以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明を具体的に実現した形態を例示するものである。よって、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって、以下に説明される実施形態の構成は適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、各用語を以下のように定義する。「積層」とは、複数枚(2枚も含む)の貼り合わせを示す。「積層体」とは、複数枚(2枚も含む)のワークWを貼り合わせたものを示す。本明細書の記載において、「上方」及び「下方」とは、図面におけるZ軸方向の「プラス側」及び「マイナス側」を示す。本明細書の記載において、「前方」及び「後方」とは、図面におけるY軸方向の「プラス側」及び「マイナス側」を示す。本明細書の記載において、「第1条件」及び「第2条件」とは、「可動ステージが水平状態にある場合」及び「可動ステージが傾斜状態にある場合」を示す。
図1は、本発明の実施形態に係る厚み測定ユニット20を備える例示的な積層装置100の一部を示す平面模式図であり、図2は、図1に示される積層装置100をXZ平面において切断した断面模式図である。ここで、X軸方向は、ワークWに対する各処理工程が実施される際にワークWが移動する方向を示すものであり、Y軸方向は、X軸方向と直交する方向を示すものである。また、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と直交し、かつ、ワークWに対する各処理工程が実施される際にワークWが面する方向を示すものである。さらに、図1及び図2中の点A、点B、及び点Cは、各処理工程の中心位置を示し、それぞれ、投入位置、厚み測定位置、及び剥離・排出位置に対応する。
<積層装置について>
積層装置100は、電子部品を構成する薄化された複数のワークWを高精度かつ高速に積層するものである。図1には、積層装置100の一部が示されており、積層装置100は、投入ユニット10と、厚み測定ユニット(厚み測定装置)20と、剥離ユニット50と、排出ユニット60と、を備える。以下、それらを順に説明する。なお、積層装置100は、投入ユニット10、厚み測定ユニット20、剥離ユニット50、及び排出ユニット60を制御する制御装置70(図4参照)をさらに備える。
<投入ユニットについて>
投入ユニット10は、X軸方向(矢印I方向)及びZ軸方向(矢印II方向)へと移動可能である投入ユニット駆動機構(不図示)と、投入ユニット駆動機構に吊り下げ支持され、ワークWを吸着保持する投入ワーク保持機構(不図示)と、を備える。
<厚み測定ユニットについて>
厚み測定ユニット20は、可動ステージ30と、可動ステージ30のX軸方向(矢印III方向:投入位置A、厚み測定位置B、剥離・排出位置C)への移動を行う可動ステージ駆動機構77(図4参照)と、厚み測定手段40と、厚み測定手段40のZ軸方向(矢印IV方向)への移動を行う厚み測定手段駆動機構78(図4参照)と、を備える。厚み測定ユニット20は、詳細は後述するが、厚み測定手段40を、ワークWを載置した可動ステージ30に対して押し付ける測定動作を実行することにより、ワークWの厚みを計測する。
<剥離ユニットについて>
剥離ユニット50は、図1に示すように、Y軸方向(矢印VI方向)及びZ軸方向(矢印VIII方向)へと移動可能である剥離ユニット駆動機構(不図示)と、剥離ユニット駆動機構に吊り下げ支持され、ワークWに設けられるフィルムを保持する剥離ヘッド(不図示)と、を備える。
<排出ユニットについて>
排出ユニット60は、X軸方向(矢印VII方向)及びZ軸方向(矢印VIII方向)へと移動可能である排出ユニット駆動機構(不図示)と、排出ユニット駆動機構に吊り下げ支持され、ワークWを吸着保持する排出ワーク保持機構(不図示)と、を備える。
本実施形態における積層装置100は、投入ユニット10と、厚み測定ユニット20と、剥離ユニット50と、排出ユニット60と、を備えるものであるが、これに限らず、例えば、剥離ユニット50を備えない構成、剥離ユニット50に代えてユニットを備える構成、又はこれら4つのユニットに加えて更に追加ユニットを備える構成としても良い。また、本実施形態におけるワークWには、上面側に保護層からなるフィルムを設けたシート状のものを採用しているが、これに限らず、例えば、剥離工程が必要のない、フィルムが設けられてないシート状のものや、脆く薄い材質から構成されているものであっても良い。
<積層装置における積層工程ついて>
図1及び図2を用いて、積層装置100におけるワークWに対する各処理工程を順に説明する。
積層装置100における積層工程は、事前測定工程、投入工程、厚み測定工程、剥離工程、及び排出工程を備える。ここで、事前測定工程及び厚み測定工程は、それぞれ、ワークWが可動ステージ30に未載置状態及び載置状態において、補正用センサ43(図3参照)及びワーク厚み測定用センサ42(図3参照)の変位量を検出する。詳細は後述するが、事前測定工程及び厚み測定工程は、可動ステージ30の傾斜により生じる問題を解消しつつ、各ワーク厚み測定用センサ42の取り付け誤差等により生じる問題を解消し、高い精度のワークWの厚み算出を実現するために実行される。
<事前測定工程について>
ワーク載置領域Waに多孔質シート31のみが固定されている可動ステージ30が、厚み測定位置Bへと、X軸方向(矢印III方向)に移動する。また、厚み測定手段40が、Z軸方向の下方(矢印IV方向)へと移動する。これにより、厚み測定手段40が、可動ステージ30に押し付けられることにより、補正用の測定が行われる。その後、厚み測定手段40が、Z軸方向の上方(矢印IV方向)へと移動する。
本実施形態の事前測定工程は、必須の工程ではなく、例えば、各ワーク厚み測定用センサ42が取り付け誤差等を有さず、ワークW以外のものが可動ステージ上面30aに載置されない場合には、各ワーク厚み測定用センサ42の補正値を算出する必要がないため、省略することができる。また、本実施形態における事前測定工程は、必要であれば、後述する厚み測定工程の前に実行するものである。この事前測定工程における実行頻度を、適宜設定することにより、熱膨張や経時変化などに起因する誤差も補正することができる。
<投入工程について>
まず、図2に示すように、多孔質シート31のみが固定されている可動ステージ30が、投入位置Aへと、X軸方向(矢印III方向)に移動する。また、投入ユニット10が、待機位置(不図示)から投入位置Aへと、X軸方向(矢印I方向)に移動した後、Z軸方向の下方(矢印II方向)へと移動する。これにより、ワークWが、多孔質シート31の上面に当接される。そして、ワークWを多孔質シート31の上面に吸着固定させた後、ワークWへの吸着固定が解除される。その後、投入ユニット10が、Z軸方向の上方(矢印II方向)に移動した後、投入位置Aから待機位置へと、X軸方向(矢印I方向)に移動する。
<厚み測定工程について>
多孔質シート31の上面にワークWを載置した可動ステージ30が、厚み測定位置Bへと、X軸方向(矢印III方向)に移動する。また、厚み測定手段40が、Z軸方向の下方(矢印IV方向)へと移動する。これにより、厚み測定手段40が、ワークWに押し付けられることにより、ワークWの厚み計測が行われる。その後、厚み測定手段40が、Z軸方向の上方(矢印IV方向)へと移動する。
<剥離工程について>
多孔質シート31の上面にワークWを載置した可動ステージ30が、厚み測定位置Bから剥離・排出位置Cへと、X軸方向(矢印III方向)に移動する。また、剥離ユニット50が、ワークWの外周部の上方位置へと、Y軸方向の前方(矢印VI方向)に移動した後、Z軸方向の下方(矢印VIII方向)へと移動する。これにより、ワークWに設けられたフィルムの外周部の一部が、剥離ヘッドに把持される。さらに、剥離ユニット50が、Y軸方向の前方(矢印VI方向)及びZ軸方向の上方(矢印VIII方向)に移動する。これにより、ワークWからフィルムが剥離された後、剥離ヘッドを解放することにより、フィルムが回収箱(不図示)に回収される。その後、剥離ユニット50が、Y軸方向の後方(矢印VI方向)に移動して、待機状態となる。
<排出工程について>
排出ユニット60が、ワークWを吸着固定させていない状態で、待機位置(不図示)から剥離・排出位置Cへと、X軸方向(矢印VII方向)に移動した後、Z軸方向の下方(矢印VIII方向)へと移動する。これにより、排出ユニット60は、ワークWの上面に当接する。そして、ワークWを排出ワーク保持機構に吸着固定させた後、多孔質シート31によるワークWへの吸着固定が解除される。その後、排出ユニット60が、Z軸方向の上方(矢印VIII方向)に移動した後、剥離・排出位置Cからアライメント位置(不図示)や積層位置(不図示)などへと、X軸方向(矢印VII方向)に移動する。
本実施形態において、投入工程と排出工程との間に事前測定工程及び厚み測定工程を組み込む、つまり、投入位置Aと排出位置Cとの間を往復する可動ステージ30に対して測定動作を実行することにより、大きなレイアウト変更を伴わずに、既存の積層装置100に厚み測定装置20を採用することができる。
<厚み測定ユニットの詳細構成について>
図3及び図4を用いて、厚み測定ユニット20の詳細構成を説明する。
図3に示すように、厚み測定ユニット20は、可動ステージ30と、厚み測定手段40とを備える。また、図4に示すように、厚み測定ユニット20は、可動ステージ30のX軸方向(矢印III方向)への移動を行う可動ステージ駆動機構77と、厚み測定手段40のZ軸方向(矢印IV方向)への移動を行う厚み測定手段駆動機構78と、を備える。以下、それらを順に説明する。
まず、可動ステージ30は、Z軸方向からみて、略矩形形状を有し、可動ステージ上面30aに、ワークWを載置可能なワーク載置領域Waと、ワーク載置領域Waと重複しない領域にある基準位置Rpと、を備える。このワーク載置領域Waには、可動ステージ上面30aにワークWを真空吸着させる複数の吸着ポート(不図示)を備える。
本実施形態において、薄いワークWに皺を生じさせないため、又は、脆いワークWに破損を生じさせないため、可動ステージ30のワーク載置領域Waに、多孔質シート31が配置されているが、多孔質シート31は必須の構成ではなく、省略することができる。また、本実施形態において、可動ステージ30上のワーク載置領域Waの形状は、矩形形状に限定されるものではなく、ワークWの形状に適合するように設定されていれば良いため、ワークWの形状(円形形状、矩形又は円形の環形状など)に適合するように様々な形状に設定され得る。さらに、本実施形態において、可動ステージ30上の基準位置Rpは、ワーク載置領域Waと重複しない領域、つまり、矩形形状のワーク載置領域Waの外側領域に設定されているが、これに限らない。例えば、ワークWの形状が、矩形又は円形の環形状などであれば、可動ステージ30上の基準位置Rpは、このワーク載置領域Waの内側領域及び/又は外側領域に設定されても良い。
次に、厚み測定手段40は、略矩形形状の支持部材41を備える。この支持部材41には、複数のワーク厚み測定用センサ42、複数の補正用センサ43、及びメカストッパ44が固定されるとともに、ワーク押さえ機構45が上下方向にスライド可能に設けられる。
ワーク厚み測定用センサ42及び補正用センサ43は、接触式変位センサであり、上下にスライド可能なスピンドル42a,43aを備え、バネ(不図示)により、スピンドル42a,43aがワークWなどに押し付けられ、この機械的な直線運動を変位量として電気信号に変換する。
本実施形態におけるワーク厚み測定用センサ42及び補正用センサ43は、接触式変位センサであるが、これに限らず、例えば、ワーク厚み測定用センサ42及び補正用センサ43の一方又は両方が、レーザー変位計などの非接触式変位センサであっても良い。また、本実施形態において、ワーク厚み測定用センサ42は、5か所のワーク載置領域Wa(図9(b)参照)の計測を行うものであるが、これに限らず、例えば、少なくとも1か所のワーク載置領域Waにおける計測を行うものであっても良い。さらに、本実施形態において、補正用センサ43は、3か所の基準位置Rp(図9(b)参照)の計測を行うものであるが、これに限らない。例えば、補正用センサ43は、4か所以上の基準位置Rpにおいて計測を行うものであっても良いし、複数のワーク厚み測定用センサ42が、Z軸方向からみて、同一直線上に配置されている場合、この直線上の2か所の基準位置Rpにおいて計測を行うものであっても良い。このように、本実施形態において、ワーク厚み測定用センサ42及び補正用センサ43の配置や個数は、単なる例示にすぎず、最適な配置や個数を適宜選択することができる。
このワーク厚み測定用センサ42は、ワークWの計測箇所に対応して設けられるため、補正用センサ43と比べ、設置数が必然的に多くなる傾向がある。これにより、各補正用センサ43の下端部を、予め、同一水平面内に配置することは、比較的簡単に設定できる。一方、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部を、予め、同一水平面内に配置することは、極めて困難であり、取り付け誤差等が生じているおそれがある(以下、「各ワーク厚み測定用センサ42の取り付け誤差等により生じる問題」という)。
そこで、本実施形態の事前測定工程及び厚み測定工程において、この各ワーク厚み測定用センサ42の取り付け誤差等により生じる問題を解消するための演算処理が行われているが、詳細は後述する。なお、本実施形態において、各補正用センサ43の下端部が、同一水平面(図9(a),図10(a),図11(a)及び図12(a)中のl参照)内に配置されるように設定されているが、これに限らない。例えば、各補正用センサ43の下端部が、取り付け誤差等により、同一水平面内に配置されていなくても、この誤差を予め把握することにより、各補正用センサ43のゼロ調整を行うことができる。
メカストッパ44は、下端部に弾性材からなる緩衝部44aを備え、この緩衝部44aが、可動ステージ30に当接することにより、厚み測定手段40の突き当て位置が、設定値となるように規制する。
さらに、ワーク押さえ機構45は、弾性を有する素材(例えば、樹脂など)からなるワーク押さえ板45aと、下端部がワーク押さえ板45aに固定され、上端部が支持部材41の挿通孔41aに挿通されるスライド軸45bと、を備える。ワーク押さえ板45aは、Z軸方向からみて、可動ステージ30に載置されたワークWを覆いながら、ワークWを押圧することができる略矩形形状を有している。このワーク押さえ板45aには、複数のワーク厚み測定用センサ42及び補正用センサ43のスピンドル42a,43aが挿通可能な複数の貫通孔45dが設けられている。また、スライド軸45bは、挿通する支持部材41を上下方向より挟むように、拡径された上側係止部45b1及び下側係止部45b2を備えるともに、支持部材41と下側係止部45b2との間には、圧縮バネからなる付勢部材45cが挟持されている。
本実施形態において、ワーク押さえ機構45は、傾斜した可動ステージ30に載置されたワークWの全面を、上方より押圧し、ワークWの反りを矯正するものであるが、必須の構成ではない。例えば、ワークWに反りが生じない場合には、ワーク押さえ機構45を省略することができる。
可動ステージ駆動機構77は、可動ステージ30を、X軸方向(矢印III方向:投入位置A、厚み測定位置B、剥離・排出位置C)へと移動させることができる。なお、可動ステージ30は、可動ステージ駆動機構77により、移動可能な構成となっているため、走行精度や経時的なガタなどにより、水平面に対して傾斜を生じるおそれがある(可動ステージの傾斜により生じる問題)。
そこで、本実施形態の事前測定工程及び厚み測定工程において、この可動ステージの傾斜により生じる問題を解消するための演算処理が行われているが、詳細は後述する。
厚み測定手段駆動機構78は、厚み測定手段40を、Z軸方向(矢印IV方向)へと移動させることができる。特に、厚み測定手段40を、Z軸方向(矢印IV方向)の下方へと移動させることにより、厚み測定手段40を可動ステージ30に対して押し付ける測定動作を実行することができる。これにより、複数のワーク厚み測定用センサ42及び補正用センサ43のスピンドル42a,43aや、ワーク押さえ機構45のワーク押さえ板45aを、可動ステージ30に対して変位させることや、メカストッパ44の緩衝部44aを可動ステージ30に突き当てることができる。
<制御系の構成について>
次に、図4を用いて、図3に示される厚み測定ユニット20の制御系の構成を説明する。
制御装置70は、制御部(制御手段)71、記憶部72、演算部(演算手段)73、駆動制御部75、A/D変換部76を備え、バス74を介してそれぞれ接続される。
制御部71は、積層装置100の各ユニットにおける、ワークWに対する各処理工程の動作など全般の制御をつかさどる演算処理装置である。
記憶部72は、ワークWに対する各処理工程に対応する処理プログラムなどを格納するともに、それらのプログラムの実行により算出された値(補正量P1au~P5au,P1au’~P5au’、ワーク厚みWtp1~Wtp5,Wtp1’~Wtp5’など)が記憶される。
演算部73は、記憶部72に格納された処理プログラムを実行し、演算処理(補正値の算出過程、ワークWの厚みの算出過程など)が行われ、演算結果を記憶部72に格納する。
駆動制御部75は、可動ステージ駆動機構77を制御して、可動ステージ30のX軸方向(矢印III方向)への移動を制御するとともに、厚み測定手段駆動機構78を制御して、厚み測定手段40のZ軸方向(矢印IV方向)へと移動を制御する。
A/D変換部76は、ワーク厚み測定用センサ42及び補正用センサ43に接続され、各センサが検出した変位量をA/D変換する。このA/D変換された変位量は、記憶部72や演算部73に入力される。
<厚み測定ユニットの動作説明について>
まず、図5及び図6を用いて、厚み測定ユニット20の事前測定工程における動作説明を行い、続いて、図7及び図8を用いて、厚み測定ユニット20の厚み測定工程における動作説明を行う。ここで、厚み測定ユニット20の事前測定工程における動作は、可動ステージ30の傾斜により生じる問題を解消しつつ、各ワーク厚み測定用センサ42の取り付け誤差等により生じる問題を解消するために行われる。一方、厚み測定ユニット20の厚み測定工程における動作は、可動ステージ30の傾斜により生じる問題を解消しつつ、高い精度のワークWの厚みを取得するために行われる。なお、厚み測定ユニット20の駆動は、制御装置70を主体とし、制御装置70からの指示により実行される。また、図中の可動ステージ30は、便宜的に水平状態として示されているが、実際には、水平面に対して傾斜状態となっている。
<厚み測定ユニットの事前測定工程における動作説明について>
ここから、厚み測定ユニット20の事前測定工程における動作説明について説明する。なお、初期状態として、可動ステージ30は、ワーク載置領域Waに多孔質シート31のみが固定された状態で、剥離・排出位置Cで停止している。
最初に、図5(a)に示すように、可動ステージ30が、可動ステージ駆動機構77により、剥離・排出位置Cから厚み測定位置Bへと、X軸方向(矢印III(1)方向)に移動する。この際、可動ステージ30に固定された多孔質シート31は、Z軸方向からみて、ワーク押さえ板45aに覆われる位置に配置される。また、可動ステージ30の設けられた基準位置Rpは、Z軸方向からみて、補正用センサ43のスピンドル43aに対向する位置に配置される。ここで、可動ステージ30は、水平面に対して傾斜を生じている場合がある。
そして、図5(b)から図6(b)に示すように、厚み測定ユニット20における測定動作が行われる。この測定動作では、厚み測定手段40が、厚み測定手段駆動機構78により、Z軸方向の下方(矢印IV(2),(7)方向)へと移動し続け、ワーク押さえ板45a、ワーク厚み測定用センサ42、補正用センサ43及びメカストッパ44の順に、多孔質シート31又は可動ステージ30へと当接する。この際、図5(c)から図6(b)に示されるように、ワーク押さえ板45aは、付勢部材45cを圧縮しながら、支持部材41に対してZ軸方向の上方(矢印V(4),(8)方向)へと相対的に移動する。
具体的には、図5(b)において、厚み測定手段40が、Z軸方向の下方(矢印IV(2)方向)へと移動し、ワーク押さえ機構45のワーク押さえ板45aが、多孔質シート31に当接する。
次に、図5(c)において、厚み測定手段40が、Z軸方向の下方(矢印IV(3)方向)へと移動し、ワーク厚み測定用センサ42が、ワーク押さえ板45aの貫通孔45dを挿通するとともに、多孔質シート31に当接する。
さらに、図6(a)において、厚み測定手段40が、Z軸方向の下方(矢印IV(5)方向)へと移動し、補正用センサ43が、可動ステージ30の基準位置Rpに当接するとともに、ワーク厚み測定用センサ42のスピンドル42aは、Z軸方向の上方へと変位する(図中の白抜き矢印参照)。
そして、図6(b)において、厚み測定手段40が、Z軸方向の下方(矢印IV(7)方向)へと移動し、メカストッパ44の緩衝部44aが、可動ステージ30のワーク載置領域Wa及び基準位置Rp以外の領域に当接する。このメカストッパ44が、可動ステージ30に対する厚み測定手段40の突き当て位置を規制することにより、ワーク厚み測定用センサ42のスピンドル42a及び補正用センサ43のスピンドル43aを、Z軸方向の上方へと確実に変位させることができる(図中の白抜き矢印及び灰色矢印参照)。この状態において、ワーク厚み測定用センサ42及び補正用センサ43を用いて、補正用の測定が行われる。
その後、図6(c)に示すように、厚み測定手段40が、厚み測定手段駆動機構78により、Z軸方向の上方(矢印IV(9)方向)へと移動し、可動ステージ30が、可動ステージ駆動機構77により、厚み測定位置Bから投入位置Aへと、X軸方向(矢印III(11)方向)に移動する。この際、ワーク厚み測定用センサ42のスピンドル42a及び補正用センサ43のスピンドル43aは、Z軸方向の下方へと変位する(図中の白抜き矢印及び灰色矢印参照)とともに、ワーク押さえ板45aは、付勢部材45cの圧縮を解放しながら、支持部材41に対してZ軸方向の下方(矢印V(10)方向)へと相対的に移動する。
<厚み測定ユニットの厚み測定工程における動作説明について>
ここから、厚み測定ユニット20の厚み測定工程における動作を説明する。なお、初期状態として、可動ステージ30は、多孔質シート31の上面にワークWを載置した状態で、投入位置Aで停止している。ここで、厚み測定ユニット20の厚み測定工程は、前述の厚み測定ユニット20の事前測定工程と、可動ステージ30にワークWが載置されている点で主に相違するが、その他は同一構成となっている。
最初に、図7(a)に示すように、可動ステージ30が、可動ステージ駆動機構77により、投入位置Aから厚み測定位置Bへと、X軸方向(矢印III(12)方向)に移動する。ここで、可動ステージ30は、水平面に対して傾斜を生じている場合がある。
そして、図7(b)から図8(b)に示すように、厚み測定ユニット20における測定動作が行われる。この測定動作では、厚み測定手段40が、厚み測定手段駆動機構78により、Z軸方向の下方(矢印IV(13),(18)方向)へと移動し続け、ワーク押さえ板45a、ワーク厚み測定用センサ42、補正用センサ43及びメカストッパ44の順に、ワークW又は可動ステージ30へと当接する。この際、図7(c)から図8(b)に示されるように、ワーク押さえ板45aは、付勢部材45cを圧縮しながら、支持部材41に対してZ軸方向の上方(矢印V(15),(19)方向)へと相対的に移動する。
具体的には、図7(b)において、厚み測定手段40が、Z軸方向の下方(矢印IV(13)方向)へと移動し、ワーク押さえ機構45のワーク押さえ板45aが、ワークWに当接する。ここで、ワーク押さえ板45aは、ワーク押さえ板45aが有する弾性力及び付勢部材45cの付勢力により、ワークWの全面を上方から押圧するものであるため、傾斜した可動ステージ30にワークWが載置されていても、ワークWの反りを確実に矯正し、可動ステージ上面30aに対して平行に配置することができる。
次に、図7(c)において、厚み測定手段40が、Z軸方向の下方(矢印IV(14)方向)へと移動し、ワーク厚み測定用センサ42が、ワークWに当接する。
さらに、図8(a)において、厚み測定手段40が、Z軸方向の下方(矢印IV(16)方向)へと移動し、補正用センサ43が、可動ステージ30の基準位置Rpに当接するとともに、ワーク厚み測定用センサ42のスピンドル42aは、Z軸方向の上方へと変位する(図中の白抜き矢印参照)。
そして、図8(b)において、厚み測定手段40が、Z軸方向の下方(矢印IV(18)方向)へと移動し、メカストッパ44の緩衝部44aが、可動ステージ30に当接する。この状態において、ワーク厚み測定用センサ42及び補正用センサ43を用いて、実測用の測定が行われる(図中の白抜き矢印及び灰色矢印参照)。
その後、図8(c)に示すように、厚み測定手段40が、厚み測定手段駆動機構78により、Z軸方向の上方(矢印IV(20)方向)へと移動し、可動ステージ30が、可動ステージ駆動機構77により、厚み測定位置Bから剥離・排出位置Cへと、X軸方向(矢印III(22)方向)に移動する。この際、ワーク厚み測定用センサ42のスピンドル42a及び補正用センサ43のスピンドル43aは、Z軸方向の下方へと変位する(図中の白抜き矢印及び灰色矢印参照)とともに、ワーク押さえ板45aは、付勢部材45cの圧縮を解放しながら、支持部材41に対してZ軸方向の下方(矢印V(21)方向)へと相対的に移動する。
<ワーク厚みの補正原理の説明について>
ワーク厚みの補正原理の説明は、まず、図9及び図10を用いて、計測条件を単純化した、可動ステージ30が水平状態にある第1条件について行い、次に、図11及び図12を用いて、可動ステージが傾斜状態にある第2条件について行う。なお、本実施形態においては、3個の補正用センサ43、及び、5個のワーク厚み測定用センサ42を用いるものであるが、以下においては、2個の補正用センサ43(図中のC1,C2参照)、及び、1個のワーク厚み測定用センサ42(図中のP1参照)を代表して用いて説明する。また、図中において、ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1が、各補正用センサ43の下端部C1,C2が形成する同一水平面(各図中のl参照)に対して、取り付け誤差等を有してずれていることが誇張されている。
<第1条件におけるワーク厚みの補正原理の説明>
第1条件(可動ステージ30が水平状態にある場合)について、各ワーク厚み測定用センサ42の取り付け誤差等を補正する補正値の算出過程、ワークWの厚みの算出過程の順に説明する。
<補正値の算出過程について>
図9(a)から図9(c)を用いて、各ワーク厚み測定用センサ42の取り付け誤差等を補正する補正値の算出過程を説明する。
図9(a)に示すように、厚み測定手段40を、ワークWが未載置状態にある可動ステージ30に対して押し付ける測定動作を実行する。この測定動作は、図5及び図6に対応するものであり、各補正用センサ43は、各可動ステージ30の基準位置Rpに当接するとともに、各ワーク厚み測定用センサ42は、多孔質シート31に当接する。
本実施形態における原点0は、変位する前における各補正用センサ43のスピンドル43aの下端部を結ぶ水平面(各図中のl参照)上の任意点としたが、これに限らず、例えば、支持部材41の角部の1つに設定するものであっても良い。また、本実施形態において、各ワーク厚み測定用センサ42及び各補正用センサ43におけるX座標及びY座標は、それぞれ、組立時の設定値となっている。
まず、図9(b)に示すように、各補正用センサ43の下端部C1,C2,C3が、可動ステージ30の基準位置Rpに当接し、さらに押し込まれるよう変位することにより、変位量(第2の補正変位量)がそれぞれ検出される。ここで、図9(c)に示すように、原点0からの各補正用センサ43のそれぞれの変位ベクトルを、→C1a’、→C2a’(斜め白抜き矢印参照)、→C3a’(不図示)と表す。なお、「→C1a’」、「→C2a’」、「→C3a’」の前の記号「→」は、「C1a’」、「C2a’」、「C3a’」の上に付与されてベクトルを表し、文字「a」は、事前測定工程であることを表し、符号「’」は、第1条件における測定値を表す。
次に、各補正用センサ43の下端部C1,C2,C3におけるそれぞれの変位ベクトルである→C1a’、→C2a’、→C3a’を結ぶ三角形が含まれる平面、つまり、可動ステージ上面30aと一致する平面が、校正用平面Cla’として、演算手段により算出される。また、校正用平面Cla’に対する単位法線ベクトル→nCla’が、演算手段により算出される。具体的には、演算手段が、校正用平面Cla’に含まれる三角形C1,C2,C3(図9(b)参照)の頂点を結ぶ任意の2つのベクトルを用いて、外積及び単位ベクトル化を行うことにより、単位法線ベクトル→nCla’が算出される。
さらに、図9(b)に示すように、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5が、可動ステージ30の多孔質シート31に当接し、さらに押し込まれるよう変位することにより、変位量(第2の測定変位量)がそれぞれ検出される。ここで、図9(c)に示すように、原点0からの各ワーク厚み測定用センサ42のそれぞれの変位ベクトルを、→P1a’(斜め黒矢印参照)、→P2a’、→P3a’、→P4a’、→P5a’(不図示)と表す。
続いて、図9(c)に示すように、各補正用センサ43の下端部C1,C2,C3における変位ベクトルの一つ、例えば、→C1a’と、校正用平面Cla’に対する単位法線ベクトル→nCla’との内積である→C1a’・→nCla’(白抜き矢印参照)が算出される。これにより、補正用センサ43の下端部C1の変位ベクトルにおける校正用平面Cla’の垂直方向成分が取得される。ここで、可動ステージ30が水平状態にあることから、→C1a’・→nCla’は、補正用センサ43の下端部C1におけるZ軸方向への変位量に相当する。なお、説明は省略するが、→C2a’・→nCla’及び→C3a’・→nCla’は、→C1a’・→nCla’と同じ値となることから、以下では、補正用センサ43の下端部C1を用いて説明する。
同様に、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5におけるそれぞれの変位ベクトル→P1a’~→P5a’と、校正用平面Cla’に対する単位法線ベクトル→nCla’との内積である→P1a’・→nCla’(黒矢印参照)~→P5a’・→nCla’(不図示)が算出される。これにより、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5の変位ベクトルにおける、校正用平面Cla’の垂直方向成分がそれぞれ取得される。ここで、可動ステージ30が水平状態にあることから、→P1a’・→nCla’~→P5a’・→nCla’は、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5におけるそれぞれのZ軸方向への変位量に相当する。
最後に、図9(c)に示すように、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5のそれぞれの変位ベクトルにおける校正用平面Cla’の垂直方向成分、例えば、→P1a’・→nCla’、及び、補正用センサ43の下端部C1の変位ベクトルにおける校正用平面Cla’の垂直方向成分→C1a’・→nCla’を差分することにより、補正量P1au’(矢印参照)が算出される。説明は省略するが、同様に、補正量P2au’~P5au’(不図示)がそれぞれ算出される。この補正量P1au’~P5au’は、各ワーク厚み測定用センサ42が、取り付け誤差等や多孔質シート31の厚み分だけ、各補正用センサ43と比べて大きな変位量を有していることを示している。
<ワークの厚みの算出過程について>
図10(a)及び図10(b)を用いて、ワークWの厚みの算出過程を説明する。ここで、ワークWの厚みの算出過程は、前述の補正値の算出過程と比べ、ワークWが可動ステージ30に載置された状態で行われる点で主に相違するが、その他は略同様の算出過程となっている。
図10(a)に示すように、厚み測定手段40を、ワークWが載置状態にある可動ステージ30に対して押し付ける測定動作を実行する。この測定動作は、図7及び図8に対応するものであり、各補正用センサ43は、各可動ステージ30の基準位置Rpに当接するとともに、ワーク厚み測定用センサ42は、ワークWに当接する。
まず、図10(a)に示すように、各補正用センサ43の下端部C1,C2,C3(不図示)が、可動ステージ30の基準位置Rpに当接し、さらに押し込まれるよう変位することにより、変位量(第1の補正変位量)がそれぞれ検出される。ここで、図10(b)に示すように、原点0からの各補正用センサ43のそれぞれの変位ベクトルを、→C1m’、→C2m’(斜め白抜き矢印参照)、→C3m’(不図示)と表す。なお、「→C1m’」、「→C2m’」、「→C3m’」の文字「m」は、厚み測定工程であることを表す。
次に、各補正用センサ43の下端部C1,C2,C3におけるそれぞれの変位ベクトルである→C1m’、→C2m’、→C3m’を結ぶ三角形が含まれる平面、つまり、可動ステージ上面30aと一致する平面が、計測補正用平面Clm’として、演算手段により算出される。また、計測補正用平面Clm’に対する単位法線ベクトル→nClm’が、演算手段により算出される。
さらに、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5が、可動ステージ30のワークWに当接し、さらに押し込まれるよう変位することにより、変位量(第1の測定変位量)がそれぞれ検出される。ここで、図10(b)に示すように、原点0からの各ワーク厚み測定用センサ42のそれぞれの変位ベクトルを、→P1m’(斜め黒矢印参照)、→P2m’、→P3m’、→P4m’、→P5m’(不図示)と表す。
続いて、図10(b)に示すように、補正用センサ43の下端部C1における変位ベクトル→C1m’と、計測補正用平面Clm’に対する単位法線ベクトル→nClm’との内積である→C1m’・→nClm’(白抜き矢印参照)が算出される。これにより、補正用センサ43の下端部C1の変位ベクトルにおける計測補正用平面Clm’の垂直方向成分が取得される。
同様に、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5におけるそれぞれの変位ベクトル→P1m’~→P5m’と、計測補正用平面Clm’に対する単位法線ベクトル→nClm’との内積である→P1m’・→nClm’(黒矢印参照)~→P5m’・→nClm’(不図示)が算出される。これにより、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5の変位ベクトルにおける計測補正用平面Clm’の垂直方向成分がそれぞれ取得される。
最後に、図10(b)に示すように、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5のそれぞれの変位ベクトルにおける計測補正用平面Clm’の垂直方向成分、例えば、→P1m’・→nClm’、及び、補正用センサ43の下端部C1の変位ベクトルにおける計測補正用平面Clm’の垂直方向成分→C1m’・→nClm’を差分した値から、補正量P1au’(矢印参照)を減算することより、ワークWの厚みWtp1’が算出される。説明は省略するが、同様に、ワークWの厚みWtp2’~Wtp5’(不図示)がそれぞれ算出される。
<第2条件におけるワーク厚みの補正原理の説明>
第2条件(可動ステージ30が傾斜状態にある場合)について、各ワーク厚み測定用センサ42の取り付け誤差等を補正する補正値の算出過程、ワークWの厚みの算出過程の順に説明する。ここで、第2条件は、前述の第1条件と比べ、可動ステージ30が、XZ平面内の水平軸に対して角度αを有した傾斜状態にある点で相違するのみで、補正値の算出過程及びワークWの厚みの算出過程は、全て同一である。
<補正値の算出過程について>
図11(a)及び図11(b)を用いて、各ワーク厚み測定用センサ42の取り付け誤差等を補正する補正値の算出過程を説明する。
図11(a)に示すように、厚み測定手段40を、ワークWが未載置状態にある可動ステージ30に対して押し付ける測定動作を実行する。
まず、各補正用センサ43の下端部C1,C2,C3(不図示)が、可動ステージ30の基準位置Rpに当接し、さらに押し込まれるよう変位することにより、変位量(第2の補正変位量)がそれぞれ検出される。ここで、図11(b)に示すように、原点0からの各補正用センサ43の変位ベクトルを、→C1a、→C2a(斜め白抜き矢印参照)、→C3a(不図示)と表す。なお、「→C1a」、「→C2a」、「→C3a」のように、最後に符号「’」がないものは、第2条件における測定値を表す。
次に、各補正用センサ43の下端部C1,C2,C3におけるそれぞれの変位ベクトルである→C1a、→C2a、→C3aを結ぶ三角形が含まれる平面、つまり、可動ステージ上面30aと一致する傾斜した平面が、校正用平面Claとして、演算手段により算出される。また、校正用平面Claに対する単位法線ベクトル→nClaが、演算手段により算出される。
さらに、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5が、可動ステージ30の多孔質シート31に当接し、さらに押し込まれるよう変位することにより、変位量(第2の測定変位量)がそれぞれ検出される。ここで、図11(b)に示すように、原点0からの各ワーク厚み測定用センサ42の変位ベクトルを、→P1a(斜め黒矢印参照)、→P2a、→P3a、→P4a、→P5a(不図示)と表す。
続いて、図11(b)に示すように、補正用センサ43の下端部C1における変位ベクトル→C1aと、校正用平面Claに対する単位法線ベクトル→nClaとの内積である→C1a・→nCla(白抜き矢印参照)が算出される。これにより、補正用センサ43の下端部C1の変位ベクトルにおける校正用平面Cla、つまり、傾斜した可動ステージ30の垂直方向成分が取得される。なお、説明は省略するが、→C2a・→nCla及び→C3a・→nClaは、→C1a・→nClaと同じ値となる。
同様に、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5におけるそれぞれの変位ベクトル→P1a~→P5aと、校正用平面Claに対する単位法線ベクトル→nClaとの内積である→P1a・→nCla(黒矢印参照)~→P5a・→nCla(不図示)が算出される。これにより、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5の変位ベクトルにおける校正用平面Cla、つまり、傾斜した可動ステージ30の垂直方向成分がそれぞれ取得される。
最後に、図11(b)に示すように、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5のそれぞれの変位ベクトルにおける校正用平面Claの垂直方向成分、例えば、→P1a・→nCla、及び、補正用センサ43の下端部C1の変位ベクトルにおける校正用平面Claの垂直方向成分→C1a・→nClaを差分することにより、補正量P1au(矢印参照)が算出される。同様に、補正量P2au~P5au(不図示)がそれぞれ算出される。
本実施形態において、補正用センサ43及びワーク厚み測定用センサ42の変位ベクトルにおける校正用平面Cla、つまり、傾斜した可動ステージ30の垂直方向成分に基づいて、補正量P1au~P5auを算出している。したがって、例えば、第2条件と第1条件のように、可動ステージ30の傾斜角度が異なっていても、第2条件における補正量P1au~P5auと、第1条件における補正量P1au’~P5au’とをそれぞれ一致させることができる。これにより、事前測定工程において、傾斜した可動ステージ30を用いたとしても、可動ステージ30の傾斜により生じる問題を解消した上で、各ワーク厚み測定用センサ42の取り付け誤差等により生じる問題を解消することができる。
<ワークの厚みの算出過程について>
図12(a)及び図12(b)を用いて、ワークWの厚みの算出過程を説明する。
図12(a)に示すように、厚み測定手段40を、ワークWが載置状態にある可動ステージ30に対して押し付ける測定動作を実行する。
まず、図12(a)に示すように、各補正用センサ43の下端部C1,C2,C3(不図示)が、可動ステージ30の基準位置Rpに当接し、さらに押し込まれるよう変位することにより、変位量(第1の補正変位量)がそれぞれ検出される。ここで、図12(b)に示すように、原点0からの各補正用センサ43のそれぞれの変位ベクトルを、→C1m、→C2m(斜め白抜き矢印参照)、→C3m(不図示)と表す。
次に、各補正用センサ43の下端部C1,C2,C3におけるそれぞれの変位ベクトルである→C1m、→C2m、→C3mを結ぶ三角形が含まれる平面、つまり、可動ステージ上面30aと一致する平面が、計測補正用平面Clmとして、演算手段により算出される。また、計測補正用平面Clmに対する単位法線ベクトル→nClmが、演算手段により算出される。
さらに、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5が、可動ステージ30のワークWに当接し、さらに押し込まれるよう変位することにより、変位量(第1の測定変位量)がそれぞれ検出される。ここで、図12(b)に示すように、原点0からの各ワーク厚み測定用センサ42のそれぞれの変位ベクトルを、→P1m(斜め黒矢印参照)、→P2m、→P3m、→P4m、→P5m(不図示)と表す。
続いて、図12(b)に示すように、補正用センサ43の下端部C1における変位ベクトル→C1mと、計測補正用平面Clmに対する単位法線ベクトル→nClmとの内積である→C1m・→nClm(白抜き矢印参照)が算出される。これにより、各補正用センサ43の下端部C1の変位ベクトルにおける計測補正用平面Clm、つまり、傾斜した可動ステージ30の垂直方向成分がそれぞれ取得される。
同様に、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5におけるそれぞれの変位ベクトル→P1m~→P5mと、計測補正用平面Clmに対する単位法線ベクトル→nClmとの内積である→P1m・→nClm(黒矢印参照)~→P5m・→nClm(不図示)が算出される。これにより、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5の変位ベクトルにおける計測補正用平面Clm、つまり、傾斜した可動ステージ30の垂直方向成分がそれぞれ取得される。
最後に、図12(b)に示すように、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部P1~P5のそれぞれの変位ベクトルにおける計測補正用平面Clmの垂直方向成分、例えば、→P1m・→nClm、及び、補正用センサ43の下端部C1の変位ベクトルにおける計測補正用平面Clmの垂直方向成分→C1m・→nClmを差分した値から、補正量P1au(矢印参照)を減算することより、ワークWの厚みWtp1が算出される。同様に、ワークWの厚みWtp2~Wtp5(不図示)がそれぞれ算出される。
本実施形態において、補正用センサ43及びワーク厚み測定用センサ42のベクトルにおける計測補正用平面Clm、つまり、傾斜した可動ステージ30の垂直方向成分に基づいて、ワークWの厚みWtp1~Wtp5を算出している。したがって、例えば、第2条件と第1条件のように、可動ステージ30の傾斜角度が異なっていても、第2条件におけるワークWの厚みWtp1~Wtp5と、第1条件におけるワークWの厚みWtp1’~Wtp5’とをそれぞれ一致させることができる。これにより、厚み測定工程において、傾斜した可動ステージ30を用いたとしても、可動ステージ30の傾斜により生じる問題を解消した上で、ワークWの厚みを精度良く計測することができる。
このように、本実施形態において、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部が、取り付け誤差等を有する場合や、可動ステージ30上に多孔質シート31が載置されている場合には、補正値の算出過程及びワークWの厚みの算出過程により、ワークWの厚みを算出することができる。具体的には、各ワーク厚み測定用センサ42が検出した変位量(第2の測定変位量)に基づく変位ベクトル、及び、補正用センサ43が検出した変位量(第2の補正変位量)に基づく変位ベクトルにおける校正用平面Claの垂直方向成分の差分を、補正値P1au~P5auとして算出し、各ワーク厚み測定用センサ42が検出した変位量(第1の測定変位量)に基づく変位ベクトル、及び、補正用センサ43が検出した変位量(第1の補正変位量)に基づく変位ベクトルにおける計測補正用平面Clmの垂直方向成分の差分から、補正値P1au~P5auを減算した値を、ワークWの厚みWtp1~Wtp5として算出することができる。
ここで、本実施形態において、各ワーク厚み測定用センサ42の下端部が、取り付け誤差等を有さずに、同一水平面l内に配置されるとともに、可動ステージ30上に多孔質シート31が載置されていない場合には、補正値の算出過程を行わずに、ワークWの厚みの算出過程において、補正量P1au~P5au=0として、ワークWの厚みを算出することができる。具体的には、各ワーク厚み測定用センサ42が検出した変位量(第1の測定変位量)に基づく変位ベクトル、及び、補正用センサ43検出した変位量(第1の補正変位量)に基づく変位ベクトルにおける計測補正用平面Clmの垂直方向成分の差分を、ワークWの厚みWtp1~Wtp5として算出することができる。
なお、本実施形態の第2条件における可動ステージ30の傾斜状態は、XZ平面内の水平軸に対して角度αを有するものとしたが、これに限らない。例えば、YZ平面内の水平軸に対して角度を有するものや、XZ平面及びYZ平面内のそれぞれの水平軸に対して角度を有するものや、これらの角度に加え、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向などへの移動を伴うものであっても良い。また、本実施形態において、各補正用センサ43のXY平面内における間隔は、比較的大きな値(例えば、数十mm)に設定され、また、可動ステージ30の水平面に対する角度は、比較的小さな値(例えば、1°以下)に抑えられている。よって、各補正用センサ43の取り付け位置(X座標及びY座標)が、設計値より僅かに(例えば、数mm)ずれていても、校正用平面及び計測補正用平面に対する単位法線ベクトルへの影響は極めて小さく無視できる程度のものとなっている。
(発明の実施態様)
本発明の第1の実施の態様は、ワークを載置可能なワーク載置領域及びワーク載置領域と重複しない領域にある基準位置を有する可動ステージと、可動ステージのワーク載置領域に対する変位を検出するワーク厚み測定用センサ、及び、可動ステージの基準位置に対する変位を検出する複数の補正用センサを備える厚み測定手段と、可動ステージの水平方向への移動を実行、及び、厚み測定手段の垂直方向への移動を実行するとともに、厚み測定手段を可動ステージに対して近接させる測定動作を実行する制御手段と、ワークの厚みを算出する演算手段と、を備え、演算手段は、ワークが可動ステージに載置された状態での測定動作において、複数の補正用センサが検出した基準位置へのそれぞれの第1の補正変位量に基づき、可動ステージ上面に一致する計測補正用平面を算出するともに、計測補正用平面、ワーク厚み測定用センサが検出したワークへの第1の測定変位量、及び、補正用センサが検出した第1の補正変位量に基づき、ワークの厚みを算出する、厚み測定装置である。
このように、計測補正用平面Clm、ワーク厚み測定用センサ42が検出したワークWへの第1の測定変位量、及び、補正用センサ43が検出した第1の補正変位量に基づいて、ワークWの厚みWtp1~Wtp5を算出しているため、可動ステージ30の傾斜により生じる問題を解消した上で、傾斜した可動ステージ30に載置されたワークWの厚みを計測することができるという効果を奏する。
本発明の第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、演算手段は、ワーク厚み測定用センサが検出した第1の測定変位量に基づく変位ベクトル、及び、補正用センサが検出した第1の補正変位量に基づく変位ベクトルにおける計測補正用平面の垂直方向成分の差分を、ワークの厚みとして算出する。
このように、ワーク厚み測定用センサ42及び補正用センサ43のベクトルにおける計測補正用平面Clm、つまり、傾斜した可動ステージ30の垂直方向成分に基づいて、ワークWの厚みWtp1~Wtp5を算出しているため、厚み測定工程に、傾斜した可動ステージ30を用いることができるとともに、この傾斜した可動ステージ30に載置されたワークWの厚みを精度良く計測することができるという効果を奏する。
本発明の第3の実施の態様は、第1の実施の態様又は第2の実施の態様において、演算手段は、ワークが可動ステージに載置されていない状態での測定動作において、複数の補正用センサが検出した基準位置へのそれぞれの第2の補正変位量に基づき、可動ステージ上面に一致する校正用平面を算出するともに、校正用平面、ワーク厚み測定用センサが検出したワーク載置領域への第2の測定変位量、及び、補正用センサが検出した第2の補正変位量に基づき、ワーク厚み測定用センサの補正値を算出し、演算手段は、計測補正用平面、ワーク厚み測定用センサが検出した第1の測定変位量、補正用センサが検出した第1の補正変位量、及び、補正値に基づき、ワークの厚みを算出する。
このように、計測補正用平面Clm、ワーク厚み測定用センサ42が検出したワークWへの第1の測定変位量、補正用センサ43が検出した第1の補正変位量、及び、補正値P1au~P5auに基づいて、ワークWの厚みWtp1~Wtp5を算出しているため、各ワーク厚み測定用センサ42の取り付け誤差等により生じる問題を解消した上で、傾斜した可動ステージ30に載置されたワークWの厚みを精度良く計測することができるという効果を奏する。
本発明の第4の実施の態様は、第3の実施の態様において、演算手段は、ワーク厚み測定用センサが検出した第2の測定変位量に基づく変位ベクトル、及び、補正用センサが検出した第2の補正変位量に基づく変位ベクトルにおける校正用平面の垂直方向成分の差分を、補正値として算出し、ワーク厚み測定用センサが検出した第1の測定変位量に基づく変位ベクトル、及び、補正用センサが検出した第1の補正変位量に基づく変位ベクトルにおける計測補正用平面の垂直方向成分の差分から、補正値を減算した値を、ワークの厚みとして算出する。
このように、ワーク厚み測定用センサ42及び補正用センサ43の変位ベクトルにおける校正用平面Cla、つまり、傾斜した可動ステージ30の垂直方向成分に基づいて、補正量P1au~P5auを算出しているため、事前測定工程に、傾斜した可動ステージ30を用いることができるという効果を奏する。
本発明の第5の実施の態様は、第3の実施の態様又は第4の実施の態様において、可動ステージのワーク載置領域には、多孔質シートが配置されている。
これにより、吸着時において、薄いワークWに皺が発生すること、及び、脆いワークWに破損が生じることを、それぞれ防止できるという効果を奏する。
本発明の第6の実施の態様は、第1~第5のいずれかの実施の態様において、複数の補正用センサの下端部が同一水平面上に配置されている。
これにより、各補正用センサ43に対して、取り付け誤差等を予め把握し、ゼロ調整を行うことを要しないという効果を奏する。
本発明の第7の実施の態様は、第1~第6のいずれかの実施の態様において、厚み測定手段は、付勢部材、及び、付勢部材により付勢されるワーク押さえ板からなるワーク押え手段をさらに備え、ワークが可動ステージに載置された状態での測定動作において、ワーク押さえ板が、可動ステージに載置されたワークを覆いながら、付勢部材によりワークを可動ステージに押圧する。
これにより、厚み測定工程において、ワーク押さえ板45aにより、ワークWの反りを矯正することができるという効果を奏する。
本発明の第8の実施の態様は、第3の実施の態様又は第4の実施の態様における厚み測定装置が用いられる積層装置であって、可動ステージは、ワークが可動ステージに投入される投入位置、測定動作が行われる厚み測定位置、及び、ワークが可動ステージから排出される排出位置に移動可能であり、演算手段は、可動ステージが排出位置から投入位置へと移動する際の厚み測定位置において、ワーク厚み測定用センサの補正値を算出するとともに、可動ステージが投入位置から排出位置へと移動する際の厚み測定位置において、ワークの厚みを算出する。
これにより、投入位置Aと排出位置Cとの間を往復する可動ステージ30に対して測定動作を実行することにより、大きなレイアウト変更を伴わずに、既存の積層装置100に厚み測定装置20を採用することができるという効果を奏する。