以下、液体噴射装置の一実施形態を、図面に従って説明する。
図1に示すように、液体噴射装置の一例としてのインクジェット式プリンター11は、支持台12に支持された用紙などの記録媒体13を支持台12の表面に沿って搬送方向Yに搬送させる搬送部14と、搬送される記録媒体13に液体の一例としてのインクを噴射して印刷を行う印刷部15とを備えている。
支持台12、搬送部14、及び印刷部15は、ハウジングやフレームなどによって構成されるプリンター本体16に組み付けられている。支持台12は、インクジェット式プリンター11において、記録媒体13の幅方向(図1では紙面と直交する方向)に延在している。また、プリンター本体16には、カバー17が開閉可能に取り付けられている。
搬送部14は、搬送方向Yにおける支持台12の上流側及び下流側にそれぞれ配置される搬送ローラー対18,19と、搬送方向Yにおける搬送ローラー対19の下流側に配置されて記録媒体13を支持しながら案内する案内板20とを備えている。そして、搬送部14は、搬送ローラー対18,19が搬送モーター(図示略)に駆動されて記録媒体13を挟持しながら回転することで、支持台12の表面及び案内板20の表面に沿って記録媒体13を搬送方向Yに搬送する。
印刷部15は、記録媒体13の搬送方向Yと直交(交差)する記録媒体13の幅方向となる走査方向Xに沿って延設されたガイド軸22,23と、そのガイド軸22,23に案内されて走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ25とを備えている。キャリッジ25は、キャリッジモーター24(図2参照)の駆動に伴い走査方向Xに往復移動する。
キャリッジ25の下端部には、インクを噴射するノズル26を有した液体噴射ヘッド27が少なくとも1つ(本実施形態では2つ)取り付けられている。すなわち、液体噴射ヘッド27は、その下面が鉛直方向Zにおいて支持台12と所定の間隔を置いて対向する姿勢でキャリッジ25に取り付けられ、キャリッジモーター24(図2参照)の駆動に伴いキャリッジ25と共に走査方向Xに往復移動する。液体噴射ヘッド27同士は、走査方向Xに所定の距離だけ離れ、且つ搬送方向Yに所定の距離だけずれるように配置されている。
一方、キャリッジ25の上側には、インクカートリッジ30から液体噴射ヘッド27へインクを供給する供給機構31の一部が取り付けられている。供給機構31は、インクカートリッジ30側となる上流側から液体噴射ヘッド27側となる下流側に向かう供給方向Aに沿ってインクを流動させる。インクカートリッジ30と供給機構31は、インクの種類ごとに少なくとも1組(本実施形態では5組)設けられている。
5つのインクカートリッジ30は、複数(本実施形態では5つ)の装着部32にそれぞれ着脱自在に装着され、それぞれ異なる色(種類)のインクを収容している。一例としてシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)、白(W)の各色のインクが各インクカートリッジ30に収容されている。各インクカートリッジ30から供給されるインクを液体噴射ヘッド27から噴射することにより、記録媒体13へのカラー印刷などが行われる。一例として、濃色の記録媒体13の場合、白印刷(下地印刷)を行った後、その上にカラー印刷が行われる。
供給機構31は、インクカートリッジ30から液体噴射ヘッド27にインクを供給する供給経路33を備えている。供給経路33には、上流側から順に、供給方向Aにインクを流動させる供給ポンプ34、インク中の気泡や異物を捕捉するフィルターユニット35、供給経路33を流れるインクの流れを変化させてインクを撹拌するスタティックミキサー36、インクを貯留する液体貯留室37、及びインクの圧力を調整する圧力調整ユニット38が設けられている。
供給ポンプ34は、ポンプ室の容積が可変のダイヤフラムポンプ40と、ダイヤフラムポンプ40よりも上流側に配置された吸入弁41と、ダイヤフラムポンプ40よりも下流側に配置された吐出弁42とを有している。吸入弁41及び吐出弁42は、下流側へのインクの流れを許容する一方、上流側へのインクの流れを阻害する一方向弁によって構成されている。
このため、供給ポンプ34は、ダイヤフラムポンプ40のポンプ室の容積が増大するのに伴ってインクカートリッジ30側から吸入弁41を介してインクを吸引し、ポンプ室の容積が減少するのに伴って液体噴射ヘッド27側へ吐出弁42を介してインクを吐出する。また、フィルターユニット35は、プリンター本体16のカバー17と対応する位置に配置され、供給経路33に対して着脱可能に装着されている。そして、フィルターユニット35は、カバー17を開くことで交換可能になっている。
なお、インクジェット式プリンター11は、搬送ローラー対18,19を駆動する搬送モーター(図示略)、キャリッジモーター24(図2参照)、及び供給ポンプ34などの駆動制御や、液体噴射ヘッド27の各ノズル26からのインクの噴射制御などを行う制御部39を備えている。そして、液体噴射ヘッド27は、キャリッジモーター24の駆動に伴いキャリッジ25と共に走査方向Xに往復移動しながら各ノズル26から支持台12上を搬送される記録媒体13に対してインクを噴射することで印刷を行う。
図2に示すように、走査方向Xにおける支持台12の一端と隣り合う位置には、液体噴射ヘッド27のメンテナンスを行うためのメンテナンス機構43が設けられている。本実施形態において、液体噴射ヘッド27が印刷のために記録媒体13に対してインクを噴射する領域であって記録媒体13が搬送される可能性のある領域は、搬送領域PAとされている。この場合、メンテナンス機構43は、走査方向Xにおけるキャリッジ25の走査範囲内であって搬送領域PAの外側(図2では右側)に配置される。
メンテナンス機構43は、走査方向Xにおいて搬送領域PAに近い位置から順に並ぶように配置された、液体受容部44を有したフラッシングユニット45、クリーニング装置の一例としてのワイパーユニット46、及び上端が開口した有底四角箱状の2つのキャップ部47を有したキャップユニット48を備えている。
キャリッジ25及び液体噴射ヘッド27は、印刷を行わないときや電源オフ時などに、キャップユニット48が配置されたホーム位置HPで待機する。すなわち、液体噴射ヘッド27は、搬送方向Yと直交(交差)する走査方向Xにおいて、搬送領域PAとホーム位置HPとの間を移動可能になっている。
2つの液体噴射ヘッド27がホーム位置HPに移動されたときには、2つのキャップ部47が2つの液体噴射ヘッド27と上下方向でそれぞれ対向する。各キャップ部47は、キャッピングモーター49の駆動によって、各液体噴射ヘッド27に接触可能な位置と、各液体噴射ヘッド27から離れる位置との間で昇降される。
各キャップ部47は、複数のノズル26を囲むように各液体噴射ヘッド27に接触することにより各液体噴射ヘッド27とで閉空間を形成するキャッピングを行うことで各ノズル26内のインクの乾燥を抑制する。各液体噴射ヘッド27は、印刷を行わないときなどに、ホーム位置HPにおいて各キャップ部47によってキャッピングされる。
各キャップ部47内は、各キャップ部47に一端側が接続された吸引チューブ(図示略)を介して吸引ポンプ50によって吸引可能になっている。そして、各液体噴射ヘッド27は、ホーム位置HPにおいて各キャップ部47によってキャッピングされた状態で、吸引ポンプ50を駆動することにより各キャップ部47内(閉空間)を吸引することで、各ノズル26から各液体噴射ヘッド27内の増粘インクや気泡などが各キャップ部47内に排出される、所謂ヘッドクリーニングが行われる。なお、キャッピングモーター49及び吸引ポンプ50は、制御部39(図1参照)によって駆動制御される。
ワイパーユニット46は、液体噴射ヘッド27の下面に付着したインクを払拭可能な第1払拭機構51と、液体噴射ヘッド27の下面に接触して当該下面に付着したインクを保持可能な第2払拭機構52と、第1払拭機構51及び第2払拭機構52を支持する矩形板状のベース部材53とを備えている。ワイパーユニット46は、一対のレール部54により、搬送方向Yに沿って往復移動可能に案内されるようになっている。
また、フラッシングユニット45は、各ノズル26の目詰まりなどを予防または解消する目的で印刷とは無関係に各ノズル26からインク滴を吐出する、所謂フラッシングを行う際に吐出されるフラッシングインクを液体受容部44で受容する。なお、フラッシングユニット45は、図2おける右側の液体噴射ヘッド27がワイパーユニット46の上方に位置するときに液体受容部44が図2における左側の液体噴射ヘッド27の下方に位置するように、配置されている。
図3に示すように、ヘッドユニット55は、キャリッジ25の下面部に取り付けられるもので、キャリッジ25に取り付けるためのブラケット部56と、ブラケット部56から下方へ突出する直方体状の液体噴射ヘッド27とを備えている。液体噴射ヘッド27は、ブラケット部56から下方へ突出する直方体状の流路形成部57と、流路形成部57の下側に固定された矩形板状のヘッド本体58とを備えている。図3におけるヘッド本体58の下面には、複数列(一例として10列)のノズル列59が形成されている。
また、ヘッド本体58の下面側には、複数(一例として5つ)の貫通孔60aを有する板状のカバー部材60が、ノズル列59を構成する各ノズル26(図4参照)が開口するノズル開口面61(本例では下面)の一部を覆うように取着されている。複数のノズル列59は、1つの貫通孔60aに所定列数(一例として2列)ずつ露出している。
本例では、ノズル開口面61のうち貫通孔60aにより露出する領域がノズル周辺領域62となっている。つまり、液体噴射ヘッド27におけるノズル26を有する面は、ノズル周辺領域62と対応する部分にノズル周辺領域62を露出させる貫通孔60aを有したカバー部材60によって覆われている。なお、ノズル周辺領域62には、各ノズル26(図4参照)の開口領域が含まれている。
図4及び図5に示すように、カバー部材60は、ノズル開口面61のうち貫通孔60aにより露出させたノズル周辺領域62以外の部分を覆う状態で、係止等の固定構造により液体噴射ヘッド27に固定されている。そして、図3に示すように、液体噴射ヘッド27の底面全体が、ワイパーユニット46の払拭の対象となるノズル面63となっている。ノズル面63は、ノズル周辺領域62(つまり貫通孔60a内の領域)と、ノズル周辺領域62以外の領域である非ノズル周辺領域であって、ノズル周辺領域62よりもカバー部材60の厚み(本例では0.1mm)分だけ突出している突出面64とを備えている。
したがって、ノズル周辺領域62と突出面64(非ノズル周辺領域)との間には、段差65が存在する。すなわち、ノズル面63は、ノズル周辺領域62の部分で凹部となるとともに突出面64の部分で凸部となる凹凸面によって構成されている。なお、カバー部材60は、例えば金属(例えばステンレス鋼等)等によって構成される。
図4に示すように、ノズル列59は、搬送方向Yに沿って一定ピッチで配置された多数個(例えば180個または360個)のノズル26からなる。各ノズル列59は、インクカートリッジ30(図1参照)のインク色に対応する1色のインクをそれぞれ噴射する。もちろん、CMYKの4色及び白(W)以外の色のインクを噴射してもよく、例えばライトマゼンタ、ライトシアン、ライトイエロー、灰、オレンジ等の色のインクを噴射してもよい。また、液体噴射ヘッド27の色数は、CMYK4色、CMY3色、黒1色などでもよい。さらに、複数のノズル列59中にインクの噴射されない不使用ノズル列が存在してもよい。
また、ノズル開口面61には、インクをはじき易い撥液処理(撥インク処理)が施されており、その表面には撥液膜66(撥インク膜)が成膜されている。撥液膜66は、例えばアルキル基を含むポリオルガノシロキサンを主材料とする薄膜下地層とフッ素を含む長鎖高分子基を有する金属アルコキシドからなる撥液膜層とから構成してもよい。本実施形態で使用するインクは、一例として顔料インクである。顔料インクでは、その分散媒として使用される液中に多数の顔料の粒子が分散している。シアン、マゼンタ、及びイエローの顔料としては平均粒径約100nmの有機顔料、黒の顔料としては平均粒径約120nmのカーボンブラック(無機顔料)、白の顔料としては平均粒径約320nmの酸化チタン(無機顔料)などが採用される。
本例のインクは水系インクであり、分散媒である水の中に多数の顔料の粒子が分散している。このため、本例では、撥液膜66を、水系インクをはじく機能をもつ撥水膜としている。撥液膜66は、例えばアルキル基を含むポリオルガノシロキサンを主材料とする薄膜下地層とフッ素を含む長鎖高分子基を有する金属アルコキシドからなる撥液膜層とから構成してもよい。撥液膜66はノズル開口面61に対する払拭(ワイピング)が繰り返し行われることで徐々に摩耗し、撥液膜66が一定以上摩耗すると、その撥液性が低下する。なお、撥液膜66は、撥液コーティング膜でもよいし、撥液性の単分子膜でもよく、その膜厚及び撥液処理方法は任意に選択できる。
撥液膜66の撥液性が低下した状態では、ノズル周辺領域62に対するインクミスト等の液体の濡れ角(接触角)が小さくなる。このため、ノズル周辺領域62に付着した複数のインクミストは濡れ広がって、比較的広い1つのインク滴(付着インク)に成長し易い。このため、こうした付着インクは、ノズル26の近傍に存在したり、一部のノズル26の開口を塞いだり、さらにノズル26内へ流れ込んだりする虞もある。
また、ノズル26の近傍に付着インクが存在した状態でノズル26からインク滴を噴射すると、その噴射されたインク滴が付着インクと接触し、インク滴の飛翔曲がりを誘発する。こうしたインク滴の飛翔曲がりは、記録媒体13上へのインク滴の着弾位置(つまり印刷ドット形成位置)が想定位置からずれる原因になり、印刷画質の低下を招く。このような理由から、払拭(ワイピング)による撥液膜66の摩耗はなるべく抑える必要がある。
一方、カバー部材60は金属プレートを所定形状に加工して製造され、カバー部材60の表面には撥液処理が施されていない。このため、突出面64(非ノズル周辺領域)は、ノズル周辺領域62よりも撥液性が低くなっている。つまり、突出面64に対するインクの濡れ角が、ノズル周辺領域62に対するインクの濡れ角よりも小さくなっている。
図5に示すように、液体噴射ヘッド27は、走査方向Xに一定ピッチで並列に配列された複数個(本実施形態では例えば5個)の記録ヘッド67(単位ヘッド)を有している。記録ヘッド67の下面となるノズル開口面61の周縁部はカバー部材60により覆われ、2列分のノズル26を含むノズル周辺領域62が、カバー部材60に穿孔された貫通孔60aから露出している。
各ノズル26は流路形成部57内を通る各インク流路57aと連通し、各インク流路57aは図示しない流路を通じて流路形成部57の上面から上方へ突出する複数本の供給管部55aに連通している。各供給管部55aは、キャリッジ25上に搭載された圧力調整ユニット38(図1参照)の供給口と図示しない流路を介して連通している。
したがって、各圧力調整ユニット38(図1参照)からは、対応する記録ヘッド67のノズル26に、対応する各色のインクが各供給管部55a及び各インク流路57a等を通じて供給される。なお、液体噴射ヘッド27は、ノズル列を3列以上有する1つのヘッドからなる構成でもよい。
次に、ワイパーユニット46の構成について詳述する。
図6及び図7に示すように、ワイパーユニット46は、ベース部材53の下面に固定されたガイド部68を介して一対のレール部54に沿って案内され、搬送方向Yに沿って往復移動可能となっている。プリンター本体16(図1参照)側には、動力源となる電動モーター69が設けられ、電動モーター69の出力軸70の先端部にはピニオン71が取着されている。
また、ワイパーユニット46のベース部材53の側部には搬送方向Yに沿って延びるラック72が設けられ、ラック72はピニオン71と噛合している。そして、電動モーター69が正転駆動すると、ピニオン71が正転し、ラック72と共にワイパーユニット46が搬送方向Yへ移動する。一方、電動モーター69が逆転駆動すると、ピニオン71が逆転し、ラック72と共にワイパーユニット46が搬送方向Yとは反対の方向へ移動する。
ワイパーユニット46の第1払拭機構51は、ベース部材53上の中央部に配置され、ノズル面63に付着したインクを払拭可能な第1払拭部の一例としての可撓性を有した払拭部材73と、払拭部材73を昇降可能に支持するアクチュエーター74とを備えている。アクチュエーター74の下部にはナット部75が設けられ、ナット部75は搬送方向Yに延びるとともにモーター76によって回転駆動されるボールネジ77と螺合している。
そして、モーター76が正転駆動すると、ボールネジ77が正転し、アクチュエーター74と共に払拭部材73がベース部材53上で搬送方向Yへ移動する。一方、モーター76が逆転駆動すると、ボールネジ77が逆転し、アクチュエーター74と共に払拭部材73がベース部材53上で搬送方向Yとは反対の方向へ移動する。なお、払拭部材73は例えば矩形板状のゴムワイパーなどによって構成され、アクチュエーター74は例えばエアシリンダーなどによって構成される。また、電動モーター69、モーター76、及びアクチュエーター74は、制御部39(図1参照)によって駆動制御される。
ワイパーユニット46の第2払拭機構52は、ノズル面63に接触してノズル面63に付着したインクを吸収して保持可能な第2払拭部の一例としての長尺状の吸収部材78と、未使用の吸収部材78を巻いた状態で支持する繰出リール79と、繰出リール79から繰り出されて使用済みとなった吸収部材78を巻き取って支持する巻取リール80とを備えている。
吸収部材78は、紐状、糸状、布状(帯状)に形成されたものを用いることができるが、本実施形態では紐状に形成されたものが用いられている。紐状の吸収部材78としては、単糸繊度(1本の細さ)が10μm以下の超極細繊維(マイクロファイバー)を束ねて紐状にしたものが好ましく、単糸の材質としてはポリエステル(海島型超極細繊維、約2μm)、ナイロン(ポリアミド)、ポリエステルとナイロンを合せたもの(分離型超極細繊維、約5μm)が好ましい。また、上記材質のうち1種類(例えばポリエステル)の単糸を束ねて紐状にしてもよいし、複数種類(例えばポリエステルとナイロン)の単糸を束ねて紐状にしてもよい。
吸収部材78を糸状に形成する場合には、材質としてポリエステルまたはナイロンを用いることが好ましい。また、吸収部材78を布状に形成する場合には、単糸繊度(1本の細さ)が約2~10μmの超極細繊維(マイクロファイバー)をニットまたは平織にしたものを用いることが好ましく、材質としてはポリエステル(海島型超極細繊維、約2μm)またはポリエステルとナイロンとを合せたもの(分離型超極細繊維、約5μm)を用いることが好ましい。具体例としては、東レ株式会社製のトレシー(登録商標)が挙げられ、トレシーの品名としてはトレシーPKやトレシーPWが挙げられる。
繰出リール79及び巻取リール80は、ボールネジ77を挟んで対向するように走査方向Xに所定の間隔を開けて配置されている。繰出リール79は、ベース部材53上に立設された一対の繰出支持柱81によって搬送方向Yに延びる軸線を中心に回転可能に支持され、一対の繰出支持柱81のうちの一方に取り付けられたモーター82によって回転駆動されるようになっている。同様に、巻取リール80は、ベース部材53上に立設された一対の巻取支持柱83によって搬送方向Yに延びる軸線を中心に回転可能に支持され、一対の巻取支持柱83のうちの一方に取り付けられたモーター84によって回転駆動されるようになっている。
ベース部材53上における繰出リール79及び巻取リール80との間には、吸収部材78を支持する一対の支持機構85がボールネジ77を挟んで対向するように走査方向Xに所定の間隔を開けて立設されている。この場合、一対の支持機構85は、払拭部材73の搬送方向Yに沿う移動を妨げないように、走査方向Xにおけるノズル面63の幅よりも広い間隔を開けて配置されている。
支持機構85は、例えば制御部39(図1参照)によって駆動制御されるエアシリンダーによって構成され、上下方向に移動するロッド86を有している。ロッド86の先端には、吸収部材78を支持する支持部材87が設けられている。支持部材87は、図8に示すように、吸収部材78を受ける凹状の受け部87aを有している。したがって、2つのロッド86を上下方向に移動させることで、2つの受け部87a間に位置する吸収部材78の高さを変更することが可能となっている。
なお、図7及び図9に示すように、払拭部材73の搬送方向Y側の面における上端部には、2つの支持部材87間において吸収部材78と係合して吸収部材78を保持可能な保持溝73aが走査方向Xに延びるように形成されている。この場合、保持溝73aは、吸収部材78の半分程度を収容した状態で吸収部材78を保持可能になっている。
図6及び図7に示すように、モーター82,84は、例えばサーボモーターによって構成され、内部に回転トルクを検出するトルク検出部(図示略)を有している。モーター82,84は、制御部39(図1参照)によって駆動制御される。そして、制御部39(図1参照)は、トルク検出部(図示略)からの検出信号に基づいてモーター82,84の駆動と回転方向とを制御することにより、一対の支持機構85間に繰り出された吸収部材78に所定の張力を付与する。
また、繰出リール79と一対の支持機構85のうち繰出リール79に近い方の支持機構85との間には、繰出リール79から繰り出された未使用の吸収部材78にクリーニング液を吹き付けて塗布するクリーニング液供給部88が配置されている。クリーニング液は、吸収部材78によるノズル面63に対する払拭性を向上するために吸収部材78に塗布され、例えば水などによって構成される。もちろん、クリーニング液供給部88を配置せずに、繰出リール79に巻かれた状態の吸収部材78に対してクリーニング液を予め含浸させるようにしてもよい。
次に、インクジェット式プリンター11の作用について説明する。
インクジェット式プリンター11では、キャリッジ25が走査方向Xに移動する途中で液体噴射ヘッド27の各ノズル26からインク滴を噴射して記録媒体13に1走査分の記録を施す印字動作と、記録媒体13を次の印字位置まで搬送する搬送動作とを交互に繰り返すことで、記録媒体13への印刷が進められる。この印刷中、ワイパーユニット46は、走査方向Xに移動する液体噴射ヘッド27と接触しないように、搬送方向Yとは反対側に退避した退避位置に待機している。
そして、インクジェット式プリンター11では、所定のタイミング(インクカートリッジ30の交換時、ノズル26からのインクの噴射不良の発生時、印刷前など)で、ノズル26から液体噴射ヘッド27内のインクを強制的に吸引して排出させる、ヘッドクリーニングが行われる。このヘッドクリーニングを行う場合には、まず、キャリッジモーター24の駆動によりキャリッジ25及び液体噴射ヘッド27をキャップユニット48が配置されたホーム位置HPに移動させた後、キャッピングモーター49を駆動してキャップ部47を上昇させることにより、液体噴射ヘッド27をキャップ部47によってキャッピングする。
続いて、吸引ポンプ50を駆動することによりキャップ部47内(閉空間)を吸引すると、各ノズル26から液体噴射ヘッド27内の増粘インクや気泡などがキャップ部47内に排出される。このとき、キャップ部47内は、各ノズル26から排出されたインクで満たされた状態になるので、ノズル面63におけるキャップ部47内と対応する領域は、インクに浸かる。
そして、各ノズル26から所定量のインクが排出されると、吸引ポンプ50が停止される。続いて、キャップ部47に備えられた大気開放弁(図示略)が開かれ、キャップ部47内が大気開放された状態で所定時間だけ吸引ポンプ50が駆動されてキャップ部47内の空吸引が行われることによりキャップ部47内に残留するインクが排出される。続いて、キャッピングモーター49の駆動によりキャップ部47を下降させると、液体噴射ヘッド27からキャップ部47が離れる。
これにより、ヘッドクリーニングが完了する。ヘッドクリーニングが完了した後は、ノズル面63におけるキャップ部47内と対応する領域がインクで濡れた状態になっているため、このインクを除去するべくノズル面63をワイパーユニット46で払拭する必要がある。
この場合、ノズル開口面61すなわちノズル周辺領域62は、撥液膜66で覆われているため、ノズル周辺領域62に付着した小さなインク滴(0.1mmの段差65よりも小さいインク滴)は、液体噴射ヘッド27からキャップ部47が離れる際に流れる。このため、ノズル周辺領域62には、大きなインク滴(0.1mmの段差65以上の大きいインク滴)が付着した状態で残る。
そして、ワイパーユニット46でノズル面63の払拭を行う場合、本実施形態のインクジェット式プリンター11では、第1メンテナンス動作、第2メンテナンス動作、及び第3メンテナンス動作の3種類の払拭動作を行うことが可能になっている。以下、第1メンテナンス動作、第2メンテナンス動作、及び第3メンテナンス動作について順次説明する。
<第1メンテナンス動作>
第1メンテナンス動作は、払拭部材73によってノズル面63を払拭する払拭動作であり、吸収部材78を使用することなく払拭部材73だけでノズル面63の払拭を行う。そして、第1メンテナンス動作によるノズル面63の払拭を行う場合には、まず、キャリッジモーター24の駆動によりキャリッジ25を、液体噴射ヘッド27のノズル面63がワイパーユニット46によって払拭される位置に移動させる。
続いて、アクチュエーター74を駆動することにより、払拭部材73の高さを、払拭部材73がノズル面63を払拭可能な所定の高さに合わせる。続いて、一対の支持機構85を駆動することにより、これらの支持部材87間に位置する吸収部材78の高さを、ノズル面63と接触しない高さ以下にする。続いて、電動モーター69を駆動してワイパーユニット46を退避位置から搬送方向Yに移動させると、図10に示すように、払拭部材73が弾性変形しながらノズル面63に接触する。
引き続き、ワイパーユニット46を搬送方向Yに移動させると、払拭部材73がノズル面63上を摺動してノズル面63全体を払拭し、ノズル面63に付着していたインクIが払拭部材73によって掻き取られて除去される。これにより、第1メンテナンス動作が完了する。その後、アクチュエーター74を駆動することにより払拭部材73の高さを払拭部材73がノズル面63に接触しない高さ以下にした状態で、電動モーター69を駆動してワイパーユニット46を搬送方向Yとは反対側に移動させて退避位置に戻す。
また、払拭部材73がノズル面63から掻き取ったインクIは、図14に示すように、払拭部材73における搬送方向Y側の面に付着する。このため、払拭部材73に付着したインクIを除去するクリーニングを行う必要がある。そして、払拭部材73に付着したインクIを除去するクリーニングを行う場合には、図14に示すように、まず、モーター76及び一対の支持機構85を駆動することで、払拭部材73における搬送方向Y側の面の上端部に一対の支持機構85の支持部材87間に位置する吸収部材78を接触させた状態にする。
この状態で、払拭部材73を停止させながら、一対の支持機構85を駆動することにより払拭部材73における搬送方向Y側の面の上端部に接触した吸収部材78を下方に向かって摺動させると、図15に示すように、払拭部材73における搬送方向Y側の面に付着したインクIが吸収部材78によって吸収されて除去される。このとき、吸収部材78を下げることによって吸収部材78が弛む分はモーター84の駆動により巻取リール80で巻き取られるため、吸収部材78に付与される張力は維持される。
その後、吸収部材78を払拭部材73における搬送方向Y側の面の下端まで摺動させることで、払拭部材73のクリーニングが完了する。なお、払拭部材73に付着したインクIが吸収部材78によって吸収しきれなくても、このインクIは吸収部材78によって払拭部材73から削ぎ落とされる。なお、吸収部材78におけるインクIで汚れた部分は、吸収部材78を巻取リール80で巻き取ることで、一対の支持機構85のうち巻取リール80に近い方の支持機構85よりも下流側(巻取リール80側)へ移動される。
<第2メンテナンス動作>
第2メンテナンス動作は、吸収部材78を払拭部材73によって付勢することにより、吸収部材78をノズル面63に接触させてノズル面63を払拭する払拭動作であり、吸収部材78及び払拭部材73の両方を使用してノズル面63の払拭を行う。そして、第2メンテナンス動作によるノズル面63の払拭を行う場合には、まず、キャリッジモーター24の駆動によりキャリッジ25を、液体噴射ヘッド27のノズル面63がワイパーユニット46によって払拭される位置に移動させる。
続いて、アクチュエーター74を駆動することにより、払拭部材73の高さを、払拭部材73がノズル面63を払拭可能な所定の高さに合わせる。続いて、一対の支持機構85を駆動することにより、これらの支持部材87間に位置する吸収部材78の高さを、払拭部材73の保持溝73aと同じ高さにする。続いて、モーター76を駆動することにより払拭部材73を移動させて、保持溝73aに吸収部材78が保持された状態にする。
この状態で、電動モーター69を駆動してワイパーユニット46を退避位置から搬送方向Yに移動させると、図11に示すように、吸収部材78よりも先に払拭部材73が弾性変形しながらノズル面63に接触する。
引き続き、ワイパーユニット46を搬送方向Yに移動させると、払拭部材73がノズル面63上を摺動してノズル面63を払拭し、図12に示すように、払拭部材73及び吸収部材78の両方がノズル面63に接触した状態となる。この状態では払拭部材73の弾性復元力が吸収部材78をノズル面63に押し付ける押圧力として作用する。すなわち、払拭部材73が吸収部材78を付勢することにより吸収部材78がノズル面63に押し付けられる。
引き続き、ワイパーユニット46を搬送方向Yに移動させると、払拭部材73が吸収部材78をノズル面63に押し付けた状態で払拭部材73及び吸収部材78の両方がノズル面63を摺動することで、ノズル面63に付着したインクIが払拭される。引き続き、ワイパーユニット46を搬送方向Yに移動させると、図13に示すように、払拭部材73がノズル面63から離れるとともに払拭部材73が吸収部材78をノズル面63に押し付けた状態となる。
引き続き、ワイパーユニット46を搬送方向Yに移動させると、吸収部材78がノズル面63上を摺動してノズル面63全体を払拭し、ノズル面63に付着していたインクIが吸収部材78によって吸収されて除去される。これにより、第2メンテナンス動作が完了する。
このように、第2メンテナンス動作では、払拭部材73が吸収部材78を付勢することにより吸収部材78がノズル面63に押し付けられた状態でノズル面63が払拭される。すなわち、第2メンテナンス動作では、ノズル面63に対する吸収部材78の接触状態が安定するので、ノズル面63が吸収部材78によって安定して払拭される。
その後、アクチュエーター74を駆動することにより払拭部材73の高さを払拭部材73がノズル面63に接触しない高さ以下にするとともに、一対の支持機構85を駆動することによりこれらの間に位置する吸収部材78を払拭部材73と同じ分だけ下げる。
このとき、吸収部材78を下げることによって吸収部材78が弛む分はモーター84の駆動により巻取リール80で巻き取られるため、吸収部材78に付与される張力は維持される。したがって、吸収部材78が払拭部材73の保持溝73aに保持された状態は維持される。続いて、電動モーター69を駆動してワイパーユニット46を搬送方向Yとは反対側に移動させて退避位置に戻す。
また、上述した第2メンテナンス動作を行うことで、払拭部材73における搬送方向Y側の面における保持溝73aよりも下側の領域には、図14に示すように、インクIが付着する。このため、この払拭部材73に付着したインクIを除去するクリーニングを行う必要がある。
そして、払拭部材73に付着したインクIを除去するクリーニングを行う場合には、図14に示す状態で、払拭部材73を停止させながら、一対の支持機構85を駆動することにより払拭部材73の保持溝73aに保持された吸収部材78を下方に向かって摺動させると、図15に示すように、払拭部材73における搬送方向Y側の面に付着したインクIが吸収部材78によって吸収されて除去される。このとき、吸収部材78を下げることによって吸収部材78が弛む分はモーター84の駆動により巻取リール80で巻き取られるため、吸収部材78に付与される張力は維持される。
その後、吸収部材78を払拭部材73における搬送方向Y側の面の下端まで摺動させることで、払拭部材73のクリーニングが完了する。なお、払拭部材73に付着したインクIが吸収部材78によって吸収しきれなくても、このインクIは吸収部材78によって払拭部材73から削ぎ落とされる。なお、吸収部材78におけるインクIで汚れた部分は、吸収部材78を巻取リール80で巻き取ることで、一対の支持機構85のうち巻取リール80に近い方の支持機構85よりも下流側(巻取リール80側)へ移動される。
<第3メンテナンス動作>
第3メンテナンス動作は、吸収部材78によってノズル面63を払拭する払拭動作であり、吸収部材78を払拭部材73によって付勢することなく吸収部材78だけでノズル面63の払拭を行う。そして、第3メンテナンス動作によるノズル面63の払拭を行う場合には、まず、キャリッジモーター24の駆動によりキャリッジ25を、液体噴射ヘッド27のノズル面63がワイパーユニット46によって払拭される位置に移動させる。
続いて、一対の支持機構85を駆動することにより、これらの支持部材87間に位置する吸収部材78の高さを、吸収部材78がノズル面63を払拭可能な所定の高さに合わせる。続いて、アクチュエーター74を駆動することにより、払拭部材73の高さを、払拭部材73がノズル面63と接触しない高さ以下にする。続いて、電動モーター69を駆動してワイパーユニット46を退避位置から搬送方向Yに移動させると、図16に示すように、吸収部材78がノズル面63に接触する。
引き続き、ワイパーユニット46を搬送方向Yに移動させると、吸収部材78がノズル面63上を摺動してノズル面63全体を払拭し、ノズル面63に付着していたインクIが吸収部材78によって吸収されて除去される。これにより、第3メンテナンス動作が完了する。その後、一対の支持機構85を駆動することにより、これらの支持部材87間に位置する吸収部材78の高さを、吸収部材78がノズル面63に接触しない高さ以下にした状態で、電動モーター69を駆動してワイパーユニット46を搬送方向Yとは反対側に移動させて退避位置に戻す。
このとき、吸収部材78を下げることによって吸収部材78が弛む分はモーター84の駆動により巻取リール80で巻き取られるため、吸収部材78に付与される張力は維持される。なお、吸収部材78におけるインクIで汚れた部分は、吸収部材78を巻取リール80で巻き取ることで、一対の支持機構85のうち巻取リール80に近い方の支持機構85よりも下流側(巻取リール80側)へ移動される。
以上、第1メンテナンス動作、第2メンテナンス動作、及び第3メンテナンス動作の説明をしたが、これらのうちのどれを選択するかは、ノズル面63に付着したインクIの量や粘度によって決めることが好ましい。例えば、ノズル面63に付着したインクIの量が多かったり、インクIの粘度が高かったりする場合には、ノズル面63をしっかりと払拭する必要があるため、第2メンテナンス動作を選択する。
また、例えば、ノズル面63に付着したインクIの量が少なかったり、インクIの粘度が低かったりする場合には、ノズル面63を第2メンテナンス動作レベルで払拭しなくても、ノズル面63に付着したインクIを除去できるので、第1メンテナンス動作や第3メンテナンス動作を選択する。
また、特に第2メンテナンス動作によるノズル面63の払拭を行う際に、吸収部材78がノズル周辺領域62に全く接触しない場合もあるが、ノズル周辺領域62に付着したインクIの大きさは段差65(0.1mm)以上であるため、こうした場合でも吸収部材78はノズル周辺領域62に付着したインクIに確実に接触する。このため、ノズル周辺領域62に付着したインクIは、吸収部材78によって確実に吸収されて除去される。
なお、ノズル面63には印刷中に発生するインクミストが付着するため、ヘッドクリーニング後だけでなく印刷中であっても第1メンテナンス動作、第2メンテナンス動作、及び第3メンテナンス動作のうちのいずれかによるノズル面63の払拭が所定のタイミングで行われる。
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)インクジェット式プリンター11は、払拭部材73によってノズル面63を払拭する第1メンテナンス動作と、吸収部材78を払拭部材73によって付勢することにより、吸収部材78をノズル面63に接触させる第2メンテナンス動作とを行うことが可能になっている。このため、特に第2メンテナンス動作を選択的に行うことで、吸収部材78をノズル面63に対して安定して接触させることができる。したがって、インクが噴射されるノズル26が配置されたノズル面63を安定して払拭することができる。
(2)インクジェット式プリンター11は、吸収部材78を払拭部材73によって付勢することなく、吸収部材78をノズル面63に接触させる第3メンテナンス動作を行うことが可能になっている。このため、第3メンテナンス動作を行うことで、ノズル面63に対するダメージを抑えたノズル面63の払拭を行うことができる。
(3)インクジェット式プリンター11は、払拭部材73に吸収部材78を接触させることにより、払拭部材73のクリーニングを行う。このため、吸収部材78を払拭部材73のクリーナーとしても利用することができる。
(4)インクジェット式プリンター11において、第1払拭部は可撓性を有した払拭部材73によって構成され、第2払拭部はインクIを吸収可能な長尺状の吸収部材78によって構成されている。このため、ノズル面63に付着したインクIを、払拭部材73によって掻き取ったり、吸収部材78によって吸収したりすることができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図17に示すように、払拭部材73の代わりに、第1払拭部として、上端に吸収部材78を保持可能な走査方向Xに延びる保持溝90aを有した略ブロック状をなす可撓性の払拭部材90を用いてもよい。この場合、第2メンテナンス動作によるノズル面63の払拭を行う場合には、払拭部材90が吸収部材78を付勢することで、図17に示すように吸収部材78だけがノズル面63に接触するようにしてもよいし、図18に示すように払拭部材90及び吸収部材78の両方がノズル面63に接触するようにしてもよい。さらにこの場合、第1メンテナンス動作によるノズル面63の払拭を行う場合には、図19に示すように、払拭部材90の先端部における保持溝90aを挟んだ2箇所がノズル面63に接触する。
・吸収部材78を用いたメンテナンス動作、すなわち第3メンテナンス動作において、図20に示すように、吸収部材78を振動させてもよいし、図21に示すように、吸収部材78を回転させてもよい。このようにすれば、吸収部材78によるノズル面63の払拭性を向上させることができる。なお、第2メンテナンス動作においても、吸収部材78を用いているため、吸収部材78を振動させたり、吸収部材78を回転させたりしてもよい。
・図22に示すように、払拭部材73を、断面視で鎌首状をなす可撓性の払拭部材91に変更してもよい。すなわち、払拭部材91は、ノズル面63を払拭する側の面の先端部に断面視で三角形状に突設された尖部91aと、尖部91aと隣り合うように形成されて吸収部材78を保持可能な保持溝91bとを有し、全体として略矩形板状をなしている。この場合、ワイパーユニット46は、吸収部材78が搬送方向Yに延び且つ払拭部材91よりも支持台12に近い側に位置するように、配置される。さらにこの場合、第1~第3メンテナンス動作を行う場合には、ワイパーユニット46を停止させた状態で、ノズル面63側を走査方向Xに移動させる。そして、第1メンテナンス動作を行う場合には、図23に示すように、払拭部材91の尖部91aがノズル周辺領域62まで入り込むので、突出面64に付着したインクだけでなくノズル周辺領域62に付着したインクも確実に払拭することができる。また、第2メンテナンス動作を行う場合には、図24に示すように、払拭部材91の尖部91a及び吸収部材78がノズル周辺領域62まで入り込むため、突出面64に付着したインクだけでなくノズル周辺領域62に付着したインクも確実に吸収して除去することができる。さらに、第3メンテナンス動作を行う場合には、図25に示すように、上記実施形態と同様に、吸収部材78によってノズル面63に付着したインクを好適に吸収して除去することができる。
・図26に示すように、払拭部材73の代わりに第1払拭部として可撓性を有した矩形板状の払拭部材92を用いるとともに、吸収部材78の代わりに第2払拭部として長尺状の矩形板状をなす吸収部材93を用いてもよい。吸収部材93は、布状に形成され、インクを吸収するようになっている。払拭部材92におけるノズル面63を払拭する側の面の先端部には、吸収部材93を保持する保持部92aが凹設されている。そして、第2メンテナンス動作を行う場合には、図26に示すように、吸収部材93がノズル周辺領域62まで入り込んで吸収部材93の尖った角がノズル周辺領域62に接触するため、突出面64に付着したインクだけでなくノズル周辺領域62に付着したインクも確実に吸収して除去することができる。この場合、ワイパーユニット46は吸収部材93が搬送方向Yに延び且つ払拭部材92よりも支持台12に近い側に位置するように配置され、ワイパーユニット46を停止させた状態で、ノズル面63側を走査方向Xに移動させる。
・図27に示すように、払拭部材73の代わりに第1払拭部として上述した図26の払拭部材92を用いるとともに、吸収部材78の代わりに第2払拭部として断面視L字板状をなす長尺状の吸収部材94を用いてもよい。吸収部材94は、布状に形成され、インクを吸収するようになっている。そして、第2メンテナンス動作を行う場合には、図27に示すように、吸収部材94がノズル周辺領域62まで入り込んで吸収部材94のコーナー部がノズル周辺領域62に接触するため、突出面64に付着したインクだけでなくノズル周辺領域62に付着したインクも確実に吸収して除去することができる。この場合、ワイパーユニット46は吸収部材94が搬送方向Yに延び且つ払拭部材92よりも支持台12に近い側に位置するように配置され、ワイパーユニット46を停止させた状態で、ノズル面63側を走査方向Xに移動させる。
・図28に示すように、吸収部材78の代わりに第2払拭部として長尺帯状の吸収部材95を用いてもよい。吸収部材95は、布状に形成され、インクを吸収するようになっている。そして、第3メンテナンス動作を行う場合には、図28に示すように、吸収部材95をノズル面63に対して所定の干渉量も持たせて傾けた状態でノズル面63に接触させるようにしてもよい。この場合、ワイパーユニット46は吸収部材93が搬送方向Yに延び且つ払拭部材73よりも支持台12に近い側に位置するように配置され、ワイパーユニット46を停止させた状態で、ノズル面63側を走査方向Xに移動させる。このようにすれば、上記実施形態と同様に、吸収部材95によってノズル面63に付着したインクを好適に吸収して除去することができる。
・図29及び図31に示すように、繰出リール79及び巻取リール80は、キャリッジ25にL字状をなす一対のアーム96を介して回転可能に支持されるようにしてもよい。繰出リール79及び巻取リール80は、キャリッジ25を挟んで対向するように配置され、鉛直方向Zに延びる軸線を中心にモーター(図示略)によって回転駆動可能になっている。また、一対のアーム96は、キャリッジ25の側面に設けられたガイド溝97によってガイドされ、モーター(図示略)の駆動によって鉛直方向Z及び走査方向Xへ繰出リール79及び巻取リール80とともに往復移動可能になっている。このようにすれば、図29に示すように、繰出リール79及び巻取リール80間の吸収部材78に、液体噴射ヘッド27のノズル26から印刷とは無関係にノズル26の目詰まりの解消等を目的としてインクを吐出するフラッシングを行うことができる。さらに、図30及び図31に示すように、繰出リール79及び巻取リール80間の吸収部材78の高さを吸収部材78がノズル面63に接触可能な高さに合わせた状態で、繰出リール79及び巻取リール80を走査方向Xに移動させることで、第3メンテナンス動作によるノズル面63の払拭を行うことができる。また、第2メンテナンス動作によるノズル面63の払拭を行う場合には、図32及び図33に示すように、払拭部材73の保持溝73aに繰出リール79及び巻取リール80間の吸収部材78を保持させた状態で、払拭部材73を走査方向Xに沿って移動させて繰出リール79から吸収部材78を引き出すようにしてもよい。この場合、図34に示すように、払拭部材73と一緒に繰出リール79及び巻取リール80を移動させて、繰出リール79から吸収部材78が引き出されないようにしてもよい。
・ノズル面63の払拭は、第1メンテナンス動作を行った後に第2メンテナンス動作を行うようにしてもよい。このようにすれば、第1メンテナンス動作でノズル面63に残ったインクを第2メンテナンス動作で効果的に除去することができる。この場合、ノズル周辺領域62がインクで湿った状態で第1メンテナンス動作が行われるので、第1メンテナンス動作によってノズル周辺領域62に与えられるダメージを低減することができ、その後の第2メンテナンス動作でノズル周辺領域62に残ったインク(異物を含む)を吸収して除去することができる。
・吸収部材78は、表面に微細な多数の毛羽を有するようにしてもよい。この場合、毛羽は、ノズル26内に進入可能な細さであることが好ましい。
・布ワイパー(インクを吸収可能な帯状の布)を第2払拭部として用いるとともに、布ワイパーを押圧可能な可撓性を有するローラーを第1払拭部として用いるようにしてもよい。
・第1払拭部は、必ずしも可撓性を有している必要はない。すなわち、第1払拭部は、例えば、摺動性の良好な金属などによって構成してもよい。
・第2払拭部は、必ずしもインクを吸収可能である必要はない。すなわち、第2払拭部は、インクを保持できればよく、例えば、複数本の針金をより合わせたロープによって構成してもよい。この場合、ノズル面63から拭き取ったインクは、その表面張力によってロープの表面の凹凸で保持される。
・払拭部材73は、必ずしも吸収部材78によってクリーニングする必要はない。
・インクジェット式プリンター11は、第3メンテナンス動作を行うことができなくてもよい。
・吸収部材78による払拭部材73のクリーニングは、吸収部材78と払拭部材73とを接触させた状態で、吸収部材78を停止させながら払拭部材73を上方に移動させるようにしてもよいし、吸収部材78を下方に移動させながら払拭部材73を上方に移動させるようにしてもよい。
・突出面64は、カバー部材60を用いずに、液体噴射ヘッド27に一体形成するようにして形成してもよい。この場合、ノズル開口面61が凹凸面によって構成される。
・液体噴射ヘッド27は、ノズル列59ごとにキャッピングしてヘッドクリーニングを行うようにしてもよい。このようにすれば、全てのノズル列59をキャップ部47でキャッピングしてヘッドクリーニングを行う場合に比べてキャップ部を小さくすることができるので、ヘッドクリーニングの際に消費するインク量を低減できる。
・ワイパーユニット46における吸収部材78の使用済みの領域(ノズル面63を払拭した領域)に、液体噴射ヘッド27のノズル26から印刷とは無関係にノズル26の目詰まりの解消等を目的としてインクを吐出するフラッシングを行うようにしてもよい。
・ワイパーユニット46によるノズル面63の払拭は、ワイパーユニット46を停止した状態でノズル面63を移動させることによって行ってもよいし、ワイパーユニット46及びノズル面63の両方を移動させることによって行ってもよい。
・液体噴射ヘッド27を複数、例えば実施形態のように2つ備える場合、一方の液体噴射ヘッド27のノズル面63のワイパーユニット46による払拭と、他方の液体噴射ヘッド27のノズル26からのフラッシングユニット45の液体受容部44へのフラッシングと、を並行して行ってもよい。
・インクジェット式プリンター11は、液体噴射ヘッド27を支持するキャリッジ25を備えず、印刷範囲が記録媒体13の幅全体に亘るラインヘッドを備えるラインヘッドタイプのものであってもよい。この場合、ラインヘッドは固定されていて動かないため、ワイパーユニットを移動させることによってノズル面を払拭する。
・上記実施形態において、液体噴射装置は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置であってもよい。なお、液体噴射装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体は、液体噴射装置から噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体を含むものとする。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置であってもよい。また、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置であってもよい。