿入できる。カバー部200が収縮して穿刺部15の針部16が遠位パイプ203から突出すると、図17(B)に示すように、第2のストッパー205が、溝部15Aに入り込む。第2のストッパー205は、溝部15Aの最も近位側に到達すると、溝部15Aの端面に突き当たる。これにより、カバー部200が穿刺部15に対して後退しすぎることを抑制し、カバー部200および穿刺部15の適切な位置関係を維持できる。このため、カバー部200を穿刺部15に対して望ましい位置に維持しつつ、生体組織を穿刺できる。
また、図18に示す第9の変形例のように、ガイドワイヤ210は、穿刺部15の傾斜面18よりも突出する針固定部211を備えてもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
シャフト遠位部14の遠位端は、穿刺部15の内周面に、針固定部211によって溶接や接着等によって固定されている。針固定部211は、穿刺部15の傾斜面18が位置する面よりも外側へ突出している。すなわち、針固定部211は、貫通孔17の傾斜面18における開口部のリング状の内縁部17Aが位置する面Mよりも外側へ突出している。針固定部211は、針部16の遠位端よりも近位側に位置している。針固定部211の傾斜面18よりも突出している突出部212の表面の形状は、特に限定されないが、角を有さず滑らかであることが好ましい。突出部212を含む針固定部211は、穿刺部15の貫通孔17を塞がないように設けられる。
ガイドワイヤ210をダイレータ40から突出させ、ガイドワイヤ210の遠位端が生体組織に接触すると、ガイドワイヤ210の最遠位に位置するカバー部30の遠位端に、近位側へ向かう力が作用する。これにより、疎ピッチ部33の線材31の間の隙間が減少し、疎ピッチ部33が軸方向に収縮する。これにより、カバー部30の密ピッチ部34およびカーブ部35が近位側へ移動し、カバー部30から針部16が露出する。カバー部30から露出した針部16は、生体組織に孔を形成する。このとき、針固定部211の突出部212は、穿刺部15の傾斜面18が位置する面から外側へ突出している。このため、穿刺部15が生体組織の孔を通過する際に、突出部212が、針部16により形成された孔を大きく押し広げる。このため、穿刺部15に続いてカバー部30の遠位端が生体組織の孔を拡げつつ通過する際の抵抗が減少する。したがって、カバー部30の遠位端が、生体組織の孔を小さな抵抗で大きく拡げつつ円滑に通過できる。針固定部211の傾斜面18から突出している突出部212の表面が、角を有さず滑らかであれば、突出部212は、針部16により形成された孔をより円滑に押し広げることができる。したがって、カバー部30の遠位端は、生体組織の孔をより円滑に通過できる。なお、図19に示す第10の変形例のように、突出部231は、ガイドワイヤ220のシャフト部230の遠位部の一部であってもよい。突出部231は、穿刺部15の内周面に、溶接や接着等によって固定されている。突出部231は、穿刺部15の傾斜面18が位置する面から外側へ突出している。なお、傾斜面18よりも外側へ突出している突出部は、シャフト部11と穿刺部15を連結する部位に設けられなくてもよい。例えば、突出部は、穿刺部15の一部であってもよい。
また、図20に示す第11の変形例のように、ガイドワイヤ240は、第1のマーカー241、242および第2のマーカー251を備えてもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第1のマーカー241、242は、生体内に挿入されたカバー部30の位置をX線を用いて視覚で把握するためのマーカーである。第1のマーカー241は、シャフト部250のカバー部30の近位端が固定されている位置に巻回されたX線造影性材料を含む線材である。第1のマーカー242は、カバー部30の曲がっているカーブ部35よりも遠位側に固定されたX線造影性材料をリング状の部材である。X線造影性材料は、例えば、金、白金、イリジウム、タングステンあるいはそれらの合金、銀-パラジウム合金からなる群のうち少なくともいずれか1つの金属もしくは2つ以上の合金から形成されたものが好適である。第1のマーカー241が設けられることで、操作者は、X線透視下でカバー部30の生体内での位置を容易に把握できる。なお、第1のマーカー241が設けられる位置は、カバー部30の近位端に限定されない。また、第1のマーカー242がカバー部30のカーブ部35よりも遠位側に設けられることで、操作者は、X線透視下で、針部16に対して相対的に動くカバー部30の位置を容易に把握できる。このため、操作者は、カバー部30が針部16を覆っているか否かを容易に認識して、穿刺の状況を容易に把握できる。なお、第1のマーカー242が設けられる位置は、カバー部30のカーブ部35よりも遠位側に限定されず、例えばカーブ部35であってもよい。第2のマーカー251は、シャフト部250の近位部の表面に一定の間隔で設けられる目盛である。第2のマーカー251が設けられることで、操作者は、ダイレータ40やインサータ60に対するガイドワイヤ240の移動距離を、手元で視認できる。このため、操作者は、穿刺部15の押し込み距離を把握して、穿刺の状況(例えば、穿刺が完了したことなど)を容易に把握できる。また、第1のマーカー241、242および第2のマーカー251の両方が設けられることで、第2のマーカー251によって穿刺部15の押し込み距離を調節しつつ、第1のマーカー241、242によって穿刺の状況を確認できる。
また、図21に示す第12の変形例のように、ガイドワイヤ260のシャフト部270がカーブ部271を有し、カバー部280が直線状であってもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
シャフト部270の遠位端は、穿刺部15に対して針固定部19で固定されている。カーブ部271は、シャフト部270の遠位側へ向かって縮径するシャフト縮径部272に設けられる。なお、カーブ部271が設けられる位置は、シャフト縮径部272に限定されず、例えば外径が均一の部位であってもよい。カーブ部271は、シャフト部270の直線状の部分からシャフト部270の遠位端まで位置する。カーブ部271は、シャフト部270の直線状の部分からシャフト部270の遠位端までの間の一部であってもよい。その場合、カーブ部271はシャフト部270の直線状の部分によって挟まれて位置する。また、カーブ部271は、カーブ部271より近位側のシャフト部270の直線状の部分と、カーブ部271よりも遠位側のカバー部280の近位部によって挟まれて位置してもよい。カバー部280は、螺旋のピッチ間距離が長い疎ピッチ部281を有している。疎ピッチ部281は、隙間を有して隣接しつつ螺旋を描く線材31により形成されている。カバー部280は、カバー部280の近位端に位置する固定部282により、穿刺部15の近位部に固定されている。なお、カバー部280の近位端は、固定部282よりも近位側に位置してもよい。
ガイドワイヤ260は、カーブ部271を直線状に変形させた状態で、ダイレータ40に収容される。ガイドワイヤ260がダイレータ40の内部で遠位側へ移動すると、ガイドワイヤ260の遠位端が生体組織に接触する。このため、ガイドワイヤ260の最遠位に位置するカバー部280の遠位端に、近位側へ向かう力が作用する。これにより、疎ピッチ部281の線材31の間の隙間が減少し、疎ピッチ部281が軸方向に収縮する。これにより、カバー部280の遠位部が近位側へ移動し、カバー部280から針部16が露出する。カバー部280から露出した針部16は、生体組織に孔を形成する。針部16に続いてカバー部280の遠位端が生体組織の孔を通過すると、疎ピッチ部281が自己の復元力によって軸方向へ拡張する。これにより、カバー部280が針部16を覆う。
第12の変形例におけるカバー部280は、穿刺部15に固定されている。すなわち、カバー部280は、シャフト部270に固定される場合よりも、遠位側で固定されている。このため、カバー部280の遠位端が生体組織の孔を通過した後、疎ピッチ部281が自己の復元力によって軸方向へ拡張しやすい。このため、カバー部280は、針部16を良好に覆うことができる。また、カバー部280は、カーブ部271よりも遠位側に位置している。このため、カバー部280は、カーブ部271の外側を摺動する必要がない。したがって、カバー部280は、軸方向へ収縮および拡張しやすい。このため、カバー部280は、針部16を円滑に露出させ、かつ円滑に収容できる。さらに、シャフト部270のカーブ部271が、ダイレータ40から突出して生体組織の孔を通過すると、曲がった形状に復元する。このため、ガイドワイヤ260の遠位端が、生体組織に突き当たり難くなる。したがって、ガイドワイヤ260は、カーブ部271によって、針部16による誤穿刺を抑制できる。また、カバー部280は、シャフト部270の遠位側の穿刺部15に固定されている。このため、カバー部280に阻害されずに、穿刺部15の貫通孔17へ流体を流通させることが容易である。これにより、貫通孔17を介して、造影剤や血液を良好に流通させることができる。
また、図22に示す第13の変形例のように、ガイドワイヤ290のシャフト部270がカーブ部271を有し、かつ、カバー部300が第2のカーブ部302を有してもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
カバー部300は、螺旋のピッチ間距離が長い疎ピッチ部301と、疎ピッチ部301よりも遠位側に位置する第2のカーブ部302とを有している。疎ピッチ部301は、隙間を有して隣接しつつ螺旋を描く線材31により形成されている。第2のカーブ部302は、螺旋を描く線材31により、全体として曲がった筒形状に形成されている。カバー部300は、カバー部300の近位端に位置する固定部303により、穿刺部15の近位部に固定されている。なお、カバー部300の近位端は、固定部303よりも近位側に位置してもよい。
ガイドワイヤ290は、カーブ部271および第2のカーブ部302を直線状に変形させた状態で、ダイレータ40に収容される。ガイドワイヤ290がダイレータ40の内部で遠位側へ移動すると、ガイドワイヤ290の遠位端が生体組織に接触する。このため、ガイドワイヤ290の最遠位に位置するカバー部300の遠位端に、近位側へ向かう力が作用する。これにより、疎ピッチ部301の線材31の間の隙間が減少し、疎ピッチ部301が軸方向に収縮する。これにより、カバー部300の遠位部が近位側へ移動し、カバー部300から針部16が露出する。カバー部300から露出した針部16は、生体組織に孔を形成する。針部16に続いてカバー部300の遠位端が生体組織の孔を通過すると、疎ピッチ部301が自己の復元力によって軸方向へ拡張する。これにより、カバー部300が針部16を覆う。
第13の変形例におけるカバー部300は、穿刺部15に固定されている。すなわち、カバー部300は、シャフト部270に固定される場合よりも、遠位側で固定されている。このため、カバー部300の遠位端が生体組織の孔を通過した後、疎ピッチ部301が自己の復元力によって軸方向へ拡張しやすい。このため、カバー部300は、針部16を良好に覆うことができる。また、カバー部300は、カーブ部271よりも遠位側に位置している。このため、カバー部300は、カーブ部271の外側を摺動する必要がない。したがって、カバー部300は、軸方向へ収縮および拡張しやすい。このため、カバー部300は、針部16を円滑に露出させ、かつ円滑に収容できる。さらに、シャフト部270のカーブ部271およびカバー部300の第2のカーブ部302が、ダイレータ40から突出して生体組織の孔を通過すると、曲がった形状に復元する。このため、ガイドワイヤ290の遠位端が、生体組織に突き当たり難くなる。したがって、ガイドワイヤ290は、カーブ部271および第2のカーブ部302によって、針部16による誤穿刺を抑制できる。ガイドワイヤ290は、シャフト部270およびカバー部300の両方が曲がっているため、効果的に、針部16による誤穿刺を抑制できる。また、カバー部300は、シャフト部270の遠位側の穿刺部15に固定されている。このため、カバー部300に阻害されずに、貫通孔17へ流体を流通させることが容易である。これにより、貫通孔17を介して、造影剤や血液を良好に流通させることができる。
また、図23に示す第14の変形例のように、ガイドワイヤ310のシャフト部270がカーブ部271を有し、カバー部320が直線状であってもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
カバー部320は、穿刺部15を突出可能に収容する。カバー部320は、螺旋のピッチ間距離が長い疎ピッチ部321と、近位テーパ部322とを有している。疎ピッチ部321は、隙間を有して隣接しつつ螺旋を描く線材31により形成されている。近位テーパ部322は、疎ピッチ部321の近位側に位置している。近位テーパ部322は、近位側へ向かってテーパ状に縮径している。カバー部320は、近位テーパ部322の近位端に位置する固定部323により、シャフト部270に固定されている。なお、カバー部320の近位部は、テーパ状に形成されなくてもよい。
ガイドワイヤ310は、カーブ部271を直線状に変形させた状態で、ダイレータ40に収容される。ガイドワイヤ310がダイレータ40の内部で遠位側へ移動すると、ガイドワイヤ310の遠位端が生体組織に接触する。このため、ガイドワイヤ310の最遠位に位置するカバー部320の遠位端に、近位側へ向かう力が作用する。これにより、疎ピッチ部321の線材31の間の隙間が減少し、疎ピッチ部321が軸方向に収縮する。これにより、カバー部320の遠位部が近位側へ移動し、カバー部320から針部16が露出する。カバー部320から露出した針部16は、生体組織に孔を形成する。針部16に続いてカバー部320の遠位端が生体組織の孔を通過すると、疎ピッチ部321が自己の復元力によって軸方向へ拡張する。これにより、カバー部320が針部16を覆う。
第14の変形例におけるカバー部320は、シャフト部270に固定されている。すなわち、カバー部320は、穿刺部15に固定される場合よりも、近位側で固定されている。このため、カバー部320は、軸方向の長さを長くでき、伸縮する距離を長く設定できる。したがって、カバー部320は、針部16よりも遠位側に長く形成できる。したがって、カバー部320は、針部16の意図しない露出を抑制し、針部16を安全かつ良好に覆うことができる。また、シャフト部270のカーブ部271が、ダイレータ40から突出して生体組織の孔を通過すると、曲がった形状に復元する。このため、ガイドワイヤ310の遠位端が、生体組織に突き当たり難くなる。したがって、ガイドワイヤ310は、シャフト部270のカーブ部271によって、針部16による誤穿刺を抑制できる。また、カバー部320は、シャフト部270に固定されていることによって、穿刺部15の近位端とシャフト部270の間の剛性が大きく変化する部位を囲んでいる。このため、カバー部320は、ガイドワイヤ310の遠位部の剛性の変化を小さくすることができ、ガイドワイヤ310を押し込む力を針部16に伝えやすい。
なお、第14の変形例のカバー部320の遠位部は、第13の変形例のカバー部300の遠位部のように、第2のカーブ部が設けられてもよい。
また、図24に示す第15の変形例のように、ガイドワイヤ410のシャフト部420に設けられるカーブ部422の曲がる角度は、90度未満であってもよい。
ガイドワイヤ410は、カーブ部422を備えるシャフト部420と、第2のカーブ部335を備えるカバー部330とを有してもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
カバー部330は、螺旋のピッチ間距離が長い疎ピッチ部331と、螺旋のピッチ間距離が短い密ピッチ部332と、近位テーパ部333とを有している。密ピッチ部332は、疎ピッチ部331の近位側に位置している。近位テーパ部333は、密ピッチ部332の近位側に位置している。近位テーパ部333は、近位側へ向かってテーパ状に縮径している。疎ピッチ部331は、ガイドワイヤ410の軸方向に収縮可能である。密ピッチ部332は、縮径しているシャフト部420を囲むことで、ガイドワイヤ410に高い押し込み性を提供する。カバー部330は、近位テーパ部333の近位端に位置する固定部334により、シャフト部420に固定されている。なお、カバー部330の近位部は、テーパ状に形成されなくてもよい。カバー部330は、密ピッチ部332に、第2のカーブ部335を備えている。第2のカーブ部335の曲がる方向は、カーブ部422の曲がる方向と一致する。
第15の変形例では、穿刺部15が生体組織(卵円窩O)を貫通した直後、図25(A)に示すように、カーブ部422が生体組織を貫通する前に、カバー部330が軸方向へ拡張して自動的に穿刺部15を覆う。このため、生体内で穿刺部15が剥き出している時間を少なくでき、安全性が向上する。また、図25(B)に示すように、カーブ部422が生体組織を貫通後、シャフト部420の遠位部が90度未満で自動的に曲がる。このため、カバー部330の遠位端は、例えば左心房の壁面のような穿刺すべきでない生体組織に当接する場合に、穿刺部15が穿刺すべきでない生体組織に向かないように力を逃がすことができる。また、例えば左心房側の貫通した生体組織(卵円窩Oがある心房中隔)の面へ、穿刺部15が向かないようにすることができる。これにより、穿刺部15による心房中隔等の損傷を抑制できる。また、シャフト部420が90度未満で曲がっているため、ガイドワイヤ410を手元で操作することで、カバー部330の遠位端の向きを調節しやすい。このため、生体組織を穿刺後、カバー部330の遠位端を、任意の方向へ向けることができる。したがって、ガイドワイヤ410は、他のデバイスに先行して狙った血管へアクセスする機能を向上できる。また、カーブ部422の遠位端は、穿刺部15の近位側に位置する。このため、カバー部330が、カーブ部422の曲がりに影響されずに、軸方向へ伸縮できる。したがって、カバー部330は、穿刺部15を円滑に覆うことができる。カーブ部422は、シャフト部420の直線状の部分からシャフト部420の遠位端までの間の一部であってもよい。その場合、カーブ部422は、シャフト部420の直線状の部分によって挟まれて位置する。
なお、図26に示すように、第15の変形例のシャフト部420は、カーブ部422および第2のカーブ部335よりも近位側に、第3のカーブ部423を有してもよい。第3のカーブ部423は、カバー部330よりも近位側に位置している。第3のカーブ部423の曲がる方向は、カーブ部422および第2のカーブ部335の曲がる方向と一致する。第3のカーブ部423は、ダイレータ40のダイレータ曲げ部46(図1を参照)と略一致する角度および位置に設けられる。第3のカーブ部423は、例えば、ガイドワイヤ410の遠位端から近位側に100mm程度の位置に設けられる。ガイドワイヤ410は、ダイレータ曲げ部46に対応する第3のカーブ部423が設けられることで、ダイレータ40の内部で、押し込み力を遠位側へ効果的に伝達できる。このため、ガイドワイヤ410は、インサータ60を使用せずに、ダイレータ40へ直接的に挿入されて使用されてもよい。
また、図27に示す第16の変形例のように、ガイドワイヤ350は、塑性変形しやすいカーブ部361を備えるシャフト部360と、第2のカーブ部374を備えるカバー部370とを有してもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
シャフト部360は、塑性変形しやすいカーブ部361を有している。カーブ部361は、シャフト部360の遠位部の一部に設けられる。カーブ部361は、操作者が適宜曲げることで、状況に応じて適切に曲がった状態となることができる。なお、カーブ部361は、操作者によって曲げられなくてもよい。カーブ部361は、例えば、NiTi等の超弾性合金(形状記憶合金)からなる線材の全体に、熱処理を施して超弾性を付与した後、部分的に焼きなますことで形成できる。なお、シャフト部360のカーブ部361が設けられる位置は、特に限定されない。また、カバー部370が、塑性変形しやすいカーブ部を部分的に有してもよい。
カバー部370は、近位テーパ部375と、近位テーパ部375の遠位側に位置する第1の疎ピッチ部371と、疎ピッチ部371の遠位側に位置する密ピッチ部372と、密ピッチ部372の遠位側に位置する第2の疎ピッチ部373とを有している。第1の疎ピッチ部371および第2の疎ピッチ部373は、隙間を有して隣接しつつ螺旋を描く線材31により形成されている。近位テーパ部375は、第1の疎ピッチ部371から近位側へ向かってテーパ状に縮径している。第1の疎ピッチ部371は、穿刺部15よりも近位側に位置している。密ピッチ部372は、螺旋のピッチ間距離が第1の疎ピッチ部371および第2の疎ピッチ部373よりも短い。第2の疎ピッチ部373は、穿刺部15の少なくとも一部を囲んでいる。カバー部370は、近位テーパ部375の近位端に位置する第1の固定部377により、シャフト部360に固定されている。カバー部370は、さらに、密ピッチ部372の近位部に位置する第2の固定部376により、穿刺部15の近位部に固定されている。第2の疎ピッチ部373は、第2のカーブ部374を有している。
ガイドワイヤ350は、生体管腔内で操作しやすいように、操作者によりカーブ部361を適宜塑性変形されて使用される。ガイドワイヤ350は、曲げられたカーブ部361および第2のカーブ部374を直線状に弾性的に変形させた状態で、ダイレータ40に収容される。ガイドワイヤ350がダイレータ40の内部で遠位側へ移動し、ガイドワイヤ350の遠位端が生体組織に接触すると、ガイドワイヤ350の最遠位に位置するカバー部370の遠位端に、近位側へ向かう力が作用する。これにより、第2の疎ピッチ部373の線材31の間の隙間が減少し、第2の疎ピッチ部373が軸方向に収縮する。これにより、カバー部370の遠位部が近位側へ移動し、カバー部370から針部16が露出する。カバー部370から露出した針部16は、生体組織に孔を形成する。針部16に続いてカバー部370の遠位端が生体組織の孔を通過すると、第2の疎ピッチ部373が自己の復元力によって軸方向へ拡張する。これにより、カバー部370が針部16を覆う。なお、第1の疎ピッチ部371の遠位側に第2の固定部376が設けられるため、第1の疎ピッチ部371は収縮しない。カバー部370は、穿刺部15の近位側に、収縮しない第1の疎ピッチ部371を備えるため、第1の疎ピッチ部371の広い隙間を介して、貫通孔17へ流体を流通させることが容易である。これにより、貫通孔17を介して、造影剤や血液を良好に流通させることができる。カーブ部361および第2のカーブ部374が、ダイレータ40から突出して生体組織の孔を通過すると、曲がった形状に復元する。このため、ガイドワイヤ350の遠位端が、生体組織に突き当たり難くなる。したがって、ガイドワイヤ350は、カーブ部361および第2のカーブ部374によって、針部16による誤穿刺を抑制できる。ガイドワイヤ350は、カーブ部361およびカバー部370の両方が曲がっているため、効果的に、針部16による誤穿刺を抑制できる。
また、図28(A)に示す第17の変形例のように、穿刺部380が、穿刺カーブ部381で曲がっていてもよい。穿刺カーブ部381が曲がる方向は、カバー部370の第2のカーブ部374が曲がる方向と一致し、かつ、傾斜面18において鋭利な針部16が位置する方向と一致する。このため、針部16がカバー部370の第2のカーブ部374の内部を遠位側へ移動する際に、針部16が第2のカーブ部374の内周面と接触することを抑制できる。このため、針部16が意図せずに第2のカーブ部374から突出して生体組織を傷つけることを抑制でき、安全性が向上する。また、穿刺カーブ部381が設けられることで、第2のカーブ部374の内部を移動可能な穿刺部380の軸方向の全長が長くなる。このため、長い穿刺部380により、厚い生体組織を穿刺できる。また、穿刺部380が長くなることで、カバー部370に溶接等によって接合される第2の固定部376から針部16までの長さを、長く確保できる。これにより、カバー部370の収縮可能な第2の疎ピッチ部373の軸方向の長さを長く確保できる。このため、カバー部370が、穿刺部380を良好に収容でき、安全性が向上する。
また、図28(B)に示す第18の変形例のように、穿刺部390が、近位端に、傾斜した近位傾斜面391を有してもよい。近位傾斜面391の近位側へ突出する凸部392の位置は、傾斜面18の針部16が設けられる位置と、軸方向に重なる。したがって、穿刺部390の軸方向に最も長い部位(凸部392から針部16まで延在する部位)が、カバー部370の第2のカーブ部374が曲がる方向側に位置する。このため、第2のカーブ部374の内部を移動可能な穿刺部390の軸方向の全長が長くなる。したがって、長い穿刺部390により、厚い生体組織を穿刺できる。また、穿刺部390が長くなることで、カバー部370に溶接等によって接合される第2の固定部376から針部16までの長さを、長く確保できる。これにより、カバー部370が、収縮可能な長さを長く確保でき、穿刺部380を良好に収容できる。
また、図28(C)に示す第19の変形例のように、穿刺部400が、近位側の端面に、360度にわたって面取りされた面取り部401を有してもよい。これにより、第2のカーブ部374の内部を移動可能な穿刺部400の軸方向の全長が長くなる。したがって、長い穿刺部400により、厚い生体組織を穿刺できる。また、穿刺部400が長くなることで、カバー部370に溶接等によって接合される第2の固定部376から針部16までの長さを、長く確保できる。これにより、カバー部370が、収縮可能な長さを長く確保でき、穿刺部380を良好に収容できる。
また、図29に示す第20の変形例のように、ガイドワイヤ430は、使用中に任意に曲げられる構造を有してもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
穿刺部15は、シャフト部11の遠位部に、針固定部19によって固定されている。カバー部440は、遠位側の疎ピッチ部441と、近位側の密ピッチ部442とを有している。カバー部440は、疎ピッチ部441と密ピッチ部442の境界の近傍に位置する第2の固定部443により、穿刺部15の近位部に固定されている。疎ピッチ部441は、隙間を有して隣接しつつ螺旋を描く線材31により形成されている。疎ピッチ部441は、穿刺部15を囲み、穿刺部15よりも遠位側へ延在している。密ピッチ部442は、疎ピッチ部441の近位側に位置している。密ピッチ部442は、隙間なく隣接して螺旋を描く線材31により形成されている。密ピッチ部442の近位端は、シャフト部11の近位端よりも遠位側に位置している。密ピッチ部442の近位部の外周面には、径方向の外側へ突出する凸部444が固定されている。凸部444は、例えばリング状または筒状の部材である。凸部444は、カバー部440に取り外し不能に固定されている。なお、凸部444は、カバー部440に着脱可能に固定されてもよい。シャフト部11の凸部444よりも近位側の部位は、カバー部440に覆われずに露出する把持部445である。
ガイドワイヤ430は、外シース50、ダイレータ40およびインサータ60を組み合わせた組立体に挿入して使用される。ガイドワイヤ430が組立体の内部で遠位側へ移動し、ガイドワイヤ430の遠位端が生体組織に接触すると、ガイドワイヤ430の最遠位に位置するカバー部440の遠位端に、近位側へ向かう力が作用する。これにより、疎ピッチ部441の線材31の間の隙間が減少し、疎ピッチ部441が軸方向に収縮する。これにより、カバー部440の遠位部が近位側へ移動し、カバー部440から針部16が露出する。カバー部440から露出した針部16は、生体組織に孔を形成する。針部16に続いてカバー部440の遠位端が生体組織の孔を通過すると、図29(A)に示すように、疎ピッチ部441が自己の復元力によって軸方向へ拡張する。これにより、カバー部440が針部16を覆う。
さらに、シャフト部11を押し込むと、凸部44が、インサータ60に突き当たる。これにより、凸部44および凸部44に固定されているカバー部440の遠位側への移動が制限される。さらに、把持部445を把持してシャフト部11を遠位側へ押し込むと、図29(B)に示すように、遠位側への移動が制限されている凸部44およびカバー部440に対して、シャフト部11が遠位側へ移動する。シャフト部11が遠位側へ移動すると、シャフト部11の遠位部に針固定部19で固定されている穿刺部15に、遠位側へ向かう力が作用する。穿刺部15は、第2の固定部443によりカバー部440に固定されている。このため、凸部44に固定されているために遠位側への移動が制限されているカバー部440の遠位部に、近位側へ向かう力が作用する。密ピッチ部442は、引っ張り力が作用し、ピッチ間距離が広がる。なお、密ピッチ部442のピッチ間距離は広がらなくてもよい。カバー部440の遠位部に、近位側へ向かう力が作用すると、カバー部440のダイレータ40から遠位側へ突出している遠位部は、いずれかの方向へ曲がる。このとき、カバー部440の内部に位置するシャフト部11も、カバー部440とともに曲がる。したがって、第20の変形例に係るガイドワイヤ430は、カバー部440に対してシャフト部11を移動させることで、任意に曲げることができる。このため、ガイドワイヤ430は、手元での操作により、針部16による誤穿刺を抑制できる。なお、シャフト部11の遠位部は、穿刺部15を介してカバー部440に固定されているが、カバー部440に対して直接的に固定されてもよい。
また、穿刺部は、中空ではなく中実であってもよい。また、穿刺部は、周方向へ非連続の部材であり、C字状の断面形状を有してもよい。穿刺部は、例えば板材をプレス加工することで容易に形成できる。穿刺部は、シャフト部に対して溶接や接着等によって固定されても、シャフト部と一体的に形成されてもよい。
上記の各実施形態の特徴をまとめると、以下の通りである。
第1の実施形態に係るガイドワイヤ10は、カバー部30の遠位部にカーブ部35が設けられている。カバー部30は、遠位側に密ピッチ部34、近位側に疎ピッチ部33を有している。カバー部30は、近位端でシャフト部11に固定されている(図1~9を参照)。
第1の変形例に係るガイドワイヤ80は、カバー部81の近位部に密ピッチ部82が設けられ、密ピッチ部82に、流通孔84が形成されている(図10を参照)。第2の変形例に係るガイドワイヤ90は、管状部材であるカーブ部92を有している(図11を参照)。第3の変形例に係るガイドワイヤ110は、管状部材であるカバー部111にスリット113が形成されている(図12を参照)。カバー部111は、スリット113が設けられることで、径方向外側へ拡張可能である。
第4の変形例に係るガイドワイヤ130は、カバー部140のカーブ部35よりも遠位側に、円管である遠位パイプ141を有している(図13を参照)。第5、第6の変形例に係るガイドワイヤ150は、カバー部160の遠位端に、傾斜部161が形成されている(図14、15を参照)。
第7の変形例に係るガイドワイヤ170は、第1のストッパー181と第2のストッパー182を有している(図16を参照)。第1のストッパー181は、穿刺部185の近位側への移動を制限する。第2のストッパー182は、穿刺部185の遠位側への移動を制限する。穿刺部185の近位部は、スパイラルカットが施されている。第8の変形例に係るガイドワイヤ190は、第1のストッパー204と第2のストッパー205を有している(図17を参照)。第1のストッパー204は、穿刺部15の近位側への移動を制限する。第2のストッパー205は、穿刺部15の遠位側への移動を制限する。
第9、10の変形例に係るガイドワイヤ210、220は、穿刺部15の傾斜面18よりも外側へ突出する突出部212、231を有している(図18、19を参照)。第11の変形例に係るガイドワイヤ240は、X線造影性の第1のマーカー241、242と、手元の目盛である第2のマーカー251を有している(図20を参照)。
第12の変形例に係るガイドワイヤ260は、カーブ部271が形成されるシャフト部270と、カーブ部271よりも遠位側に設けられる直線状のカバー部280とを有している(図21を参照)。カバー部280は、穿刺部15に固定されている。第13の変形例に係るガイドワイヤ290は、カーブ部271が形成されるシャフト部270と、カーブ部271よりも遠位側に設けられて第2のカーブ部302が形成されるカバー部300とを有している(図22を参照)。第14の変形例に係るガイドワイヤ310は、カーブ部271が形成されるシャフト部270と、カーブ部271よりも遠位側に設けられる直線状のカバー部320とを有している(図23を参照)。カバー部320は、穿刺部15ではなくシャフト部270に固定されている。
第15の変形例に係るガイドワイヤ410は、90度未満で曲がるカーブ部422が形成されるシャフト部420と、第2のカーブ部335が形成されるカバー部330とを有している(図24、25を参照)。第2のカーブ部335は、カーブ部422を囲んでいる。カバー部330は、穿刺部15およびシャフト部420の両方に固定されている。シャフト部420は、ダイレータ曲げ部46に対応する第3のカーブ部423が設けられてもよい(図26を参照)。
第16の変形例に係るガイドワイヤ350は、塑性変形しやすいカーブ部361を備えるシャフト部360と、第2のカーブ部374を備えるカバー部370とを有している(図27を参照)。術者は、カーブ部361を任意に曲げることができる。
第17の変形例に係るガイドワイヤは、穿刺カーブ部381が形成された穿刺部380を有している(図28(A)を参照)。第18の変形例に係るガイドワイヤは、近位端に近位傾斜面391が形成された穿刺部390を有している(図28(B)を参照)。第19の変形例に係るガイドワイヤは、近位端に面取り部401が形成された穿刺部390を有している(図28(C)を参照)。
第20の変形例に係るガイドワイヤ430は、シャフト部11を押し込むことで、シャフト部11およびカバー部440を任意に曲げられる構造を有している(図29、30を参照)。
なお、本出願は、2018年3月2日に出願された日本特許出願番号2018-037626号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。