以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、車両1の駆動系の構成を示す図である。図1に示すように、車両1は、駆動源としてエンジン2を備える。エンジン2は、燃焼室における爆発圧力によりピストンを往復動させる。ピストンにはクランクシャフト2aが連結されている。ピストンの往復運動がクランクシャフト2aの回転運動に変換される。
クランクシャフト2aには、トルクコンバータ3が接続される。トルクコンバータ3は、フロントカバー3a、ポンプインペラ3b、タービンランナ3c、タービンシャフト3dおよびステータ3eを備える。フロントカバー3aは、クランクシャフト2aに接続される。フロントカバー3aの内部には、作動流体が封入される。ポンプインペラ3bは、フロントカバー3aに固定される。タービンランナ3cは、フロントカバー3a内において、ポンプインペラ3bに対向配置される。タービンランナ3cには、タービンシャフト3dが接続される。ステータ3eは、ポンプインペラ3bおよびタービンランナ3cの間の内周側に配置される。
ポンプインペラ3bおよびタービンランナ3cは、それぞれ多数のブレードを備える。ポンプインペラ3bが回転すると、作動流体がタービンランナ3cに送出され、タービンランナ3cが回転する。これにより、クランクシャフト2aからタービンランナ3cに動力が伝達される。つまり、エンジン2の動力がタービンシャフト3dに伝達される。
ステータ3eは、タービンランナ3cから送出された作動流体の流動方向を変化させてポンプインペラ3bに還流させる。これにより、ポンプインペラ3bの回転が促進され、トルクコンバータ3の伝達動力が増幅される。
タービンシャフト3dには、前後進切換機構4が接続される。前後進切換機構4は、ダブルピニオン式の遊星歯車20、前進クラッチ40および後進ブレーキ50を備える。前後進切換機構4は、前進クラッチ40および後進ブレーキ50の締結状態および解放状態が切り替えられることにより、プライマリ軸5の回転方向を切り換える。なお、前後進切換機構4の詳細は後述する。
プライマリ軸5には、無段変速機6が接続される。無段変速機6は、プライマリプーリ7、セカンダリプーリ8、ベルト9を含む構成とされる。プライマリプーリ7は、プライマリ軸5に接続される。セカンダリプーリ8は、プライマリ軸5に対して平行に配置された平行軸11に接続される。ベルト9は、例えばリンクプレートをローカーピン10で連結したチェーンベルトで構成される。ベルト9は、プライマリプーリ7とセカンダリプーリ8との間に張架され、プライマリプーリ7とセカンダリプーリ8との間で動力を伝達する。
プライマリプーリ7は、一対のシーブ7a、7bで構成される。一対のシーブ7a、7bは、プライマリ軸5の軸方向に対向して設けられる。また、一対のシーブ7a、7b双方の対向面が、略円錐形状のコーン面7cとなっており、このコーン面7cによってベルト9が張架される溝が形成されている。
同様に、セカンダリプーリ8は、一対のシーブ8a、8bで構成される。一対のシーブ8a、8bは、平行軸11の軸方向に対向して設けられる。また、一対のシーブ8a、8b双方の対向面が、略円錐形状のコーン面8cとなっており、このコーン面8cによってベルト9が張架される溝が形成される。
そして、プライマリプーリ7のシーブ7bは、油圧により、プライマリ軸5の軸方向の位置が変化する。また、セカンダリプーリ8のシーブ8aは、油圧により、平行軸11の軸方向の位置が変化する。
このように、プライマリプーリ7、セカンダリプーリ8は、一対のシーブ7a、7b、一対のシーブ8a、8bそれぞれの対向間隔が可変である。そのため、コーン面7c、8cの対向間隔が変わり、ベルト9が張架される位置が変わる。例えば、コーン面7cの対向間隔が広くなると、プライマリプーリ7においてベルト9が張架される溝の幅が広くなる。その結果、コーン面7cのうち、ベルト9の張架される位置が内径側となり、ベルト9の巻き付け径が小さくなる。一方、コーン面7cの対向間隔が狭くなると、プライマリプーリ7においてベルト9が張架される溝の幅が狭くなる。その結果、コーン面7cのうち、ベルト9の張架される位置が外径側となり、巻き付け径が大きくなる。こうして、無段変速機6は、プライマリ軸5と平行軸11との間の伝達動力を無段変速する。
平行軸11は、ギヤ機構12を介して出力軸13に接続される。出力軸13は、車輪14に接続され、ギヤ機構12を介して伝達された動力を車輪14に出力する。なお、出力軸13には、出力軸13の回転を規制するためのパーキングギヤ15が設けられる。
図2は、前後進切換機構4の断面図である。図2に示すように、前後進切換機構4の遊星歯車20(図1参照)は、サンギヤ21、第1ピニオンギヤ22a、第2ピニオンギヤ22b、ピニオンシャフト23、リングギヤ24およびキャリア25を備える。サンギヤ21は、タービンシャフト3dに接続され、タービンシャフト3dと一体的に回転する。第1ピニオンギヤ22aおよび第2ピニオンギヤ22bは、ピニオンシャフト23に回転可能に支持される。
第1ピニオンギヤ22aは、サンギヤ21の回転方向に互いに離隔して複数設けられる。第2ピニオンギヤ22bは、第1ピニオンギヤ22aと同様、サンギヤ21の回転方向に互いに離隔して複数設けられる。第1ピニオンギヤ22aおよび第2ピニオンギヤ22bは、サンギヤ21の回転方向に交互に配される。サンギヤ21は、第1ピニオンギヤ22aに噛合する。第2ピニオンギヤ22bは、リングギヤ24に噛合する。1つの第1ピニオンギヤ22aと、1つの第2ピニオンギヤ22bとが互いに噛合している。
ピニオンシャフト23の両端は、キャリア25に支持されている。キャリア25は、プライマリ軸5に接続され、プライマリ軸5と一体的に回転する。プライマリ軸5は、タービンシャフト3dと同軸上に配置される。
タービンシャフト3dには、クラッチドラム26が連結される。タービンシャフト3dとクラッチドラム26とが一体回転する。クラッチドラム26の内周面、および、キャリア25の外周面の間には、前進クラッチ40が介在される。前進クラッチ40は、摩擦プレート41、42、ピストン部材43、係止部材44およびバネ45を備える。摩擦プレート41は、タービンシャフト3dの軸方向(以下では、単に軸方向と呼ぶ)に沿って複数離隔して設けられる。摩擦プレート41は、軸方向に沿って移動可能にクラッチドラム26の内周面に設けられる。
摩擦プレート42は、軸方向に沿って、複数離隔して設けられる。摩擦プレート42は、キャリア25の外周面に、摩擦プレート41と対向するように設けられる。
ピストン部材43は、軸方向に沿って移動可能に、クラッチドラム26の内周面側に配置される。係止部材44は、ピストン部材43に対向するように、クラッチドラム26の内周面側に固定される。ピストン部材43と係止部材44との間には、バネ45が介在される。
クラッチドラム26の内周面と、ピストン部材43とに挟まれた空間は、FWD油圧室46として形成される。FWD油圧室46には、詳しくは後述するように、作動油が供給される。
前進クラッチ40は、FWD油圧室46に作動油が供給されていないときに解放状態となる。解放状態では、バネ45の弾性力により、ピストン部材43が摩擦プレート41から離隔している。このとき、前進クラッチ40では、摩擦プレート41と摩擦プレート42とが離隔し、動力伝達が遮断される。
一方、前進クラッチ40は、FWD油圧室46に作動油が供給されたときに締結状態となる。FWD油圧室46に作動油が供給されると、バネ45の弾性力に抗してピストン部材43が摩擦プレート41側に移動される。前進クラッチ40では、摩擦プレート41が摩擦プレート42側に移動すると、摩擦プレート41、42が接触する。これにより、クラッチドラム26とキャリア25とが一体的に回転する。キャリア25が回転すると、プライマリ軸5が回転する。
また、リングギヤ24およびケーシング27の間には、後進ブレーキ50が介在される。後進ブレーキ50は、摩擦プレート51、52、ピストン部材53、係止部材54およびバネ55を備える。摩擦プレート51は、軸方向に沿って複数離隔して設けられる。摩擦プレート51は、軸方向に沿って移動可能にケーシング27の内周面に設けられる。摩擦プレート52は、軸方向に沿って、複数離隔して設けられる。摩擦プレート52は、リングギヤ24の外周面に、摩擦プレート51と対向するように設けられる。
ピストン部材53は、軸方向に沿って移動可能に、ケーシング27の内周面側に配置される。係止部材54は、ピストン部材53に対向するように、ケーシング27の内周面側に固定される。ピストン部材53と係止部材54との間には、バネ55が介在される。
ケーシング27の内周面と、ピストン部材53とに挟まれた空間は、REB油圧室56として形成される。REB油圧室56には、詳しくは後述するように、作動油が供給される。
後進ブレーキ50は、REB油圧室56に作動油が供給されていないときに解放状態となる。解放状態では、バネ55の弾性力により、ピストン部材53が摩擦プレート51から離隔している。このとき、後進ブレーキ50では、摩擦プレート51と摩擦プレート52とが離隔する。これにより、リングギヤ24は回転自在となる。
一方、後進ブレーキ50は、REB油圧室56に作動油が供給されたときに締結状態となる。REB油圧室56に作動油が供給されると、バネ55の弾性力に抗してピストン部材53が摩擦プレート51側に移動される。後進ブレーキ50では、摩擦プレート51が摩擦プレート52側に移動すると、摩擦プレート51、52が接触する。これにより、リングギヤ24は回転不能となる。
車両1には、不図示のシフトレバーが設けられている。シフトレバーは、パーキングレンジ、ドライブレンジ、ニュートラルレンジ、リバースレンジの4つのシフトポジションに切替可能である。詳しくは後述するが、シフトレバーがドライブレンジに保持された状態では、FWD油圧室46に作動油が供給され、REB油圧室56から作動油が排出される。したがって、シフトポジションがドライブレンジである場合には、前進クラッチ40が締結状態となり、後進ブレーキ50が解放状態になる。このとき、タービンシャフト3d、サンギヤ21、クラッチドラム26、キャリア25およびプライマリ軸5が同一方向に一体回転する。
また、シフトレバーがリバースレンジに保持された状態では、REB油圧室56に作動油が供給され、FWD油圧室46から作動油が排出される。したがって、シフトポジションがリバースレンジである場合には、後進ブレーキ50が締結状態となり、前進クラッチ40が解放状態になる。このとき、第1ピニオンギヤ22aがサンギヤ21と逆方向に回転する。また、第2ピニオンギヤ22bが、第1ピニオンギヤ22aと逆方向、すなわち、サンギヤ21と同一方向に回転する。
ただし、後進ブレーキ50が締結状態にあるため、リングギヤ24の回転が規制されている。そのため、第2ピニオンギヤ22bは、リングギヤ24からの反力により、サンギヤ21の回転方向と逆方向に公転する。これにより、プライマリ軸5が、タービンシャフト3dと逆方向に回転する。このように、前後進切換機構4は、前進クラッチ40および後進ブレーキ50を締結状態また解放状態に切り換えることにより、プライマリ軸5の回転方向を切り換える。
詳しくは後述するが、車両1にはシフト制御装置が設けられる。シフト制御装置は、シフトレバーに対するレンジ切替操作に応じて、油圧の供給経路を切り替える。本実施形態においては、レンジ切替操作に応じて電動バルブが制御されるシフトバイワイヤ方式のシフト制御装置が設けられる。また、本実施形態のシフト制御装置は、出力軸13の回転を規制する規制状態、および、出力軸13の回転を許容する解除状態に切り替わるパーキングロック機構を備える。以下では、まず、パーキングロック機構の概略構成について説明した後に、シフト制御装置について詳述する。
図3Aおよび図3Bは、パーキングロック機構100の概略図であり、図4Aおよび図4Bは、パーキングロック機構100の解除状態を示す図である。パーキングロック機構100は、図3Aに示すように、出力軸13に設けられるパーキングギヤ15を含む。パーキングギヤ15は、例えば出力軸13にスプライン係合され、出力軸13と一体回転する。なお、パーキングギヤ15は、車両の車軸と一体回転すればよく、例えば車軸に設けられてもよい。
パーキングロック機構100は、パーキングポール102およびパーキングロッド104を備える。パーキングポール102は、基部102aと、基部102aから延在するアーム部102bと、を備える。アーム部102bの先端側には、パーキングギヤ15に噛合する爪部102cが設けられている。パーキングポール102は、基部102aが回転自在に支持されている。パーキングポール102は、不図示のスプリングにより、常時、図3Aおよび図4A中時計回り方向の付勢力が作用している。パーキングポール102は、図3Aおよび図4Aに示すように、パーキングロッド104によって、基部102aを軸として揺動される。
パーキングロッド104は、軸方向に移動自在に設けられている。パーキングロッド104は、図3Bに示すように、先端にスライドカム104aが設けられている。スライドカム104aは、先端に向かって径が漸増する円錐形状に形成されている。スライドカム104aは、図3Aに示すように、パーキングポール102のアーム部102bに隣接している。パーキングロッド104が基端側に移動した状態では、図3Aにクロスハッチングで示すように、スライドカム104aの先端側に、パーキングポール102のアーム部102bが接触している。この状態では、パーキングポール102が、スライドカム104aによって、図3A中、反時計回り方向に押圧される。これにより、爪部102cがパーキングギヤ15に噛合して、パーキングギヤ15の回転が規制される。
一方、パーキングロッド104が先端側に移動すると、図4Aに示すように、パーキングポール102のアーム部102bが、スプリングの付勢力により時計回り方向に揺動する。この状態では、爪部102cがパーキングギヤ15から離隔し、パーキングギヤ15の回転が許容される。このように、パーキングポール102は、スライドカム104aの外径差によって揺動し、パーキングギヤ15の回転が規制または許容される。
パーキングロッド104の基端側には、パーキングプレート106が連結されている。パーキングプレート106は、図3Bに示すように、不図示のシャフトが挿通される軸部106aを備えている。パーキングプレート106は、軸部106aがシャフトに回転自在に支持されている。パーキングプレート106には、軸部106aから径方向に突出する伝達部106bおよび突出部106cが設けられている。伝達部106bには、上記のパーキングロッド104の基端側が連結されている。
パーキングロック機構100は、作動機構120を備えている。作動機構120は、シリンダ122を備える。シリンダ122内には、ピストン124が摺動自在に設けられている。ピストン124にはピストンロッド124aが設けられている。シリンダ122の内部空間は、ピストン124を境にして、ピストンロッド124a側に位置するロッド室122aと、ピストンロッド124aと反対側に位置する油圧室122bと、に仕切られる。ロッド室122aには、バネ等からなる付勢部材126が設けられている。付勢部材126は、ピストン124を油圧室122b側に常時付勢している。
ピストンロッド124aの先端は、ピストン124が最も油圧室122b側に位置した状態でもロッド室122aから突出している。ピストンロッド124aの先端には嵌合孔が形成されている。ピストンロッド124aの嵌合孔に、パーキングプレート106の突出部106cの先端部が進入している。
パーキングロック機構100は、保持機構130を備えている。保持機構130は、保持ピン132、シリンダ134、保持部材136、およびスプリング138を備えている。保持ピン132は、先端132a側を略直角に屈曲させた棒状の部材であり、支持部132bが回転自在に支持されている。
保持部材136は、シリンダ134の作動室134a内に摺動自在に設けられた弁体で構成される。保持部材136は、基端面136aを作動室134aに臨ませている。保持部材136は、作動室134aに作動油が供給されると、基端面136aが押圧されて先端136b側に移動する。保持部材136の先端136bは保持ピン132に接触している。保持部材136が先端136b側に移動すると、保持ピン132に対して、図3B中、反時計回り方向に回転させる付勢力が作用する。スプリング138は、保持ピン132に対して、図3B中、時計回り方向に回転させる付勢力を作用させている。
保持ピン132の先端132aは、ピストンロッド124aに形成されたロック溝124bに嵌合する。図4Bに示すように、ロック溝124bは、ピストンロッド124aのうち、ピストン124がロッド室122a側に最も移動した状態で、シリンダ122の外側に露出する位置に形成されている。ピストン124がロッド室122a側に最も移動した状態では、ロック溝124bが、保持ピン132の先端132aの回転軌跡上に位置する。
例えば、シフトポジションがパーキングレンジにある場合、パーキングロック機構100は、図3Aおよび図3Bに示す規制状態となる。この規制状態では、図3Bに示すように、ピストン124が最も油圧室122b側に位置している。つまり、規制状態では、ピストンロッド124aが、最もシリンダ122内に没入した状態となっている。この状態では、図3Aに示すように、パーキングポール102の爪部102cが、パーキングギヤ15に噛合している。爪部102cがパーキングギヤ15に噛合した状態では、パーキングギヤ15の回転が規制される。したがって、規制状態では、出力軸13(車軸)の回転が規制される。
一方、シフトポジションが例えばドライブレンジにある場合、パーキングロック機構100は、図4Aおよび図4Bに示す解除状態となる。この解除状態では、図4Bに示すように、ピストン124が最もロッド室122a側に位置している。つまり、解除状態では、ピストンロッド124aが最も突出した状態となっている。ピストンロッド124aが突出すると、突出部106cが押圧され、パーキングプレート106が図中時計回り方向に回転する。
パーキングプレート106が回転すると、伝達部106bに設けられたパーキングロッド104が移動する。パーキングロッド104が移動すると、図4Aに示すように、パーキングポール102が揺動(傾倒)する。この状態では、パーキングポール102の爪部102cが、パーキングギヤ15から離隔している。爪部102cがパーキングギヤ15から離隔した状態では、パーキングギヤ15の回転、すなわち出力軸13(車軸)の回転が許容される。このとき、保持ピン132の先端132aが、ロック溝124bに嵌合する。これにより、パーキングロック機構100は、解除状態が維持されることとなる。
以上のように、パーキングロック機構100は、出力軸13(車軸)の回転を規制する規制状態、および、出力軸13(車軸)の回転を許容する解除状態に切り替わる。本実施形態では、前進クラッチ40および後進ブレーキ50への油圧の供給経路を切り替えるシフト制御装置により、パーキングロック機構100が規制状態または解除状態に切り替えられる。以下に、シフト制御装置について詳述する。
図5は、本実施形態のシフト制御装置200を説明する図である。シフト制御装置200は、上記の前後進切換機構4への作動油の供給を制御する。シフト制御装置200は、作動油の供給源となるポンプ202を備える。ポンプ202は、エンジン2を動力源として駆動される。また、シフト制御装置200は、ポンプ202と、作動油の複数の供給先とを接続する油圧回路200aを備える。ここでは、作動油の供給先として、前進クラッチ40のFWD油圧室46、後進ブレーキ50のREB油圧室56、パーキングロック機構100の油圧室122b(ピストン124)および作動室134a(保持部材136)が油圧回路200aに接続されている。
ポンプ202は、吸入口がタンクTに接続され、吐出口が吐出油路204に接続されている。吐出油路204には、不図示のレギュレータが設けられており、ポンプ圧が所定の圧力に調圧されて油圧回路200aに導かれる。吐出油路204には、供給油路206および分岐供給油路208が並列に接続されている。
供給油路206には、リニアバルブ210が設けられている。リニアバルブ210は、トランスミッションコントロールユニットTCUによって電気的に制御される。トランスミッションコントロールユニットTCUは、各作動油の供給先の要求油圧を演算し、演算結果に応じてリニアバルブ210の開度を制御する。
リニアバルブ210は、電流値に応じて開度がリニアに制御される。ただし、リニアバルブ210は、未通電状態において全開状態となり、供給油路206の開度を最大とする(Normal Hi)。また、リニアバルブ210は、電流値が一定以上になると、供給油路206を遮断する。このとき、リニアバルブ210は、供給油路206のうち、リニアバルブ210よりも下流側と、タンク通路212とを連通させる。タンク通路212は、タンクTに接続されている。
供給油路206には、第1レンジ切替弁220が接続されている。すなわち、供給油路206は、上流側が吐出油路204に接続され、下流側が第1レンジ切替弁220に接続されている。ポンプ202から吐出される作動油は、吐出油路204および供給油路206を介して第1レンジ切替弁220に導かれる。供給油路206は、作動油の供給源であるポンプ202と、第1レンジ切替弁220とを接続する。
第1レンジ切替弁220は、シフトレバーのシフトポジションに応じて、ポンプ202と作動油の供給先(前進クラッチ40のFWD油圧室46、後進ブレーキ50のREB油圧室56)との接続経路を切り替える。第1レンジ切替弁220は、スプール穴に摺動自在に設けられたスプール弁220aを備える。本実施形態では、スプール弁220aをクロスハッチングで示す。また、第1レンジ切替弁220には、スプール弁220aの一端が面するパイロット室220bと、スプール弁220aの他端が面するバネ室220cと、を備える。バネ室220cには、スプリング220dが設けられている。スプリング220dは、スプール弁220aをパイロット室220b側に付勢する。
パイロット室220bにパイロット圧が作用していない場合、スプリング220dの付勢力により、スプール弁220aが図示の初期位置に保持される。一方、パイロット室220bにパイロット圧が作用すると、スプリング220dの付勢力に抗して、スプール弁220aがバネ室220c側に移動する。第1レンジ切替弁220は、パイロット室220bの油圧に応じて、切替位置が多段階に切り替わる。
第1レンジ切替弁220のスプール穴には、作動油の油路に接続される7個のポート(図中a、b、c、d、e、f、g)が図示のように形成されている。各ポートは、スプール弁220aに形成されたランド部の位置に応じて開閉される。ポートa、cには、後進用アクチュエータ油路222が接続されている。後進用アクチュエータ油路222は、後進ブレーキ50のREB油圧室56に接続される。つまり、後進用アクチュエータ油路222は、下流端がREB油圧室56に接続され、その上流側が分岐してポートa、cに接続されている。
ポートb、fには、タンクTに連通するタンク通路212がそれぞれ接続されている。ポートdには、上記の供給油路206が接続されている。ポートe、gには、前進用アクチュエータ油路224が接続されている。前進用アクチュエータ油路224は、前進クラッチ40のFWD油圧室46に接続される。つまり、前進用アクチュエータ油路224は、下流端がFWD油圧室46に接続され、その上流側が分岐してポートe、gに接続されている。
本実施形態では、走行用アクチュエータとして、前進クラッチ40および後進ブレーキ50が設けられている。また、走行用アクチュエータに接続される複数のアクチュエータ油路として、後進用アクチュエータ油路222および前進用アクチュエータ油路224が設けられている。そして、複数のアクチュエータ油路および供給油路206に、第1レンジ切替弁220が接続されている。
また、第1レンジ切替弁220には、ノッチ機構230が設けられている。ノッチ機構230は、スプール穴の内周面に形成されたノッチ溝230a、230bを備える。ノッチ溝230a、230bは、パイロット室220bとポートgとの間に形成されている。ノッチ溝230a、230bは、スプール弁220aの軸方向に離隔して設けられている。ノッチ溝230aは、ノッチ溝230bよりもパイロット室220b側に位置している。
また、ノッチ機構230は、スプリング230cおよびボール230dを備える。スプール弁220aのうち、最もパイロット室220b側に設けられるランド部には、収容穴220eが形成されている。収容穴220eは、スプール弁220aのランド部の外周面から径方向に窪む。スプリング230cおよびボール230dは、収容穴220eに収容されている。スプリング230cは、スプール弁220aの径方向外方にボール230dを付勢する。ボール230dは、スプリング230cの付勢力により、収容穴220eから一部が突出し、スプール穴の内周面に押圧される。
スプール弁220aが軸方向に移動すると、収容穴220eがノッチ溝230a、230bに径方向に対向する。収容穴220eがノッチ溝230a、230bに対向すると、スプリング230cの付勢力により、ボール230dの一部がノッチ溝230a、230b内に進入する。このとき、ノッチ溝230a、230bは、ボール230dの一部が収容穴220e内に留まる寸法関係を維持している。これにより、スプール弁220aの軸方向のガタつきが抑制される。
分岐供給油路208には、第2レンジ切替弁240が接続されている。すなわち、分岐供給油路208は、上流側が吐出油路204に接続され、下流側が第2レンジ切替弁240に接続されている。ポンプ202から吐出される作動油は、吐出油路204および分岐供給油路208を介して第2レンジ切替弁240に導かれる。分岐供給油路208は、作動油の供給源であるポンプ202と、第2レンジ切替弁240とを接続する。
第2レンジ切替弁240は、スプール穴に摺動自在に設けられたスプール弁240aを備える。本実施形態では、スプール弁240aをクロスハッチングで示す。また、第2レンジ切替弁240には、スプール弁240aの一端が面するパイロット室240bと、スプール弁240aの他端が面するバネ室240cと、を備える。バネ室240cには、スプリング240dが設けられている。スプリング240dは、スプール弁240aをパイロット室240b側に付勢する。
パイロット室240bにパイロット圧が作用していない場合、スプリング240dの付勢力により、スプール弁240aが図示の初期位置に保持される。一方、パイロット室240bにパイロット圧が作用すると、スプリング240dの付勢力に抗して、スプール弁240aがバネ室240c側に移動する。
第2レンジ切替弁240のスプール穴には、作動油の油路に接続される3個のポート(図中h、i、j)が図示のように形成されている。各ポートは、スプール弁240aに形成されたランド部の位置に応じて開閉される。
ポートhには、上記の分岐供給油路208が接続されている。ポートiには、パーキング用油路242が接続されている。パーキング用油路242は、作動機構120に接続されている。上記のように、パーキングロック機構100は、油圧で作動する作動機構120を含み、作動機構120の作動によりパーキングギヤ15の回転を規制または許可する。
パーキング用油路242は、作動機構120の油圧室122bに接続される。つまり、パーキング用油路242は、下流端が油圧室122bに接続され、上流端がポートiに接続されている。したがって、第2レンジ切替弁240は、作動油の供給源であるポンプ202と、パーキング用油路242との間に設けられていると言える。ポートjには、タンクTに連通するタンク通路212が接続されている。
また、油圧回路200aは、作動油路244を備える。作動油路244の上流端は、供給油路206のうち、リニアバルブ210と第1レンジ切替弁220との間に接続されている。作動油路244の下流端は、パーキングロック機構100の作動室134aに接続されている。リニアバルブ210により流量調整された作動油が、作動油路244を介して作動室134aに導かれる。
また、油圧回路200aは、パイロット油路246を備える。パイロット油路246は、上流側が吐出油路204に接続される。つまり、パイロット油路246は、供給源であるポンプ202に対して、供給油路206と並列に接続されている。パイロット油路246の下流側は、第2レンジ切替弁240のパイロット室240bに接続される。このように、パイロット油路246は、上流側がポンプ202に対して供給油路206と並列に接続され、下流側が第2レンジ切替弁240のパイロット室240bに接続されている。
パイロット油路246には、減圧弁248および制御バルブ250が設けられている。減圧弁248は、作動油を一定の圧力に減圧する。制御バルブ250は、パイロット油路246のうち、減圧弁248よりも下流側に設けられる。
制御バルブ250は、トランスミッションコントロールユニットTCUによって電気的に制御される。トランスミッションコントロールユニットTCUは、シフトレバーのシフトポジションに応じて、制御バルブ250の開度を制御する。制御バルブ250は、電流値に応じて開度がリニアに制御される。すなわち、制御バルブ250は、パイロット油路246の開度を多段階に制御可能である。ただし、制御バルブ250は、未通電状態においてパイロット油路246を遮断する(Normal Low)。このとき、制御バルブ250は、パイロット油路246のうち、制御バルブ250よりも下流側と、タンク通路212とを連通させる。
また、油圧回路200aは、分岐油路252を備える。分岐油路252は、パイロット油路246のうち、制御バルブ250と第2レンジ切替弁240との間と、第1レンジ切替弁220のパイロット室220bとを接続する。したがって、制御バルブ250は、パイロット油路246のうち、分岐油路252との接続箇所とポンプ202との間に設けられていると言える。
制御バルブ250によって制御されるパイロット油路246のパイロット圧に応じて、第1レンジ切替弁220および第2レンジ切替弁240の位置が切り替わる。換言すれば、制御バルブ250により、第1レンジ切替弁220および第2レンジ切替弁240の位置が制御される。
図5に示すように、制御バルブ250によりパイロット油路246が閉じられている場合、第1レンジ切替弁220および第2レンジ切替弁240が図示の初期位置に保持される。第1レンジ切替弁220は、初期位置において、アクチュエータ油路(後進用アクチュエータ油路222および前進用アクチュエータ油路224)と、供給油路206との連通を遮断する。このとき、第1レンジ切替弁220は、アクチュエータ油路(後進用アクチュエータ油路222および前進用アクチュエータ油路224)を、タンク通路212に接続する。
また、第2レンジ切替弁240は、初期位置において、パーキング用油路242とポンプ202(分岐供給油路208)との連通を遮断する。このとき、第2レンジ切替弁240は、パーキング用油路242を、タンク通路212に接続する。パーキングロック機構100は、作動機構120(油圧室122b)への油圧の供給が停止されている場合、パーキングギヤ15の回転を規制する(図3A参照)。したがって、制御バルブ250によりパイロット油路246が閉じられている場合、パーキングギヤ15の回転が規制される。
次に、上記の構成からなるシフト制御装置200の動作について説明する。トランスミッションコントロールユニットTCUは、シフトレバーのシフトポジションに応じて、リニアバルブ210および制御バルブ250の開度を制御する。
図6は、パーキングレンジに対応するシフト制御装置200の回路状態を示す図である。シフトレバーのシフトポジションがパーキングレンジにある場合、トランスミッションコントロールユニットTCUは、リニアバルブ210を、一定以上の電流値で通電し、制御バルブ250を未通電に制御する。これにより、リニアバルブ210および制御バルブ250は、いずれも図示のクローズ位置に保持される。以下では、油圧回路200aの図6に示す状態を、パーキング回路状態と呼ぶ。
このパーキング回路状態では、ポンプ202から吐出された作動油が、図中、太線で示すように導かれる。詳細には、パーキング回路状態では、リニアバルブ210が全閉となり、供給油路206のうちリニアバルブ210よりも下流側への作動油の供給が停止されている。
また、制御バルブ250がクローズ位置に保持されており、パイロット油路246のうち、制御バルブ250よりも下流側がタンク通路212に連通している。したがって、第1レンジ切替弁220のパイロット室220b、および、第2レンジ切替弁240のパイロット室240bがタンク圧となる。その結果、第1レンジ切替弁220は、スプリング220dの付勢力により、図示の初期位置に保持される。同様に、第2レンジ切替弁240は、スプリング240dの付勢力により、図示の初期位置に保持される。
第1レンジ切替弁220が初期位置に保持されている状態では、FWD油圧室46およびREB油圧室56の双方が、第1レンジ切替弁220を介してタンク通路212に連通している。したがって、パーキング回路状態では、前進クラッチ40および後進ブレーキ50の双方が解放状態となる。その結果、エンジン2の動力が、前後進切換機構4によって遮断される。
また、第2レンジ切替弁240が初期位置に保持されている状態では、分岐供給油路208とパーキング用油路242との連通が遮断される。このとき、パーキング用油路242は、第2レンジ切替弁240を介してタンク通路212に連通する。したがって、パーキング回路状態では、作動機構120の油圧室122bがタンク圧となる。これにより、パーキングロック機構100は、図6に示すように、パーキングギヤ15の回転を規制する規制状態となる。なお、リニアバルブ210のクローズ位置では、作動油路244が、リニアバルブ210を介してタンク通路212に連通している。
以上のように、パーキング回路状態では、リニアバルブ210および制御バルブ250がクローズ位置に保持される。このとき、第1レンジ切替弁220は、FWD油圧室46およびREB油圧室56をタンクTに連通させ、第2レンジ切替弁240は、油圧室122bをタンクTに連通させる。その結果、前進クラッチ40および後進ブレーキ50の双方が解放状態となり、パーキングロック機構100が規制状態となる。
図7は、ドライブレンジに対応するシフト制御装置200の回路状態を示す図である。シフトレバーのシフトポジションがドライブレンジにある場合、トランスミッションコントロールユニットTCUは、各作動油の供給先の要求油圧を演算し、演算結果に応じた電流値でリニアバルブ210を通電する。したがって、リニアバルブ210の開度は可変制御される。また、トランスミッションコントロールユニットTCUは、制御バルブ250を第1の電流値で通電する。したがって、制御バルブ250は、第1の電流値に応じた所定の開度に維持される。
なお、以下では、油圧回路200aの図7に示す状態を、ドライブ回路状態と呼ぶ。ドライブ回路状態では、リニアバルブ210および制御バルブ250の双方が、図示のようにオープン位置に保持される。また、第1の電流値に制御されているときの制御バルブ250の位置、すなわち、ドライブ回路状態における制御バルブ250の位置を、第1オープン位置と呼ぶ。
このドライブ回路状態では、ポンプ202から吐出された作動油が、図中、太線で示すように導かれる。詳細には、ドライブ回路状態では、リニアバルブ210により流量調整された作動油が、第1レンジ切替弁220および作動室134aに供給される。
また、ドライブ回路状態では、制御バルブ250が第1オープン位置に保持されており、パイロット室220bおよびパイロット室240bに第1のパイロット圧が作用する。パイロット室220bに第1のパイロット圧が作用すると、スプール弁220aがスプリング220dの付勢力に抗してバネ室220c側に移動する。
スプール弁220aの移動により、収容穴220eとノッチ溝230aとが対向すると、ボール230dがノッチ溝230aに嵌合する。このとき、スプリング220dの付勢力およびノッチ機構230による抵抗が、パイロット室220bのパイロット圧とバランスし、スプール弁220aが図7に示す位置に保持される。以下では、図7に示す第1レンジ切替弁220の位置を、第1切替位置と呼ぶ。ノッチ機構230により、第1レンジ切替弁220が安定的に第1切替位置に保持される。
第1レンジ切替弁220の第1切替位置では、前進クラッチ40のFWD油圧室46が供給油路206と連通する。したがって、リニアバルブ210で流量調整された作動油が、FWD油圧室46に供給される。これにより、前進クラッチ40が締結状態となり、車両1の前進走行が可能となる。また、第1レンジ切替弁220の第1切替位置では、後進ブレーキ50のREB油圧室56がタンク通路212に連通する。したがって、後進ブレーキ50が解放状態となる。
また、パイロット室240bに第1のパイロット圧が作用すると、スプール弁240aがスプリング240dの付勢力に抗してバネ室240c側に移動する。パイロット室240bに第1のパイロット圧以上の圧力が作用すると、スプール弁240aはフルストロークした状態となる。したがって、ドライブ回路状態では、第2レンジ切替弁240においてスプール弁240aがフルストロークした状態となる。以下では、スプール弁240aがフルストロークした状態を、第2レンジ切替弁240の切替位置と呼ぶ。
第2レンジ切替弁240が切替位置に保持されている状態では、分岐供給油路208とパーキング用油路242とが連通する。したがって、ドライブ回路状態では、油圧室122bの油圧でピストン124が作動する。これにより、パーキングロック機構100は、図7に示すように、パーキングギヤ15の回転を許容する解除状態となる。
また、ドライブ回路状態では、作動油路244を介して、作動室134aに作動油が供給される。そのため、保持ピン132が保持部材136によって押圧され、ロック溝124bに嵌合する。これにより、ピストン124の移動が規制され、パーキングロック機構100が解除状態に保持される。すなわち、ドライブ回路状態において、パーキングロック機構100が、解除状態から規制状態に切り替わってしまう事態が回避される。
以上のように、ドライブ回路状態では、リニアバルブ210がオープン位置に保持され、制御バルブ250が第1オープン位置に保持される。このとき、第1レンジ切替弁220は、FWD油圧室46をポンプ202に連通させ、REB油圧室56をタンクTに連通させる。また、第2レンジ切替弁240は、油圧室122bをポンプ202に連通させる。その結果、前進クラッチ40が締結状態となり、後進ブレーキ50が解放状態となる。このとき、パーキングロック機構100は解除状態に保持される。これにより、ドライブ回路状態では、車両1の前進走行が可能となる。
図8は、ニュートラルレンジに対応するシフト制御装置200の回路状態を示す図である。シフトレバーのシフトポジションがニュートラルレンジにある場合、トランスミッションコントロールユニットTCUは、リニアバルブ210を、一定以上の電流値で通電する。これにより、リニアバルブ210は、図示のクローズ位置に保持される。また、トランスミッションコントロールユニットTCUは、制御バルブ250を第2の電流値で通電する。したがって、制御バルブ250は、第2の電流値に応じた所定の開度に維持される。
なお、以下では、油圧回路200aの図8に示す状態を、ニュートラル回路状態と呼ぶ。ニュートラル回路状態では、制御バルブ250が、図示のようにオープン位置に保持される。ここで、ニュートラル回路状態における制御バルブ250の第2の電流値は、ドライブ回路状態における制御バルブ250の第1の電流値よりも大きい。したがって、ニュートラル回路状態では、ドライブ回路状態よりも、制御バルブ250の開度が大きい。ここでは、第2の電流値に制御されているときの制御バルブ250の位置、すなわち、ニュートラル回路状態における制御バルブ250の位置を、第2オープン位置と呼ぶ。
このニュートラル回路状態では、ポンプ202から吐出された作動油が、図中、太線で示すように導かれる。詳細には、ニュートラル回路状態では、リニアバルブ210が全閉となり、供給油路206のうちリニアバルブ210よりも下流側への作動油の供給が停止されている。
また、ニュートラル回路状態では、制御バルブ250が第2オープン位置に保持されており、パイロット室220bおよびパイロット室240bに第2のパイロット圧が作用する。なお、第2のパイロット圧は、ドライブ回路状態で作用する第1のパイロット圧よりも大きい。パイロット室220bに第2のパイロット圧が作用すると、スプール弁220aがスプリング220dの付勢力に抗してバネ室220c側に移動する。
スプール弁220aの移動により、収容穴220eとノッチ溝230bとが対向すると、ボール230dがノッチ溝230bに嵌合する。このとき、スプリング220dの付勢力およびノッチ機構230による抵抗が、パイロット室220bのパイロット圧とバランスし、スプール弁220aが図8に示す位置に保持される。以下では、図8に示す第1レンジ切替弁220の位置を、第2切替位置と呼ぶ。ノッチ機構230により、第1レンジ切替弁220が安定的に第2切替位置に保持される。
第1レンジ切替弁220の第2切替位置では、FWD油圧室46およびREB油圧室56の双方が、第1レンジ切替弁220を介してタンク通路212に連通している。したがって、ニュートラル回路状態では、前進クラッチ40および後進ブレーキ50の双方が解放状態となる。その結果、エンジン2の動力が、前後進切換機構4によって遮断される。
また、上記のように、パイロット室240bに第1のパイロット圧以上の圧力が作用すると、スプール弁240aはフルストロークする。第2のパイロット圧は、第1のパイロット圧よりも大きいため、ニュートラル回路状態においても、第2レンジ切替弁240においてスプール弁240aがフルストロークした状態となる。したがって、ニュートラル回路状態では、第2レンジ切替弁240が切替位置に保持される。そのため、ドライブ回路状態と同様、パーキングロック機構100が、図8に示すように、パーキングギヤ15の回転を許容する解除状態となる。
以上のように、ニュートラル回路状態では、リニアバルブ210がクローズ位置に保持され、制御バルブ250が第2オープン位置に保持される。このとき、第1レンジ切替弁220は、FWD油圧室46およびREB油圧室56をタンクTに連通させる。また、第2レンジ切替弁240は、油圧室122bをポンプ202に連通させる。その結果、前進クラッチ40および後進ブレーキ50の双方が解放状態となり、パーキングロック機構100が規制状態となる。
図9は、リバースレンジに対応するシフト制御装置200の回路状態を示す図である。シフトレバーのシフトポジションがリバースレンジにある場合、トランスミッションコントロールユニットTCUは、各作動油の供給先の要求油圧を演算し、演算結果に応じた電流値でリニアバルブ210を通電する。したがって、リニアバルブ210の開度は可変制御される。また、トランスミッションコントロールユニットTCUは、制御バルブ250を第3の電流値で通電する。したがって、制御バルブ250は、第3の電流値に応じた所定の開度に維持される。
なお、以下では、油圧回路200aの図9に示す状態を、リバース回路状態と呼ぶ。リバース回路状態では、制御バルブ250が、図示のようにオープン位置に保持される。ここで、リバース回路状態における制御バルブ250の第3の電流値は、ニュートラル回路状態における制御バルブ250の第2の電流値よりも大きい。したがって、リバース回路状態では、ニュートラル回路状態よりも、制御バルブ250の開度が大きい。ここでは、第3の電流値に制御されているときの制御バルブ250の位置、すなわち、リバース回路状態における制御バルブ250の位置を、第3オープン位置と呼ぶ。
このリバース回路状態では、ポンプ202から吐出された作動油が、図中、太線で示すように導かれる。詳細には、リバース回路状態では、リニアバルブ210により流量調整された作動油が、第1レンジ切替弁220および作動室134aに供給される。
また、リバース回路状態では、制御バルブ250が第3オープン位置に保持されており、パイロット室220bおよびパイロット室240bに第3のパイロット圧が作用する。なお、第3のパイロット圧は、ニュートラル回路状態で作用する第2のパイロット圧よりも大きい。パイロット室220bに第3のパイロット圧が作用すると、スプール弁220aがスプリング220dの付勢力に抗してバネ室220c側にフルストロークし、スプール弁220aが図9に示す位置に保持される。以下では、図9に示す第1レンジ切替弁220の位置を、第3切替位置と呼ぶ。
なお、第1レンジ切替弁220の第3切替位置では、ノッチ機構230が機能していない。スプール弁220aがフルストロークした状態では、ノッチ機構230が機能せずとも、スプール弁220aが安定的に保持される。
第1レンジ切替弁220の第3切替位置では、後進ブレーキ50のREB油圧室56が供給油路206と連通する。したがって、リニアバルブ210で流量調整された作動油が、REB油圧室56に供給される。これにより、後進ブレーキ50が締結状態となり、車両1の後進走行が可能となる。また、第1レンジ切替弁220の第3切替位置では、前進クラッチ40のFWD油圧室46がタンク通路212に連通する。したがって、前進クラッチ40が解放状態となる。
また、パイロット室240bに、第1のパイロット圧よりも大きい第3のパイロット圧が作用するため、リバース回路状態においても、第2レンジ切替弁240が切替位置に保持される。そのため、リバース回路状態では、ドライブ回路状態と同様、パーキングロック機構100が、図9に示すように、パーキングギヤ15の回転を許容する解除状態となる。
また、リバース回路状態では、作動油路244を介して、作動室134aに作動油が供給される。そのため、保持ピン132が保持部材136によって押圧され、ロック溝124bに嵌合する。これにより、ピストン124の移動が規制され、パーキングロック機構100が解除状態に保持される。すなわち、リバース回路状態において、パーキングロック機構100が、解除状態から規制状態に切り替わってしまう事態が回避される。
以上のように、リバース回路状態では、リニアバルブ210がオープン位置に保持され、制御バルブ250が第3オープン位置に保持される。このとき、第1レンジ切替弁220は、REB油圧室56をポンプ202に連通させ、FWD油圧室46をタンクTに連通させる。また、第2レンジ切替弁240は、油圧室122bをポンプ202に連通させる。その結果、後進ブレーキ50が締結状態となり、前進クラッチ40が解放状態となる。このとき、パーキングロック機構100は解除状態に保持される。これにより、リバース回路状態では、車両1の後進走行が可能となる。
本実施形態によれば、第1レンジ切替弁220に接続される供給油路206と、第2レンジ切替弁240に接続されるパイロット油路246とが、ポンプ202に対して並列に接続されている。そのため、仮に、リニアバルブ210または第1レンジ切替弁220に不具合が生じたとしても、第2レンジ切替弁240を切り替えることができる。したがって、車両1の走行中に不具合が生じた場合にも、パーキングロック機構100を解除状態に切り替え、あるいは、保持することができる。これにより、車両1を安全な場所に退避させることが可能となる。
また、本実施形態によれば、走行用アクチュエータ(前進クラッチ40および後進ブレーキ50)への作動油の供給経路が、1つの第1レンジ切替弁220によって切り替えられる。したがって、走行用アクチュエータへの作動油の供給経路が、複数のレンジ切替弁で切り替えられる場合に比べて、不具合の発生リスクが低減される。
以上、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
上記実施形態における油圧回路200aの回路構成は一例に過ぎず、適宜設計変更可能である。
また、上記実施形態では、走行用アクチュエータとして、前進クラッチ40および後進ブレーキ50が設けられる場合について説明した。しかしながら、走行用アクチュエータは、前進クラッチ40および後進ブレーキ50に限らず、走行用に用いられるアクチュエータであれば、その具体的な構成は限定されない。
また、上記実施形態におけるパーキングロック機構100の構成は一例にすぎない。パーキングロック機構100は、油圧で作動する作動機構を含み、作動機構の作動によりパーキングギヤの回転を規制または許可するものであればよい。
また、上記実施形態では、ノッチ機構230が設けられる場合について説明したが、ノッチ機構230は、必須の構成ではない。
また、上記実施形態では、レンジ切替操作がシフトレバーによってなされるシフト操作装置について説明した。しかしながら、レンジ切替操作は、例えば、プッシュボタンやダイヤル、タッチパネル等によって行われてもよく、シフト操作装置の構成は上記実施形態に限定されるものではない。
また、上記実施形態では、無段変速装置について説明したが、例えば、プラネタリAT等、他の自動変速装置にも適用可能である。